JP2012007889A - 放射線モニタ及び放射線モニタのゲイン補償方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】放射線検出器の温度変動、経年劣化、線量率変動等の変動による検出器動作特性を反映した高精度計測が可能な原子力プラントで使用する放射線モニタを提供。
【解決手段】原子炉建屋内に設置されて設置環境の放射線を測定する放射線検出器と、放射線検出器の検出器電源と、放射線検出器の出力ゲインを可変に調整できるゲイン調整装置と、ゲイン調整装置の出力からγ線エネルギースペクトルを算出する多チャンネル波高分析装置と、多チャンネル波高分析装置で算出したγ線エネルギースペクトル上のγ線ピークのγ線ピーク中心測定値を算出するピーク算出装置と、ピーク算出装置で算出したγ線ピーク中心測定値とγ線ピーク中心設定値とのずれを算出しゲイン補償を判別するピーク判別装置と、ピーク判別装置で算出したγ線ピーク中心設定値とのずれを調整するゲイン調整量を決定してゲイン調整装置のゲインを調整するゲイン補償装置とを備えた放射線検出器。
【選択図】図1
【解決手段】原子炉建屋内に設置されて設置環境の放射線を測定する放射線検出器と、放射線検出器の検出器電源と、放射線検出器の出力ゲインを可変に調整できるゲイン調整装置と、ゲイン調整装置の出力からγ線エネルギースペクトルを算出する多チャンネル波高分析装置と、多チャンネル波高分析装置で算出したγ線エネルギースペクトル上のγ線ピークのγ線ピーク中心測定値を算出するピーク算出装置と、ピーク算出装置で算出したγ線ピーク中心測定値とγ線ピーク中心設定値とのずれを算出しゲイン補償を判別するピーク判別装置と、ピーク判別装置で算出したγ線ピーク中心設定値とのずれを調整するゲイン調整量を決定してゲイン調整装置のゲインを調整するゲイン補償装置とを備えた放射線検出器。
【選択図】図1
Description
本発明は、原子力プラントで使用される放射線モニタの放射線検出器のゲイン変動を補償する放射線モニタ及び放射線モニタのゲイン補償方法に関する。
原子力プラントでは多数、多種の放射線モニタが設置されており、測定対象の放射線の種類及びレベルに応じて、半導体検出器、電離箱、シンチレーション検出器等の放射線検出器が放射線モニタとして使用されている。
これら放射線モニタは、原子力プラントの運転健全性の保持及び作業者の被ばく管理の観点から、高信頼性及び高精度であることが求められている。しかし、各種放射線モニタの設置位置での温度環境及び線量率環境の変動、また長期間の連続動作によって、放射線検出器のゲイン変動が生じ、放射線モニタの性能劣化を引き起こす可能性がある。
これら放射線モニタは、原子力プラントの運転健全性の保持及び作業者の被ばく管理の観点から、高信頼性及び高精度であることが求められている。しかし、各種放射線モニタの設置位置での温度環境及び線量率環境の変動、また長期間の連続動作によって、放射線検出器のゲイン変動が生じ、放射線モニタの性能劣化を引き起こす可能性がある。
ここで、原子力プラントの原子炉建屋、及び原子炉建屋内の原子炉格納容器における放射線モニタの場合、定期検査から定格運転にかけての温度及び線量率の変動は、原子力プラントの放射線モニタ設置環境の中でも極めて大きいことがわかっている。また、定期検査から定格運転にかけての線量率の主因となる放射性核種は原子炉出力及び原子炉運転状況に応じて変動することがわかっている。
従来の放射線モニタのゲイン補償技術として、特開2006−29986号公報には、特定放射性核種の放射線エネルギーを基準として、エネルギースペクトル上の前記特定放射性核種に対応するピーク値からゲインを補償する技術が開示されている。また、放射線検出器の近傍に設置する温度計からの温度情報で光電子増倍管の印加電圧値を調整することで、放射線検出器の温度特性を合わせたゲイン補償技術がある。
その他のゲイン補償技術の例として、発光ダイオード(LED)等の光源を用いて、任意の光強度を任意の周期で入力することでゲイン補償する技術がある。
特許1942035号公報には、LEDと、発光量及び周波数を制御するLEDドライバを用いて、既知の光パルスによる電荷パルスを収集することが可能となり、放射線モニタのゲインを補償する技術が開示されている。
特許1942035号公報には、LEDと、発光量及び周波数を制御するLEDドライバを用いて、既知の光パルスによる電荷パルスを収集することが可能となり、放射線モニタのゲインを補償する技術が開示されている。
また公知例として、Cs−137等の校正用線源を放射線モニタに装着して、装着線源による放射線モニタ出力及び装着線源強度、放射線エネルギー等の情報を合わせてゲイン補償する技術がある。
特開平09−304542公報には、K−40やTl−208等の自然放射性物質の放射線による放射線モニタ出力及び自然放射性物質の強度、放射線エネルギー等の情報を合わせて校正用線源を使用することなくゲイン補償する技術が開示されている。
原子力プラントの原子炉建屋、及び原子炉建屋内の原子炉格納容器における放射線モニタの場合、定期検査から定格運転にかけての設置位置での温度及び線量率変動は、原子力プラントの放射線モニタ設置環境の中でも極めて大きい。また、定期検査から定格運転にかけての線量率の主因となる放射性核種は原子炉出力及び原子炉運転状況に応じて変動する。
特開2006−29986号公報に開示されたゲイン補償方法について、原子力プラントの原子炉建屋、及び原子炉建屋内の原子炉格納容器における放射線モニタに特許文献1のゲイン補償方法を適用させると、ゲイン補償に適用する特定放射性核種のピークが、定期検査から原子炉起動、定格運転、原子炉停止、そして定期検査の間の原子力プラント1サイクルのいずれかで、他の放射性核種の影響によって測定できない、もしくは十分な精度で測定できない場合が生じる。このため、原子炉出力及び原子炉運転状況に応じて指標核種を連動させる必要がある。
また、特開2006−29986号公報に開示された技術では、温度計からの温度情報をもとにして放射線検出器の印加電圧値を調整するが、印加電圧値を変動することによってエネルギー分解能劣化を招く可能性がある。さらに、温度計からの温度情報は厳密には放射線検出器自体の温度を示していないため、放射線検出器と温度計との温度勾配による温度差が生じ、そのために測定誤差が生じる。
特許1942035公報に開示された技術の場合、対象となる放射線モニタのほとんどはSi半導体検出器を使用する放射線モニタに限る。その他の一般的な放射線検出器である電離箱、Ge検出器及びシンチレーション検出器のLEDによるゲイン補償は困難である。また、LED自体も温度特性、経年劣化があるため、高精度のゲイン補償は困難である。
Cs−137等の校正用線源を用いる場合は、原子炉定格運転時での高い線量率環境であってもγ線ピークを十分収集できる強度の線源が必要である。原子炉定格運転時でも使用できる十分な強度を有する校正用線源を設置する場合には、この校正用線源による定期検査時の作業員の被ばくが問題となる可能性がある。
特開平09−304542公報に開示された技術のように、K−40やTl−208等の自然放射性物質を利用したゲイン補償技術では、原子力プラントの原子炉建屋、及び原子炉建屋内の原子炉格納容器における放射線モニタの設置環境における線量率は、K−40やTl−208等の自然放射性物質の放射線と比較して非常に大きい。このため、自然放射性物質によるγ線ピークを収集することは困難である。
本発明の目的は、放射線検出器の温度変動、経年劣化、或いは線量率変動等の変動による検出器動作特性を反映した高精度計測が可能な原子力プラントで使用される放射線モニタ及び放射線モニタのゲイン補償方法を提供することにある。
