第1の発明は、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機で発生した熱を蓄熱する蓄熱材を収容する蓄熱槽とを有し、蓄熱槽は圧縮機の外周面を部分的に覆うように配置し、さらに、蓄熱槽および圧縮機の外周面を覆う防音材を備えた空気調和機であって、蓄熱槽の上部に突起と、防音材に保持部とを備え、保持部に突起を挿入して防音材を装着することにより、狭い空間に効果的に防音材を設置することができ、その結果、防音効果を高めることがで
き、騒音発生等の不具合が抑制される。
第2の発明は、特に第1の発明において、蓄熱槽側の外周面を覆う防音材は蓄熱槽の外周面に沿って配置されるとともに、圧縮機の近傍に配置されるアキュームレータ側の外周面を覆う防音材は、蓄熱槽の一端からアキュームレータの外周面を沿って蓄熱槽の他端に延伸するように覆う最短距離よりも内側に弛ませて、アキュームレータの外周面を覆うことにより、配管を配置する箇所を確保し、また、圧縮機から伝わる振動を配管へ伝うことのない構成にすることができる。
第3の発明は、特に第1または第2の発明において、防音材の最下端部は、圧縮機の設置面よりも所定の距離を開けることにより、外箱底板に溜まる凝縮水などを防音材が吸収して圧縮機周囲を高湿にすることを防止して寿命低下を防ぐことができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る蓄熱装置を備えた空気調和機の構成を示しており、空気調和機は、冷媒配管で互いに接続された室外機2と室内機4とで構成されている。
図1に示されるように、室外機2の内部には、圧縮機6と四方弁8とストレーナ10と膨張弁12と室外熱交換器14とが設けられ、室内機4の内部には、室内熱交換器16が設けられ、これらは冷媒配管を介して互いに接続されることで冷凍サイクルを構成している。
さらに詳述すると、圧縮機6と室内熱交換器16は、四方弁8が設けられた冷媒配管18を介して接続され、室内熱交換器16と膨張弁12は、ストレーナ10が設けられた冷媒配管20を介して接続されている。また、膨張弁12と室外熱交換器14は冷媒配管22を介して接続され、室外熱交換器14と圧縮機6は冷媒配管24を介して接続されている。
冷媒配管24の中間部には四方弁8が配置されており、圧縮機6の冷媒吸入側における冷媒配管24には、液相冷媒と気相冷媒を分離するためのアキュームレータ26が設けられている。また、圧縮機6と冷媒配管22は、冷媒配管28を介して接続されており、冷媒配管28には第1電磁弁30が設けられている。
さらに、圧縮機6の周囲には蓄熱槽32が設けられ、蓄熱槽32の内部には、蓄熱熱交換器34が設けられるとともに、蓄熱熱交換器34と熱交換するための蓄熱材(例えば、エチレングリコール水溶液)36が充填されており、蓄熱槽32と蓄熱熱交換器34と蓄熱材36とで蓄熱装置を構成している。
また、冷媒配管20と蓄熱熱交換器34は冷媒配管38を介して接続され、蓄熱熱交換器34と冷媒配管24は冷媒配管40を介して接続されており、冷媒配管38には第2電磁弁42が設けられている。
室内機4の内部には、室内熱交換器16に加えて、送風ファン(図示せず)と上下羽根(図示せず)と左右羽根(図示せず)とが設けられており、室内熱交換器16は、送風ファンにより室内機4の内部に吸込まれた室内空気と、室内熱交換器16の内部を流れる冷媒との熱交換を行い、暖房時には熱交換により暖められた空気を室内に吹き出す一方、冷房時には熱交換により冷却された空気を室内に吹き出す。上下羽根は、室内機4から吹き
出される空気の方向を必要に応じて上下に変更し、左右羽根は、室内機4から吹き出される空気の方向を必要に応じて左右に変更する。
なお、圧縮機6、送風ファン、上下羽根、左右羽根、四方弁8、膨張弁12、電磁弁30,42等は制御装置(図示せず、例えばマイコン)に電気的に接続され、制御装置により制御される。
上記構成の本発明に係る空気調和機において、各部品の相互の接続関係と機能とを、暖房運転時を例にとり冷媒の流れとともに説明する。
