JP2011247651A - プラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法 - Google Patents

プラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】プラント構成部材の表面へのフェライト皮膜の形成に要する時間を短縮し、かつ、プラント構成部材の水平表面及び垂直表面に形成されるそれぞれのフェライト皮膜の厚みの差を小さくできるプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法を提供する。
【解決手段】皮膜形成装置30の、磁気フィルタ80を設けた循環配管35の両端を、BWRプラントの再循環系配管に接続する。薬液タンク40からのヒドラジン、薬液タンク45からの鉄(II)イオン及びギ酸、及び薬液タンク46からの過酸化水素が、循環配管35に注入される。磁気フィルタ80は、皮膜形成液に含まれる、粒径が70nmより大きいフェライト粒子を除去する。この結果、pH7.0及び75℃の、鉄(II)イオン、ギ酸、ヒドラジン及び粒径が70nm以下のフェライト粒子を含む皮膜形成液が、再循環系配管に供給される。
【選択図】図3

Description

本発明は、プラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法に係り、特に、沸騰水型原子力発電プラントに適用するのに好適なプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法に関する。
発電プラントとして、例えば、沸騰水型原子力発電プラント(以下、BWRプラントという)及び加圧水型原子力発電プラント(以下、PWRプラントという)が知られている。BWRプラントは、原子炉圧力容器(RPVと称する)内に炉心を内蔵した原子炉を有する。再循環ポンプ(またはインターナルポンプ)によって炉心に供給された冷却水は、炉心内に装荷された燃料集合体内の核燃料物質の核***で発生する熱によって加熱され、一部が蒸気になる。この蒸気は、原子炉からタービンに導かれ、タービンを回転させる。タービンから排出された蒸気は、復水器で凝縮され、水になる。この水は、給水として原子炉に供給される。給水は、原子炉内での放射性腐食生成物の発生を抑制するため、給水配管に設けられたろ過脱塩装置で主として金属不純物が除去される。
BWRプラント及びPWRプラント等の発電プラントでは、原子炉圧力容器などの主要な構成部材は、腐食を抑制するために、水が接触する接水部にステンレス鋼及びニッケル基合金などを用いている。また、原子炉冷却材浄化系、余熱除去系、原子炉隔離時冷却系、炉心スプレイ系、給水系及び復水系などの構成部材は、プラントの製造所要コストを低減する観点、あるいは給水系や復水系を流れる高温水に起因するステンレス鋼の応力腐食割れを避ける観点などから、主として炭素鋼部材が用いられる。
原子炉冷却材浄化系、余熱除去系、原子炉隔離時冷却系、炉心スプレイ系及び給水系などを構成する炭素鋼部材も、冷却水が接触する接水部を有するので、その接水部が腐食する恐れがある。このため、炭素鋼部材の浄化装置の下流側に位置している部分で発生する、炭素鋼部材の腐食生成物は、原子炉の放射性腐食生成物の元になることがある。また、PWRプラントでは、炭素鋼部材の腐食生成物に起因してPWRプラントの二次系の熱交換効率が低下する可能性がある。
そこで、原子力発電プラントのプラント構成部材の腐食を抑制するために、そのプラント構成部材の水と接する表面に緻密なフェライト皮膜(例えば、マグネタイト皮膜、ニッケルフェライト皮膜)を形成することが提案されている(例えば、特開2007−182604号公報参照)。このフェライト皮膜形成方法では、鉄(II)イオン、この鉄(II)イオンを酸化する酸化剤及びpH調整剤を含む皮膜形成液を用いて、プラント構成部材である炭素鋼部材の表面にフェライト皮膜を形成する。このフェライト皮膜は、炭素鋼部材に冷却水が接触するのを遮断する保護膜になるので、プラント構成部材の冷却水と接する表面の腐食が抑制される。
原子力発電プラントの構成部材であるステンレス鋼部材の水と接する表面への放射性核種の付着を抑制するために、そのステンレス鋼部材の水と接する表面(例えば、BWRプラントの再循環系配管の内面)に緻密なフェライト皮膜を形成する方法が、特開2006−38483号公報に記載されている。このフェライト皮膜の形成にも、前述した鉄(II)イオンを含む第1薬剤、鉄(II)イオンを鉄(III)イオンに酸化する第2薬剤、及びpHを調整する第3薬剤を含む皮膜形成液が用いられる。
特開2006−38483号公報は、第5実施形態及び図11において、皮膜形成液を供給する循環配管にフィルタを設けることを提案している。循環配管によって皮膜形成対象物、例えば、BWRプラントの再循環系配管に供給される皮膜形成液が鉄(II)イオン及び酸化剤を含んでいるので、循環配管内を流れている皮膜形成液内で鉄(II)イオンが酸化剤によって酸化されてフェライト粒子及び水酸化第2鉄粒子が形成される。再循環系配管内面へのマグネタイト皮膜(フェライト皮膜)の均一な成長を行わせるために、循環配管に設けたフィルタによって、皮膜形成液内に形成されたフェライト粒子及び水酸化第二鉄(III)粒子を除去している。
特開2007−182604号公報 特開2006−38483号公報
特開2006−38483号公報や特開2007−182604号公報に記載されたように、鉄(II)イオンを含む第1薬剤、鉄(II)イオンを鉄(III)イオンに酸化する第2薬剤、及びpHを調整する第3薬剤を含む皮膜形成液を用いて、皮膜形成対象物である、原子力プラントのステンレス鋼部材及び炭素鋼部材の表面に緻密なフェライト皮膜を形成するとき、皮膜形成対象物である配管系の垂直管部よりも水平管部に、皮膜形成液内で析出したフェライト粒子等が沈殿して堆積することが、発明者らの検討により判明した。このため、配管系の水平管部の内面における皮膜形成速度が低下し、配管系の水平管部の内面におけるフェライト皮膜の形成に要する時間が、垂直管部の内面でその形成に要する時間よりも長くなる。
そこで、発明者らは、特開2006−38483号公報の図11に示すように、皮膜形成対象である配管系に接続される、皮膜形成装置の循環配管にフィルタを設置し、循環配管を通して配管系に供給される皮膜形成液に含まれるフェライト粒子等を除去すること考えた。しかしながら、配管系の水平管部だけでなく、配管系の垂直管部の内面へのフェライト皮膜の形成に要する時間も長くなった。
本発明の目的は、プラント構成部材の表面へのフェライト皮膜の形成に要する時間を短縮し、かつ、プラント構成部材の水平表面及び垂直表面に形成されるそれぞれのフェライト皮膜の厚みの差を小さくすることができるプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法を提供することにある。
上記した目的を達成する本発明の特徴は、鉄(II)イオン、鉄(II)イオンを酸化させる酸化剤及びpH調整剤を含み、pHが5.5〜9.0の範囲内に調節された皮膜形成液に析出した、少なくとも粒径が70nmよりも大きいフェライト粒子を、磁気フィルタによって除去し、磁気フィルタを通過した、鉄(II)イオン、酸化剤、pH調整剤、及び粒径が70nm以下のフェライト粒子の粒子を含み、pHが5.5〜9.0の範囲内に調節された皮膜形成液を、プラント構成部材の表面に接触させて、この表面にフェライト皮膜を形成することにある。
皮膜形成液に析出した、少なくとも粒径が70nmよりも大きいフェライト粒子を、磁気フィルタによって除去するので、プラント構成部材の水平部表面への、70nmより大きな粒径を有するフェライト粒子の沈澱が抑制されて、その水平部表面でのフェライト皮膜の形成に要する時間を短縮できる。結果的に、プラント構成部材の垂直部の表面に形成されるフェライト皮膜の厚みとプラント構成部材の水平部の表面に形成されるフェライト皮膜の厚みの差が小さくなる。また、プラント構成部材の表面に接触される皮膜形成液が、粒径が70nm以下のフェライト粒子を含んでいるので、鉄(II)イオンだけでなく70nm以下のフェライト粒子によっても、プラント構成部材の表面にフェライト皮膜が形成される。このため、プラント構成部材の垂直部及び水平部の各表面へのフェライト皮膜の形成に要する時間を短縮することができる。
上記した目的は、加熱装置を有する配管を、プラント構成部材である配管系に接続し、
鉄(II)イオンが、配管に設けられて鉄(II)イオンの注入量を調節する第1注入弁を有する鉄(II)イオン注入装置からその配管内に注入され、
酸化剤が、その配管に設けられて酸化剤の注入量を調節する第2注入弁を有する酸化剤注入装置からその配管内に注入され、
pH調整剤が、その配管に設けられてpH調整剤の注入量を調節する第3注入弁を有するpH調整剤注入装置からその配管内に注入され、
鉄(II)イオン、酸化剤及びpH調整剤を含み、pHが5.5〜9.0の範囲内に調節された皮膜形成液を、その配管を通して配管系内に供給し、
制御装置が、その配管に設けられた粒径計測装置で計測された、その配管内を流れる皮膜形成液に含まれる粒子の粒径に基づいて、配管内を流れる皮膜形成液に含まれるフェライト粒子の粒径が70nm以下になるように第1注入弁及び第2注入弁の開度を調節し、
皮膜形成液を配管系の内面に接触させて、この内面にフェライト皮膜を形成することによっても、上記した目的を達成できる。
配管系に接続された配管に設けられた粒径計測装置で計測された、その配管内を流れる皮膜形成液に含まれる粒子の粒径に基づいて、配管内を流れる皮膜形成液に含まれるフェライト粒子の粒径が70nm以下になるように、配管に設けられた鉄(II)イオン注入装置の第1注入弁及び配管に設けられた酸化剤注入装置の第2注入弁の開度を調節するので、配管系に供給される皮膜形成液に含まれるフェライト粒子の粒径が70nm以下になる。このため、配管系の水平管部内面への、70nmより大きな粒径を有するフェライト粒子の沈澱が抑制され、前述したように、配管系の垂直管部の内面に形成されるフェライト皮膜の厚みとその配管系の水平管部の内面に形成されるフェライト皮膜の厚みの差が小さくなる。また、配管系の内面に接触される皮膜形成液が、粒径が70nm以下のフェライト粒子を含んでいるので、前述したように、配管系の垂直管部及び水平管部の各内面へのフェライト皮膜の形成に要する時間を短縮することができる。
プラント構成部材である炭素鋼部材の水に接する表面にニッケル金属皮膜を形成し、
鉄(II)イオン、ニッケルイオン、鉄(II)イオンを酸化させる酸化剤及びpH調整剤を含み、pHが5.5〜9.0の範囲内に調節された皮膜形成液に析出した、少なくとも粒径が70nmよりも大きいフェライト粒子を、磁気フィルタによって除去し、
磁気フィルタを通過した、鉄(II)イオン、ニッケルイオン、酸化剤、pH調整剤、及び粒径が70nm以下のフェライト粒子を含み、pHが5.5〜9.0の範囲内に調節された皮膜形成液を、炭素鋼部材の表面に形成されたニッケル金属皮膜の表面に接触させて、ニッケル金属皮膜の表面にニッケルフェライト皮膜を形成することによっても、上記した目的を達成することができる。
これによれば、炭素鋼部材の垂直部の表面と炭素鋼部材の水平部の表面に形成されるそれぞれのニッケルフェライト皮膜の厚みの差が小さくなる。また、炭素鋼部材の垂直部及び水平部の各表面へのニッケルフェライト皮膜の形成に要する時間を短縮することができる。さらに、ニッケル金属皮膜を炭素鋼部材の表面に形成することによって、ニッケルフェライトの皮膜の形成時に、炭素鋼部材からの鉄(II)イオンの溶出を防ぐことができる。このため、ニッケルフェライト皮膜の形成に要する時間を短縮することができる。
本発明によれば、プラント構成部材の表面へのフェライト皮膜の形成に要する時間を短縮し、かつ、プラント構成部材の水平表面及び垂直表面に形成されるそれぞれのフェライト皮膜の厚みの差を小さくすることができる。
