JP2012197199A - セレン化銅粒子粉末およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】平均1次粒径が0.1μm以下の銅もしくは銅化合物を含むCu金属源と、セレン、セレン化合物のSe金属源群より選択された1種以上とを混合し、不活性ガス中で、200〜400℃で1次焼成し、さらに還元性ガス中で、200〜400℃で2次焼成して、一般式Cu2Seで表され、平均粒径が50nm以上、0.5μm未満で、炭素量が0.2質量%以下であるセレン化銅粉末とする。
【選択図】図1
Description
同時蒸着法は、高真空の同時蒸着装置により、Cu・In・(Ga)・Se・(S)源を基板上に蒸着させる方法である。この方法で作製されるCIGS系太陽電池は、2010年現在、最も発電効率の良いものとなっている。一方、この方法は、膜厚の均一性の点に難点があり、大面積化への展開が難しいとされている。
セレン化法は、CIGS系光吸収層の構成元素であるCu・In・(Ga)をスパッタ法等で金属薄膜を形成し、その後常圧反応炉内で、金属薄膜をセレン化させてCIGS薄膜を得る方法である。蒸着法と比較し、大面積化が容易であるとされている。一方で、セレン化する際にセレン蒸気や有毒ガスであるセレン化水素を使用する必要があり、安全対策コストが高いことが課題となっている。
セレン化銅(Cu2Se、CuSe)粉末については、原料となるCu粉末、Se粉末を遊星ボールミルを用いたメカノケミカルプロセスで処理することにより得る方法が特許文献1に記載されている。また、Cu粉末とSe粉末を乳鉢で混合し、Ar中450℃で焼成後粉砕し、さらに、Ar中750℃で焼成するプロセスを経ることにより得る方法が特許文献2に開示されている。
そこで、本発明は、微粒子且つ高純度であるセレン化銅粉末およびその製造方法を提供することを目的とする。
本実施形態のセレン化銅粉末は一般式Cu2Seで表され、平均粒径が20nm以上、0.5μm未満で、炭素含有量が0.2質量%以下の化合物である。
なお、本願では、CuxSe(ただし、1.8≦X≦2.2)であるセレン化銅を「Cu2Se」と表現することがある。
まず、本実施形態のセレン化銅粉末の製造方法を説明する。本実施形態のセレン化銅粉末の製造方法は、銅、銅化合物から選択される1種以上である銅源と、セレンまたはセレン化合物から選択される1種以上であるセレン源とを混合し、平均1次粒子径が、0.5μm未満である混合物を得る工程と、前記混合物を不活性ガス中で200〜400℃で1次焼成する工程と、1次焼成した混合物を還元性ガス中で200〜400℃で2次焼成して、セレン化銅を生成する工程とを経ることにより得ることができる。
この方法により、平均粒径が20nm以上、0.5μm未満で、炭素量が0.2質量%以下のセレン化銅粉末(Cu2Se)を得ることができる。
原料となる銅源は、銅粉または、銅化合物粉を使用することができる。好適な銅化合物粉としては、塩基性炭酸銅粉末、炭酸銅粉末、酸化銅粉末が挙げられる。なお、本願で塩基性酸化銅粉末とは、a(CuCO3)・Cu(OH)2(0.5≦a≦4)の組成を有する銅化合物粉末を指す。これらの銅化合物は、後述する粉砕・混合工程により、平均1次粒子径の小さい混合物を容易に得やすい利点がある。これらの銅化合物の粒径は、後の粉砕・混合工程で粉砕機を用いて処理されるため、平均1次粒径を限定するものではないが、粉砕・混合工程の処理効率を考慮すると、平均1次粒径1μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることが更に好ましい。酸化銅粉は、酸化銅(I)粉、酸化銅(II)粉のどちらでも良い。
セレン源は、金属セレン、二酸化セレン粉末等が好適に使用できる。金属セレンを使用する場合、形態は粉末状であることが好ましい。
