JP2011252834A - センサ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】基台が有する凹部の表面を被覆することのできるセンサ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るセンサの例によるフローセンサは、一方の面にキャビティ25を有する基台20と、基台20の一方の面の上に設けられるセンサ薄膜30と、を備える。センサ薄膜30は、キャビティ25に通ずるスリット36を有している。キャビティ25の断面形状は、例えば舟形凹状であり、キャビティ25の表面Aは、原子層堆積法により形成された膜Xで被覆されている。
【選択図】図2
【解決手段】本発明に係るセンサの例によるフローセンサは、一方の面にキャビティ25を有する基台20と、基台20の一方の面の上に設けられるセンサ薄膜30と、を備える。センサ薄膜30は、キャビティ25に通ずるスリット36を有している。キャビティ25の断面形状は、例えば舟形凹状であり、キャビティ25の表面Aは、原子層堆積法により形成された膜Xで被覆されている。
【選択図】図2
Description
本発明に係るいくつかの態様は、基台(基板)と基台の一方の面上に設けられたセンサ及びその製造方法に関する。
基台に支持された平面状の検出部(センシング部)を備えるセンサにおいて、検出部の表面を、スパッタリング法、CVD法、蒸着法などの方法を用いて被膜するものがある。
また、平面状の検出部の表面をシリコン系樹脂で被覆するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。かかるシリコン系樹脂は、スパッタリング法やCVD法により形成される無機膜材料よりも被覆性に優れており、突起や段差を有する三次元構造の検出部を被覆及び保護することが可能となる。
しかしながら、センサが腐食性を有するものに直接接触するような場合、シリコン系樹脂で被覆したセンサでは、形成された被膜が耐食性を有さないため、当該センサを適用することができない。また、センサを無機材料で被膜を形成した場合、平面状の検出部(センシング部)は、耐食性の膜により保護可能であるが、キャビティのような凹部を有する基台に対してオーバーハング状に張り出している遮蔽物がある場合には遮蔽物の裏側に回り込んで膜を形成することができないため、キャビティ底面などの保護は困難であるという問題があった。
本発明のいくつかの態様は前述の問題に鑑みてなされたものであり、基台が有する凹部の表面を膜で被覆することのできるセンサ及びその製造方法を提供することを目的の1つとする。
本発明に係るセンサは、一方の面に凹部を有する基台と、一方の面上に設けられ、凹部に通ずる開口部を有するセンサ薄膜と、を備え、凹部の表面が、原子層堆積法により形成された膜で被覆されている。
かかる構成によれば、凹部を有する基台の一方の面上に、当該凹部に通ずる開口部を有するセンサ薄膜が設けられ、当該凹部の表面が、原子層堆積法により形成された膜で被覆されている。ここで、原子層堆積法は、原料化合物の分子に対して一層ごとに、表面吸着、反応による成膜、パージによる余剰分子の除去(取り除き)というサイクルを繰り返すので、突起(突出部)や段差、又は遮蔽物の裏側などの3次元構造の微小空間にも入り込んで成膜することが可能である。また、原子層堆積法は、反応原料が吸着する全範囲にわたって同等の成長速度を維持する特性を有しているので、比較的大きな範囲(大面積)に均一かつ薄く成膜することが可能である。
好ましくは、前述の膜は、フッ素含有物質に対して耐食性を有する。
かかる構成によれば、凹部の表面を被覆している膜が、フッ素含有物質に対して耐食性を有する。これにより、従来のセンサでは凹部の表面が露出していたり、又は十分に被覆されていなかったりしていたのに対し、本発明のセンサでは凹部の表面がフッ素含有物質に対して耐食性を有する膜で被覆されているので、例えばフッ素含有ガスなどの腐食性を有する気体が存在する環境下において、本発明のセンサを好適に用いることができる。
好ましくは、センサ薄膜が所定の物理量を検出するための回路部を有し、回路部の少なくとも一部が、前述の膜で被覆されている。
かかる構成によれば、センサ薄膜の回路部の少なくとも一部も、原子層堆積法により形成された膜で被覆されている。これにより、回路部、特に検出部を保護することができる。また、原子層堆積法は均一かつ薄く成膜することが可能なので、従来、被覆する膜が不均一になったり厚くなったりすることで生じていた、検出部の感度や応答性の低下や応力による破損のおそれを低減することができる。