圧縮機6の吐出口から吐出された冷媒は、冷媒配管18を通って四方弁8から室内熱交換器16へと至る。室内熱交換器16で室内空気と熱交換して凝縮した冷媒は、室内熱交換器16を出て冷媒配管20を通り、膨張弁12への異物侵入を防止するストレーナ10を通って、膨張弁12に至る。膨張弁12で減圧した冷媒は、冷媒配管22を通って室外熱交換器14に至り、室外熱交換器14で室外空気と熱交換して蒸発した冷媒は、冷媒配管24と四方弁8とアキュームレータ26を通って圧縮機6の吸入口へと戻る。
また、冷媒配管18の圧縮機6吐出口と四方弁8の間から分岐した冷媒配管28は、第1電磁弁30を介して冷媒配管22の膨張弁12と室外熱交換器14の間に合流している。
さらに、内部に蓄熱材36と蓄熱熱交換器34を収納した蓄熱槽32は、詳細は後述するが、圧縮機6に接して覆うように配置され、圧縮機6で発生した熱を蓄熱材36に蓄積し、冷媒配管20から室内熱交換器16とストレーナ10の間で分岐した冷媒配管38は、第2電磁弁42を経て蓄熱熱交換器34の入口へと至り、蓄熱熱交換器34の出口から出た冷媒配管40は、冷媒配管24における四方弁8とアキュームレータ26の間に合流する。
次に、図1に示される空気調和機の通常暖房時の動作及び冷媒の流れを模式的に示す図2を参照しながら通常暖房時の動作を説明する。
通常暖房運転時、第1電磁弁30と第2電磁弁42は閉制御されており、上述したように圧縮機6の吐出口から吐出された冷媒は、冷媒配管18を通って四方弁8から室内熱交換器16に至る。室内熱交換器16で室内空気と熱交換して凝縮した冷媒は、室内熱交換器16を出て、冷媒配管20を通り膨張弁12に至り、膨張弁12で減圧した冷媒は、冷媒配管22を通って室外熱交換器14に至る。室外熱交換器14で室外空気と熱交換して蒸発した冷媒は、冷媒配管24を通って四方弁8から圧縮機6の吸入口へと戻る。
また、圧縮機6で発生した熱は、圧縮機6の外壁から蓄熱槽32の外壁を介して蓄熱槽32の内部に収容された蓄熱材36に蓄積される。
次に、図1に示される空気調和機の除霜・暖房時の動作及び冷媒の流れを示す模式的に示す図3を参照しながら除霜・暖房時の動作を説明する。図中、実線矢印は暖房に供する冷媒の流れを示しており、破線矢印は除霜に供する冷媒の流れを示している。
上述した通常暖房運転中に室外熱交換器14に着霜し、着霜した霜が成長すると、室外熱交換器14の通風抵抗が増加して風量が減少し、室外熱交換器14内の蒸発温度が低下する。本発明に係る空気調和機には、図3に示されるように、室外熱交換器14の配管温度を検出する温度センサ44が設けられており、非着霜時に比べて、蒸発温度が低下したことを温度センサ44で検出すると、制御装置から通常暖房運転から除霜・暖房運転への
指示が出力される。
通常暖房運転から除霜・暖房運転に移行すると、第1電磁弁30と第2電磁弁42は開制御され、上述した通常暖房運転時の冷媒の流れに加え、圧縮機6の吐出口から出た気相冷媒の一部は冷媒配管28と第1電磁弁30を通り、冷媒配管22を通る冷媒に合流して、室外熱交換器14を加熱し、凝縮して液相化した後、冷媒配管24を通って四方弁8とアキュームレータ26を介して圧縮機6の吸入口へと戻る。
また、冷媒配管20における室内熱交換器16とストレーナ10の間で分流した液相冷媒の一部は、冷媒配管38と第2電磁弁42を経て、蓄熱熱交換器34で蓄熱材36から吸熱し蒸発、気相化して、冷媒配管40を通って冷媒配管24を通る冷媒に合流し、アキュームレータ26から圧縮機6の吸入口へと戻る。
アキュームレータ26に戻る冷媒には、室外熱交換器14から戻ってくる液相冷媒が含まれているが、これに蓄熱熱交換器34から戻ってくる高温の気相冷媒を混合することで、液相冷媒の蒸発が促され、アキュームレータ26を通過して液相冷媒が圧縮機6に戻ることがなくなり、圧縮機6の信頼性の向上を図ることができる。
除霜・暖房開始時に霜の付着により氷点下となった室外熱交換器14の温度は、圧縮機6の吐出口から出た気相冷媒によって加熱されて、零度付近で霜が融解し、霜の融解が終わると、室外熱交換器14の温度は再び上昇し始める。この室外熱交換器14の温度上昇を温度センサ44で検出すると、除霜が完了したと判断し、制御装置から除霜・暖房運転から通常暖房運転への指示が出力される。
