JP2012153834A - ゴム組成物、ゴム組成物の製造方法及びゴム部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い温度域でも高い制振性能や衝撃吸収性能を示すゴム組成物、ゴム組成物の製造方法及びゴム部品を提供する。
【解決手段】ゴム組成物は、ゴム弾性を有するポリマー100質量部に対し、クマロン樹脂を10質量部以上含有する。クマロン樹脂の含有量は20質量部以上であることが好ましい。ゴム弾性を有するポリマーは天然ゴム、改質天然ゴム又は官能基化天然ゴムが好ましく、エポキシ化天然ゴムが特に好ましい。ゴム部品は、ゴム弾性を有するポリマー100質量部に対し、クマロン樹脂を10質量部以上含有するゴム組成物を用いて得られる。
【選択図】図3
【解決手段】ゴム組成物は、ゴム弾性を有するポリマー100質量部に対し、クマロン樹脂を10質量部以上含有する。クマロン樹脂の含有量は20質量部以上であることが好ましい。ゴム弾性を有するポリマーは天然ゴム、改質天然ゴム又は官能基化天然ゴムが好ましく、エポキシ化天然ゴムが特に好ましい。ゴム部品は、ゴム弾性を有するポリマー100質量部に対し、クマロン樹脂を10質量部以上含有するゴム組成物を用いて得られる。
【選択図】図3
Description
本発明は、ゴム組成物、ゴム組成物の製造方法及びゴム部品に関する。
ゴム部品は各種機械の制振部材、建築物の防音部材、衝撃吸収部材等として広く用いられている。ゴムの制振、防音、衝撃吸収性能はいずれも、振動、衝撃といった力学的エネルギーをゴム弾性と呼ばれるゴム特有の性質と粘性とにより分子運動すなわち熱エネルギーへと変換することにより発揮される。
ゴム弾性や粘性は温度に応じて変化するため、力学的エネルギーを熱エネルギーへと変換する速度や効率も温度に応じて変化する。このため、ある温度域で優れた制振性能を示すゴム部品であっても、他の温度域では十分な制振性能を示さない場合がある。
特許文献1には、架橋可能なポリマー成分100重量部に対し、ガラス転移温度が0℃以上の脂肪族ポリエステル樹脂を0.1〜30重量部、シラノール基を有する無機充填剤を10〜80重量部、金属化合物を0.1〜10重量部及び架橋剤を配合したポリマー組成物を架橋した後、加熱処理をするようにした架橋ポリマー組成物の製造方法が開示されている。この方法によれば、広い温度範囲において優れた制振性、吸音性及び衝撃吸収性を有する架橋性ポリマー組成物が得られると記載されている。
特許文献1が開示する方法は、広い温度範囲において優れた制振性、吸音性及び衝撃吸収性を有する架橋性ポリマー組成物を与えるとされているが、実施例として記載されている反発弾性及び吸音率の値は20℃又は室温での測定値であり、実際に広い温度範囲、特に30℃以上の高い温度域でこれらの特性を評価した結果は記載されていない。また、同文献の発明の詳細な説明(特に段落[0017])に記載されている通り、特許文献1の方法では「Tgが0℃以上の脂肪族ポリエステル樹脂、シラノール基を有する無機充填剤、金属化合物及び架橋剤のすべてを配合すること及び架橋(一次架橋)の後で更に加熱処理することのうち、いずれかの条件が欠けた場合には、優れた制振性、吸音性及び衝撃吸収性を広い温度範囲で確保することができない」。このため、用いる充填剤が限定されるという問題がある。さらに、一次架橋の後更に加熱処理を行わなければならないため、生産性やコストの面でも欠点を有する。
本発明は上記問題に鑑みなされたものであり、従来知られたゴム組成物よりも高い温度域で高い制振性能や衝撃吸収性能を示すゴム組成物、ゴム組成物の製造方法及びゴム部品を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討の結果、一般に天然ゴムや合成ゴムの接着性改良剤又は粘着性付与剤として少量配合されるクマロン樹脂を、通常用いられる量を超えて配合することで、従来の制振ゴムよりも高い温度域において高い制振性や衝撃吸収性を発揮させられること、さらにその温度域を任意に設定できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の観点に係るゴム組成物は、ゴム弾性を有するポリマー100質量部に対しクマロン樹脂を10質量部以上含有する。より好ましくは、ゴム弾性を有するポリマー100質量部に対しクマロン樹脂を20質量部以上含有する。前記ゴム弾性を有するポリマーは天然ゴム、改質天然ゴム又は官能基化天然ゴムであることが好ましい。この中では官能基化天然ゴムがより好ましく、エポキシ化天然ゴムが特に好ましい。
