JP2012031054A - セラミックス多孔質体 - Google Patents

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Abstract

【課題】透明性、屈折率、耐磨耗性に優れた多孔質体を提供する。
【解決手段】炭素数3〜12のアルキル基を含有し、かつ表面の最小反射率が1%以下であることを特徴とするセラミックス多孔質体。
【選択図】なし

Description

セラミックス多孔質体とはナノメートルからミリメートルサイズの細孔を有するセラミックス材料であり、様々な機能を発現する構造体として期待されている。例えば、細孔内に触媒活性基を修飾した固体触媒、分子の吸着・脱着を利用したガス分離体、さらには多孔質構造に由来する低屈折率性や低誘電率性を利用した光学膜や絶縁膜が挙げられる。中でも光学膜や絶縁膜においては、セラミックス多孔質体の多孔度がその屈折率や誘電率といった性能と直結するため、従来から多孔度を上げる報告はある。
従来、コロイダルシリカからなる数珠状に連結された数珠状シリカストリングとテトラエトキシシランから粒子間の空隙が形成されることで、高い多孔度を有するシリカ多孔質体が報告されている(特許文献1)。この方法ではシリカ多孔質体の表面に粒子状の凸凹がナノメートルサイズで存在するため、摩擦係数が大きくなり、また高い多孔度を得るためにはシリカストリング間の結合サイトが極めて少なくなることで、磨耗に対する機械強度が弱い。また、平均長さ30〜200nmのシリカストリングから構成されているために、ヘーズ(実施例0.5〜0.9%)が大きく透明性にも問題がある。
また特許文献2では、凝集粒子径が60〜400nmの中空状シリカ粒子と金属酸化物から磨耗性の高いセラミックス多孔質体を報告している。実施例を見る限り、ヘーズが低く透明性に優れているものの、この方法では基板の屈折率に対して最適な屈折率を有するシリカ多孔質体とした場合、上記のような透明性と同時に最適な反射防止性能を両立させることが困難であった。これはシリカ多孔質体が波長に対して1/4以上の凝集粒子径を有する中空状シリカ粒子から構成されているため、この凝集粒子よりも小さい膜厚にしてしまうと膜表面が荒れ、透明性が著しく低下すると予想される。つまり、透明性を確保するためにはある一定(凝集粒子のサイズ)以上の膜厚とする必要があり、これにより最適な反射防止設計を困難にしている。また、中空状シリカ粒子は最大でも空隙率50%程度(明細[0054])であるため、バインダーを添加すると空隙率は50%未満となるため、屈折率を十分に下げることが困難である。
特許文献3では、粒子径10〜60nmのシリカ粒子からなる組成物を600℃以上の温度で熱硬化させることで、耐磨耗性の高いシリカ多孔質体を得ている。この方法では、非常に高い熱処理温度のために基材はガラスしか使えない。また、高温処理によりシリカ成分の縮合反応が進みすぎ、多孔度が低下し、屈折率が高くなる。
特許文献4の場合、メチルトリエトキシシランとテトラエトキシシランからなるアルコキシシラン中に高分子を添加することで、縮合反応したシリカ中の高分子を取り除き、高い多孔度を有するシリカ多孔質体を得ている。この方法では、1〜2官能のアルキル基を有するアルコキシシラン類を添加することで、シリカ多孔質体を安定に製造することができるが、基材の種類によってシリカ成分と基材との密着性が弱くなり、十分な機械強度が発現できないことがある。
WO2004/07392 特開2006−335881号 特表2004−511418号 特開2009−73722号
本発明の課題は、透明性(ヘーズ)、屈折率(最小反射率)、耐磨耗性に優れた多孔質体を提供することにある。
本発明者らが検討した結果、炭素数3〜12のアルキル基を有し、かつ表面の最小反射率が1%以下のセラミックス多孔質体が、透明性、屈折率(最小反射率)、耐摩耗性に優れることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)炭素数3〜12のアルキル基を含有し、かつ表面の最小反射率が1.5%以下であることを特徴とするセラミックス多孔質体。
(2)珪素を含む陽性元素を含有し、珪素の含有量が、陽性元素の含有量に対して50mol%以上であることを特徴とする(1)に記載のセラミックス多孔質体。
(3)基材と、該基材上に設けられた、膜厚が0.05〜3μmである(1)又は(2)に記載のセラミックス多孔質体とを備えることを特徴とするセラミックス多孔質積層体。(4)該基材のTgが200℃以下であることを特徴とする(3)に記載のセラミックス多孔質積層体。
(5)基材と、該基材上に設けられた(1)又は(2)に記載のセラミックス多孔質体とを備えることを特徴とする光学部材。
(6)基材と、該基材上に設けられた(1)又は(2)に記載のセラミックス多孔質体とを備えることを特徴とする反射防止積層体。
本発明によれば、高い反射防止性能を有し、かつ磨耗性に優れた多孔質体を提供することができる。
以下、本発明について実施形態を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施できる。
1.セラミックス多孔質体
〔炭素数3〜12のアルキル基〕
本発明のセラミックス多孔質体は、炭素数3〜12のアルキル基を有する。本発明のセラミックス多孔質体が有するアルキル基は、好ましくは炭素数3〜10、もっとも好ましくは炭素数5〜8である。炭素数3を下回ると耐磨耗性が低下し、炭素数12を超えると多孔質構造が安定して製造できなくなり、多孔度の低下に伴う反射防止性の著しい低下が起こる。
本発明のセラミックス多孔質体が有するアルキル基としては、プロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、フェニル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ドデシル、などが挙げられるが、中でもプロピル、n−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシルが好ましく、更にはn−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチルが好ましい。
〔多孔質構造〕
本発明のセラミックス多孔質体は、空孔を有した多孔質構造を有する非金属材料かつ無機材料である。その材料は結晶性でも非結晶性でもよいが、基材への追随性の観点から非結晶性が好ましい。具体的には酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミなどの金属酸化物、窒化珪素などの金属窒化物などが挙げられる。
その多孔質構造は特に制限はなく、その空孔は、通常、トンネル状や独立空孔がつながった連結孔であるが、詳細な空孔の構造にも特に制限はない。ただし、当該空孔の構造としては連続的な空孔が好ましく、こうした連続的な空孔は電子顕微鏡により確認することができる。
また、機械強度の高い骨格とするためには、規則構造を有さない方がよく、具体的には、XRDパターン(X線回折パターン)において、回折角(2θ)=0.5°〜10°の領域に、回折ピーク強度(面積)が標準偏差の2倍(即ち、2σ)以上の回折ピークを有さないことが好ましい。ここで、回折ピークとは、以下の定義により算出される周期構造サイズDが10Å以上となる回折ピークをいう。また、σは標準偏差を表わす。
周期構造サイズDは、下記式(i)に示すScherrer式に基づき算出できる。なお、式(i)において、Scherrer定数Kは0.9であり、測定に用いたX線波長をλとする。ブラッグ角θおよび実測半価幅βoは、それぞれプロファイルフィティング法により算出する。試料由来の半価幅βは、下記式(ii)を用いて補正計算する。標準Siの回折ピークより計算した実測半価幅の回帰曲線を作成し、該当する角度の半価幅を読み取り装置由来半価幅βiとする。なお、Dの単位はÅ(オングストローム)であり、β、βo及びβiの単位はラジアンとする。
Figure 2012031054
Figure 2012031054
標準偏差σは、以下のように定義される。
Figure 2012031054
また、空孔サイズや空隙率を調整することで、屈折率、誘電率、密度を調整することができ、それらを調整することで、光学用途の他にも、様々な用途にも応用することができる。
〔空孔サイズ〕
空孔サイズには特に制限はないが、平均空孔サイズは通常0.1〜300nmで、機械強度の優れた多孔質体となる。0.5〜200nmが好ましく、0.8〜100nmがさらに好ましく、1〜80nmがもっとも好ましい。小さすぎると毛管力により空孔内に水
蒸気が入り、それにより屈折率が変化したり、光学特性に影響を与える恐れがある。一方、大きすぎると、表面に欠陥ができ、表面性が損なわれ、散乱等のヘーズが生じる危険性がある。
〔空隙率〕
空隙率には特に制限はないが、平均空隙率は、10〜90%が好ましく、20〜85%がより好ましく、30〜80%がさらに好ましい。小さすぎると屈折率が低くならず、十分な光学特性が得られない恐れがある。一方、大きすぎると、表面に欠陥ができ、表面性が損なわれ、散乱等のヘーズが生じる危険性がある。
〔主成分〕
反射防止性を維持しつつ、優れた耐磨耗性を得るためには、炭素数3〜12のアルキル基を含有することが重要であるが、本発明のセラミックス多孔質体は酸化珪素を主成分とすることが好ましい。セラミックス多孔質体中のケイ素元素の含有量は、本発明の効果を著しく損なわない限り、特に制限はないが、例えば、珪素を含む全ての陽性元素に対するケイ素の割合は、通常50mol%以上、好ましくは70mol%以上、より好ましくは80mol%以上、特に好ましくは90mol%以上である。前記の珪素の含有割合が少なすぎると、セラミックス多孔質体の表面粗さが大きくなり、機械的強度も低下する可能性がある。また、珪素の含有割合が高いほど表面平滑性のよいセラミックス多孔質体が形成される。なお、上限は理想的には100mol%である。
また、炭素数3〜12のアルキル基が含まれていればよく、異なる炭素数を有する複数のアルキル基を混合してもよい。さらに上記炭素数以外のアルキル基を含有することもできる。より好ましくは炭素数4〜10、もっとも好ましくは炭素数5〜8である。炭素数3を下回ると耐磨耗性が低下し、炭素数12を超えると多孔質構造が安定して製造できなくなり、多孔度の低下に伴う反射防止性の著しい低下が起こる可能性がある。
〔最小反射率〕
本発明のセラミックス多孔質体の反射防止性と耐磨耗性の両立の観点から、表面の最小反射率は1.5%以下である。より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下、もっとも好ましくは0.2%以下である。1.5%を越えると反射防止性が低下するだけではなく、多孔質構造による表面の荒れが生じ易く、そうした表面構造が同時に耐磨耗性にも悪影響する。一方、0.01%を下回るとセラミックス多孔質体表面に付着する汚れが反射防止性に影響を与え易くなるため、適用できる用途が限られてしまうという恐れがある。
なお、最小反射率は反射分光スペクトル測定などの光学的手法で測定された波長400nm〜1000nmにおける値をいう。
〔屈折率〕
本発明のセラミックス多孔質体は、屈折率が1.3以下であることが好ましい。中でも、1.28以下が好ましく、1.27以下がより好ましく、1.25以下が特に好ましい。さらに好ましくは1.23以下である。屈折率が大きすぎると本発明のセラミックス多孔質体中の歪みが大きくなり、外力に対して弱くなる可能性がある。一方、屈折率の下限に特に制限は無いが、通常1.05以上、好ましくは1.08以上である。屈折率が小さすぎると本発明のセラミックス多孔質体の機械的強度が著しく低下する可能性がある。