以上のような構成の空気調和機において、圧縮機6へ蓄熱槽32を組み付ける構成について、以下、図面を参照しながら説明する。
図4および図5は、圧縮機6へ蓄熱槽32を組み付けた状態の斜視図および正面図である。なお、蓄熱槽32の内部には液体状の蓄熱材36が充填され、蓄熱槽32には内部に冷媒が流通する蓄熱熱交換器34が収容されている。
図4および図5に示すように、蓄熱槽32は、上方が開口した蓄熱槽本体46と、蓄熱槽本体46の上方開口を閉塞する蓋体48とを備える。また、蓄熱槽32は樹脂で構成されている。蓄熱槽32の構成の詳細については後述するが、本実施の形態の蓄熱槽32は、上側の空間と下側の空間とで大きさを異ならせている。
蓄熱槽32の内部に入っている蓄熱材36は液体状であるため、蓄熱材36は上側に行くほど高温の液体が溜まる。そこで、本実施の形態では図4に示すように、蓄熱槽32の上側空間を大きくし、最下部付近の下側空間を小さくすることで、高温の蓄熱材36を多く確保することができる構成としている。もし蓄熱槽32を金属部材で構成した場合、図4に示すような複雑な蓄熱槽32の形状を作り出すことは難しいのに対して、樹脂材料で蓄熱槽32を構成することで、簡単に複雑な形状の蓄熱槽32を作り出すことができる。
さらに、蓄熱槽32の材質として樹脂材料を用いることで、コストを削減できるだけではなく、軽量化も実現することができる。特に、重量物である室外機に搭載するため、蓄熱槽32をより軽量化して、室外機の重量増加を極力抑えることができ、設置性・作業性の向上を実現することができる。
また、図6は、蓄熱槽32が組み付けられた圧縮機6を上方から見た上面図である。図6に示すように、略U字形状に構成された蓄熱槽本体46の一端46aと他端46bとの
間の部分によって、圧縮機6の外周面6aをその周方向に部分的に覆うように構成されている。
具体的には、略U字形状に構成された蓄熱槽32の内周側に圧縮機6を配置し、図6に示すようにAから圧縮機6の外周面に沿ってBに至るまで、蓄熱槽32の内周と圧縮機6の外周とが接している。またAからBに至るまで約180度にわたって圧縮機6と蓄熱槽32とが接触する構成となる。以下、蓄熱槽32と圧縮機6との具体的な接触構造について述べる。
圧縮機6とアキュームレータ26とは、蓄熱槽32に固定される前から、図7に示すように一体化されており、バンド6bで固定されている。また、圧縮機6の外周面6aには、伝熱シート50が密着されている。圧縮機6は、この伝熱シート50を介して蓄熱槽本体46の圧縮機側の外部表面46cと接触する(図8参照)。
伝熱シート50は、自己吸着性を備えた弾性のシートであって、複数の貫通孔50aが形成されている。複数の貫通孔50aは、伝熱シート50と圧縮機6の外周面6aとの間の空気を外に抜くために形成されている。複数の貫通孔50aを介して空気が外に抜けることにより、伝熱シート50と圧縮機6の外周面6aとの密着面積が大きくなり、伝熱シート50と圧縮機6との間の熱伝達性が向上する。
なお、貫通孔50a同士は所定間隔(例えば、10mmピッチ)で離れて設けられており、圧縮機6と伝熱シート50との間に気泡が生じたとしても、所定間隔(本実施の形態では、10mmのピッチ)に制限されて大きな気泡ができることはない。また、所定間隔は本実施の形態のように10mmピッチに限定されることは無く、例えば、1mm〜30mm程度のピッチであっても、気泡の大きさが制限されるため、大きな気泡の介在を防ぐことができる。
一方、図8に示すように、伝熱シート50と接触する蓄熱槽本体46の圧縮機側の外部表面46cの部分には、複数の溝46dが形成されている。複数の溝46dは、伝熱シート50と蓄熱槽本体46との間の空気を外に抜くために形成されている。また、複数の溝46dは、伝熱シート50と圧縮機6との間から貫通孔50aを介して伝熱シート50と蓄熱槽32との間に移動した空気も外に抜く役割をする。なお、複数の溝46dは、伝熱シート50が蓄熱槽本体46に密着したときに空気を外に抜くことができるように、伝熱シート50によって完全に覆われないような長さにされている。また、複数の溝46dは、弾性の伝熱シート50で埋まらない幅や深さを備え、例えば、幅が1mmに決定され、深さが0.5mmに決定されている。