本発明の第2の観点にかかるゴム部品は、本発明の第1の観点にかかるゴム組成物を用いて得られる。
本発明の第3の観点にかかるゴム組成物の製造方法は、所定の温度で用いられるゴム組成物の製造において、天然ゴム、改質天然ゴム又は官能基化天然ゴム100質量部に対し、下記式により決定される量のクマロン樹脂を配合する工程を含む。
クマロン樹脂の配合量(質量部)=(所定の温度(℃)−1.91)/0.356
クマロン樹脂の配合量(質量部)=(所定の温度(℃)−1.91)/0.356
本発明の第4の観点にかかるゴム部品は、本発明の第3の観点に係る方法により製造されたゴム組成物を用いて得られる。
本発明によれば、従来知られたゴム組成物よりも高い温度域で高い制振性能や衝撃吸収性能を示すゴム組成物、ゴム組成物の製造方法及びゴム部品を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係るゴム組成物は、ベースゴム100質量部に対しクマロン樹脂を配合することにより得られる。
ベースゴムはゴム弾性を有するポリマーであればよく、特に限定されないが、クマロン樹脂と部分的に又は完全に相溶可能なポリマーが好ましい。好ましくは天然ゴムであり、より好ましくは官能基化天然ゴム、特に好ましくはエポキシ化天然ゴムである。
クマロン樹脂とは、クマロンと他の芳香族炭化水素、例えばインデン、スチレン等を共重合させて得られる樹脂を指す。商業的には、例えば日塗化学(株)製ニットレジン(登録商標)クマロン等が入手可能である。
本発明の実施形態に係る組成物では、クマロン樹脂はベースゴム100質量部に対し10質量部以上配合される。好ましくは10〜200質量部であり、より好ましくは20〜100質量部である。クマロン樹脂の配合量が10質量部未満の場合、低い反発性を示す温度領域が、衝撃吸収材や制振材として通常用いられる温度より低くなってしまい、十分な性能を得ることができない。一方、クマロン樹脂の配合量がこれより多い場合、衝撃吸収性には影響はないが、組成物の粘着性が高くなるため作業性が低下する場合がある。
従来知られた構成では、通常、クマロン樹脂はゴムの接着性改良剤や粘着性付与剤として、ベースゴム100質量部に対し1〜5質量部配合される。これに対し、本発明者らはベースゴム100質量部に対しクマロン樹脂を10質量部以上という高い割合で配合することで高い温度域における制振性や衝撃吸収性が大きく向上すること、さらに、ベースゴムとクマロン樹脂との配合割合を適切に設定することで、従来の制振ゴムより高い温度域においても高い制振性や衝撃吸収性を発揮させられること、さらにその温度域を用途に応じて任意に設定できることを見出したものである。
本発明に係るゴム組成物は、発明の目的を逸脱しない範囲内で、通常ゴム組成物に用いられるその他の副原料、添加剤等を含むことができる。例えば、充填材、補強材、架橋剤、架橋助剤、酸化防止剤、老化防止剤、加工助剤等を含むことができる。
充填材又は補強材としては、例えば、シリカ、ケイ藻土等のケイ酸、アルミナ、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ベリリウム等の酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、アルミネート水和物等の水酸化物、クレー、タルク、マイカ、アスベスト、ベントナイト、ゼビオライト、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト等のケイ酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩、硫酸塩硫酸カルシウム、亜硫酸塩硫酸カルシウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩、二硫化モリブデン、チタン酸カリウム、炭化ケイ素、リンター、リネン、サイザル木粉、絹、皮革粉、コラーゲン繊維、ビスコース、アセテート等が挙げられる。
