JP2012171951A - ミネラロコルチコイド受容体阻害剤 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、ミネラロコルチコイド受容体阻害剤に関する。
ミネラロコルチコイドの1種であるアルドステロンは、副腎皮質球状層で合成・分泌される。アルドステロンは、腎皮質集合管(腎遠位尿細管)のミネラロコルチコイド受容体と結合することにより、尿細管腔膜に発現する上皮型ナトリウムチャネル(epithelial Na+ channel、以下、本明細書において「ENaC」ともいう)に作用する。
アルドステロンは、血液中のナトリウムイオン及びカリウムイオンのバランスを制御し、体液量や血圧維持に関わる。具体的には、アルドステロンは体液喪失により賦活化され、ENaC数を著明に増大させてナトリウムポンプを活性化することにより、ENaCを介して尿細管細胞に取り込まれたナトリウムイオンを基底膜側のナトリウムポンプで汲み出し、腎皮質集合管細胞へのナトリウムの再吸収を亢進し、尿中へのナトリウムの***を減少させる。また、アルドステロンによるナトリウムの腎皮質集合管細胞内への流入は、尿細管腔側を電気的に陰性へ傾け、カリウムチャンネルを介したカリウムの分泌を促進する。
アルドステロンは上記のような古典的な電解質及び体液量調節作用のほかに、心臓や血管に直接的に作用し、酸化ストレスの増大などの作用機序により、炎症や繊維化を引き起こすことも知られている(例えば、非特許文献1等参照)。
アルドステロンは、血液中のナトリウムイオン及びカリウムイオンのバランスを制御し、体液量や血圧維持に関わる。具体的には、アルドステロンは体液喪失により賦活化され、ENaC数を著明に増大させてナトリウムポンプを活性化することにより、ENaCを介して尿細管細胞に取り込まれたナトリウムイオンを基底膜側のナトリウムポンプで汲み出し、腎皮質集合管細胞へのナトリウムの再吸収を亢進し、尿中へのナトリウムの***を減少させる。また、アルドステロンによるナトリウムの腎皮質集合管細胞内への流入は、尿細管腔側を電気的に陰性へ傾け、カリウムチャンネルを介したカリウムの分泌を促進する。
アルドステロンは上記のような古典的な電解質及び体液量調節作用のほかに、心臓や血管に直接的に作用し、酸化ストレスの増大などの作用機序により、炎症や繊維化を引き起こすことも知られている(例えば、非特許文献1等参照)。
アルドステロンが過剰に分泌され、その結果ENaCの発現が過度に亢進して腎ナトリウムの再吸収が促進されると、高血圧症、腎機能障害等の原発性アルドステロン症が発症する可能性がある(例えば、非特許文献2参照)。さらに、心臓や血管に対する過剰なアルドステロンの直接的な作用により、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患の発症リスクが高まる可能性がある。したがって、アルドステロンが過剰に分泌された場合であっても、アルドステロンの作用に対して阻害活性を有し、前記症状や機能障害の予防・改善に有効な、ミネラロコルチコイド受容体阻害剤が望まれている。
一方、フラボノイドの一種であるルテオリンにはアレルギー抑制作用が知られておりサプリメントに配合され市販されている他に、利尿作用や高血圧抑制作用、肝臓の解毒促進作用等についても報告されている(例えば、特許文献1〜2等参照)。しかし、ルテオリンがミネラロコルチコイド受容体の機能に対して阻害作用があることはこれまで全く知られていない。
Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.,283,p.H1802-10,2002
腎と透析、vol.68、No.6、2010年
本発明は、ミネラロコルチコイド受容体の機能を阻害する作用を有する、ミネラロコルチコイド受容体阻害剤を提供することを課題とする。
本発明者等は上記課題に鑑み、鋭意検討を行った。その結果、ルテオリン(3',4',5,7-テトラヒドロキシ-フラボン)がミネラロコルチコイド受容体の機能を阻害する作用を有し、ENaCの発現を介した腎臓へのナトリウムの再吸収を抑制し、原発性アルドステロン症の予防・改善に有用であることを見い出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成するに至った。
本発明は、下記式(1)で表される化合物又はその配糖体を有効成分として含有するミネラロコルチコイド受容体阻害剤に関する。
また、本発明は、前記式(1)で表される化合物又はその配糖体を有効成分として含有する上皮型ナトリウムチャネル発現抑制剤に関する。
また、本発明は、前記式(1)で表される化合物又はその配糖体を有効成分として含有する腎ナトリウム再吸収抑制剤に関する。
