JP2012112494A - 車輪用軸受の密封装置 - Google Patents

Abstract

【課題】嵌合部の気密性を高めて軸受内部を保護すると共に、圧入時の損傷を防止して信頼性を向上させた車輪用軸受の密封装置を提供する。
【解決手段】密封装置が、断面が略Ｌ字状に形成されて互いに対向配置された環状のシール板１４とスリンガ１５とで構成され、シール板１４が芯金１６と、この芯金１６の嵌合部１６ａに加硫接着により一体に接合されたシール部材１７とからなり、このシール部材１７に嵌合部１６ａの外径よりも僅かに大径となる段差０．２５〜０．３０ｍｍをもって環状凸部２０が突出して形成され、この環状凸部２０が外方部材１０の端面側に向って漸次拡径し、傾斜角５〜１５°からなるテーパ面に形成され、外方部材１０の端部内周面に嵌合幅０．４３〜２．５０ｍｍでもって圧入されている。
【選択図】図２

Description

本発明は、自動車等の車輪を懸架装置に対して回転自在に支承する車輪用軸受における密封装置に関するものである。

従来から自動車等の車輪を支持する車輪用軸受装置は、車輪を取り付けるためのハブ輪を複列の転がり軸受を介して回転自在に支承するもので、駆動輪用と従動輪用とがある。構造上の理由から、駆動輪用では内輪回転方式が、従動輪用では内輪回転と外輪回転の両方式が一般的に採用されている。また、車輪用軸受装置には、懸架装置を構成するナックルとハブ輪との間に複列アンギュラ玉軸受等からなる車輪用軸受を嵌合させた第１世代と称される構造から、外方部材の外周に直接車体取付フランジまたは車輪取付フランジが形成された第２世代構造、また、ハブ輪の外周に一方の内側転走面が直接形成された第３世代構造、あるいは、ハブ輪と等速自在継手の外側継手部材の外周にそれぞれ内側転走面が直接形成された第４世代構造とに大別されている。

これらの軸受部には、軸受内部に封入されたグリースの漏れを防止すると共に、外部から雨水やダスト等の侵入を防止するために密封装置が装着されている。近年、自動車のメンテナンスフリー化が進み、車輪用軸受装置においてもさらなる長寿命化が要求されるようになっているが、市場回収品の軸受損傷状況を検証すると、剥離等の本来の軸受寿命よりも、シール不具合あるいはシール性の低下により軸受内に雨水やダスト等が侵入して軸受が損傷する事例が少なくない。したがって、密封装置のシール性を向上させることにより、軸受寿命の向上を図ることができる。

従来から、シール性を高めた密封装置に関しては種々提案されているが、こうした密封装置の一例を図７に示す。このこの密封装置５１は、芯金５２と、スリンガ５３と、シール材５４とからなる。芯金５２は、低炭素鋼等の金属板にプレス加工等の打ち抜き並びに塑性加工により一体成形され、外輪（図示せず）の端部内周面に内嵌される外径側円筒部５２ａと、この外径側円筒部５２ａの軸方向内端縁（図中左端）から径方向内方に折れ曲った内側円輪部５２ｂを備えた、断面略Ｌ字形で円環状としている。

スリンガ５３は、ステンレス鋼板等、耐食性を有する金属板にプレス加工等の打ち抜き並びに塑性加工により一体成形され、内輪（図示せず）の外端部外周面に外嵌される内径側円筒部５３ａと、この内径側円筒部５３ａの軸方向外端縁（図中右端）から径方向外方に折れ曲った外側円輪部５３ｂとを備えた、断面略Ｌ字形で円環状としている。

また、シール部材５４は、ゴム、エラストマ等の弾性材で成形され、外側、中間、内側の３本のシールリップ５４ａ、５４ｂ、５４ｃを備え、芯金５２にその基端部を結合している。そして、最も外側に位置する外側シールリップ５４ａの先端縁をスリンガ５３の外側円輪部５３ｂの内側面に摺接させ、残り２本の中間シールリップ５４ｂと内側シールリップ５４ｃの先端縁を内径側円筒部５３ａの外周面に摺接させている。

さらに、シール材５４の基端部５５により、芯金５２の外径側円筒部５２ａの先半部（図中右半部）の内周面および外周面を覆っている。ここで、芯金５２の外径側円筒部５２ａと外輪は所定のシメシロを持った金属嵌合をしているが、嵌合部の気密性を向上させるために、シール材５４の基端部５５が断面略台形状に形成され、外径側円筒部５２ａの外径よりも径方向外方に突出してゴムパッキンの役割を持たせ、所謂ハーフメタル構造とされている。

３本のシールリップ５４ａ、５４ｂ、５４ｃは総て、それぞれの先端縁に向う程、軸受の外部空間に向う方向に傾斜している。そして、最も内側に位置する内側シールリップ５４ｃの先端縁と、スリンガ５３の内径側円筒部５３ａの外周面を当接させた状態で、この内側シールリップ５４ｃが全く弾性変形していないか極く僅かしか弾性変形しない状態である、シメシロがほぼ零の状態としている。このために、内側シールリップ５４ｃの自由状態での内径を、内径側円筒部５３ａの外径とほぼ同じとしている。

したがって、このような密封装置５１では、内側シールリップ５４ｃの先端縁が内径側円筒部５３ａの外周面から外れた状態から、この内側シールリップ５４ｃを内径側円筒部５３ａに外嵌しても反転することはない（例えば、特許文献１参照。）。

