JP2011247285A - 車両用ロックアップクラッチの制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ロックアップクラッチの摩擦材の耐久性低下を抑制すると共に、スリップ制御領域を拡大して燃費を向上させることができる車両用ロックアップクラッチの制御装置を提供する。
【解決手段】表面温度推定手段112は、ロックアップクラッチ32の摩擦材33の表面温度Tsfを、ロックアップクラッチ解放時、スリップ制御時、および完全係合時の各々の状況下において常時推定し、ロックアップ制御手段112は、上記各々の状況下において常時推定される摩擦材33の表面温度Tsfに基づいてロックアップクラッチ32の作動状態を制御するため、スリップ制御時だけでなく、ロックアップクラッチ32の解放時および完全係合時においても常時摩擦材33の表面温度Tsfが推定され、常時推定される上記摩擦材33の表面温度Tsfに基づいて最適なロックアップ制御が可能となる。
【選択図】図5
【解決手段】表面温度推定手段112は、ロックアップクラッチ32の摩擦材33の表面温度Tsfを、ロックアップクラッチ解放時、スリップ制御時、および完全係合時の各々の状況下において常時推定し、ロックアップ制御手段112は、上記各々の状況下において常時推定される摩擦材33の表面温度Tsfに基づいてロックアップクラッチ32の作動状態を制御するため、スリップ制御時だけでなく、ロックアップクラッチ32の解放時および完全係合時においても常時摩擦材33の表面温度Tsfが推定され、常時推定される上記摩擦材33の表面温度Tsfに基づいて最適なロックアップ制御が可能となる。
【選択図】図5
Description
本発明は、トルクコンバータをはじめとする流体伝動装置に備えられるロックアップクラッチの制御装置に関するものである。
エンジンと変速機との間に介装される流体伝動装置として機能するトルクコンバータが良く知られている。近年のトルクコンバータには、エンジンと変速機との間の動力伝達を機械的に接続するロックアップクラッチが設けられており、車両の走行状態に応じてロックアップクラッチの係合状態が最適に制御される。ロックアップクラッチは、例えば車速およびスロットル開度から構成されるロックアップクラッチの作動状態を規定する関係マップより、現在の車速とスロットル開度とに基づいて、ロックアップクラッチの作動状態が決定される。また、比較的低車速の領域では、ロックアップクラッチを所定の差回転で滑られるスリップ制御を実施することで、ロックアップクラッチの係合領域を拡大して燃費を向上させる技術が提案されている。
ところで、ロックアップクラッチのスリップ制御が長時間実施されると、ロックアップクラッチの摩擦板から発生する摩擦熱によって、摩擦板の耐久性が低下する。これに対して、特許文献1では、スリップ制御中に発生する発熱量を算出し、算出された発熱量が基準値以上である状態が設定時間継続したとき、スリップ制御領域を変更してスリップ制御を終了する技術が開示されている。また、トルクコンバータ内の油温が基準値を越える状態が設定時間継続したとき、スリップ制御領域を変更してスリップ制御を解除する技術が開示されている。また、特許文献2では、ロックアップクラッチのスリップ制御中において、トルクコンバータ内の作動油温とロックアップクラッチの発熱量に基づいて、ロックアップクラッチの摩擦材の表面温度を推定し、推定された温度が許容温度以上となると、ロックアップクラッチを完全係合または解放してスリップ制御を解除することにより、摩擦材の温度を低下させる技術が開示されている。
しかしながら、特許文献1では、ロックアップクラッチの単位時間・単位面積当たりの発熱量に基づいてスリップ制御領域を決定しているが、実際には、ロックアップクラッチの摩擦材の表面温度が所定値を越える場合に、摩擦材の耐久性が低下する。したがって、例えば特許文献1において、発熱量が基準値を超えない状態で長時間スリップ制御が実施される場合があり、そのときにロックアップクラッチの摩擦材の表面温度が許容温度を超えてしまい、摩擦材の耐久性が低下する可能性がある。或いは、摩擦材の表面温度は許容温度範囲内にあり、スリップ制御が実施可能な状態にあるにも拘わらず、発熱量に基づいてスリップ制御が禁止される場合が生じる。
また、特許文献1および特許文献2では、ロックアップクラッチの発熱量(特許文献1)またはロックアップクラッチの摩擦材の表面温度(特許文献2)に基づいて、ロックアップクラッチのスリップ制御を終了するものであるが、一端発熱量または摩擦材の表面温度に基づいてスリップ制御が解除されると、スリップ制御を再度実施することができなくなる問題があった。上記は、特許文献1および特許文献2では、ロックアップクラッチのスリップ制御時のみ発熱量または表面温度が推定されるため、スリップ制御解除後にロックアップクラッチの摩擦材の表面温度が低下してスリップ制御が可能となる場合であっても、その温度が検出されず、スリップ制御が実施可能であると判断されないためである。したがって、例えば、想定以上の長い登坂路でスリップ制御が継続される状況などにおいて、一端発熱量または摩擦材の表面温度が基準値を超えると緊急回避的にスリップ制御を解除するような特別な場合であれば、特許文献1および特許文献2に記載の発明は有効であるが、通常の走行中に再度スリップ制御ができなくなり燃費性が低下する問題があった。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、ロックアップクラッチを有する流体伝動装置をエンジンの出力側に備えた車両用動力伝達装置において、ロックアップクラッチの摩擦材の耐久性低下を抑制すると共に、スリップ制御領域を拡大して燃費を向上させることができる車両用ロックアップクラッチの制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するための、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)ロックアップクラッチを有する流体伝動装置をエンジンの出力側に備えた車両において、そのロックアップクラッチの作動状態を制御するロックアップ制御手段を備える車両用ロックアップクラッチの制御装置であって、(b)前記ロックアップクラッチの摩擦材の表面温度を、そのロックアップクラッチ解放時、スリップ制御時、および完全係合時の各々の状況下で常時推定する表面温度推定手段を備え、(c)前記ロックアップ制御手段は、その表面温度推定手段によって常時推定される前記摩擦材の表面温度に基づいて、前記ロックアップクラッチの作動状態を制御することを特徴とする。
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1の車両用ロックアップクラッチの制御装置において、前記ロックアップ制御手段は、前記表面温度推定手段によって推定された前記摩擦材の表面温度が予め設定されている第1所定推定温度以上となると、前記ロックアップクラッチのスリップ制御を禁止することを特徴とする。
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項1または2の車両用ロックアップクラッチの制御装置において、前記ロックアップ制御手段は、スリップ制御が禁止されている場合において、前記表面温度推定手段によって推定された前記摩擦材の表面温度が予め設定されている第2所定推定温度以下となると、スリップ制御の禁止を解除することを特徴とする。
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至3のいずれか1の車両用ロックアップクラッチの制御装置において、前記表面温度推定手段は、前記ロックアップクラッチの完全係合時および解放時において、予め求められたタービン回転速度および前記摩擦材の表面温度と作動油温との温度差から構成されるその摩擦材の表面温度変化量の関係マップから、現在のタービン回転速度およびその温度差に基づいて、現在の前記摩擦材の表面温度を推定することを特徴とする。
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、請求項4の車両用ロックアップクラッチの制御装置において、前記関係マップは、前記ロックアップクラッチの完全係合時および解放時毎に予め求められ、そのロックアップクラッチの係合状態に応じて使用されるその関係マップが切り換えられることを特徴とする。