さらに、本発明は、前記式(1)で表される化合物又はその配糖体を有効成分として含有する原発性アルドステロン症の予防・改善剤に関する。
本発明によれば、ミネラロコルチコイド受容体の機能を阻害する作用を有する、ミネラロコルチコイド受容体阻害剤を提供することができる。
本発明のミネラロコルチコイド受容体(mineralocorticoid receptor、以下、本明細書において「MR」ともいう)阻害剤、上皮型ナトリウムチャネル発現抑制剤、腎ナトリウム再吸収抑制剤、及び原発性アルドステロン症の予防・改善剤は、下記式(1)で表される化合物(本明細書において、「ルテオリン」ともいう。)又はその配糖体を有効成分として含有する。
前記式(1)で表される化合物は、抗酸化作用を有することは知られていた。しかし、前記式(1)で表される化合物について、MR阻害作用はこれまで知られておらず、本発明者らが初めて見出したものである。
前記式(1)で表される化合物の配糖体は、ヒトの体内ではそのまま腸からは吸収されず、ヒトの体内で代謝されて式(1)で表される化合物に変換される。本発明において、有効成分として前記式(1)で表される化合物の配糖体を用いることもできる。
本発明に用いることができる前記式(1)で表される化合物の配糖体としては特に制限はないが、下記式(2)で表される化合物が好ましい。
本発明に用いることができる前記式(1)で表される化合物の配糖体としては特に制限はないが、下記式(2)で表される化合物が好ましい。
本発明に用いる、前記式(1)で表される化合物及びその配糖体は、広く一般に入手できる。例えば、通常の合成方法により化学的に合成してもよいし、天然物から公知の抽出方法により抽出してもよい(例えば、特表2002-528540号公報;Biosci.Biotechnol.Biochem.,vol.66,No.4,p.921-924,2002;Biol.Pharm.Bull.,2002,vol.25,No.9,p.1197-1202;Carcinogenesis,2004,vol.25,No.4,p.549-557等参照)。また、本発明では市販のものを用いてもよい。
前記式(1)で表される化合物及びその配糖体を天然物から抽出する場合には、エゴマ、シソ、シュンギク、ピーマン、ミント、ローズマリー、セロリ、リンゴ、カモミール等、具体的には、シソ科シソ(Perilla frutescens var.crispa)の種子又は葉、バラ科リンゴ(Malus pumila Mill)の果実、ナス科ピーマン(Capsicum annuum L.var.grossum)の葉等から抽出することができる。
前記式(1)で表される化合物及びその配糖体を天然物から抽出する場合には、エゴマ、シソ、シュンギク、ピーマン、ミント、ローズマリー、セロリ、リンゴ、カモミール等、具体的には、シソ科シソ(Perilla frutescens var.crispa)の種子又は葉、バラ科リンゴ(Malus pumila Mill)の果実、ナス科ピーマン(Capsicum annuum L.var.grossum)の葉等から抽出することができる。
上記植物から本発明に用いる化合物を抽出する抽出条件としては特に制限はなく、室温(例えば、4〜50℃)又は加温(室温〜溶媒沸点)下にて抽出する、ソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて抽出する、等の通常の方法により抽出することができる。得られる化合物の形態に特に制限はなく、各種溶剤抽出液、及びその希釈液、濃縮液、ペースト並びに乾燥末等の何れの形態でもよい。
本発明に用いる化合物を植物より抽出するために用いられる抽出溶剤としては特に制限はなく、極性溶剤、非極性溶剤のいずれも使用することができる。抽出溶剤の具体例としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状又は環状エーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;スクワラン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;トルエン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;超臨界二酸化炭素;ピリジン類;油脂、ワックス等その他オイル類等の有機溶剤が挙げられる。これらの抽出溶剤は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
植物抽出物から本発明に用いる化合物を精製するため、有機溶剤沈殿、遠心分離、限界濾過膜、高速液体クロマトグラフやカラムクロマトグラフ等の分離技術を用いてもよい。
