JP2011530906A - 補聴器構成要素をコーティングする方法,およびコートされた構成要素を備える補聴器 - Google Patents

補聴器構成要素をコーティングする方法,およびコートされた構成要素を備える補聴器 Download PDF

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オルセン・ヨアン・メイナ
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ハウグスホイ・ケネト・ベ
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Abstract

【構成】補聴器のコーティングのための方法であって,上記方法は腐食反応生成物を創出しない吸着層の堆積を含む。上記方法は,気相成長を用いて上記補聴器構成要素の表面に有機金属化合物を与え,それを酸化金属に変換する反応を導入し,次に上記表面にシラン分子を与え,与えられたシラン分子と上記酸化金属の間の反応を誘導する。この発明はまた,酸化アルミニウムの層を備える疎水性コーティングを備えた補聴器用の構成要素を備える補聴器,および補聴器構成要素のコーティングに関する。上記コーティングは前駆物質の気相成長のためのシステム(701)において生成される。

Description

この発明は,補聴器構成要素(コンポーネント)をコーティングする方法に関する。この発明はさらに,コートされた(coated)構成要素を備える補聴器に関する。より詳細には,この発明は,金属酸化層とこれに続くシラン層の気相成長を含むプロセスにおいてコーティングが生成される,補聴器構成要素をコーティングする方法に関する。この発明はまた,上記コーティングを用いてコートされた補聴器構成要素,およびそのような構成要素を備える補聴器に関する。さらにこの発明は補聴器構成要素のためのコーティングに関する。
一般に補聴器は,ハウジング,内部電気回路,トランスデューサ,音導管,イヤピース,スイッチ,ボタン,コネクタ,ならびに耳垢ガード,機械的アダプタおよびFMユニットといった様々なアクセサリなどの多様な構成要素を含む。より詳細には,上記ハウジングはシェル(複数)から作られ,さらに電池蓋,電池室およびマイクロホン保護グリッド(protective microphone grids)を備える。内部電気回路およびトランスデューサは,接続シールとともに弾性サスペンションをもたらすスリーブ状ガスケットによって少なくとも部分的にカバーされ,トランスデューサはさらに音響経路中に追加的に保護スクリーンを含むこともできる。
耳穴形(In-the-Ear)(ITE)および完全耳穴形(completely-in-canal)(CIC)補聴器は,一般にユーザの外耳道の関連部分に解剖学的にフィットするシェルを備える。上記シェル内には,先端,すなわち鼓膜近くの外耳道内に位置するように適合されているシェルの端,に配置される音響出力ポートに通じるレシーバが配置される。周囲に向かって方向付けられることを意図する上記シェルの末端,すなわち反対側の端は,電線によって上記レシーバに接続されるフェースプレート・サブアセンブリによって閉じられる。あるデザインでは,上記フェースプレート・サブアセンブリに,マイクロホン,電子回路,電池入れおよびヒンジ蓋が組込まれる。マイクロホンはグリッドによってカバー可能なポートを通じて外部と通じる。
ITE補聴器は補聴器のすべてのパーツを統合したイヤピースとみなすことができるが,他方耳掛け形(Behind-The-Ear)(BTE)補聴器はユーザの耳介の上に置かれるようになっているハウジング,およびユーザの外耳道内に挿入されるようになっており所望の音響出力を外耳道内に伝えるイヤピースを備える。上記イヤピースは音導管によって上記BTEハウジングに接続され,または電線によって上記レシーバを収容するものもある。いずれも場合も上記音出力を伝えるための出力ポートを持つ。
通常の使用時において,補聴器は,洋服,湿気,汗,耳垢,菌類,バクテリア,埃および水のような環境要因(environmental factors)にさらされる。これらの要因のいくつかは腐食作用を持つことがあり,その他望まれない生物膜(biofilm)ないし不規則な表面緑青(irregular surface patina)の発生の引起こすことがある。腐食については耐久性のある材料を選択することで制御できることもある。しかしながら環境要因は時間が経過するにつれて見苦しい外見を引き起こすことがある。
補聴器の表面にコーティングを施すことが望ましい。疎水性コーティングを行うことによって湿気に対する抗力を促進し,これによって補聴器電子回路を保護することができる。キズ防止コーティングを行うことによって補聴器の外観を維持することもでき,または何らかの他の形態のコーディングを行うこともできる。
WO2008/025355には,耳垢ガードとして機能する補聴器用フィルタが記載されている。このフィルタは,表面水酸基群(superficial hydroxyl groups)を導入し,その後シラン化合物を利用して気相法においてコーティングすることによって,フィルタ要素の表面を活性化する一時的プラズマ処理(initial plasma treatment)を伴うコーティング・プロセスにおいて処理することができる。外面を疎水にするために,ペルフルオロアルキルシラン(perfluoroalkylsilanes)またはアルキルシラン(alkylsilanes)を用いることができる。プラズマ処理は,シランコーティングの前に吸着層(adhesion layer)が与えられることを必要とする非金属のポリメリック(重合)基板(non-metallic, polymeric substrates)に特に重要である。上記基板はさらに,あらゆるコーティングの前にマイクロ(微細)構造化される(micro-structured)ことができ,コートされたフィルタには最終的に超疎水性表面(a superhydrophobic surface)がもたらされる。
PCT/DK2007/000002は,プラズマ処理,そしてそれに続く気相法によるペルフルオロアルキルシランまたはアルキルシランの自己組織化単分子膜(self-assembled monolayer)の付着を伴うプロセスにおいて,表面が疎水性または超疎水性に作られた補聴器用構成要素を開示している。上記表面はシラン・コーティングの前にマイクロ構造化され,超疎水性をもたらすために,マイクロ構造化のステップは上記コーティングの前に必要とされる。
WO2007/054649には,超疎水または超親水コーティングを有する製品が記載されている。この製品は,気相法を用いて,ポリマーまたはガラスといったナノメータ・スケールの厚さの中間層を基板上に一時的に供給することによって作られる。その後,上記中間層にはナノスケールの粗面(roughness)が与えられ,その後に超疎水性のような所望の物理的特性をもたらすための二番目の層がもたらされる。これらの超疎水性コーティングは,たとえばガラス上の水の凝縮を妨げるために,または液体について表面を非常に滑りやすくするために使用することができる。一例では,いわゆるプラズマ拡張化学気相法を用いて,表面にシランガスを堆積することによって,50−300nm厚のシリコン膜をポリメチル・メタクリレート(PMMA)基板上に作成することができる。この膜は次にプラズマ処理にさらされ,表面上にナノスケールのエングレービング(彫り物)が作成され,その後気相成長ステップにおいてこの粗面化表面にジメチル・テトラシロキサンが与えられる。上記製造される製品には次に,基板を超疎水にする表面を持つ連続膜(continuous film)が与えられなければならない。上記方法は,熱可塑性ポリマーのような熱の物理変化を起こしやすい材料と,より安定した基板の両方の役に立つと言われている。しかしながら,基板への中間シリコン層の適用を含む化学的性質を考慮すると,この方法が十分な耐久性のコーティングをもたらすかどうかは不明である。
US2005/0186731は,シリコン・ウエハなどの基板上の酸化層の構成(組成)を記載する。特に,酸化アルミニウムの組成をもたらすトリメチル・アルミニウム(TMA)のような金属有機前駆物質(metalloorganic precursor)から酸化単分子層(oxide monolayer)を堆積するために,原子層成長法(atomic layer deposition)(ALD)が用いられている。反応を生じさせるために,US2005/0186731の方法では,金属有機前駆物質とともに高温度でオゾンガスを使用することに依存している。US2005/0186731の方法は集積回路のための半導体の製造における使用に適しており,作成される表面の疎水性ないし親水性に関する何らの情報も提供していない。