また、請求項6にかかる発明の要旨とするところは、請求項4または5の車両用ロックアップクラッチの制御装置において、前記関係マップは、車両の駆動時および被駆動時毎に予め求められ、その車両の駆動状態に応じて使用されるその関係マップが切り換えられることを特徴とする。
請求項1にかかる発明の車両用ロックアップクラッチの制御装置によれば、表面温度推定手段は、ロックアップクラッチの摩擦材の表面温度を、ロックアップクラッチ解放時、スリップ制御時、および完全係合時の各々の状況下において常時推定し、ロックアップ制御手段は、上記各々の状況下において常時推定される摩擦材の表面温度に基づいてロックアップクラッチの作動状態を制御するため、スリップ制御時だけでなく、ロックアップクラッチの解放時および完全係合時においても常時摩擦材の表面温度が推定され、常時推定される上記摩擦材の表面温度に基づいて最適なロックアップ制御が可能となる。
例えば、スリップ制御時の摩擦材の表面温度の上昇に従って、摩擦材の表面温度がスリップ制御可能な温度を越えた場合、ロックアップ制御手段は、スリップ制御を禁止して摩擦材の表面温度を低下させるなどして、摩擦材の耐久性低下を抑制することができる。また、例えば、スリップ制御時において摩擦材の表面温度がスリップ制御可能な温度よりも高くなるに従い、ロックアップ制御手段によってスリップ制御が解除された後、摩擦材の表面温度が低下してスリップ制御が可能な温度まで到達した場合において、表面温度推定手段は、そのスリップ制御解除後も摩擦材の表面温度を常時推定してその温度低下を検出するため、ロックアップ制御手段は、その摩擦材の表面温度の低下に基づいて、スリップ制御を再開することで、燃費を向上させることができる。
また、請求項2にかかる発明の車両用ロックアップクラッチの制御装置によれば、表面温度推定手段によって推定された前記摩擦材の表面温度が第1所定推定温度以上となると、ロックアップクラッチのスリップ制御を禁止するため、ロックアップクラッチの摩擦材の耐久性低下が効果的に抑制される。
また、請求項3にかかる発明の車両用ロックアップクラッチの制御装置によれば、スリップ制御が禁止されている場合において、前記表面温度推定手段によって推定された前記摩擦材の表面温度が予め設定されている第2所定推定温度以下となると、スリップ制御の禁止が解除されるため、一端禁止されていたスリップ制御が再度実施されるに従い、燃費性が向上する。
また、請求項4にかかる発明の車両用ロックアップクラッチの制御装置によれば、タービン回転速度および前回推定された摩擦材の表面温度と作動油温との温度差が検出されると、関係マップに基づいて、現在の摩擦材の表面温度を精度良く推定することができる。
また、請求項5にかかる発明の車両用ロックアップクラッチの制御装置によれば、前記関係マップは、前記ロックアップクラッチの完全係合時および解放時毎に予め求められ、そのロックアップクラッチの係合状態に応じて使用される関係マップが切り換えられるため、推定される摩擦材の表面温度の精度がさらに高くなる。具体的には、ロックアップクラッチの完全係合時と解放時とでは、ロックアップクラッチの摩擦材と流体伝動装置内の作動油との接触状態が異なるに従い、摩擦材の表面温度の変化特性が完全係合時と解放時とで異なるものとなることが確認されている。したがって、完全係合時および解放時毎に関係マップを予め求めておき、ロックアップクラッチの係合状態に応じた関係マップに切り換えることで、推定される摩擦材の表面温度の精度がさらに高くなる。
また、請求項6にかかる発明の車両用ロックアップクラッチの制御装置によれば、前記関係マップは、車両の駆動時および被駆動時毎に予め求められ、その車両の駆動状態に応じて使用される関係マップが切り換えられるため、推定される摩擦材の表面温度の精度がさらに高くなる。具体的には、車両の駆動時と被駆動時とで、流体伝動装置内の作動油の流れが異なるに従い、摩擦材の表面温度の変化特性が駆動時と被駆動時とで異なるものとなることが確認されている。したがって、車両の駆動時および被駆動時毎に関係マップを予め求めておき、車両の駆動状態に応じた関係マップに切り換えることで、推定される摩擦材の表面温度の精度がさらに高くなる。
ここで、好適には、前記摩擦材の前記第1所定推定温度は、予め実験または計算によって求められ、摩擦材の耐久性が低下する閾値に設定される。このようにすれば、摩擦材の表面温度が第1所定推定温度以上となると、スリップ制御が禁止されるので、摩擦材の耐久性低下が抑制される。
また、好適には、前記第2所定推定温度は、予め実験または計算によって求められ、スリップ制御が再開されてもすぐには第1所定推定温度に到達せず、スリップ制御が好適に実施される値に設定される。このようにすれば、スリップ制御が再開されてもすぐにスリップ制御が禁止されることが抑制される。
また、好適には、摩擦材の表面温度を推定する際に必要となる作動油温は、油圧制御回路の制御性を確認するために設けられている油温センサによって検出される。このようにすれば、共通の油温センサによって摩擦材の表面温度および油圧制御回路の制御性を確認することができ、摩擦材の表面温度を推定するための専用の油温センサを設けることによる部品点数の増加が防止される。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明が好適に適用される車両用動力伝達装置8の骨子図であり、図2は、その車両用動力伝達装置8に備えられた有段式の自動変速機10において複数の変速段を成立させる際の係合要素の作動状態を説明する作動表である。この自動変速機10は、車両の左右方向(横置き)に搭載するFF車両等に好適に用いられるものであって、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置12を主体として構成されている第1変速部14と、ダブルピニオン型の第2遊星歯車装置16及びシングルピニオン型の第3遊星歯車装置18を主体としてラビニヨ型に構成されている第2変速部20とを同軸線上に有し、入力軸22の回転を変速して出力回転部材24から出力する。上記入力軸22は入力部材に相当するものであり、車両の動力を発生させるための駆動力源であるエンジン28によって回転駆動されるトルクコンバータ30のタービン軸である。また、上記出力回転部材24は自動変速機10の出力部材に相当するものであり、図示しない差動歯車装置に動力を伝達するためにそのデフドリブンギヤ(大径歯車)と噛み合う出力歯車すなわちデフドライブギヤとして機能している。上記エンジン28の出力は、上記トルクコンバータ30、自動変速機10、差動歯車装置、及び駆動軸としての1対の車軸を介して1対の駆動輪(前輪)へ伝達されるようになっている。なお、この自動変速機10は中心線に対して略対称的に構成されており、図1ではその中心線の下半分が省略されている。
上記エンジン28は、本実施例の車両用動力伝達装置8の駆動力源であり、例えば燃料の燃焼によって車両の駆動力を発生させるガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関である。また、上記トルクコンバータ30は、エンジン28の出力側に備えられ、例えば上記エンジン28のクランク軸に連結されたポンプ翼車30aと、上記自動変速機10の入力軸22に連結されたタービン翼車30bと、一方向クラッチを介して上記自動変速機10のハウジング(変速機ケース)26に連結されたステータ翼車30cとを備えており、上記エンジン28により発生させられた動力を上記自動変速機10へ流体を介して伝達する流体伝動装置である。また、上記ポンプ翼車30a及びタービン翼車30bの間には、直結クラッチであるロックアップクラッチ32(車両用ロックアップクラッチ)が設けられており、後述する油圧制御等により完全係合状態、スリップ係合状態(半係合状態)、或いは解放状態とされるようになっている。なお、このロックアップクラッチ32が完全係合状態とされることにより、上記ポンプ翼車30a及びタービン翼車30bが一体回転させられる。
図2の作動表は、前記自動変速機10により成立させられる各変速段とクラッチ及びブレーキの作動状態との関係をまとめたものであり、「○」は係合、「◎」はエンジンブレーキ時のみ係合、空欄は解放をそれぞれ表している。前記自動変速機10は、複数の係合要素すなわち第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、及び第3ブレーキB3(以下、特に区別しない場合は単にクラッチC、ブレーキBという)を有し、それら複数の係合要素の選択的な係合及び一方向クラッチF1の係合乃至空転により予め定められた複数の変速段の何れかを成立させる。すなわち、前記自動変速機10に備えられたクラッチC及びブレーキBは、好適には、多板式のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合装置であり、前記車両用動力伝達装置8に備えられた油圧制御回路40のリニアソレノイド弁の励磁、非励磁や電流制御により、係合、解放状態が切り換えられると共に係合、解放時の過渡油圧などが制御されるようになっている。