なお、溝46d同士は所定間隔(例えば、10mmピッチ)で離れて設けられており、伝熱シート50と蓄熱槽本体46との間に発生する気泡の大きさを制限している。また、貫通孔50aと同様に、10mmのピッチに限定されることはなく、例えば、1mm〜30mmであっても、ピッチ間隔に気泡の大きさが制限されるので、大きな気泡の介在を防ぐという効果を奏する。
このように、伝熱シート50に所定間隔で貫通孔50aを設け、さらに、蓄熱槽32の内周面に所定間隔で溝46dを設けることによって、圧縮機6と蓄熱槽32とを密着させる時に発生してしまう気泡を外に逃してやることができ、圧縮機6からの廃熱を効果的に蓄熱槽32へ伝えることができる。
なお、本実施の形態では、貫通孔50aを設ける所定間隔と、溝46dを設ける所定間隔とを同じにしているが、これに限定されることはなく、異なる所定間隔でも問題はない
。
次に、蓄熱槽32と圧縮機6とを固定する構成について説明する。図7に示す圧縮機6とアキュームレータ26は、図4や図5に示すように、2本のバンド52、54によって蓄熱槽32に固定される。
図6に示すように、蓄熱槽本体46の端部は、圧縮機6と接触するA点およびB点よりもさらにアキュームレータ26側に延伸している。これは、出来るだけ蓄熱材の量を多くしたいために、圧縮機6と直接接触しないが、高温の蓄熱材36の容積を増やして、除霜運転をしながら暖房運転ができる時間を長くしている。
また、本実施の形態の蓄熱槽32は圧縮機6のみの周囲を覆うように構成されている。これはアキュームレータ26を含めて蓄熱槽32で覆ってしまうと、アキュームレータ26の温度は圧縮機6に比べて低いので、蓄熱槽32の温度を下げてしまい、逆効果となってしまう。よって効果的に圧縮機6の廃熱を蓄熱材36に蓄えようとする場合は、蓄熱槽32を圧縮機6のみの周囲を覆う構成にする方がよい。
ところが、このような蓄熱槽32と圧縮機6とをバンドで固定しようとすると、ある一定のテンションが必要となってくる。そのため、上側のバンド52は蓄熱槽32とアキュームレータ26とを固定することによって、バンド52の締め付け力、ひいては蓄熱槽32と圧縮機6との密着性を高めている。
もし、蓄熱槽32と圧縮機6とをバンドで固定した場合には、蓄熱槽32の両端部からバンド52が圧縮機に接するポイントまでの距離が短く、テンションが弱い。そのため、本実施の形態では、蓄熱槽32とアキュームレータ26とをバンド52で固定しており、その結果、蓄熱槽32の両端部からバンド52がアキュームレータ26に接するポイントまでの距離を長く取ることができ、テンションを強く保つことができる。
一方、下側のバンド54で固定する場所は、アキュームレータ26が無い場所となるため、蓄熱槽32と圧縮機6とをバンド54で固定する必要が出てくる。そのため、蓄熱槽32の最下部付近の一部を、圧縮機6の周方向に切り欠いた切り欠き部46gを設け、蓄熱槽32と圧縮機6とをバンド54で固定する際のテンションを確保するようにしている。その結果、蓄熱槽32の両端部からバンド54が圧縮機6に接するポイントまでの距離を長く取ることができ、テンションを強く保つことができる。
第1のバンドであるバンド52は、アキュームレータ26と蓄熱槽本体46とを固定する。具体的には、蓄熱槽本体46の一端46a、他端46bそれぞれにはバンド52が通過する孔を備えるバンド通し部46eが設けられており、バンド52は、2つのバンド通し部46eを通過した状態でアキュームレータ26に巻回される。
その結果、2つのバンド通し部46eを通過したアキュームレータ26と圧縮機6との間を通るバンド52で後述する突っ張り部材56を抑える構成となり、またアキュームレータ26の(圧縮機6とは反対方向の)外周面を通るバンド52によって、アキュームレータ26と蓄熱槽32とを引き付ける構成となり、ひいては圧縮機6と蓄熱槽32との密着性を高めることができる。
