以下、本発明の実施の形態の無線基地局装置及び端末装置について、図面を参照しながら説明する。
ここで、以後の説明において、同じ構成要素を複数個有する構成部、又はユニット、又は装置は、説明上、どの構成部又はユニット又は装置であるかを示す必要の無い場合は、同一の番号を用いることとし、複数個の各構成部又は各ユニット又は各装置のそれぞれに番号を付さなければ説明が分りにくくなる場合は、第1の番号の後にハイフンを付け第2の番号を付すこととする。
例えば、どの装置であるかを明示しなくとも説明が通じる場合は、端末装置2と呼ぶこととし、説明がわかりにくくなる場合は、端末装置2−1、2−2、2−sのように呼ぶものとする。
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態の無線基地局装置及び端末装置を図1に示す。図1において、端末装置2−1〜2−sはそれぞれ、複数のアンテナ20−1〜20−j、複数のアンテナ20−1〜20−k、複数のアンテナ20−1〜20−sを有しているが、1つのアンテナのみでもよい。端末装置の受信側において、複数のアンテナを有する端末装置の詳細な構成図を図2(a)に、1つのアンテナのみを有する端末装置の詳細な構成図を図2(b)にそれぞれ示す。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る無線基地局装置1及び端末装置2−1〜2−sの構成を示す図である。以下、本実施の形態においては、無線基地局装置1から端末装置2−1〜2−sに向けての送信(以下、ダウンリンクと呼ぶ)において、Ns個の空間
ストリームをs個の端末装置に向けて送信する場合の説明を行う(ここで、Ns≧sで、Nsは自然数である)。
図1において、本発明の実施の形態の無線基地局装置1は、空間多重伝送を行うべき対象となる端末装置2−1〜2−s向けの送信データ系列を生成する送信信号生成部3−1〜3−sと、端末装置2−1〜2−sからの受信信号から、ダウンリンクの推定チャネル情報を抽出するチャネル情報取得部4と、送信ウエイトを決定するウエイト決定部であり、複数の異なる生成アルゴリズムに基づいて送信ウエイト情報を生成する送信ウエイト生成部6−1〜6−nと、送信ウエイト生成部6−1〜6−nで生成された複数の送信ウエイト情報群の中から最適な送信ウエイト情報を選択するビーム選択部7とからなる送信ウエイト決定部5と、選択された送信ウエイト情報を基に、各空間ストリームの送信電力を決定し、送信電力制御情報を送出する送信電力決定部8と、特定の送信ビームを形成する為に、選択された送信ウエイト情報を用い各送信データ系列に対して送信ウエイトを乗算し、乗算した信号を高周波信号に変換する送信ビーム形成部9と、送信電力決定部8によって決定された各空間ストリームの送信電力制御情報に基づいて、送信信号生成部3−1〜3−sの出力信号に対して所定の電力係数を乗算する電力係数乗算器10−1〜10−sと、送信ビーム形成部9からの高周波信号を、図示しない伝送媒体に放射する無線基地局アンテナ11−1〜11−sとを備えている。
図2(a)において、複数のアンテナを有する本発明の実施の形態の端末装置2−Aは、送信ユニット210と送信ユニットアンテナ216及び受信ユニット220と受信ユニットアンテナ20−1〜20−mとを備えている。
送信ユニット210は、端末利用者が送信しようとするデータ情報が入力されるデータ入力部214とチャネル推定部222から送られてきたチャネル推定情報とに所定のデータ処理を施し、高周波信号に変換する送信部212とを備えている。
受信ユニット220は、受信ユニットアンテナ20−1〜20−mのそれぞれに対応し、受信ユニットアンテナ20−1〜20−mで受信された高周波信号をベースバンド信号に変換する受信部221−1〜221−mと、複数のベースバンド信号からダウンリンクにおける伝搬路のチャネル応答情報を推定するチャネル推定部222と、チャネル推定部222で得られたチャネル応答情報を基に空間多重信号から所望信号を分離、抽出する空間多重分離部223と、分離受信された所望信号から、送信データ系列を復元する復調部224と、復元された受信データ系列を他の機器へ出力するか、又は、端末装置利用者に、その情報を伝えるデータ出力部225とを備えている。
ここで、送信ユニットアンテナ216と受信ユニットアンテナ20−1〜20−mは別のものとして扱っているが、同じアンテナを共有していても構わない。
図2(b)において、1つのアンテナのみを有する本発明の実施の形態の端末装置2−Bは、送信ユニット210と送信ユニットアンテナ216及び受信ユニット230と受信ユニットアンテナ20−1とを備えている。
図2(a)と異なるのは、受信ユニット230において、端末装置2−Bは、単一の受信ユニットアンテナ20−1のみであるため、空間領域の干渉除去処理である空間多重分離部223を含まない構成となっている点である。図2(a)と同様に、送信ユニットアンテナ216と受信ユニットアンテナ20−1は別のものとして扱っているが、同じアンテナを共有していても構わない。
次に、無線基地局装置1及び端末装置2−A又は2−Bの動作について説明する。最初
に、ダウンリンクのチャネル情報が端末装置2−1〜2−sにて推定されていることを前提として、この情報が無線基地局装置1に通知される動作を概説する。
まず、端末装置2−A又は2−Bの送信ユニット210において、チャネル推定部222により推定された伝搬路(図示せず)のチャネル情報が、送信部212に導かれ、送信部212により、制御チャネル又は報知チャネルを介して無線基地局装置1に伝えられる。つまり、前記チャネル情報の載った制御チャネル信号又は報知チャネル信号が送信ユニットアンテナ216へと導かれ、無線基地局装置1に向けて送信ユニットアンテナ216から伝搬路(図示せず)へと放出される。
ここで、制御チャネル又は報知チャネルは、無線基地局装置1と端末装置2−A又は2−Bを有効に動作させる為の情報がやり取りされる為の通信用チャネルであり、端末装置2−A又は2−Bの利用者が送受信しようとする情報がやり取りされる通信用チャネルとは異なる通信用チャネルである。
なお、端末装置2−A又は2−Bの利用者が送ろうとする情報は、データ入力部214から送信部212に入力され、所定の信号処理が施され、高周波信号に変換された後、送信ユニットアンテナ216を介して無線基地局装置1へと送られる。
その後、無線基地局装置1においてチャネル情報取得部4は、端末装置2−A又は2−Bの構成を有する複数の端末装置2−1〜2−sから無線基地局アンテナ11−1〜11−sに向けて送られてくる制御チャネル信号又は報知チャネル信号の中から各端末装置2−1〜2−sの送出したチャネル情報をそれぞれ抽出し、送信ウエイト決定部5へ出力する。
次に、通知されたダウンリンクのチャネル情報を基に、空間多重接続すべき(割り当てられた)端末装置2−1〜2−s宛ての送信信号に所定の送信ウエイトを乗算して空間多重伝送が行われる動作を概説する。
まず、無線基地局装置1において、チャネル情報取得部4は、空間多重接続すべき(割り当てられた)端末装置2−1〜2−sから無線基地局アンテナ11−1〜11−sに向けて送られてくる制御チャネル信号又は報知チャネル信号の中から、各端末装置2−1〜2−sから送出されたチャネル情報をそれぞれ抽出し、送信ウエイト決定部5へ出力する。この時抽出されるチャネル情報は、無線基地局装置1から端末装置2−1〜2−sへのダウンリンクのチャネル情報である。
次に、送信ウエイト決定部5は、空間多重接続すべき端末装置2−1〜2−sに対して、端末装置間の相関状況に応じて最適な信号伝送を行うために、それぞれ異なる送信ウエイト生成アルゴリズムを持つ複数の送信ウエイト生成部6−1〜6−nによって複数種の送信ウエイト生成情報を生成させる。その後、ビーム選択部7によって、前記第1から第n番目の送信ウエイト生成部6−1〜6−nによって生成された複数の送信ウエイト生成情報群の中から、所定の判定基準を最大化する送信ウエイト情報を選択して、この情報を送信電力決定部8と送信ビーム形成部9に出力する。
次に、送信電力決定部8は、入力された送信ウエイト情報に基づいて、各空間多重ストリームに対する送信電力を決定する為の電力配分係数を算出する。
一方、送信信号生成部3−1〜3−sでは、空間多重接続すべき(割り当てされた)端末装置2−1〜2−s宛ての信号(以下、送信データ系列と呼ぶ)がそれぞれ生成され、所定の信号処理が施された後、出力される。
そして、電力係数乗算器10−1〜10−sにおいて、各送信信号生成部3−1〜3−sの信号出力に対し、送信電力決定部8で算出された電力配分係数を乗算する。
次に、送信ビーム形成部9は、電力配分係数が乗算されたそれぞれの送信データフレーム系列信号(後述する)に対して、ビーム選択部7からの送信ウエイト情報を基に、所定の(選択された)ビームを形成する送信ウエイトを乗算したベースバンドのシンボルデータを生成する。その後、ベースバンドのシンボルデータであるデジタルデータを図示しないデジタル/アナログ変換器と、帯域制限フィルタ及び、周波数変換器により、デジタル/アナログ変換し、さらに帯域制限を行った後に、キャリア周波数に変換した高周波信号を出力する。
そして、無線基地局アンテナ11−1〜11−sは、供給された高周波信号を空間多重接続すべき端末装置2−1〜2−sに向けて、図示しない伝搬路(空間)に放出する。
ここで、無線基地局装置1において空間多重伝送された信号に対する端末装置2−1〜2−sにおける受信処理についての動作については、後述する事とし、その前に、ダウンリンクにおける無線基地局装置1における空間多重伝送に関して、スケジューリングを含んだ観点からの動作フローを説明した後、各ステップの中の動作や判定基準、ウエイト生成アルゴリズム等について詳細な説明を行う。
図3はダウンリンクの無線基地局装置1における空間多重伝送動作を示すフローチャートである。以下、図1及び図3を用いてダウンリンクにおける無線基地局装置1における空間多重伝送動作について説明する。内容を理解し易くする為、最初に動作の概略について説明した後、詳細事項の説明を行うこととする。
まず、複数の端末装置2−1〜2−sに対し、所定のパケットスケジューリングによりダウンリンク伝送で優先的に接続すべきs個以下の端末装置2−kを決定する(ステップS30)。ここでk=1〜s(sは自然数)の端末装置2−kが優先割り当てされたものとする。ここで、スケジューリング方法としては、端末装置の受信品質を示す値の1つである信号対干渉波電力比(以下SIR(Signal−to−Interference
Ratio)と呼ぶ)に基づくパケットスケジューリングであるMaximum CIR法やProportional Fairness法等があり、例えば文献A. Jalali et al, “Data Throughput of CDMA−HDR
a High Efficiency−High Data Rate Personal Communication Wireless System” IEEE VTC2000−Spring, pp.1854−1858において情報開示されているような公知技術を適用する。
次に、チャネル情報取得部4にて、割り当てられた端末装置2−1〜2−sに対するダウンリンクのチャネル情報を取得する(ステップS31)。この場合、各端末装置2−1〜2−sにおいて、観測したチャネル情報を予め無線基地局装置1にフィードバックするか、あるいは、TDD(Time division duplex)の場合は、伝搬路の相対性を利用することができ、各端末装置2−1〜2−sからのアップリンクにおける既知信号系列の送信信号を基にダウンリンクのチャネル情報の取得が可能である。
以下、フラットフェージング(フェージングの影響が、考慮する周波数帯域において全て同じ、つまり均一である環境状態であり、マルチパスの影響を考慮しなくてもよい環境を示す)を仮定して、得られたチャネル情報として、第k番目の端末装置2−kに対するチャネル推定行列をH(k)と表記する。チャネル推定行列は(第k番目の端末装置2−
kにおける受信アンテナ数Nr(k))行(無線基地局アンテナ数Nt)列からなる行列であり、チャネル推定行列の第j行s列要素は、無線基地局装置1の第s番目のアンテナから送信される信号が端末装置2−kの第j番目の受信アンテナ20で受信される場合の複素チャネル応答を表す。
次に、第1〜第n番目の送信ウエイト生成部6−1〜6−nにて、異なるウエイト生成アルゴリズムによる複数の送信ウエイト情報群を生成させる(ステップS32)。
次に、ビーム選択部7にて、複数の送信ウエイト情報群の中から、所定の判定基準を最大にする送信ウエイト情報を選択する(ステップS33)。ここで、第n番目の送信ウエイト生成部6−nによる第k番目の端末装置2−kへの送信ウエイト情報を送信ウエイトWn(j)とする。ここで、j=1〜Nu(k)であり、Wn(j)はNt個の要素をもつ列ベクトルであり、そのノルムは1に正規化されるものとする(ただし、ゼロウエイトを除く)。また、Nu(k)は端末装置2−kに対する空間多重ストリーム数である。更に、k=1〜sであり、空間多重伝送により同時接続すべき全ての端末装置2−1〜2−sに対するNu(k)の総数は、全ての空間多重ストリーム数をNsとした場合、Nsに等しいものとする。