好ましくは、基台の側面が前述の膜で被覆されている。
かかる構成によれば、基台の側面も、原子層堆積法により形成された膜で被覆されている。これにより、例えばフッ素含有ガスなどの腐食性を有する気体に基台の側面を露出する(さらす)場合に、好適に用いることができる。
好ましくは、前述の膜は、酸化アルミニウムである。
かかる構成によれば、原子層堆積法により形成された膜は、酸化アルミニウム(アルミナ、Al2O3)である。これにより、フッ素含有物質に対して耐食性を有する膜を容易に実現することができる。
好ましくは、前述の膜は、窒化ケイ素である。
かかる構成によれば、原子層堆積法により形成された膜は、窒化ケイ素(SiN)である。これにより、フッ素含有物質に対して耐食性を有する膜を容易に実現することができる。また、例えば回路部を窒化ケイ素の絶縁膜で被覆した後に絶縁膜の上に膜を形成して被覆する場合、絶縁膜に欠損(欠陥)が生じていたときに、窒化ケイ素の膜で絶縁膜の欠損を補う(埋める)ことができ、センサの製品不良を低減することができる。
本発明に係るセンサの製造方法は、基台と該基台の一方の面上に設けられたセンサ薄膜とを備えるセンサの製造方法であって、センサ薄膜に一方の面に通ずる開口部を形成する工程と、一方の面に凹部を形成する工程と、原子層堆積法により形成される膜で凹部の表面を被覆する工程と、を含む。
かかる構成によれば、基台の一方の面上に設けられたセンサ薄膜に当該一方の面に通ずる開口部が形成され、当該一方の面に凹部が形成され、原子層堆積法により形成される膜で当該凹部の表面が被覆される。ここで、原子層堆積法は、原料化合物の分子に対して一層ごとに、表面吸着、反応による成膜、パージによる余剰分子の除去(取り除き)というサイクルを繰り返すので、突起(突出部)や段差、又は遮蔽物の裏側などの3次元構造の微小空間にも入り込んで成膜することが可能である。また、原子層堆積法は、反応原料が吸着する全範囲にわたって同等の成長速度を維持する特性を有しているので、比較的大きな範囲(大面積)に均一かつ薄く成膜することが可能である。
好ましくは、前述の膜は、フッ素含有物質に対して耐食性を有する。
かかる構成によれば、凹部の表面を被覆する膜が、フッ素含有物質に対して耐食性を有する。これにより、従来のセンサでは凹部の表面が露出していたり、又は十分に被覆されていなかったりしていたのに対し、本実施形態により製造されるセンサでは凹部の表面がフッ素含有物質に対して耐食性を有する膜で被覆されているので、例えばフッ素含有ガスなどの腐食性を有する気体が存在する環境下において、本実施形態のセンサを好適に用いることができる。
好ましくは、前述のセンサ薄膜が所定の物理量を検出するための回路部を有し、凹部を被覆する工程が、前述の膜で回路部の少なくとも一部を被覆する工程を含む。
かかる構成によれば、センサ薄膜の回路部の少なくとも一部も、原子層堆積法により形成される膜で被覆される。これにより、回路部の一部、特に検出部を保護することができる。また、原子層堆積法は均一かつ薄く成膜することが可能なので、従来、被覆する膜が不均一になったり厚くなったりすることで生じていた、検出部の感度や応答性の低下や応力による破損のおそれを低減することができる。
好ましくは、凹部を被覆する工程が、前述の膜で基台の側面を被覆する工程を含む。
かかる構成によれば、基台の側面も、原子層堆積法により形成される膜で被覆される。これにより、例えばフッ素含有ガスなどの腐食性を有する気体にセンサの側面を露出する(さらす)場合に、好適に用いることができる。
好ましくは、前述の膜は、酸化アルミニウムである。
かかる構成によれば、原子層堆積法により形成される膜は、酸化アルミニウム(アルミナ、Al2O3)である。これにより、フッ素含有物質に対して耐食性を有する膜を容易に実現することができる。
好ましくは、前述の膜は、窒化ケイ素である。
かかる構成によれば、原子層堆積法により形成される膜は、窒化ケイ素(SiN)である。これにより、フッ素含有物質に対して耐食性を有する膜を容易に実現することができる。また、例えば回路部を窒化ケイ素の絶縁膜で被覆した後に絶縁膜の上に膜を形成して被覆する場合、絶縁膜に欠損(欠陥)が生じていたときに、窒化ケイ素の膜で絶縁膜の欠損を補う(埋める)ことができ、センサの製品不良を低減することができる。
本発明によれば、原子層堆積法によって膜を形成することにより、凹部に対してセンサ薄膜がオーバーハング状に張り出している部分(遮蔽物)を回り込み、例えば断面が舟形凹状の凹部の船首及び船尾部分にも成膜することができ、凹部の表面を均一かつ薄く被覆することできる。