また、前記自動変速機10には、前記第2遊星歯車装置16のリングギヤR2(第3遊星歯車装置18のリングギヤR3)と非回転部材であるハウジング26との間に、一方向の回転に関して係合状態とされるが逆方向の回転に関して空転状態とされる一方向クラッチF1が設けられている。斯かる構成により、この一方向クラッチF1は、図2に示すように前記車両用動力伝達装置8の駆動時にのみ作動すなわち係合状態とされる一方、非駆動時には空転状態とされる。特に、車両発進時やキックダウン時等において、前記自動変速機10における第1変速段「1st」を成立させるために係合状態となるように作動させられる。
前記自動変速機10では、前記第1変速部14及び第2変速部20の各回転要素(サンギヤS1〜S3、キャリアCA1〜CA3、リングギヤR1〜R3)の連結状態の組み合わせに応じて第1変速段「1st」〜第6変速段「6th」の6つの前進変速段が選択的に成立させられると共に、後進変速段「R」の後進変速段が成立させられる。図2に示すように、例えば前進ギヤ段では、前記第1クラッチC1及び第2ブレーキB2の係合により第1速ギヤ段「1st」が成立させられる。また、前記第1クラッチC1及び第1ブレーキB1の係合により第2速ギヤ段「2nd」が成立させられる。また、前記第1クラッチC1及び第3ブレーキB3の係合により第3速ギヤ段「3rd」が成立させられる。また、前記第1クラッチC1及び第2クラッチC2の係合により第4速ギヤ段「4th」が成立させられる。また、前記第2クラッチC2及び第3ブレーキB3の係合により第5速ギヤ段「5th」が成立させられる。また、前記第2クラッチC2及び第1ブレーキB1の係合により第6速ギヤ段「6th」が成立させられる。また、前記第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3の係合により後進ギヤ段「R」が成立させられ、クラッチC及びブレーキBの何れもが解放されることによりニュートラル状態となるように構成されている。なお、上述のように、本実施例の自動変速機10では、第1変速段「1st」を成立させる前記第2ブレーキB2には並列に一方向クラッチF1が設けられているため、発進時(加速時)には必ずしもその第2ブレーキB2を係合させる必要は無いのである。また、各変速段の変速比は、前記第1遊星歯車装置12、第2遊星歯車装置16、及び第3遊星歯車装置18の各ギヤ比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。
図3は、前記車両用動力伝達装置8を制御するためにその車両用動力伝達装置8に備えられた電子制御装置34(制御装置)に入力される信号及びその電子制御装置34から出力される信号を例示している。この電子制御装置34は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェース等から成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより前記エンジン28の駆動制御、前記自動変速機10における有段変速制御、及び後述するトルクコンバータ30のロックアップクラッチ圧制御等の各種制御を実行するものである。なお、前記エンジン28の駆動を制御するための制御装置と、前記自動変速機10の作動等を制御するための制御装置とが個別に設けられたものであってもよい。
図3に示すように、上記電子制御装置34には、各センサやスイッチ等から前記車両用動力伝達装置8に関する各種信号が供給されるようになっている。例えば、エンジン水温を表す信号、シフトレバーのシフトポジションや「M」ポジションにおける操作回数等を表す信号、エンジン回転速度センサ36により検出される前記エンジン28の回転速度であるエンジン回転速度Ne(=ポンプ翼車30aの回転速度Np)表す信号、タービン回転速度センサ38により検出される前記タービン翼車30bの回転速度Ntを表す信号、車速Vに対応する駆動輪の速度を表す信号、Mモード(手動変速走行モード)スイッチのオン・オフを表す信号、エアコンの作動を表す信号、ATF油温センサ39により検出される前記自動変速機10の制御作動に用いられるATF油温Toil(作動油温)を表す信号、ECTスイッチのオン・オフを表す信号、サイドブレーキ操作を表す信号、フットブレーキ操作を表す信号、そのフットブレーキに対応するブレーキマスタシリンダ圧を表す信号、触媒温度を表す信号、アクセル開度センサにより検出される図示しないアクセルペダルの操作量に対応するアクセル開度Accを表す信号、カム角を表す信号、スノーモード設定を表す信号、車両の前後加速度Gを表す信号、オートクルーズ走行を表す信号、車両の重量(車重)を表す信号等がそれぞれ供給される。
また、前記車両用動力伝達装置8の駆動を制御するために、前記電子制御装置34から各種制御信号が出力されるようになっている。例えば、前記エンジン28の吸気管に備えられた電子スロットル弁のスロットル弁開度θthを操作するスロットルアクチュエータへの駆動信号、過給圧を調整するための過給圧調整信号等、前記エンジン28への燃料噴射を制御するための燃料噴射装置によるエンジンの筒内への燃料供給量の制御信号、点火装置による前記エンジン28の点火時期を指令する点火信号、電動エアコンを作動させるための電動エアコン駆動信号、シフトインジケータを作動させるためのシフトポジション(操作位置)表示信号、ギヤ比を表示させるためのギヤ比表示信号、スノーモードであることを表示させるためのスノーモード表示信号、前記油圧制御回路40に備えられたレギュレータバルブ(調圧弁)によりライン油圧PLを調圧するための信号、前記自動変速機10等に備えられた油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを制御するために前記油圧制御回路40に含まれる電磁制御弁(リニアソレノイドバルブ)を作動させるバルブ指令信号、図4等を用いて後述する切換用電磁ソレノイド弁66を作動させるロックアップ切換指令信号、同じく図4等を用いて後述するスリップ制御用ソレノイド弁70を作動させるスリップ制御指令信号、制動時の車輪のスリップを防止するABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号、Mモードが選択されていることを表示させるMモード表示信号、前記油圧制御回路40に設けられた元圧の出力源である電動オイルポンプ44を作動させるための駆動指令信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号等がそれぞれ出力される。
図4は、前記車両用動力伝達装置8に備えられた油圧制御回路40の一部を示す図であり、特に、前記トルクコンバータ30に備えられたロックアップクラッチ32の係合圧を制御する回路を例示する図である。なお、図4の油圧制御回路40において、前記自動変速機10の変速を行うための油圧式摩擦係合装置の作動を制御するための回路等、他の制御に用いられる回路は省略して示している。
図4に示すように、上記油圧制御回路40には、オイルパン42に環流した作動油を吸引して圧送するために、例えば図示しない電動機よって駆動される電動オイルポンプ44が設けられており、その電動オイルポンプ44から圧送された作動油は、リリーフ式の第1調圧弁46により第1ライン圧PL1に調圧されるようになっている。この第1調圧弁46は、図示しないスロットル弁開度検知弁から出力されたスロットル圧に対応して大きくなる第1ライン圧PL1を発生させて第1ライン油路48へ出力する。また、第2調圧弁50も同様にリリーフ形式の調圧弁であって、上記第1調圧弁46から調圧のために排出(リリーフ)させられた作動油を上記スロットル圧に基づいて調圧することにより、前記エンジン28の出力トルクに応じた第2ライン圧PL2を発生させる。また、第3調圧弁52は、上記第1ライン圧PL1を元圧とする減圧弁であって、予め設定された大きさの一定のモジュレータ圧Pmを発生させる。なお、上記第1ライン圧PL1は、自動変速機のギヤ段を制御するための図示しない変速制御用油圧回路の元圧等として供給される。また、本実施例においては、上記電動オイルポンプ44により元圧を発生させる形式の油圧制御回路について説明するが、エンジン28によって駆動されて元圧を発生させる機械式のオイルポンプを備えたものであってもよい。