本発明の好適な一実施例である、BWRプラントの再循環系配管に適用する実施例1のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法の手順を示すフローチャートである。 図1に示すプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法を実施する際に用いられる皮膜形成装置をBWRプラントの再循環系配管に接続した状態を示す説明図である。 図2に示す皮膜形成装置の構成図である。 磁気フィルタの磁力と皮膜形成液に残存するフェライト粒子の粒径との関係を示す特性図である。 磁気フィルタの有無におけるフェライト皮膜の形成量を示す説明図である。 本発明の他の実施例である、BWRプラントの再循環系配管に適用する実施例2のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法の手順を示すフローチャートである。 図6に示すプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法の実施に用いる皮膜形成装置の構成図である。 本発明の他の実施例である、BWRプラントの再循環系配管に適用する実施例3のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法の実施に用いる皮膜形成装置の構成図である。 本発明の他の実施例である、BWRプラントの再循環系配管に適用した実施例4のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法の実施に用いる皮膜形成装置の構成図である。 本発明の他の実施例である、BWRプラントの浄化系配管に適用する実施例5のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法の実施に用いる皮膜形成装置をBWRプラントの浄化系配管に接続した状態を示す説明図である。 本発明の他の実施例である、BWRプラントの浄化系配管に適用する実施例6の原子力プラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法の手順を示すフローチャートである。 図11に示すプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法の実施に用いる皮膜形成装置の構成図である。 炭素鋼部材に接触する皮膜形成水溶液のpHと炭素鋼部材の重量変化(腐食量)の関係を示す特性図である。 炭素鋼部材の表面にニッケルフェライト皮膜を形成する方法が異なる2つの方法において、形成されるニッケルフェライト皮膜の量の違いを示す説明図である。 オージェスペクトル法を用いて方法Bで形成した皮膜を対象にした、ニッケルフェライト皮膜の表面からの深さ方向における元素成分の濃度の変化を示す説明図である。 ニッケルフェライト皮膜を形成した炭素鋼部材の表面におけるレーザーラマンスペクトルを示す説明図である。 表面にニッケルフェライト皮膜を形成した炭素鋼部材の腐食の抑制効果を示す説明図である。 本発明の他の実施例である、新設のBWRプラントに適用する実施例7のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法の手順を示すフローチャートである。 図18に示すプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法の実施に用いる皮膜形成装置の構成図である。
発明者は、皮膜形成対象物である配管系の水平管部でのフェライト皮膜の形成に要する時間が垂直管部でのその形成に要する時間よりも長くなる原因が、配管系に供給される皮膜形成液に含まれるフェライト粒子であることをつきとめ、特開2006−38483号公報に記載されているように、皮膜形成装置の循環配管にフィルタを設けてフェライト粒子等の粒子を除去することを考えた。しかしながら、発明者らは、循環配管にフィルタを設置することによって以下の課題が生じることを見出した。
発明者らの検討の結果、鉄(II)イオン、第2薬剤(例えば、過酸化水素)及び第3薬剤(例えば、ヒドラジン)を含むpHが5.5〜9.0の皮膜形成液を用いて皮膜形成対象物であるプラント構成部材の表面にフェライト皮膜を形成する際には、皮膜形成液に存在する鉄(II)イオンだけでなく、鉄(II)イオンと過酸化水素の反応により生成されたフェライト粒子のうち粒径70nm以下の細かいフェライト粒子及び水酸化第二鉄もその表面へのフェライト皮膜の形成に役立っていることを見出した。これは、粒径70nm以下のフェライト粒子及び水酸化第二鉄は、鉄(II)イオンと同様な挙動を示し、フェライト皮膜の形成に貢献する。ちなみに、フィルタを用いて皮膜形成液に含まれている粒径70nm以下のフェライト粒子及び水酸化第二鉄をほとんど除去したとき、プラント構成部材の表面へのフェライト皮膜の形成に要する時間が非常に長くなった。このため、発明者らは、循環配管にフィルタを設置して、プラント構成部材の表面に接触される皮膜形成液内で形成された粒径70nm以下のフェライト粒子及び水酸化第二鉄のほとんどを、循環配管に設けたフィルタで除去しないで、生成された粒径70nm以下のそれらの粒子を含む皮膜形成液をプラント構成部材の表面に接触させることが、フェライト皮膜の形成において有益であることを新たに認識した。
ところで、発明者らは、上記の皮膜形成液内で生成されるフェライト粒子の、プラント構成部材の表面に形成されるフェライト皮膜に与える影響を確認するために、詳細な検討及び実験を行った。この実験等について以下に説明する。
発明者らは、配管系の垂直管部よりも水平管部でのフェライト皮膜の形成に時間が掛かることが、皮膜形成液内で形成されたフェライト粒子が水平管部内で沈澱して水平管部内の下面に蓄積することが原因であると想定し、皮膜形成液に含まれるフェライト粒子の除去について検討した。発明者らは、これらの粒子の除去に、磁気フィルタを使用することにした。磁気フィルタは、液体に含まれる粒子のうち磁力で捕集できる磁性体の粒子のみを捕捉する。
プラント構成部材の表面へのフェライト皮膜の形成では、フェライト皮膜を形成すべきプラント構成部材の表面に接触させる皮膜形成液の温度を、60℃から100℃(例えば、90℃)にしなければならない。このような高温の液体に対して磁気フィルタを適用した例がなく、そこで、発明者らは、フェライト粒子の水平管部内で沈澱、及び60℃以上の高温領域での磁気フィルタの粒子の捕捉性能の確認を行った。
発明者らは、鉄(II)イオン、過酸化水素及びヒドラジンを含むpHが7.0で90℃の皮膜形成液を磁気フィルタに供給し、磁気フィルタに捕捉されるフェライト粒子、換言すれば、皮膜形成液に残存する粒子の粒径と磁気フィルタに設けられた磁石の磁力との関係を調べた。なお、磁石として電磁石を用い、この電磁石の磁力を変化させた。磁気フィルタの磁力を変化させると、皮膜形成液に残存するフェライト粒子の粒径が、図4に示すように変化した。磁気フィルタの電磁石の磁力を1×10−4テスラ以上にすると、皮膜形成液に残存するフェライト粒子等の粒子の粒径が70nm以下になった。発明者らは、磁気フィルタが90℃の液体から磁性体粒子であるフェライト粒子のみを捕捉できることを確認した。
磁力を1×10−4テスラに調節した磁気フィルタを用いて、鉄(II)イオン、過酸化水素及びヒドラジンを含むpHが7.0で90℃の皮膜形成液からフェライト粒子等の磁性体粒子を捕捉し、70nmより大きなフェライト粒子を除去した皮膜形成液を、水平に設置した試験体である配管内に供給した。フェライト皮膜が、水平に設置した配管の、皮膜形成液に接触する内面に形成される。フェライト皮膜の形成量を比較するために、磁気フィルタを通過しない皮膜形成液を、水平に設置した試験体である他の配管内に供給して、この配管の内面にフェライト皮膜を形成した。これらの実験結果を、図5に示す。この結果、図5から明らかであるように、磁気フィルタの作用によって70nmより大きなフェライト粒子が除去され、70nm以下のフェライト粒子を含む皮膜形成液に接触した、配管の内面に形成されるフェライト皮膜の形成量が、磁気フィルタを通過しないで70nmより大きなフェライト粒子を含む皮膜形成液に接触した、他の配管の内面に形成されるフェライト皮膜の形成量の約2倍になった。つまり、磁気フィルタにより70nmより大きなフェライト粒子等の粒子を除去し、70nm以下のフェライト粒子を含む皮膜形成液を用いてのフェライト皮膜の形成では、水平に配置した配管の内面におけるフェライト皮膜の形成速度が増加した。これは、垂直配管部と水平管部におけるフェライト皮膜の形成時間の差が小さくなり、垂直配管部の内面と水平管部の内面に形成されるそれぞれのフェライト皮膜の厚みの差が小さくなったことを意味する。
また、比較のために、メッシュフィルタ等の通常フィルタを通した皮膜形成液で、配管の内面にフェライト皮膜を形成した。この結果、通常フィルタを用いた場合における皮膜形成量は、図5に示すように、フィルタなしの場合よりも少なくなった。
磁気フィルタの電磁石の磁力が1×10−4テスラ以上の範囲では、皮膜形成液に含まれた少なくとも70nmより大きな粒径のフェライト粒子が除去され、70nm以下のフェライト粒子が皮膜形成液に含まれているので、鉄(II)イオンだけでなく70nm以下のフェライト粒子によっても、プラント構成部材の表面にフェライト皮膜が形成される。このため、プラント構成部材の水平表面及び垂直表面(例えば、配管系の水平管部及び垂直管部)のそれぞれへのフェライト皮膜の形成に要する時間を短縮することができる。なお、磁気フィルタの電磁石の磁力は10テスラ未満にすることが望ましい。電磁石の磁力が大きくなりすぎると磁気フィルタ自体が大型化し、フェライト皮膜を形成するために、磁気フィルタを、皮膜形成対象物が存在する原子力プラントの原子炉建屋内に搬入することが困難になる。
以上に述べた発明者らの検討結果を反映した、本発明の実施例を以下に説明する。
本発明の好適な一実施例であるBWRプラントの再循環系配管に適用した実施例1のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法を、図1、図2及び図3を用いて説明する。
原子力発電プラントであるBWRプラントは、図2に示すように、原子炉1、タービン3、復水器4、再循環系、原子炉浄化系及び給水系等を備えている。原子炉1は、炉心13を内蔵する原子炉圧力容器(以下、RPVという)12を有し、RPV12内にジェットポンプ14を設置している。炉心13には多数の燃料集合体(図示せず)が装荷されている。燃料集合体は、核燃料物質で製造された複数の燃料ペレットが充填された複数の燃料棒を含んでいる。再循環系は、ステンレス鋼製の再循環系配管22、及び再循環系配管22に設置された再循環ポンプ21を有する。給水系は、復水器4とRPV12を連絡する給水配管10に、復水ポンプ5、復水浄化装置(例えば、復水脱塩器)6、低圧給水加熱器8、給水ポンプ7及び高圧給水加熱器9を、復水器4からRPV12に向って、この順に設置して構成されている。原子炉浄化系は、再循環系配管22と給水配管10を連絡する浄化系配管20に、浄化系ポンプ24、再生熱交換器25、非再生熱交換器26及び炉水浄化装置27をこの順に設置している。浄化系配管20は、再循環ポンプ21の上流で再循環系配管22に接続される。原子炉1は、原子炉建屋(図示せず)内に配置された原子炉格納容器11内に設置されている。
RPV12内の冷却水は、再循環ポンプ21で昇圧され、再循環系配管22を通ってジェットポンプ14内に噴出される。ジェットポンプ14のノズルの周囲に存在する冷却水も、ジェットポンプ14内に吸引されて炉心13に供給される。炉心13に供給された冷却水は燃料棒内の核燃料物質の核***で発生する熱によって加熱され、加熱された冷却水の一部が蒸気になる。この蒸気は、RPV12内に設けられた気水分離器(図示せず)及び蒸気乾燥器(図示せず)にて水分が除去された後に、RPV12から主蒸気配管2を通ってタービン3に導かれ、タービン3を回転させる。タービン3に連結された発電機(図示せず)が回転し、電力が発生する。
タービン3から排出された蒸気は、復水器4で凝縮されて水になる。この水は、給水として、給水配管10を通りRPV12内に供給される。給水配管10を流れる給水は、復水ポンプ5で昇圧され、復水浄化装置6で不純物が除去され、給水ポンプ7でさらに昇圧される。給水は、低圧給水加熱器8及び高圧給水加熱器9で加熱されてRPV12内に導かれる。抽気配管でタービン3から抽気された抽気蒸気が、低圧給水加熱器8及び高圧給水加熱器9にそれぞれ供給され、給水の加熱源となる。
再循環系配管22内を流れる冷却水の一部は、浄化系ポンプ24の駆動によって原子炉浄化系の浄化系配管20内に流入し、再生熱交換器25及び非再生熱交換器26で冷却された後、炉水浄化装置27で浄化される。浄化された冷却水は、再生熱交換器25で加熱されて浄化系配管20及び給水配管10を経てRPV12内に戻される。
BWRプラントの運転が停止された後のBWRプラントの運転停止期間内で、仮設設備である皮膜形成装置30の循環配管(皮膜形成液配管)35の両端が、ステンレス鋼製の再循環系配管22に接続される。この循環配管35をプラント構成部材であり皮膜形成対象物である再循環系配管22に接続する作業を具体的説明する。BWRプラントの運転停止後に、例えば、再循環系配管22に接続されている浄化系配管20に設置されているバルブ23のボンネットを開放して浄化系ポンプ24側を封鎖する。皮膜形成装置30の循環配管35の一端をバルブ23のフランジに接続する。これにより、循環配管35の一端が再循環系ポンプ21の上流で再循環系配管22に接続される。他方、再循環ポンプ21の下流側で再循環系配管22に接続されたドレン配管または計装配管などの枝管を切り離し、その切り離された枝管に、皮膜形成装置30の循環配管35の他端を接続する。循環配管35の両端を再循環系配管22に接続することによって、再循環系配管22及び循環配管35を含む閉ループが形成される。再循環系配管22の両端部におけるRPV12内での各開口部は、皮膜形成液がRPV12内に流入しないように、プラグ(図示せず)でそれぞれ封鎖される。皮膜形成装置30は、再循環系配管22の内面にフェライト皮膜が形成され、このフェライト皮膜の形成に使用した皮膜形成液の処理が終了した後で且つBWRプラントの運転停止期間内で、再循環系配管22から取り外される。その後で、BWRプラントの運転が開始される。
皮膜形成装置30は、再循環系配管22の内面へのフェライト皮膜の形成、及びこの皮膜の形成に使用した皮膜形成液の処理の両方に用いられる。さらに、皮膜形成装置30は、再循環系配管22内面の化学除染を行う際にも用いられる。再循環系配管22に接続された皮膜形成装置30は、BWRプラントでは放射線管理区域である原子炉格納容器11内に配置されている。
本実施例では、再循環系配管22を皮膜形成対象物にしたが、給水系、冷却材浄化系、及び補機冷却水系の各配管を皮膜形成対象物にする場合には、該当する皮膜形成対象物の配管系に循環配管35を接続する。
皮膜形成装置30の詳細な構成を、図3を用いて説明する。皮膜形成装置30は、サージタンク31、循環配管35、鉄(II)イオン注入装置85、酸化剤注入装置86、pH調整剤注入装置87、フィルタ51、加熱器53、分解装置64、カチオン交換樹脂塔60及び磁気フィルタ80を備えている。