特開平１０−２５２７６２号公報

然しながら、こうした従来の密封装置５１では、軸受がタイヤからの荷重を受けることで外輪が変形し、従来の基端部５５では、気密性不足となる問題が生じている。この問題の解決策としては、基端部５５の幅を広げたり、外輪とのシメシロを上げる方法もあるが、これではコンパクトな設計ができないだけでなく、密封装置５１を外輪に圧入する際に、ゴム切れ等、基端部５５が損傷する恐れがある。

本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、嵌合部の気密性を高めて軸受内部を保護すると共に、圧入時の損傷を防止して信頼性を向上させた車輪用軸受の密封装置を提供することを目的としている。

係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項１記載の発明は、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、この内方部材と前記外方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の転動体とを備えた車輪用軸受に装着され、前記外方部材と内方部材との間に形成される環状空間の開口部を密封する車輪用軸受の密封装置において、前記外方部材の端部内周面に所定のシメシロを介して圧入される円筒状の嵌合部を有し、鋼板からプレス加工によって形成された芯金を備え、この芯金の嵌合部に合成ゴムからなるシール部材が加硫接着により一体に接合され、このシール部材に前記嵌合部の外径よりも僅かに大径となる段差をもって環状凸部が突出して形成されると共に、この環状凸部が前記外方部材の端面側に向って漸次拡径し、所定の傾斜角からなるテーパ面に形成され、前記外方部材の端部内周面に所定の嵌合幅でもって圧入されている。

このように、車輪用軸受に装着され、外方部材と内方部材との間に形成される環状空間の開口部を密封する車輪用軸受の密封装置において、外方部材の端部内周面に所定のシメシロを介して圧入される円筒状の嵌合部を有し、鋼板からプレス加工によって形成された芯金を備え、この芯金の嵌合部に合成ゴムからなるシール部材が加硫接着により一体に接合され、このシール部材に嵌合部の外径よりも僅かに大径となる段差をもって環状凸部が突出して形成されると共に、この環状凸部が外方部材の端面側に向って漸次拡径し、所定の傾斜角からなるテーパ面に形成され、外方部材の端部内周面に所定の嵌合幅でもって圧入されているので、圧入時の抵抗を減少させてシメシロを上げることができ、嵌合部の気密性を高めて軸受内部を保護すると共に、シール部材の圧入時の損傷を防止して信頼性を向上させた車輪用軸受の密封装置を提供することができる。

好ましくは、請求項２に記載の発明のように、前記環状凸部の段差が０．２５〜０．３０ｍｍの範囲に設定されていれば、圧入時の抵抗を抑制することができると共に、長期間に亘って外方部材と芯金との嵌合部の気密性を高めることができる。

また、請求項３に記載の発明のように、前記環状凸部のテーパ面の傾斜角が５〜１５°の範囲に設定されていれば、圧入時の抵抗を減少させてシメシロを上げることができ、嵌合部の気密性を高めて軸受内部を保護すると共に、シール部材の圧入時の損傷を防止して信頼性を向上させることができる。

また、請求項４に記載の発明のように、前記環状凸部の先端位置が前記外方部材の端部内周に形成された面取り部よりも軸受内部側になるように設定されると共に、当該環状凸部の嵌合幅が０．４３〜２．５０ｍｍの範囲に設定されていれば、コンパクトで気密性を高めることができる。

また、請求項５に記載の発明のように、前記環状凸部のテーパ面が両側に形成され、その傾斜角が略同一に設定されていても良い。

また、請求項６に記載の発明のように、前記芯金の嵌合部と前記シール部材の環状凸部に、予めグリースが塗布されていれば、圧入時のゴム切れ等の損傷を防止することができる。

また、請求項７に記載の発明のように、前記密封装置が、断面が略Ｌ字状に形成されて互いに対向配置された環状のシール板とスリンガとで構成され、前記シール板が前記芯金とシール部材とからなり、前記スリンガが、前記内方部材の外周に圧入された円筒部と、この円筒部から径方向外方に延びる立板部とを有し、前記シール部材が前記スリンガの立板部に所定の軸方向シメシロを介して摺接するサイドリップと、前記円筒部に所定の径方向シメシロを介して摺接するラジアルリップを備える複合型の密封装置で構成されていても良い。

また、請求項８に記載の発明のように、前記密封装置が、前記芯金とシール部材とからなる一体型の密封装置で構成され、前記シール部材が、断面が円弧状に形成された前記車輪取付フランジのインナー側の基部に所定のシメシロをもって摺接するサイドリップとダストリップおよび軸受内方側に傾斜して形成されたグリースリップを一体に有していても良い。

また、請求項９に記載の発明のように、前記密封装置が、前記芯金とシール部材とからなるカップ状に形成された保護カバーで構成され、前記芯金が、前記嵌合部と、この嵌合部から縮径部を介して径方向内方に延びる円板状の遮蔽部と、この遮蔽部から段部を介して前記内方部材のインナー側の端部を塞ぐ底部とを備えると共に、前記シール部材が前記縮径部の外周部に接合され、前記環状凸部と、前記芯金の嵌合部の外径よりも僅かに小径に形成された環状部とで構成されていても良い。

