JP2011202188A - ポリカーボネート樹脂 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐光性、透明性、色相、耐熱性、熱安定性、及び機械的強度に優れ、性能の安定したポリカーボネート樹脂を、効率的かつ安定的に製造する方法を提供する。
【解決手段】触媒及び、原料モノマーとして炭酸ジエステル並びにジヒドロキシ化合物を用いて、複数の反応器で多段階で、エステル交換反応により重縮合させてポリカーボネート樹脂を製造する方法であって、
ジヒドロキシ化合物が、構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物を少なくとも含み、
反応器の少なくとも1つが、エステル交換反応によって副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が理論留出量の20%以上であり、かつ熱媒体を用いて加熱するための加熱手段及び還流冷却器を具備した内容積20L以上の反応器であって、熱媒体の温度と反応器中の反応液の温度差が少なくとも5℃以上であり、かつ、
全反応段階で留出するモノマーの合計量が、原料モノマーの総量に対して10重量%以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
Figure 2011202188

【選択図】なし

Description

本発明は、耐光性、透明性、色相、耐熱性、熱安定性、及び機械的強度に優れ、性能の安定したポリカーボネート樹脂を、効率的かつ安定的に製造する方法に関する。
ポリカーボネート樹脂は一般的にビスフェノール類をモノマー成分とし、透明性、耐熱性、機械的強度等の優位性を生かし、電気・電子部品、自動車用部品、光学記録媒体、レンズ等の光学分野等でいわゆるエンジニアリングプラスチックスとして広く利用されている。しかしながら、最近急激に普及しつつあるフラットパネルディスプレー等の光学補償フィルム用途では、低複屈折や低光弾性係数等、さらに高度な光学的特性が要求されるようになり、既存の芳香族ポリカーボネートではその要求に応えられなくなってきた。
また、従来のポリカーボネートは、石油資源から誘導される原料を用いて製造されるが、近年、石油資源の枯渇が危惧されており、植物などのバイオマス資源から得られる原料を用いたポリカーボネートの提供が求められている。また、二酸化炭素排出量の増加、蓄積による地球温暖化が、気候変動などをもたらすことが危惧されていることからも、使用後の廃棄処分をしてもカーボンニュートラルな、植物由来モノマーを原料としたポリカーボネートの開発が求められている。
かかる状況下、特殊なジヒドロキシ化合物をモノマー成分とし、炭酸ジエステルとのエステル交換により副生するモノヒドロキシ化合物を減圧下で留去しながら、ポリカーボネートを得る方法が提案されている(例えば特許文献1〜6参照)。
ところが、このような特殊な構造を有するジヒドロキシ化合物は、ビスフェノール類に比べると沸点が低いため、高温、減圧下で行うエステル交換反応中の揮散が激しく、原料原単位の悪化を招くだけではなく、品質に影響を及ぼす末端基濃度を所定の値に制御することが困難になるという問題や、ジヒドロキシ化合物を複数種使用する場合には、使用するジヒドロキシ化合物のモル比率が重合中に変化し、所望の分子量や組成のポリカーボネート樹脂が得られないという問題があった。
この問題を解決するために、重合温度を低くしたり、減圧の度合いを緩めるなどの方法が考えられるが、この方法では、モノマーの揮散は抑制されるものの、生産性の低下を招くというジレンマがあった。
また、特定の還流冷却器を有する重合反応器を用いる方法も提案されているが(特許文献7参照)、原料原単位の改善は未だ満足できるレベルではなく、更なる改良が求められている。
更には、副生するモノヒドロキシ化合物は、留去させる際に多くの蒸発潜熱を奪うため、所定の重合温度に保とうとすると熱媒体(熱媒)で加温する必要があるが、スケールが大きくなると、反応器内の単位反応液当たりの伝熱面積が小さくなるため、より高温の熱媒で加温する必要が出てくる。このことは、熱媒が流通する壁面と接触する部分の反応液がより高い温度で加熱されることを意味しており、該壁面に触れた沸点の低いジヒドロキシ化合物の揮散を著しく助長するに止まらず、該壁面近傍での熱劣化を招いて品質が悪化するという問題があり、スケールが大きくなるほど問題は深刻となる。
国際公開第04/111106号パンフレット 特開2006−232897号公報 特開2006−28441号公報 特開2008−24919号公報 特開2009−91404号公報 特開2009−91417号公報 特開2008−56844号公報
本発明の目的は、上記従来の問題点を解消し、耐光性、透明性、色相、耐熱性、熱安定性、及び機械的強度に優れ、性能の安定したポリカーボネート樹脂を、効率的かつ安定的に製造する方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく、鋭意検討を重ねた結果、モノマーとして炭酸ジエステルおよびジヒドロキシ化合物を用いてエステル交換法により重縮合させてポリカーボネート樹脂を製造する方法において、反応器から留出するモノマーを特定量以下にすることによって耐光性、透明性、色相、耐熱性、熱安定性、及び機械的強度に優れ、性能の安定したポリカーボネート樹脂を製造する方法を見出した。
即ち、本発明の要旨は下記[1]〜[16]に存する。
[1] 触媒及び、原料モノマーとして炭酸ジエステル並びにジヒドロキシ化合物を用いて、複数の反応器で多段階で、エステル交換反応により重縮合させてポリカーボネート樹脂を製造する方法であって、
該ジヒドロキシ化合物が構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物を少なくとも含み、
エステル交換反応によって副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が理論留出量の20%以上留出する反応器の少なくとも1つが、内容積20L以上の、熱媒体を用いて反応器を加熱するための加熱手段及び還流冷却器を具備した反応器であり、該熱媒体の温度と反応器中の反応液の温度差が少なくとも5℃以上であり、かつ、
全反応段階で留出するモノマーの合計量が、原料モノマーの総量に対して10重量%以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
Figure 2011202188
(但し、上記一般式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
[2] 触媒及び、原料モノマーとして炭酸ジエステル並びにジヒドロキシ化合物を用いて、複数の反応器で多段階で、エステル交換反応により重縮合させてポリカーボネート樹脂を製造する方法であって、
該ジヒドロキシ化合物が、複数種のジヒドロキシ化合物からなり、その中の少なくとも1種が構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物であり、
エステル交換反応によって副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が理論留出量の20%以上留出する反応器の少なくとも1つが、内容積20L以上の、熱媒体を用いて反応器を加熱するための加熱手段及び還流冷却器を具備した反応器であり、該熱媒体の温度と反応器中の反応液の温度差が少なくとも5℃以上であり、かつ、反応器へ原料として仕込んだ仕込み時のジヒドロキシ化合物のモル百分率と、得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位のモル百分率との差を、反応器へ原料として仕込んだ仕込み時のジヒドロキシ化合物のモル百分率で除した値の絶対値が、少なくとも1種のジヒドロキシ化合物については、0.03以下であり、いずれのジヒドロキシ化合物についても0.05を超えないことを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
Figure 2011202188
(但し、上記一般式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
[3] 前記ジヒドロキシ化合物の内、少なくとも1種のジヒドロキシ化合物の大気圧での沸点が300℃以下である[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4] 少なくとも3つの反応器を用いる[1]乃至[3]の何れかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[5] 前記還流冷却器に導入される冷媒の温度が、還流冷却器の入口において45〜180℃である[1]乃至[4]の何れかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[6] 前記全反応段階で留出するモノマーの合計量が、原料モノマーの総量に対して3重量%以下である[1]乃至[5]の何れかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[7] 前記エステル交換反応によって副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が理論留出量の20%以上留出する1つ目の反応器に、触媒として、リチウム及び長周期型周期表第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を、その金属原子の合計量として、原料として用いた全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、20μmol以下用いる[1]乃至[6]の何れかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[8] 前記触媒が、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物である[7]に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[9] 全反応段階における反応液の最高温度が250℃未満である[1]乃至[8]の何れかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[10] 前記熱媒体の最高温度が265℃未満である[1]乃至[9]の何れかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[11] 前記ジヒドロキシ化合物が、下記一般式(2)の化合物と、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び脂環式ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とを含む[1]乃至[10]の何れかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
