JP2011246578A - ビニルモノマー−多塩基酸エステル共重合体の製造方法 - Google Patents

ビニルモノマー−多塩基酸エステル共重合体の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2011246578A
JP2011246578A JP2010120296A JP2010120296A JP2011246578A JP 2011246578 A JP2011246578 A JP 2011246578A JP 2010120296 A JP2010120296 A JP 2010120296A JP 2010120296 A JP2010120296 A JP 2010120296A JP 2011246578 A JP2011246578 A JP 2011246578A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
vinyl monomer
polybasic acid
alcohol
acid
reaction
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2010120296A
Other languages
English (en)
Inventor
Masaki Sato
政樹 佐藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Panasonic Electric Works Co Ltd
Original Assignee
Panasonic Electric Works Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Panasonic Electric Works Co Ltd filed Critical Panasonic Electric Works Co Ltd
Priority to JP2010120296A priority Critical patent/JP2011246578A/ja
Publication of JP2011246578A publication Critical patent/JP2011246578A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Addition Polymer Or Copolymer, Post-Treatments, Or Chemical Modifications (AREA)

Abstract

【課題】エステル化反応に併発して進行する副反応を抑制し、ビニルモノマー−多塩基酸エステル共重合体を効率的に製造する。
【解決手段】多価アルコールと不飽和多塩基酸からなる不飽和ポリエステルをビニルモノマーで架橋した熱硬化性樹脂を含む材料を亜臨界水分解して得られたビニルモノマー−多塩基酸共重合体に、沸点100℃以上のアルコールを添加する。酸触媒の存在下、100℃〜140℃且つ前記アルコールの沸点以下の温度条件、及び大気圧未満の圧力条件にて接触させてビニルモノマー−多塩基酸エステル共重合体を製造する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ビニルモノマー−多塩基酸エステル共重合体の製造方法に関する。
熱硬化性樹脂を材料とするプラスチック廃棄物を再資源化することが試みられている。例えば、本出願人は、不飽和ポリエステル樹脂をスチレンで硬化させた硬化物を亜臨界水分解し、得られたスチレン−フマル酸共重合体にアルコールを添加してスチレン−フマル酸エステル共重合体を生成し、低収縮材として利用することを提案している(特許文献1、2参照)。
スチレン−フマル酸共重合体は、下記式に示す構造を有しており、式中のmは1〜3の数値であり、nは3〜300の数値であり、両末端は一般に水素である。
Figure 2011246578
前記スチレン−フマル酸エステル共重合体は、理想的には、下記式に示されるように、R−OHで表される1価のアルコールと反応させることにより、スチレン−フマル酸共重合体のカルボン酸基がエステル化されて生成される。アルコールは炭素数が6〜12であり、符号Rは直鎖または分岐のアルキル基等である。酸触媒としては硫酸等が用いられる。
Figure 2011246578
また、上記式(1)に類似する構造を有する下記式に示されるスチレン−無水マレイン酸共重合体のアルコールによるエステル化例が特許文献3及び非特許文献1に報告されている。
Figure 2011246578
スチレン−無水マレイン酸共重合体のエステル化に際し、特許文献3では、アルコールとしてブチルセロソルブ(ブトキシエタノール)を使用し、非特許文献1では、アルコールとしてブタノールやオクタノールを使用している。
特開2008−208186号公報 特開2008−291187号公報 米国特許第3,388,106号明細書
高分子化学、第20巻、第222号、p649−651、1963年
