JP2012121997A - ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 最も一般的に多用されているトリエチレンテトラミン由来のポリアミド硬化剤よりも可撓性が優れるポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 分子中に1個以上の水酸基と2個以上の活性水素とを有するポリアミンを含むアミン成分(A)と、ダイマー酸、ダイマー酸エステル、又はそれらの両方からなるダイマー酸成分(B)とを混合し、縮合反応させて得られるポリアミド樹脂組成物であって、[アミン成分(A)]/[ダイマー酸成分(B)]が2/1〜4/3(モル比)の範囲であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物を提供する。
【選択図】 なし
【解決手段】 分子中に1個以上の水酸基と2個以上の活性水素とを有するポリアミンを含むアミン成分(A)と、ダイマー酸、ダイマー酸エステル、又はそれらの両方からなるダイマー酸成分(B)とを混合し、縮合反応させて得られるポリアミド樹脂組成物であって、[アミン成分(A)]/[ダイマー酸成分(B)]が2/1〜4/3(モル比)の範囲であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物を提供する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、ポリアミド樹脂組成物に関する。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、例えば、塗料、接着剤、フローリング用途等に使用されるエポキシ樹脂用の硬化剤組成物として使用される。
ポリアミド樹脂組成物は、一般に、多塩基酸とポリアミン化合物を原料とし、加熱下にアミノ基とカルボキシル基の間で脱水縮合して、アミド結合の形成とポリマー鎖の延伸を行い合成される。具体的には、アジピン酸、ダイマー酸等の2塩基酸又は多塩基酸と、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のポリアミン類とを出発原料として、アミド結合で両構成単位を連結した樹脂等が従来より知られている(例えば、特許文献1参照)。
これらのうち、ダイマー酸から誘導されるポリアミド樹脂組成物は、強靭で柔軟性を示し、かつ良好な接着性能を有するため、接着剤、インク、表面コーティング剤や、エポキシ樹脂硬化剤としてエポキシ樹脂に配合され、金属、プラスチック、セラミック等の表面コーティング用として、或いは二液反応型接着剤等に用いられている。
ポリアミド樹脂組成物の製造には、ポリアミン化合物として、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、N−(2−アミノエチル)ピペラジン(N−AEP)等のポリエチレンアミンが一般に使用され、これらのうち、商業的にはトリエチレンテトラミンが最も普通に使用される。
ここで、特許文献1に記載の方法により得られるポリアミド樹脂組成物は、その当時の低分子量硬化剤に比べれば、揮発性が低く、エポキシ樹脂と配合した場合に柔軟性と耐久性に優れた硬化物が得られるとされている。
しかしながら、近年、風力発電用タービン用塗料等の分野において、トリエチレンテトラミンベースのポリアミド樹脂組成物よりも更に高い可撓性が求められている。これは、同分野において、タービンのたわみが大きい、飛来物との接触等の問題が顕在し、より剥離しない塗膜が要望されているためである。
また、特許文献2では、トリエチレンテトラミンを代替するポリアミンとして、N−3−アミノプロピルエチレンジアミン、N、N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N、N、N’−トリス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N、N、N’、N’−テトラキス(3−アミノプロピル)エチレンジアミンを含む混合物を用いたポリアミドアミンが提案されている。しかしながら、同公報に記載されたポリアミド硬化剤によるエポキシ樹脂硬化物は、従来のポリアミド硬化剤に比べて可撓性に劣るため、可撓性を要求される上記した塗料用途においては好適とはいい難い。
さらに、特許文献3では、トリエチレンテトラミンを代替するポリアミンとしてアミノアルキルピペラジンが提案されている。同公報に記載されたポリアミド硬化剤によるエポキシ樹脂硬化物は、従来のポリアミド硬化剤に比べれば可撓性は優れるものの、可撓性を要求される上記した塗料用途においては、更なる可撓性の改良が望まれている。
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、最も一般的に多用されているトリエチレンテトラミン由来のポリアミド硬化剤よりも可撓性が優れるポリアミド樹脂組成物を提供することである。
本発明者は、ポリアミド樹脂組成物について鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下に示すとおりのポリアミド樹脂組成物に関する。
