JP2011225677A - 含フッ素共重合体粉体の製造方法および多孔性含フッ素共重合体粉体 - Google Patents
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Abstract
【課題】角状・ヒゲ状の粒子の発生が抑制された良好な成形加工性を有するエチレン/テトラフルオロエチレン系含フッ素共重合体粉体を、エチレン/テトラフルオロエチレン系含フッ素共重合体の種類を問わずに簡便に製造する方法、およびこれにより得られる良好な成形加工性を有する多孔性エチレン/テトラフルオロエチレン系含フッ素共重合体粉体を提供する。
【解決手段】エチレンに基づく繰り返し単位とテトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位を含有する含フッ素共重合体を、前記含フッ素共重合体の融点以下の温度で該含フッ素共重合体を溶解しうる溶媒に溶解し含フッ素共重合体溶液を得る工程(A)と、前記含フッ素共重合体溶液を噴霧乾燥させる工程(B)と、を有することを特徴とする含フッ素共重合体粉体の製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】エチレンに基づく繰り返し単位とテトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位を含有する含フッ素共重合体を、前記含フッ素共重合体の融点以下の温度で該含フッ素共重合体を溶解しうる溶媒に溶解し含フッ素共重合体溶液を得る工程(A)と、前記含フッ素共重合体溶液を噴霧乾燥させる工程(B)と、を有することを特徴とする含フッ素共重合体粉体の製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、エチレン/テトラフルオロエチレン系含フッ素共重合体粉体の製造方法およびその製造方法により得られる多孔性エチレン/テトラフルオロエチレン系含フッ素共重合体粉体に関する。
含フッ素共重合体粉体は、粉体塗料として好適に使用され、非粘着コーティングや耐食ライニングの用途などに利用されている。
含フッ素共重合体粉体の製造方法として、重合により得られたテトラフルオロエチレン共重合体の微粒子を0.18〜2.6mm程度に凝集した粉体を、ガス流と共に該共重合体の融点以上の温度に維持された雰囲気を有する焼成室内に噴霧する方法が特許文献1に記載されている。
しかしながら、凝集させたテトラフルオロエチレン共重合体粉体は噴霧ノズルで噴霧することにより容易にテトラフルオロエチレン共重合体微粒子に解砕されてしまう。この微粒子は粒子径が小さく、焼成室中において溶融するときに粒子同士が融着しやすい。このような粉体を粉体塗料に使用すると、塗膜表面の平滑性が悪く塗膜にピンホールを生じるため、粒子が融着した凝集物を除去する必要がある。その結果、製品歩留まりが低く、製品コストが高くなるという欠点がある。
一方、特許文献2には、懸濁重合により得られたテトラフルオロエチレン共重合体の乾燥物である共重合体原粉体をロールプレスによりシート化して見かけ密度を高め、次いで粉砕する粉体の製造方法が記載されている。
しかしながら、上記テトラフルオロエチレン共重合体の重合乾燥後の粉体は微粒子を多く含み、ハンドリングが悪く、ロールプレスで均一にシート化することが困難である。圧縮が不十分な部分は後工程で粉砕することにより微粒子に再解砕され、また圧縮が過剰な部分は粉砕することにより大粒子あるいはヒゲ状粒子となる。さらに、シートを粉砕した粉体の粒子表面はところどころひび割れており、粒子内部に空隙が存在する。このような粉体を粉体塗料に使用すると、塗膜は気泡を巻き込みやすく、ピンホールを生じやすい。
また、特許文献3には、含フッ素共重合体原粉末(製法・入手方法に関する記載なし)をその共重合体の真比重の90%以上の比重が得られる条件下においてロールで圧縮成形して高密度化し、成形物を粉砕した後で粒度分布全体の3〜40質量%の微粒子を除去し、さらに粒度分布全体の1〜20質量%の粗粒子を除去する方法が記載されている。
含フッ素共重合体の真比重の90%以上とするため高い圧力をかけると過剰なエネルギーは熱に変換し重合体の温度が上昇し、かかる高圧下で成形して得られるシートは部分的に半溶融状態となり脆性が損なわれる傾向がある。このようなシートを粉砕するとヒゲ状の粒子が生成しやすくその結果、含フッ素共重合体の成形性が損なわれやすく好ましくない。
さらに上記記載の方法によれば、粉砕した後で総じて粒度分布全体の4〜60質量%の微粒子および粗粒子を除去しなければならず、生産効率が悪い。
特許文献4には、常温固形の含フッ素共重合体、特に、含フッ素ビニル単量体とビニルエーテルおよび/またはカルボン酸ビニルエステルとを必須の単量体成分とする含フッ素共重合体と、溶剤を含んだ含フッ素共重合体溶液を噴霧乾燥させて粉体状含フッ素共重合体を作製する方法が記載されている。
特許文献4においては、含フッ素共重合体の数平均分子量は、500〜50000が適切であり、なかでも1000〜10000が好ましいと記載されている。また、溶液の長時間の加熱により熱黄変防止の為に70℃以下の乾燥が好ましく、得られた粉体の乾燥にも70℃以下が好ましいと記載されている。
ここで、含フッ素共重合体のなかでも、エチレンとテトラフルオロエチレンを主として含有する単量体成分を共重合して得られる含フッ素共重合体である、エチレン/テトラフルオロエチレン系含フッ素共重合体(以下、必要に応じて「ETFE」という。)の数平均分子量は、数十万が一般的であり、上記特許文献4において好ましいとされる分子量範囲50000以下では脆くなり、ETFE本来の特性が得られない。また、さらに、特許文献4では、対象をほぼ含フッ素ビニル単量体とビニルエーテルおよび/またはカルボン酸ビニルエステルに基づく繰り返し単位を必須とする含フッ素共重合体に限定しており、ETFE粉体に関して記載はない。
特許文献5には、良好な成形加工性を有する含フッ素共重合体粉体、例えば、ETFEの粉体を作製する方法として、(1)重合により得られた含フッ素共重合体微粒子を、造粒媒体中で撹拌造粒して造粒物を形成する工程、(2)ついでこの造粒物を粉砕する工程、(3)さらに該粉砕した含フッ素共重合体微粒子をその融点以上で熱処理する工程からなることを特徴とする粉体の製造方法が記載されている。
しかしながら、ETFEはエチレン、テトラフルオロエチレン以外に各種機能を有する単量体に基づく繰り返し単位を含有することが多い。そのため、ETFEに分類される含フッ素共重合体であっても、ETFEに共通する特性以外の特性(硬さ等)が異なることがある。特許文献5に記載の粉体の製造方法では、ETFEのうちでも、例えば、比較的柔軟なETFEについて粉体を製造するには、上記(2)の粉砕工程を常温で行うと角状・ヒゲ状の粒子が生成しやすくなることから、液体窒素等を使用した極低温での粉砕処理が必要となり、生産性が低いという問題があった。
本発明は、角状・ヒゲ状の粒子の発生が抑制された良好な成形加工性を有するエチレン/テトラフルオロエチレン系含フッ素共重合体粉体を、エチレン/テトラフルオロエチレン系含フッ素共重合体の種類を問わずに簡便に製造する方法、およびこれにより得られる良好な成形加工性を有する多孔性エチレン/テトラフルオロエチレン系含フッ素共重合体粉体を提供することを目的とする。
本発明は、下記の構成を有するエチレン/テトラフルオロエチレン系含フッ素共重合体粉体の製造方法およびその製造方法により得られる多孔性エチレン/テトラフルオロエチレン系含フッ素共重合体粉体を提供する。
[1]エチレンに基づく繰り返し単位とテトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位を含有する含フッ素共重合体を、前記含フッ素共重合体の融点以下の温度で該含フッ素共重合体を溶解しうる溶媒に溶解し含フッ素共重合体溶液を得る工程(A)と、前記含フッ素共重合体溶液を噴霧乾燥させる工程(B)と、を有することを特徴とする含フッ素共重合体粉体の製造方法。
[2]前記溶媒が、含フッ素芳香族化合物、カルボニル基を1個以上有する脂肪族化合物、および、ハイドロフルオロアルキルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[1]に記載の含フッ素共重合体粉体の製造方法。
[1]エチレンに基づく繰り返し単位とテトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位を含有する含フッ素共重合体を、前記含フッ素共重合体の融点以下の温度で該含フッ素共重合体を溶解しうる溶媒に溶解し含フッ素共重合体溶液を得る工程(A)と、前記含フッ素共重合体溶液を噴霧乾燥させる工程(B)と、を有することを特徴とする含フッ素共重合体粉体の製造方法。