しかしながら、上記スチレン−フマル酸共重合体は、高分子量であり、且つ、ジカルボン酸であるため、特許文献1,2に記載の方法でスチレン−フマル酸共重合体を完全にエステル化することは難しいという問題があった。上記スチレン−無水マレイン酸共重合体のエステル化に際し、特許文献3では、無触媒にて反応温度175℃、反応時間2時間でスチレン−マレイン酸半エステル共重合体を得ているが、それ以上反応が進行せずスチレン−マレイン酸(両)エステル共重合体の収率は低い。また、非特許文献1においては、アルコールとしてブタノールを使用した場合、無触媒にて反応温度118℃、反応時間2時間でスチレン−マレイン酸半エステル共重合体を得ているが、それ以上反応が進行せずスチレン−マレイン酸(両)エステル共重合体の収率は低い。スチレン−無水マレイン酸共重合体の75%重量に相当する大量のp−トルエンスルホン酸を触媒として用いることによりエステル化度99%以上のスチレン−マレイン酸(両)エステル共重合体を得ることができるが、約50時間という長時間の反応時間を要する。アルコールとしてオクタノールを使用した場合にも、同触媒を同添加量で反応温度150〜160℃で反応させることによりエステル化度99%以上のスチレン−マレイン酸(両)エステル共重合体を得ることができるが、約66時間という長時間の反応時間を要する。また、上記したような大量の触媒添加や長時間の反応時間などの過酷な反応条件下では、下記式で示されるように、副反応であるアルコール同士のエーテル化反応が併発しやすくなる。
Figure 2011246578
(式中、Rは、分岐、エーテル結合、ベンゼン環を含んでいても良い炭素数6〜12のアルキル基、又は置換基を有していても良いフェニル基を示す。)
副生成物であるエーテルは過酸化物を形成し酸化・爆発の危険性を含んでいるため、取り扱いに細心の注意を要し、精製工程の負荷が増大する。また、アルコール損失やランニングコスト高の要因にもなっており、改善が求められている。
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、エステル化反応に併発して進行する副反応を抑制し、ビニルモノマー−多塩基酸エステル共重合体を効率的に製造することを課題としている。
上記の課題を解決するために、本発明のビニルモノマー−多塩基酸エステル共重合体の製造方法は、以下のことを特徴としている。
すなわち、本発明においては、多価アルコールと不飽和多塩基酸からなる不飽和ポリエステルをビニルモノマーで架橋した熱硬化性樹脂を含む材料を亜臨界水分解して得られたビニルモノマー−多塩基酸共重合体に、沸点100℃以上のアルコールを添加する。酸触媒の存在下、100℃〜140℃且つ前記アルコールの沸点以下の温度条件、及び大気圧未満の圧力条件にて接触させてビニルモノマー−多塩基酸エステル共重合体を製造する。
また、本発明においては、酸触媒が、硫酸であることが好ましい。
さらに、本発明においては、ビニルモノマー−多塩基酸共重合体に添加したアルコールを撹拌するとともに反応生成物である蒸気を反応系外に排出することが好ましい。
本発明のビニルモノマー−多塩基酸エステル共重合体の製造方法においては、比較的低い温度条件にて反応を行っているので、エステル化反応に併発して進行する副反応を抑制することができる。また、大気圧未満の圧力条件にて反応を行ってもおり、生成した水が積極的に揮発して蒸気となり、反応系外への排出が容易となる。これによってエステル化反応を効果的に進行させ、ビニルモノマー−多塩基酸エステル共重合体を効率的に製造することができる。
ビニルモノマー−多塩基酸共重合体のエステル化反応を行う反応器の一例を示す概略構成図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるビニルモノマー−多塩基酸共重合体は、多価アルコールと不飽和多塩基酸からなる不飽和ポリエステルを架橋剤であるビニルモノマーで架橋した熱硬化性樹脂(不飽和ポリエステル樹脂)を含む材料を亜臨界水分解して得られる。
不飽和ポリエステルは多価アルコールと多塩基酸とが重縮合されたものであり、これをビニルモノマーで架橋することにより、網状の熱硬化性樹脂(網状不飽和ポリエステル樹脂)が得られる。
本発明が適用される熱硬化性樹脂は主として加熱等により硬化(架橋)された樹脂であるが、本発明を適用した時に上記した効果を得ることができるものであれば加熱などにより硬化(架橋)が進行する未硬化の樹脂または部分的に硬化された樹脂であってもよい。また、樹脂の種類と構造、架橋剤の種類、量及び架橋度等に制限はない。
このような熱硬化性樹脂を含む材料は、例えば、浴室ユニットやシステムキッチン等のプラスチック成形品として用いられるものであり、プラスチック成形品の廃棄物であってもよい。
