JP2012209123A - 透明導電膜の製造方法及び透明導電膜、透明導電基板並びにそれを用いたデバイス - Google Patents

透明導電膜の製造方法及び透明導電膜、透明導電基板並びにそれを用いたデバイス Download PDF

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Abstract

【課題】低コストかつ簡便な透明導電膜の製造方法である塗布法によって形成される、高い導電性を有し、かつ良好な膜強度と優れた透明性を兼ね備える透明導電膜、及びこの透明導電膜の製造方法を提供する。
【解決手段】酸化焼成工程が乾燥塗布膜を酸素含有雰囲気下で、少なくとも無機成分の結晶化が起こる焼成温度以上まで昇温して、有機成分を熱分解または燃焼、或いは熱分解並びに燃焼により除去し、ドーパント金属化合物を含みインジウム酸化物を主成分とする導電性酸化物微粒子が緻密に充填した導電性酸化物微粒子膜を形成する工程で、還元焼成工程が、少なくとも水素0.1体積%以上と水蒸気を含有し、かつ露点温度が−55℃〜30℃の還元雰囲気下で、300℃以上の温度で焼成を行うことを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、透明導電膜及びその透明導電膜の製造方法に関する。
詳しくは、ガラスやセラミックス等の耐熱性基板上に形成された、透明性と導電性を兼ね備え、かつ膜強度に優れる透明導電膜の製造方法及びその透明導電膜の製造方法によって得られた透明導電膜に関し、更にその透明導電膜を用いた透明導電基板、並びにその透明導電基板を用いたデバイスに関する。
液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンス、プラズマディスプレイ等の表示素子用透明電極、タッチパネル、太陽電池等の透明電極、熱線反射、電磁波シールド、帯電防止、防曇等の機能性コーティングに用いられる透明導電膜の形成材料として、錫ドープ酸化インジウム(Indium Tin Oxide、以下、「ITO」と表記する場合がある)が知られている。
ITO透明導電膜の製造方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、化学蒸着法等の物理的手法が広く用いられている。これらの方法は、透明性と導電性に優れた均一なITO透明導電膜を基板上に形成することができる。
しかしながら、これに使用する膜形成装置は真空容器をベースとするため非常に高価であり、また基板成膜毎に製造装置内の成分ガス圧を精密に制御しなければならないため、製造コストと量産性に問題がある。
この問題を解決する製造方法として、インジウム化合物と錫化合物を溶剤に溶解させた透明導電膜形成用塗布液を用いて、基板上に塗布する方法(以下、「塗布法」と表記する場合がある)が検討されている。
この塗布方法では、透明導電膜形成用塗布液の基板上への塗布、乾燥、焼成という簡素な製造工程でITO透明導電膜を形成するもので、その塗布液の基板上への塗布法には、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンサ印刷法、スリットコート法、ダイコート法、ドクターブレードコート法、ワイヤーバーコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法等が知られている。
このような塗布法に用いられる塗布液として、インジウム化合物及び錫化合物を含む塗布液が、従来種々開発されており、例えば、ハロゲンイオンまたはカルボキシル基を含む硝酸インジウムとアルキル硝酸錫の混合液(例えば、特許文献1参照)、アルコキシル基などを含む有機インジウム化合物と有機錫化合物の混合物(例えば、特許文献2参照)、硝酸インジウムと有機錫化合物の混合物(例えば、特許文献3参照)、硝酸インジウム、硝酸錫等の無機化合物混合物(例えば、特許文献4参照)、ジカルボン酸硝酸インジウムなどの有機硝酸インジウムとアルキル硝酸錫などの有機硝酸錫の混合物(例えば、特許文献5参照)、アセチルアセトンを配位した有機インジウム錯体と錫錯体からなる有機化合物混合溶液(例えば、特許文献6、特許文献7、特許文献8参照)が開示されている。
これらの従来知られている塗布液の多くはインジウムや錫の硝酸塩、ハロゲン化物からなる有機または無機化合物、あるいは金属アルコキシドなどの有機金属化合物等が用いられている。
しかし、硝酸塩やハロゲン化物を用いた塗布液は、焼成時に窒素酸化物や塩素などの腐食性ガスが発生するため、設備腐食や環境汚染を生ずるといった問題があり、金属アルコキシドを用いた塗布液では、原料が加水分解し易いため、塗布液の安定性に問題がある。また、特許文献に記載された有機金属化合物を用いた塗布液の多くは、基板に対する濡れ性が悪く、不均一膜が形成され易いといった問題もあった。
そこで、これらの問題点を改良した塗布液として、アセチルアセトンインジウム(正式名称:トリス(アセチルアセトナト)インジウム:In(C)、アセチルアセトン錫(正式名称:ジ−n−ブチル ビス(2,4−ペンタンジオナト)錫:[Sn(C(C])、ヒドロキシプロピルセルロース、アルキルフェノール及び/またはアルケニルフェノールと二塩基酸エステル及び/または酢酸ベンジルを含有する透明導電膜形成用塗布液(例えば、特許文献9参照)が開示されている。
この塗布液は、アセチルアセトンインジウム、アセチルアセトン錫の混合溶液にヒドロキシプロピルセルロースを含有させることによって塗布液の基板に対する濡れ性を改善すると同時に、粘性剤であるヒドロキシプロピルセルロースの含有量によって塗布液の粘度を調整し、スピンコート、スプレーコート、ディップコート、スクリーン印刷、ワイヤーバーコート等の各種塗布法の採用を可能にするものである。
また、スピンコート用の改良塗布液として、アセチルアセトンインジウム、オクチル酸インジウム等の有機インジウム化合物と、アセチルアセトン錫、オクチル酸錫等の有機錫と、有機溶剤とを含み、その有機溶剤にアルキルフェノール及び/またはアルケニルフェノールを溶解したアセチルアセトン溶液、アルキルフェノール及び/またはアルケニルフェノールを溶解したアセチルアセトン溶液をアルコールで希釈した液を用いる透明導電膜形成用塗布液(例えば、特許文献10参照)が提案されている。
この塗布液は、低粘度であり、スピンコートのほかスプレーコート、ディップコートにも使用可能である。
これらのITO透明導電膜形成用塗布液を基板上へ塗布、乾燥した後の焼成方法については、従来より空気雰囲気下で400℃以上に加熱して行われている(例えば、特許文献11、12参照)。
また、形成されるITO透明導電膜の導電性を高めるために、空気雰囲気で400℃以上に加熱(酸化焼成)した後、窒素雰囲気に切替えて加熱処理(還元焼成)を行い、ITO透明導電膜に酸素空孔を導入する方法も検討されている(例えば、特許文献9参照)。
特開昭57−138708号公報 特開昭61−26679号公報 特開平4−255768号公報 特開昭57−36714号公報 特開昭57−212268号公報 特公昭63−25448号公報 特公平2−20706号公報 特公昭63−19046号公報 特開平6−203658号公報 特開平6−325637号公報 特開平5−28834号公報 特開平5−114314号公報
しかしながら、このような各種ITO透明導電膜形成用塗布液を基板上に塗布、乾燥、酸化焼成、還元焼成して形成される透明導電膜は、その還元焼成を300℃以上の温度で行うと透明導電膜が過度に還元される場合があり、膜強度や透過率が低下する問題を生じていた。
従って、ディスプレイ、タッチパネル、太陽電池等の透明電極に利用するには、導電性はもとより、膜強度や透明性がより良好な透明導電膜が要望されていた。
本発明は、低コストかつ簡便な透明導電膜の製造方法であるインク塗布法を用いて形成される高い導電性を有し、かつ良好な膜強度と優れた透明性を兼ね備える透明導電膜、及びこの透明導電膜の製造方法及び得られる透明導電膜、透明導電基板並びにそれを用いたデバイスを提供することを目的とする。
このような課題に鑑み、発明者らは有機インジウム化合物及びドーパント用有機金属化合物を主成分として含有する透明導電膜形成用塗布液を耐熱性基板上に塗布、乾燥、酸化焼成、還元焼成して得られるドーパント金属化合物を含み酸化インジウムを主成分とする透明導電膜について鋭意研究を重ねた結果、その酸化焼成において水蒸気含有量の少ない空気雰囲気を適用し、焼成の初期段階における導電性酸化物の結晶成長を抑制して導電性酸化物粒子が緻密に充填した導電性酸化物微粒子層を形成させた後、雰囲気を空気雰囲気から還元雰囲気に切替えて300℃以上の温度で還元焼成を行う場合において、水蒸気を含有させた還元雰囲気を適用すると、過還元(過度な酸素空孔の形成)による透過率の低下を防止でき、適度に酸素空孔が導入された緻密な透明導電膜が得られ、高い導電性を有し、かつ良好な膜強度と優れた透明性を兼ね備える透明導電膜を発明したものである。