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。なお、以下の説明において、図面の上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」という。
<センサ>
図1乃至図6は、本発明に係るセンサの一例を示すためのものである。図1は、本発明に係るセンサの例によるフローセンサを説明する斜視図であり、図2は、図1に示したVI−VI線矢視方向断面図である。図1及び図2に示すように、フローセンサ10は、一方の面(図1及び図2において上面)にキャビティ(凹部)25を有する基台20と、基台20の上にキャビティ25を覆うように配置されたセンサ薄膜30と、を備える。
図1乃至図6は、本発明に係るセンサの一例を示すためのものである。図1は、本発明に係るセンサの例によるフローセンサを説明する斜視図であり、図2は、図1に示したVI−VI線矢視方向断面図である。図1及び図2に示すように、フローセンサ10は、一方の面(図1及び図2において上面)にキャビティ(凹部)25を有する基台20と、基台20の上にキャビティ25を覆うように配置されたセンサ薄膜30と、を備える。
また、フローセンサ10はセンサ薄膜30の中央部に設けられ、一定の速度で流れる流体を加熱するための、ヒータ(抵抗素子)31と、センサ薄膜30においてヒータ31を挟んでヒータ31の両側に設けられた一組の抵抗素子32,33と、基台20の一辺側に設けられた周囲温度センサ(抵抗素子)34と、センサ薄膜30の対角関係にある角部近傍に設けられた電極35と、を更に備える。また、センサ薄膜30は、基台20のキャビティ25に通ずる複数のスリット(開口部)36を有する。
本実施形態のヒータ31、抵抗素子32,33、周囲温度センサ34、及び電極35は、本発明に係るセンサにおいて所定の物理量を検出するための「回路部」の一例に相当する。回路部は、基台20の上面に下部絶縁膜(図示省略)を形成した後に、この下部絶縁膜上に設けられるのが好ましい。これにより、回路部を基台20と電気的に絶縁することができる。さらに、回路部の上面に上部絶縁膜(図示省略)を形成するのが好ましい。これにより、回路部の電気的に絶縁性を高める。なお、下部絶縁膜及び上部絶縁膜の材料としては、例示的に、窒化ケイ素(SiN)や酸化ケイ素(SiO2)などが使用可能である。
このような構成を備えるフローセンサ10は、例えば図1及び図2中にブロック矢印で示すように、測定対象である流体、例えばガスの流れる方向に沿って、抵抗素子32、ヒータ31、及び抵抗素子33が順に並ぶように配置される。この場合、抵抗素子32は、ヒータ31よりも上流側(図1及び図2において左側)に設けられた上流側測温抵抗素子(上流側温度センサ)として機能し、抵抗素子33は、ヒータ31よりも下流側(図1及び図2において右側)に設けられた下流側測温抵抗素子(下流側温度センサ)として機能する。
キャビティ25を覆うセンサ薄膜30は、熱容量が小さく、基台20に対して断熱性を有するダイアフラムを成す。周囲温度センサ34は、フローセンサ10が設置された管路(図示省略)を流通するガスの温度を測定する。ヒータ31は、周囲温度センサ34が計測したガスの温度よりも一定温度(例えば40℃)高くなるように、ガスを加熱する。上流側測温抵抗素子32は、ヒータ31よりも上流側の温度を検出するのに用いられ、下流側測温抵抗素子33は、ヒータ31よりも下流側の温度を検出するのに用いられる。
ここで、管路内のガスが静止している場合、ヒータ31で加えられた熱は、上流方向及び下流方向へ対称的に拡散する。従って、上流側測温抵抗素子32及び下流側測温抵抗素子33の温度は等しくなり、上流側測温抵抗素子32及び下流側測温抵抗素子33の電気抵抗は等しくなる。これに対し、管路内のガスが上流から下流に流れている場合、ヒータ31で加えられた熱は、下流方向に運ばれる。従って、上流側測温抵抗素子32の温度よりも、下流側測温抵抗素子33の温度が高くなる。
このような温度差は、上流側測温抵抗素子32の電気抵抗と下流側測温抵抗素子33の電気抵抗との間に差を生じさせる。下流側測温抵抗素子33の電気抵抗と上流側測温抵抗素子32の電気抵抗との差は、管路内のガスの速度や流量と相関関係がある。そのため、下流側測温抵抗素子33の電気抵抗と上流側測温抵抗素子32の電気抵抗との差を基に、管路を流れる流体の速度(流速)や流量を算出することができる。抵抗素子31、32及び33の電気抵抗の情報は、図1中に示す電極35を通じて電気信号として取り出すことができる。