不飽和ポリエステルの原料となる多価アルコールとしては、ジオール類(グリコール類)やトリオール類が挙げられる。ジオール類(グリコール類)としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、水素添加ビスフェノールA、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が例示される。トリオール類としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール等が例示される。これらは1種単独で、あるいは2種以上を併用して用いることができる。
不飽和ポリエステルの原料となる不飽和多塩基酸としては、主に不飽和二塩基酸が挙げられ、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が例示される。これらは1種単独で、あるいは2種以上を併用して用いることができる。さらに、必要に応じて飽和多塩基酸を併用しても構わない。飽和多塩基酸としては、主に飽和二塩基酸が挙げられ、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、ヘット酸、テトラブロム無水フタル酸、ハイミック酸等が例示される。
多価アルコールと不飽和多塩基酸の共重合体である不飽和ポリエステルを架橋するビニルモノマーとしては、主に不飽和の疎水性ビニルモノマーが用いられる。具体例としては、スチレンやメタクリル酸メチル、モノクロロスチレン、ジアリルフタレート、トリアリルフタレート等が挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を併用して用いることができる。
この他にも、不飽和ポリエステルとビニルモノマーの架橋反応を開始させる重合開始剤、前記熱硬化性樹脂を含む材料を成形させる際に生じる硬化収縮を抑制する低収縮剤、成形時に用いる金型等から材料を取り出しやすくする離型剤等が必要に応じて用いられる。また、強度を向上させるための無機充填材、繊維状物質等が、必要に応じて用いられてもよい。無機充填材としては、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等が例示される。繊維状物質としては、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維等が例示される。
本発明において、亜臨界水分解とは、例えば熱硬化性樹脂を含む材料に水を加え、温度及び圧力を上昇させて水を臨界点(臨界温度374.4℃、臨界圧力22.1MPa)以下の亜臨界状態にして熱硬化性樹脂成分を分解することをいう。一般に、亜臨界水によるプラスチックの分解処理は、熱分解反応及び加水分解反応によって起こるものであるが、樹脂の熱分解温度以下の亜臨界水に接触させて処理する場合には、加水分解反応が支配的となる。そのため、本発明においても、熱硬化性樹脂を含む材料を熱硬化性樹脂の熱分解温度以下の条件で亜臨界水分解した場合には、熱硬化性樹脂の不飽和ポリエステル部を構成している多価アルコールと多塩基酸の結合部であるエステル基の加水分解が優先的に起こる。最終的に熱硬化性樹脂の分解物である多価アルコール、多塩基酸又はこれらが複数個結合したオリゴマー、ビニルモノマー−多塩基酸共重合体と、場合によって無機充填材や繊維状物質などのその他の配合物質を得る。亜臨界水分解により得られた多価アルコール、多塩基酸又はこれらが複数個結合したオリゴマーは、回収して上記した熱硬化性樹脂の製造原料として再利用することができる。
本発明においては、亜臨界水がアルカリ金属の水酸化物を含有することが望ましい。これにより、熱硬化性樹脂を含む材料の加水分解反応がアルカリ金属の水酸化物で促進されて処理時間を短くすることができ、処理コストを少なくすることができる。さらに、超臨界状態に近い高温域においては、分解物である多価アルコールが同じく分解物である多塩基酸の酸触媒としての効果により二次分解される恐れがあるが、アルカリ金属の水酸化物の塩基で多塩基酸を中和することができる。これによって、多価アルコールが多塩基酸の酸触媒効果により二次分解されることを抑制することができる。
ここで、アルカリ金属の水酸化物の配合量は、特に限定されるものではない。熱硬化性樹脂の原材料の化学構造と配合量から算出した、熱硬化性樹脂に含まれると想定されるビニルモノマー−多塩基酸共重合体のカルボン酸基のモル数に対して、2モル当量以上であることが好ましい。アルカリ金属の水酸化物の配合量が2モル当量未満であると、加水分解反応時間の短縮効果が得られにくくなる恐れがある。アルカリ金属の水酸化物配合量の上限値は、特に限定はされない。コスト面等から、熱硬化性樹脂の原材料の化学構造と配合量から算出した、熱硬化性樹脂に含まれると想定されるビニルモノマー多塩基酸共重合体のカルボン酸基のモル数に対して、10モル当量以下であることが好ましい。
アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化カリウム(KOH)や水酸化ナトリウム(NaOH)等を用いることができるが、これに限定されるものではない。また、アルカリ金属の水酸化物の代わりに、又はアルカリ金属の水酸化物と併用して、難水溶性の塩基を亜臨界水に添加することもできる。この難水溶性の塩基としては、炭酸カルシウム等を例示することができるが、これに限定されるものではない。