US2004/0221798は,ALDによって基板上に薄膜を成長するための方法に関する。この方法では,金属または半導体要素のガス状化合物が堆積され,二番目のガス反応剤が反応する。反応剤の選択に応じて,形成される薄膜は,金属,酸化,または他の金属の化合物となる。一例は,TMA成長による酸化アルミニウムの組成であり,その後これに水が反応する。ここに記載されている方法も多くのコーティング・サイクルに使用することができるが,そのような多層コーティングの正確な本質が記載されていない。US2004/0221798の方法は,作成されたコーティングの電気特性に重要性があるように見えるので半導体部品の製造における使用を意図しているように見えるが,明らかに特定の分野に限定されてはいない。コーティングは金属基板または酸化金属上に形成することができると言及されているが,この文書もまた,基板の正確な構成を特定してはいない。電気特性が強調されており,コーティングの疎水性,親水性または機械特性などの他の物理的性質にはついては言及されていず,さらに形成されたコーティングが最終製品の耐久性にどのような効果をもたらすかついて不明確である。
WO2005/121397は,分子気相成長法(molecular vapour deposition)を名称とする,気相成長原理を使用した多層コーティングを作成する方法に関するもので,層厚,機械的および表面性質を制御することを目的とするとともに,ナノメートル・スケールの機能性(functionality)を提供するものである。与えられた基板に酸化ベースの層(oxide-based layer)を適用し,続いて酸化ベース膜の上に有機ベース層(organic-based layer)を適用することによって親水性状態の基板を疎水性基板に変換することが可能であることが見つかっている。上記有機ベース膜は,酸化物ベース膜と反応しない有機分子の端(end)における疎水性表面の官能基(hydrophobic surface functional groups)を提供する。プロセス・パラメータを制御することによって,基板表面にわたる膜被覆範囲の密度および構造的組成を制御でき,非常に滑らかな膜の組成が可能になることがさらに見つかっている。中間酸化層を生成するために,WO2005/121397の方法では,前駆物質として用いられる,クロロシラン,クロロシロキサン,フルオロシラン,およびフルオロシロキサンのようなハロゲン化シランに依存している。反応中,これらの化学物質は,副生成物としてハロゲン水素化物,たとえばHCIを発生する。記載されている生成される多層コーティングは,疎水性表面を作成するための最終コーティング・ステップにおいて,様々なペルフルオロシランまたはアルキルシランを用いることによって表面機能性を提供する。これらの化合物は,典型的には,ジまたはトリクロロシアンまたはメトキシシランに対応する形態である。もたらされる表面機能性も,3アミノプロピル成分または3グリシドキシ成分のような成分を備える反応性質のものとなる。WO2005/121397の方法は,ステンレス・スチール,ガラス,ポリスチレン,アクリル,またはシリコン・ウエハなどの異なる種類の基板に適する。しかしながら,典型的には,使用されるクロロシアンの反応はコーティングの中で副生成物として少量のHCIを産出することを考慮すると,実行される反応がHCIの腐食性性質のために基板に有害であることは明確であろう。
このような背景に基づいて,この発明は,改良された吸着および機械的性質を有するコーティングを提供し,腐食性副生成物の組成(formation)に関する問題および他の問題を克服することを目的とする。
上記の目的は,一般に腐食性反応物質の組成がないプロセス中で生成されるコーティングによって達成される。さらに,コーティングの吸着性能および塗料または金属層の耐久性が向上される。
この発明は,
a)補聴器構成要素を用意し,
b)気相成長法を用いて上記補聴器構成要素の表面に有機金属化合物を与え,
c)与えられた有機金属化合物を酸化金属(金属酸化物)(metal oxide)に変換することを伴う反応を誘導し,
d)気相成長法を用いて上記補聴器構成要素の表面上の上記酸化金属にシラン分子を与え,
e)与えられたシラン分子と上記酸化金属との間の反応を誘導して,上記シラン分子と上記酸化金属との間の共有結合を形成し,および/または隣接する与えられたシラン分子(複数)(neighbouring applied silane molecules)同士を共有結合する,
補聴器構成要素をコーティングする方法を提供する。
上記補聴器構成要素は補聴器製造に用いられるいかなる構成要素であってもよく,いくつかの構成要素のアセンブリであってもよい。有機金属化合物は従来技術において知られており,好ましい実施例において上記有機金属化合物はトリメチル・アルミニウム(TMAまたはAl(CH)である。あらゆる気相成長法が上記補聴器構成要素の表面への上記有機金属化合物の供給に適するが,上記有機金属化合物は好ましくは分子蒸着法(molecular vapour deposition)および/または原子層堆積法(atomic layer deposition)を用いて供給される。気相成長中,金属有機化合物は典型的には0.01〜10Torrの圧力で与えられるが,ある適用について上記圧力は好ましくは0.01Torrよりも低くてもよい。適用温度は周囲温度から約100度まであるか,または基板および堆積された化合物の性質によってはさらに高くてもよい。適用時間は一般には約1分未満,典型的には0.5〜10秒とされよう。
各ステップにおいて,上記有機金属化合物または上記シラン分子を気相成長すると,上記化合物または分子は上記表面に物理的に吸着する。上記吸着は好ましくは単層の形態をとる。単層の組成の後,吸着された化合物または分子にかかわる反応が引起こされるように,状態(the conditions)が変更されることもある。あるいは,反応を引起こす状態への変化を必要としない化合物または分子が吸着されることもあり,この場合には反応が自然に発生するということができる。反応の誘導は,吸着された対象物(the absorbed entities)に反応する化学物質の適用によって開始させることができ,これにより,吸着対象物と上記表面上の原子との間,および/または隣接する吸着された対象物同士の間の共有結合の組成が生じる。上記有機金属化合物がTMAである場合,上記反応は水分子の適用によって上記表面に生じさせることができるが,他の化合物,たとえば,過酸化水素(H),酸素(O),オゾン(O)も使用することもできる。水分子による誘導が好ましく,好ましくは水分子は気相(a gaseous phase)から適用される。
一実施態様では,上記ステップb)およびc)をそれぞれ有機金属化合物に適用して酸化金属を形成するための反応の誘導が繰返される。これらのステップを繰返すことによって,酸化金属の層を連続して造り,その結果所望の厚さの酸化金属層を得ることができる。好ましい実施例では上記層の厚さは2〜20nmである。より好ましい実施例では上記層の厚さは5〜10nmである。
上記ステップにおいて与えられる上記有機金属化合物は同一である必要はなく,レイヤリングはあらゆる所望のパターンにも従うことができる。たとえば,2つの異なる金属に基づく化合物(複数)を用いて,金属の酸化物(the oxides of the metals)の間に同一または異なる厚さの層を交互に作り上げることができる。上記有機金属化合物は,最終的な酸化金属のコーティングが,酸化アルミニウムおよび酸化シリコンの層(複数)を含むことになるように選択することができる。酸化アルミニウムおよび酸化シリコンの層は同一の厚さである必要はなく,この発明はさらに特定数の層に特に制限されるものではない。この発明の範囲には異なる2以上の金属を含む酸化金属の層を構築することも含まれる。TMAおよびシランに加えて酸化チタニウム層を生成するために,関連する有機金属化合物が,酸化亜鉛層またはチタン・アルコキシド(Ti(OR))を生成するためのジエチル亜鉛であってもよい。
好ましくは気相成長法を用いて1,2ビズ(トリクロロシリル)エタンを補聴器構成要素の表面に与え,与えられた1,2ビズ(トリクロロシリル)エタンを酸化シリコンに変換することを伴う反応(reaction)を誘導することによって,酸化シリコンの層は形成される。1,2ビズ(トリクロロシリル)エタンは,典型的にはステップc)において形成される酸化金属表面に与えられて酸化シリコンへの変換が続き,ステップb)およびc)を繰返すことによって酸化金属の別の層が形成される。酸化金属の多層にかかわる多層レイヤリング・プロセスでは,そのようないくつかの酸化シリコン層を酸化金属層の間に形成することもできる。
