JP2011241434A - アルミニウム合金ブレージングシート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルミニウム合金ブレージングシートは、心材の少なくとも一方の面に、Al−Si系もしくはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドしたアルミニウム合金ブレージングシートであって、前記心材は、Si:0.3〜1.0質量%、Mn:0.6〜2.0質量%、Cu:0.3〜1.0質量%、Mg:0.15〜0.5質量%、Ti:0.05〜0.25質量%を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなり、前記心材内部における粒径0.5μm未満のMg−Si系、Al−Mg−Cu系、Al−Cu−Mg−Si系金属間化合物の密度が10000個/mm2以上であることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
心材は、Si:0.3〜1.0質量%、Mn:0.6〜2.0質量%、Cu:0.3〜1.0質量%、Mg:0.15〜0.5質量%、Ti:0.05〜0.25質量%を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなる。また、心材は、その内部における粒径0.5μm未満のMg−Si系、Al−Mg−Cu系、Al−Cu−Mg−Si系金属間化合物の密度が10000個/mm2以上である。
Siは、Mgと共存させることでMg2Siを形成し、ろう付後強度を向上させる。但し、Siが0.3質量%未満の場合、ろう付後強度を向上させる効果が小さく、Siが1.0質量%を越える場合、心材の固相線温度が低下してろう付時に心材が溶融する。従って、心材に含有されるSiの量は、上記範囲内とする。
Mnは、Al−Mn−Si系金属間化合物を形成し、ろう付後強度を向上させる。但し、Mnが0.6質量%未満の場合、ろう付後強度を向上させる効果が小さく、Mnが2.0質量%を越える場合、鋳造時に形成される粗大な金属間化合物の量が増加して成形性が低下する。従って、心材に含有されるMnの量は、上記範囲内とする。
Cuは、固溶することでろう付後強度を向上させる。但し、Cuが0.3質量%未満の場合、ろう付後強度を向上させる効果が小さく、Cuが1.0質量%を越える場合、心材の固相線温度が低下してろう付時に心材が溶融する。従って、心材に含有されるCuの量は、上記範囲内とする。
Mgは、Siと共存することでMg2Siを形成し、ろう付後強度を向上させる。但し、Mgが0.15質量%未満の場合、ろう付後強度を向上させる効果が小さく、Mgが0.5質量%を越える場合、ろう付加熱時にフラックス中に到達するMg量が増えてフラックスの機能が損なわれるため、ろう付性が低下する。従って、心材に含有されるMgの量は、上記範囲内とする。
Tiは、Al合金中でTi−Al系化合物を形成し、層状に分散する。このTi−Al系化合物は電位が貴であるため、腐食形態が層状化して厚さ方向への腐食(孔食)に進展し難くなり、耐食性が向上する。但し、Tiが0.05質量%未満の場合、腐食形態が層状化しないため耐食性を向上させる効果が小さく、Tiが0.25質量%を超える場合、粗大な金属間化合物が形成されて成形性が低下する。従って、心材に含有されるTiの量は、上記範囲内とする。
なお、心材が、例えばCr:0.2質量%以下、Zr:0.2質量%以下、Zn:0.2質量%以下、Fe:0.3質量%以下(いずれも0質量%を超える)の不可避的不純物を含有していても、本発明の効果を妨げるものではない。
実施形態に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、心材内部における粒径0.5μm未満のMg−Si、Al−Mg−Cu、Al−Cu−Mg−Si系金属間化合物の密度を10000個/mm2以上とする。なお、金属間化合物の粒径とは、円相当径のことである。