次に、送信電力決定部8にて、ビーム選択部7により選択された送信ウエイト情報に基づき、各空間ストリームに対する送信電力分配係数を決定する。なお、この場合、各々のストリームの送信電力の総和が所定の送信電力値を超えないように設定する必要がある。そして、電力係数乗算器10−1〜10−sにおいて、各送信信号生成部3−1〜3−sの信号出力に対し、送信電力決定部8で決定された電力配分係数を乗算する(ステップS34)。
次に、送信ビーム形成部9にて、ビーム選択部7からの送信ウエイト情報を基に、それぞれの送信データフレーム系列信号に対して、選択されたビームを形成する送信ウエイトを乗算したベースバンドのシンボルデータを生成する。そして、ベースバンドのシンボルデータであるデジタルデータを図示しないデジタル/アナログ変換と、帯域制限フィルタ及び、周波数変換器により、デジタル/アナログ変換し、さらに帯域制限処理を行った後に、キャリア周波数帯に周波数変換した高周波信号を出力する。さらに、無線基地局アンテナ11−1〜11−sにて、供給された高周波信号を図示しない伝搬路(空間)に放出する(ステップS35)。
以上が、図3のフローチャートに示された、ダウンリンクの無線基地局装置1における空間多重伝送動作の概略説明である。次に、下記事項[1]〜[3]に関して更に詳細な説明を行う。
[1]送信ウエイト生成部6−1〜6−nに組み込まれる送信ウエイト生成アルゴリズムについて詳細な説明。
[2]ビーム選択部7における送信ウエイト情報選択方法について詳細な説明。
[3]送信電力分配係数の決定方法について詳細な説明。
[1]送信ウエイト生成部6−1〜6−nに組み込まれる送信ウエイト生成アルゴリズムについて詳細な説明。
ここでは、送信ウエイト生成部6−1〜6−nに組み込まれる送信ウエイト生成アルゴリズムについて詳細な説明を行う。送信ウエイト生成部6−1〜6−nには、大別して、以下のような3つの方式の異なるウエイト生成アルゴリズムが組み込まれる。
方式(A) 他端末装置2への与干渉を最小限にするという拘束条件を付加した上で所
望の端末装置2への受信品質を高める送信ウエイトを生成するアルゴリズム。
方式(B) 他端末装置2への与干渉を低減するという拘束条件を付加せずに、所望端末装置2へ受信品質を高める送信ウエイトを生成するアルゴリズム。
方式(C) 単一の送信ウエイトを生成するアルゴリズム。
このような3つの異なるアルゴリズムを用いることで、様々な、端末装置間の相関状況に対応可能な送信ウエイトを生成することができることが、今回シミュレーションによって分った。図6〜図8は、図4(a)〜図4(e)に示す指向性チャンネルモデルにおいて、図5の条件を用いて、端末装置間出射角度差AOD(2)(後述する)を変化させ、端末装置間の相関係数を変化させた時の、相関係数と通信品質の関係をシミュレーションした結果のグラフである。通信品質評価値としては、ビット誤り率(BER)=1E−3を満たす所要送信電力を用いており(但し、1アンテナ送信時の送信電力で正規化を行っている)、この値の小さい方が通信品質の良い方式である。
図4(a)は、シミュレーションに用いた無線基地局アンテナ60のアンテナ素子配置を、図4(b)は、端末装置の受信ユニットアンテナ62のアンテナ配置を、それぞれ示した図である。無線基地局アンテナ60では、4素子の送信アンテナ素子60−1〜60−4が直線上に、距離Dtだけ等間隔に離れた位置に配置されており、受信ユニットアンテナ62では、2素子の受信アンテナ素子62−1〜62−2が距離Drだけ離れて配置されている。
図4(c)は、上記無線基地局アンテナ60から放射された電波が、障害物64により反射点65で反射され、パス67−a及びパス67−bを介して受信ユニットアンテナ62に受信される様子を模式的に示した図である。送信アンテナ素子60−1〜60−4がならぶ直線の障害物64側の法線から障害物64に向けて放射される電波の方向を示したパス67−aまでの角度を出射角度差AODと定義し、受信アンテナ素子62−1〜62−2を結ぶ直線の障害物64側の法線から障害物64の反射点65から反射されてくる電波の方向を示したパス67−bまでの角度を入射角度差AOAと定義する。
又、無線基地局アンテナ60と、第k番目の端末装置(ユーザ)の受信ユニットアンテナ62間の通信パスを第k番目のユーザパスと呼び、このときのAOD及びAOAをAOD(k)及びAOA(k)と表示する。第k番目のユーザパスは、パス67−a及びパス67−bから成る。
図4(d)は、パス67−aの送信端側におけるビーム幅を、(e)は、パス67−bでの受信端側におけるビーム幅を、模式的に示した図である。横軸はビーム幅を、縦軸は電波強度を示している。電波強度のピーク値から3dB下がった2点間の幅をビーム幅と定義し、送信端側における角度スプレッドをAS(t)、受信端側における角度スプレッドをAS(r)と定義する。無線基地局アンテナ高が、周辺建物高より高い場合は、AS(t)よりもAS(r)が大きくなる傾向がある。
方式(B)と方式(A)の交点の相関係数値をE1とし、方式(B)と方式(C)の交点の相関係数値をF1とすると、相関係数値が0〜E1の区間では、方式(B)の通信品質が最良となり、相関係数値がE1〜F1の区間では、方式(A)の通信品質が最良となり、相関係数値がF1〜1の領域では、方式(C)の通信品質が最良となるように各方式の信号品質が変化し、図6に示す空間相関係数対通信品質特性が描かれる。
図6では、ライスファクタK=3dBとした時の値を示している。図6において、横軸
は端末装置間の空間相関係数を示し、縦軸は信号品質としてビット誤り率(BER)=1E−3を満たす所要送信電力を示している。また、四角(黒色)の点は方式(A)を用いた場合の端末装置間の空間相関係数と信号品質をプロットしたものであり、三角(黒色)の点は方式(B)を用いた場合の端末装置間の空間相関係数と信号品質をプロットしたものである。さらに、丸(白色)の点は方式(C)を用いた場合の端末装置間の空間相関係数と信号品質をプロットしたものである。
図7はライスファクタK=6dBとした場合であり、図8はライスファクタK=9dBとした場合である。いずれにおいても図6と同様のことが言える。つまり、ライスファクタKを変化させても、空間相関係数対通信品質特性は3つ以上の複数の区分に区分けすることが可能で、各区分において、通信品質が最良となる方式が存在する。
ここで、ライスファクタKは、無線基地局アンテナ60と受信ユニットアンテナ62との見通し情況を示すパラメータである。一般的に、ライスファクタKが大きい場合は、無線基地局アンテナ高が高く、比較的見通し環境になりやすいセルラー環境の伝搬モデルとして想定され、ライスファクタKが小さい場合は、無線基地局アンテナ60と受信ユニットアンテナ62とも周辺の建物高さより低く、見通し環境では無い場合の伝搬モデルとして想定される。
これらの結果から、端末装置間の相関が低い場合(例えば相関係数が0〜0.3程度の場合)は、送信側の複数アンテナの自由度を端末装置2への通信品質向上に用いる方式Bによる手法が有利である。また、相関が非常に高い場合(例えば相関係数が0.8〜1程度の場合)は、空間多重伝送を行わない方式(C)による手法が有利である。それらの中間的な相関の場合(例えば相関係数が0.4〜0.6程度の場合)は、送信側の複数アンテナの自由度を端末間の相互干渉除去に用いる方式Aによる手法が有利である。以上のように異なる性質のアルゴリズムを適宜選択することで高い通信品質を維持して空間多重伝送が可能となる。
ここで、方式(A)タイプのアルゴリズムは、(A−1)他の端末装置2に対しヌルを向けるヌルビーム手法(ZFビーム(Zero−Forcing、ゼロフォーシング、ビーム)、MMSEビーム(Minimum−Mean−Square−Error、最小二乗誤差、ビーム))、あるいは、端末装置2が複数のアンテナを有する場合には、(A−2)ブロック直交化ウエイト手法、及び(A−3)受信時の受信ウエイトを最大比合成ウエイトで受信すると仮定した上で、ブロック直交化する結合ウエイト生成手法のいずれかあるいは複数の手法が含まれる。
また、方式(B)タイプのアルゴリズムは、(B−1)固有ベクトルビーム手法(特定の第k番目の端末装置2−kに対するチャネル推定行列H(k)を特異値分解して得られる特異値に対し、特定の第k番目の端末装置2−kへの空間多重数分Nu(k)だけの大きな特異値に対応する右特異ベクトルを用いる)、(B−2)主ビーム指向性が異なる複数の固定ビームパターン(直交ビームパターンあるいは等間隔に主ビーム方向が異なるビームパターンなど)から主ビーム方向が空間多重送信する特定の端末装置2の方向に最も近いビームを選択する手法のいずれかあるいは複数の手法が含まれる。
方式(C)タイプのアルゴリズムは、複数の端末装置2−1〜2−sの内、1つの最優先される端末装置2のみに対して固有ベクトルビーム送信され、他の端末装置2に対しては、すべてがゼロの要素のゼロウエイトを生成する単一送信ウエイト手法を用いるものが含まれる。
以下、方式(A)タイプのアルゴリズムの各ウエイト生成手法について、さらに詳細説
明を加える。
(A−1)他の端末装置2に対しヌルを向けるヌルビーム手法の場合:
ZFビームを形成する場合は、第k番目の端末装置2−kに対する送信ウエイトWk(j)を以下のように算出する。すなわち、第k番目の端末装置2−kのチャネル推定行列H(k)を除いて、同時接続すべき他の端末装置2に対する全てのチャネル推定行列H(l)に対し、(数1)に示す条件を満たす送信ウエイトWk(j)を算出する。ここでj=1〜Nu(k)であり、Nu(k)は端末装置2−kに対する空間多重ストリームのストリーム数、sは空間多重される全端末装置数である。
但し、
例えば、端末装置2−1に対する空間多重ストリームのストリーム数がNu(1)=3である場合、端末装置2−1に対する送信ウエイトである列ベクトルW1(j)を構成する3個の要素、W1(1)〜W1(3)に対して、(数1)を満たす値が算出される。
以上のようにして、kを1からsまで可変して全ての端末装置2−1〜2−sに対する送信ウエイトを算出する。つまり合計で、全ての空間多重ストリームの総ストリーム数であるNs個分の送信ウエイトを算出する。
MMSEビームを形成する場合は、全ての受信側端末装置2における雑音電力δ2が全
て等しい値であると仮定して、ある所定値に設定し、各端末装置2における信号対干渉波比(SIR)を最大化する(数2)で示す条件を満たす送信ウエイトWn(j)を生成する。ここで、j=1〜sであり、sは空間多重される全端末装置数である。
また、上付き「H」は複素共役演算子を示す。
(A−2)ブロック直交化ウエイト手法の場合:
第k番目の端末装置2−kに対する送信ウエイトWn(j)を以下のように算出する。ここでj=1〜Nu(k)である。まず、第k番目の端末装置2−kのチャネル推定行列H(k)を除いて、同時接続すべき他端末装置のチャネル推定行列H(l)(但し、l=
1、2、・・・sで、l≠k)を基に新たな行列として(数3)に示す行列Dkを生成する。
次に、Dkを特異値分解して得られる、(数4)に示す右特異行列Vkを求める。
得られた右特異行列VkはNt行Nt列の行列を構成するが、そのうちの特異値“0”(数値のゼロ)に対応する右特異ベクトルを取り出して得られる行列をRkとする。行列RkはNt行Nq列からなる。ここでNqは(数5)で示される。
このNt行Nq列からなる行列Rkを用いて(数6)に示す新たな行列Ekを基に、固有ベクトルビーム送信を行う。
すなわち、行列EkはNr(k)行Nq列からなり、Ekを特異値分解して得られる右特異ベクトルのうち、第k番目の端末装置2−kに送信する空間多重ストリームのストリーム数であるNu(k)個の特異値を大きい順番に選択し、選択された特異値に対応した右特異ベクトルを用いて、送信ウエイトWn(j)とする。
以上のようにして、kを1からsまで可変して端末装置2−1〜2−sに対する送信ウエイトを算出する。つまり合計で、全ての空間多重ストリームの総ストリーム数であるNs個分の送信ウエイトを算出する。
(A−3)受信時の受信ウエイトを最大比合成ウエイトで受信すると仮定した上で、ブロック直交化する結合ウエイト生成手法の場合:
第k番目の端末装置2−kに対する送信ウエイトWn(j)を以下のように算出する。ここでj=1〜Nu(k)である。まず(数7)に示すように、第k番目の端末装置2−kのチャネル推定行列H(k)を特異値分解して得られる左特異行列Ukのうち、第k番目の端末装置2−kに送信する空間多重ストリームのストリーム数であるNu(k)個の特異値を大きな順番に選択し、選択された特異値に対応した左特異ベクトルを用いて、第k番目の端末装置2−kにおける受信ウエイト行列Gkと仮定する。受信ウエイト行列Gkは、Nr(k)行Nu(k)列からなる。
これをすべての端末装置2に対し算出する。
次に、第k番目の端末装置2−kに関するチャネル推定行列H(k)、受信ウエイト行列G(k)を除いたチャネル推定行列H(m)と受信ウエイト行列Gm、(但し、m=1〜s、m≠k)を用いて、(数8)に示す新たなチャネル推定行列Dkを算出する。
