従来公知の電子写真方式を利用した画像形成装置においては、一様に帯電させられた感光体などの像担持体上に所望の静電潜像を形成するための光学系が配置されている。当該光学系では、画像信号に応じて変調された光ビームが光源から出射され、当該出射光ビームは、カップリングレンズ、アパーチャー、シリンドリカルレンズなどの適宜適切な光学部材を経由して、ポリゴンミラーなどの偏向器に集光され、さらに、当該偏向器で偏向走査されて、f−θレンズなどの結像光学系によって像担持体上に収束乃至結像されることで、所望の静電潜像を当該像担持体上に形成できるように構成されている。なお、光源から像担持体までの光路は、画像形成装置の小型化のために折り返しミラーなどを用いることで折りたたまれるのが一般的であり、さらに、像担持体での変調タイミングなどを制御するために、走査光学系上流側には、同期検知センサと呼ばれるフォトダイオードが設けられていて、当該同期検知センサ上へも光源からの光ビームが達するように、ミラーなどの光学部材が配置されているのが一般的である。
ここで、この種の光学系において、像担持体上に静電潜像を形成するべく入射される光源からの入射光の光パワー乃至光量は、像担持体の分光感度特性などの特性に応じた所定の光量に設定されている必要があるため、光源の発光出力をコントロールできるようにするか、又は、光源から像担持体までの光学系における光利用効率をコントロールできるようにするか、あるいは、この両者、すなわち光源の発光出力と光利用効率とをコントロールできるようにする必要がある。ただし、光源の発光出力は大きくなればなるほど光の発振特性が良化される傾向にあり、そのため、光源は定格出力を超えない範囲内ではあるが高出力で動作させた方が画像品質が良化するので、光源を高出力な状態で動作させるのが好適であることがわかっている。したがって、従来公知の画像形成装置では、像担持体上で要求される光量よりも高出力な光量を発生可能な光源を高出力で動作させる構成を採用する一方で、当該光源から像担持体までの光学系における光ビームの光利用効率を調整可能なように構成していることが往々にしてある。
また、この種の電子写真方式の光学系では、例えば出荷時や組み立て時などにおいて光源からの光ビームの光量を分光感度特性などの感光体特性に応じた光量に調整しておいたとしても、経時的な像担持体の劣化などに対応するべく、当該光量を所定の領域で変化させることができるようにも構成するのが一般的である。さらにまた、このような電子写真方式の画像形成装置において、一般にプロセスコントロールと称される良質な画像を形成するための画像乃至画質調整を行うことが従来から知られていて、この画像調整は、記録媒体上に形成されるべき出力画像の画像濃度、諧調性などの画像品質が変動するのを防止するために行われているが、この画像濃度や諧調性などを調整するためにも、光源からの光量は所定の領域で変化させることができるように構成されている。
その一方で、光源から像担持体までの全光学系の光利用効率は、カップリング効率に加え、偏向器、結像光学系、折り返しミラーなどの光学部材における透過率や反射率などの掛け算によってもたらされ、各々の光学部材の成形バラツキなどによって、全光学系の光利用効率もばらついてしまう。そのため、像担持体で要求される所定の光量の変化範囲が広かったり、全光学系の光利用効率のバラツキが広かったりすると、それに伴って光源が発する光ビームの光量の調整範囲も広くなってしまい、その結果、光源が発する光量の調整必要範囲が光源の定格出力範囲を超えてしまう場合もある。そのため、先に記述した光源の安定性の観点から高出力で動作させたいという要望に加え、光源からの光量の調整範囲の観点からも、あえて像担持体が要求する光量よりも高出力な光量を出射させることのできる光源を用いた上で、像担持体上に到達する光量を調整するべく、全光学系の光利用効率を調整する必要が生じることもある。
この光源からの光量の調整範囲の観点に関しては、従来から頻繁に用いられている単独の発光源を利用する光源(例えば半導体レーザーなど)が採用されている場合には、当該光源は、その性質上比較的広範囲で安定的な光ビームを出射することができるので、比較的容易に広範囲の光量調整が可能であるが、近年非常に注目されている、複数の面発光源を用いて複数の走査線を一時に光走査するマルチビーム方式の光源(例えば、特許文献1参照)では、その性質上あまり広範囲で光ビームの光量を調整することができず、この種のマルチビーム方式の複数の発光源を有する光源を採用する場合には、像担持体上に達する光量に余裕を持たせるために、高出力な光源を採用した上で、光学系の光利用効率を調整するように構成する傾向がある。
