JP2011512873A - 糖化におけるグルコアミラーゼ及びブティアウクセラ属フィターゼ - Google Patents
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Abstract
【選択図】図1
Description
本願は、その全てを参照として本願に組み込む2008年3月11日出願の米国仮出願第61/035,672号に基づく優先権を主張する。
一般的な酵素液状化プロセスには、熱安定性の細菌性アルファ(α)-アミラーゼ(例えばSPEZYMETM FREDまたはSPEZYMETM XTRA (Danisco US, Inc社, Genencor Division) またはTERMAMYLTM SC またはTERMAMYLTM 120L (Novozymes社)) を、粒状澱粉を含む基質から成るスラリーに添加する工程が含まれる。pHを5.5から6.5に調整し、温度を90℃より高くする。澱粉を先ずゼラチン化し、次に液状化酵素で処理する。
一般に糖化は、液状化プロセスよりも酸性のpHにおいて、例えばアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来のグルコアミラーゼ (例えばOPTIDEXTM L-400 (Danisco US, Inc. 社Genencor Division)) 等のグルコアミラーゼ酵素の存在下で行われる。通常、糖化工程のpHは約pH4.0から5.0である。得られた糖を発酵させ、所望の最終製品(例えばエタノール)を得る。
エタノールを製造するプロセスでは、可溶性物質添加乾燥蒸留穀物残渣(distillers dried grains and solubles (DDGS)) 等の副生物及び廃棄物が発生し、飼料に用いられる。さらに、プロセスから得られた液体(すなわち希スティレッジ) をスラリーに混合してリサイクルする。
いくつかの実施形態では、本願の組成物及び方法には、グルコアミラーゼ及びフィターゼを含む酵素のブレンド物を、予備糖化中、糖化中、および/または糖化/発酵中の澱粉転化プロセスに添加することが含まれる。このような組成物及び方法は、グルコアミラーゼを単独で使用する場合と比べて、いくつかの利点がある。
別の側面では、澱粉を発酵させてエタノールにする。別の側面では、フィチン酸含有量の少ないDDGSを製造する。別の側面では、活性フィターゼを含むDDGSを製造する。また別の側面では、フィチン酸含有量の少ない希スティレッジを製造する。いくつかの実施形態では、希スティレッジを本願のプロセスにリサイクルさせる。
いくつかの側面では、アルコールを製造する方法が提供され、この方法には、澱粉基質を含むスラリーと少なくとも1のα-アミラーゼとを接触させてオリゴ糖を産出させる工程と、得られたオリゴ糖と、少なくとも1のグルコアミラーゼ及びブティアウクセラ属由来の少なくとも1のフィターゼとを接触させて発酵性糖を産出させる工程と、得られた発酵性糖を発酵性有機体の存在下で発酵させてアルコールを産出させる工程とが含まれる。いくつかの実施形態では、接触と発酵を同時に行う。いくつかの実施形態では、アルファ-アミラーゼで処理した後であってグルコアミラーゼを添加する前に、澱粉基質の温度をゼラチン化温度より高くすることができる。
いくつかの実施形態では、フィターゼは少なくとも1の次のアミノ酸変異を有する:A89T, D92A, T134I, F174S, T186K, A188P, K207E, A209S, S248L, Q256Y, A261E, 及び N269K。いくつかの実施形態では、フィターゼは野生型ブティアウクセラ属フィターゼ(BP-WT)、またはBP-11及びBP-17から選択される変異体である。いくつかの実施形態では、フィターゼはSEQ ID NO: 5, 6, 7, 及び 8に示すアミノ酸配列のいずれかを有する。
いくつかの実施形態では、この発明の方法には澱粉基質の液化温度より高い温度まで昇温することが含まれる。いくつかの実施形態では、澱粉基質と少なくとも1のグルコアミラーゼ及び少なくとも1のフィターゼとの接触と、発酵性有機体の存在下での発酵性糖の発酵とを、同時に進行させる。
いくつかの実施形態では、フィターゼはBP-17である。いくつかの実施形態では、DDGSには活性フィターゼが残留している。DDGSを飼料に配合することができる。いくつかの実施形態では、DDGSを穀物または飼料に配合して動物用飼料を製造する場合、活性フィターゼが飼料中のフィチン酸を減少させる。いくつかの実施形態では、澱粉基質はトウモロコシ、大麦、キビ、小麦、コメ、ソルガム、ライ麦、および/またはライ小麦等の粉砕穀粒である。