また、図4に示すように、前記ロックアップクラッチ32は、係合側油路54を介して作動油が供給される係合側油室56内の油圧Ponと解放側油路58を介して作動油が供給される解放側油室60内の油圧Poffとの差圧ΔP(Pon−Poff)により摩擦材33がフロントカバー62に摩擦係合させられる油圧式摩擦係合クラッチである。そして、前記トルクコンバータ30の運転条件としては、例えば、(a)差圧ΔPが負とされて前記ロックアップクラッチ32が解放状態とされる所謂ロックアップオフ、(b)差圧ΔPが零以上とされて前記ロックアップクラッチ32が半係合状態とされる所謂スリップ状態、及び(c)差圧ΔPが最大値とされて前記ロックアップクラッチ32が完全係合された状態とされる所謂ロックアップオンの3条件に大別される。
また、前記油圧制御回路40は、切換用電磁ソレノイド64によりオン・オフ作動させられて切換用信号圧PSWを供給する切換用電磁ソレノイド弁66と、その切換用信号圧PSWに従って、前記ロックアップクラッチ32を解放状態とするオフ側位置(OFF)及び係合状態とするオン側位置(ON)の何れか一方に切換作動させるためのクラッチ切換弁68と、前記電子制御装置34から供給される駆動電流に応じて圧力を制御するための信号圧PSLUを出力するスリップ制御用ソレノイド弁70と、上記クラッチ切換弁68により前記ロックアップクラッチ32が係合状態(オン側位置に対応する状態)とされているときにそのロックアップクラッチ32の作動状態をスリップ状態乃至ロックアップオンの範囲で切り換えるロックアップコントロール弁72とを、備えている。
上記クラッチ切換弁68は、前記ロックアップクラッチ32を係合状態及び解放状態の一方に切り換えるためのものであり、前記解放側油室60と連通する解放側ポート74と、前記係合側油室56と連通する係合側ポート76と、第2ライン圧PL2が供給される入力ポート78と、前記ロックアップクラッチ32の解放時に係合側油室56内の作動油が排出されると共に、そのロックアップクラッチ32の係合時に前記第2調圧弁50から排出させられた作動油が供給される排出ポート80と、前記ロックアップクラッチ32の係合時に前記解放側油室60と連通する迂回ポート82と、前記第2調圧弁50から調圧のために排出させられた作動油が供給されるリリーフポート84と、それら複数のポートの状態を切り換えるためのスプール弁子86と、そのスプール弁子86をオフ側位置に向かって付勢するスプリング88と、上記スプール弁子86の端部に前記切換用電磁ソレノイド弁66からの切換用信号圧PSWを作用させてオン側位置へ向かう推力を発生させるためにその切換用信号圧PSWを受け入れる油室90とを、備えている。なお、図4において、中心線より左側が前記ロックアップクラッチ32の解放状態であるオフ側位置(OFF)にスプール弁子86が位置された状態を示しており、中心線より右側が係合状態であるオン側位置(ON)にスプール弁子86が位置された状態を示している。
前記ロックアップコントロール弁72は、その弁の状態を切り換えるスプール弁子92と、そのスプール弁子92をスリップ側位置(SLIP)へ向かう推力を付与するスプリング94と、上記スプール弁子92をスリップ側位置へ向かって付勢するために前記トルクコンバータ30の係合側油室56内の油圧Ponを受け入れる油室96と、上記スプール弁子92を完全係合側位置(ON)へ付勢するために前記トルクコンバータ30の解放側油室60内の油圧Poffを受け入れる油室98と、上記スプール弁子92をオン側位置に向かって付勢するために前記スリップ制御用ソレノイド弁70から出力される信号圧PSLUを受け入れる油室100と、前記第2調圧弁50によって調圧された第2ライン圧PL2が供給される入力ポート102と、上記スプール弁子92がスリップ側位置に位置された際に上記入力ポート102と連通する制御ポート104と、ドレンポート106とを、備えている。なお、図4において、中心線より左側がスリップ側位置(SLIP)にスプール弁子92が位置された状態を示しており、中心線より右側が完全係合側位置(ON)にスプール弁子92が位置された状態を示している。
前記スリップ制御用ソレノイド弁70は、前記電子制御装置34からの指令に基づいて、前記ロックアップクラッチ32の係合時にそのロックアップクラッチ32の係合圧を制御するための信号圧PSLUを出力する。換言すれば、前記第3調圧弁52により発生させられる一定のモジュレータ圧Pmを元圧とし、そのモジュレータ圧Pmを減圧して信号圧PSLUを発生させる。また、前記切換用電磁ソレノイド弁66は、非励磁状態(オフ状態)では切換用信号圧PSWをドレン圧とするが、励磁状態(オン状態)では切換用信号圧PSWをモジュレータ圧Pmとし、前記クラッチ切換弁68の油室90に作用させる。この油室90にモジュレータ圧Pmが供給されると前記クラッチ切換弁68のスプール弁子86は、前記スプリング88の付勢力に抗ってオン側位置(ON)に移動させられる。一方、前記油室90にドレン圧が供給されると前記クラッチ切換弁68のスプール弁子86は、前記スプリング88の付勢力に従ってオフ側位置(OFF)に移動させられる。なお、以下の説明では、切換用信号圧PSWとしてモジュレータ圧Pmが供給された場合に切換用信号圧PSWが供給されると記載し、切換用信号圧PSWとしてドレン圧が供給された場合は実質的には前記スリップ制御用ソレノイド弁70には影響を及ぼさないため、切換用信号圧PSWが供給されないと記載する。
前記クラッチ切換弁68において、前記切換用電磁ソレノイド弁66が励磁され、切換用信号圧PSWが油室90に供給されて前記スプール弁子86がオン側位置に位置させられると、前記入力ポート78に供給された第2ライン圧PL2が係合側ポート76から係合側油路54を通って係合側油室56に供給される。この係合側油室56に供給される第2ライン圧PL2が油圧Ponとなる。同時に、前記解放側油室60は、前記解放側油路58を通って解放側ポート74から迂回ポート82を経て前記ロックアップコントロール弁72の制御ポート104に連通させられる。そして、前記解放側油室60内の油圧Poffが前記ロックアップコントロール弁72によって調整されて前記ロックアップクラッチ32の作動状態がスリップ状態乃至ロックアップオンの範囲で切り換えられる。
具体的には、前記クラッチ切換弁68のスプール弁子76がオン側位置へ付勢されているとき、すなわち前記ロックアップクラッチ32が係合状態に切り換えられているときに、前記ロックアップコントロール弁72において、前記スプール弁子92を完全係合側位置(ON)へ移動させるための信号圧PSLUが前記油室100に供給されず前記スプリング94の推力によって前記スプール弁子92がスリップ側位置(SLIP)とされると、前記入力ポート102に供給された第2ライン圧PL2が制御ポート104から迂回ポート82を経て、解放側ポート74から解放側油路58を通り解放側油室60に供給される。この状態において、差圧ΔPが前記スリップ制御用ソレノイド弁70の信号圧PSLUによって制御されて前記ロックアップクラッチ32のスリップ状態が制御される。
また、前記クラッチ切換弁68のスプール弁子76がオン側位置(ON)へ付勢されているとき、前記ロックアップコントロール弁72において、前記スプール弁子92を完全係合側位置(ON)へ移動させるための信号圧PSLUが前記油室100へ供給されると、前記入力ポート102から解放側油室60へは第2ライン圧PL2が供給されず、その解放側油室60の作動油は前記ドレンポート106から排出される。これにより、差圧ΔPが最大とされて前記ロックアップクラッチ32が完全係合状態となる。また、前記ロックアップクラッチ32がスリップ状態もしくは完全係合状態において、前記クラッチ切換弁68のスプール弁子86はオン側位置に位置させられるため、前記リリーフポート84と排出ポート80とが連通される。これにより、前記第2調圧弁50から排出させられた作動油は、前記クラッチ切換弁68を介して図示しない潤滑油供給油路へ供給される。