そこで、従来の光走査装置における光源から像担持体までの光学系においては、光源からの光量が最終的に像担持体上で必要とする光量となるように光学系の光利用効率を調整するべく、例えばカップリングレンズとシリンドリカルレンズとの間に光ビームの透過率を制限することが可能な光量調整素子を着脱可能乃至選択可能に構成し、光量調整素子を除いた光学系構成部材を全て配置した後で、像担持体上へ実際に到達する光量を測定するなどして、当該必要とされる光量に応じた透過率を有する光量調整素子を選別配置するなどの対応を取ってきた。このような光量調整素子を用いる光学系の一例が、特許文献2に開示されており、この特許文献2では、ガラスなどの基板上に透過率を下げるコーティングが施された光量調整素子を複数個配置し、像担持体に要求される光量に応じた光透過率に対応して、適切な光量調整素子を切換可能とした構成を開示している。
しかしながら、光量調整素子を配置する場合、光量調整素子で最も安価な形状は平板形状であることから、当該平板形状の光量調整素子を用いるのが最もコスト的に有利であるが、平板形状の光量調整素子に光ビームが入射すると、採用されている光源の種類(例えば、半導体レーザーのような単独の発光源を有する光源であるのか、あるいは、マルチビーム方式のような複数の発光源を有する光源であるのか)にかかわらず、光量調整素子の入射面と出射面との間、すなわち光量調整素子の内部で内部多重反射による干渉現象が生じてしまうという問題がある。このような多重反射による干渉が起きていると、例えば設置環境温度の変動などに起因して光源から発する光ビームの波長が微小に変動するだけで、光量調整素子へ入射する光量が変わらずとも、光量調整素子から出射される光量が変動してしまい、その結果、光量調整素子に求められる所定の透過率が変動してしまうという現象が生じる。光量調整素子の透過率が所望の値から変動してしまえば、当然ながら像担持体に到達する光量が当該像担持体で要求される光量に対して変動してしまい、形成されるべき画像に濃度ムラが発生したり、あるいは、当業者には筋画像と称されるような異常画像が形成されてしまったりするという問題を引き起こすことになる。したがって、この種の内部多重反射に起因した透過率変動による形成画像への干渉はできるだけ防止したいが、平板状の光量調整素子に光を入射して通過させれば入射面と出射面との間で内部多重反射が生じてしまうことは避けられず、その結果、例えば設置環境温度の変動などに起因して光源から発する光ビームの波長が微小に変動するだけで透過率変動が生じてしまうことが避けられない。
ここで、この種の内部多重反射に起因する透過率変動の、像担持体上に形成されるべき静電潜像に対する影響乃至干渉は、光量調整素子の透過率が小さいほど顕著になる。これをさらに説明すると、内部多重反射による入射光ビームに対する透過率変動が一定であると仮定した場合、光学系で求められる光量調整素子の透過率が高い場合は、透過する光量が多いために所定の値で起こる透過率変動による形成画像への影響は、透過光ビームに対して比較的少ないが、透過率が低い場合には、透過する光量が少ないために所定の値で起こる透過率変動による形成画像への影響は、透過光ビームに対して比較的影響が大きい。具体的には、所定の透過率に対する内部多重反射による透過率変動率が3%である場合を仮定すると、光量調整素子の透過率が90%である場合には、透過率が変動してしまった出射光の光量は87〜93%の間である一方で、光量調整素子の透過率が20%である場合には、透過率が変動してしまった出射光の光量は17〜23%の間にあることになる。この場合において、光量調整素子の透過率が90%であった場合の、当該透過率に対する透過率変動の寄与率は、透過光の光量が87%では、1−87/90=0.034で、出射されるべき所望の光量に対して約3%である一方で、透過率20%での出射光の光量が17%であった場合の多重反射による透過率変動の寄与率は、1−17/20=0.15で、出射されるべき所望の光量に対して15%と大きく、その結果、像担持体上で要求される光量に対しての変動が大きくなるため、形成されるべき画像への影響が大きくなる。
したがって、光量調整素子における内部多重反射による透過率変動が起こす形成画像への影響をなるべく少なくするために、光量調整素子の透過率はできるだけ高く設定しておくのが好ましい。しかしながら、その一方で、先に記述したように光源はできるだけ高出力で動作させたいため、あるいは、高出力で動作させることが要求されるため、光源から像担持体までの光学系における光利用効率を低透過率に設定しなければならない場合もあり、特に、先に記述したマルチビーム方式の光源であって、出射光ビームの光量を大きく変動させることができない複数の面発光源を有する光源が採用される場合には、光源側で出射される光量を広範囲に調整することが困難であるため、光利用効率を低透過率に設定する必要性が高まってしまう。そのため、従来の光量調整素子だけを用いて光学系の光利用効率を制御する構成では、当該光量調整素子の透過率を低くせざるを得ない場合もあり、このような場合に対応するべく、内部多重反射を抑えて、透過率変動を低減するための構成が種々考えられてはいるものの、この種の内部多重反射を抑える構成は高価であったり、配置構成が複雑となったりするなどの多くの欠点を有すると共に、特に、光量調整素子における透過率を20%以下にまで設定しなければならなくなってくると、平板状に形成された光量調整素子だけでは、例えば光源から出射される光ビームの波長が微小変動したことから出発する光量調整素子の内部多重反射による透過率変動を、画像品質に影響を及ぼさない程度まで低減することができないという問題があった。
