JP2012024674A - 窒素酸化物浄化用触媒及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】骨格構造にアルミニウム原子とリン原子とケイ素原子を含むゼオライトに鉄を担持した窒素酸化物浄化用触媒であり、(1)鉄の担持量がゼオライトの総重量の1重量%以上、(2)該触媒をCuKαをX線源に用いたX線回折測定した際に、回折角(2θ)が21.2〜21.6度の範囲に観察される回折ピーク高さが0.01以上、(3)該触媒を800℃で5時間水蒸気処理後にCuKαをX線源に用いたX線回折測定した際に、回折角(2θ)が20.6〜21.0度の範囲に観察される回折ピーク高さに対する回折角(2θ)が21.2〜21.6度の回折ピーク高さの比が0.01以上1.0以下である、窒素酸化物浄化用触媒。
【選択図】なし
Description
媒とアンモニアとを用いた選択的触媒還元(SCR:SelectiveCatalytic Reduction)により浄化されてきた。しかし、V2O5-TiO2触媒は
高温において昇華し、排ガスから触媒成分が排出される可能性があるため、特に自動車等の移動体の排ガス浄化には適していない。
また、近年排ガス規制の強化に従い、排ガス中に含まれる粒子状物質(Particulate Matter、以下PMという)を除去するために、DPF(Diesel particulate filter)というフィルターをSCR触媒と同時に用いる必要がある。DPFに捕捉されたPMは、通常600〜700℃の高温下において燃焼することにより除かれる。SCR触媒をDPF直後に装着する、またはDPF上にSCR触媒を担持するといった検討が行われている。しかしその場合PMの燃焼時にはSCR触媒も700℃近い温度まで上昇するため、従来SCR触媒に用いられているβ型、MFI型のアルミノシリケートゼオライト触媒は耐熱性が不十分であり、使用することが困難である。
さらに浄化性能を向上させるために、鉄担持アルミノシリケートゼオライト触媒の製造方法として、特許文献3などにあるように塩化鉄とゼオライトにより固体イオン交換し、還元雰囲気又は不活性雰囲気下において熱処理する方法が開示されている。
さらに、鉄源として塩化鉄を使用する場合には、腐食性の塩素ガスが発生し、また水素等還元雰囲気下での焼成は爆発の危険性があり、工業化が非常に困難であるという問題があった。
(1)鉄の担持量がゼオライトの総重量の1重量%以上であり、
(2)該触媒をCuKαをX線源に用いたX線回折測定したときに、回折角(2θ)が21.2〜21.6度の範囲に観察される回折ピーク高さが0.01以上であり、
(3)該触媒を800℃で5時間水蒸気処理した後にCuKαをX線源に用いたX線回折測定したときに、回折角(2θ)が20.6〜21.0度の範囲に観察される回折ピーク高さに対する、回折角(2θ)が21.2〜21.6度の範囲に観察される回折ピーク高さの比が0.01以上1.0以下である、窒素酸化物浄化用触媒(以下、これを「本発明の窒素酸化物浄化用触媒」と称することがある)に存する。
(1)窒素酸化物とその浄化
本発明の窒素酸化物浄化用触媒により浄化される窒素酸化物としては、一酸化窒素、二酸化窒素、亜酸化窒素等が挙げられる。なお以下これらをまとめてNOx類と呼ぶことがある。本明細書において窒素酸化物を浄化するとは、窒素酸化物を触媒上で反応させ、窒素と酸素等に転化することをいう。
この場合、窒素酸化物が直接反応してもよいが、浄化効率を上げる目的で触媒中に還元剤を共存させてもよい。還元剤としては、アンモニア、尿素、有機アミン類、一酸化炭素、炭化水素、アルコール、水素等が用いられ、好ましくはアンモニア、尿素が用いられる。
本発明の窒素酸化物浄化用触媒触媒とは、上記に記載した、窒素酸化物を浄化することができる触媒をいい、具体的には以下の性質を有するものである。
(I)鉄の担持量がゼオライトの総重量の1重量%以上であり、
(II)該触媒をCuKαをX線源に用いたX線回折測定したときに、回折角(2θ)が21.2〜21.6度の範囲に観察される回折ピーク高さが0.01以上であり、
(III)該触媒を800℃で5時間水蒸気処理した後にCuKαをX線源に用いたX線回
