以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
「車両制御装置の全体構成」
本発明の実施形態として示す車両制御装置は、例えば図1に示すように構成される。この車両制御装置は、自車両が走行車線から逸脱する可能性が有る(車線逸脱傾向が有る)ことを検出した際に、当該走行車線からの逸脱の可能性を低減するように自車両の挙動を制御する車線逸脱防止制御を行なうと共に、自車両が走行車線を逸脱して道路から逸脱する可能性がある(路外逸脱傾向が有る)ことを検出した際に、当該道路からの逸脱(路外逸脱)の可能性を低減するように自車両の挙動を制御する路外逸脱防止制御を行なうものである。この車両制御装置は、自車両の挙動を制御するために、自車両のヨーモーメントの発生量を制御する。特に、車両制御装置は、自車両の挙動を制御するときに、先ず車線逸脱防止ヨーモーメントを付与し、所定条件下における車線逸脱防止ヨーモーメントの付与の終了から路外逸脱防止ヨーモーメントの開始までの時間に基づいて、自車両に発生させる路外逸脱防止ヨーモーメントを制御する。
車両制御装置は、コントローラ1に、カメラ2、車輪速センサ3、車両システム4、操作検出センサ5が接続されている。
カメラ2は、自車両が走行している走行車線(自車線)の車線区分線を撮像するための外界認識センサである。このカメラ2は、例えば自車両前方に設けられ、自車両前方数メートル先の車線区分線が撮像可能な撮像範囲とされている。カメラ2は、前方カメラ画像をコントローラ1に出力する。
コントローラ1は、カメラ2により撮像された前方カメラ画像から車線区分線を検出し、検出した車線区分線に基づいて、走行車線内の自車両のヨー角Φ、横変位X、走行車線の曲率β、車線種類L_classを検出する。なお、横変位Xとは車線幅方向における車線中心から自車両までの距離を表わし、ヨー角Φとは車線延在方向と自車両進行方向との成す角を表わし、車線種類L_classは車線区分線が走行路端の車線区分線(実線の車線区分線)であるか走行路内の車線区分線(破線の車線区分線)であるかを表わす。これらヨー角Φ、横変位X、曲率βおよび車線種類L_classを、カメラ2により撮像されたカメラ画像から検出された車線区分線に基づいて検出する手法は公知の技術であるので特に詳述はしないが、例えば撮像した画像を俯瞰画像に変換し、俯瞰画像上における車線区分線の画像上下方向に対する角度からヨー角Φを、俯瞰画像上における車線区分線の左右方向位置から横変位Xを、俯瞰画像上における車線区分線の曲率から自車線の曲率βを、俯瞰画像上における車線区分線の形状から車線区分線の種類L_classを検出することができる。
車輪速センサ3は、自車の車輪速を計測する。車輪速センサ3は、自車両の4輪のそれぞれに対して設けられる。車輪速センサ3は、車輪速信号をコントローラ1に出力する。これにより、コントローラ1は、自車両の各車輪ごとに、車輪速を検出できる。
車両システム4は、ブレーキ制御装置41、エンジン制御装置42、アクセルペダル制御装置43、シートベルト制御装置44を含む。車両システム4における各制御装置41〜44は、コントローラ1からの制御信号に応じて、自車両の車線逸脱を防止するための制御及び走行路外逸脱を防止するための制御を行う。
操作検出センサ5は、ステアリングの操舵角を検出する操舵センサ、アクセルペダルの操作量(アクセル開度)を検出するアクセルペダルセンサ、ブレーキペダルの操作量(ブレーキペダルの踏み込み量)を検出するブレーキペダルセンサを含む。操作検出センサ5は、運転者による運転操作量として、操舵角、アクセルペダルの操作量、ブレーキペダルの操作量を検出し、当該運転操作量を示すセンサ信号をコントローラ1に供給する。
コントローラ1は、実際にはROM、RAM、CPU等にて構成されているが、当該CPUがROMに格納されたプログラムに従って処理をすることによって実現できる機能を有している。
コントローラ1は、車線中心からの横変位X等に基づいて、自車両が走行車線から逸脱(車線逸脱)する可能性である車線逸脱傾向が有るか否かを判断する。コントローラ1は、車線逸脱傾向が有ると判断した場合に、自車両が走行車線から逸脱することを防止する方向のヨーモーメントである車線逸脱防止ヨーモーメントを自車両に付与する。
コントローラ1は、車線逸脱防止ヨーモーメントの付与開始から所定時間を経過した場合、自車両の運転者によって運転操作の入力が有った場合、又は、走行車線内の自車両のヨー角Φが所定値以下となった場合の何れかの場合に、当該車線逸脱防止ヨーモーメントの付与を終了する。
また、コントローラ1は、自車両が走行車線から逸脱(車線逸脱)して、自車両が道路外に逸脱(路外逸脱)する可能性である路外逸脱傾向が有るか否かを判断する。コントローラ1は、路外逸脱傾向が有ることが判断された場合に、自車両が路外逸脱することを防止する方向のヨーモーメントである路外逸脱防止ヨーモーメントを自車両に付与する。特に、コントローラ1は、車線逸脱防止ヨーモーメントの付与を終了した時刻から、路外逸脱傾向が有ると判断した時刻までの時間が長いほど、路外逸脱防止ヨーモーメントを小さく補正する。
コントローラ1は、自車両の車輪が振動付与構造に接触したか否かに基づいて、路外逸脱傾向の有無を判断する。この振動付与構造は、通常ランブルストリップスと称される。ランブルストリップスとは、走行路外側に該走行路延在方向に沿って設けられた路面上の段差又は窪みにより形成される凹凸である。従って、車両の車輪がランブルストリップス上に乗り上げた(接触した)ときに自車両にノイズ及び/又は振動が発生する。これにより、自車両が路外に逸脱する可能性が有るときに自車両のドライバに注意を喚起することができる。コントローラ1は、ランブルストリップス(振動付与構造)に自車両の車輪が接触(自車両のタイヤがランブルストリップスを踏んだ)ことを検出する。これにより、車両制御装置は、自車両が路外に逸脱する可能性が有る(路外逸脱傾向が有る)ことを検出して、自車両の路外逸脱を防止する動作を行う。
コントローラ1は、自車両の車輪ごとに、ランブルストリップスに接触したか否かを判断する。コントローラ1は、自車両の4輪のうちいずれかの車輪でランブルストリップスと接触したと判定した場合に、自車両が路外へ逸脱する可能性が有る(路外逸脱傾向が有る)と判断する。コントローラ1は、ランブルストリップスと接触したと検出された車輪に応じて、自車両を走行路内に戻す制御指令値、又は、路外への逸脱速度を低下させるための制御指令値である路外逸脱防止ヨーモーメントを算出して、車両システム4へ出力する。
なおここで、本実施例において車線逸脱とは自車両が走行中の車線(自車線もしくは走行車線)からの逸脱(例えば対向車線、隣接車線、路肩への逸脱)を言い、走行路逸脱とは車両が走行するための走行路からの逸脱(例えば走行路から路肩への逸脱)を言う。また、路外逸脱とは走行路や路肩等を含む道路からの逸脱を言う(図3参照)。
以下、コントローラ1の更に詳細な構成及び動作について説明する。
「コントローラ1の機能的な構成」
つぎに、上述した車両制御装置におけるコントローラ1の機能的な構成を、図2を参照して説明する。
コントローラ1は、線種判定部11、路外逸脱判断部12、制御作動判断部13、車線逸脱判断部14、ヨーモーメント指令値算出部15、車線逸脱防止制御終了判断部16、ヨーモーメント指令値補正部17を有する。更に、コントローラ1は、車両システム4に接続されたシートベルト作動指令値算出部18、エンジントルク指令値算出部19、ブレーキ液圧指令値算出部20、ヨーモーメント指令値算出部21、アクセルペダル反力指令値算出部22を有する。
線種判定部11は、カメラ2から供給された前方カメラ画像から自車両が走行している走行車線の左右の車線区分線を検出し、検出した車線区分線の形状を判定する。具体的には例えば画像を二値化処理する等によって車線区分線を検出し、検出した車線区分線が連続している距離が所定距離以上(例えば10m以上)であれば車線区分線は実線であり、走行路端の車線区分線であると判定し、車線区分線が連続している距離が所定距離未満(例えば10m未満)であれば車線区分線は破線であり、走行路端の車線区分線ではないと判定し、判定結果(左右の車線区分線がそれぞれ、走行路端の車線区分線であるか否か)を車線種類L_classとして車線逸脱判断部14と路外逸脱判断部12に供給する。