本発明の放射線モニタは、原子炉建屋内に設置されて設置環境の放射線を測定する放射線検出器と、前記放射線検出器の検出器電源と、前記放射線検出器の出力ゲインを可変に調整できるゲイン調整装置と、前記ゲイン調整装置の出力からγ線エネルギースペクトルを算出する多チャンネル波高分析装置と、前記多チャンネル波高分析装置で算出したγ線エネルギースペクトル上のγ線ピークのγ線ピーク中心測定値を算出するピーク算出装置と、前記ピーク算出装置で算出した前記γ線ピーク中心測定値とγ線ピーク中心設定値とのずれを算出しゲイン補償を判別するピーク判別装置と、前記ピーク判別装置で算出したγ線ピーク中心設定値とのずれを調整するゲイン調整量を決定して前記ゲイン調整装置のゲインを調整するゲイン補償装置とを備え、前記放射線検出器のゲインを補償して放射線検出器の測定精度を維持することを特徴とする。
また本発明の放射線モニタは、原子炉建屋内に設置されて複数の設置環境の放射線を測定する複数の放射線検出器と、前記放射線検出器の複数の検出器電源と、前記放射線検出器の出力ゲインを可変に調整できる複数のゲイン調整装置と、前記ゲイン調整装置の出力からγ線エネルギースペクトルを算出する複数の多チャンネル波高分析装置と、前記多チャンネル波高分析装置で算出したγ線エネルギースペクトル上のγ線ピークのγ線ピーク中心測定値を算出する複数のピーク算出装置と、前記ピーク算出装置で算出した前記γ線ピーク中心測定値とγ線ピーク中心設定値とのずれを算出しゲイン補償を判別する複数のピーク判別装置と、前記ピーク判別装置で算出したγ線ピーク中心設定値とのずれを調整するゲイン調整量を決定して前記ゲイン調整装置のゲインを調整する複数のゲイン補償装置とを備え、前記ゲイン調整装置の出力を分岐して取得した前記N個の放射線検出器の出力からゲート信号を出力するゲートと、前記ゲートから出力した前記ゲート信号によるγ線エネルギースペクトルを形成する多チャンネル波高分析装置と、前記ゲートのゲート信号を計数するスケーラーとを備え、複数設置したいずれの放射線検出器に対してもゲインを補償して各々の放射線検出器の出力の相関を維持することでゲート信号によるγ線エネルギースペクトルの測定精度を維持するようにしたことを特徴とする。
本発明の放射線モニタのゲイン補償方法は、原子力プラントの原子炉建屋内で使用され、設置環境の放射線を測定する放射線検出器と、前記放射線検出器の検出器電源と、前記放射線検出器の出力ゲインを可変に調整できるゲイン調整装置と、前記ゲイン調整装置の出力からγ線エネルギースペクトルを算出する多チャンネル波高分析装置と、前記γ線エネルギースペクトル上のγ線ピークのγ線ピーク中心測定値を算出するピーク算出装置と、前記ピーク算出装置で算出した前記γ線ピーク中心測定値とγ線ピーク中心設定値とのずれを算出し、ゲイン補償を判別するピーク判別装置と、前記γ線ピーク中心設定値とのずれを調整するゲイン調整量を決定して前記ゲイン調整装置のゲインを調整するゲイン補償装置とを備えた放射線モニタのゲイン補償方法であって、原子炉停止時及び定期検査時には、その原子炉出力及び原子炉運転状況で確認できる特有の放射性核種(以下、定検時主要核種とする)をゲイン補償のための指標核種とし、原子炉定格運転時の指標核種には、その原子炉出力及び原子炉運転状況で確認できる特有の放射性核種(以下、定格時主要核種とする)をゲイン補償のための指標核種とし、
原子炉起動運転時及び停止運転時には、原子炉出力及び原子炉運転状況に応じて、定検時主要核種と定格時主要核種とを指標核種として、原子炉出力及び原子炉運転状況に応じたそれぞれの指標核種を用いて前記放射線検出器のゲインを補償することを特徴とする。
原子炉起動運転時及び停止運転時には、原子炉出力及び原子炉運転状況に応じて、定検時主要核種と定格時主要核種とを指標核種として、原子炉出力及び原子炉運転状況に応じたそれぞれの指標核種を用いて前記放射線検出器のゲインを補償することを特徴とする。
また本発明の放射線モニタのゲイン補償方法は、原子力プラントの原子炉建屋内で使用され、複数の設置環境の放射線をそれぞれ測定する複数の放射線検出器と、前記放射線検出器の複数の検出器電源と、前記放射線検出器の出力ゲインを可変に調整できる複数のゲイン調整装置と、前記ゲイン調整装置の出力からγ線エネルギースペクトルを算出する複数の多チャンネル波高分析装置と、前記多チャンネル波高分析装置で算出したγ線エネルギースペクトル上のγ線ピークのγ線ピーク中心測定値を算出する複数のピーク算出装置と、前記ピーク算出装置で算出した前記γ線ピーク中心測定値とγ線ピーク中心設定値とのずれを算出しゲイン補償を判別する複数のピーク判別装置と、前記ピーク判別装置で算出したγ線ピーク中心設定値とのずれを調整するゲイン調整量を決定して前記ゲイン調整装置のゲインを調整する複数のゲイン補償装置とを備え、更に前記ゲイン調整装置の出力を分岐して取得した前記N個の放射線検出器の出力からゲート信号を出力するゲートと、前記ゲートから出力した前記ゲート信号によるγ線エネルギースペクトルを形成する多チャンネル波高分析装置と、前記ゲートのゲート信号を計数するスケーラーとを備えた放射線モニタのゲイン補償方法であって、原子炉停止時及び定期検査時には、その原子炉出力及び原子炉運転状況で確認できる特有の放射性核種(以下、定検時主要核種とする)をゲイン補償のための指標核種とし、原子炉定格運転時の指標核種には、その原子炉出力及び原子炉運転状況で確認できる特有の放射性核種(以下、定格時主要核種とする)をゲイン補償のための指標核種とし、原子炉起動運転時及び停止運転時には、原子炉出力及び原子炉運転状況に応じて、定検時主要核種と定格時主要核種とを指標核種として、原子炉出力及び原子炉運転状況に応じたそれぞれの指標核種を用いて前記放射線検出器のゲインを補償し、各々の放射線検出器の出力の相関を維持することでゲート信号によるγ線エネルギースペクトルの測定精度を維持することを特徴とする。
本発明によれば、放射線検出器の温度変動、経年劣化、或いは線量率変動等の変動による検出器動作特性を反映した高精度計測が可能な原子力プラントで使用される放射線モニタ及び放射線モニタのゲイン補償方法が実現できる。
本発明の測定環境補償型放射線モニタに関する知見について説明する。本発明の測定環境補償型放射線モニタは、本発明者らが校正用線源、自然放射性物質、光源及び温度情報を用いずに放射線検出器の設置環境及び測定環境に応じて放射線モニタのゲイン変動を補償できる、測定環境補償型放射線モニタ及びそのゲイン補償方法を種々検討した際に得られた新たな知見に基づいたものである。
この知見は、原子力プラントで使用される設置環境の放射線を測定する放射線検出器と、放射線検出器の検出器電源と、放射線検出器の出力ゲインを可変に調整できるゲイン調整装置と、ゲイン調整装置の出力からγ線エネルギースペクトルを算出する多チャンネル波高分析装置と、多チャンネル波高分析装置で算出したγ線エネルギースペクトル上のγ線ピークのγ線ピーク中心測定値を算出するピーク算出装置と、ピーク算出装置で算出した前記γ線ピーク中心測定値とγ線ピーク中心設定値とのずれを算出してゲイン補償を判別するピーク判別装置と、ピーク判別装置5で算出されたγ線ピーク中心測定値とγ線ピーク中心設定値とのずれを調整するゲイン調整量を決定して前記ゲイン調整装置のゲインを調整するゲイン補償装置、を備えることで、原子炉停止時及び定期検査時には、その原子炉出力及び原子炉運転状況で確認できる特有の放射性核種(以下、定検時主要核種とする)をゲイン補償のための指標核種とし、原子炉定格運転時の指標核種には、その原子炉出力及び原子炉運転状況で確認できる特有の放射性核種(以下、定格時主要核種とする)をゲイン補償のための指標核種とし、原子炉起動運転時(原子炉立ち上げ時)及び停止運転時(原子炉立ち下げ時)には、原子炉出力及び原子炉運転状況に応じて、定検時主要核種と定格時主要核種とを指標核種として、それぞれの原子炉出力及び原子炉運転状況に応じた指標核種を用いて前記放射線検出器のゲインを補償する、測定環境補償型放射線モニタ及びそのゲイン補償方法を提供するものである。