折測定したときに、回折角(2θ)が20.6〜21.0度の範囲に観察される回折ピーク高さに対する、回折角(2θ)が21.2〜21.6度の範囲に観察される回折ピーク高さの比が0.01以上1.0以下である。
シリコアルミノフォスフェート類の骨格構造を構成しているSi、Al及びPの構成割合(モル比)は、特に限定されるものではないが、ゼオライト中の骨格構造に含まれるケイ素原子、アルミニウム原子、リン原子の合計に対するケイ素原子の存在割合をx1、アルミニウム原子の存在割合をy1、リン原子の存在割合をz1としたとき、x1が通常0.06以上、0.15以下、かつy1が通常0.3以上、0.6以下であり、かつz1が通常0.3以上、0.6以下であるゼオライトであることが好ましい。さらにx1は好ましくは0.07以上、より好ましくは0.08以上であり、通常0.14以下、好ましくは0.13以下、より好ましくは0.12以下であるゼオライトであることが好ましい。
上記ゼオライトの構造は、X線回折法(例えばAtlas of Zeolite framework types, Ch.Baerlocher et.al 2007, Elsevier に記載されている測定方法)(X-ray diffraction、以下「XRD」と称することがある)により決定する。上記ゼオライトの構造は、特に限定されるものではないが、International Zeolite Association(IZA)が定めるコードで示すと、通常、AEI、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、CHA、DFO、ERI、FAU、GIS、LEV、LTA、VFIのいずれかであり、AEI、AFX、GIS、CHA、VFI、AFS、LTA、FAU、AFYのいずれかが好ましく、燃料由来の炭化水素を吸着しにくいことからCHA構造を有するゼオライトがより好ましい。
上記ゼオライトは、基本単位として有する骨格構造を構成する成分とは別に、他のカチオンとイオン交換可能なカチオン種を持つものを含んでいてもよい。その場合のカチオンは特に限定されないが、プロトン、Li、Na、Kなどのアルカリ元素、Mg、Caなどのアルカリ土類元素、La、Ce等の希土類元素などが挙げられ、中でも、プロトン、アルカリ元素、アルカリ土類元素が好ましい。
担持金属は鉄のみでもよいが、鉄以外の金属と組合せ使用してもよい。その場合金属は特に限定されるものではないが、好ましくはアルミニウム、ガリウム、インジウム等の周期表の13族金属、コバルト、パラジウム、イリジウム、白金、銅、銀、金、セリウム、ランタン、プラセオジウム、チタン、ジルコニア等の中の群から選ばれる。このうち好ましくは、周期表の13族金属、さらに好ましくはアルミニウムである。
本発明の窒素酸化物浄化用触媒は、(II)該触媒をCuKαをX線源に用いたX線回折測定したときに、回折角(2θ)が21.2〜21.6度の範囲に観察される回折ピーク高さが0.01以上であり、(III)該触媒を800℃で5時間水蒸気処理した後にCu
KαをX線源に用いたX線回折測定したときに、回折角(2θ)が20.6〜21.0度の範囲に観察される回折ピーク高さに対する、回折角(2θ)が21.2〜21.6度の範囲に観察される回折ピーク高さの比が0.01以上1.0以下であることを特徴の1つとする。
時間水蒸気処理した後の回折角(2θ)21.2度以上、21.6度以下の範囲に観察される回折ピーク高さの水蒸気処理前の同ピーク高さに対する比が2以下であるものが好ましい。ピーク高さ比が前記上限超過の場合、高温水蒸気下で大きくゼオライト構造が壊れ、回折角(2θ)が21.2〜21.6度の範囲に観察される回折ピークが増加しているため、浄化性能が大きく低下する。回折角(2θ)が21.2〜21.6度の回折ピークは高温水蒸気下の処理では減少することはないので、通常1以上である。
本発明の窒素酸化物浄化用触媒は、高水蒸気下の耐久性に優れるという効果を有する。詳細には、以下に述べる90℃で測定した水蒸気繰り返し吸脱着試験において、吸着維持率が高い、つまり、吸着維持率は80%以上であり、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上であり、上限は特に制限されるものではないが、通常100%以下の維持率を示す。