する。なお、本実施形態においては車線種類L_classは実線の車線区分線と破線の車線区分線の二種類としたが、これに限定されない。例えば車線種類L_classを実線の車線区分線、破線の車線区分線及び二重の車線区分線の三種類とし、実線もしくは二重の車線区分線であれば走行路端の車線区分線と判定し、破線の車線区分線であれば走行路端の車線区分線では無いと判定しても良い。また、走行路端の車線区分線の形状と走行路内の車線区分線の形状をナビゲーションの地図情報に対応して記憶しておき、記憶した情報と撮像した車線区分線の形状とを比較して走行路端の車線区分線であるか否かを判定しても良い。すなわち線種判断部11は、自車両が走行車線している車線の左右の車線区分線に対してそれぞれ、走行路端の車線区分線であるか否かを判定し、判定結果を車線種類L_classとして車線逸脱判断部14と路外逸脱判断部12に供給できれば良い。
車線逸脱判断部14は、カメラ2により撮像された前方カメラ画像から車線区分線を検出し、検出した車線区分線に基づいて、走行車線内の自車両のヨー角Φ、横変位X、走行車線の曲率βを検出し、自車両が走行車線から逸脱する可能性(車線逸脱傾向)が有るか否かの車線逸脱判断を行う。車線逸脱判断部14は、自車両が走行車線から逸脱する車線逸脱傾向が有ると判断している場合には、車線逸脱判断フラグをセットする。この車線逸脱傾向の有無の判定は、自車速V、走行車線内の自車両のヨー角Φ、車線中心からの横変位X、及び走行車線の曲率βに基づいて、自車速Vが高いほど、走行車線内の自車両のヨー角Φが大ききほど、車線中心からの横変位Xが走行車線に近いほど、走行車線の曲率βが高いほど、大きくなる逸脱推定量(詳細は後述する)を算出し、算出した逸脱推定量が予め定められた所定値(予め設定された閾値)を超えた場合に、車線逸脱判断フラグを路外逸脱判断部12、制御作動判断部13、ヨーモーメント指令値算出部15、車線逸脱防止制御終了判断部16及びヨーモーメント指令値補正部17に供給してセットする。この車線逸脱判断フラグは、自車両が走行車線に対して左右どちらに逸脱しようとしているかの逸脱方向に応じて、右側逸脱、左側逸脱ごとに生成される。なお、上記車線逸脱判断フラグがセットされた状態で逸脱推定量が予め定められた所定値(予め設定された閾値)以下となった場合には、車線逸脱判断フラグのセットを解除する。
路外逸脱判断部12は、車線逸脱判断部14から供給された車線逸脱判断フラグと、線種判断部11から供給された車線種類L_classに基づいて、自車両が走行路から逸脱する可能性が有るか否かを判断する。具体的には路外逸脱判断部12は、車線逸脱判断フラグがセットされ、且つ車線逸脱判断フラグ基づいて判別される逸脱方向の車線区分線の線種が実線(走行路端の車線区分線)であるか否かを車線種類L_classにもとづいて判定し、逸脱方向の車線区分線が実線である場合に走行路から逸脱する可能性が有ると判定して走行路逸脱判断フラグをセットする。また、車輪速センサ3から供給された車輪速信号に基づいて車輪がランブルストリップスに接触していることが判定された場合にランブルストリップス検出フラグをセットする。そして、走行路逸脱判断フラグ及びランブルストリップス検出フラグがセットされた場合に、自車両が路外逸脱する可能性が有る(路外逸脱傾向が有る)と判断して路外逸脱フラグを制御作動判断部13に供給してセットする。ここで、車輪速センサ3から供給された車輪速信号に基づいて車輪がランブルストリップスに接触していることを判定する判定内容に関して説明する。
路外逸脱判断部12は、車輪速信号に基づいて、自車両の振動を算出する。このとき、路外逸脱判断部12は、各輪の車輪速に基づいて、例えば各輪の車輪速をそれぞれ微分処理して各輪の車輪加速度を算出する。路外逸脱判断部12は、各輪の車輪加速度に基づいて、各輪の矩形波信号を生成する。路外逸脱判断部12は、ある車輪の矩形波信号の周波数が所定の周波数閾値以上の場合には、車輪がランブルストリップスと接触していると判定する。ここで、上記矩形波信号の生成及び車輪がランブルストリップスと接触しているか否かの判定に関して、図25を用いて詳述する。
図25は車輪の加速度、加速度に基づいて生成される矩形波信号、車輪がランブルストリップスと接触していると判定された際にセットされるランブルストリップス検出フラグを表している。この図25に記載の通り先ず、車輪の加速度の絶対値と予め定められた所定の振幅閾値Aとを比較し、車輪の加速度の絶対値が所定の振幅閾値A以上である場合に1、車輪の加速度の絶対値が所定の振幅閾値A未満である場合に0となる信号を生成することにより矩形波信号を生成する。そして、矩形波信号の周波数が予め定められた所定の周波数以上である場合、具体的には予め定められた所定時間Ta(例えば30msec)の間に矩形波信号の立ち上がりが予め定められた所定回数N(例えば3回)以上検出された場合に、車輪がランブルストリップスに接触したと判定してランブルストリップス検出フラグをセットする。すなわち、車輪に発生する振動のうちの所定の振幅閾値以上の振幅の振動が、所定の周波数以上である場合に車輪がランブルストリップスに接触したと判定する。この車輪がランブルストリップスに接触したか否かの判定は各車輪それぞれに対して行い、いずれかの車輪がランブルストリップスに接触したことが判定された場合に、ランブルストリップスに接触した車輪の位置(左前輪、右前輪、左後輪、右後輪)を表す情報を含むランブルストリップス検出フラグをセットする。
なお上記振幅閾値Aは予め実験等によって得られた、車輪がランブルストリップスに接触することによって発生する車輪の加速度以下であって且つ、路面の細かな凹凸(例えばアスファルト表面の凹凸)によって車輪に発生する加速度以上の値が設定されている。また、上記所定回数Nも同様に、予め実験等によって得られた、車輪がランブルストリップスに接触することによって所定時間Ta間に発生する車輪の加速度の振動回数以下の値であって且つ、路面のうねり等によって発生する車輪の加速度の振動回数以上の値が設定されている。なお、上記所定時間Taは車速が大きくなるほど大きく設定する等、車速に応じて可変としても良い。
そして上述の通り、走行路逸脱判断フラグがセットされ(すなわち走行路からの逸脱傾向が検出され)、且つランブルストリップス検出フラグがセットされ(すなわち車輪がランブルストリップスと接触していると判定され)た場合に、路外逸脱傾向が発生していると判定して、路外逸脱フラグを制御作動判断部13及びヨーモーメント指令値補正部17に供給してセットする。
なお、車両制御装置は、各車輪とランブルストリップスとの接触を判断するために各車輪に上下Gセンサを設け、この上下Gセンサによって検出される上下Gに基づいて各車輪とランブルストリップスとの接触を判断しても良い。この場合、コントローラ1は、上下Gセンサによって検出された上下加速度に基づいて、上記と同様に矩形波信号を生成し、生成した矩形波信号に基づいて、各車輪がランブルストリップスに接触しているか否かを判断する。すなわち、ランブルストリップスは、予め定められた所定距離毎に設けられた段差又は窪みによって形成されているため、車輪がランブルストリップスに接触している際には車輪の加速度に振動が発生すると共に、車輪の上下Gに振動が発生する。従って、車輪の加速度の振動もしくは車輪の上下Gの振動に基づいて、自車両の車輪がランブルストリップスと接触していると判断することができる。
ヨーモーメント指令値算出部15は、車線逸脱判断部14から供給された車線逸脱判断フラグがセットされた場合に、自車両の走行車線からの逸脱を防止するためのヨーモーメント指令値(車線逸脱制御指令値:車線逸脱防止ヨーモーメント)を算出する。また、ヨーモーメント指令値算出部15は、自車両が走行路から逸脱した場合に、自車両の路外逸脱を防止するためのヨーモーメント指令値(路外逸脱制御指令値:路外逸脱防止ヨーモーメント)も算出する。ヨーモーメント指令値算出部15は、算出した車線逸脱防止ヨーモーメント及び路外逸脱防止ヨーモーメントを、車線逸脱防止制御終了判断部16及びヨーモーメント指令値補正部17に供給する。なお、車線逸脱制御指令値及び路外逸脱制御指令値の算出方法に関しては後述する。
