JP2011231358A - 燃料蒸気に対する耐食性を有するパイプ製造用めっき鋼板、そのめっき鋼板を用いたパイプ及び給油パイプ - Google Patents
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Abstract
【課題】ガソリン、軽油、バイオエタノール、バイオディーゼル燃料などの燃料蒸気に対する耐食性を有するパイプ製造用めっき鋼板、パイプ及び給油パイプを提供する。
【解決手段】鋼板の表面にZn、Co及びMoを含有するめっき層を有しており、前記めっき層中におけるZnに対するCoの組成割合が、0.2〜4.0at%(原子濃度)とすることを特徴とする、燃料蒸気に対する耐食性を有するパイプ製造用めっき鋼板。
鋼板からなるパイプの内面に、Zn、Co及びMoを含有するめっき層を有していることを特徴とする、燃料蒸気に対する耐食性を有するパイプ。
燃料を燃料タンク23に給油するための給油パイプ20であって、燃料が通過する太径パイプ部21と、太径パイプ部の上部と下部とを通気する細径パイプ部22とを有し、少なくとも太径パイプ部の内面に、Znに対するCoの組成割合が、0.2〜4.0at%であるZn、Co及びMoを含有するめっき層を有している給油パイプ。
【選択図】図1
【解決手段】鋼板の表面にZn、Co及びMoを含有するめっき層を有しており、前記めっき層中におけるZnに対するCoの組成割合が、0.2〜4.0at%(原子濃度)とすることを特徴とする、燃料蒸気に対する耐食性を有するパイプ製造用めっき鋼板。
鋼板からなるパイプの内面に、Zn、Co及びMoを含有するめっき層を有していることを特徴とする、燃料蒸気に対する耐食性を有するパイプ。
燃料を燃料タンク23に給油するための給油パイプ20であって、燃料が通過する太径パイプ部21と、太径パイプ部の上部と下部とを通気する細径パイプ部22とを有し、少なくとも太径パイプ部の内面に、Znに対するCoの組成割合が、0.2〜4.0at%であるZn、Co及びMoを含有するめっき層を有している給油パイプ。
【選択図】図1
Description
本発明は、燃料蒸気に対して耐食性を有する表面処理鋼板、パイプに関する。
近年、温室効果ガス削減のため、カーボンニュートラルとされるバイオエタノールをガソリンに混合したいわゆるバイオエタノール混合ガソリンを使用する動きが活発化している。しかしながら、ガソリンにエタノールを添加すると、ガソリンが吸湿しやすくなり、燃料タンク内に水が混入することが考えられる。
さらに、エタノール混合ガソリンを長期間放置したままであると、ガソリンが劣化しガソリン内に有機酸が形成される。
このように、吸湿状態とガソリンの劣化が発生した場合、エタノールは水とガソリンの両方に混合できるため、ガソリン内部に水と有機酸が含まれた状態になり、ガソリン表面から水と有機酸の混合物が気化することがある。
その場合には、通常は腐食性の殆ど無いガソリン蒸気にしか接触しないパイプの内面が、強い腐食環境下にさらされる。
よって、バイオエタノール混合ガソリンの雰囲気下に置かれるパイプにも、腐食環境を想定した耐食性が求められる。
これらの腐食環境に対応するものとして、例えば、特許文献1には、めっき付着量が10〜70g/m2、Sn−1〜50%ZnであるSn−Zn合金めっき面に、付着量がCr換算で100mg/m2以下であるクロム酸、シリカ、無機リン酸や有機リン酸からなるクロメート被膜を処理、或いは更に有機樹脂を含有した樹脂クロメート被膜を処理した鋼板を用い、フランジを有する一対の椀型成型体のフランジ部を連続的にシーム溶接して一体とした耐食性に優れた自動車用燃料容器が記載されている。
さらに、エタノール混合ガソリンを長期間放置したままであると、ガソリンが劣化しガソリン内に有機酸が形成される。