図1及び図2に示す基台20の厚さは、例えば525μmであり、基台20の縦横の寸法は、例えばそれぞれ2mm程度である。但し、基板20の寸法及び形状は、これらに限られない。基台20の材料としては、例示的に、シリコン(Si)などが使用可能である。
キャビティ25は、異方性エッチングやMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術などを用いて形成することができる。図2には、一例として断面形状が舟形凹状のキャビティ25が形成された様子を例示している。
図1及び図2に示すセンサ薄膜30の厚さは、例えば1μmであり、センサ薄膜30の縦横の寸法は、例えば基台20と同一(2mm程度)である。センサ薄膜30の材料としては、例示的に、窒化ケイ素(SiN)や酸化ケイ素(SiO2)などが使用可能である。
各抵抗素子31,32,33,34のそれぞれの材料には、白金(Pt)などが使用可能である。また、各抵抗素子31,32,33,34の形成には、リソグラフィ法などが適用可能である。各抵抗素子31,32,33,34はセンサ薄膜30によって基台
20と電気的に絶縁されている。
20と電気的に絶縁されている。
図2に示すキャビティ25の表面Aは、原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)により形成された膜Xで被覆されている。ここで、原子層堆積法は、原料化合物の分子に対して一層ごとに、表面吸着、反応による成膜、パージによる余剰分子の除去(取り除き)というサイクルを繰り返すので、突起(突出部)や段差、又は遮蔽物の裏側などの3次元構造の微小空間にも入り込んで成膜することが可能である。また、原子層堆積法は、反応原料が吸着する全範囲にわたって同等の成長速度を維持する特性を有しているので、比較的大きな範囲(大面積)に均一かつ薄く成膜することが可能である。
原子層堆積法により形成される膜Xは、フッ素含有物質、例えばトリフルオロメタン(CHF3)ガスや六フッ化硫黄(SF6)ガスなどの腐食性を有する気体に対し、耐食性を有することが好ましい。これにより、従来のセンサではキャビティ(凹部)の表面が露出していたり、又は十分に被覆されていなかったりしていたのに対し、本実施形態のフローセンサ10ではキャビティ25の表面Aがフッ素含有物質に対して耐食性を有する膜Xで被覆されているので、例えばフッ素含有ガスなどの腐食性を有する気体が存在する環境下において、本実施形態のフローセンサ10を好適に用いることができる。
キャビティ25の表面Aと同様に、図1及び図2に示す各抵抗素子31,32,33,34、すなわち、電極35を除く回路部の一部も、原子層堆積法により形成された膜Xで完全に被覆されている。これにより、回路部の一部、特に抵抗素子31,32,33を完全に被覆することができる。また、原子層堆積法は均一かつ薄く成膜することが可能なので、従来、被覆する膜が不均一になったり厚くなったりすることで生じていた、感度や応答性の低下、及び応力による破損のおそれを低減することができる。なお、電極35は、外部の回路などに電気的に接続するために、被覆せずに露出させる。よって、原子層堆積法を用いて成膜するときに、電極35をマスクなどであらかじめ保護しておく。
図3は、図1に示したフローセンサの他の例を説明する斜視図であり、図4は、図3に示したVII−VII線矢視方向断面図である。図1及び図2では、回路部の一部を被覆するようにしたが、これに限定されない。図3及び図4に示すように、電極35の代わりに、基台20の下面(裏面)に電極21を設けるようにしてもよい。電極21は、基台20を貫通する電極22を介してセンサ薄膜30の回路部に電気的に接続しており、この電極21から外部の回路などに電気的に接続することが可能となる。この場合、各抵抗素子31,32,33,34、すなわち、回路部の全部が、原子層堆積法により形成された膜Xで被覆される。
膜Xの材料(原料)としては、例えば酸化アルミニウム(アルミナ、Al2O3)を用いることが好ましい。これにより、フッ素含有物質に対して耐食性を有する膜Xを容易に実現することができる。
図5及び図6は、回路部を被覆する膜を説明するための要部拡大側方断面図である。センサ薄膜30を下部絶縁膜37及び上部絶縁膜38として形成する場合、膜Xは下部絶縁膜37の下及び上部絶縁膜38の上に一様に形成される。この場合、膜Xの材料(原料)としては、例えば窒化ケイ素(SiN)が更に好ましい。これにより、フッ素含有物質に対して耐食性を有する膜Xを容易に実現することができる。また、図5に示すように、例えば抵抗素子31の上に形成された窒化ケイ素の上部絶縁膜38に欠損(欠陥)Bが生じたときに、図6に示すように、窒化ケイ素の膜Xで上部絶縁膜38の欠損Bを補う(埋める)ことができ、フローセンサ10の製品不良を低減することができる。