次に、得られた行列Dkに対し(数4)に示す右特異行列Vkを求める。得られた右特異行列VkはNt行Nt列の行列を構成するが、そのうちの特異値“0”(数値のゼロ)に対応する右特異ベクトルを取り出して得られる行列をRkとする。行列RkはNt行Nv列からなる。ここでNvは(数9)で示される。
このNt行Nv列からなる行列Rkを用いて(数6)に示す新たな行列Ekを基に、固有ベクトルビーム送信を行う。すなわち、行列EkはNr(k)行Nv列からなり、Ekを特異値分解して得られる右特異ベクトルのうち、第k番目の端末装置2−kに送信する空間多重ストリームのストリーム数であるNu(k)個の特異値を大きい順番に選択し、
選択された特異値に対応した特異右特異ベクトルを用いて、送信ウエイトWn(j)とする。 以上のようにして、kを1からsまで可変して端末装置2−1〜2−sに対する送信ウエイトを算出する。つまり合計で、全ての空間多重ストリームの総ストリーム数であるNs個分の送信ウエイトを算出する。
なお、本手法(A−3)は、受信時の受信ウエイトを最大比合成ウエイトで受信すると仮定するため、指向性ヌルを形成する制約条件が緩和され、(A−2)の手法に対し、同時接続する端末装置2に備わる受信アンテナ数の合計が、無線基地局装置1の送信アンテナ数Ntよりも大きい場合でも適用が可能である。また(A−2)の手法において、受信のアンテナ数が送信ウエイトを形成する場合の制約条件となったが、一方、本手法においては、空間多重ストリーム数が送信ウエイトを形成する場合の制約条件となるため、ある端末装置2−kにおいて、端末装置2−kへの空間多重ストリーム数Nu(k)が受信アンテナ数Nr(k)よりも小さい場合、(A−2)の手法よりも優れた受信品質が得られるという特徴を有する。
[2]ビーム選択部7における送信ウエイト情報選択方法について詳細な説明
ここでは、ビーム選択部7における送信ウエイト情報選択方法について詳細な説明を行う。ビーム選択部7は、第〜第n番目の送信ウエイト生成部6−1〜6−nによって生成された複数の送信ウエイト情報群の中から、所定の判定基準を最大化する送信ウエイト情報を選択する。判定基準としては、端末装置2で受信する信号対雑音電力比(以後SNRと呼ぶ)あるいは信号対干渉波電力比(以後SINRと呼ぶ)等の信号品質を示す物理量の予測値を用いる。
そこで、数式を用いて、具体的な送信ウエイトの選択方法を説明する。まず、時刻tにおけるNs個の空間ストリームを(数10)とし、第n番目の送信ウエイト生成部6−nで生成された送信ウエイト情報が選択されたとして、送信すべき信号Yn(t)を(数11)で示すものとする。ここで、k=1〜Nsであり、Yn(t)はNt個の要素からなる列ベクトルを示している。また(数12)は端末装置2−1〜2−sに対する全ての空間多重ストリーム各々の送信電力を表すが、ここでは、等電力送信を仮定する。さらに、Wn(k)は第n番目の送信ウエイト生成部6−nで生成された第k番目の空間ストリーム(数10)に対する送信ウエイト(Nt個の要素の列ベクトル)である。
ここで下付き「k」はk番目の空間ストリームを指し、k=1、2、・・・、Nsである。
ここで下付き「k」はk番目の空間ストリームを指し、k=1、2、・・・、Nsである。
次に、端末装置2における受信信号(数13)を予測する。受信信号(数13)は、第k番目の端末装置2−kに対するチャネル情報H(k)を用い(数14)のように示すことができる。
ここで、端末装置2−kのアンテナ数Nr(k)が1である場合、SINRは(数15)により得られる。なお、δはガウス性の加法雑音が付加されたと仮定したときの雑音電力で、所定の固定値として以下取り扱うものとする。
また、端末装置2−kのアンテナ数が複数である場合、受信ウエイトR(k)による指向性形成を仮定して(数16)を用いてSINR評価を行う。ここで、受信ウエイトR(k)は端末装置2−kの受信ユニットアンテナ数Nr(k)個の要素を持つ列ベクトルを示す。(数16)において、下付き「n」はユーザ端末つまり、空間多重接続を行う個々の端末装置2に順番に番号を付した場合の数を示しており、本実施例では端末装置2−1〜2−sに対応する。
端末装置2における仮想的な受信ウエイトを算出する手法としては、干渉波成分が存在
する場合は、MMSE手法、ZF手法の適用が可能であり、干渉波成分を考慮しなくても良い場合は、最大比合成受信ウエイトの適用が可能である。
また、送信ウエイトを算出する手法が、ブロック直交化ウエイト手法の場合、チャネル推定行列H(k)を特異値分解して得られる特異値のうち、端末装置2−kに対する空間多重ストリームのストリーム個数分の特異値を大きな順番に選択し、選択された特異値に対応する左特異ベクトルを用いてもよい。
また、上記の受信ウエイトとして利用できるウエイト情報の候補を複数もち、それぞれのSINR評価を行うことで、受信ウエイトと送信ウエイト候補の最良の組合せを選択する手法を用いても良い。この場合、SINR評価のための処理量は増加するが、様々な伝搬環境条件下において最も良い通信品質を得ることができる。
以上、述べた計算により(数16)に示すWn(k)を変数として、各ユーザのSINRn(k)を算出する。これを、第1〜第n番目の送信ウエイト生成部全てで計算する。そして、それら各ユーザのSINRn(k)の総和が最大となる送信ウエイトを生成する第s番目の送信ウエイト生成部6−sからの出力情報である送信ウエイトWs(k)を選択する。ここで、k=1〜Nsである。
なお、ここで、空間多重する空間多重ストリームのQoS(許容遅延や伝送要求レート等)に応じた重み付け加算を行っても良い。例えば、許容遅延が小さいリアルタイムの信号伝送が必要なユーザ(端末装置)に対しては重み付けを大きくし、優先的に信号伝送する。これにより、再送処理の回数が減り、トータルとしてのシステムスループットの向上が図れる。
また、伝送要求レートに応じた重み付け加算を行っても良い。例えば伝送要求レートが高い空間多重ストリームに対して、重みを大きくし、要求レートの高いものを優先的に信号伝送することで、トータルとしてのシステムスループットの向上が図れる。
[3]送信電力分配係数の決定方法について詳細な説明。
ここでは、送信電力分配係数の決定方法について詳細な説明を行う。電力配分は単純には、等電力分配しても良いが、下記(1)〜(2)の手法の適用によりスループットの向上あるいは送信電力の低減を図ることができる。
(1)キャパシティ(スループット)を向上させる手法:
無線基地局装置1からのブロードキャスト信号に対する端末装置2−kの受信品質としてSNR(k)を測定し、その測定情報を無線基地局装置1に予め通知しておく。各SNR(k)及びチャネル推定行列から理論的なキャパシティを基にしたWater−filling手法(SNR値の良いストリームに優先的に電力を配分する手法)を適用する。これにより、空間ストリーム毎の電力配分比率が決定されるので、その比率を電力配分係数とする。
なお、この場合、通常、変調多値数、及び符号化率(以下、MCSと呼ぶ)の変化に対しては、離散的な値となるため、電力配分比率の補正を行うことがより望ましい。その場合、以下の様な補正手法を用いる。すなわち、算出された電力配分を行った場合の端末装置2−kにおける受信SINRを予測して、予測したSINRが、最大レートを実現するMCSにおける所要SINRを上回る場合には、上回った分だけ、必要十分以上の電力配分を端末装置2−kに与えることとなるので、その余剰分を他の端末装置2に対する空間ストリームに分配する。また、逆に、最小レートを実現するMSCにおける所要SINR
を下回る場合は、端末装置2−kに対する空間ストリームを優先的に電力配分する為に、他の端末装置2に対する空間ストリームへの電力配分比率を減少させる。
(2)送信電力を低減させる手法:
まず、無線基地局装置1からのブロードキャスト信号に対する端末装置2−kの受信品質としてSNR(k)を測定し、その測定情報を無線基地局装置1に予め通知しておく。得られたSNR(k)から雑音電力を推定し、空間多重ストリーム送信時のSNRとして(数17)で定義されるSNRt(j)を予測する。ここで、j=1〜Nu(k)、また、Paは、空間多重ストリームを送信する際の所定の最大電力に対するブロードキャスト信号の送信電力の比を示す。さらに、h(k)は、ブロードキャスト信号が第n番目のアンテナから送信される場合、H(k)の第n列からなる、端末装置2−kの受信ユニットが備えるアンテナ数Nr(k)と同じ個数の要素からなる列ベクトルを示す。
次に、無線基地局装置1において、予め、端末装置2における受信品質(SNR)と、最適なMCSの対応づけのテーブルが所有されているものとして、以下のような処理を行う。まず、全ての同時接続すべき端末装置2からQoSに関して要求されるそれぞれの許容遅延に従い、データ伝送の優先順位が高い順番から、端末装置への電力分配を行う。そして、許容遅延を満たす伝送レートを実現するMCSの組合せの中から、最小限の伝送レートを満たす所要SNRを、所定のマージンを加えた上で決定する。
次に、空間多重ストリーム送信時のSNRであるSNRt(j)が、所要SNRとほぼ等しくなるように電力配分係数b(j)を決定する。b(j)が1より小さい場合は、その他の空間ストリーム又は、同時接続する他の端末装置2に対して、残余の送信電力を超えない範囲で電力配分を同様に行い、同時接続すべき端末装置2において所要SNRを満たさない端末装置2に対しては、送信を行わないようにする。そして、最終的には電力配分係数b(k)の総和が1以下になるように配分を行う。
次に、送信信号生成部3−1〜3−sにおける動作について詳細な説明を行う。まず、第1〜第s番目の送信信号生成部3−1〜3−sでは、空間多重接続すべき(優先割り当てされた)端末装置2−1〜2−s宛の信号(以下、送信データ系列と呼ぶ)をそれぞれ生成する。そして、各送信データ系列に対して、図示されていない誤り訂正符号器、インターリーバ、パンクチャ、及び変調器とを用いて、誤り訂正符号化を施し、パンクチャリング、インターリービングを行った後に所定の変調方式によりシンボルマッピングを施す。(以下、シンボルマッピングを施された信号をシンボルデータ系列或いは、空間ストリーム個別データ信号と呼ぶ)。その後、各々のシンボルデータ系列に、予め既知のパイロット信号と、制御情報を付随させて所定のフレーム構成を持つ送信信号を生成する。以下、この信号を送信データフレーム系列と呼ぶ。
図9(b)は、送信データフレーム系列構成の一例である。第1〜第s番目の送信信号生成部3−1〜3−sから生成、出力される各々の送信データフレーム系列500−1〜500−sは、制御情報部C1〜Csと、空間ストリーム部K1〜Ksとからなり、各空間ストリーム部K1〜Ksは、空間ストリーム個別パイロット信号部P1〜Ps及び空間ストリーム個別データ信号部D1〜Dsとからなる。
制御情報部C1〜Csは、空間多重接続すべき全ての端末装置2−1〜2−sに向けブロードキャストされる信号であり、無指向性送信される。制御情報部C1〜Csには、後続する空間ストリーム数及び、空間ストリーム番号に対する送信先の端末装置のID情報つまり、どの端末装置宛の送信データ系列が含まれる空間ストリームであるかを示す情報及び符号化方法、符号化率、変調多値数、データ長などの変調フォーマット情報が含まれる。
一方、空間ストリーム部K1〜Ksは、送信ウエイトを用いて各々の端末装置2−1〜2−sに向け伝送される信号であり、指向性送信される。空間ストリーム部K1〜Ksには、予め既知のパイロット信号系列からなる空間ストリーム個別パイロット信号部P1〜Psが、各々の端末装置宛の送信データ(個別データ)が含まれる空間ストリーム個別データ信号部の前段に付随されるプリアンブル構成が用いられているが、後段に付随されるポストアンブル構成でも、空間ストリーム個別データ信号部の真中に付随されるミッドアンブル構成としても良い。
図9(a)は、上記送信データフレーム系列が複数の端末装置2−1〜2−s(第1番目のユーザ〜第s番目のユーザに相当)に対して空間多重伝送される様子を時間軸と空間軸上に模式的に表したものである。空間多重接続すべき全てのユーザ(第1番目のユーザ〜第s番目のユーザ)に対して、同一の制御情報40−1〜40−sが無指向性送信された後、各ユーザ(第1番目のユーザ〜第s番目のユーザ)それぞれに対する信号がそれぞれ指向性送信されることを示している。T1からT2までの時間が1つの送信データフレーム系列を送信するのにかかる時間に相当している。
図10は第2の送信データフレーム系列構成の一例である。図9のフレーム構成と異なる部分は、空間ストリーム部において、空間ストリーム個別制御情報部SC1〜SCsをさらに含む点である。空間ストリーム個別制御情報部SC1〜SCsには、後続する空間ストリーム個別データ信号部D1〜Dsの変調フォーマット情報が含まれ、固定された所定の変調フォーマットで伝送される。
