JP2012197215A - 酸化物焼結体、その製造方法およびそれを用いたターゲット - Google Patents

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邦彦 中田
Shohei Hotta
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Abstract

【課題】優れた導電性と化学的耐久性とを兼ね備えた酸化亜鉛系透明導電膜を、成膜方法に拘らず安定に形成し得る酸化物焼結体を提供すること
【解決手段】本発明の酸化物焼結体は、実質的に亜鉛、チタンおよび酸素からなり、5.3g/cm3以上の密度を有し、かつ200mΩ・cm以下の比抵抗を有する。本発明の酸化物焼結体は、好ましくは、亜鉛とチタンとの合計に対するチタンの原子数比Ti/(Zn+Ti)が、0.02を超え0.1以下であり、チタンが、式:TiO2-X(X=0.1〜1)で表される低原子価酸化チタン由来のチタンである。
【選択図】なし

Description

本発明は、スパッタリング法、イオンプレーティング法、パルスレーザーデポジション(PLD)法、エレクトロンビーム(EB)蒸着法などによる酸化亜鉛系透明導電膜の形成に有用な酸化物焼結体、その製造方法、およびそれを用いたターゲットに関する。
導電性と光透過性とを兼ね備えた透明導電膜は、従来、太陽電池、液晶表示素子、その他各種受光素子における電極などとして利用されているほか、自動車窓や建築用の熱線反射膜、帯電防止膜、冷凍ショーケース等における防曇用透明発熱体など、幅広い用途に利用されている。特に、低抵抗で導電性に優れた透明導電膜は、太陽電池や、液晶、有機エレクトロルミネッセンス、無機エレクトロルミネッセンスなどの液晶表示素子や、タッチパネルなどに好適であることが知られている。
従来、透明導電膜としては、例えば、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)膜やフッ素ドープ酸化スズ(FTO)膜などの酸化スズ(SnO2)系の薄膜;アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)膜やガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)膜などの酸化亜鉛(ZnO)系の薄膜;そしてスズドープ酸化インジウム(ITO:Indium Tin Oxide)膜などの酸化インジウム(In23)系の薄膜が知られている。中でも、最も工業的に利用されているのは酸化インジウム系の透明導電膜であり、とりわけITO膜は、低抵抗で導電性に優れることから、幅広く実用化されている。
例えば、ITOのような酸化物の膜をスパッタリング法で形成する際には、ターゲットとしては、一般に、膜を構成する金属元素からなる合金ターゲット(ITO膜の場合にはIn−Sn合金)か、または膜を構成する金属元素を含む酸化物を焼結もしくは混合してなる酸化物ターゲット(ITO膜の場合にはIn−Sn−Oからなる焼結体や混合体)が用いられる。ただし、合金ターゲットを用いると、形成される膜中の酸素は全て雰囲気中の酸素ガスから供給されることになるため、雰囲気中の酸素ガス量が変動しやすくなる。その結果、雰囲気中の酸素ガス量に依存する成膜速度や得られる膜の特性(比抵抗、透過率)を一定に保つことが困難になる場合がある。他方、酸化物ターゲットを用いた場合には、膜に供給される酸素の一部はターゲット自体から供給され、不足分のみが雰囲気中の酸素ガスから供給されることになるので、雰囲気中の酸素ガス量の変動は、合金ターゲットを用いる場合に比べ抑えることができ、その結果、一定の膜厚を有し一定の膜特性を有する透明導電膜を容易に製造することが可能となる。したがって、工業的に用いるターゲットとしては、酸化物ターゲット(すなわち酸化物焼結体または酸化物混合体)が用いられている。
ところで、ITO膜などの酸化インジウム系の透明導電膜は、その必須原料であるIn(インジウム)が、希少金属であるため高価で且つ資源枯渇のおそれがあり、しかも毒性を有し環境や人体に対して悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、近年、ITO膜に代替し得る工業的に汎用可能な透明導電膜が要望されている。そのような中、スパッタリング法による工業的製造も可能である酸化亜鉛系透明導電膜が注目されており、その導電性能を高めるべく研究が進められている。具体的には、非特許文献1では、導電性を高めるべくZnOに種々のドーパントをドープさせる試みが報告されている。
しかし、TiO2をドープした酸化物ターゲットは、比抵抗が高いため、絶縁物に使用されるRF(高周波)スパッタリングのみに適用され、低抵抗の導電体に適用することが可能なDC(直流)スパッタリングには適用することができない。また、導電体であるが抵抗が高めの焼結体をDCスパッタリングに適用した場合、投入電力が著しく低下し、放電が不安定で全く連続運転することができない。生産効率の観点から、量産性に優れているDCスパッタリングにて成膜することが可能なターゲットが求められている。
月刊ディスプレイ、1999年9月号、p10〜「ZnO系透明導電膜の動向」
本発明の課題は、優れた導電性と化学的耐久性とを兼ね備えた酸化亜鉛系透明導電膜を、成膜方法に拘らず安定に形成し得る酸化物焼結体を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)実質的に亜鉛、チタンおよび酸素からなり、5.3g/cm3以上の密度を有し、かつ200mΩ・cm以下の比抵抗を有することを特徴とする、酸化物焼結体。