なお、屈折率は、分光エリプソメーター法、反射率測定、反射分光スペクトル測定或いはプリズムカプラーなどの光学的手法で測定された波長400nm〜700nmにおける値をいい、好ましくは分光エリプソメーターで測定されたものをいう。分光エリプソメーターで測定する場合、測定値をCauthyモデルでフィッティングすることで、屈折率
を見積もることができる。
また、中心線平均粗さの大きい基材上に備えられたセラミックス多孔質体の場合、反射率分光スペクトル測定によっても屈折率を見積もることが可能であり、測定領域を10μm以下にすることが好ましい。
〔厚さ〕
本発明のセラミックス多孔質体の厚さには特に制限はないが、光学機能層として用いるためには、また膜の耐磨耗性の観点においても、0.05〜50μmが好ましく、0.05〜5μmがより好ましく、0.05〜3μmがより好ましく、0.07〜3μmがより好ましく、0.09〜1μmがさらに好ましく、0.11〜0.5μmがもっとも好ましい。0.05μmより薄いと、基材の平面度を向上させる必要がある場合があり、特に基材の大面積化の観点で、製膜工程が困難になる場合がある。一方、50μmを越えると、膜厚方向における多孔質構造が不均質になり、多孔質体に歪みが残存し易くなる可能性があり、耐磨耗性に対しても悪影響を及ぼす危険性がある。
〔形状〕
本発明のセラミックス多孔質体の形状は特に制限はないが、膜状であることが好ましい。セラミックス多孔質体の厚さは上記の膜厚と同様とすることができる。また、セラミックス多孔質体を光学機能層として使用する場合、セラミックス多孔質体は一定サイズ以上の基材に備えることが好ましい。即ち0.0025m以上が好ましく、0.05m以上がより好ましく、0.1m以上がさらに好ましく、1m以上がもっとも好ましい。かかるサイズより小さいと、光学特性が十分に現れない可能性がある。
〔静的接触角〕
本発明のセラミックス多孔質体は、用途に応じて、他の層や基材と積層構成とする必要がある。こうした場合、表面の静的接触角を制御することが好ましく、具体的には、1時間の加熱処理後の水に対する静的接触角が、通常25°以上、中でも30°以上、特には33°以上であることが好ましく、また、通常90°以下、中でも87°以下、更には85°以下、特には82°以下が好ましい。前記の静的接触角が小さすぎると、セラミック体の親水性が高くなりすぎて、その表面に水分が吸着しやすくなり、他の層との密着性が低下する可能性がある。一方、前記の静的接触角が大きすぎると、セラミック体の表面が疎水状態となり、積層する層や基材の制限が大きくなる可能性がある。加熱処理とは通常200℃の条件でよく、基材が樹脂の場合には、樹脂基材のガラス転移温度以下で行うことができる。
なお、前記の静的接触角は、以下の要領で測定できる。即ち、常温・常湿の雰囲気下で水滴の静的接触角を測定する。静的接触角は、水滴をセラミック体の表面に滴下させ、その際の水滴の接触角を測定する。測定は常温・常湿の雰囲気下で行ない、水滴サイズ2μlを滴下し、1分以内に測定、これを5回以上繰り返し、その平均値を前記の静的接触角として求める。
〔平滑性〕
本発明のセラミックス多孔質体は、表面粗さRaが7nm以下であることが好ましい。中でも、5nm以下が好ましく、3nm以下がより好ましく、1nm以下が特に好ましい。表面粗さRaが大きすぎるとセラミックス多孔質体の均質性が劣る可能性がある。一方、表面粗さRaの下限に制限は無いが、通常0.2nm以上、好ましくは0.3nm以上である。表面粗さRaが小さすぎるとセラミックス多孔質体の歪みが極度に大きくなる可能性があり、耐磨耗性に対しても悪影響を及ぼす危険性がある。したがって、耐磨耗性においても上記範囲内であることが好ましい。
なお、表面粗さRaは、JIS B0601:2001に規定されている基準に基づき、ケ−エルエー・テンコール社製P−15型接触式表面粗さ計を用いて、1走査距離0.5μmの条件で数回測定した平均値を算出して求めることができる。
〔耐水性〕
本発明のセラミックス多孔質体は、本発明のセラミックス多孔質体を膜状にして光学用途に使用する場合には、光学膜厚(屈折率と膜厚の積)を制御することが重要であるため、水中に浸漬処理の前後での膜厚の変化が少ない方が好ましい。具体的には、水浸漬処理の前後での膜厚の変化率は、50%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、20%以下が更に好ましく、10%以下が特に好ましい。変化率が大きすぎると光学用途の適用において性能が低下する可能性がある。水浸積処理とは常温(25℃)の水に24時間浸積することでよい。
なお、膜厚の測定は、ケーエルエー・テンコール社製P−15型接触式表面粗さ計を用い、測定条件はスタイラス・フォース(触圧)0.2mg、スキャン速度10um/秒として行なえばよい。また分光エリプソメーター、反射分光スペクトル法、プリズムカプラによっても評価できる。
また、セラミックス多孔質体は、水浸漬処理した後にクラックが少ないものが好ましく、そのクラックは目視若しくは光学顕微鏡で観測できる。具体的には、クラックのサイズが100μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい、1μm以下がさらに好ましい。100μmを越えると基材との密着性の低下やヘーズが大きくなる可能性がある。さらに1mm×1mm内に前記クラックが存在しない領域の面積合計がセラミックス多孔質体表面に対して50%以上であることが好ましく、70%以下がより好ましく、85%以上がさらに好ましい。50%未満の場合、光学用途として光学性能の安定性や外観が低下する可能性がある。
また、耐湿熱性の評価として、「高温高湿処理」もある。即ち、本発明のセラミック体の波長550nmにおける屈折率n1を事前に測定した後、このセラミック体を温度85℃、湿度85%RH、又は温度60℃、湿度90%RHの条件下に静置し、500時間後に取り出す。その後、このセラミック体の波長550nmにおける屈折率n2を再度測定する。このときの屈折率差の絶対値Δn´=|n2−n1|は0.001〜0.15が好ましく、0.003〜0.12がより好ましく、0.005〜0.1が更に好ましく、0.008〜0.08が特に好ましい。
2.セラミックス多孔質積層体
本発明のセラミックス多孔質積層体は、基材と、透光基材の片面若しくは両面に設けられた本発明のセラミックス多孔質体とを備えて構成される。また、本発明のセラミックス多孔質積層体は、必要に応じて、基材及びセラミックス多孔質体以外の部材を備えていても良い。
3.基材
用いられる基材は用途に応じて任意のものを用いることができる。中でも、汎用材料からなる透光基材を用いることが好ましい。なお、透光基材とは、所定の波長の光の透過性が高い基材をいうこととし、該波長は、透光基材の用途に応じて適宜選択される。透光基材の波長550nmの全光線透過率は、通常65%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上である。また、透光基材は性能に影響を及ぼさない限り、散乱やヘーズを有していてもよい。なお、該波長は、可視光の範囲に限定されないが、太陽電池用途においては、可視光線領域の高い透過性が好ましい。
〔材料〕
透光基材の材料の例を挙げると、珪酸ガラス、高珪酸ガラス、珪酸アルカリガラス、鉛
アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、バリウムガラスなどの珪酸塩ガラス、硼珪酸ガラスやアルミナ珪酸ガラス、燐酸塩ガラスなどのガラス及びこれらの強化ガラス;ポリメチルメタクリレート、架橋アクリレート等のアクリル樹脂、ビスフェノールAポリカーボネート等の芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリシクロオレフィン等の非晶性ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン等のスチレン樹脂、ポリエーテルスルホン等のポリスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等の合成樹脂、ETFE、PFA、PCTFE、ECTFE、PVDFPVFなどのフッ素含有樹脂などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を任意の組合せで用いることができる。
中でも寸法安定性の観点では、ガラス、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂が好ましく、耐候性の観点から、フッ素含有樹脂、ソーダ石灰ガラス、芳香族ポリカーボネート樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂が好ましい。さらに、耐衝撃性の観点から強化ガラス、芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することも好ましい。
例えば透光基材として太陽電池用カバーガラスを用いる場合、セラミックス多孔質体は透光基材表面の反射防止膜として機能し、出力の向上を実現する。本発明のセラミックス多孔質体は耐久性に優れているため、このような用途に好適である。なお単結晶太陽電池や多結晶太陽電池などの近赤外光でも光電変換可能な太陽電池に用いられる太陽電池用カバーガラスを透光基材として用いる場合には、通常のソーダ石灰ガラスでは含有される2価の鉄イオンによって近赤外領域に吸収を持つため、鉄イオン含有量を低減することで光透過性を高めることが好ましく、さらに耐衝撃強度が優れた白板強化ガラスを上記透光基材として用いることがより好ましい。
なお、太陽電池用カバーガラスに用いる場合、セラミックス多孔質体及び透光基材のC光の全透過率を、75%以上とすることが好ましく、80%以上とすることがより好ましく、85%以上とすることがさらに好ましく、90%以上とすることが特に好ましい。光の透過率が高いほど太陽電池が効率よく発電できるからである。また、前記全光線透過率は理想的には100%であるが、太陽電池の表面での部分反射を考慮すると通常99%以下である。
太陽電池とは、光起電力効果を利用して、光エネルギーを電力に変換することのできる素子または装置であり、例として、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、微結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池などのシリコン系太陽電池、CIS系太陽電池、CIGS系太陽電池、GaAs系太陽電池などの化合物太陽電池、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池、また多接合型太陽電池、HIT太陽電池が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。また、アモルファスシリコン太陽電池、CIS系太陽電池、CIGS系太陽電池、GaAs系太陽電池などの化合物太陽電池、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池のような薄膜系太陽電池においては、基材の片面にセラミックス多孔質体、もう一方には透明電極層を施してもよい。
〔ガラス転移温度〕