以下、本発明の実施の形態を添付図面に従って説明する。
最初に、図6を用いて本発明の光走査装置502が設けられるような画像形成装置100の構成を説明する。ここで、図6は、画像形成装置の一例としてのフルカラープリンタの概略断面図を示したものであり、この図1に示されるような画像形成装置100は、後述する光走査装置502以外、特に光量調整素子120及び少なくとも一つのレンズで構成された第二レンズ配列104の構成と作用以外は当業者に従来からよく知られた画像形成装置であるため、その構成と動作については概略で説明する。
図6に示される画像形成装置100は、電子写真方式の4つの画像形成手段1a、1b、1c及び1dが設けられている。この第1〜第4の画像形成手段1a、1b、1c及び1dは、それぞれ同一の構成ではあるが、対応するトナー色だけが異なっており、これら画像形成手段において、例えばブラックトナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像及びイエロートナー像がそれぞれ形成される。なお、これら画像形成手段は現像剤(トナー)色の違い以外はそれぞれ同一の構成であるため、以下の説明では、添え字a、b、c及びdを必要に応じて適宜省略して説明する。
ここに図示した画像形成手段1には、像担持体であるドラム状の感光体11が半時計回りに回転駆動可能に配置されており、当該感光体11のまわりに、帯電部材12、現像装置13及びクリーニング手段18などが設けられている。また、当該回転駆動する感光体11の表面は、帯電部材12に所定のバイアス電圧を印加することにより一様に帯電できるようになっている。なお、ここに図示した帯電部材12は、感光体10に接触するローラ状部材を採用しているが、コロナ放電などを利用する非接触式のものを採用することも可能である。
また、図6に示される画像形成装置では、4つの画像形成手段1の上方に、後述する光走査装置502が対応して4つ設けられている。この光走査装置502は、光源、偏向器である回転多面鏡として構成されたポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラーなどの適宜適切な光学構成部材を有しており、各色トナーの画像データに応じて形成された画像情報に基づいて、帯電部材12により帯電させられた各感光体11を光走査乃至露光し、それぞれの感光体11上に所望の静電潜像を作り出すために設けられる。この光走査装置502を用いて感光体11上に形成された静電潜像は、感光体11の回転により現像装置13を通るときに各色トナーが付与されることで現像され、顕像化される。
さらに、この各画像形成手段1の感光体11に対向・当接して、中間転写体として構成される無端ベルト状の中間転写ベルト14が配置されている。図5に示した中間転写ベルト14は、複数の中間転写ベルト支持ローラ31、32、33、34に外接及び内接されて配置構成されており、これら支持ローラのうちの一つが、図示しない駆動源としての駆動モータと連結されることで駆動ローラとして構成されている。そして、駆動モータを駆動させることで伝達された駆動力により駆動ローラが回転することで、中間転写ベルト14は、図中反時計回りに回転移動すると共に、駆動ローラ以外の従動回転可能な支持ローラが中間転写ベルト14の回転に伴って従動回転させられる。また、中間転写ベルト14の裏面には、そのベルトを挟んで感光体11に対向して位置する一次転写ローラ(図示せず)が配置されている。この一次転写ローラにやはり図示しない高圧電源から一次転写バイアスが印加され、現像装置13により顕像化されたトナー像が中間転写ベルト14に一次転写されるようになっている。なお、一次転写されずに感光体11上に残された一次転写残トナーは、感光体11による次の画像形成動作に備えるためにクリーニング装置18により除去され、感光体11上におけるトナーが完全に除去される。