(2)亜鉛とチタンとの合計に対するチタンの原子数比Ti/(Zn+Ti)が、0.02を超え0.1以下であることを特徴とする、(1)に記載の酸化物焼結体。
(3)前記チタンが、式:TiO2-X(X=0.1〜1)で表される低原子価酸化チタン由来のチタンである、(1)または(2)に記載の酸化物焼結体。
(4)(1)〜(3)のいずれかの項に記載の酸化物焼結体を製造する方法であって、
以下の(A)または(B)を含む原料粉末を成形する工程、および
得られた成形体を、真空中、還元雰囲気または不活性雰囲気中にて600〜1500℃で焼結する工程、
を含むことを特徴とする、酸化物焼結体の製造方法:
(A)酸化チタン粉と酸化亜鉛粉との混合粉、
(B)酸化チタン粉と水酸化亜鉛粉との混合粉。
(5)(1)〜(3)のいずれかの項に記載の酸化物焼結体を製造する方法であって、
以下の(A)または(B)を含む原料粉末を成形する工程、および
得られた成形体を、真空中、還元雰囲気中または不活性雰囲気中にて600〜1500℃で加圧焼結する工程、
を含むことを特徴とする、酸化物焼結体の製造方法:
(A)酸化チタン粉と酸化亜鉛粉との混合粉、
(B)酸化チタン粉と水酸化亜鉛粉との混合粉。
(6)(1)〜(3)のいずれかの項に記載の酸化物焼結体を製造する方法であって、
以下の(C)および/または(D)を含む原料粉末を成形する工程、
得られた成形体を、大気雰囲気中または酸化雰囲気中にて600〜1500℃で焼結する工程、および
得られた焼結体を、不活性雰囲気中、真空中または還元雰囲気中にてアニール処理する工程、
を含むことを特徴とする、酸化物焼結体の製造方法:
(C)酸化チタン粉と酸化亜鉛粉との混合粉もしくは酸化チタン粉と水酸化亜鉛粉との混合粉、
(D)チタン酸亜鉛化合物粉。
(7)(1)〜(3)のいずれかの項に記載の酸化物焼結体を製造する方法であって、
以下の(C)および/または(D)を含む原料粉末を成形する工程、
得られた成形体を、大気雰囲気中または酸化雰囲気中にて600〜1500℃で加圧焼結する工程、および
得られた焼結体を、不活性雰囲気中、真空中または還元雰囲気中にてアニール処理する工程、
を含むことを特徴とする、酸化物焼結体の製造方法:
(C)酸化チタン粉と酸化亜鉛粉との混合粉もしくは酸化チタン粉と水酸化亜鉛粉との混合粉、
(D)チタン酸亜鉛化合物粉。
(8)前記加圧焼結が、ホットプレス法で行われる、(5)または(7)に記載の方法。
(9)前記酸化チタン粉が、式:TiO2-X(X=0.1〜1)で表される低原子価酸化チタンの粉末である、(4)〜(8)のいずれかの項に記載の方法。
(10)前記アニール処理が、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素および水素からなる群より選ばれる少なくとも1種の雰囲気中にて行われる、(6)〜(9)のいずれかの項に記載方法。
(11)(1)〜(3)のいずれかの項に記載の酸化物焼結体を加工して得られることを特徴とする、ターゲット。
(12)スパッタリング法による成膜に用いられる、(11)に記載のターゲット。
本発明によれば、酸化物焼結体が低抵抗かつ高密度であるため、優れた導電性と化学的耐久性とを兼ね備えた酸化亜鉛系透明導電膜を、成膜方法に拘らず安定に形成し得るという効果が得られる。特に、酸化亜鉛系透明導電膜形成用のDCスパッタリングターゲットとして極めて優れた性能を有している。さらに、このようにして形成された透明導電膜は、希少金属であり毒性を有するインジウムを必須としないという利点も有するので、工業的に極めて有用である。
(酸化物焼結体)
本発明の酸化物焼結体は、実質的に亜鉛、チタンおよび酸素からなり、5.3g/cm3以上の密度を有し、かつ200mΩ・cm以下の比抵抗を有する。ここで、「実質的」とは、酸化物焼結体を構成する全原子の99%以上が亜鉛、チタンおよび酸素からなることを意味する。
本発明の酸化物焼結体は、5.3g/cm3以上の密度を有する。酸化物焼結体が5.3g/cm3以上の密度を有する場合、相対密度が95%以上となる。本発明の酸化物焼結体は、好ましくは5.3〜5.6g/cm3、より好ましくは5.5〜5.6g/cm3の密度を有する。
本発明の酸化物焼結体は、200mΩ・cm以下の比抵抗を有する。DCスパッタリング時の成膜速度は、スパッタリングターゲットである酸化物焼結体の比抵抗に依存するため、酸化物焼結体の比抵抗が高い場合、DCスパッタリングで安定に成膜できない可能性がある。したがって、本発明の酸化物焼結体は、比抵抗が200mΩ・cm以下と低いものに特定している。成膜性や生産性を考慮すると、本発明に係る酸化物焼結体の比抵抗は低いほど好ましく、具体的には100mΩ・cm以下であることが好ましく、10mΩ・cm以下であることがより好ましい。
例えば、式:TiO2-X(X=0.1〜1)で表される低原子価酸化チタンが好ましく、
本発明の酸化物焼結体に含まれるチタンは、ドーパントとして作用する。チタン源は特に限定されない。しかし、チタンが、一般的な酸化チタン(IV)(二酸化チタン:TiO2)由来の場合、原料の配合割合や焼結時の条件などにより、焼結体の比抵抗が高くなる(例えば1kΩ・cm以上)おそれがある。このように高い比抵抗を有する焼結体は、DCスパッタリングにて成膜することができない。したがって、本発明の酸化物焼結体に含まれるチタンは、式:TiO2-X(X=0.1〜1)で表される低原子価酸化チタン由来のチタンが好ましい。これらの中でも、3価のチタンからなる酸化チタン(III)(Ti23(X=0.5))および2価のチタンからなる酸化チタン(II)(TiO(X=1))がより好ましく、酸化チタン(III)が特に好ましい。