また、請求項１０に記載の発明のように、前記内輪に磁気エンコーダが外嵌されると共に、前記芯金が非磁性体の鋼板からプレス加工によって形成され、この遮蔽部の側面に回転速度センサが近接または当接され、当該遮蔽部を介して前記磁気エンコーダと回転速度センサが所定の軸方向すきまを介して対峙していても良い。

また、請求項１１に記載の発明のように、前記シール部材が、少なくとも前記芯金を前記外方部材に嵌合する前の単体の状態で、前記遮蔽部の外側面よりインナー側に突出しないように設定されていれば、シール部材との干渉を避けるため、回転速度センサを必要以上に磁気エンコーダから遠ざける必要がなくなり、エアギャップを最小限に設定することができ、検出精度を一段と高めることができる。

また、請求項１２に記載の発明のように、前記外方部材のインナー側の端面が前記内輪の大端面よりもインナー側に僅かに突出して形成されていれば、芯金が内輪に当接するのを防止することができる。

好ましくは、請求項１３に記載の発明のように、前記磁気エンコーダの検出面と前記内輪の大端面が略面一、または、前記大端面よりインナー側に僅かに突出するように設定されていれば、エアギャップ調整が容易となり、エアギャップをより小さく狙うことができる。

本発明に係る車輪用軸受の密封装置は、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、この内方部材と前記外方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の転動体とを備えた車輪用軸受に装着され、前記外方部材と内方部材との間に形成される環状空間の開口部を密封する車輪用軸受の密封装置において、前記外方部材の端部内周面に所定のシメシロを介して圧入される円筒状の嵌合部を有し、鋼板からプレス加工によって形成された芯金を備え、この芯金の嵌合部に合成ゴムからなるシール部材が加硫接着により一体に接合され、このシール部材に前記嵌合部の外径よりも僅かに大径となる段差をもって環状凸部が突出して形成されると共に、この環状凸部が前記外方部材の端面側に向って漸次拡径し、所定の傾斜角からなるテーパ面に形成され、前記外方部材の端部内周面に所定の嵌合幅でもって圧入されているので、圧入時の抵抗を減少させてシメシロを上げることができ、嵌合部の気密性を高めて軸受内部を保護すると共に、シール部材の圧入時の損傷を防止して信頼性を向上させた車輪用軸受の密封装置を提供することができる。

本発明に係る密封装置を備えた車輪用軸受の第１の実施形態を示す縦断面図である。 図１の密封装置を示す要部拡大図である。 図２のＩＩＩ部拡大図である。 本発明に係る密封装置を備えた車輪用軸受の第２の実施形態を示す縦断面図である。 （ａ）は、図４の一方の密封装置を示す要部拡大図、（ｂ）は、（ａ）のＶ部拡大図、（ｃ）は、（ｂ）の変形例を示す部分拡大図である。 （ａ）は、図４の他方の密封装置を示す要部拡大図、（ｂ）は、（ａ）のＶＩ部拡大図である。 従来の車輪用軸受の密封装置を示す縦断面図である。

外周にナックルに取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面に対向する一方の内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入され、前記複列の外側転走面に対向する他方の内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、この内方部材と前記外方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の転動体とを備えた車輪用軸受に装着され、前記外方部材と内方部材との間に形成される環状空間の開口部を密封する車輪用軸受の密封装置において、この芯金の嵌合部に合成ゴムからなるシール部材が加硫接着により一体に接合され、前記密封装置が、断面が略Ｌ字状に形成されて互いに対向配置された環状のシール板とスリンガとで構成され、前記シール板が、前記外方部材の端部内周面に所定のシメシロを介して圧入される円筒状の嵌合部を有し、鋼板からプレス加工によって形成された芯金と、この芯金の嵌合部に加硫接着により一体に接合された合成ゴムからなるシール部材とからなり、前記スリンガが、前記内輪の外周に圧入された円筒部と、この円筒部から径方向外方に延びる立板部とを有し、前記シール部材が前記スリンガの立板部に所定の軸方向シメシロを介して摺接するサイドリップと、前記円筒部に所定の径方向シメシロを介して摺接するラジアルリップを備えると共に、前記シール部材に前記嵌合部の外径よりも僅かに大径となる段差０．２５〜０．３０ｍｍをもって環状凸部が突出して形成され、この環状凸部が前記外方部材の端面側に向って漸次拡径し、傾斜角５〜１５°からなるテーパ面に形成され、前記外方部材の端部内周面に嵌合幅０．４３〜２．５０ｍｍでもって圧入されている。

以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図１は、本発明に係る密封装置を備えた車輪用軸受の第１の実施形態を示す縦断面図、図２は、図１の密封装置を示す要部拡大図、図３は、図２のＩＩＩ部拡大図である。なお、以下の説明では、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウター側（図１の左側）、中央寄り側をインナー側（図１の右側）という。

この車輪用軸受は駆動輪側の第３世代と称され、内方部材１と外方部材１０、および両部材１、１０間に転動自在に収容された複列の転動体（ボール）６、６とを備えている。内方部材１は、ハブ輪２と、このハブ輪２に圧入された内輪３とからなる。