このように、吸湿状態とガソリンの劣化が発生した場合、エタノールは水とガソリンの両方に混合できるため、ガソリン内部に水と有機酸が含まれた状態になり、ガソリン表面から水と有機酸の混合物が気化することがある。
その場合には、通常は腐食性の殆ど無いガソリン蒸気にしか接触しないパイプの内面が、強い腐食環境下にさらされる。
よって、バイオエタノール混合ガソリンの雰囲気下に置かれるパイプにも、腐食環境を想定した耐食性が求められる。
これらの腐食環境に対応するものとして、例えば、特許文献1には、めっき付着量が10〜70g/m2、Sn−1〜50%ZnであるSn−Zn合金めっき面に、付着量がCr換算で100mg/m2以下であるクロム酸、シリカ、無機リン酸や有機リン酸からなるクロメート被膜を処理、或いは更に有機樹脂を含有した樹脂クロメート被膜を処理した鋼板を用い、フランジを有する一対の椀型成型体のフランジ部を連続的にシーム溶接して一体とした耐食性に優れた自動車用燃料容器が記載されている。
しかし、上記特許文献1記載の自動車用燃料容器に用いられる素材は、ガソリンなどの自動車用燃料に浸漬され、直接自動車燃料と接触する燃料タンクのような部分の耐食性であり、蒸気に対する耐食性ではない。
例えば、給油管のように燃料タンクに接続されるパイプは、実際の使用環境として、自動車用燃料に直接暴露されることよりも、揮発性の高い自動車燃料の蒸気に暴露されるケースの方が圧倒的に多い。
また、国際的に化石燃料の枯渇化が深刻化しており、バイオエタノールやバイオディーゼル燃料などの普及が広まっている。
このように、従来の自動車燃料であるガソリンに加え、バイオエタノールやバイオディーゼル燃料及びその蒸気の両方に対して十分な特性を有する素材が求められていた。
そこで、本発明の目的は、上記の従来の課題を解決することであり、自動車燃料、特にガソリン、軽油、バイオエタノール、又はバイオディーゼル燃料などの燃料蒸気に対して十分な耐食性を有する、燃料蒸気に対する耐食性を有するパイプ製造用めっき鋼板を提供することである。
また、本発明の他の目的は、そのめっき鋼板を用いたパイプ及び給油パイプを提供することである。
例えば、給油管のように燃料タンクに接続されるパイプは、実際の使用環境として、自動車用燃料に直接暴露されることよりも、揮発性の高い自動車燃料の蒸気に暴露されるケースの方が圧倒的に多い。
また、国際的に化石燃料の枯渇化が深刻化しており、バイオエタノールやバイオディーゼル燃料などの普及が広まっている。
このように、従来の自動車燃料であるガソリンに加え、バイオエタノールやバイオディーゼル燃料及びその蒸気の両方に対して十分な特性を有する素材が求められていた。
そこで、本発明の目的は、上記の従来の課題を解決することであり、自動車燃料、特にガソリン、軽油、バイオエタノール、又はバイオディーゼル燃料などの燃料蒸気に対して十分な耐食性を有する、燃料蒸気に対する耐食性を有するパイプ製造用めっき鋼板を提供することである。
また、本発明の他の目的は、そのめっき鋼板を用いたパイプ及び給油パイプを提供することである。
(1)本発明の燃料蒸気に対する耐食性を有するパイプ製造用めっき鋼板は、
鋼板の表面にZn、Co及びMoを含有するめっき層を有しており、前記めっき層中におけるZnに対するCoの組成割合が、0.2〜4.0at%(原子濃度)とすることを特徴とする。なお、本発明においては表面処理鋼板が前記Zn、Co及びMoを含有するめっき層を有すれば本発明の耐食性の効果を得られるため、鋼板と前記Zn、Co及びMoを含有するめっき層との間に金属層を下層として設けた上に前記Zn、Co及びMoを含有するめっき層を設けてもよく、また前記Zn、Co及びMoを含有するめっき層を設けた上に金属層を上層として設けてもよい。
(2)本発明の燃料蒸気に対する耐食性を有するパイプ製造用めっき鋼板は、前記(1)において、
前記燃料が、ガソリン、軽油、バイオエタノール、又はバイオディーゼル燃料を含むことを特徴とする。
(3)本発明の燃料蒸気に対する耐食性を有するパイプは、