低原子価酸化チタンとしては、TiO(II)およびTi23(III)のような整数の原子価を有する酸化チタンだけでなく、式:TiO2-X(X=0.1〜1)で表される酸化チタンであれば、Ti35、Ti47、Ti611、Ti59、Ti815なども含む。式:TiO2-X(X=0.1〜1)で表される低原子価酸化チタンは、低原子価酸化チタンの混合物であってもよい。このような低原子価酸化チタンは、通常、二酸化チタン(TiO2)を水素雰囲気などの還元雰囲気にて、還元剤としてカーボンなどを用いて、加熱することによって得られる。水素濃度、還元剤の量、加熱温度などを調節することにより、低原子価酸化チタンの混合物の割合を制御することができる。この低原子価酸化チタンの構造は、X線回折装置(X−Ray Diffraction、 XRD)、X線光電子分光装置(X−ray Photoelectron Spectroscopy、 XPS)などの機器分析によって確認することができる。
本発明の酸化物焼結体においては、好ましくは、亜鉛とチタンとの合計に対するチタンの原子数比Ti/(Zn+Ti)が、0.02を超え0.1以下である。チタンの原子数比Ti/(Zn+Ti)が上記範囲の場合、焼結体の強度が向上し、ターゲットへの加工が容易になる。さらに、形成される導電膜の化学的耐久性、導電性および透明性がより向上する。好ましくは、チタンの原子数比Ti/(Zn+Ti)は0.03〜0.09、より好ましくは、チタンの原子数比Ti/(Zn+Ti)は0.04〜0.08である。
本発明の酸化物焼結体は、酸化亜鉛相とチタン酸亜鉛化合物相とから構成されるか、または、チタン酸亜鉛化合物相で構成されることが好ましい。このように酸化物焼結体中にチタン酸亜鉛化合物相が含まれていると、焼結体自体の強度が増すので、例えばターゲットとして過酷な条件(高電力など)で成膜してもクラックを生じることがない。
チタン酸亜鉛化合物相とは、具体的には、ZnTiO3、Zn2TiO4のほか、これらの亜鉛サイトにチタン元素が固溶されたものや、酸素欠損が生じているものや、Zn/Ti比がこれらの化合物から僅かにずれた非化学量論組成のものも含む。
酸化亜鉛相とは、具体的には、ZnOのほか、これにチタン元素が固溶されたものや、酸素欠損が生じているものや、亜鉛欠損により非化学量論組成となったものも含む。なお、酸化亜鉛相は、通常ウルツ鉱型構造を有する。
本発明の酸化物焼結体は、実質的に酸化チタンの結晶相を含有しないことが好ましい。酸化物焼結体に酸化チタンの結晶相が含まれていると、得られる膜が、比抵抗などの物性にムラがあり均一性に欠けるものとなるおそれがある。上述のように例えば、Ti/(Zn+Ti)を0.1以下の場合、通常、チタンが酸化亜鉛に完全に反応し、酸化物焼結体中に酸化チタン結晶相は生成されにくい。なお、酸化チタンの結晶相とは、具体的には、Ti23やTiO以外にも、これらの結晶にZnなど他の元素が固溶された物質も含む。
本発明の酸化物焼結体を製造する方法は、特に限定されず、例えば、後述する製造方法によって好ましく得られる。
(酸化物焼結体の製造方法)
本発明に係る酸化物焼結体の第1の製造方法(以下、単に「本発明の第1の製造方法」と記載する場合がある)は、以下の(A)または(B)を含む原料粉末を成形する工程、および得られた成形体を、大気雰囲気中、還元雰囲気または不活性雰囲気中にて600〜1500℃で焼結する工程を含む:
(A)酸化チタン粉と酸化亜鉛粉との混合粉、
(B)酸化チタン粉と水酸化亜鉛粉との混合粉。
本発明に係る酸化物焼結体の第2の製造方法(以下、単に「本発明の第2の製造方法」と記載する場合がある)は、以下の(C)および/または(D)を含む原料粉末を成形する工程、得られた成形体を、酸化雰囲気中にて600〜1500℃で焼結する工程、および得られた焼結体を、不活性雰囲気中、真空中または還元雰囲気中にてアニール処理する工程、を含むことを特徴とする、酸化物焼結体の製造方法:
(C)酸化チタン粉と酸化亜鉛粉との混合粉もしくは酸化チタン粉と水酸化亜鉛粉との混合粉、
(D)チタン酸亜鉛化合物粉。
本発明の第1および第2の製造方法において、原料粉末としては、酸化チタン粉と酸化亜鉛粉との混合粉を含む粉末、もしくは酸化チタン粉と水酸化亜鉛粉との混合粉を含む粉末が用いられる。好ましくは、酸化チタン粉と酸化亜鉛粉との混合粉、酸化チタン粉と水酸化亜鉛粉との混合粉が用いられる。さらに、本発明の第2の製造方法では、原料粉末として、チタン酸亜鉛化合物粉を含む粉末を用いてもよい。
例えば、チタン金属粉末に酸化亜鉛粉または水酸化亜鉛粉を組み合わせた粉末や、酸化チタンと亜鉛金属とを組み合わせた粉末を原料粉末としても、酸化物焼結体は得られる。しかし、この場合、酸化物焼結体中にチタンや亜鉛の金属粒が存在しやすくなり、これをターゲットとして成膜すると、成膜中にターゲット表面の金属粒が溶融してターゲットから放出されず、得られる膜の組成とターゲットの組成とが大きく異なる傾向がある。
酸化亜鉛粉としては、通常、ウルツ鉱構造を有するZnOなどの粉末が用いられ、さらにこのZnOを予め還元雰囲気で焼成して酸素欠損を生じさせたものを用いてもよい。また、水酸化亜鉛粉としては、アモルファスでもよく、結晶構造を有するものであってもよい。