ガラス以外の樹脂基材においては、基材のガラス転移温度が200℃以下であることが好ましい。より好ましくは180℃以下、さらに好ましくは150℃以下、もっとも好ましくは120℃以下である。下限値の制限は特にないが、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上、もっとも好ましくは80℃以上である。200℃を越えると、製膜時の熱処理による樹脂基材の熱収縮が大きくなり、線膨張の小さいセラミックス多孔質体との界面で剥離や局所的な欠陥が生じる危険性がある。一方、50℃を下回ると製膜時の熱処理による樹脂基材の形状変化により、多孔構造が形成し難くなり結果として高い反射
防止性能を得ることができない危険性がある。
また、樹脂基材の厚みは通常3mm以下、より好ましくは1mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下、もっとも好ましくは0.3mm以下である。厚すぎると、製膜時の熱処理により膨張収縮する樹脂基材の応力が多孔質体へ残留することで、耐磨耗性を悪化させる危険性がある。一方、下限値として、通常0.01mm以上、好ましくは0.02mm以上、より好ましくは0.05以上、もっとも好ましくは0.07以上である。下限値を下回ると、製膜時に形成される多孔質体の硬化反応により基材が変形する恐れがある。
また、樹脂基材の場合、製膜面に表面処理を施してもよい。具体的には、コロナ処理、UVオゾン処理、プラズマ処理などが挙げられる。基材と多孔質体との密着性の観点から、コロナ処理、プラズマ処理が好ましい。
〔寸法〕
透光基材の寸法は任意である。ただし、透光基材として板状の基板を用いる場合には、当該基板の厚さは、機械的強度及びガスバリア性の観点から、0.01mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、1mm以上がより好ましい。また、当該厚さは、軽量化及び光線透過率の観点から、80mm以下が好ましく、50mm以下がより好ましく、30mm以下が特に好ましい。さらに透光基材の大きさとしては、光学的な効果を得る観点から0.1m以上が好ましく、0.5m以上がより好ましく、1m以上が特に好ましい。上限には特に制限はないが、通常100m以下が好ましく、50m以下がより好ましい。
〔粗さ〕
また、透光基材の中心線平均粗さも任意である。ただし、積層するセラミックス多孔質体の製膜性の観点から、当該中心線平均粗さは10nm以下が好ましく、8nm以下がより好ましく、5nm以下が更に好ましく、3nm以下が特に好ましい。
一方、防眩性を付与する場合、透光基材の中心線平均粗さは上記の限りではなく、透光基材の表面は凸凹を有することが好ましい。かかる凹凸は透光基材の片面のみでも、両面に有していてもよいが、セラミックス多孔質体が積層される面に有することが好ましい。
このような場合における中心線平均粗さは、通常0.1μm以上、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.4μm以上であり、また通常15μm以下、好ましくは10μm以下である。表面粗さの最大高さRmaxは通常0.1μm以上であり、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上、特に好ましくは0.8μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは80μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは10μm以下である。上記中心線平均粗さ及び表面粗さの最大高さRmaxの範囲にある透光基材上に本発明のセラミックス多孔質体を備えることで、低反射特性に優れ、かつ防眩性にも優れた光学フィルター等を提供することができる。この範囲を下回る、若しくは超えた場合、低反射効果が損なわれる可能性があり、また外観が不透明になる可能性がある。また透光基材表面の凹凸の平均間隔Smは、通常0.01mm以上、好ましくは0.03mm以上であり、通常30mm以下、好ましくは15mm以下とすることが可能である。上記中心線平均粗さ、表面粗さの最大高さRmax及び凹凸の平均間隔Smは、JIS−B0601:1994に従った汎用の表面粗さ計(例えば、(株)東京精密社製サーフコム570A)により測定される。
〔その他〕
また、セラミックス多孔質体が太陽電池、有機エレクトロルミネッセンス、無機エレクトロルミネッセンス、LEDなどの光デバイスに適用される場合、用いる透光基材の片側、若しくは両面に電極が形成されていてもよい。電極は直接又は他の層を介して透光基材に設けることができる。電極の材料としては、例えばアルミニウム、錫、マグネシウム、
金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金、又はこれらを含む合金、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウム、酸化亜鉛等が挙げられ、これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組合せで用いることができる。中でも透明性の観点で酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、又はこれを主組成としたものが好ましい。
またその膜厚は通常10nm以上、好ましくは40nm以上、より好ましくは80nm以上、さらに好ましくは100nm以上である。また通常3,000nm以下、好ましくは1,000nm以下、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは200nm以下である。10nmを下回るとセラミックス多孔質体に欠陥ができ易くなる傾向があり、3,000nmを越えると透明性を損なう可能性がある。
また、透光基材上に有機系透明電極を用いることも可能である。この場合、上記の無機系電極と組み合わせることも可能である。有機系透明電極としては、例えばPEDOT等の導電性高分子を用いることができる。
4.光学部材
本発明のセラミックス多孔質体は、光学部材にも適用可能である。本発明で言う光学部材とは、透光基材を通る光の反射、透過、回折等の現象を制御するフィルターをいうが、これらに限定されるものではない。本発明のセラミックス多孔質体は極めて最小反射率が低いため、これらの光の現象を制御することが容易であると同時に、耐磨耗性に優れているので、光学部材として様々な製品に適用可能である。通常、上述の基材上に本発明のセラミックス多孔質体を設けた積層体を、光学部材として使用する。
光学部材として、具体的には、透光基材表面での光の反射を防止する反射防止積層体として用いることで意匠性、視認性などの機能を付与することもできる。
本発明のセラミックス多孔質体は、必要に応じて他の層と組み合わせて、可視光線反射膜、紫外線反射膜、近赤外線反射膜、赤外線反射膜等として使用される。
さらに、太陽光発電等の発電デバイスに適用することで光取り込み膜や光閉じ込め膜として用いたり、さらにはディスプレイ、照明等の発光デバイスに適用することで光取り出し膜(または輝度向上膜)としても用いたりすることができる。
光学部材の用途としては、特に制限はなく、上記太陽電池などの発電デバイス、有機エレクトロルミネッセンス、無機エレクトロルミネッセンス、液晶などのディスプレイデバイス、LEDなどの照明デバイス等が挙げられる。中でも本発明では基材の大面積化が容易であることから、太陽電池などの発電デバイスや大型のディスプレイデバイスへの適用が効果的である。
なお、本発明のセラミックス多孔質体を上記太陽電池以外の光学用途に用いる場合であっても、通常は、セラミックス多孔質体の光線透過率が高いことが好ましい。これにより、セラミックス多孔質体に安定かつ有効な光学性能を備えさせることができるからである。
〔他の層〕
光学部材に用いられる他の層としては、光学部材の種類や用途に応じて適宜選択され、例えば高屈折率層、散乱層、金属層、熱線遮断層、紫外線劣化防止層、親水性層、防汚性層、防曇層、防湿層、接着層、ハード層、ガスバリア層、導電性層、アンチグレア層、拡散層等が挙げられる。これらの層は、透光基材のいずれの面に形成されていてもよく、またセラミックス多孔質体上に積層されていてもよい。なお、これらの層は光学部材中に、1種単独で用いてもよく、また2種以上を任意の組合せで用いてもよい。
5.セラミックス多孔質体の製造方法
本発明のセラミックス多孔質体は、通常、炭素数3〜12のアルキル基を有するアルコキシシラン類、その加水分解物及び部分縮合物からなるアルコキシシラン類群より選ばれる一種(以下、適宜「アルコキシシラン化合物」ともいう。)と、界面活性剤と、有機溶媒と、水とを含むセラミック組成物を、透光基材上に塗布しセラミック前駆体を製膜する製膜工程、該セラミック前駆体を加熱することでセラミックス多孔質体とする加熱工程を経て製造される。
以下、本発明で用いるセラミック組成物について詳細に説明する。
〔セラミック組成物〕
本発明のセラミックス多孔質体の製造方法において用いるセラミック組成物には、炭素数3〜12のアルキル基を有するアルコキシシラン化合物と、界面活性剤と、有機溶媒と、水とが含まれる。以下に詳細を述べる。
[アルコキシシラン化合物]
高い反射防止性を維持しつつ、同時に優れた耐磨耗性を得るためには、炭素数3〜12のアルキル基を有することが重要であるため、本発明で用いるアルコキシシラン化合物は炭素数3〜12のアルキル基を有するアルコキシシラン類群を含有すればよく、特に制限はないが、以下の第1及び第2の化合物(群)のうちいずれか一方又は両方を含有することが好ましい。
(第1の化合物(群))
炭素数3〜12のアルキル基を有するアルコキシシラン類群(即ち、炭素数3〜12のアルキル基を有するアルコキシシラン類、その加水分解物及び部分縮合物からなる群)より選ばれる少なくとも一種と、テトラアルコキシシラン類群(即ち、テトラアルコキシシラン類、その加水分解物及び部分縮合物からなる群)より選ばれる少なくとも一種と、他のアルコキシシラン類群(即ち、他のアルコキシシラン類、その加水分解物及び部分縮合物からなる群)より選ばれる少なくとも一種との組み合わせ。
(第2の化合物(群))
特定部分縮合物(即ち、炭素数3〜12のアルキル基を有するアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種とテトラアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種と他のアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種との部分縮合物)。
(炭素数3〜12のアルキル基を有するアルコキシシラン類群)
炭素数3〜12のアルキル基を有するアルコキシシラン類の種類に制限は無い。好適なものの例を挙げると、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、イソペンチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、イソヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、2−エチルヘキシルトリメトキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、イソペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、イソヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、2−エチルヘキシルトリエトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、プロピルトリ(n−プロポキシ)シラン、ブチルトリ(n−プロポキシ)シラン、イソブチルトリ(n−プロポキシ)シラン、t−ブチルトリ(n−プロポキシ)シラン、ペンチルトリ(n−プロポキシ)シラン、イソペンチルトリ(n−プロポキシ)シラン、ヘキシルトリ(n−プロポキシ)シラン、イソヘキシルトリ(n−プロポキシ)シラン、フェニルトリ(n−プロポキシ)シラン、ヘプチルトリ(n−プロポキシ)シラン