ハブ輪２は、アウター側の端部に車輪（図示せず）を取り付けるための車輪取付フランジ４を一体に有し、この車輪取付フランジ４の円周等配位置に車輪を固定するためのハブボルト５が植設されている。また、ハブ輪２の外周には一方（アウター側）の内側転走面２ａと、この内側転走面２ａから軸方向に延びる円筒状の小径段部２ｂが形成され、内周にはセレーション（またはスプライン）２ｃが形成されている。内輪３は外周に他方（インナー側）の内側転走面３ａが形成され、ハブ輪２の小径段部２ｂに所定のシメシロを介して圧入されている。

ハブ輪２は、Ｓ５３Ｃ等の炭素０．４０〜０．８０重量％を含む中高炭素鋼で形成され、後述するシール８のシールランド部となる車輪取付フランジ４のインナー側の基部１１をはじめ、アウター側の内側転走面２ａから小径段部２ｂに亙り高周波焼入れによって表面硬さを５８〜６４ＨＲＣの範囲に硬化処理されている。これにより、車輪取付フランジ４の基部１１の耐摩耗性が向上するばかりでなく、車輪取付フランジ４に負荷される回転曲げ荷重に対して充分な機械的強度を有することになり、ハブ輪２の強度・耐久性が向上する。一方、内輪３および転動体６はＳＵＪ２等の高炭素クロム軸受鋼からなり、ズブ焼入れにより芯部まで５８〜６４ＨＲＣの範囲で硬化処理されている。

外方部材１０は、外周に車体（図示せず）に取り付けられるための車体取付フランジ１０ｂを一体に有し、内周に前記内方部材１の内側転走面２ａ、３ａに対向する複列の外側転走面１０ａ、１０ａが一体に形成されている。この外方部材１０は、ハブ輪２と同様、Ｓ５３Ｃ等の炭素０．４０〜０．８０重量％を含む中高炭素鋼で形成され、少なくとも複列の外側転走面１０ａ、１０ａが高周波焼入れによって表面硬さを５８〜６４ＨＲＣの範囲に硬化処理されている。そして、それぞれの転走面１０ａ、２ａと１０ａ、３ａ間に複列の転動体６、６が収容され、保持器７、７によりこれら複列の転動体６、６が転動自在に保持されている。また、外方部材１０と内方部材１との間に形成される環状空間の開口部には密封装置８、９が装着され、軸受内部に封入された潤滑グリースの漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に侵入するのを防止している。

本実施形態では、アウター側の密封装置８は、芯金１２と、この芯金１２に一体に加硫接着されたシール部材１３とからなり、このシール部材１３は、ＮＢＲ（アクリロニトリル−ブタジエンゴム）等の合成ゴムからなり、径方向外方に傾斜して延び、円弧状に形成された車輪取付フランジ４の基部１１に摺接するサイドリップ１３ａとダストリップ１３ｂ、および軸受内方側に傾斜して延びるグリースリップ１３ｃとを一体に備えている。なお、シール部材１３の材質としては、例示したＮＢＲ以外にも、例えば、耐熱性に優れたＨＮＢＲ（水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム）、ＥＰＤＭ（エチレンプロピレンゴム）等をはじめ、耐熱性、耐薬品性に優れたＡＣＭ（ポリアクリルゴム）、ＦＫＭ（フッ素ゴム）、あるいはシリコンゴム等を例示することができる。

一方、インナー側の密封装置９は、図２に拡大して示すように、断面が略Ｌ字状に形成されて互いに対向配置された環状のシール板１４とスリンガ１５とからなる、所謂パックシールと呼称される複合型の密封装置を構成している。

環状のシール板１４は、外方部材１０の端部内周に圧入された芯金１６と、この芯金１６に一体に加硫接着されたシール部材１７とからなる。芯金１６は、フェライト系ステンレス鋼板（ＪＩＳ規格のＳＵＳ４３０系等）やオーステナイト系ステンレス鋼板（ＪＩＳ規格のＳＵＳ３０４系等）、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼板（ＪＩＳ規格のＳＰＣＣ系等）からプレス加工にて断面が略Ｌ字状に形成され、外方部材１０の端部内周面に所定のシメシロを介して圧入される円筒状の嵌合部１６ａと、この嵌合部１６ａの端部から径方向内方に延びる内径部１６ｂとを有している。また、シール部材１７はＮＢＲ等の合成ゴムからなり、スリンガ１５に摺接するサイドリップ１７ａと、このサイドリップ１７ａの内径側で二股状に形成されたラジアルリップ、具体的にはグリースリップ１７ｂとダストリップ１７ｃを有している。

一方、スリンガ１５は、強磁性体の鋼板、例えば、フェライト系ステンレス鋼板やオーステナイト系ステンレス鋼板、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼板からプレス加工にて断面が略Ｌ字状に形成され、内輪３の外周面に圧入される円筒部１５ａと、この円筒部１５ａから径方向外方に延びる立板部１５ｂとからなる。なお、スリンガ１５の立板部１５ｂの外縁は、シール部材１７と僅かな径方向すきまを介して対峙しラビリンスシール１８を構成している。

スリンガ１５における立板部１５ｂのインナーの側面には、ゴム等のエラストマにフェライト等の磁性体粉が混入された磁気エンコーダ（ゴム磁石）１９が加硫接着により一体に接合されている。この磁気エンコーダ１９は、周方向に交互に磁極Ｎ、Ｓが着磁され、車輪の回転速度検出用のロータリエンコーダを構成している。