水蒸気繰り返し吸脱着試験としては、試料をT℃に保たれた真空容器内に保持し、T1℃の飽和水蒸気雰囲気とT2℃ 飽和水蒸気雰囲気にそれぞれ90秒曝す操作を繰り返す(T1<T<T2)。このときT2℃の飽和水蒸気雰囲気に曝されたときに試料に吸着した水は、T1℃の飽和水蒸気雰囲気で一部が脱着し、T1℃に保った水だめに移動する。m 回目の吸着からn 回目の脱着で、5℃の水だめに移動した水の総量(Q n;m(g ))と試料の乾燥重量(W(g ))から一回あたりの平均吸着量(Cn;m( g / g ))を以下のようにして求める。
通常吸収、脱着の繰り返しは1000回以上行い、好ましくは2000回以上であり、上限は特に限定されるものではない。
(以上の工程を「T−T2−T1の水蒸気繰り返し吸脱着試験」という。)
本発明において用いられるゼオライトの水蒸気繰り返し吸脱着試験としては、ゼオライト試料を90℃に保たれた真空容器内に保持し、5℃の飽和水蒸気雰囲気と80℃ 飽和
水蒸気雰囲気にそれぞれ90秒曝す操作を繰り返す。それによって得られた上記数値より、一回あたりの平均吸着量(Cn;m(g / g )を求める。(90−80−5の水蒸気繰り返し吸脱着試験)
(以上の工程を「90℃で測定した際の水蒸気繰り返し吸脱着試験」ということがある。)
水蒸気吸着等温線の変化により観察できる。
水の吸脱着の繰り返しにより、ゼオライトの構造に変化がなければ、水蒸気吸着等温線には変化がなく、ゼオライトの構造が壊れるなど変化した場合は吸着量の低下が観察される。90℃での2000回の水蒸気繰り返し吸脱着試験を行い、試験前に対して試験後での25℃の相対蒸気圧が0.2の時の水吸着量が通常70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。
本発明の窒素酸化物浄化用触媒は、上記ゼオライトと、含炭素鉄塩とを混合する混合工程、混合工程で得られた混合物を乾燥する乾燥工程、及び乾燥工程で得られる乾燥物を焼成する焼成工程を含むものである。
通常アルミノシリケートのゼオライトに鉄を担持する場合、入手が容易なことから、硝酸鉄、硫酸鉄といった鉄原料を用いてイオン交換により担持する。しかし、SAPO類に鉄を担持する場合は、SAPO類が酸性に弱いため、酸強度の強い硝酸塩、硫酸塩等を用いると担持の際にゼオライト構造にダメージを与え、十分な触媒性能が出ない。このことから酸強度の弱い含炭素鉄原料を用いることが重要である。
含浸担持を行うとき、スラリー状態から、短時間で乾燥させることが好ましく、下記する噴霧乾燥法を用いて乾燥することがより好ましい。
ゼオライトは通常、分散媒と混合すると発熱することがあり、調合温度を前記上限値超過とするとゼオライト自身が酸またはアルカリにより分解する可能性がある。調合温度の下限は分散媒の融点である。
本発明において用いられる混合物の混合の方法としては、十分にゼオライトと金属源が混合あるいは分散する方法であればよく、各種公知の方法が用いられるが、具体的には攪拌、超音波、ホモジナイザー等が用いられる。
本発明における混合物から分散媒を除去するために要する時間は、混合物中の分散媒の量が1質量%以下になるまでの時間をいい、水が分散媒の場合の乾燥時間は、混合物の温度が80℃以上になった時点から、混合物に含有する水の量が、得られた混合物中の1質量%以下になるまでの時間をいう。水以外の分散媒の場合の乾燥時間は、その分散媒の常圧における沸点より20℃低い温度になった時点から、混合物に含有する分散媒の量が、得られた混合物中の1質量%以下になるまでの時間をいう。分散媒の除去時間は60分以下であり、好ましくは10分以下、より好ましくは1分以下、更に好ましくは10秒以下であり、より短時間で乾燥することが望ましいので下限は特に限定されるものではないが、通常0.1秒以上である。