鋼板からなるパイプの内面に、Zn、Co及びMoを含有するめっき層を有していることを特徴とする。
(4)本発明の燃料蒸気に対する耐食性を有するパイプは、前記(3)において、
前記燃料が、ガソリン、軽油、バイオエタノール、又はバイオディーゼル燃料を含むことを特徴とする。
(5)本発明の燃料蒸気に対する耐食性を有する給油パイプは、
燃料を燃料タンクに給油するための給油パイプであって、
燃料が通過する太径パイプ部と、
太径パイプ部の上部と下部とを通気する細径パイプ部とを有し、
少なくとも前記太径パイプ部の内面に、
Znに対するCoの組成割合が、0.2〜4.0at%(原子濃度)であるZn、Co及びMoを含有するめっき層を有していることを特徴とする燃料蒸気に対する耐食性を有することを特徴とする。
(6)本発明の燃料蒸気に対する耐食性を有する給油パイプは、前記(5)において、
前記燃料が、ガソリン、軽油、バイオエタノール、又はバイオディーゼル燃料を含むことを特徴とする。
鋼板の表面にZn、Co及びMoを含有するめっき層を有しており、前記めっき層中におけるZnに対するCoの組成割合が、0.2〜4.0at%(原子濃度)とすることを特徴とする。なお、本発明においては表面処理鋼板が前記Zn、Co及びMoを含有するめっき層を有すれば本発明の耐食性の効果を得られるため、鋼板と前記Zn、Co及びMoを含有するめっき層との間に金属層を下層として設けた上に前記Zn、Co及びMoを含有するめっき層を設けてもよく、また前記Zn、Co及びMoを含有するめっき層を設けた上に金属層を上層として設けてもよい。
(2)本発明の燃料蒸気に対する耐食性を有するパイプ製造用めっき鋼板は、前記(1)において、
前記燃料が、ガソリン、軽油、バイオエタノール、又はバイオディーゼル燃料を含むことを特徴とする。
(3)本発明の燃料蒸気に対する耐食性を有するパイプは、
鋼板からなるパイプの内面に、Zn、Co及びMoを含有するめっき層を有していることを特徴とする。
(4)本発明の燃料蒸気に対する耐食性を有するパイプは、前記(3)において、
前記燃料が、ガソリン、軽油、バイオエタノール、又はバイオディーゼル燃料を含むことを特徴とする。
(5)本発明の燃料蒸気に対する耐食性を有する給油パイプは、
燃料を燃料タンクに給油するための給油パイプであって、
燃料が通過する太径パイプ部と、
太径パイプ部の上部と下部とを通気する細径パイプ部とを有し、
少なくとも前記太径パイプ部の内面に、
Znに対するCoの組成割合が、0.2〜4.0at%(原子濃度)であるZn、Co及びMoを含有するめっき層を有していることを特徴とする燃料蒸気に対する耐食性を有することを特徴とする。
(6)本発明の燃料蒸気に対する耐食性を有する給油パイプは、前記(5)において、
前記燃料が、ガソリン、軽油、バイオエタノール、又はバイオディーゼル燃料を含むことを特徴とする。
本発明の燃料蒸気に対する耐食性を有するパイプ製造用めっき鋼板、そのめっき鋼板を用いたパイプ及び給油パイプは、燃料であるガソリン、軽油、バイオエタノール、又はバイオディーゼル燃料などの燃料蒸気に暴露されても、発錆を抑え、燃料自体の劣化を抑制する。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
<鋼板>
パイプ製造用めっき鋼板の原板としては、通常低炭素アルミキルド熱延コイルが用いられる。
また、炭素0.003質量%以下の極低炭素鋼、または更にこれにニオブ、チタンを添加し非時効連続鋳造鋼から製造されたコイルも用いられる。
<鋼板>
パイプ製造用めっき鋼板の原板としては、通常低炭素アルミキルド熱延コイルが用いられる。
また、炭素0.003質量%以下の極低炭素鋼、または更にこれにニオブ、チタンを添加し非時効連続鋳造鋼から製造されたコイルも用いられる。
<めっき前処理>