Figure 2011202188
[12] [1]乃至[11]のいずれかに記載の方法によって得られたポリカーボネート樹脂であって、該ポリカーボネート樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)の波長350nmにおける光線透過率が60%以上であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
[13] [1]乃至[11]のいずれかに記載の方法によって得られたポリカーボネート樹脂であって、該ポリカーボネート樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)の波長320nmにおける光線透過率が30%以上であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
[14] [1]乃至[11]のいずれかに記載の方法によって得られたポリカーボネート樹脂であって、該ポリカーボネート樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)を、63℃、相対湿度50%の環境下にて、メタルハライドランプを用い、波長300nm〜400nmの放射照度1.5kW/mで、100時間照射処理した後に、透過光で測定したASTM D1925−70に準拠したイエローインデックス(YI)値が12以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
[15] [1]乃至[11]のいずれかに記載の方法によって得られたポリカーボネート樹脂であって、該ポリカーボネート樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)の初期のイエローインデックス値が7以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
[16] [1]乃至[11]のいずれかに記載の方法によって得られたポリカーボネート樹脂であって、該ポリカーボネート樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)の初期のイエローインデックス値と、該成形体を、63℃、相対湿度50%の環境下にて、メタルハライドランプを用い、波長300nm〜400nmの放射照度1.5kW/mで、100時間照射処理した後に、透過光で測定したASTM D1925−70に準拠したイエローインデックス(YI)値との差の絶対値が6以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
[17] [1]乃至[11]のいずれかに記載の方法によって得られたポリカーボネート樹脂であって、該ポリカーボネート樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)のL*値が96.3以上であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
本発明によれば、優れた耐光性を有するだけでなく、優れた透明性、色相、耐熱性、成形性、及び機械的強度に優れ、電気・電子部品、自動車用部品等の射出成形分野、フィルム、シート分野、ボトル、容器分野、さらには、カメラレンズ、ファインダーレンズ、CCDやCMOS用レンズなどのレンズ用途、液晶やプラズマディスプレイなどに利用される位相差フィルム、拡散シート、偏光フィルムなどのフィルム、シート、光ディスク、光学材料、光学部品、色素及び電荷移動剤等を固定化するバインダー用途といった幅広い分野へ適用可能な性能を有するポリカーボネート樹脂を、効率的にかつ安定して製造することが可能になる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。
本発明における第一の発明は、触媒及び原料モノマーとして炭酸ジエステル並びにジヒドロキシ化合物を用いて、複数の反応器で多段階で、エステル交換反応により重縮合させてポリカーボネート樹脂を製造する方法であって、該ジヒドロキシ化合物が構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物を少なくとも含み、
エステル交換反応によって副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が理論留出量の20%以上留出する反応器の少なくとも1つが、内容積20L以上の、熱媒体を用いて反応器を加熱するための加熱手段及び還流冷却器を具備した反応器であり、該熱媒体の温度と反応器中の反応液の温度差が少なくとも5℃以上であり、かつ、
全反応段階で留出するモノマーの合計量が、原料モノマーの総量に対して10重量%以下であることを特徴とするものである。
Figure 2011202188
(但し、上記一般式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
本発明においては、モノヒドロキシ化合物の留出量が、その理論留出量の20%以上留出する反応器の少なくとも1つが、内容積20L以上であり、好ましくは30L以上である。前述のように、反応器の内容積が大きくなるほど本発明の効果が大きくなる。
本発明の方法において、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物は、後述する触媒の存在下で、複数の反応器を用いて多段階でエステル交換反応により重縮合(単に重合という場合もある)させるが、この重合反応では、モノヒドロキシ化合物(例えば、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを使用した場合にはフェノール)がその副生物として生じる。そこで、副生したモノヒドロキシ化合物は、系外に留去させながら重合を行うが、重合初期の段階においては、単位時間当たりのモノヒドロキシ化合物の副生量が多く、多くの蒸発潜熱を奪うため、本発明においては、モノヒドロキシ化合物の留出量が、その理論留出量の20%以上留出する反応器の少なくとも1つを、熱媒体を用いて反応器を加熱するための加熱手段を具備した反応器とし、導入される熱媒体の温度は反応器中の反応液の温度(以下、「内温」と称する場合がある)より高く、即ちその温度差を、少なくとも5℃以上(熱媒体温度>内温)とする。
ここで、本発明における、モノヒドロキシ化合物の理論留出量とは、原料として使用する炭酸ジエステルの2倍のモル数であり、理論留出量の20%以上留出する反応器とは、バッチ式反応の場合には、原料として当初仕込んだ炭酸ジエステル化合物の量に対する、1つの反応器から留出するモノヒドロキシ化合物のトータルの量から算出して、理論留出量の20%以上となっている反応器を意味し、連続反応の場合には、原料として供給する炭酸ジエステルの単位時間当たりの量に対する、1つの反応器から留出する単位時間当たりのモノヒドロキシ化合物の量から算出して、理論留出量の20%以上となっている反応器を意味する。
また、熱媒体を用いて反応器を加熱するための加熱手段としては、反応器の周囲(全周囲又は部分的に)に設けたジャケット形式(以下、単に熱媒体ジャケットと呼ぶことがある)や、反応器の内部に内部コイルを設置する形式や、反応器の外部に設けた熱交換器の形式などが挙げられるが、加熱手段が熱媒体ジャケットであるのが好ましい。熱媒体ジャケットを用いる場合、そのジャケット内の熱媒体の温度を過度に高くしないために、反応器の内部にも内部コイルを設置し、反応器の内部からも熱を与えて、加熱伝面積を増やしてやることは有効である。
熱媒体の温度と反応液の温度差が5℃未満では、反応器の熱収支が悪化し、反応液の温度を所定の温度に出来ない場合がある。特に反応器の大きさが大きくなると、例えば加熱手段が熱媒体ジャケットである場合には、反応器の内容積に対する熱媒体ジャケットの伝熱面積が低下する傾向にあるため、熱媒体の温度と反応液の温度差は大きくするのが望ましく、好ましくは10℃以上、特には15℃以上とするのが好ましい。
逆に、熱媒体の温度と反応液の温度差が大きくなりすぎると、原料モノマーの留出量が多くなるだけではなく、内容物の熱劣化も激しくなるため、好ましくは、80℃以下、より好ましくは40℃以下、特に好ましくは30℃以下である。
導入される熱媒体の温度は、達成したい反応液の温度によって、適宜決めればよいが、熱媒体の温度が高くなりすぎると、原料モノマーの留出量が多くなりすぎるため、最高温度が好ましくは265℃未満、より好ましくは260℃未満、特に好ましくは255℃未満である。
熱媒体の温度を反応液の温度より5℃以上高くするとは、その1つの反応器における反応時間内において、常に5℃以上高くしてもよいし、モノヒドロキシ化合物の留出が顕著な時間・期間のみ行ってもよい。一般的に、連続反応では前者、バッチ反応では後者である。
尚、本発明において、熱媒体の温度とは、加熱手段に導入する前の温度、例えば加熱手段が熱媒体ジャケットである場合には、反応器の周囲(全周囲又は部分的に)に設けられた熱媒体ジャケットに導入する前の熱媒体の温度をさす。また、本発明において、反応液の温度とは、熱対などの測定機器で測定される反応液の温度をいう。
本発明における重合反応によって副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が理論留出量の20%以上留出する反応器の少なくとも1つの内温は、通常140〜270℃、好ましくは180〜240℃、更に好ましくは200〜230℃である。内温が過度に高いと原料モノマーの留出量が多くなるだけではなく、熱劣化も激しくなり、過度に低いと反応速度が低下し、生産の効率を低下させる。