酸化チタン粉としては、好ましくは上述の式:TiO2-X(X=0.1〜1)で表される酸化チタンの粉末が用いられ、より好ましくはTi23(III)の粉末が用いられる。なぜなら、Ti23(III)の結晶構造は三方晶であり、通常これと混合する酸化亜鉛は、上記のように六方晶のウルツ鉱構造を有するため、結晶構造の対称性が一致し、固相焼結する際に置換固溶しやすいからである。
原料粉末として用いる化合物(粉)の平均粒径は、それぞれ5μm以下であることが好ましい。
混合粉における各粉の混合割合は、用いる化合物(粉)の種類に応じて、適宜設定され得る。例えば、最終的に得られる酸化物焼結体において、亜鉛とチタンとの合計に対するチタンの原子数比Ti/(Zn+Ti)が、上述の範囲となるように配合されるのが好ましい。その際、亜鉛はチタンに比べて蒸気圧が高く焼結した際に揮散しやすいことを考慮して、所望する酸化物焼結体の目的組成(ZnとTiとの原子数比)よりも、予め亜鉛の量が多くなるように混合割合を設定しておくことが好ましい。具体的には、亜鉛の揮散のしやすさは、焼結する際の雰囲気によって異なり、例えば、酸化亜鉛粉を用いた場合、大気雰囲気や酸化雰囲気では酸化亜鉛粉自体の揮散しか起こらないが、還元雰囲気で焼結すると、酸化亜鉛が還元されて、酸化亜鉛よりもさらに揮散しやすい金属亜鉛となるので、亜鉛の消失量が増すことになるのである(但し、後述のように、一旦焼結した後、還元雰囲気中でアニール処理を施す場合には、アニール処理を施す時点で既に複合酸化物となっているので、亜鉛が揮散しにくい)。したがって、目的組成に対してどの程度亜鉛の量を増やしておくかについては、焼結の雰囲気などを考慮して設定すればよく、例えば、大気雰囲気や酸化雰囲気で焼結する場合には所望する原子数比となる量の1.0〜1.05倍程度、還元雰囲気で焼結する場合には所望する原子数比となる量の1.1〜1.3倍程度とすればよい。なお、原料粉末として用いる化合物(粉)は、それぞれ1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
原料粉末を成形する際の方法は、特に制限されるものではないが、例えば、原料粉末と水系溶媒とを混合し、得られたスラリーを十分に湿式混合によって混合した後、固液分離し、乾燥し、造粒して得られた造粒物を成形すればよい。
湿式混合は、例えば、硬質ZrO2ボールなどを用いた湿式ボールミルや振動ミルにより行えばよく、湿式ボールミルや振動ミルを用いた場合の混合時間は、12〜78時間程度が好ましい。なお、原料粉末をそのまま乾式混合してもよいが、湿式混合の方がより好ましい。固液分離、乾燥および造粒については、それぞれ公知の方法を採用すればよい。
得られた造粒物を成形する際には、例えば、造粒物を型枠に入れ、冷間プレスや冷間静水圧プレスなどの冷間成形機を用いて1ton/cm2以上の圧力をかけて成形することができる。このとき、ホットプレスなどを用いて熱間で成形を行うと、製造コストの面で不利となるとともに、大型焼結体が得にくくなるおそれがある。なお、成形体として造粒物を得る際には、乾燥後、公知の方法で造粒すればよいのであるが、その場合、原料粉末とともにバインダーも混合することが好ましい。バインダーとして、例えば、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、エチルセルロースなどを用いることができる。
得られた成形体の焼結は、不活性雰囲気(窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオンなど)、真空、還元雰囲気(二酸化炭素、水素、アンモニアなど)、大気雰囲気および酸化雰囲気(大気よりも酸素濃度が高い雰囲気)のいずれかの雰囲気中、600〜1500℃で行われる。特に酸化雰囲気(大気よりも酸素濃度が高い雰囲気)中では、1000〜1500℃で行うのが好ましい。大気雰囲気あるいは酸化雰囲気中で焼結した場合、さらに還元雰囲気中でアニール処理を施すようにする。この大気雰囲気中あるいは酸化雰囲気中で焼結した後に施す還元雰囲気中でのアニール処理は、酸化物焼結体に酸素欠損を生じさせ、比抵抗を低下させるために行なうものである。なお、不活性雰囲気中、真空中または還元雰囲気中で焼結した際にも、さらなる比抵抗の低下を所望する場合には、焼結後、アニール処理を施してもよい。
焼結温度が600℃未満であると、焼結が十分に進行しないので、ターゲット密度が低くなり、一方、1500℃を超えると、酸化亜鉛自体が分解して消失してしまうこととなる。上記いずれの雰囲気においても、より好ましくは1000〜1300℃で焼結が行われる。なお、成形体を上記焼結温度まで昇温する際には、昇温速度を、600℃までは5〜10℃/分とし、600℃を超え1500℃までは1〜4℃/分とすることが、焼結密度を均一にするうえで好ましい。
いずれの雰囲気中で焼結する際も、焼結時間(すなわち、焼結温度での保持時間)は、3〜15時間とすることが好ましい。焼結時間が3時間未満であると、焼結密度が不十分となりやすく、得られる酸化物焼結体の強度が低下する傾向があり、一方、15時間を超えると、焼結体の結晶粒成長が著しくなるとともに、空孔の粗大化、ひいては最大空孔径の増大化を招く傾向があり、その結果、焼結密度が低下するおそれがある。
焼結を行う際の方法は特に限定されず、例えば、常圧焼成法、マイクロ波焼結法、ミリ波焼結法などが挙げられる。
さらに、本発明の酸化物焼結体は、上記(A)または(B)からなる原料粉末を、真空中、還元雰囲気中または不活性雰囲気中にて600〜1500℃で加圧焼結して製造してもよい。なお、不活性雰囲気および還元雰囲気については、上述の通りである。