噴霧乾燥によって金属を担持させた場合、金属担持量を上げることが容易になるという利点がある。特に鉄のようにイオン交換法等の手法ではゼオライト中に分散させることが困難な金属の場合、イオン交換法のみでは金属担持量を上げることは困難である。噴霧乾燥法を用いると、乾燥時間が早いために、金属担持量をあげた場合でも金属源由来の酸によりゼオライト骨格が損傷を受けたり、金属が凝集したりすることがなく、より高結晶性で金属の分散のよい触媒が得られる。
本発明における焼成を行う温度は特に限定されないが、金属の分散を高め、ゼオライト表面との相互作用を高めるため、通常500℃以上、好ましくは700℃以上、通常1000℃以下、好ましくは900℃以下で実施する。前記下限値未満では金属源が分解しないことがあり、前記上限値超過ではゼオライトの構造が破壊される可能性がある。
/分以上、通常100ml/分以下、好ましくは20ml/分以下の気体の流通下、熱処理して本発明によって得られる触媒を得る。
焼成時間は1秒〜24時間、好ましくは10秒〜8時間、さらに好ましくは30分〜4時間である。また焼成後、触媒を粉砕してもよい。
以下ゼオライトの製造方法の具体例について説明する。
本発明におけるゼオライトのアルミニウム原子原料は特に限定されず、通常、擬ベーマイト、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムトリエトキシド等のアルミニウムアルコキシド、水酸化アルミニウム、アルミナゾル、アルミン酸ナトリウムなどであって、擬ベーマイトが好ましい。
本発明に用いられるゼオライトのリン原子原料は通常リン酸であるが、リン酸アルミニウムを用いてもよい。
<ケイ素原子原料>
本発明におけるゼオライトのケイ素原子原料は特に限定されず、通常、ヒュームドシリカ、シリカゾル、コロイダルシリカ、水ガラス、ケイ酸エチル、ケイ酸メチルなどであって、ヒュームドシリカが好ましい。
<テンプレート>
本発明のゼオライトの製造に用いられるテンプレート(構造規定剤)としては、公知の方法で使用される種々のテンプレートが使用でき、特に限定されるものではないが、以下に示すテンプレートを用いることが好ましい。
(1)ヘテロ原子として窒素を含む脂環式複素環化合物
ヘテロ原子として窒素を含む脂環式複素環化合物の複素環は通常5〜7員環であって、好ましくは6員環である。複素環に含まれるヘテロ原子の個数は通常3個以下、好ましくは2個以下である。窒素以外のヘテロ原子は任意であるが、窒素に加えて酸素を含むものが好ましい。ヘテロ原子の位置は特に限定されないが、ヘテロ原子が相互に隣り合わないものが好ましい。
また、ヘテロ原子として窒素を含む脂環式複素環化合物の分子量は、通常、250以下、好ましくは200以下、さらに好ましくは150以下であり、また通常30以上、好ましくは40以上、さらに好ましくは50以上である。
アルキルアミンのアルキル基は、通常、鎖状アルキル基であって、アミン1分子中に含まれるアルキル基の数は特に限定されるものではないが、3個が好ましい。また本発明のアルキルアミンのアルキル基は一部水酸基等の置換基を有していてもよい。本発明のアルキルアミンのアルキル基の炭素数は4以下が好ましく、1分子中の全アルキル基の炭素数
の合計が10以下がより好ましい。また、分子量で通常、250以下、好ましくは200以下、さらに好ましくは150以下である。
2種のテンプレートを混合させるときは、通常、混合させる2種のテンプレートのモル比が1:20から20:1、好ましくは1:10から10:1、さらに好ましくは1:5から5:1である。
また、2種以上のテンプレートの混合比は特に限定されるものではなく、条件に応じて適宜選ぶことができるが、例えば、モルホリンとトリエチルアミンを用いる場合、モルホリン/トリエチルアミンのモル比は通常0.05以上、好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.2以上であり、通常20以下、好ましくは10以下、さらに好ましくは9以下である。
本発明におけるテンプレートを用いるとゼオライト中のSi含有量をコントロールすることが可能であり、窒素酸化物浄化用触媒として好ましいSi含有量、Si存在状態にすることができる。その理由は明らかではないが、以下のような事が推察される。