以下、銅源として塩基性炭酸銅粉末、セレン源として金属セレン粉を用いて、セレン化銅(I)(Cu2Se)を合成する場合を例に説明する。他の銅源、セレン源を使用する場合には、塩基性炭酸銅粉末、金属セレン粉から、使用する銅源、セレン源に読みかえればよい。
塩基性炭酸銅粉末と金属セレン粉末を、モル比(Cu/Se)の値が、1.9〜2.3になるようにそれぞれ秤量する。この時、焼成時に未反応で蒸発するセレンがあることを考慮し、あらかじめ金属セレン粉を余剰に添加することができる。ただし余剰に添加しすぎても不経済なので、セレン源として、金属セレン粉を使用する場合、前記モル比(Cu/Se)を2.0〜2.2とすることが好ましい。
次に、秤量した塩基性炭酸銅粉末と金属セレン粉末を混合し混合物を得る。これらの粉末の平均1次粒子径が十分に小さく、混合物の平均1次粒子径が、0.5μm未満となる場合には、公知の方法で十分に混合すればよい。混合物の平均1次粒子径は、小さい方が好ましいので、以下の方法で粉砕・混合することが好ましい。銅源として、銅粉を用いる場合には、平均1次粒子径が、0.5μm未満である銅粉を用いることが好ましい。
前記粉砕処理の際、塩基性炭酸銅粉末と金属セレン粉末と粉砕メディアにアルコール等の溶媒を添加することができる。溶媒を添加することにより、原料粉末が容器内や粉砕メディアに付着するのを防止でき、後の工程で効率的に混合物を回収することができる。また、塩基性炭酸銅粉末と金属セレン粉末が、より一層均一に混合することができる。
前記溶媒としては、焼成工程で除去しやすく、得られるセレン化銅粉末中の残留炭素の少なくすることができる低級アルコール類がより好適に使用できる。例えば、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール等である。以下、低級アルコールを用いた例について説明する。
また、塩基性炭酸銅粉末だけを先に粉砕し、その後金属セレン粉末を追加し、粉砕・混合しても構わないし、その逆も可である。
つぎに、前記で得られた塩基性炭酸銅および金属セレンを含有するたスラリーから、粉砕メディアを分離・除去する。分離は、粉砕メディアが通過しないふるい等を用いておこなうことができる。スラリー濃度が高い場合には、分離に先立ち、スラリーに溶媒を添加することができ、これにより分離後、粉砕メディアに付着する銅・セレン成分量を低減することができる。
前記焼成前の塩基性炭酸銅と金属セレンの混合物の平均1次粒径は、小さい方が、平均1次粒径の小さいセレン化銅粉末を得る上で有利である。前記混合物の平均1次粒径は、0.5μm未満であることが好ましく、0.2μm未満が更に好ましく、0.08μm以下が一層好ましい。前記平均1次粒径の下限は特にないが、1nm以下とすることは難しい。本願では、平均1次粒径は、以下の方法で求めた値をいう。粉末のTEMまたはSEM写真上で、粒子100個以上の1次粒径を測定し、その平均値を計算することにより求められる。
なお、粒子の1次粒径は、粒子像を二本の平行線で挟んだときの最小間隔を短軸径としたときに、短軸径に直交する二本の平行線で粒子像を挟んだときの間隔の長さ(長軸径)とした。
次に、乾燥後の塩基性炭酸銅と金属セレンの混合物を炉内に設置し、炉内のガスを不活性ガスに置換した後、炉を加熱して、加熱処理をおこなう。前記不活性ガスとしては、Ar、Ne、He等の希ガス類、N2ガスから選択される1種以上のガスを用いることができる。コストを考慮するとN2、Arが好適である。不活性ガスで置換した後の炉内雰囲気は、酸素濃度を5000ppm以下とすることが好ましく、500ppm以下とすることが更に好ましい。200ppm以下とすることが一層好ましい。酸素濃度が高い場合には、2次焼成で粒子表面が十分還元できない場合がある。不活性ガスを炉内に流した状態で、加熱処理をおこなうことができる。