補聴器構成要素のコーティングは,好ましくは最終コーティングを疎水性または超疎水性にさせる性質のものとされる。これは,ペルフルオロアルキル成分(perfluoroalkyl moiety)またはフルオロアルキル成分(fluoroalkyl moiety)を含むシラン分子(silane molecule)を用いることによって得ることができる。好ましい実施例では,シラン分子を含む上記ペルフルオロ−は,ペルフルオロデシル・トリクロロシラン(FDTS)である。他の関連するフルオロアルキル−またはペルフルオロアルキル化合物は,たとえば,ペルフルオロオクチル・トリクロロシラン(FOTS)または様々なフッ素原子(fluorine atoms)を可能な限り最大まで誘導するオクチル−またはデシル基を備えるトリクロロシランであってもよい。疎水性または超疎水性は,フッ素原子を持たずアルキル鎖を持つシラン分子を用いて設けることもできる。
上記シラン分子は気相成長法を用いて供給してもよい。シラン分子の適用のための好ましい方法は気相成長法および原子層堆積法である。
有機金属化合物の適用および酸化金属の組成の前に,上記補聴器構成要素に対して,その表面をマイクロ(微細)構造化する処理を行ってもよい。すなわち,この発明のプロセスはさらに,上記有機金属化合物を供給する前に,上記補聴器構成要素の外表面をマイクロ構造化するステップを含む。上記表面をマイクロ構造化するために適用されるあらゆる可能な手順がこの発明に関連する。COレーザ,エキシマ・レーザ,ダイオード・レーザ,ファイバ・レーザ,Nd:YAGのような固体レーザ,ピコ秒レーザ,およびフェムト秒レーザのようなレーザを用いた上記表面のレーザ・プロセッシングが特に関連する。他のプロセス,たとえば微細注入成形,またはマイクロ/ナノ電子回路またはマイクロ/ナノ電気化学システムの製作に用いられるもの,さらには他のエッチングまたは電気化学プロセスも適用することができる。
補聴器用構成要素には,上記コーティングを適用する前に,それぞれの最大断面寸法が200μmよりも小さい複数の貫通孔(through-going pores)を設けることができる。上記孔は典型的には100〜200μmの範囲の断面寸法を有するが,他のサイズも適用可能である。すなわち,この発明の方法は,補聴器構成要素に孔を開けて多数の孔を有するものとするステップも含む。この穿孔はなんらかの適切な方法を用いて形成することができ,たとえば,上記構成要素または構成要素基板を通る孔をスタンピングすることを含む。COレーザ,エキシマ・レーザ,ダイオード・レーザ,ファイバ・レーザ,Nd:YAGのような固体レーザ,ピコ秒レーザ,およびフェムト秒レーザのようなレーザを用いたレーザ・アブレーション(laser ablation)を使用して形成することもできる。基板の微細注入成形も同様に適当であろう。
上記補聴器構成要素の表面の性質に応じて,上記有機金属化合物の適用の前に,酸素プラズマを用いた処理を与えるのが有利である。酸素プラズマを用いた処理は上記表面に水酸基(hydroxyl groups)を導入し,それが次に有機金属化合物に反応し,上記表面に共有結合する金属酸化層を形成する。酸素プラズマを用いた処理は,上記補聴器構成要素の表面の最外層がポリメリック(重合)材料(polymeric material)を有する場合に好ましいが,金属原子または酸化金属の外層コーティングを表面上に生成するために含ませることもできる。
この発明はまた,酸化アルミニウムの層を有する疎水性コーティングを備える補聴器用構成要素に関する。このようなコーティングは,この発明による方法によって設けられる。上記構成要の表面は本質的に全体的なコーティングによってコートされるか,または故意に部分的なコーティングによってコートすることもできる。この発明のコーティングを有する構成要素は,ポリメリック材料の外面を有してもよい。ポリメリック材料が好ましいが,ある実施例では,ポリオキシメチレン(POM),アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS),ポリカーボネート(PC),またはABS/PCとして知られているABSおよびPCのブレンドが好ましい。POMはアセトプラスチックとしても知られている。さらに関連する種類のポリメリック材料には,セルロスプロピオネート(CAP/CP),メチル・メタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(MABS),ポリアミド(PA),熱可塑性ポリエステル(PBT)およびポリメチル・メタクリレート(PMMA)がある。金属外表面を有する構成要素もこの発明において適切である。なんらかのタイプの金属をコートすることができるが,スチール,ステンレス・スチール,金,銀,プラチナまたはチタニウムのような金属が好ましい。
この発明はまた,この発明によるコーティングを有する,コートされた補聴器構成要素を備える補聴器に関する。
この発明の他の観点は補聴器構成要素のためのコーティングであって,上記コーティングは,
補聴器構成要素を用意し,
気相成長法を用いて上記補聴器構成要素の表面に有機金属化合物を与え,
与えられた有機金属化合物を酸化金属(金属酸化物)に変換することを伴う反応を誘導し,
気相成長法を用いて上記補聴器構成要素の表面上の上記酸化金属にシラン分子を与え,
与えられたシラン分子と上記酸化金属との間の反応を誘導して,上記シラン分子と上記酸化金属との間の共有結合を形成し,および/または隣接する与えられたシラン分子同士を共有結合する,
ことによって生成される。
この発明は,添付する図面に関連する以下の詳細な説明から容易に理解することができよう。明らかではあるが,この発明は他の異なる実施例も可能であり,そのいくつかの詳細は様々に変更することができ,この発明から導かれないすべての明らかな態様も含む。すなわち,図面および説明は本質的に例示であって限定するものではない。
音導管を備える従来の耳掛け形(BTE)補聴器を示す。 耳内レシーバ(RIC)の耳掛け形補聴器を示す。 耳内形補聴器を示す。 耳垢ガードを示す。 補聴器コンポーネントの内部における耳垢バリア要素と通常の耳垢ガードの取付けを示す。 FMユニットを粗なるBTE補聴器を示す。 気相成長法のための典型的なシステムの概略図を示す。
この発明をより十分に詳細にするために,この発明の定義において用いられる用語を以下に説明する。
「補聴器用構成要素」(component for a hearing aid)とは,補聴器の製造に用いられる,あらゆる個々の構成要素とすることができ,たとえばハウジング,ケーシング,シェル,内部電気回路,トランスデューサ,フェースプレート,グリッド,バリア,フック,蓋,電池入れ,ボタン,スイッチ,操作具,コネクタ,音導管,電気ワイヤ,イヤピース,耳垢ガード,FMユニットなどであって,また上記構成要素はこのような構成要素のいくつかからなるアセンブリであってもよく,さらに本質的に完全に組立てられた補聴器であってもよい。構成要素は,ポリマー,金属,または他の適切な素材のような単一材料から作り出される個々の要素から,いくつかの異なる上述の材料を備える要素のみならず機械的および/または電気的機能を有する要素に至るまで,複雑さに広がりを持つことができる。
図1は従来の耳掛け形(BTE)補聴器100を示すもので,コートするのに都合がよい様々な構成要素を備えている。これらの構成要素には,少なくとも,BTEハウジング101,音導管102,イヤピース103,アダプタ・フック104,音量コントロール105および電源スイッチ106が含まれる。
図2は耳内レシーバ(Receiver-In-Canal)(RIC)タイプのBTE補聴器200を示すもので,コートするのに都合がよい様々な構成要素を備えている。これらの構成要素には,少なくともBTEハウジング201,上側ハウジング・シェル202,下側ハウジング・シェル203,電池入れ204,マイクロフォン・グリッド205,上記BTEハウジング201とワイヤ要素の電線207との間を電気的に接続する接続手段206,およびRICハウジング209とワイヤ要素の電線207との間を電気的に接続する接続手段208が含まれる。
図3は耳穴形(ITE)補聴器300を示すもので,コートするのに都合がよい様々な構成要素を備えている。これらの構成要素には,少なくともITEシェル301,電池蓋302および音量コントロール303が含まれる。