一方、前記クラッチ切換弁68において、切換用信号圧PSWが油室90に供給されず前記スプリング88の付勢力によって前記スプール弁子86がオフ側位置(OFF)に位置されると、前記入力ポート78に供給された第2ライン圧PL2が解放側ポート74から解放側油路58を通って解放側油室60へ供給される。そして、前記係合側油室56の作動油は、前記係合側油路54を通り係合側ポート76へ供給されて排出ポート80から図示しない潤滑油供給油路へと供給される。これにより、前記ロックアップクラッチ32がロックアップオフとされる。
図5は、前記電子制御装置34に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。この図5に示す車両状態検出手段107は、車両の走行状態に関連する関連値、例えば図示しないシフトレバーのシフトポジション、アクセルペダルのアクセル開度Acc、エンジン回転速度Ne、車速Vに対応する自動変速機10の出力軸の回転速度Nout、タービン回転速度Nt、ATF油温Toil、エンジントルクTe等を検出する。また、車両状態検出手段107は、車両(車両用動力伝達装置8)が駆動状態および被駆動状態のいずれであるかを、例えばアクセル開度Accが零であるか否か、或いは、フットブレーキ操作を表す信号等に基づいて判定する。
変速制御手段108は、前記自動変速機10の変速動作を制御する。すなわち、予め定められた関係(変速マップ等)から、図示しないシフトレバーのレバーポジション、アクセルペダルの操作量(アクセル開度Acc)、及び車速V等に基づいて、前記自動変速機10において前述した第1変速段「1st」〜第6変速段「6th」或いは後進変速段「R」のうち何れの変速段が成立させられるべきかを判断し、その判断された変速段が成立させられるように前記油圧制御回路40を介して前記クラッチC及びブレーキBの係合乃至解放を制御する。
ロックアップ制御手段109は、図6に示す予め定められたロックアップクラッチ32の作動状態を決定する車速Vおよびアクセル開度Accからなる関係マップ(作動領域マップ)から、実際の車速Vおよびアクセル開度Accに基づいてロックアップクラッチ32の作動状態を決定し、ロックアップクラッチ32をその作動状態に制御する。図6は、横軸が車速V、縦軸がアクセル開度Accで構成される、ロックアップクラッチ32の作動状態(作動領域)を決定する2次元マップ(作動領域マップ)である。ロックアップクラッチ32は、上記作動領域マップより、実際の車速Vおよびアクセル開度Accに基づいて、ロックアップオン(完全係合)、スリップ制御(フレックスロックアップ制御)、およびロックアップオフ(解放)のいずれかに決定される。
例えば、ロックアップ制御手段109は、車両の走行状態が図6に示すロックアップオン領域に入ると、ロックアップクラッチ32の差圧ΔP(Pon−Poff)が最大値とされてロックアップクラッチ32が完全に係合された状態となるように、油圧制御回路40の作動状態を制御する。また、ロックアップ制御手段109は、車両の走行状態が図6に示すロックアップオフ領域に入ると、ロックアップクラッチ32の差圧ΔP(Pon−Poff)が零となるように油圧制御回路40を制御する。また、ロックアップ制御手段109は、車両の走行状態が図6に示すスリップ制御領域に入ると、ロックアップクラッチ32の滑り量ΔN(=Ne−Nt)が予め設定された所定の滑り量ΔNとなるように、差圧ΔPをフィードバック制御する。
ロックアップ状態判定手段110は、ロックアップクラッチ32の現在の作動状態が、ロックアップクラッチ32が完全に係合されるロックアップオン状態(完全係合状態)、ロックアップクラッチ32が半係合状態とされるスリップ制御状態、およびロックアップクラッチ32が解放状態とされるロックアップオフ状態(解放状態)のいずれであるかを判定する。ロックアップ状態判定手段110は、上記判定を、例えばロックアップクラッチ32の作動状態を切換える切換用電磁ソレノイド弁66へ出力されるロックアップ切換指令信号、およびスリップ制御時の係合側油室56の油圧Ponと解放側油室58の油圧Poffとの差圧ΔP(Pon−Poff)を制御するスリップ制御用ソレノイド弁70へ出力されるスリップ制御指令信号に基づいて判断する。
例えば、切換用電磁ソレノイド弁66より出力される切換用信号圧PSWをドレン圧とするロックアップ切換指令信号が出力されている場合、ロックアップクラッチ32がロックアップオフ状態と判定され、また、切換用信号圧PSWをモジュレータ圧Pmとするロックアップ切換指令信号が出力されている場合、ロックアップクラッチ32がロックアップオン状態またはスリップ制御状態と判断される。さらに、切換用信号圧PSWをモジュレータ圧Pmとするロックアップ切換指令信号が出力されている場合であって、スリップ制御用ソレノイド弁70より信号圧PSLUをロックアップコントロール弁72を完全係合側位置(オン)へ切り換える予め設定されている完全係合油圧を出力するスリップ制御指令信号が出力されている場合、ロックアップクラッチ32がロックアップオン状態と判断される。一方、切換用信号圧PSWをモジュレータ圧Pmとするロックアップ切換指令信号が出力されている場合であって、スリップ制御用ソレノイド弁70からの信号圧PSLUを上記完全係合油圧未満の油圧とするスリップ制御指令信号が出力されている場合、ロックアップクラッチ32がスリップ制御状態と判断される。
表面温度推定手段112は、ロックアップ状態判定手段110によって判定されたロックアップクラッチ32の作動状態に応じてロックアップクラッチ32の摩擦材33の表面温度Tsfを推定する。表面温度推定手段112は、ロックアップクラッチ32が解放されている場合の摩擦材33の表面温度Tsfを推定する解放時温度推定手段114、ロックアップクラッチ32が完全係合されている場合の摩擦材33の表面温度Tsfを推定する係合時温度推定手段116、およびロックアップクラッチ32がスリップ制御されている場合の摩擦材33の表面温度Tsfを推定するスリップ時温度推定手段118を備えている。そして、表面温度推定手段112は、ロックアップクラッチ32の作動状態をロックアップ状態判定手段110によって判断し、そのときの各々の状況下に応じて解放時温度推定手段114、係合時温度推定手段116、およびスリップ時温度推定手段118を切り換えて実行することで、摩擦材33の表面温度Tsfを常時推定する。
解放時温度推定手段114は、ロックアップクラッチ32解放時の摩擦材33の表面温度Tsfを推定する。解放時温度推定手段114は、下式(1)に基づいて、所定のタイムステップ毎(例えば16ms程度)に摩擦材33の表面温度Tsfを逐次推定(計算)する。下式(1)において、Tsfiが今回推定される摩擦材33の表面温度Tsfであり、Tsfi-1が前回のタイムステップにおいて推定された摩擦材33の表面温度である。また、αは、ロックアップクラッチ32の解放時におけるタイムステップ毎に設定される温度変化量(表面温度変化量)であり、予め求められて記憶手段120に記憶されている温度変化量(表面温度変化量)の関係マップに基づいて決定される。なお、算出された表面温度Tsfiは、次のタイムステップの表面温度Tsfiを算出する際の前回の表面温度Tsfi-1に設定される。
Tsfi=Tsfi-1−α ・・・・(1)
Tsfi=Tsfi-1−α ・・・・(1)
図7に、上記温度変化量αを決定する際に使用される関係マップ(2次元マップ)を示す。上記関係マップは、ロックアップクラッチ32を解放させた状態において、予め実験または計算によって求められるものであり、タービン回転速度Ntと、摩擦材33の表面温度TsfとATF油温Toilとの温度差ΔT(Tsf−Toil)とで構成される摩擦材33の表面温度変化量αを示す2次元マップで表される。
解放時温度推定手段114は、前回推定された表面温度Tsfi-1と現在のATF油温Toilとの温度差ΔT(Tsfi-1−Toil)を算出し、関係マップから、算出された温度差ΔTおよび現在のタービン回転速度Ntに基づいて線形補間をすることで、温度変化量αを決定する。そして、解放時温度推定手段114は、式(1)から、決定された温度変化量αと前回推定された表面温度Tsfi-1に基づいて今回の表面温度Tsfiを推定する。なお、タービン回転速度NtおよびATF油温Toilは、車両状態検出手段107によって検出される。