[2]前記溶媒が、含フッ素芳香族化合物、カルボニル基を1個以上有する脂肪族化合物、および、ハイドロフルオロアルキルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[1]に記載の含フッ素共重合体粉体の製造方法。
[3]前記工程(A)を含フッ素共重合体の融点以下の温度で行う[1]または[2]に記載の含フッ素共重合体粉体の製造方法。
[4]前記工程(B)を40〜350℃で行う[1]〜[3]のいずれかに記載の含フッ素共重合体粉体の製造方法。
[5]前記含フッ素共重合体が、酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有する単量体に基づく繰り返し単位を含有する[1]〜[4]のいずれかに記載の含フッ素共重合体粉体の製造方法。
[4]前記工程(B)を40〜350℃で行う[1]〜[3]のいずれかに記載の含フッ素共重合体粉体の製造方法。
[5]前記含フッ素共重合体が、酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有する単量体に基づく繰り返し単位を含有する[1]〜[4]のいずれかに記載の含フッ素共重合体粉体の製造方法。
[6]前記含フッ素共重合体溶液における前記含フッ素共重合体の含有量が、溶液全量に対して、0.1〜80質量%である[1]〜[5]のいずれかに記載の含フッ素共重合体粉体の製造方法。
[7][1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法で得られる、平均粒子径が0.01〜1000μmである多孔性含フッ素共重合体粉体。
[7][1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法で得られる、平均粒子径が0.01〜1000μmである多孔性含フッ素共重合体粉体。
本発明の方法によれば、角状・ヒゲ状の粒子の発生が抑制された良好な成形加工性を有するエチレン/テトラフルオロエチレン系含フッ素共重合体粉体を、エチレン/テトラフルオロエチレン系含フッ素共重合体の種類を問わずに、例えば、柔軟なエチレン/テトラフルオロエチレン系含フッ素共重合体であっても、簡便に製造することが可能である。また、本発明の製造方法により得られる多孔性エチレン/テトラフルオロエチレン系含フッ素共重合粉体は、成形加工性が良好な粉体である。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の含フッ素共重合体粉体の製造方法は、以下の工程(A)および工程(B)を有することを特徴とする。
工程(A):エチレンに基づく繰り返し単位とテトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位を含有する含フッ素共重合体を、前記含フッ素共重合体の融点以下の温度で該含フッ素共重合体を溶解しうる溶媒に溶解し含フッ素共重合体溶液を得る工程
工程(B):前記含フッ素共重合体溶液を噴霧乾燥させる工程
本発明の含フッ素共重合体粉体の製造方法は、以下の工程(A)および工程(B)を有することを特徴とする。
工程(A):エチレンに基づく繰り返し単位とテトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位を含有する含フッ素共重合体を、前記含フッ素共重合体の融点以下の温度で該含フッ素共重合体を溶解しうる溶媒に溶解し含フッ素共重合体溶液を得る工程
工程(B):前記含フッ素共重合体溶液を噴霧乾燥させる工程
<含フッ素共重合体>
本発明における含フッ素共重合体としては、エチレンに基づく繰り返し単位と、テトラフルオロエチレン(以下、TFEと略記することもある。)に基づく繰り返し単位とを含有するエチレン/テトラフルオロエチレン系含フッ素共重合体、すなわちETFEであれば他に特に限定はない。なお、本明細書において「ETFE」の用語は、TFEおよびエチレン以外の共単量体に基づく繰り返し単位を共重合体の構成単位として含んでもよい、TFEおよびエチレンを共重合体中の主な繰り返し単位とする含フッ素共重合体の総称として用いるものである。
本発明における含フッ素共重合体としては、エチレンに基づく繰り返し単位と、テトラフルオロエチレン(以下、TFEと略記することもある。)に基づく繰り返し単位とを含有するエチレン/テトラフルオロエチレン系含フッ素共重合体、すなわちETFEであれば他に特に限定はない。なお、本明細書において「ETFE」の用語は、TFEおよびエチレン以外の共単量体に基づく繰り返し単位を共重合体の構成単位として含んでもよい、TFEおよびエチレンを共重合体中の主な繰り返し単位とする含フッ素共重合体の総称として用いるものである。
ここで、本発明に用いるETFEとしては、TFEに基づく繰り返し単位を(a)、エチレンに基づく繰り返し単位を(b)としたときに(a)/(b)で表されるモル比は、30/70〜80/20が好ましく、40/60〜75/25がより好ましく、45/55〜65/35が最も好ましい。(a)/(b)で示されるモル比が小さいとETFEの耐熱性、耐候性、耐薬品性、ガスバリア性、燃料バリア等が低い傾向にあり、上記モル比が大きいと機械的強度、成形性等が低い傾向にある。(a)/(b)が上記範囲にあるETFEは、耐熱性、耐候性、耐薬品性、ガスバリア性、燃料バリア、機械的強度、成形性等に優れる。
本発明におけるETFEは、上記TFEおよびエチレンに基づく繰り返し単位の他に、その他の単量体に基づく繰り返し単位を含んでいてもよい。
その他の単量体としては、プロピレン、ブテン等の炭化水素系オレフィン、CH2=CX(CF2)nY(ここで、XおよびYは独立に水素またはフッ素原子、nは2〜8の整数である。)で表される化合物、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン等の不飽和基に水素原子を有するフルオロオレフィン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン等の不飽和基に水素原子を有しないフルオロオレフィン(ただし、TFEを除く。)、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)等のペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、アルキルビニルエーテル、(フルオロアルキル)ビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、メチルビニロキシブチルカーボネート等のビニルエーテル、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、ブタン酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル、クロトン酸ビニル等のビニルエステル、(ポリフルオロアルキル)アクリレート、(ポリフルオロアルキル)メタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらの単量体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
その他の単量体としては、プロピレン、ブテン等の炭化水素系オレフィン、CH2=CX(CF2)nY(ここで、XおよびYは独立に水素またはフッ素原子、nは2〜8の整数である。)で表される化合物、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン等の不飽和基に水素原子を有するフルオロオレフィン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン等の不飽和基に水素原子を有しないフルオロオレフィン(ただし、TFEを除く。)、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)等のペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、アルキルビニルエーテル、(フルオロアルキル)ビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、メチルビニロキシブチルカーボネート等のビニルエーテル、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、ブタン酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル、クロトン酸ビニル等のビニルエステル、(ポリフルオロアルキル)アクリレート、(ポリフルオロアルキル)メタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらの単量体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明に用いるETFEにおいては、これら単量体として、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)および上記CH2=CX(CF2)nYで表される化合物からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、CH2=CX(CF2)nYで表される化合物がより好ましい。