いくつかの実施形態では、澱粉基質と少なくとも1のグルコアミラーゼ及び少なくとも1のフィターゼとの接触と、発酵性有機体の存在下での発酵性糖の発酵とを、同時に進行させる。いくつかの実施形態では、フィターゼはSEQ ID NO: 5のアミノ酸配列に対し少なくとも95%の相同性を有するとともにアミノ酸位置92にアラニンを備える。いくつかの実施形態では、フィターゼは野生型ブティアウクセラ属由来フィターゼ(BP-WT)、またはBP-11及びBP-17から選択される変異体である。
SEQ ID NO: 1は、トリコデルマ・リーゼイグルコアミラーゼ(TrGA)のアミノ酸配列である。
<I. はじめに>
この発明の組成物及び方法は、例えば動物飼料用のDDGS製造等の澱粉転化プロセス、またはエタノール等の有機化合物を製造する発酵プロセスにおいて使用することができる、グルコアミラーゼと、少なくとも1のフィターゼとを含む酵素ブレンド物に関する。
この発明の組成物及び方法は、糖化、発酵、および/または、同時糖化・発酵(SSF)においてフィチン酸を低減させるために用いることができ、この結果、発酵産品または副生物(例えばDDGS及び希スティレッジ)中のフィチン酸が低減する。
いくつかの実施形態では、フィターゼのSEQ ID NO: 5に対する配列相同性は少なくとも90%であり、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%で、最大100%であり、さらに位置92にアラニンを備える。
いくつかの実施形態では、フィターゼのSEQ ID NO: 5に対する配列相同性は少なくとも90%であり、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%で、最大100%であり、さらに位置92にアラニンを備え、さらに、次のアミノ酸の少なくともいずれか1を備える:位置89のスレオニン、位置134のイソロイシン、位置174のセリン、位置186のリジン、位置188のプロリン、位置207のグルタミン酸、位置209のセリン、位置248のロイシン、位置256のチロシン、位置261のグルタミン酸、位置269のリジン。
いくつかの実施形態では、フィターゼは次のアミノ酸置換基の少なくともいずれか1を備える:A89T、T134I、F174S、T186K、A188P、K207E、A209S、S248L、Q256Y、A261E、及びN269K、さらにD92A置換を備えるか、または備えない。
いくつかの実施形態では、フィターゼは野生型ブティアウクセラ由来フィターゼ、またはBP-11変異体またはBP-17変異体である。
いくつかの実施形態では、フィターゼは野生型ブティアウクセラ由来フィターゼの活性に対し少なくとも約50%の活性を有し、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%の活性を有する。
特に断りの無い限り、この発明の組成物及び方法の製造や使用には、分子生物学、タンパク質工学、DNA組み換え技術、微生物学、細胞生物学、細胞培養、トランスジェニック生物学、免疫学、タンパク質精製,等で周知の技術が用いられる。これらの技術は当業者にとって周知であり、多数の文献等に記載されている。本願に特定の方法や材料を例示したが、同等または等価の方法や材料を用いてこの発明の組成物及び方法の製造や使用を行うことができる。
「親酵素」とは、修飾の出発点として用いられる酵素を意味する。親酵素として天然起源または「野生型」の酵素を用いることができる。
配列を整列させて配列相同性を求めるための様々な解法が知られており、非限定的例示としてNeedleman et al., (1970) /. Mol. Biol. 48:443の相同配列解法;Smith et al, (1981) Adv. Appl. Math. 2:482のローカル相同解法;Pearson et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444の類似性検索法;Smith-Waterman解法 (1997) Meth. Mol. Biol. 70:173-187;BLASTP, BLASTN,及びBLASTX 解法 (Altschul et al., (1990) /. Mol. Biol. 215:403-410参照) が挙げられる。