即ち、本発明の第1の発明は、主成分として有機インジウム化合物及びドーパント用有機金属化合物を含有する透明導電膜形成用塗布液を、耐熱性基板上に塗布して塗布膜を形成する塗布工程、その塗布膜を乾燥して乾燥塗布膜を形成する乾燥工程、形成した乾燥塗布膜を酸素含有雰囲気下で焼成して、無機成分である導電性酸化物を主成分とする導電性酸化物微粒子膜を形成する酸化焼成工程、酸化焼成工程で得られた導電性酸化物微粒子膜を還元雰囲気下で焼成して導電性酸化物に酸素空孔を導入し、その導電性を高める還元焼成工程の各工程を経て形成される、透明導電膜の製造方法であって、酸化焼成工程が、乾燥工程で形成された有機インジウム化合物及びドーパント用有機金属化合物を主成分とする乾燥塗布膜を酸素含有雰囲気下で、少なくとも無機成分の結晶化が起こる焼成温度以上まで昇温する焼成を行い、乾燥塗布膜に含まれる有機成分を熱分解または燃焼、或いは熱分解並びに燃焼により除去することでドーパント金属化合物を含みインジウム酸化物を主成分とする導電性酸化物微粒子が緻密に充填した導電性酸化物微粒子膜を形成する工程であり、さらに、還元焼成工程が、酸化焼成工程で形成された導電性酸化物微粒子膜を、少なくとも水素0.1体積%以上と水蒸気を含有し、かつ露点温度が−55℃〜30℃である還元雰囲気下で、300℃以上の温度で焼成を行うことを特徴とするものである。
本発明の第2の発明は、第1の発明における有機インジウム化合物及びドーパント用有機金属化合物の含有割合が、有機インジウム化合物:ドーパント用有機金属化合物のモル比換算で、99.9:0.1〜66.7:33.3の範囲であることを特徴とする透明導電膜の製造方法である。
本発明の第3の発明は、第1及び第2の発明におけるドーパント用有機金属化合物が、有機錫化合物、有機チタン化合物、有機ゲルマニウム化合物、有機亜鉛化合物、有機タングステン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機タンタル化合物、有機ニオブ化合物、有機ハフニウム化合物、有機バナジウム化合物のいずれか一種以上であることを特徴とする透明導電膜の製造方法である。
本発明の第4の発明は、第1の発明における酸素含有雰囲気の露点温度が、−10℃以下であることを特徴とする透明導電膜の製造方法である。
本発明の第5の発明は、第1及び第2の発明における有機インジウム化合物が、アセチルアセトンインジウムであることを特徴とする透明導電膜の製造方法である。
本発明の第6の発明は、第1の発明における塗布工程の透明導電膜形成用塗布液の耐熱性基板上への塗布方法が、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンサ印刷法、スリットコート法、ダイコート法、ドクターブレードコート法、ワイヤーバーコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法のいずれかであることを特徴とする透明導電膜の製造方法である。
本発明の第7の発明は、第1〜6の発明のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法で得られたことを特徴とする透明導電膜である。
本発明の第8の発明は、耐熱性基板上に透明導電膜を備える透明導電基板において、その透明導電膜が、第7の発明に記載の透明導電膜であることを特徴とする透明導電基板である。
本発明の第9の発明は、透明電極を備えるデバイスにおいて、その透明電極が、第8の発明に記載の透明導電基板であることを特徴とするデバイスである。
本発明の第10の発明は、第9の発明におけるデバイスが、発光デバイス、発電デバイス、表示デバイス、入力デバイスから選ばれた1種であることを特徴とするものである。
本発明の透明導電膜の製造方法によれば、ドーパント金属化合物を含みインジウム酸化物を主成分とする透明導電膜の透明性を損なうことなく、適度に酸素空孔が導入された緻密な透明導電膜を形成できるため、高い導電性を有し、かつ良好な膜強度と優れた透明性を兼ね備える。
そのため、この透明導電膜を耐熱性基板上に形成した透明導電基板は、LED素子、エレクトロルミネッセンスランプ(エレクトロルミネッセンス素子)、フィールドエミッションランプ等の発光デバイス、太陽電池等の発電デバイス、液晶ディスプレイ(液晶素子)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(エレクトロルミネッセンス素子)、プラズマディスプレイ、電子ペーパー素子等の表示デバイス、及びタッチパネル等の入力デバイス等に好適である。
空気中の飽和水蒸気含有量(体積%)と露点温度(℃)の関係を示す図である。 実施例1に係る透明導電膜の外観写真である。 実施例2に係る透明導電膜の外観写真である。 実施例3に係る透明導電膜の外観写真である。 実施例4に係る透明導電膜の外観写真である。 比較例1に係る透明導電膜の外観写真である。 比較例2に係る透明導電膜の外観写真である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明は、有機インジウム化合物及びドーパント用有機金属化合物を主成分とする透明導電膜形成用塗布液を、耐熱性基板上に塗布、乾燥、酸化焼成、還元焼成して形成される透明導電膜の製造方法において、適度に酸素空孔が導入されたドーパント金属化合物を含みインジウム酸化物を主成分とする緻密な透明導電膜を形成するため、透明性(透過率、ヘイズ)を損なうことなく、透明導電膜の導電性の向上、及び膜強度の向上が図られる。
[透明導電膜構造]
先ず、透明導電膜構造を説明する。
以下では、錫をドープした酸化インジウム(ITO)の透明導電膜を例に挙げて説明するが、錫以外の、チタン、ゲルマニウム、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、ハフニウムバナジウムをドープした透明導電膜に関しても同じように行うことができる。
例えば、スパッタリング法等の気相成長法を用いてITOからなる透明導電膜を形成した場合、通常ITO結晶粒が粒界を介して配列した膜構造である多結晶のITO膜構造が形成され、膜構造においてITO微粒子はほとんど観察されない。
また、有機インジウム化合物と有機錫化合物を主成分とする透明導電膜形成用塗布液を耐熱性基板上に塗布、乾燥、焼成する塗布法で形成されるITOからなる透明導電膜では、通常ITO微粒子同士が結合した膜構造を有しており、ITO微粒子の粒子径やITO微粒子間に存在する空隙の大きさは、焼成条件などで異なるが、少なからず開空隙(オープンポア)を有するITO微粒子で構成される透明導電膜となることが知られている。
そして、この塗布法で形成されたITO微粒子同士が結合した透明導電膜は、その導電機構が、ITO微粒子の接触部分(結合部分)を介在するものであることから、ITO微粒子同士が微小面積で接触するために起こると考えられる接触部分での導電性低下、開空隙を通して大気中の酸素や水蒸気が膜内に進入しITO微粒子同士の接触を劣化させるために起こると考えられる大気曝露における導電性の経時劣化、ITO微粒子が粗に充填しているために起こると考えられる膜強度の低下などを生じる。
このような従来のものに対して、本発明は、導電性酸化物微粒子を緻密に充填させると同時に、導電性酸化物微粒子の結晶成長も促進させて、開空隙(オープンポア)が少なく緻密で、かつ導電性酸化物微粒子同士の接触が強化されたドーパント金属化合物を含み酸化インジウムを主成分とする導電性酸化物微粒子層を有する膜構造を形成するというものであり、その導電性の向上を図り、膜強度の向上も達成するものである。更に、導電性の経時劣化も大きく抑制することも可能である。
即ち、本発明において、ドーパント金属化合物を含み酸化インジウムを主成分とする、緻密な導電性酸化物微粒子層は、前述の透明導電膜形成用塗布液を用いた塗布法において、その焼成時の酸化焼成工程における昇温過程で、水蒸気含有量の少ない(すなわち露点温度が低い)酸素含有雰囲気を適用することで形成するものである。
このような緻密な導電性酸化物微粒子層の形成機構については、いまだ明らかとはいえないが、要は、酸素含有雰囲気中に水蒸気が存在すると、有機インジウム化合物及びドーパント用有機金属化合物が熱分解・燃焼して生じる導電性酸化物の結晶化、並びに結晶成長が、その水蒸気で促進され、熱分解・燃焼を行なう焼成工程での初期段階で導電性酸化物微粒子同士を固着して動けなくしてしまうため、導電性酸化物微粒子の緻密化を阻害するためと推測される。
ドーパント金属化合物を含み酸化インジウムを主成分とする透明導電膜において、本発明の水蒸気含有量の少ない、すなわち露点温度が低い酸素含有雰囲気を適用した場合には、透明導電膜における導電性酸化物微粒子の充填密度は導電性酸化物の真比重の約90%程度まで高めることが可能であり、水蒸気を含む酸素含有雰囲気を適用した場合には、真比重の60〜70%程度に留まる。
[透明導電膜形成用塗布液]
次に、本発明で用いられる透明導電膜形成用塗布液について詳細に説明する。
本発明では、有機インジウム化合物及びドーパント用有機金属化合物を主成分とする透明導電膜形成用塗布液を用いて、ドーパント用金属化合物を含み酸化インジウムを主成分とする透明導電膜を形成している。
一般に、透明導電膜の導電性は高い方が望ましく、そのような場合には、酸化インジウムという主成分となる酸化物にそれ以外の金属化合物、主として金属酸化物をドーピングすることで導電性を向上させる。即ち、ドーパント金属化合物を含む酸化インジウムを導電性酸化物として用いれば、透明導電膜の導電性が向上する。これは、ドーパント金属化合物が導電性酸化物において、キャリアとしての電子の濃度(キャリア密度)を高める働きがあるからである。
その具体的なドーピングの方法としては、有機インジウム化合物を主成分とする透明導電膜形成用塗布液に、ドーパント用有機金属化合物を所定量配合する方法がある。