上述のケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、リン原子原料、テンプレートおよび水を混合して水性ゲルを調合する。混合順序は制限がなく、用いる条件により適宜選択すれ
ばよいが、通常は、まず水にリン原子原料、アルミニウム原子原料を混合し、これにケイ素原子原料、テンプレートを混合する。
.02以上であり、また通常0.7以下であり、好ましくは0.6以下、さらに好ましくは0.4以下である。また同様の基準でのP2O5/Al2O3の比は通常0.6以上、好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上であり、通常1.3以下、好ましくは1.2以下、さらに好ましくは1.1以下である。
また水の割合は、アルミニウム原子原料に対して、モル比で通常3以上、好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上であって、通常200以下、好ましくは150以下、さらに好ましくは120以下である。
なお、水性ゲル中には、所望により、上記以外の成分を含有していても良い。このような成分としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物や塩、アルコール等の親水性有機溶媒があげられる。含有する量は、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物や塩は、アルミニウム原子原料に対してモル比で通常0.2以下、好ましくは0.1以下であり、アルコール等の親水性有機溶媒は、水に対してモル比で通常0.5以下、好ましくは0.3以下である。
前記温度領域の間の昇温方法は、特に制限はなく、例えば、単調に増加させる方法、階段状に変化させる方法、振動等上下に変化させる方法、およびこれらを組み合わせて行う方式など様々の方式を用いることができる。通常、制御の容易さから、昇温速度をある値以下に保持して、単調に昇温する方式が好適に用いられる。
時間は、所望のものの合成しやすさに影響し、通常0.5時間以上、好ましくは3時間以上、さらに好ましくは5時間以上であって、通常30日以下、好ましくは10日以下、さらに好ましくは4日以下である。
水熱合成後、生成物であるテンプレートを含有したゼオライトを水熱合成反応液より分離するが、テンプレートを含有したゼオライトの分離方法は特に限定されない。通常、濾過またはデカンテーション等により分離し、水洗、室温から150℃以下の温度で乾燥して生成物を得ることができる。
テンプレートを除去してから金属担持を行う場合は、通常、空気または酸素含有の不活性ガス、あるいは不活性ガスの雰囲気下において、通常400℃以上700℃以下の温度で焼成する方法、エタノール水溶液、HCl含有エーテル等の抽出剤により抽出する方法等の種々の方法により、含有するテンプレートを除去することができる。
上記の本発明の窒素酸化物浄化用触媒の製造方法は、一般に、鉄の担持量がゼオライトの全量に対して1〜10重量%の高担持量を実現するのにも有効である。
(4)本発明の窒素酸化物浄化用触媒の使用方法
本発明の窒素酸化物浄化用触媒は、そのまま粉末状で用いても、シリカ、アルミナ、粘
土鉱物等のバインダーと混合し、造粒や成形をして使用することもできる。また、自動車用等の排ガス触媒として用いられる場合、塗布法や、成形法を用い成形して用いることができ、好ましくはハニカム状に成形して用いることができる。
本発明の窒素酸化物浄化用触媒は、窒素酸化物を含む排ガスを接触させて窒素酸化物を浄化する。該排ガスには窒素酸化物以外の成分が含まれていてもよく、例えば炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、窒素、酸素、硫黄酸化物、水が含まれていてもよい。具体的には、本発明の方法ではディーゼル自動車、ガソリン自動車、定置発電・船舶・農業機械・建設機械・二輪車・航空機用の各種ディーゼルエンジン、ボイラー、ガスタービン等から排出される多種多様の排ガスに含まれる窒素酸化物を浄化することができる。
(水蒸気処理)
触媒を800℃、10体積%の水蒸気に、空間速度SV=3000/hの雰囲気下、5時間通じ、水熱処理を行った。
(XRDの測定方法)