架橋剤としては、例えば、硫黄、二塩化硫黄、モルホリンジスルフィド等の硫黄系架橋剤、有機過酸化物、金属酸化物等の非硫黄系架橋剤等が挙げられる。
架橋助剤としては、例えば、チウラム化合物、チアゾール化合物、スルフェンアミド化合物、スルフィド化合物、チオ尿素化合物等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、ジオクチル化ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系酸化防止剤、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等のp−フェニレンジアミン系酸化防止剤等が挙げられる。
老化防止剤としては、例えば、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N,N′−ジナフチル−p−フェニレンジアミン(DNPD)、N−イソプロピル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン(IPPD)、スチレン化フェノール(SP)等が挙げられる。
加工助剤としては、例えば、フタル酸エステル、ジアリルフタレート、アジピン酸エステル、脂肪酸エステル、トリメリット酸エステル等の可塑剤、脂肪酸、トール油等の軟化剤、ロジン、テルペン系樹脂、アルキルフェノール・アルデヒド縮合体等の粘着性付与剤等が挙げられる。
(実施例)
以下、実施例を示しながら本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
以下、実施例を示しながら本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
(実施例1)
(ゴム組成物の調製)
加圧ニーダー((株)モリヤマ製 DS3−7.5MWH−S型)にエポキシ化天然ゴム(エポキシ化率約50%)1,000gを投入し、樹脂温が60℃になるまで素練りした。ここに酸化亜鉛(井上石灰工業(株)製、メタZ L−40)50g、ステアリン酸10g、ステアリン酸カルシウム40g、老化防止剤(大内新興化学工業(株)製、サンノック)10g、ポリエチレングリコール1.0gを投入し、全体が均一になるまで約2分間混練した。続いて、クレー(ケイ酸アルミニウム、Burgess Pigment社製 バーゲス#30)400g、ポリ塩化ビニル(新第一塩ビ(株)製 ZEST P−21)300g、クマロン樹脂(日塗化学(株)製 ニットレジンクマロンG−90)200g、DOP(ビス−(2−エチルヘキシル)フタレート)150gを投入し、全体が均一になるまで約5分間混練した。混練終了時の樹脂温は約100℃であった。混練終了後、樹脂温が80℃以下になるまで放置した。樹脂温が80℃以下になった後、硫黄(細井化学工業(株)製 粉末硫黄200メッシュ)5g、加硫促進剤CBS(大内新興化学工業(株)製 ノクセラーCZ)10g、加硫促進剤TMTD(大内新興化学工業(株)製 ノクセラーTT)10g、シリコーンオイル(東レ(株)製 SH−200)3g、酸化クロム(日本化学工業社製 グリーンF3)10gを投入し、全体が均一になるまで約2分間混練した。得られたゴム組成物を取り出し、ロール((株)山崎製作所製 14インチロール)でシート状にした。配合を表1に示す。
(ゴム組成物の調製)
加圧ニーダー((株)モリヤマ製 DS3−7.5MWH−S型)にエポキシ化天然ゴム(エポキシ化率約50%)1,000gを投入し、樹脂温が60℃になるまで素練りした。ここに酸化亜鉛(井上石灰工業(株)製、メタZ L−40)50g、ステアリン酸10g、ステアリン酸カルシウム40g、老化防止剤(大内新興化学工業(株)製、サンノック)10g、ポリエチレングリコール1.0gを投入し、全体が均一になるまで約2分間混練した。続いて、クレー(ケイ酸アルミニウム、Burgess Pigment社製 バーゲス#30)400g、ポリ塩化ビニル(新第一塩ビ(株)製 ZEST P−21)300g、クマロン樹脂(日塗化学(株)製 ニットレジンクマロンG−90)200g、DOP(ビス−(2−エチルヘキシル)フタレート)150gを投入し、全体が均一になるまで約5分間混練した。混練終了時の樹脂温は約100℃であった。混練終了後、樹脂温が80℃以下になるまで放置した。樹脂温が80℃以下になった後、硫黄(細井化学工業(株)製 粉末硫黄200メッシュ)5g、加硫促進剤CBS(大内新興化学工業(株)製 ノクセラーCZ)10g、加硫促進剤TMTD(大内新興化学工業(株)製 ノクセラーTT)10g、シリコーンオイル(東レ(株)製 SH−200)3g、酸化クロム(日本化学工業社製 グリーンF3)10gを投入し、全体が均一になるまで約2分間混練した。得られたゴム組成物を取り出し、ロール((株)山崎製作所製 14インチロール)でシート状にした。配合を表1に示す。