本発明で用いる有機インジウム化合物には、アセチルアセトンインジウム(正式名称:トリス(アセチルアセトナト)インジウム)[In(C]、2−エチルヘキサン酸インジウム、蟻酸インジウム、インジウムアルコキシド等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、焼成時において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機インジウム化合物であれば良い。これらの中でもアセチルアセトンインジウムは有機溶剤への溶解性が高く、空気雰囲気中200〜250℃程度の温度で熱分解・燃焼(酸化)して酸化物となるため好ましい。
次に、導電性を向上させるドーパント用有機金属化合物としては、有機錫化合物、有機チタン化合物、有機ゲルマニウム化合物、有機亜鉛化合物、有機タングステン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機タンタル化合物、有機ニオブ化合物、有機ハフニウム化合物、有機バナジウム化合物のいずれか一種以上が好ましい。
なお、透明導電膜を適用するデバイスによっては導電性がある程度低い(抵抗値が高い)ことが必要とされる場合もあるため、透明導電膜形成用塗布液へのドーパント用有機金属化合物の添加は、必要に応じて適宜実施すればよい。
ドーパント用有機金属化合物の有機錫化合物(化合物中の錫の価数は2価、4価にこだわらない)としては、例えば、アセチルアセトン錫(正式名称:ジ−n−ブチル ビス(2,4−ペンタンジオナト)錫、[Sn(C(C]、オクチル酸錫、2−エチルヘキサン酸錫、酢酸錫(II)[Sn(CHCOO)]、酢酸錫(IV)[Sn(CHCOO)]、ジ−n−ブチル錫ジアセテート[Sn(C(CHCOO)] 、蟻酸錫、錫アルコキシドとしての錫−tert−ブトキシド[Sn(CO)]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、焼成時において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機錫化合物であれば良い。これらの中でも、アセチルアセトン錫は、比較的安価で入手し易いので好ましい。
ドーパント用有機金属化合物の有機チタン化合物としては、例えば、チタンアセチルアセトン錯体としてのアセチルアセトンチタン(正式名称:チタンジ−n−ブトキシド ビス(2,4−ペンタンジオネート)[Ti(CO)(C] )、チタニル(IV)アセチルアセトネート[(C)4TiO]、チタンジイソプロポキシド ビス(2,4−ペンタンジオネート)[C1636Ti]等や、チタンアルコキシドとしてのチタンテトラエトキシド[Ti(CO)]、チタン(IV)−tert−ブトキシド[Ti(CO)]、チタンテトラ−n−ブトキシド[Ti(CO)]、チタンテトライソプロポキシド[Ti(CO)]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、焼成時において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機チタン化合物であれば良い。これらの中でも、アセチルアセトンチタン、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトライソプロポシドは、安価で入手し易いので好ましい。
ドーパント用有機金属化合物の有機ゲルマニウム化合物としては、例えば、ゲルマニウムアルコキシドとしてのゲルマニウムテトラエトキシド[Ge(CO)]、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド[Ge(CO)]、ゲルマニウムテトライソプロポキシド[Ge(CO)]等や、β−カルボキシエチルゲルマニウムオキシド[(GeCHCHCOOH)]、テトラエチルゲルマニウム[Ge(C]、テトラブチルゲルマニウム[Ge(C]、トリブチルゲルマニウム[Ge(C]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、焼成時において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機ゲルマニウム化合物であれば良い。これらの中でも、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド、ゲルマニウムテトライソプロポキシドは、比較的安価で入手し易いので好ましい。
ドーパント用有機金属化合物の有機亜鉛化合物としては、例えば、亜鉛アセチルアセトン錯体としてのアセチルアセトン亜鉛(正式名称:亜鉛−2,4−ペンタンジオネート)[Zn(C]、亜鉛−2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート[Zn(C1119]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、焼成時において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機亜鉛化合物であれば良い。これらの中でも、アセチルアセトン亜鉛は、安価で入手し易いので好ましい。
ドーパント用有機金属化合物の有機タングステン化合物としては、例えば、タングステンアルコキシドとしてのタングステン(V)エトキシド[W(CO)]、タングステン(VI)エトキシド[W(CO)]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、焼成時において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機タングステン化合物であれば良い。
ドーパント用有機金属化合物の有機ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムアセチルアセトン錯体としてのジルコニウム ジ−n−ブトキシド ビス(2,4−ペンタンジオネート)[Zr(CO)(C]、アセチルアセトンジルコニウム(正式名称:ジルコニウム−2,4−ペンタンジオネート)[Zr(C]、ジルコニウムアルコキシドとしてのジルコニウムエトキシド[Zr(CO)]、ジルコニウム−n−プロポキシド[Zr(CO)]、ジルコニウムイソプロポキシド[Zr(CO)]、ジルコニウム−n−ブトキシド[Zr(CO)]、ジルコニウム−tert−ブトキシド[Zr(CO)]、ジルコニウム−2−メチル−2−ブトキシド[Zr(C11O)]、ジルコニウム−2−メトキシメチル−2−プロポキシド[Zr(C11]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、焼成時において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機ジルコニウム化合物であれば良い。これらの中でも、ジルコニウム−n−プロポキシド、ジルコニウム−n−ブトキシドは、比較的安価で入手し易いので好ましい。
ドーパント用有機金属化合物の有機タンタル化合物としては、例えば、タンタルアセチルアセトン錯体としてのタンタル(V)テトラエトキシド−ペンタンジオネート[Ta(C)(OC]、タンタルアルコキシドとしてのタンタルメトキシド[Ta(CHO)]、タンタルエトキシド[Ta(CO)]、タンタルイソプロポキシド[Ta(CO)]、タンタル−n−ブトキシド[Ta(CO)]、テトラエトキシアセチルアセトナトタンタル[Ta(CO)(C)]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、焼成時において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機タンタル化合物であれば良い。
ドーパント用有機金属化合物の有機ニオブ化合物としては、例えば、ニオブアルコキシドとしてのニオブエトキシド[Nb(CO)]、ニオブ−n−ブトキシド[Nb(CO)]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、焼成時において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機ニオブ化合物であれば良い。
ドーパント用有機金属化合物の有機ハフニウム化合物としては、例えば、ハフニウムアセチルアセトン錯体としてのハフニウム ジ−n−ブトキシド ビス(2,4−ペンタンジオネート)[Hf(CO)(C]、アセチルアセトンハフニウム(正式名称:ハフニウム−2,4−ペンタンジオネート)[Hf(C]、ハフニウムアルコキシドとしてのハフニウムエトキシド[Hf(CO)]、ハフニウム−n−ブトキシド[Hf(CO)]、ハフニウム−tert−ブトキシド[Hf(CO)]、ハフニウム(VI)イソプロポキシドモノイソプロピレート[Hf(CO)(COH)]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、焼成時において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機ハフニウム化合物であれば良い。これらの中でも、ハフニウム−n−ブトキシドは、比較的安価で入手し易いので好ましい。
ドーパント用有機金属化合物の有機バナジウム化合物としては、例えば、バナジウムアセチルアセトン錯体としてのバナジウム(IV)オキサイドビス−2,4−ペンタンジオネート[VO(C]、アセチルアセトンバナジウム(正式名称:バナジウム(III)−2,4−ペンタンジオネート)[V(C]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、焼成時において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機バナジウム化合物であれば良い。