第2のバンドであるバンド54は、圧縮機6と蓄熱槽本体46とを固定する。具体的には、バンド54は、図4に示すように蓄熱槽本体46の反圧縮機側の外部表面46fに沿って巻回され、図5に示すように圧縮機6の外周面6aに沿って巻回される。
また、蓄熱槽32の最下部付近の両端部に切り欠き部46g(蓄熱槽32の上側の両端部よりも周方向に奥側へ移動させた部位)を設けることによって、蓄熱槽32と圧縮機6との密着性を高めることができる。
そして、バンド52を締めることによってアキュームレータ26を介して圧縮機6と蓄熱槽32とが伝熱シート50を介して密着する。それに加えて、バンド54を締めることによって圧縮機6と蓄熱槽32とが伝熱シート50を介して密着する。その結果として、圧縮機6と伝熱シート50との間の空気と、伝熱シート50と蓄熱槽32との間の空気が外に抜ける。
なお、バンド52、54は、クリープ特性を備える、例えばナイロンなどの樹脂から作製されたバンドが好ましい。なお、本明細書で言う「クリープ特性」は、具体的には、締め付け直後から所定の期間はバンドの締め付け力が大きく、時間の経過とともにその締め付け力が低下し、最終的には圧縮機6と蓄熱槽32との固定を維持する締め付け力になるような特性を言う。
例えば、バンド52、54は、締め付け直後は約25kg(キログラム)の締め付け力を発揮することにより圧縮機6と伝熱シート50との間の空気および伝熱シート50と蓄熱槽32との間の空気とを外に抜くことができ、時間の経過とともに締め付け力が低下して最終的には圧縮機6と蓄熱槽32との固定を維持する約5kgの締め付け力に安定するような樹脂から作製されたバンドが好ましい。
これは、製造過程において、圧縮機6と蓄熱槽32とを密着させようと思うと、ある一定の締め付け力が必要である(上述では、約25kgとしているが、これに限定されるものではない)。ところが、この締め付け力のまま維持されると、蓄熱槽32に長時間大きな締め付け力が作用してしまうことになる。そのため、時間が経つにつれて、締め付け力が弱くなり、最終的には圧縮機6と蓄熱槽32との密着が維持できる程度の力(上述では、約5kgとしているが、これに限定されるものではない)となるようなクリープ特性を持った材質の部材を、バンドの材料として採用することが好ましく、蓄熱槽32の耐久性を損なうことがない。
なお、参考までに説明すると、クリープ特性を備えないバンド、例えばステンレスから作製されたバンドの場合、以下のような問題が考えられる。
ステンレスから作製されたバンドの場合、圧縮機6と伝熱シート50との間の空気と、伝熱シート50と蓄熱槽32との間の空気とが外に抜けるような大きい締め付け力で締め付けると、その締め付け力はそのまま維持される。大きい締め付け力が維持されると、蓄熱槽32が蓄熱して高温状態になったときに、すなわち、熱によって蓄熱槽本体46が軟化した場合(特に蓄熱槽本体46が樹脂から作製されている場合)、蓄熱槽本体46が圧縮機6側に向かって変形する可能性がある。そして、圧縮機6と接触する蓄熱槽本体46の部分に応力が集中し、蓄熱槽本体46が破損する可能性がある。または、蓋体48が蓄熱槽本体46から外れる可能性がある。
これとは反対に、小さい締め付け力で締めると、圧縮機6と伝熱シート50との間の空気と、伝熱シート50と蓄熱槽32との間の空気とが十分に外に抜けず、圧縮機6から伝熱シート50を介する蓄熱槽32への熱伝達性が低下する。したがって、バンド52、54は、クリープ特性を備えるのが好ましい。
ところが、バンド52およびバンド54で固定された蓄熱槽32は、バンド52およびバンド54に掛かるテンションにより、蓄熱槽32の一端46aと他端46bとが近くな
る方向に力が掛かっている状態となっている。さらに、樹脂材料で蓄熱槽32を構成しているため、蓄熱槽32が高温になるにつれて膨張し、より一端46aと他端46bとが近くなる方向になってしまい、その結果、図4に示したA点およびB点を中心として応力集中が発生してしまう。