ここで、ATF油温Toilは、具体的にはATF油温センサ39によって検出されるが、ATF油温センサ39は、例えば図4に示すように、油圧制御回路40において電動オイルポンプ44の吐出部である第1ライン油路48に配置される。第1ライン油路48内のATF油温Toilとトルクコンバータ30内のATF油温Toil(以下、区別のためTtcと記載する)とを比較すると、第1ライン油路48の作動油がトルクコンバータ30内に到達するまでに熱交換が為されるため、ATF油温Toilとトルクコンバータ内のATF油温Ttcとは一致しないが、上述した温度差ΔT(Tsf−Toil)とタービン回転速度Ntとから構成される関係マップに基づいて推定される摩擦材33の表面温度Tsfは、実際にセンサ等によって検出される表面温度Tsfと略一致することが実験的に確認された。すなわち、摩擦材33に最も近いトルクコンバータ内のATF油温Ttcを直接検出しなくとも、第1ライン油路48のATF油温Toilを検出することで、摩擦材33の表面温度Tsfが精度良く推定されることが確認された。なお、検出されるATF油温Toilは、自動変速機10を含む油圧制御回路40の制御性を確認するために用いられるものであり、ATF油温センサ39は、従来より設けられているものである。これより、摩擦材33の表面温度Tsfを推定するに際して、トルクコンバータ30内の油温検出用の専用の油温センサを設ける必要がなく、油圧制御回路40の制御性を確認する共通のATF油温センサ39を利用して表面温度Tsfを推定することができる。
また、上記関係マップは、車両の駆動時および被駆動時毎に予め実験的に求められて記憶手段120に記憶されており、車両状態検出手段107によって検出される車両の駆動状態に応じて関係マップが切り換えられ、切り換えられた関係マップに基づいて表面温度Tsfiが推定される。車両が駆動状態にある場合、トルクコンバータ30では、ポンプ翼車30a側から動力が伝達される一方、車両が被駆動状態にある場合、タービン翼車30b側から動力が伝達されるため、トルクコンバータ30内の作動油の流れの違い等に基づいて温度変化量αの特性が異なるためである。
また、解放時温度推定手段114は、ロックアップクラッチ32が解放されてからの経過時間taを測定し、その経過時間taが予め設定されている所定経過時間ta1を超えると、下式(1’)に基づいて摩擦材33の表面温度Tsfを推定する。ここで、Aは補正値であり、予め実験的に求められて記憶手段120に記憶されている。
Tsf=Toil+A・・・・(1’)
Tsf=Toil+A・・・・(1’)
係合時温度推定手段116は、ロックアップクラッチ完全係合時の摩擦材33の表面温度Tsfを推定する。係合時温度推定手段116は、下式(2)に基づいて、所定のタイムステップ毎(例えば16ms程度)に摩擦材33の表面温度Tsfを逐次推定(計算)する。下式(2)において、Tsfiが今回推定される摩擦材33の表面温度Tsfであり、Tsfi-1が前回のタイムステップにおいて推定された摩擦材33の表面温度Tsfである。また、βは、ロックアップクラッチ32の係合時におけるタイムステップ毎に設定される温度変化量(表面温度変化量)であり、予め求められて記憶手段120に記憶されている温度変化量(表面温度変化量)の関係マップに基づいて決定される。なお、算出された表面温度Tsfiは、次のタイムステップの表面温度Tsfiを算出する際の前回の表面温度Tsfi-1に設定される。
Tsfi=Tsfi-1−β ・・・・(2)
Tsfi=Tsfi-1−β ・・・・(2)
図8に、上記温度変化量βを決定する際に使用される関係マップ(2次元マップ)を示す。上記関係マップは、ロックアップクラッチ32を完全係合させた状態において、予め実験または計算によって求められるものであり、タービン回転速度Ntと、摩擦材33の表面温度TsfとATF油温Toilとの温度差ΔT(Tsf−Toil)とで構成される摩擦材33の表面温度変化量βを示す2次元マップで表される。
係合時温度推定手段116は、前回推定された表面温度Tsfi-1と現在のATF油温Toilとの温度差ΔT(=Tsfi-1−Toil)を算出し、上記関係マップから算出された温度差ΔTおよび現在のタービン回転速度Ntに基づいて線形補間をすることで、温度変化量βを決定する。そして、係合時温度推定手段116は、式(2)から、決定された温度変化量βと前回推定された表面温度Tsfi-1に基づいて今回の表面温度Tsfiを推定する。なお、タービン回転速度NtおよびATF油温Toilは、車両状態検出手段107によって検出される。
また、上記関係マップは、ロックアップクラッチ解放時と同様に、車両の駆動時および被駆動時毎に予め実験的に求められて記憶手段120に記憶されており、車両状態検出手段107によって検出される車両の駆動状態に応じて関係マップが切り換えられ、切り換えられた関係マップに基づいて表面温度Tsfiが推定される。車両が駆動状態にある場合、トルクコンバータ30では、ポンプ翼車30a側から動力が伝達される一方、車両が被駆動状態にある場合、タービン翼車30b側から動力が伝達されるため、トルクコンバータ内の作動油の流れの違い等に基づいて温度変化量βの特性が異なるためである。
また、係合時温度推定手段116は、ロックアップクラッチ32が完全係合されてからの経過時間tbを測定し、その経過時間tbが予め設定されている経過時間tb1を超えると、下式(2’)に基づいて摩擦材33の表面温度Tsfを推定する。ここで、Bは補正値であり、予め実験的に求められて記憶手段120に記憶されている。
Tsf=Toil+B・・・・(2’)
Tsf=Toil+B・・・・(2’)
ここで、図8のロックアップクラッチ係合時の関係マップを、図7のロックアップクラッチ解放時の関係マップと比べると、ロックアップクラッチ係合時の温度変化量βは、ロックアップクラッチ解放時の温度変化量αよりも小さくなっている。上記より、ロックアップクラッチ32の解放時と完全係合時とで異なる関係マップ(図7、図8)を予め求め、ロックアップクラッチ32が解放状態および完全係合状態のいずれであるかに応じて切り換えて使用することで、摩擦材33の表面温度Tsfの精度が高くなる。
なお、図7の関係マップはロックアップクラッチ32を解放させた状況下、図8の関係マップはロックアップクラッチ32を完全係合させた状況下で、予め実験や計算によってオフラインで求められるが、上述したように、互いの温度変化量(α、β)は異なる値となる。上記は、例えばロックアップクラッチ解放時では、摩擦材33とトルクコンバータ30内の作動油との接触面積が大きいために両者の熱交換量が大きくなる一方、ロックアップクラッチ完全係合時では、摩擦材33とトルクコンバータ30のフロントカバー62とが密着するため、摩擦材33と作動油との接触面積が相対的に小さくなるため、熱交換量がロックアップクラッチ解放時よりも小さくなるためである。
スリップ時温度推定手段118は、ロックアップクラッチ32のスリップ制御時の摩擦材33の表面温度Tsfをタイムステップ毎に逐次推定する。以下、スリップ制御時の摩擦材33の表面温度Tsfの公知である推定方法を一例として説明する。スリップ時温度推定手段は118は、先ず、スリップ制御時において、摩擦材33にかかるロックアップクラッチ伝達トルクTLCを算出する。ロックアップクラッチ伝達トルクTLCは、下式(3)に基づいて算出される。ここで、Teはエンジン28の出力トルクに対応しており、予め求められているアクセル開度Accおよびエンジン回転速度Neから成るエンジントルクTeの関係マップから、実際のアクセル開度Accおよびエンジン回転速度Neに基づいて求められる。或いは、例えばエンジン12のクランク軸にトルクセンサを設けることによって、直接的に検出しても構わない。また、cは、トルクコンバータ30の容量係数に対応しており、予め記憶手段120に記憶されているトルクコンバータ30の性能曲線より求められる。なお、下式(3)の右項第2項(=c×Ne2)は、トルクコンバータ30によって動力伝達されるトルクに対応している。すなわち、ロックアップクラッチ伝達トルクTLCは、エンジントルクTeとトルクコンバータ30によって動力伝達されるトルクとの差に対応する。
TLC=Te−c×Ne2・・・・(3)
TLC=Te−c×Ne2・・・・(3)
スリップ時温度推定手段118は、ロックアップクラッチ伝達トルクTLCを算出すると、下式(4)に基づいて、ロックアップクラッチ32の発熱量QLCを算出する。ここで、ΔNは、エンジン回転速度Neとタービン回転速度Ntとの差回転(=Ne−Nt)、言い換えれば、ロックアップクラッチ32の滑り量ΔNに対応している。また、dtは計算のタイムステップ(例えば16ms)に対応している。
QLC=TLC×(π/30)×ΔN×dt・・・・(4)
QLC=TLC×(π/30)×ΔN×dt・・・・(4)