開閉弁47、循環ポンプ48、弁49、加熱器53、弁55,56及び57、サージタンク31、循環ポンプ32、弁33、磁気フィルタ80及び開閉弁34が、上流よりこの順に循環配管35に設けられている。弁49をバイパスして循環配管35に接続される配管71に、弁50及びフィルタ51が設置される。加熱器53及び弁55をバイパスする配管66が循環配管35に接続され、冷却器58及び弁59が配管66に設置される。両端が循環配管35に接続されて弁56をバイパスする配管67に、カチオン交換樹脂塔60及び弁61が設置される。両端が配管67に接続されてカチオン交換樹脂塔60及び弁61をバイパスする配管68に、混床樹脂塔62及び弁63が設置される。
弁65及び分解装置64が設置される配管69が弁57をバイパスして循環配管35に接続される。分解装置64は、内部に、例えば、ルテニウムを活性炭の表面に添着した活性炭触媒を充填している。サージタンク31が弁57と循環ポンプ32の間で循環配管35に設置される。弁36及びエゼクタ37が設けられる配管70が、弁33と循環ポンプ32の間で循環配管35に接続され、さらに、サージタンク31に接続されている。フェライト皮膜を形成する再循環系配管22の内面の汚染物を酸化溶解するために用いる過マンガン酸カリウム(酸化除染剤)、さらには再循環系配管22の内面の汚染物を還元溶解するために用いるシュウ酸(還元除染剤)をサージタンク31内に供給するためのホッパ(図示せず)がエゼクタ37に設けられている。
鉄(II)イオン注入装置85が、薬液タンク45、注入ポンプ43及び注入配管72を有する。薬液タンク45は、注入ポンプ43及び弁41を有する注入配管72によって循環配管35に接続される。薬液タンク45は、鉄をギ酸で溶解して調製した2価の鉄(II)イオンを含む薬剤(第1薬剤)を充填している。この薬剤はギ酸を含んでいる。なお、鉄を溶解させる薬剤としては、ギ酸に限らず、鉄(II)イオンの対アニオンとなるカルボン酸または炭酸を用いることができる。カルボン酸としては、ギ酸以外に、シュウ酸及びマロン酸のいずれかを用いてもよい。
酸化剤注入装置86が、薬液タンク46、注入ポンプ44及び注入配管73を有する。薬液タンク46は、注入ポンプ44及び弁42を有する注入配管73によって循環配管35に接続される。薬液タンク46は、酸化剤(第2薬剤)である過酸化水素を充填している。
pH調整剤注入装置87が、薬液タンク40、注入ポンプ39及び注入配管74を有する。薬液タンク40は、注入ポンプ39及び弁38を有する注入配管74によって循環配管35に接続される。薬液タンク40はpH調整剤(第3薬剤)であるヒドラジンを充填する。
本実施例では、pH調整剤注入装置87の循環配管35への第1接続点(注入配管74と循環配管35の接続点)77、鉄(II)イオン注入装置85の循環配管35への第2接続点(注入配管72と循環配管35の接続点)78、及び酸化剤注入装置86の循環配管35への第3接続点(注入配管73と循環配管35の接続点)79が、この順序で上流から下流に向って配置されている。第1接続点77が最も上流に位置する。第3接続点79は、循環配管35において、皮膜形成対象物にできるだけ近い位置に配置させることが好ましい。磁気フィルタ80が第3接続点79の下流で開閉弁34の上流に配置される。
弁54を設けた配管75が配管73と配管69を連絡する。pH計(図示せず)が、第3接続点79と磁気フィルタ80の間で循環配管35に設置される。各薬剤が循環配管35に注入される前では、サージタンク31は、処理に用いられる水が充填されている。皮膜形成液に含まれる酸素濃度を少なくするために、薬液タンク45及びサージタンク31内に窒素またはアルゴンなどの不活性ガスをバブリングすることが好ましい。
分解装置64は、鉄(II)イオンの対アニオンとして使用するカルボン酸(例えば、ギ酸)、及びpH調整剤のヒドラジンを分解できるようになっている。つまり、鉄(II)イオンの対アニオンとしては、廃棄物量の低減化を考慮して水及び二酸化炭素に分解できるカルボン酸、または気体として放出可能で廃棄物を増やさない炭酸を用いている。
本実施例におけるフェライト皮膜形成方法を、図1を用いて詳細に説明する。図1に示す手順は、フェライト皮膜の形成だけでなく、化学除染、及びフェライト皮膜の形成に用いた皮膜形成液(例えば、皮膜形成水溶液)の処理の手順も含んでいる。まず、皮膜形成装置30を皮膜形成対象の配管系に接続する(ステップS1)。すなわち、BWRプラントの運転がBWRプラントの定期検査のために停止された後のBWRプラントの運転停止期間において、前述したように、循環配管35が皮膜形成対象物の配管系である再循環系配管(原子力プラントの構成部材)22に接続される。
皮膜形成対象箇所に対する化学除染を実施する(ステップS2)。運転を経験したBWRプラントでは、RPV12内の冷却水(以下、炉水という)と接触する、再循環系配管22の内面に、酸化皮膜が形成されている。そのBWRプラントでは、この酸化皮膜が放射性核種を含んでいる。ステップS2の一例は、化学的な処理によりその酸化皮膜を、皮膜形成対象物である再循環系配管22の内面から取り除く処理である。皮膜形成対象物の配管系へのフェライト皮膜の形成は、その再循環系配管内面の腐食抑制及び放射性核種の付着抑制を目的とするものであるが、そのフェライト皮膜の形成に際しては再循環系配管22の内面に対して予め化学除染を実施しておくことが好ましい。
ステップS2で適用する化学除染は、公知の方法(特開2000−105295号公報参照)であるが、簡単に説明する。まず、弁34,33,57,56,55,49及び47をそれぞれ開き、他の弁を閉じた状態で、循環ポンプ32及び48を駆動する。これにより、循環配管35及び再循環系配管22の閉ループ内にサージタンク31内の水を循環させる。加熱器53により循環する水を加熱し、この水の温度が90℃になったときに弁36を開く。エゼクタ37につながっているホッパから供給される必要量の過マンガン酸カリウムが、配管70内を流れる水によりサージタンク31内に導かる。過マンガン酸カリウムがサージタンク31内で水に溶解し、酸化除染液(過マンガン酸カリウム水溶液)が生成される。この酸化除染液は、循環ポンプ32の駆動によってサージタンク31から循環配管35を経て再循環系配管22内に供給される。酸化除染液は、再循環系配管22の内面に形成されている酸化皮膜などの汚染物を酸化して溶解する。
酸化除染が終了した後、上記のホッパからシュウ酸をサージタンク31内に注入する。このシュウ酸によって酸化除染液に含まれている過マンガン酸カリウムが分解される。その後、サージタンク31内で生成されてpHが調整された還元除染液(シュウ酸水溶液)は、循環ポンプ32によって再循環系配管22内に供給され、再循環系配管22の内面に存在する腐食生成物の還元溶解を行う。還元除染液のpHが、薬液タンク40から循環配管35内に供給されるヒドラジンによって調整される。再循環系配管22から排出されて循環配管35に戻された還元除染液の一部が、金属陽イオンを除去するために、必要な弁操作によりカチオン交換樹脂塔60に導かれる。
還元除染の終了後、弁65を開いて弁57の開度を調整し、循環配管35内を流れる還元除染液の一部を分解装置64に供給する。この還元除染液に含まれるシュウ酸及びヒドラジンは、薬液タンク46から配管75を通して分解装置64に導かれた過酸化水素、及び分解装置64内の活性炭触媒の作用によって分解される。シュウ酸及びヒドラジンの分解後、弁55を閉じて加熱器53による加熱を停止させ、同時に、弁59を開いて除染液を冷却器58で冷却する。冷却された除染液(例えば、60℃)が、不純物を除去するために、混床樹脂塔62に供給される。
原子力プラントの構成部材である再循環系配管22の化学除染が終了した後、フェライト皮膜の形成処理が実行される。
皮膜形成対象物の除染が終了した後、皮膜形成液の温度調整を行う(ステップS3)。皮膜形成対象物の除染終了後、すなわち、皮膜形成装置30による最後の浄化運転が終了した後、以下の弁操作が行われる。弁50を開いて弁49を閉じ、フィルタ51への通水を開始する。弁56を開いて弁63を閉じることにより、混床樹脂塔62への通水を停止する。さらに、弁55を開いて加熱器53によって循環配管35内の水を所定温度まで加熱する。弁47,57,33及び34は開いており、弁36,59,61,65,38,41,42及び82は閉じている。循環ポンプ32,48が回転している。フィルタ51への通水は、水中に残留している微細な固形物を除去し、この固形物の表面にもフェライト皮膜が形成されて薬剤が無駄に使用されることを防止するためである。また、フィルタ51への皮膜形成液の供給を化学洗浄中に実施した場合には、溶解によって生じた高濃度の鉄に起因する水酸化物でフィルタの圧力損失が高くなる恐れがあるため適切ではない。
本実施例では、皮膜形成液の温度は、再循環系配管22の内面に皮膜を形成している間、加熱器53によって75℃に調節され、この温度に保持される。しかしながら、皮膜形成液の温度はその温度に限られない。要は原子炉の運転時における構成部材である再循環系配管22の腐食を抑制できる程度に、形成されたフェライト皮膜の結晶等の膜構造が緻密に形成できればよいのである。したがって、皮膜形成液の温度は、200℃以下が好ましく、下限は20℃でもよいが、フェライト皮膜の生成速度が実用範囲になる60℃以上が好ましい。100℃よりも高い温度では皮膜形成液の沸騰を抑制するため、加圧しなければならず仮設設備である皮膜形成装置30の耐圧性が要求され、設備が大型化するため好ましくない。したがって、皮膜形成処理における皮膜形成液の温度は、100℃以下がより好ましく、加熱器53を制御することによって60℃以上100℃以下の範囲に含まれる温度に調節することが望ましい。
化学除染の終了後で後述の各薬剤が循環配管35に注入される前では、循環配管35から再循環系配管22に供給される液体は、各薬剤の注入により皮膜形成液になる水である。
第1薬剤に含まれる鉄(II)イオンを酸化させて水酸化第二鉄を生成させないために、皮膜形成液内の溶存酸素を除去することが必要である。このため、サージタンク31及び薬液タンク45内で、不活性ガスのバブリングまたは真空脱気を行うことが好ましい。もし、皮膜形成液に含まれる鉄(II)イオンの全量が水酸化第二鉄になった場合には、再循環配管22の内面にフェライト皮膜が形成されなくなる。
pH調整剤(第3薬剤)を皮膜形成液に注入する(ステップS4)。弁38を開いて注入ポンプ39を駆動することにより、pH調整剤(例えば、ヒドラジン)を、薬液タンク40から、注入配管74を通して循環配管35内を流れている所定温度(例えば、75℃)の水溶液である皮膜形成液(第3薬剤が初めて注入されるときは水)に注入する。pH計は、循環配管35を流れる皮膜形成液のpHを計測する。制御装置(図示せず)が、このpH計測値に基づいて、注入ポンプ39の回転速度(またはバルブ38の開度)を制御してヒドラジンの注入量を調節し、皮膜形成液のpHを5.5よりも大きく9.0以下の範囲内、例えば、7.0に調節する。ヒドラジンを含むpH7.0の水溶液が、循環配管35を通して再循環系配管22内に供給される。再循環系配管22から排出されたこの水溶液は循環配管35に戻される。
鉄(II)イオンを含む薬液(第1薬剤)を皮膜形成液に注入する(ステップS5)。弁41を開いて注入ポンプ43を駆動させ、鉄(II)イオン及びギ酸を含む薬液(第1薬剤)が、薬液タンク45から、注入配管72を通って、循環配管35内を流れているヒドラジンを含んでpH7.0の水溶液である皮膜形成液に注入される。ここで注入される第1薬剤は、例えば、鉄をギ酸で溶解して調製した鉄(II)イオン及びこのギ酸を含んでいる。
酸化剤(第2薬剤)を皮膜形成液に注入する(ステップS6)。弁42を開いて注入ポンプ44を駆動させ、酸化剤である過酸化水素を、薬液タンク46から注入配管73を通して、循環配管35内を流れている鉄(II)イオン、ギ酸及びヒドラジンを含むpH7.0の皮膜形成液に注入する。酸化剤としては、過酸化水素以外に、オゾンまたは酸素を溶解した薬剤を用いてもよい。注入された鉄(II)イオンの一部が、皮膜形成液内で過酸化水素と反応して水酸化第一鉄になる。また、鉄(II)イオンの一部が、過酸化水素と反応してフェライト粒子を生成する。
鉄(II)イオンを含む皮膜形成液に酸化剤が供給されると、鉄(II)イオンの酸化反応が開始されるので、鉄(II)イオンと鉄(III)イオンの存在比率が皮膜形成反応に適した条件となる。したがって、循環配管35の内面への無駄な皮膜形成を防止するため、酸化剤の注入ポイントは皮膜形成対象物に近く、循環配管35と再循環系配管22の接続点に近い部分に設けるのが好ましい。
皮膜形成液は、再循環系配管22に到達する前に、循環配管35に設けられた、電磁石(図示せず)を有する磁気フィルタ80を通過する。制御装置(図示せず)が、その電磁石に供給する電流を制御し、電磁石で発生する磁力を、例えば、2×10−3テスラに調節する。
皮膜形成液に含まれたフェライト粒子のうち、粒径が55nmよりも大きいフェライト粒子が、磁気フィルタ80によって除去される。磁気フィルタ80を通過した皮膜形成液は、粒径が55nm以下のフェライト粒子を含んでいる。磁気フィルタ80を通過して、pHがヒドラジンにより7.0に調節されて温度が75℃である、鉄(II)イオン、ギ酸、過酸化水素及び粒径が55nm以下のフェライト粒子を含む皮膜形成液が、循環配管35内を流れて再循環系配管22に供給される。この皮膜形成液が再循環系配管22の内面に接触するので、その皮膜形成液に含まれた鉄(II)イオン及び粒径が55nm以下の水酸化第一鉄の粒子が、原子力プラントの構成部材である再循環系配管22の内面に吸着され、過酸化水素の作用によりフェライト化される。これにより、再循環系配管22の内面にフェライト皮膜が形成される。粒径が55nm以下のフェライト粒子も、再循環系配管22の内面に付着し、フェライト皮膜の形成に貢献する。皮膜形成液に含まれた過酸化水素は、再循環系配管22の内面に吸着された、鉄(II)イオン及び水酸化第一鉄を酸化させてフェライト化させる反応を生じさせる。ヒドラジンにより皮膜形成液のpHがフェライト皮膜生成反応を進行させる7.0に調節されているので、上記したように、再循環系配管22の内面にフェライト皮膜が形成される。