本発明においては、モノヒドロキシ化合物の留出量が、その理論留出量の20%以上留出する反応器の少なくとも1つに、留出するモノマーの量を抑制するために、還流冷却器を具備させることを特徴とする。
還流冷却器に導入される冷媒の温度は該還流冷却器の入口において、45〜180℃であるのが好ましく、より好ましくは、80〜150℃、特に好ましくは100〜130℃である。冷媒の温度が高すぎると還流量が減り、その効果が低下する傾向があり、逆に低すぎると、本来留去すべきモノヒドロキシ化合物の留去効率が低下する傾向にある。冷媒としては、温水、蒸気、熱媒オイル等が用いられ、蒸気、熱媒オイルが好ましい。
還流冷却器は、留出するモノマーの量を抑制するために、モノヒドロキシ化合物の留出量が、その理論留出量の10%以上留出する反応器にも具備させることが好ましい。本発明の方法において、全反応段階で留出するモノマーの合計量が、原料モノマーの総量に対して10重量%以下であることが肝要である。
ここで全反応段階で留出するモノマーの合計量(以下、「留出するモノマー量」と称する場合がある)とは、エステル交換反応の開始から終了までに留出した全てのモノマーの合計量である。
留出するモノマー量が原料モノマーの総量に対して10重量%を越えると、原料原単位の悪化を招くだけではなく、品質に影響を及ぼす末端基濃度を所定の値に制御することが困難になるという問題や、ジヒドロキシ化合物を複数使用する場合には、使用するジヒドロキシ化合物のモル比率が重合中に変化し、所望の分子量や組成のポリカーボネート樹脂が得られない可能性がある。
留出するモノマー量は、原料モノマー総量に対して好ましくは5重量%以下、更に好ましくは3重量%以下、特に好ましくは2重量%以下である。
留出するモノマー量は、少ない方が原料原単位の改善が大きい一方で、内温や加熱媒体温度を過度に低くしたり、圧力を過度に高くしたり、触媒量を増やしたり、重合時間を長くしたりする必要があり、ポリカーボネート樹脂の生産効率低下や、品質の悪化を招くため、その下限は通常0.2重量%、好ましくは0.4重量%、より好ましくは0.6重量%である。
本発明で規定した留出するモノマー量は、前記のように触媒の種類と量、反応液の温度、加熱媒体の温度、反応圧力、滞留時間、還流条件等を適宜選択することによって達成することができる。
例えば、重合初期においては、相対的に低温、低真空でプレポリマーを得、重合後期においては相対的に高温、高真空で所定の値まで分子量を上昇させるが、各分子量段階での熱媒体の温度と内温、反応系内の圧力を適切に選択することが重要である。例えば、重合反応が所定の値に到達する前に温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが留出し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比率を狂わせ、重合速度の低下を招いたり、所定の分子量や末端基を持つポリマーが得られなかったりする可能性がある。
重合速度を適切に維持し、モノマーの留出を抑制しながら、最終的なポリカーボネート樹脂の色相や熱安定性、耐光性等を損なわないようにするためには、後述する触媒の種類と量の選定も重要である。
本発明の方法において、ポリカーボネート樹脂の製造は、触媒を用いて、複数の反応器を用いて多段階で重合させるが、重合を複数の反応器で実施する理由は、重合反応初期においては、反応液中に含まれるモノマーが多いために、必要な重合速度を維持しつつ、モノマーの揮散を抑制してやることが重要であり、重合反応後期においては、平衡を重合側にシフトさせるために、副生するモノヒドロキシ化合物を十分留去させることが重要になるためである。このように、異なった重合反応条件を設定するには、直列に配置された複数の重合反応器を用いることが、生産効率の観点から好ましい。
本発明の方法で使用される反応器は、上述の通り、少なくとも2つ以上であればよいが、生産効率などの観点からは、3つ以上、好ましくは3〜5つ、特に好ましくは、4つである。
本発明において、反応器が2つ以上であれば、その反応器中で、更に条件の異なる反応段階を複数持たせ、段階的にあるいは連続的に温度・圧力を変えていくなどしてもよい。
即ち、例えば、反応器を2つ用い、それぞれで反応条件を変えて2段階の重合とするケースや、反応器を2つ用い、1つ目の反応器で条件の異なる2つの反応段階を持たせ、かつ、2つ目の反応器で1つの反応条件を持たせて、3段階とするケースなどが含まれる。
本発明において、後述する触媒は原料調製槽、原料貯槽に添加することもできるし、反応器に直接添加することもできるが、供給の安定性、重合の制御の観点からは、反応器に供給される前の原料ラインの途中に触媒供給ラインを設置し、好ましくは水溶液で供給する。
エステル交換反応の温度は、低すぎると生産性の低下や製品への熱履歴の増大を招き、高すぎるとモノマーの揮散を招くだけでなく、ポリカーボネート樹脂の分解や着色を助長する可能性がある。
副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が理論留出量の20%以上留出する反応器の少なくとも1つの内温については、上述した通り、その最高温度として、140〜270℃、好ましくは180〜240℃、更に好ましくは200〜230℃であるが、その他の条件としては、通常110〜1kPa、好ましくは70〜5kPa、更に好ましくは30〜10kPa(絶対圧力)の圧力下、通常0.1〜10時間、好ましくは0.5〜3時間で、発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ留去しながら実施される。
第2段目以降は、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げ、引き続き発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ除きながら、最終的には反応系の圧力(絶対圧力)を通常1000Pa以下、好ましくは200Pa以下にして、内温の最高温度210〜270℃、好ましくは220〜250℃で行う。
特にポリカーボネート樹脂の着色や熱劣化を抑制し、留出するモノマー量を原料モノマーの総量に対して10重量%以下とするためには、全反応段階における内温の最高温度が、250℃未満、特に225〜245℃であることが好ましい。本発明の方法において、副生したモノヒドロキシ化合物は、資源有効活用の観点から、必要に応じ精製を行った後、炭酸ジエステルやビスフェノール化合物等の原料として再利用することが好ましい。
本発明における第二の発明は、触媒及び、原料モノマーとして炭酸ジエステル並びにジヒドロキシ化合物を用いて、複数の反応器で多段階で、エステル交換反応により重縮合させてポリカーボネート樹脂を製造する方法であって、
該ジヒドロキシ化合物が、複数種のジヒドロキシ化合物からなり、その中の少なくとも1種が構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物であり、
エステル交換反応によって副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が理論留出量の20%以上留出する反応器の少なくとも1つが、内容積20L以上の、熱媒体を用いて反応器を加熱するための加熱手段及び還流冷却器を具備した反応器であり、該熱媒体の温度と反応器中の反応液の温度差が少なくとも5℃以上であり、かつ、
反応器へ原料として仕込んだ仕込み時のジヒドロキシ化合物のモル百分率と、得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位のモル百分率との差を、反応器へ原料として仕込んだ仕込み時のジヒドロキシ化合物のモル百分率で除した値の絶対値が、少なくとも1種のジヒドロキシ化合物については、0.03以下であり、いずれのジヒドロキシ化合物についても0.05を超えないことを特徴とする。
Figure 2011202188
(但し、上記一般式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
より具体的に説明すると、反応器、加熱手段、還流冷却器、それぞれの温度条件などは、上記第一の発明で説明した通りであるが、第二の発明においては、複数種のジヒドロキシ化合物を原料として用い、反応器へ原料として仕込んだ仕込み時の各ジヒドロキシ化合物のモル百分率をそれぞれ、A、B、C・・・・Nモル%とし、得られたポリカーボネート樹脂中の各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位のモル百分率を、それぞれa、b、c・・・nモル%とした場合に、(|(a−A)/A|、|(b−B)/B|、|(c−C)/C|、・・、|(n−N/N|)の何れかを、0.03以下、好ましくは0.02以下、更に好ましくは0.01以下、特に好ましくは0.005以下とする。また、いずれのジヒドロキシ化合物についても0.05を越えないことが必要であり、好ましくは0.03以下、更に好ましくは0.02以下、特に好ましくは0.01以下、好適には0.005以下である。該値は、前記のように触媒の種類と量、エステル交換反応の温度(内温)、熱媒体の温度、圧力、滞留時間、還流条件等を適宜選択することによって達成することができる。
(ジヒドロキシ化合物)
本発明のポリカーボネート樹脂の製法においては、原料モノマーとして、炭酸ジエステル及びジヒドロキシ化合物を用いるが、ジヒドロキシ化合物の少なくとも1種が、構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物であることを特徴とする(以下、「本発明のジヒドロキシ化合物」と称することがある。)。即ち、本発明のジヒドロキシ化合物は、2つのヒドロキシル基と、更に下記一般式(1)の構造単位を少なくとも含むものをいう。
Figure 2011202188
(但し、上記一般式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