図4は耳垢ガード400を示すもので,耳垢バリア要素401およびチューブ要素402を備えている。
図5は補聴器構成要素ハウジング501の内部における,レシーバ耳垢バリア要素401および耳垢ガード400の双方の取付けを示すものである。上記レシーバ・バリア要素は補聴器レシーバ502の出力管に取付けられている。
図6はコートするのに適するFMシュー601を備えるBTEハウジング600を示している。FMシュー601は,様々な異なる補聴器ハウジングに適合することができる上部602と,FMユニットを含む下部603とを有している。
図7は気相成長(vapour phase deposition)のための典型的なシステムの概略図を示している。
補聴器用構成要素の表面は「補聴器表面」(hearing aid surface)としても言及される。すなわち,補聴器表面は,金属の,プラスチックの,金属コーティングされた(metallised),塗料が塗られた(painted),または他のコートされた表面でありうる。いくつかの表面素材は,気相成長ステップにおけるコーティングよりも前に,表層水酸基群(superficial hydroxyl groups)を導入する(introducing)ことによって上記表面を活性化するプラズマ処理の対象とされるのが都合がよい。上記プラズマ処理は,非金属のポリメリック(重合)基板(non-metallic, polymeric substrates)について特に重要である。
この発明の文脈において用いるとき,用語「気相成長」(the term "vapour phase deposition)は,表面に分子層(分子膜)(a layer of molecules)をコーティングするための技術範囲(a range of techniques)を指す。一般に気相成長は,表面に適切な反応性分子を気相から堆積し,その後に反応剤(a reaction)を誘導することによって堆積された分子層が隣接する堆積分子層および/または基板表面上の化学成分と反応できるようにするためのステップを含む。上記堆積層は単分子層(a molecular monolayer)の形態をとることができ,また上記層の厚さがいくつかの分子に対応することもある。単分子層の一例はいわゆる自己組織化単分子層(膜)(self-assembled monolayer (SAM))である。二以上の分子層の厚みを持つ層(複数)は,複数層を同時堆積しまたは複数層を逐次堆積し,その後の複数の分子層間の反応の誘導によって,作り出すことができる。化学気相成長法(chemical vapour deposition)(CVD),原子層堆積(蒸着)法(atomic layer deposition)(ALD),分子堆積法(molecular vapour deposition)(MVD),気相エピタキシー(vapour phase epitaxy),原子層エピタキシー(atomic layer epitaxy)など,いくつかのタイプの気相成長法がこの分野において知られている。好ましい実施例では,この発明の気相成長は分子堆積法として知られているタイプのものである。この分子堆積法は,アプライド・マイクロストラクチャーズ・インク(Applied Microstructures Inc.)(サンホゼ カリフォルニア州 米国)によって提供されている,MVD-100,MVD-100E,またはMVD-150といったMVD装置において適切に実行することができる。この装置はまた,原子層堆積法を実行して金属酸化コーティングを形成することもでき,この実施例においても好ましい。他の好ましい実施例では,分子堆積法および原子層堆積法の両方がコーティング・ステップにおいて適用される。
「有機金属化合物」(organometallic compound)によって,炭素原子と共有結合した金属原子を備える化合物が理解される。この発明のコーティングにおける使用については,トリメチル・アルミニウム(TMAまたはAl(CH)が特に適する有機金属化合物であるが,当業者であれば他のいくつかの有機金属化合物も使用することができることは明らかであろう。有機金属化合物中に見られる典型的な金属には,アルミニウム,ガリウム,インジウム,さらにはチタニウムまたは亜鉛のような遷移金属が含まれる。この発明の文脈において,炭素原子と共有結合した,炭素,シリコン,砒素およびセレニウムのような半金属要素(semimetallic elements)を含む化合物も,有機金属化合物として考える。
TMAおよび金属面上の水酸基(hydroxyl)の間の反応は,次の反応にしたがって行うことができる。これはこの発明のコーティングの生成の方法のステップb)に対応する。
Al(CH)(g) + M-OH(s) → M-O-Al(CH)(s) + CH(g)
次のステップc)は,次の反応にしたがって行うことができる。
2HO(g) + M-O-Al(CH)(s) → M-O-Al(OH) + 2CH(g)
これらの反応において「M」は金属を意味し,「(s)」は基板の表面上の原子を指し,「(g)」はガスまたは気相(gaseous or vapour phase)を意味する。
このようにして生成される酸化アルミニウム層の層厚はほぼ1Åである。
この発明の好ましい実施例では,上記有機金属化合物はTMA(Al(CH)である。TMAは,前駆物質(precursor)としてたとえば従来技術において共通に用いられているテトラクロロシラン(SiCl)を用いるのに比べて特に有効であることが分かった。テトラクロロシランは基板上に酸化シリコンの層を生成するのによく知られている。このプロセスは,典型的には基板上にシラン(silane)を気相成長し,その後吸着層(the absorbed layer)を酸化層(the oxide)に変換する反応を行うことを含む。しかしながら,このプロセスは反応生成物として塩化水素(HCI)(hydrogen chloride)の組成物を伴い,これは非常に腐食性をもつことが知られている。HCIの腐食性は,コートされた基板,コーティングそのもの,さらには反応が実行される環境についても問題がある。他方,この発明では,吸着されたTMAと水とを反応させて酸化アルミニウム層を形成することが行われ,これによってメタン(CH)の組成が得られる。HCIと比較してメタンは実際上不活性であって,その組成は腐食に関する何らの問題も引き起こさないであろう。
本書において一般に用いられる用語「前駆物質」(precursor)は,化学反応に加わわる分子または化合物を指す。すなわち,TMA,水,シラン等がいずれも前駆物質として扱われるが,この用語はこれらの化合物に限定されるものではない。
さらに,この発明のコーティングにおいて表面上に形成される酸化アルミニウムの層は,最外コーティングと基板との間の改良された吸着(improved adhension)をもたらすことが分かった。この発明において,補聴器構成要素基板の表面と上記外表面のシラン層との間に形成される酸化金属層が,すなわち「吸着層」(“adhesion layer”)としても記述される。これは,シラン層が直接に補聴器構成要素に与えられる状況に比べて,上記酸化金属層が,補聴器構成要素に対するシラン層の結合強さの増強をもたらすことを意味する。何らかの特定の理論によって拘束されることなく,酸化アルミニウムのような酸化金属吸着層を用いることによって,補聴器構成要素の耐久性および機械的安定性,ならびに補聴器の耐久性および機械的安定性も増強される。
理論によって拘束されることなく,この改良された吸着はさらに,コートされた基板の一般的機械特性(general mechanical properties)を改良することも推測され,したがって引っ掻きおよび同様の物理的事象(scratching and similar physical challenges)に対してより抗力を持つようになる。
この発明において,用語「シラン分子」(silane molecule)は化合物を指しており,一般式:RSiによって表すことができる。ここでRは同一または異なる化学成分であり得る。
いくつかの実施例において,上記シラン分子は(RSiRとして示すことができる。ここでRは,適切な条件のもとで酸化金属中に存在する隣接シラン分子(neighbouring silane molecules)または水酸基(hydroxyls)と共有結合(covalent links)を形成することができる成分であり,Rはアルキル鎖(alkyl chain)であって任意の所望の官能基または官能基群(any desired functional group or groups)を含むことができる。好ましい実施例では,Rは塩素,メトキシまたはエトキシ(chlorine, methoxy or ethoxy)である。