また、後述のアニール処理を施す場合、上記(C)または(D)からなる原料粉末を、大気雰囲気中または酸化雰囲気中にて600〜1500℃で加圧焼結して製造してもよい。
加圧焼結は、通常、型材に原料粉末を入れて行われる。型材の材質としては、金属、黒鉛などが挙げられる。
加圧焼結は、好ましくは20〜150MPa、より好ましくは30〜100MPaの加圧条件下で、好ましくは900〜1400℃、より好ましくは1100〜1200℃の温度条件下で行われる。
焼成時間は、焼成温度、原料粉末の量などによって適宜調整すればよく、好ましくは30分〜4時間、より好ましくは1時間〜2時間程度である。
また、加圧焼結を行う際の方法は特に限定されず、例えば、ホットプレス法、放電プラズマ焼結法、熱間等方圧加圧(HIP)法などが挙げられる。
アニール処理を施す際の雰囲気としては、例えば、不活性雰囲気(窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオンなど)、真空または還元雰囲気(二酸化炭素、水素、アンモニアなど)が挙げられる。アニール処理の方法としては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、水素などの非酸化性ガスを導入しながら常圧で加熱する方法や、真空下(好ましくは、2Pa以下)で加熱する方法などが挙げられる。製造コストの観点から、非酸化性ガスを導入しながら常圧で行う方法が有利である。
アニール温度(加熱温度)は、好ましくは1000〜1400℃、より好ましくは1100〜1300℃である。アニール時間(加熱時間)は、好ましくは7〜15時間、より好ましくは8〜12時間である。アニール温度が1000℃未満の場合、アニール処理による酸素欠損が不十分になるおそれがあり、一方、アニール温度が1400℃を超える場合、亜鉛が揮散しやすくなり、得られる酸化物焼結体の組成(ZnとTiとの原子数比)が所望の比率と異なってしまうおそれがある。
本発明の製造方法により得られた酸化亜鉛焼結体は、上記のように5.3g/cm3以上の密度を有し、かつ200mΩ・cm以下の比抵抗を有する。
(ターゲット)
本発明のターゲットは、各種成膜方法で用いられるターゲットであり、特にスパッタリング法(好ましくは、量産性に優れているDCスパッタリング法)による成膜に用いられるターゲットである。本発明のターゲットは、上述した本発明の酸化物焼結体を、所定の形状および所定の寸法に加工して得られる。
加工方法は、特に制限されず、適宜公知の方法を採用すればよい。例えば、酸化物焼結体に平面研削などを施した後、所定の寸法に切断して支持台に貼着することにより、本発明のターゲットを得ることができる。必要に応じて、複数枚の酸化物焼結体を分割形状に並べて、大面積のターゲット(複合ターゲット)としてもよい。
本発明の酸化物焼結体または本発明のターゲットを用いて形成された透明導電膜は、優れた導電性と化学的耐久性(耐熱性、耐湿性、耐薬品性(耐アルカリ性、耐酸性)など)とを兼ね備えたものである。このような透明導電膜は、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、無機EL(エレクトロルミネセンス)ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパーなどの透明電極;太陽電池の光電変換素子の窓電極;透明タッチパネルなどの入力装置の電極;電磁シールドの電磁遮蔽膜などの用途に好適に用いられる。さらに、本発明の酸化物焼結体または本発明のターゲットを用いて形成された透明導電膜は、透明電波吸収体、紫外線吸収体、あるいは透明半導体デバイスとして、他の金属膜や金属酸化膜と組み合わせて利用することもできる。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例において、焼結体や透明導電膜の比抵抗は、以下の方法により求めた。
<比抵抗>
比抵抗は、抵抗率計(三菱化学(株)製「LORESTA−GP、MCP−T610」)を用いて、四端子四探針法により測定した。詳しくは、サンプルに4本の針状の電極を直線上に置き、外側の二探針間と内側の二探針間とに一定の電流を流し、内側の二探針間に生じる電位差を測定して抵抗を求めた。
(実施例1)
酸化亜鉛粉末(ZnO;和光純薬工業(株)製、特級)および酸化チタン(III)粉末(Ti23;(株)高純度化学研究所製、純度99.99%)を、原子数比でZn:Ti=97:3(Ti/(Zn+Ti)=0.03)となるように配合して混合物を得た。次いで、得られた混合物を金型に入れ、一軸プレスにより成形圧500kg/cm2にて成形し、直径100mm、厚さ5mmの円盤状の成形体を得た。この成形体を常圧(1.01325×102kPa)のアルゴン雰囲気下、1200℃で4時間焼結して、酸化物焼結体(1)を得た。
得られた酸化物焼結体(1)を、エネルギー分散型蛍光X線装置((株)島津製作所製「EDX−700L」)にて分析すると、ZnとTiとの原子数比はZn:Ti=97:3(Ti/(Zn+Ti)=0.03)であった。この焼結体の密度は5.41g/cm3であり、比抵抗は120mΩ・cmであった。