Zn、Co、及びMoを含有するめっきの前処理としては、通常苛性ソーダを主剤としたアルカリ液に電解または浸漬による脱脂を行い、冷延鋼板表面のスケール(酸化膜)を除去する。除去後、冷間圧延工程にて製品厚みまで圧延する。
Zn、Co、及びMoを含有するめっきの前処理としては、通常苛性ソーダを主剤としたアルカリ液に電解または浸漬による脱脂を行い、冷延鋼板表面のスケール(酸化膜)を除去する。除去後、冷間圧延工程にて製品厚みまで圧延する。
<焼鈍>
圧延で付着した圧延油を電解洗浄した後、焼鈍する。焼鈍は、連続焼鈍あるいは箱型焼鈍のどちらでもよく特にこだわらない。焼鈍した後、形状修正する。
圧延で付着した圧延油を電解洗浄した後、焼鈍する。焼鈍は、連続焼鈍あるいは箱型焼鈍のどちらでもよく特にこだわらない。焼鈍した後、形状修正する。
<Zn、Co、及びMoを含有するめっき>
次に、Zn、Co、及びMoを含有する層をめっきにより形成する。
本発明において、Zn、Co、及びMoを含有するめっき層を得るためには、Co組成割合を制御することが重要である。その場合のめっき条件は以下のとおりである。
すなわち、
めっき浴組成:
硫酸亜鉛180〜280g/L、
硫酸コバルト0〜100g/L、
モリブデン酸アンモニウム0.01〜0.4g/L、
硫酸アンモニウム10〜40g/L、
硫酸ナトリウム20〜50g/L、
pH:2.7〜3.7、
浴温:30〜50℃、
電流密度:5〜50A/dm2、
とする。
次に、Zn、Co、及びMoを含有する層をめっきにより形成する。
本発明において、Zn、Co、及びMoを含有するめっき層を得るためには、Co組成割合を制御することが重要である。その場合のめっき条件は以下のとおりである。
すなわち、
めっき浴組成:
硫酸亜鉛180〜280g/L、
硫酸コバルト0〜100g/L、
モリブデン酸アンモニウム0.01〜0.4g/L、
硫酸アンモニウム10〜40g/L、
硫酸ナトリウム20〜50g/L、
pH:2.7〜3.7、
浴温:30〜50℃、
電流密度:5〜50A/dm2、
とする。
上記めっき条件において形成されたZn、Co、及びMoを含有するめっき層中において、Znに対するCoの組成割合は、0.2〜4.0at%(原子濃度、以下at%は原子濃度をいう)の範囲にすることが好ましい。
また、Zn、Co、及びMoを含有するめっき層の厚みは、2.0〜8.0μmとすることが好ましい。このようなめっき厚の調整は、前記めっき浴組成、pH、浴温、電流密度等を好適な範囲に調整することによって実現できる。
Zn、Co、及びMoを含有するめっき層の組成割合としては、
Co:0.2〜4.0at%、
Mo:0.001〜1at%、
残部Znとすることが好ましい。
Zn、Co、及びMoを含有するめっき層中のCoの組成割合が0.2at%未満の場合、気相部の十分な耐食性を得ることはできない。
また、Zn、Co、及びMoを含有するめっきのCoの組成割合が4.0at%を超える場合、平板でのめっき層では耐食性は得られるが、皮膜の硬質化により、加工性が低下しパイプ加工時に割れが発生し、気相部の十分な耐食性を得ることはできない。
このようなめっき層中における組成割合の調整は、前記めっき浴組成、pH、浴温、電流密度等を好適な範囲に調整することによって実現できる。
また、Zn、Co、及びMoを含有するめっき層の厚みは、2.0〜8.0μmとすることが好ましい。このようなめっき厚の調整は、前記めっき浴組成、pH、浴温、電流密度等を好適な範囲に調整することによって実現できる。
Zn、Co、及びMoを含有するめっき層の組成割合としては、
Co:0.2〜4.0at%、
Mo:0.001〜1at%、
残部Znとすることが好ましい。
Zn、Co、及びMoを含有するめっき層中のCoの組成割合が0.2at%未満の場合、気相部の十分な耐食性を得ることはできない。