前記加熱温度は、200℃〜400℃とすることが好ましい。200℃未満では、CuとSeが十分反応できないおそれがあり、400℃を超えると粗大粒子が生成するおそれがある。最終的に得られるセレン化銅粉末の平均1次粒子径を小さくするためには、前記加熱温度を200℃〜350℃とすることが更に好ましく、200℃〜300℃とすることが一層好ましい。
1次焼成をおこなった混合物を、炉内に設置し、炉内のガスを還元性ガスに置換した後、炉内で加熱処理をおこなう。還元性ガス中で、200℃以上に加熱することにより、セレン化銅粉末を得る。
また、還元性ガスとしては、水素ガス、水素と不活性ガスの混合ガス、およびこれらに、セレン化水素(H2Se)を混合したガスを使用することができる。還元性ガス中の不活性ガス含有量は、0〜95容量%とすることが好ましい。不活性ガスが95容量%を超える場合、十分に還元反応が進まない場合がある。また、不活性ガスの含有量が少ない場合には、還元反応が急速に進み、粒子間の焼結が起こりやすくなる場合があり、不活性ガス含有量は、30〜90容量%とすることが更に好ましい。
前記加熱温度は、高すぎると焼結が進み、最終的に得られるセレン化銅粉末の平均1次粒子径が大きくなりやすくなる。また、低すぎると粒子表面の還元や銅とセレンの反応が十分に進まない場合があるので、200〜400℃とすることが好ましく、より平均1次粒子径が小さいセレン化銅粉末を容易に得るためには、200℃〜350℃とすることが更に好ましく、250℃〜350℃とすることが一層好ましい。
本実施形態で得られるセレン化銅粉末は、X線回折による結晶構造解析では、Cu2Seによるピークが確認され、Cu2Seの結晶からなる粒子を高濃度で含むことがわかる。
あらかじめ銅含量を測定した塩基性炭酸銅粉末をCuが0.1mol含有するように秤量した。秤量した塩基性炭酸銅粉末と金属セレン粉末0.05molを振動ミル容器内に入れ、更に、ジルコニアビーズ(φ2mm)200gを充填した。続いて、溶媒としてイソプロピルアルコール40gを振動ミル容器に加えた。次に、振動ミル容器を振動ミル(株式会社シー・エム・ティー製試料粉砕機TI−100型)に装填し、振幅5mm、振動数60Hzで60分間粉砕・混合を行った。その後、振動ミル容器の内容物を取り出し、イソプロピルアルコール200gを添加し、混合した。その後、金属ふるいにてビーズを分離した後、ろ過して、ケーキを得た。前記ケーキを空気中、60℃で12時間乾燥した。乾燥後のケーキは、サンプルミルで軽度に解粒を行い、塩基性炭酸銅と金属セレンの混合物を得た。この塩基性炭酸銅と金属セレンの混合物のSEM(走査型電子顕微鏡)写真から、1次粒子100個の粒径を測定し、その平均値を平均1次粒径として求めた結果、平均1次粒径は60nm以下であることが確認された。
この反応処理済み粉末を再度、前記反応炉内に設置した。反応炉内を減圧した後、Arガスで炉内雰囲気を置換する操作を行った後、ArガスおよびH2ガスを、それぞれ流量0.2L/min(0℃換算)で炉内に流し、炉内の酸素濃度を100ppm以下になるようにした。その後、前記ArとH2の混合ガスを流した状態でで、10℃/minで250℃まで昇温し、30分間保持し、2次焼成をおこなった。その後、50℃まで自然冷却し、Cu2Se粉末を得た。得られたCu2Se粉末を試料として、以下の評価をおこなった。
試料に対し、X線回折装置(X-Ray Diffractometer、以下XRD、株式会社島津製作所製LabX XRD−6100)による測定を行った。
図1は、この結果を示す図である。縦軸がピーク強度[cps]であり、横軸が回折角(2θ)[°]を示している。X線回折測定の条件は、50kV、100mAとした。実施例1の試料は、目視およびピーク解析ソフト上では、目的のCu2Se以外の不純物のピークは確認されず、Cu2Seの単相が得られたと判断された。
また、試料について、波長分散型蛍光X線分析(ブルカー・エイエックスエス株式会社製、S8 TIGER)で、試料中の炭素量を測定し、カーボン含有量を質量%で算出した。表1に、この測定結果を示す。