本発明において、熱硬化性樹脂を含む材料と水との配合割合は特に制限されるものではないが、熱硬化性樹脂を含む材料100質量部に対して水の添加量は100〜500質量部の範囲にすることが望ましい。
また、亜臨界水の温度は、熱硬化性樹脂の加水分解は促進されるが熱分解は起こりにくい温度範囲であることが望ましく、180℃〜270℃の温度範囲に設定することが望ましい。分解反応時の温度が180℃未満であると、分解処理に多大な時間を要し、処理コストが高くなる恐れがある。逆に分解反応時の温度が270℃を超えると、熱分解の影響が大きくなり、不飽和ポリエステルとビニルモノマーが分解されて、ビニルモノマー−多塩基酸共重合体を回収することが困難になる恐れがある。
また、亜臨界水で処理する時間は反応温度等の条件によって異なるが、熱分解の影響が小さい温度以下では、1〜4時間程度が好ましく、この反応時間は短い方が処理コストが少なくなるので好ましい。また、亜臨界水で処理する際の圧力については、特に限定されるものではないが、2〜15MPa程度の範囲であることが望ましい。
本発明において、熱硬化性樹脂を含む材料の亜臨界水分解工程では、始めに、分解処理の対象となる熱硬化性樹脂を含む材料と水、必要に応じてアルカリ金属の水酸化物等の添加物とを混合し、これを加熱加圧することにより、亜臨界水で熱硬化性樹脂を分解する。
次に、分解処理後の亜臨界水を冷却した後、濾過等の方法により固液を分離する。ここで、熱硬化性樹脂を含む材料に含まれていた無機充填材や繊維状物質、さらには熱硬化性樹脂の未分解物などの水に不溶な成分が固形物として得られ、水及びこれに溶解している水可溶成分が液分として得られる。
水可溶成分には、熱硬化性樹脂の分解物であるビニルモノマー−多塩基酸共重合体のアルカリ金属塩、多価アルコール、多塩基酸のアルカリ金属塩、多価アルコールと多塩基酸のアルカリ金属塩とのオリゴマー等が含まれる。
次に、固液分離した液分に酸を添加して、ビニルモノマー−多塩基酸共重合体のアルカリ金属塩を中和し、水に難溶なビニルモノマー−多塩基酸共重合体の固形分を得、液相と分離する。
添加する酸としては、塩酸や硫酸などの無機の強酸を例示することができるが、これに限定されるものではない。また、後の工程で中和する必要がある場合は、中和による副生成物である塩が処理し易いものを選択すればよい。この時、酸は、液分のpHが5以下になるように配合するのが好ましい。液分のpHが5を超える場合はビニルモノマー−多塩基酸共重合体の固形分が完全に析出しない恐れがある。本発明において、液分の水相のpHは小さいほどビニルモノマー−多塩基酸共重合体の固形分が析出しやすいので、pHの下限は特に設定されず、0である。
さらに、上記した液分に酸を添加するとともに、熱を供給することによって、ビニルモノマー−多塩基酸共重合体の固形分が沈殿したり、水溶液中で塊状で浮いたりして、ビニルモノマー−多塩基酸共重合体の固形分と液相とを容易に分離することができる。この熱の供給時期は、酸の添加前、または酸の添加途中、または酸の添加後のいずれであってもよい。熱の供給により、液分の液温を40℃より高い温度に昇温することが好ましい。液温の上限温度は特に定めないが、水溶液であることから、沸騰しない温度とするのが好ましい。上記温度に達した後の温度保持時間の下限も上限も特に限定されるものではないが、コスト面から考えてもあまり長くないほうがよい。
上記のようにしてビニルモノマー−多塩基酸共重合体の固形分と液相とに分離した後、濾過や遠心分離、かき取りなどで固形分を採取し、ビニルモノマー−多塩基酸共重合体を容易に得ることができる。
さらに、上記で得られた液相を蒸留することにより、水、多価アルコール、多塩基酸、多価アルコールと多塩基酸のオリゴマーをそれぞれ別々に回収することができる。これらは、上記した熱硬化性樹脂の原料として再利用できる。蒸留で得られた水も、再度、亜臨界水分解用として再利用することができる。
なお、ビニルモノマー−多塩基酸共重合体の回収方法としては、上記方法以外に次の方法も採用できる。すなわち、固液分離した液分に酸を添加してビニルモノマー−多塩基酸共重合体の固形分を得た後、ビニルモノマー−多塩基酸共重合体を溶解し且つ難水性の溶媒であるアルコールを供給する方法である。この方法では、加熱条件下、撹拌することにより、ビニルモノマー−多塩基酸共重合体をアルコールに溶解させ、ビニルモノマー−多塩基酸共重合体をアルコール中に抽出して回収することができる。使用されるアルコールとしては、例えば、後述するビニルモノマー−多塩基酸共重合体のエステル化反応に用いられるアルコールが採用される。
本発明に用いられるビニルモノマー−多塩基酸共重合体の化学構造の一例として、下記式が示される。
Figure 2011246578
上記式(4)に示される構造のビニルモノマー−多塩基酸共重合体は、ビニルモノマーがスチレン、多塩基酸がフマル酸及び/又は無水マレイン酸の時に得られるスチレン−フマル酸共重合体である。式中のmは1〜3の数値であり、nは3〜300の数値であり、両末端は一般に水素である。