循環ポンプ32,48が駆動されているので、ヒドラジン、鉄(II)イオン、過酸化水素、及び粒径が55nm以下のフェライト粒子を含む皮膜形成液が、循環配管35により、開閉弁34を介して再循環系配管22内に供給される。この皮膜形成液は、再循環系配管22内を流れ、循環配管35の弁47側へと戻される。戻された皮膜形成液に、鉄(II)イオン及びギ酸を含む薬液(第1薬剤)、過酸化水素(第2薬剤)及びヒドラジン(第3薬剤)が注入され、この皮膜形成液が再び再循環系配管22内に導かれる。
ステップS4〜S6の実施により、ヒドラジン、鉄(II)イオンが含まれた薬液、及び過酸化水素が皮膜形成液に順次注入される。ステップS4〜S6における各薬剤の注入を、連続的に実施することが好ましい。より具体的には、第1接続点77で第3薬剤(例えば、ヒドラジン)が注入された皮膜形成液が第2接続点78に到達したときに、鉄(II)イオン及びギ酸を含む薬液(第1薬剤)が注入される。ヒドラジン、鉄(II)イオン及びギ酸を含む皮膜形成液が第3接続点79に到達したときに、酸化剤である過酸化水素が注入される。
フェライト皮膜の形成処理が完了したかが判定される(ステップS7)。この判定は、フェライト皮膜の形成処理開始後の経過時間で行われる。この経過時間が再循環系配管22の内面に所定の厚みのフェライト皮膜を形成するのに要する時間になるまでの間は、ステップS7の判定は「NO」になり、ステップS4〜S6の操作が繰り返し行われる。ステップS7の判定が「YES」になったとき、制御装置(図示せず)が、注入ポンプ39,43及び44を停止して(または弁38,41及び42を閉じ)各薬液の、循環している皮膜形成液への注入を停止する。これによって、再循環系配管22の内面へのフェライト皮膜の形成作業が終了する。所定厚みの、フェライト皮膜が、皮膜形成液と接触している、再循環系配管22の内面全面に亘って形成されている。
鉄(II)イオンが含まれた薬液、過酸化水素及びヒドラジンの皮膜形成液への注入は、設定厚みのフェライト皮膜が再循環系配管22の内面に形成されるまで、継続して行われる。
その後、皮膜形成液に含まれている薬剤の分解(廃液の処理)が実施される(ステップS8)。再循環系配管22の内面へのフェライト皮膜の形成に使用された皮膜形成液は、フェライト皮膜の形成が終了した後に廃液になり、ヒドラジン及びカルボン酸であるギ酸を含んでいる。皮膜形成液に含まれた薬剤であるヒドラジン及びギ酸は、還元除染剤であるシュウ酸の分解と同様に、分解装置64で分解される。皮膜形成液に含まれた各薬剤の分解処理では、弁57,65の開度を調整し、循環配管35内の皮膜形成液の一部を分解装置64に供給する。弁54を開くことにより、過酸化水素が、薬液タンク46から配管75を通して分解装置64に供給される。ヒドラジン及びギ酸は、分解装置64内で過酸化水素及び活性炭触媒の作用により分解される。ヒドラジンは窒素と水に、ギ酸は二酸化炭素と水にそれぞれ分解する。皮膜形成液に含まれた各薬剤の分解が終了した後、循環配管35が再循環系配管22から取り外され、バルブ28等が元通りに復旧される。これにより、BWRプラントの運転が開始できる状態になる。
触媒を用いた分解処理装置64の替りに紫外線照射装置を用いることも可能である。紫外線照射装置も、酸化剤の存在下でヒドラジン、ギ酸及びシュウ酸を分解することができる。
本実施例は、プラント構成部材である再循環系配管22の内面に緻密なフェライト皮膜を形成するので、再循環系配管22の内面への放射性核種の付着を抑制することができ、且つ、再循環系配管22の内面の腐食を抑制することができる。
特に、本実施例では、循環配管35に磁気フィルタ80を設置し、この磁気フィルタ80の電磁石が2.0×10−3テスラの磁力を発生しているので、皮膜形成液に含まれる少なくとも70nmより大きな粒径を有するフェライト粒子を除去することができる。このため、再循環系配管22の水平管部において、70nmより大きな粒径を有するフェライト粒子の沈澱が抑制されて皮膜形成速度が増加し、水平管部でのフェライト皮膜の形成に要する時間を短縮できる。結果的に、再循環系配管22の垂直管部及び水平管部のそれぞれの内面に形成されるフェライト皮膜の厚みがより均一化され、その垂直管部の内面に形成されるフェライト皮膜の厚みとその水平管部の内面に形成されるフェライト皮膜の厚みの差が小さくなる。
本実施例では、再循環系配管22に供給される皮膜形成液が、粒径が55nm以下のフェライト粒子を含んでいるので、鉄(II)イオンだけでなく55nm以下のフェライト粒子によっても、再循環系配管22の内面にフェライト皮膜が形成される。このため、再循環系配管22の水平管部及び垂直管部のそれぞれの内面へのフェライト皮膜の形成に要する時間を短縮することができる。
pH調整剤を最初に皮膜形成液に注入して皮膜形成液のpHを5.5よりも大きく9.0以下の範囲内に含まれるpH値(例えば、7.0)に調節するので、pH調整剤を含まずに鉄(II)イオン及びギ酸を含んでpHが4.0の皮膜形成液が再循環系配管22の内面に接触することを避けることができる。このため、フェライト皮膜を再循環系配管22の内面に形成しているときに、再循環系配管22の内面から鉄(II)イオンの溶出が生じない。本実施例は、再循環系配管22の内面からの鉄(II)イオンの溶出が生じないので、フェライト化反応で再循環系配管22の内面に生成されたフェライトが再循環系配管22の内面に強固に付着される。したがって、設定厚みのフェライト皮膜を再循環系配管22の内面に形成することができる。
また、廃液処理工程時は、循環ポンプ48の出口側にフィルタ51を通水可能にするのが好ましい。なお、分解処理は、シュウ酸の分解と同様に、分解装置64のバルブ65の開度を調整すると共に、分解装置64をバイパスするバルブ57の開度を調整することにより、皮膜形成液の一部を分解装置64に流入させる。そして、分解装置64に流入する皮膜形成液中に過酸化水素を注入することにより、皮膜形成液中のギ酸及びヒドラジンの分解を行う。
本実施例では、皮膜形成液が塩素を含む薬剤を含んでいないため、再循環系配管22の健全性(例えば、耐腐食性)が害されない。
注入ポンプ39の回転速度等を制御して皮膜形成液のpHを調節する制御装置、磁気フィルタ80の電磁石で発生する磁力を調節する制御装置、及び注入ポンプ39,43及び44の起動及び停止を制御する制御装置は、別々に設けてもよいし、1つの制御装置に統合してもよい。
磁気フィルタ80は、電磁石の替りに、所定の磁力(例えば、2.0×10−3テスラ)を発生する永久磁石を用いてもよい。
本発明の他の実施例であるBWRプラントの再循環系配管に適用した実施例2のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法を、図6及び図7を用いて説明する。
本実施例のフェライト皮膜形成方法では、実施例1のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法において磁気フィルタ80への皮膜形成液の供給を断続的に行う。本実施例のフェライト皮膜形成方法に用いる皮膜形成装置30Aは、前述の皮膜形成装置30において磁気フィルタ80を循環配管35ではなく配管81に設置した構成を有する。弁84が、接続点79と開閉弁34の間で循環配管35に設けられる。配管81は弁84をバイパスし、配管81の両端が循環配管35に接続される。配管81の他端が弁84と開閉弁34の間で循環配管35に接続され、配管81の一端が接続点79と弁84の間で循環配管35に接続される。弁83が磁気フィルタ80の上流で配管81に設けられ、弁82が磁気フィルタ80の下流で配管81に設けられる。皮膜形成装置30Aの他の構成は皮膜形成装置30と同じである。弁82,83は、弁83だけを設けてもよい。
皮膜形成装置30Aを用いた本実施例のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法を、図6を用いて説明する。実施例1と同様に、ステップS1〜S5の各工程が順次実行される。ステップS4〜S6での各薬剤の注入時には、弁84が開いて弁82,83が閉じている。pHが7.0に調節されて温度が75℃である、鉄(II)イオン、ギ酸、過酸化水素及びヒドラジンを含む皮膜形成液が、弁84及び開閉弁34を通り、循環配管35により再循環系配管22に供給される。このとき、皮膜形成液は磁気フィルタ80に供給されない。
皮膜形成液を磁気フィルタに供給する(ステップS9)。ステップS4〜S6での各薬剤の注入が開始されて第1設定時間が経過した後、弁82,83を開いて弁84を閉じる。第3接続点79を通過した皮膜形成液が、配管81により磁気フィルタ80に供給される。第1設定時間は、皮膜形成液が再循環系配管22及び循環配管35で形成される閉ループを一周するのに要する時間(例えば、30分)である。磁気フィルタ80の電磁石は、実施例1と同様に、磁力が、例えば、2.0×10−3テスラに調節されている。皮膜形成液に含まれる少なくとも70nmより大きな粒径を有するフェライト粒子が、磁気フィルタ80によって除去される。具体的には、実施例2では、第1設定時間の間に成長した粒径が55nmよりも大きいフェライト粒子が、磁気フィルタ80で除去される。本実施例においても、pHが7.0に温度が75℃にそれぞれ調節されて、鉄(II)イオン、ギ酸、過酸化水素、ヒドラジン、及び粒径が55nm以下のフェライト粒子を含む皮膜形成液が、循環配管35により、開閉弁34を介して再循環系配管22内に供給される。
磁気フィルタへの皮膜形成液の供給を停止する(ステップS10)。磁気フィルタ80への皮膜形成液の供給開始から第2設定時間(例えば、30分)が経過したとき、弁84を開いて弁82,83を閉じ、磁気フィルタ80への皮膜形成液の供給を停止する。これ以降、皮膜形成液は弁84を通して再循環系配管22に供給される。磁気フィルタ80への皮膜形成液の供給を停止から第1設定時間が経過したとき、ステップS9における磁気フィルタへの皮膜形成液の供給が開始される。ステップS9,S10が繰り返し実行される。
ステップS7の判定が「YES」になるまで、ステップS4〜S6における各薬剤の注入が継続して行われ、ステップS9,S10が繰り返し実行される。ステップS7の判定が「YES」になったとき、再循環系配管22内への皮膜形成液の供給が停止され、再循環系配管22の内面へのフェライト皮膜の形成作業が終了する。その後、ステップS8における皮膜形成液に含まれたギ酸及びヒドラジンの分解処理が実行される。ステップS8での分解処理が終了した後、BWRプラントが起動される前に、循環系配管35が再循環系配管22から取り外される。
本実施例も、実施例1で生じる各効果を得ることができる。本実施例では、磁気フィルタ80への皮膜形成液の供給を停止して第1設定時間が経過したときに磁気フィルタ80に皮膜形成液を供給するので、皮膜形成液内で成長した少なくとも70nmより大きな粒径を有するフェライト粒子をより効率的に短時間で磁気フィルタ80により除去することができる。本実施例は、磁気フィルタ80に断続的に皮膜形成液を供給するので、磁気フィルタ80内に設けられたフェライト粒子等の粒子を捕捉するメッシュの目詰まりを遅くすることができる。このため、磁気フィルタ80による上記フェライト粒子等の捕捉をより長期間に亘って維持することができる。皮膜形成液を常に磁気フィルタ80に供給する場合には、磁気フィルタ80内のメッシュがフェライト粒子によってめっきされた状態になり、メッシュが短時間で目詰まりしてしまう。
本実施例では、第1設定時間及び第2設定時間に基づいた弁82,83,84の開閉制御を、制御装置を用いて行ってもよい。
配管81に弁84を設け、循環配管35と配管81の両端の2つの接続点の間で循環配管35に弁83、磁気フィルタ80及び弁82(または弁83及び磁気フィルタ80)を上流からこの順に設けてもよい。この構成は、後述の実施例3及び実施例6に適用することも可能である。
本発明の他の実施例であるBWRプラントの再循環系配管に適用した実施例3のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法を、図8を用いて説明する。
本実施例のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法は、図8に示す皮膜形成装置30Bを用いる。皮膜形成装置30Bは、皮膜形成装置30Aに制御装置88及び粒径計測器89を追加した構成を有する。粒径計測器89が開閉弁47の上流で循環配管35に設けられる。制御装置88は弁82,83,84の開閉を制御する。皮膜形成装置30Bの他の構成は皮膜形成装置30Aと同じである。鉄(II)イオン及び過酸化水素等を循環配管35内に流れている皮膜形成液に注入した直後では、皮膜形成液内で形成されるフェライト粒子の粒径は70nm以下である。しかし、皮膜形成液が、再循環系22に導入されて皮膜形成装置30の循環配管35に戻ってくる間にフェライト粒子が70nmよりも大きな粒子に成長する。このため、粒径計測器89を開閉弁47の上流で循環配管35に設けるとよい。