次に上記の新たな知見の内容を具体的に説明する。
原子力プラントで使用される設置環境の放射線を測定する放射線検出器には、一般的なγ線検出器を用いる。γ線検出器の例としては、半導体検出器の場合には、Ge、Si、CdTe、CZT等があり、シンチレーション検出器の場合には、NaI(Tl)、CsI(Ce)、LaBr3(Ce)、BGO、GSO、LuAG(Pr)、LSO、YAP等の無機シンチレータの他に、有機シンチレータがある。
いずれも放射線モニタに適用可能である。一般的なγ線検出器にはエネルギー分解能を維持するために前置増幅器が備えられている。シンチレーション検出器の場合には、シンチレータからの発光を電気信号に変換するための光検出器が必要となる。
一般的に用いられる光検出器は光電子増倍管、フォトダイオード及びアバランシェフォトダイオードである。シンチレータ及び光検出器は光学グリースによって直接接着する以外に、ライトガイドを介することで、シンチレータと光検出器との幾何条件の違いによる集光効率の劣化を抑制する手段がある。
放射線検出器の検出器電源は、放射線計測で一般的に用いられる電源を使用する。この電源によって前記前置増幅器及び前記光検出器を動作させ、後段の回路系へ信号を出力する。
放射線検出器の後段に取付けるゲイン調整装置は、ゲイン調整量に相当する外部入力に対して出力ゲインを調整可能とする。
放射線検出器の後段に取付けるゲイン調整装置は、ゲイン調整量に相当する外部入力に対して出力ゲインを調整可能とする。
多チャンネル波高分析装置は、通常の放射線計測で使用する一般的な装置を用いる。一般的な多チャンネル波高分析装置は、放射線検出器の出力をリニアアンプ等で波形整形し、アナログ‐デジタル(AD)変換することでγ線エネルギースペクトルを形成する機能を有する。
また、放射線検出器の出力をAD変換し、プログラマブルロジックデバイス(PLD: Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)を活用してデジタルで信号処理を実施することでγ線エネルギースペクトルを形成する、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)による多チャンネル波高分析装置もある。
また、放射線検出器の出力をAD変換し、プログラマブルロジックデバイス(PLD: Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)を活用してデジタルで信号処理を実施することでγ線エネルギースペクトルを形成する、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)による多チャンネル波高分析装置もある。
ピーク算出装置は、前記多チャンネル波高分析装置で取得したγ線エネルギースペクトル上のγ線ピークを、γ線エネルギースペクトルの平滑化及びγ線エネルギーに相当するチャネルを微分等の処理をすることで、γ線ピーク中心測定値やγ線ピークのROI(Region Of Interest)等を算出する機能を有する。
ピーク判別装置は、前記ピーク算出装置で算出したγ線ピーク中心測定値と、事前に設定したγ線ピーク中心設定値とのずれを判別する機能を有する。有意なγ線ピーク中心のずれを確認できた場合には、後述するゲイン補償装置に対してゲイン調整を許可する信号を出力する。
ゲイン補償装置は、前記γ線ピーク中心設定値とのずれを調整するゲイン調整量を決定し、前記ゲイン調整装置のゲインを調整する機能を有する。前記ピーク判別装置からゲイン調整を許可する信号を入力した場合、γ線ピーク中心測定値をγ線ピーク中心設定値まで調整するゲイン調整量を決定し、ゲイン調整量に応じた信号を前記ゲイン調整装置に入力する。前記ピーク判別装置からゲイン調整を許可する信号が入力されない場合は、ゲイン調整を実施しない。
原子炉出力及び原子炉運転状況における指標核種について、原子炉停止時及び定期検査時の指標核種(定検時主要核種)は、原子炉運転によって生成され、原子炉運転中に配管、機器及びプラント構造物に付着する。もしくは一次系冷却材中に存在する。定検時主要核種の一例として、Co−60、Co−58、Mn−54、Fe−59、Eu−152、Eu−154、Sc−46、Zn−65、Cs−134、Ta−182、Rh−106、Nb−94、Cr−51等が挙げられる。
Co−60はCo−59の(n,γ)反応で生成される放射性核種であり、β−崩壊によって主に1173keV及び1332keVのエネルギーを持つγ線を放射する。半減期は5.27年であるため、原子炉運転中に生成されたCo−60は原子炉停止時及び定期検査時でも確認できる。
Co−58はNi−58の(n,p)反応で生成される放射性核種であり、電子捕獲及びβ+崩壊によって主に811keV及び511keVのエネルギーを持つγ線を放射する。半減期は70.86日であるため、原子炉運転中に生成されたCo−58は原子炉停止時及び定期検査時でも確認できる。
Mn−54はFe−54の(n,p)反応で生成される放射性核種であり、電子捕獲によって主に835keVのエネルギーを持つγ線を放射する。半減期は312.1日であるため、原子炉運転中に生成されたMn−54は原子炉停止時及び定期検査時でも確認できる。
Fe−59はFe−58の(n,γ)反応で生成される放射性核種であり、β−崩壊によって主に1099keV及び1292keVのエネルギーを持つγ線を放射する。半減期は44.5日であるため、原子炉運転中に生成されたFe−59は原子炉停止時及び定期検査時でも確認できる。
Fe−59はFe−58の(n,γ)反応で生成される放射性核種であり、β−崩壊によって主に1099keV及び1292keVのエネルギーを持つγ線を放射する。半減期は44.5日であるため、原子炉運転中に生成されたFe−59は原子炉停止時及び定期検査時でも確認できる。
Eu−152及びEu−154は、Eu−151及びEu−153の(n,γ)反応で生成される放射性核種である。また、原子炉圧力容器内の燃料棒に含まれる核***生成物としても確認できる。
電子捕獲及びβ−崩壊によって、Eu−152は主に1408keV及び122keV、Eu−154は主に1274keV、723keV及び123keVのエネルギーを持つγ線を放射する。半減期はEu−152で13.54年、Eu−154で8.593年であるため、原子炉運転中に生成されたEu−152及びEu−154は原子炉停止時及び定期検査時でも確認できる。
Sc−46はSc−45の(n,γ)反応で生成される放射性核種であり、β−崩壊によって主に889keV及び1121keVのエネルギーを持つγ線を放射する。半減期は83.79日であるため、原子炉運転中に生成されたSc−46は原子炉停止時及び定期検査時でも確認できる。
Zn−65はZn−64の(n,γ)反応、Cu−65の(p,n)反応で生成される放射性核種であり、電子捕獲及びβ+崩壊によって主に1116keV及び511keVのエネルギーを持つγ線を放射する。半減期は244.3日であるため、原子炉運転中に生成されたZn−65は原子炉停止時及び定期検査時でも確認できる。