なお、ここでは、転動体６にボールを使用した複列アンギュラ玉軸受で構成された車輪用軸受装置を例示したが、これに限らず、転動体６に円錐ころを使用した複列円錐ころ軸受で構成されていても良い。また、ここでは、ハブ輪２の外周に直接内側転走面２ａが形成された第３世代構造を例示したが、図示はしないが、ハブ輪の小径段部に一対の内輪が圧入固定された第１世代または第２世代構造であっても良い。

ここで、芯金１６の嵌合部１６ａの先端部は薄肉に形成されると共に、この先端部を覆うようにシール部材１７が回り込んで接合されて環状凸部２０が形成されている。この環状凸部２０は、図３に拡大して示すように、外方部材１０のインナー側の端面１０ｃ側に向って漸次拡径し、所定の傾斜角αからなるテーパ面に形成されると共に、芯金１６の嵌合部１６ａの外径よりも僅かに大径となる段差δに形成され、外方部材１０の端部内周面１０ｄに所定のシメシロを介して圧入されている。なお、圧入する前に芯金１６の嵌合部１６ａとシール部材１７の環状凸部２０に、予めグリースを塗布しておくことにより、圧入時のゴム切れ等の損傷を防止することができる。

環状凸部２０の傾斜角αは５〜１５°の範囲に設定されている。これにより、圧入時の抵抗を減少させてシメシロを上げることができ、嵌合部の気密性を高めて軸受内部を保護すると共に、シール部材１７の圧入時の損傷を防止して信頼性を向上させた車輪用軸受の密封装置を提供することができる。なお、この傾斜角αが１５°を超えると、圧入時の抵抗が大きくなり、損傷の恐れが拡大すると共に、５°未満ではその効果が半減して好ましくない。

また、この種の自動車の車輪を支持する車輪用軸受の場合、芯金１６の嵌合部１６ａの外径は４５〜１６０ｍｍ程度となるが、この芯金１６の嵌合部１６ａと外方部材１０とのシメシロ（直径）は０．０５〜０．２５ｍｍの範囲に設定されると共に、嵌合部１６ａに対する環状凸部２０の段差δは０．２５〜０．３０ｍｍの範囲に設定されている。これにより、長期間に亘って外方部材１０と芯金１６との嵌合部の気密性を高めることができる。なお、段差δが０．３０ｍｍを超えると圧入時の抵抗が大きくなり、シール部材のゴム切れが発生する恐れがあると共に、０．２５ｍｍ未満では、気密性の効果が小さくなって好ましくない。

さらに、本実施形態では、圧入後の環状凸部２０の先端位置が、外方部材１０の端部内周に形成された面取り部１０ｅよりも軸受内部側になるように、すなわち、外方部材１０の端部内周面１０ｄ内に収まるように設定されると共に、環状凸部２０の嵌合幅Ｌが０．４３ｍｍ以上、好ましくは、０．４３〜２．５０ｍｍの範囲に設定されている。

次に、本出願人が実施した気密性の試験結果を表１に示す。ここでは、気密性に影響を及ぼす外方部材の端部内周面の真円度と環状凸部の幅の差異による嵌合部のエア漏れを判別した。なお、外方部材の気密性評価のため、外方部材の端部内周面以外はシーラントにて密封すると共に、この端部内周面の真円度は、実機に取り付けた時を想定して外方部材を歪ませて真円度を劣化させている。また、環状凸部の傾斜角αが５〜６°の範囲のものを供試品として使用した。

この試験結果において、比較例では０．１４ＭＰａの低い圧力でエア漏れが発生しているのに対し、実施例では環状凸部の嵌合幅が最悪条件で０．３９ＭＰａの時にエア漏れが発生した。すなわち、外方部材１０の端部内周面１０ｄの真円度の良否に拘わらず、環状凸部の嵌合幅Ｌが０．４３ｍｍ以上、好ましくは、０．４３〜２．５０ｍｍの範囲で優位性が確認でき、コンパクトでエア漏れに効果があることが判った。

図４は、本発明に係る密封装置を備えた車輪用軸受の第２の実施形態を示す縦断面図、図５（ａ）は、図４のアウター側の密封装置を示す要部拡大図、（ｂ）は、（ａ）のＶ部拡大図、（ｃ）は、（ｂ）の変形例を示す拡大図である。なお、前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符合を付して詳細な説明を省略する。

この車輪用軸受装置は第３世代と称される従動輪用であって、内方部材２１と外方部材２２、および両部材２１、２２間に転動自在に収容された複列の転動体６、６とを備えている。内方部材２１は、ハブ輪２３と、このハブ輪２３に所定のシメシロを介して圧入された内輪３とからなる。

外方部材２２はＳ５３Ｃ等の炭素０．４０〜０．８０ｗｔ％を含む中高炭素鋼からなり、外周に車体取付フランジ１０ｂを一体に有し、内周に複列の外側転走面１０ａ、１０ａが一体に形成されている。

ハブ輪２３は、アウター側の端部に車輪取付フランジ４を一体に有し、この車輪取付フランジ４の円周等配位置にハブボルト５が植設されている。また、外周に前記複列の外側転走面１０ａ、１０ａの一方（アウター側）に対向する内側転走面２３ａと、この内側転走面２３ａから軸方向に延びる小径段部２３ｂが形成されている。一方、内輪３は外周に前記複列の外側転走面１０ａ、１０ａの他方（インナー側）に対向する内側転走面３ａが形成され、ハブ輪２３の小径段部２３ｂに所定のシメシロを介して圧入されている。そして、ハブ輪２３の小径段部２３ｂの端部を径方向外方に塑性変形させて形成した加締部２４によって所定の軸受予圧が付与された状態で内輪３が軸方向に固定されている。