車線逸脱防止制御終了判断部16は、車線逸脱判断部14から供給された車線逸脱判断フラグ、カメラ2にて撮像された画像から検出した走行車線内の自車両のヨー角Φ、操作検出センサ5から供給された運転操作量に基づいて、車線逸脱防止制御の終了を判断する。車線逸脱防止制御終了判断部16は、車線逸脱判断部14から車線逸脱判断フラグが供給された(車線逸脱判断フラグがセットされた)時点から予め定められた所定時間(例えば20sec)を経過した場合に車線逸脱防止制御の終了を判断する。また、車線逸脱防止制御終了判断部16は、車線逸脱判断フラグが供給された(車線逸脱判断フラグがセットされた)時点から予め定められた所定時間(例えば20sec)以内に自車両の運転者によって運転操作の入力が有った場合、車線逸脱防止制御の終了を判断する。すなわち、運転者による運転操作として、車線逸脱判断フラグがセットされた時点からの操舵角の変化量、アクセルペダルの操作量の変化量、ブレーキペダルの操作量の変化量の少なくとも一つが所定の変化量以上で有った場合に、自車両の運転者によって運転操作の入力が有ったと判定して、車線逸脱防止制御の終了を判断する。なお、単位時間当たりの操舵角の変化量、アクセルペダルの操作量の変化量、ブレーキペダルの操作量の変化量の少なくとも一つが所定の変化量以上で有った場合(すなわち、操舵角速度、アクセルペダルの操作速度、ブレーキペダルの操作速度が所定値以上である場合に)、自車両の運転者によって運転操作の入力が有ったと判定しても良い。なお以下では、単位時間当たりの操舵角の変化量、アクセルペダルの操作量の変化量、ブレーキペダルの操作量の変化量(もしくは操舵角速度、アクセルペダルの操作速度、ブレーキペダルの操作速度)の大きさを総称して運転操作量とも言う。更に、車線逸脱防止制御終了判断部16は、車線逸脱判断フラグがセットされている際に、走行車線内の自車両のヨー角Φが所定値以下となった場合には、車線逸脱防止制御の終了を判断する。車線逸脱防止制御終了判断部16は、車線逸脱防止制御の終了を判断した場合には制御終了を表すフラグである終了フラグをヨーモーメント指令値補正部に出力してセットする。
ヨーモーメント指令値補正部17は、車線逸脱判断部14からの車線逸脱判断フラグ、路外逸脱判断部12からの路外逸脱フラグおよび車線逸脱防止制御終了判断部16からの制御終了フラグに基づいて、ヨーモーメント指令値算出部で算出された車線逸脱防止ヨーモーメントおよび路外逸脱防止ヨーモーメントを制御作動判断部13へ出力する。
また、ヨーモーメント指令値補正部17は、路外逸脱フラグがセットされ且つ制御終了フラグがセットされている場合には、ヨーモーメント指令値算出部15により算出された路外逸脱防止ヨーモーメントを補正して出力する。このとき、ヨーモーメント指令値補正部17は、車線逸脱防止制御終了判断部16からの制御終了フラグを入力した時刻から、路外逸脱判断部12からの路外逸脱フラグを入力する時刻までの時間が長いほど、ヨーモーメント指令値算出部で算出された路外逸脱防止ヨーモーメントを小さく補正して、補正した路外逸脱防止ヨーモーメントを制御作動判断部に出力する。また、ヨーモーメント指令値補正部17は、車線逸脱判断フラグがセットされている状態で路外逸脱フラグがセットされた場合に、車線逸脱判断フラグがセットされてから路外逸脱フラグがセットされるまでの経過時間に基づいて、路外逸脱防止ヨーモーメントを補正して出力する。また、ヨーモーメント指令値補正部17は、操作検出センサ5から上記運転操作量を入力して上記車線逸脱制御終了判断部16と同様に運転操作量が所定値以上であるか否かを判定し、運転操作量が所定値以上であって且つ制御終了フラグを入力した場合には、当該運転操作の入力の度合いが大きいほど、路外逸脱防止ヨーモーメントを小さく補正する。
制御作動判断部13は、路外逸脱判断部12から供給された路外逸脱フラグ、車線逸脱判断部14から供給された車線逸脱判断フラグ、車線逸脱防止ヨーモーメントおよび路外逸脱防止ヨーモーメントに基づいて、車両システム4を制御する。制御作動判断部13は、車両システム4の各部を制御する制御信号を、シートベルト作動指令値算出部18、エンジントルク指令値算出部19、ブレーキ液圧指令値算出部20、ヨーモーメント制御部21、アクセルペダル反力指令値算出部22に供給する。制御作動判断部13は、ヨーモーメント指令値補正部17から供給された車線逸脱防止ヨーモーメントもしくは路外逸脱防止ヨーモーメントに基づいて、ヨーモーメントを自車両に付与するよう制御信号を生成して後述するヨーモーメント制御部21に出力する。具体的には、路外逸脱フラグがセットされている場合には(車線逸脱判断フラグのセット状態に関わらず)路外逸脱防止ヨーモーメントに基づく制御信号を生成して後述するヨーモーメント制御部21に出力し、路外逸脱フラグがセットされていない場合であって且つ車線逸脱判断フラグがセットされている場合には車線逸脱防止ヨーモーメントに基づく制御信号を生成して後述するヨーモーメント制御部21に出力する。なお、車線逸脱判断フラグがセットされている際に制御終了フラグが入力した場合には車線逸脱防止ヨーモーメントに基づく制御信号の生成を中止する。また、路外逸脱フラグに基づいて後述するシートベルト作動指令値算出部18、エンジントルク指令値算出部19、ブレーキ液圧指令値算出部20、ヨーモーメント制御部21、アクセルペダル反力指令値算出部22に作動指令を出力する。
シートベルト作動指令値算出部18は、制御作動判断部13から供給された作動指令を基に、シートベルト作動指令値を算出し、当該指令値をシートベルト制御装置44に供給する。
エンジントルク指令値算出部19は、制御作動判断部13から供給された作動指令に基づいてエンジントルク指令値を算出し、当該指令値をエンジン制御装置42に供給する。
ブレーキ液圧指令値算出部20は、制御作動判断部13から供給された作動指令に基づいて、ブレーキ液圧指令値を算出し、当該指令値をブレーキ制御装置41に供給する。
ヨーモーメント制御部21は、制御作動判断部13から供給された車線逸脱防止ヨーモーメントもしくは路外逸脱防止ヨーモーメントに基づいて、左右車輪のブレーキ液圧の差としての液圧差指令値を算出し、当該指令値をブレーキ制御装置41に供給する。
アクセルペダル反力指令値算出部22は、制御作動判断部13から作動指令が供給された場合には、アクセルペダル反力指令値を算出し、当該指令値をアクセルペダル制御装置43に供給する。
「車両制御装置の全体動作」
つぎに、上述したように構成された車両制御装置による、路外逸脱防止のための全体動作について説明する。
例えば図3に示すように、自車両が位置P1から走行していて、(A)のように実線の走行車線L1を横切って、(B)のように位置P2にて右前車輪RがランブルストリップスRSを踏み、その後に、(C)のように位置P3にて左前車輪LがランブルストリップスRSを踏んで、位置P4に走行した場面についての動作を説明する。
車両制御装置は、図4に示すような動作を、自車両走行時において一定間隔毎に連続的に行う。
先ず、ステップS1において、コントローラ1は、カメラ2の前方カメラ画像、車輪速センサ3の検出値(各輪の車輪速Vwi(i=1〜4))等の各種データを読み込む。具体的にはコントローラー1の線種判別部11がカメラ2の前方カメラ画像を、車線逸脱判断部14がカメラ2の前方カメラ画像、車輪速センサ3の検出値を、車線逸脱制御終了判断部16がカメラ2の前方カメラ画像をそれぞれ読み込む。
次のステップS2において、コントローラ1は、車輪速センサ3の検出値に基づく自車速V、カメラ2の前方カメラ画像に基づいて車線区分線を検出すると共に横変位X、ヨー角Φ、走行車線の曲率β、車線種類L_class等の車両走行状態を検出および算出する。具体的にはコントローラー1の線種判別部11が左右の車線区分線のそれぞれが走行路端の車線区分線であるか否かの判定結果である車線種類L_classを、車線逸脱判断部14が自車速V、横変位X、ヨー角Φおよび走行車線の曲率βを、車線逸脱制御終了判断部16がヨー角Φを、それぞれ検出および算出する。本実施形態において、コントローラ1の車線逸脱判断部14は、通常走行時に、例えば後輪駆動の車両の場合は、前輪の車輪速Vw1,Vw2の平均値として、自車速Vを算出する。具体的には、コントローラ1は、下記の式1により、自車速Vを算出する。
V=(Vw1+Vw2)/2 (式1)