[1]分子中に1個以上の水酸基と2個以上の活性水素とを有するポリアミンを含むアミン成分(A)と、ダイマー酸、ダイマー酸エステル、又はそれらの両方からなるダイマー酸成分(B)とを混合し、縮合反応させて得られるポリアミド樹脂組成物であって、[アミン成分(A)]/[ダイマー酸成分(B)]が2/1〜4/3(モル比)の範囲であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
[2]分子中に1個以上の水酸基と少なくとも2個以上の活性水素とを有するポリアミンが、下記式(1)で示されるポリアミンであることを特徴とする上記[1]に記載のポリアミド樹脂組成物。
[3]分子中に1個以上の水酸基と少なくとも2個以上の活性水素とを有するポリアミンが、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、1−[(2−アミノエチル)アミノ]−2−プロパノール、1,1’[(1,2−エタンジイル)ビスイミノ]ビス(2−プロパノール)、1−[2−[(2−アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ−2−プロパノール、1,1’−[イミノビス(2,1−エタンジイルイミノ)]ビス(2−プロパノール)又はこれらの混合物であることを特徴とする[1]に記載のポリアミド樹脂組成物。
[4]ダイマー酸成分(B)が、成分(B)全体に対し、70〜95重量%のダイマー酸を含有し、トリマー酸及びより高い重合度の酸を0〜30重量%の範囲で含有し、残部がモノマー脂肪酸であることを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
[5]上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物からなるエポキシ樹脂用硬化剤組成物。
[6]上記[1]乃至[5]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物とエポキシ樹脂とを接触させて得られるエポキシ樹脂硬化物。
[7]エポキシ樹脂中のアミン水素に対するポリアミド樹脂組成物アミン水素の化学量論比が1.5:1〜1:1.5の範囲にあることを特徴とする上記[6]に記載のエポキシ樹脂硬化物。
[8]エポキシ樹脂が、ビスフェノールAのグリシジルエーテル、改良型のビスフェノールAのグリシジルエーテル、ビスフェノールFのグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、又はこれらの混合物であることを特徴とする上記[6]又は[7]に記載のエポキシ樹脂硬化物。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、エポキシ樹脂用の硬化剤組成物として用いた場合、一般に多用されるトリエチレンテトラミン由来ポリアミド硬化剤より優れた可撓性を示すため、高い可撓性が要求される塗料分野に好適に使用することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、アミン成分(A)として用いられる、分子中に1個以上の水酸基と少なくとも2個以上の活性水素とを有するポリアミンとしては、特に限定するものではないが、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、又はそれらの両方をポリアミン類に付加して得られる化合物等が挙げられる。ここで使用されるポリアミン類としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、それらより高い分子量のポリエチレンアミン、メタ−キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、ビス−(3−アミノプロピル)アミン、N,N’−ビスー(3−アミノプロピル)−1,2−ジアミノエタン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−(2−アミノブチル)ピペラジン、N,N−ビス(2−アミノエチル)ピペラジン及びN,N−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジンのほか、ジエチレントリアミンを部分的にN−メチル化して得られる組成物等が挙げられる、これらを単独で用いても良いし、組み合わせて用いても良い。
このようにして、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、又はそれらの両方をポリアミン類に付加して得られる化合物としては、例えば、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、2,2’−(エチレンビスイミノ)ビスエタノール、1−[(2−アミノエチル)アミノ]−2−プロパノール、1,1’[(1,2−エタンジイル)ビスイミノ]ビス(2−プロパノール)、2−[[2−[(2−アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エタノール、1−[2−[(2−アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ−2−プロパノール、2,2’[イミノビス(2,1−エタンジイルイミノ]ビスエタノール、1,1’−[イミノビス(2,1−エタンジイルイミノ)]ビス(2−プロパノール)等が挙げられる。これらを単独で用いても良いし、組み合わせて用いても良い。