外方部材２２の複列の外側転走面１０ａ、１０ａと、これらに対向する複列の内側転走面２３ａ、３ａ間には複列の転動体６、６がそれぞれ収容され、保持器７、７によって転動自在に保持されている。また、外方部材２２と内方部材２１との間に形成される環状空間の開口部のうちアウター側の開口部には密封装置２５が装着され、インナー側の開口部には磁気エンコーダ２６と保護カバー２７が装着され、軸受内部に封入された潤滑グリースの漏洩と、外部から軸受内部に雨水やダスト等が侵入するのを防止している。

ハブ輪２３はＳ５３Ｃ等の炭素０．４０〜０．８０ｗｔ％を含む中高炭素鋼からなり、内側転走面２３ａをはじめ車輪取付フランジ４のインナー側の基部１１から小径段部２３ｂに亙って高周波焼入れによって表面硬さを５８〜６４ＨＲＣの範囲に硬化処理が施されている。なお、加締部２４は鍛造加工後の表面硬さのままとされている。これにより、加締加工が容易となり、加工時の微小クラックの発生を防止すると共に、密封装置２５のシールランド部となる基部１１の耐摩耗性が向上するばかりでなく、車輪取付フランジ４に負荷される回転曲げ荷重に対して充分な機械的強度を有し、ハブ輪２３の耐久性が向上する。

アウター側の密封装置２５は、図５（ａ）に拡大して示すように、外方部材２２のアウター側端部の内周に所定のシメシロを介して圧入された芯金１２と、この芯金１２に接合されたシール部材２８とからなる一体型の密封装置で構成されている。

シール部材２８はＮＢＲ等の合成ゴムからなり、加硫接着によって芯金１２に一体に接合されている。このシール部材２８は、径方向外方に傾斜して形成され、断面が円弧状に形成された車輪取付フランジ４の基部１１に所定のシメシロをもって摺接するサイドリップ２８ａとダストリップ２８ｂ、および軸受内方側に傾斜して形成されたグリースリップ２８ｃとを有している。

ここで、芯金１２は、外方部材２２のアウター側の端部内周面２２ａに圧入される円筒状の嵌合部１２ａと、この嵌合部１２ａから径方向内方に延びる内径部１２ｂを有している。そして、内径部１２ｂから嵌合部１２ａに亙る外表面を覆うように、シール部材２８が回り込んで接合されて環状凸部２９が形成されている。この環状凸部２９は、（ｂ）に拡大して示すように、外方部材２２のアウター側の端面２２ｂ側に向って漸次拡径し、所定の傾斜角αからなるテーパ面に形成されると共に、芯金１２の嵌合部１２ａの外径よりも僅かに大径となる段差δに形成され、外方部材２２の端部内周面２２ａに所定のシメシロを介して圧入されている。なお、前述した実施形態と同様、圧入する前に芯金１２の嵌合部１２ａとシール部材２８の環状凸部２９には、予めグリースが塗布されている。

環状凸部２９の傾斜角αは５〜１５°の範囲に設定され、その段差δは０．２５〜０．３０ｍｍの範囲に設定されると共に、圧入後の環状凸部２９の先端位置が、外方部材２２の端部内周２２ａに形成された面取り部２２ｃよりも軸受内部側になるように設定され、この環状凸部２９の嵌合幅Ｌが０．４３ｍｍ以上、好ましくは、０．４３〜２．５０ｍｍの範囲に設定されている。これにより、圧入時の抵抗を減少させてシメシロを上げることができ、嵌合部の気密性を高めて軸受内部を保護すると共に、シール部材２８の圧入時の損傷を防止して信頼性を向上させることができる。なお、図５（ｃ）は、（ｂ）の変形例であるが、環状凸部２９’のテーパ面を両側に形成しても良い。

図６（ａ）に、図４のインナー側の密封装置を示す。ここで、内輪３には断面略Ｌ字形に形成された支持環３０が外嵌されている。この支持環３０は、内輪３の外径に圧入される円筒部３０ａと、この円筒部３０ａから径方向外方に延びる立板部３０ｂとを備え、立板部３０ｂのインナー側の側面に前述した磁気エンコーダ２６が加硫接着によって一体に接合されている。磁気エンコーダ２６は、合成ゴムにフェライト等の磁性体粉が混入され、周方向に交互に等ピッチで磁極Ｎ、Ｓが着磁されたゴム磁石からなる。

また、支持環３０は、強磁性体の鋼板、例えば、フェライト系のステンレス鋼板や防錆処理された冷間圧延鋼板からプレス加工にて形成されている。これにより、支持環３０が発錆するのを防止すると共に、磁気エンコーダ２６の磁気出力が強くなり安定した検出精度を確保することができる。