なお、ABS制御などの車速を用いたシステムが作動している場合には、そのようなシステムで使用している自車速(推定車速)を用いても良い。
次のステップS3において、車線逸脱判断部14によって車線逸脱判断を行う。このとき、車線逸脱判断部14は、ステップS2にて検出した前方カメラ画像に基づく横変位X、ヨー角Φ、走行車線の曲率β及び自車速Vに基づいて、車線逸脱判断を行う。この車線逸脱判断に関して具体的に説明する。まず、車線逸脱判断部14は、逸脱推定量を算出する。本実施形態では、ステップS2にて算出した自車速V、横変位X、ヨー角Φ、走行車線の曲率βを用いて、下記の式2に従って、逸脱推定量Xsを算出する。なお、カメラ画像に基づく横変位X、ヨー角Φ、走行車線の曲率βはいずれも左方向を正、右方向を負とする。
Xs = Tt × V × ( Φ + Tt × V × β ) + X (式2)
ここで、Ttは、前方注視距離算出用の車頭時間である。すなわち、上記(式2)からわかる通り逸脱推定量Xsとは、現在から車頭時間経過後の自車両の車線幅方向位置の車線中央からの距離の推定値、つまり車頭時間経過後の横変位の推定値を表す。そして、車線逸脱判断部14は、算出された逸脱推定量Xsと予め定められた逸脱判断閾値Xc(即ち予め定められた所定の横変位であり、車線幅の半分よりも小さい値)とを比較して、逸脱推定量Xsの絶対値が逸脱判断閾値Xc以上である場合に自車両が走行車線から逸脱する傾向が有る(車線逸脱傾向が有る)ことを判断する。これはすなわち、車頭時間経過後の自車両の車線幅方向位置が車線中心から逸脱判断閾値Xcの位置よりも車線端側である場合に車線逸脱傾向が有ると判断することを意味し、言い換えれば自車両の車線幅方向位置と車線端(車線端の車線区分線)との距離が所定距離以下となった場合に車線逸脱傾向が有ると判断することを意味する。
具体的には、下記の(1)〜(3)の場面が想定される。
(1)コントローラ1は、算出した逸脱推定量Xsが逸脱判断閾値Xc以上(Xs≧Xc)である場合、自車両が左側に逸脱する傾向が有ると判断し、車線逸脱判断フラグFldを「LEFT」に設定する(車線逸脱判断フラグをセットする)。
(2)コントローラ1は、算出した逸脱推定量Xsが逸脱判断閾値Xcの負値以下(Xs≦−Xc)である場合、自車両が右側に逸脱する傾向が有ると判断し、車線逸脱判断フラグFld「RIGHT」に設定する(車線逸脱判断フラグをセットする)。
(3)コントローラ1は、上記場面(1)、(2)に該当しない場合、自車両に車線逸脱傾向が無いと判断し、車線逸脱判断フラグFldを「OFF」に設定する(車線逸脱判断フラグをセットしない)。
次のステップS4において、コントローラ1の路外逸脱判断部12は、自車両が走行路から逸脱する傾向に有るか否か(走行路逸脱傾向の有無)の判定である走行路逸脱判断を行う。このとき、路外逸脱判断部12は、ステップS3にて線種判別部11が検出した車線種類L_classと、車線逸脱判断部14で設定した車線逸脱判断フラグFldとに基づいて、走行路逸脱判断を行う。例えば、車線逸脱判断フラグFldが「RIGHT」、且つ、逸脱方向の車線種類L_classが走行路端の車線区分線(例えば実線)の場合、路外逸脱判断部12は、走行路逸脱フラグFlg_road_departの値を、「1」とする。すなわち、車線逸脱判断フラグFldに基づいて車線逸脱傾向の有無および車線逸脱方向を判別し、車線逸脱傾向が有る場合に車線逸脱方向の車線区分線の線種を車線種類L_classに基づいて判別し、車線逸脱方向の車線区分線の線種が走行路端の車線区分線(例えば実線)であれば、走行路逸脱フラグFlg_road_departの値を「1」とする(走行路逸脱フラグFlg_road_departをセットする)。一方、それ以外の場合は走行路逸脱フラグFlg_road_departの値を「0」とする(走行路逸脱フラグFlg_road_departをセットしない)。
次のステップS5において、ヨーモーメント指令値算出部15は次式に従って自車両の走行車線からの逸脱を防止するための目標となる車線逸脱防止ヨーモーメントMsを算出する。このとき、ヨーモーメント指令値算出部15は、下記の(1)、(2)の場合に分けて車線逸脱防止ヨーモーメントMsを算出する。なお、車線逸脱防止ヨーモーメントMs及び後述の路外逸脱防止ヨーモーメントMrの方向は、いずれも自車両を車線中央方向に制御する方向のヨーモーメントである。
(1)車線逸脱判断フラグFld = LEFT 又は RIGHT の場合、制御作動判断部13は、
車線逸脱防止ヨーモーメントMs= -Kv2 × Ks2 (式3)
なる式3に従って、車線逸脱防止ヨーモーメントMsを算出する。
(2)車線逸脱判断フラグFld = OFF の場合、制御作動判断部13は、車線逸脱防止ヨーモーメントMsを「0」とする。
式3において、Kv2は車両諸元によって定まる定数であり、Ks2は自車速Vに応じて変動するゲインである。
また、ヨーモーメント指令値算出部15は、次式に従って自車両の路外逸脱を防止するための目標となる路外逸脱防止ヨーモーメントMrを算出する。
路外逸脱防止ヨーモーメントMr = Kr2 × f(Φ、v) (式4)
上記式4において、Kr2は後述する補正ゲインである。f(Φ、v)は走行車線内の自車両のヨー角Φと自車速Vの関数である。このf(Φ、v)によれば、走行車線内の自車両のヨー角Φが大きいほど路外逸脱防止ヨーモーメントMrを大きくし、自車速Vが高いほど路外逸脱防止ヨーモーメントMrを大きくする。
次のステップS6において、路外逸脱判断部12は、車輪速センサ3からの車輪速信号に基づいて、自車両の各車輪がランブルストリップスRSに接触したかを検出する。ステップS4にて走行路逸脱フラグFlg_road_departがセットされ、かつ自車両の車輪がランブルストリップスRSに接触したことを検出した場合には路外逸脱フラグをセットしてステップS8に処理を進め、走行路逸脱フラグFlg_road_departがセットされていない、もしくは自車両の車輪がランブルストリップスRSに接触したことを検出していない場合にはステップS7に進む。
ここで、ランブルストリップスに接触したかの検出は、各輪について行う。図5に示すように、(1)のように右前輪FRでランブルストリップスRSを検出した場合は、右前輪検出フラグfRS_HIT_FRを「1」とし、(3)のように左前輪FLでランブルストリップスRSを検出した場合は、左前輪検出フラグfRS_HIT_FLを「1」とし、(2)のように右後輪RRでランブルストリップスRSを検出した場合は、右後輪検出フラグfRS_HIT_RRを「1」とし、(4)のように左後輪RLでランブルストリップスRSを検出した場合は、左後輪検出フラグfRS_HIT_RLを「1」とする。なお、これら右前輪検出フラグfRS_HIT_FR、左前輪検出フラグfRS_HIT_FL、右後輪検出フラグfRS_HIT_RR、左後輪検出フラグfRS_HIT_RLを総称してランブルストリップス検出フラグと言う。
なお、以下の説明では、前輪でランブルストリップスRSを検出した際の制御作動を記載するが、後輪でランブルストリップスRSを検出した時であっても制御動作をしても良い。また、以下では右側に逸脱した例を示すが、左側に逸脱したときでは、逆側のフラグを利用して同様の処理を行うことになる。
ステップS6からステップS7に進んだ場合、ステップS6にて路外逸脱フラグがセットされていない状態であるので、ヨーモーメント指令値補正部17は車線逸脱防止ヨーモーメントを制御作動判断部13へ出力し、制御作動判断部13は入力した車線逸脱防止ヨーモーメントと作動指令をヨーモーメント制御部21に出力し、ヨーモーメント制御部21は入力した車線逸脱防止ヨーモーメントに基づいた液圧差指令値を算出し、当該指令値をブレーキ制御装置41に供給する。これにより、車両の左右輪に制動力差が発生し、車両に車線逸脱防止ヨーモーメントMs相当のヨーモーメントを発生させる。
ステップS8において、車線逸脱防止制御終了判断部16は、車線逸脱制御を終了するかの判断を行う。このとき、車線逸脱防止制御終了判断部16は、車線逸脱判断フラグFldのセットが解除された場合、運転操作の入力が検出された場合、走行車線内の自車両のヨー角Φが小さくなった場合に、車線逸脱制御を終了すると判断する。車線逸脱制御を終了すると判断した場合には、制御終了フラグをヨーモーメント指令値補正部17に出力して処理をステップS9に進め、そうでない場合には、処理をステップS10に進める。