Cs−134はCs−133の(n,γ)反応で生成される放射性核種であり、β−崩壊によって主に605keV及び796keVのエネルギーを持つγ線を放射する。半減期は2.065年であるため、原子炉運転中に生成されたCs−134は原子炉停止時及び定期検査時でも確認できる。
Ta−182はTa−181の(n,γ)反応で生成される放射性核種であり、β−崩壊によって主に1121keV及び1221keVのエネルギーを持つγ線を放射する。半減期は114.4日であるため、原子炉運転中に生成されたTa−182は原子炉停止時及び定期検査時でも確認できる。
Nb−94はNb−93 の(n,γ)反応で生成される放射性核種であり、β−崩壊によって主に871keV及び703keVのエネルギーを持つγ線を放射する。半減期は2.03×104年であるため、原子炉運転中に生成されたNb−94は原子炉停止時及び定期検査時でも確認できる。
Cr−51はCr−50 の(n,γ)反応で生成される放射性核種であり、電子捕獲によって主に320keVのエネルギーを持つγ線を放射する。半減期は27.7日であるため、原子炉運転中に生成されたCr−51は原子炉停止時及び定期検査時でも確認できる。
原子炉定格運転時の指標核種(定格時主要核種)は、原子炉運転によって生成され、短半減期のため原子炉停止時及び定期検査時には確認できない放射性核種である。定格時主要核種の一例として、N−16、N−13、F−18、O−19、Mn−56等が挙げられる。
N−16はO−16の(n,p)反応で生成される放射性核種であり、β−崩壊によって主に6129keV及び7115keVのエネルギーを持つγ線を放射する。半減期は7.13秒であるため、原子炉運転中のみ存在を確認できる核種である。
N−13はO−16の(p,α)反応で生成される放射性核種であり、電子捕獲及びβ+崩壊によって主に511keVのエネルギーを持つγ線を放射する。半減期は9.96分であるため、原子炉運転中のみ存在を確認できる核種である。
F−18はO−18の(p,n)反応で生成される放射性核種であり、電子捕獲及びβ+崩壊によって主に511keVのエネルギーを持つγ線を放射する。半減期は109.8分であるため、原子炉運転中のみ存在を確認できる核種である。
O−19はO−18の(n,γ)反応で生成される放射性核種であり、β−崩壊によって主に197keV及び1357keVのエネルギーを持つγ線を放射する。半減期は26.9秒であるため、原子炉運転中のみ存在を確認できる核種である。
Mn−56はMn−55の(n,γ)反応、F−56の(n,p)反応、Co−59の(n,α)反応等で生成される放射性核種であり、β−崩壊によって主に846keV、1810keV及び2113keVのエネルギーを持つγ線を放射する。半減期は2.579時間であるため、原子炉運転中のみ存在を確認できる核種である。
原子炉定格運転時のほとんどは、原子炉停止時及び定期検査時に確認できるCo−60、Co−58等の定検時主要核種の強度がN−16、N−13等の定格時主要核種の強度と比較して低いため、γ線エネルギースペクトル上に定検時主要核種由来のγ線ピークを測定することが困難であり、定検時主要核種のみでのゲイン補償が困難である。
また、定格時主要核種は短半減期であるため、原子炉停止時及び定期検査時にはそのほとんどが減衰しており、一般的な放射線検出器でその存在を確認することは困難であり、定格時主要核種のみでのゲイン補償が困難である。
原子炉起動運転時(原子炉立ち上げ時)及び停止運転時(原子炉立ち下げ時)は、原子炉出力及び原子炉運転状況に応じて、前記した定検時主要核種及び定格時主要核種を指標核種として用いる。詳細は下記に示す。
原子炉起動運転時の場合、起動初期時はCo−60、Co−58等の定検時主要核種によるゲイン補償を実施する。原子炉出力が上がるに従って、N−16、N−13等の定格時主要核種によるγ線強度が高くなるため、定検時主要核種によるγ線ピークの確認が困難となってくる。
このため、定検時主要核種によるγ線ピークが確認できなくなる前に、ゲイン補償のための指標核種を定格時主要核種に変更する、2つ以上の指標核種から主となる指標核種を選定するゲイン補償アルゴリズムが必要である。
原子炉停止運転時は原子炉起動運転時と逆の手順となり、原子炉出力が下がるに従って、定格時主要核種によるγ線強度が低くなるため、定検時主要核種によるγ線ピークが確認できるようになってくる。
このため、定格時主要核種によるγ線ピークが確認できなくなる前に、ゲイン補償の指標核種を定検時主要核種に変更する、2つ以上の指標核種から主となる指標核種を選定するゲイン補償アルゴリズムが必要である。
以上により、設置環境の放射線を測定する放射線検出器と、放射線検出器の検出器電源と、放射線検出器の出力ゲインを可変に調整できるゲイン調整装置と、ゲイン調整装置の出力からγ線エネルギースペクトルを算出する多チャンネル波高分析装置と、γ線エネルギースペクトル上のγ線ピークのγ線ピーク中心測定値を算出するピーク算出装置と、ピーク算出装置で算出した前記γ線ピーク中心測定値とγ線ピーク中心設定値とのずれを算出し、ゲイン補償を判別するピーク判別装置と、γ線ピーク中心設定値とのずれを調整するゲイン調整量を決定し、ゲイン調整装置のゲインを調整するゲイン補償装置を備えることで、原子炉停止時及び定期検査時には、その原子炉出力及び原子炉運転状況で確認できる特有の放射性核種(以下、定検時主要核種とする)をゲイン補償のための指標核種とし、原子炉定格運転時の指標核種には、その原子炉出力及び原子炉運転状況で確認できる特有の放射性核種(以下、定格時主要核種とする)をゲイン補償のための指標核種とし、原子炉起動運転時(原子炉立ち上げ時)及び停止運転時(原子炉立ち下げ時)には、原子炉出力及び原子炉運転状況に応じて、定検時主要核種と定格時主要核種とを指標核種として、それぞれの原子炉出力及び原子炉運転状況に応じた指標核種を用いて放射線検出器のゲインを補償することを特徴とすることで、校正用線源、自然放射性物質、光源及び温度情報を用いることなく、原子炉出力及び原子炉運転状況などの放射線検出器の設置環境及び測定環境に応じて、放射線検出器のゲイン変動を補償できる。
次に本発明の好適な実施例である測定環境補償型放射線モニタ及びそのゲイン補償方法について、図面を参照して以下に説明する。
図1は、本発明の第1実施例である原子炉建屋内の原子炉格納容器に設置された測定環境補償型放射線モニタ7の基本構成を示している。
第1実施例の測定環境補償型放射線モニタ7は、原子炉建屋8の内部に格納された原子炉格納容器9の内部に設置され、設置環境の放射線を測定する放射線検出器1と、原子炉格納容器9の外部にそれぞれ設置されており、前記放射線検出器1に電力を供給する検出器電源15と、放射線検出器1の出力ゲインを可変に調整するゲイン調整装置2と、ゲイン調整装置2の出力からγ線エネルギースペクトルを算出する多チャンネル波高分析装置3と、前記多チャンネル波高分析装置3で算出したγ線エネルギースペクトル上のγ線ピークのγ線ピーク中心測定値を算出するピーク算出装置4と、ピーク算出装置4で算出した前記γ線ピーク中心測定値とγ線ピーク中心設定値とのずれを算出してゲイン補償を判別するピーク判別装置5と、ピーク判別装置5で算出されたγ線ピーク中心測定値とγ線ピーク中心設定値とのずれを調整するゲイン調整量を決定して前記ゲイン調整装置2のゲインを調整するゲイン補償装置6とから構成されている。