実施形態に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおける心材内部の金属間化合物の粒径・密度は、熱間圧延後の巻き取り温度を所定の温度とし、かつ、熱間圧延後に所定条件下の焼鈍を1回以上行うことで制御することができる。具体的には以下の通りである。
熱間圧延の巻き取り温度は360℃未満とする。すなわち、熱間圧延後の巻き取り温度が360℃以上の場合、巻き取り後の冷却時に金属間化合物が成長・粗大化して粒径0.5μm未満の金属間化合物が減少するため、粒径0.5μm未満の金属間化合物の密度が10000個/mm2以上とならず、かつ、耐エロージョン性も低下する。
また、熱間圧延後の焼鈍条件は、焼鈍温度を200℃以上450℃以下、焼鈍合計時間を1h以上10h以下、冷却速度を30℃/h超とする。
心材の製造方法は特に限定されない。例えば、前記した合金を用いて心材用アルミニウム合金を造塊し、所定の鋳造温度で鋳造後、鋳塊を所定温度で所定時間均質化熱処理することにより製造することができる。
ろう材としては、Al−Si系合金もしくは、Al−Si−Zn系合金を用い、心材の少なくとも一方の面にクラッドする。ろう材の具体的な組成成分の例としては、以下のような組成成分が挙げられる。
Siが4質量%未満の場合、液相率が低くなってろう付けが不十分となり、Siが12質量%を超える場合、粗大な初晶Siが発生して成形加工時に割れが生じる。従って、ろう材としてAl−Si系合金を用いる場合は、Siを上記範囲内とすることが好ましい。
ろう材の電位を卑化させてろう材に犠牲陽極効果を持たせるため、Al−Si系合金にZnを添加したAl−Si−Zn系合金を用いてもよい。但し、Znが1質量%未満の場合、電位卑化の度合いが小さく犠牲防食が不十分となり、Znは7質量%を超える場合、ろう溜り部にZnが濃縮して優先腐食サイトとなる。従って、ろう材としてAl−Si−Zn系合金を用いる場合は、SiおよびZnを上記範囲内とすることが好ましい。
なお、ろう材が、例えばCr:0.1質量%以下、Fe:0.3質量%以下(いずれも0質量%を超える)の不可避的不純物を含有していても、本発明の効果を妨げるものではない。
ろう材の製造方法は特に限定されない。例えば、前記した合金を用いてろう材用アルミニウム合金を造塊し、所定の鋳造温度で鋳造後、鋳塊を所定温度で所定時間均質化熱処理することにより製造することができる。
ろう材を心材の一方の面にクラッドした場合、犠牲陽極材を他方の面にクラッドする構成としてもよい。この犠牲陽極材としては、Al−Zn系合金、Al−Si−Zn系合金、Al−Mg−Si−Zn系合金を用いることができる。犠牲陽極材の具体的な組成成分の例としては、以下のような組成成分が挙げられる。
Znは、犠牲陽極材の電位を卑化し犠牲陽極効果を持たせる。但し、Znが0.5質量%未満の場合、犠牲防食効果が不十分となり、Znが5.0質量%を超える場合、犠牲陽極材と心材との電位差が大きくなって犠牲陽極材の消耗速度が増すため、十分な耐食性を確保できない。従って、犠牲陽極材としてAl−Zn系合金を用いる場合は、Znを上記範囲内とすることが好ましい。
Siは、犠牲陽極材の強度を高める働きをする。但し、Siが0.1質量%未満の場合、強度を向上させる効果が不十分となり、Siが1.0質量%を超える場合、犠牲陽極材の固相線温度が低下し、ろう付加熱時に溶融する。また、Znが1.0質量%未満の場合、犠牲防食効果が不十分となり、Znが6.0質量%を超える場合、犠牲陽極材と心材との電位差が大きくなって犠牲陽極材の消耗速度が増すため、十分な耐食性を確保できない。従って、犠牲陽極材としてAl−Si−Zn系合金を用いる場合は、SiおよびZnを上記範囲内とすることが好ましい。