ステップS9において、ヨーモーメント指令値補正部17は、車線逸脱判断フラグ、路外逸脱フラグおよび制御終了フラグに基づいて、路外逸脱防止ヨーモーメントMrの補正量を算出するとともに、制御作動判断部13へ車線逸脱防止ヨーモーメントMsおよび路外逸脱防止ヨーモーメントMrを出力する。なお、この路外逸脱防止ヨーモーメントMrの補正量についての詳細は、後述する。
次のステップS10において、コントローラ1は制御作動判断部13にて、警報装置45の警報作動判断を行う。具体的には、図6に示すように、ステップS6でセットされた路外逸脱フラグと、右前輪検出フラグfRS_HIT_FR、左前輪検出フラグfRS_HIT_FL、右後輪検出フラグfRS_HIT_RR、左後輪検出フラグfRS_HIT_RLとに基づいて、警報作動判断を行う。
例えば、図3のように自車両が走行路から右方向に逸脱する場面を想定し、図6以降を用いて説明する。自車両に車線逸脱傾向が発生して車線逸脱判断フラグFldが「RIGHT」となり(図6における(A))、その後に右前輪検出フラグfRS_HIT_FRが「1」となった場合には(図6における(B))路外逸脱フラグがセットされて、路外逸脱に対する1次警報を作動させ、1次警報フラグfWOW_FIRSTを「fWOW_FIRST=1」とする。そして、右前輪検出フラグfRS_HIT_FRを「1」とした後に、左前輪検出フラグfRS_HIT_FLを「fRS_HIT_FL=1」となった場合には(図6における(C))、路外逸脱に対する2次警報を作動させ、2次警報フラグfWOW_SECONDを「fWOW_SECOND=1」とする。
なお、この例では、右側逸脱に対して1次警報フラグfWOW_FIRST、2次警報フラグfWOW_SECONDを遷移させたが、点線の走行車線L2に逸脱する左側逸脱に対しても、左側車輪の検出フラグを利用して同様の処理を実施することとなる。ここで、上記2次警報は1次警報に対して、運転者により明確に、自車両の路外逸脱の可能性を報知するものである。具体的には、例えば1次警報における警報音よりも2次警報における警報音を大きくする、もしくは1次警報を警報音のみとして2次警報を警報音と警報ランプの点灯とする等、2次警報は1次警報に対して、運転者に強い警報を行なうものである。
次のステップS11において、コントローラ1は、制御作動判断部13により、シートベルト制御作動判断を行う。具体的には、路外逸脱フラグと、左前輪検出フラグfRS_HIT_FL、右前輪検出フラグfRS_HIT_FRに応じて、シートベルト作動判断を行う。
例えば、右側に車線逸脱傾向が発生して車線逸脱判断フラグFldが「RIGHT」となり(図7における(A))、その後、右前輪がランブルストリップスRSを踏んで右前輪検出フラグfRS_HIT_FRが「1」となった場合(図7における(B))に路外逸脱フラグがセットされ、1次シートベルト作動フラグfPSB1_ACTを「1」とする。さらに、左前輪がランブルストリップスRSを踏んで左前輪検出フラグfRS_HIT_FLが「1」となった場合(図7における(C))には、2次シートベルト作動フラグfPSB2_ACTを「1」とする。
次のステップS12において、コントローラ1は、制御作動判断部13により、アクセルペダル制御作動判断を行う。具体的には、路外逸脱フラグと、左前輪検出フラグfRS_HIT_FL、右前輪検出フラグfRS_HIT_FRに応じて、アクセルペダル制御作動判断を行う。
例えば、右側に車線逸脱して車線逸脱判断フラグFldが「RIGHT」となり(図8における(A))、その後、右前輪がランブルストリップスRSを踏んで右前輪検出フラグfRS_HIT_FRが「1」となった場合(図8における(B))に路外逸脱フラグがセットされ、1次アクセルペダル作動フラグfFFP1_ACTを「1」とする。さらに、左前輪がランブルストリップスRSを踏んで左前輪検出フラグfRS_HIT_FLが「1」となった場合(図8における(C))には、2次アクセルペダル作動フラグfFFP2_ACTを「1」とする。
次のステップS13において、コントローラ1は、制御作動判断部13により、エンジントルク制御作動判断を行う。具体的には、路外逸脱フラグと、左前輪検出フラグfRS_HIT_FL、右前輪検出フラグfRS_HIT_FRに応じて、エンジン制御作動判断を行う。
例えば、右側に車線逸脱して車線逸脱判断フラグFldが「RIGHT」となり(図9における(A))、その後、右前輪がランブルストリップスRSを踏んで右前輪検出フラグfRS_HIT_FRが「1」となった場合(図9における(B))に路外逸脱フラグがセットされ、1次エンジン作動フラグfETRQ1_ACTを「1」とする。さらに、左前輪がランブルストリップスRSを踏んで左前輪検出フラグfRS_HIT_FLが「1」となった場合(図9における(C))には、2次エンジン作動フラグfETRQ2_ACTを「1」とする。
次のステップS14において、コントローラ1は、制御作動判断部13により、ヨーモーメント制御作動判断を行う。具体的には、路外逸脱フラグ、車線逸脱判断フラグFld、制御終了フラグに応じて、ヨーモーメント制御作動判断を行う。
例えば、右側に車線逸脱傾向が発生して車線逸脱判断フラグFldが「RIGHT」となったとき(図10における(A))に、ヨーモーメントの発生を指令するフラグとしてのヨーモーメント作動フラグをセットするとともに、車線逸脱防止ヨーモーメントMsをヨーモーメント制御部21に出力する。その後、右前輪がランブルストリップスRSを踏んで右前輪検出フラグfRS_HIT_FRが「1」となった場合(図10における(B))に路外逸脱フラグがセットされ、ヨーモーメントの発生を指令するフラグとしてのヨーモーメント作動フラグをセットするとともに、路外逸脱防止ヨーモーメントMrをヨーモーメント制御部21に出力する。
次のステップS15において、コントローラ1は、制御作動判断部13により、減速制御作動判断を行う。具体的には、路外逸脱フラグと、左前輪検出フラグfRS_HIT_FL、右前輪検出フラグfRS_HIT_FRに応じて、減速制御作動判断を行う。
例えば、右側に走行路逸脱傾向が発生して車線逸脱判断フラグFldが「RIGHT」となり(図11における(A))、その後、右前輪検出フラグfRS_HIT_FRが「1」となり(図11における(B))路外逸脱フラグがセットされ、さらに左前輪検出フラグfRS_HIT_FLが「1」となった場合(図11における(C))に、自車両を減速させる減速作動フラグfPCMD_ACTを「1」とする。
次のステップS16において、コントローラ1は、シートベルト作動指令値算出部18により、シートベルト制御量を算出する。図12に示すように、ステップS11で判断されたシートベルト作動フラグに応じて、シートベルト制御量を算出する。例えば、1次シートベルト作動フラグfPSB1_ACTが「1」となった場合には、Aといった予め定められた所定の巻き上げ量だけ所定時間に亘りシートベルトを巻き上げ、シートベルトの張力を増大させる。1次シートベルト作動の後に、2次シートベルト作動フラグfPSB2_ACTが「1」となった場合、1次シートベルト作動時よりも大きい力で、巻き上げ量をA〜Bに亘りシートベルトを巻き上げる。
次のステップS17において、コントローラ1は、アクセルペダル反力指令値算出部22により、アクセルペダル制御量を算出する。図13に示すように、ステップS12で判断されたアクセルペダル作動フラグに応じて、アクセルペダル制御量を算出する。例えば、1次アクセルペダル作動フラグfFFP1_ACTが「1」となった場合は、Aといった予め定められた所定のアクセル反力量だけ、所定時間に亘りアクセルペダル反力を増加させるような指令値とする。ここでは、所定量、所定時間としたが、例えば、逸脱時のヨー角が0となるまで作動させてもよい。また、1次アクセルペダル作動後、2次アクセルペダル作動フラグfFFP2_ACTが「1」となった場合は、1次アクセルペダル作動時の制御量Aよりも大きなアクセルペダル反力Bとなるように指令値を算出する。また、逸脱度に応じて指令値を算出しても良い。