ここで、X、Yはそれぞれ独立に水素原子またはフッ素原子であり、nは2〜8の整数である。式中のnが2未満であるとETFEの特性が不十分(例えば、ETFE形成体のストレスクラック発生等)となる場合があり、一方、式中のnが8を超えると重合反応性の点で不利になる場合がある。さらに、該化合物においてn=2〜4であると、得られるETFEが燃料バリア性、耐ストレスクラック性等に優れるのでより好ましい。その具体例としては、CH2=CF(CF2)2F、CH2=CF(CF2)3F、CH2=CF(CF2)4F、CH2=CF(CF2)2H、CH2=CF(CF2)3H、CH2=CF(CF2)4H、CH2=CH(CF2)2F、CH2=CH(CF2)3F、CH2=CH(CF2)4F、CH2=CH(CF2)2H、CH2=CH(CF2)3H、CH2=CH(CF2)4H等が挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。なかでも、CH2=CH(CF2)nYで表される化合物がより好ましく、その場合、式中のnは、n=2〜6であることが、その成形体が耐ストレスラック性に優れるのでさらに好ましく、n=2〜4が最も好ましい。
ETFEが、その他の単量体に基づく繰り返し単位を含有する場合、その含有割合は、ETFEの全繰り返し単位に対して0.01〜20モル%が好ましく、0.1〜15モル%がより好ましく、1〜10モル%が最も好ましい。
また、本発明におけるETFEが含んでもよいその他の単量体としては、上記の単量体に加えて、ETFEに各種機能を付加するための単量体、例えば、接着性を向上させるために添加される架橋性の官能基を有する単量体等が挙げられる。架橋性の官能基を有する単量体としては、例えば、酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有する単量が挙げられる。
ここで、本発明におけるETFEとしては、その他の単量体が酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有する単量体であり、比較的柔軟なETFEが好ましい。
ここで、本発明におけるETFEとしては、その他の単量体が酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有する単量体であり、比較的柔軟なETFEが好ましい。
このようなETFEにおける酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有する単量体に基づく繰り返し単位の含有量は、ETFEの全繰り返し単位に対して、0.01〜5モル%が好ましく、0.1〜5モル%がより好ましく、0.15〜3モル%がさらに好ましく、0.3〜3モル%が最も好ましい。該含有量が小さいと基材との接着性が低くなる傾向にあり、大きいと燃料バリア性が低くなる傾向にある。したがって酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有する単量体に基づく繰り返し単位の含有量が上記範囲にあると、得られるETFEは燃料バリア性および基材との接着性の両方に優れるものとなる。
なお、TFEおよびエチレンに基づく繰り返し単位と酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有する単量体に基づく繰り返し単位を含有する上記ETFEは、これら以外に上記その他単量体に基づく繰り返し単位を含んでいてもよい。その場合、TFE、エチレン、酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有する単量体以外のその他の単量体に基づく繰り返し単位の含有割合は、ETFEの全繰り返し単位に対して0.01〜20モル%が好ましく、0.1〜15モル%がより好ましく、1〜10モル%が最も好ましい。
上記酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有する単量体としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸(以下、IAHという。)、無水シトラコン酸(以下、CAHという。)、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物が好ましく、IAHまたはCAHがより好ましい。IAHまたはCAHを用いると、無水マレイン酸を用いた場合に必要となる特殊な重合方法、すなわち、ペルフルオロカルボン酸を使用したり、ヘキサフルオロプロピレンを共重合する重合方法を用いることなく、酸無水物残基を有するETFEが得られるので好ましい。
酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有する単量体における酸無水物残基は、その一部が重合前に加水分解されていてもよい。例えば、IAHは、IAHの一部が加水分解した、IAHとイタコン酸の混合物であってもよい。また、CAHは、CAHの一部が加水分解した、CAHとシトラコン酸の混合物であってもよい。また、ETFE中のIAHまたはCAHに基づく繰り返し単位の一部が重合後に加水分解されていてもよい。これら重合前または重合後の加水分解により生じた繰り返し単位は、本発明において酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有する単量体に基づく繰り返し単位の一部とみなす。その場合には、酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有する単量体に基づく繰り返し単位の含有量は、例えば、酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有する単量体がIAHの場合でいえば、IAHに基づく繰り返し単位とIAHの一部が加水分解されたイタコン酸に基づく繰り返し単位の合計量を表す。
本発明におけるETFEの容量流速(以下、Q値という。)は、1〜1000mm3/秒であることが好ましい。Q値は、ETFEの溶融流動性を表す指標であり、分子量の目安となる。Q値が大きいと分子量が低く、小さいと分子量が高いことを示す。なお、本明細書においてETFEのQ値は、実施例に記載のように、島津製作所社製フローテスタを用いて、温度297℃、荷重7kg下に直径2.1mm、長さ8mmのオリフィス中に押出すときのETFEの押出し速度をいう。Q値が小さいと本発明の粉体を用いて作製される塗膜の平滑性が十分でない傾向となり、大きいと該塗膜の機械的強度が低い傾向となる。したがって、本発明におけるETFEのQ値は上記範囲にあることが好ましく、5〜500mm3/秒にあることがより好ましい。
本発明におけるETFEの融点としては、特に限定されないが、溶解性、強度等の点から、好ましくは130℃〜275℃、より好ましくは140℃〜265℃、最も好ましくは150℃〜260℃である。
本発明におけるETFEの製造方法としては、エチレンとTFEおよび、さらに任意に含んでいてもよいその他の単量体とを通常の方法で共重合さる方法が採用できる。ETFEの製造方法としては、特に限定されず、一般に用いられているラジカル重合開始剤を用いる重合方法が適用できる。重合方法の例としては、塊状重合法、フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等の有機溶媒を使用する溶液重合法、水性媒体および必要に応じて適当な有機溶剤を使用する懸濁重合法、水性媒体および乳化剤を使用する乳化重合法が挙げられるが、溶液重合法が最も好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、半減期が10時間である温度が0℃〜100℃のものが好ましく、20〜90℃のものがより好ましい。具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、イソブチリルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等の非フッ素系ジアシルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカ−ボネート等のペルオキシジカーボネート、tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシイソブチレート、tert−ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル、(Z(CF2)pCOO)2(ここで、Zは水素原子、フッ素原子または塩素原子であり、pは1〜10の整数である。)で表される化合物等の含フッ素ジアシルペルオキシド、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物等が挙げられる。