また、Zn、Co、及びMoを含有するめっきのCoの組成割合が4.0at%を超える場合、平板でのめっき層では耐食性は得られるが、皮膜の硬質化により、加工性が低下しパイプ加工時に割れが発生し、気相部の十分な耐食性を得ることはできない。
このようなめっき層中における組成割合の調整は、前記めっき浴組成、pH、浴温、電流密度等を好適な範囲に調整することによって実現できる。
<評価方法>
種々のCo組成割合にした、Zn、Co、及びMoを含有するめっき層を設けた鋼板から評価試験片を作製し、バイオエタノール混合ガソリンに浸漬させることにより耐食性を調査した。耐食性は発錆の有無で確認した。
バイオエタノール混合ガソリンを試験的に模した腐食液を使用した。
JIS K2202に規定されているレギュラーガソリンに、ギ酸、酢酸を添加し、JASO M361に規定されているバイオエタノールを10質量%添加し、模擬的な劣化ガソリンを精製した。
更に腐食性を高めることを目的に、純水にギ酸、酢酸、塩素を添加した腐食水を作製し、劣化ガソリンに10質量%添加して腐食液とした。
腐食液は、上層が劣化ガソリン、下層が腐食水の2層に分かれた状態となる。
この腐食液に各Co組成割合のZn、Co、及びMoを含有するめっき層を設けた評価試験片が半分浸漬するように密閉容器中に配置し、45℃の恒温槽にて経時した。
これにより、図2に示すように、評価試験片は、上部より、劣化ガソリンの燃料蒸気(気相)と接触した気相部11、劣化ガソリン(液相)と接触した液相部12,腐食水(水相)と接触した水相部13に分離されて評価されることになる。
そして、評価試験片の気相部11の腐食を調査することにより、評価試験片の燃料蒸気に対する耐食性を評価した。
多くの実験結果から、Zn、Co、及びMoを含有するめっき層のCo組成割合を、0.2〜4.0at%の範囲とした評価試験片の気相部での発錆が抑制されることが分かった。
種々のCo組成割合にした、Zn、Co、及びMoを含有するめっき層を設けた鋼板から評価試験片を作製し、バイオエタノール混合ガソリンに浸漬させることにより耐食性を調査した。耐食性は発錆の有無で確認した。
バイオエタノール混合ガソリンを試験的に模した腐食液を使用した。
JIS K2202に規定されているレギュラーガソリンに、ギ酸、酢酸を添加し、JASO M361に規定されているバイオエタノールを10質量%添加し、模擬的な劣化ガソリンを精製した。
更に腐食性を高めることを目的に、純水にギ酸、酢酸、塩素を添加した腐食水を作製し、劣化ガソリンに10質量%添加して腐食液とした。
腐食液は、上層が劣化ガソリン、下層が腐食水の2層に分かれた状態となる。
この腐食液に各Co組成割合のZn、Co、及びMoを含有するめっき層を設けた評価試験片が半分浸漬するように密閉容器中に配置し、45℃の恒温槽にて経時した。
これにより、図2に示すように、評価試験片は、上部より、劣化ガソリンの燃料蒸気(気相)と接触した気相部11、劣化ガソリン(液相)と接触した液相部12,腐食水(水相)と接触した水相部13に分離されて評価されることになる。
そして、評価試験片の気相部11の腐食を調査することにより、評価試験片の燃料蒸気に対する耐食性を評価した。
多くの実験結果から、Zn、Co、及びMoを含有するめっき層のCo組成割合を、0.2〜4.0at%の範囲とした評価試験片の気相部での発錆が抑制されることが分かった。
<パイプ加工>
上記Zn、Co、及びMoを含有するめっき層を形成しためっき鋼板を使用し、レベラーにより形状修正し、スリッターで所定の外寸径にスリットした後、成形機によりパイプ状に造管し、長手方向の端面同士を高周波誘導溶接によりシーム溶接することによりパイプを製造する。
パイプとしては、燃料をタンクに導入する給油パイプやタンクからエンジンに燃料を導入するパイプや、通気を行うパイプがある。
給油パイプ20の燃料タンク23への取り付けは、図3(a)に示すように、給油パイプ20の燃料タンク23への取り付けは、燃料タンク23の上部から斜め上方向へ延出させた。