X線源:Cu−Kα線
出力設定:40kV・30mA
測定時光学条件:
発散スリット=1°
散乱スリット=1°
受光スリット=0.2mm
回折ピークの位置:2θ(回折角)
測定範囲:2θ=3〜50度
スキャン速度:3.0°(2θ/sec)、連続スキャン
試料の調製:めのう乳鉢を用いて人力で粉砕した試料約100mgを、同一形状のサン
プルホルダーを用いて試料量が一定となるようにした。
回折角(2θ)が20.6度以上21.0度以下の範囲の回折ピーク高さに対しての、21.2度以上、21.6度以下の範囲に観察される回折ピークのピーク高さの比を求めた。また、800℃で5時間水蒸気処理した後の回折角(2θ)21.2度以上、21.6度以下の範囲に観察される回折ピーク高さの水蒸気処理前の同ピーク高さに対する比を求めた。
(組成分析、および鉄の担持量の測定方法)
試料をアルカリ融解後、酸溶解し、得られた溶液を誘導結合プラズマ発光分析法(ICP−AES法)により分析した。
水蒸気繰り返し吸脱着試験は、試料を90℃に保たれた真空容器内に保持し、5℃ の
飽和水蒸気雰囲気と80℃ 飽和水蒸気雰囲気にそれぞれ90秒曝す操作を繰り返す。こ
のとき80℃の飽和水蒸気雰囲気に曝されたときに試料に吸着した水は、5℃ の飽和水
蒸気雰囲気で一部が脱着し、5℃ に保った水だめに移動する。m 回目の吸着からn 回
目の脱着で、5℃の水だめに移動した水の総量(Q n;m(g ))と試料の乾燥重量(W(g ))から一回あたりの平均吸着量(Cn;m( g / g ))を以下のようにして求める。
通常吸収、脱着の繰り返しは1000回以上行い、好ましくは2000回以上であり、上限は特に限定されるものではない。
(以上の工程を「90℃で測定した際の水蒸気繰り返し吸脱着試験」という。)
(水蒸気吸着等温線)
試料を120℃で5時間、真空排気した後、25℃における水蒸気吸着等温線を水蒸気吸着量測定装置(ベルソーブ18:日本ベル(株)社製)により以下の条件で測定した。
吸着温度 :25 ℃
初期導入圧力 :3.0torr
導入圧力設定点数 :0
飽和蒸気圧 :23.755torr
平衡時間 :500秒
調製した触媒は以下の方法に基づき触媒活性を評価した。
調製した触媒をプレス成型後、破砕して篩を通し、0.6〜1mmに整粒した。整流した触媒を上記の800℃水蒸気処理の条件で、耐久試験を行った。
耐久試験後の各触媒1mlを常圧固定床流通式反応管に充填した。触媒層に表1の組成のガスを空間速度SV=100000/hで流通させながら、触媒層を加熱した。250℃において、出口NO濃度が一定となったとき、
(NO浄化率)={(入口NO濃度)―(出口NO濃度)}/(入口NO濃度)
の値によって触媒の窒素酸化物除去活性を評価した。
水253gに85%リン酸101gおよび擬ベーマイト(25%水含有、サソール社製)68gをゆっくりと加え、攪拌した。これをA液とした。A液とは別にヒュームドシリカ(アエロジル200:日本アエロジル社製)7.5g、モルホリン43.5g、トリエチルアミン55.7g、水253gを混合した液を調製した。これをA液にゆっくりと加えて、3時間攪拌し、水性ゲルを得た。該水性ゲルをフッ素樹脂内筒の入った1Lのステンレス製オートクレーブに仕込み、攪拌させながら30℃から190℃まで、16℃/時の昇温速度で直線的に昇温し、最高到達温度190℃で50時間反応させた。最高到達温度に昇温する過程で、80℃から120℃の範囲におかれた時間は2.5時間であった。反応後冷却して、デカンテーションにより上澄みを除いて沈殿物を回収した。沈殿物を水で3回洗浄した後濾別し、120℃で乾燥した。得られたゼオライトはジェットミルによりメジアン径3μmとなるよう粉砕し、テンプレートを含有したゼオライトを得た。
このテンプレートを含有したゼオライトを、560℃で空気気流下焼成を行い、テンプレートを除去した。
また、25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧が0.2の時の水吸着量は0.28g/gであった。
実施例1と同様の方法により、テンプレート含有のゼオライトを合成した。テンプレート含有のゼオライトは、テンプレートを計20重量%含んでいた。