ETFEのQ値を制御するため、重合中に連鎖移動剤を適宜用いてもよい。連鎖移動剤としては、メタノール、エタノール等のアルコール、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン等のクロロフルオロハイドロカーボン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボンが挙げられる。また、エステル基、カーボネート基、水酸基、カルボキシル基、カルボニルフルオリド基等の官能基を有する連鎖移動剤を用いるとポリアミド等の基材との接着性に優れる高分子末端基が導入されるので好ましい。該連鎖移動剤としては、酢酸、酢酸メチル、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
本発明において、重合条件は特に限定されず、重合温度は0℃〜100℃が好ましく、20〜90℃がより好ましい。重合圧力は0.1〜10MPaが好ましく、0.5〜3MPaがより好ましい。重合時間は1〜30時間が好ましい。
また重合中、各単量体同士の濃度は上記好ましい範囲で重合槽内に投入されるが、重合速度等を勘案すると、重合媒体における各単量体の濃度を高くできない場合がある。その場合には、各単量体が重合で消費されるに従って、消費された量の単量体を連続的または断続的に重合槽内に供給することが好ましい。
なお、本発明におけるETFEとしては、商業品目として得られるものを用いることもできる。市販品として、例えば、ETFEについては、旭硝子社製:Fluon(登録商標)ETFE Series、Fluon(登録商標)LM Series、ダイキン工業社製:ネオフロン(登録商標)、Dyneon社製:Dyneon(登録商標)ETFE、DuPont社製:Tefzel(登録商標)等の市販品が挙げられる。
本発明の製造方法においてETFEを溶媒に溶解させる際のETFEの形状は、粉末状のものが短時間で溶解できることから好ましいが、ペレット状等、その他の形状でも用いることができる。
また、本発明の製造方法においては、これらETFEの1種を単独で用いることも、あるいは2種以上を併用することも可能である。
<工程(A)>
本発明の製造方法における工程(A)は、上記ETFEを、このETFEの融点以下の温度で該ETFEを溶解しうる溶媒に溶解し、含フッ素共重合体溶液を得る工程である。
本発明の製造方法における工程(A)は、上記ETFEを、このETFEの融点以下の温度で該ETFEを溶解しうる溶媒に溶解し、含フッ素共重合体溶液を得る工程である。
本発明の製造方法に用いる溶媒としては、上記ETFEの融点以下の温度でETFEを溶解しうる溶媒であれば特に限定されないが、具体的には、含フッ素芳香族化合物、カルボニル基を1個以上有する脂肪族化合物、および、ハイドロフルオロアルキルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。なお、溶媒が上記温度でETFEを溶解する際の圧力条件としては、特に限定されず、常圧での溶解以外に加圧下における溶解条件も含まれるものである。
ここで、上記溶媒は、常温では上記ETFEを溶解できないものが多いが、少なくともETFEの融点より低い温度に加熱することによりETFEを溶解でき、透明で均一なETFEの溶液を与えられるものである。なお、上記溶媒としては、ETFEの融点以下の温度で、ETFEを得られる溶液の全体量に対して0.1質量%以上溶解できる溶媒が好ましい。さらに、上記溶媒がETFEを溶解できる量は、得られる溶液の全体量に対して5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が最も好ましい。
ETFEを溶解しうる含フッ素芳香族化合物の融点は、100℃以下であることが好ましく、80℃以下がより好ましく、50℃以下がさらに好ましい。融点がこの範囲にあるとETFEを溶解する時の取扱い性に優れる。また、上記含フッ素芳香族化合物の沸点は、上記ETFEを溶解する温度以上であることが好ましい。
上記溶媒として用いられる含フッ素芳香族化合物のフッ素含有量((フッ素原子量×分子中のフッ素原子数)×100/分子量)としては、5〜75質量%が好ましく、9〜75質量%がより好ましく、12〜75質量%が最も好ましい。この範囲にあると、ETFEの溶解性に優れる。
含フッ素芳香族化合物の具体例としては、含フッ素ベンゾニトリル、含フッ素安息香酸およびそのエステル、含フッ素多環芳香族化合物、含フッ素ニトロベンゼン、含フッ素フェニルアルキルアルコール、含フッ素フェノールおよびそのエステル、含フッ素芳香族ケトン、含フッ素芳香族エーテル、含フッ素芳香族スルホニル化合物、含フッ素ピリジン化合物、含フッ素芳香族カーボネート、ペルフルオロアルキル置換ベンゼン、ペルフルオロベンゼン、安息香酸のポリフルオロアルキルエステル、フタル酸のポリフルオロアルキルエステルおよびトリフルオロメタンスルホン酸のアリールエステル等が挙げられる。また、本発明に用いる含フッ素芳香族化合物は、少なくとも2つ以上のフッ素原子を有する含フッ素芳香族化合物が好ましい。含フッ素芳香族化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記含フッ素芳香族化合物のうちでもさらに好ましい例として、ペンタフルオロベンゾニトリル、2,3,4,5−テトラフルオロベンゾニトリル、2,3,5,6−テトラフルオロベンゾニトリル、2,4,5−トリフルオロベンゾニトリル、2,4,6−トリフルオロベンゾニトリル、3,4,5−トリフルオロベンゾニトリル、2,3−ジフルオロベンゾニトリル、2,4−ジフルオロベンゾニトリル、2,5−ジフルオロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、3,4−ジフルオロベンゾニトリル、3,5−ジフルオロベンゾニトリル、4−フルオロベンゾニトリル、3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、2−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、3−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、4−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、2−(トリフルオロメトキシ)ベンゾニトリル、3−(トリフルオロメトキシ)ベンゾニトリル、4−(トリフルオロメトキシ)ベンゾニトリル、(3−シアノフェニル)サルファ ペンタフルオリド、(4−シアノフェニル)サルファ ペンタフルオリド、ペンタフルオロ安息香酸、ペンタフルオロ安息香酸エチル、2,4−ジフルオロ安息香酸メチル、3−(トリフルオロメチル)安息香酸メチル、4−(トリフルオロメチル)安息香酸メチル、3,5−ビス(トリフルオロメチル)安息香酸メチル、ペルフルオロビフェニル、ペルフルオロナフタレン、ペンタフルオロニトロベンゼン、2,4−ジフルオロニトロベンゼン、(3−ニトロフェニル)サルファ ペンタフルオリド、ペンタフルオロベンジルアルコール、1−(ペンタフルオロフェニル)エタノール、酢酸ペンタフルオロフェニル、プロパン酸ペンタフルオロフェニル、ブタン酸ペンタフルオロフェニル、ペンタン酸ペンタフルオロフェニル、ペルフルオロベンゾフェノン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾフェノン、2’,3’,4’,5’,6’−ペンタフルオロアセトフェノン、3’,5’−ビス(トリフルオロメチル)アセトフェノン、3’−(トリフルオロメチル)アセトフェノン、2,2,2−トリフルオロアセトフェノン、ペンタフルオロアニソール、3,5−ビス(トリフルオロメチル)アニソール、デカフルオロジフェニルエーテル、4−ブロモ−2,2’,3,3’,4’,5,5’,6,6’−ノナフルオロジフェニルエーテル、ペンタフルオロフェニルスルホニルクロリド、ペンタフルオロピリジン、3−シアノ−2,5,6−トリフルオロピリジン、ビス(ペンタフルオロフェニル)カーボネート、ベンゾトリフルオリド、4−クロロベンゾトリフルオリド、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、安息香酸2,2,2−トリフルオロエチル、安息香酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、安息香酸2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、安息香酸3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル、フタル酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)、トリフルオロメタンスルホン酸4−アセチルフェニル等が挙げられる。