この構成を用いることにより、制御情報部C1〜Csには、後続する空間ストリーム個別データ信号部D1〜Dsの変調フォーマット情報を含む必要がなくなるので、制御情報部C1〜Csにおける伝送量を低減することができる。さらに、空間ストリーム個別データ信号部D1〜Dsの変調フォーマット情報を含んだ空間ストリーム個別制御情報部SC1〜SCsも指向性送信されるので、端末装置2−1〜2−sにおいて、空間ストリーム個別データ信号部D1〜Dsの変調フォーマット情報の受信誤りを防ぐことができる。その結果、より高い受信品質を確保することができる。
以上が、事項[1]〜[3]についての詳細な説明である。
次に、無線基地局装置1において空間多重伝送された信号に対する端末装置2−1〜2−sにおける受信処理動作について、図2を用いて説明する。なお、以下では無線基地局装置1との同期(フレーム、シンボル同期)確立後の動作を説明する。
まず、端末装置2−Aにおいて、受信ユニットアンテナ20−1〜20−mで受信された高周波信号は、それぞれ受信部221−1〜221−mに入力される。受信部221−1〜221−mは、高周波信号から所望帯域をフィルタリングし、直交検波したベースバンド信号に周波数変換し、デジタル/アナログ変換(以下、A/D変換器と呼ぶ)によりI信号、Q信号からなるデジタル信号データ(以下、複素ベースバンド信号と呼ぶ)を出力する。
空間多重分離部223は入力された1つ又は複数の複素ベースバンド信号から、自端末装置宛に通知された所望の空間ストリーム番号のデータ信号を受信し、自端末宛以外の空間ストリーム番号のデータ信号、つまり干渉信号を除去或いは通信を行うのに必要十分な信号品質が確保できる程度まで抑圧するために、以下のような動作を行う。
まず、チャネル推定部222において、空間ストリーム毎に付随されて送信されるパイロット信号(以下、空間ストリーム個別パイロット信号と呼ぶ)の到来タイミングにおいて、全ての空間ストリーム個別パイロット信号を分離抽出し、伝搬路のチャネル推定値を算出する。ここで、空間多重伝送された信号を受信する第m番目の端末装置2−mは、Nr(m)個の受信ユニットアンテナ20−1〜20−mと、それぞれの受信ユニットアンテナに対応するNr(m)個の受信部221−1〜221−mを備えているものとする。
第k番目の空間ストリーム個別パイロット信号系列(数18)を、第m番目の端末装置2−mにおける第j番目の受信ユニットアンテナ20−j及び受信部221−jで受信した結果得られる出力信号である(数19)と端末装置2−mの内部で生成した(数18)との相関演算を行うことで(数20)に示すように伝搬路のチャネル推定値(数21)を算出する。
ただし、j=1、・・・、Nr(m)。又、k=1、・・・、Ns。さらに、Nr(m)は受信ユニットアンテナ数。
なお、Npは空間ストリーム個別パイロット信号系列のシンボル数。上付きの「*」は、複素共役を行う演算子である。
なお、複数回にわたる空間ストリーム個別パイロット信号系列(数18)の受信結果を保存し、平均化処理を行ってもよく、その場合、端末装置2−mの移動速度が十分小さければ雑音の影響を低減でき、伝搬路のチャネル推定品質を高めることが可能となる。
最終的に、第m番目の端末装置2−mによる伝搬路のチャネル推定値として、合計Ns×Nr(m)個の伝搬路のチャネル推定値(数21)を算出する。但し、Nsは空間多重
ストリーム数、Nr(m)は端末装置2−mの受信ユニットアンテナ数である。
ここで、端末装置2−mに対するチャネル推定行列(数22)を(数23)のように定義する。
次に得られたチャネル推定行列(数22)を用いて、空間多重チャネルの分離を行う。ここで、空間多重チャネルの分離とは、空間多重ストリームから各空間ストリームに含まれるデータ信号を分離、抽出することと同じ動作を意味する。
分離方法として、チャネル推定行列の逆行列を利用する方法であるZF(Zero Forcing)を用いる場合と、MMSE(Minimum Mean Square Error)を用いる場合を説明する。
まず、ZF手法を用いる場合について説明する。ZF手法では、第m番目の端末装置2−mにおける第j番目の受信ユニットアンテナ20−j及び受信部221−jでの受信信号(数24)に対し、ZF手法を用いる場合、Hmの逆行列である(Hm)−1における第
(Bm)行からなる行ベクトルV(Bm)を算出しこれを所望の空間多重ストリームを受信する受信ウエイトとする。
ただし、j=1、・・・、Nr(m)。Nr(m)は受信ユニットアンテナ数。
ここでBmは無線基地局装置1から通知された端末装置2−m宛ての空間ストリーム番号である。第Bm番目の空間ストリーム番号のデータ信号は(数25)に示すように受信ウエイトV(Bm)を、端末装置2−mにおける空間ストリーム受信信号(数26)に乗算することで他の空間ストリームからの干渉信号を抑圧した所望信号として抽出することができる。
ここで、r(m)(t)は、第m番目の端末装置2−mにおける第j番目のアンテナ及び
受信部221−jで受信されたrj (m)(t)(ただし、j=1、...、Nr(m))をj番目の要素とする列ベクトルである。
次に、MMSE手法を用いる場合について説明する。この場合も、ZF手法と同様に、MMSE規範で算出される受信ウエイト行列Wの第Bm行からなる行ベクトルV(Bm)を算出しこれを所望の空間ストリームを受信する受信ウエイトとする。
第Bm番目の空間ストリームは(数25)に示すように受信ウエイトを端末装置2−mにおける空間ストリーム受信信号(数26)に乗算することで他の空間ストリームからの干渉信号成分を抑圧した所望信号として受信することができる。
なお、同一の端末装置2−m宛ての空間ストリーム番号が複数存在する場合は、それぞれの空間ストリーム番号のデータ信号を受信する受信ウエイトを生成し、空間ストリーム受信信号(数26)に乗算することで、同様に空間ストリームから所望信号を分離受信することができる。
なお、当該端末装置2−m以外宛ての空間ストリームデータの符号化率、変調多値数等の符号化方法、変調方法に関する情報が既知である場合は、最尤推定(結合推定)、逐次的干渉キャンセラ(V−BLAST等)等の手法の適用が可能である。
復調部224は、空間多重ストリームから分離受信された所望信号に対して復調及び復号処理を施すことで所望の送信データ系列に復元する。
なお、図2(b)に示すように単一の受信ユニットアンテナ20−1しか持たない端末装置2−Bでは、空間多重分離部223を持たず空間的な干渉除去を行うことができないため、復調部224において、受信部221−1によって受信された信号からチャネル推定部222によって得られるチャネル推定値を用いて、伝搬路の環境状態変化による影響を補償しながら復調処理を行う。
以上のような動作により、本発明の実施の形態では、多様な空間相関状況に応じ、複数の端末装置2−1〜2−sに対する空間多重伝送、更には、端末装置2−1〜2−sにおける複数アンテナ受信時による受信品質の向上が可能な送信ウエイトを選択することができる。またその結果として、空間多重伝送によるシステム容量の改善を図ることが可能となる。
更に、空間多重接続すべき優先接続端末装置2の割り当て作業において、従来の無線基地局装置で行っていた、空間相関係数の検出に基づく端末装置2の組合せ割り当て制御が不要となり、通常のパケットスケジューラによる優先的なユーザ割り当て処理のみで割り当て作業が可能になる。その結果、空間多重接続すべき端末装置2に対するスケジューリ
ング処理の簡易化を図ることができる。
また、端末装置2が端末装置2−Aのように複数の受信ユニットアンテナを備える場合に、無線基地局装置1において空間ストリーム毎に既知のパイロット信号を付随させ伝送し、端末装置2の受信ユニット220においてそれらのパイロット信号を用いたチャネル推定を行うことにより、無線基地局装置1において、送信ウエイト生成時に、チャネル推定誤差又は、伝搬路の環境変化つまりチャネルの経時変化が生じている場合においても、それらの影響による通信品質の劣化を低減することが可能となる。
また、TDDシステムの場合、“伝搬路の相対性“の性質を利用して、アップリンクでのチャネル推定結果をダウンリンクでのチャネル推定値として用いることが可能である。この場合、アップリンクでの送受信系統とダウンリンクでの送受信系統とでの送受信用アンテナ及び高周波(RF)回路を含めた系統間の偏差が予め十分に補正されている必要がある。しかしながら、一般的には十分な補正ができずに系統間の誤差が含まれる場合が多い。よって、本手法を適用することにより、上記の様に、系統間の誤差が含まれる場合においても、その影響による通信品質の劣化を低減することが可能となる。
なお、本発明の実施の形態において、送信ウエイト生成部6−1〜6−nにより送信ウエイト生成後に、ビーム選択部7において、予測SINRを基に送信ウエイトを選択したが、予め、端末装置間の相関係数を算出し、その平均値あるいは、最小値を基に、送信ウエイトを決定しても良い。
この場合、端末間の空間相関状況に適した送信ウエイト生成手法を従来手法よりも早く選択する為に、具体的には大別して3タイプの送信ウエイト生成方式の空間相関係数対通信品質特性に特定の関係があることを利用し、この特性を複数の区間に区分けして、各区間において、通信品質が最良となる方式が自動的に選択されるようにするものである。
つまり、端末装置からの受信信号から、前記端末装置と無線基地局間のチャネル情報を抽出し、このチャネル情報に基づいて空間多重伝送すべき端末装置間の空間相関係数を求めるステップと、前記3タイプの送信ウエイト生成方式の関係において、各区間において、通信品質が最良となる方式を選択する処理方法を予め決定しておき、この選択処理手法と前記空間相関係数を求めるステップにより求めた空間相関係数に基づいて、通信品質が最良となる方式を選択する工程とを有する構成とすることで、簡易的に送信ウエイトを選択することができる。
なお、本発明の実施の形態は、シングルキャリア伝送、マルチキャリア伝送の区別なく実現が可能である。マルチキャリア伝送時には、サブキャリア毎にチャネル推定値を算出し、サブキャリア毎に本実施の形態での動作のように、空間多重ストリームの分離受信を行うことで実現できる。また、TDD、FDDといった複信方式によらず、適用が可能である。また、TDMA、FDMA,CDMAといったアクセス方式によらず適用が可能である。
以上のように本発明の第1の実施の形態によれば、空間多重伝送すべき複数の端末装置2−1〜2−sに対するチャネル情報を基に、前記複数の端末装置2−1〜2−sに対する空間多重伝送を行う為の送信ウエイトを生成する方法を可変する送信ウエイト決定部5を有する構成により、多様な空間相関状況下において通信品質の向上及び確保とそれに伴う空間多重伝送によるシステム容量の改善が図れるという効果が得られる。
また、端末間の空間相関状況に適した送信ウエイト生成手法を可変することができ、端末間の空間相関状況に対しロバストな空間多重送信が可能となり、従来の空間相関係数に
基づく割り当て処理の簡易化を図れる。これにより無線基地局装置1の簡易化、及び空間多重伝送制御のための処理時間を短縮化できるという効果が得られる。
また、無線基地局装置1は、空間多重伝送すべき複数の端末装置2−1〜2−sに対するチャネル情報を基に、前記複数の端末装置2−1〜2−sに送信する送信ビームの形成に使用するの送信ウエイト情報を、異なるアルゴリズムにより生成する複数の送信ウエイト生成部6−1〜6−nと、前記アルゴリズムにより生成された複数の送信ウエイト情報の内、いずれかの送信ウエイト情報を選択するビーム選択部7と、選択された送信ウエイト情報を送信ウエイトとして用いて、送信ビームを形成する送信ビーム形成部9とを有し、空間多重伝送を行う機能を有する構成とすれば、多様な空間相関状況下において通信品質の向上及び確保とそれに伴う空間多重伝送によるシステム容量の改善が図れる。
また、端末間の空間相関状況に適した送信ウエイト生成手法を選択することができ、端末間の空間相関状況に対しロバストな空間多重送信が可能となり、従来の空間相関係数に基づく割り当て処理の簡易化を図れる。これにより無線基地局装置1の簡易化、及び空間多重伝送制御のための処理時間を短縮化できるという効果が得られる。
また、送信電力決定部8は、選択された送信ウエイト情報を基に、前記複数の端末装置2−1〜2−sに対する空間多重信号の送信電力を決定する機能を有する構成とすれば、複数の端末装置2−1〜2−sに対する空間多重送信時において、チャネル情報により検知される多様な空間相関状況に応じて適する送信ウエイトを、複数の異なる送信ウエイト生成アルゴリズムから最適なもの選択して生成し、更にそれらの送信ウエイトで送信される信号電力を制御することができる。これにより、所望の通信品質を満たす信号電力で送信することが可能となり、必要以上の送信電力を用いた送信を行わないため同一チャネル干渉を低減できシステム容量の改善が図れるという効果が得られる。
また、ビーム選択部7は、前記端末装置2における信号対干渉雑音電力比を示す情報を基に、送信ウエイトとして用いるべき送信ウエイト情報を選択する機能を有する構成とすれば、多様な空間相関状況下において通信品質の向上及び確保とそれに伴う空間多重伝送によるシステム容量の改善が図れるという効果が得られる。
