JP2011202274A - 鋼板および溶融亜鉛めっき鋼板ならびにそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で,C:0.0005%以上0.010%未満,Si:0.40%以下,Mn:2.50%以下,P:0.10%以下,S:0.010%未満,sol.Al:0.0050%未満,N:0.005%以下,sol.Ti:0.20%以下、Nb:0.010%以上0.20%以下及びO:0.015%以下であると共に,sol.Ti:0.003%以上又はSi:0.020%超であり、更にsol.TiおよびNbの含有量が、CおよびNの含有量と特定の関係式を満足する化学組成を有し、酸化物系介在物中のTi酸化物の含有量がTiO2換算で50.0質量%以上でありNb酸化物の含有量がNbO換算で1.0質量%未満であることを特徴とする鋼板。
【選択図】図1
Description
第1の調査における一連の供試鋼は、質量%で、C:0.010%未満、Si:0.020%以下、Mn:2.50%以下、P:0.10%以下、S:0.004%、sol.Al:0.002%未満、N:0.005%以下、sol.Ti:0.10%以下、Nb:0.20%以下、O:0.015%以下、B:0.0020%以下、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有するものであった。
(1)熱間圧延後の鋼板中に存在する酸化物系介在物を、エネルギー分散型X線検出器(EDS)を備えた走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、圧延方向に平行な縦断面から観察し、引張特性との関係を調査した。この調査において観察された酸化物系介在物は、Ti酸化物、Al酸化物、Nb酸化物、Mn酸化物およびSi酸化物、さらに不純物元素の酸化物からなるものであった。なお、鋼片と溶融亜鉛めっき鋼板との間で鋼の化学組成および酸化物系介在物の組成に事実上の差異は認められなかった。
(3)溶融亜鉛めっき鋼板の表面を目視観察し、筋模様の有無を調査した。
(A)図1は、NbOとsol.Ti量の関係を示すグラフである。NbOは、酸化物系介在物中のNb酸化物の含有量(質量%)を意味し、sol.Ti量は酸可溶性のTi量(質量%)を意味する。同図に示されるように、sol.Tiの増加に伴いNbOが低下することが分かる。
N*=max[N−(14/48)×sol.Ti,0] (3)
N*=max[N−(14/48)×sol.Ti−(14/11)×B,0] (5)
ここで、各式中の元素記号は、鋼中での各元素の含有量を質量%にて表したものであり、max[ ]は[ ]内の引数の最大値を返す関数である。
図面中の●印はNbOが1.0%未満であったことを、▲印はNbOが1.0%以上であったことを示す。同図に示されるように、平均r値はA値の増加に伴い上昇するが、NbOが1.0%未満である場合には、NbOが1.0%以上である場合よりも平均r値の上昇が速く、到達する平均r値も高くなることが分かる。
(a)NbOが1.0%未満である酸化物系介在物は、形状が微細な球状または塊状である。このような酸化物系介在物は結晶粒の粒成長を抑制し、その結果、熱延鋼板が細粒化する。
(c)NbOが1.0%未満である酸化物系介在物は再結晶を促進させる。
(d)これらの結果、深絞り性に好ましい再結晶集合組織が形成される。
第2の調査における一連の供試鋼は、質量%で、C:0.010%未満、Si:0.10%以下、Mn:2.50%以下、P:0.10%以下、S:0.004%、sol.Al:0.002%未満、N:0.005%以下、sol.Ti:0.10%以下、Nb:0.20%以下、O:0.015%以下、B:0.0020%以下、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有するものであった。