そこで、本実施の形態では、蓄熱槽32の圧縮機6側への変形を抑制するために、突っ張り部材56が、蓄熱槽32に設けられている。圧縮機6とアキュームレータ26とを取り外した状態の図8に示すように、突っ張り部材56は、蓄熱槽本体46の一端46a、他端46bそれぞれのバンド通し部46eの間に介在するように配置される。
具体的には、図9に示すように、突っ張り部材56は、金属性のプレート部材であって、その両端に蓄熱槽本体46のバンド通し部46eと係合する切り欠き部56aを備える。また、突っ張り部材56は、2つのバンド通し部46eが対向する方向に関して該バンド通し部46eと面接触する接触面56bを備える。
このような突っ張り部材56は、蓄熱槽本体46が圧縮機6側に変形しようとすると、すなわち2つのバンド通し部46eが接近しようとすると、接触面56bによって2つのバンド通し部46eの接近を抑制することができる。この突っ張り部材56により、2つのバンド通し部46eを介して蓄熱槽本体46の一端46a、他端46bの接近が抑制され、その結果として蓄熱槽本体46の圧縮機6側への変形が抑制される。
なお、図4に示すように、突っ張り部材56は、バンド通し部46eを通過したバンド52によって蓄熱槽本体46からの脱落を防止されている。すなわち、2つのバンド通し部46eを通過したバンド52に対して、突っ張り部材56は、圧縮機6側に配置されている。
特に、蓄熱槽32が高温になって膨張した時に、突っ張り部材56がたわむ方向に力が掛かる。そこで、バンド52の取り付け位置と、突っ張り部材56の取り付け位置とを高さ方向に同じ位置(重なる位置)に配置することによって、バンド52で突っ張り部材56の背面側を抑える構成となり(図6参照)、突っ張り部材56のたわみも防ぐことができ、ひいては、蓄熱槽32の変形を防ぎ、応力が集中してしまうことを防ぐ。
図10は、蓄熱槽32に収容される蓄熱熱交換器34と蓄熱槽32の蓋体48との斜視図である。
図10に示すように、蓄熱熱交換器34は、例えば銅管等を蛇行状に形成したものであって、両端で蓄熱槽32の蓋体48に支持されている。また、蓄熱槽32内部の蓄熱材の熱量を有効的に使用するため、略U字形状の蓄熱槽32に沿って、蓄熱熱交換器34を蛇行させている。蓄熱熱交換器34の一端は冷媒配管38に接続され、他端は冷媒配管40に接続されている(図1参照)。
次に、蓋体48への蓄熱熱交換器34の固定方法について説明する。蓄熱熱交換器34は、蓄熱材36に対して耐性を持つ弾性材料から作製された栓体58を介して蓋体48に支持されている。図11に示すように、蓄熱熱交換器34の両端は、蓋体48の貫通孔48aに圧入された栓体58の貫通孔58aを通過することにより支持されている。
また、図10に示すように、蓄熱熱交換器34に、蓄熱槽本体46に対して蓄熱熱交換器34を位置決めする位置決め部材60が取り付けられている。
位置決め部材60は、蓄熱材36に対して耐性を持つ弾性材料から作製された部材であ
って、蓄熱熱交換器34の下部(蓄熱槽32の底側)の中央に位置する管の部分に取り付けられる。具体的には、図12に示すように、位置決め部材60は、蓄熱熱交換器34の下部中央に位置する管の部分が通過する貫通孔60aと、貫通孔60a内に蓄熱熱交換器34の管の部分を配置するための切れ込み部60bとを備える。蓄熱熱交換器34の下部中央に位置する管の部分は、切れ込み部60bを通過することにより、貫通孔60a内に配置される。
また、位置決め部材60は、蓄熱熱交換器34が蓄熱槽32内に収容された状態のとき、蓄熱槽本体46の内部表面に形成された凸状係合部46h(図8参照)と係合する凹状係合部60cを備える。このような位置決め部材60により、蓄熱熱交換器34は、蓄熱槽本体46に対して位置決めされる。
さらに、図10に示すように、蓄熱熱交換器34の所定の部分(詳細は後述する)に、蓄熱槽本体46と蓄熱熱交換器34との接触を回避する複数の緩衝部材62が取り付けられている。複数の緩衝部材62は、位置決め部材60と同様に、蓄熱材36に対して耐性を持つ弾性材料から作製された部材であって、位置決め部材60と同様の方法で蓄熱熱交換器34に取り付けられる。