上記アルキル鎖Rの官能基群は,上記コーティングを,疎水,親水,正帯電,負帯電とするように機能することができ,または化学的反応基群(chemically reactive groups)を提供することができる。たとえば,疎水性アルキル鎖は,非誘導アルキル(underivatised alkyls)とすることができ,またはペルフルオロアルキル鎖(perfluoroalkyl chains)であってもよい。親水機能はR上の水酸基群から得ることができる。帯電機能が望まれる場合には,負帯電はカルボキシレート基またはスルホネート基(carboxylate or sulfonate groups)から得ることができ,正帯電は,Rに着いた(attached)第一の,第二の,第三の,または第四のアミン(amines)から得ることができる。反応基群(reactive groups)はグリシジル成分(glycidyl moietie)のようなエポキシであってもよい。しかしながら,シラン分子の望まれない重合(unwanted polymerisation)を防止するまたは最小にするために,保護基群を有するアルキル鎖Rの官能基または官能基群(the functional group or groups of the alkyl chain R with protective groups)を与えることが必要とされよう。このことは,親水性成分または帯電成分を導入することを意図するときに特に該当する。保護基群を有するこのようなシラン分子の使用も,この発明において考慮されている。あるいは,このような官能基群はグリシジルまたはエポキシのような反応基を誘導する(carrying)シラン分子とともに,第1の反応によって(by first reacting)追加することもでき,その後にこの基が適切な試薬と反応して上記所望の機能を導入する。エポキシ誘導アルキル鎖(epoxy-carrying alkyl chains)は,適切な条件下において,たとえば,アミン,亜硫酸塩,アルコール,水,水酸基,チオールなどの求核物質(nucleophiles)と反応することができ,このことは当業者には周知であろう。
好ましい実施例において,上記シラン分子はペルフルオロアルキル鎖(perfluoroalkyl chain)によって誘導される。さらに他の好ましい実施例において,上記シラン分子はペルフルオロデシル・トリクロロシラン(perfluorodecyl trichlorosilane)(DFTS)である。ペルフルオロ誘導シラン(perfluoro derivatised silanes)は,後述するように,疎水性または超疎水性を補聴器構成要素の表面につくるように機能する。
上記シラン分子はまた,一つまたは二つのR成分(さらにR成分)を誘導することができ,したがって上記分子はR(RSiR,(RSiRという一般式によって表すことができる。ここでRはアルキル鎖のような本質的に不活性基(inert group)を表す。
「超疎水性」(Superhydrophobicity)は,水の小滴(drop of water)が「超疎水」表面で滑り落ちる(slide)ないし転げ落ちる(roll off)素材特性を記述するために用いられる。上記特性はより正確には水滴と表面との間の接触角(contact angle)によって特徴付けられる。すなわち,液体による固体の濡れの量的測定値の一つが接触角であり,接触角は,液体,気体および固体が交差する三相境界において,幾何学上,液体によって形成される内部角度として定義される。90度未満の接触角値は液体が固体表面で広がるのを示し,その場合に液体は固体を濡らすと言われる(これを「親水性」と呼ぶことができる)。接触角が90度以上である場合,液体はこれに代えて液滴を固体表面に形成する傾向があり,非濡れ(non-wetting)(または疎水性)のふるまいを示すと言われる。
この用語(terminology)において,接触角が大きければ大きいほど,表面が各物質を退ける能力がより良いということになる。未処置の表面については,通常,接触角は90度未満である。接触角を増加させるために疎水性層によって固体をコーティングし,その結果として湿気反発表面(moisture repellent surface)を得るのはこの分野において周知である。このような表面コーティングは,典型的には水の接触角を約115度から120度まで増加させることができる。マイクロ(微細)構造化(microstructuring)のような,ある材料の表面の構造的修正によって,上記材料が水および油の物質を退ける能力を向上させることができる。上記表面がそのような構造と(疎水性)コーティングの組合わせによって修正されると,水の接触角はさまざまな材料について145度を超え,その特性がこの発明の文脈において超疎水性と呼ばれる。上記超疎水性表面特性に加えて,修正された材料は超疎油表面特性も得ることもできる。
この発明の一実施例では,マイクロ構造化された表面を有する補聴器構成要素がこの発明によるコーティングを備え,したがって超疎水性のコートされた補聴器構成要素(the coated hearing aid component superhydrophobic)が作成される。
上記表面構造は,好ましくは,100よりも大きいミクロンではなく,原子および分子,ならびに粒子または他のサブナノメートル構造についての特徴的サイズよりもかなり大きなラテラル・スケール(lateral scales)において実現される。これは「マイクロ(微細)構造」(microstructure)と呼ばれる。
上記構造化およびコーティングは構成要素表面全体に適用することができるし,またはその一部に適用することもできる。上記構成要素における何らかの孔のすぐ近くにおける表面の少なくとも一部の制御された構造化は特に効果的である。
適用されるマイクロ構造は,ある一定の空間帯域幅内において,周期的,準周期的またはランダムとすることができる。上記空間帯域幅は上記構造のラテラル・スケールの相互波数の範囲(the range of reciprocal wave numbers of the lateral scales of the structure )として定義され,上記波数は周期構造のラテラル波長の相互的な値として定義される。上記構造は化合物表面の少なくとも一部に適用される。上記表面構造の平均ピッチは100マイクロまたはそれ以下とすべきである。アスペクト比は典型的には1:1またはそれよりも大きい。40マイクロ,10マイクロ,および5マイクロのピッチを含む広いピッチ範囲にわたるサンプルにおいて,良好な結果を得ることができた。
上記表面構造化は多くの方法によって実行することができ,たとえば,熱的または非熱的相互作用を有する表面のレーザ処理によって実行することができる。表面構造化に使用することができるレーザの非限定的な例としては,エキシマ・レーザ,ダイオード・レーザ,ファイバ・レーザ、Nd:YAGなどの固体レーザ,ピコ秒レーザ,およびフェムト秒レーザがある。マイクロ/ナノ電子機器,またはマイクロ/ナノ電気化学システムの製作に使用されるプロセスの他,エッチングまたは電気化学プロセスも適用することができる。
補聴器の多くの構成要素,たとえば,ハウジング,ケーシング,シェル,フェースプレート,グリッド,フック,蓋,電池引出し,ボタンおよび操作具は,一般に射出成形によってそれらを作成するのが好ましい。構成要素表面の構造化については,たとえば,レーザ穿孔,エッチングまたはスパーク処理を用いた鋳型(the die)の内面の適切な構造化を通じて達成される。ラピッド・プロトタイピング法とも呼ばれることがあるSLA技術によって製造される構成要素の場合には,レーザ処理,エッチングまたは電気化学処理によって,上記鋳型成型に続いて上記構成要素表面のマイクロ構造化を行うのが一般には好ましい。これに代えて,マイクロ構造化構成要素は,微細射出成形ステップまたは熱エンボス加工原理を使用して作成することもできる。