本発明のジヒドロキシ化合物としては、構造の一部に上記一般式(1)で表される部位を有するものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのオキシアルキレングリコール類、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される無水糖アルコール、下記式(3)で表されるスピログリコール等の環状エーテル構造を有する化合物が挙げられるが、中でも、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される無水糖アルコール、下記式(3)で表される環状エーテル構造を有する化合物が好ましい。
これらは得られるポリカーボネート樹脂の要求性能に応じて、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
Figure 2011202188
Figure 2011202188
上記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのジヒドロキシ化合物のうち、芳香環構造を有しないジヒドロキシ化合物を用いることがポリカーボネート樹脂の耐光性の観点から好ましく、中でも植物由来の資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、耐光性、光学特性、成形性、耐熱性、カーボンニュートラルの面から最も好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法においては、原料モノマーとして、上記本発明のジヒドロキシ化合物以外のジヒドロキシ化合物(以下「その他のジヒドロキシ化合物」と称す場合がある。)に由来する構成単位を含んでいてもよく、その他のジヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオールのなどの脂肪族ジヒドロキシ化合物、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、1,3−アダマンタンジメタノール、等の脂環式ジヒドロキシ化合物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ−2−メチル)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン等の芳香族ビスフェノール類が挙げられる。
中でも、ポリカーボネート樹脂の色相を良好とする観点から、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び脂環式ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であるのが好ましく、脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、特に1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが好ましく、脂環式ジヒドロキシ化合物としては、特に1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールが好ましい。
これらのその他のジヒドロキシ化合物を用いることにより、ポリカーボネート樹脂の柔軟性の改善、耐熱性の向上、成形性の改善などの効果を得ることも可能であるが、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の含有割合が多過ぎると、機械的物性の低下や、耐熱性の低下を招くことがあるため、全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対する本発明のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の割合が、20モル%以上、好ましくは30モル%以上、特には50モル%以上であることが好ましい。
本発明のジヒドロキシ化合物およびその他のジヒドロキシ化合物の内、少なくとも1種のジヒドロキシ化合物の大気圧での沸点が、300℃以下である場合には、ジヒドロキシ化合物が重合反応中に揮散し易いため本発明の効果が大きく奏され、290℃以下の場合に更に効果が大きい。
本発明のジヒドロキシ化合物は、還元剤、抗酸化剤、脱酸素剤、光安定剤、制酸剤、pH安定剤、熱安定剤等の安定剤を含んでいても良く、特に酸性下で本発明のジヒドロキシ化合物は変質しやすいことから、塩基性の安定剤を含むことが好ましい。塩基性の安定剤としては、長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations 2005)における1族または2族の金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硼酸塩、脂肪酸塩や、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等の塩基性アンモニウム化合物、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等のアミン系化合物が挙げられる。その中でも、その効果と後述する蒸留除去のしやすさから、NaまたはKのリン酸塩、亜リン酸塩が好ましく、中でもリン酸水素2Na、亜リン酸水素2Naが好ましい。
これらの塩基性安定剤の含有量に特に制限はないが、少なすぎると本発明のジヒドロキシ化合物の変質を抑制する効果が得られない可能性があり、多すぎるとジヒドロキシ化合物の変性を招く場合があるので、通常、本発明のジヒドロキシ化合物に対して、0.0001重量%〜1重量%、好ましくは0.001重量%〜0.1重量%である。
また、これらの塩基性安定剤を含有した本発明のジヒドロキシ化合物をポリカーボネート樹脂の製造原料として用いると、塩基性安定剤自体が重合触媒となり、重合速度や品質の制御が困難になるだけでなく、初期色相の悪化を招き、結果的に成形品の耐光性を悪化させるため、ポリカーボネート樹脂の製造原料として使用する前に塩基性安定剤をイオン交換樹脂や蒸留等で除去することが好ましい。
本発明のジヒドロキシ化合物がイソソルビド等、環状エーテル構造を有する場合には、酸素によって徐々に酸化されやすいので、保管や、製造時には、酸素による分解を防ぐため、水分が混入しないようにし、また、脱酸素剤等を用いたり、窒素雰囲気下で取り扱うことが肝要である。イソソルビドが酸化されると、蟻酸等の分解物が発生する場合がある。例えば、これら分解物を含むイソソルビドをポリカーボネート樹脂の製造原料として使用すると、得られるポリカーボネート樹脂の着色を招く可能性があり、又、物性を著しく劣化させる可能性があるだけでなく、重合反応に影響を与え、高分子量の重合体が得られない場合もあり、好ましくない。
上記酸化分解物を含まない本発明のジヒドロキシ化合物を得るために、また、前述の塩基性安定剤を除去するためには、蒸留精製を行うことが好ましい。この場合の蒸留とは単蒸留であっても、連続蒸留であっても良く、特に限定されない。蒸留の条件としてはアルゴンや窒素などの不活性ガス雰囲気において、減圧下で蒸留を実施することが好ましく、熱による変性を抑制するためには、250℃以下、好ましくは200℃以下、特には180℃以下の条件で行うことが好ましい。
このような蒸留精製で、本発明のジヒドロキシ化合物中の蟻酸含有量を20重量ppm以下、好ましくは10重量ppm以下、特に好ましくは5重量ppm以下にすることにより、前記本発明のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物をポリカーボネート樹脂の製造原料として使用した際に、重合反応性を損なうことなく色相や熱安定性に優れたポリカーボネート樹脂の製造が可能となる。蟻酸含有量の測定はイオンクロマトグラフィーで行う。
(炭酸ジエステル)
本発明においては、上述した本発明のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを原料として、エステル交換反応により重縮合させてポリカーボネート樹脂を得ることができる。本発明で用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記一般構造式(4)で表されるものが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
Figure 2011202188
(一般式(4)において、 及び は、置換若しくは無置換の炭素数1〜18の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基であり、 及び は同一であっても異なっていてもよい。)
上記一般式(4)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート(以下、DPCと略記することがある)、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びジ−t−ブチルカーボネート等が例示されるが、好ましくはジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートであり、特に好ましくはジフェニルカーボネートである。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。なお、炭酸ジエステルは、塩化物イオンなどの不純物を含む場合があり、重合反応を阻害したり、得られるポリカーボネート樹脂の色相を悪化させたりする場合があるため、必要に応じて、蒸留などにより精製したものを使用することが好ましい。
本発明の方法において、原料であるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルは、エステル交換反応前に均一に混合することが好ましい。
混合の温度は通常80℃以上、好ましくは90℃以上であり、その上限は通常250℃以下、好ましくは200℃以下、更に好ましくは150℃以下である。中でも100℃以上120℃以下が好適である。混合の温度が低すぎると溶解速度が遅かったり、溶解度が不足する可能性があり、しばしば固化等の不具合を招き、混合の温度が高すぎるとジヒドロキシ化合物の熱劣化を招く場合があり、結果的に得られるポリカーボネート樹脂の色相が悪化し、耐光性や耐熱性に悪影響を及ぼす可能性がある。