外方部材２２のインナー側の端部に装着された保護カバー２７は、非磁性のオーステナイト系ステンレス鋼板からプレス加工にて円環状に形成されている。この保護カバー２７は、外方部材２２の端部内周面２２ｄに圧入される円筒状の嵌合部２７ａと、この嵌合部２７ａから縮径部２７ｂを介して径方向内方に延びる円板状の遮蔽部２７ｃと、この遮蔽部２７ｃから円筒部２７ｄを介して内方部材２１のインナー側の端部を塞ぐ底部２７ｅとを備えている。そして、図示しないセンサの検出部は、保護カバー２７の遮蔽部２７ｃに近接または当接され、検出部と磁気エンコーダ２６とは保護カバー２７を介して所定のエアギャップ（軸方向すきま）で対向配置されている。こうした段付き形状によって保護カバー２７の剛性が高くなり、飛石等による変形を抑えることができると共に、保護カバー２７が非磁性体のため磁束の流れ経路に影響せず、また、耐食性に優れ、長期間に亘って耐久性を向上させることができる。

本実施形態では、保護カバー２７の縮径部２７ｂは、段付き形状をなし、その外周部にシール部材３１が固着されている。このシール部材３１はＮＢＲ等の合成ゴムからなり、加硫接着によって保護カバー２７に一体に接合され、（ｂ）に拡大して示すように、環状凸部３１ａと環状部３１ｂとからなる。環状部３１ｂは嵌合部２７ａの外径よりも僅かに小径に形成されると共に、環状凸部３１ａは嵌合部２７ａの外径よりも僅かに大径に形成され、外方部材２２の端部内周面２２ｄに所定のシメシロを介して圧入されている。これにより、長期間に亘って外方部材２２と保護カバー２７との嵌合面の気密性を高めることができる。

ここで、シール部材３１の環状凸部３１ａは、外方部材２２のインナー側の端面２２ｅ側に向って漸次拡径し、所定の傾斜角αからなるテーパ面に形成されると共に、この環状凸部３１の傾斜角αが５〜１５°の範囲に設定され、また、その段差δは０．２５〜０．３０ｍｍの範囲に設定されている。さらに、圧入後の環状凸部３１の先端位置が、外方部材２２の端部内周２２ｄに形成された面取り部２２ｃよりも軸受内部側になるように設定され、この環状凸部３１の嵌合幅Ｌが０．４３ｍｍ以上、好ましくは、０．４３〜２．５０ｍｍの範囲に設定されている。これにより、圧入時の抵抗を減少させてシメシロを上げることができ、嵌合部の気密性を高めて軸受内部を保護すると共に、シール部材３１の圧入時の損傷を防止して信頼性を向上させることができる。

また、本実施形態では、外方部材２２のインナー側の端面２２ｅが内輪３の大端面３ｂよりもインナー側に段差Ｌ１だけ突出して形成されると共に、保護カバー２７の遮蔽部２７ｃと外方部材２２の端面２２ｅおよび磁気エンコーダ２６の検出面と内輪３の大端面３ｂが略面一になるように設定されている。これにより、保護カバー２７が内輪３に当接するのを防止することができる。また、磁気エンコーダ２６の検出面と内輪３の大端面３ｂが略面一、または、大端面３ｂよりインナー側に僅かに突出するように設定されていれば、保護カバー２７を外方部材２２の端面２２ｅを基準に、また、支持環３０を内輪３の大端面３ｂを基準に精度良く位置決め固定することができ、エアギャップ調整が容易にでき、検出精度を高めることができる。

なお、ここでは、シール部材３１が接合される保護カバー２７の縮径部２７ｂが段付き形状に形成されたものを例示したが、これに限らず、縮径部２７ｂがテーパ状に形成されていても良い。また、なお、回転速度センサ（図示せず）の配置位置によっては、保護カバー２７の遮蔽部２７ｃに近接させる前にシール部材３１に干渉する恐れがあるため、シール部材３１が、少なくとも保護カバー２７を外方部材２２に嵌合する前の単体の状態で、その遮蔽部２７ｃの外側面よりインナー側に突出しないように設定されている。これにより、シール部材３１との干渉を避けるため、回転速度センサを必要以上に磁気エンコーダ２６から遠ざける必要がなくなり、エアギャップを最小限に設定することができ、検出精度を一段と高めることができる。

以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。

本発明に係る車輪用軸受の密封装置は、内輪回転タイプの第１乃至第３世代構造の車輪用軸受に装着される密封装置に適用することができる。

１、２１ 内方部材
２、２３ ハブ輪
２ａ、３ａ、２３ａ 内側転走面
２ｂ、２３ｂ 小径段部
２ｃ セレーション
３ 内輪
４ 車輪取付フランジ
５ ハブボルト
６ 転動体
７ 保持器
８、２５ アウター側の密封装置
９ インナー側の密封装置
１０、２２ 外方部材
１０ａ 外側転走面
１０ｂ 車体取付フランジ
１０ｃ 外方部材のインナー側の端面
１０ｄ、２２ａ、２２ｄ 外方部材の端部内周面
１０ｅ、２２ｃ 外方部材の面取り部
１１ 車輪取付フランジのインナー側の基部
１２、１６ 芯金
１２ａ、１６ａ 嵌合部
１２ｂ、１６ｂ 内径部
１３、１７、２８、２８’、３１ シール部材
１３ａ、１７ａ、２８ａ サイドリップ
１３ｂ、１７ｃ、２８ｂ ダストリップ
１３ｃ、１７ｂ、２８ｃ グリースリップ
１４ シール板
１５ スリンガ
１５ａ、２７ｄ、３０ａ 円筒部
１５ｂ、３０ｂ 立板部
１８ ラビリンスシール
１９、２６ 磁気エンコーダ
２０、２９、２９’、３１ａ 環状凸部
２２ｂ 外方部材のアウター側の端面
２４ 加締部
２７ 保護カバー
２７ａ 嵌合部
２７ｂ 縮径部
２７ｃ 遮蔽部
２７ｅ 底部
３０ 支持環
３１ｂ 環状部
５１ 密封装置
５２ 芯金
５２ａ 外径側円筒部
５２ｂ 内側円輪部
５３ スリンガ
５３ａ 内径側円筒部
５３ｂ 外側円輪部
５４ シール材
５４ａ 外側シールリップ
５４ｂ 中間シールリップ
５４ｃ 内側シールリップ
５５ 基端部
Ｌ 環状凸部の嵌合幅
Ｌ１ 外方部材のインナー側の端面と内輪の大端面の段差
α 環状凸部の傾斜角
δ 環状凸部の段差