補聴器構成要素の表面のマイクロ構造を提供する同様の技術は,多くの貫通孔(through-going pores)を補聴器構成要素に設けるときにも一般に使用することができる。このような孔は,一般には最大の断面寸法が100〜200μmである。この文脈において,上記断面は,孔があけられた基板の表面から見たときの孔の断面を意味する。この断面の形状は円形,楕円形,多角形等とすることができ,断面が円形であれば最大の断面寸法は直径に対応する。断面の形状は,一般にその設備に使用されている方法に依存する。たとえば,レーザ・アブレーション(laser ablation)では多くの場合一般に円形の孔をもたらすであろうし,スタンピングであれば使用されるスタンプに依存した他の形状の孔がもたらされよう。貫通孔は,たとえばミリメール未満に制限される厚さの補聴器構成要素にとって重要である。これらの構成要素は,耳垢,汚れ等の侵入を防止するフィルタとして機能することができる。貫通孔を持つ構成要素の音響特性が重要であって,したがって上記孔のサイズおよび形状の他,上記構成要素に設けられる孔の格子(lattice)が,上記孔を設ける前に考慮されることがある。上記孔の深さ方向の形状は特に限定されない。したがって,貫通孔の形状および断面寸法は,補聴器構成要素の両面においてほぼ同一であってもよいし,断面寸法が異なるサイズであってもよく,その場合には孔は表面の一方側から見ると他方側から見た場合よりも小さいことになる。同様に,上記孔は,たとえば一面において円形で,他方においてほぼ楕円であってもよい。
この発明によるコーティングを製造するための前駆物質の気相成長のための典型的なシステムが,図7に概略的に示されている。上記システム701は,各前駆物質のためのリザーバ702a〜cを備え,好ましくかつ図示された実施例では,水,TMAおよびFDTSが入っている。各リザーバはバルブを備える導管を通して蒸着チャンバ703a〜cと流体連通している。蒸着チャンバ703a〜cは,上記前駆物質を反応室705に注ぐためのガス圧入口704a〜cとそれぞれ流体連通しており,上記蒸着チャンバ703a〜cと上記反応チャンバ705との間の導管(複数)はバルブ(複数)を備えてもよく,上記導管(複数)は好ましくは蒸発した上記前駆物質の凝縮を避けるために加熱される。上記リザーバ702a〜cおよび蒸着チャンバ703a〜cを加熱してもよい。上記反応チャンバ705は温度制御されて真空ポンプ706と流体連通し,真空ポンプ706によって上記反応チャンバ705内の圧力を制御することができる。以下,単位「Torr」を圧力について用いることにする。1Torrはおよそ133Paに対応する。上記反応チャンバ705内の圧力および温度はいずれも上記チャンバに供給される特定の前駆物質に依存するが,圧力については典型的には0.01〜10Torrであり,温度については周囲温度から100℃の間,典型的には35℃〜60℃の間である。しかしながら,上記温度は上記範囲を超えて高くすることもでき(たとえば,150℃まで),これも上記基板の性質に依存する。たとえば,ポリマー材料がコートされている場合,上記反応条件は上記ポリマーが柔らかくなるまたは溶解するのを避けるために上記ポリマーの性質を考慮すべきである。あるケースでは,上記圧力は0.01Torr未満の圧力にまで減少することが望ましい場合もある。上記システム701は,与えられる反応について適切な場合には,上記温度および圧力,ならびに上記反応チャンバ705内部の他の条件(コンディション)をモニタするためのセンサ707を装備することができる。さらに,上記システムは好ましくは,前駆物質の適用の間にパージング・ステップ(purging step)を含ませるために,たとえば,Nのようなパージング・ガス(a purging gas)のためのサプライ(供給装置)(図示略)を含むように設計されてもよい。
ポリマー材料のような基板についてはプラズマ処理を施すのが好ましく,上記システムは上記基板表面を処理するプラズマ源708を備えてもよい。プラズマの適用が望まれる場合には酸素(O)プラズマが典型的には用いられる。上記プラズマ処理は,洗浄および所定の基板の活性化の両方について適切であり,したがってポリマー以外の処理材料にも含ませてもよい。
上記システム701は,上記反応チャンバ705中に基板を配置し,かつ反応の完了後に基板を取り除くための適切なアクセス・ポート(access ports)(図示略)を備えることもできる。同様に,上記反応チャンバは反応中に上記基板を保持するためのラック,棚等(図示略)に適合されてもよい。
上記反応チャンバ705内における基板の位置決めの後,上記チャンバ705内の圧力および温度を適切に設定し,さらにリザーバ702を加熱してもよい。一般に,上記反応チャンバ705は上記真空ポンプ706を用いて真空にされ,その後に上記チャンバ内には圧力制御しながら反応剤(reactant)が入れられる。次に,該当する前駆物質,たとえばTMAが,リザーバ702と上記蒸着チャンバ703との間の上記バルブを開けることによって,そのリザーバから上記蒸着チャンバへ蒸発する。所定圧力に達すると上記バルブが閉じられ,上記蒸着チャンバ703と上記反応チャンバの間のバルブを開けると,上記蒸着チャンバ703中の上記前駆物質が上記ガス注入口704を介して上記反応チャンバ705へ注入される。2つのチャンバ間が一旦圧力平衡に達すると,それらの間のバルブは閉じられる。上記蒸着チャンバ703内の圧力が上記反応チャンバ705内よりも大きい限り,与えられる前駆物質は上記反応チャンバ705中に多数回注入することができる。実行される特定反応に応じて,1以上の前駆物質を同時に反応チャンバ705内に供給することもできる。上記反応チャンバ705内への上記前駆物質の導入の後,上記前駆物質は所定期間反応することができる。上記反応は上記基板上への吸着であることもあるし,上記前駆物質の導入が上記基板表面の反応を含むこともある。ある前駆物質は上記基板上に吸着されたときに自然に反応することもある。特定の反応時間後,あらゆる前駆物質および副生成物が,真空ポンプ706を用いることによって上記反応チャンバ705から汲み出される。この排出の後,窒素などの不活性ガスを用いた多数回のパージ・ステップが続く。
好ましい実施例では,TMAおよび水が,0.01〜10Torrのもとで,0.1〜60秒,より好ましくは0.5〜10秒供給され,かつFDTSが0.01〜10Torrのもとで,好ましくは1Torr未満で,1〜60分,より好ましくは5〜30分供給される。1,2−ビス(トリクロシリル)エタンを用いる場合,上記圧力は典型的には0.01〜10Torr,好ましくは2Torr未満とされる。
他の実施例では,上記システムは,前駆物質(複数)を含むリザーバ(複数),反応チャンバ,およびガス状前駆物質の一定の流れが上記反応チャンバ中を通過できるようにするために構成された前駆物質用導管を含む。リザーバ,蒸着チャンバおよび反応チャンバは加熱することができ,ガス流量は制御可能である。上記リザーバのための導管は上記導管から上記リザーバを分離するためのバルブを含むことができる。洗浄および表面の活性化のためのプラズマ源をこのシステムの統合部材とすることもできる。上記リザーバとガス管との間のバルブを所定時間開けることによって各前駆物質はガス管中で蒸発し,その後にバルブが閉じられる。この設定において,パージ時間はガス流中への前駆物質の注入がない時間(the time where no precursor is injected into the gas flow)として定義される。2つの異なる前駆物質AおよびBを操作するとき,可能な処理順序は次のとおりである。前駆物質Aの注入,パージ,前駆物質Bの注入,パージ。上記前駆物質の注入のための時間およびパージ時間は同一でも異なってもよく,典型的には好ましくは秒単位で測定される。この処理順序(サイクルによって示される)は任意の回数繰返すことができる。このタイプの操作における重要なパラメータは,上記パージおよび注入時間に加えて,上記パージおよび注入時間の間の相互作用(the interplay),さらにはガス流量である。
実施例
以下,非限定の概説的実施例においてこの発明を記述する。対比のために,従来技術の例についても説明する。これらの例はこの発明の特定の実施例を示すもので,この発明を限定する意図はない。
従来例
従来技術の説明では,4つの異なるポリマー・タイプ,すなわちABS,PA,PEおよびPOMが,酸化シリコンの吸着層にコートされ,FDTSの外層が続いたものを示す。はじめにセンチメータ・サイズのポリマー試料を酸素プラズマ処理し,MVD装置(米国,カリフォルニア州,サンホゼのアプライド・マイクロストラクチャーズ・インクのMVD−100)においてSiClの気相成長を実行し,その後水蒸気を用いた反応によってポリメリゼーション(重合化)および酸化シリコンの組成物を誘導した。次にFDTSを上記MVD装置に与えて疎水外層を導入した。