、オクチルトリ(n−プロポキシ)シラン、2−エチルヘキシルトリ(n−プロポキシ)シラン、ノニルトリ(n−プロポキシ)シラン、デシルトリ(n−プロポキシ)シラン、ドデシルトリ(n−プロポキシ)シラン、等がある。
アルキルアルコキシシラン類が有するアルキル基の炭素数は、より好ましくは炭素数3〜10、もっとも好ましくは炭素数5〜8である。炭素数3を下回ると耐磨耗性が低下し、炭素数12を超えると多孔質構造が安定して製造できなくなり、多孔度の低下に伴う反射防止性の著しい低下が起こる。
これらの異なる炭素数を有する複数のアルキル基を2種以上混合してもよい。
(テトラアルコキシシラン類群)
テトラアルコキシシラン類の種類に制限は無い。好適なものの例を挙げると、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ(n−ブトキシ)シランなどが挙げられる。また、テトラアルコキシシラン類群の例としては、前記のテトラアルコキシシラン類の加水分解物及び部分縮合物(オリゴマー等)なども挙げられる。
後述の粗乾燥工程におけるセラミック前駆体の安定性の観点では、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシラン並びにそれらのオリゴマーが好ましく、テトラエトキシシランがさらに好ましい。
ただし、テトラアルコキシシラン類は経時的に加水分解及び部分縮合を生じやすいため、テトラアルコキシシラン類のみを用意した場合でも、通常はそのテトラアルコキシシラン類の加水分解物及び部分縮合物がテトラアルコキシシラン類と共存することが多い。
なお、テトラアルコキシシラン類群に属する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(他のアルコキシシラン類群)
他のアルコキシシラン類は、上述した炭素数3〜12のアルキル基を有するアルコキシシラン類群、テトラアルコキシシラン類群に属さないアルコキシシランであれば、任意のものを使用できる。好適なものの例を挙げると、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン類;ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン等の有機残基が2つ以上のトリアルコキシシリル基を結合したもの;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−カルボキシプロピルトリメトキシシラン等のケイ素原子に置換するアルキル基が反応性官能基を有するもの;などが挙げられる。また、他のアルコキシシラン類群の例としては、前記の他のアルコキシシラン類の加水分解物及び部分縮合物(オリゴマー等)なども挙げられる。例えば3−トリハイドロキシシリル−1−プロパン−スルフォン酸等がある。
中でも、芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基を有するモノアルキルアルコキシシラン及びジアルキルアルコキシシランが好ましい。具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエチルシラン、デシルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリフル
オロプロピルトリメトキシシラン、トリエトキシ−1H、1H、2H、2H−トリデカフルオロ−n−オクチルシランなどが好ましいものとして挙げられる。
ただし、他のアルコキシシラン類は経時的に加水分解及び部分縮合を生じやすいため、他のアルコキシシラン類のみを用意した場合でも、通常は他のアルコキシシラン類の加水分解物及び部分縮合物が他のアルコキシシラン類と共存することが多い。なお、他のアルコキシシラン類に属する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(好ましい組み合わせ)
上述した炭素数3〜12のアルキル基を有するアルコキシシラン類群と、上述のテトラアルコキシシラン類群又は/及び他のテトラアルコキシシラン類群とを併用してもよい。
上述した炭素数3〜12のアルキル基を有するアルコキシシラン類群、テトラアルコキシシラン類群、及び他のテトラアルコキシシラン類群の組み合わせの中でも、特に好ましい組み合わせとしては、炭素数3〜12のアルキルアルコキシシラン類として、脂肪族炭化水素基を有するモノアルキルアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン類としてのテトラエトキシシラン、他のアルコキシシラン類としての炭素数1〜2の脂肪族炭化水素基を有するモノアルキルアルコキシシラン又はジアルキルアルコキシシランとの組み合わせが挙げられる。この組み合わせによれば、塗膜性に優れたセラミック組成物を用意に得られる。
(炭素数3〜12のアルキル基を有するアルコキシシラン類群と、テトラアルコキシシラン類群又は/及び他のアルコキシシラン類群との部分縮合物)
アルコキシシラン化合物としては、炭素数3〜12のアルキル基を有するアルコキシシラン類群と、テトラアルコキシシラン類群又は/及び他のアルコキシシラン類群との部分縮合物を使用することもできる。具体的には、炭素数3〜12のアルキル基を有するアルコキシシラン類群とテトラアルコキシシラン類群との部分縮合物、炭素数3〜12のアルキル基を有するアルコキシシラン類群と他のアルコキシシラン類群との部分縮合物、炭素数3〜12のアルキル基を有するアルコキシシラン類群とテトラアルコキシシラン類群と他のアルコキシシラン類群との部分縮合物である。
中でも炭素数3〜12のアルキル基を有するアルコキシシラン類群とテトラアルコキシシラン類群と他のアルコキシシラン類群との部分縮合物(第2の化合物(群))が好ましい。
上記部分縮合物は、1種類のみ用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。また、上記部分縮合物と、炭素数3〜12のアルキル基を有するアルコキシシラン類群、テトラアルコキシシラン類群、及び他のアルコキシシラン類群からなる群より選ばれる1種以上とを、併用してもよい。
(アルコキシシラン化合物の比率)
本発明で用いるセラミック組成物において、炭素数3〜12のアルキル基を有するアルコキシシラン化合物の含有比率は特に制限されない。しかしながら、セラミックス多孔質体の空孔形成の観点から、全アルコキシシラン化合物由来の珪素原子に対する炭素数3〜12のアルキル基を有するアルコキシシラン類由来の珪素原子の割合が、通常0.05(mol/mol)以上、好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.13以上、もっとも好ましくは0.15以上である。また、通常0.75以下、好ましくは0.7以下、さらに好ましくは0.6以下、もっとも好ましくは0.5以下である。上限値を越えると未反応シラノールが残存しやすくなるため、多孔質体の耐水性が低下したり、多孔度の低下による反射防止性の低下を引き起こす恐れがある。一方、下限値を下回ると、耐磨耗性が低くなり、容易に擦傷したり、磨耗しやすくなる恐れがある。
また、造膜性の観点から、テトラアルコキシシラン化合物を用いるとよい。その場合、全アルコキシシラン化合物由来のケイ素原子に対するテトラアルコキシシラン類由来のケイ素原子の割合が、通常0.1(mol/mol)以上、好ましくは0.15(mol/mol)以上、より好ましくは0.2(mol/mol)以上であり、また、通常0.7(mol/mol)以下、好ましくは0.65(mol/mol)以下、より好ましくは0.6(mol/mol)以下である。前記の割合が低い場合、製膜時の硬化反応が遅くなり、結果として不均質なセラミックス多孔質体となり、耐磨耗性や耐水性に悪影響を与える可能性がある。一方、前記の割合が高い場合、セラミックス多孔質体中の残存シラノール基が多くなり、製膜時の湿度などの外部環境に影響され易くなり、高い多孔度のセラミックス多孔質体が安定して製造できない可能性がある。
また、より高い耐湿熱性の観点から、他のアルコキシシラン化合物を用いるとよい。その場合、全アルコキシシラン化合物由来のケイ素原子に対する他のアルコキシシラン類由来のケイ素原子の割合が、通常0.1(mol/mol)以上、好ましくは0.13(mol/mol)以上、より好ましくは0.15(mol/mol)以上であり、また、通常0.7(mol/mol)以下、好ましくは0.6(mol/mol)以下、より好ましくは0.55(mol/mol)以下である。前記の割合が低い場合、得られるセラミックス多孔質体の疎水性は高くなるが、毛管力により多孔質構造内に拘束された水分が膜内から放出されず、膜劣化の要因になる可能性がある。一方、前記の割合が高い場合、セラミックス多孔質体中の残存シラノール基が多くなり、やはり耐水性が低下する可能性がある。
ここで、全アルコキシシラン化合物由来のケイ素原子とは、セラミック組成物に含有される炭素数3〜12のアルキル基を有するアルコキシシラン類群、テトラアルコキシシラン類群、他のアルコキシシラン類群、及びそれらの部分縮合物が有するケイ素原子の数の合計をいう。
また、テトラアルコキシシラン類由来のケイ素原子とは、組成物に含有されるテトラアルコキシシラン類群が有するケイ素原子の数と、テトラアルコキシシラン類群を含む部分縮合物が有するケイ素原子のうちテトラアルコキシシラン類群に対応する部分構造に属するケイ素原子の数との合計をいう。したがって、セラミック組成物がアルコキシシラン化合物以外にケイ素原子を有する化合物を含有していたとしても、当該化合物が有するケイ素原子は前記の割合の算出には関与しない。なお、前記の全アルコキシシラン化合物由来のケイ素原子に対するテトラアルコキシシラン類由来のケイ素原子の割合は、Si−NMRにより測定することができる。
セラミック組成物中に、ケイ素を含有する化合物(ケイ素原子含有化合物)は、通常0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上含有されていることが好ましく、また通常70重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下含有されていることが好ましい。0.05重量%を下回ると霧状に噴出した際のセラミック組成物の造膜性が低下する可能性があり、70重量%を越えるとセラミック前駆体の表面性が低下する可能性がある。なお、ケイ素原子含有化合物として具体的には、前述の炭素数3〜12のアルキル基を有するアルコキシシラン類群、テトラアルコキシシラン類群、他のアルコキシシラン類群、特定部分縮合物が挙げられる。
また、得られるセラミックス多孔質体の膜厚制御の観点から、前記ケイ素原子含有化合物や下記に説明する界面活性剤などを含む固形分濃度は通常0.01重量%以上であり、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上である。また通常50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、35重量%以下がさらに好ましい
[界面活性剤]