これまでに説明した栓体58、位置決め部材60、および緩衝部材62により、蓄熱熱交換器34と蓄熱槽32との接触によって起こる騒音発生を抑制している。
この騒音発生の原因について具体的に説明する。位置決め部材60、緩衝部材62が存在せず、且つ栓体58の代わりにボルトなどの固定手段によって蓄熱熱交換器34が蓄熱槽32の蓋体48に固定されている場合を考える。この場合、蓄熱熱交換器34は、ボルトなどの固定手段により、弾性材料から作製された栓体58に比べて、堅固に蓋体48に固定される。したがって、蓄熱熱交換器34は、蓋体48に固定された部分を固定端として揺動しやすい。
そのため、圧縮機6の振動が蓄熱槽32に伝わると、蓋体48を介して蓄熱熱交換器34に振動が伝わる。そして、蓄熱熱交換器34は揺動し、蓄熱槽本体46の内部表面と接触して衝突音が騒音として発生する。
このような騒音発生を抑制するために蓄熱熱交換器34は、弾性材料から作製された栓体58を介して蓋体48に支持されている。すなわち、栓体58が、蓋体48から蓄熱熱交換器34へと伝わる振動を減衰させるダンパーの役割をする。また、位置決め部材60が蓄熱熱交換器34の下部を蓄熱槽本体46に対して位置決めすることにより、蓄熱熱交換器34の揺動が抑制される。さらに、複数の緩衝部材62が、蓄熱熱交換器34と蓄熱槽本体46との接触を回避する。
また、図11に示すように、蓄熱熱交換器34の冷媒配管は、弾性材料で構成された栓体58を介して蓋体48に取り付けられるため、栓体58の弾性材料で許容された範囲で蓄熱熱交換器34を動かすことができる。
特に、位置決め部材60を蓄熱槽本体46の内部表面側に出っ張っている凸状係合部46hにはめ込んで蓄熱熱交換器34の位置決めを行なっているため、蓄熱槽32を作る製造工程においては、重量物である蓄熱熱交換器34を蓄熱槽本体46に入れて、位置決め部材60を凸状係合部46hにはめ込む必要がある。
しかしながら本実施の形態では、栓体58があることによって、蓄熱熱交換器34が蓋体48に固定されている箇所に柔軟性を持たせるため、蓄熱熱交換器34を蓄熱槽本体4
6に挿入した後、位置決め部材60を凸状係合部46hへはめ込みやすくなり、蓄熱槽32を製造しやすくなる。
また、蓄熱熱交換器34は銅管で構成されているため、蓄熱熱交換器34を蓄熱槽本体46へ挿入した時に、蓄熱熱交換器34と蓋体48とを固定する箇所を中心に、内周側に傾いてしまう。そのため、栓体58を弾性材料で構成しておくことによって、蓄熱熱交換器34の傾きを吸収し、蓄熱熱交換器34と蓋体48との固定箇所に応力集中が発生しないという特有の効果も有する。
なお、複数の緩衝部材62は、栓体58と位置決め部材60とを用いることにより蓄熱熱交換器34の揺動を抑制した上でなお、蓄熱槽本体46の内部表面と接触する可能性がある蓄熱熱交換器34の部分に取り付けられている。
このような本実施の形態によれば、蓄熱槽32(蓄熱槽本体46)が、一端46aと他端46bとの間の部分によって圧縮機6の外周面6aをその周方向に覆うように構成される場合、蓄熱槽32の一端46aと他端46bのそれぞれに設けられたバンド通し部46eの間に配置されて一端46aと他端46bの接近を抑制する突っ張り部材56により、蓄熱槽32の圧縮機6側への変形は抑制される。これにより、蓄熱槽32の圧縮機6側への変形によって起こりえる蓄熱槽32の破損を抑制することができる。
また、本実施の形態においては、図13に示すように、蓄熱槽32の蓋体48に、平板状の突起63を設けており、さらに、蓄熱槽32および圧縮機6およびアキュームレータ26の外周面を覆う防音材64に保持部64aを設けている。
この突起63(63a、63b)と保持部64a(64e、64f)とは、防音材64を蓄熱槽32および圧縮機6およびアキュームレータ26の外周面に巻回させた時に相対する位置となるように設けられており、突起63に保持部64aを引っ掛けることによって防音材64を装着している。