ETFEを溶解しうるカルボニル基を1個以上有する脂肪族化合物の融点は、100℃以下であることが好ましく、50℃以下がより好ましく、20℃以下が最も好ましい。また、上記カルボニル基を1個以上有する脂肪族化合物の沸点は、上記ETFEを溶解する温度以上であることが好ましい。
ただし、本発明において、上記ETFEの溶解を自然発生圧力下で行う場合には、カルボニル基を1個以上有する脂肪族化合物の沸点が、溶解温度未満のカルボニル基を1個以上有する脂肪族化合物も適用可能である。ここで、「自然発生圧力」とは、溶媒とETFEの混合物が密閉容器中で自然に示す圧力を意味する。より低沸点のカルボニル基を1個以上有する脂肪族化合物を使用する場合には、自然発生圧力が大きくなるため、安全性、利便性の観点から、カルボニル基を1個以上有する脂肪族化合物の沸点は、室温以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。また、上記カルボニル基を1個以上有する脂肪族化合物の沸点の上限は、特に限定されないが、噴霧乾燥工程(B)の乾燥しやすさ等の観点から220℃以下が好ましい。
上記カルボニル基を1個以上有する脂肪族化合物としては、炭素数3〜10の環状ケトン、鎖状ケトン等のケトン類、鎖状エステル、グリコール類のモノエステル等のエステル類、およびカーボネート類からなる群から選ばれる1種以上であるものが好ましい。カルボニル基の数は、1個または2個が好ましい。
上記1個以上のカルボニル基を有する脂肪族化合物の分子構造は特に限定されず、例えば、炭素骨格は直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、主鎖、または側鎖を構成する炭素−炭素結合間にエーテル性酸素原子を有していてもよく、炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよい。これらのうちでも、上記カルボニル基を1個以上有する脂肪族化合物としては環状ケトンがより好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明における前記カルボニル基を1個以上有する脂肪族化合物の、さらに好ましい具体例としては、以下の通りである。
上記環状ケトンとしては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−エチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、4−tert−ブチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、イソホロン等が挙げられる。
上記鎖状ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、メチルイソプロピルケトン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、2−オクタノン、2−ノナノン、ジイソブチルケトン、2−デカノン等が挙げられる。
上記鎖状エステルとしては、ギ酸エチル、ギ酸イソペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸2−エチルヘキシル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸ペンチル、アジピン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)、シクロヘキサンカルボン酸メチル、シクロヘキサンカルボン酸2,2,2−トリフルオロエチル、ペルフルオロペンタン酸エチル等が挙げられる。
上記グリコール類のモノエステルとしては、酢酸2−メトキシエチル、酢酸2−エトキシエチル、酢酸2−ブトキシエチル、1−メトキシ−2−アセトキシプロパン、1−エトキシ−2−アセトキシプロパン、酢酸3−メトキシブチル、酢酸3−メトキシ−3−メチルブチル等が挙げられる。
上記カーボネートとしては、ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)カーボネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
ETFEを溶解しうる上記本発明に用いるハイドロフルオロアルキルエーテルの融点は、100℃以下であることが好ましく、80℃以下がより好ましく、50℃以下が最も好ましい。また、上記ハイドロフルオロアルキルエーテルの沸点は、上記ETFEを溶解する温度以上であることが好ましい。
ETFEを溶解しうる上記本発明に用いるハイドロフルオロアルキルエーテルの具体例としては、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−4−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)ペンタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタン等が挙げられる。これらのうちでも、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−4−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)ペンタンが好ましい。
上記ETFEを溶解しうる溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、2種以上の溶媒を用いると相分離の速さを制御することができる場合がある。
本明細書において、ETFEの融点または液体の沸点まで、ETFEを溶解も膨潤もしない溶媒を非溶媒と定義する。本発明の製造方法においては、ETFEの溶解性を損なわない範囲内で、上記ETFEの溶液中に非溶媒を含有させてもよい。
上記ETFEの非溶媒として具体的には、フッ素原子を含まない芳香族化合物、アルコール類等が挙げられる。これらのうちでも本発明の製造方法において好ましくは、アセトニトリル、ジクロロベンゼン、フタル酸ジメチル等のフッ素原子を含まない芳香族化合物が用いられる。また、本発明の製造方法において、上記ETFE溶液が上記単独でETFEを溶解可能な溶媒と共に非溶媒を含有する場合の混合割合は、単独でETFEを溶解可能な溶媒/非溶媒(質量比)として、10/90〜90/10が好ましく、30/70〜70/30がより好ましい。
なお、本発明の製造方法においてETFE溶液が、上記単独でETFEを溶解可能な溶媒と組み合わせて非溶媒を含む場合、単独でETFEを溶解可能な溶媒と非溶媒との混合物を「溶媒」という。
本発明におけるETFE溶液は、上記溶媒にETFEを溶解する工程(A)により得られる。ここで、作製されるETFE溶液の濃度は、ETFE溶液全量に対するETFEの含有量として、0.1〜80質量%であることが好ましく、1〜70質量%であることがより好ましく、3〜60質量%であることがさらに好ましい。ETFE溶液全量に対するETFEの含有量が0.1質量%未満では、得られる粉体の収率が低いおそれがあり、80質量%を超えると噴霧することが難しくなるおそれがある。
ETFE溶液の濃度は、ETFEの種類、溶媒の種類あるいは工程(B)における噴霧乾燥条件、粉体収率等が所定の値になるように、適宜調整することが好ましい。
ETFE溶液の濃度は、ETFEの種類、溶媒の種類あるいは工程(B)における噴霧乾燥条件、粉体収率等が所定の値になるように、適宜調整することが好ましい。
工程(A)におけるETFEを上記溶媒に溶解させる温度の下限は、所定の濃度におけるその溶液の相分離温度である。以下に説明する通り少なくとも2種の化合物、ここではETFEと溶媒を含む混合物は、相分離温度以下では二相に分離をするため、均一な溶液の状態とはならない。つまり、溶液の作製は相分離温度以上の温度でのみ可能となる。また得られるETEF溶液の温度は、ETFEの融点以上でも問題はないが、ETFEや溶媒の劣化や揮発があるため、ETFEの融点以下が好ましく、ETFE溶液の相分離温度以上の温度である。