コートされたサンプルを65℃で一晩加熱し,その後人工汗にさらした(exposed)。汗テスト(sweat test)は65℃の乾燥機中で行い,コートされた試料をpH3の人工汗構成物(マイクロトリニック)に10日間までさらした。1,3,5,7および10日の後に,上記乾燥機からサンプルを取出し,上記サンプルに与えた水滴の静的接触角度(static contact angles)を記録し,各サンプルについて4つの測定値を得た。
以下の表1は上記結果をまとめたもので,上記接触角度の平均値を,測定値から計算されるそれらのそれぞれの95%信頼区間(95% confidence intervals)とともに示すものである。
Figure 2011530906
上記結果は,ABSおよびPOMについて,従来技術の方法は,安定したコーティングの結果をもたらさないことを示している。ABSについては,人工汗への3日間のみの露出にかけられたサンプルのプラスチック表面において,与えられた液滴の半分が「崩れた」(collapsed)。「崩れた」とは,個々の液滴が初めは表面に対して大きい接触角を持っていたがその後はるかに小さい接触角をもたらして表面に広がり始めた(すなわち,濡れの振る舞いを示した)ことを意味する。7日から10日の汗テスト後のものについては,すべての与えられた液滴は,適用の後に簡単に崩れた。上記液滴はさらにポリマー材料に目に見える跡(visible marks)を残した。
上記POM材料はやや異なる特性を示した。測定された接触角は一般に大きく疎水表面を示したが,上記接触角は次第に減少する傾向であった。たとえば,7日サンプルに与えられた液滴は,表1中に示す接触角を有したが,ほぼ90分が経過するとその値は83.7±4.7°まで減少した。さらに,上記水滴は表面上に目に見える跡を残した。10日サンプルについては,液滴は適用から数秒内で崩れ,はっきりとした目に見える跡を残した。このサンプルの精緻な検査は,材料が表面から「立ち去る」(“peel off”)傾向があったことを示している。
上記PAおよびPEサンプルについてはより安定した結果が示された。これらの場合,液滴は崩れなかったが,約90分後の再測定による角度によって示されているように,接触角のわずかな減少のみが示された。すなわち,PAについては7日サンプルにおいて97.6±0.3°に減少し,10日サンプルは94.3±2.0°に減少した。PEについてはそれぞれ93.1±1.6°および89.9±2.7°であった。
上記ポリマーの種類の間に見られる相違は,上記プラズマ処理から生じる相違によって部分的に説明することができる。使用されるPEおよびPAは化学的に密接に関連しており,これらの2つの種類について観察される同様の結果は,上記プラズマ処理が,異なるポリマー・タイプについて量の異なる反応水酸基群を誘導し,たとえばABSおよびPOMよりもPEおよびPAに対して,上記従来技術の方法をより適切なものにしたことを示すと言えよう。
補聴器および補聴器の構成要素については,ABSおよびPOMは,PEおよびPAのいずれよりもより密接な(関連性のある)材料(relevant materials)である。すなわち,上記結果は,より改良された補聴器構成要素のコーティング方法が必要であることを示している。
この発明によるコーティングの例はMVD−100を用いて製造した。このシステムは,長さおよび幅が150mmのほぼ正方形の底面を持ち,高さが30mmの反応チャンバと,3つの独立している前駆物質リザーバと,上記反応チャンバへの対応する接続を備えている。さらに,酸素プラズマ・サプライも備えている。各蒸着チャンバの容量は300mlである。
コーティング反応200のために,アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)製の補聴器構成要素(複数)を上記反応チャンバ内に配置した。異なる種類の構成要素はコートされており,各構成要素は5〜10cmの表面積を有していた。その後酸素プラズマを250Wおよび200 sccm O(標準的な立方センチメートル毎分)で処理時間5分で供給した。プラズマ処理に続いて,はじめにTMAを供給し次に吸着したTMAに水を反応させることで,酸化アルミニウム・コーティングを40サイクル実行した。続いて,上記蒸着チャンバを指定圧力とした。各サイクルにおいて,4Torrおよび周囲温度でTMAを1秒間上記基板に堆積し,その後窒素ガスを用いてシングル・パージを行った。0.8Torrおよび50℃で水蒸気を供給して1秒の反応時間を許容し,次に5パージを行うことによって,吸着TMAの酸化アルミニウムの共有結合層への変換を続いて行った。
酸化アルミニウム吸着層を用いた補聴器構成要素のコーティングの後,上記FDTSを適用し,その後上記FDTSと上記構成要素表面上の水酸基とを反応させるために水蒸気を適用することによって,構成要素の表面を疎水性にした。詳細には,FDTSは0.5Torrおよび55℃で実行される各ステップについて四回供給し,四回目のFDTSの適用ステップに続いて18Torrおよび50℃で水蒸気を適用した。FDTS分子と水分子とを反応させるために15分の反応時間が実行された。最後に窒素ガスを用いて上記反応チャンバを5回パージした。
上記堆積(蒸着)は60℃の反応チャンバにおいて実行した。
コートされた補聴器構成要素の疎水性および疎油性の特性は,上記表面と,水およびオリーブ油のそれぞれとの間の接触角を測定することによって分析された。水およびオリーブ油は,汗および耳垢のモデルとしてそれぞれ機能し,それらは補聴器性能の劣化を引き起こすことで共通する。水については約110〜115度,オリーブ油については約80〜85度の静的接触角が観察された。
コーティング手順はマイクロ構造化表面を有する補聴器構成要素について繰返した。最終的にFDTSコートされ,マイクロ構造化された補聴器構成要素は,マイクロ構造化されていないコートされた構成要素を超える,改良された疎水性および疎油性特性を提示し,水について約150度,オリーブ油について130度の静的接触角が観察された。このように,上記表面には上記コーティング手順によって超疎水性および超疎油性が得られた。
水およびシランの間の反応は,吸着されたシラン同士の間の限定的ポリメリぜーション(すなわち,Si-O-Si-links)と同様に,酸化アルミニウムとシランの間の共有結合の組成(すなわち,Al-O-Si-links)を導いた。吸着層を生成するためのTMAの使用は,TMAに代えてSiClを使用する従来のコーティング・プロセスによって生成されるものよりも,よりロバストなコーティング(more robust coating)を機械的に作り出す。SiClを使用して上記基板上に酸化シリコンの層を作り出す場合,HCIが水酸基と水との反応に応じてリリースされる。HCIは腐食性であり,腐食効果が最適下限反応(sub-optimal reaction)を導くことがあると疑われる。特に,形成されたHCIは,基板内の電子回路を害することがある。これとは対照的に,上記基板へのTMAの吸着および水酸基と水との反応は,HCIと比較して完全に不活性であるメタンの組成を導く。あらゆる特定の理論によっても拘束されることなく,TMAがポリマーの最外表面と相互作用できるので,そのため,この発明によるコーティングは従来技術に比べて部分的により機械的にロバストであると考えられる。したがって,Al層が上記ポリマー中に機械的に埋込まれて形成されるか,または上記プラズマ活性が上記ポリマー上に反応性水酸基の組成を結果的にもたらすので,ハイブリッド有機/無機層(hybrid organic/inorganic layer)を形成することもできる。
POMマイクロフォン・グリッドは,次の組合わせにおいてFDTSの疎水性表層を用いてコートされた。
酸化アルミニウム + FDTS
酸化アルミニウム + 酸化シリコン + FDTS
酸化シリコン + FDTS(酸化シリコン層の厚さが異なるもの2つ)
酸化アルミニウム層は,ALDプロセスにおいて,TMAを堆積し次に60度の蒸着温度で水を反応させることによって作成された。酸化シリコン層は,MVDプロセスにおいて,1.2−ビズ(トリクロロシリル)エタンを堆積し次に35度の蒸着温度で水を反応させることによって作成された。続くFDTSを用いたコーティングも気相成長プロセスにおいて35度で実行された。
コートされた構成要素は,補聴器のユーザの条件を模倣するためのテストにおいて人工汗にさらされた。上記条件にはNaClと酢酸とを混ぜた温水中に24時間上記構成要素を入れることを含ませた。この寿命テスト(aging test)は汗の劣悪影響をエミュレートするものである。上記テストの前後において,液滴およびコートされた構成要素の間の接触角が解析された。いくつかの解析は各構成要素について実行された。解析結果が表2にまとめられている。
Figure 2011530906