これらの解法を用いたコンピュータプログラムを理由することもできる。このようなコンピュータプログラムの非限定的例示として、ALIGN または Megalign (DNASTAR) ソフトウエア、またはWU-BLAST-2 (例えばAltschul et al. (1996) Meth. Enzym. 266:460-480参照);またはGAP, BESTFIT, BLAST (例えば上記のAltschul et al, FASTA, 及びTFASTA参照、これらはGenetics Computing Group (GCG)パッケージ、Version 8, Madison, Wis., USAから入手できる);及びIntelligenetics, Mountain View, CA, USA のPC/Geneプログラム中のCLUSTALが挙げられる。
いくつかの実施形態では、Smith-Waterman相同性検索アルゴリズム(例えば(1997) Meth. Mol. Biol. 70:173-187参照) により配列の相同性を求めることができる。このアルゴリズムはMSPRCHプログラム (Oxford Molecular, Accelrys Ltd., Oxford England)において実施されており、このプログラムでは次の検索パラメータによるアフィンギャップ検索を用いている: ギャップオープンペナルティ12、及びギャップ延長ペナルティ1。
いくつかの実施形態では、対合させたアミノ酸の対比は、ギャップウエイトが12でレングスウエイトが2のblosum62アミノ酸置換マトリックスを用いるGenetics Computer Group, Inc., Madison, Wis.のGCG配列分析ソフトウエアパッケージのGAPプログラムを用いて行うことができる。
いくつかの実施形態では、2つのアミノ酸配列の最適なアライメントに関して、変異体のアミノ酸配列の接触セグメントは、参照するアミノ酸の配列に対し少なくとも1の追加のアミノ酸残基、または少なくとも1のアミノ酸残基の欠失を有する。
参照するアミノ酸の配列との比較に用いられる接触セグメントには少なくとも約20の接触アミノ酸残基が含まれ、あるいは少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50またはそれ以上の接触アミノ酸残基が含まれていてもよい。誘導体のアミノ酸配列にギャップを含めることに伴う増加された配列相同性の補正は、ギャップペナルティを指定することにより行うことができる。
いくつかの実施形態では、GENBANKOTMタンパク質配列や他の公知のデータベース中のアミノ酸配列に対する全てのリーディングフレームについて翻訳された核酸配列の検索には、BLASTXプログラムが好ましい。BLASTN及びBLASTXのいずれも、初期パラメータの設定をオープンギャップペナルティ11.0、延長ギャップペナルティ1.0とし、BLOSUM-62マトリックス(例えばAltschul et al. (1997)参照) を用いてプログラムを実行する。
<A. グルコアミラーゼ>
本願の組成物及び方法には、様々なグルコアミラーゼ(GA) (E.C. 3.2.1.3) を用いることができる。
いくつかの実施形態では、GAはバクテリア、植物、および/または菌類により内生的に発現され、別の実施形態では、GAは宿主細胞 (例えばバクテリア、植物、および/または菌類) に対し非相同性である。いくつかの実施形態では、GAは糸状菌及び酵母株から産出され、例えば市販のGAはアスペルギルス属及びトリコデルマ属の株から産出されている。
好ましいGAには、天然の野生型酵素のほか、変異体やハイブリッドGA等の遺伝子組み換え突然変異酵素が含まれる。ハイブリッドGAには、1の有機体由来のGA (例えばタラロミセス属由来GA) の触媒ドメインと、別の有機体由来のGA (例えばトリコデルマ属由来GA) の澱粉結合ドメイン(SBD) とを備えるものが含まれる。いくつかの実施形態では、リンカーは澱粉結合ドメイン(SBD)または触媒ドメインに含まれている。