ETFEを上記溶媒に溶解させる温度、すなわち溶解温度は、溶媒の種類や溶液組成等によって異なり、縦軸に温度を取り、横軸にETFEと溶媒の濃度比を取り、各温度でのETFEと溶媒との二相共存の濃度をプロットした相図によって最適化することが好ましい。本発明の製造方法においてETFEを溶媒に溶解させる温度を高くしすぎると、ETFEが熱劣化するとともに、溶媒が揮散するので好ましくない。また、ETFE溶液における相分離温度より低いと上記の通りETFEが溶媒に溶解しない。
したがって、工程(A)において溶解温度は、作製される溶液の相分離温度より5℃以上高い温度が好ましく、前記相分離温度より10℃以上高い温度がより好ましい。また、本発明の製造方法における上記溶解温度の上限は、特に限定はされないが、ETFE粉体の作り易さや、溶媒の揮散性等の観点から、溶解されるETFEの融点以下であることが好ましい。
ここで、相分離温度とは、クラウドポイント(曇点)とも呼ばれ、ある濃度の溶液がその温度よりも高い温度に維持されている場合は、溶質(本発明においてはETFE)と溶媒とが均一な一相の溶液となるが、クラウドポイント以下では相分離する温度である。一般に、ETFE溶液を相分離温度以下の温度にすれば、溶媒を含有しETFEが濃厚な相と、ETFEを含有し溶媒が濃厚な相の2相に分離する。さらに、用いるETFEの結晶化温度以下では、ETFEが濃厚な相中においてETFEが固定化され、多孔体の前駆体が形成される。ETFE溶液中の伝熱速度は、溶媒・非溶媒の拡散速度よりも100倍以上速い。したがって、下記の工程(B)において、ETFE溶液の液滴粒子をETFEの結晶化温度以下の温度とすると、液滴粒子中のETFEがほぼ瞬時に相分離・固定化され、多孔性となる。
本発明の工程(A)において、上記溶媒にETFEを溶解する際、温度以外の条件は特に限定されるものではなく、通常は常圧下に実施することが好ましい。ただし、用いるETFEや溶媒の種類によっては、溶媒の沸点が溶解温度より低い場合等には、耐圧容器中で加圧下、例えば0.01〜1MPa程度の条件下で溶解を実施してもよい。溶解時間は、用いるETFEや溶媒の種類、ETFEの形状、作製しようとするETFE溶液の濃度等により適宜調整される。
<工程(B)>
本発明の製造方法における工程(B)は、上記工程(A)で作製したETFE溶液を噴霧乾燥させる工程である。
本発明の製造方法における工程(B)は、上記工程(A)で作製したETFE溶液を噴霧乾燥させる工程である。
ETFE溶液を噴霧乾燥させる方法としては、従来公知の含フッ素共重合体溶液を噴霧乾燥して含フッ素共重合体粉体を製造する方法と同様な方法を特に限定なく、とることが可能である。
ETFE溶液の噴霧乾燥に用いる装置としては、噴霧されたETFE溶液から溶媒を除去することができるものであれば特に限定されず、通常は噴霧されたETFE溶液の液滴粒子を熱源ガスと接触させて溶媒を揮発させる噴霧乾燥装置が使用される。この場合、溶媒を揮発させることで上記乾燥を行うことから、噴霧乾燥装置は防爆仕様であることが好ましい。
相分離温度以上のETFE溶液を相分離温度以下の空間に噴霧すると、上記の通り低温において溶解性の低いETFEは、溶媒との相分離が瞬間的に起こる。すなわち、噴霧された液滴粒子内でETFEと溶媒は均一に相分離される。そのため、ETFEは、多孔性粒子を形成しやすく、溶媒はETFEの多孔内に存在する。そして、ETFE粒子内の溶媒を揮発乾燥させることで多孔性ETFE粉体が得られる。
ここで、相分離温度以下のETFE溶液で噴霧を行なうと、ETFEと溶媒が二相に分離している部分が有り、配管内部でETFE粒子が詰まるといった問題が考えられる。ETFE溶液を維持する上でも相分離温度以上の温度で噴霧を行うことが好ましい。なお、多孔性ETFE粉体は、加熱して塗膜を形成させる際に、容易に塗膜を形成する傾向が有り、塗膜焼付け温度を低減できる可能性があり好ましい。
ETFE溶液を噴霧する際の温度は、効率よくETFE溶液を噴霧させるために、上記の通りETFE溶液の相分離温度以上であることが好ましく、用いるETFEや溶媒の種類にもよるが、具体的には40℃以上、より好ましくは50℃以上とすることが好ましい。噴霧における温度の上限は、樹脂が劣化する恐れがある観点から350℃以下で行うことが好ましく、300℃以下がより好ましい。
また、噴霧と同時に行われる乾燥の温度は、溶媒を十分に乾燥除去できる温度であれば特に限定されないが、相分離をさせ多孔性ETFE粉体を作製できる点から40〜350℃で行うことが好ましく、50〜200℃がより好ましく、80〜200℃が最も好ましい。ここで、工程(B)における噴霧と乾燥は、切り離して別々に行われるものではなく、同時に行われる操作であることから、工程(B)における噴霧乾燥の温度は、上記観点から、40〜350℃で行うことが好ましく、50〜200℃で行うことがより好ましく、80〜200℃が最も好ましい。
なお、上記噴霧乾燥装置においては、噴霧されたETFE溶液の液滴粒子を乾燥させるために使用される熱源ガス中の溶剤の蒸気含有量を低く保つという観点からは、溶剤回収装置を備えることが好ましい。
また、相分離して得られた、溶媒を多孔内に有する多孔性ETFE粒子と熱源ガスとを接触させる方式についても特に限定されず、通常用いられている、並流式、向流式、並流・向流混合式のようないずれの方式も用いることができる。
ETFE溶液の噴霧方式についても、回転円盤式、二流体ノズル式、圧力ノズル式など、公知慣用のものがいずれも使用できる。噴霧する際の、液滴溶液の粒子径をコントロールするための因子としては、回転円盤式においては、円盤の回転速度、二流体ノズル式においては、ノズルからの吐出速度、原料溶液と混合して使用される圧縮ガスと原料溶液の混合比、圧力ノズル式においては、吐出圧力等があるが、これらの値については、目標とする粒子径に応じて適宜決定すればよい。例えば、回転円盤式における、円盤の回転速度は、用いるETEF溶液等にもよるが、概ね8000〜20000rpmの間で適宜調整することで、後述の粒子径範囲のETFE粉体が作製される。
ETFE溶液の供給速度、熱源ガスの流量は、用途等に応じて目標とする粒子径、具体的には後述する粒子径等にあわせて、適宜決定する。噴霧乾燥中にETFE溶液の供給速度や熱源ガスの流量が変化すると、得られる粒子の粒子径や不揮発分の値、すなわち多孔性の割合も変化するため、噴霧乾燥中は一定に保つことが好ましい。
このようにして、本発明の製造方法においては、噴霧乾燥工程(B)での温度制御や、吹き出し条件で、容易にETFE粉体のかさ密度や粒子径をコントロールすることができ、ETFE粉体が、ヒゲ、角の発生がほとんどない状態で製造できる。
このようにして噴霧乾燥により得られたETFE粉体を含む熱源ガスは、通常、このような操作により含フッ素共重合体粉体の製造が行われる場合と同様にして、引き続き、サイクロンに代表される分級装置へ導かれ、ETFE粉体の捕集・分級が行われる。
上記噴霧乾燥において用いられる熱源ガスとしては、不活性ガスが好ましい。なかでも、コスト等の点からは窒素ガスの使用が好ましい。熱源ガスの温度は、ETFE溶液の温度が低下し、噴霧することができなくならないよう、高温であることが好ましく、ETFE溶液を噴霧するにあたって実質的に支障がないような温度範囲で、適宜決定すればよい。熱源ガスの温度が低くノズルでETFE溶液が詰まってしまう場合は、ETFE溶液の温度が下がらないように温度を上げる必要がある。熱源ガスの温度の下限については特に限定はないが、効率よくETFE溶液を噴霧させるために、上記の通りETFE溶液の相分離温度以上であることが好ましく、用いるETFEや溶媒の種類にもよるが、具体的には40℃以上、より好ましくは50℃以上とすることが好ましい。
通常は、熱源ガスの温度は40〜400℃の範囲で適宜決定される。熱源ガスの流量およびETFE溶液の供給速度は、得られるETFE粉体の不揮発分、すなわちETFEの含有量がETFEと溶媒の合計量に対して99質量%以上となるような条件下で、目的とする粒子径に合わせて適宜調整すればよい。装置内の圧力は、常圧でも、減圧あるいは加圧でも特に限定されない。
また、噴霧乾燥を行う際のETFE溶液の不揮発分濃度、すなわちETFE溶液全量に対するETFEの含有量は、上記好ましい範囲のなかで、噴霧乾燥装置の仕様、噴霧乾燥する条件等に応じて適宜決定すればよい。
このようにして本発明の製造方法により、本発明のETFE粉体が得られる。本発明のETFE粉体の粒子径や、粒度分布は、用途により、例えば以下の塗装用原料として用いた場合には、塗装する基材の大きさや塗装方法等により適宜選定され、これに適合するように上記製造方法における条件等が調整される。ETFE粉体の平均粒子径は、一般には、0.01〜1000μmが好ましく、1〜500μmがより好ましい。例えば、静電塗装法に用いる場合には、平均粒子径が0.5〜300μmが好ましく、1〜200μmがより好ましい。回転成形法に用いる場合には、1〜500μmが好ましく、5〜300μmがより好ましい。平均粒子径は、篩等を用いて分級して調整してもよい。