本実施例のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法は、実施例2と同様に、図6に示すステップS1〜S6,S9,S10、S7及びS8の各工程を実行する。ステップS4〜S6の各薬剤の循環配管35内への注入によって生成された、pHが7.0に調節されて温度が75℃である、鉄(II)イオン、ギ酸、過酸化水素及びヒドラジンを含む皮膜形成液が、弁84及び開閉弁34を通り、再循環系配管22に供給される。再循環系配管22から循環配管35に戻された皮膜形成液に含まれた粒子の粒径が、粒径計測器89で測定される。粒径計測器89で測定されたフェライト粒子の粒径が制御装置88に入力される。制御装置88は、粒径計測器89で測定された粒径が第1設定粒径(例えば、70nm)を超えたとき、弁82,83を開いて弁84を閉じる。実施例2と同様に、弁84を通って流れていた皮膜形成液が、配管81により磁気フィルタ80に供給される(ステップS9)。磁力が、例えば、2.0×10−3テスラに調節されている磁気フィルタ80が、皮膜形成液に含まれる、粒径が55nmより大きいフェライト粒子を除去する。磁気フィルタ80を通って、pHが7.0に温度が75℃にそれぞれ調節されて、鉄(II)イオン、ギ酸、過酸化水素、ヒドラジン、及び粒径が55nm以下のフェライト粒子を含む皮膜形成液が、循環配管35により、開閉弁34を介して再循環系配管22内に供給される。その後、粒径計測器89で測定された、再循環系配管22から循環配管35に戻された皮膜形成液に含まれたフェライト粒子等の粒子の粒径が、第1設定粒径よりも小さい第2設定粒径(例えば、60nm)になったとき、制御装置88は、弁84を開いて弁82,83を閉じる。これによって、皮膜形成液の磁気フィルタ80への供給が停止され(ステップS10)、皮膜形成液が弁84を通して再循環系配管22に供給される。
ステップS7の判定が「YES」になるまで、ステップS4〜S6における各薬剤の注入が継続して行われ、ステップS9,S10が繰り返し実行される。ステップS7の判定が「YES」になったとき、再循環系配管22内への皮膜形成液の供給が停止され、再循環系配管22の内面へのフェライト皮膜の形成作業が終了する。その後、ステップS8における皮膜形成液に含まれたギ酸及びヒドラジンの分解処理が実行される。ステップS8での分解処理が終了した後、BWRプラントが起動される前に、循環系配管35が再循環系配管22から取り外される。
本実施例は、実施例2で生じる各効果を得ることができる。本実施例は、粒径計測器89で測定された粒径に基づいて制御装置88が弁82,83,84の開閉を行うので、作業員(またはオペレータ)の負担を軽減することができる。
磁気フィルタ80の電磁石に供給する電流をON,OFFすることによって、その電磁石を1×10−4テスラ以上の磁力を発生する励磁状態、及び無励磁状態に切り替えることができる。電磁石がその励磁状態になったときには皮膜形成液に含まれた少なくとも70nmより大きなフェライト粒子を磁気フィルタ80で除去することができ、電磁石が無励磁状態になったときには皮膜形成液に含まれるフェライト粒子が磁気フィルタ80によって除去されない。このように、電磁石に供給する電流をON,OFFすることは、上記したように弁82,83,84の開閉制御を行うことと同じである。このため、磁気フィルタ80の電磁石に供給する電流をON,OFFすることによって、磁気フィルタ80を循環配管35に設置して配管81及ぶ弁82,83を除去することができる。
本発明の他の実施例であるBWRプラントの再循環系配管に適用した実施例4のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法を、図9を用いて説明する。
本実施例のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法は、図9に示す皮膜形成装置30Cを用いる。皮膜形成装置30Cは、皮膜形成装置30Bにおいて磁気フィルタ80、配管81及び弁82,83,84を削除した構成を有する。制御装置88は弁38,41,42の開度を制御する。皮膜形成装置30Cの他の構成は皮膜形成装置30Bと同じである。
皮膜形成装置30Cを用いた本実施例のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法は、図1に示すステップS1〜S8の各工程を実行する。ステップS1〜S3の各工程が実行された後、ステップS4〜S6で各薬剤の循環配管35への注入が行われ、pHが7.0に温度が75℃にそれぞれ調節されて、鉄(II)イオン、ギ酸、過酸化水素及びヒドラジンを含む皮膜形成液が、循環配管35により、再循環系配管22内に供給される。
再循環系配管22から循環配管35に戻された皮膜形成液に含まれた粒子の粒径が、粒径計測器89で測定され、粒径計測器89で測定されたフェライト粒子の粒径が制御装置88に入力される。制御装置88は、粒径計測器89で測定された粒径が第1設定粒径(例えば、70nm)になったとき、弁38,41,42のそれぞれの開度を低減する。皮膜形成液に注入する鉄(II)イオンの量が多くなると、皮膜形成液内で生成されるフェライト粒子の粒径が大きくなる。このため、粒径計測器89で測定された粒径が第1設定粒径(例えば、70nm)になったとき、制御装置88により弁41の開度を減少させて、薬液タンク45から、循環配管35内を流れる皮膜形成液に注入する、鉄(II)イオン及びギ酸を含む薬液の量を減少させる。この薬液の注入量の低減により、薬液タンク46から循環配管35内に注入する過酸化水素の量を減少させる必要があるので、制御装置88は、弁42の開度を低減する。
鉄(II)イオン及びギ酸を含む薬液の注入量の減少により皮膜形成液に供給されるギ酸の量が減少するので、再循環系配管22内に供給する皮膜形成液のpHが低減される。第3接続点79の下流でpH計により計測された皮膜形成液のpHが、制御装置88に入力される。制御装置88は、このpHの計測値に基づいて皮膜形成液のpHが、例えば、7.0になるように、弁38の開度を低減させ、循環配管35に注入するヒドラジンの量を減少させる。
制御装置88の上記した弁41の開度制御により循環配管35に注入する鉄(II)イオン及びギ酸を含む薬液の量を減少させるので、皮膜形成液内で生成されるフェライト粒子の粒径が小さくなる。粒径計測器89で測定された粒径が第2設定粒径(例えば、60nm)まで小さくなったとき、その粒径の測定値を入力した制御装置88は、弁41の開度を増大させ、循環配管35内に注入する鉄(II)イオン及びギ酸を含む薬液の量を増加させる。これに併せて、制御装置88は、弁42,38の開度も増大させる。過酸化水素及びヒドラジンの循環配管35内への注入量が増加する。
以上の制御装置88による弁41,42,38の各開度の調節により、pHが7.0に温度が75℃にそれぞれ調節されて、鉄(II)イオン、ギ酸、過酸化水素、ヒドラジン、及び粒径が70nm以下のフェライト粒子を含む皮膜形成液が、再循環系配管22に供給される。これにより、再循環系配管22の内面に緻密なフェライト皮膜が形成される。
ステップS7の判定が「YES」になるまで、ステップS4〜S6における各薬剤の注入が継続して行われ、制御装置88による弁41,42,38の各開度の制御が行われる。ステップS7の判定が「YES」になったとき、再循環系配管22内への皮膜形成液の供給が停止され、再循環系配管22の内面へのフェライト皮膜の形成作業が終了する。その後、ステップS8における皮膜形成液に含まれたギ酸及びヒドラジンの分解処理が実行される。ステップS8での分解処理が終了した後、BWRプラントが起動される前に、循環系配管35が再循環系配管22から取り外される。
本実施例も、実施例1で生じる各効果を得ることができる。本実施例は、磁気フィルタ80を用いなくても、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
本発明の他の実施例であるBWRプラントの浄化系配管に適用した実施例5のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法を、図10を用いて説明する。
本実施例のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法では、実施例1に用いられた皮膜形成装置30が使用され、図1に示す処理手順が適用される。本実施例のフェライト皮膜形成方法では、皮膜形成装置30の循環配管35の両端が、BWRプラントに設けられた原子炉浄化系の浄化系配管に接続される。原子炉浄化系で腐食が問題になるのは、RPV12からの高温の冷却水が流入する再生熱交換器25である。炭素鋼製の再生熱交換器25の上流及び下流で弁90及び91が浄化系配管20に設けられている。
BWRプラントの運転停止期間内で実施される、本実施例におけるステップS1では、皮膜形成装置30の循環配管35の両端が、浄化系配管20に接続される。すなわち、弁90のボンネットを開放して皮膜形成装置30の循環配管35の一端を弁90の開放されたボンネットのフランジに接続する。浄化系配管20に設けられた弁23は閉じられている。弁91のボンネットを開放して非再生熱交換器26側のフランジを封鎖する。皮膜形成装置30の循環配管35の他端を弁91の開放されたボンネットのフランジに接続する。このようにして、皮膜形成装置30が浄化系配管20に接続され、浄化系配管20及び循環配管35による皮膜形成水溶液の循環経路が形成される。
本実施例では、さらに、実施例1で実施するステップS2〜S8の各工程が順次行われる。これによって、非再生熱交換器25の、皮膜形成水溶液と接触するシェル内面に、実施例1と同様に、フェライト皮膜が形成される。ステップS4〜S6における各薬剤の循環配管35内への注入により生成された、pHが7.0に温度が75℃にそれぞれ調節されて、鉄(II)イオン、ギ酸、過酸化水素及びヒドラジンを含む皮膜形成液が、磁気フィルタ80に供給され、この皮膜形成液に含まれた粒径が70nmより大きいフェライト粒子が磁気フィルタ80によって除去される。この結果、pHが7.0に温度が75℃にそれぞれ調節されて、鉄(II)イオン、ギ酸、過酸化水素、ヒドラジン、及び粒径が70nm以下のフェライト粒子を含む皮膜形成液が、浄化系配管20に供給され、非再生熱交換器25の、皮膜形成液と接触する炭素鋼製のシェル内面に緻密なフェライト皮膜が形成される。ステップS8の処理が終了した後で且つBWRプラントの運転停止期間内で循環配管35が浄化系配管20から取り外される。非再生熱交換器25のシェルは水平に設置されている。したがって、このシェルの内面にフェライト粒子が堆積されることが防止される。
本実施例も、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
再生熱交換器25と非再生熱交換器26の間に弁91が存在しない場合は、非再生熱交換器26と炉水浄化装置27の間で浄化系配管20に設けられている隔離弁に皮膜形成装置30の循環配管35の他端を接続すればよい。
本実施例において、皮膜形成装置30の替りに、前述した皮膜形成装置30A,30B及び30Cのいずれかを用いてもよい。
皮膜形成装置30A,30B及び30Cのいずれかの循環配管の両端を、BWRプラントにおいて、炭素鋼部材である、例えば、余熱除去系の配管、給水系の配管、原子炉隔離時冷却系の配管、炉心スプレイ系の配管、補機冷却水系統の配管、及びクーリングタワーを用いる冷却水系統の配管等に接続し、対応する実施例のフェライト皮膜形成方法を適用してもよい。
さらに、皮膜形成装置30,30A,30B及び30Cのいずれかを用いた炭素鋼部材の表面へのフェライト皮膜形成方法は、BWRプラントだけでなく、PWRプラントの炭素鋼製の給水配管及び火力プラントの炭素鋼製の給水配管に適用することができる。この際には、皮膜形成装置30,30A,30B及び30Cのいずれかの循環配管35の両端が該当するプラントの給水配管に接続される。
発明者らが特開2007−182604号公報に記載された炭素鋼部材の表面へのニッケルフェライト皮膜の形成を検討した結果、皮膜形成液内に70nmより大きな粒径のフェライト粒子が存在すること以外にも、そのニッケルフェライト皮膜の形成に長時間を要する原因が存在することが分かった。この原因は、第3薬剤(pH調整剤)を添加する前に、鉄(II)イオン及びギ酸を含む第1薬剤を皮膜形成液に注入することである。特開2007−182604号公報に記載された各薬剤の添加順序は、いずれも、鉄(II)イオン及びギ酸を含む第1薬剤の添加を第3薬剤(pH調整剤)の添加の前に行っている。発明者らは、検討の結果、最終的に、その薬剤の添加順序が問題であるとの結論に達した。
第1薬剤は、ギ酸(または炭酸)に鉄を溶解することによって製造され、鉄(II)イオンのほかにギ酸(または炭酸)を含んでいる。この第1薬剤をニッケルフェライト皮膜の形成に必要な量だけ水に添加したとき、第1薬剤の水溶液のpHが約4になった。
第1薬剤を含むpHが4で100℃の水溶液(溶存酸素濃度100ppb)に、BWRプラントで用いられる炭素鋼部材を20時間浸漬させたところ、図13に示すように、炭素鋼部材の重量が浸漬前に比べて4×10mg/dmだけ減少した。これは、炭素鋼部材が約pH4のその水溶液に含まれているギ酸の作用によりそれだけ腐食されたことを意味する。この結果、発明者らは、炭素鋼部材へのニッケルニッケルフェライト皮膜の形成に長時間を要する原因の1つが、第1薬剤を最初に添加することによって、炭素鋼部材の表面が、一時的に、約pH4の水溶液にさらされて腐食により減量することであることを突き止めた。
また、発明者らは、炭素鋼部材を浸漬する皮膜形成水溶液のpHを変えて炭素鋼部材の腐食試験を行った。この腐食試験により、発明者らは、図13に示すように、水溶液のpHが6よりも大きくなったとき、炭素鋼部材の重量の変化が急激に小さくなるという新たな試験結果を得ることができた。これは、炭素鋼部材の表面に接触する水溶液のpHが6より大きくなったとき、炭素鋼部材の腐食が急激に減少することを意味している。