熱間圧延後の鋼板中に存在する酸化物系介在物と引張特性との関係の調査、溶融亜鉛めっき鋼板から採取した引張試験片についての引張試験、および溶融亜鉛めっき鋼板の表面観察を、第1の調査と同じ手法により行った。なお、鋼片と溶融亜鉛めっき鋼板との間で鋼の化学組成および酸化物系介在物の組成に事実上の差異は認められなかった。
(A)図3は、NbOとSi量の関係を示すグラフである。NbOは、酸化物系介在物中のNb酸化物の含有量(質量%)を意味し、Si量は鋼中のSi含有量(質量%)を意味する。同図に示されるように、Si量の増加に伴いNbOが低下することが分かる。
なお、図1はsol.Ti含有量(酸可溶性のTi量を意味する。)が0.0030%未満であるものについてのグラフである。
以上の結果から次の知見が得られた。すなわち、鋼中にSiを一定量以上含有させて、酸化物系介在物中のNb酸化物の含有量を低下させることにより、主としてTiまたは主としてTiとAlとを用いて脱酸した極低炭素冷延鋼板において高いr値を安定して得ることが可能である。また、sol.Tiを過度に含有させずNb含有量を高めることにより、高r値の確保と筋模様のない良好な表面性状の確保を両立させることが可能である。
第3の調査における一連の供試鋼は、質量%で、C:0.010%未満、Si:0.10%以下、Mn:2.50%以下、P:0.10%以下、S:0.004%、sol.Al:0.002%未満、N:0.005%以下、sol.Ti:0.10%以下、Nb:0.20%以下、O:0.015%以下、B:0.0020%以下、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有するものであった。
熱間圧延後の鋼板中に存在する酸化物系介在物と引張特性との関係の調査、溶融亜鉛めっき鋼板から採取した引張試験片についての引張試験、および溶融亜鉛めっき鋼板の表面観察を、第1の調査と同じ手法により行った。なお、鋼片と溶融亜鉛めっき鋼板との間で鋼の化学組成および酸化物系介在物の組成に事実上の差異は認められなかった。
(A)図5は、NbOとsol.Ti量の関係を示すグラフである。NbOは、酸化物系介在物中のNb酸化物の含有量(質量%)を意味し、sol.Ti量は酸可溶性のTi量(質量%)を意味する。同図に示されるように、sol.Tiの増加に伴いNbOが低下することが分かる。
以上の結果から次の知見が得られた。すなわち、sol.Tiを一定量以上含有させて、酸化物系介在物中のNb酸化物の含有量を低下させることにより、主としてTiまたは主としてTiとAlとを用いて脱酸した極低炭素冷延鋼板において高いr値を安定して得ることが可能であり、この知見は第1の調査の結果と同じである。また、sol.Tiを過度に含有させずSiおよびNb含有量を高めることにより、高r値の確保と筋模様のない良好な表面性状の確保を両立させることが可能である。
本発明は、一態様として、質量%で、C:0.0005%以上0.010%未満、Si:0.40%以下、Mn:2.50%以下、P:0.10%以下、S:0.010%未満、sol.Al:0.0050%未満、N:0.005%以下、sol.Ti:0.20%以下(但し、溶融亜鉛めっき鋼板の場合は0.020%以下)、Nb:0.010%以上0.20%以下およびO:0.015%以下であるとともに、sol.Ti:0.003%以上またはSi:0.020%超であり、さらにsol.TiおよびNbの含有量が下記式(1)〜(3)を満足する化学組成を有し、酸化物系介在物中のTi酸化物の含有量がTiO2換算で50.0質量%以上でありNb酸化物の含有量がNbO換算で1.0質量%未満であることを特徴とする鋼板を提供する。
Ti*=max[sol.Ti−(48/14)×N,0] (2)
N*=max[N−(14/48)×sol.Ti,0] (3)
ここで、各式中の元素記号は、鋼中での各元素の含有量を質量%にて表したものであり、max[ ]は[ ]内の引数の最大値を返す関数である。