以下にこの発明で用いられるGAの例を示す:アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)のG1及びG2 GA (例えばBoel et al. (1984) EMBO J. 3:1097-110; WO 92/00381, WO 00/04136 及び USP 6,352,851参照);アスペルギルス・アワモリ (Aspergillus awamori)のGA (例えばWO 84/02921参照);アスペルギルス・オリザエ (Aspergillus oryzae)のGA (例えばHata et al. (1991) Agric. Biol. Chem. 55:941-949参照)、及びアスペルギルス・シロウサミ(Aspergillus shirousami)のGA (例えばChen et al. (1996) Prot. Eng. 9:499-505; Chen et al. (1995) Prot. Eng. 8:575-582; 及び Chen et al. (1994) Biochem J. 302:275-281参照)。
この発明に用いられる別のGAには、アセリア・ロルフシイ(Athelia rolfsii)及びその変異体(例えばWO 04/111218参照)、及びペニシリウム属 (例えばペニシリウム・クリソゲヌム(chrysogenum))が含まれる。
一般に、適切なGAであれば、この発明の組成物及び方法に用いることができる。
<トリコデルマ・リーゼイグルコアミラーゼ(TrGA)の成熟タンパク質の配列 (SEQ ID NO: 1)>
本願の組成物及び方法には、様々なフィターゼを用いることができる。
有用なフィターゼは、本願に特定する糖化、発酵、および/または同時糖化発酵条件下でフィチン酸を加水分解することができるフィターゼである。
いくつかの実施形態では、この発明の組成物と方法には、糖化および/またはSSFにおいて少なくとも1のフィターゼを添加することが含まれ、フィターゼはイノシトール6リン酸(例えばフィチン酸)から少なくとも1の無機リンを放出させることができる。
ブティアウクセラ属の株はDSMZ, the German National Resource Center for Biological Material (Inhoffenstrabe 7B, 38124 Braunschweig, Germany) 及びその他の保存場所から入手できる。いくつかの実施形態では、フィターゼは寄託番号NCIMB 41248で保管されているブティアウクセラ属株P 1-29から産出される。
<ブティアウクセラ由来フィターゼの成熟タンパク質の配列(SEQ ID NO: 5)>
<ブティアウクセラ由来フィターゼ変異体D92Aの成熟タンパク質の配列(SEQ ID NO: 6)>
<ブティアウクセラ由来フィターゼ変異体BP-11の成熟タンパク質配列(SEQ ID NO: 7)>
<ブティアウクセラ由来フィターゼ変異体BP- 17の成熟タンパク質配列(SEQ ID NO: 8)>
いくつかの実施形態では、この断片はフィターゼ活性を示す。いくつかの実施形態では、この断片はSEQ ID NO: 5のフィターゼのフィターゼ活性を少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%有する。
この発明の組成物と方法には、任意に第2の酵素が含まれていてもよく、第2の酵素の非限定的例示としてα-アミラーゼ、酸菌類プロテアーゼ、別のGA、別のフィターゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、 プロテアーゼ、プルラナーゼ、ベータアミラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、 ペクチナーゼ、β-グルコシダーゼ、ガラクトシダーゼ、エステラーゼ、シクロデキストリントランスグリコシルトランスフェラーゼ(CGTases)、オキシド-リダクターゼ、エステラーゼ、β-アミラーゼ、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
いくつかの実施形態では、第2の酵素は、上記のGAのうちのいずれかの第2のGAである。いくつかの実施形態では、別の酵素は、上記の細菌性または菌類フィターゼ等の第2のフィターゼである。
いくつかの実施形態では、α-アミラーゼはアスペルギルス・カワチ株またはトリコデルマ・リーゼイ株から得られる。いくつかの実施形態では、α-アミラーゼはTrAAまたはAkAA等のGSHEである。いくつかの実施形態では、α-アミラーゼはA.カワチ及びA.ニガーから得られた酵素に由来する断片からなるハイブリッド酵素である。