前記測定環境補償型放射線モニタ7の放射線検出器1は、検出器電源15及びゲイン調整装置2にそれぞれ接続されており、前記ゲイン調整装置2は多チャンネル波高分析装置3及びゲイン補償装置6にそれぞれ接続されている。
前記多チャンネル波高分析装置3はピーク算出装置4に接続され、ピーク算出装置4はピーク判別装置5に接続され、ピーク判別装置5はゲイン補償装置6に接続されている。
測定環境補償型放射線モニタ7の設置環境として、図1に示したように原子力プラントが挙げられる。前記測定環境補償型放射線モニタ7の設置位置は原子力プラントの原子炉建屋8内の原子炉格納容器9の内部となっている。
原子炉建屋8内の機器には、原子炉圧力容器10を内部に収容した原子炉格納容器9と、蒸気タービン(図示せず)に原子炉圧力容器10で発生した蒸気を供給する主蒸気配管11と、蒸気タービンの復水器で冷却された復水を前記原子炉圧力容器10に供給する給水系配管12と、原子炉圧力容器10に設置されており、原子炉圧力容器10内の冷却材を再循環させるPLR配管14及びこのPLR配管14に設置されて冷却材を循環させるPLRポンプ13がある。
原子力プラントの定検時主要核種及び定格時主要核種は、原子炉建屋8内に存在する配管、機器及び構造物に付着もしくは一次系冷却材中に存在する。
図1に第1実施例の測定環境補償型放射線モニタ7を設置する原子力プラントとして沸騰水型原子炉の構成を示したが、同様の軽水炉である加圧水型原子炉、重水炉、黒鉛炉、高速増殖炉、ガス冷却炉、溶融金属冷却炉、又は溶融塩原子炉にも前記測定環境補償型放射線モニタ7を適用することができる。
図2乃至図4に本実施例の測定環境補償型放射線モニタ7の放射線検出器1で検出した原子炉出力及び原子炉運転状況による放射線のγ線エネルギースペクトルを示す。
図2は原子炉停止時及び定期検査時において放射線検出器1で検出した放射線のγ線エネルギースペクトル17を示す。
図2では検出した放射線のγ線エネルギースペクトル17の一例として、原子炉建屋8及び原子炉建屋8の内部に存在する配管、機器、構造物及び一次系冷却材中に存在するCo−60によるγ線ピーク16を示した。原子炉は停止しているので、定格時主要核種によるγ線エネルギースペクトルは測定できない。
図3は原子炉起動運転時及び原子炉停止運転時において放射線検出器1で検出した放射線のγ線エネルギースペクトル18を示す。図3では検出したγ線エネルギースペクトル18の一例として、定格時主要核種をN−16とし、N−16のγ線ピーク19を示した。
放射線検出器1との相互作用で、電子対生成によるシングルエスケープピーク20及びダブルエスケープピーク21が測定できる。また、Co−60によるγ線ピーク16も示されている。
図3では定検時主要核種及び定格時主要核種のいずれも確認できる領域におけるγ線エネルギースペクトルを示したが、原子炉起動運転時ならば、徐々にN−16の定格時主要核種の強度が高くなり、Co−60の定検時主要核種によるγ線ピークが確認できなくなる。
また原子炉停止運転時ならば、徐々にN−16の定格時主要核種の強度が低くなり、N−16の定格時主要核種によるγ線ピークが確認できなくなる。
図4は原子炉定格運転時において放射線検出器1で検出したγ線エネルギースペクトル22を示す。図4では検出したγ線エネルギースペクトル22の一例として、定格時主要核種をN−16とし、N−16のγ線ピークを示した。電子対生成によるシングルエスケープピーク20及びダブルエスケープピーク21も測定できる。
原子炉定格運転時ではN−16による強度が定検時主要核種による強度と比較して高いため、定検時主要核種によるγ線ピークは確認できない。
図2乃至図4で放射線検出器1で検出した放射線のγ線エネルギースペクトルをそれぞれ示したように、原子炉出力及び原子炉運転状況によって放射線検出器1で測定できるγ線エネルギースペクトル及びγ線ピークは異なる。このため、原子炉出力及び原子炉運転状況に応じた指標核種によってゲイン補償をしなければならない。
図5には、ゲイン補償しない場合の原子炉出力及び原子炉運転状況において放射線検出器1で測定したγ線ピークの変動を示す。原子炉起動運転時及び原子炉停止運転時のγ線エネルギースペクトル18を一点鎖線で、原子炉定格運転時のγ線エネルギースペクトル22を鎖線で、原子炉停止時及び定期検査時のγ線エネルギースペクトル17を実線で夫々示している。
図5は測定したγ線ピークの変動の一例として、温度変動によるCo−60のγ線ピーク16及びN−16のγ線ピーク19の変動を示している。
原子炉起動に伴い放射線検出器1の設置環境の温度は上昇するため、例えば使用する放射線検出器1が温度上昇に伴う負のゲイン増倍率を備えている場合、放射線検出器1の出力レベルが低下し、見かけ上γ線エネルギーが低下する。
そこで、この出力レベルの低下を補償する、つまりゲインを補償するため、原子炉出力及び原子炉運転状況に応じた指標核種を選定し、指標核種のγ線ピーク中心測定値をγ線ピーク中心設定値に調整する。
本実施例の測定環境補償型放射線モニタ7に設置されたゲイン補償装置6における放射線検出器1の出力ゲインを可変に調整する機能について説明する。
図6は指標核種のγ線ピーク変動値とゲイン調整値との関係を示している。ここでγ線ピーク変動値は指標核種のγ線ピーク中心測定値とγ線ピーク中心設定値の差分とし、図6ではX軸に示す。ゲイン調整値はγ線ピーク変動値をほとんどゼロとするゲイン調整量とし、図6ではY軸に示す。
前記ゲイン補償装置6では、図6に示したゲイン補償関数F(X)を用いてγ線ピーク変動値からゲイン調整値を導出する。図6のゲイン補償関数F(X)は、一例として一次関数とした。
この機能はゲイン補償装置6に備えられており、導出したゲイン調整値をゲイン調整装置2へ入力することで、放射線検出器1の出力ゲインを可変に調整してゲイン補償を可能とする。
図7は原子炉運転状況における原子炉出力と、ゲイン補償のための主要核種指標領域を示している。
図7に示したように原子炉停止時及び定期検査時は、原子炉出力が0%であり、この場合は定検時主要核種指標領域23となるため、指標核種は定検時主要核種となる。
原子炉起動運転時は、原子炉出力が上昇していき、原子炉出力上昇途中で定格時主要核種指標領域24に入る。定検時主要核種指標領域23及び定格時主要核種指標領域24が重なる領域が存在するので、この領域の指標核種は定検時主要核種、定格時主要核種のいずれも選択できる。
原子炉出力がさらに上昇すると、定検時主要核種指標領域23を出るので、その際の指標核種は定格時主要核種となる。
原子炉定格運転時では、原子炉定格運転時の指標核種は定格時主要核種となる。なお、原子炉運転中は定検時主要核種も生成されるので、定検時主要核種の強度は高くなっていく。
その後の原子炉停止運転時は、原子炉起動運転時と逆の手順で原子炉出力が下降していくと定検時主要核種指標領域23に入る。定検時主要核種指標領域23及び定格時主要核種指標領域24が重なる領域が存在するので、この領域の指標核種は定検時主要核種と定格時主要核種のいずれも選択できる。
そして再び原子炉停止時及び定期検査時には、定検時主要核種指標領域23であるので、指標核種は定検時主要核種となる。
次に本実施例の測定環境補償型放射線モニタ7のゲイン補償方法について説明する。
図8に本実施例の測定環境補償型放射線モニタ7のゲイン補償方法の処理手順のフローチャートを示す。このゲイン補償方法の処理は測定環境補償型放射線モニタ7に含まれる装置によって実施される。図8に示した処理手順のフローチャートに沿って、本実施例の測定環境補償型放射線モニタ7によるゲイン補償方法を説明する。
図1及び図8において、