0.4<(Ti*/48+Nb/93)/(C/12+N*/14) (4)
すなわち、この場合における鋼板の化学組成は、質量%で、C:0.0005%以上0.010%未満、Si:0.020%超0.40%以下、Mn:2.50%以下、P:0.10%以下、S:0.010%未満、sol.Al:0.0050%未満、N:0.005%以下、sol.Ti:0.003%以上0.020%以下、Nb:0.010%以上0.20%以下およびO:0.015%以下であり、さらにsol.TiおよびNbの含有量が上記式(2)〜(4)を満足するものである。
ここで、式中の元素記号は、鋼中での各元素の含有量を質量%にて表したものであり、max[ ]は[ ]内の引数の最大値を返す関数である。
C:0.0005%以上0.010%未満
C含有量が0.010%以上になると、鋼板の延性および深絞り性が著しく損なわれる。一方、過度に極低炭素化することは、製鋼コストの上昇を伴うだけでなく、NbCの析出が不十分となり、固溶Cが残存し、深絞り性の劣化を招く。したがって、含有量の範囲を0.0005%以上0.010%未満とする。望ましい範囲は、0.0010%以上0.0040%未満であり、さらに望ましい範囲は、0.0010%以上0.0030%以下である。
Siは、一般に鋼中に不可避的に含有される元素である。しかし、鋼板を強化する作用を有するので、鋼板を強化する目的で、0.40%以下の範囲で含有させることができる。0.40%を超えると、鋼板のめっき性が著しく低下するなどの不具合が生じやすくなる。
Mnは、不純物であるSと結合してMnSを形成し、Sの弊害を抑制するほか、鋼板を強化する作用を有する。一方、過度に含有させると延性および深絞り性が劣化するので、含有量の上限を2.50%とする。好ましい範囲は、0.05%以上1.00%未満であり、さらに好ましい範囲は、0.15%超0.50%未満である。また、めっき性の観点からはMnの含有量は少ないほど好ましい。具体的には、上限を0.31%未満とすることが好ましく、0.28%未満とすることがさらに好ましい。
Pは、一般的には鋼中に不可避的に含有される不純物であるが、深絞り性を損なうことなく鋼板を強化する作用を有する有用な元素でもあるので、積極的に含有させてもよい。しかし、過度に含有させると耐二次加工脆性が極端に劣化するので、0.10%以下とする。好ましい範囲は0.005%以上0.050%未満である。さらに好ましい範囲は0.010%以上0.015%未満であり、最も好ましい範囲は0.010%以上0.013%未満である。
Sは鋼中に不可避的に含有される不純物であり、粒界に偏析して鋼を脆化させるため、Sの含有量は少ないほど好ましく、0.010%未満とする。好ましい上限は0.008%未満である。さらに好ましい上限は0.006%未満であり、最も好ましい上限は0.005%未満である。ただし、Sの含有量を過度に低下させることは、製造コストの上昇を招くため、0.001%を超えて含有させることが望ましく、0.003%を超えて含有させることはさらに望ましい。
鋼中Alは、分析時に使用する酸に溶解しない酸化物等の形態と、酸に溶解する窒化物等や固溶の形態があり、酸可溶性のAl含有量をsol.Alと表記する。sol.Al量は溶鋼段階での溶解Al量と関連付けられるため、鋼の脱酸に強く影響する。本発明ではTi酸化物を50.0%以上含む酸化物系介在物の分散を必要とし、Alはこれを阻害する。このため、sol.Alの含有量を0.0050%未満とする。好ましい上限は0.0030%未満である。一方、Al自体は、溶鋼の製造工程で予備脱酸や温度調整に使用できるので、sol.Alを0.0002%以上含有させることが好ましい。さらに好ましい範囲は0.0005%以上0.0020%未満である。