本発明の方法において、原料である本発明のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルと混合する操作は、酸素濃度は通常10vol%以下、更には0.0001vol%〜10vol%、中でも0.0001vol%〜5vol%、特には0.0001vol%〜1vol%の雰囲気下で行うことが、色相悪化防止の観点から好ましい。
本発明において、炭酸ジエステルは、反応に用いる本発明のジヒドロキシ化合物を含む全ジヒドロキシ化合物に対して、通常0.90〜1.20のモル比率で用い、好ましくは、0.95〜1.10、更に好ましくは0.97〜1.03、特に好ましくは0.99〜1.02である。このモル比率が大きすぎても小さすぎても、エステル交換反応の速度が低下し、重合反応時の熱履歴の増大を招き、結果的に得られたポリカーボネート樹脂の色相を悪化させる可能性があり、更には所望する高分子量体が得られない可能性がある。
(エステル交換触媒)
本発明の方法においては、上述のように本発明のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルをエステル交換反応により重縮合させてポリカーボネート樹脂を製造する際に、エステル交換触媒を存在させる。即ち、重合反応によって副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が理論留出量の20%以上留出する1つ目の反応器に、特定の化合物を存在させる。
本発明の方法において、エステル交換反応触媒(重合触媒)は、特に波長350nmにおける光線透過率や、イエローインデックス(YI)値に影響を与え得る。
用いられるエステル交換触媒(以後、単に触媒と呼ぶことがある)としては、ポリカーボネート樹脂の色相、耐光性等を満足するものであれば、限定されるものではないが、長周期型周期表における1族または2族(以下、単に「1族」、「2族」と表記する。)の金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。好ましくは1族金属化合物及び/又は2族金属化合物が使用される。
1族金属化合物及び/又は2族金属化合物と共に、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物のみを使用することが特に好ましい。
また、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物の形態としては通常、水酸化物、又は炭酸塩、カルボン酸塩、フェノール塩といった塩の形態で用いられるが、入手のし易さ、取扱いの容易さから、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩が好ましく、色相と重合活性の観点からは酢酸塩が好ましい。
1族金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩、2セシウム塩等が挙げられ、中でもリチウム化合物が好ましい。
2族金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられ、中でもマグネシウム化合物、カルシウム化合物、バリウム化合物が好ましく、重合活性と得られるポリカーボネート樹脂の色相の観点から、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物が更に好ましく、最も好ましくはカルシウム化合物である。
塩基性ホウ素化合物としては、例えば、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、あるいはストロンチウム塩等が挙げられる。
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、あるいは四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。
上記触媒の使用量は、通常、用いた全ジヒドロキシ化合物1mol当たり0.1μmol〜300μmol、好ましくは0.5μmol〜100μmolであり、中でもリチウム及び長周期型周期表第2族の金属から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用いる場合、用いた全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、金属量として、通常、0.1μmol以上、好ましくは0.5μmol以上、特に好ましくは0.7μmol以上とする。また上限としては、通常20μmol、好ましくは10μmol、さらに好ましくは3μmol、特に好ましくは1.5μmol、中でも1.0μmolが好適である。
尚、上記触媒は、反応器に直接添加してもよいし、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを予め混合する原料調整槽に添加し、その後、反応器に存在させる方法を取ってもよい。
触媒の使用量が少なすぎると、十分な重合活性が得られず重合反応の進行が遅くなるため、所望の分子量のポリカーボネート樹脂が得られにくく、また、原料モノマーがポリカーボネート樹脂中に取り込まれる量が減り、副生するモノヒドロキシ化合物とともに留出するモノマー量が増加し、結果的に原料原単位の悪化や、その回収のため余分なエネルギーが必要となる可能性があり、更には、複数種のジヒドロキシ化合物を用いた共重合の場合には、前述のように、原料として用いたモノマーの組成比と製品ポリカーボネート樹脂中の各モノマー単位に由来する構成単位比が変わってしまう原因となることがある。
一方、触媒の使用量が多すぎると、上記のような留出するモノマー量過多に起因する問題は改善される方向にはなるが、その一方で得られるポリカーボネート樹脂の色相や耐光性、熱安定性等が悪化する可能性がある。
また、1族金属、中でもナトリウム、カリウム及びセシウムは、特にはリチウム、ナトリウム、カリウム及びセシウムは、ポリカーボネート樹脂中に多く含まれると色相に悪影響を及ぼす可能性があり、該金属は使用する触媒からのみではなく、原料や反応装置から混入する場合があるため、ポリカーボネート樹脂中のこれらの化合物の合計量は、金属量として、通常1重量ppm以下、好ましくは0.8重量ppm以下、より好ましくは0.7重量ppm以下である。
ポリカーボネート樹脂中の金属量は、湿式灰化などの方法でポリカーボネート樹脂中の金属を回収した後、原子発光、原子吸光、Inductively Coupled Plasma(ICP)等の方法を使用して測定することが出来る。
本発明においては、重合反応中のモノマーの揮散を抑制することにより、原料として使用するジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比を理論量の1.00近傍にすることができ、重合速度を低下させることなく高分子量の色相のよいポリカーボネート樹脂が得られる。
(得られるポリカーボネート樹脂)
本発明の方法で得られるポリカーボネート樹脂は、該樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)の波長350nmにおける光線透過率が60%以上であることが好ましく、さらに好ましくは65%以上、特に好ましくは70%以上である。該波長における光線透過率が60%を下回ると、吸収が大きくなり、耐光性が悪化する場合がある。
また、本発明のポリカーボネート樹脂は、該樹脂から成形された成形体(厚さ3mmの平板)の波長320nmにおける光線透過率が、30%以上であることが好ましく、40%以上が更に好ましく、50%以上が特に好ましい。該波長における光線透過率が30%を下回ると、耐光性が悪化する傾向にある。
本発明の方法で得られるポリカーボネート樹脂は、該樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)を、63℃、相対湿度50%の環境下にて、メタルハライドランプを用い、波長300nm〜400nmの放射照度1.5kW/mで、100時間照射処理した後に、透過光で測定したASTM D1925−70に準拠したイエローインデックス(YI)値が12以下であるのが好ましく、より好ましくは10以下、特に好ましくは8以下である。
尚、本発明において、メタルハライドランプを用いた照射処理は、後述するが、特定の装置で、特定のフィルターなどを用い、主として300nm〜400nmの波長の光を(この波長範囲以外の波長の光はできるだけ取り除き)、放射照度1.5kW/mで、試料に100時間照射することをいう。
また、本発明の方法で得られるポリカーボネート樹脂は、該樹脂から厚さ3mmの平板に成形し、上記のようなメタルハライドランプでの照射処理等を行わずに、透過光で測定したイエローインデックス値(初期のイエローインデックス値、初期のYI値と言う)が通常10以下、好ましくは7以下、特に好ましくは5以下であり、メタルハライドランプ照射前後でのイエローインデックスの差の絶対値が6以下であるのが好ましく、より好ましくは4以下、特に好ましくは3以下である。
初期のイエローインデックス(YI)値が10を超えると、耐光性が悪化する傾向がある。
更には、本発明の方法で得られるポリカーボネート樹脂は、該樹脂から厚さ3mmの平板に成形し、透過光で測定した国際照明委員会(CIE)で規定されたL*値は通常96.3以上、好ましくは96.6以上、好適には96.8以上である。L*値が96.3を下回った場合には、耐光性が悪化する傾向がある。
このようなポリカーボネート樹脂を得るためには、上述した通りの、本発明の特徴に加え、例えば、重合時の特定の金属濃度を制限する、触媒の種類と量を適宜選択する、重合時の温度及び時間を適宜選択する、着色原因となる化合物、例えば、残存モノマー、残存フェノール、残存ジフェニルカーボネートを減らす、用いる原料モノマーの着色物となる不純物を減らす等して製造することができる。特に、触媒の種類と量、重合時の温度及び時間が重要である。