本発明では、上記製膜工程におけるセラミック組成物の吐出性、及びセラミック前駆体の造膜性、さらには得られるセラミックス多孔質体の低屈折率化の観点から、用いるセラミック組成物に界面活性剤を含有する。界面活性剤とは、親油基(低極性)と親水基(高極性)とを備えた分子のことをいう。界面活性剤は、上記の定義に沿った化合物であれば公知の何れの界面活性剤を用いることもできる。例えば、非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。中でも、セラミック組成物の吐出性及びセラミック前駆体の造膜性の観点から、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤が好ましく、セラミックス多孔質体の低屈折率化の観点から、非イオン系界面活性剤が好ましい。さらに非イオン系界面活性剤の中でも分子量が高い方が好ましい。具体的には重量平均分子量は、通常200以上であり、1,000以上が好ましく、3,000以上がより好ましく、5,000以上が特に好ましい。
重量平均分子量が小さすぎると、得られるセラミックス多孔質体の多孔度を高く維持することが困難となる可能性がある。なお、前記重量平均分子量の上限に制限はないが、通常100,000以下、好ましくは70,000以下、より好ましくは40,000以下である。重量平均分子量が大きすぎるとセラミック組成物の吐出性が低下する可能性がある。
なお、非イオン系界面活性剤にエチレンオキサイド部位を有することより、アルコキシシラン化合物のゾル−ゲル反応中において形成されるアルコキシシラン化合物の加水分解物や縮合物に対して安定となる。
また、非イオン系界面活性剤の主鎖骨格構造は特に限定されることはない。主鎖骨格構造の具体例を挙げると、ポリエーテル、ポリエステル、ポリオール、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリジエン、ポリビニルエーテル、ポリスチレン、及びそれらの誘導体などが挙げられる。中でも、ポリエーテルを構成成分とする高分子が好ましい。その具体例としては、ポリエチレングリコール(以下適宜、「PEG」という)、ポリプロピレングリコール、ポリイソブチレングリコールなどが挙げられる。中でも、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイド トリブロックポリマー、及び/又は、ポリエチレングリコールが特に好ましい。
なお、上記ノニオン系界面活性剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
造膜性向上の観点から界面活性剤として、下記のような化合物を少量添加しても良い。また、その組み合わせや比率には特に制限はなく、任意に調整できる。
例えば、上記のような界面活性剤の他に、親油基がフッ化炭素基のフッ素系界面活性剤、親油基がシロキサン鎖のシリコーン系界面活性剤、親油基がアルキル基の界面活性剤等から2種以上が選択されることが好ましく、中でも非イオン性系界面活性剤とフッ素系界面活性剤(特にパーフルオロアルキル基を含有するもの)との組合せ、及び非イオン性系界面活性剤とシリコーン系界面活性剤(特にシロキサン結合を含有するもの)との組合せから選択されることが好ましい。
これらの界面活性剤の親水基は、例えば、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基等が好ましい。またポリエーテル、ポリグリセリン等も好ましい。
フッ素系界面活性剤として、例えば、ヘキサエチレングリコール(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロペンチル)エーテル、1,1,2,2−テトラフロロオクチル(1,1,2,2、−テトラフロロプロピル)エーテル、パーフロロドデシルスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
またシリコーン系界面活性剤として、例えばSH21シリーズ、SH28シリーズ(東レ・ダウコーニング株式会社)などが挙げられる。
また、全アルコキシシラン化合物由来のケイ素原子に対する界面活性剤の割合として、得られるセラミックス多孔質体の表面性の観点から、通常0.001(mol/mol)以上、好ましくは0.002(mol/mol)以上、より好ましくは0.003(mol/mol)以上、また、通常0.05(mol/mol)以下、好ましくは0.04(mol/mol)以下、より好ましくは0.03(mol/mol)以下となるようにする。
[有機溶媒]
本発明のセラミックス多孔質体の製造方法に用いる有機溶媒には特に限定されないが、好適な有機溶媒の例を挙げると、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール等の炭素数1〜4の一価アルコール、炭素数1〜4の二価アルコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールなどのアルコール類;酢酸メチル、エチルアセテート、イソブチルアセテート、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、2−エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等の、前記アルコール類のエーテルまたはエステル化物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−ホルミルモルホリン、N−アセチルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、N−アセチルピペリジン、N−ホルミルピロリジン、N−アセチルピロリジン、N,N’−ジホルミルピペラジン、N,N’−ジホルミルピペラジン、N,N’−ジアセチルピペラジン等のアミド類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;テトラメチルウレア、N,N’−ジメチルイミダゾリジン等のウレア類;ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらを2種以上選択して用いても良い。
本発明で用いるセラミック組成物の塗布工程において、より安定した液性を得るためには、炭素数1〜3の低級アルコールを用いることが好ましい。低級アルコールは加水分解物と容易に相互作用し、炭素数3以下であることで、セラミック前駆体の形成時に起こる膜表面近傍での加水分解物の縮合反応が適度に生じ、後の加熱工程での構造変化を抑制することができる。
さらに、基材上に均質な前駆体を形成するためには塗布後の乾燥とその際起こる縮合反応を制御するために、沸点100〜180℃の高沸点有機溶媒を含有することが好ましい。組成物中に所定の沸点を含有していることで、霧状に噴霧され、基材上でセラミック前駆体を形成する間の乾燥を防ぐとともに、組成物に含まれるアルコキシシラン化合物の加水分解物は低級アルコールとの相互作用により縮合反応を抑制すことで、安定して均質なセラミック前駆体を形成することが可能である。
より好ましくは110℃〜170℃、さらに好ましくは115℃〜165℃、もっとも好ましくは120℃〜160℃である。100℃を下回ると霧状に噴霧され、基材上でセラミック前駆体を形成する間の乾燥が速く、霧化粒子の形状に由来する膜表面の荒れが発生する恐れがある。一方、180℃を越えると、有機溶媒の除去におけるアルコキシシラン化合物の縮合反応が進みすぎるため、膜欠陥や空孔の崩壊が起こる恐れがある。
中でもアルコキシシラン化合物の加水分解物との相互作用の観点から、高沸点溶媒とし
て、3−メチルー1−ブタノール、、1−ペンタノール、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、グリセリン、ジエチレングリコール ジメチルエーテル、トリエチレ
ングリコールなどが好ましい。該有機溶媒の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に制限されないが、通常、100〜500が好ましい、より好ましくは110〜400、さらに好ましくは115〜350、もっとも好ましくは120〜300である。100を下回ると、一方、500を超えるとアルコキシシラン化合物が形成するゲル構造内における有機溶剤の占める立体的サイズが大きいため、除去後のセラミックス多孔質体の歪が大きくなる恐れがある。
また、高沸点有機溶媒の使用量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、低級アルコールに対して、通常0.1mol/mol以上、中でも0.5mol/mol以上、特には1mol/mol以上が好ましく、また、通常50mol/mol以下、中でも30mol/mol以下、特には25mol/mol以下が好ましい。有機溶媒の使用量が少なすぎるとセラミックス多孔質体の表面性が低くなる可能性があり、多すぎるとセラミック前駆体の膜質が基板の表面エネルギーに影響されやすくなる可能性がある。
上述したアルコキシシラン化合物及び水を混和させる能力を有するものであれば、特に制限されないが、アルコキシシラン化合物との相溶性の観点から、メタノール、エタノール、1−プロパノール、t−ブタノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、エチルアセテート、酢酸メチル、イソブチルアセテートなどが好ましい。
[水]
セラミック組成物は水を含有する。用いる水の純度は高いほうが好ましい。通常は、イオン交換及び蒸留のうち、いずれか一方または両方の処理を施した水を用いればよい。ただし、例えば光学用途積層体のような微小不純物を特に嫌う用途分野に、得られたセラミックス多孔質体を用いる場合には、より純度の高いセラミックス多孔質体が望ましいため、蒸留水をさらにイオン交換した超純水を用いることが好ましい。詳しくは、例えば0.01μm〜0.5μmの孔径を有するフィルターを通した水を用いればよい。
水の使用量として、全アルコキシシラン化合物由来のケイ素原子に対する水の割合が、通常10(mol/mol)以上、好ましくは11(mol/mol)以上、より好ましくは12(mol/mol)以上とする。全アルコキシシラン化合物由来のケイ素原子に対する水の割合が前記の範囲よりも小さいと、ゾル−ゲル反応のコントロールが難しく、セラミック組成物を霧状に噴出して得られるセラミック前駆体の表面性が低下する傾向があり、透明性を損なう可能性がある。なお、水の量は、カールフィッシャー法(電量滴定法)により算出できる。
[触媒]
セラミック組成物には触媒を含有していてもよく、例えば上述したアルコキシシラン化合物の加水分解および脱水縮合反応を促進させる物質を任意に用いることができる。
その例を挙げると、フッ酸、燐酸、ホウ酸、塩酸、硝酸、硫酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、ステアリン酸、リノレイン酸、安息香酸、フタル酸、クエン酸、コハク酸などの酸類;アンモニア、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類;ピリジンなどの塩基類;アルミニウムのアセチルアセトン錯体などのルイス酸類;などが挙げられる。
また、触媒の例としては、金属キレート化合物も挙げられる。この金属キレート化合物の金属種としては、例えば、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、アンチモン等
が挙げられる。金属キレート化合物の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。