Mgは、Siと共存することで、Mg2Siを形成し、ろう付後強度を向上させる。但し、Mgが1.0質量%未満の場合、ろう付後強度を向上させる効果が不十分であり、Mgが4.0質量%を超える場合、犠牲陽極材の固相線温度が低下してろう付加熱時に溶融する。また、Siが0.1質量%未満の場合、強度を向上させる効果が不十分となり、Siが1.0質量%を超える場合、犠牲陽極材の固相線温度が低下してろう付加熱時に溶融する。また、Znが1.0質量%未満の場合、犠牲防食効果が不十分となり、Znが6.0質量%を超える場合、犠牲陽極材と心材との電位差が大きくなって犠牲陽極材の消耗速度が増すため、十分な耐食性を確保できない。従って、犠牲陽極材としてAl−Mg−Si−Zn系合金を用いる場合は、Mg,SiおよびZnを上記範囲内とすることが好ましい。
なお、犠牲陽極材が、例えばCr:0.1質量%以下、Zr:0.2質量%以下、Fe:0.3質量%以下(いずれも0質量%を超える)の不可避的不純物を含有していても、本発明の効果を妨げるものではない。
犠牲陽極材の製造方法は特に限定されない。例えば、前記した合金を用いて犠牲陽極材用アルミニウム合金を造塊し、所定の鋳造温度で鋳造後、鋳塊を所定温度で所定時間均質化熱処理することにより製造することができる。
実施形態に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、前記したように、心材の少なくとも一方の面にろう材がクラッドされた二層あるいは三層のシートである。また、実施形態に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、前記したように、心材の一方の面にろう材をクラッドし、心材の他方の面に犠牲陽極材をクラッドした三層のシートとすることもできる。
実施形態に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、前記した製造方法で製造した心材、ろう材および犠牲陽極材を組み合わせることで製造することができる。例えば、心材にろう材または犠牲陽極材を重ねて熱間圧延を行ない、所定の巻き取り温度でコイルに巻き取った後、冷間圧延、中間焼鈍、冷間圧延を施すことにより製造することができる。また、熱間圧延後、所定の巻き取り温度でコイルに巻き取った後、冷間圧延、最終焼鈍を施すことにより製造することもできる。さらに、熱間圧延後、所定の巻き取り温度でコイルに巻き取った後、冷間圧延、中間焼鈍、冷間圧延、最終焼鈍等を施すことにより製造することもできる。ろう材および犠牲陽極材のクラッド率は、5〜25%の範囲、例えば15%前後とすることが好ましい。
表1に示す組成を有するA1〜A24の心材、Al−10質量%Si合金もしくはAl−8質量%Si−2質量%Zn合金ろう材、Al−4質量%Zn合金の犠牲陽極材をDC鋳造により造塊し、各々所望の厚さまで両面を面削した。そして、ろう材および犠牲陽極材にはそれぞれ均質化処理を施し、ろう材−心材−犠牲陽極材の順で組み合わせて530℃×4hの加熱を施した後、3.0mm厚まで熱間圧延し、表3に示す熱延後巻き取り温度でコイルに巻き取った。なお、ろう材および犠牲陽極材のクラッド率は15%とした。
金属間化合物の密度は、心材のL−LT面をST方向に心材中央部まで両面から研磨し、透過型電子顕微鏡を用いた観察によって測定した。観察箇所は、等厚干渉縞から観察部の膜厚を測定し、膜厚が0.1〜0.3μmである箇所のみとした。そして、各サンプルを10視野ずつ20000倍で観察し、それぞれの視野でのTEM写真を画像解析することで、ろう付後の粒径0.5μm未満の金属間化合物の密度を求め、各10視野から求めた値を平均することで、金属間化合物の密度を測定した。
ろう付後強度は、供試材を600℃×3分間のろう付けを模した条件で加熱処理した後に室温で7日間保持し、引張方向が圧延方向と平行となるように、JIS5号試験片に加工し、室温で引張試験を実施することにより測定した。そして、引張強さが160MPa以上のものを良好「○」と評価し、引張強さが160MPa未満のものを不良「×」と評価した。また、加熱処理後に心材が溶解して評価不能であったものを評価不能「−」と評価した。