Claims (13)

1. 内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、
   一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、
   この内方部材と前記外方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の転動体とを備えた車輪用軸受に装着され、前記外方部材と内方部材との間に形成される環状空間の開口部を密封する車輪用軸受の密封装置において、
   前記外方部材の端部内周面に所定のシメシロを介して圧入される円筒状の嵌合部を有し、鋼板からプレス加工によって形成された芯金を備え、この芯金の嵌合部に合成ゴムからなるシール部材が加硫接着により一体に接合され、このシール部材に前記嵌合部の外径よりも僅かに大径となる段差をもって環状凸部が突出して形成されると共に、この環状凸部が前記外方部材の端面側に向って漸次拡径し、所定の傾斜角からなるテーパ面に形成され、前記外方部材の端部内周面に所定の嵌合幅でもって圧入されていることを特徴とする車輪用軸受の密封装置。
2. 前記環状凸部の段差が０．２５〜０．３０ｍｍの範囲に設定されている請求項１に記載の車輪用軸受の密封装置。
3. 前記環状凸部のテーパ面の傾斜角が５〜１５°の範囲に設定されている請求項１または２に記載の車輪用軸受の密封装置。
4. 前記環状凸部の先端位置が前記外方部材の端部内周に形成された面取り部よりも軸受内部側になるように設定されると共に、当該環状凸部の嵌合幅が０．４３〜２．５０ｍｍの範囲に設定されている請求項１乃至３いずれかに記載の車輪用軸受の密封装置。
5. 前記環状凸部のテーパ面が両側に形成され、その傾斜角が略同一に設定されている請求項１に記載の車輪用軸受の密封装置。
6. 前記芯金の嵌合部と前記シール部材の環状凸部に、予めグリースが塗布されている請求項１に記載の車輪用軸受の密封装置。
7. 前記密封装置が、断面が略Ｌ字状に形成されて互いに対向配置された環状のシール板とスリンガとで構成され、前記シール板が前記芯金とシール部材とからなり、前記スリンガが、前記内方部材の外周に圧入された円筒部と、この円筒部から径方向外方に延びる立板部とを有し、前記シール部材が前記スリンガの立板部に所定の軸方向シメシロを介して摺接するサイドリップと、前記円筒部に所定の径方向シメシロを介して摺接するラジアルリップを備える複合型の密封装置で構成されている請求項１に記載の車輪用軸受の密封装置。
8. 前記密封装置が、前記芯金とシール部材とからなる一体型の密封装置で構成され、前記シール部材が、断面が円弧状に形成された前記車輪取付フランジのインナー側の基部に所定のシメシロをもって摺接するサイドリップとダストリップおよび軸受内方側に傾斜して形成されたグリースリップを一体に有している請求項１に記載の車輪用軸受の密封装置。
9. 前記密封装置が、前記芯金とシール部材とからなるカップ状に形成された保護カバーで構成され、前記芯金が、前記嵌合部と、この嵌合部から縮径部を介して径方向内方に延びる円板状の遮蔽部と、この遮蔽部から段部を介して前記内方部材のインナー側の端部を塞ぐ底部とを備えると共に、前記シール部材が前記縮径部の外周部に接合され、前記環状凸部と、前記芯金の嵌合部の外径よりも僅かに小径に形成された環状部とで構成されている請求項１に記載の車輪用軸受の密封装置。
10. 前記内輪に磁気エンコーダが外嵌されると共に、前記芯金が非磁性体の鋼板からプレス加工によって形成され、この遮蔽部の側面に回転速度センサが近接または当接され、当該遮蔽部を介して前記磁気エンコーダと回転速度センサが所定の軸方向すきまを介して対峙している請求項９に記載の車輪用軸受の密封装置。
11. 前記シール部材が、少なくとも前記芯金を前記外方部材に嵌合する前の単体の状態で、前記遮蔽部の外側面よりインナー側に突出しないように設定されている請求項９または１０に記載の車輪用軸受の密封装置。
12. 前記外方部材のインナー側の端面が前記内輪の大端面よりもインナー側に僅かに突出して形成されている請求項９乃至１１いずれかに記載の車輪用軸受の密封装置。
13. 前記磁気エンコーダの検出面と前記内輪の大端面が略面一、または、前記大端面よりインナー側に僅かに突出するように設定されている請求項９乃至１２いずれかに記載の車輪用軸受の密封装置。

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