本実施形態では、本発明に係るセンサの一例としてフローセンサ10を示したが、これに限定されず、温度センサ、圧力センサなど他の種類のセンサであってもよい。
このように、本実施形態におけるフローセンサ10によれば、キャビティ25を有する基台20の一方の面上に、キャビティ25に通ずるスリット36を有するセンサ薄膜30が設けられ、キャビティ25の表面Aが、原子層堆積法により形成された膜Xで被覆されている。ここで、原子層堆積法は、原料化合物の分子に対して一層ごとに、表面吸着、反応による成膜、パージによる余剰分子の除去(取り除き)というサイクルを繰り返すので、突起(突出部)や段差、又は遮蔽物の裏側などの3次元構造の微小空間にも入り込んで成膜することが可能である。また、原子層堆積法は、反応原料が吸着する全範囲にわたって同等の成長速度を維持する特性を有しているので、比較的大きな範囲(大面積)に均一かつ薄く成膜することが可能である。従って、原子層堆積法によって膜Xを形成することにより、キャビティ25に対してセンサ薄膜30がオーバーハング状に張り出している部分(遮蔽物)を回り込み、例えば図2に示す断面形状が舟形凹状のキャビティ25の船首及び船尾部分にも成膜することができ、膜Xでキャビティ25の表面Aを均一かつ薄く被覆することできる。
また、本実施形態におけるフローセンサ10によれば、キャビティ25の表面Aを被覆している膜Xが、フッ素含有物質に対して耐食性を有する。これにより、従来のセンサではキャビティの表面が露出していたり、又は十分に被覆されていなかったりしていたのに対し、本実施形態のフローセンサ10ではキャビティ25の表面Aがフッ素含有物質に対して耐食性を有する膜Xで被覆されているので、例えばフッ素含有ガスなどの腐食性を有する気体が存在する環境下において、本実施形態のフローセンサ10を好適に用いることができる。
また、本実施形態におけるフローセンサ10によれば、センサ薄膜30の回路部の少なくとも一部も、原子層堆積法により形成された膜Xで被覆されている。これにより、回路部の一部、特に抵抗素子31,32,33などを完全に被覆することができる。また、原子層堆積法は均一かつ薄く成膜することが可能なので、従来、被覆する膜が不均一になったり厚くなったりすることで生じていた、感度や応答性の低下、及び応力による破損のおそれを低減することができる。
また、本実施形態におけるフローセンサ10によれば、原子層堆積法により形成された膜Xは、酸化アルミニウム(アルミナ、Al2O3)である。これにより、フッ素含有物質に対して耐食性を有する膜Xを容易に実現することができる。
また、本実施形態におけるフローセンサ10によれば、原子層堆積法により形成された膜Xは、窒化ケイ素(SiN)である。これにより、フッ素含有物質に対して耐食性を有する膜Xを容易に実現することができる。また、図5に示すように、例えば抵抗素子31上に形成された窒化ケイ素の上部絶縁膜38に欠損(欠陥)Bが生じたときに、図6に示すように、窒化ケイ素の膜Xで上部絶縁膜38の欠損Bを補う(埋める)ことができ、フローセンサ10の製品不良を低減することができる。
(変形例)
図7及び図8は、本発明に係るセンサの例によるフローセンサの変形例を示すためのものである。なお、特に記載がない限り、前述した実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表し、その説明を省略する。また、図示しない構成部分は、前述した実施形態と同様とする。
図7及び図8は、本発明に係るセンサの例によるフローセンサの変形例を示すためのものである。なお、特に記載がない限り、前述した実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表し、その説明を省略する。また、図示しない構成部分は、前述した実施形態と同様とする。
図7は、図1に示したフローセンサの変形例における設置例を説明する側方断面図であり、図8は、図7に示したフローセンサの側方断面図である。フローセンサは、通常、流体が流通する管路の内壁に設置される。例えば、図7に示すように、フローセンサ10Aは、管路7の上部の内壁に設けられ、図1に示した電極35と電極92とがボンディングワイヤ93などの電気配線を介して電気的に接続されている。電極92は、例えばフローセンサ10Aを備える流量計の本体側の回路などに電気的に接続されており、フローセンサ10Aで得られる電気信号を伝達することができる。また、電極92は、管路7に形成された開口部(図示省略)を貫通しており、開口部は例えばハーメチックシールなどのシール部材8で気密封止されている。これにより、管路7の気密性を確保し、管路7を流通する流体が漏えいするのを防止する。