透明導電膜形成用塗布液における有機インジウム化合物及びドーパント用有機金属化合物は、基板上に透明導電膜を形成させるための主たる化合物原料であり、その合計含有量は1〜30重量%の範囲であることが好ましく、更に好ましくは5〜20重量%とするのが良い。
その合計含有量が1重量%未満であると膜厚の薄い透明導電膜しか得られなくなるため十分な導電性が得られない。また、30重量%より多いと透明導電膜形成用塗布液中の有機金属化合物が析出し易くなって塗布液の安定性が低下したり、得られる透明導電膜が厚くなり過ぎて亀裂(クラック)が発生して導電性が損なわれる場合がある。
また、有機インジウム化合物とドーパント用有機金属化合物の含有割合は、有機インジウム化合物:ドーパント用有機金属化合物のモル比換算で99.9:0.1〜66.7:33.3が好ましい。詳しくは、ドーパント用有機金属化合物として有機亜鉛化合物を用いる場合を除いて、有機インジウム化合物:ドーパント用有機金属化合物のモル比換算で99.9:0.1〜87:13が良く、好ましくは99:1〜91:9である。
なお、有機亜鉛化合物をドーパント用有機金属化合物して用いる場合には、有機インジウム化合物:ドーパント用有機金属化合物のモル比換算で95:5〜66.7:33.3が良く、好ましくは91:9〜71:29である。
ここで、上記モル比は、有機インジウム化合物とドーパント用有機金属化合物のそれぞれの金属成分のモル比を指している。したがって、例えばドーパント用有機金属化合物の1分子中に金属元素が2個含まれている場合は、ドーパント用有機金属化合物1モルに対しドーパント用の金属元素は2モルとして換算する。
なお、透明導電膜を適用するデバイスによっては、透明導電膜に対して、必ずしも高い導電性を必要とせず、逆に高い抵抗値が要求されることもある。そのような場合には、高抵抗の透明導電膜を得る目的で、あえて上記透明導電膜形成用塗布液にドーパント用有機金属化合物を配合せずに用いることができる。
このモル比範囲を外れてドーパント用有機金属化合物が少なくても、或いは、多すぎても、透明導電膜のキャリア密度が減少して透明導電膜の導電性が急激に悪化する場合があり、また、上記モル比範囲を外れてドーパント用有機金属化合物が多い場合には、導電性酸化物微粒子の結晶成長が進みにくくなって導電性が悪化する場合があるため好ましくない。
さらに、透明導電膜形成用塗布液には、必要に応じてバインダーを添加しても良い。バインダーを加えることで、基板に対する濡れ性が改善されると同時に、塗布液の粘度調整を行うことができる。上記バインダーは焼成時の酸化焼成工程において燃焼や熱分解する材料が好ましく、このような材料として、セルロース誘導体、アクリル樹脂等が有効である。
バインダーに用いられるセルロース誘導体としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース 、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース 、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース 、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロース、ニトロセルロース等が挙げられるが、これらの中でもヒドロキシプロピルセルロース(以下、「HPC」と表記する場合がある)が好ましい。
上記HPCを用いれば、5重量%以下の含有量で十分な濡れ性が得られると同時に、大幅な粘度調整を行うことができる。またHPCの空気雰囲気中での燃焼開始温度は300℃程度であり、焼成を300℃以上、好ましくは350℃以上の温度で行えば燃焼するので、生成する導電性粒子の粒成長を阻害せず、導電性が良好な透明導電膜を作製することができる。HPCの含有量が5重量%より多くなると、ゲル状になって塗布液中に残留し易くなり、極めて多孔質の透明導電膜を形成して透明性や導電性が著しく損なわれる。
ここで、セルロース誘導体として、例えばHPCの代わりにエチルセルロースを用いた場合には、HPCを用いた場合よりも塗布液の粘度が低く設定できるが、高粘度塗布液が好適であるスクリーン印刷法等ではパターン印刷性が若干低下する。
ところで、ニトロセルロースは、熱分解性は優れているが、焼成時の酸化焼成工程において有害な窒素酸化物ガスの発生があり、焼成炉の劣化や排ガス処理に問題を生じる場合がある。以上のように、使用するセルロース誘導体は、状況に応じて適宜選択する必要がある。
また、アクリル樹脂としては、比較的低温で燃焼するアクリル樹脂が好ましい。
透明導電膜形成用塗布液に用いる溶剤としては、アセチルアセトンインジウム、アセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトンバナジウム等のアセチルアセトン錯体を高濃度で溶解できるアルキルフェノール及び/またはアルケニルフェノールと二塩基酸エステル、あるいはアルキルフェノール及び/またはアルケニルフェノールと酢酸ベンジル、またはこれらの混合溶液を用いるのが好ましい。アルキルフェノール及びアルケニルフェノールとしては、クレゾール類、キシレノール、エチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、カシューナット殻液[3ペンタデカデシールフェノール]等が挙げられ、二塩基酸エステル(例えば二塩基酸ジメチル、二塩基酸ジエチル等)としては、コハク酸エステル、グルタル酸エステル、アジピン酸エステル、マロン酸エステル、フタル酸エステル等が用いられる。
更に、塗布液の粘度を低下さたり、塗布性を改善させるために透明導電膜形成用塗布液に配合する溶剤としては、有機インジウム化合物、ドーパント用有機金属化合物、及びセルロース誘導体及び/またはアクリル樹脂を溶解させた溶液と相溶性があれば良く、水、メタノール(MA)、エタノール(EA)、1−プロパノール(NPA)、イソプロパノール(IPA)、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール(DAA)等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、イソホロン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等のエステル系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル(MCS)、エチレングリコールモノエチルエーテル(ECS)、エチレングリコールイソプロピルエーテル(IPC)、エチレングリコールモノブチルエーテル(BCS)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル(PGM)、プロピレングリコールエチルエーテル(PE)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGM−AC)、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート(PE−AC)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール誘導体、トルエン、キシレン、メシチレン、ドデシルベンゼン等のベンゼン誘導体、ホルムアミド(FA)、N−メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1、3−ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、1、3−オクチレングリコール、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、ミネラルスピリッツ、ターピネオール等、及びこれらのいくつかの混合液が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
塗布液の安定性や成膜性を考慮すると、使用する溶剤としては、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン等が好ましい。
本発明で用いる透明導電膜形成用塗布液は、上記有機インジウム化合物と、上記各種ドーパント用有機金属化合物のいずれか一種以上、更に、必要に応じてバインダーを加えた混合物を溶剤に加熱溶解させることによって製造する。
加熱溶解は、通常、加熱温度を60〜200℃とし、0.5〜12時間攪拌することにより行われる。加熱温度が60℃よりも低いと十分に溶解せず、有機インジウム化合物としてアセチルアセトンインジウムを用いた塗布液の場合には、アセチルアセトンインジウムの金属化合物の析出分離が起って塗布液の安定性が低下してしまい、200℃よりも高いと溶剤の蒸発が顕著となり塗布液の組成が変化してしまうので好ましくない。
透明導電膜形成用塗布液の粘度は、上記バインダーの分子量や含有量、溶剤の種類によって調整することができるので、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンサ印刷法、スリットコート法、ダイコート法、ドクターブレードコート法、ワイヤーバーコート法、スピンコート法、スプレーコート法等の各種塗布法のそれぞれに適した粘度に調整して対応することができる。