本発明によれば、MRの阻害、ENaCの発現抑制及び/又は腎ナトリウムの再吸収抑制が治療に有効な組織障害又は病態が予防又は改善される。MRの阻害、ENaCの過剰発現や腎ナトリウムの再吸収亢進により障害を受ける組織は、生体内の任意の組織であり得、例えば、腎臓、血管、心臓、眼、耳、皮膚、上皮、血液、リンパ、食道、消化管、胃、膀胱、小腸、大腸等が挙げられる。組織障害及び病態の例としては、本態性高血圧、二次性高血圧(腎血管性高血圧、体液貯留型高血圧等)、肺高血圧、心不全、狭心症、心筋梗塞、心筋症、心肥大、心筋炎、心筋/血管線維化、心筋虚血、圧受容体障害、不整脈、頻脈、脳血管障害、脳卒中、脳血管性認知症、高血圧性脳症、脳梗塞、脳浮腫、脳循環障害、抹消循環障害、静脈機能不全、動脈硬化、血管肥厚、血栓症、閉塞性末梢循環障害、閉塞性動脈硬化症、閉塞性血栓性血管炎、血小板減少症、赤血球増多症、多臓器不全、血管内皮障害、腎疾患(腎不全、腎炎、糸球体腎炎、IgA腎症、進行性腎症、糸球体硬化症、糖尿病性腎症、血栓性微小血管症、透析合併症、放射線照射による腎症等)、低カリウム血症、鬱血性心不全、心血管再狭窄、アテローム性動脈硬化症、代謝症候群(症候群X)、脂肪過多症(肥満症)、血管炎、原発性及び二次性高アルドステロン症、蛋白尿、ネフロパシー、糖尿病合併症(例えば糖尿病性ネフロパシー)、冠状動脈性心臓病、コラーゲン形成の増大、線維症、高血圧に派生する血管及び冠状動脈組織変化(リモデリング)、内皮細胞機能障害、アルカローシス、筋衰弱、多尿症、多渇症、鬱血性心不全に派生する浮腫、過活動膀胱炎、胃粘膜炎症、副鼻腔炎、眼乾燥症(ドライアイ)、遠位腸閉塞、口腔乾燥症、乾皮症、便秘症、喘息(咳)、慢性気管支炎、中耳炎、嚢胞性線維症、食道炎等が挙げられる(例えば、特表2008−542334号公報、特開2009−51830号公報、J.Pharmacol.Sci.,2001,115,p.1-7等参照)。
本発明のミネラロコルチコイド受容体阻害剤、上皮型ナトリウムチャネル発現抑制剤、腎ナトリウム再吸収抑制剤、及び原発性アルドステロン症の予防・改善剤は、医薬品としてヒト又は動物に投与できる。医薬品として使用する場合は、例えば、錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の経口用固形製剤や、内服液剤、シロップ剤等の経口用液体製剤とすることができる。また、本発明のミネラロコルチコイド受容体阻害剤、上皮型ナトリウムチャネル発現抑制剤、腎ナトリウム再吸収抑制剤、及び原発性アルドステロン症の予防・改善剤は、各種の医薬品や、飲食品、ペットフード等に有効成分として配合することができる。なお、前記飲食品は、一般飲食品の他、アルドステロンの過剰な分泌により発症し、ミネラロコルチコイド受容体の阻害が治療に有効な症状の予防若しくは改善をコンセプトとし、必要に応じてその旨を表示した美容食品、病者用食品、栄養機能食品又は特定保健用食品等の機能性飲食品の形態とすることができる。
なお、経口用固形製剤を調製する場合は、前記式(1)で表される化合物及び/又はその配糖体と、賦形剤、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、乳化剤、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、光沢剤、矯味剤、矯臭剤等とを混合した後、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル等を製造することができる。また、経口用液体製剤を調製する場合は、前記式(1)及び/又はその配糖体で表される化合物と、矯味剤、緩衝剤、安定化剤等とを混合した後、常法により内服液剤、シロップ剤等を製造することができる。
なお、経口用固形製剤を調製する場合は、前記式(1)で表される化合物及び/又はその配糖体と、賦形剤、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、乳化剤、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、光沢剤、矯味剤、矯臭剤等とを混合した後、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル等を製造することができる。また、経口用液体製剤を調製する場合は、前記式(1)及び/又はその配糖体で表される化合物と、矯味剤、緩衝剤、安定化剤等とを混合した後、常法により内服液剤、シロップ剤等を製造することができる。