これらのうち、好ましくは、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、1−[(2−アミノエチル)アミノ]−2−プロパノール、1,1’[(1,2−エタンジイル)ビスイミノ]ビス(2−プロパノール)、1−[2−[(2−アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ−2−プロパノール、1,1’−[イミノビス(2,1−エタンジイルイミノ)]ビス(2−プロパノール)である。
ポリアミン分子中の活性水素が1個以下の場合、ダイマー酸成分との反応により得られるポリアミドが1級アミン及び2級アミンを含有せず、エポキシ樹脂との反応性を消失するため、硬化剤としての使用が困難となる。一方、ポリアミン分子中に1個以上水酸基を含有させることにより、エポキシ樹脂硬化物の可撓性が向上する。これは、特定の理論に縛られることを望むものではないが、ポリアミド形成時に水酸基の一部がダイマー酸と反応し、エステル結合を形成するために高可撓性が発現するものと推測される。
本発明のアミン成分(A)としては、分子中に1個以上の水酸基と少なくとも2個以上の活性水素とを有するポリアミン以外に、ポリアミド樹脂組成物において一般的に使用されているポリアミン(以下、「その他のポリアミン」と称する。)を、本発明の効果を損なわない範囲で含むことができる。このようなその他のポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、それらより高い分子量のポリエチレンアミン、メタ−キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、ビス−(3−アミノプロピル)アミン、N,N’−ビスー(3−アミノプロピル)−1,2−ジアミノエタン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−(2−アミノブチル)ピペラジン、N,N−ビス(2−アミノエチル)ピペラジン及びN,N−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジンのほか、ジエチレントリアミンを部分的にN−メチル化して得られる組成物、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、ポリオキシアルキレンポリアミン(例えば、Jeffamine D−230、Jeffamine D−400、Jeffamine D−2000、Jeffamine D−4000、Jeffamine T−403)等が挙げられる。これらを単独で用いても良いし、組み合わせて用いても良い。
これらのうち好ましくは、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−(2−アミノブチル)ピペラジン、N,N−ビス(2−アミノエチル)ピペラジン及びN,N−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジンのほか、ジエチレントリアミンを部分的にN−メチル化して得られる組成物、N,N−ジメチルアミノプロピルアミンである。
本発明において使用されるダイマー酸成分(B)は、ダイマー酸、ダイマー酸エステル又はそれらの両方を含有する。
ここで、本発明において、「ダイマー酸」とは、オレイン酸、リノレイン酸、リノール酸等の不飽和カルボン酸を重合して得られる不飽和ジカルボン酸のことをいう。不飽和カルボンを原料としたものであればどのようなものでもよく、特に限定されない。
ダイマー酸の合成において使用される不飽和カルボン酸としては、例えば、モノ官能性不飽和脂肪酸が挙げられ、具体的には、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リネイン酸、又はそれらの混合物(例えば、トール油脂肪酸、大豆脂肪酸、菜種油脂肪酸、綿実脂肪酸、アマニユ脂肪酸等)が挙げられる。
また、ダイマー酸の原料としては、上記した不飽和カルボン酸に代えて、又はそれとともに、そのエステルを用いてもよい。不飽和カルボン酸のエステルとしては、例えば、上記したモノ官能性不飽和脂肪酸の低級アルキルエステルが好適なものとして挙げられ、具体的には、上記したモノ官能性不飽和脂肪酸のメチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、第三ブチルエステル等が例示される。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。なお、ダイマー酸の原料として、不飽和カルボン酸のエステルを併用した場合には、ダイマー酸のエステルが得られる。
ダイマー酸は、一般に、上記した原料を加圧下で重合することによって調製される。ここで、重合反応は、高酸強度のルイス酸型又はブレンステッド酸型触媒の存在下に行うことが好ましい。また、不飽和脂肪酸のエステルを原料とした場合には、さらに加水分解工程を経ることによりダイマー酸が得られる。