ろう付性は、「アルミニウムブレージングハンドブック 改訂版(竹本正ら著、軽金属溶接構造協会、2003年3月発行)」の132〜136頁に記載されている評価方法により評価した。すなわち、水平に置いた下板(3003Al合金板(厚さ1.0mm×縦幅25mm×横幅60mm))と、この下板に対して垂直に立てて配置した上板(供試材(厚さ0.3mm×縦幅25mm×横幅55mm))との間に、φ2mmのステンレス製スペーサを挟んで、一定のクリアランスを設定した。また、上板の供試材のろう材面側にフラックス(森田化学工業株製FL−7)を5g/m2塗布した。そして、間隙充填長さが15mm以上のものを良好「○」と評価し、間隙充填長さが15mm未満を不良「×」と評価した。
成形性は、供試材を加熱処理する前に、ろう材面側に張り出すように、「JIS Z 2247」によりエリクセン試験を行い、張り出し高さを測定することにより評価した。そして、張り出し高さが8mm以下のものを良好「○」と評価し、張り出し高さが8mm未満のものを不良「×」と評価した。
耐食性は、供試材を600℃×3分間のろう付けを模した条件で加熱処理した後に、犠牲陽極材側を試験面として、3ヶ月間OY水浸漬試験を行い、腐食深さを測定することにより評価した。そして、腐食深さが40μm未満のものを良好「○」と評価し、腐食深さが40μm以上のものを不良「×」と評価した。
ろう付後心材結晶粒径は、600℃×3分間のろう付けを模した条件で加熱処理をした後に、好適な大きさに切断した後、L−ST面を研磨するとともに電解液でエッチングし、研磨面を100倍で写真撮影して観察し、心材の圧延方向の結晶粒径を切片法により測定した。なお、結晶粒径は5箇所の平均値とした。そして、ろう付後心材結晶粒径が120μm以上のものを最も良好「◎」と評価し、ろう付後心材結晶粒径が100μm以上120μm未満のものを良好「○」と評価し、ろう付後心材結晶粒径が100μm未満のものを不良「×」と評価した。
耐エロージョン性の評価は、ろう付後供試材を切り出し、樹脂に埋め込んで断面を研磨し、その研磨面を光学顕微鏡にて心材へのろうの侵食度合い(エロージョン度合い)を観察することで行った。そして、心材残存率(ろう付相当加熱後におけるエロージョン最悪部の心材残存厚/加熱前の心材厚×100)が70%以上のものを良好「○」と評価し、心材残存率が70%未満のものを不良「×」と評価した。
Claims (2)
- 心材の少なくとも一方の面に、Al−Si系もしくはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドしたアルミニウム合金ブレージングシートであって、
前記心材は、Si:0.3〜1.0質量%、Mn:0.6〜2.0質量%、Cu:0.3〜1.0質量%、Mg:0.15〜0.5質量%、Ti:0.05〜0.25質量%を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなり、
前記心材内部における粒径0.5μm未満のMg−Si系、Al−Mg−Cu系、Al−Cu−Mg−Si系金属間化合物の密度が10000個/mm2以上であることを特徴とするアルミニウム合金ブレージングシート。 - 心材の一方の面にAl−Si系もしくはAl−Si−Zn系ろう材をクラッドし、前記心材の他方の面に犠牲陽極材をクラッドしたアルミニウム合金ブレージングシートであって、
前記心材は、Si:0.3〜1.0質量%、Mn:0.6〜2.0質量%、Cu:0.3〜1.0質量%、Mg:0.15〜0.5質量%、Ti:0.05〜0.25質量%を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなり、
前記心材内部における粒径0.5μm未満のMg−Si系、Al−Mg−Cu系、Al−Cu−Mg−Si系金属間化合物の密度が10000個/mm2以上であることを特徴とするアルミニウム合金ブレージングシート。
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