表2を参照して,この発明の方法は,素晴らしい耐久性を疎水性コーティングにもたらした。酸化アルミニウム吸着層を提供するステップの適用が,TMAを利用しないコーティング方法と比べてよりよい結果をもたらした。すなわち,結果から明らかなように,汗テストへの露出の前後において,酸化アルミニウムを含むコーティングを有する基板についての接触角には,なんらの統計的な違いもなかったが,他方,酸化アルミニウム層を持たないコーティングの場合には汗テストへの露出後に上記接触角が減少した。
貫通孔の格子(lattice of through-going-holes)を含むスチールのサブミリメートル厚シートからフィルタが作成された。上記作成されたフィルタは,フィルタを通した耳垢の浸透を防ぐために,孔パターンおよび孔径(190μm)を有する補聴器で通常使用されるサイズのものとした。次の3つのコーティング・タイプをフィルタに適用した。
酸化アルミニウム + FDTS
酸化アルミニウム + 酸化シリコン + FDTS
酸化シリコン + FDTS
コーティング手順は,実施例2において上記したものと同じとした。対比のために,孔のないシート部分も酸化シリコンおよびFDTSでコートした。ヘキサデカンが疎水性モデル化合物として使用され,ヘキサデカンおよびコートされた基板の間の接触角が測定された。いくつかの分析は各基板について行われた。さらに,フィルタを有する3枚のシートのそれぞれの上面上に15の油の液滴を置き,浸透を記録することによって,フィルタを通したオリーブ油の浸透が分析された。少なくとも14週間,オリーブ油の液滴があるシートがほぼ水平な姿勢で保持された。
接触角の測定の結果が表3にまとめられている。
Figure 2011530906
表3から明らかなように,3枚のすべてのコートされたフィルタは,シートを通す孔をまったく持たないFDTS最上層を有するスチール・シートよりも,著しく大きい接触角を持っていた。このように,FDTS最上層と孔の格子から得られる構造化との組合せは疎油性表面をもたらした。
オリーブ油の浸透について疎油性フィルタはテストされた。14週間後,酸化アルミニウム + FDTSがコートされたフィルタを交差する(cross)液滴はなかったが,他方,9週間後に,酸化アルミニウム + 酸化シリコン+ FDTSがコートされたフィルタを通って1つの液滴が移動した。酸化アルムニウム吸着層を持たないフィルタについては,たった4時間後に2つの液滴がフィルタを通過し,さらなる液滴は14日後に通過し,いかなる追加液滴も8週間後にフィルタを交差しなかった。酸化アルミニウム層を備えるフィルタと比較して,酸化シリコン + FDTSがコートされたフィルタを通る油の最初の一時的浸透は,コーティングの前に存在するフィルタ中の欠陥を反映することがある。このことは,次の数週間フィルタを交差するいかなる更なる液滴がなかったという事実によって支持される。しかしながら,他の原因を除外することはできないが,他の2つのフィルタについての酸化アルミニウム層がよりロバストなコーティングを提供することを示すと言えよう。

Claims (26)

  1. a)補聴器構成要素を用意し,
    b)気相成長法を用いて上記補聴器構成要素の表面に有機金属化合物を与え,
    c)与えられた有機金属化合物を酸化金属に変換することを伴う反応を誘導し,
    d)気相成長法を用いて上記補聴器構成要素の表面上の上記酸化金属にシラン分子を与え,
    e)与えられたシラン分子と上記酸化金属との間の反応を誘導して,上記シラン分子と上記酸化金属との間の共有結合を形成し,および/または隣接する与えられたシラン分子同士を共有結合する,
    補聴器構成要素をコーティングする方法。
  2. 上記有機金属化合物はトリメチル・アルミニウム(Al(CH)である,請求項1に記載の補聴器構成要素をコーティングする方法。
  3. 上記シラン分子はペルフルオロアルキル成分を備える,請求項1または2に記載の補聴器構成要素をコーティングする方法。
  4. 上記ステップb)およびc)を繰返して所望の厚さの酸化金属層を得る,請求項1から3のいずれか一項に記載の補聴器構成要素をコーティングする方法。
  5. 上記ステップb)の各繰返しにおいて,与えられる有機金属化合物が前回のステップb)におけるものと同じである,または前回のステップb)のものと異なる金属を含む,請求項4に記載の補聴器構成要素をコーティングする方法。
  6. 上記酸化金属層の厚さが2から20nmの間である,請求項1から5のいずれか一項に記載の補聴器構成要素をコーティングする方法。
  7. 有機金属化合物を与える前に,酸素プラズマを用いて上記補聴器構成要素の表面を処理するステップをさらに含む,請求項1から6のいずれか一項に記載の補聴器構成要素をコーティングする方法。
  8. 上記有機金属化合物を与える前に,上記補聴器構成要素の外表面をマイクロ構造化するステップをさらに含む,請求項1から7のいずれか一項に記載の補聴器構成要素をコーティングする方法。
  9. 上記有機金属化合物を与える前に,それぞれの最大断面寸法が200μmよりも小さい,複数の貫通孔を上記補聴器構成要素にあけるステップをさらに含む,請求項1から8のいずれか一項に記載の補聴器構成要素をコーティングする方法。
  10. 酸化アルミニウム層を含む疎水性コーティングが設けられた構成要素を備えている,補聴器。
  11. 上記コーティングが設けられる上記構成要素はマイクロ構造化外表面を備えている,請求項10に記載の補聴器。
  12. 上記コーティングが設けられる上記構成要素が,各孔の最大断面寸法が200μmよりも小さい複数の貫通孔を備えている,請求項10または11に記載の補聴器。
  13. 上記コーティングが設けられる上記構成要素がポリメリック材料の外表面を備えている,請求項10から12のいずれか一項に記載の補聴器。
  14. 上記ポリメリック材料はポリオキシメチレン(POM)である,請求項13に記載の補聴器。
  15. 上記ポリメリック材料がアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)である,請求項13に記載の補聴器。
  16. 上記ポリメリック材料が,アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン/ポリカーボネート(ABS/PC)である,請求項13に記載の補聴器。
  17. 上記コーティングが設けられる上記構成要素は金属材料の外表面を備えている,請求項10から12のいずれか一項に記載の補聴器。
  18. 上記金属材料はスチールである,請求項17に記載の補聴器。
  19. 補聴器構成要素を用意し,
    気相成長法を用いて上記補聴器構成要素の表面に有機金属化合物を与え,
    与えられた有機金属化合物を酸化金属に変換することを伴う反応を誘導し,
    気相成長法を用いて上記補聴器構成要素の表面上の上記酸化金属にシラン分子を与え,
    与えられたシラン分子と上記酸化金属との間の反応を誘導して,上記シラン分子と上記酸化金属との間の共有結合を形成し,および/または隣接する与えられたシラン分子同士を共有結合する,
    ことによって生成される,補聴器構成要素用コーティング。
  20. 上記有機金属化合物はトリメチル・アルミニウム(Al(CH)である,請求項19に記載の補聴器構成要素用コーティング。
  21. 上記シラン分子は,ペルフルオロアルキル成分を備える,請求項19または20に記載の補聴器構成要素用コーティング。
  22. 上記ステップb)およびc)を繰返して所望の厚さの酸化金属層を得る,請求項19から21のいずれか一項に記載の補聴器構成要素用コーティング。
  23. 上記ステップb)の各繰返しにおいて,与えられる有機金属化合物が前回のステップb)におけるものと同じである,または前回のステップb)のものと異なる金属を含む,請求項22に記載の補聴器構成要素用コーティング。
  24. 上記酸化金属層の厚さが2から20nmの間である,請求項19から23のいずれか一項に記載の補聴器構成要素用コーティング。
  25. 有機金属化合物を与える前に,酸素プラズマを用いて上記補聴器構成要素の表面を処理するステップをさらに含む,請求項19から24に記載の補聴器構成要素用コーティング。
  26. 上記有機金属化合物を与える前に,上記補聴器構成要素の外表面をマイクロ構造化するステップをさらに含む,請求項19から25のいずれか一項に記載の補聴器構成要素用コーティング。
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