さらにまた、図示した画像形成装置100では、上記した中間転写支持ローラの一つであるローラ31と中間転写ベルト14を挟んで対向する位置に、二次転写装置の構成部材としての二次転写ローラ48が配置されていて、この二次転写ローラ48には、中間転写ベルト14上のトナー像を記録媒体に転写するために所定の電圧が印加される。なお、ここに例示した二次転写ローラ48は、これと対をなすローラ49とで搬送ベルト44をかけ回しており、搬送されてきた記録媒体を当該搬送ベルト44を介して搬送方向下流側へ搬送する搬送ローラとしても機能する。また、当該画像形成装置100は、記録媒体を積載するための給紙カセット60、給送コロ54に加え、レジストローラ対56などを備えると共に、二次転写ローラ48から見て、記録媒体の搬送方向下流側には、熱と圧力とを記録媒体に加えて未定着トナー像を記録媒体に定着させるために加圧ローラと加熱ローラとのローラ対からなる定着装置50が配置され、当該定着装置50を出た記録媒体は、図示しない記録媒体排出部に排出される。
次に、この画像形成装置における画像形成動作について説明する。この画像形成動作においても、各感光体11にトナー像を形成し、そのトナー像を中間転写ベルト14に転写する構成は、そのトナー像の色が異なるだけで、実質的に全て同一であるため、添え字a,b,c及びdは必要に応じて適宜省略する。
まず、図示しないパーソナルコンピューターなどからの画像形成信号を受けた画像形成装置では、上記した感光体11が図示しない駆動源により半時計回り方向に回転駆動を開始させられ、このとき感光体11表面にやはり図示しない除電装置からの光が照射されて表面電位が初期化される。この表面電位を初期化された感光体11の表面が、今度は帯電部材12によって所定の極性に一様に帯電させられる。帯電させられた感光体11表面には、後述する光走査装置502からのレーザー光が照射され、これによって感光体11表面に所望の静電潜像が形成される。なお、光走査装置502から各感光体11に露光乃至光走査される画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、シアン、マゼンタ及び黒の各トナー色情報に分解した単色の画像情報である。このように感光体11上に形成された静電潜像は、現像装置13を通る際に、当該現像装置13から各色トナー(現像剤)が付与され、顕像化されたトナー像として可視化される。
ここで、中間転写ベルト14は、図中反時計回りに走行駆動させられるが、上記した図示しない一次転写ローラには、感光体11上に形成されたトナー像のトナー帯電極性と逆極性の一次転写電圧が印加される。この一次転写電圧の作用により、感光体11と中間転写ベルト14との間に一次転写電界が形成され、感光体11上のトナー像が、その感光体11と同期して回転駆動されている中間転写ベルト14上に静電的に一次転写される。このように一次転写される各色トナー像は、中間転写ベルト14の搬送方向上流側から逐次タイミングを併せて中間転写ベルト14上に重ね合わされ、所望のフルカラートナー像が中間転写ベルト14上に形成される。
その一方で、画像を形成されるべき記録媒体は、給紙カセット60に積載された記録媒体束から給送ローラ54などの適宜適切な搬送部材の作用によりレジストローラ対56まで一枚ごとに分離されて給送され、未だ回転駆動を開始していないレジストローラ対56のニップ部まで搬送される。その際、レジストローラ対56においては、搬送されてきた記録媒体の先端が当該レジストローラ対56におけるニップ部に突き当たり、所謂ループを形成することで、記録媒体のレジストレーションが行われる。その後、中間転写ベルト14上に担持されたフルカラートナー像とのタイミングを図って、レジストローラ対56の回転駆動が開始され、二次転写ローラ48と、これに中間転写ベルト14を介して対向する中間転写ベルト支持ローラ31とで構成される二次転写部に向けて記録媒体が送出される。本実施例では、二次転写ローラ48に所定の転写電圧が印加され、これによって中間転写ベルト14表面に形成されたフルカラートナー像が記録媒体上に一括して転写され、当該記録媒体上で未定着トナー像として担持される。トナー像を転写された記録媒体は、定着装置50までさらに搬送され、当該定着装置50を通過するときに、この定着装置50で熱と圧力とを加えられ、半永久的なフルカラー画像として記録媒体に定着させられる。定着装置50で画像を定着させられた記録媒体は、さらに搬送されて、図示しない搬送ローラ対などを介して排出トレイなどの記録媒体排出部に排出されることで画像形成動作が完了する。なお、二次転写ローラ48が配置される二次転写部で転写されずに中間転写ベルト14上に残留した残留トナーは、図示しない中間転写ベルトクリーニング手段により取り除かれ回収される。
次に、図1及び図2を用いて、図6に一例として示されるような画像形成装置100に搭載される光走査装置502の構成と作用とについてさらに説明する。なお、ここに示される光走査装置502も、後述する光量調整素子120及び少なくとも一つのレンズで構成された第二レンズ配列104の構成と作用以外は、当業者によく知られた構成であるため、光走査装置502全体としての構成については概略で説明する。
図1は、本発明が適用された光走査装置502の一例を概略斜視図で示したものであり、図2は当該光走査装置502の光路であって、光源101から偏向器としてのポリゴンミラー105までの光路を説明するために、当該光源101からポリゴンミラー105までの光路を概略で抽出した説明図であり、図a)は、当該光路の上面図を、図b)は、当該光路の側面図を示す。