本発明の方法で得られるポリカーボネート樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度は、通常0.30dL/g以上であり、0.35dL/g以上が好ましく、還元粘度の上限は、1.20dL/g以下、1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/g以下が更に好ましい。
ポリカーボネート樹脂の還元粘度が低すぎると成形品の機械的強度が小さい可能性があり、大きすぎると、成形する際の流動性が低下し、生産性や成形性を低下させる傾向がある。
尚、還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート濃度を0.6g/dLに精密に調製し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度管を用いて測定する。
また、本発明で得られるポリカーボネート樹脂の下記構造式(5)で表される末端基の濃度の下限量は、通常20μeq/g、好ましくは40μeq/g、特に好ましくは50μeq/gであり、上限は通常160μeq/g、好ましくは140μeq/g、特に好ましくは100μeq/gである。
下記構造式(5)で表される末端基の濃度が、高すぎると重合直後や成型時の色相が良くても、紫外線曝露後の色相の悪化を招く可能性があり、逆に低すぎると熱安定性が低下する恐れがある。
下記構造式(5)で表される末端基の濃度を制御するには、原料である本発明のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比率を制御する他、エステル交換反応時の重合圧力や重合温度、還流冷却器の温度等をモノマーの揮散のし易さに応じて制御する方法が挙げられ、本発明によればモノマーの揮散を抑制することができるので、原料のモル比率での制御が容易になる。
Figure 2011202188
本発明の方法で得られるポリカーボネート樹脂は、上述の通り重縮合後、通常、冷却固化させ、回転式カッター等でペレット化される。
ペレット化の方法は限定されるものではないが、最終重合反応器から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させてペレット化させる方法、最終重合反応器から溶融状態で一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法、又は、最終重合反応器から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させて一旦ペレット化させた後に、再度一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法等が挙げられる。
その際、押出機中で、残存モノマーの減圧脱揮や、通常知られている、熱安定剤、中和剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、難燃剤等を添加、混練することも出来る。
押出機中の、溶融混練温度は、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度や分子量に依存するが、通常150〜300℃、好ましくは200〜270℃、更に好ましくは230〜260℃である。溶融混練温度が150℃より低いと、ポリカーボネート樹脂の溶融粘度が高く、押出機への負荷が大きくなり、生産性が低下する。300℃より高いと、ポリカーボネートの熱劣化が激しくなり、分子量の低下による機械的強度の低下や着色、ガスの発生を招く。
本発明の製法においては、異物の混入を防止するため、フィルターを設置することが望ましい。フィルターの設置位置は押出機の下流側が好ましく、フィルターの異物除去の大きさ(目開き)は、99%除去の濾過精度として100μm以下が好ましい。特に、フィルム用途等で微少な異物の混入を嫌う場合は、40μm以下、さらには10μm以下が好ましい。
また、ポリカーボネート樹脂の押出は、押出後の異物混入を防止するために、好ましくはJISB 9920(2002年)に定義されるクラス7、更に好ましくはクラス6より清浄度の高いクリーンルーム中で実施することが望ましい。
更には、押出されたポリカーボネート樹脂を冷却しチップ化する際は、空冷、水冷等の冷却方法を使用するのが好ましい。空冷の際に使用する空気は、ヘパフィルター等で空気中の異物を事前に取り除いた空気を使用し、空気中の異物の再付着を防ぐのが望ましい。
水冷を使用する際は、イオン交換樹脂等で水中の金属分を取り除き、さらにフィルターにて、水中の異物を取り除いた水を使用することが望ましい。用いるフィルターの目開きは、99%除去の濾過精度として10〜0.45μmであることが好ましい。
本発明の方法で得られたポリカーボネート樹脂は、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法等の通常知られている方法で成形物にすることができる。
また、種々の成形を行う前に、必要に応じて、樹脂に熱安定剤、中和剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、難燃剤等の添加剤を、タンブラー、スーパーミキサー、フローター、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、押出機などで混合することもできる。
本発明の方法で得られたポリカーボネート樹脂は例えば、芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル樹脂、アモルファスポリオレフィン、ABS、ASなどの合成樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートなどの生分解性樹脂、ゴムなどの1種又は2種以上と混練して、ポリマーアロイとしても用いることもできる。
本発明によれば、耐光性、透明性、色相、耐熱性、熱安定性、及び機械的強度に優れ、性能の安定したポリカーボネート樹脂を、モノマーのロスを減らし、効率的に製造できる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
以下において、ポリカーボネートの物性ないし特性の評価は次の方法により行った。
(1)酸素濃度の測定
重合反応装置内の酸素濃度を、酸素計(AMI社製:1000RS)を使用し、測定した。
(2)留出したモノマー量およびフェノール量の定量
各反応段階で留出した各モノマーおよびフェノールの重量を液体クロマトグラフィーで測定した組成から定量した。
(3)留出したモノマーの合計量の原料モノマーの総量に対する割合(重量%)の算出
上記(2)で定量した、ジフェニルカーボネートを含む全ての留出したモノマーの合計量と、原料として仕込んだ全てのモノマーの総量から、留出したモノマーの合計量の原料モノマーの総量に対する割合を算出した。
(4)還元粘度の測定
ポリカーボネート樹脂のサンプルを、溶媒として塩化メチレンを用いて溶解し、0.6g/dLの濃度のポリカーボネート溶液を調製した。森友理化工業社製ウベローデ型粘度管を用いて、温度20.0℃±0.1℃で測定を行い、溶媒の通過時間tと溶液の通過時間tから次式より相対粘度ηrelを求め、
ηrel=t/t
相対粘度から次式より比粘度ηspを求めた。
ηsp=(η−η)/η=ηrel−1
比粘度を濃度c(g/dL)で割って、還元粘度ηsp/cを求めた。この値が高いほど分子量が大きい。
(5)ポリカーボネート樹脂中の各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位比及び末端フェニル基濃度の測定
ポリカーボネート樹脂中の各ジヒドロキシ化合物構造単位比は、ポリカーボネート樹脂30mgを秤取し、重クロロホルム約0.7mLに溶解し、溶液とし、これを内径5mmのNMR用チューブに入れ、日本電子社製JNM−AL400(共鳴周波数400MHz)を用いて常温でH NMRスペクトルを測定した。各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に基づくシグナル強度比より各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位比を求めた。
末端フェニル基濃度は、1,1,2,2−テトラブロモエタンを内標として、上記と同様にH−NMRを測定し、内標と末端フェニル基に基づくシグナル強度比より求めた。
(6)原料として仕込んだ各ジヒドロキシ化合物の組成比と得られたポリカーボネート樹脂中の各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位比のずれ
上記(5)で求めたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位のモル百分率と原料として仕込んだジヒドロキシ化合物のモル百分率の差を、原料として仕込んだジヒドロキシ化合物のモル百分率で除して求めた値の絶対値から判断した。数値が大きいほど、上記ずれが大きいことを意味する。
(7)ポリカーボネート樹脂中の金属濃度の測定
パーキンエルマー社製マイクロウェーブ分解容器にポリカーボネート樹脂ペレット約0.5gを精秤し、97%硫酸2mLを加え、密閉状態にして230℃で10分間マイクロウェーブ加熱した。室温まで冷却後、68%硝酸1.5mLを加えて、密閉状態にして150℃で10分間マイクロウェーブ加熱した後、再度室温まで冷却を行い、68%硝酸2.5mLを加え、再び密閉状態にして230℃で10分間マイクロウェーブ加熱し、内容物を完全に分解させた。室温まで冷却後、上記で得られた液を純水で希釈し、サーモクエスト社製ICP−MSで定量した。
(8)ポリカーボネート樹脂の初期色相の評価方法
ポリカーボネート樹脂のペレットを、窒素雰囲気下、110℃で10時間乾燥する。次に、乾燥したポリカーボネート樹脂のペレットを射出成形機(日本製鋼所社製J75EII型)に供給し、樹脂温度220℃、成形サイクル23秒間の条件で、射出成形片(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)を成形する操作を繰り返し、10ショット目〜20ショット目で得られた射出成形片の厚み方向での透過光におけるイエローインデックス(YI)値とL*値をカラーテスタ(コニカミノルタ社製CM−3700d)を用いて測定し、平均値を算出した。YI値が小さい程、黄色味がなく品質が優れることを示し、L*値が大きいほど明度が高いことを示す。