高粘度(5000〜50000mPa・s程度)の塗布液は、高分子量のバインダーを5重量%以下、好ましくは2〜4重量%含有させることで作製でき、低粘度(5〜500mPa・s程度)は、低分子量のバインダーを5重量%以下、好ましくは0.1〜2重量%含有させ、かつ低粘度の希釈用溶剤で希釈することで作製できる。また、中粘度(500〜5000mPa・s)の塗布液は、高粘度の塗布液と低粘度の塗布液を混合することで作製できる。
[透明導電膜の製造方法]
本発明の透明導電膜の製造方法について詳細する。
本発明の透明導電膜は、主成分として有機インジウム化合物及びドーパント用有機金属化合物を含有する透明導電膜形成用塗布液を耐熱性基板上に塗布して塗布膜を形成する塗布工程、その塗布膜を乾燥して乾燥塗布膜を形成する乾燥工程、その乾燥塗布膜を酸素含有雰囲気下で焼成して、ドーパント金属化合物を含み酸化インジウムを主成分とする導電性酸化物微粒子が緻密に充填した導電性酸化物微粒子膜を形成する酸化焼成工程、酸化焼成工程で得られた導電性酸化物微粒子膜を還元雰囲気下で焼成して、導電性酸化物に酸素空孔を適度に導入し、その膜強度や透明性を損ねることなく導電性を高める還元焼成工程の各工程を経て形成される。
(a)塗布工程
耐熱性基板上への透明導電膜形成用塗布液の塗布は、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンサ印刷法、スリットコート法、ダイコート法、ドクターブレードコート法、ワイヤーバーコート法、スピンコート法、スプレーコート法等の各種塗布法を用いて塗布される。
これらの塗布は、クリーンルーム等のように清浄でかつ温度や湿度が管理された雰囲気下で行うことが好ましい。温度は室温(25℃程度)、湿度は40〜60%RHが一般的である。
上記耐熱基板としては、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等の無機基板や、ポリイミド(PI)等の樹脂基板(耐熱性プラスチックフィルム)を用いることができる。
(b)乾燥工程
この乾燥工程では、透明導電膜形成用塗布液を塗布した基板を、通常大気中80〜180℃で1〜30分間、好ましくは2〜10分間保持して塗布膜の乾燥を行って、乾燥塗布膜を作製する。乾燥条件(乾燥温度、乾燥時間)は、用いる耐熱性基板の種類や透明導電膜形成用塗布液の塗布厚さ等によって、適宜選択することができる。ただし、生産性を考慮すれば、乾燥時間は、得られる乾燥塗布膜の膜質が悪化しない必要最低限度に短縮することが望ましい。
また、必要に応じて大気中乾燥に代えて、減圧乾燥(到達圧力:通常1kPa以下)を適用してもよい。この減圧乾燥では、塗布された透明導電膜形成用塗布液中の溶剤が、減圧下で強制的に除去されて乾燥が進行するため、大気中乾燥に比べてより低温での乾燥が可能となるため、耐熱性や耐溶剤性に乏しい素材からなる基板を用いる場合には有用である。
なお、上記乾燥塗布膜は、透明導電膜形成用塗布液から前述の有機溶剤が揮発除去されたものであって、有機インジウム化合物、ドーパント用有機金属化合物、バインダー等の有機系成分で構成されている。
(c)酸化焼成工程
酸化焼成工程では、上記乾燥工程で得られた乾燥塗布膜を酸素含有雰囲気下で加熱処理(焼成)し、乾燥塗布膜中の有機インジウム化合物、ドーパント用有機金属化合物、およびバインダー等の有機系成分を熱分解・燃焼(酸化)させてドーパント金属化合物を含み酸化インジウムを主成分とする導電性酸化物微粒子が緻密に充填した導電性酸化物微粒子膜を得ている。
すなわち、酸化焼成工程の昇温過程で加熱温度が高くなってくると、乾燥塗布膜中の有機インジウム化合物とドーパント用有機金属化合物は徐々に熱分解・燃焼(酸化)されて、まずアモルファス状態(ここでは、X線回折で求めた結晶子サイズ=3nm未満の非常に微細な粒子の状態を称する。)の導電性酸化物への変換、所謂無機化が生じる。その後加熱温度が一層上昇して通常300〜330℃の範囲を越えるか、あるいは300〜330℃の範囲のままであっても加熱時間が長くなると上記導電性酸化物の結晶化が起き、更に結晶成長して導電性酸化物微粒子となり最終的な透明導電膜の構成要素となる(尚、上記300〜330℃は上記無機化や結晶化が生じやすい一般的な温度範囲を示すものであって、例えば、加熱時間が長い場合には、270℃程度でも上記記導電性酸化物の無機化、結晶化、結晶成長が生じる場合もあるため、本発明の焼成工程の焼成温度が300℃以上に限定されるものではない。)。
一方、バインダーも同様に、酸化焼成工程の昇温過程で徐々に熱分解・燃焼(酸化)するが、主に二酸化炭素(CO)に転化されて雰囲気中に揮散して膜中から消失(バインダーの種類にもよるが、例えば前述のHPCであれば約300〜350℃でほぼ消失)していくため、最終的には透明導電膜中にはほとんど残留しない。なお、酸化焼成工程の初期段階(昇温過程のある段階で、例えば室温から加熱して300℃まで到達した段階)まではバインダーが多く残留し、上記アモルファス状態の導電性酸化物間にバインダーが均一に介在して結晶化を抑制しているが、更に焼成を進めるとバインダー成分が徐々に消失していって上記導電性酸化物の結晶化が起こるものと考えられる。
以下、酸化焼成工程をより詳細に説明する。
上記乾燥塗布膜の酸化焼成工程において、先ず露点温度の低い、即ち水蒸気含有量の少ない酸素含有雰囲気(参考として、図1に、空気中の飽和水蒸気含有量(体積%)と露点温度(℃)の関係を示す)を昇温過程の雰囲気に適用することで、上記の通り焼成工程の初期段階に生じる導電性酸化物の結晶化、並びに結晶成長が抑制されて、導電性酸化物微粒子が緻密に充填した本発明の導電性酸化物微粒子層の膜構造を得ることができる。なお、導電性酸化物微粒子が緻密に充填するメカニズムに関しては、必ずしも明らかではないが、例えば、以下のように考えることができる。
すなわち、少なくとも酸化焼成工程の昇温過程で生じた導電性酸化物の結晶化が起こる時点(酸化焼成工程の初期段階;本発明では通常300〜330℃程度)までは上記アモルファス状態の導電性酸化物間にバインダーが均一に介在した膜構造が維持され、この膜構造が有機物質であるバインダーの作用で柔軟性を有して基板と垂直方向への膜の収縮(緻密化)を可能とするため、露点温度の低い空気雰囲気下で昇温して焼成した場合は、バインダーが消失するぎりぎりの加熱温度まで(約300〜350℃程度まで)導電性酸化物の結晶化が抑制されて上記収縮可能な膜構造を取ることができ、膜の緻密化につながるものと推測される。
なお、上述した露点温度の低い、即ち水蒸気含有量の少ない空気雰囲気下において導電性酸化物の結晶化、並びに結晶成長が抑制される理由は明らかではないが、例えば、空気雰囲気中の水蒸気が、(1)導電性酸化物間に介在しているバインダー成分の熱分解・燃焼(酸化)の促進作用を有する、(2)導電性酸化物自体の結晶化、並びに結晶成長を促進する作用を有する、等が考えられる。
具体的には、先ず露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気ガスを供給しながら導電性酸化物の結晶化が起こる温度以上(通常300〜330℃以上)に昇温して焼成を行い、膜の緻密化を図る。この膜緻密化後に、必要に応じて、次に露点温度0℃以上の酸素含有雰囲気ガスを供給しながら焼成し、導電性酸化物微粒子同士の結晶成長を促進させることもできる。
上記酸素含有雰囲気ガスは、空気、あるいは、酸素と中性・不活性ガス(窒素、アルゴン等)の混合ガスが挙げられるが、安価で入手しやすい空気が好ましい。
上記露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気ガスの露点温度は、好ましくは−15℃以下、より好ましくは−20℃以下、更に好ましくは−30℃以下、最も好ましくは−40℃以下である。
また、上記露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気下で導電性酸化物の結晶化が起こる温度以上(本発明では通常300〜330℃以上)に昇温する焼成において、その露点温度が−10℃を越えると、導電性酸化物微粒子からなる導電性酸化物微粒子層の形成過程において、焼成の初期段階でのバインダーがまだ多く残留している段階で水蒸気が導電性酸化物の結晶化、並びに結晶成長を促進して前述のアモルファス状態の導電性酸化物間にバインダーが均一に介在した膜垂直方向に収縮可能な膜構造が破壊されて、導電性酸化物微粒子同士が固着し動けなくなるため、膜の緻密化が阻害され、透明導電膜の導電性や膜強度が低下するため、好ましくない。
さらに、膜緻密化後に必要に応じて行なう、結晶化促進のための露点温度0℃以上の酸素含有雰囲気ガス中での焼成において、上記露点温度0℃以上の酸素含有雰囲気ガスの露点温度は、好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上である。上記露点温度が0℃以上だと、水蒸気が緻密化した膜の導電性酸化物微粒子同士の結晶成長を促進するため、膜の緻密化と結晶成長を両立できて、透明導電膜の導電性や膜強度を高めることができるからである。
上記露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気下での導電性酸化物の結晶化が起こる温度以上(本発明では通常300〜330℃以上)に昇温する焼成は、その昇温で到達する焼成温度(ピーク温度)が300℃以上、より好ましくは350℃以上、更に好ましくは400℃以上の温度で5〜120分間、より好ましくは15〜60分間である。