本発明においては、回収したビニルモノマー−多塩基酸共重合体に反応改質剤であるアルコールを添加し、酸触媒の存在下で接触させてビニルモノマー−多塩基酸共重合体の多塩基酸部をエステル化し、ビニルモノマー−多塩基酸両エステル共重合体等を含むビニルモノマー−多塩基酸エステル共重合体(以下、ビニルモノマー−多塩基酸(両)エステル共重合体ともいう。)を得ている。なお、ビニルモノマー−多塩基酸共重合体をアルコール中に抽出して回収した場合には、酸触媒の存在下、所定の温度条件及び圧力条件にてエステル化反応を行えばよい。
エステル化反応は、大気圧未満の圧力条件にて行う。これによって、生成した水が積極的に揮発して蒸気となり反応系外への排出が容易となるため、エステル化反応を効果的に進行させ、ビニルモノマー−多塩基酸(両)エステル共重合体を効率的に製造することができる。圧力条件の下限値は、特に制限されるものではないが、低すぎると、反応改質剤であるアルコールが留出してエステル化反応に寄与しなくなる場合もあるため、反応温度にて使用するアルコールの蒸気圧よりも高い圧力条件が望ましい。例えば、反応改質剤として1−オクタノールを使用し、エステル化反応の温度条件を140℃とする場合、1−オクタノールの140℃における蒸気圧は、約16kPaであるため、圧力条件は、16kPa超大気圧未満とすることが好ましい。
反応改質剤であるアルコールは、沸点100℃以上のものを使用する。高沸点を有するアルコールを使用することにより、アルコールの反応系外への留出を防ぐことができ、アルコールを有効に利用してビニルモノマー−多塩基酸(両)エステル共重合体を製造することができる。
アルコールは、沸点が100℃以上であれば、特に制限されるものではない。例えば、R−OHで表されるアルコールにおいては、Rは、分岐、エーテル結合、ベンゼン環を含んでいても良い炭素数4〜12のアルキル基、又は置換基を有していても良いフェニル基とすることができる。好ましくは、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチルヘキサノール等の炭素数6〜10の1価のアルコールであり、特に、1−オクタノールや2−エチルヘキサノール等の炭素数8のアルコールが好ましい。
エステル化反応の温度条件は、100℃〜140℃且つアルコールの沸点以下の温度である。例えば、アルコールとして1−オクタノール(沸点195℃)を用いた場合のエステル化反応の温度条件の上限値は140℃であり、アルコールとして1−ブタノール(沸点118℃)を用いた場合のエステル化反応の温度条件の上限値は118℃である。
このようにアルコールの沸点以下の温度でエステル化反応を行う理由は、ビニルモノマー−多塩基酸共重合体をアルコールに溶解して均一状態で反応を進行させるなど、反応効率を上げるためである。アルコールの沸点を超えた条件では、アルコールは蒸気となる。この場合、アルコール(蒸気)とビニルモノマー−多塩基酸共重合体(固体)との反応は気固の不均一反応であり、反応効率が極端に下がるので、ビニルモノマー−多塩基酸(両)エステル共重合体を効率よく得ることができない。
エステル化反応の温度条件を100℃〜140℃且つアルコールの沸点以下の温度とすることにより、副反応が抑制され、ビニルモノマー−多塩基酸(両)エステル共重合体を効率よく製造することができる。また、後工程である精製工程の負荷が軽減されるとともに、アルコールの使用効率を向上させることも可能となる。温度条件が100℃以上であるので、生成した水が蒸発して反応系外への排出が容易となる。温度条件が100℃未満の場合、副反応が抑制されるが、エステル化反応の進行が遅くなり長時間の反応時間を要するので、ビニルモノマー−多塩基酸(両)エステル共重合体を効率よく得ることができない。温度条件が140℃を超える場合、エステル化反応が進行してビニルモノマー−多塩基酸(両)エステル共重合体を得ることができるが、副反応も併発しやすくなる。副生成物として生成したエーテルは過酸化物を形成し酸化・爆発の危険性を含んでいるため、取り扱いに細心の注意を要し、精製工程の負荷が増大する。また、アルコール損失やランニングコスト高の要因にもなる。
本発明においては、酸触媒の存在下でエステル化反応を行うことにより、ビニルモノマー−多塩基酸(両)エステル共重合体の製造を可能にしている。酸触媒を用いない場合は、ビニルモノマー−多塩基酸(両)エステル共重合体はほとんど得られない。酸触媒としては、硫酸を使用することが好ましい。無機酸や有機酸の各種のものが挙げられるが、エステル化反応を進行させるためには、生成する水を加熱によって反応系外に排出する必要があるため、加熱条件下でも安定に存在し、脱水能がある不揮発性の硫酸が好ましい。
ビニルモノマー−多塩基酸共重合体のエステル化反応によって得られたビニルモノマー−多塩基酸(両)エステル共重合体は、重量平均分子量が1万〜10万であり、疎水化されているため、溶媒に溶けやすく、低収縮剤や相溶化剤として利用することができる。