このようにして得られたダイマー酸を主成分とする反応液は、通常、トリマー酸やより重合度の高い酸を含み、さらには未反応の不飽和脂肪酸や副生する分岐脂肪酸等のモノマー成分を含有している。このため、これらモノマー成分の大部分を蒸留によって除去する。蒸留としては特に限定するものではないが、減圧常圧することが好ましい。この反応液をさらに水素化してもよく、これにより、生成物の不飽和度及び着色が低減される。また、蒸留残渣を分子蒸留することによりさらに精製してもよい。なお、反応液中のダイマー酸と、トリマー酸及びより重合度高い酸との比率は重合条件、精製条件、及び原料である不飽和脂肪酸酸等に応じて変動する。
本発明において、ダイマー酸成分(B)としては、成分(B)全体に対し、70〜95重量%のダイマー酸を含有し、トリマー酸及びより高い重合度の酸を0〜30重量%の範囲で含有し、残部がモノマー脂肪酸であることが好ましい。必要に応じて他のモノ官能性及び多官能性カルボン酸がこのダイマー酸成分に組み込まれてもよい。
また、本発明で使用する市販のダイマー酸としては、例えば、ツノダイム216、ツノダイム228(築野食品工業社製、アマニユ脂肪酸ダイマー酸)、ラスティ−ダイムDA−200(カネダ社製、大豆油脂肪酸ダイマー酸)等が好適なものとして挙げられる。
エポキシ樹脂の硬化剤として作用させるためには、末端アミノ基の存在が必要とされるので、アミン成分(A)のモル数とダイマー酸成分(B)のモル数の比(モル/モル)は、4/3以上2/1以下の割合にする。比率を4/3以上とすることで、反応物の分子量を適度に調節することができ、目的のポリアミド樹脂組成物を液状物として得ることができる。また、比率を2/1以下とすることで原料アミンが未反応で残存するのを防ぐことができる。このとき、アミン成分(A)のモル数はその平均分子量から計算される。また、ダイマー酸成分(B)のモル数はその酸価から計算され、平均2官能の酸として算出される。
アミン成分(A)とダイマー酸成分(B)の縮合反応は、常圧下、120〜280℃、好ましくは180〜250℃の温度範囲でこれらの混合物を加熱することにより、通常行われる。この反応は、生成物の着色を防止するため、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うのが有利である。反応時間は反応温度や使用する原料の種類により左右され、一概に定めることはできないが、2〜5時間程度で十分である。また、反応終了前には減圧状態で適当な時間熟成することが望ましい。反応の進行に伴い、反応液の粘度が上昇するが、反応終了後でも反応生成物は固化することがなく、反応容器から保存容器への移送は室温でも容易である。また、所望に応じ反応終了時に、従来品と同様にトルエンやキシレン、アルコール等の溶媒を添加してもよい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、このようにして得られた反応生成物を含有するものである。分子中に1個以上の水酸基と少なくとも2個以上の活性水素とを有するポリアミン中のアミノ基の一部又は全部が、2級アミノ基、3級アミノ基、又はそれらの両方である場合には、その部分は、エポキシ樹脂との反応性が高い1級アミノ基を有しないため、ポリアミド樹脂組成物とエポキシ樹脂の反応速度が低下し、緩やかな硬化となる。その結果、十分なポットライフが確保できるため、より大きな塗布面積同士を均一に接着させる際には有利となる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、エポキシ樹脂用の硬化剤組成物として用いられる。
次に、本発明のエポキシ樹脂硬化物について説明する。
本発明のエポキシ樹脂硬化物は、本発明のポリアミド樹脂組成物とエポキシ樹脂とを反応させることにより形成される。本発明のポリアミド樹脂組成物とエポキシ樹脂との反応については、特に限定するものではないが、例えば、これらを混合、接触させることにより、硬化物が形成される。必要に応じて、加熱処理を施し、強制的に硬化させることもできる。
本発明のエポキシ樹脂硬化物に用いられるエポキシ樹脂としては、特に限定するものではないが、例えば、1分子当たり2以上の1,2−エポキシ基を含有する未硬化のポリエポキシ化合物が挙げられ、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多官能性エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂等が例示される。これらのエポキシ樹脂は無溶媒のものでも、溶媒で希釈したものでも使用することができる。
本発明において、本発明のポリアミド樹脂組成物とエポキシ樹脂とは、[本発明のポリアミド樹脂組成物中のアミン水素原子]/[エポキシ樹脂中のエポキシ基]が、通常1.5/1〜1/1.5(モル比率)の範囲で、好ましくは1.2/1〜1/1.2(モル比)の範囲で反応させる。このようにすることにより、良好なエポキシ樹脂の硬化物性を発揮させることができる。