次のステップS18において、コントローラ1は、エンジントルク指令値算出部19により、エンジントルク低減制御量を算出する。図14に示すように、ステップS13で判断されたエンジントルク作動フラグに応じて、エンジントルク低減制御量を算出する。例えば、1次エンジン作動フラグfETRQ1_ACTが「1」となった場合には、ドライバのアクセル開度に応じたエンジン駆動トルクを予め定められた所定のエンジントルク低減制御量Aだけ所定時間に亘り低減させるような指令値とする。1次エンジン制御作動後、2次エンジン作動フラグfETRQ2_ACTが「1」となった場合は、1次エンジン作動時の低減制御量Aよりも大きな低減制御量Bとなるように指令値を算出する。
次のステップS19において、コントローラ1は、ヨーモーメント制御部21により、車線逸脱防止ヨーモーメントMs、路外逸脱防止ヨーモーメントMrに基づいた液圧差指令値を算出する。
ヨーモーメント制御部21は、ステップS14でヨーモーメント作動フラグがセットされた場合に液圧差指令値を算出する。例えば、ヨーモーメント制御部21は、図15に示すように、ヨーモーメント作動フラグがセットされたときに車線逸脱防止ヨーモーメントMsが入力していれば、自車両に車線逸脱防止ヨーモーメントMsが発生するように液圧差指令値を算出し、ヨーモーメント作動フラグがセットされたときに路外逸脱防止ヨーモーメントMrが入力していれば、自車両に路外逸脱防止ヨーモーメントMrが発生するように液圧差指令値を算出する。すなわち、ヨーモーメント作動フラグがセットされた際に液圧差指令値の算出を判断し、液圧差指令値は入力するヨーモーメント(車線逸脱防止ヨーモーメントMsもしくは路外逸脱防止ヨーモーメントMr)に基づいて算出される。なお、自車両に所望のヨーモーメントを発生させるために付与する左右輪の液圧差の算出方法は周知の技術であるのでここでは詳述しないが、例えばヨーモーメントの値に対する左右輪の液圧差をマップとして記憶しておき、入力するヨーモーメントの大きさ(車線逸脱防止ヨーモーメントMsもしくは路外逸脱防止ヨーモーメントMr)に基づいてマップ引きによって液圧差指令値を算出すれば良い。ここで、ヨーモーメント作動フラグは、車線逸脱判断フラグFldもしくは路外逸脱フラグFlg_road_departがセットされたときにセットされる。これにより、ヨーモーメントの制御量としての車線逸脱防止ヨーモーメントMsに基づく液圧差指令値は、時刻taに設定され、路外逸脱防止ヨーモーメントMrに基づく液圧差指令値は、時刻ta後の時刻tbに設定される。
次のステップS20において、コントローラ1は、ブレーキ液圧指令値算出部20により、減速制御量を算出する。図16に示すように、ステップS15で判断された減速作動フラグに応じて、減速制御量を算出する。例えば、減速作動フラグfPCMD_ACTが「1」となった場合に、予め定められた所定のブレーキ液圧値で所定時間に亘り、車両各輪のブレーキを作動させるように指令値を算出する。また、車速が0となるまで減速制御を継続するような指令値としても良い。
次のステップS21において、コントローラ1は、ステップS14〜ステップS18にて算出された各制御量を車両システム4に出力する。これにより、コントローラ1は、シートベルト制御装置44によるシートベルトの巻き上げ量、エンジン制御装置42によるエンジントルク量、ブレーキ制御装置41によるブレーキ液圧、アクセルペダル制御装置43によるアクセルペダル反力、警報装置45による警報を制御する。
「ヨーモーメント制御量の調整処理」
つぎに、上述した車両制御装置において、路外逸脱防止ヨーモーメントMrの制御量を調整することについて、説明する。
(第1の路外逸脱防止ヨーモーメントMrの調整処理)
先ず、第1の路外逸脱防止ヨーモーメントMrの調整処理について説明する。
ヨーモーメント指令値補正部17は、図17に示すように、車線逸脱判断フラグFldがセットされた時刻t1となると、車線逸脱防止ヨーモーメントMsを立ち上げる。この車線逸脱防止ヨーモーメントMsは上記式(3)によって算出された値であり、便宜上所定の目標値Aとする。この車線逸脱防止ヨーモーメントMsは、実際のヨーモーメント値が当該目標値Aとなるよう立ち上がる。これにより、制御作動判断部13は、ヨーモーメント指令値算出部21及びブレーキ制御装置41によって各輪の制動力を制御し、自車両に車線逸脱を防止する方向のヨーモーメントを付与する。
ここで、車線逸脱判断フラグFldが「1」となった時点において、ヨーモーメント指令値算出部15は、上述した式4に従って、所定の補正ゲイン、走行車線内の自車両のヨー角Φ及び自車速Vに基づく路外逸脱防止ヨーモーメントMrを演算する。
その後の時刻t2にて、車線逸脱防止制御終了判断部16によって車線逸脱制御の終了が判断されると制御終了フラグが出力され、車線逸脱判断フラグFldは「0」となる。これに応じ、ヨーモーメント指令値補正部17は、車線逸脱防止ヨーモーメントMsを低下させる。
更にその後の時刻t3にて、自車両の車輪がランブルストリップスRSに接触したときに路外逸脱傾向が有ると判定し、路外逸脱フラグFlg_road_departが「1」となると、ヨーモーメント指令値補正部17は、式4によって演算された路外逸脱防止ヨーモーメントMr(式(4)に基づいて算出された値であり便宜上、車線逸脱防止ヨーモーメントMsと同様の所定の目標値Aとする)を補正する。
このとき、ヨーモーメント指令値補正部17は、車線逸脱制御の終了時刻t2(すなわち制御終了フラグの出力)から路外逸脱傾向が有ると判断した時刻t3までの時間TAが長いほど、路外逸脱防止ヨーモーメントMrを低減させる。これにより、ヨーモーメント指令値補正部17は路外逸脱防止ヨーモーメントMrを、補正前の路外逸脱防止ヨーモーメントMrの目標値Aよりも低下させた路外逸脱防止ヨーモーメントMrの目標値Bに補正する。制御作動判断部13は、ヨーモーメント制御部21及びブレーキ制御装置41を介して各輪の制動力を制御し、時刻t3から時刻t4に亘って、自車両に路外逸脱を防止する方向に、補正した制御量のヨーモーメントを付与する。
ヨーモーメント指令値補正部17は、図18に示すように、車線逸脱制御の終了時刻t2から路外逸脱傾向が有ると判断した時刻t3までの時間TAが長いほど、式(4)で算出された路外逸脱防止ヨーモーメントMrに乗算する路外逸脱制御目標値ゲインを低下させる。ヨーモーメント指令値補正部17は、車線逸脱制御の終了時刻t2から路外逸脱傾向が有ると判断した時刻t3までの時間TAを計測したときに、式(4)で算出された路外逸脱防止ヨーモーメントMrの目標値Aに対して路外逸脱制御目標値ゲインを乗算して、路外逸脱防止ヨーモーメントMrを低下させるよう補正する。
また、ヨーモーメント指令値補正部17は、車線逸脱判断フラグFldが「1」となった時点で式4に従って路外逸脱防止ヨーモーメントMrの目標値Aを演算して、道路逸脱フラグFlg_road_departの時点で車線逸脱制御の終了時刻t2から路外逸脱傾向が有ると判断した時刻t3までの時間TAに応じてヨーモーメントの減算分を演算しても良い。また、ヨーモーメント指令値補正部17は、車線逸脱判断フラグFldが「1」となった時点では路外逸脱防止ヨーモーメントMrの目標値を演算せず、道路逸脱フラグFlg_road_departが「1」となった時点で下記の式5で路外逸脱防止ヨーモーメントMrの目標値を演算しても良い。
Mr = 路外逸脱制御目標値ゲイン × Kr2 × f(Φ、v) (式5)
なお、上記式5は、式4に対して路外逸脱制御目標値ゲインを乗算したものである。
以上説明したように、第1の路外逸脱防止ヨーモーメントMrの調整処理を行う車両制御装置によれば、車線逸脱制御の終了時刻t2から路外逸脱傾向が有ると判断した時刻t3までの時間TAが長いほど、路外逸脱防止ヨーモーメントMrを小さくするので、車線逸脱防止制御が終了したときであっても、適切な路外逸脱防止ヨーモーメントMrを設定して、自車両の走行路外への逸脱を抑制できる。
例えば図19(a)に示すように、自車両が位置P1から位置P2に移動して実線の走行車線L1を逸脱した場合には、カメラ2によって追従していた実線の走行車線L1をロストしてしまう可能性が高い。実線の走行車線L1のロスト時には、車両制御装置は、ランブルストリップスRSを検出した際の走行車線内の自車両のヨー角Φが算出できない。このため、通常、路外逸脱防止ヨーモーメントMrは、自車両の位置がP1からP2に至る車線逸脱時の自車速V及び走行車線内の自車両のヨー角Φを用いて、式4によって算出する。