(評価用サンプルの成形)
得られたゴム組成物のシートを適当な大きさに切断し、金型(外形寸法240×160×30mm、製品寸法200×120×2mm)にセットした。金型をあらかじめ150℃に設定した油圧成型機((株)ショージ製、出力70t)にセットし、10分間加圧して架橋成形し、評価用ゴムシートを得た。これとは別に、直径30mmの球形の金型を用い、評価用ゴム球を作製した。
得られたゴム組成物のシートを適当な大きさに切断し、金型(外形寸法240×160×30mm、製品寸法200×120×2mm)にセットした。金型をあらかじめ150℃に設定した油圧成型機((株)ショージ製、出力70t)にセットし、10分間加圧して架橋成形し、評価用ゴムシートを得た。これとは別に、直径30mmの球形の金型を用い、評価用ゴム球を作製した。
(物性評価)
得られた評価用サンプルの各種物性を、以下の方法により評価した。
(引張強度・伸び)
JIS K6251に従って測定した。測定には(株)オリエンテック製卓上材料試験機 STA−1225を用いた。
(引裂強度)
JIS K6252に従って測定した。測定には(株)オリエンテック製卓上材料試験機 STA−1225を用いた。
(硬度)
JIS K6253に従って測定した。測定には(株)古里精機製作所製ゴム・プラスチック硬度計KR−14を用いた。
(損失正接)
エスアイアイ・ナノテクノロジ(株)製 EXTAR DMS6100を用いて測定した。測定は引張モードで行い、周波数は100Hz、歪み率は0.1%とした。
(反発弾性率)
評価用ゴム球を100cmの高さ(基準高さ)から鉄板(150×150×20mm)上に落下させ、跳ね返り高さを測定した。跳ね返り高さ/基準高さ×100=反発弾性率とした。
(衝撃吸収率)
鉄板(150×150×20mm)を平らな面に固定し、その上に評価用ゴムシートを置いた。鉄球(直径11mm、重さ5.4g)を100cmの高さ(基準高さ)から評価用ゴムシート上に落下させ、跳ね返り高さを測定した。100−(跳ね返り高さ/基準高さ×100)=衝撃吸収率とした。
引張強度、伸び、引裂強度を表2に、硬度を表2及び図1に示す。また、損失正接を図2に、反発弾性率を図3に、衝撃吸収率を図4にそれぞれ示す。
得られた評価用サンプルの各種物性を、以下の方法により評価した。
(引張強度・伸び)
JIS K6251に従って測定した。測定には(株)オリエンテック製卓上材料試験機 STA−1225を用いた。
(引裂強度)
JIS K6252に従って測定した。測定には(株)オリエンテック製卓上材料試験機 STA−1225を用いた。
(硬度)
JIS K6253に従って測定した。測定には(株)古里精機製作所製ゴム・プラスチック硬度計KR−14を用いた。
(損失正接)
エスアイアイ・ナノテクノロジ(株)製 EXTAR DMS6100を用いて測定した。測定は引張モードで行い、周波数は100Hz、歪み率は0.1%とした。
(反発弾性率)
評価用ゴム球を100cmの高さ(基準高さ)から鉄板(150×150×20mm)上に落下させ、跳ね返り高さを測定した。跳ね返り高さ/基準高さ×100=反発弾性率とした。
(衝撃吸収率)
鉄板(150×150×20mm)を平らな面に固定し、その上に評価用ゴムシートを置いた。鉄球(直径11mm、重さ5.4g)を100cmの高さ(基準高さ)から評価用ゴムシート上に落下させ、跳ね返り高さを測定した。100−(跳ね返り高さ/基準高さ×100)=衝撃吸収率とした。
引張強度、伸び、引裂強度を表2に、硬度を表2及び図1に示す。また、損失正接を図2に、反発弾性率を図3に、衝撃吸収率を図4にそれぞれ示す。
(実施例2〜4)