これらのアミラーゼのいくつかは市販されており、例えばNovo Nordisk A/S社のTERMAMYLTM, LIQUEZYMETM SC,及びSUPRATM、Diversa社のULTRATHINTM、及びDanisco US, Inc社, Genencor DivisionのSPEZYMETM FRED, SPEZYMETM XTRA, 及びGZYMETM G997が挙げられる。
好ましいセルラーゼの非限定的例示としてペニシリウム、トリコデルマ、フミコーラ、フザリウム(Fusarium)、サーモモノスポラ(Thermomonospora)、 セルロモナス(Cellulomonas)、クロストリジウム(Clostridium)、及びアスペルギルス由来のセルラーゼが挙げられる。市販の飼料用のセルラーゼとして、ROVABIOTM (Adisseo社), NATUGRAINTM (BASF社), MULTIFECTTM BGL (Danisco Genencor社), and ECONASETM (AB Enzymes社)等のβ-グルカナーゼが挙げられる。
市販のキシラナーゼとして、MULTIFECTTM 及び FEEDTRE ATTM Y5 (Danisco US, Inc社. Genencor Division)、 RONOZYMETM WX (Novozymes A/S社)、及びNATUGRAINTMWHEAT (BASF社)が挙げられる。
好ましい市販のプロテアーゼとして、MULTIFECTTM P 3000 (Danisco US, Inc社. Genencor Division) とSUMIZYMETM FP (Shin Nihon) が挙げられる。
いくつかの実施形態では、プロテアーゼは菌類(例えばトリコデルマNSP-24、アスペルギルス、フミコーラ、及びペニシリウム)に由来する。いくつかの実施形態では、プロテアーゼは酸性菌プロテアーゼ(AFP)であり、非限定的例示としてA.ニガー、A.アワモリ、 A.オリザエ、及びM.ミエヘイ等のアスペルギルス、トリコデルマ、ムコール、及びリゾパス属由来のプロテアーゼが挙げられる。
プロテアーゼは、バクテリア、植物、及び菌類の非相同または内因性タンパク質発現により得られる。プロテアーゼには、天然の野生型プロテアーゼとその変異体、及びU.S. Pat. No. 7,429,476に開示されているような遺伝子組み換え突然変異プロテアーゼが含まれる。
この発明の組成物及び方法の一側面は、少なくとも1のグルコアミラーゼと少なくとも1のフィターゼを含む酵素のブレンド物または配合物からなる組成物である。いくつかの実施形態では、フィターゼはブティアウクセラ属フィターゼである。特定の実施形態では、フィターゼはBP-WT、BP-11、またはBP-17フィターゼである。いくつかの実施形態では、フィターゼはSEQ ID NO: 5に対し配列同一性を少なくとも約90%有する。
これより多い量のフィターゼを用いることもできる。いくつかの実施形態では、使用するフィターゼの量は約0.01から約1.0 FTU/gである。いくつかの実施形態では、使用するフィターゼの量は少なくとも約0.01 FTU/gであり、少なくとも約0.02, 0.03, 0.04, 0.05, 0.06, 0.07, 0.08, 0.09, 0.1, 0.11, 0.12, 0.13, 0.14, 0.15, 0.16, 0.17, 0.18, 0.19, 0.2, 0.25, 0.28, 0.3, 0.35, 0.4, 0.45, 0.5, 0.55, 0.6, 0.65, 0.7, 0.75, 0.8 FTU/gが含まれる。
この発明の組成物及び方法の別の側面は、澱粉転化プロセスの糖化、発酵、および/またはSSF工程においてグルコアミラーゼをフィターゼと組み合わせて用いる方法に関し、この方法により、従来の方法と比較してフィチン酸の少ない最終製品および/または副生物が得られる。いくつかの実施形態では、この方法では糖化、発酵、および/またはSSF工程の前に少なくとも1の液化工程が行われる。いくつかの実施形態では、この方法により、従来の方法と比較してフィチン酸の少ないDDGSが得られる。いくつかの実施形態では、この方法によりエタノールが得られ、従来の方法と比較してフィチン酸の少ない希スティレッジが得られる。