本発明において、エポキシ樹脂硬化物を形成する際には、本発明のポリアミド樹脂組成物に加えて、従来公知の硬化促進剤を併用することができる。このような硬化促進剤としては、特に限定するものではないが、例えば、有機酸化合物、アルコール化合物、フェノール、第三アミン、ヒドロキシルアミン、及びこれらに類する化合物が挙げられる。これらのうちでも、特に有用な硬化促進剤としては、フェノール、ノニルフェノール、クレゾール、ビスフェノールA、サリチル酸、ジメチルアミノメチルフェノール、ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、及びトリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が挙げられる。
また、本発明において、エポキシ樹脂硬化物を形成する際には、従来公知の可塑剤を使用することができる。このような可塑剤としては、特に限定するものではないが、ベンジルアルコール、ノニルフェノール、種々のフタル酸エステル等が好適なものとして挙げられる。
さらに、本発明において、エポキシ樹脂硬化物を形成する際には、溶媒、充填剤、顔料、顔料分散剤、レオロジー修飾剤、チキソトロピー剤、流動化及び平滑化補助剤、消泡剤等を用いてもよい。好適な溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素化合物、脂肪族炭化水素化合物、エステル、ケトン、エーテル、アルコール等が挙げられる。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるこのではない。
<薄膜硬化時間の評価>
エポキシ樹脂組成物を、インチアプリケーターを用いて76マイクロメーターの湿潤膜厚さの塗膜をガラスパネル(25cm×2cm×0.2cm)に適用した。低温恒温恒湿機(エスペック社製、製品名:PL−3K)を用い、温度25℃、相対湿度50%の一定条件において硬化後、RC型ドライングタイムレコーダー(コーティングテスター社製)を使用して測定した。この測定で示される2次線状痕消失時間(Hr.)により硬化性を評価した。
エポキシ樹脂組成物を、インチアプリケーターを用いて76マイクロメーターの湿潤膜厚さの塗膜をガラスパネル(25cm×2cm×0.2cm)に適用した。低温恒温恒湿機(エスペック社製、製品名:PL−3K)を用い、温度25℃、相対湿度50%の一定条件において硬化後、RC型ドライングタイムレコーダー(コーティングテスター社製)を使用して測定した。この測定で示される2次線状痕消失時間(Hr.)により硬化性を評価した。
<塗膜の引張強度及び可撓性の評価>
エポキシ樹脂組成物を、隙間を200マイクロメーターに調整したドクターブレードを用いてポリプロピレンフィルム(20cm×40cm×0.2mm)上に均一塗布し、低温恒温恒湿機(エスペック社製、製品名:PL−3K)を用いて、25℃、相対湿度50%の一定条件で48時間乾燥、硬化させた。
エポキシ樹脂組成物を、隙間を200マイクロメーターに調整したドクターブレードを用いてポリプロピレンフィルム(20cm×40cm×0.2mm)上に均一塗布し、低温恒温恒湿機(エスペック社製、製品名:PL−3K)を用いて、25℃、相対湿度50%の一定条件で48時間乾燥、硬化させた。
その後、引張試験用ダンベル型打ち抜き器(JIS K 6259 2号型ダンベル状)を用いてテストピースを作成した。平行締付錠を用いてテストピースをテンシロン万能試験機(オリエンテック社製、製品名:RTM500)に取り付け、30mm/minの速度で引張り、サンプルピースの最大引張り強度(kgf/mm2)を測定した。同時に、テストピース破断時の標線間距離(初期は40mm)を定規で計測し、破断時の引張伸び(%)を測定した。引張伸び(%)が大きいほど塗膜の可撓性が高いと判断される。
合成例1 1−[2−[(2−アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ−2−プロパノールの合成.
1Lのオートクレーブ中に、ジエチルトリアミン(DETA)100g(0.97mol)を加え、オートクレーブ内を窒素置換したのち、内圧1kg/cm2f、内温120℃とした。内温を120℃に保ったまま、攪拌下、プロピレンオキサイド(PO)56g(0.97mol)をオートクレーブ内に4時間かけて加え、さらに120℃で2時間熟成した。その後、80℃に冷却し、未反応のプロピレンオキサイドを回収して、1−[2−[(2−アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ−2−プロパノールを得た(DETAの1PO付加物)。
1Lのオートクレーブ中に、ジエチルトリアミン(DETA)100g(0.97mol)を加え、オートクレーブ内を窒素置換したのち、内圧1kg/cm2f、内温120℃とした。内温を120℃に保ったまま、攪拌下、プロピレンオキサイド(PO)56g(0.97mol)をオートクレーブ内に4時間かけて加え、さらに120℃で2時間熟成した。その後、80℃に冷却し、未反応のプロピレンオキサイドを回収して、1−[2−[(2−アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ−2−プロパノールを得た(DETAの1PO付加物)。
合成例2 1,1’−[イミノビス(2,1−エタンジイルイミノ)]ビス(2−プロパノール)の合成.