また、試料について、原子吸光分析装置(株式会社日立製作所製 Z6100)で、試料中のNa量を測定し、Na含有量を質量%で算出した。表1に、この測定結果を示す。
ArガスおよびH2ガス雰囲気中の焼成温度を250℃から275℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、Cu2Se粉末を製造し、その評価を行った。結果を表1に示した。
ArガスおよびH2ガス雰囲気中の焼成温度を250℃から300℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、Cu2Se粉末を製造し、その評価を行った。結果を表1に示した。
ArガスおよびH2ガス雰囲気中の焼成温度を250℃から310℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、Cu2Se粉末を製造し、その評価を行った。結果を表1に示した。
銅含量をあらかじめ測定した塩基性炭酸銅粉末をCuを0.1mol含有するように秤量した。秤量した塩基性炭酸銅粉末と金属セレン粉末0.05molを、容量200mLの容器に投入し、手動で、120回上下に振とうすることにより、塩基性炭酸銅と金属セレンの混合物を得た。この混合物の平均1次粒子径を測定したところ、平均1次粒子径は0.71μmであった。1次焼成以降の工程は、実施例1と同様にして、Cu2Se粉末を製造し、その評価を行った。結果を表1に示した。
1次焼成工程をおこなわなかった以外は、比較例1と同様にして、Cu2Se粉末を製造し、その評価を行った。結果を表1に示した。
1次焼成工程をおこなわなかった以外は、実施例1と同様にして、Cu2Se粉末を製造し、その評価を行った。結果を表1に示した。
また、粒子の生成過程で分散剤、還元剤等を使用しないため、含有するC量が0.2質量%以下のセレン化銅粉末が得られた。また、Cu、Seの組成分析結果より、Cu/Se組成比(モル比)の値も、原料となる銅化合物とセレン化合物の量入量のモル比(Cu/Se)である2.0に近い値が得られた。
Claims (10)
- 一般式Cu2Seで表され、平均1次粒径が20nm以上、500nm未満で、炭素含有量が0.2質量%以下であるセレン化銅粒子粉末。
- 前記炭素含有量が0.1質量%未満である、請求項1に記載のセレン化銅粒子粉末。
- 平均1次粒径が20nm以上、200nm未満である、請求項1または2に記載のセレン化銅粒子粉末。
- 1次粒径が2μm未満の粒子からなる、請求項1〜3のいずれかに記載のセレン化銅粒子粉末。
- 銅、銅化合物から選択される1種以上である銅源と、セレン、セレン化合物から選択される1種以上であるセレン源とを混合し、平均1次粒径が0.5μm未満である混合物を得る工程と、前記混合物を不活性ガス中で200〜400℃で1次焼成する工程と、1次焼成した混合物を還元性ガス中で200〜400℃で2次焼成してセレン化銅を生成する工程と、を有するセレン化銅粒子粉末の製造方法。
- 前記混合物を得る工程が、粉砕機内に前記銅源、前記セレン源、粉砕用メディアおよび溶媒を充填し、粉砕を行う、請求項5に記載の製造方法。
- 前記銅源が、塩基性炭酸銅粉末、炭酸銅粉末、酸化銅粉末の群より選択される1種以上である、請求項5または6に記載の製造方法。
- 前記セレン源が、Se粉末、二酸化セレン粉末から選択される1種以上である、請求項5〜7のいずれかに記載の製造方法。
- 前記還元性ガスが、水素ガス、または水素ガスと不活性ガスとの混合ガス、である、請求項5〜8のいずれかに記載の製造方法。
- 前記2次焼成の温度が250〜350℃である、請求項5〜9のいずれかに記載の製造方法。
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