300℃よりも低い焼成温度(特に270℃未満の焼成温度)では、通常、乾燥塗布膜に含まれる有機成分(有機インジウム化合物、ドーパント用有機金属化合物、バインダー等に含まれる有機成分)の熱分解或いは燃焼が不十分となり易く、それら有機成分が透明導電膜に残留して導電性酸化物の結晶化が起こらず、膜の緻密化も不十分となって、膜の透明性や導電性を悪化させる恐れがあるため好ましいとは言えない。ただし、焼成時間を例えば60分間程度以上と長くした場合や、最終的な透明導電膜の膜厚が130nm程度以下と薄い場合等では、例えば270℃程度でも上記有機成分の熱分解或いは燃焼が進行するため、膜の透明性や導電性が悪化しない場合もある。したがって、一般的には300℃以上の焼成温度が好ましいが、各工程の条件(膜厚、焼成時間等)によっては、270℃程度の焼成温度も適用可能である。
また、酸化焼成工程での焼成温度の上限は特に限定されないが、酸化焼成工程で用いる焼成装置の種類や耐熱性基板の耐熱性に影響受け、安価で最も一般的に用いられるソーダライムガラス基板では、歪点が約510℃であるので、この温度よりも低い温度で焼成することが好ましい。ただし、ソーダライムガラス基板をより耐熱性の高い耐熱性基材上で焼成すれば、基板の歪みを比較的少なくできるため、約600℃程度での焼成も可能である。もちろん、石英ガラス基板、無アルカリガラス基板、高歪点ガラス基板等のより耐熱性が高いガラス基板を用いる場合は、更に高い焼成温度が適用できる。
酸化焼成工程で用いる焼成装置には、ホットプレート、熱風循環焼成炉、遠赤外線加熱装置等が挙げられるが、これらに限定される訳ではない。ただし、本発明を実施するためには露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気を用いる必要があるため、上記焼成装置には焼成雰囲気の制御が可能であることが求められる。
なお、酸化焼成工程の昇温過程における導電性酸化物の結晶化が起こる温度以上までの昇温速度については特に制約はないが、5〜40℃/分の範囲、より一般的には10〜30℃/分である。5℃/分より昇温速度が遅いと昇温に時間がかかりすぎて効率が悪くなり、一方40℃/分を越える昇温速度を上記焼成装置で実現しようとすると、ヒーター容量が大きくなりすぎて現実的でない。
また、上記露点温度0℃以上の酸素含有雰囲気下での焼成の焼成条件も、上記露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気下で、導電性酸化物の結晶化が起こる温度以上に昇温する焼成の通常の焼成条件(通常300〜330℃以上)と同様に、焼成温度は300℃以上、より好ましくは350℃以上、更に好ましくは400℃以上の温度で5〜120分間、より好ましくは15〜60分間である。
300℃よりも低い焼成温度(特に270℃未満の焼成温度)では、前述と同様に、通常、導電性酸化物微粒子同士の結晶化促進効果が不十分となり易く、導電性や膜強度の大幅な向上が期待しにくいため好ましいとは言えない。
(d)還元焼成工程
還元焼成工程では、上記酸化焼成工程で得られたドーパント用金属化合物を含み酸化インジウムを主成分とする導電性酸化物微粒子が稠密に充填した導電性酸化物微粒子膜を、少なくとも水素0.1体積%以上と水蒸気を含有し、かつ露点温度が−55℃〜30℃である還元雰囲気下で300℃以上に加熱処理(焼成)することで、過還元(過度な酸素空孔の形成)による透過率の低下や膜強度の悪化を防止し、形成される透明導電膜の膜強度や透明性を損なうことなく、適度に酸素空孔を導入して導電性を高めた(キャリア密度を増加させた)緻密な透明導電膜を得ている。
この還元焼成工程は、膜中に形成された酸素空孔が導電性酸化物微粒子の成分元素(インジウム、酸素等)を拡散しやすくするため、上記露点温度0℃以上の酸素含有雰囲気下の酸化焼成による導電性酸化物微粒子同士の結晶成長促進よりも、より強い促進効果を有しており、上記透明導電膜の導電性向上だけでなく、導電性の安定化(経時変化抑制)や膜強度の向上にも有効である。
この還元焼成工程に適用できる還元雰囲気としては、水素と水蒸気を含有する窒素ガスまたは不活性ガス(アルゴン、ヘリウム等)などの混合ガス雰囲気が挙げられる。還元雰囲気中の水素濃度については、0.1体積%以上が良く、好ましくは0.1〜5体積%である。水素濃度が0.1体積%未満であると導電性酸化物微粒子の還元が進まず、十分な酸素空孔を導入できず、導電性が悪化する。また、水素濃度が5体積%よりも高いと、大気に漏洩した場合に爆発する危険があるので好ましいとは言えない。
なお、還元焼成工程では、雰囲気中の水素と導電性酸化物微粒子を構成する酸素が反応し(化学式(1))、導電性酸化物微粒子に酸素空孔が導入される。この化学反応は、水素濃度が高いほど起りやすく、また焼成温度が高いほど起りやすくなるため、還元条件を適正化しなければ酸化インジウムが、例えば低次の酸化物(InO1.5−X:0<X≦0.5)や金属インジウムまで還元されて膜強度や透明性が損なわれてしまう。しかし、還元雰囲気中に水蒸気を微量含有させる、すなわち還元雰囲気の露点温度を−55〜30℃にすると、下記化学式(1)の化学反応が水蒸気量に応じた平衡状態となり、雰囲気中の酸素分圧をある一定の領域に維持して還元雰囲気による過度の還元を防止して、酸化インジウムの還元が一定以上進行することを防止する。その結果、形成される透明導電膜に過度の酸素空孔が形成されなくなって、膜強度の低下を抑制し、かつその透明性を保持することが可能となる。
還元焼成工程での還元条件(温度と時間)については、導電性酸化物微粒子に酸素空孔を適度に導入でき、かつ導電性酸化物微粒子同士の結晶成長をより促進させる300℃以上、好ましくは400℃以上で15〜60分が好ましく、更に好ましくは450℃以上で15〜60分である。還元温度が300℃未満であると、結晶成長が不十分で抵抗値の経時安定性が低下するので好ましくない。
また、この還元焼成工程での焼成温度の上限は特に限定されないが、還元焼成工程で用いる焼成装置の種類や耐熱基板の耐熱性に影響受ける点は、酸素含有雰囲気下での酸化焼成工程と同様である。
なお、酸化焼成工程と還元焼成工程は、連続して行うことができる。
例えば、乾燥塗布膜が形成された耐熱性基板を、露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気下で基板の温度を300℃以上に昇温、保持した後、その温度を保ったまま、雰囲気だけを露点温度−55〜30℃の還元雰囲気に切替えればよい。
酸化焼成工程で、酸素含有雰囲気の露点温度を変えて焼成を行う場合も同様であり、(1)露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気下で、導電性酸化物の結晶化が起こる温度以上に昇温する焼成、(2)露点温度0℃以上の酸素含有雰囲気下の焼成、(3)露点温度−55〜30℃の還元雰囲気下の焼成は、連続して行うことができる。
例えば、乾燥塗布膜が形成された耐熱性基板を300℃以上に昇温、保持した後、その温度を保ったまま、雰囲気だけを露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気から露点温度0℃以上の酸素含有雰囲気((1)→(2))、露点温度0℃以上の酸素含有雰囲気から露点温度−55〜30℃の還元雰囲気((2)→(3))に切替えればよい。
前述のように、還元性雰囲気下での焼成は、前述の導電性酸化物に酸素空孔を形成してキャリア濃度を増加させる働きに加え、酸素空孔の存在により透明導電膜の構成元素を移動し易くして結晶成長を促進する働きも有しており、透明導電膜の強度や導電性の一層の向上に寄与している。
次に、本発明の透明導電膜、透明導電基板が適用されるデバイスについて説明する。
このようなデバイスとしては、上述したようにLED素子、エレクトロルミネッセンスランプ(エレクトロルミネッセンス素子)、フィールドエミッションランプ等の発光デバイス、太陽電池等の発電デバイス、液晶ディスプレイ(液晶素子)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(エレクトロルミネッセンス素子)、プラズマディスプレイ、電子ペーパー素子等の表示デバイス、及びタッチパネル等の入力デバイス等が挙げられ、本発明の透明導電膜、透明導電基板はこれらの透明電極に好適である。
以下、幾つかのデバイスについて説明する。
ここで、発光デバイスとしての上記エレクトロルミネッセンス素子には有機発光材料を用いる有機EL素子と無機発光材料を用いる無機EL素子があるが、近年では有機EL素子が脚光を浴びている。
この有機EL素子は、液晶表示素子と違って自発光素子であり、低電圧駆動で高輝度が得られるためディスプレイ等の表示装置として期待されている。有機EL素子にも低分子型と高分子型があり、例えば高分子型の構造は、アノード電極層としての透明導電膜上に、ポリチオフェン誘導体等の導電性高分子から成る正孔注入層(ホール注入層)、有機発光層(塗布により形成される高分子発光層)、カソード電極層[発光層への電子注入性の良い、仕事関数の低いマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)等の金属層]、ガスバリアコーティング層(あるいは金属やガラスでの封止処理)を順次形成したものである。上記ガスバリアコーティング層は、有機EL素子の劣化を防止するために必要とされ、酸素バリア及び水蒸気バリアが求められるが、例えば、水蒸気に関しては、水蒸気透過率=10−5g/m/day程度以下の非常に高いバリア性能が要求されており、有機EL素子(デバイス)内部は外部から完全に封止された構造となっている。