図8に示すように、フローセンサ10Aは、図2及び図4に示すキャビティ25の表面A及び回路部の一部と同様に、基台20の側面Cも、原子層堆積法により形成された膜Xで被覆されている。これにより、図7に示すように、例えばフッ素含有ガスなどの腐食性を有する流体にフローセンサ10Aの側面を露出する(さらす)場合に、好適に用いることができる。
このように、変形例におけるフローセンサ10Aによれば、基台20の側面Cも、原子層堆積法により形成された膜Xで被覆されている。これにより、前述したフローセンサ10と同様の効果に加え、図7に示すように、例えばフッ素含有ガスなどの腐食性を有する流体にフローセンサ10Aの側面を露出する(さらす)場合に、好適に用いることができる。
<センサの製造方法>
図9乃至図15は、本発明に係るセンサの製造方法の一例を示すためのものである。図9乃至図15は、本発明に係るセンサの製造方法の一例を説明する側方断面図である。最初に、図9に示すように、シリコンなどの基台60の一方の面及び他方の面(図9において上面及び下面)に、窒化ケイ素又は酸化ケイ素などの絶縁膜71を全面にわたって形成する。なお、基台60の下面に形成した絶縁膜71に代えてガラスなどの基板を接合するようにしてもよい。
図9乃至図15は、本発明に係るセンサの製造方法の一例を示すためのものである。図9乃至図15は、本発明に係るセンサの製造方法の一例を説明する側方断面図である。最初に、図9に示すように、シリコンなどの基台60の一方の面及び他方の面(図9において上面及び下面)に、窒化ケイ素又は酸化ケイ素などの絶縁膜71を全面にわたって形成する。なお、基台60の下面に形成した絶縁膜71に代えてガラスなどの基板を接合するようにしてもよい。
次に、図10に示すように、基台60の上面に形成した絶縁膜71の上に、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の方法により、金属や酸化物を付着させ、所定の物理量を検出するための回路部を構成する各要素72,73,74,75を形成(パターニング)する。
次に、図11に示すように、各要素72,73,74,75の上に、更に窒化ケイ素又は酸化ケイ素などの絶縁膜76を形成する。
次に、図12に示すように、基台60の上面に形成された絶縁膜71,76における所定位置を、マスクなどを用いてエッチングして基台60の上面に通ずる複数のスリット(開口部)77を形成するとともに、絶縁膜76において電極となる要素75の上を、マスクなどを用いてエッチングして開口部75aを形成する。
次に、図13に示すように、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の方法により、図12における開口部75aの位置に金属や酸化物を付着させ、外部の回路などに電気的に接続するための電極75bを形成する。これにより、基台60の上面にセンサ薄膜70が設けられる。
次に、図14に示すように、複数のスリット77を介して基台60の上面に異方性エッチングを施し、例えば断面形状が舟形凹状のキャビティ(凹部)65を形成する。
次に、図15に示すように、原子層堆積法により形成される膜Xでキャビティ65の表面Dを被覆する。これにより、センサ50が製造される。ここで、原子層堆積法は、原料化合物の分子に対して一層ごとに、表面吸着、反応による成膜、パージによる余剰分子の除去(取り除き)というサイクルを繰り返すので、突起(突出部)や段差、又は遮蔽物の裏側などの3次元構造の微小空間にも入り込んで成膜することが可能である。また、原子層堆積法は、反応原料が吸着する全範囲にわたって同等の成長速度を維持する特性を有しているので、比較的大きな範囲(大面積)に均一かつ薄く成膜することが可能である。
原子層堆積法により形成される膜Xは、フッ素含有物質、例えばトリフルオロメタン(CHF3)ガスや六フッ化硫黄(SF6)ガスなどの腐食性を有する気体に対し、耐食性を有することが好ましい。これにより、従来のセンサではキャビティの表面が露出していたり、又は十分に被覆されていなかったりしていたのに対し、本実施形態により製造されるセンサ50ではキャビティ65の表面Dがフッ素含有物質に対して耐食性を有する膜Xで被覆されているので、例えばフッ素含有ガスなどの腐食性を有する気体が存在する環境下において、本実施形態のセンサ50を好適に用いることができる。