また、ビーム選択部7は、前記端末装置2が複数の受信ユニットアンテナ20−1〜20−mで受信できる場合に、前記端末装置2での受信ウエイトを予測した予測受信ウエイトを用いた上で、送信ウエイトを選択する機能を有する構成とすれば、多様な空間相関状況下において通信品質の向上及び確保とそれに伴う空間多重伝送によるシステム容量の改善が図れるという効果が得られる。
また、予測受信ウエイトは、最大比合成受信ビームを形成するウエイト構成とすれば、多様な空間相関状況下において通信品質の向上及び確保とそれに伴う空間多重伝送によるシステム容量の改善が図れるという効果が得られる。
また、予測受信ウエイトは、チャネル推定行列を特異値分解して得られる左特異ベクトルである構成とすれば、同一チャネル干渉を抑圧した上で受信電力を最大化する送信ウエイトが決定でき、多様な空間相関状況下において通信品質の向上及び確保とそれに伴う空間多重伝送によるシステム容量の改善が図れるという効果が得られる。
また、予測受信ウエイトは、最小自乗誤差ビームを形成するウエイト構成とすれば、複数の端末装置2−1〜2−sに対する空間多重送信時において、チャネル情報により検知される多様な空間相関状況に応じた送信ウエイトとして、複数の受信ユニットアンテナ20−1〜20−mを有する端末装置2がチャネル推定行列を特異値分解して得られる左特
異ベクトルを用いた時の受信品質を予測することで、複数の異なる送信ウエイト生成アルゴリズムにより生成されたものから最適なものを選択することができる。
これにより、チャネル推定行列を特異値分解して得られる左特異ベクトルのうち、特に、特異値が最大であるものに対応する左特異ベクトルを用いることで、信号対雑音電力比(SNR)を最大化する受信品質が得られる性質を利用して、複数の送信ウエイト情報群から、信号対雑音電力比を最大化する受信品質が得られる送信ウエイト情報を選択することができる。
特に、同時接続する端末装置間の空間相関が低く同一チャネル干渉波が少ない場合に有効である。また、端末装置2における受信ウエイトはチャネル推定行列から一意に決定することができ、端末装置2への空間多重ストリーム数が端末装置2における受信ユニットアンテナ数よりも小さい場合、送信ウエイトを形成する場合の同一チャネル干渉低減のための制約条件を緩和することができる送信ダイバーシチ効果の高い送信ウエイトを選択することができる。これらにより、通信品質の向上及び確保とそれに伴う空間多重伝送によるシステム容量の改善が図れるという効果が得られる。
また、予測受信ウエイトはゼロフォーミングビームを形成するウエイト構成とすれば、複数の端末装置2−1〜2−sに対する空間多重送信時において、チャネル情報により検知される多様な空間相関状況に応じた送信ウエイトとして、複数の受信ユニットアンテナ20−1〜20−mを有する端末装置2が最小自乗誤差(MMSE)ビームを用いた時の受信品質を予測することで、複数の異なる送信ウエイト生成アルゴリズムにより生成されたものから最適なものを選択することができる。
これにより、最小自乗誤差(MMSE)ビームを形成するウエイトを端末装置2が用いることで信号対干渉雑音電力比(SINR)を最大化する受信品質が得られる性質を利用し、複数の送信ウエイト情報群から、信号対干渉雑音電力比を最大化する受信品質が得られる送信ウエイト情報を選択することができ、同一チャネル干渉波が存在する環境下における多様な空間相関状況下において通信品質の向上及び確保とそれに伴う空間多重伝送によるシステム容量の改善が図れるという効果が得られる。
また、送信電力決定部8は、選択送信ウエイト情報を基に、前記複数の端末装置2−1〜2−sに対する空間多重信号の送信電力を決定する機能を有する構成とすれば、複数の端末装置2−1〜2−sに対する空間多重送信時において、チャネル情報により検知される多様な空間相関状況に応じた送信ウエイトとして、複数の受信ユニットアンテナ20−1〜20−mを有する端末装置2がゼロフォーシング(ZF)ビームを用いた時の受信品質を予測することで、複数の異なる送信ウエイト生成アルゴリズムにより生成されたものから最適なものを選択することができる。
更に、ゼロフォーシング(ZF)ビームを形成するウエイトを端末装置2が用いることで、同一チャネルの干渉雑音電力の抑圧を優先した拘束条件で、受信ウエイト形成した受信品質が得られる性質を利用し、複数の送信ウエイト情報群から、信号対干渉雑音電力比を最大化する受信品質が得られる送信ウエイト情報を選択することができる。これにより、同一チャネル干渉抑圧した上で受信電力を最大化する送信ウエイトが決定でき、多様な空間相関状況下において通信品質の向上及び確保とそれに伴う空間多重伝送によるシステム容量の改善が図れるという効果が得られる。また、ZFビームはMMSEビームより少ない演算量で算出可能であることから、回路規模の低減、装置の低コスト化が可能となるという効果も得られる。
また、無線基地局装置1は、空間多重伝送すべき1つ又は複数の受信ユニットアンテナ
を有する複数の端末装置2−1〜2−sに対するチャネル情報を基に、前記複数の端末装置2−1〜2−sに対する空間多重伝送を行う為の送信ウエイト情報群を、異なるアルゴリズムにより生成する複数の送信ウエイト生成部6−1〜6−nと、
前記チャネル情報を基に、予め特定のアルゴリズムを持つ送信ウエイト生成部6を選択するビーム選択部7と、選択された送信ウエイト情報を送信ウエイトとして用い、空間多重伝送を行う機能を有する構成とすれば、多様な空間相関状況下において通信品質の向上及び確保とそれに伴う空間多重伝送によるシステム容量の改善が図れるという効果が得られる。
また、複数の送信ウエイト生成部6−1〜6−nのうち1つの送信ウエイト生成部6は、端末装置2に対する固有ベクトルビームを形成する送信ウエイト情報を生成する機能を有する構成とすれば、複数の端末装置2−1〜2−sに対する空間多重送信時において、チャネル情報により検知される多様な空間相関状況に応じて特に、端末装置間のチャネルの相関が低い場合に、他端末装置2への与干渉低減の拘束条件を付加せずに所望端末装置2へ受信品質を高める送信ウエイトを用いることができるという効果が得られる。
また、複数の送信ウエイト生成部6−1〜6−nのうち1つの送信ウエイト生成部6は、所望の端末装置2以外の端末装置2に対して与干渉を低減又は与えない送信ウエイト情報を生成する機能を有する構成とすれば、複数の端末装置2−1〜2−sに対する空間多重送信時において、チャネル情報により検知される多様な空間相関状況に応じて特に、端末装置間のチャネルの相関が比較的高い場合に、他端末装置2への与干渉を最小限にする拘束条件を付加した上で所望の端末装置2への受信品質を高める送信ウエイトを用いることができるという効果が得られる。
また、複数の送信ウエイト生成部6−1〜6−nのうち1つの送信ウエイト生成部6は、所望の端末装置2が最大比合成受信することを仮定し、所望の端末装置2以外の端末装置2に対して与干渉を低減又は与えない送信ウエイト情報を生成する機能を有する構成とすれば、複数の端末装置2−1〜2−sに対する空間多重送信時において、チャネル情報により検知される多様な空間相関状況に応じて特に、端末装置間のチャネルの相関が比較的高く、他端末装置2が複数の受信ユニットアンテナ20−1〜20−mを有する場合に、所望端末装置2以外へ他端末装置2への与干渉を最小限にする拘束条件数を低減して付加することができる。これにより、所望の端末装置2への受信品質を高める送信ウエイトを用いることができるという効果が得られる。
また、複数の送信ウエイト生成部6−1〜6−nのうち1つの送信ウエイト生成部6は、全ての成分がゼロである送信ウエイトベクトルを形成する送信ウエイト情報を生成する機能を有する構成とすれば、複数の端末装置2−1〜2−sに対する空間多重送信時において、チャネル情報により検知される多様な空間相関状況に応じて特に、端末装置間のチャネルの相関が高い場合に、他端末装置2への送信を行わない送信ウエイトを用いることができるという効果が得られる。
また、複数の送信ウエイト生成部6−1〜6−nのうち1つの送信ウエイト生成部6は、予め固定の送信ウエイトベクトルを形成する送信ウエイト情報を生成する機能を有する構成とすれば、複数の端末装置2−1〜2−sに対する空間多重送信時において、チャネル情報により検知される多様な空間相関状況に応じて適する予め固定の送信ウエイトを選択的に可変できる。これにより、多様な空間相関状況下において通信品質の向上及び確保とそれに伴う空間多重伝送によるシステム容量の改善が図れるという効果が得られる。
また、無線基地局装置1は、選択された送信ウエイト情報データより形成される送信ウエイトベクトルを用い空間多重伝送される信号毎に、予め既知の信号系列を挿入して空間
多重伝送する機能を有する構成とすれば、複数の端末装置2−1〜2−sに対する空間多重送信時において、チャネル情報により検知される多様な空間相関状況に応じて適する送信ウエイト生成方法に可変でき、さらに、チャネル情報に誤差が含まれる場合でも、端末装置側で送信信号毎の既知の信号系列を用いて、空間多重された信号を分離受信することができる。これにより、多様な空間相関状況下において通信品質の向上及び確保とそれに伴う空間多重伝送によるシステム容量の改善が図れるという効果が得られる。
また、端末装置2は、空間多重伝送された信号毎に付与された予め既知の信号系列を基に、チャネル推定を行い、空間多重信号から所望の信号を分離、出力する為の受信ウエイトを生成する機能を有する構成とすれば、複数の端末装置2−1〜2−sに対する空間多重送信時において、端末装置2側で送信信号毎の既知の信号系列を用いて、空間多重された信号を分離受信することができる。
これにより、特に、無線基地局装置1側で誤差が含まれるチャネル情報を基に送信ウエイト生成をおこなった場合、端末装置2側で送信信号毎の既知の信号系列を用いて、空間多重された信号を分離受信することができ、多様な空間相関状況下において通信品質の向上及び確保とそれに伴う空間多重伝送によるシステム容量の改善が図れるという効果が得られる。
また、チャネル推定部222と空間多重分離部223とは、チャネル推定部222においてチャネル推定の結果得られた値を基にして、受信ウエイトとして最大比合成ウエイトを生成する機能を有する構成とすれば、複数の端末装置2−1〜2−sに対する空間多重送信時において、端末装置2側で送信信号毎の既知の信号系列を用いて、空間多重された信号を分離受信することができる。
これにより、特に、無線基地局装置1側で誤差が含まれるチャネル情報を基に送信ウエイト生成をおこなった場合、端末装置2側で送信信号毎の既知の信号系列を用いて、空間多重された信号を受信電力が最大となるように分離受信することができ、多様な空間相関状況下において通信品質の向上及び確保とそれに伴う空間多重伝送によるシステム容量の改善が図れるという効果が得られる。
また、チャネル推定部222と空間多重分離部223とは、チャネル推定部222においてチャネル推定の結果得られた値を基にして、受信ウエイトとして最小自乗誤差ウエイトを生成する機能を有する構成とすれば、複数の端末装置2−1〜2−sに対する空間多重送信時において、端末装置2側で送信信号毎の既知の信号系列を用いて、空間多重された信号を分離受信することができる。
これにより、特に、無線基地局装置1側で誤差が含まれるチャネル情報を基に送信ウエイト生成をおこなった場合、端末装置2側で送信信号毎の既知の信号系列を用いて、空間多重された信号を所望受信電力対干渉雑音電力が最大となるように分離受信することができ、多様な空間相関状況下において通信品質の向上及び確保とそれに伴う空間多重伝送によるシステム容量の改善が図れるという効果が得られる。
また、チャネル推定部222と空間多重分離部223とは、空間多重伝送された信号毎に挿入された予め既知の信号系列を基に、チャネル推定を行い、得られたチャネル推定行列を特異値分解して得られる最大特異値に対応する左特異ベクトルを、空間多重信号から所望の信号を分離、出力する為の受信ウエイトとして生成する機能を有する構成とすれば、複数の端末装置2−1〜2−sに対する空間多重送信時において、端末装置2側で送信アンテナ毎の既知の信号系列を用いて、空間多重された信号を分離受信することができる。
これにより、特に、他端末装置2への与干渉を最小限にする拘束条件を付加した上で所望の端末装置2への受信品質を高める送信ウエイトを用いた場合、他端末装置2に対する同一チャネル干渉波を抑圧し、空間多重された信号成分の受信電力を最大化することができ、通信品質の向上及び確保とそれに伴う空間多重伝送によるシステム容量の改善が図れるという効果が得られる。
また、本発明の無線通信方法は、端末装置2からの受信信号から、前記端末装置2と無線基地局装置1との間のチャネル情報を抽出し、抽出されたチャネル情報に基づいて空間多重伝送すべき複数の端末装置間の空間相関係数を求めるステップと、他端末装置2への与干渉を最小限にするという拘束条件を付加した上で所望端末装置への受信品質を高める送信ウエイトを生成するアルゴリズムを用いて送信ウエイトを生成する第一の方式と、