図1及び図2に示されるように、本発明の光走査装置502は、光源101と、当該光源から発せられた光ビームを略平行にするための第一レンズ配列としてのコリメートレンズ102と、このコリメートレンズ102により略平行にされた光ビームのサイズを規制するための開口を有するアパーチャー103と、コリメートレンズ102及びアパーチャー103を経た略平行で且つサイズを規制された光ビームを、偏向器であるポリゴンミラー105上で副走査方向に集光させるために、当該光ビームを非平行に形成する第二レンズ配列としてのシリンドリカルレンズ104と、上記した偏向器としてのポリゴンミラー105と、をまずは備えて成る。なお、図示した例では、発明の理解を助けるために、第一レンズ配列102は、単独のコリメートレンズを用いる例を示したが、本発明はこれに限られることなく、複数のレンズで第一レンズ配列102を構成することもできるし、同様に、図示した例では、第二レンズ配列104を単独のシリンドリカルレンズで構成した例を示しているが、複数のレンズで第二レンズ配列104を構成することもできる。言い換えれば、本発明では、第一のレンズ配列102及び第二のレンズ配列104は、少なくとも一つのレンズを有していれば良い。さらにまた、第二レンズ配列104は、シリンドリカルレンズ以外のレンズでも適用が可能であり、例えば回折面を有する回折レンズで構成してもよい。
次いで、偏向器であるポリゴンミラー105により偏向走査された光ビームは、f−θレンズ106、面倒れ補正レンズ107などの適宜な光学部材を通り、第一折り返しミラー108、第二折り返しミラー109及び第三折り返しミラー110によって光路を折り畳まれて、像担持体11まで達し、当該像担持体11上で所望の静電潜像を形成するために像担持体11を走査する。
ここで、本発明では、第一レンズ配列であるコリメートレンズ102と第二レンズ配列であるシリンドリカルレンズ104との間に光量調整素子120を設けている。この光量調整素子120は、先に記述したように、できるだけ高出力で動作させたい、あるいは、高出力で動作させることが要求される光源101からの光ビームの光量を、像担持体11上では所望の光量に調整するために設けられているものであり、光源101から像担持体11までの光学系における光利用効率を調整するべく、所定の光透過率を持って配設されている。したがって、この光量調整素子120は、ガラスや透明樹脂などの基材を有し、当該基材の入射面あるいは出射面のいずれかに透過率を下げるコーティング、例えば当業者にはND(neutral density)膜と称されるコーティング121が施されて構成される。当該透過率を下げるための光量調整素子透過率低減コーティング121は、例えばアルミやチタンさらにはこれら金属の酸化物などの金属膜であってもよいし、樹脂などから構成される誘電体膜であってもよい。さらに、金属膜や誘電体膜を多層膜として構成することもできるし、金属膜と誘電体膜とが積層された異種多層膜としても構成することも可能である。これをまとめると、光量調整素子透過率低減コーティングは、金属膜又は誘電体膜単独で構成してもいいし、金属膜及び/又は誘電体膜の多層膜として構成してもよい。
なお、金属膜であれば、波長や入射角などに対して依存性がなく一律に膜厚に応じて透過率を落とすことが可能である一方で、誘電体膜は入射する光ビームの波長や入射角に依存する性質があり、最適な膜厚や材質などを選ぶ必要がある。しかしながら、本発明における誘電体膜は、単独で構成することも可能であるが、特に誘電体多層膜とすることで、透過率や入射角などの使用目的乃至使用状況に応じた設計が可能であり、誘電体膜を使用する場合は設計自由度が高いという利点がある。どのような構成の光量調整素子透過率低減コーティング121を用いるかは、使用状況などに応じて、あるいは、実機での実験などを通じて、膜厚や材料、あるいは金属膜や誘電体膜の積層構成など最適なものを選べばよい。ここに図示した例における光量調整素子透過率低減コーティング121は、誘電体多層膜、金属膜、誘電体多層膜を光路上流側から順に積層して構成している。