ここで、本明細書において、ETFE粉体の平均粒子径や、粒度分布は、レーザー回折式の粒度分布測定器(Sympatec社製:HELOS&RODOS)により乾式法により粒度分布を測定して求めたものをいう。
本発明のETFE粉体は、ETFE粉体としてまたは、後述する他の成分と組み合わせたETFE粉体組成物として、粉体塗装の用途において有用である。さらに、本発明以外のETFE、TFE/ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)系共重合体、TFE/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体等のフッ素樹脂の粉体を粉体塗装する場合のプライマーとしても有用である。特に、粉体製造に用いるETFEが酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有する単量体に基づく繰り返し単位を含有する場合には、プライマーとして用いるとフッ素樹脂と基材との接着性が著しく向上する。
このように本発明のETFE粉体は塗装用原料として有用であるが、その塗装方法としては、従来のETFE粉体、合成樹脂粉体やこれらを含む粉体組成物と同様の方法で実施できる。例えば、酸素を含む雰囲気下に200〜600℃で基材表面を加熱処理し、ついで、該基材表面をブラスト処理等により粗面化する。該ブラスト処理した基材表面にETFE粉体やETFE粉体組成物を粉体塗装することによって塗膜を形成する。
ここで、本発明のETFE粉体やこれを含むETFE粉体組成物からなる粉体塗料は、ETFE粉体が多孔性であることから、加熱して塗膜を容易に形成できる傾向が有り、通常のETFE粉体を用いた粉体塗料と比較して、塗膜焼付け温度を低減できる可能性がある。また、本発明のETFE粉体はヒゲ、角がほとんどない状態で、粒子径も所望の範囲に制御されて得られることから、塗膜形成等に用いた場合に、成形加工性が非常に良好である。
本発明のETFE粉体は、通常のETFEの粉体と性状が近く、同一塗装装置を用いてプライマー塗装および粉体塗装できることから、生産性や経済性に優れる。
本発明におけるETFE粉体やこれを含むETFE粉体組成物を用いて形成された塗膜の厚さとしては、1μm〜1mmが好ましく、5〜500μmがより好ましく、10〜200μmが最も好ましい。特に、粉体製造に用いるETFEが酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有する単量体に基づく繰り返し単位を含有する場合には、この範囲にあると1回の塗装で十分な接着性を発現する。1μmより薄い場合は接着性が十分ではなく、1mmより厚い場合は、2回以上塗装しなくてはならず生産効率が悪くなる。
本発明における基材の材質としては、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、錫、チタン、クロム、ニッケル、亜鉛等の金属、ガラス、セラミックス等の無機物等が挙げられ、鉄、ステンレス鋼、アルミニウムがより好ましい。
本発明における基材の形状としては、パイプ、チューブ、フィルム、板、タンク、ロール、ベッセル、バルブ、エルボー等が挙げられる。
本発明においてETFE粉体組成物は、本発明のETFE粉体と熱安定剤とを含有することが好ましい。ETFE粉体と他の成分と組み合わせたETFE粉体組成物として、ETFE粉体、特に、粉体製造に用いるETFEが酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有する単量体に基づく繰り返し単位を含有するETFE粉体と熱安定剤とを含有するETFE粉体組成物を用いると、塗膜と基材との接着性が著しく優れる。理由は必ずしも明確ではないが、以下のように推定される。熱安定剤を含有すると、ETFEの熱安定性がさらに向上することから、塗装工程における塗膜の劣化や収縮が防止され、基材への塗膜の密着性が向上する。また、高温でのETFEの安定性が向上することから、高温で基材上に塗膜を形成でき、これによりさらに接着性が向上するものと考えられる。
上記熱安定剤としては、銅化合物、錫化合物、鉄化合物、鉛化合物、チタン化合物およびアルミニウム化合物からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。具体例としては、酸化銅、ヨウ化銅、アルミナ、硫酸錫、硫酸ゲルマニウム、塩基性硫酸鉛、亜硫酸錫、燐酸バリウム、ピロリン酸錫等が挙げられ、酸化銅、ヨウ化銅が好ましい。ETFE粉体組成物における熱安定剤の含有量は、1×10−8〜5質量%が好ましく、1×10−7〜2質量%がより好ましく、5×10−7〜1質量%が最も好ましい。
本発明においては上記本発明のETFE粉体を含有する組成物に、ETFE粉体および熱安定剤に加えて、用途、目的に応じて、その他の配合剤である、各種の添加剤、フィラー、他の合成樹脂粉体を配合してもよい。本発明のETFE粉体を含有する組成物中のETFE粉体の含有量は、組成物全量に対して20質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、80質量%以上が最も好ましい。熱安定剤およびその他の配合剤の含有量は、80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、20質量%以下が最も好ましい。
なお、熱安定剤やその他の配合剤は、粉体塗装前にミキサーを用いて予めETFE粉体と混合することが好ましい。また、ETFE粉体とミキサーで混合してマスターバッチ粉体を製造し、該マスターバッチ粉体をETFE粉体と混合することも好ましい。
以下に実施例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において塗装は次の静電塗装法を用いて行った。
[静電塗装法]
粉体スプレーガンを用いて、印加電圧−60kVでETFE粉体をSS400ステンレス鋼板の表面に吹きつけ、所定の温度、時間でオーブンにて焼成した。充分な膜厚が得られるまで塗装を繰り返した。
[静電塗装法]
粉体スプレーガンを用いて、印加電圧−60kVでETFE粉体をSS400ステンレス鋼板の表面に吹きつけ、所定の温度、時間でオーブンにて焼成した。充分な膜厚が得られるまで塗装を繰り返した。
[物性の測定]
Q値の測定は、(島津製作所社製:フローテスタ)を用いて、温度297℃、荷重7kg下に直径2.1mm、長さ8mmのオリフィス中に押出すときのETFEの押出し速度を測定することで行った。
平均粒子径の測定は、レーザー回折式の粒度分布測定器(Sympatec社製:HELOS&RODOS)により乾式法により粒度分布を測定して求めた。
Q値の測定は、(島津製作所社製:フローテスタ)を用いて、温度297℃、荷重7kg下に直径2.1mm、長さ8mmのオリフィス中に押出すときのETFEの押出し速度を測定することで行った。
平均粒子径の測定は、レーザー回折式の粒度分布測定器(Sympatec社製:HELOS&RODOS)により乾式法により粒度分布を測定して求めた。
〔実施例1〕
複合型混練押出機IMC−1973型(井元製作所社製)を使用して、ETFE(TFEに基づく繰り返し単位/エチレンに基づく繰り返し単位/パーフルオロブチルエチレン(CH2=CH(CF2)4F)に基づく繰り返し単位=58.1/38.7/3.2(モル%)、融点:225℃、Q値:49mm3/秒以下、「ETFE1」という。)50gに、イソホロン300gを投入し、200℃で100回転/分、20分間の混合を行い、ETFE溶液を得た。
複合型混練押出機IMC−1973型(井元製作所社製)を使用して、ETFE(TFEに基づく繰り返し単位/エチレンに基づく繰り返し単位/パーフルオロブチルエチレン(CH2=CH(CF2)4F)に基づく繰り返し単位=58.1/38.7/3.2(モル%)、融点:225℃、Q値:49mm3/秒以下、「ETFE1」という。)50gに、イソホロン300gを投入し、200℃で100回転/分、20分間の混合を行い、ETFE溶液を得た。
溶剤回収装置を備えた防爆型の垂直下降並流式噴霧乾燥装置で、噴霧方式として回転円盤式を用いてETFE粉体を製造した。円盤の回転速度を12,000rpmとし、熱源ガスとしては窒素ガスを用い、上記で得られたETFE溶液をさらにイソホロンで2倍に希釈した後、熱源ガスを垂直下降並流式で接触させた。ガスの温度は200℃に設定した。200℃に予備加熱した希釈溶液を供給速度0.8kg/hrで噴霧乾燥装置中に噴霧し、装置内で乾燥された粉体塗料の粒子をサイクロンで捕集することによって、平均粒子径50μmの多孔性ETFE粉体を得た。得られた粒子には顕微鏡観察で角やヒゲが確認されず、その形状はほとんどが球状であった。