Nは、鋼中に不可避的に含有される元素であり、含有量の増加は延性、深絞り性および耐常温時効性を劣化させるため、0.005%以下とする。好ましい範囲は0.003%以下である。ただし、過度に極低窒素化することは、製鋼コストの上昇を伴うだけでなく、窒化物の析出が不十分となる。この場合には固溶Nが残存し、深絞り性の劣化を招く。したがって、Nの含有量を0.001%以上とすることが望ましい。
鋼中Tiは、分析時に使用する酸に溶解しない酸化物等の形態と、酸に溶解する炭窒化物等や固溶の形態があり、酸可溶性のTi含有量をsol.Tiと表記する。
Nbは、本発明における重要な構成成分である。鋼中のCをNbCとして固定するとともに熱延板の組織を微細化し、深絞り性に好ましい再結晶集合組織を発達させる作用をNbは有する。Nbは、Tiのように溶融亜鉛めっき鋼板表面に筋模様の発生をもたらすことがないので、筋模様の発生を伴うことなく深絞り性を向上させることができる。Nb含有量が少ないと、上記作用による所望の効果が十分に得られず、深絞り性が損なわれる。したがって、0.010%以上であり、かつ、上記式(1)、(2)および(3)、または上記式(4)、(2)および(3)を満たす範囲で含有させる。好ましい含有量の下限は、0.026%以上である。一方、Nb含有量が過剰となると、再結晶温度が上昇しすぎて深絞り性が劣化するので、0.20%以下とする。好ましいのは、A値を1.0超10.0未満とすることである。さらに好ましいのは、A値を2.0超5.0未満とすることである。
O含有量が0.015%を超えると、酸化物系介在物の生成量が多くなりすぎ、表面疵が発生しやすくなる。このため、O含有量は0.015%以下とする。好ましい範囲は、0.010%未満である。一方、Ti酸化物の含有率が50.0%以上でありNb酸化物の含有量が1.0%未満である酸化物系介在物を適正量生成させ、深絞り性を向上させるには、Oを0.0020%以上含有させることが好ましい。Oを0.0030%以上含有させるとさらに好ましい。
Bは、結晶粒界に偏析して粒界を強化し、耐二次加工脆性を向上させる効果を有するので、0.0002%以上含有させても良い。一方、含有量が0.0020%を上回ると、再結晶温度が上昇して、深絞り性が劣化する。したがって、0.0002%以上0.0020%以下とする。好ましい範囲は、0.0003%超0.0010%未満である。
Bを含有させる場合には、N*は上記式(3)に代えて、下記式(5)に示されるBを含む式に基づき算出される。
N*=max[N−(14/48)×sol.Ti−(14/11)×B,0] (5)
これらの元素は、鋼板を強化する作用を有するので、必要に応じて1種または2種以上含有させても良い。ただし、含有量の合計が2.0%を超えると延性が著しく劣化する。したがって、合計の含有量を2.0%以下とする。なお、鋼板を強化する作用を確実に発
揮させるには合計の含有量を0.05%以上とすることが好ましい。
本実施の形態の溶融亜鉛めっき鋼板は、以上の鋼組成を有する。
(1)酸化物系介在物
本発明に係る鋼板は、酸化物系介在物中のNb酸化物の含有量が1.0%未満であり、Ti酸化物の含有量が50.0%以上であることとする。
鋼板の任意の位置から試験片を採取し、鋼板の圧延方向に平行な縦断面を研磨した後、SEMを用いて長径1μm以上の酸化物系介在物を観察し、EDSを用いて、Feを除く上記元素について定量分析を行う。得られた各元素の原子数比に基づいて、検出された各元素について予め規定された化学量論組成の酸化物換算の化学組成(単位:質量%)を求める。ここで、介在物を構成する主要元素についての化学量論組成の酸化物は次のとおりである。
また、不純物元素についての化学量論組成の酸化物は次のとおりである。
Mg:MgO、Ca:CaO。
鋼板の酸化物系介在物に含まれるNb酸化物には、NbOやNbO2等の存在形態が考えられるが、Nb酸化物の含有量は、上記のようにSEM/EDSを用いて元素分析し、NbOに換算して求める。
鋼板の酸化物系介在物に含まれるTi酸化物の含有量は、Nb酸化物の含有量と同様にSEM/EDSを用いて元素分析し、TiO2に換算して求める。