また、キャビティ65の表面Dと同様に、図15に示す各要素72,73,74、すなわち、電極75bを除く回路部の一部も、原子層堆積法により形成される膜Xで被覆する。これにより、回路部の一部、特に検出部を保護することができる。また、原子層堆積法は均一かつ薄く成膜することが可能なので、従来、被覆する膜が不均一になったり厚くなったりすることで生じていた、検出部の感度や応答性の低下、及び応力による破損のおそれを低減することができる。
なお、図3及び図4に示した場合と同様に、基台60の下面(裏面)に電極を設けるときには、回路部の全部を、原子層堆積法により形成される膜Xで被覆してもよい。
さらに、図15に示す基台60の側面Eも、原子層堆積法により形成される膜Xで被覆する。これにより、図7に示した場合と同様に、例えばフッ素含有ガスなどの腐食性を有する気体にセンサ50の側面を露出する(さらす)場合に、好適に用いることができる。
膜Xの材料(原料)としては、例えば酸化アルミニウム(アルミナ、Al2O3)を用いることが好ましい。これにより、フッ素含有物質に対して耐食性を有する膜Xを容易に実現することができる。
また、絶縁膜71,76を形成する場合、膜Xの材料(原料)としては、例えば窒化ケイ素(SiN)が更に好ましい。これにより、フッ素含有物質に対して耐食性を有する被膜を容易に実現することができる。また、図5に示した場合と同様に、例えば回路部を構成する要素72,73,74の上に形成された窒化ケイ素の絶縁膜76に欠損(欠陥)が生じたときに、図6に示した場合と同様に、窒化ケイ素の膜Xで絶縁膜76の欠損を補う(埋める)ことができ、センサ50の製品不良を低減することができる。
本実施形態では、本発明に係るセンサの製造方法の一例として、センサ50単位の製造方法を示したが、これに限定されない。例えば、基台60は、一枚のウエハ(図示省略)から複数個に分割されて(切り分けられて)使用されるが、複数個の基台60に分割する前のウエハの状態で複数のセンサ50を製造した後に、ウエハを所定サイズに分割するようにしてもよい。この場合、複数個のセンサ50を原子層堆積法により形成される膜Xで同時に被覆することができるので、膜Xで被覆する工程のスループットを向上させることができる。
あるいは、図9に示したフローセンサ10Aのように、例えばシール部材8、電極92、ボンディングワイヤ93などを取り付け、センサ50を一体化(パッケージ化)した後に、一体化されたセンサ50を原子層堆積法により形成される膜Xで被覆するようにしてもよい。この場合、一体化されたセンサ50において露出している箇所を膜Xで被覆することができるので、例えばセンサ50の耐食性を更に高めることができる。
このように、本実施形態におけるセンサ50の製造方法によれば、基台60の上面の上に設けられたセンサ薄膜70に、当該上面に通ずるスリット(開口部)77が形成され、当該上面にキャビティ(凹部)65が形成され、原子層堆積法により形成される膜Xで当該キャビティ65の表面Dが被覆される。ここで、原子層堆積法は、原料化合物の分子に対して一層ごとに、表面吸着、反応による成膜、パージによる余剰分子の除去(取り除き)というサイクルを繰り返すので、突起(突出部)や段差、又は遮蔽物の裏側などの3次元構造の微小空間にも入り込んで成膜することが可能である。また、原子層堆積法は、反応原料が吸着する全範囲にわたって同等の成長速度を維持する特性を有しているので、比較的大きな範囲(大面積)に均一かつ薄く成膜することが可能である。従って、原子層堆積法によって膜Xを形成することにより、キャビティ65に対してセンサ薄膜70がオーバーハング状に張り出している部分(遮蔽物)を回り込み、例えば図15に示す断面形状が舟形凹状のキャビティ65の船首及び船尾部分にも成膜することができ、被膜でキャビティ65の表面Dを均一かつ薄く被覆することできる。
また、本実施形態におけるセンサ50の製造方法によれば、キャビティ65の表面Dを被覆する膜Xが、フッ素含有物質に対して耐食性を有する。これにより、従来のセンサではキャビティの表面が露出していたり、又は十分に被覆されていなかったりしていたのに対し、本実施形態により製造されるセンサ50ではキャビティ65の表面Dがフッ素含有物質に対して耐食性を有する膜Xで被覆されているので、例えばフッ素含有ガスなどの腐食性を有する気体が存在する環境下において、本実施形態のセンサ50を好適に用いることができる。
また、本実施形態におけるセンサ50の製造方法によれば、センサ薄膜70の回路部の少なくとも一部も、原子層堆積法により形成される膜Xで被覆される。これにより、回路部の一部、特に検出部を保護することができる。また、原子層堆積法は均一かつ薄く成膜することが可能なので、従来、被覆する膜が不均一になったり厚くなったりすることで生じていた、感度や応答性の低下、及び応力による破損のおそれを低減することができる。