さらに、スリップ時温度推定手段118は、発熱量QLCを算出すると、下式(5)に基づいて、摩擦材33の表面温度Tsfを推定する。ここで、MLCは摩擦材33と摺動する部位の熱容量であり、予め実験または計算によって求められて定数として記憶手段120に記憶されている。また、ΔTは、前回のタイムステップにおいて推定された表面温度Tsfi-1とATF油温Toilとの温度差に対応している。また、kは表面温度Tsfi-1とATF油温Toilとの温度差ΔTに基づく冷却補正係数に対応しており、予め実験または計算によって予め求められ、例えばタービン回転速度Ntに基づく一元マップとして、記憶手段120に記憶されている。
Tsfi=Tsfi-1+(QLC−k×ΔT)/MLC・・・・(5)
Tsfi=Tsfi-1+(QLC−k×ΔT)/MLC・・・・(5)
スリップ時温度推定手段118は、式(5)から現在の摩擦材33の表面温度Tsfiをタイムステップ毎に逐次算出する。なお、算出された表面温度Tsfiは、次のタイムステップの表面温度Tsfiを算出する際の前回の表面温度Tsfi-1に設定される。
スリップ時温度推定手段118は、上記式(3)〜(5)に代わり、下式(6)に基づいて算出することもできる。ここで、γaは作動油の比熱に対応し、γcはロックアップクラッチ32の比熱に対応し、Mは質量補正係数に対応している。上記比熱γaおよび比熱γcは物性値であり、質量補正係数Mは、予め実験的に求められる値である。
Tsfi=Tsfi-1+ΔT×γa/γc×M・・・・(6)
Tsfi=Tsfi-1+ΔT×γa/γc×M・・・・(6)
そして、ロックアップ制御手段109は、表面温度推定手段112によって推定された摩擦材33の表面温度Tsfに基づいて、ロックアップクラッチ32の作動状態を制御する。例えば、ロックアップ制御手段109は、スリップ制御禁止手段122およびスリップ制御許可手段124を備えている。スリップ制御禁止手段122は、ロックアップクラッチ32がスリップ制御状態にあるとき、表面温度推定手段112によって推定された摩擦材33の表面温度Tsfが予め設定されているスリップ制御を禁止する第1所定推定温度Tend以上となったか否かに基づいて、スリップ制御を禁止する。具体的には、スリップ制御禁止手段122は、推定された表面温度Tsfが第1所定推定温度Tend以上となると、ロックアップクラッチ32のスリップ制御を禁止する指令信号をロックアップ制御手段109に出力する。ロックアップ制御手段109は、スリップ制御禁止手段122からのスリップ制御を禁止する指令信号を受けて、ロックアップクラッチ32を解放または完全係合に切り換えることで、スリップ制御を禁止する。なお、第1所定推定温度Tendは、予め実験や計算によって求められるものであり、摩擦材33の耐久性が低下する閾値(例えば200℃程度)に設定される。
スリップ制御許可手段124は、スリップ制御禁止手段122によってロックアップクラッチ32のスリップ制御が禁止されている場合において、その後の摩擦材33の表面温度Tsfの低下に従って、表面温度推定手段112によって逐次推定される摩擦材33の表面温度Tsfが、予め設定されているスリップ制御を許可する第2所定推定温度Tsts以下となると、スリップ制御の禁止を解除してスリップ制御を許可する指令信号をロックアップ制御手段109に出力する。ロックアップ制御手段109は、スリップ制御許可手段124からのスリップ制御を許可する指令信号を受けて、現在の走行状態が図6に示すスリップ制御領域にある場合には、ロックアップクラッチ32のスリップ制御を再開する。なお、スリップ制御の禁止を解除する第2所定推定温度Tstsは、スリップ制御を禁止する第1所定推定温度Tendよりも所定の値だけ低い温度に設定される。このように設定されることで、スリップ制御が再開されてもすぐにそのスリップ制御が禁止されることが防止される。なお、スリップ制御禁止手段122およびスリップ制御許可手段124は、表面温度推定手段112によって、摩擦材33の表面温度Tsfが常時推定されるため、実施可能となる。
図9は、電子制御装置34の制御作動の要部すなわちロックアップクラッチ32の摩擦材33の表面温度Tsfを常時推定し、その推定された表面温度Tsfに基づいて、ロックアップクラッチ32のスリップ制御を最適に設定することで、摩擦材33の耐久性低下を抑制すると共に、燃費性を向上することができる制御作動を説明するためのフローチャートであって、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実施されるものである。
先ず、ロックアップ状態判定手段110に対応するステップSA1(以下、ステップを省略する)において、ロックアップクラッチ32がロックアップオン状態(完全係合状態)、スリップ制御状態(FL/U制御、フレックスロックアップ制御)、ロックアップオフ状態(解放状態)のいずれであるかが判定される。ロックアップクラッチ32が解放状態であると判定されると、表面温度推定手段112(解放時温度推定手段114)に対応するSA2において、ロックアップクラッチ32解放時の摩擦材33の表面温度Tsfが推定される。なお、表面温度Tsfの推定に際して、車両が駆動状態・被駆動状態のいずれであるかが判定され、車両の駆動・被駆動に応じた図7に示す解放時の表面温度Tsfを推定するための関係マップが読み込まれ、その関係マップ、現在のタービン回転速度Ntおよび温度差ΔT(Tsfi-1−Toil)から線形補間されることで、温度変化量αが求められる。そして、上述した式(1)に基づいて、現在の摩擦材33の表面温度Tsf(=Tsfi)が推定(算出)される。また、ロックアップクラッチ32が解放されてから所定経過時間ta1経過した場合には、上述した式(1’)に基づいて摩擦材33の表面温度Tsfが算出される。
また、SA1において、ロックアップクラッチ32が完全係合状態(L/U制御)と判定されると、表面温度推定手段112(係合時温度推定手段116)に対応するSA3において、ロックアップクラッチ32完全係合時の摩擦材33の表面温度Tsfが推定される。なお、表面温度Tsfの推定に際して、車両が駆動状態・被駆動状態のいずれであるかが判断され、車両の駆動・被駆動に応じた図8に示す完全係合時の表面温度Tsfを推定するための関係マップが読み込まる。そして、その関係マップ、現在のタービン回転速度Ntおよび温度差ΔTから線形補間されることで、温度変化量βが求められる。さらに、求められた温度変化量βから上述した式(2)に基づいて、現在の摩擦材33の表面温度Tsf(=Tsfi)が推定(算出)される。また、ロックアップクラッチ32が完全係合されてから所定経過時間tb1経過した場合には、上述した式(2’)に基づいて摩擦材33の表面温度Tsfが算出される。
また、SA1において、ロックアップクラッチ32がスリップ制御状態(FL/U制御)と判定されると、表面温度推定手段112(スリップ時温度推定手段118)に対応するSA4において、ロックアップスリップ32スリップ制御(FL/U制御)時の摩擦材33の表面温度Tsfが推定される。SA4では、上述した式(3)よりロックアップクラッチ伝達トルクTLCが算出され、算出されたロックアップクラッチ伝達トルクTLCから式(4)に基づいて、摩擦材33からの発熱量QLCが算出される。そして、算出された発熱量QLCから、上述した式(5)に基づいて、現在の摩擦材33の表面温度Tsfが推定される。
スリップ制御禁止手段122に対応するSA5では、SA2〜SA4のいずれかによって推定された摩擦材33の表面温度Tsfが予め設定されているスリップ制御を禁止する第1所定推定温度Tend以上となったか否かが判定される。そして、SA5において、摩擦材33の表面温度Tsfが第1所定推定表面温度Tend以上となったと判定されると、スリップ制御禁止手段122に対応するSA8において、ロックアップクラッチ32のスリップ制御が禁止または終了される。一方、摩擦材33の表面温度Tsfが第1所定推定表面温度Tend未満である場合、スリップ制御許可手段124に対応するSA6において、摩擦材33の表面温度Tsfが第2所定推定温度Tsts以下か否かが判定される。SA6否定される場合、すなわち摩擦材33の表面温度Tsfが第2所定推定温度Tstsを越える場合、本ルーチンは終了させられる。SA6が肯定される場合、すなわち摩擦材33の表面温度Tsfが第2所定推定温度Tsts以下である場合、スリップ制御許可手段124に対応するSA7において、スリップ制御がSA8によって禁止されているロックアップクラッチ32のスリップ制御の禁止が解除されてスリップ制御の実施が許可される。