本発明のミネラロコルチコイド受容体阻害剤、上皮型ナトリウムチャネル発現抑制剤、腎ナトリウム再吸収抑制剤、及び原発性アルドステロン症の予防・改善剤中の前記式(1)で表される化合物及び/又はその配糖体の配合量は、その使用形態により異なるが、医薬品、例えば、錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の経口用固形製剤、内服液剤、シロップ剤等の経口用液体製剤の場合は、0.01〜100質量%が好ましく、0.05〜50質量%がより好ましく、0.5〜20質量%がさらに好ましい。飲食品やペットフード等に配合する場合は、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜2質量%がより好ましく、0.1〜0.5質量%がさらに好ましい。
本発明のミネラロコルチコイド受容体阻害剤、上皮型ナトリウムチャネル発現抑制剤、腎ナトリウム再吸収抑制剤、及び原発性アルドステロン症の予防・改善剤の投与又は摂取量は、個体の状態、体重、性別、年齢、又はその他の要因に従って変動し得る。成人(体重60kg)の1日当りの投与又は摂取量は、0.01〜3gが好ましく、0.05〜1gがより好ましく、0.1〜0.5gがさらに好ましい。本発明のミネラロコルチコイド受容体阻害剤、上皮型ナトリウムチャネル発現抑制剤、腎ナトリウム再吸収抑制剤、及び原発性アルドステロン症の予防・改善剤は、1日に3回、1日に2回、1日1回、2日に1回、3日に1回、1週間に1回、又は任意の期間及び間隔で投与又は摂取され得る。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(1)ヒトMR発現ベクターの作製
ヒト尿細管細胞(商品名:HRPTEpiC、ScienCell Research Laboratories社製)から作製したcDNA溶液15μL、5×PrimeStar GXL Buffer(商品名、タカラバイオ社製)10μL、dNTPs mixture(2.5mM)4μL、PrimeStar GXL DNA Polymerase(商品名、タカラバイオ社製)1μL、公開されているヒトMR遺伝子の塩基配列を参考に合成し下記に示す塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマー(10μM)及びリバースプライマー(10μM)各1μL、並びに水18μLを混合してPCR溶液を調製し、下記の条件下でポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。
<プライマーセット>
フォワードプライマー;5’-CACCATGGAGACCAAAGGCTACCACAGTCTC-3’:配列番号1
リバースプライマー;5’-TCACTTCCGGTGGAAGTAGAGCGG-3’:配列番号2
<PCR条件>
1.変性温度:94℃、3分
2.変性温度:98℃、10秒
3.アニール及び伸長反応温度:70℃、5分
(上記2.〜3.の反応を33サイクル繰り返した。)
ヒト尿細管細胞(商品名:HRPTEpiC、ScienCell Research Laboratories社製)から作製したcDNA溶液15μL、5×PrimeStar GXL Buffer(商品名、タカラバイオ社製)10μL、dNTPs mixture(2.5mM)4μL、PrimeStar GXL DNA Polymerase(商品名、タカラバイオ社製)1μL、公開されているヒトMR遺伝子の塩基配列を参考に合成し下記に示す塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるフォワードプライマー(10μM)及びリバースプライマー(10μM)各1μL、並びに水18μLを混合してPCR溶液を調製し、下記の条件下でポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。
<プライマーセット>
フォワードプライマー;5’-CACCATGGAGACCAAAGGCTACCACAGTCTC-3’:配列番号1
リバースプライマー;5’-TCACTTCCGGTGGAAGTAGAGCGG-3’:配列番号2
<PCR条件>
1.変性温度:94℃、3分
2.変性温度:98℃、10秒
3.アニール及び伸長反応温度:70℃、5分
(上記2.〜3.の反応を33サイクル繰り返した。)
得られたPCR産物をアガロースゲルで電気泳動した後、ヒトMR遺伝子の全長2.9kbのPCR産物をHigh Pure PCR Product Purification Kit(商品名、ロッシュ社製)用いて精製した。
精製したヒトMR遺伝子のPCR産物と、pcDNA3.1 Directional TOPO Expression Kit(商品名、インビトロジェン社製)を用いて、ヒトMR発現用ベクター(pcDNA3.1-hMR)を作製した。
精製したヒトMR遺伝子のPCR産物と、pcDNA3.1 Directional TOPO Expression Kit(商品名、インビトロジェン社製)を用いて、ヒトMR発現用ベクター(pcDNA3.1-hMR)を作製した。