自車両の車頭時間後の横変位である逸脱推定量Xsが予め定められた逸脱判断閾値Xcを超えると、上述したように車線逸脱判断フラグFldが「1」となり、自車両には、車線逸脱防止ヨーモーメントMsが付与される(車線逸脱防止制御が実行される)。これにより、自車速Vが低く、且つ、走行車線内の自車両のヨー角Φが小さくなり、自車両がランブルストリップスRSを超えて路外に逸脱する可能性は低くなる。
仮に、車線逸脱防止ヨーモーメントMsが付与された状態で自車両が位置P1から位置P2に移動して車線を逸脱し、車線逸脱防止制御の終了した後、自車両の位置がP3からP4となり、自車両の車輪がランブルストリップスRSに接触し、車両制御装置がランブルストリップスRSの接触を検出すると、路外逸脱制御を開始する。しかし、自車両の位置がP3からP4の時の自車速V及び走行車線内の自車両のヨー角Φは、車線逸脱防止ヨーモーメントMsによって、車線逸脱時の自車速Vより低く、走行車線内の自車両の(自車両が位置P1から位置P2に移動している際の)ヨー角Φより小さくなっている。よって、車線逸脱時の自車速V及び走行車線内の自車両のヨー角Φに基づいて式4のように路外逸脱防止ヨーモーメントMrを付与すると、実際の自車両の自車速V及び走行車線内の自車両のヨー角Φから必要な制御量よりも、大きな制御量の路外逸脱防止ヨーモーメントMrが与えられる。すると、自車両の位置P5のときに、自車両の挙動が大きくなり、運転者に与える違和感が大きくなってしまう。
そこで、第1の路外逸脱防止ヨーモーメントMrの調整処理を行う車両制御装置によれば、車線逸脱時に演算した路外逸脱防止ヨーモーメントMrを、車線逸脱制御の終了時刻t2から路外逸脱傾向が有ると判断した時刻t3までの時間TAが長いほど小さく補正する。これによって、図19(b)に示すように、路外逸脱防止ヨーモーメントMrによって変動する位置P5’時の自車両の挙動を小さくすることができ、運転者に与える違和感を小さくしつつ、自車両が路外逸脱することを抑制できる。
また、この車両制御装置によれば、自車両の車輪がランブルストリップスRSに接触していると判断された場合に、路外逸脱傾向が有ると判断するので、自車両がランブルストリップスRSに接触したときに路外逸脱防止ヨーモーメントMrを付与でき、自車両が路外逸脱することを抑制できる。
更に、この車両制御装置によれば、自車両の位置と実線の走行車線L1との距離を検出し、当該検出した距離が所定距離以下となった場合に車線逸脱傾向が有ると判断するので、自車両と実線の走行車線L1との距離が所定距離以下となったときに、車線逸脱防止ヨーモーメントMsを付与する。これにより、運転者に与える違和感を低減して、自車両が路外逸脱することを抑制できる。
なお、上記実施の形態においては、車線逸脱防止制御による車線逸脱防止ヨーモーメントの付与を終了した時刻から、路外逸脱傾向が有ると判断した時刻までの時間に基づいて路外逸脱防止ヨーモーメントを小さくしているが、路外逸脱傾向が有ると判断した時刻までの時間に基づいて路外逸脱防止ヨーモーメントを小さくすると共に、路外逸脱防止ヨーモーメントを付与する時間を長くしても良い。例えば、車線逸脱防止ヨーモーメントの付与を終了した時刻から、路外逸脱傾向が有ると判断した時刻までの時間が長いほど路外逸脱防止ヨーモーメントを小さくすると共に、車線逸脱防止ヨーモーメントの付与を終了した時刻から、路外逸脱傾向が有ると判断した時刻までの時間が長いほど路外逸脱防止ヨーモーメントを付与する時間を長くして、路外逸脱防止ヨーモーメントの制御量の積分値(路外逸脱防止ヨーモーメントの大きさを付与時間積分した値)を同一とする。これにより、運転者に与える違和感を低減するとともに、路外逸脱の可能性をより確実に低減することができる。
(第2の路外逸脱防止ヨーモーメントMrの調整処理)
つぎに、第2の路外逸脱防止ヨーモーメントMrの調整処理について、図20を参照して説明する。
第2の路外逸脱防止ヨーモーメントMrの調整処理は、自車両の運転者によって運転操作の入力が有った場合により車線逸脱防止ヨーモーメントMsの付与が終了した場合に、車線逸脱制御の終了時刻t2から路外逸脱傾向が有ると判断した時刻t3までの時間TAに応じて、路外逸脱防止ヨーモーメントMrを小さく補正する。また、この第2の路外逸脱防止ヨーモーメントMrの調整処理は、車線逸脱制御が終了するときの運転操作の入力の度合いが大きい(運転操作の操作量が大きい)ほど、路外逸脱防止ヨーモーメントMrを小さく補正する。
具体的には、図20に示すように、時刻t1にて車線逸脱判断フラグFldが「1」となって車線逸脱防止ヨーモーメントMsを付与している最中に、時刻t2にて、操作検出センサ5によって検出された操作量が所定の操作量以上であると、車線逸脱防止制御終了判断部16は、ドライバオーバーライドフラグを「1」にして、車線逸脱制御を終了し、車線逸脱判断フラグFldを「0」にする。これにより、車両制御装置は、車線逸脱防止ヨーモーメントMsの付与を終了して、車線逸脱制御を終了する。
ここで、車線逸脱防止制御終了判断部16は、運転者による運転操作として、操舵操作、アクセル操作、ブレーキ操作の少なくとも一つの操作量が所定の操作量以上であるときに、制御終了フラグとしてのドライバオーバーライドフラグを「1」にする。
その後の時刻t3にて、自車両の車輪がランブルストリップスRSに接触したときに、路外逸脱判断部12が路外逸脱傾向が有ると判定し、ランブルストリップス検出フラグとしての路外逸脱フラグFlg_road_departが「1」となる。すると、ヨーモーメント指令値補正部17は、式4によって演算された路外逸脱防止ヨーモーメントMrを補正する。
このとき、ヨーモーメント指令値補正部17は、車線逸脱制御の終了時刻t2から路外逸脱傾向が有ると判断した時刻t3までの時間TAが長いほど、路外逸脱防止ヨーモーメントMrを低減させる。これにより、ヨーモーメント指令値補正部17は、補正前の路外逸脱防止ヨーモーメントMrの目標値Aよりも低下させた路外逸脱防止ヨーモーメントMrの目標値Bに補正する。制御作動判断部13は、ヨーモーメント制御部21及びブレーキ制御装置41を介して各輪の制動力を制御し、時刻t3から時刻t4に亘って、自車両に路外逸脱を防止する方向のヨーモーメントを付与する。
ヨーモーメント指令値補正部17は、図21に示すように、運転操作の入力の種類、操作量に応じて、路外逸脱制御目標値ゲインを変更して、路外逸脱防止ヨーモーメントMrを補正しても良い。車線逸脱防止制御終了判断部16がドライバオーバーライドを判断する要因としては、操舵操作、アクセル操作、ブレーキ操作の少なくとも一つである。そして、各運転操作の入力の度合いが大きい(運転操作の操作量が大きい)ほど、路外逸脱防止ヨーモーメントMrを小さく補正する。ヨーモーメント指令値補正部17は、例えば、路外逸脱制御目標値ゲインとして大、中、小の3段階設けておき、運転操作の入力の度合いが大きい場合には、路外逸脱制御目標値ゲインを小に設定して、路外逸脱防止ヨーモーメントMrを補正する。
また、各運転操作において、運転操作の入力の度合いが小さい(運転操作の操作量が小さい)場合、操作量が所定の操作量以上であっても運転者が意図的に操作したのか、無意識に操作したかの判断が困難となる。この場合、ヨーモーメント指令値補正部17は、路外逸脱制御目標値ゲインを中とすることにより、自車両の路外逸脱を抑制する効果と、ヨーモーメントの付与が大きすぎて運転者に与える違和感を低減できる。逆に、運転操作の入力の度合いが大きい場合には、運転者が路外逸脱防止のために意図的に操作している可能性が高い。この場合、ヨーモーメント指令値補正部17は、路外逸脱制御目標値ゲインを小さくすることによって、路外逸脱防止ヨーモーメントMrを小さくして、車両挙動の変化を抑制することができ、運転者への違和感を低減させることができる。
以上のように、第2の路外逸脱防止ヨーモーメントMrの調整処理を行う車両制御装置によれば、自車両の運転者によって運転操作の入力が有った場合(操作量が所定の操作量以上であった場合)により車線逸脱防止ヨーモーメントの付与が終了した場合には、当該運転操作の入力の度合いが大きいほど、路外逸脱防止ヨーモーメントを小さくする。これにより、この車両制御装置によれば、運転者が意図的に操作した場合には路外逸脱防止ヨーモーメントMrを小さくして、路外逸脱を抑制できると共に、運転者に対する違和感を低減できる。