プロピレンオキサイドを112g(1.94mol)とした以外は、合成例1と同様の方法により、1,1’−[イミノビス(2,1−エタンジイルイミノ)]ビス(2−プロパノール)を得た(DETAの2PO付加物)。
プロピレンオキサイドを112g(1.94mol)とした以外は、合成例1と同様の方法により、1,1’−[イミノビス(2,1−エタンジイルイミノ)]ビス(2−プロパノール)を得た(DETAの2PO付加物)。
合成例3 1−[(2−アミノエチル)アミノ]−2−プロパノールの合成.
ジエチレントリアミンをエチレンジアミン(EDA)100g(1.66mol)とし、プロピレンオキサイドを97(1.66mol)gとした以外は、合成例1と同様の方法により、1−[(2−アミノエチル)アミノ]−2−プロパノールを得た(EDAの1PO付加物)。
ジエチレントリアミンをエチレンジアミン(EDA)100g(1.66mol)とし、プロピレンオキサイドを97(1.66mol)gとした以外は、合成例1と同様の方法により、1−[(2−アミノエチル)アミノ]−2−プロパノールを得た(EDAの1PO付加物)。
合成例4 1,1’−[(1,2−エタンジイル)ビスイミノ]ビス(2−プロパノール)の合成.
プロピレンオキサイドを193g(3.33mol)とした以外は、合成例3と同様の方法により、1,1’−[(1,2−エタンジイル)ビスイミノ]ビス(2−プロパノール)を得た(EDAの2PO付加物)。
プロピレンオキサイドを193g(3.33mol)とした以外は、合成例3と同様の方法により、1,1’−[(1,2−エタンジイル)ビスイミノ]ビス(2−プロパノール)を得た(EDAの2PO付加物)。
合成例5 ビス(3−アミノプロピル)エーテルの2PO付加物の合成.
ジエチレントリアミンをビス(3−アミノプロピル)エーテル(東京化成工業社製)100g(0.75mol)とし、プロピレンオキサイドを87.7g(1.50mol)とした以外は、合成例1と同様の方法によりビス(3−アミノプロピル)エーテルの2PO付加物を得た。
ジエチレントリアミンをビス(3−アミノプロピル)エーテル(東京化成工業社製)100g(0.75mol)とし、プロピレンオキサイドを87.7g(1.50mol)とした以外は、合成例1と同様の方法によりビス(3−アミノプロピル)エーテルの2PO付加物を得た。
合成例6 ジエチレントリアミンの部分N−メチル化体の合成.
1000mlの攪拌機付きオートクレーブ内に、ジエチレントリアミン200g(東ソー社製、製品名:DETA)、水100g及び触媒Pd−C(5%担持)2.0gを仕込んだ。オートクレーブを密閉、水素置換後、攪拌下に130℃まで昇温した。続けてオートクレーブ内に圧力3MPaで水素を導入しつつ、37%ホルマリン水溶液314gを7時間かけてポンプで供給した。1時間熟成反応を行った後、冷却して反応液を取り出した。
1000mlの攪拌機付きオートクレーブ内に、ジエチレントリアミン200g(東ソー社製、製品名:DETA)、水100g及び触媒Pd−C(5%担持)2.0gを仕込んだ。オートクレーブを密閉、水素置換後、攪拌下に130℃まで昇温した。続けてオートクレーブ内に圧力3MPaで水素を導入しつつ、37%ホルマリン水溶液314gを7時間かけてポンプで供給した。1時間熟成反応を行った後、冷却して反応液を取り出した。
蒸留装置を用いて反応液から水を留去後、減圧下に生成物236gを得た。ジエチレントリアミンの窒素原子に結合した水素基に対し40%がメチル基に変換していた。以下、本製造例で得られたジエチレントリアミンを部分的にN−メチル化して得られた組成物を「DETA−2M」と称する。
実施例1.