ビニルモノマー−多塩基酸共重合体のエステル化反応を行う反応器は、例えば、図1に示すようにバッチ式の反応器を用いることが好ましい。連続式の場合、反応の進行に伴って生成される水分の排出が困難になる。図1の反応器1は、ビニルモノマー−多塩基酸共重合体、アルコール及び酸触媒を収納しエステル化反応を行う反応容器2と、反応容器2内の収納物Sを撹拌する攪拌機3を備えている。反応容器2の周囲は熱媒ジャケット4で覆われており、熱媒ジャケット4には熱媒が流通されるようになっている。エステル化反応中は、熱媒ジャケット4により収納物Sが所定の温度に加熱され、また、攪拌機3をモータMで駆動させることによって収納物Sが撹拌される。攪拌機3で撹拌することによって、エステル化反応で生成した水や硫酸由来の水分による突沸の影響を軽減することができ、安全に運転することができる。反応容器2の上部には、エステル化反応で生成した、反応容器2内の空間Aに滞留する水蒸気を反応系外に排出する排出管5が反応容器2の内部と連通して設けられている。排出管5の途中には凝縮器6が設けられており、反応容器2から排出された水蒸気が凝縮器6を通過すると凝縮液(水)となって反応系外に排出される。また、排出管5には、反応容器2内を減圧して大気圧よりも負圧にする真空ポンプ等の減圧設備7が接続されている。減圧設備7により反応容器2内を減圧すると、反応容器2内の空間Aに滞留している水蒸気が排出管5を通じてスムーズに反応系外に排出される。これにより、反応容器2内の空間Aに滞留する水蒸気に基因して反応容器2内の上部が結露しその水分が反応液に落下するなどの反応系に水分が環流することを抑制できるので、安全に、効率よくビニルモノマー−多塩基酸(両)エステル共重合体を製造することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1、2><比較例1、2>
硫酸を酸触媒として、上記式(4)で表されるスチレン−フマル酸共重合体(以下、SFC−Hと表記する)と1−オクタノール(沸点195℃)によるエステル化反応を図1に示される反応器1で実施した。反応容器2中の反応混合物の初期濃度は、SFC−H:29wt%、1−オクタノール:64wt%、硫酸:1.3wt%であり、残りは水分やその他不純物である。実施例1,2については、真空ポンプで反応容器2内の圧力を負圧とした。
SFC−Hと1−オクタノールによるエステル化反応によって生成するスチレン−フマル酸エステル共重合体(以下、SFC−C8と表記する)と、副反応によって生成するジオクチルエーテル(以下、DOEと表記する)について、SFC−C8改質収率及びDOE生成率を調べた。SFC−C8改質収率およびDOE生成率は、以下の式により算出した。なお、SFC−H及びSFC−C8の骨格分子量は、スチレン−フマル酸共重合体のスチレン/フマル酸比=2.2と仮定して、それぞれ345及び569とした。
SFC−C8改質収率=(SFC−C8回収量/569)/(SFC−H仕込量/345)x100 (%)
DOE生成率=反応液中のDOE量/改質剤仕込量x100 (%)
また、エステル化反応によって生成したSFC−C8中のカルボン酸基やエステル基の存在をIR分析により定性的に調べた。1710cm−1付近に吸収がある場合、カルボン酸基が残留しているものと判断し、1730cm−1付近に吸収がある場合、エステル基が生成されているものと判断した。エステル基の吸収があり、カルボン酸基の吸収が消滅しているものを○とし、エステル基の吸収はあるが、カルボン酸基の吸収が僅かに残っているものは△とした。
反応条件および結果を表1に示す。
<比較例3、4>
SFC−Hと1−オクタノールによるエステル化反応を実施した。ここでは、図1の反応器で反応を行わず、テフロン(登録商標)製攪拌翼およびジムロート冷却器を設置したセパラブルフラスコをオイルバス中へセットしてエステル化反応を行った。この反応器は、図1の反応器と異なって、エステル化反応で生成した蒸気を反応系外に排出する排出管が設けられておらず、生成した蒸気がジムロート冷却器で冷却されて反応系に環流する状態になっている。
セパラブルフラスコにSFC−H:25g、オクタノール:20gを仕込み、比較例3ではさらに62.5%希硫酸を0.5g添加した。セパラブルフラスコ内の反応混合物中の硫酸濃度は、約0.7wt%である。比較例4では、希硫酸は添加しなかった。
反応条件および結果を表1に示す。
Figure 2011246578
表1の結果より、実施例1では、SFC−8改質収率が高く、また、DOEの生成が抑制されていることが確認された。実施例2では、ほぼ完全にエステル化されており、さらにDOEの生成が抑制されていることが確認された。これに対して、比較例1〜3は、ほぼ完全にエステル化されているもののDOEの生成率が高かった。比較例4は、SFC−C8の収率が低く、DOEの生成率は実施例1〜2と比べてやや高かった。
また、実施例1〜2,比較例1〜4で得たSFC−C8の平均分子量をGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)にて測定した結果、いずれのSFC−C8も重量平均分子量が4万5000〜6万5000であった。