(2)GREレポータージーンベクターの作製
Biochem.Biophys.Res.Commun.,1998,243(3),p.657-63を参考に、グルココルチコイド応答配列(glucocorticoid response element、GRE)を2箇所含み、両端に制限酵素部位(XhoI/HindIII)を有する2本鎖DNAを下記の通り作製した。
下記に示す塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるフォワードオリゴDNA(500μM)5μL、下記に示す塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるリバースオリゴDNA(500μM)5μL、10×K-Buffer(商品名、タカラバイオ社製)5μL、及び水35μLを混合してアニーリング溶液を調製した。
Biochem.Biophys.Res.Commun.,1998,243(3),p.657-63を参考に、グルココルチコイド応答配列(glucocorticoid response element、GRE)を2箇所含み、両端に制限酵素部位(XhoI/HindIII)を有する2本鎖DNAを下記の通り作製した。
下記に示す塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるフォワードオリゴDNA(500μM)5μL、下記に示す塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるリバースオリゴDNA(500μM)5μL、10×K-Buffer(商品名、タカラバイオ社製)5μL、及び水35μLを混合してアニーリング溶液を調製した。
調製したアニーリング溶液に対して99℃で15分間のインキュベートを行った後、5℃ずつ温度を低下させて各温度で5分間のインキュベートを行う工程を繰り返し、最終的にアニーリング溶液を24℃まで低下させ、最後に24℃で15分間のインキュベートを行い、前記オリゴDNA同士をアニーリングさせた。
アニーリング後のオリゴDNA溶液48μL、制限酵素XhoI(タカラバイオ社製)1μL及び制限酵素HindIII(タカラバイオ社製)1μLを混合して酵素反応溶液を調製し、37℃で1時間制限酵素処理を行った。制限酵素処理後の反応溶液をアガロースゲルで電気泳動し、ゲルから制限酵素処理産物を精製し、GREを2箇所含み両端を制限酵素(XhoI/HindIII)で処理した2本鎖DNAを得た。
アニーリング後のオリゴDNA溶液48μL、制限酵素XhoI(タカラバイオ社製)1μL及び制限酵素HindIII(タカラバイオ社製)1μLを混合して酵素反応溶液を調製し、37℃で1時間制限酵素処理を行った。制限酵素処理後の反応溶液をアガロースゲルで電気泳動し、ゲルから制限酵素処理産物を精製し、GREを2箇所含み両端を制限酵素(XhoI/HindIII)で処理した2本鎖DNAを得た。
ルシフェラーゼ遺伝子が組み込まれ、制限酵素XhoI/HindIIIで処理した、レポータージーンアッセイ用ベクターを下記の通り作製した。
ルシフェラーゼ遺伝子が組み込まれたベクターpGL4.27(商品名、1μg/mL、プロメガ社製)3μL、XhoI(タカラバイオ社製)1μL、HindIII(タカラバイオ社製)1μL、10×K-Buffer(商品名、タカラバイオ社製)5μL及び水40μLを混合し、酵素反応溶液を調製し、37℃で1時間制限酵素処理を行った。制限酵素処理後の反応溶液をアガロースゲルで電気泳動し、ゲルから制限酵素処理産物を精製し、制限酵素(XhoI/HindIII)で処理したレポータージーンアッセイ用ベクターを得た。
ルシフェラーゼ遺伝子が組み込まれたベクターpGL4.27(商品名、1μg/mL、プロメガ社製)3μL、XhoI(タカラバイオ社製)1μL、HindIII(タカラバイオ社製)1μL、10×K-Buffer(商品名、タカラバイオ社製)5μL及び水40μLを混合し、酵素反応溶液を調製し、37℃で1時間制限酵素処理を行った。制限酵素処理後の反応溶液をアガロースゲルで電気泳動し、ゲルから制限酵素処理産物を精製し、制限酵素(XhoI/HindIII)で処理したレポータージーンアッセイ用ベクターを得た。
前記2本鎖DNAと前記レポータージーンアッセイ用ベクターとを混合し、レポータージーンアッセイ用ベクター中のルシフェラーゼ遺伝子の上流にGREを挿入した、GREレポータージーンベクターを作製した。
(3)MR阻害活性測定