特開2007−182604号公報に記載されたように、ニッケルフェライト皮膜形成方法は、皮膜形成液への薬剤の添加を、鉄(II)イオン及びギ酸を含む第1薬剤、ニッケルイオンを含む第4薬剤、酸化剤を含む第2薬剤及びpH調整剤を含む第3薬剤の順に行った場合、第1薬剤及び第4薬剤を含む水溶液が炭素鋼部材に接触してから第2薬剤及び第3薬剤を含む水溶液がその炭素鋼部材の表面に接触するまでの間、約pH4の水溶液がその炭素鋼部材の表面に接触することになる。その間における炭素鋼部材の腐食による減量が、炭素鋼部材表面へのニッケルフェライト皮膜の形成に要する時間を長くしているのである。すなわち、約pH4の水溶液がその炭素鋼部材の表面に接触することにより、炭素鋼部材の表面から鉄(II)イオンが水溶液中に溶出する。この鉄(II)イオンの溶出の影響によって、水溶液に添加された第1薬剤に含まれた鉄(II)イオンが炭素鋼部材の表面に吸着されにくくなる。第1薬剤よりも後に添加されたニッケルイオンを含む第4薬剤が浄化系配管20に設けられ非再生熱交換器25のシェル(炭素鋼部材)内に到達するまでの間、そのシェルの内面から多量の鉄(II)イオンが溶出される。このような多量の鉄(II)イオンの溶出の影響を受けて、添加した鉄(II)イオンのそのシェル内面への吸着量が低下する。更に、そのシェル内面から溶出した多量の鉄(II)イオン及び添加した鉄(II)イオンの存在により、ニッケルイオンの炭素鋼部材の表面への吸着度合いが著しく低下する。以上の理由で、炭素鋼部材表面へのニッケルフェライト皮膜の形成に要する時間が長くなるのである。特開2007−182604号公報に記載された皮膜形成方法を、便宜的に方法Aという。
図13に示す実験結果から、炭素鋼部材の表面にpHが6.0以下の水溶液が接触しても炭素鋼部材の腐食が大きくなり、炭素鋼部材の表面から溶出する鉄(II)イオンの量が大きくなることが分かる。このため、pHが6.0以下の水溶液が炭素鋼部材の表面に接触する場合には、炭素鋼部材表面へのニッケルフェライト皮膜の形成に要する時間が長くなる。
そこで、発明者らは炭素鋼表面の防食方法を検討した。発明者らは、ニッケルフェライト皮膜形成時における炭素鋼部材の腐食(炭素鋼部材からの鉄(II)イオンの溶出)を抑制でき、ニッケルフェライト皮膜の形成に要する時間をさらに短縮できる方法を考えた。
第4薬剤に含まれるニッケルイオンは、炭素鋼部材に含まれる鉄イオンよりもイオン化傾向が小さい。このため、水溶液中のニッケルイオンは、鉄(II)イオンよりも先に炭素鋼部材の表面に付着する。炭素鋼部材の表面にニッケルイオンが存在する場合には、(1)式の反応に従ってニッケルイオンが還元されて炭素鋼部材の表面にニッケル金属が生成される。このニッケル金属が炭素鋼部材表面に皮膜状に成長し、炭素鋼部材の表面にニッケル金属皮膜が形成される。
Fe+Ni2+ → Fe2++Ni ……(1)
ニッケル金属の皮膜が炭素鋼部材の表面に形成された後、ニッケルイオン及び鉄イオンがニッケル金属皮膜の表面に吸着され、酸化剤及びpH調整剤を添加することにより、(2)式の反応により、ニッケルフェライト皮膜がニッケル金属皮膜の表面に形成される。ここで、炭素鋼部材の表面に形成されたニッケル金属皮膜は、ニッケルフェライト皮膜と共に炭素鋼部材の防食皮膜の役割を果たす。
Ni2++2Fe3++4HO → NiFe+8HO ……(2)
以上に述べた検討の結果、発明者らは、炭素鋼部材にニッケルフェライト皮膜を形成する際には、水に、ニッケルイオン及び酸を含む第4薬剤を添加し、その後、鉄(II)イオンを含む第1薬剤、酸化剤を含む第2薬剤及びpH調整剤を含む第3薬剤を添加すればよいと考えた。第4薬剤の添加は、第1薬剤の添加の前もしくは第1薬剤の添加と同時に行えばよい。第2薬剤及び第3薬剤の添加は、第4薬剤の添加後であればいつでもよい。炭素鋼部材の表面にニッケル金属皮膜を形成し、ニッケル金属皮膜の表面にニッケルフェライト皮膜を形成する方法を、便宜的に方法Bという。
方法A及び方法Bにおいてニッケルフェライト皮膜の形成時間を同じくしたとき、各方法で炭素鋼部材の表面に形成されたニッケルフェライト皮膜の量を、図14に示す。方法Bでは、炭素鋼部材の表面に形成されたニッケルフェライト皮膜量が方法Aよりも多くなる。これは、方法Bでは、ニッケルフェライト皮膜の形成時において炭素鋼部材の表面の腐食をニッケル金属皮膜により抑制することができ、ニッケルフェライト皮膜の形成に要する時間を短縮できることを示している。方法Bで形成されたニッケルフェライト皮膜の厚みは、いずれも、特開2006−38483号公報に記載されたステンレス鋼製の構成部材の表面に形成されるフェライト皮膜の厚みよりも厚くなる。
炭素鋼部材の表面に方法Bによって形成された皮膜(ニッケル金属皮膜及びニッケルフェライト皮膜を含む)の厚み方向の組成をオージェスペクトル法で分析した結果を、図15に示す。図15において、縦軸は各皮膜及び母材内の元素成分の濃度を示し、横軸はニッケルフェライト皮膜の表面からの深さを示している。図15に示すように、皮膜は2層構造になっており、表層はニッケルフェライト皮膜であり、ニッケルフェライト皮膜と母材(炭素鋼部材)の間の層はニッケル金属皮膜である。また、ニッケルフェライト皮膜の組成は、Ni0.7Fe0.3Feであった。炭素鋼部材の表面に方法Bによって形成されたニッケルフェライト皮膜をレーザーラマン法で分析した結果を、図16に示す。図16において、実線は方法Bで形成した皮膜における周波数に対する相対強度の変化を示し、破線はマグネタイトにおける周波数に対する相対強度の変化を示し、一点差線はニッケルフェライトにおける周波数に対する相対強度の変化を示している。方法Bで形成した皮膜のピーク位置は、ニッケルフェライト及びマグネタイトの各ピーク値とは異なっていた。これは、方法Bで形成した皮膜において、ニッケルフェライトに含まれるニッケルの一部が2価の鉄イオンに置換されたためだと考えられる。この結果は、オージェスペクトルの分析結果に一致した。
発明者らは、炭素鋼部材の腐食抑制効果を実験により確認した。得られた腐食抑制効果を、図17を用いて説明する。図17の縦軸は、試料D及びEの各重量変化の相対値を示している。試料Dは、炭素鋼部材の表面を機械的に研磨した試料である。試料Eは、方法Bによりニッケル金属皮膜及びニッケルフェライト皮膜を表面に形成した試料である。図17から明らかなように、試料Eは、試料Dよりも重量の減少が少なくなる。すなわち、試料Eは、試料Dよりも腐食が抑制されている。
発明者らは、方法Bにおいて、炭素鋼部材の表面にニッケル金属皮膜を形成する際に、炭素鋼部材の表面に接触させるニッケルイオンを含む水溶液のpHについて検討した。炭素鋼部材の表面にニッケル金属皮膜を形成するためには、鉄(II)イオンを炭素鋼部材からニッケルイオンを含む水溶液に溶出させる必要がある。炭素鋼部材からの鉄(II)イオンの溶出は、ニッケルイオンを含む水溶液のpHが9.0以下でも生じる。しかしながら、硝酸ニッケルの添加によりその水溶液のpHが4.0より小さくなったとき、炭素鋼部材の表面に形成されるニッケル金属皮膜の厚みが不均一になった。pHが4.0以上になったとき、炭素鋼部材の表面に形成されるニッケル金属皮膜の厚みが均一になった。このため、ニッケル金属皮膜を形成するために、炭素鋼部材の表面に接触させるニッケルイオンを含む水溶液のpHは、4.0〜9.0の範囲にすることが望ましい。
炭素鋼部材の表面にニッケル金属皮膜が形成された後は、ニッケル金属皮膜が炭素鋼部材の腐食を防止する。このため、ニッケルフェライト皮膜を形成するために、炭素鋼部材の表面に形成されたニッケル金属皮膜に接触させる皮膜形成液のpHは、pH6.0以下にすることができる。しかしながら、その皮膜形成液のpHは、ニッケル金属皮膜の表面にニッケルフェライト皮膜生成反応を進行させる5.5〜9.0の範囲に調節する必要がある。ニッケルフェライト皮膜の形成に用いる皮膜形成液のpHが5.5であっても、表面にニッケルフェライト皮膜を形成するニッケル金属皮膜に悪影響を与えることはない。
以上に述べた検討結果をも反映した、本発明の他の実施例であるBWRプラントの浄化系配管に適用した実施例6のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法を、図11及び図12を用いて説明する。
本実施例では、プラント構成部材である炭素鋼部材(例えば、浄化系配管に設けられた非再生熱交換器25の炭素鋼製のシェル)の皮膜形成液と接触する表面に、ニッケル金属皮膜及びこのニッケル金属皮膜の表面に形成されるニッケルフェライト皮膜の二層皮膜を形成する。この本実施例のフェライト皮膜形成方法では、図12に示す皮膜形成装置30Dが用いられる。
皮膜形成装置30Dは、実施例3で用いる皮膜形成装置30Bにニッケルイオン注入装置92を追加した構成を有する。皮膜形成装置30Dの他の構成は皮膜形成装置30Bと同じである。ニッケルイオン注入装置92は、薬液タンク95、注入ポンプ94及び注入配管96を有する。薬液タンク93は、注入ポンプ94及び弁95を有する注入配管96によって循環配管35に接続される。薬液タンク95は、ギ酸ニッケルをギ酸で溶解して調製した2価のニッケルイオンを含む薬剤(第4薬剤)を充填している。この薬剤はギ酸を含んでいる。なお、ニッケルを溶解させる薬剤としては、ギ酸に限らず、鉄(II)イオンの対アニオンとなるシュウ酸及びマロン酸等の有機酸、又は炭酸を用いることができる。発明者らは、ギ酸でのニッケルの溶解方法を検討した。この結果、固体のギ酸ニッケルにギ酸を少量添加することによって、ギ酸ニッケルが完全に溶解し、ニッケルフェライト皮膜の形成に使用できるニッケル(II)イオンを含む薬剤を得ることができた。
酸化剤注入装置86の循環配管35への第3接続点(注入配管73と循環配管35の接続点)79、鉄(II)イオン注入装置85の循環配管35への第2接続点(注入配管72と循環配管35の接続点)78、ニッケルイオン注入装置92の循環配管35への第4接続点(注入配管96と循環配管35の接続点)97及びpH調整剤注入装置87の循環配管35への第1接続点(注入配管74と循環配管35の接続点)77が、この順序で、弁33よりも下流で、上流から下流に向って配置されている。第1接続点77は、循環配管35において、皮膜形成対象物にできるだけ近い位置に配置することが好ましい。pH計(図示せず)が、第1接続点77よりも下流で循環配管35に設置される。
本実施例のフェライト皮膜形成方法を、図11を用いて説明する。BWRプラントの運転停止後に、ステップS1〜S3の各工程が実施例1と同様に順次実行される。ステップS1で、皮膜形成装置30Dの循環配管35の両端が、実施例5と同様に、循環配管35の一端を弁90の開放されたボンネットのフランジに、循環配管35の他端を弁91の開放されたボンネットのフランジにそれぞれ接続する。
ニッケルイオン溶液を注入する(ステップS11)。ステップS3が終了した後、弁95を開いて注入ポンプ94を起動し、ニッケルイオン及びギ酸を含む薬液(第4薬剤)を、薬液タンク93から、注入配管96を通して、循環配管35内を流れている75℃の温水に注入する。75℃のニッケルイオン及びギ酸を含む皮膜形成液が生成され、この皮膜形成液が磁気フィルタ80を通って循環配管35により浄化系配管20内に供給される。浄化系配管20から排出されたこの皮膜形成液は循環配管35に戻される。
75℃のニッケルイオン及びギ酸を含む皮膜形成液が非再生熱交換器25の炭素鋼製のシェル(以下、単にシェルという)の内面に接触することによって、この水溶液に含まれるギ酸の作用によりシェルの内面からシェル(炭素鋼部材)の母材に含まれる鉄が鉄(II)イオンになって水溶液中に溶出する。鉄(II)イオンが溶出するとき、電子(2e)が放出される。水溶液に含まれてシェルの内面近くに存在するニッケルイオンがその電子を捕捉してニッケル金属になり、このニッケル金属が、シェルの、水溶液に接触する内面に付着する。すなわち、水溶液に含まれるニッケルイオンは、イオン化傾向がシェルから溶出した鉄(II)イオンよりも小さいので、(1)式の反応によりニッケル金属になり、このニッケル金属がシェルの内面に付着する。やがて、シェルの内面の、ニッケルイオン及びギ酸を含む水溶液が接触する領域全面に亘って、防食皮膜であるニッケル金属皮膜が形成される。ニッケル金属は、シェルから水溶液に鉄(II)イオンが溶出している間、シェルの内面に付着する。シェルの内面の、ニッケルイオン及びギ酸を含む水溶液が接触する領域全面にニッケル金属皮膜が形成されたとき、このニッケル金属皮膜によってシェルから水溶液への鉄(II)イオンの溶出が阻止されるので、ニッケル金属のシェルの内面への付着が停止される。ニッケルイオン及びギ酸を含む薬液の皮膜形成水溶液への注入は、ニッケル金属皮膜の形成が終了するまで、継続して行われる。
所定の厚みのニッケル金属皮膜が形成された後、ステップS5で、鉄(II)イオン及びギ酸を含む溶液がタンク45から循環配管35内を流れるニッケルイオンを含む皮膜形成液に注入される。注入された鉄(II)イオンの一部が、皮膜形成液内で水酸化第一鉄となる。第1薬剤を添加するタイミングは、給水配管10の内面(炭素鋼部材の給水と接触する表面)にニッケル金属皮膜が形成された後、直ちに投入することが望ましい。ニッケル金属皮膜は、皮膜形成液と接触するシェルの内面全面に形成される。ニッケル金属皮膜の形成は、シェルの腐食電流を測定することによって確認する。ニッケル金属皮膜がシェルの内面に形成されると、シェルの腐食電流が低下する。この腐食電流の低下により、ニッケル金属皮膜の形成を確認することができる。また、ニッケルイオンを含む薬剤の注入開始後の経過時間が設定時間(例えば、5分)を経過したときに、第1薬剤を注入してもよい。この設定時間は、ニッケル金属皮膜の形成が完了するまでに要する時間として、実験等で事前に求められている。第1薬剤の注入開始は、第2薬剤の注入後であれば、シェルの、その皮膜形成液と接触する内面の全面にニッケル金属皮膜が形成された時点以外でも良い。