原料の種類及び配合比を表1に記載の通り変えた他は実施例1と同様の手順により評価用サンプルを作製し、各種物性を測定した。引張強度、伸び、引裂強度を表2に、硬度を表2及び図1に示す。また、損失正接を図2に、反発弾性率を図3に、衝撃吸収率を図4にそれぞれ示す。
原料の種類及び配合比を表1に記載の通り変えた他は実施例1と同様の手順により評価用サンプルを作製し、各種物性を測定した。引張強度、伸び、引裂強度を表2に、硬度を表2及び図1に示す。また、損失正接を図2に、反発弾性率を図3に、衝撃吸収率を図4にそれぞれ示す。
(比較例)
原料の種類及び配合比を表1に記載の通り変えた他は実施例1と同様の手順により評価用サンプルを作製し、各種物性を測定した。引張強度、伸び、引裂強度を表2に、硬度を表2及び図1に示す。また、損失正接を図2に、反発弾性率を図3に、衝撃吸収率を図4にそれぞれ示す。
原料の種類及び配合比を表1に記載の通り変えた他は実施例1と同様の手順により評価用サンプルを作製し、各種物性を測定した。引張強度、伸び、引裂強度を表2に、硬度を表2及び図1に示す。また、損失正接を図2に、反発弾性率を図3に、衝撃吸収率を図4にそれぞれ示す。
図1に示したように、温度が高くなるほど実施例1〜4に係るゴム組成物の硬度は低下する。クマロン樹脂の配合割合が多くなると温度の上昇による硬度の低下の割合が大きくなる傾向が認められるが、その変化はいずれも連続かつ単調であり、特定の温度域における急激な硬度の変化は認められない。このデータから予想されるのは、クマロン樹脂の配合割合が多くなるほど約30℃以上の温度域におけるゴム組成物の硬度が低下する、ということのみであって、各実施例に係る組成物が特定の温度域において特に優れた衝撃吸収性や制振性を示す、という事実を読み取ることはできない。
ところが図2を参照すると、各ゴム組成物の損失正接は、比較例及び実施例1〜4でそれぞれ異なる温度域にピークを有することが分かる。これは、クマロン樹脂の配合量に応じて衝撃吸収性能が最大となる温度域が変化することを意味している。すなわち、クマロン樹脂は単に高温域におけるゴム組成物の硬度を低下させるのではなく、ゴム組成物の粘弾性特性を変化させることによって、高温域における高い衝撃吸収性や制振性を付与することが明らかとなった。
図3,4には、各実施例において得られたゴム組成物の反発弾性率及び衝撃吸収性の温度依存性を実際に評価した結果が示されている。これらの結果からも、クマロン樹脂の配合量に応じて反発率が最小となる温度が変化することが分かる。図4を見ると、比較例では温度にかかわらず約22%の反発率を示しているのに対し、実施例1〜4はいずれも、最小値は0〜2%と極めて小さい値を示している。この結果は、クマロン樹脂の配合量を調整することによって反発率が最小となる温度域を変化させられることを示していると同時に、反発率の低下が単にゴム組成物の軟化に起因するものではないことを改めて裏付けるものである。
以上示したように、本発明に係るゴム組成物は、高い衝撃吸収性能、制振性能を有するため、各種ゴム部品、例えば緩衝材、制振材、防音材等に適している。ここでゴム部品とは、特定の用途に合わせて成形されたものに限られない。用途に応じて切断、研削されて用いられるような基本的なゴム素材、例えばシート、球、円柱、角柱等もここでいうゴム部品に含まれる。さらに、例えば発泡ゴムのように公知の手法によって構造上の特性を付与したゴム部品又はゴム素材も、本発明でいうゴム部品に含まれるものである。
なお、本発明に係るゴム組成物は、下記のようにも表され得る。
(付記1)
ゴム弾性を有するポリマー100質量部に対し、クマロン樹脂を10質量部以上含有するゴム組成物。
(付記2)
クマロン樹脂の含有量が20質量部以上である付記1記載のゴム組成物。
(付記3)
前記ゴム弾性を有するポリマーは天然ゴム、改質天然ゴム又は官能基化天然ゴムである、付記1又は2記載のゴム組成物。
(付記4)
前記ゴム弾性を有するポリマーは官能基化天然ゴムである、付記3記載のゴム組成物
(付記5)
前記官能基化天然ゴムはエポキシ化天然ゴムである、付記4記載のゴム組成物。
(付記6)
付記1乃至5のいずれか1つに記載のゴム組成物を用いて得られるゴム部品。
(付記7)
天然ゴム、改質天然ゴム又は官能基化天然ゴム100質量部に対し、下記式により決定される量のクマロン樹脂を配合する工程を含む、所定の温度で用いられるゴム組成物の製造方法。
クマロン樹脂の配合量(質量部)=(所定の温度(℃)−1.91)/0.356