液状化工程からのデキストリン及びオリゴ糖を含む液化物を、次工程において糖化、発酵、および/または同時糖化発酵(SSF)させることができる。糖化により、デキストリンおよび/またはオリゴ糖を含む液化物中の糖を、さらに発酵性糖に還元することができる。次に、発酵性糖を発酵性微生物により転化して、アルコールやDDGS等の最終製品にする。アルコールやDDGS等は、適切な方法により回収することができる。
この発明の組成物及び方法には、適切な発酵有機体を用いることができる。好ましい発酵有機体の例には、アルコールデヒドロゲナーゼ及びピルビン酸デヒドロゲナーゼを発現するエタノール生産性バクテリア等の、エタノール生産性微生物またはエタノール産出微生物が含まれる。エタノール生産性バクテリアはザイモモナス・モブリス(Zymomonas moblis)から得ることができる(例えばU.S. Pat. No. 5,000,000, 5,028,539, 5,424,202, 5,514,583, 及び5,554,520参照)。
エタノール産出微生物は、キシロースをキシルロースに転化する酵素であるキシロースリダクターゼ及びキシリトールデヒドロゲナーゼを発現する。これに代えて、またはこれに追加して、キシロースをキシルロースに転化するキシロースイソメラーゼを用いることができる。ペントース及びヘキソースの両者を発酵させてエタノールにすることが可能な微生物を用いることもできる。この微生物は、天然由来、または非遺伝子組み換え微生物、または遺伝子組み換え微生物のいずれでもよい。
発酵プロセスの最終製品はアルコール(例えばエタノールまたはブタノール)であり、これらを発酵培地から分離および/または精製することができる。この分離方法および精製方法は公知であり、例えば発酵培地の抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、モレキュラーシーブによる脱水、または精密濾過等の方法である。最終製品は、発酵培地を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やガスクロマトグラフィー(CG)で直接分析することにより同定することができる。
例えば、この発明の組成物及び方法により、フィターゼを用いない点を除き実質的に同一の方法と比較して、発酵濾液中のフィチン酸含有量を少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%またはそれ以上低下させることができる。
フィチン酸塩前処理培養を行わない点を除き実質的に本願発明と同一の方法と比較して、DDGS中のフィチン酸塩を少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%低下させることができる。
例えば、市販のDDGSのサンプル中のフィチン酸塩含有量は様々であるが、通常約1%から約3%またはそれ以上である。これに対し、本願の方法により得られたDDGSのフィチン酸塩含有量は約1.0%未満、約0.8%未満、または0.5%未満である。DDGSは、飼料をペレット化する前、または後に添加することができる。また、DDGSは活性フィターゼを含有している。
また、希スティレッジ中のフィチン酸塩含有量は、フィターゼを用いない点を除き同様の方法で得られる希スティレッジ中のフィチン酸塩含有量と比較して、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%低下する。
wt% (重量パーセント);℃(摂氏 度);H2O (水);dH2O (脱イオン水);dIH2O (脱イオン水、Milli-Q 濾過);gまたはgm (グラム);μg (マイクログラム);mg (ミリグラム); kg (キログラム);μL (マイクロリットル); ml及びmL (ミリリットル); mm (ミリメートル);μm (マイクロメータ);M (モル);; mM (ミリモル);μM (マイクロモル);U (ユニット); MW (分子量);sec (秒); min(s) (分/分間); hr(s) (時/時間); ds (乾燥固形成分); DO (溶解酸素); W/V (重量対体積); W/W (重量対重量);V/V (体積対体積); Genencor (Danisco US, Inc.社, Genencor Division, Palo Alto, CA); IKA (IKA Works Inc.社 2635 North Chase Parkway SE, Wilmington, NC); MT (メートルトン);Ncm (ニュートンセンチメートル); GAU (グルコアミラーゼ活性単位); FTU (フィターゼ活性単位); 及び ETOH (エタノール)。