次いで、酸化物焼結体(1)を50mmφの円盤状に加工してターゲットを得、このターゲットを用いてDCスパッタリング法により透明導電膜を成膜し、透明導電基板を得た。すなわち、スパッタリング装置(キャノンアネルバエンジニアリング(株)製「E−200」)内に、透明基材(石英ガラス基板)と得られたターゲットとを設置し、Arガス(純度99.9995%以上、Ar純ガス=5N)を12sccmで導入して、圧力0.5Pa、電力70Wおよび基板温度250℃の条件下でスパッタリングを行い、基板上に500nmの膜厚を有する透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の比抵抗は4.4×10-4Ω・cmであり、低抵抗であった。このように、得られたターゲットは、DCスパッタリングにより十分成膜可能であることがわかった。
(実施例2)
酸化亜鉛粉末および酸化チタン(III)粉末を、原子数比でZn:Ti=94:6(Ti/(Zn+Ti)=0.06)となるように配合したこと以外は、実施例1と同様にして酸化物焼結体(2)を得た。
得られた酸化物焼結体(2)を、実施例1と同様に分析すると、ZnとTiとの原子数比は、Zn:Ti=94:6(Ti/(Zn+Ti)=0.06)であった。酸化物焼結体(2)の密度は5.35g/cm3であり、比抵抗は140mΩ・cmであった。
次いで、酸化物焼結体(2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてターゲットを作製し、実施例1と同様にしてDCスパッタリング法により、基板上に膜厚500nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の比抵抗は5.0×10-4Ω・cmであり、低抵抗であった。このように、得られたターゲットは、DCスパッタリングにより十分成膜可能であることがわかった。
(実施例3)
酸化亜鉛粉末および酸化チタン(III)粉末を、原子数比でZn:Ti=91:9(Ti/(Zn+Ti)=0.09)となるように配合し、焼成温度を1300℃にしたこと以外は、実施例1と同様にして酸化物焼結体(3)を得た。
得られた酸化物焼結体(3)を、実施例1と同様に分析すると、ZnとTiとの原子数比は、Zn:Ti=91:9(Ti/(Zn+Ti)=0.09)であった。酸化物焼結体(3)の密度は5.30g/cm3であり、比抵抗は160mΩ・cmであった。
次いで、酸化物焼結体(3)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてターゲットを作製し、実施例1と同様にしてDCスパッタリング法により、基板上に膜厚500nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の比抵抗は1.5×10-3Ω・cmであり、低抵抗であった。このように、得られたターゲットは、DCスパッタリングにより十分成膜可能であることがわかった。
(実施例4)
実施例1で用いた酸化亜鉛粉末および酸化チタン(III)粉末を、原子数比でZn:Ti=97:3(Ti/(Zn+Ti)=0.03)となるようにボールミルに投入し、微粉末化した。次いで、ボールおよびエタノールを除去し、得られた混合物を黒鉛からなる金型(ダイス)に入れた。黒鉛からなるパンチにて40MPaの圧力で真空加圧し、1000℃にて4時間加熱処理を行い、直径100mmおよび厚さ5mmの円盤型の酸化物焼結体(4)を得た。
得られた酸化物焼結体(4)を、実施例1と同様に分析すると、ZnとTiとの原子数比は、Zn:Ti=97:3(Ti/(Zn+Ti)=0.03)であった。酸化物焼結体(4)の密度は5.57g/cm3であり、比抵抗は80mΩ・cmであった。
次いで、酸化物焼結体(4)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてターゲットを作製し、実施例1と同様にしてDCスパッタリング法により、基板上に膜厚500nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の比抵抗は4.4×10-4Ω・cmであり、低抵抗であった。このように、得られたターゲットは、DCスパッタリングにより十分成膜可能であることがわかった。
(実施例5)
酸化亜鉛粉末および酸化チタン(III)粉末を、原子数比でZn:Ti=94:6(Ti/(Zn+Ti)=0.06)となるように配合したこと以外は、実施例4と同様にして酸化物焼結体(5)を得た。
得られた酸化物焼結体(5)を、実施例1と同様に分析すると、ZnとTiとの原子数比は、Zn:Ti=94:6(Ti/(Zn+Ti)=0.06)であった。酸化物焼結体(5)の密度は5.53g/cm3であり、比抵抗は90mΩ・cmであった。
次いで、酸化物焼結体(5)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてターゲットを作製し、実施例1と同様にしてDCスパッタリング法により、基板上に膜厚500nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の比抵抗は5.0×10-4Ω・cmであり、低抵抗であった。このように、得られたターゲットは、DCスパッタリングにより十分成膜可能であることがわかった。
(実施例6)
酸化亜鉛粉末および酸化チタン(III)粉末を、原子数比でZn:Ti=91:9(Ti/(Zn+Ti)=0.09)となるように配合したこと以外は、実施例4と同様にして酸化物焼結体(6)を得た。
得られた酸化物焼結体(6)を、実施例1と同様に分析すると、ZnとTiとの原子数比は、Zn:Ti=91:9(Ti/(Zn+Ti)=0.09)であった。酸化物焼結体(6)の密度は5.51g/cm3であり、比抵抗は100mΩ・cmであった。