上述のように、本実施例によれば、表面温度推定手段112は、ロックアップクラッチ32の摩擦材33の表面温度Tsfを、ロックアップクラッチ解放時、スリップ制御時、および完全係合時の各々の状況下において常時推定し、ロックアップ制御手段112は、上記各々の状況下において常時推定される摩擦材33の表面温度Tsfに基づいてロックアップクラッチ32の作動状態を制御するため、スリップ制御時だけでなく、ロックアップクラッチ32の解放時および完全係合時においても常時摩擦材33の表面温度Tsfが推定され、常時推定される上記摩擦材33の表面温度Tsfに基づいて最適なロックアップ制御が可能となる。
また、本実施例によれば、表面温度推定手段112によって推定された摩擦材33の表面温度Tsfが第1所定推定温度Tend以上となると、ロックアップクラッチ32のスリップ制御を禁止するため、ロックアップクラッチ32の摩擦材33の耐久性低下が効果的に抑制される。
また、本実施例によれば、スリップ制御が禁止されている場合において、表面温度推定手段112によって推定された摩擦材33の表面温度Tsfが予め設定されている第2所定推定温度Tsts以下となると、スリップ制御の禁止が解除されるため、一端禁止されていたスリップ制御が再度実施されるに従い、燃費性が向上する。
また、本実施例によれば、タービン回転速度Ntおよび前回推定された摩擦材33の表面温度TsfとATF油温Toilとの温度差ΔTが検出されると、関係マップに基づいて、現在の摩擦材33の表面温度Tsfを精度良く推定することができる。
また、関係マップは、ロックアップクラッチ32の完全係合時および解放時毎に予め求められ、ロックアップクラッチ32の係合状態に応じて使用される関係マップが切り換えられるため、推定される摩擦材33の表面温度Tsfの精度がさらに高くなる。ロックアップクラッチ32の完全係合時と解放時とでは、ロックアップクラッチ32の摩擦材33とトルクコンバータ30内の作動油との接触状態が異なるに従い、摩擦材33の表面温度Tsfの変化特性が完全係合時と解放時とで異なるものとなることが確認されている。したがって、完全係合時および解放時毎に関係マップを予め求めておき、ロックアップクラッチ32の係合状態に応じた関係マップに切り換えることで、推定される摩擦材33の表面温度Tsfの精度がさらに高くなる。
また、本実施例によれば、関係マップは、車両の駆動時および被駆動時毎に予め求められ、車両の駆動状態に応じて使用される関係マップが切り換えられるため、推定される摩擦材33の表面温度Tsfの精度がさらに高くなる。車両の駆動時と被駆動時とで、トルクコンバータ30内の作動油の流れが異なるに従い、摩擦材33の表面温度Tsfの変化特性が駆動時と被駆動時とで異なるものとなることが確認されている。したがって、車両の駆動時および被駆動時毎に関係マップを予め求めておき、車両の駆動状態に応じた関係マップに切り換えることで、推定される摩擦材33の表面温度Tsfの精度がさらに高くなる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例の自動変速機10は、前進6段後進1段の自動変速機であったが、自動変速機の変速段数や内部構造は特に本実施例に限定されず、適宜変更されても構わない。また、自動変速機10は、有段式の自動変速機に限定されず、例えばベルト式無段変速機など無段の変速機であっても構わない。すなわち、本発明は、ロックアップクラッチを有するトルクコンバータを備えた車両用動力伝達装置であれば、適宜適用することができる。
また、前述の実施例では、ロックアップクラッチ32はトルクコンバータ30に設けられているが、必ずしもトルクコンバータに限定されず、トルク増幅作用を有しない流体クラッチに設けられているものであっても構わない。
また、前述の実施例において、油圧制御回路40は一例であっても必ずしも上記油路構成に限定されない。本発明は、ロックアップクラッチ32のスリップ制御が実施可能な構成であれば、適宜適用することができる。
また、前述の実施例では、第1所定推定温度Tendおよび第2所定推定温度Tstsは異なる温度であるとしたが、必ずしも異なる数値に限定されず、第1所定推定温度Tendと第2所定推定温度Tstsとが一致するものであっても構わない。
また、前述の実施例では、スリップ制御時の摩擦材33の表面温度Tsfを、式(3)〜式(5)に基づいて推定したが、スリップ制御時の摩擦材33の表面温度Tsfの推定は、一例であって、例えばトルクコンバータ30内の作動油の油温を検出し、検出された油温と前回推定された摩擦材33の表面温度との温度差に、実験的に求められた補正整数を掛けて表面温度を推定するなど、他の方法によって表面温度を推定しても構わない。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
8:車両用動力伝達装置
28:エンジン
30:トルクコンバータ(流体伝動装置)
32:ロックアップクラッチ
33:摩擦材
34:電子制御装置(制御装置)
109:ロックアップ制御手段
112:表面温度推定手段
Tsf:摩擦材の表面温度
Tsfi:今回推定される表面温度
Tsfi-1:前回推定された表面温度
Tend:第1所定推定温度
Tsts:第2所定推定温度
Nt:タービン回転速度
Toil:ATF油温(作動油温)
ΔT:温度差
28:エンジン
30:トルクコンバータ(流体伝動装置)
32:ロックアップクラッチ
33:摩擦材
34:電子制御装置(制御装置)
109:ロックアップ制御手段
112:表面温度推定手段
Tsf:摩擦材の表面温度
Tsfi:今回推定される表面温度
Tsfi-1:前回推定された表面温度
Tend:第1所定推定温度
Tsts:第2所定推定温度
Nt:タービン回転速度
Toil:ATF油温(作動油温)
ΔT:温度差
Claims (6)
- ロックアップクラッチを有する流体伝動装置をエンジンの出力側に備えた車両において、該ロックアップクラッチの作動状態を制御するロックアップ制御手段を備える車両用ロックアップクラッチの制御装置であって、
前記ロックアップクラッチの摩擦材の表面温度を、該ロックアップクラッチ解放時、スリップ制御時、および完全係合時の各々の状況下で常時推定する表面温度推定手段を備え、
前記ロックアップ制御手段は、該表面温度推定手段によって常時推定される前記摩擦材の表面温度に基づいて、前記ロックアップクラッチの作動状態を制御することを特徴とする車両用ロックアップクラッチの制御装置。 - 前記ロックアップ制御手段は、前記表面温度推定手段によって推定された前記摩擦材の表面温度が予め設定されている第1所定推定温度以上となると、前記ロックアップクラッチのスリップ制御を禁止することを特徴とする請求項1の車両用ロックアップクラッチの制御装置。
- 前記ロックアップ制御手段は、スリップ制御が禁止されている場合において、前記表面温度推定手段によって推定された前記摩擦材の表面温度が予め設定されている第2所定推定温度以下となると、スリップ制御の禁止を解除することを特徴とする請求項2の車両用ロックアップクラッチの制御装置。
- 前記表面温度推定手段は、前記ロックアップクラッチの完全係合時および解放時において、予め求められたタービン回転速度および前記摩擦材の表面温度と作動油温との温度差から構成される該摩擦材の表面温度変化量の関係マップから、現在の該タービン回転速度および該温度差に基づいて、現在の前記摩擦材の表面温度を推定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1の車両用ロックアップクラッチの制御装置。
- 前記関係マップは、前記ロックアップクラッチの完全係合時および解放時毎に予め求められ、該ロックアップクラッチの係合状態に応じて使用される該関係マップが切り換えられることを特徴とする請求項4の車両用ロックアップクラッチの制御装置。
- 前記関係マップは、車両の駆動時および被駆動時毎に予め求められ、該車両の駆動状態に応じて使用される該関係マップが切り換えられることを特徴とする請求項4または5の車両用ロックアップクラッチの制御装置。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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-
2010
- 2010-05-21 JP JP2010117741A patent/JP2011247285A/ja active Pending
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