(9)波長350nmおよび320nmにおける光線透過率
上記(8)で得られた射出成形片(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm、10ショット目〜20ショット目)の厚み方向の光線透過率を、紫外可視分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製U2900)を用いて測定し、その平均値を算出し評価した。
(10)メタルハライドランプ照射試験
スガ試験機社製メタリングウェザーメーターM6Tを用いて、63℃、相対湿度50%の条件下、光源として水平式メタリングランプを、インナーフィルターとして石英を、またランプの周囲にアウターフィルターとして♯500のフィルターを取り付け、波長300〜400nmの放射照度が1.5kw/m2になるように設定し、上記(8)で得られた20ショット目の平板(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)の正方形の面に対して、100時間照射処理を行った。照射後のYI値を上記(8)と同様に測定した。
以下の実施例の記載の中で用いた化合物の略号は次の通りである。
ISB:イソソルビド(ロケットフルーレ社製、商品名POLYSORB)
CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール(新日本理化社製 商品名SKY CHDM)
DEG:ジエチレングリコール(三菱化学社製)
DPC:ジフェニルカーボネート (三菱化学社製)
[実施例1]
(第1段階の反応)
オイルを熱媒体とした熱媒体ジャケットおよび撹拌翼、真空ポンプに連結された留出管を具備した40Lの重合反応器に、ISBを30.44mol、CHDMを13.04mol、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたDPCを43.48mol仕込み、水溶液にした酢酸カルシウム1水和物を、全ジヒドロキシ化合物1mol当たり1.25×10−6molになるように仕込んだ後、十分に窒素置換した(酸素濃度0.0005vol%〜0.001vol%)。留出管には、冷媒として蒸気(入口温度100℃)を用いた還流冷却器、更に還流冷却器の下流に冷媒として温水(入口温度45℃)を用いた凝縮器を配置した。続いて該反応器に加温した熱媒体を流通させ、反応液(即ち内温)が100℃になった時点で撹拌を開始し、内温を100℃に保ちながら内容物を融解させ均一にした。その後、昇温を開始して、40分で内温を220℃にし、内温が220℃になった時点で減圧を開始して、90分で13.3kPa(絶対圧力、以下同様)になるように制御した。減圧を開始すると、速やかに反応で生成したフェノールの蒸気が留出し始め、内温を220℃に一定に制御するように、熱媒体ジャケットに導入するオイルの温度(熱媒体ジャケット入口温度)を適宜調整した。フェノールの留出量が多くなった時間帯は熱媒体オイルの温度を242℃とし、それ以外の時間帯は242℃未満とした。
13.3kPaに到達した後、この圧力を保ったまま、さらに60分間保持し、ポリカーボネートオリゴマーを得た。
重合反応で副生するフェノール及び留出するモノマーは、還流冷却器でその一部を凝縮させて重合反応器に戻し、凝縮しないフェノールおよび還流冷却器で凝縮しなかったモノマーは凝縮器に導いて回収した。この段階で留出したフェノールは、理論留出量の94%であった。
(第2段階の反応)
オイルを熱媒とした熱媒体ジャケットおよび撹拌翼、真空ポンプに連結された留出管を具備した重合反応器に、窒素雰囲気下、第1段階で得られたポリカーボネートオリゴマーを移送した。留出管には、冷媒として蒸気(入口温度100℃)を用いた還流冷却器、および還流冷却器の下流に冷媒として温水(入口温度45℃)を用いた凝縮器、更にその下流にドライアイスを冷媒としたコールドトラップを設置した。
オリゴマー移送後、減圧を開始し、60分で内温220℃、圧力200Paにした。その後、20分かけて内温230℃、圧力133Pa以下にして、所定撹拌動力になった時点で復圧し、内容物をストランドの形態で抜出し、回転式カッターでペレットにした。この時、圧力が1kPaに到達した時点から所定撹拌動力に達した時点までの時間を計測した。
重合反応で副生するフェノール及び留出するモノマーは、還流冷却器でその一部を凝縮させて重合反応器に戻し、凝縮しないフェノールおよび還流冷却器で凝縮しなかったモノマーは凝縮器に導いて回収した。更に凝縮器で凝縮しなかった留出分は、凝縮器の下流に設置したコールドトラップで回収した。
各反応段階で、還流冷却器、凝縮器およびコールドトラップで回収された留出分は、それぞれ重量と組成を測定し、留出した副生フェノールとモノマーを定量した。このようにして決定された各段階における留出モノマーの重量を全て合計して、原料として仕込んだモノマーとの比を算出して、表1に示した。
得られたペレットを、2つのベント口を有する日本製鋼所社製2軸押出機(LABOTEX30HSS-32)を用いて、出口の樹脂温が250℃になるようにストランド状に押し出し、水で冷却固化させた後、回転式カッターでペレット化した。この際、ベント口は真空ポンプに連結し、ベント口での圧力が500Paになるように制御した。
得られたポリカーボネート樹脂の分析結果、および前記方法において評価した結果を表1に示した。モノマーの留出が少なく、原料として仕込んだジヒドロキシ化合物比と得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位比のずれが小さく、黄色度の小さい、明度に優れた、色調の良いポリカーボネート樹脂が得られ、耐光性も良好であった。
[実施例2]
ISBとCHDMのモル比率と第1段の反応における熱媒の最高温度を変えた以外は、実施例1と同様に行った。実施例1と同様、モノマーの留出が少なく、原料として仕込んだジヒドロキシ化合物比と得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位比のずれが小さく、黄色度の小さい、明度に優れた、色調の良いポリカーボネート樹脂が得られ、耐光性も良好であった。
[実施例3]
酢酸カルシウム1水和物を、全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、2.50×10−6molになるように仕込み、第1段の反応における熱媒の最高温度を244℃とした以外は実施例1と同様に実施した。実施例1と同様、モノマーの留出が少なく、原料として仕込んだジヒドロキシ化合物比と得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位比のずれが小さく、黄色度の小さい、明度に優れた、色調の良いポリカーボネート樹脂が得られ、耐光性も良好であった。
[実施例4]
酢酸カルシウム1水和物を、全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、0.90×10−6molになるように仕込み、第1段の反応における熱媒の最高温度を239℃とした以外は実施例1と同様に実施した。実施例1と同様、モノマーの留出が少なく、原料として仕込んだジヒドロキシ化合物比と得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位比のずれが小さいポリカーボネート樹脂が得られた。また、実施例1より更に黄色度が小さく、明度に優れ、耐光性も良好であった。
[実施例5]
酢酸カルシウム1水和物を、全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、0.25×10−6molになるように仕込み、第1段の反応における熱媒の最高温度を233℃とした以外は、実施例1と同様に実施した。実施例1に比べ第2段での重合速度が低下し、モノマーの留出が若干増加したが、黄色度の小さい、明度に優れた、色調の良いポリカーボネート樹脂が得られ、耐光性も良好であった。
[実施例6]
酢酸カルシウム1水和物の代わりに酢酸マグネシウム4水和物を用い、第1段の反応における熱媒の最高温度を変えた以外は、実施例3と同様に実施した。実施例3と同様、モノマーの留出が少なく、原料として仕込んだジヒドロキシ化合物比と得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位比のずれが小さく、黄色度の小さい、明度に優れた、色調の良いポリカーボネート樹脂が得られ、耐光性も良好であった。
[実施例7]
酢酸カルシウム1水和物の代わりに酢酸バリウムを用い、第1段の反応における熱媒の最高温度を変えた以外は、実施例3と同様に実施した。実施例3と同様、モノマーの留出が少なく、原料として仕込んだジヒドロキシ化合物比と得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位比のずれが小さく、黄色度の小さい、明度に優れた、色調の良いポリカーボネート樹脂が得られ、耐光性も良好であった。
[実施例8]
酢酸カルシウム1水和物の代わりに酢酸リチウムを用い、第1段の反応における熱媒の最高温度を変えた以外は、実施例3と同様に実施した。実施例3と同様、モノマーの留出が少なく、原料として仕込んだジヒドロキシ化合物比と得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位比のずれが小さく、黄色度の小さい、明度に優れた、色調の良いポリカーボネート樹脂が得られ、耐光性も良好であった。
[実施例9]
CHDMの代わりにDEGを用い、第1段の反応における熱媒の最高温度を変えた以外は、実施例3と同様に実施した。実施例3と同様、モノマーの留出が少なく、原料として仕込んだジヒドロキシ化合物比と得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位比のずれが小さく、黄色度の小さい、明度に優れた、色調の良いポリカーボネート樹脂が得られ、耐光性も良好であった。
[実施例10]