また、図14に示すように防音材64において、蓄熱槽32および圧縮機6およびアキュームレータ26の外周面に巻きつけた時に防音材64の両端部が貼り合わされる箇所には、テープ64cおよびテープ64dを設けている。なお、テープ64cおよびテープ64dとは互いに貼り合わせたときに、貼り合わせ状態が継続されるように実現可能なもののことをいう。
このように構成することによって、製造時などに防音材64を取り付ける作業は、まず上方側から保持部64aを突起63に引っ掛けることによって、防音材64の位置決めを行なうことができるとともに、テープ64cとテープ64dとを貼り合わせることによって、蓄熱槽32および圧縮機6およびアキュームレータ26の外周面に防音材64を簡単に取り付けることができる。
よって、蓄熱槽32を設けることによって室外機2の内部空間が狭くなっても、簡単に防音材64を蓄熱槽32および圧縮機6およびアキュームレータ26の外周面に取り付けることができ、その結果、防音効果を高めることができる。
また、図15は圧縮機および蓄熱槽に防音材を取り付けた状態の斜視図、図16は同上面図である。図15および図16に示すように、蓄熱槽32側の外周面を覆う防音材64は、蓄熱槽32の外周面に密着するように取り付けられており、その形状は、蓄熱槽32の外周面と略同一となっている。なお、図15に示すように、保持部64fへ突起63bが挿入されており、保持部64eへ突起63aが挿入されている。
しかしながら、アキュームレータ26側の外周面を覆う防音材64は、蓄熱槽32の一端46aからアキュームレータ26の外周面を沿って蓄熱槽32の他端46bに延伸するように覆う最短距離よりも内側に弛ませて、アキュームレータ26の外周面を覆っている。
ここで、最短距離とは、蓄熱槽32の一端46aからアキュームレータ26へ緩みの無い状態でテンションが掛かり、さらにアキュームレータ26から蓄熱槽32の他端46bへ緩みのない状態でテンションが掛かっている状態のことを言い、図16に点線で示す。
ところが、図16に点線で示すように防音材64を配置すると、一端46aからアキュームレータ26までの箇所と、アキュームレータ26から他端46bまでの箇所にはある程度のテンションが掛かっているため、圧縮機6の振動を伝えやすい状態となっている。そのため、室外機2の内部にある冷媒配管等がテンションの掛かっている防音材64へ触れてしまうことで、振動が伝わってしまう。
そこで、本実施の形態では、蓄熱槽32の一端46aからアキュームレータ26を経て他端46bへ至るまでの防音材64を、最短距離よりも内側に弛ませて配置している(実線)。その結果、弛ませた部分に冷媒配管を収めることができるとともに、圧縮機6の振動が伝わることを抑制している。
このように、蓄熱槽32周囲の冷媒配管等の配置状況を考慮して、アキュームレータ26の近傍の余裕を大きくして、圧縮機6とアキュームレータ26との間の凹凸に沿わせて防音材64を設置して凹部64gを設けることで、凹部64gに冷媒配管等を配設することができ、スペースを有効的に活用することができ、さらに防音効果を高めることができる。
さらに、図17は、防音材が組み付けられた状態の圧縮機および蓄熱槽の斜視図である。図17に示すように、防音材64の最下端部は、圧縮機6を搭載支持する設置面である底板65から所定の距離Xを開けている。これは底板65に溜まる凝縮水などを防音材64が吸収して圧縮機6周囲を高湿にすることを防止して寿命低下を防ぐことができる。
なお、所定の距離Xは底板65に溜まる凝縮水が触れない程度の距離とすればよい。すなわち、底板65がトレイ形状になっている場合には、底板65にある程度の凝縮水が溜まる可能性があるが、防音材64の最下端部が溜まった凝縮水に触れなければ問題はない。
以上、上述の1つの実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限定されない。
例えば、上述の実施の形態の場合、蓄熱槽の突起は蓋体に設けたが、蓄熱槽本体に突起を設けて構成してもよい。