他端末装置2への与干渉を低減するという拘束条件を付加せずに、所望端末装置2への受信品質を高める送信ウエイトを生成するアルゴリズムを用いる第二の方式と、単一の送信ウエイトを生成するアルゴリズムを用いて送信ウエイトを生成する第三の方式とから、予め決められた選択処理手法に基づいて、前記ステップにより求めた空間相関係数に応じて、通信品質が最良となる方式を選択するステップとを有する構成とすることで、3つの異なる送信ウエイト生成方式の空間相関係数対通信品質特性に特定の関係があることを利用し、予め、この特性を複数の区間に区分けして、各区間において、通信品質が最良となる方式が選択されるように、方式選択処理方手法設定することができ、空間相関係数の計算後において、そのつど最適な方式選択を行う必要が無く、端末装置間の空間相関状況に適した送信ウエイト生成方法を選択することができるので、端末間の空間相関状況に対しロバストな空間多重伝送が可能となる。その結果、空間多重接続すべき端末装置の割り当て処理が簡易で、処理時間の短縮が図れると共に空間多重伝送によるシステム容量の改善が図れるという効果が得られる。
(実施の形態2)
本発明の第2の実施の形態の無線基地局装置100を図11に示す。ブロック図中、第1の実施の形態の無線基地局装置1と異なる点は、ビーム選択部7の代りに選択スイッチ部107−aを用い、さらにチャネル情報取得部4と送信ウエイト生成部6−1〜6−nの間に、選択スイッチ部107−bを挿入している点である。また、機能の観点からは、チャネル情報取得部4は、従来の機能である、チャネル情報の抽出動作に加えて、さらに抽出したチャネル情報を基に、最適な送信ウエイト生成部6を選択する為の選択スイッチ部制御機能を有する点である。
一方、選択スイッチ部107−aと107−bは連動しており、選択スイッチ部107−bが例えば、送信ウエイト生成部6−1を選択した場合、選択スイッチ部107−aは送信ウエイト生成部6−1の出力側と接続する。また、選択スイッチ部107−bは、送信ウエイト生成部の動作スイッチとも連動しており、接続された送信ウエイト生成部6に電源が投入されると共にチャネル情報が入力される。この動作により、チャネル情報が抽出されると共に、最適な送信ウエイト生成部が選択され動作し、その出力である送信ウエイト情報が得られる。
これにより、選択された送信ウエイト生成部6のみを動作させることになるので、本発明の第1の実施の形態の効果に加えて、無線基地局装置100における電力消費の低減化が図れる。更に、送信ウエイト生成部6における送信ウエイト計算を共通のCPUを用いて計算している場合には、CPUを選択された送信ウエイト生成部6のみが占有することとなるので、演算処理能力の向上が図れる。結果として、システムトータルとしてのスループットの向上が図れる。
以上のように本発明の第2の実施の形態においては、空間多重伝送すべき複数の端末装置2−1〜2−sに対するチャネル情報を基に、前記複数の端末装置2−1〜2−sに対する空間多重伝送を行う為の送信ウエイトを生成する複数の送信ウエイト生成部6−1〜6−nから任意の送信ウエイト生成部6を選択する選択スイッチ部107−a、107−bを送信ウエイト生成部6−1〜6−nの両端に有する構成により、多様な空間相関状況下において通信品質の向上及び確保とそれに伴う空間多重伝送によるシステム容量の改善が図れるという効果が得られる。
また、端末間の空間相関状況に適した送信ウエイト生成手法を予め選択することができ、端末間の空間相関状況に対しロバストな空間多重送信が可能となり、従来の空間相関係数に基づく割り当て処理の簡易化を図れる。更に、無線基地局装置100における電力消費の低減化が図れると共に、演算処理能力の向上が図られ、結果として、システムトータルとしてのスループットの向上が図れるという効果が得られる。また、これにより無線基地局装置100の簡易化、及び空間多重伝送制御のための処理時間を短縮化できるという効果も得られる。
また、送信電力決定部8は、選択された送信ウエイト情報を基に、前記複数の端末装置2−1〜2−sに対する空間多重信号の送信電力を決定する機能を有する構成とすれば、複数の端末装置2−1〜2−sに対する空間多重送信時において、チャネル情報により検知される多様な空間相関状況に応じて適する送信ウエイトを、複数の異なる送信ウエイト生成アルゴリズムから最適なもの選択して生成し、更にそれらの送信ウエイトで送信される信号電力を制御することができる。
これにより、所望の通信品質を満たす信号電力で送信することが可能となり、必要以上の送信電力を用いた送信を行わないため同一チャネル干渉を低減できシステム容量の改善が図れるという効果が得られる。
また、複数の送信ウエイト生成部6−1〜6−nのうち1つの送信ウエイト生成部6は、端末装置2−1〜2−sに対する固有ベクトルビームを形成する送信ウエイト情報を生成する機能を有する構成とすれば、複数の端末装置2−1〜2−sに対する空間多重送信時において、チャネル情報により検知される多様な空間相関状況に応じて特に、端末装置間のチャネルの相関が低い場合に、他端末装置2への与干渉低減の拘束条件を付加せずに所望端末装置2へ受信品質を高める送信ウエイトを用いることができるという効果が得られる。
また、複数の送信ウエイト生成部6−1〜6−nのうち1つの送信ウエイト生成部6は、所望の端末装置2以外の端末装置2に対して与干渉を低減又は与えない送信ウエイト情報を生成する機能を有する構成とすれば、複数の端末装置2−1〜2−sに対する空間多重送信時において、チャネル情報により検知される多様な空間相関状況に応じて特に、端末装置間のチャネルの相関が比較的高い場合に、他端末装置2への与干渉を最小限にする拘束条件を付加した上で所望の端末装置2への受信品質を高める送信ウエイトを用いることができるという効果が得られる。
また、複数の送信ウエイト生成部6−1〜6−nのうち1つの送信ウエイト生成部6は、所望の端末装置2が最大比合成受信することを仮定し、所望の端末装置2以外の端末装置2に対して与干渉を低減又は与えない送信ウエイト情報を生成する機能を有する構成とすれば、複数の端末装置2−1〜2−sに対する空間多重送信時において、チャネル情報により検知される多様な空間相関状況に応じて特に、端末装置間のチャネルの相関が比較的高く、他端末装置2が複数の受信ユニットアンテナ20−1〜20−mを有する場合に、所望端末装置2以外へ他端末装置2への与干渉を最小限にする拘束条件数を低減して付
加することができる。それにより、所望の端末装置2への受信品質を高める送信ウエイトを用いることができるという効果が得られる。
また、複数の送信ウエイト生成部6−1〜6−nのうち1つの送信ウエイト生成部6は、全ての成分がゼロである送信ウエイトベクトルを形成する送信ウエイト情報を生成する機能を有する構成とすれば、複数の端末装置2−1〜2−sに対する空間多重送信時において、チャネル情報により検知される多様な空間相関状況に応じて特に、端末装置間のチャネルの相関が高い場合に、他端末装置2への送信を行わない送信ウエイトを用いることができるという効果が得られる。
また、複数の送信ウエイト生成部6−1〜6−nのうち1つの送信ウエイト生成部6は、予め固定の送信ウエイトベクトルを形成する送信ウエイト情報を生成する機能を有する構成とすれば、複数の端末装置2−1〜2−sに対する空間多重送信時において、チャネル情報により検知される多様な空間相関状況に応じて適する予め固定の送信ウエイトを選択的に可変できる。これにより、多様な空間相関状況下において通信品質の向上及び確保とそれに伴う空間多重伝送によるシステム容量の改善が図れるという効果が得られる。
また、無線基地局装置100は、選択された送信ウエイト情報データより形成される送信ウエイトベクトルを用い空間多重伝送される信号毎に、予め既知の信号系列を挿入して空間多重伝送する機能を有する構成とすれば、複数の端末装置2−1〜2−sに対する空間多重送信時において、チャネル情報により検知される多様な空間相関状況に応じて適する送信ウエイト生成方法に可変でき、さらに、チャネル情報に誤差が含まれる場合でも、端末装置側で送信信号毎の既知の信号系列を用いて、空間多重された信号を分離受信することができる。これにより、多様な空間相関状況下において通信品質の向上及び確保とそれに伴う空間多重伝送によるシステム容量の改善が図れるという効果が得られる。
(実施の形態3)
本発明の第3の実施の形態の無線基地局装置1−Aを図12に、端末装置2−Cを図13に示す。ブロック図中、本実施の形態の無線基地局装置1−Aが、第1の実施の形態の無線基地局装置1と異なる点は、端末装置2−Cから送信された空間多重分離手法情報を取得する分離アルゴリズム取得部400をさらに備え、空間多重分離手法情報を基に、送信ウエイト生成部6−1〜6−nの出力のうち一つを選択するビーム選択部401を有する点である。また、本実施の形態の端末装置2−Cが、第1の実施の形態の端末装置2−Aと異なる点は、端末装置2−Cが受信時に用いる空間多重分離部223における、空間多重分離手法を記憶している空間多重分離手法記憶部300をさらに備え、その出力情報である空間多重分離手法情報301に、適切なデータ処理を施し、高周波信号に変換する送信部212−Aとを備えている点である。以下では、上記のように追加及び変更された構成要素における、実施の形態1と異なる動作について主に説明する。
図13おいて、複数のアンテナを有する本発明の実施の形態の端末装置2−Cは、送信ユニット210と送信ユニットアンテナ216及び受信ユニット220と受信ユニットアンテナ20−1〜20−mとを備えている。
送信ユニット210は、端末利用者が送信しようとするデータ情報が入力されるデータ入力部214とチャネル推定部222から送られてきたチャネル推定情報及び、空間多重分離部223の空間多重分離手法を記憶している空間多重分離手法記憶部300からの出力情報である空間多重分離手法情報301とに適切なデータ処理を施し、高周波信号に変換する送信部212−Aとを備えている。空間多重分離手法には、MMSE、ZF、MLD(Maximum Likelihood Detection、最尤判定法)、SI
C(Successive(or Serial)−Interference−Can
celler,逐次型干渉キャンセラー)、PIC(Parallel−Interference−Canceller、並列型干渉キャンセラー)といった空間多重分離で用いるアルゴリズムの情報を含む。また、それらの情報は、あらかじめカテゴライズされたテーブルを用いて、付与された分類番号を伝送することで、伝送時の情報量を低減することができる。あるいはまた、分離手法の性能を示す性能指標といったものでランク分けしたテーブルを用いてもよい。例えば、MMSE、ZFといったものはクラス1、SIC、PICといったものはクラス2、MLDといったものはクラス3、のようにランク分けし、対応付けたテーブルを用いる。
受信ユニット220は、受信ユニットアンテナ20−1〜20−mのそれぞれに対応し、受信アンテナ20−1〜20−mで受信された高周波信号をベースバンド信号に変換する受信部221−1〜221−mと、複数のベースバンド信号からダウンリンクにおける伝搬路のチャネル応答情報を推定するチャネル推定部222と、チャネル推定部222で得られたチャネル応答情報を基に空間多重信号から所望信号を分離、抽出する空間多重分離部223と、分離受信された所望信号から、送信データ系列を復元する復調部224と、復元された受信データ系列を他の機器へ出力するか、又は、端末装置利用者に、その情報を伝えるデータ出力部225とを備えている。
ここで、送信ユニットアンテナ216と受信ユニットアンテナ20−1〜20−mとは、別のものとして扱っているが、同じアンテナを共有していても構わない。
次に、無線基地局装置1−A及び端末装置2−Cの動作について説明する。最初に、ダウンリンクのチャネル情報が端末装置2−1〜2−sにおいて推定されていることを前提として、この情報が無線基地局装置1−Aに通知される動作を概説する。
まず、端末装置2−Cの送信ユニット210において、チャネル推定部222により推定された伝搬路(図示せず)のチャネル情報が、送信部212に導かれ、送信部212により、制御チャネル又は報知チャネルを介して無線基地局装置1に伝えられる。つまり、前記チャネル情報の載った制御チャネル信号又は報知チャネル信号が送信ユニットアンテナ216へと導かれ、無線基地局装置1−Aに向けて送信ユニットアンテナ216から伝搬路(図示せず)へと放出される。
ここで、制御チャネル又は報知チャネルは、無線基地局装置1−Aと端末装置2−Cを有効に動作させる為の情報がやり取りされる為の通信用チャネルであり、端末装置2−Cの利用者が送受信しようとする情報がやり取りされる通信用チャネルとは異なる通信用チャネルである。
なお、端末装置2−Cの利用者が送ろうとする情報は、データ入力部214から送信部212に入力され、適切な信号処理が施され、高周波信号に変換された後、送信ユニットアンテナ216を介して無線基地局装置1−Aへと送られる。
その後、無線基地局装置1−Aにおいて、チャネル情報取得部4は、端末装置2−Cの構成を有する複数の端末装置2−1〜2−sから基地局アンテナ11−1〜11−sに向けて送られてくる制御チャネル信号又は報知チャネル信号の中から、各端末装置2−1〜2−sの送出したチャネル情報をそれぞれ抽出し、送信ウエイト決定部5へ出力する。