縦50mm、横100mm、厚さ2mmのSS400ステンレス鋼板の表面をブラスト処理した後、エアーガンでブラスト粉を除去し、該ステンレス鋼板をエタノールに30分間浸漬した。その後、空気中で400℃、1時間加熱処理して基材1を得た。基材1の表面にETFE粉体を静電塗装し、300℃、45分焼成し、塗装基材1を得た。塗装焼成工程を3回繰り返し、膜厚220μmでピンホールのない塗膜が得られた。
〔実施例2〕
実施例1と同様にして、ETFE(TFEに基づく繰り返し単位/エチレンに基づく繰り返し単位/パーフルオロブチルエチレンに基づく繰り返し単位/IAHに基づく繰り返し単位=57.6/40.0/1.8/0.6(モル%)、融点242℃、Q値:38mm3/秒、以下「ETFE2」という。)50gに変更した以外は実施例1同様にETFE溶液を得、このETFE溶液について実施例1同様に噴霧乾燥を行なったところ、平均粒子径80μmの多孔性ETFE粉体を得た。得られた粒子には顕微鏡観察で角やヒゲが確認されず、その形状はほとんどが球状であった。同様に静電塗装を行い、塗装基材2を得た。塗装焼成工程を2回繰り返し、膜厚200μmでピンホールのない塗膜が得られた。
実施例1と同様にして、ETFE(TFEに基づく繰り返し単位/エチレンに基づく繰り返し単位/パーフルオロブチルエチレンに基づく繰り返し単位/IAHに基づく繰り返し単位=57.6/40.0/1.8/0.6(モル%)、融点242℃、Q値:38mm3/秒、以下「ETFE2」という。)50gに変更した以外は実施例1同様にETFE溶液を得、このETFE溶液について実施例1同様に噴霧乾燥を行なったところ、平均粒子径80μmの多孔性ETFE粉体を得た。得られた粒子には顕微鏡観察で角やヒゲが確認されず、その形状はほとんどが球状であった。同様に静電塗装を行い、塗装基材2を得た。塗装焼成工程を2回繰り返し、膜厚200μmでピンホールのない塗膜が得られた。
〔実施例3〕
実施例1と同様にして、ETFE1の50gに、2,6−ジフルオロベンゾニトリル300gを投入し、200℃で100回転/分、20分間の混合を行い、ETFE溶液を得た。
実施例1と同様にして、ETFE1の50gに、2,6−ジフルオロベンゾニトリル300gを投入し、200℃で100回転/分、20分間の混合を行い、ETFE溶液を得た。
溶剤回収装置を備えた防爆型の垂直下降並流式噴霧乾燥装置で、噴霧方式として回転円盤式を用いてETFE粉体を製造した。円盤の回転速度を12,000rpmとし、熱源ガスとしては窒素ガスを用い、上記で得られたETFE溶液をさらに2,6−ジフルオロベンゾニトリルで2倍に希釈した溶液と熱源ガスを垂直下降並流式で接触させた。ガスの温度は200℃に設定した。200℃に予備加熱した希釈溶液を供給速度0.8kg/hrで噴霧乾燥装置中に噴霧し、装置内で乾燥された粉体塗料の粒子をサイクロンで捕集することによって、平均粒子径40μmの多孔性ETFE粉体を得た。得られた粒子には顕微鏡観察で角やヒゲが確認されず、その形状はほとんどが球状であった。実施例1と同様に静電塗装を行い、塗装基材3を得た。塗装焼成工程を3回繰り返し、200μmでピンホールのない塗膜が得られた。
〔比較例1〕
フッ化炭化水素系の重合媒体であるC4F9CH2CH3中で、TFEとエチレンとパーフルオロブチルエチレンの共重合を行い、ついで乾燥して上記重合媒体を除去し、ETFE〔共重合体組成:TFEに基づく繰り返し単位/エチレンに基づく繰り返し単位/パーフロオロブチルエチレンに基づく繰り返し単位=53/46/1(モル%)、融点:265℃、Q値:7.5mm3/秒〕の微粒子を得た。
フッ化炭化水素系の重合媒体であるC4F9CH2CH3中で、TFEとエチレンとパーフルオロブチルエチレンの共重合を行い、ついで乾燥して上記重合媒体を除去し、ETFE〔共重合体組成:TFEに基づく繰り返し単位/エチレンに基づく繰り返し単位/パーフロオロブチルエチレンに基づく繰り返し単位=53/46/1(モル%)、融点:265℃、Q値:7.5mm3/秒〕の微粒子を得た。
熱処理装置として、下部を絞ってテーパーを設け、上部が円筒型の容器の上部側面に熱風導入口および上部に粉体供給ノズルを設け、容器内壁に沿った冷風導入口と該テーパー下部からの粉体の取りだし口を備えた装置を使用した。この微粒子を320℃に保持した溶融ゾーンの雰囲気中に噴霧して溶融させた。溶融ゾーンにおける滞留時間は約1秒である。溶融した粒子を即座に冷却し、サイクロンで捕集したところ、平均粒径13μm、見かけ比重0.61g/ccの粉体を得た。
この粉体を顕微鏡観察したところ、溶融した粒子同士が融着した凝集物が多く存在していた。
この粉体を顕微鏡観察したところ、溶融した粒子同士が融着した凝集物が多く存在していた。
この粉体を静電塗装機(小野田製GX3300S)に供し、150×150×2mmtのアルミ板に塗装し、電気炉にて300℃、10分焼成した。その後、室温で冷却し固化させたところ、膜厚73μmで、塗膜にはピンホールが検出された。
〔比較例2〕
溶液重合後に造粒処理を行い、TFEに基づく繰り返し単位/エチレンに基づく繰り返し単位/パーフルオロブチルエチレンに基づく繰り返し単位/IAHに基づく繰り返し単位=57.6/40.0/1.8/0.6(モル%)であり、融点242℃、Q値38mm3/秒であるETFE2造粒物を得た。該造粒物をターボミルにより粉砕し、平均粒径39.4μmのETFE2粉体を得た。得られた粉体は顕微鏡観察で角やヒゲが確認された。
溶液重合後に造粒処理を行い、TFEに基づく繰り返し単位/エチレンに基づく繰り返し単位/パーフルオロブチルエチレンに基づく繰り返し単位/IAHに基づく繰り返し単位=57.6/40.0/1.8/0.6(モル%)であり、融点242℃、Q値38mm3/秒であるETFE2造粒物を得た。該造粒物をターボミルにより粉砕し、平均粒径39.4μmのETFE2粉体を得た。得られた粉体は顕微鏡観察で角やヒゲが確認された。
本発明の製造方法によれば、角状・ヒゲ状の粒子の発生が抑制された良好な成形加工性を有するETFE粉体を、ETFEの種類を問わずに、例えば、柔軟なETFEであっても、簡便に製造することが可能である。また、本発明の製造方法により得られる多孔性ETFE粉体は、成形加工性が良好な粉体である。また、ETFE粉体が多孔性のため加熱して塗膜を形成させる際に、容易に塗膜を形成する傾向が有り、塗膜焼付け温度を低減できる可能性がある。
このような本発明のETFE粉体は、塗装性に優れ、金属、セラミクス、ガラス、合成樹脂等の基材表面に塗装できる。また、ライニング、コーティング、表面処理等に使用され、各種の容器、パイプ、チューブ、タンク、配管、継ぎ手、ロール、オートクレーブ、熱交換器、蒸留塔、治具類、バルブ、撹拌翼、タンクローリ、ポンプ、ブロワのケーシング、遠心分離機、調理機器等に使用できる。
Claims (7)
- エチレンに基づく繰り返し単位とテトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位を含有する含フッ素共重合体を、前記含フッ素共重合体の融点以下の温度で該含フッ素共重合体を溶解しうる溶媒に溶解し含フッ素共重合体溶液を得る工程(A)と、
前記含フッ素共重合体溶液を噴霧乾燥させる工程(B)と、
を有することを特徴とする含フッ素共重合体粉体の製造方法。 - 前記溶媒が、含フッ素芳香族化合物、カルボニル基を1個以上有する脂肪族化合物、および、ハイドロフルオロアルキルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の含フッ素共重合体粉体の製造方法。
- 前記工程(A)を含フッ素共重合体の融点以下の温度で行う請求項1または2に記載の含フッ素共重合体粉体の製造方法。
- 前記工程(B)を40〜350℃で行う請求項1〜3のいずれか1項に記載の含フッ素共重合体粉体の製造方法。
- 前記含フッ素共重合体が、酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有する単量体に基づく繰り返し単位を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の含フッ素共重合体粉体の製造方法。
- 前記含フッ素共重合体溶液における前記含フッ素共重合体の含有量が、溶液全量に対して、0.1〜80質量%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の含フッ素共重合体粉体の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法で得られる、平均粒子径が0.01〜1000μmである多孔性含フッ素共重合体粉体。
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-
2010
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