このように構成される光量調整素子120は、図1や図2に示されるように、最も安価な構成として平板状に構成されるのが、光走査装置及びこれが搭載される画像形成装置のコスト的に好ましい。しかしながら、この光量調整素子120を平板状に構成すると、図3の左方の図における矢印で示されるように、その入射面と出射面で、すなわち光量調整素子120内部で内部多重反射を引き起こしてしまうことが避けられない。なお、図3は、光量調整素子120と、第二レンズ配列としてのシリンドリカルレンズ104とにおける内部多重反射を説明するための概略断面図であり、また、本発明の光量調整素子と第二レンズ配列との構成を示すための図でもある。この内部多重反射は、光量調整素子120における出射面での反射と入射面における反射とを繰り返すことで発生し、内部多重反射を経て光量調整素子120から出射される光ビームの光量は、光ビームの波長と、光量調整素子120の厚みとなどの関係で位相を変化させ、その結果、光量調整素子120から出射される光量は、入射される光ビームの波長変動などに応じて、当該内部多重反射の影響を受けて強めあったり、弱めあったりすることになる。すなわち、光量調整素子120の透過率は、入射される光ビームの波長変動などに応じて、所定の透過率から変動してしまう。
ここで、先に記述したように、光源101からの光ビームを安定させるためや、光源の種類などに起因して、できる限り高出力で光ビームを出射しなければならないあるいは高出力な光源を使用しなければならない場合には、この光学系の光利用効率が例えば20%程度にまで低減する必要が生じてしまう場合がある。特に従来から非常に良く用いられてきた半導体レーザーなどの光源においては、比較的に安定した光ビームを広い出力範囲で発生させることができたが、近年非常に注目されてきている複数の発光源を有する面発光型レーザーを用いたマルチビーム方式などでは、その構成上、光源の光量は出力範囲が狭い場合が多いので、光量調整素子120が有する透過率を低く設定して、光学系の光利用効率を調整する必要が生じる。
ところが、先に記述したように光量調整素子120を最もコスト的にメリットのある平板形状で構成した場合で、特に光量調整素子120に求められる透過率が低い場合には、光量調整素子からの出射光における内部多重反射による透過率変動の影響が大きくなってしまうという問題がある。光源101の波長が微小に変動するなどしただけで、透過率変動の影響が大きくなってしまえば、設置環境温度などが微小に変動しただけで容易に像担持体11上に形成されるべき画像に濃度ムラが発生したり、筋画像などの異常画像が発生したりする不具合が生じてしまう。
このような現象の一例を説明すると、背景技術の欄でも説明したが、内部多重反射に起因する透過率変動の、像担持体上に形成されるべき静電潜像に対する影響は、透過率変動率が入射光の光量に対して3%である場合を仮定すると、光量調整素子の透過率が90%である場合には、透過率が変動してしまった出射光の光量は87〜93%の間である一方で、光量調整素子の透過率が20%である場合には、透過率が変動してしまった出射光の光量は17〜23%の間にあり、この場合において、光量調整素子の透過率が90%であった場合の、当該透過率に対する透過率変動の寄与率は、出射光の光量が87%では、1−87/90=0.034となり、出射されるべき所望の光量に対して約3%である一方で、透過率20%での出射光の光量が17%であった場合の内部多重反射による透過率変動の出射光への影響は、1−17/20=0.15で、出射されるべき所望の光量に対して15%と大きく、その結果、像担持体11上に形成されるべき静電潜像に対して大きく影響する。これは、透過率90%の場合では出射されるべき所望の光量に対して内部多重反射による透過率変動の影響は約3%でしかないために、形成されるべき画像へはさしたる影響を与えないが、透過率20%での場合では、出射されるべき所望の光量に対して透過率変動が15%もの影響を与えることになるため、像担持体11上に形成されるべき静電潜像が影響されて、濃度ムラや筋画像といった画像不良を引き起こす場合があることを意味する。このため、従来から光量調整素子120における内部多重反射率を低減させて、透過率変動を低減させる試みが多数検討されたが、総じてこの種の内部多重反射率を低減させるための構成は高価であったり、光学系が複雑になるなど欠点が多く、さらには、実際の実機の実験においても、光量調整素子120の透過率を20%程度にまで低く設定しなければならない場合には、光源からの波長を微小に変動させただけで、形成されるべき画像に濃度ムラや筋画像などの影響が生じてしまうことが判明しており、これは、内部多重反射による透過率変動の、形成されるべき画像への影響が大きいことによるものであると考えられる。
したがって、透過率変動の形成画像への影響をなるべく低くするために、光量調整素子120の透過率は、できる限り高く設定したいのが実情であるが、この場合、光量調整素子120だけでは像担持体11が要求する光量まで光源101からの光量を低減することができない。
そこで、本願発明では、第二レンズ配列であるシリンドリカルレンズ104は、入射する光ビームを偏向器であるポリゴンミラー105に集光するためにレンズが平面状には構成されていないことにまずは着目し、当該第二レンズ配列104に透過率を低減するコーティングを施すことを考え出した。ここで、図4の右方にも示されているように、第二レンズ配列であるシリンドリカルレンズ104は、その一方の面が曲面状であり、すなわち非平面に構成されているため、第二レンズ配列104に入射した光ビーム出射面での反射光は、当該第二レンズ配列内部で分散されるか又は集束点に再度向かうため、内部多重反射による透過率変動の影響が生じがたいという特性を有している。