アルミニウム錯体としては、例えば、ジ−エトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−イソプロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−tert−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−tert−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジイソプロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−tert−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−tert−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物等を挙げることができる。
チタン錯体としては、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリイソプロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−tert−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−tert−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノイソプロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−tert−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリイソプロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−tert−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−tert−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノイソプロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チ
タン、モノ−tert−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタン等を挙げることができる。
上述したものの中でも、アルコキシシラン化合物の加水分解および脱水縮合反応をより容易に制御するためには、酸類若しくは金属キレート化合物が好ましく、酸類がさらに好ましい。
なお、触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
触媒の使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、アルコキシシラン化合物に対して、通常0.001mol倍以上、中でも0.003mol倍以上、特には0.005mol倍以上が好ましく、また、通常0.8mol倍以下、中でも0.5mol倍以下、特には0.1mol倍以下が好ましい。触媒の使用量が少なすぎると加水分解反応が適度に進まず、製造後にセラミックス多孔質体中にシラノール基などの活性基が残存しやすくなり、セラミックス多孔質体の耐水性が低下する可能性があり、多すぎると反応制御が困難になり、製造中に触媒濃度が更に高くなることで、セラミックス多孔質体の表面性が低下する可能性がある。
また、造膜性の観点で組成物のpHが5.5以下であることが好ましい。より好ましくは4.5以下、さらに好ましくは3以下、特に好ましくは2以下である。この範囲にすることで製膜時に基材の表面改質を同時に行うことができ、より造膜性が向上する傾向になる。
[その他]
本発明で用いるセラミック組成物には、上述したアルコキシシラン化合物、有機溶媒、界面活性剤、水、触媒以外の成分を含有していても良い。また、当該成分は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
以下、本発明のセラミックス多孔質体の製造方法について詳細に説明する。
〔セラミック組成物の調製〕
上述した組成物を構成する各成分を混合して、セラミック組成物を調製する。この際、各成分の混合の順番に制限は無い。また、各成分は、全量を一回で混合しても良く、2回以上に分けて連続又は断続的に混合しても良い。
ただし、従来、制御困難とされているゾル−ゲル反応を制御して、セラミック組成物をより工業的に調合するためには、以下の要領で混合することが好ましい。即ち、アルコキシシラン化合物、水及び有機溶媒を混合し、その混合物を熟成させることでアルコキシシラン化合物をある程度加水分解及び脱水重縮合させる。そして、その混合物に界面活性剤を混合してセラミック組成物を調合する。これにより、ゾル−ゲル反応条件下で、アルコキシシラン化合物と界面活性剤との親和性を維持することができる。なお、熟成は前記の混合物と界面活性剤とを混合した後で行なってもよい。
前記熟成の際、アルコキシシラン化合物の加水分解・脱水重縮合反応を進めるためには、加熱することが好ましい。加熱条件として、用いる溶媒の沸点を超えなければ、特に制限は無いが、通常28℃以上、中でも30℃以上、特には45℃以上とすることが好ましい。加熱温度が低すぎると反応時間が極度に長くなり、生産性が低下する可能性がある。一方、加熱温度の上限は、120℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましい。120℃を超えると組成物中の有機溶媒及び水が沸騰し、分解・脱水重縮合反応を制御できな
くなる可能性がある。
また、加熱を伴う熟成時間に制限は無いが、通常10分以上、好ましくは20分以上、より好ましくは30分以上、また、通常10時間以下、好ましくは8時間以下、より好ましくは5時間以下である。熟成時間が短すぎると均一に反応を進めることが難しくなる可能性があり、長すぎると溶媒の揮発が無視できなくなり、組成比が変化してセラミック組成物の安定性が低くなる可能性がある。
さらに、熟成時の圧力条件に制限は無いが、通常は常圧で熟成を行なうことが好ましい。圧力が変化すると溶媒の沸点も変化し、熟成中の溶媒が揮発(蒸発)することで、組成比が変化して、セラミック組成物の安定性が低くなる可能性がある。
また、熟成後、塗布工程前に用いる組成物は有機溶媒を更に混合して希釈することが好ましい。これにより、セラミック組成物内でのゾル−ゲル反応速度を低下させることができ、セラミック組成物のポットライフを長く維持することが可能となる。また、セラミックス多孔質体の製造における歩留まりの観点では、加熱を伴わない熟成を行うことが好ましい。加熱を伴わない熟成は、セラミック組成物の調製後に行ってもよい。
〔セラミックス多孔質体の製造方法〕
[製膜工程]
本発明で用いるセラミック組成物を膜化する膜化工程を行う。膜化工程では、通常、所定の基材の表面に本発明で用いるセラミック組成物を成膜して本発明のセラミックス多孔質体を形成する。製膜の方法に制限は無いが、例えば、セラミック組成物をバーコーター、アプリケーター、ドクターブレード等を使用して基材上に延ばす流延法;セラミック組成物に基材を浸漬し引き上げるディップコート法;スピンコート法、キャピラリーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などの周知を挙げることができる。これらの方法のうち、流延法、ダイコート法、ディップコート法、スプレーコート法及びスピンコート法がセラミック組成物を均一に塗布することができるので好ましく採用される。中でも、均質な膜を形成する上ではスピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法が特に好ましい。
流延法でセラミック組成物を膜化する場合、流延速度に制限は無いが、通常0.1m/分以上、好ましくは0.5m/分以上、より好ましくは1m/分以上、また、通常1000m/分以下、好ましくは700m/分以下、より好ましくは500m/分以下である。流延速度が遅すぎると膜厚にムラができる可能性があり、速すぎると基材との濡れ性の制御が困難になる可能性がある。
また、ディップコート法においては、任意の速度で、基材を塗布液に浸漬し引き上げればよい。この際の引き上げ速度に制限は無いが、通常0.01mm/秒以上、好ましくは0.05mm/秒以上、より好ましくは0.1mm/秒以上、また、通常50mm/秒以下、好ましくは30mm/秒以下、より好ましくは20mm/秒以下である。引き上げ速度が遅すぎたり速すぎたりすると、膜厚にムラができる可能性がある。一方、基材を塗布液中に浸漬する速度に制限はないが、通常は、引き上げ速度と同程度の速度で基材を塗布液中に浸漬することが好ましい。さらに、基材を塗布液中に浸漬してから引き上げるまでの間、適当な時間浸漬を継続してもよい。この浸漬を継続する時間に制限は無いが、通常1秒以上、好ましくは3秒以上、より好ましくは5秒以上、また、通常48時間以下、好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下である。この時間が短すぎると基材への密着性が低い可能性があり、長すぎると浸漬中に多孔質体が形成されて平滑性が低い可能性がある。
さらに、スピンコート法でセラミック組成物を塗布形成する場合、回転速度は、通常1
0回転/分以上、好ましくは50回転/分以上、より好ましくは100回転/分以上、また、通常100000回転/分以下、好ましくは50000回転/分以下、より好ましくは10000回転/分以下である。回転速度が遅すぎると膜厚にムラができる可能性があり、速すぎると溶媒の気化が進みやすくなりアルコキシシラン類の加水分解等の反応が十分進まず耐水性が低い可能性がある。
また、スプレーコート法でセラミック組成物を塗布形成する場合、スプレーノズルの方式には特に限定されないが、各々のスプレーノズルの利点を考慮して選択すればよい。代表的な例として、二流体スプレーノズル(二流体霧化方式)、超音波スプレーノズル(超音波霧化方式)、回転式スプレーノズル(回転霧化方式)などが挙げられる。組成物の霧化と気体流による霧化粒子の基材への搬送を独立に制御できる点では、超音波スプレーノズル、及び回転式スプレーノズルが好ましく、組成物の液性維持の観点では二流体スプレーノズルが好ましい。さらに、霧化粒子の搬送に利用する気体流の気流速度は、用いる組成物により適宜調整することが好ましいが、通常5m/秒以下、好ましくは4m/秒以下、より好ましくは3m/秒以下である。気流速度が高過ぎると、膜が不均質になる可能性がある。また用いる気体としては特に限定されないが、窒素などの不活性ガスが好ましい。スプレーノズルと基材との距離は基材サイズにより適宜調整することが好ましいが、通常5cm以上、好ましくは10cm以上、より好ましくは15cm以上である。また通常100cm以下、好ましくは80cm以下、より好ましくは50cm以下である。この範囲を超えると膜厚むらが発生する可能性がある。
ただし、膜化工程では、相対湿度が通常20%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、また、通常85%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは75%以下の環境下において膜化を行うようにする。膜化工程での相対湿度を前記の範囲にすることにより、表面平滑性の高い膜が得られる。膜化工程における雰囲気に制限は無い。例えば、空気雰囲気中で膜化を行なってもよく、例えばアルゴン等の不活性雰囲気中で膜化を行なってもよい。