次に、通知されたダウンリンクのチャネル情報及び空間多重分離手法情報を基に、空間多重接続すべき(割り当てられた)端末装置2−1〜2−s宛ての送信信号に適切な送信ウエイトを乗算して空間多重伝送が行われる動作を概説する。
まず、無線基地局装置1−Aにおいて、チャネル情報取得部4は、空間多重接続すべき(割り当てられた)端末装置2−1〜2−sから基地局アンテナ11−1〜11−sに向けて送られてくる制御チャネル信号又は報知チャネル信号の中から、各端末装置2−1〜2−sから送出されたチャネル情報をそれぞれ抽出し、送信ウエイト決定部5へ出力する。この時抽出されるチャネル情報は、無線基地局装置1−Aから端末装置2−1〜2−sへのダウンリンクのチャネル情報である。また、分離アルゴリズム情報取得部400は、空間多重接続すべき(割り当てられた)端末装置2−1〜2−sから基地局アンテナ11−1〜11−sに向けて送られてくる制御チャネル信号又は報知チャネル信号の中から、各端末装置2−1〜2−sから送出された空間多重分離手法情報をそれぞれ抽出し、送信ウエイト決定部5へ出力する。
次に、送信ウエイト決定部5は、空間多重接続すべき端末装置2−1〜2−sに対して、端末装置間の相関状況に応じて最適な信号伝送を行うために、それぞれ異なる送信ウエイト生成アルゴリズムを持つ複数の送信ウエイト生成部6−1〜6−nによって、複数種の送信ウエイト生成情報を生成させる。その後、ビーム選択部401によって、前記第1から第n番目の送信ウエイト生成部6−1〜6−nによって生成された複数の送信ウエイト生成情報群の中から、所定の判定基準を最大化する送信ウエイト情報を選択して、この情報を送信電力決定部8と送信ビーム形成部9に出力する。
次に、送信電力決定部8は、入力された送信ウエイト情報に基づいて、各空間多重ストリームに対する送信電力を決定する為の電力配分係数を算出する。
一方、送信信号生成部3−1〜3−sでは、空間多重接続すべき(優先割り当てされた)端末装置2−1〜2−s宛ての信号(以下、送信データ系列と呼ぶ)がそれぞれ生成され、適切な信号処理が施された後、出力される。
そして、電力係数乗算器10−1〜10−sにおいて、各送信信号生成部3−1〜3−sの信号出力に対し、送信電力決定部8で算出された電力配分係数を乗算する。次に、送信ビーム形成部9は、電力配分係数が乗算されたそれぞれの送信データフレーム系列信号に対して、ビーム選択部401からの送信ウエイト情報を基に、所定の(選択された)ビームを形成する送信ウエイトを乗算したベースバンドのシンボルデータを生成する。その後、ベースバンドのシンボルデータであるデジタルデータを図示しないデジタル/アナログ変換器と、帯域制限フィルタ及び、周波数変換器により、デジタル/アナログ変換し、さらに帯域制限を行った後に、キャリア周波数に変換した高周波信号を出力する。そして、無線基地局アンテナ11−1〜11−sは、供給された高周波信号を空間多重接続すべき端末装置2−1〜2−sに向けて、図示しない伝搬路(空間)に放出する。
ここで、無線基地局装置1において空間多重伝送された信号に対する端末装置2−1〜2−sにおける受信処理についての動作については、実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
以上の詳細動作について、[1]送信ウエイト生成部6−1〜6−nに組み込まれる送信ウエイト生成アルゴリズム及び[3]送信電力分配係数の決定方法については、実施の形態1と同様であり、詳細な説明を省略する。以下では、実施の形態1と異なる動作となる[2]ビーム選択部401における送信ウエイト情報選択方法について詳細な説明を行う。
[2]ビーム選択部401における送信ウエイト情報選択方法について詳細な説明
ここでは、ビーム選択部401における送信ウエイト情報選択方法について詳細な説明を行う。ビーム選択部401は、第1〜第n番目の送信ウエイト生成部6−1〜6−nに
よって生成された複数の送信ウエイト情報群の中から、所定の判定基準を最大化する送信ウエイト情報を選択する。判定基準としては、端末装置2−Cで受信する信号対雑音電力比(SNR)あるいは信号対干渉波電力比(SINR)等の信号品質を示す物理量の予測値を、分離アルゴリズム情報取得部400からの出力に基づき算出する。この点が、実施の形態1におけるビーム選択部7との異なる点である。
すなわち、実施の形態1では、端末装置2−kのアンテナ数が複数である場合、受信ウエイトR(k)による指向性形成を仮定して(数16)を用いてSINR評価を行っていたが、本実施の形態では、分離アルゴリズム情報取得部400からの出力である当該端末装置2−kの空間多重分離手法情報に基づき、第k番目の端末装置2−kに対するチャネル情報H(k)を用いて、受信ウエイトR(k)を生成する。ここで、受信ウエイトR(k)は端末装置2−kの受信ユニットアンテナ数Nr(k)個の要素を持つ行ベクトルを示す。(数16)において、下付き「n」はユーザ端末つまり、空間多重接続を行う個々の端末装置2に順番に番号を付した場合の数を示しており、本実施例では端末装置2−1〜2−sに対応する。また、空間多重分離手法情報としては、干渉波成分が存在する場合は、MMSE手法、ZF手法、固有ベクトルビーム受信方法の適用が可能であり、干渉波成分を考慮しなくても良い場合は、最大比合成受信ウエイトなどが含まれる。
以上、述べた計算により(数16)に示すWn(k)を変数として、各ユーザのSINRn(k)を算出する。これを、第1〜第n番目の送信ウエイト生成部の出力に対し全て計算する。そして、それら各ユーザのSINRn(k)の総和が最大となる送信ウエイトを生成する第s番目の送信ウエイト生成部6−sからの出力情報である送信ウエイトWs(k)を選択する。ここで、k=1〜Nsである。
以上のように本発明の実施の形態3においては、端末装置から送信された空間多重分離手法情報を利用することで、予測SINR評価を行う。これにより、予測SINR評価値を実際の端末装置で受信されるSINRにより近づけることができる。従って、そのような予測SINRを用いて、送信ウエイトを選択することができるため、より最適な送信ウエイトを選択でき、通信を行う端末装置2の通信品質を高めることができ、通信システムの容量を増加できる。
また、送信電力配分係数の算出の際にも予測SINRを用いるため、予測SINR評価値を実際の端末装置で受信されるSINRに、より近づけることができるという効果により、より最適な電力配分を行うことができる。このような送信電力制御により通信を行う端末装置2の通信品質を必要十分なレベルで確保することができ、必要以上に送信電力を高めることがなくなるため、セルラーシステムに本実施の形態を適用する場合、セル間干渉を低減でき、通信システムの容量を増加させる効果を有する。
(実施の形態4)
本発明の第4の実施の形態の無線基地局装置1−Bを図14に、端末装置2−Dを図15に示す。ブロック図中、第1の実施の形態の無線基地局装置1と異なる点は、端末装置2−Dから送信された他セル干渉情報を取得する他セル干渉情報取得部410を更に備えたことと、取得した他セル干渉情報を基に、送信ウエイト生成部6−1〜6−nの出力のうち一つを選択するビーム選択部411を有する点である。
また、第1の実施の形態の端末装置2−Aと異なる点は、端末装置2−Dが受信時に受ける他のセルからの干渉状況を測定する他セル干渉検出部302と、その出力情報である他セル干渉情報310に、適切なデータ処理を施し、高周波信号に変換する送信部212−Bとを備えている点である。以下では、上記で追加及び変更された構成要素における実施の形態1と異なる動作について主に説明する。
図15おいて、複数のアンテナを有する本発明の実施の形態の端末装置2−Dは、送信ユニット210と送信ユニットアンテナ216及び受信ユニット220と受信ユニットアンテナ20−1〜20−mとを備えている。
送信ユニット210は、端末利用者が送信しようとするデータ情報が入力されるデータ入力部214と、チャネル推定部222から送られてきたチャネル推定情報及び他セル干渉検出部302から出力される他セル干渉情報に適切なデータ処理を施し、高周波信号に変換する送信部212−Bとを備える。
受信ユニット220は、受信ユニットアンテナ20−1〜20−mのそれぞれに対応し、受信アンテナ20−1〜20−mで受信された高周波信号をベースバンド信号に変換する受信部221−1〜221−mと、複数のベースバンド信号からダウンリンクにおける伝搬路のチャネル応答情報を推定するチャネル推定部222と、チャネル推定部222で得られたチャネル応答情報を基に空間多重信号から所望信号を分離、抽出する空間多重分離部223と、分離受信された所望信号から、送信データ系列を復元する復調部224と、復元された受信データ系列を他の機器へ出力するか、又は、端末装置利用者に、その情報を伝えるデータ出力部225とを備えている。
ここで、送信ユニットアンテナ216と受信ユニットアンテナ20−1〜20−mとは別のものとして扱っているが、同じアンテナを共有していても構わない。
次に、無線基地局装置1−B及び端末装置2−Dの動作について説明する。最初に、ダウンリンクのチャネル情報が端末装置2−1〜2−sにて推定されていることを前提として、このダウンリンクのチャネル情報が無線基地局装置1−Bに通知される動作を概説する。
まず、端末装置2−Dの送信ユニット210において、チャネル推定部222により推定された伝搬路(図示せず)のチャネル情報が、送信部212に導かれ、送信部212により、制御チャネル又は報知チャネルを介して無線基地局装置1−Bに伝えられる。つまり、前記チャネル情報の載った制御チャネル信号又は報知チャネル信号が、送信ユニットアンテナ216へと導かれ、無線基地局装置1−Bに向けて送信ユニットアンテナ216から伝搬路(図示せず)へと放出される。
ここで、制御チャネル又は報知チャネルは、無線基地局装置1−Bと端末装置2−Dとを有効に動作させる為の情報がやり取りされる為の通信用チャネルであり、端末装置2−Dの利用者が送受信しようとする情報をやり取りする通信用チャネルとは異なる通信用チャネルである。
なお、端末装置2−Dの利用者が送ろうとする情報は、データ入力部214から送信部212に入力され、適切な信号処理が施され、高周波信号に変換された後、送信ユニットアンテナ216を介して無線基地局装置1−Bへと送られる。
その後、無線基地局装置1−Bにおいて、チャネル情報取得部4は、端末装置2−Dの構成を有する複数の端末装置2−1〜2−sから基地局アンテナ11−1〜11−sに向けて送られてくる制御チャネル信号又は報知チャネル信号の中から、各端末装置2−1〜2−sの送出したチャネル情報をそれぞれ抽出し、送信ウエイト決定部5へ出力する。
次に、通知されたダウンリンクのチャネル情報及び空間多重分離手法情報を基に、空間多重接続すべき端末装置2−1〜2−s、つまり、割り当てられた端末装置2−1〜2−
s宛ての送信信号に、適切な送信ウエイトを乗算して、空間多重伝送が行われる動作を概説する。
まず、無線基地局装置1−Bにおいて、チャネル情報取得部4は、空間多重接続すべき端末装置2−1〜2−sから基地局アンテナ11−1〜11−sに向けて送られてくる制御チャネル信号又は報知チャネル信号の中から、各端末装置2−1〜2−sから送出されたチャネル情報をそれぞれ抽出し、送信ウエイト決定部5へ出力する。この時抽出されるチャネル情報は、無線基地局装置1−Bから端末装置2−1〜2−sへのダウンリンクのチャネル情報である。また、他セル干渉情報取得部410は、空間多重接続すべき(割り当てられた)端末装置2−1〜2−sから基地局アンテナ11−1〜11−sに向けて送られてくる制御チャネル信号又は報知チャネル信号の中から、各端末装置2−1〜2−sから送出された他セル干渉情報をそれぞれ抽出し、送信ウエイト決定部5へ出力する。
次に、送信ウエイト決定部5は、空間多重接続すべき端末装置2−1〜2−sに対して、端末装置間の相関状況に応じて最適な信号伝送を行うために、それぞれ異なる送信ウエイト生成アルゴリズムを持つ複数の送信ウエイト生成部6−1〜6−nによって、複数種の送信ウエイト生成情報を生成させる。
その後、ビーム選択部411によって、前記第1から第n番目の送信ウエイト生成部6−1〜6−nによって生成された複数の送信ウエイト生成情報群の中から、所定の判定基準を最大化する送信ウエイト情報を選択して、選択された送信ウエイト情報を送信電力決定部8と送信ビーム形成部9とに出力する。
次に、送信電力決定部8は、入力された送信ウエイト情報に基づいて、各空間多重ストリームに対する送信電力を決定する為の電力配分係数を算出する。
一方、送信信号生成部3−1〜3−sでは、空間多重接続すべき(優先割り当てされた)端末装置2−1〜2−s宛ての信号(以下、送信データ系列と呼ぶ)がそれぞれ生成され、適切な信号処理が施された後、出力される。