次に、4.6gのシュウ酸鉄アンモニウム三水和物(キシダ化学社製)に40gの純水を加え溶解し、上記テンプレート含有のシリコアルミノフォスフェートゼオライト25gを加えてさらに攪拌し、水スラリーとした。この水スラリーを170℃金属板上に噴霧し乾燥させ、触媒前駆体とした。触媒前駆体を触媒1gあたり6.7ml/分の5%酸素を含有酸素と窒素との混合ガス流通中で、700℃で4時間焼成し、触媒の焼成とともにテンプレートの除去を行い触媒2を得た。評価結果を表2に示す。
4.6gのシュウ酸鉄アンモニウム三水和物(キシダ化学社製)に40gの純水を加え溶解し、さらに8.3gの硝酸アルミニウム九水和物(キシダ化学社製)を添加して、鉄塩とアルミニウム塩の混合溶液を得た。実施例2に記載のテンプレート含有ゼオライト25gを前記の鉄塩とアルミニウム塩の混合溶液(以下、鉄アルミ塩混合液という)を加えてさらに攪拌し、水スラリーとした。この水スラリーを実施例2と同様に噴霧乾燥、焼成して触媒3を得た。評価結果を表2に示す。
7.7gのシュウ酸鉄アンモニウム三水和物(キシダ化学社製)に40gの純水を加え溶解し、さらに8.3gの硝酸アルミニウム九水和物(キシダ化学社製)を添加して、鉄アルミ塩混合液を得る。実施例2に記載のテンプレート含有ゼオライト25gを鉄アルミニウム塩の混合溶液を加えてさらに攪拌し、水スラリーとした。この水スラリーを実施例2と同様に噴霧乾燥、焼成して触媒4を得た。評価結果を表2に示す。
7.7gのシュウ酸鉄アンモニウム三水和物(キシダ化学社製)に40gの純水を加え溶解し、さらに10.7gのポリ塩化アルミニウム(Al2O3:10.5%、大明化学社製)を添加して、鉄アルミ塩の混合溶液を得る。実施例2に記載のゼオライト25gを鉄アルミニウム塩の混合溶液を加えてさらに攪拌し、水スラリーとした。この水スラリーを実施例2と同様に噴霧乾燥、焼成して触媒5を得た。評価結果を表2に示す。
2.0gの塩基性酢酸鉄(キシダ化学社製)および20gの実施例1に記載のゼオライトを40gの純水に加え、さらに攪拌し、水スラリーとした。この水スラリーを実施例1と同様に噴霧乾燥、焼成して触媒6を得た。評価結果を表2に示す。
(実施例7)
3.5gのクエン酸鉄(昭和化工社製、Fe含有量17.2wt%)および25gの実施例2に記載のゼオライトを40gの純水に加え、さらに攪拌し、水スラリーとした。
この水スラリーを実施例2と同様に噴霧乾燥、焼成して触媒7を得た。評価結果を表2に示す。
Microporous and Mesoporous Materials 116(1-3), 2008, 188-195に記載された合成方
法でBEA型アルミノシリケートゼオライトを合成した。シリカ/アルミナ比は40であった。
上記のBEAゼオライトに25.7質量%硝酸鉄九水和物(キシダ化学社製)水溶液を加え含浸担持を行った。その後乾燥粉体を実施例1と同様に焼成して触媒8を得た。評価結果を表2に示す。
4.3gの硝酸鉄九水和物(キシダ化学社製)に40gの純水を加え溶解し、20gの実施例1のゼオライトを加えてさらに攪拌し、水スラリーとした。実施例1と同様に噴霧乾燥、焼成して触媒9を得た。評価結果を表2に示す。
7.2gの硫酸鉄七水和物(キシダ化学社製)に40gの純水を加え溶解し、15gの実施例1のゼオライトを加えてさらに攪拌し、水スラリーとした。実施例1と同様に噴霧乾燥、焼成して触媒10を得た。触媒10について、実施例1と同様の条件でNO浄化率を評価した。結果を表2に示す。
米国特許第7645718号明細書のexample2に記載の方法に基づき、テンプレートにTEAOHを使用し、焼成を行いテンプレートを除去したSAPOを合成した。このゼオライトについて、90℃において2000回の水蒸気繰り返し吸脱着試験(90−80−5の水蒸気繰り返し吸脱着試験)を行ったところ、維持率が63%となった。
18.4gのシュウ酸鉄アンモニウム三水和物(キシダ化学社製)に40gの純水を加え溶解し、25gの実施例2のゼオライトを加えてさらに攪拌し、水スラリーとした。この水スラリーを実施例2と同様に噴霧乾燥、焼成して触媒13を得た。評価結果を表2に示す。