そこで、特に低透過率が求められる光学系においては、光量調整素子120に光量調整素子透過率低減コーティング121を施すのと同時に、少なくとも1つのレンズで構成される第二レンズ配列の内の少なくとも一つのレンズの入射面又は出射面の少なくともいずれかに、透過率を下げる第二レンズ配列透過率低減コーティング131を施し、さらに、光量調整素子透過率低減コーティング121は、第二レンズ配列透過率コーティング131よりも高い透過率を有するように構成して、光源101から像担持体11までの光学系全体で像担持体11が要求する所望の光量に調整することを達成するのと同時に、内部多重反射による透過率変動の影響を受けやすい光量調整素子120には、多少の内部多重反射に起因する透過率変動が起こっても、形成されるべき画像に影響が起こらない乃至許容できるほどの高い透過率に設定することをさらに考え出した。
このように構成することで、多重反射による透過率変動の影響の少ない第二レンズ配列に透過率の低い第二レンズ配列透過率コーティングを施し、多重反射による透過率変動の影響の大きい光量調整素子120には透過率の高い光量調整素子透過率低減コーティングを施せるようになるので、特に光源101から像担持体11までの光利用効率を低透過率に設定する際に、光量調整素子120においてはできる限り透過率を高く設定できるようになり、内部多重反射に起因した透過率変動による、形成されるべき画像への悪影響を低減することができるようになる。
なお、第二レンズ配列透過率低減コーティング131は、光量調整素子透過率低減コーティング121と同様のコーティングを採用することが可能であり、先に光量調整素子透過率低減コーティング121の構成で説明した構成を採用することができる。すなわち、第二レンズ配列透過率低減コーティング131は、金属膜又は誘電体膜単独で構成してもよいし、金属膜及び/又は誘電体膜の多層膜として構成してもよい。また、この第二レンズ配列透過率低減コーティング131は、第二レンズ配列の入射面又は出射面のいずれかに施されていればよいが、図3に示されているように、曲面状の非平面側であるシリンダ面に施されている方が、第二配列透過率低減コーティングによる反射光が光源101上に集光することを防止できるため好適である。なお、ここに図示した例では、第二配列透過率低減コーティング131は、誘電体多層膜、金属膜を光路上流側から順に積層して構成されている。
本願発明のさらに好適な実施例としては、図3に示されるように、光量調整素子120の入射面側に光量調整素子透過率低減コーティング121を施すと共に、光量調整素子120の出射面側にはAR(Anti Refect)膜などの反射防止コーティング122を設けるとよい。このように出射面側に光量調整素子反射防止コーティング122を設けることで、出射面側から入射面側に反射する光ビームが低減されるので、光量調整素子120における内部多重反射自体が低減されるようになるため好適である。
ここで、反射防止コーティングとは、一般に当業者にはAR膜などとも称されてよく知られたものであり、先に記述したND膜とも非常に構成がよく似たものであるが、以下に概略でその構成及び作用を示しておく。一般に、AR膜とは、外光が膜に入射する場合、膜の表面で反射する光と、透過して奥で反射する光に別れるが、両者は1/2波長ずれた逆位相になるという性質を利用して、表面反射光と透過した奥の面で反射する反射光とが打ち消しあうように膜の厚みを入射光の1/4波長倍になるように構成された膜であり、当該膜の構成材料としてよく知られた代表的なものとして、Ta2O5や、SiO2、MgF2などがあげられる。単独の金属層や誘電体膜層として構成することもできるが、実際には、最適な厚みは入射光の波長や入射角に依存するため、最適化するために多層膜として構成されることが多く、また好適である。この反射防止膜に関しても、実機での実験などから最適な材料及び膜厚を最適化することができる。
なお、図3に示される実施例では、当該光量調整素子反射防止コーティング122は、光量調整素子120の入射面とは逆側の出射面側で誘電体多層膜として構成しているが、誘電体多膜層、金属膜、誘電体多膜層を光路上流側から順次に積層させてもよい。さらにまた、図3に示した実施例では、第二レンズ配列104の出射面側にも誘電体多膜層として構成された第二レンズ反射防止コーティング132を設けている。このように、第二レンズ配列104の出射面側に反射防止コーティング132を設けてもよく、また、当該第二レンズ配列反射防止コーティング132は、光量調整素子反射防止コーティングと同様に誘電体多膜層、金属膜、誘電体多膜層を光路上流側から順次に積層させて構成することもできる。さらにまた、図示したように、これら光量調整素子反射防止コーティング122と第二レンズ配列反射防止コーティング132とを併用することも可能であるし、どちらか一方のみを配置することも可能である。