ステップS6における酸化剤(過酸化水素)、及びステップS4におけるpH調整剤(ヒドラジン)の循環配管35内へのそれぞれの注入が行われる。循環配管35に設けられたpH計が、循環配管35内を流れる皮膜形成液のpHを計測する。制御装置(図示せず)が、このpH計測値に基づいて、注入ポンプ39の回転速度(またはバルブ38の開度)を制御してヒドラジンの注入量を調節し、皮膜形成液のpHを5.5〜9.0の範囲内で、例えば、7.0に調節する。
pHが、例えば、7.0に調節されて、ニッケルイオン、鉄(II)イオン、水酸化第一鉄及び過酸化水素を含む75℃の皮膜形成液が、浄化系配管20及び非再生熱交換器25のシェル内を流れるので、炭素鋼部材であるシェルの内面に形成されたニッケル金属皮膜の表面(皮膜形成水溶液と接触する表面)に吸着されたニッケルイオン、鉄(II)イオン及び水酸化第一鉄がニッケルフェライト化し始める。
しかしながら、皮膜形成液内にニッケルフェライト粒子が生成される。浄化系配管20から循環配管35に戻された皮膜形成液に含まれたニッケルフェライト粒子の粒径が粒径計測器89によって測定される。制御装置88は、粒径計測器89で測定された粒径が第1設定粒径(例えば、70nm)を超えたとき、弁82,83を開いて弁84を閉じる。実施例2と同様に、弁84を通して流れていた皮膜形成液が、配管81により磁気フィルタ80に供給される(ステップS9)。磁力が、例えば、2.0×10−3テスラに調節されている磁気フィルタ80が、皮膜形成液に含まれる、粒径が55nmより大きいニッケルフェライト粒子を除去する。磁気フィルタ80を通って、pHが7.0に温度が75℃にそれぞれ調節されて、鉄(II)イオン、ギ酸、過酸化水素、ヒドラジン、及び粒径が55nm以下のニッケルフェライト粒子を含む皮膜形成液が、循環配管35により、開閉弁34を介して浄化系配管20内に供給される。その後、粒径計測器89で測定された、浄化系配管20から循環配管35に戻された皮膜形成液に含まれたフェライト粒子等の粒子の粒径が、第2設定粒径(例えば、60nm)になったとき、制御装置88は、弁84を開いて弁82,83を閉じる。これによって、皮膜形成液の磁気フィルタ80への供給が停止され(ステップS10)、ヒドラジン、ニッケルイオン、鉄(II)イオン、水酸化第一鉄及び過酸化水素を含む皮膜形成液が、循環配管35により、開閉弁34を介してシェル内に供給される。この皮膜形成液は、浄化系配管20及びシェル内を流れ、循環配管35の弁47側へと戻される。
戻された皮膜形成液に鉄(II)イオン及びギ酸を含む薬液(第1薬剤)、ニッケルイオン及びギ酸を含む薬液(第4薬剤)、過酸化水素(第2薬剤)及びヒドラジン(第3薬剤)が注入され、この皮膜形成液が再びシェル内に導かれる。皮膜形成液がシェルの内面に接触することによって、ニッケルイオン、鉄(II)イオン及び水酸化第一鉄が炭素鋼部材であるシェルの内面に形成されたニッケル金属皮膜の表面に吸着され、吸着されたニッケルイオン、鉄(II)イオン及び水酸化第一鉄が過酸化水素によってニッケルフェライト化される。皮膜形成液がヒドラジンの作用でpHが7.0に調節されているので、シェルの内面に形成されたニッケル金属皮膜の表面に、ニッケルフェライトを主成分とするフェライト皮膜(ニッケルフェライト皮膜)が形成される。
ステップS4の実施により炭素鋼部材の表面にニッケル金属皮膜が形成された後、鉄(II)イオンが含まれた薬液(第1薬剤)、過酸化水素(第2薬剤)及びヒドラジン(第3薬剤)がニッケルイオンを含む皮膜形成液に注入される。特に、ニッケル金属皮膜の形成後においては、ステップS5、S6及びS7における各薬剤の注入を、連続的に実施することが好ましい。より具体的には、炭素鋼部材表面にニッケル金属皮膜を形成した後、第3接続点79で酸化剤が注入された皮膜形成液が第2接続点78に到達したときに、鉄(II)イオンを含む薬液が注入される。これらの酸化剤及び鉄(II)イオンを含む皮膜形成液が第4接続点97に到達したときに、ニッケルイオンを含む薬液が注入される。これらの酸化剤、鉄(II)イオン及びニッケルイオンを含む皮膜形成液が第1接続点77に達したときに、pH調整剤の皮膜形成液への注入が実施される。
循環配管35の内面での無駄なニッケルフェライト皮膜の形成を防止するため、pH調整剤の循環配管35への注入ポイントは、皮膜形成箇所であるシェルに近い位置、すなわち、開閉弁34と循環配管35の接続点に近い位置にすることが好ましい。
ニッケルフェライト皮膜の形成処理が完了したかが判定される(ステップS7)。この判定は、ニッケルフェライト皮膜の形成処理開始、すなわち、第1薬剤の注入が開始されて酸化剤及びpH調整剤の注入が開始された後の経過時間で行われる。この経過時間がシェルの内面に所定の厚みのニッケルフェライト皮膜を形成するのに要する時間になるまでの間は、ステップS7の判定は「NO」になる。ステップS11,S5,S6,S4,S9及びS10の操作が繰り返し行われる。ステップS7の判定が「YES」になったとき、制御装置88が、注入ポンプ39,43,44及び81を停止し(または弁38,41,42及び82を閉じ)て各薬剤の、循環している皮膜形成液への注入を停止する。これによって、シェルの内面へのニッケルフェライト皮膜の形成作業が終了する。
その後、ステップS8において、実施例1と同様に、皮膜形成液に含まれている薬剤(ギ酸及びヒドラジン)の分解が、分解装置64で実施される。皮膜形成水溶液に含まれている薬剤の分解が終了した後、循環配管35が給水配管10から取り外され、バルブ28等が元通りに復旧される。これにより、BWRプラントの運転が開始できる状態になる。
触媒を用いた分解処理装置64の替りに紫外線照射装置を用いることも可能である。紫外線照射装置も、酸化剤の存在下でヒドラジン、ギ酸及びシュウ酸を分解することができる。
ヒドラジン及びギ酸を分解装置64において上記のように気体及び水に分解することによって、カチオン交換樹脂塔60によるヒドラジン及び混床樹脂塔62によるギ酸の除去を回避できるので、カチオン交換樹脂塔60内の使用済イオン交換樹脂の廃棄量を著しく低減できる。
本実施例は、給水配管10の、ニッケルイオンを含む薬剤を皮膜形成水溶液と接触する内面の全面にニッケル金属皮膜が形成された後に、鉄(II)イオンを含む薬液を、皮膜形成水溶液に注入している。このため、本実施例では、給水配管10内に供給される皮膜形成水溶液のpHが、ヒドラジンの注入前に、第1薬剤の注入後に第1薬剤に含まれているギ酸の影響を受けて4.0になったとしても、炭素鋼部材表面にニッケル金属皮膜が形成されているため、給水配管10の内面、すなわち、炭素鋼部材の表面の腐食を抑制することができる。
本実施例は、皮膜形成液を磁気フィルタを通過させるので、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
本実施例は、ニッケルフェライト皮膜形成時においてシェル内面の腐食をニッケル金属皮膜によって抑制することができるので、鉄(II)イオン及びニッケルイオンがシェル内面、具体的にはニッケル金属皮膜の表面に付着しやすくなる。このため、設定厚みのニッケルフェライト皮膜をシェル内面に形成するために要する時間をさらに短縮することができる。本実施例における、このニッケルフェライト皮膜の形成に要する時間に前述のニッケル金属皮膜の形成に要する時間を加えて得られる合計時間が、も、ニッケル金属皮膜を形成しない特開2007−182604号公報の方法で設定厚みのニッケルフェライト皮膜を形成するのに要する時間よりも短縮される。
ニッケルフェライト皮膜は、ニッケル金属皮膜よりも緻密であり、ニッケル金属皮膜よりも炭素鋼部材の防食効果が大きくなる。シェルの内面に2つの防食皮膜であるニッケルフェライト皮膜及びニッケル金属皮膜を形成する本実施例は、BWRプラントの運転時において、炭素鋼部材であるシェルの内面の腐食を著しく抑制することができる。特に、ニッケルフェライト皮膜がニッケル金属皮膜を覆っているので、その腐食をさらに低減することができる。
ニッケル金属皮膜の形成の際にシェルから皮膜形成液に溶出した鉄(II)イオンは、ニッケル金属皮膜の表面におけるニッケルフェライト皮膜の形成に用いられる。このため、ニッケルフェライト皮膜形成時に、鉄(II)イオン注入装置85によって循環配管35内を流れている皮膜形成水溶液に注入する、鉄(II)イオン及びギ酸を含む薬液の量を低減できる。
本実施例では、ニッケル金属皮膜の形成によって、ニッケルフェライト皮膜の厚みが、ニッケル金属皮膜を形成しない場合よりも厚くなる。このため、本実施例によれば、炭素鋼部材であるシェルの腐食がさらに低減できる。
本実施例は、ニッケルフェライト皮膜の形成に必要な酸化剤及び皮膜形成液に含まれたヒドラジン及びギ酸の分解時に使用する酸化剤として、同じ種類の過酸化水素を用いているので、酸化剤を充填する薬液タンク46及びそれを移送する注入ポンプ44を共用することができる。このため、皮膜形成装置30の構造を簡素化することができる。
本実施例は、ニッケルフェライト皮膜の形成に使用する薬剤に塩素を含む薬剤を用いていないため、BWRプラントの構成部材の健全性(例えば、耐腐食性)を害することがない。なお、薬剤の使用量を抑制するには、余分な反応生成物を分離除去して未反応薬剤を回収し、回収後の未反応薬剤を再利用することが好ましい。
シェルの、皮膜形成液と接触する内面の全面にニッケル金属皮膜が形成される前に、ニッケルイオンを含む皮膜形成液に鉄(II)イオン及びギ酸を含む薬液を注入した場合には、過酸化水素(第2薬剤)及びヒドラジン(第3薬剤)の注入を、上記の内面の全面にニッケル金属皮膜が形成された後に行う。
この場合には、シェルの、皮膜形成水溶液と接触する内面の全面にニッケル金属皮膜が形成される前に、ニッケルイオン及び鉄(II)イオンを含む皮膜形成液がシェル内に供給される期間が存在する。この期間には、ニッケルイオン及びギ酸を含む薬液(第4薬剤)及び鉄(II)イオン及びギ酸を含む薬液(第1薬剤)がそれぞれ注入されるが、皮膜形成水溶液のpHは4.0である。もし、phが4.0よりも低い場合には、ヒドラジンを注入してpHを4.0に調整する。シェルの、皮膜形成液と接触する内面の全面にニッケル金属皮膜が形成される前に、ニッケルイオンを含む皮膜形成液に鉄(II)イオン及びギ酸を含む薬液を注入した場合においても、シェルの内面から鉄(II)イオンの溶出の際に発生する電子(2e)を皮膜形成液内のニッケルイオンが捕捉して、ニッケル金属が生成される。このニッケル金属がシェルの、水溶液に接触する内面に付着し、シェルの内面にニッケル金属皮膜が形成される。
本実施例は、BWRプラント、PWRプラント及び火力プラントの給水配管に適用することができる。
本発明の他の実施例であるBWRプラントの再循環系配管に適用した実施例7のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法を、図13及び図14を用いて説明する。実施例1〜6は、いずれも、少なくとも1つの運転サイクルでの運転を経験したBWRプラントにおいて、皮膜形成対象物である配管系の内面にフェライト皮膜を形成している。
本実施例のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法は、新設のBWRプラントの配管系の内面にフェライト皮膜を形成する点で、前述の各実施例と異なっている。本実施例で用いられる皮膜形成装置30Eは、実施例1で用いる皮膜形成装置30において弁49,50,55,56,61,63、配管66〜68,70,71、エゼクタ37、フィルタ51、冷却器58、カチオン交換樹脂塔60及び混床樹脂塔62を除去した構成を有する。皮膜形成装置30Eの他の構成は皮膜形成装置30と同じである。本実施例では、新設のBWRプラントの建設が終了し、このBWRプラントの試運転が開始される前に、皮膜形成装置30Eを用いて皮膜形成対象物であるプラント構成部材の表面に、図13に示す手順により、フェライト皮膜を形成する。このフェライト皮膜の形成を以下に説明する。
まず、新設のBWRプラントの建設が終了し、このBWRプラントの最初の試運転が開始される前に、ステップS1において、皮膜形成装置30Eの循環配管35の両端が、実施例1と同様に、BWRプラントの再循環系配管22に連絡される。新設のBWRプラントでは、再循環系配管22の内面に放射性物質が付着していないので、再循環系配管22に対して化学除染を行う必要がない。このため、本実施例は、図1に示す手順のステップS2の化学除染を実施しないで、ステップS3の循環配管35内の水(または皮膜形成液)を加熱し、水(または皮膜形成液)の温度を60℃〜100℃の範囲内の温度に調節する。
ステップS3での昇温が終了後、ステップS4〜S6により該当する各薬剤が循環配管35内に注入される。これらの薬剤の注入により循環配管35内で生成された、pHが7.0に温度が75℃にそれぞれ調節されて、鉄(II)イオン、ギ酸、過酸化水素及びヒドラジンを含む皮膜形成液が、磁気フィルタ80に供給される。磁気フィルタ80の磁力が、例えば、2×10−3テスラに調節されている。皮膜形成液に含まれた粒径が70nmより大きいフェライト粒子が、磁気フィルタ80によって除去される。