また、この車両制御装置によれば、運転者による運転操作として、操舵操作、アクセル操作、ブレーキ操作の少なくとも一つの入力が有った場合に、車線逸脱防止ヨーモーメントの付与を終了するので、運転者の操作があったにも関わらず車線逸脱防止ヨーモーメントを付与することによる運転者に対する違和感を低減できる。
(第3の路外逸脱防止ヨーモーメントMrの調整処理)
つぎに、第3の路外逸脱防止ヨーモーメントMrの調整処理について、図22を参照して説明する。
第3の路外逸脱防止ヨーモーメントMrの調整処理は、自車両のヨー角が所定値以下となった場合により車線逸脱防止ヨーモーメントMsの付与が終了した場合に、車線逸脱制御の終了時刻t2から路外逸脱傾向が有ると判断した時刻t3までの時間TAに応じて、路外逸脱防止ヨーモーメントMrを小さく補正する。ここで、車線逸脱防止制御終了判断部16は、自車両が走行車線に対して直進状態に近いと判断できるほど走行車線内の自車両のヨー角Φが小さいとき、車線逸脱制御を終了する。
具体的には、図22に示すように、時刻t1にて車線逸脱判断フラグFldが「1」となって車線逸脱防止ヨーモーメントMsを付与している最中に、時刻t2にて、走行車線内の自車両のヨー角Φが小さくなると、車線逸脱防止制御終了判断部16は、車両姿勢判断フラグを「1」にして、車線逸脱制御を終了し、車線逸脱判断フラグFldを「0」にする。これにより、車両制御装置は、車線逸脱防止ヨーモーメントMsの付与を終了して、車線逸脱制御を終了する。
その後の時刻t3にて、自車両の車輪がランブルストリップスRSに接触したときに、路外逸脱判断部12が路外逸脱傾向が有ると判定し、ランブルストリップス検出フラグとしての道路逸脱フラグFlg_road_departが「1」となる。すると、ヨーモーメント指令値補正部17は、式4によって演算された路外逸脱防止ヨーモーメントMrを補正する。
このとき、ヨーモーメント指令値補正部17は、車線逸脱制御の終了時刻t2から路外逸脱傾向が有ると判断した時刻t3までの時間TAが長いほど、路外逸脱防止ヨーモーメントMrを低減させる。これにより、ヨーモーメント指令値補正部17は、補正前の路外逸脱防止ヨーモーメントMrの目標値Aよりも低下させた路外逸脱防止ヨーモーメントMrの目標値Bに補正する。これにより、制御作動判断部13は、ヨーモーメント制御部21及びブレーキ制御装置41を介して各輪の制動力を制御し、時刻t3から時刻t4に亘って、自車両に路外逸脱を防止する方向のヨーモーメントを付与する。
以上のように、第3の路外逸脱防止ヨーモーメントMrの調整処理を行う車両制御装置によれば、車線逸脱防止ヨーモーメントMsを付与した後に走行車線内の自車両のヨー角Φが小さくなって車線逸脱制御を終了したときには、走行路外への逸脱の可能性は低いと考えられる。また、走行路外に逸脱する可能性があったとしても、走行路外への逸脱度合いは小さいと考えられる。このため、車両制御装置によれば、路外逸脱防止ヨーモーメントMrを小さくでき、仮に路外逸脱傾向があると判断した場合でも、大きな路外逸脱防止ヨーモーメントMrを付与することなく、路外逸脱を抑制できると共に、運転者に与える違和感を低減できる。
(第4の路外逸脱防止ヨーモーメントMrの調整処理)
つぎに、第4の路外逸脱防止ヨーモーメントMrの調整処理について、図23を参照して説明する。
第4の路外逸脱防止ヨーモーメントMrの調整処理は、車線逸脱防止ヨーモーメントMsの付与開始から所定時間が経過した場合により車線逸脱防止ヨーモーメントMsの付与が終了した場合に、車線逸脱制御の終了時刻t2から路外逸脱傾向が有ると判断した時刻t3までの時間TAに応じて、路外逸脱防止ヨーモーメントMrを小さく補正する。ここで、車線逸脱防止制御終了判断部16は、予め設定されている車線逸脱防止ヨーモーメントMsの付与時間を経過したときに、車線逸脱制御を終了する。
具体的には、図23に示すように、時刻t1にて車線逸脱判断フラグFldが「1」となって車線逸脱防止ヨーモーメントMsを付与し、時刻t1から所定時間が経過した時点の時刻t2にて、車線逸脱防止制御終了判断部16は、作動時間経過フラグを「1」にして、車線逸脱制御を終了し、車線逸脱判断フラグFldを「0」にする。これにより、車両制御装置は、車線逸脱防止ヨーモーメントMsの付与を終了して、車線逸脱制御を終了する。
その後の時刻t3にて、自車両の車輪がランブルストリップスRSに接触したときに、路外逸脱判断部12が路外逸脱傾向が有ると判定し、ランブルストリップス検出フラグとしての道路逸脱フラグFlg_road_departが「1」となる。すると、ヨーモーメント指令値補正部17は、式4によって演算された路外逸脱防止ヨーモーメントMrを補正する。
このとき、ヨーモーメント指令値補正部17は、車線逸脱制御の終了時刻t2から路外逸脱傾向が有ると判断した時刻t3までの時間TAが長いほど、路外逸脱防止ヨーモーメントMrを低減させる。これにより、ヨーモーメント指令値補正部17は、補正前の路外逸脱防止ヨーモーメントMrの目標値Aよりも低下させた路外逸脱防止ヨーモーメントMrの目標値Bに補正する。これにより、制御作動判断部13は、ヨーモーメント指令値算出部21及びブレーキ制御装置41によって各輪の制動力を制御し、時刻t3から時刻t4に亘って、自車両に路外逸脱を防止する方向のヨーモーメントを付与する。
以上のように、第4の路外逸脱防止ヨーモーメントMrの調整処理を行う車両制御装置によれば、車線逸脱防止ヨーモーメントMsを付与してから所定時間が経過して車線逸脱制御を終了したときには、車線逸脱防止ヨーモーメントMsが所定時間付与されているため、走行路外への逸脱の可能性は低いと考えられる。また、走行路外に逸脱する可能性があったとしても、走行路外への逸脱度合いは小さいと考えられる。このため、車両制御装置によれば、路外逸脱防止ヨーモーメントMrを小さくでき、路外逸脱傾向があると判断した場合でも、大きな路外逸脱防止ヨーモーメントMrを付与することなく、路外逸脱を抑制できると共に、運転者に与える違和感を低減できる。
(第5の路外逸脱防止ヨーモーメントMrの調整処理)
つぎに、第5の路外逸脱防止ヨーモーメントMrの調整処理について、図24を参照して説明する。
第5の路外逸脱防止ヨーモーメントMrの調整処理は、図24に示すように、車線逸脱防止ヨーモーメントMsの付与をしている最中に、自車両の車輪がランブルストリップスRSに接触して、路外逸脱判断部12が路外逸脱傾向が有ると判定した場合、車線逸脱防止ヨーモーメントMsの付与を停止して、路外逸脱防止ヨーモーメントMrを発生させる。このとき、ヨーモーメント指令値補正部17は、時刻t1にて車線逸脱判断フラグFldを「1」にして車線逸脱防止ヨーモーメントMsを付与し、時刻t2にて、ランブルストリップス検出フラグが「1」となると、車線逸脱防止ヨーモーメントMsの付与を終了する。
時刻t2において、ヨーモーメント指令値補正部17は、路外逸脱防止ヨーモーメントMrを補正する。このとき、ヨーモーメント指令値補正部17は、車線逸脱判断フラグFldを「1」とした時刻t1からランブルストリップスRSに接触したと判定した時刻t2までの時間TAが長いほど、路外逸脱防止ヨーモーメントMrを低減させる。
これにより、ヨーモーメント指令値補正部17は、補正前の路外逸脱防止ヨーモーメントMrの目標値Aよりも低下させた路外逸脱防止ヨーモーメントMrの目標値Bに補正する。これにより、制御作動判断部13は、ヨーモーメント指令値算出部21及びブレーキ制御装置41によって各輪の制動力を制御し、時刻t3から時刻t4に亘って、自車両に路外逸脱しない方向のヨーモーメントを付与する。
この車両制御装置によれば、車線逸脱防止ヨーモーメントMsを発生させている最中に、自車両の車輪がランブルストリップスRSに接触していると判断された場合に、当該車線逸脱防止ヨーモーメントMsの付与の開始時刻からの経過時間に基づいて、路外逸脱防止ヨーモーメントMrを補正する。これによっても、車両制御装置は、上述したように、運転者に与える違和感を小さくしつつ、自車両が路外逸脱することを抑制できる。
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。