(付記8)
前記官能基化天然ゴムはエポキシ化天然ゴムである、付記7記載のゴム組成物の製造方法。
(付記9)
付記7又は8記載の方法により製造されたゴム組成物を用いて得られるゴム部品。
(付記10)
ゴム弾性を有するポリマー100質量部に対しクマロン樹脂を10質量部以上配合して得られる所定の温度域で用いられるゴム組成物であって、前記所定の温度域において測定した反発率がクマロン樹脂を含まない前記ゴム弾性を有するポリマーの1/5以下であるゴム組成物。
(付記11)
前記反発率がクマロン樹脂を含まない前記ゴム弾性を有するポリマーの1/10以下である、付記10記載のゴム組成物。
(付記12)
ゴム弾性を有するポリマーと、クマロン樹脂と、を含有するゴム組成物であって、ゴム弾性を示す温度域においてその衝撃吸収率が最小となる温度が20℃より高い、ことを特徴とするゴム組成物。
(付記13)
クマロン樹脂の配合量が、ゴム弾性を有するポリマー100質量部に対して10質量部以上である、ことを特徴とする付記12記載のゴム組成物。
(付記1)
ゴム弾性を有するポリマー100質量部に対し、クマロン樹脂を10質量部以上含有するゴム組成物。
(付記2)
クマロン樹脂の含有量が20質量部以上である付記1記載のゴム組成物。
(付記3)
前記ゴム弾性を有するポリマーは天然ゴム、改質天然ゴム又は官能基化天然ゴムである、付記1又は2記載のゴム組成物。
(付記4)
前記ゴム弾性を有するポリマーは官能基化天然ゴムである、付記3記載のゴム組成物
(付記5)
前記官能基化天然ゴムはエポキシ化天然ゴムである、付記4記載のゴム組成物。
(付記6)
付記1乃至5のいずれか1つに記載のゴム組成物を用いて得られるゴム部品。
(付記7)
天然ゴム、改質天然ゴム又は官能基化天然ゴム100質量部に対し、下記式により決定される量のクマロン樹脂を配合する工程を含む、所定の温度で用いられるゴム組成物の製造方法。
クマロン樹脂の配合量(質量部)=(所定の温度(℃)−1.91)/0.356
(付記8)
前記官能基化天然ゴムはエポキシ化天然ゴムである、付記7記載のゴム組成物の製造方法。
(付記9)
付記7又は8記載の方法により製造されたゴム組成物を用いて得られるゴム部品。
(付記10)
ゴム弾性を有するポリマー100質量部に対しクマロン樹脂を10質量部以上配合して得られる所定の温度域で用いられるゴム組成物であって、前記所定の温度域において測定した反発率がクマロン樹脂を含まない前記ゴム弾性を有するポリマーの1/5以下であるゴム組成物。
(付記11)
前記反発率がクマロン樹脂を含まない前記ゴム弾性を有するポリマーの1/10以下である、付記10記載のゴム組成物。
(付記12)
ゴム弾性を有するポリマーと、クマロン樹脂と、を含有するゴム組成物であって、ゴム弾性を示す温度域においてその衝撃吸収率が最小となる温度が20℃より高い、ことを特徴とするゴム組成物。
(付記13)
クマロン樹脂の配合量が、ゴム弾性を有するポリマー100質量部に対して10質量部以上である、ことを特徴とする付記12記載のゴム組成物。
Claims (9)
- ゴム弾性を有するポリマー100質量部に対し、クマロン樹脂を10質量部以上含有するゴム組成物。
- クマロン樹脂の含有量が20質量部以上である請求項1記載のゴム組成物。
- 前記ゴム弾性を有するポリマーは天然ゴム、改質天然ゴム又は官能基化天然ゴムである、請求項1又は2記載のゴム組成物。
- 前記ゴム弾性を有するポリマーは官能基化天然ゴムである、請求項3記載のゴム組成物。
- 前記官能基化天然ゴムはエポキシ化天然ゴムである、請求項4記載のゴム組成物。
- 請求項1乃至5のいずれか1項記載のゴム組成物を用いて得られるゴム部品。
- 天然ゴム、改質天然ゴム又は官能基化天然ゴム100質量部に対し、下記式により決定される量のクマロン樹脂を配合する工程を含む、所定の温度で用いられるゴム組成物の製造方法。
クマロン樹脂の配合量(質量部)=(所定の温度(℃)−1.91)/0.356 - 前記官能基化天然ゴムはエポキシ化天然ゴムである、請求項7記載のゴム組成物の製造方法。
- 請求項7又は8記載の方法により製造されたゴム組成物を用いて得られるゴム部品。
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