測定環境補償型放射線モニタ7の放射線検出器1で放射線の測定を開始する前に、予め、ゲイン補償装置6によって、ゲイン補償に用いるγ線ピークのγ線ピーク中心設定値を設定する(処理手順S1)。
測定環境補償型放射線モニタ7の放射線検出器1で放射線の測定を開始する前に、予め、ゲイン補償装置6によって、ゲイン補償に用いるγ線ピークのγ線ピーク中心設定値を設定する(処理手順S1)。
その後、放射線検出器1で測定した放射線を多チャンネル波高分析装置3に入力させて、任意の所定時間までγ線エネルギースペクトルを形成する(処理手順S2)。
そして所定時間を過ぎた時点で多チャンネル波高分析装置3でのγ線エネルギースペクトルの形成を終了する(処理手順S3)。
次に、ピーク算出装置4によって、取得できたγ線エネルギースペクトル上に存在するγ線ピークを検索する(処理手順S4)。
次に、前記ピーク算出装置4にて、原子炉出力及び原子炉運転状況に応じた指標核種が放射するγ線によるγ線ピーク中心測定値を算出する(処理手順S5)。
次に、ピーク判別装置5によって、事前に設定したγ線ピーク中心設定値と、測定したγ線ピーク中心測定値を比較して、有意なずれがあるか判別する(処理手順S6)。
前記ピーク判別装置5で判別した結果、有意な差があると判別された場合は、ゲイン補償装置6によって、このずれを調整できるゲイン調整量を算出する(処理手順S7)。
そして、ゲイン補償装置6によって算出したゲイン調整量に基づいてゲイン調整装置2を調節して、放射線検出器1の出力ゲインの調整を実施する(処理手順S8)。
処理手順S6にてピーク判別装置5で判別した結果、有意な差がない場合、及び処理手順S8にてゲイン補償装置6による放射線検出器1の出力ゲインの調整を実施した場合、測定を継続するか判別する(処理手順S9)。
そして、放射線検出器1による放射線の測定を継続する場合は、処理手順S2に戻り、それ以外は測定を終了する(処理手順S10)。
本実施例の測定環境補償型放射線モニタ7によって、校正用線源、自然放射性物質、又は光源及び温度情報を用いずに、原子炉出力及び原子炉運転状況などの放射線検出器の設置環境及び測定環境に応じて、放射線検出器のゲイン変動を補償でき、高精度及び高信頼の放射線モニタが実現できる。
また、Si半導体検出器やGe半導体検出器等の半導体検出器だけでなく、安価なシンチレーション検出器でも採用することができるので、コスト低減にも寄与できる。
以上説明したように、本実施例によれば、校正用線源、自然放射性物質、又は光源及び温度情報を用いずに、放射線検出器の温度変動、経年劣化、或いは線量率変動等の変動による検出器動作特性を反映して高精度計測を可能とした原子力プラントで使用される放射線モニタ及び放射線モニタのゲイン補償方法が実現できる。
本発明の第2実施例である測定環境補償型放射線モニタ及びそのゲイン補償方法について図9に基づいて説明する。
本実施例における原子炉建屋内の原子炉格納容器に設置された測定環境補償型放射線モニタの構成は図1に示した第1実施例の測定環境補償型放射線モニタ7と同じ構成であるので、両者に共通した構成の説明は省略し、相違する部分についてのみ説明する。
実施例2の測定環境補償型放射線モニタでは、原子炉停止時及び定期検査時は定検時主要核種を指標核種とし、原子炉起動運転時、原子炉停止運転時及び原子炉定格運転時は定格時主要核種及び定検時主要核種を指標核種とすること以外は実施例1の測定環境補償型放射線モニタ7の場合と同じである。
本実施例の測定環境補償型放射線モニタの放射線検出器1の設置環境及び測定環境によって、検出できる定検時主要核種及び定格時主要核種の強度は異なる。これは原子炉建屋8内の配管、機器、構造物の幾何配置及びその構造に依存する。
このために、図9のように原子炉定格運転時であっても、多チャンネル波高分析装置3で取得できるγ線エネルギースペクトル上に定検時主要核種によるγ線ピークが測定できる場合がある。
そこで、この条件を満たす場合に、本実施例の測定環境補償型放射線モニタにおいては、原子炉停止時及び定期検査時は定検時主要核種を指標核種とし、原子炉起動運転時、原子炉停止運転時及び原子炉定格運転時は定格時主要核種及び定検時主要核種を指標核種とすることで、その設置環境及び測定環境の放射線環境に応じたゲインの補償を可能にしている。
本実施例の測定環境補償型放射線モニタのゲイン補償方法は図8に示した第1実施例の測定環境補償型放射線モニタ7におけるゲイン補償方法の処理手順のフローチャートと同じであるので、その説明は省略する。
以上説明したように、本実施例によれば、校正用線源、自然放射性物質、又は光源及び温度情報を用いずに、放射線検出器の温度変動、経年劣化、或いは線量率変動等の変動による検出器動作特性を反映して高精度計測を可能とした原子力プラントで使用される放射線モニタ及び放射線モニタのゲイン補償方法が実現できる。
本発明の第3実施例である測定環境補償型放射線モニタ及びそのゲイン補償方法について図10に基づいて説明する。
本実施例における原子炉建屋内の原子炉格納容器に設置された測定環境補償型放射線モニタの構成は図1に示した第1実施例の測定環境補償型放射線モニタ7と同じ構成であるので、両者に共通した構成の説明は省略し、相違する部分についてのみ説明する。
実施例3の測定環境補償型放射線モニタでは、原子炉出力低下時のゲイン補償のための指標核種を定格時主要核種及び定検時主要核種を組合せることで、放射線モニタのゲインを補償すること以外は実施例1及び実施例2の測定環境補償型放射線モニタ7の場合と同じである。
原子炉定格運転中には、燃料漏えいを検査するためのパワーサプレッションテスト(PST)、原子炉内構造物の応力腐食割れ(SCC)を抑制するための水素注入及び貴金属注入(NMCA)等が実施されることがある。
これらの処理が実施された場合に、放射線検出器1の設置位置によっては炉出力低下に伴う定格時主要核種の強度の低下が起こることがある。この場合に、本実施例の測定環境補償型放射線モニタにおいては、ゲイン補償装置6によって、予め定格時主要核種と定検時主要核種との組合せを設定しておき、原子炉出力低下時のゲイン補償のための指標核種を図10に示すように定格時主要核種及び定検時主要核種を組合せることで、放射線モニタのゲインを補償することができる。
定格時主要核種及び定検時主要核種の組合せは、ピーク算出装置4及びピーク判別装置5の演算を行ない、ゲイン補償装置6を介してゲイン調整装置2を調節することで行なわれる。
また、図11に示すように、放射線検出器1の設置環境及び測定環境によっては原子炉出力低下時のゲイン補償のための指標核種を変更する必要が無い場合もある。
以上説明したように、本実施例によれば、校正用線源、自然放射性物質、又は光源及び温度情報を用いずに、放射線検出器の温度変動、経年劣化、或いは線量率変動等の変動による検出器動作特性を反映して高精度計測を可能とした原子力プラントで使用される放射線モニタ及び放射線モニタのゲイン補償方法が実現できる。
図12は、本発明の第4実施例である原子炉建屋内の原子炉格納容器に設置された測定環境補償型放射線モニタ7の基本構成を示している。