また、本発明の窒素酸化物浄化用触媒の製造方法は、活性の高い窒素酸化物浄化用触媒を簡便な方法で提供することができる。
Claims (9)
- 骨格構造に少なくともアルミニウム原子とリン原子とケイ素原子を含むゼオライトに鉄を担持した窒素酸化物浄化用触媒であって、
(1)鉄の担持量がゼオライトの総重量の1重量%以上であり、
(2)該触媒をCuKαをX線源に用いたX線回折測定したときに、回折角(2θ)が21.2〜21.6度の範囲に観察される回折ピーク高さが0.01以上であり、
(3)該触媒を800℃で5時間水蒸気処理した後にCuKαをX線源に用いたX線回折測定したときに、回折角(2θ)が20.6〜21.0度の範囲に観察される回折ピーク高さに対する、回折角(2θ)が21.2〜21.6度の範囲に観察される回折ピーク高さの比が0.01以上1.0以下である、
窒素酸化物浄化用触媒。 - 骨格構造に少なくともアルミニウム原子とリン原子とケイ素原子を含むゼオライトに鉄を担持した窒素酸化物浄化用触媒であって、
(1)鉄の担持量がゼオライトの総重量の1重量%以上であり、
(2)該触媒をCuKαをX線源に用いたX線回折測定したときに、回折角(2θ)が21.2〜21.6度の範囲に観察される回折ピーク高さが0.01以上であり、
(3)該触媒を800℃で5時間水蒸気処理した後にCuKαをX線源に用いたX線回折測定したときに、回折角(2θ)が20.6〜21.0度の範囲に観察される回折ピーク高さに対する、回折角(2θ)が21.2〜21.6度の範囲に観察される回折ピーク高さの比が0.01以上1.0以下であり、
(4)該触媒を800℃で5時間水蒸気処理した前後で、CuKαをX線源に用いたX線回折測定したときに、回折角(2θ)が21.2〜21.6度の範囲に観察される回折ピーク高さが、前記水蒸気処理前の測定で観察される回折ピーク高さに対する、前記水蒸気処理後の測定で観察される回折ピーク高さの比が2以下である、
窒素酸化物浄化用触媒。 - 前記骨格構造に少なくともアルミニウム原子とリン原子とケイ素原子を含むゼオライトの構造が、IZAで表されるコードでCHAである請求項1又は2に記載の窒素酸化物浄化触媒。
- 骨格構造に少なくともアルミニウム原子とリン原子とシリコン原子を含むゼオライトと、含炭素鉄塩とを混合する混合工程、混合工程で得られた混合物を乾燥する乾燥工程、及び乾燥工程で得られる乾燥物を焼成する焼成工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の窒素酸化物浄化用触媒の製造方法。
- 前記含炭素鉄塩が、鉄有機酸塩であることを特徴とする請求項4に記載の窒素酸化物浄化用触媒の製造方法。
- 前記混合工程で混合する物質が、骨格構造に少なくともアルミニウム原子とリン原子とシリコン原子を含むゼオライト、含炭素鉄塩と、さらに周期表の第13族金属であることを特徴とする請求項4または5に記載の窒素酸化物浄化触媒の製造方法。
- 前記周期表の第13族金属が、アルミニウムであることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の窒素酸化物浄化触媒の製造方法。
- 前記焼成工程が、酸素10体積%以下の低酸素雰囲気下において、500℃以上で焼成を行うことを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の窒素酸化物浄化触媒の製造方法。
- 前記骨格構造に少なくともアルミニウム原子とリン原子とシリコン原子を含むゼオライトが、ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、リン原子原料およびテンプレートを混合した後水熱合成して製造するものであり、かつ前記テンプレートとして、ヘテロ原子として窒素を含む脂環式複素環化合物、及びアルキルアミンの2つの群から各群につき1種以上の化合物を選択したテンプレートを用いることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の窒素酸化物浄化触媒の製造方法。
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