酢酸カルシウム1水和物の代わりに炭酸セシウムを用い、第1段の反応における熱媒の最高温度を変えた以外は、実施例3と同様に実施した。実施例3と比較すると、モノマーの留出が若干増加し、重合時間が増大して、原料として仕込んだジヒドロキシ化合物比と得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位比のずれも若干大きくなった。
[実施例11]
酢酸カルシウム1水和物を、全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、5.00×10−6molになるように仕込み、第1段の反応における熱媒の最高温度を248℃に変えた以外は、実施例1と同様に実施した。実施例1と同様、原料として仕込んだジヒドロキシ化合物比と得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位比のずれは小さかったが、若干着色が見られた。
[比較例1]
第1段階、第2段階において、還流冷却器をバイパスさせ、使用しなかった他は、実施例10と同様に実施した。第2段階において1kPa到達時点から180分経過しても所定動力に達しなかったため、そこでポリマーを抜き出した。モノマーの留出量が多く、原料として仕込んだジヒドロキシ化合物比と得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位比のずれが大きいだけでなく、黄色度や耐光性が悪化した。
[比較例2]
第1段階において、原料混合物を100℃で均一に融解させた後、60分かけて内温を220℃にし、内温が220℃になった時点で減圧を開始して、120分で13.3kPaになるように制御した以外は、比較例1と同様に実施した。
第2段階において1kPa到達時点から180分経過しても所定動力に達しなかったため、そこでポリマーを抜き出した。モノマーの留出量は比較例1よりも減少したが依然多く、原料として仕込んだジヒドロキシ化合物比と得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位比のずれも大きかった。
[比較例3]
第1段の反応において、原料混合物を100℃で均一に融解させた後、40分かけて内温を250℃にし、内温が250℃になった時点で減圧を開始して、90分で13.3kPaになるように制御し、第1段の反応における熱媒の最高温度を275℃とした以外は、比較例1と同様に実施した。第2段階において1kPa到達時点から180分経過しても所定動力に達しなかったため、そこでポリマーを抜き出した。モノマーの留出量が多く、原料として仕込んだジヒドロキシ化合物比と得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位比のずれが大きかった。また、粘度が低く成形ができなかった。
[参考例]
(第1段階の反応)
撹拌翼、真空ポンプに連結された留出管を具備した内容積0.5Lのガラス製重合反応器にISBを0.530mol、CHDMを0.227mol、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたDPCを0.773mol仕込み、水溶液にした酢酸カルシウム1水和物を、全ジヒドロキシ化合物1mol当たり1.25×10−6molになるように仕込んだ後、十分に窒素置換した。続いて該反応器をオイルバスに浸漬し、反応液(内温と呼ぶことがある)が100℃になった時点で撹拌を開始し、内温を100℃に保ちながら内容物を融解させ均一にした。その後、昇温を開始して、40分で内温を220℃にし、内温が220℃℃になった時点で減圧を開始して、90分で13.3kPaになるように制御した。減圧を開始すると、速やかに反応で生成したフェノールの蒸気が留出し始め、内温を220℃に一定に制御するようにオイルバスの温度を適宜調整した。フェノールの留出量が多くなった時間帯はオイルバスの温度を224℃とし、それ以外の時間帯は224未満とした。
13.3kPaに到達した後、この圧力を保ったまま、さらに60分間保持し、ポリカーボネートオリゴマーを得た。
重合反応で副生するフェノール及び留出するモノマーは、凝縮器(冷媒の入口温度45℃)に導いて回収した。この段階で留出したフェノールは、理論留出量の90%であった。
(第2段階の反応)
続いて、オイルバスを昇温するとともに減圧を開始して、60分で内温220℃、圧力200Paにした。その後、20分かけて内温230℃、圧力133Pa以下にして、所定撹拌動力になった時点で復圧し、内容物をストランドの形態で抜出した。この時、圧力が1kPaに到達した時点から所定撹拌動力に達した時点までの時間を計測した。重合反応で副生するフェノール及び留出するモノマーは、第1段階の反応と同様に凝縮器(冷媒の入口温度45℃)に導いて回収し、凝縮器で凝縮しなかった留出分は、凝縮器の下流に設置したコールドトラップで回収した。
各反応段階で、還流冷却器、凝縮器およびコールドトラップで回収された留出分は、それぞれ重量と組成を測定し、留出した副生フェノールとモノマーを定量した。このようにして決定された各段階における留出モノマーの重量を全て合計して、原料として仕込んだモノマーとの比を算出して、表1に示した。
Figure 2011202188
本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法によれば、耐光性、透明性、色相、耐熱性、熱安定性、及び機械的強度に優れ、性能の安定したポリカーボネート樹脂を、効率的かつ安定的に製造することが可能である。

Claims (11)

  1. 触媒及び、原料モノマーとして炭酸ジエステル並びにジヒドロキシ化合物を用いて、複数の反応器で多段階で、エステル交換反応により重縮合させてポリカーボネート樹脂を製造する方法であって、
    ヒドロキシ化合物が構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物を少なくとも含み、
    反応器の少なくとも1つが、エステル交換反応によって副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が理論留出量の20%以上でありかつ熱媒体を用いて加熱するための加熱手段及び還流冷却器を具備した内容積20L以上の反応器であって、熱媒体の温度と反応器中の反応液の温度差が少なくとも5℃以上であり、かつ、
    全反応段階で留出するモノマーの合計量が、原料モノマーの総量に対して10重量%以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
    Figure 2011202188

    (但し、上記一般式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
  2. 反応器へ原料として仕込んだ仕込み時のジヒドロキシ化合物のモル百分率と、得られたポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物構造単位のモル百分率との差を、反応器へ原料として仕込んだ仕込み時のジヒドロキシ化合物のモル百分率で除した値の絶対値が、少なくとも1種のジヒドロキシ化合物については、0.03以下であり、いずれのジヒドロキシ化合物についても0.05を超えないことを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  3. 前記ジヒドロキシ化合物の内、少なくとも1種のジヒドロキシ化合物の大気圧での沸点が300℃以下である請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  4. 少なくとも3つの反応器を用いる請求項1乃至3の何れか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  5. 前記還流冷却器に導入される冷媒の温度が、還流冷却器の入口において45〜180℃である請求項1乃至4の何れか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  6. 前記全反応段階で留出するモノマーの合計量が、原料モノマーの総量に対して3重量%以下である請求項1乃至5の何れか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  7. 前記エステル交換反応によって副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が理論留出量の20%以上留出する1つ目の反応器に、触媒として、リチウム及び長周期型周期表第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を、その金属原子の合計量として、原料として用いた全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、20μmol以下用いる請求項1乃至6の何れか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  8. 前記触媒が、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物である請求項7に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  9. 全反応段階における反応液の最高温度が250℃未満である請求項1乃至8の何れか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  10. 前記熱媒体の最高温度が265℃未満である請求項1乃至9の何れか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  11. 前記ジヒドロキシ化合物が、下記一般式(2)の化合物と、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び脂環式ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とを含む請求項1乃至10の何れか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
    Figure 2011202188
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