膜化工程を行う際の温度に制限は無いが、通常0℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下、中でも好ましくは50℃以下、特に好ましくは40℃以下である。膜化の際の温度が低すぎると溶媒が気化しにくくなり膜の表面平滑性が低下する可能性があり、高すぎるとアルコキシシラン類の硬化が急速に進み膜歪みが大きくなる可能性がある。
膜化工程を行う際の圧力に制限は無いが、通常0.05MPa以上、好ましくは0.08MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上、また、通常0.3MPa以下、好ましくは0.2MPa以下、より好ましくは0.15MPa以下である。圧力が低すぎると溶媒が気化しやすくなり膜化後のレベリング効果が得られず膜の平滑性が低くなる可能性があり、高すぎると溶媒が気化しにくくなり膜の表面性が低くなる可能性がある。
ところで、ディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法では、乾燥速度に違いがあり、膜化直後の膜の安定構造に僅かな違いが生じることがある。これは膜化中の雰囲気を変えることで調整する事ができる。また、前記の膜の安定構造の僅かな違いは、基材の表面処理によっても対処する事ができる。
なお、セラミック組成物を基材上に成膜するのに先立って、セラミック組成物の濡れ性、形成されるセラミックス多孔質体の密着性の観点から、基材に表面処理を施しておいてもよい。そのような表面処理の例を挙げると、シランカップリング処理、アンカーコート
処理、コロナ処理、UVオゾン処理、プラズマ処理などが挙げられる。また、表面処理は、1種のみを行なってもよく、2種以上を任意に組み合わせて行なってもよい。
また、膜化工程は一回で行なってもよいが、二回以上に分けて行なってもよい。例えば、後述する加熱工程を介して膜化工程を二回以上行うようにすれば、積層構造を有するセラミックス多孔質体を形成することが可能である。これは、例えば屈折率が異なる層を積層したい場合などに有用である。
基材上にセラミック組成物を製膜した後、粗乾燥工程を行ってもよい。
粗乾燥工程における粗乾燥の手法は制限されない。例えば加熱乾燥、減圧乾燥、通風乾燥等が挙げられる。これらは1種を単独で実施してもよく、2種以上を組み合わせて実施してもよい。
粗乾燥の手段も任意である。例えば粗乾燥を加熱乾燥により行なう場合、加熱乾燥の手段の例として、ホットプレート、オーブン、赤外線照射、電磁波照射等が挙げられる。また通風加熱乾燥の手段としては、例えば送風乾燥オーブン等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
粗乾燥時の温度は制限されないが、通常は室温以上であることが好ましい。特に加熱乾燥を行なう場合、その温度は通常25℃以上、好ましくは30℃以上、さらに好ましくは40℃以上、また、通常300℃以下、好ましくは230℃以下、さらに好ましくは200℃以下の範囲が望ましい。なお、加熱乾燥時の温度は一定でもよいが、変動してもよい。
粗乾燥時の圧力も制限されないが、特に減圧乾燥を行なう場合、通常は常圧以下、好ましくは10kPa以下、より好ましくは1kPa以下がより好ましい。
粗乾燥時の湿度も制限されないが、セラミック前駆体の吸湿を防ぐため、通常は60%RH程度以下とすることが望ましく、好ましくは常圧で30%RH以下、或いは真空状態(湿度0%RH)とすることが望ましい。
粗乾燥時の雰囲気も制限されず、大気雰囲気でも、窒素雰囲気等の不活性ガス雰囲気でも、真空雰囲気でもよい。これらはセラミック前駆体の特性等を考慮して選択すればよい。但し、通常はクリーンな雰囲気であることが好ましい。
粗乾燥時間も制限されず、セラミック前駆体中の有機溶媒や水が除去できれば任意であるが、粗乾燥時の温度・圧力・湿度等の条件や、セラミック組成物中に含まれる有機溶媒の沸点、プロセス速度、セラミック前駆体の特性等を考慮して決定することが好ましい。通常1秒以上、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上、また、通常100時間以下、好ましくは24時間以下、より好ましくは3時間以下の範囲が望ましい。
[加熱工程]
製膜工程で得られたセラミック前駆体を加熱することでセラミックス多孔質体を得ることができる。加熱条件は基材の種類や組成物に使用する有機溶剤により調整することができ、特に制限されない。
加熱工程により、基材との密着性、膜表面の平滑性、膜構造の多孔質化とその安定化が進行することで、光学用途に有用な耐久性と光学機能を発現できる。
加熱の方式は特に制限されず、例えば加熱炉(ベーク炉)内に透光基材を配置してセラミック前駆体を加熱する炉内ベーク方式、プレート(ホットプレート)上に透光基材を搭載し、そのプレートを介してセラミック前駆体を加熱するホットプレート方式、該透光基材の上面側及び/又は下面側にヒーターを配置し、ヒーターから電磁波(例えば赤外線等)を照射して、セラミック前駆体を加熱する方式等が挙げられる。
加熱温度に制限は無く、セラミック前駆体を硬化させ、セラミックス多孔質体とすることが可能であれば任意であるが、通常90℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは200℃以上、更に好ましくは350℃以上、また、通常750℃以下、好ましくは600℃以下、より好ましくは500℃以下である。加熱温度が低すぎると組成物に含まれる界面活性剤が膜中に多く残存し、着色や耐久性低下の原因となる可能性がある。一方、加熱温度が高すぎると透光基材とセラミックス多孔質体との接合が失われ、前記同様に耐久性低下の原因となる可能性がある。
加熱を行なう際の昇温速度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1℃/分以上、好ましくは10℃/分以上、また、通常500℃/分以下、好ましくは300℃/分以下で昇温する。昇温速度が遅すぎるとセラミックス多孔質体が緻密化し、屈折率が低くなりにくく、昇温速度が速すぎると膜歪みが大きくなって局所的なクラックの原因となる可能性がある。
加熱を行なう時間は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常30秒以上、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、また、通常5時間以下、好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間以下である。加熱時間が短すぎると不要な界面活性剤を取り除けず、十分な光学性能を発現できなくなる可能性があり、一方、長すぎるとアルコキシシラン化合物の反応が進み、透光基板との密着性が低くなる可能性がある。
加熱を行なう際の圧力は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、減圧環境としてもよく、加熱工程では、圧力を、通常0.2MPa以下、好ましくは0.15MPa以下、より好ましくは0.1MPa以下とする。一方、圧力の下限に制限は無いが、通常10−4MPa以上、好ましくは10−3MPa以上、より好ましくは10−2MPa以上である。圧力が低すぎるとアルコキシシラン化合物の反応よりも有機溶媒の気化が進行し、吸湿性の高いセラミックス多孔質体となりやすく、外部環境に対して安定した光学機能を維持できないくなる可能性がある。
加熱を行なう際の雰囲気は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、中でも、乾燥ムラの生じにくい環境が好ましい。特に大気雰囲気下で加熱を行なうことが好ましい。また、不活性ガス処理を行ない、不活性雰囲気下で乾燥を行なうことも可能である。
以上のように、加熱処理を行なうことによりセラミックス多孔質体を得ることができるが、加熱工程の後に、必要に応じて冷却工程や後処理工程等を実施することも可能である。
[冷却工程]
冷却工程とは、加熱工程で高温となったセラミックス多孔質体を冷却する工程である。この際、冷却速度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1℃/分以上、好ましくは0.5℃/分以上、より好ましくは0.8℃/分以上、更に好ましくは1℃/分以上、また、通常100℃/分以下、好ましくは50℃/分以下、より好ましくは30℃/分以下、更に好ましくは20℃/分以下である。冷却速度が遅すぎると製造コストが高くなる可能性があり、速すぎると局所的なクラックの原因となる可能性がある。
また、冷却工程における雰囲気は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であり、例えば、真空環境、不活性ガス環境であってもよい。さらに、温度及び湿度に制限は無いが、通常は常温・常湿で冷却することが好ましい。
[後処理工程]
後処理工程で行なう具体的な操作に制限は無いが、例えば、得られたセラミックス多孔
質体をシリル化剤で処理することで、セラミックス多孔質体の表面をより機能性に優れたものにできる。具体例を挙げると、シリル化剤で処理することにより、セラミックス多孔質体に疎水性が付与され、膜表面や膜中の細孔が汚染されるのを防ぐことができる。
シリル化剤としては、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類;トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、メチルクロロジシラン、トリフェニルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、ジフェニルジクロロシランなどのクロロシラン類;ヘキサメチルジシラザン、N,N’−ビス(トリメチルシリル)ウレア、N−トリメチルシリルアセトアミド、ジメチルトリメチルシリルアミン、ジエチルトリエチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾールなどのシラザン類;(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン等のフッ化アルキル基やフッ化アリール基を有するアルコキシシラン類;などが挙げられる。なお、シリル化剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
シリル化の具体的操作としては、例えば、シリル化剤をセラミックス多孔質体に塗布したり、シリル化剤中にセラミックス多孔質体を浸漬したり、セラミックス多孔質体をシリル化剤の蒸気中に曝したりすることにより、行なうことができる。
また、後処理の別の例としては、本発明のセラミックス多孔質体を多湿条件下で熟成することで、多孔質構造中に存在する未反応シラノールを減らすことができ、これにより、セラミックス多孔質体の耐水性をより向上させることも可能である。さらには、セラミックス多孔質体の上に他の無機酸化物膜を形成することで、機械強度や耐アルカリ性を向上させることも可能である。
[実施例1]
[セラミック組成物の調製]
テトラエトキシシラン(以下、TEOS)1.86g、メチルトリエトキシシラン(以下、MTES)0.64g、エタノール(沸点78.3℃)0.58g、水1.39g及び、0.3重量%の塩酸水溶液3.25gを混合し、ウォーターバス中で30分攪拌した。次にヘキシルトリメトキシシラン(信越シリコーン製KBM−3063)1.33gを加えて混合しウォーターバス中で30分攪拌した。更に室温で30分攪拌して、混合物(A)を得た。