ガラスクッカー粘度計LR-2.STシステムIKAを用いて粘土を測定した。簡潔に言うと、この粘度計はアンカー翼ミキサーを備える2000 mlの二重壁ガラス容器からなり、Eurostar Labortechnikで撹拌される出力制御粘度計である。この粘度計の粘度測定範囲は0〜600 Ncmである。
この実施例は、従来の方法と比較して、低フィチン酸含有量のDDGS及び希スティレッジが産出されるエタノール発酵における、グルコアミラーゼ(GA)とフィターゼの効率を示すものである。使用したGAは、SEQ ID NO: 1 (例えばU.S. Pat No. 7,354,752及び7,413,887参照) に相当するトリコデルマ・リーゼイ由来GA (TrGA)であった。使用したフィターゼは、SEQ ID NO: 8 に相当するブティアウクセラ由来フィターゼBP-17であった。
エタノール製造工場から副生する飼料用成分であるDDGS (可溶性物質添加乾燥蒸留穀物残渣) には、家禽、魚、豚等の非反芻動物には消化不能なフィチン酸が含まれている。このため、フィチン酸が糞尿として排出されてリン酸塩汚染を生じる。この実施例に示すように、フィターゼ等のフィチン酸を加水分解する酵素及びグルコアミラーゼを組み合わせて同時糖化/発酵プロセスにおいて添加することにより、DDGS中のフィチン酸の濃度を低下させることができる。
発酵は、マッシュ (即ち上記液化物を含む混合物) のサンプル200グラムを入れた250mlのフラスコ中で行った。各酵素溶液を希釈して、所定の活性を有する1.0 mlの酵素溶液がフラスコに添加されるようにした。各条件で複数回実験した。実験開始の約1時間前に、1%グルコースを含み酵母濃度が10%のスラリー1 mlをフラスコ添加することにより植菌した。同時糖化/発酵の際、この1.0 mlのサンプルに、活性のレベルが異なるBP-17フィターゼ(0, 0.1, 0.25, 0.5, 1.0, 3.0, 及び 5.0 FTU/gコーン乾燥固形成分)を添加した。また、可溶性デキストリンを加水分解してグルコースを生成させるために、トリコデルマGAを添加した。
発酵後、DDGS中の遊離リン及び遊離リン酸塩を分析した。遊離リン酸塩の測定は、Fiske-Subbarow (例えばFiske, CH. and Subbarow, Y. (1925) /. Biol.Chem. 66:375-400参照) の比色法により行った。サンプルをTekmar分析用ミルで粉砕し、このサンプル1gを水80mlが入った100ml定容フラスコに入れ、遊離リン酸塩を水中に抽出した。各フラスコに磁性撹拌子を入れ、室温で1時間撹拌した。次に、定容フラスコに水を加えて定容し、十分撹拌し、Whatmanのno. 1濾紙で濾過した。フラスコを32℃の水浴に入れ、時々撹拌した。次に、以下の手順で濾液中の遊離リン酸塩を測定した。
サンプル3.0mlにモリブデン酸塩試薬1mlを加え、次に還元剤1mlを加え、室温で20分間発色させた後、660nmにおける吸光度を測定した。リン酸塩濃度は、リン酸塩の検量線から求めた。測定結果は、サンプル1グラム当りのリンのμg数として求めた。
Claims (27)
- アルコールを製造する方法であって、
a)澱粉基質を含むスラリーと、オリゴ糖を産出する少なくとも1のα−アミラーゼとを接触させる工程と、
b)前記オリゴ糖と、少なくとも1のグルコアミラーゼ及び少なくとも1のフィターゼとを接触させて発酵糖を産出させる工程であって、前記フィターゼがブティアウクセラ(Buttiauxiella)属に由来する工程と、
c)前記発酵糖を発酵性有機体の存在下で発酵させてアルコールを製造する工程とを含む、アルコールを製造する方法。 - 工程(b)及び(c)を同時に行う、請求項1に記載のアルコールを製造する方法。
- 工程(a)の後であって工程(b)の前に、温度を澱粉基質のゼラチン化温度以上に昇温する工程をさらに含む、請求項1に記載のアルコールを製造する方法。
- 前記澱粉基質が粉砕穀粒であり、前記粉砕穀粒がトウモロコシ、大麦、小麦、コメ、ソルガム、ライ麦、キビ、およびライ小麦から成る群から選択される、請求項1に記載のアルコールを製造する方法。
- 前記少なくとも1のグルコアミラーゼが、SEQ ID NO:5の配列に対し配列同一性を少なくとも90%有する、請求項1に記載のアルコールを製造する方法。