また、給油パイプ20には、燃料が通過する太径パイプ部21の途中から分岐をさせて、太径パイプ部21の上部と下部とを通気する細径パイプ部22を接続した。
太径パイプ部21を本発明のめっき鋼板を用いて製造する。なお、細径パイプ部22も本発明のめっき鋼板を用いて製造してもよい。
なお、本発明で規定する給油パイプ20は、図3(a)に示すような形状に限らず、例えば、図3(b)に示すように、燃料が通過する太径パイプ部21とは、独立した形状で細径パイプ部22が燃料タンク23に取り付けられているものであっても、燃料蒸気に対する耐食性が特に要求されることに変わりはないので、これらの形態のものも含む。
上記Zn、Co、及びMoを含有するめっき層を形成しためっき鋼板を使用し、レベラーにより形状修正し、スリッターで所定の外寸径にスリットした後、成形機によりパイプ状に造管し、長手方向の端面同士を高周波誘導溶接によりシーム溶接することによりパイプを製造する。
パイプとしては、燃料をタンクに導入する給油パイプやタンクからエンジンに燃料を導入するパイプや、通気を行うパイプがある。
給油パイプ20の燃料タンク23への取り付けは、図3(a)に示すように、給油パイプ20の燃料タンク23への取り付けは、燃料タンク23の上部から斜め上方向へ延出させた。
また、給油パイプ20には、燃料が通過する太径パイプ部21の途中から分岐をさせて、太径パイプ部21の上部と下部とを通気する細径パイプ部22を接続した。
太径パイプ部21を本発明のめっき鋼板を用いて製造する。なお、細径パイプ部22も本発明のめっき鋼板を用いて製造してもよい。
なお、本発明で規定する給油パイプ20は、図3(a)に示すような形状に限らず、例えば、図3(b)に示すように、燃料が通過する太径パイプ部21とは、独立した形状で細径パイプ部22が燃料タンク23に取り付けられているものであっても、燃料蒸気に対する耐食性が特に要求されることに変わりはないので、これらの形態のものも含む。
以下に実施例を用いて、本発明を更に詳細に説明する。
<実施例1>
板厚0.70mmの、冷延、焼鈍済みの低炭素アルミキルド鋼板を原板とした。
めっき原板である鋼板の成分は以下のとおりである。
C:0.045質量%、Mn:0.23質量%、Si:0.02質量%、P:0.012質量%、S:0.009質量%、Al:0.063質量%、N:0.0036質量%、残部:Fe及び不可避的不純物である。
この鋼板を、アルカリ電解脱脂、硫酸浸漬の酸洗を行った後、4.2μm厚のZn、Co、及びMoを含有するめっき層を設けためっき鋼板を得た。
形成されたZn、Co、及びMoを含有するめっき層の組成割合は、Znに対しCoの組成割合が0.2at%、Moの組成割合が0.01at%であった。
なお、めっき層中の組成割合はリガク製蛍光X線装置(ZSX 100e)を使用し、EZスキャンにより測定した。めっき厚の測定にも前記蛍光X線装置を用いた。
<実施例1>
板厚0.70mmの、冷延、焼鈍済みの低炭素アルミキルド鋼板を原板とした。
めっき原板である鋼板の成分は以下のとおりである。
C:0.045質量%、Mn:0.23質量%、Si:0.02質量%、P:0.012質量%、S:0.009質量%、Al:0.063質量%、N:0.0036質量%、残部:Fe及び不可避的不純物である。
この鋼板を、アルカリ電解脱脂、硫酸浸漬の酸洗を行った後、4.2μm厚のZn、Co、及びMoを含有するめっき層を設けためっき鋼板を得た。
形成されたZn、Co、及びMoを含有するめっき層の組成割合は、Znに対しCoの組成割合が0.2at%、Moの組成割合が0.01at%であった。
なお、めっき層中の組成割合はリガク製蛍光X線装置(ZSX 100e)を使用し、EZスキャンにより測定した。めっき厚の測定にも前記蛍光X線装置を用いた。
<実施例2〜7、比較例1〜6>