次に、界面活性剤として、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイドトリブロックポリマー(ALDRICH製、重量平均分子量5650、エチレンオキサイド部位の割合30重量%);以下適宜「P123」という)1.54gとエタノール0.80gとを混合した混合液(B)に、前記の混合物(A)を添加して、室温で60分攪拌し0.45μmのフィルター(ワットマンジャパン(株)社製)でろ過することで混合物(C)を調整した。
この混合物(C)11.37gと希釈溶媒として1−ブタノール(沸点117.3℃)45.49gとを混合し、室温で30分攪拌することでセラミック組成物を得た。
このセラミック組成物中の全アルコキシシラン類由来の珪素原子に対する炭素数3〜6のアルキル基を有するアルコキシシラン類由来の珪素原子の比率(mol/mol)は0.3で、全アルコキシシラン類由来の珪素原子に対する他のアルキルアルコキシシラン類(メチルトリエトキシシラン)由来の珪素原子の比率(mol/mol)は0.2である。
[製膜工程]
得られた組成物を基材として大判スライドガラス(松浪硝子工業株式会社製 S112、厚み1mm)を使用して、スピンコーター(ミカサ製MS−A150)で塗布した。スピンコーターは、回転数500rpm、回転時間120秒、塗布液量1mlとした。
[加熱工程]
次に450℃に設定したオーブンに置き、大気雰囲気下で2分間加熱することで、基材上に概観外観の良好なセラミックス多孔質体(膜厚は110〜160nm、表面粗さRaは3nm以下)を得た。
《最小反射率、屈折率算出》
分光膜厚計(大塚電子製FE−3000)により、反射率を測定した結果、基材上に得られたセラミックス多孔質体の最小反射率は0.48%であり、その時の波長は507nmであった。フレネルの式を用いて屈折率を算出した結果、1.29であった。
《摩耗試験》
ミルスペックMIL−CCC−c−440に記載のチーズクロスを荷重500g/cmで得られた多孔質シリカ膜表面上を20往復させた。摩耗性の評価は、「表面上に傷が全く確認できない」場合は◎、「目立った傷はなく、傷が基材へ到達していない」場合は○、「膜がなく傷が基板へ到達している」場合は×とした。実施例1は、表面上に傷が全く確認できなかったので、◎とした。
《ヘーズ、全光線透過率》
ヘーズメータ(スガ試験機製TMダブルビーム自動ヘーズコンピューターHZ−2)により、ヘーズと全光線透過率を測定した。得られた積層体のヘーズは0.43%、全光線透過率は93.5%であった。
[実施例2]
MTES0.64g、ヘキシルトリメトキシシラン1.33g、1−ブタノール45.49gを、MTES0.80g、ヘキシルトリメトキシシラン1.11g、1−ブタノール45.24gに変更した以外は、実施例1と同様にして、セラミック組成物を得た。
セラミック組成物中の全アルコキシシラン類由来の珪素原子に対する炭素数3〜6のアルキルアルコキシシラン類由来の珪素原子の比率(mol/mol)は0.25で、全アルコキシシラン類由来の珪素原子に対する他のアルキルアルコキシシラン類(メチルトリエトキシシラン)由来の珪素原子の比率(mol/mol)は0.25である。
実施例1と同様に[製膜工程][加熱工程]を行ない、基材上に外観の良好なセラミックス多孔質体(膜厚は110〜160nm、表面粗さRaは3nm以下)を得た。
《最小反射率、屈折率》、《摩耗試験》、《ヘーズ、全光線透過率》も実施例1と同様に測定、算出した。結果は表1に示した。
[実施例3]
MTES0.64g、ヘキシルトリメトキシシラン1.33g、P123 1.54g、1−ブタノール45.49gを、MTES0.48g、ヘキシルトリメトキシシラン1.55g、P123 1.61g、1−ブタノール46.06gに変更した以外は、実施例1と同様にして、セラミック組成物を得た。
セラミック組成物中の全アルコキシシラン類由来の珪素原子に対する炭素数3〜6のアルキルアルコキシシラン類由来の珪素原子の比率(mol/mol)は0.35で、全アルコキシシラン類由来の珪素原子に対する他のアルキルアルコキシシラン類由来の珪素原子(メチルトリエトキシシラン)の比率(mol/mol)は0.15である。
実施例1と同様に[製膜工程][加熱工程]を行ない、基材上に外観の良好なセラミックス多孔質体(膜厚は110〜160nm、表面粗さRaは3nm以下)を得た。
《最小反射率、屈折率》、《摩耗試験》、《ヘーズ、全光線透過率》も実施例1と同様に測定、算出した。結果は表1に示した。
[実施例4]
TEOS1.86g、MTES0.64g、ヘキシルトリメトキシシラン1.33g、P123 1.54g、1−ブタノール45.49gを、TEOS1.30g、MTES1.59g、ヘキシルトリメトキシシラン0.66g、P1231.56g、1−ブタノール44.54gに変更した以外は、実施例1と同様にして、セラミック組成物を得た。
セラミック組成物中の全アルコキシシラン類由来の珪素原子に対する炭素数3〜6のアルキルアルコキシシラン類由来の珪素原子の比率(mol/mol)は0.15で、全アルコキシシラン類由来の珪素原子に対する他のアルキルアルコキシシラン類由来の珪素原子(メチルトリエトキシシラン)の比率(mol/mol)は0.5である。
実施例1と同様に[製膜工程][加熱工程]を行ない、基材上に外観の良好なセラミックス多孔質体(膜厚は110〜160nm、表面粗さRaは3nm以下)を得た。
《最小反射率、屈折率》、《摩耗試験》、《ヘーズ、全光線透過率》も実施例1と同様に測定、算出した。結果は表1に示した。
[実施例5]
TEOS1.86g、MTES0.64g、ヘキシルトリメトキシシラン1.33g、P123 1.54g、1−ブタノール45.49gを、TEOS1.12g、MTES1.59g、ヘキシルトリメトキシシラン0.89g、P123を1.56g、1−ブタノール44.68gに変更し、ヘキシルトリメトキシシランを加えた後でウォーターバスでの加温時間を30分から2時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、セラミック組成物を得た。
セラミック組成物中の全アルコキシシラン類由来の珪素原子に対する炭素数3〜6のアルキルアルコキシシラン類由来の珪素原子の比率(mol/mol)は0.2で、全アルコキシシラン類由来の珪素原子に対する他のアルキルアルコキシシラン類由来の珪素原子(メチルトリエトキシシラン)の比率(mol/mol)は0.5である。
実施例1と同様に[製膜工程][加熱工程]を行ない、基材上に外観の良好なセラミックス多孔質体(膜厚は110〜160nm、表面粗さRaは3nm以下)を得た。
《最小反射率、屈折率》、《摩耗試験》、《ヘーズ、全光線透過率》も実施例1と同様に測定、算出した。結果は表1に示した。
[実施例6]
MTES0.64g、1−ブタノール45.49gをMTES1.11g、1−ブタノール44.89gに変更し、更に、ヘキシルトリメトキシシラン1.33gをデシルトリメトキシシラン(信越化学製KBM3103C)0.70gに変更した以外は、実施例1と同様にして、セラミック組成物を得た。
セラミック組成物中の全アルコキシシラン類由来の珪素原子に対する炭素数3〜6のアルキルアルコキシシラン類由来の珪素原子の比率(mol/mol)は0.15で、全アルコキシシラン類由来の珪素原子に対する他のアルキルアルコキシシラン類由来の珪素原
子(メチルトリエトキシシラン)の比率(mol/mol)は0.35である。
実施例1と同様に[製膜工程][加熱工程]を行ない、基材上に外観の良好なセラミックス多孔質体(膜厚は110〜160nm、表面粗さRaは3nm以下)を得た。
《最小反射率、屈折率》、《摩耗試験》、《ヘーズ、全光線透過率》も実施例1と同様に測定、算出した。結果は表1に示した。
[実施例7]
MTES0.64g、デシルトリメトキシシラン0.70g、1−ブタノール45.49gをMTES0.95g、デシルトリメトキシシラン0.94g、1−ブタノール45.19gに変更した以外は、実施例6と同様にして、セラミック組成物を得た。
セラミック組成物中の全アルコキシシラン類由来の珪素原子に対する炭素数3〜6のアルキルアルコキシシラン類由来の珪素原子の比率(mol/mol)は0.2で、全アルコキシシラン類由来の珪素原子に対する他のアルキルアルコキシシラン類由来の珪素原子(メチルトリエトキシシラン)の比率(mol/mol)は0.3である。
実施例1と同様に[製膜工程][加熱工程]を行ない、基材上に外観の良好なセラミックス多孔質体(膜厚は110〜160nm、表面粗さRaは3nm以下)を得た。
《最小反射率、屈折率》、《摩耗試験》、《ヘーズ、全光線透過率》も実施例1と同様に測定、算出した。結果は表1に示した。
[比較例1]
TEOS1.86g、MTES0.64g、1−ブタノール45.49gを、TEOS1.70g、MTES1.73g、1−ブタノール43.9gに変更し、ヘキシルトリメトキシシラン(信越化学製KBM3063)を加えなかった以外は、実施例1と同様にして、セラミック組成物を得た。
セラミック組成物中の全アルコキシシラン類由来の珪素原子に対する炭素数3〜6のアルキルアルコキシシラン類由来の珪素原子の比率(mol/mol)は0で、全アルコキシシラン類由来の珪素原子に対する他のアルキルアルコキシシラン類由来の珪素原子(メチルトリエトキシシラン)の比率(mol/mol)は0.5である。
実施例1と同様に[製膜工程][加熱工程]を行ない、基材上に外観の良好なセラミックス多孔質体(膜厚は110〜160nm、表面粗さRaは3nm以下)を得た。
《最小反射率、屈折率》、《摩耗試験》、《ヘーズ、全光線透過率》も実施例1と同様に測定、算出した。結果は表1に示した。
[比較例2]
MTES0.64gをトリメチルメトキシシラン(東レ・ダウ Z−6013)0.280g、に変更し、ヘキシルトリメトキシシラン1.33gを1.55gに変更し、1−ブタノール45.49gを45.14gに変更した以外は、実施例1と同様にして、セラミック組成物を得た。
セラミック組成物中の全アルコキシシラン類由来の珪素原子に対する炭素数3〜6のアルキルアルコキシシラン類由来の珪素原子の比率(mol/mol)は0.35で、全アルコキシシラン類由来の珪素原子に対する他のアルキルアルコキシシラン類由来の珪素原子(メチルトリエトキシシラン)の比率(mol/mol)は0.15である。
実施例1と同様に[製膜工程][加熱工程]を行ない、基材上に外観の良好なセラミックス多孔質体(膜厚は110〜160nm、表面粗さRaは3nm以下)を得た。
《最小反射率、屈折率》、《摩耗試験》、《ヘーズ、全光線透過率》も実施例1と同様に測定、算出した。結果は表1に示した。
Figure 2012031054

Claims (6)

  1. 炭素数3〜12のアルキル基を含有し、かつ表面の最小反射率が1.5%以下であることを特徴とするセラミックス多孔質体。
  2. 珪素を含む陽性元素を含有し、珪素の含有量が、陽性元素の含有量に対して50mol%以上であることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス多孔質体。
  3. 基材と、該基材上に設けられた、膜厚が0.05〜3μmである請求項1又は2に記載のセラミックス多孔質体とを備えることを特徴とするセラミックス多孔質積層体。
  4. 該基材のTgが200℃以下であることを特徴とする請求項3に記載のセラミックス多孔質積層体。
  5. 基材と、該基材上に設けられた請求項1又は2に記載のセラミックス多孔質体とを備えることを特徴とする光学部材。
  6. 基材と、該基材上に設けられた請求項1又は2に記載のセラミックス多孔質体とを備えることを特徴とする反射防止積層体。
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