磁気フィルタ80を通過し、pH7.0で75℃の、鉄(II)イオン、ギ酸、過酸化水素及び粒径が55nm以下のフェライト粒子を含む皮膜形成液が、循環配管35内を流れて再循環系配管22に供給される。皮膜形成液に接触する、再循環系配管22の内面にフェライト皮膜が形成される。再循環系配管22の内面に形成れたフェライト皮膜の厚みが所定厚みになったとき、ステップS7の判定が「YES」になり、再循環系配管22の内面へのフェライト皮膜の形成作業が終了する。その後、ステップS8において、皮膜形成液に含まれたギ酸及びヒドラジンが分解装置64で分解される。
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
本実施例において、皮膜形成装置30Eの替りに、前述した皮膜形成装置30,30A,30B,30C及び30Dのいずれかを用いてもよい。皮膜形成装置30,30A,30B,30C及び30Dのいずれかを用いる場合には、酸化除染及び還元除染を実施しないため、エゼクタ37からの過マンガン酸カリウム及びシュウ酸の供給が行われない。
本実施例は、新設のPWRプラント及び火力プラントに対しても適用することができる。
本発明は、原子力プラント及び火力プラントに適用することができる。
1…原子炉、3…タービン、4…復水器、10…給水配管、12…原子炉圧力容器、20…浄化系配管、22…再循環系配管、30,30A,30B,30C,30D,30E…皮膜形成装置、31…サージタンク、32,48…循環ポンプ、35…循環配管、37…エゼクタ、39,43,44,96…注入ポンプ、40,45,46,93…薬液タンク、51…フィルタ、53…加熱器、58…冷却器、60…カチオン交換樹脂塔、62…混床樹脂塔、64…分解装置、72,73,74,96…注入配管、85…鉄(II)イオン注入装置、86…酸化剤注入装置、87…pH調整剤注入装置、92…ニッケルイオン注入装置、80…磁気フィルタ、88…制御装置。

Claims (25)

  1. 鉄(II)イオン、前記鉄(II)イオンを酸化させる酸化剤及びpH調整剤を含み、pHが5.5〜9.0の範囲内に調節された皮膜形成液に析出した、少なくとも粒径が70nmよりも大きいフェライト粒子を、磁気フィルタによって除去し、
    前記磁気フィルタを通過した、前記鉄(II)イオン、前記酸化剤、前記pH調整剤、及び粒径が70nm以下の前記フェライト粒子を含み、pHが5.5〜9.0の範囲内に調節された前記皮膜形成液を、プラント構成部材の表面に接触させて、この表面にフェライト皮膜を形成することを特徴とするプラント構成部材へのフェライト皮膜の形成方法。
  2. 前記磁気フィルタに設けられた磁石の磁力が1×10−4テスラ〜10テスラの範囲になっている請求項1に記載のプラント構成部材へのフェライト皮膜の形成方法。
  3. 前記磁気フィルタにより少なくとも粒径が70nmよりも大きい前記フェライト粒子を除去した前記皮膜形成液の前記プラント構成部材の表面への接触と、前記磁気フィルタを通過しない前記皮膜形成液の前記プラント構成部材の表面への接触を、交互に行う請求項1に記載のプラント構成部材へのフェライト皮膜の形成方法。
  4. 前記プラント構成部材の表面に接触する前記皮膜形成液の温度が、60℃〜100℃の範囲内に調節される請求項1ないし3のいずれか1項に記載のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法。
  5. 前記磁気フィルタによる前記粒子の除去、前記皮膜形成液の前記プラント構成部材の表面への接触、及び前記表面への前記フェライト皮膜の形成が、前記プラント構成部材を有するプラントの運転停止後で前記プラントの運転開始前に行われ、
    前記プラント構成部材の表面への前記皮膜形成液の接触が、前記プラント構成部材の前記表面の化学除染を実施した後に行われる請求項1ないし4のいずれか1項に記載のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法。
  6. 前記磁気フィルタによる前記粒子の除去、前記皮膜形成液の前記プラント構成部材の表面への接触、及び前記表面への前記フェライト皮膜の形成が、前記プラント構成部材を有するプラントの建設が終了した後で前記プラントの最初の試運転が開始される前に行われる請求項1ないし4のいずれか1項に記載のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法。
  7. 加熱装置及び磁気フィルタを有する配管を、プラント構成部材である配管系に接続し、
    鉄(II)イオン、酸化剤及びpH調整剤を含み、pHが5.5〜9.0の範囲内に調節されて前記配管内を流れる皮膜形成液に含まれる少なくとも粒径が70nmよりも大きいフェライト粒子を、前記磁気フィルタによって除去し、
    前記磁気フィルタを通過した、前記鉄(II)イオン、前記酸化剤、前記pH調整剤、及び粒径が70nm以下の前記フェライト粒子を含み、pHが5.5〜9.0の範囲内に調節された前記皮膜形成液を、前記配管を通して前記配管系内に供給し、
    前記皮膜形成液を前記配管系の内面に接触させて、この内面にフェライト皮膜を形成することを特徴とするプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法。
  8. 前記磁気フィルタに設けられた磁石の磁力が1×10−4テスラ〜10テスラの範囲になっている請求項7に記載のプラント構成部材へのフェライト皮膜の形成方法。
  9. 前記皮膜形成液に含まれる前記鉄(II)イオンが前記配管に設けられた鉄(II)イオン注入装置から注入され、前記皮膜形成液に含まれる前記酸化剤が前記配管に設けられた酸化剤注入装置から注入され、前記皮膜形成液に含まれる前記pH調整剤が前記配管に設けられたpH調整剤注入装置から注入される請求項7に記載のプラント構成部材へのフェライト皮膜の形成方法。
  10. 前記配管の一部が第1弁を設けた第1配管部及び第2弁及び前記磁気フィルタを設け、前記第1配管部と並列に配置された第2配管部によって構成されており、
    前記第1弁が開いて前記第2弁が閉じられた第1状態、前記第1弁が閉じて前記第2弁が開いた第2状態を、前記第1弁及び前記第2弁の開閉操作により交互に形成する請求項7または9に記載のプラント構成部材へのフェライト皮膜の形成方法。
  11. 前記第1状態及び前記第2状態を交互に形成する前記第1弁及び前記第2弁の開閉操作を、制御装置によって行う請求項10に記載のプラント構成部材へのフェライト皮膜の形成方法。
  12. 前記制御装置が、前記配管に設けられた粒径計測装置で計測された、前記配管内を流れる前記皮膜形成液に含まれる粒子の粒径に基づいて、前記第1弁及び前記第2弁の前記開閉操作を行う請求項11に記載のプラント構成部材へのフェライト皮膜の形成方法。
  13. 前記プラント構成部材の表面に接触する前記皮膜形成液の温度が、前記加熱装置により60℃〜100℃の範囲内に調節される請求項7ないし12のいずれか1項に記載のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法。
  14. 前記配管の前記配管系への接続、前記磁気フィルタによる前記フェライト粒子の除去、前記皮膜形成液の前記配管系への供給、及び前記配管系の内面への前記フェライト皮膜の形成が、前記プラント構成部材を有するプラントの運転停止後で前記プラントの運転開始前に行われ、
    前記皮膜形成液の前記配管系への供給が、前記配管系の前記内面の化学除染を実施した後に行われる請求項7ないし13のいずれか1項に記載のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法。
  15. 前記配管の前記配管系への接続、前記磁気フィルタによる前記フェライト粒子の除去、前記皮膜形成液の前記配管系への供給、及び前記配管系の内面への前記フェライト皮膜の形成が、前記配管系を有するプラントの建設が終了した後で前記プラントの最初の試運転が開始される前に行われる請求項7ないし13のいずれか1項に記載のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法。
  16. 前記フェライト皮膜を形成する前記配管系が、ステンレス鋼製の配管系及び炭素鋼製の配管系のいずれかである請求項7ないし15のいずれか1項に記載のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法。
  17. 加熱装置を有する配管を、プラント構成部材である配管系に接続し、
    鉄(II)イオンが、前記配管に設けられて前記鉄(II)イオンの注入量を調節する第1注入弁を有する鉄(II)イオン注入装置から前記配管内に注入され、
    酸化剤が、前記配管に設けられて前記酸化剤の注入量を調節する第2注入弁を有する酸化剤注入装置から前記配管内に注入され、
    pH調整剤が、前記配管に設けられて前記pH調整剤の注入量を調節する第3注入弁を有するpH調整剤注入装置から前記配管内に注入され、
    前記鉄(II)イオン、前記酸化剤及び前記pH調整剤を含み、pHが5.5〜9.0の範囲内に調節された皮膜形成液を、前記配管を通して前記配管系内に供給し、
    制御装置が、前記配管に設けられた粒径計測装置で計測された、前記配管内を流れる前記皮膜形成液に含まれる粒子の粒径に基づいて、前記第1注入弁及び前記第2注入弁の開度を調節し、
    前記皮膜形成液を前記配管系の内面に接触させて、この内面にフェライト皮膜を形成することを特徴とするプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法。
  18. 前記鉄(II)イオン注入装置から前記配管内に前記鉄(II)イオンと共にカルボン酸が注入され、
    前記制御装置が、前記配管に設けられたpH測定装置によって測定された、前記配管系に供給される前記皮膜形成液のpHに基づいて、前記第3注入弁の開度を制御して前記皮膜形成液のpHを5.5〜9.0の範囲内に調節する請求項17に記載のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法。
  19. プラント構成部材である炭素鋼部材の水に接する表面にニッケル金属皮膜を形成し、
    鉄(II)イオン、ニッケルイオン、前記鉄(II)イオンを酸化させる酸化剤及びpH調整剤を含み、pHが5.5〜9.0の範囲内に調節された皮膜形成液に析出した、少なくとも粒径が70nmよりも大きいフェライト粒子を、磁気フィルタによって除去し、
    前記磁気フィルタを通過した、前記鉄(II)イオン、前記酸化剤、前記pH調整剤、及び粒径が70nm以下の前記フェライト粒子を含み、pHが5.5〜9.0の範囲内に調節された前記皮膜形成液を、前記炭素鋼部材の表面に形成された前記ニッケル金属皮膜の表面に接触させて、前記ニッケル金属皮膜の表面にニッケルフェライト皮膜を形成することを特徴とするプラント構成部材へのフェライト皮膜の形成方法。
  20. 前記ニッケル金属皮膜の形成が、pHが4.0以上9.0以下の範囲内の値に調節された、ニッケルイオンを含む皮膜形成液を、前記炭素鋼部材の前記表面に接触させることによって行われる請求項10に記載のプラント構成部材へのフェライト皮膜の形成方法。
  21. 前記皮膜形成液がpH調整剤を含んでいる請求項20に記載のプラント構成部材へのフェライト皮膜の形成方法。
  22. プラントの運転が停止されている期間内で、加熱装置及び磁気フィルタを有する配管を、プラント構成部材である配管系に接続し、
    pHが4.0以上9.0以下の範囲内の値に調節された、ニッケルイオンを含む第1皮膜形成液を、前記配管から前記配管系内に供給することによって、前記配管系を構成する前記炭素鋼部材の内面にニッケル金属皮膜を形成し、
    鉄(II)イオン、ニッケルイオン、酸化剤及びpH調整剤を含み、pHが5.5〜9.0の範囲内に調節されて前記配管内を流れる第2皮膜形成液に含まれる少なくとも粒径が70nmよりも大きいフェライト粒子を、前記磁気フィルタによって除去し、
    前記磁気フィルタを通過した、前記鉄(II)イオン、前記ニッケルイオン、前記酸化剤、前記pH調整剤、及び粒径が70nm以下の前記フェライト粒子を含み、pHが5.5〜9.0の範囲内に調節された前記第2皮膜形成液を、前記配管を通して前記配管系内に供給し、
    前記皮膜形成液を前記配管系の内面に形成された前記ニッケル金属皮膜の表面に接触させて、前記ニッケル金属皮膜の表面にニッケルフェライト皮膜を形成し、
    前記期間内で、前記配管を前記配管系から取り外すことを特徴とするプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法。
  23. 前記配管の両端部を前記配管系に連絡して前記配管及び前記配管系によって閉ループを形成し、前記第1皮膜形成液及び前記第2皮膜形成液が前記閉ループ内で循環される請求項22に記載のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法。
  24. 前記ニッケル金属皮膜及び前記ニッケルフェライト皮膜の形成が、前記炭素鋼部材を有するプラントの運転が停止されている期間内で行われる請求項19ないし23のいずれか1項に記載のプラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法。
  25. 前記皮膜形成液の温度が60℃〜100℃の範囲に含まれる温度に調節されている請求項19ないし24のいずれか1項に記載の炭素鋼部材へのニッケルフェライト皮膜形成方法。
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