次いで、酸化物焼結体(6)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてターゲットを作製し、実施例1と同様にしてDCスパッタリング法により、基板上に膜厚500nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の比抵抗は1.5×10-3Ω・cmであり、低抵抗であった。このように、得られたターゲットは、DCスパッタリングにより十分成膜可能であることがわかった。
(実施例7)
酸化チタン(III)粉末の代わりに、酸化チタン(II)粉末(TiO;(株)高純度化学研究所製、純度99.99%)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして酸化物焼結体(7)を得た。
得られた酸化物焼結体(7)を、実施例1と同様に分析すると、ZnとTiとの原子数比は、Zn:Ti=97:3(Ti/(Zn+Ti)=0.03)であった。酸化物焼結体(7)の密度は5.57g/cm3であり、比抵抗は64mΩ・cmであった。
次いで、酸化物焼結体(7)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてターゲットを作製し、実施例1と同様にしてDCスパッタリング法により、基板上に膜厚500nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の比抵抗は4.2×10-4Ω・cmであり、低抵抗であった。このように、得られたターゲットは、DCスパッタリングにより十分成膜可能であることがわかった。
(実施例8)
酸化亜鉛粉末および酸化チタン(II)粉末を、原子数比でZn:Ti=94:6(Ti/(Zn+Ti)=0.06)となるように配合したこと以外は、実施例7と同様にして酸化物焼結体(8)を得た。
得られた酸化物焼結体(8)を、実施例1と同様に分析すると、ZnとTiとの原子数比は、Zn:Ti=94:6(Ti/(Zn+Ti)=0.06)であった。酸化物焼結体(8)の密度は5.53g/cm3であり、比抵抗は72mΩ・cmであった。
次いで、酸化物焼結体(8)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてターゲットを作製し、実施例1と同様にしてDCスパッタリング法により、基板上に膜厚500nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の比抵抗は4.8×10-4Ω・cmであり、低抵抗であった。このように、得られたターゲットは、DCスパッタリングにより十分成膜可能であることがわかった。
(実施例9)
酸化亜鉛粉末および酸化チタン(II)粉末を、原子数比でZn:Ti=91:9(Ti/(Zn+Ti)=0.09)となるように配合したこと以外は、実施例7と同様にして酸化物焼結体(9)を得た。
得られた酸化物焼結体(9)を、実施例1と同様に分析すると、ZnとTiとの原子数比は、Zn:Ti=91:9(Ti/(Zn+Ti)=0.09)であった。酸化物焼結体(9)の密度は5.49g/cm3であり、比抵抗は80mΩ・cmであった。
次いで、酸化物焼結体(9)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてターゲットを作製し、実施例1と同様にしてDCスパッタリング法により、基板上に膜厚500nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の比抵抗は1.3×10-3Ω・cmであり、低抵抗であった。このように、得られたターゲットは、DCスパッタリングにより十分成膜可能であることがわかった。
(比較例1)
酸化チタン(III)粉末の代わりに、酸化チタン(IV)粉末(TiO2;和光純薬工業(株)製、純度99.99%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして酸化物焼結体(C1)を得た。
得られた酸化物焼結体(C1)を、実施例1と同様に分析すると、ZnとTiとの原子数比は、Zn:Ti=97:3(Ti/(Zn+Ti)=0.03)であった。酸化物焼結体(C1)の密度は5.38g/cm3であり、比抵抗は6.2KΩ・cmであった。
次いで、酸化物焼結体(C1)を用いて、実施例1と同様にしてターゲットを作製し、実施例1と同様にしてDCスパッタリング法により、透明導電膜の形成を試みた。しかし、得られたターゲット(酸化物焼結体(C1))の抵抗が高いため、成膜することができなかった。このターゲットは、絶縁体のターゲットでも成膜可能なRFスパッタリングであれば成膜できたが、工業生産に適するDCスパッタリングでは、成膜できないことがわかった。
したがって、200mΩ・cmを超える比抵抗を有する酸化物焼結体は、成膜する際の成膜方法が限定される(すなわち、特定の成膜方法しか採用できない)ことがわかる。
(比較例2)
酸化亜鉛粉末および酸化チタン(IV)粉末を、原子数比でZn:Ti=91:9(Ti/(Zn+Ti)=0.09)となるように配合したこと以外は、比較例1と同様にして酸化物焼結体(C2)を得た。
得られた酸化物焼結体(C2)を、実施例1と同様に分析すると、ZnとTiとの原子数比は、Zn:Ti=91:9(Ti/(Zn+Ti)=0.09)であった。酸化物焼結体(C2)の密度は5.30g/cm3であり、比抵抗は測定限界以上(オーバーロード)であり極めて高抵抗であった。