大規模製鉄所の大量生産工程で、本発明に係る鋼板を製造する場合は、酸化物系介在物に、Nb酸化物、Ti酸化物以外の酸化物が含有されうる。具体的には、Al酸化物が例示される。溶鋼にTiを添加する前に、予備的にAlを添加し鋼中酸素を部分的に除去することは、生産性および製造安定性の向上のために好ましい。しかしながら、このAl添加によってAl酸化物が鋼中に生成するようになる。酸化物系介在物におけるAl酸化物の含有量の範囲は特に限定されない。Al添加による生産性および製造安定性の向上という利点を享受するためにはAl酸化物の含有量を3.0%以上とすることが好ましい。一方、多量に含有されると、Ti酸化物の含有量が低下して深絞り性が損なわれたり、浸漬ノズルの閉塞が起こりやすくなったりする。したがって、Al酸化物の含有量は35.0%未満であることが好ましい。さらに好ましいAl酸化物の含有量は5.0%以上30.0%未満である。
本実施の形態の鋼板は、以上の酸化物系介在物組成を有する。
本発明に係る鋼板は、上記の化学組成を有し、酸化物系介在物について上記の関係が満足できるのであれば、いかなる製造方法により製造されてもよい。ただし、以下の製造方法を採用することによって、本発明に係る鋼板をより効率的かつ安定的に製造することが実現される。
本発明に係る製造方法においては、製鋼工程では、転炉などの製鋼炉で粗脱炭した後、RH装置等の真空脱ガス装置で真空脱炭処理を行う。続いて、Ti以外の元素の成分調整を行い、その後、TiまたはTi合金を添加して脱酸処理し、連続鋳造する。TiまたはTi合金を添加して脱酸処理するのは、鋼板中に、Ti酸化物の含有量が50.0%以上でありNb酸化物の含有量が1.0%未満である酸化物系介在物を分散させ、鋼板の深絞り性を向上させるのに必要なためである。
連続鋳造工程では、介在物に起因する表面欠陥の発生を抑制するために、鋳型内にて電磁攪拌等の外部付加的な流動を溶鋼に生じさせることが好ましい。
連続鋳造によって得られた鋼塊を再加熱するか、または連続鋳造後の高温の鋼塊をそのまま、もしくは補助加熱を行ってから、熱間圧延を行う。鋼塊は、表面性状を良好に保つために、加熱前に冷間または温間で表面手入れすることが好ましい。加熱温度が低いと、圧延荷重が増大して圧延が困難となるため、加熱温度を1150℃超にすることが好ましい。
冷間圧延は、酸洗等により脱スケールした後に、常法に従って行われる。冷間圧延後に行われる再結晶焼鈍によって深絞り性に好ましい再結晶集合組織を発達させるために、圧下率を70%以上とすることが好ましい。圧下率が過度に高くなると、圧延設備への負荷が高まり、生産性の低下を招く。したがって、圧下率は90%未満とし、最終板厚を0.40mm以上とすることが好ましい。さらに好ましい圧下率は85%未満である。
実験用真空溶解炉を用いて、表1に示される化学組成を有する鋼を溶解し、鋳造した。これらの鋼塊を熱間鍛造により厚さ20mmの鋼片とし、電気加熱炉を用いて1250℃に加熱し、30分間保持した。鋼片を炉から抽出した後、実験用熱間圧延機を用いて、910℃以上の温度範囲で熱間圧延し、厚さ4mmの熱延鋼板を得た。熱間圧延後、直ちに水スプレー冷却により650℃まで冷却してこれを巻取り温度とし、同温度に保持された電気加熱炉中に装入して30分間保持した後、20℃/hの冷却速度で炉冷却して巻取り後の徐冷処理とした。得られた鋼板を酸洗して冷間圧延母材とし、圧下率82.5%で冷間圧延し、厚さ0.7mmの冷延鋼板を得た。連続溶融亜鉛めっきシミュレーターを用いて、得られた冷延鋼板の一部を、20℃/sの加熱速度で850℃まで加熱し50秒間保持した後、460℃まで冷却し、溶融亜鉛浴に3秒間浸漬して溶融亜鉛めっきを行った。めっき後、500℃で20秒間保持する合金化処理を施し、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得た。また、連続焼鈍シミュレーターを用いて、得られた冷延鋼板の一部を、10℃/sの加熱速度で850℃まで加熱し30秒間保持した後冷却し、冷延鋼板(以下の説明においては、焼鈍後の冷延鋼板を冷間圧延ままの冷延鋼板と区別するために「冷延焼鈍鋼板」という。)を得た。