第4実施例の測定環境補償型放射線モニタ28は、原子炉建屋8の内部に格納された原子炉格納容器9の内部に設置され、2個の設置環境の放射線を測定する放射線検出器1a、1bと、原子炉格納容器9の外部にそれぞれ設置されており、前記放射線検出器1a、1bに電力をそれぞれ供給する検出器電源15a、15bと、放射線検出器1a、1bの出力ゲインを可変に調整するゲイン調整装置2a、2bと、ゲイン調整装置2a、2bの出力からγ線エネルギースペクトルを算出する多チャンネル波高分析装置3a、3bと、前記多チャンネル波高分析装置3a、3bで算出したγ線エネルギースペクトル上のγ線ピークのγ線ピーク中心測定値を算出するピーク算出装置4a、4bと、ピーク算出装置4a、4bで算出した前記γ線ピーク中心測定値とγ線ピーク中心設定値とのずれを算出してゲイン補償を判別するピーク判別装置5a、5bと、ピーク判別装置5a、5bで算出されたγ線ピーク中心測定値とγ線ピーク中心設定値とのずれを調整するゲイン調整量を決定して前記ゲイン調整装置2a、2bのゲインを調整するゲイン補償装置6a、6bとを設置している。
複数の放射線検出器1a、1bが相関を有する一般的な放射線計測方法として同時計数法、逆同時計数法によって放射線を計測する場合、測定環境補償型放射線モニタ28に、更に前記ゲイン調整装置2a、2bの出力をそれぞれ分岐して取得した前記複数個の放射線検出器1a、1bの出力からゲート信号を出力するゲート25と、前記ゲート25から出力したゲート信号によるγ線エネルギースペクトルを形成する多チャンネル波高分析装置27と、前記ゲート25のゲート信号を計数するスケーラー26とを備えている。
上記構成の測定環境補償型放射線モニタ28によれば、複数個設置されたいずれの放射線検出器1a、1bに対してもゲインを補償して、各々の放射線検出器1a、1bの出力の相関を維持することで、ゲート信号によるγ線エネルギースペクトルを出力する放射線検出器1a、1bの測定精度を維持することが可能となる。
実施例4の測定環境補償型放射線モニタ28では、N個(N≧2)以上の放射線検出器1a、1b、・・1nを用いていずれかの放射線検出器1aの出力を他の放射線検出器1bに対するゲート信号として取扱い、ゲート25からの信号によって多チャンネル波高分析装置27で処理されたγ線エネルギースペクトルを取得する放射線モニタ28の場合に、いずれの放射線検出器1a、1bに対してもゲインを補償し、各々の放射線検出器1a、1bの出力の相関を維持するように構成していること以外は、実施例1、実施例2、実施例3の測定環境補償型放射線モニタと同様である。
N個(N≧2)以上の放射線検出器1a、1bによって高精度の測定を実施する放射線モニタの場合、その多くが各々の出力に対して相関を有しているため、各々のゲインの変動を抑制して高精度測定を維持する必要がある。
複数の放射線検出器1a、1bが相関を有する放射線計測方法として、同時計数法、逆同時計数法等を行う場合、複数の放射線検出器1a、1bで検出された信号はゲイン調整装置2a、2bを経由してゲート25に入力され、スケーラ26でγ線の数をカウントされると共に、ゲート25から多チャンネル波高分析装置27に入力して処理される。
そこで、本実施例の測定環境補償型放射線モニタ28においては、複数の各々の放射線検出器1a、1bでのγ線エネルギースペクトルを各々の放射線検出器1a、1bに対応した多チャンネル波高分析装置3a、3bにてγ線ピークを算出し、原子炉出力及び原子炉運転状況に応じた指標核種によってゲインを補償することで、ゲート信号によって処理されたγ線エネルギースペクトルを処理することなく、ゲイン補償することが可能であり、高精度の測定が維持できる。
本実施例の測定環境補償型放射線モニタ28のゲイン補償方法は図8に示した第1実施例の測定環境補償型放射線モニタ7におけるゲイン補償方法の処理手順のフローチャートと基本的には同じであるので、その説明は省略する。
以上説明したように、本実施例によれば、校正用線源、自然放射性物質、又は光源及び温度情報を用いずに、放射線検出器の温度変動、経年劣化、或いは線量率変動等の変動による検出器動作特性を反映して高精度計測を可能とした原子力プラントで使用される放射線モニタ及び放射線モニタのゲイン補償方法が実現できる。
本発明の第5実施例である測定環境補償型放射線モニタ及びそのゲイン補償方法について説明する。
本実施例である原子炉建屋内の原子炉格納容器に設置された測定環境補償型放射線モニタにおいては、γ線ピークの代わりに、放射線検出器1と放射線検出器1に入射するγ線との相互作用のコンプトン効果によってγ線エネルギースペクトル上に形成されるコンプトン端を用いてゲイン補償すること以外は、第1実施例乃至第4実施例に示した測定環境補償型放射線モニタ7と同じである。
有機シンチレータ等の密度が低く、光電効果によるγ線ピークの形成に時間がかかる放射線検出器を用いる場合に、本実施例の測定環境補償型放射線モニタにおいては、γ線ピーク中心測定値及びγ線ピーク中心設定値を、コンプトン端測定値及びコンプトン端設定値とすることで、ゲイン補償することが可能であり、高精度の測定を維持できる。
本発明の第6実施例である測定環境補償型放射線モニタ及びそのゲイン補償方法について説明する。
本実施例である原子炉建屋内の原子炉格納容器に設置された測定環境補償型放射線モニタにおいては、多チャンネル波高分析装置3で取得したγ線エネルギースペクトルのγ線ピーク中心測定値を用いて、原子炉出力及び原子炉運転状況に応じたγ線エネルギースペクトルのエネルギー校正を実施すること以外は、第1実施例乃至第5実施例に示した測定環境補償型放射線モニタ7と同じである。
一般的にγ線エネルギースペクトルのエネルギー校正は、取得した複数のγ線ピーク中心測定値を一次関数等でフィッティングし、校正曲線を導出することで実施する。
定検時主要核種が放射するγ線エネルギーは、代表的な定格時主要核種であるN−16が放射するγ線エネルギーと比較して低いため、高エネルギー領域でのエネルギー校正の誤差が大きくなる場合がある。
この場合に、本実施例の測定環境補償型放射線モニタにおいては、原子炉出力及び原子炉運転状況に応じた指標核種を用いて校正曲線を導出することで、高精度のエネルギー校正が可能となる。
上記した第5実施例、並びに第6実施例の測定環境補償型放射線モニタで説明したように、これらの実施例においても、校正用線源、自然放射性物質、又は光源及び温度情報を用いずに、放射線検出器の温度変動、経年劣化、或いは線量率変動等の変動による検出器動作特性を反映して高精度計測を可能とした原子力プラントで使用される放射線モニタ及び放射線モニタのゲイン補償方法が実現できる。
本発明は原子力プラントで使用される放射線モニタの放射線検出器のゲイン変動を補償する測定環境補償型放射線モニタ及びそのゲイン補償方法に適用可能である。
1、1a、1b:放射線検出器、2、2a、2b:ゲイン調整装置、3、3a、3b:多チャンネル波高分析装置、4、4a、4b:ピーク算出装置、5、5a、5b:ピーク判別装置、6、6a、6b:ゲイン補償装置、7:測定環境補償型放射線モニタ、8:原子炉建屋、9:原子炉格納容器、10:原子炉圧力容器、11:主蒸気配管、12:給水系配管、13:PLRポンプ、14:PLR配管、15:検出器電源、16:Co−60のγ線ピーク、17:原子炉停止時及び定期検査時のγ線エネルギースペクトル、18:原子炉起動運転時及び原子炉停止運転時のγ線エネルギースペクトル、19:N−16のγ線ピーク、20:シングルエスケープピーク、21:ダブルエスケープピーク、22:原子炉定格運転時のガンマ線エネルギースペクトル、23:定検時主要核種指標領域、24:定格時主要核種指標領域、25:ゲート、26:スケーラー、27:多チャンネル波高分析装置、28:測定環境補償型放射線モニタ。
Claims (9)