次いで、酸化物焼結体(C2)を用いて、実施例1と同様にしてターゲットを作製し、実施例1と同様にしてDCスパッタリング法により、透明導電膜の形成を試みた。しかし、得られたターゲット(酸化物焼結体(C2))の抵抗が高いため、全く成膜することができなかった。このターゲットは、絶縁体のターゲットでも成膜可能なRFスパッタリングであれば成膜できたが、工業生産に適するDCスパッタリングでは、成膜できないことがわかった。
したがって、200mΩ・cmを超える比抵抗を有する酸化物焼結体は、成膜する際の成膜方法が限定される(すなわち、特定の成膜方法しか採用できない)ことがわかる。
(比較例3)
酸化チタン(III)粉末の代わりに、酸化チタン(IV)粉末を用いたこと以外は、実施例6と同様にして酸化物焼結体(C3)を得た。
得られた酸化物焼結体(C3)を、実施例1と同様に分析すると、ZnとTiとの原子数比は、Zn:Ti=91:9(Ti/(Zn+Ti)=0.09)であった。酸化物焼結体(C3)の密度は5.49g/cm3であり、比抵抗は測定限界以上(オーバーロード)であり極めて高抵抗であった。
次いで、酸化物焼結体(C3)を用いて、実施例1と同様にしてターゲットを作製し、実施例1と同様にしてDCスパッタリング法により、透明導電膜の形成を試みた。しかし、得られたターゲット(酸化物焼結体(C3))の抵抗が高いため、全く成膜することができなかった。このターゲットは、絶縁体のターゲットでも成膜可能なRFスパッタリングであれば成膜できたが、工業生産に適するDCスパッタリングでは、成膜できないことがわかった。
したがって、200mΩ・cmを超える比抵抗を有する酸化物焼結体は、成膜する際の成膜方法が限定される(すなわち、特定の成膜方法しか採用できない)ことがわかる。

Claims (12)

  1. 実質的に亜鉛、チタンおよび酸素からなり、5.3g/cm3以上の密度を有し、かつ200mΩ・cm以下の比抵抗を有することを特徴とする、酸化物焼結体。
  2. 亜鉛とチタンとの合計に対するチタンの原子数比Ti/(Zn+Ti)が、0.02を超え0.1以下であることを特徴とする、請求項1に記載の酸化物焼結体。
  3. 前記チタンが、式:TiO2-X(X=0.1〜1)で表される低原子価酸化チタン由来のチタンである、請求項1または2に記載の酸化物焼結体。
  4. 請求項1〜3のいずれかの項に記載の酸化物焼結体を製造する方法であって、
    以下の(A)または(B)を含む原料粉末を成形する工程、および
    得られた成形体を、真空中、還元雰囲気中または不活性雰囲気中にて600〜1500℃で焼結する工程、
    を含むことを特徴とする、酸化物焼結体の製造方法:
    (A)酸化チタン粉と酸化亜鉛粉との混合粉、
    (B)酸化チタン粉と水酸化亜鉛粉との混合粉。
  5. 請求項1〜3のいずれかの項に記載の酸化物焼結体を製造する方法であって、
    以下の(A)または(B)を含む原料粉末を成形する工程、および
    得られた成形体を、真空中、還元雰囲気中または不活性雰囲気中にて600〜1500℃で加圧焼結する工程、
    を含むことを特徴とする、酸化物焼結体の製造方法:
    (A)酸化チタン粉と酸化亜鉛粉との混合粉、
    (B)酸化チタン粉と水酸化亜鉛粉との混合粉。
  6. 請求項1〜3のいずれかの項に記載の酸化物焼結体を製造する方法であって、
    以下の(C)および/または(D)を含む原料粉末を成形する工程、
    得られた成形体を、大気雰囲気中または酸化雰囲気中にて600〜1500℃で焼結する工程、および
    得られた焼結体を、不活性雰囲気中、真空中または還元雰囲気中にてアニール処理する工程、
    を含むことを特徴とする、酸化物焼結体の製造方法:
    (C)酸化チタン粉と酸化亜鉛粉との混合粉もしくは酸化チタン粉と水酸化亜鉛粉との混合粉、
    (D)チタン酸亜鉛化合物粉。
  7. 請求項1〜3のいずれかの項に記載の酸化物焼結体を製造する方法であって、
    以下の(C)および/または(D)を含む原料粉末を成形する工程、
    得られた成形体を、大気雰囲気中または酸化雰囲気中にて600〜1500℃で加圧焼結する工程、および
    得られた焼結体を、不活性雰囲気中、真空中または還元雰囲気中にてアニール処理する工程、
    を含むことを特徴とする、酸化物焼結体の製造方法:
    (C)酸化チタン粉と酸化亜鉛粉との混合粉もしくは酸化チタン粉と水酸化亜鉛粉との混合粉、
    (D)チタン酸亜鉛化合物粉。
  8. 前記加圧焼結が、ホットプレス法で行われる、請求項5または7に記載の方法。
  9. 前記酸化チタン粉が、式:TiO2-X(X=0.1〜1)で表される低原子価酸化チタンの粉末である、請求項4〜8のいずれかの項に記載の方法。
  10. 前記アニール処理が、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素および水素からなる群より選ばれる少なくとも1種の雰囲気中にて行われる、請求項6〜9のいずれかの項に記載の方法。
  11. 請求項1〜3のいずれかの項に記載の酸化物焼結体を加工して得られることを特徴とする、ターゲット。
  12. スパッタリング法による成膜に用いられる、請求項11に記載のターゲット。
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