ヒト腎(HEK293)細胞(American Type Culture Collectionより購入)に、前記(1)で調製したヒトMR発現用ベクター及び前記(2)で調製したGREレポータージーンベクターをトランスフェクションし、1日間培養後に96well白色プレートに播種した。なお、トランスフェクションは、LipofectAMINE 2000 reagent(商品名、インビトロジェン社製)を用いて使用説明書に従って行った。
プレートに細胞が接着した後、1%活性炭処理血清含有培地(牛胎児血清;インビトロジェン社製)に交換してさらに12時間培養し、1nMアルドステロン(和光純薬社製)とともに、スピロノラクトン(100nM、シグマ社製(ポジティブコントロール))、ルテオリン(10μg/mL、シグマアルドリッチ社製)、ミリセチン(10μg/mL、EXTRASYNTHESE社製(比較例))又はケンフェロール(10μg/mL、シグマアルドリッチ社製(比較例))を添加した。
24時間後に、GREレポータージーンの転写活性をBright-Glow(商品名、プロメガ社製)により測定した。結果は、アルドステロン添加群を0%、アルドステロン非添加群を100%としたときの、ルシフェラーゼ活性抑制率(%)をMR阻害活性として示した。
なお、アルドステロン−MR複合体は転写因子として働き、プロモーター領域にGRE(又はGREに似た配列)を持つ標的遺伝子(例えば、ENaCなど)の発現を亢進させる。本実施例では、アルドステロン−MR複合体がGREを認識してGREに結合すると、前記GREレポータージーンベクター中のGREの下流に位置するルシフェラーゼ遺伝子の発現亢進が起こる。前記GREレポータージーンベクターとアルドステロン−MR複合体とを反応させて発光させることにより、ルシフェラーゼの発現亢進を評価する。したがって、発光量の増大が転写活性の増大を意味する。
その結果を表1に示す。
ヒト腎(HEK293)細胞(American Type Culture Collectionより購入)に、前記(1)で調製したヒトMR発現用ベクター及び前記(2)で調製したGREレポータージーンベクターをトランスフェクションし、1日間培養後に96well白色プレートに播種した。なお、トランスフェクションは、LipofectAMINE 2000 reagent(商品名、インビトロジェン社製)を用いて使用説明書に従って行った。
プレートに細胞が接着した後、1%活性炭処理血清含有培地(牛胎児血清;インビトロジェン社製)に交換してさらに12時間培養し、1nMアルドステロン(和光純薬社製)とともに、スピロノラクトン(100nM、シグマ社製(ポジティブコントロール))、ルテオリン(10μg/mL、シグマアルドリッチ社製)、ミリセチン(10μg/mL、EXTRASYNTHESE社製(比較例))又はケンフェロール(10μg/mL、シグマアルドリッチ社製(比較例))を添加した。
24時間後に、GREレポータージーンの転写活性をBright-Glow(商品名、プロメガ社製)により測定した。結果は、アルドステロン添加群を0%、アルドステロン非添加群を100%としたときの、ルシフェラーゼ活性抑制率(%)をMR阻害活性として示した。
なお、アルドステロン−MR複合体は転写因子として働き、プロモーター領域にGRE(又はGREに似た配列)を持つ標的遺伝子(例えば、ENaCなど)の発現を亢進させる。本実施例では、アルドステロン−MR複合体がGREを認識してGREに結合すると、前記GREレポータージーンベクター中のGREの下流に位置するルシフェラーゼ遺伝子の発現亢進が起こる。前記GREレポータージーンベクターとアルドステロン−MR複合体とを反応させて発光させることにより、ルシフェラーゼの発現亢進を評価する。したがって、発光量の増大が転写活性の増大を意味する。
その結果を表1に示す。
表1の結果から明らかなように、アルドステロン存在下でルテオリンを添加することにより転写活性が低下し、ルシフェラーゼの発現が抑制された。また、ルテオリンはアルドステロン非存在下での転写活性には影響を与えなかった。すなわち、式(1)で表される化合物は、アンドステロン存在下でのMRによる標的遺伝子の転写活性を有意に抑制し、MRの機能を阻害する。これに対して、ルテオリンと同じポリフェノール類であるミリセチンやケンフェロールには、MR阻害活性は見られなかった。
上記実施例から明らかなように、式(1)で表される化合物、及びヒトの体内で代謝されて式(1)で表される化合物に変換される式(1)で表される化合物の配糖体は、ミネラロコルチコイド受容体の機能を阻害する作用を有する。したがって、一般式(1)で表される化合物及びその配糖体は、ミネラロコルチコイド受容体の機能を拮抗することにより、ENaCが介する腎ナトリウム再吸収の抑制作用を有し、これに伴う原発性アルドステロン症の予防・改善効果も有する。
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