- 前記フィターゼがアミノ酸位置92にアラニンを有し、および/または次のアミノ酸の少なくとも1を有する、請求項5に記載のアルコールを製造する方法:位置89のスレオニン、位置134のイソロイシン、位置174のセリン、位置 186のリジン、位置188のプロリン、位置 207のグルタミン酸、位置209のセリン、位置248のロイシン、位置256のチロシン、位置261のグルタミン酸、及び位置269のリジン。
- 前記フィターゼが少なくとも1の次のアミノ酸変異を有する、請求項5に記載のアルコールを製造する方法:A89T、D92A、T134I、F174S、T186K、A188P、K207E、A209S、S248L、Q256Y、A261E、及びN269K。
- 前記フィターゼがBP−WT、BP−11,またはBP−17のいずれかである、請求項5に記載のアルコールを製造する方法。
- 前記オリゴ糖を、α‐アミラーゼ、第2のグルコアミラーゼ、第2のフィターゼ、セルロース、プルラナーゼ、プロテアーゼ、およびラッカーゼから選択される少なくとも1の別の酵素と接触させる工程をさらに含む、請求項1に記載のアルコールを製造する方法。
- 前記アルコールがエタノールである、請求項1に記載のアルコールを製造する方法。
- 前記アルコールを回収する工程をさらに含む、請求項1に記載のアルコールを製造する方法。
- DDGSを回収する工程をさらに含む、請求項1に記載のアルコールを製造する方法。
- エタノール発酵においてフィチン酸を低減させる方法であって、
a)澱粉基質を含むスラリーに少なくとも1のα−アミラーゼを接触させる工程と、
b)前記澱粉基質に少なくとも1のグルコアミラーゼ及び少なくとも1のフィターゼを発酵性糖が産出される条件下で接触させる工程であって、前記フィターゼがSEQ ID No:5に対し少なくとも90%のアミノ酸配列配列同一性を有するとともに位置92にアラニンを備えるフィターゼである工程と、
c)前記発酵性糖をエタノールおよび/またはDDGSが産出される条件下で発酵性有機体の存在下で発酵させる工程とを含む方法。 - さらに温度を澱粉基質の液状化温度以上に昇温する工程を含む、請求項13に記載の方法。
- 工程(b)及び工程(c)を同時に行う、請求項13に記載の方法。
- さらに前記エタノールおよび/またはDDGSを回収する工程を含む、請求項13に記載の方法。
- 前記グルコアミラーゼが、トリコデルマ(Trichoderma)属、ペニシリウム(Penicillium)属、タラロミセス(Talaromyces)属, アスペルギルス(Aspergillus)属、およびフミコーラ(Humicola)属から成る群から選択される糸状菌に由来する、請求項13に記載の方法。
- 前記トリコデルマ属が、トリコデルマ・リーゼイ(reesei)である、請求項13に記載の方法。
- 前記フィターゼがBP−17である、請求項13に記載の方法。
- 前記DDGSが活性フィターゼを含有する、請求項13に記載の方法。
- 前記DDGSを穀物または飼料とブレンドして動物飼料を製造するとき、前記活性フィターゼが前記動物飼料中のフィチン酸を低減させる、請求項20に記載の方法。
- 前記澱粉基質が粉砕穀粒である、請求項13に記載の方法。
- 前記穀粒がトウモロコシ、大麦、キビ、小麦、コメ、ソルガム、ライ麦、およびライ小麦から成る群から選択される、請求項22に記載の方法。
- DDGS中のフィチン酸を低減させる方法であって、
a)澱粉基質を含むスラリーに少なくとも1のα−アミラーゼを接触させる工程と、
b)前記澱粉基質に少なくとも1のトリコデルマ・リーゼイ由来グルコアミラーゼ(TrGA)及び少なくとも1のフィターゼを発酵性糖が産出される条件下で接触させる工程であって、前記フィターゼがSEQ ID No:5に対し少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する工程と、
c)前記発酵性糖を発酵性有機体の存在下で発酵させてエタノールおよび/またはDDGSを製造する工程とを含む方法。 - 工程(b)及び工程(c)を同時に行う、請求項24に記載の方法。
- 前記フィターゼがSEQ ID No:5のアミノ酸配列に対し少なくとも95%の配列同一性を有するとともに、アミノ酸位置92にアラニンを有する、請求項24に記載の方法。
- 前記フィターゼがBP−17である、請求項24に記載の方法。
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