さらにまた、本発明では、光量調整素子透過率コーティングにおいてはできる限り透過率を高く設定し、第二レンズ配列透過率コーティングの透過率を低く設定することで、光量調整素子120で落としきれなかった光量を光学系全体では低透過率が達成できるようにすることに特徴があるが、第二レンズ配列透過率低減コーティング131では透過率を低く設定することが求められることから、膜厚を厚くすることで一律に透過率を低減することが可能であり且つ低透過率を容易に達成することが可能な金属膜又は金属膜の多層膜で構成するのが好適である。その一方で、第二レンズ配列透過率低減コーティング131よりも高い透過率に設定される光量調整素子透過率低減コーティング121には、入射する光ビームの入射角や波長に対して設計自由度の高い誘電体膜又は誘電体多層膜で構成するのが好適である。
これまで説明してきた光量調整素子120は、単独の光量量調整素子120を用いる場合を説明してきたが、当該光量調整素子120は、例えば、出荷時や組み立て時などに像担持体11が求める光量に応じて様々な透過率を有するものに選別配置される。そのため、容易に着脱可能に構成されるほうが製造コストの面で有利である。従来では接着剤などを用いた接着固定で光量調整素子120を光走査装置502に固定していたが、この固定方法とは別の光量調整素子120を容易に着脱可能にするための構成が図4に記載される。図4は、光量調整素子120の取付例を示すための斜視図であり、光量調整素子120が配置された基体125を平板126に接続し、当該平板126に設けられた孔にネジなどの固定部材127を嵌挿することで、平板126を光学系に固定する例を示している。このように構成することで、光量調整素子120を容易に着脱可能に配置することが可能となる。
また、複数の透過率の異なる光量調整素子120、120’、120”・・・を配置して、これら光量調整素子を、像担持体が要求する光量に応じて選択可能に配置してもよい。この構成は図5に示されており、当該図5では、3つの透過率の異なる光量調整素子120、120’、120”が一枚の基体125’に並列配置された例を示している。ここに示される基体125’は、例えば光量調整素子120、120’、120”の配置方向(図5ではY方向)に平行な長孔などが基体125’を担持する平板126’に設けられていて、当該長孔にネジなどの固定部材を挿入・固定することで、図5に示した光路と平行なX方向とは垂直なY方向に基体125’を容易にずらすことが可能なように構成されていて、所望の光量調整素子120、120’、120”が光源101からの光路に位置するように容易に選択可能な構成となっている。なお、平板126’をY方向に移動可能な駆動系を設けて、図示しない制御部からの信号で、平板126’を自動でY方向に移動させることで、所望の光量調整素子が選択されるように構成してもよい。
ここで、図5に示した3種類の光量調整素子120、120’、120”を用いて、光源101から像担持体11までの光学系の光利用効率を調整した際の、光量調整素子と第二レンズ配列104との構成の一例を示す。当該例では、光源101の出射光ビームの光量を100%とした場合に、光源101から像担持体11までに達する光利用効率が25%、20%、15%である場合を想定している。この光利用効率を達成するために、まずは、第二レンズ配列104であるシリンドリカルレンズに施された第二レンズ配列透過率低減コーティング131の透過率を27.8%となるように設定した。さらに、光量調整素子120に施された光量調整素子透過率低減コーティング121を、光量調整素子120では90%になるように、光量調整素子120’では72%になるように、光量調整素子120”では54%になるように設定した。このように構成することで、内部多重反射による透過率変動を大きく受けてしまう光量調整素子において、透過率変動が起きたとしても、形成画像に影響がでるほど当該透過率変動の影響が大きくなることを効果的に低減することが可能となる。
最後に、これまで、第二レンズ配列104は単独のシリンドリカルレンズである例を用いて説明してきたが、本願発明では、第二レンズ配列104は複数のレンズで構成されてもよい。この場合、第二レンズ配列104に施される第二レンズ配列透過率低減コーティング131は、複数配置された第二レンズ配列104のうちの少なくとも一つに施されていれば本願発明の目的を達成することが可能である。さらに、光源101としては、例えば半導体レーザーのような単独の発光源を有する光源であってもよいし、例えばマルチビーム方式に採用されるような複数個の発光源を有する光源であってもよい。すなわち、本願発明は少なくとも一つの発光源を有する光源を備えた光走査装置に適用が可能である。