表2に酸化物系介在物の組成分析および性能評価結果を示した。本発明が規定する範囲内の鋼板についての試験結果(試番1〜9、17、18、21)は、いずれも、表面性状は良好であり、また、平均r値は1.90以上であり良好な深絞り性を示した。
溶鋼290tonを転炉で脱炭精錬し、その未脱酸溶鋼を収容した取鍋をRH装置へ移送し、RH装置で真空脱炭を行った。真空脱炭が終了した後、未脱酸溶鋼の予備脱酸と溶鋼の昇温操作を兼ねてAlを添加した。Al添加後に真空槽内の溶鋼に酸素を38Nm3/minで供給して適宜酸化反応による溶鋼への熱付与を実施した。その後溶鋼に酸素濃度が含有される状態で既に含有されている濃度を勘案してTi以外の各種合金を添加調整し、最後にTiを添加調整し、表3に示される化学組成になるように調整した。Alキルド鋼(鋼T、U)では、この工程でAlを0.04%以上含有する状態として、その後Tiを添加し化学組成を調整した。
実験用真空溶解炉を用いて、表6に示される化学組成を有する鋼を溶解し、鋳造した。以下、実施例1と同じ製造方法を実施して合金化溶融亜鉛めっき鋼板および冷延焼鈍鋼板を得た。
溶鋼290tonを転炉で脱炭精錬し、その未脱酸溶鋼を収容した取鍋をRH装置へ移送し、RH装置で真空脱炭を行った。真空脱炭が終了した後、未脱酸溶鋼の予備脱酸と溶鋼の昇温操作を兼ねてAlを添加した。Al添加後に真空槽内の溶鋼に酸素を38Nm3/minで供給して適宜酸化反応による溶鋼への熱付与を実施した。その後溶鋼に酸素濃度が含有される状態で既に含有されている濃度を勘案してTi以外の各種合金を添加調整し、最後にTiを添加調整し、表8に示される化学組成になるように調整した。Alキルド鋼(鋼AP、AQ)では、この工程でAlを0.04%以上含有する状態として、その後Tiを添加し化学組成を調整した。
表10に酸化物系介在物の組成分析および性能評価結果を示した。本発明が規定する範囲内の鋼板についての試験結果(試番115〜119)は、いずれも、表面性状は良好であり、また、平均r値は1.80以上であり良好な深絞り性を示した。
実験用真空溶解炉を用いて、表11に示される化学組成を有する鋼を溶解し、鋳造した。以下、実施例1と同じ製造方法を実施して合金化溶融亜鉛めっき鋼板および冷延焼鈍鋼板を得た。
溶鋼290tonを転炉で脱炭精錬し、その未脱酸溶鋼を収容した取鍋をRH装置へ移送し、RH装置で真空脱炭を行った。真空脱炭が終了した後、未脱酸溶鋼の予備脱酸と溶鋼の昇温操作を兼ねてAlを添加した。Al添加後に真空槽内の溶鋼に酸素を38Nm3/minで供給して適宜酸化反応による溶鋼への熱付与を実施した。その後溶鋼に酸素濃度が含有される状態で既に含有されている濃度を勘案してTi以外の各種合金を添加調整し、最後にTiを添加調整し、表13に示される化学組成になるように調整した。Alキルド鋼(鋼BP、BQ)では、この工程でAlを0.04%以上含有する状態として、その後Tiを添加し化学組成を調整した。
表15に酸化物系介在物の組成分析および性能評価結果を示した。本発明が規定する範囲内の鋼板についての試験結果(試番214〜217)は、いずれも、表面性状は良好であり、また、平均r値は1.80以上であり良好な深絞り性を示した。
実験用真空溶解炉を用いて、表16に示される化学組成を有する鋼を溶解し、鋳造した。これらの鋼塊を、熱間鍛造により厚さ40mmの鋼片とし、電気加熱炉を用いて1250℃に加熱し、60分間保持した。鋼片を炉から抽出した後、実験用熱間圧延機を用いて、表17に示される条件で熱間圧延を行った。
表18に酸化物系介在物の組成分析および性能評価結果を示した。
Claims (10)