Zn、Co、及びMoを含有するめっき層中のCoの組成割合を、表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜7、比較例1〜6のめっき鋼板を得た。
Zn、Co、及びMoを含有するめっき層中のCoの組成割合を、表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜7、比較例1〜6のめっき鋼板を得た。
<評価>
実施例、比較例の各めっき鋼板から評価試験片を作製し、45℃の恒温槽にて2000時間経時させた後に、各Co組成割合のZn、Co、及びMoを含有するめっき層を設けた評価試験片の外観を観察し、赤錆発生を調査した。
この結果を表1の「気相部の発錆発生結果」に示す。
実施例、比較例の各めっき鋼板から評価試験片を作製し、45℃の恒温槽にて2000時間経時させた後に、各Co組成割合のZn、Co、及びMoを含有するめっき層を設けた評価試験片の外観を観察し、赤錆発生を調査した。
この結果を表1の「気相部の発錆発生結果」に示す。
本発明の実施例1〜7のZn、Co、及びMoを含有するめっき層を設けためっき鋼板は、表1から明らかなように、赤錆の発生が無く、めっき外観も良好でありパイプ製造用めっき鋼板として優れていた。
一方、比較例1〜4のめっき鋼板は、赤錆が発生し、耐食性が要求されるパイプ製造用めっき鋼板として実用性に乏しい。
一方、比較例1〜4のめっき鋼板は、赤錆が発生し、耐食性が要求されるパイプ製造用めっき鋼板として実用性に乏しい。
本発明のパイプ製造用めっき鋼板は、燃料であるガソリン、軽油、バイオエタノール、又は、バイオディーゼル燃料などの燃料蒸気への暴露において発錆発生を抑え、燃料自体の劣化も抑えることが可能である。
また、本発明のパイプ製造用めっき鋼板を用いたパイプ及び給油パイプは、燃料蒸気に対する耐食性が優れており、産業上の利用可能性が極めて高い。
また、本発明のパイプ製造用めっき鋼板を用いたパイプ及び給油パイプは、燃料蒸気に対する耐食性が優れており、産業上の利用可能性が極めて高い。
11:気相部
12:液相部
13:水相部
20:給油パイプ
21:太径パイプ部
22:細径パイプ部
23:燃料タンク
12:液相部
13:水相部
20:給油パイプ
21:太径パイプ部
22:細径パイプ部
23:燃料タンク
Claims (6)
- 鋼板の表面にZn、Co及びMoを含有するめっき層を有しており、前記めっき層中におけるZnに対するCoの組成割合が、0.2〜4.0at%(原子濃度)とすることを特徴とする、燃料蒸気に対する耐食性を有するパイプ製造用めっき鋼板。
- 前記燃料が、ガソリン、軽油、バイオエタノール、又はバイオディーゼル燃料を含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料蒸気に対する耐食性を有するパイプ製造用めっき鋼板。
- 鋼板からなるパイプの内面に、Zn、Co及びMoを含有するめっき層を有していることを特徴とする、燃料蒸気に対する耐食性を有するパイプ。
- 前記燃料が、ガソリン、軽油、バイオエタノール、又はバイオディーゼル燃料を含むことを特徴とする請求項3に記載の燃料蒸気に対する耐食性を有するパイプ。
- 燃料を燃料タンクに給油するための給油パイプであって、
燃料が通過する太径パイプ部と、
太径パイプ部の上部と下部とを通気する細径パイプ部とを有し、
少なくとも前記太径パイプ部の内面に、
Znに対するCoの組成割合が、0.2〜4.0at%(原子濃度)であるZn、Co及びMoを含有するめっき層を有していることを特徴とする燃料蒸気に対する耐食性を有する給油パイプ。 - 前記燃料が、ガソリン、軽油、バイオエタノール、又はバイオディーゼル燃料を含むことを特徴とする請求項5に記載の燃料蒸気に対する耐食性を有する給油パイプ。
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