また、本実施形態におけるセンサ50の製造方法によれば、基台60の側面Eも、原子層堆積法により形成される膜Xで被覆される。これにより、図7に示した場合と同様に、例えばフッ素含有ガスなどの腐食性を有する気体にセンサ50の側面を露出する(さらす)場合に、好適に用いることができる。
また、本実施形態におけるセンサ50の製造方法によれば、原子層堆積法により形成される膜Xは、酸化アルミニウム(アルミナ、Al2O3)である。これにより、フッ素含有物質に対して耐食性を有する膜Xを容易に実現することができる。
また、本実施形態におけるセンサ50の製造方法によれば、原子層堆積法により形成される膜Xは、窒化ケイ素(SiN)である。これにより、フッ素含有物質に対して耐食性を有する膜Xを容易に実現することができる。また、図5に示した場合と同様に、例えば回路部を構成する要素72,73,74の上に形成された窒化ケイ素の絶縁膜76に欠損(欠陥)が生じたときに、図6に示した場合と同様に、窒化ケイ素の膜Xで絶縁膜76の欠損(欠陥)部分を補う(埋める)ことができ、センサ50の製品不良を低減することができる。
なお、前述の各実施形態の構成は、組み合わせたり或いは一部の構成部分を入れ替えたりしたりしてもよい。また、本発明の構成は前述の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。
10…フローセンサ
20,60…基台
25,65…キャビティ
30,70…センサ薄膜
31,32,33,34…抵抗素子
35…電極
36…スリット
50…センサ
72,73,74,75…要素
77…スリット
X…膜
20,60…基台
25,65…キャビティ
30,70…センサ薄膜
31,32,33,34…抵抗素子
35…電極
36…スリット
50…センサ
72,73,74,75…要素
77…スリット
X…膜
Claims (12)
- 一方の面に凹部を有する基台と、
前記一方の面上に設けられ、前記凹部に通ずる開口部を有するセンサ薄膜と、を備え、
前記凹部の表面が、原子層堆積法により形成された膜で被覆されている
ことを特徴とするセンサ。 - 前記膜は、フッ素含有物質に対して耐食性を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のセンサ。 - 前記センサ薄膜が、所定の物理量を検出するための回路部を有し、
前記回路部の少なくとも一部が、前記膜で被覆されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ。 - 前記基台の側面が前記膜で被覆されている
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のセンサ。 - 前記膜は、酸化アルミニウムである
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のセンサ。 - 前記膜は、窒化ケイ素である
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のセンサ。 - 基台と該基台の一方の面上に設けられたセンサ薄膜とを備えるセンサの製造方法であって、
前記半導体基板に前記一方の面に通ずる開口部を形成する工程と、
前記一方の面に凹部を形成する工程と、
原子層堆積法により形成される膜で前記凹部の表面を被覆する工程と、を含む
ことを特徴とするセンサの製造方法。 - 前記膜は、フッ素含有物質に対して耐食性を有する
ことを特徴とする請求項7に記載のセンサの製造方法。 - 前記センサ薄膜が、所定の物理量を検出するための回路部を有し、
前記凹部を被覆する工程が、前記膜で前記回路部の少なくとも一部を被覆する工程を含む
ことを特徴とする請求項7又は8に記載のセンサの製造方法。 - 前記凹部を被覆する工程が、膜で前記基台の側面を被覆する工程を含む
ことを特徴とする請求項7乃至9の何れか一項に記載のセンサの製造方法。 - 前記膜は、酸化アルミニウムである
ことを特徴とする請求項7乃至10の何れか一項に記載のセンサの製造方法。 - 前記膜は、窒化ケイ素である
ことを特徴とする請求項7乃至10の何れか一項に記載のセンサの製造方法。
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-
2010
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