そして、電力係数乗算器10−1〜10−sにおいて、各送信信号生成部3−1〜3−sの信号出力に対し、送信電力決定部8で算出された電力配分係数を乗算する。次に、送信ビーム形成部9は、電力配分係数が乗算されたそれぞれの送信データフレーム系列信号に対して、ビーム選択部411からの送信ウエイト情報を基に、所定のビーム、つまり、選択されたビームを形成する送信ウエイトを乗算したベースバンドのシンボルデータを生成する。その後、ベースバンドのシンボルデータであるデジタルデータを、図示しないデジタル/アナログ変換器と、帯域制限フィルタと、周波数変換器とにより、デジタル/アナログ変換し、さらに帯域制限を行った後に、キャリア周波数に変換した高周波信号を出力する。
そして、無線基地局アンテナ11−1〜11−sは、供給された高周波信号を空間多重接続すべき端末装置2−1〜2−sに向けて、図示しない伝搬路(空間)に放出する。
ここで、無線基地局装置1−Bにおいて空間多重伝送された信号に対する端末装置2−1〜2−sにおける受信処理についての動作については、実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
以上の詳細動作について、[1]送信ウエイト生成部6−1〜6−nに組み込まれる送信ウエイト生成アルゴリズム及び[3]送信電力分配係数の決定方法については、実施の形態1と同様であり、詳細な説明を省略する。以下では、実施の形態1と異なる動作とな
る[2]ビーム選択部411における送信ウエイト情報選択方法について詳細な説明を行う。
[2]ビーム選択部411における送信ウエイト情報選択方法についての詳細な説明
ここでは、ビーム選択部411における送信ウエイト情報選択方法についての詳細な説明を行う。
ビーム選択部411は、第1〜第n番目の送信ウエイト生成部6−1〜6−nによって生成された複数の送信ウエイト情報群の中から、所定の判定基準を最大化する送信ウエイト情報を選択する。判定基準としては、端末装置2−Dで受信する信号対雑音電力比(SNR)あるいは信号対干渉波電力比(SINR)等の信号品質を示す物理量の予測値を、他セル干渉情報取得部410からの出力に基づき算出する。この点が、実施の形態1におけるビーム選択部7と異なる点である。
すなわち、実施の形態1では、チャネル情報H(k)及び、端末装置2−kのアンテナ数が複数である場合、受信ウエイトR(k)による指向性形成を仮定して、(数16)を用いてSINR評価を行っていたが、本実施の形態では、さらに、他セル干渉情報取得部410からの出力である当該端末装置2−kの他セル干渉情報F(k)を含めた(数27)を用いたSINR評価を行う。
ここで、受信ウエイトR(k)は、端末装置2−kの受信ユニットアンテナ数Nr(k)個の要素を持つ行ベクトルを示す。(数27)において、下付き「n」はユーザ端末つまり、空間多重接続を行う個々の端末装置2に、順番に番号を付した場合の数を示しており、本実施例では端末装置2−1〜2−sに対応する。また、空間多重分離手法情報としては、干渉波成分が存在する場合は、MMSE手法、ZF手法、固有ベクトルビーム受信方法の適用が可能であり、干渉波成分を考慮しなくても良い場合は、最大比合成受信ウエイトなどが含まれる。
以上、述べた計算により、(数27)に示すWn(k)を変数として、各ユーザのSINRn(k)を算出する。これを、第1〜第n番目の送信ウエイト生成部の出力に対し、全て計算する。そして、ビーム選択部411は、それら各ユーザのSINRn(k)の総和が最大となる送信ウエイトを生成する第s番目の送信ウエイト生成部6−sからの出力情報である送信ウエイトWs(k)を選択する。ここで、k=1〜Nsである。
以上のように本発明の実施の形態4においては、端末装置2−Dから送信された他セル干渉情報を利用することで、予測SINR評価を行う。これにより、チャネル情報だけで他セル干渉状況を反映した予測SINRを算出することができ、その結果、予測SINR評価値を実際の端末装置で受信されるSINRにより近づけることができる。
従って、そのような予測SINRを用いて、送信ウエイトを選択することができるため、より最適な送信ウエイトを選択でき、通信を行う端末装置2の通信品質を高めることができ、通信システムの容量の増加を図ることができる。
また、送信電力配分係数の算出の際にも予測SINRを用いるため、予測SINR評価値を実際の端末装置で受信されるSINRに、より近づけることができる効果により、より最適な電力配分を行うことができる。
このような送信電力制御により通信を行う端末装置2の通信品質を必要十分なレベルで確保することができ、必要以上に送信電力を高めることがなくなるため、セルラーシステムに本実施の形態を適用する場合、セル間干渉を低減でき通信システムの容量を増加させる効果を有する。
なお、本実施の形態では、端末装置2−Dから他セル干渉情報を無線基地局装置1−Bに送信したが、別な構成として、図16に示す端末装置2−Eの構成を適用してもよい。図16における端末装置2−Eは、図15における他セル干渉検出部302と送信部212−Cとの間に、空間多重伝送可否判定部303を設けている点が端末装置2−Dと異なる。
ここで、空間多重伝送可否判定部303は、他セル干渉検出部302の出力値と所定の閾値304との比較を行い、他セル干渉が所定の閾値より大きい場合には、空間多重伝送を行う場合に十分な通信品質を確保できないと判断して、端末装置2−Eは、空間多重伝送を行わない空間多重伝送禁止情報を、他セル干渉情報として、無線基地局装置1−Bに送信する。一方、無線基地局装置1−Bは、他セル干渉情報を取得して、それに空間多重伝送禁止情報が含まれる場合は、空間多重伝送を行わないモードによる通信を行う。
以上のような構成により、他セル干渉状況に応じて空間多重伝送の可否を端末装置2で判定することができる。これは、他セル干渉に対する閾値設定は、一般的に端末装置の受信方式による性能に依存したものとなるため、無線基地局装置1で、統一的な判断ができないことから、端末装置2での判定結果を基に無線基地局装置1の空間多重伝送の制御を、より適する形で実現できる。これにより、特にセルエッジ等の他セルからの干渉が無視できないエリアで、通信品質を確保することができる。
以上説明した動作により、本実施の形態によれば、多様なセル間干渉状況下において、通信品質の向上及び確保とそれに伴う空間多重伝送によるシステム容量の改善が図れるという効果が得られる。
尚、本発明の他の局面によれば、以下の発明を含む。
第1の発明によれば、空間多重伝送すべき複数の端末装置に対するチャネル情報を基に、前記複数の端末装置に送信する送信ビームの形成に使用する送信ウエイト情報を、異なるアルゴリズムにより生成する複数の送信ウエイト生成部と、前記アルゴリズムにより生成された複数の送信ウエイト情報の内、いずれかの送信ウエイト情報を選択するビーム選択部と、前記選択された送信ウエイト情報を用いて、前記送信ビームを形成する送信ビーム形成部と、を含む無線基地局装置、である。
また、第2の発明によれば、前記選択された送信ウエイト情報を基に、前記空間多重伝送の送信電力を決定する送信電力決定部を、更に有する無線基地局装置、である。
また、第3の発明によれば、第前記ビーム選択部は、前記端末装置における信号対干渉雑音電力比を示す情報を基に、送信ウエイト情報を選択する無線基地局装置、である。
また、第4の発明によれば、前記ビーム選択部は、前記端末装置から通知される、他セル干渉情報を含めた前記端末装置における信号対干渉雑音電力比を示す情報を基に、送信ウエイト情報を選択する無線基地局装置、である。
また、第5の発明によれば、前記ビーム選択部は、前記端末装置が複数のアンテナで受信できる場合に、前記端末装置での受信ウエイトを予測した予測受信ウエイトを用いた上で、送信ウエイト情報を選択する無線基地局装置、である。
また、第6の発明によれば、前記予測受信ウエイトは、最大比合成受信ビームを形成するウエイトである無線基地局装置、である。
また、第7の発明によれば、前記予測受信ウエイトは、チャネル行列を特異値分解して得られる左特異ベクトルである無線基地局装置、である。
また、第8の発明によれば、前記予測受信ウエイトは、最小自乗誤差ビームを形成するウエイトである無線基地局装置、である。
また、第9の発明によれば、前記予測受信ウエイトは、ゼロフォーシングビームを形成するウエイトである無線基地局装置、である。
また、第10の発明によれば、前記予測受信ウエイトは、端末装置から通知される空間多重分離アルゴリズムを基に形成されるウエイトである無線基地局装置、である。
また、第11の発明によれば、前記予測受信ウエイトは、端末装置から通知される空間多重伝送の可否を示す可否判定結果が、禁止判定である場合には、空間多重伝送を禁止するウエイトである無線基地局装置、である。
また、第12の発明によれば、前記ビーム選択部は、前記チャネル情報を基に、予め特定のアルゴリズムを持つ送信ウエイト生成部を選択する無線基地局装置、である。
また、第13の発明によれば、前記複数の送信ウエイト生成部のうち1つの送信ウエイト生成部は、前記端末装置に対する固有ベクトルビームを形成する送信ウエイト情報を生成する無線基地局装置、である。
また、第14の発明によれば、前記複数の送信ウエイト生成部のうち1つの送信ウエイト生成部は、所望の端末装置以外の端末装置に対して与干渉を低減又は与えない送信ウエイト情報を生成する無線基地局装置、である。
また、第15の発明によれば、前記複数の送信ウエイト生成部のうち1つの送信ウエイト生成部は、所望の端末装置が最大比合成受信することを仮定し、所望の端末装置以外の端末装置に対して与干渉を低減又は与えない送信ウエイト情報を生成する無線基地局装置、である。
また、第16の発明によれば、前記複数の送信ウエイト生成部のうち1つの送信ウエイト生成部は、全ての成分がゼロである送信ウエイトベクトルを形成する送信ウエイト情報を生成する無線基地局装置、である。
また、第17の発明によれば、前記複数の送信ウエイト生成部のうち1つの送信ウエイト生成部は、予め固定の送信ウエイトベクトルを形成する送信ウエイト情報を生成する無線基地局装置、である。
また、第18の発明によれば、前記送信ビーム形成部は、前記選択された送信ウエイト情報より形成される送信ウエイトベクトルを用い空間多重伝送される信号毎に、予め既知の信号系列を挿入して空間多重伝送する無線基地局装置、である。
また第2の局面による、第19の発明によれば、空間多重伝送された信号毎に付与された予め既知の信号系列を基に、チャネル推定を行うチャネル推定部と、空間多重信号から所望の信号を分離、出力する為の受信ウエイトを生成する空間多重分離部と、を含む端末装置、である。
また、第20の発明によれば、前記受信ウエイトは、前記チャネル推定の結果得られた値を基にして、最大比合成ウエイトを生成する端末装置、である。
また、第21の発明によれば、前記受信ウエイトは、前記チャネル推定の結果を基にして、最小自乗誤差ウエイトを生成する端末装置、である。
また、第22の発明によれば、前記受信ウエイトは、前記チャネル推定の結果、得られたチャネル行列を特異値分解して得られる最大特異値に対応する左特異ベクトルである、端末装置、である。
また、第23の発明によれば、空間多重信号から所望の信号を分離する場合の空間多重分離アルゴリズムに関する空間多重分離手法情報を記憶する空間多重分離手法記憶部と、前記空間多重分離手法情報を無線基地局装置に通知する送信部と、を更に含む端末装置、である。
また、第24の発明によれば、他セルからの干渉状況を検出する他セル干渉検出部と、前記他セル干渉検出部で検出された検出値を、他セル干渉情報として、無線基地局装置に通知する送信部と、を更に含む端末装置、である。
また、第25の発明によれば、他セルからの干渉状況を検出する他セル干渉検出部と、前記他セル干渉検出部で検出された検出値を基に、空間多重伝送の可否を判定する空間多重伝送可否判定部と、前記空間多重伝送の可否判定結果を基地局装置に通知する送信部と、を更に含む端末装置、である。
また第3の局面による、第26の発明によれば、前記空間多重伝送可否判定部は、前記他セル干渉検出部で検出された検出値が所定値を超える場合、空間多重伝送の禁止と判定し、前記基地局装置に禁止判定結果を通知する端末装置、である。
また、第27の発明によれば、端末装置からの受信信号から、前記端末装置と無線基地局との間のチャネル情報を抽出し、抽出されたチャネル情報に基づいて空間多重伝送すべき複数の端末装置間の空間相関係数を求めるステップと、他端末装置への与干渉を最小限にするアルゴリズムを用いて送信ウエイトを生成する第一の方式、他端末装置への与干渉を低減するアルゴリズムを用いずに送信ウエイトを生成する第二の方式及び、単一の送信ウエイトを生成するアルゴリズムを用いて送信ウエイトを生成する第三の方式から、予め決められた選択処理手法に基づいて、前記ステップにより求めた空間相関係数に応じて、通信品質が最良となる方式を選択するステップとを有する無線通信方法、である。
また、第28の発明によれば、前記選択処理手法は、空間相関係数ρが、0≦ρ≦0.3の領域では、前記第二の方式を選択し、空間相関係数ρが、0.4≦ρ≦0.6の領域では、前記第一の方式を選択し、空間相関係数ρが、0.8≦ρ≦1の領域では、前記第三の方式を選択する、無線通信方法、である。