- 質量%で、C:0.0005%以上0.010%未満、Si:0.40%以下、Mn:2.50%以下、P:0.10%以下、S:0.010%未満、sol.Al:0.0050%未満、N:0.005%以下、sol.Ti:0.20%以下、Nb:0.010%以上0.20%以下およびO:0.015%以下であるとともに、sol.Ti:0.003%以上またはSi:0.020%超であり、さらにsol.TiおよびNbの含有量が下記式(1)〜(3)を満足する化学組成を有し、酸化物系介在物中のTi酸化物の含有量がTiO2換算で50.0質量%以上でありNb酸化物の含有量がNbO換算で1.0質量%未満であることを特徴とする鋼板。
1.0<(Ti*/48+Nb/93)/(C/12+N*/14) (1)
Ti*=max[sol.Ti−(48/14)×N,0] (2)
N*=max[N−(14/48)×sol.Ti,0] (3)
ここで、各式中の元素記号は、鋼中での各元素の含有量を質量%にて表したものであり、max[ ]は[ ]内の引数の最大値を返す関数である。 - 前記化学組成が、質量%で、sol.Ti:0.003%以上およびSi:0.020%超であり、さらに前記式(1)に代えて下記式(4)を満足することを特徴とする請求項1に記載の鋼板。
0.4<(Ti*/48+Nb/93)/(C/12+N*/14) (4) - 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、B:0.0002%以上0.0020%以下を含有し、かつ、前記式(3)に代えて下記式(5)を満足するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼板。
N*=max[N−(14/48)×sol.Ti−(14/11)×B,0] (5)
ここで、式中の元素記号は、鋼中での各元素の含有量を質量%にて表したものであり、max[ ]は[ ]内の引数の最大値を返す関数である。 - 前記化学組成が、Feの一部に代えて、Cr、Mo、WおよびNiからなる群から選択される1種または2種以上を、合計で2.0質量%以下含有するものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の鋼板。
- 前記化学組成が、sol.Ti:0.020%以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の鋼板。
- 請求項5に記載の鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を備えることを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板。
- 真空脱ガス装置を用いて脱炭精錬した溶鋼にTiを添加し、連続鋳造して請求項1ないし5のいずれかに記載の化学組成および酸化物系介在物組成を有する鋼塊とし、該鋼塊を熱間圧延し、冷間圧延し、再結晶焼鈍することを特徴とする鋼板の製造方法。
- 真空脱ガス装置を用いて脱炭精錬した溶鋼にAlを添加して溶存酸素濃度を0.003質量%以上に制御した後、さらにTiを添加し、連続鋳造して請求項1ないし5のいずれかに記載の化学組成および酸化物系介在物組成を有する鋼塊とし、該鋼塊を熱間圧延し、冷間圧延し、再結晶焼鈍することを特徴とする鋼板の製造方法。
- 請求項7または8に記載の鋼板の製造方法において、前記熱間圧延に際して、Ar3点以上の温度域で圧延を完了し、圧延完了後0.8秒間以内に800℃以下の温度域まで冷却することを特徴とする鋼板の製造方法。
- 請求項7ないし9に記載の鋼板の製造方法において、前記鋼塊が請求項5に記載の化学組成を有し、前記再結晶焼鈍後に溶融亜鉛めっき処理を行うことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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