1000mlのガラス容器に、モノマー酸7重量%、トリマー酸14重量%を含むアマニユ脂肪酸ダイマーの組成物[筑野食品工業社製、製品名:ツノダイム216、酸価193.6mgKOH/g]100gを加え、さらに1.1−[2−[(2−アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ−2−プロパノール(合成例1)43.1gを、攪拌しながらゆっくり加えた。
1000mlのガラス容器に、モノマー酸7重量%、トリマー酸14重量%を含むアマニユ脂肪酸ダイマーの組成物[筑野食品工業社製、製品名:ツノダイム216、酸価193.6mgKOH/g]100gを加え、さらに1.1−[2−[(2−アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ−2−プロパノール(合成例1)43.1gを、攪拌しながらゆっくり加えた。
120℃で加熱し、完全に均一になるまで攪拌を行った。攪拌速度を150rpmに上げ、窒素雰囲気下200℃で4時間加熱し、6.2gの水を蒸留によって除去した。さらに200℃、10mmHgで1時間反応を行った。次に、反応容器を100℃まで冷却し、固形物濃度70重量%になるようにトルエンを加えて攪拌して均一なトルエン溶液とした後、室温まで冷却した。
エポキシ当量474のエポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、製品名:エピコート1001)をトルエンで70%に希釈したエポキシ樹脂溶液36重量部に対し、ポリアミド樹脂組成物として、得られたダイマー酸ポリアミドアミン縮合物のトルエン溶液を64重量部の割合で添加し、スパチュラを用いて室温下5分間せん断攪拌した。ここで、[本発明のポリアミド樹脂組成物中のアミン水素原子]/[エポキシ樹脂中のエポキシ基]は1/1(モル比)であった。上記した評価方法に従って、塗膜の硬化速度と物性測定を行った結果を表1に示す。
実施例2〜8及び比較例1〜4.
表1に示す種類と量の原料を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。その結果を表1に併せて示す。
表1に示す種類と量の原料を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。その結果を表1に併せて示す。
本発明のポリアミド硬化剤によれば、一般に多用されるトリエチレンテトラミン由来ポリアミド硬化剤より優れた可撓性を示すポリアミド樹脂組成物を提供することができる為、高い可撓性が要求される塗料分野に好適に使用することができる。又、本発明のエポキシ樹脂組成物は、例えば塗料、接着剤、土木・建築材料等の広範な用途に好適に用いられる。
Claims (8)
- 分子中に1個以上の水酸基と2個以上の活性水素とを有するポリアミンを含むアミン成分(A)と、ダイマー酸、ダイマー酸エステル、又はそれらの両方からなるダイマー酸成分(B)とを混合し、縮合反応させて得られるポリアミド樹脂組成物であって、[アミン成分(A)]/[ダイマー酸成分(B)]が2/1〜4/3(モル比)の範囲であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
- 分子中に1個以上の水酸基と少なくとも2個以上の活性水素とを有するポリアミンが、下記式(1)で示されるポリアミンであることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 分子中に1個以上の水酸基と少なくとも2個以上の活性水素とを有するポリアミンが、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、1−[(2−アミノエチル)アミノ]−2−プロパノール、1,1’[(1,2−エタンジイル)ビスイミノ]ビス(2−プロパノール)、1−[2−[(2−アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ−2−プロパノール、1,1’−[イミノビス(2,1−エタンジイルイミノ)]ビス(2−プロパノール)又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
- ダイマー酸成分(B)が、成分(B)全体に対し、70〜95重量%のダイマー酸を含有し、トリマー酸及びより高い重合度の酸を0〜30重量%の範囲で含有し、残部がモノマー脂肪酸であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
- 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物からなるエポキシ樹脂用硬化剤組成物。
- 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物とエポキシ樹脂とを接触させて得られるエポキシ樹脂硬化物。
- エポキシ樹脂中のアミン水素に対するポリアミド樹脂組成物アミン水素の化学量論比が1.5:1〜1:1.5の範囲にあることを特徴とする請求項6に記載のエポキシ樹脂硬化物。
- エポキシ樹脂が、ビスフェノールAのグリシジルエーテル、改良型のビスフェノールAのグリシジルエーテル、ビスフェノールFのグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のエポキシ樹脂硬化物。
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