Claims (3)

  1. 多価アルコールと不飽和多塩基酸からなる不飽和ポリエステルをビニルモノマーで架橋した熱硬化性樹脂を含む材料を亜臨界水分解して得られたビニルモノマー−多塩基酸共重合体に、沸点100℃以上のアルコールを添加し、酸触媒の存在下、100℃〜140℃且つ前記アルコールの沸点以下の温度条件、及び大気圧未満の圧力条件にて接触させてビニルモノマー−多塩基酸エステル共重合体を製造することを特徴とするビニルモノマー−多塩基酸エステル共重合体の製造方法。
  2. 前記酸触媒が、硫酸であることを特徴とする請求項1に記載のビニルモノマー−多塩基酸エステル共重合体の製造方法。
  3. 前記ビニルモノマー−多塩基酸共重合体に添加した前記アルコールを撹拌するとともに反応生成物である蒸気を反応系外に排出することを特徴とする請求項1又は2に記載のビニルモノマー−多塩基酸エステル共重合体の製造方法。
JP2010120296A 2010-05-26 2010-05-26 ビニルモノマー−多塩基酸エステル共重合体の製造方法 Pending JP2011246578A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010120296A JP2011246578A (ja) 2010-05-26 2010-05-26 ビニルモノマー−多塩基酸エステル共重合体の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010120296A JP2011246578A (ja) 2010-05-26 2010-05-26 ビニルモノマー−多塩基酸エステル共重合体の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2011246578A true JP2011246578A (ja) 2011-12-08