なお、有機EL素子の透明電極としての透明導電膜には高い膜平坦性(例えば、中心線平均粗(Ra:Roughness average)=3nm以下、最大高さ(Rmax:Roughness maximum)=30nm以下)が求められる。本発明で得られる透明導電膜は、基板に塗布された透明導電膜形成用塗布液が有する極めて平坦な液体表面が、乾燥塗布膜の表面を経て、最終的に無機膜の表面となること、及び、露点温度の低い、即ち水蒸気含有量の少ない酸素含有雰囲気下で加熱処理して上記無機膜を緻密化し、表面の凹凸形成を抑制することで、非常に高い膜平坦性(例えば、中心線平均粗Ra=0.5〜2.0nm、最大高さRmax=5〜30nm)を有しており、上記透明導電膜に好適である。
発電デバイスとしての太陽電池は、太陽光線を電気エネルギーに変換する発電素子で、また太陽電池はシリコン太陽電池(薄膜型、微結晶型、結晶型)、CIS太陽電池(銅−インジウム−セレン薄膜)、CIGS太陽電池(銅−インジウム−ガリウム−セレン薄膜)、色素増感型太陽電池等があり、例えば、シリコン太陽電池は、透明基板上に透明電極、半導体発電層(シリコン)、金属電極を順次形成したものである。
表示デバイスとしての液晶素子は、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)およびPC(Personal Computer)等のディスプレイに広く用いられている非発光型の電子表示素子であり、単純マトリクス方式(パッシブマトリックス方式)とアクティブマトリクス方式がある。画質や応答スピードの点ではアクティブマトリクス方式が優れている。その基本構造は、液晶を透明電極(本発明の透明導電膜が対応する)で挟み込み、電圧駆動で液晶分子を配向させて表示を行う構造体で、実際の素子は、透明電極に加え、カラーフィルター、位相差フィルム、偏光フィルム等を更に積層して用いられている。
また、別のタイプの液晶素子には、窓等の光シャッター等に用いられている高分子分散型液晶素子(以下PDLC素子と略称)やポリマーネットワーク液晶素子(以下PNLC素子と略称)も含まれる。いずれもその基本構造は、上述のように、液晶層を電極(少なくとも一方は透明電極で、本発明の透明導電膜が対応する)で挟み込み、電圧駆動で液晶分子を配向させて、液晶層の透明/不透明の外観変化を生じさせる構造体であるが、上記液晶表示素子と異なり、実際の素子において、位相差フィルム、偏光フィルムを必要とせず、素子の構造を単純にできるという特徴がある。
ところで、PDLC素子は、高分子樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化した液晶が分散した構造を採り、一方PNLC素子は、樹脂の網目状ネットワークの網目の部分に液晶が充填した構造を採っている。一般には、PDLC素子は液晶層の樹脂含有割合が高いため数十V以上(例えば、80V程度)の交流駆動電圧が必要なのに対し、液晶層の樹脂含有割合を低くできるPNLC素子は数〜15V程度の交流電圧で駆動できる特徴がある。
なお、上記液晶素子の表示安定性を確保するためには、液晶への水蒸気の混入を防止する必要があり、例えば、水蒸気透過率=0.01g/m/day以下が要求されており、液晶素子(デバイス)内部は外部から完全に封止された構造となっている。
表示デバイスとしての電子ペーパー素子は、自らは発光しない非発光型の電子表示素子であり、電源を切っても表示がそのまま残るメモリ効果を備え、文字表示のためのディスプレイとして期待されている。
この表示方式には、電気泳動法により着色粒子を電極間の液体中を移動させる電気泳動方式、二色性を有する粒子を電場で回転させることにより着色させるツイストボール方式、例えばコレステリック液晶を透明電極で挟み込んで表示を行う液晶方式、着色粒子(トナー)や電子粉流体(Quick Response Liquid Powder)を空気中を移動させて表示を行う粉体系方式、電気化学的な酸化・還元作用に基づき発色を行うエレクトロクロミック方式、電気化学的な酸化・還元により金属を析出・溶解させ、これに伴う色の変化で表示を行うエレクトロデポジション方式等が開発されている。これらいずれの方式においても、表示層が透明導電膜(透明電極)と対向電極とではさみ込まれた構造を有している。
なお、これらの各種方式の電子ペーパー素子において、その表示安定性を確保するためには、表示層への水蒸気の混入を防止する必要があり、方式にもよるが、例えば、水蒸気透過率=0.01〜0.1g/m/dayが要求されており、電子ペーパー素子(デバイス)内部は外部から完全に封止された構造となっている。
タッチパネルは、位置入力素子であり、抵抗方式や静電容量方式等がある。
例えば、抵抗方式タッチパネルでは、座標を検出するための座標検出用抵抗膜としての2枚の透明導電基板がドット状の透明スペーサーを介して貼り合わされている構造を有している。透明導電基板には打点耐久性が必要とされ、透明導電膜はクラックが生じないようなフレキシビリティが求められる。また、静電容量方式では解像度のアップにより、透明導電膜の一層の導電性向上が求められている。
以上の発光デバイス、発電デバイス、表示デバイス、入力デバイス等のいずれにおいてもデバイスの特性向上が求められており、本発明に係る透明導電膜、及び透明導電基板をそれらの透明電極に適用することで、デバイスの基本特性が一層向上可能となるために、例えばデバイスの省エネ化や小型化等にも大きく貢献することができるものである。
以下、実施例を用いて本発明を詳細するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[塗布液の作製]
アセチルアセトンインジウム(正式名称:トリス(アセチルアセトナト)インジウム)[In(C](分子量=412.15)36.4g、アセチルアセトン錫(正式名称:ジ−n−ブチル ビス(2,4−ペンタンジオナト)錫)[Sn(C(C](分子量=431.14)3.6g、p−tert−ブチルフェノール42g、二塩基酸エステル(デュポンジャパン製)14g、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)4gを混合し、130℃に加温して90分間攪拌して溶解させ、次に、得られた溶解液25g、シクロヘキサノン25g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)10g、メチルエチルケトン(MEK)40gを混合して均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトンインジウムとアセチルアセトン錫を合計で10重量%、ヒドロキシプロピルセルロースを1重量%含有する透明導電膜形成用塗布液を作製した。
[透明導電膜の作製]
この透明導電膜形成用塗布液を、25℃の無アルカリガラス基板(10cm×10cm×厚み0.7mm;ヘイズ値=0.23%、可視光透過率=92.3%)上の全面にスピンコーティング(500rpm×60sec)した後、熱風乾燥機を用いて180℃で20分間乾燥し、更にホットプレートを用いて露点温度が−30℃の空気雰囲気(3リッター/分供給)において、500℃まで50分かけて昇温(昇温速度:10℃/分)し、500℃で15分間焼成し、そのまま雰囲気を露点温度が−52℃の水蒸気を微量含有する1%水素−99%窒素ガス(3リッター/分供給)に切替えて500℃で更に30分間焼成してドーパント用の酸化錫(SnO)を含んだ酸化インジウム(In)を主成分とする実施例1に係る透明導電膜を作製した。
次に作製した透明導電膜の表面抵抗、ヘイズ値及び可視光透過率、膜厚、結晶子サイズ、鉛筆硬度の諸特性を測定し、その結果を表1に示す。
更に、実施例1の透明導電膜の外観写真を図2に示す。透明導電膜に着色がなく、良好な透明性が得られている。
透明導電膜の表面抵抗は、三菱化学株式会社製の表面抵抗計ロレスタAP(MCP−T400)を用い測定し、Ω/□(オーム・パー・スクエア)で表した。
ヘイズ値と可視光透過率は、日本電色株式会社製のヘイズメーター(NDH5000)を用いJIS K7136(ヘイズ値)、JISK7361−1(透過率)に基づいて測定した。
膜厚は、KLA−TencorCorporation製触針式膜厚計(Alpha−StepIQ)を用いて測定した。
結晶子サイズは、X線回折測定を行い、酸化インジウム(In)の(222)ピークについて、Scherrer法により求めた。
鉛筆硬度は、JIS K5400に基づいて測定した。
なお、可視光透過率及びヘイズ値は、透明導電膜だけの値であり、それぞれ下記数1及び数2により求めた。
実施例1で、露点温度が−30℃の空気雰囲気(3リッター/分供給)において、500℃まで50分かけて昇温(昇温速度:10℃/分)し、500℃で15分間焼成し、そのまま雰囲気を露点温度が−35℃の水蒸気を微量含有する1%水素−99%窒素ガス(3リッター/分供給)に切替えて500℃で更に30分間焼成した以外は実施例1と同様に行い、ドーパント用の酸化錫(SnO)を含んだ酸化インジウム(In)を主成分とする実施例2に係る透明導電膜を作製した。
作製した透明導電膜の諸特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表1に示す。
さらに、実施例2の透明導電膜の外観写真を図3に示す。透明導電膜に着色がなく、良好な透明性が得られている。
実施例1で、露点温度が−30℃の空気雰囲気(3リッター/分供給)において、500℃まで50分かけて昇温(昇温速度:10℃/分)し、500℃で15分間焼成し、そのまま雰囲気を露点温度が−2℃の水蒸気を微量含有する1%水素−99%窒素ガス(3リッター/分供給)に切替えて500℃で更に30分間焼成した以外は実施例1と同様にして成膜を行い、ドーパント用の酸化錫(SnO)を含んだ酸化インジウム(In)を主成分とする実施例3に係る透明導電膜を作製した。