- 原子力プラントの原子炉建屋内で使用する放射線モニタは、原子炉建屋内に設置されて設置環境の放射線を測定する放射線検出器と、前記放射線検出器の検出器電源と、前記放射線検出器の出力ゲインを可変に調整できるゲイン調整装置と、前記ゲイン調整装置の出力からγ線エネルギースペクトルを算出する多チャンネル波高分析装置と、前記多チャンネル波高分析装置で算出したγ線エネルギースペクトル上のγ線ピークのγ線ピーク中心測定値を算出するピーク算出装置と、前記ピーク算出装置で算出した前記γ線ピーク中心測定値とγ線ピーク中心設定値とのずれを算出しゲイン補償を判別するピーク判別装置と、前記ピーク判別装置で算出したγ線ピーク中心設定値とのずれを調整するゲイン調整量を決定して前記ゲイン調整装置のゲインを調整するゲイン補償装置とを備え、
前記放射線検出器のゲインを補償して放射線検出器の測定精度を維持することを特徴とする放射線モニタ。 - 原子力プラントの原子炉建屋内で使用する放射線モニタに、原子炉建屋内に設置されて複数の設置環境の放射線を測定する複数の放射線検出器と、前記放射線検出器の複数の検出器電源と、前記放射線検出器の出力ゲインを可変に調整できる複数のゲイン調整装置と、前記ゲイン調整装置の出力からγ線エネルギースペクトルを算出する複数の多チャンネル波高分析装置と、前記多チャンネル波高分析装置で算出したγ線エネルギースペクトル上のγ線ピークのγ線ピーク中心測定値を算出する複数のピーク算出装置と、前記ピーク算出装置で算出した前記γ線ピーク中心測定値とγ線ピーク中心設定値とのずれを算出しゲイン補償を判別する複数のピーク判別装置と、前記ピーク判別装置で算出したγ線ピーク中心設定値とのずれを調整するゲイン調整量を決定し前記ゲイン調整装置のゲインを調整する複数のゲイン補償装置とを備え、
前記ゲイン調整装置の出力を分岐して取得した前記N個の放射線検出器の出力からゲート信号を出力するゲートと、前記ゲートから出力した前記ゲート信号によるγ線エネルギースペクトルを形成する多チャンネル波高分析装置と、前記ゲートのゲート信号を計数するスケーラーとを備え、
複数設置したいずれの放射線検出器に対してもゲインを補償して(各々の放射線検出器の出力の相関を維持することで、ゲート信号によるγ線エネルギースペクトルの測定精度を維持するようにしたことを特徴とする放射線モニタ。 - 原子力プラントの原子炉建屋内で使用され、設置環境の放射線を測定する放射線検出器と、前記放射線検出器の検出器電源と、前記放射線検出器の出力ゲインを可変に調整できるゲイン調整装置と、前記ゲイン調整装置の出力からγ線エネルギースペクトルを算出する多チャンネル波高分析装置と、前記γ線エネルギースペクトル上のγ線ピークのγ線ピーク中心測定値を算出するピーク算出装置と、前記ピーク算出装置で算出した前記γ線ピーク中心測定値とγ線ピーク中心設定値とのずれを算出し、ゲイン補償を判別するピーク判別装置と、前記γ線ピーク中心設定値とのずれを調整するゲイン調整量を決定して前記ゲイン調整装置のゲインを調整するゲイン補償装置とを備えた放射線モニタのゲイン補償方法であって、
原子炉停止時及び定期検査時には、その原子炉出力及び原子炉運転状況で確認できる特有の放射性核種(以下、定検時主要核種とする)をゲイン補償のための指標核種とし、
原子炉定格運転時の指標核種には、その原子炉出力及び原子炉運転状況で確認できる特有の放射性核種(以下、定格時主要核種とする)をゲイン補償のための指標核種とし、
原子炉起動運転時及び停止運転時に、原子炉出力及び原子炉運転状況に応じて、定検時主要核種と定格時主要核種とを指標核種として原子炉出力及び原子炉運転状況に応じたそれぞれの指標核種を用いて前記放射線検出器のゲインを補償することを特徴とする放射線モニタのゲイン補償方法。 - 原子力プラントの原子炉建屋内で使用され、複数の設置環境の放射線をそれぞれ測定する複数の放射線検出器と、前記放射線検出器の複数の検出器電源と、前記放射線検出器の出力ゲインを可変に調整できる複数のゲイン調整装置と、前記ゲイン調整装置の出力からγ線エネルギースペクトルを算出する複数の多チャンネル波高分析装置と、前記多チャンネル波高分析装置で算出したγ線エネルギースペクトル上のγ線ピークのγ線ピーク中心測定値を算出する複数のピーク算出装置と、前記ピーク算出装置で算出した前記γ線ピーク中心測定値とγ線ピーク中心設定値とのずれを算出しゲイン補償を判別する複数のピーク判別装置と、前記ピーク判別装置で算出したγ線ピーク中心設定値とのずれを調整するゲイン調整量を決定して前記ゲイン調整装置のゲインを調整する複数のゲイン補償装置とを備え、
更に前記ゲイン調整装置の出力を分岐して取得した前記N個の放射線検出器の出力からゲート信号を出力するゲートと、前記ゲートから出力した前記ゲート信号によるγ線エネルギースペクトルを形成する多チャンネル波高分析装置と、前記ゲートのゲート信号を計数するスケーラーとを備えた放射線モニタのゲイン補償方法であって、
原子炉停止時及び定期検査時には、その原子炉出力及び原子炉運転状況で確認できる特有の放射性核種(以下、定検時主要核種とする)をゲイン補償のための指標核種とし、
原子炉定格運転時の指標核種には、その原子炉出力及び原子炉運転状況で確認できる特有の放射性核種(以下、定格時主要核種とする)をゲイン補償のための指標核種とし、
原子炉起動運転時及び停止運転時に、原子炉出力及び原子炉運転状況に応じて、定検時主要核種と定格時主要核種とを指標核種として、原子炉出力及び原子炉運転状況に応じたそれぞれの指標核種を用いて前記放射線検出器のゲインを補償し、各々の放射線検出器の出力の相関を維持することでゲート信号によるγ線エネルギースペクトルの測定精度を維持することを特徴とする放射線モニタのゲイン補償方法。 - 請求項3又は請求項4に記載された放射線モニタのゲイン補償方法において、
原子炉停止時及び定期検査時は定検時主要核種を指標核種とし、原子炉起動運転時、原子炉停止運転時及び原子炉定格運転時は定格時主要核種及び定検時主要核種を指標核種とすることを特徴とする放射線モニタのゲイン補償方法。 - 請求項3又は請求項4に記載された放射線モニタのゲイン補償方法において、
原子炉出力低下時のゲイン補償のための指標核種を、定格時主要核種及び定検時主要核種を組合せることで、放射線検出器のゲインを補償することを特徴とする放射線モニタのゲイン補償方法。
- 請求項3又は請求項4に記載された放射線モニタのゲイン補償方法において、
放射線検出器と放射線検出器に入射するγ線との相互作用のコンプトン効果によってγ線エネルギースペクトル上に形成されるコンプトン端を用いてゲイン補償することを特徴とする放射線モニタのゲイン補償方法。 - 請求項3又は請求項4に記載された放射線モニタのゲイン補償方法において、
多チャンネル波高分析装置で取得したγ線エネルギースペクトルのγ線ピーク中心測定値を用いて、原子炉出力及び原子炉運転状況に応じたγ線エネルギースペクトルのエネルギー校正を実施することを特徴とする放射線モニタのゲイン補償方法。 - 請求項3又は請求項4に記載された放射線モニタのゲイン補償方法において、
前記定検時主要核種をCo−60、Co−58、Mn−54、Fe−59、Eu−152、Eu−154、Sc−46、Zn−65、Cs−134、Ta−182、Rh−106、Nb−94、Cr−51のいずれかとし、前記定格時主要核種をN−16、N−13、F−18、O−19、Mn−56のいずれかとすることを特徴とする放射線モニタのゲイン補償方法。
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JP2017049012A (ja) * | 2015-08-31 | 2017-03-09 | 株式会社日立製作所 | 原子炉計装システム及び原子炉 |
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