Family

ID=45412255

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010120296A Pending JP2011246578A (ja) 2010-05-26 2010-05-26 ビニルモノマー−多塩基酸エステル共重合体の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2011246578A (ja)

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007153982A (ja) * 2005-12-02 2007-06-21 Shin Etsu Chem Co Ltd 新規なエステル化合物、高分子化合物、レジスト材料及びパターン形成方法
JP2008208186A (ja) * 2007-02-23 2008-09-11 Matsushita Electric Works Ltd 熱硬化性樹脂の低収縮材用変性スチレン−フマル酸共重合体とその製造方法、並びに熱硬化性樹脂の回収・再利用方法
WO2009119742A1 (ja) * 2008-03-26 2009-10-01 パナソニック電工株式会社 熱硬化性樹脂の分解および分解生成物の回収方法
JP2009263497A (ja) * 2008-04-24 2009-11-12 Panasonic Electric Works Co Ltd 高分子化合物の改質方法、プラスチック用低収縮材及び高分子化合物の利用方法

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007153982A (ja) * 2005-12-02 2007-06-21 Shin Etsu Chem Co Ltd 新規なエステル化合物、高分子化合物、レジスト材料及びパターン形成方法
JP2008208186A (ja) * 2007-02-23 2008-09-11 Matsushita Electric Works Ltd 熱硬化性樹脂の低収縮材用変性スチレン−フマル酸共重合体とその製造方法、並びに熱硬化性樹脂の回収・再利用方法
WO2009119742A1 (ja) * 2008-03-26 2009-10-01 パナソニック電工株式会社 熱硬化性樹脂の分解および分解生成物の回収方法
JP2009263497A (ja) * 2008-04-24 2009-11-12 Panasonic Electric Works Co Ltd 高分子化合物の改質方法、プラスチック用低収縮材及び高分子化合物の利用方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4680266B2 (ja) ポリエステルの解重合方法、および当該解重合方法を用いたポリエステルモノマーの回収方法
JP5127549B2 (ja) 高分子化合物の改質方法、プラスチック用低収縮材及び高分子化合物の利用方法
JP4495628B2 (ja) プラスチックの分解・分離方法
KR101289920B1 (ko) 폴리에스테르의 합성 방법 및 장치
JP4495629B2 (ja) プラスチックの分解・分離方法
Kamimura et al. Efficient chemical recycling of waste fiber-reinforced plastics: use of reduced amounts of dimethylaminopyridine and activated charcoal for the purification of recovered monomer
JP4118446B2 (ja) 熱可塑性ポリエステルの分解処理装置及び分解処理方法
EP2258756B1 (en) Method for decomposing thermoset resin and recovering decomposition product
JP2011246578A (ja) ビニルモノマー−多塩基酸エステル共重合体の製造方法
JP4806758B2 (ja) 熱硬化性樹脂の分解・回収方法
JP5270871B2 (ja) プラスチック用低収縮材とそれを用いたプラスチック成形品、プラスチック用低収縮材の製造方法、並びにプラスチックの回収・再利用方法
JP6270100B2 (ja) 不飽和ポリエステルの解重合方法、およびその解重合方法を用いた不飽和ポリエステルの原料の回収方法
JPWO2005103131A1 (ja) 熱硬化性樹脂の分解方法
JP4806757B2 (ja) 熱硬化性樹脂の分解・回収方法
JP2012131870A (ja) 不飽和ポリエステル樹脂用粘度調整剤とこれを用いた複合材料および成形品並びに不飽和ポリエステル樹脂用粘度調整剤の製造方法
JP4291126B2 (ja) プラスチックの分解方法
WO2010110434A1 (ja) 熱硬化性樹脂の分解・回収方法
JP5508025B2 (ja) 熱硬化性樹脂の分解および分解生成物の回収方法
JP2010163620A (ja) プラスチックの分解・分離方法
JP2011111502A (ja) プラスチックの分解方法
JP2017110155A (ja) 不飽和ポリエステル樹脂の解重合方法、その解重合方法を用いた不飽和ポリエステル樹脂の架橋用原料の回収方法、その架橋用原料を用いて架橋された不飽和ポリエステル樹脂の製造方法、および架橋された不飽和ポリエステル樹脂
JP3504630B2 (ja) 不飽和ポリエステル樹脂の製造方法および製造装置
PL238812B1 (pl) Sposób i urządzenie do uzyskiwania tereftalanu dioktylu z politereftalanu etylenu
JP2011206712A (ja) 乳化剤
JP2012082371A (ja) ポリエステル結合性樹脂の再利用方法

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20120117

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20130109

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20131120

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20131126

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20140123

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20140812