作製した透明導電膜の諸特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表1に示す。
さらに、実施例3の外観写真を図4に示す。透明導電膜に着色がなく、良好な透明性が得られている。
実施例1で、露点温度が−30℃の空気雰囲気(3リッター/分供給)において、500℃まで50分かけて昇温(昇温速度:10℃/分)し、500℃で15分間焼成し、そのまま雰囲気を露点温度が21℃の水蒸気を微量含有する1%水素−99%窒素ガス(3リッター/分供給)に切替えて500℃で更に30分間焼成した以外は実施例1と同様にして成膜を行い、ドーパント用の酸化錫(SnO)を含んだ酸化インジウム(In)を主成分とする実施例4に係る透明導電膜を作製した。
作製した透明導電膜の諸特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表1に示す。
更に、実施例4の透明導電膜の外観写真を図5に示す。透明導電膜に着色がなく、良好な透明性が得られている。
実施例1で、露点温度が−30℃の空気雰囲気(3リッター/分供給)において、450℃まで45分かけて昇温(昇温速度:10℃/分)し、450℃で15分間焼成し、そのまま雰囲気を露点温度が26℃の水蒸気を微量含有する3%水素−97%窒素ガス(3リッター/分供給)に切替えて450℃で更に30分間焼成した以外は実施例1と同様にして成膜を行い、ドーパント用の酸化錫(SnO)を含んだ酸化インジウム(In)を主成分とする実施例5に係る透明導電膜を作製した。
作製した透明導電膜の諸特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表1に示す。
なお、上記−52℃、−35℃、−2℃の各種露点温度を有する還元性雰囲気は、露点温度26℃の還元性雰囲気と露点温度−80℃の還元性雰囲気を、それぞれ所定の流量で供給し、よく混合して得ている。
(比較例1)
実施例1で、露点温度が−52℃の水蒸気を微量含有する1%水素−99%窒素の代わりに、露点温度が−80℃の水蒸気をほとんど含有しない1%水素−99%窒素を用いた以外は実施例1と同様にして成膜を行い、ドーパント用の酸化錫(SnO)を含んだ酸化インジウム(In)を主成分とする比較例1に係る透明導電膜を作製した。
作製した透明導電膜の諸特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表1に示す。
さらに、比較例1の透明導電膜の外観写真を図6に示す。透明導電膜の一部に濃く着色した領域が生じ、その領域では透明性が損なわれていた。なお、表1に示す透明導電膜の透過率の値は、上記濃く着色した領域で測定したものである。
(比較例2)
実施例1で、露点温度が−52℃の水蒸気を微量含有する1%水素−99%窒素の代わりに、露点温度が−60℃の水蒸気を極微量含有する1%水素−99%窒素を用いた以外は実施例1と同様にして成膜を行い、ドーパント用の酸化錫(SnO)を含んだ酸化インジウム(In)を主成分とする比較例2に係る透明導電膜を作製した。
作製した透明導電膜の諸特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表1に示す。
さらに、比較例2の透明導電膜の外観写真を図7に示す。透明導電膜の一部に薄い着色が生じ、その領域では透明性が損なわれていた。なお、表1に示す透明導電膜の透過率の値は、上記薄く着色した領域で測定したものである。
(比較例3)
実施例5で、露点温度が26℃の水蒸気を微量含有する3%水素−97%窒素の代わりに、露点温度が−80℃の水蒸気をほとんど含有しない3%水素−97%窒素を用いた以外は実施例5と同様にして成膜を行い、ドーパント用の酸化錫(SnO)を含んだ酸化インジウム(In)を主成分とする比較例3に係る透明導電膜を作製した。
作製した透明導電膜の諸特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表1に示す。
透明導電膜の一部に極薄い着色が生じ、その領域では透明性が損なわれていた。表1に示す透明導電膜の透過率の値は、上記極薄く着色した領域で測定したものである。
なお、上記−60℃の露点温度を有する還元性雰囲気は、露点温度26℃の還元性雰囲気と露点温度−80℃の還元性雰囲気をそれぞれ所定の流量で供給し、よく混合して得ている。
以上の実施例と比較例を比べる(実施例1〜4と比較例1、2の比較、実施例5と比較例3の比較)と、各実施例では、適度に酸素空孔が導入され過還元(過度な酸素空孔の形成)が防止された、良好な表面抵抗、高い可視光線透過率、高い鉛筆硬度を兼ね備えた緻密な透明導電膜であるのに対して、各比較例では、良好な表面抵抗は得られるものの、過還元(過度な酸素空孔の形成)が生じて、鉛筆硬度が悪化し、かつ可視光線透過率が低下して透明性が損なわれていることがわかる。
本発明による透明導電膜は、安価な各種塗布方法を用いて耐熱性基板上へ形成することが可能であり、得られる透明導電膜は、優れた透明性と高い導電性を兼ね備え、かつ膜強度に優れているため、この透明導電膜を耐熱性基板上に形成した透明導電基板は、LED素子、エレクトロルミネッセンスランプ(エレクトロルミネッセンス素子)、フィールドエミッションランプ等の発光デバイス、太陽電池等の発電デバイス、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(エレクトロルミネッセンス素子)、プラズマディスプレイ、電子ペーパー素子等の表示デバイス、タッチパネル等の入力デバイス等の透明電極等への利用が期待できる。

Claims (10)

  1. 主成分として有機インジウム化合物及びドーパント用有機金属化合物を含有する透明導電膜形成用塗布液を、耐熱性基板上に塗布して塗布膜を形成する塗布工程、前記塗布膜を乾燥して乾燥塗布膜を形成する乾燥工程、前記乾燥塗布膜を酸素含有雰囲気下で焼成して、無機成分である導電性酸化物を主成分とする導電性酸化物微粒子膜を形成する酸化焼成工程、前記酸化焼成工程で得られた導電性酸化物微粒子膜を還元性雰囲気下で焼成して、導電性酸化物に酸素空孔を導入して、その導電性を高める還元焼成工程の各工程を経て形成される、透明導電膜の製造方法であって、
    前記酸化焼成工程が、前記乾燥工程で形成された有機インジウム化合物及びドーパント用有機金属化合物を主成分とする前記乾燥塗布膜を、酸素含有雰囲気下で、少なくとも前記無機成分の結晶化が起こる焼成温度以上まで昇温する焼成を行い、前記乾燥塗布膜に含まれる有機成分を熱分解または燃焼、或いは熱分解並びに燃焼により除去することでドーパント金属化合物を含みインジウム酸化物を主成分とする導電性酸化物微粒子が緻密に充填した導電性酸化物微粒子膜を形成する工程、
    前記還元焼成工程が、前記酸化焼成工程で形成された導電性酸化物微粒子膜を、少なくとも水素0.1体積%以上と水蒸気を含有し、かつ露点温度が−55℃〜30℃である還元雰囲気下で、300℃以上の温度で焼成を行うことを特徴とする透明導電膜の製造方法。
  2. 前記有機インジウム化合物及びドーパント用有機金属化合物の含有割合が、有機インジウム化合物:ドーパント用有機金属化合物のモル比換算で、99.9:0.1〜66.7:33.3の範囲であることを特徴とする請求項1記載の透明導電膜の製造方法。
  3. 前記ドーパント用有機金属化合物が、有機錫化合物、有機チタン化合物、有機ゲルマニウム化合物、有機亜鉛化合物、有機タングステン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機タンタル化合物、有機ニオブ化合物、有機ハフニウム化合物、有機バナジウム化合物のいずれか一種以上であることを特徴とする請求項1または2記載の透明導電膜の製造方法。
  4. 前記酸素含有雰囲気の露点温度が、−10℃以下であることを特徴とする請求項1記載の透明導電膜の製造方法。
  5. 前記有機インジウム化合物が、アセチルアセトンインジウムであることを特徴とする請求項1または2記載の透明導電膜の製造方法。
  6. 前記塗布工程における透明導電膜形成用塗布液の耐熱性基板上への塗布方法が、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンサ印刷法、スリットコート法、ダイコート法、ドクターブレードコート法、ワイヤーバーコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の透明導電膜の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の透明導電膜の製造方法で得られたことを特徴とする透明導電膜。
  8. 耐熱性基板上に透明導電膜を備える透明導電基板において、
    前記透明導電膜が、請求項7記載の透明導電膜であることを特徴とする透明導電基板。
  9. 透明電極を備えるデバイスにおいて、
    前記透明電極が、請求項8記載の透明導電基板であることを特徴とするデバイス。
  10. 前記デバイスが、発光デバイス、発電デバイス、表示デバイス、入力デバイスから選ばれた1種であることを特徴とする請求項9記載のデバイス。
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