JP2011201219A - インクジェット式記録装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】サテライトの発生を抑制し、高速で高品質の画像を形成できるインクジェット式記録装置を提供する。
【解決手段】記録媒体に対し0.5m/s以上の相対速度で移動しながら水性インクを噴射するインクジェットヘッドを備え、上記水性インクに、脂肪酸、及び、該脂肪酸を乳化して水中に分散させると共に20℃において水よりも蒸気圧の高い揮発性アルコール、が添加されている、インクジェット式記録装置を採用する。
【選択図】図4
【解決手段】記録媒体に対し0.5m/s以上の相対速度で移動しながら水性インクを噴射するインクジェットヘッドを備え、上記水性インクに、脂肪酸、及び、該脂肪酸を乳化して水中に分散させると共に20℃において水よりも蒸気圧の高い揮発性アルコール、が添加されている、インクジェット式記録装置を採用する。
【選択図】図4
Description
本発明は、インクジェット式記録装置に関する。
インクジェット式記録装置においては、画像形成の高速化、高品質化の要求がある。
特許文献1には、高速出力においてもインク噴射安定性を確保し、インク噴射時のサテライトの発生を抑制して画像の劣化を防止するべく、インクの物性、インク噴射速度やインク噴射周波数等により、インクの表面張力を適切な値に調節し、噴射時にノズルから伸びるインク滴の尾を効果的に短時間で千切れさせるインクジェット画像記録方法が開示されている。
特許文献1には、高速出力においてもインク噴射安定性を確保し、インク噴射時のサテライトの発生を抑制して画像の劣化を防止するべく、インクの物性、インク噴射速度やインク噴射周波数等により、インクの表面張力を適切な値に調節し、噴射時にノズルから伸びるインク滴の尾を効果的に短時間で千切れさせるインクジェット画像記録方法が開示されている。
しかし、上述の従来技術では、インクの表面張力以外のサテライトの発生の要因を考慮しておらず、サテライト対策が不十分であるという問題がある。
例えば、サテライトの発生の他の要因としては、インクの粘度がある。インクの粘度が高いと、インク滴の尾引が長くなり、長い尾引がインク飛翔中に2つ以上の液滴に分割し、主滴とサテライト滴との2つ以上のドットとして記録媒体に着弾して画像を乱す。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、サテライトの発生を抑制し、高速で高品質の画像を形成できるインクジェット式記録装置を提供することを目的としている。
上記の課題を解決するために、本発明は、記録媒体に対し0.5m/s以上の相対速度で移動しながら水性インクを噴射するインクジェットヘッドを備え、上記水性インクに、脂肪酸、及び、該脂肪酸を乳化して水中に分散させると共に20℃において水よりも蒸気圧の高い揮発性アルコール、が添加されている、インクジェット式記録装置を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、水に難溶の脂肪酸を、揮発性アルコールを用いて乳化し、水性インクの溶媒中(水中)に分散させる。このインクを噴射すると、インク飛翔中に、脂肪酸と水との仲介をしていたアルコールがインク滴表面において揮発する。インク滴表面のアルコールが揮発すると、水に難溶の脂肪酸がインク滴表面に析出し、油膜を形成する。脂肪酸の油膜は、インク滴を包みこんで、尾引による液滴の2つ以上の分割を抑制するように作用する。このため、高速印字時のサテライトの発生が抑制される。インクジェットヘッドと記録媒体の少なくとも一方が移動しながら記録媒体に水性インクを噴射するとき、移動の相対速度が遅い場合(相対速度0.5m/s未満)は、サテライトが発生しても主滴とサテライト滴の着弾位置があまりずれず、記録媒体においてサテライトが目立たない。一方、インクジェットヘッドと記録媒体の相対速度が速い場合(相対速度0.5m/s以上)は、主滴とサテライト滴の着弾位置のずれが大きく、サテライトが記録媒体で目立つようになる。そのため、本発明は、相対速度が速い場合に有効である。
このような構成を採用することによって、本発明では、水に難溶の脂肪酸を、揮発性アルコールを用いて乳化し、水性インクの溶媒中(水中)に分散させる。このインクを噴射すると、インク飛翔中に、脂肪酸と水との仲介をしていたアルコールがインク滴表面において揮発する。インク滴表面のアルコールが揮発すると、水に難溶の脂肪酸がインク滴表面に析出し、油膜を形成する。脂肪酸の油膜は、インク滴を包みこんで、尾引による液滴の2つ以上の分割を抑制するように作用する。このため、高速印字時のサテライトの発生が抑制される。インクジェットヘッドと記録媒体の少なくとも一方が移動しながら記録媒体に水性インクを噴射するとき、移動の相対速度が遅い場合(相対速度0.5m/s未満)は、サテライトが発生しても主滴とサテライト滴の着弾位置があまりずれず、記録媒体においてサテライトが目立たない。一方、インクジェットヘッドと記録媒体の相対速度が速い場合(相対速度0.5m/s以上)は、主滴とサテライト滴の着弾位置のずれが大きく、サテライトが記録媒体で目立つようになる。そのため、本発明は、相対速度が速い場合に有効である。
さらに、揮発性アルコールを分散剤として用いることで、脂肪酸の水性インク中における分散安定化の作用がある。脂肪酸は、水中での溶解性や分散安定性が低く、例えば植物油(=主成分は脂肪酸)を用いたドレッシングのように分離しやすい。このため、脂肪酸を添加したインクの消費期限は、数分〜数ヶ月程度と短くなってしまう。アルコールは、脂肪酸とも水とも溶解に関して相性がいいので、脂肪酸を乳化して水中に安定して分散させることができ、インク消費期限を長く延ばすことができる。また、脂肪酸と水とが分離し難くなるため、例えば分離した脂肪酸が大気中放置されているノズル面上で酸化し、変色や固化が進行して、ノズル抜けが発生するといったことも抑制することができる。
加えて、インクに脂肪酸と揮発性アルコールとを同時添加することによる、インクの蒸発速度の適正化の作用がある。インク中に単に揮発性アルコールを添加するだけでは、アルコールが速やかに揮発してなくなるため、インクの蒸発速度が速すぎてノズル表面が乾燥して増粘し、ノズルにキャップをしていても数十分放置した程度ですぐにノズル抜けが発生してしまう。脂肪酸は、このアルコールの揮発を抑制する作用がある。このため、揮発性アルコールと脂肪酸をインクに同時添加することで、揮発性アルコールの揮発を脂肪酸が抑制して、インクの蒸発速度の適正化を図ることができる。
また、本発明においては、上記脂肪酸は、20℃において上記水性インクよりも表面張力が高いという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、インク滴の表面を表面張力の高い脂肪酸の油膜で覆うことで、サテライトの発生を抑制する。
インク滴の表面張力が低いと、サテライトが発生しやすくなる。これは、例えば、水に界面活性剤を溶かして、水の表面張力を低下させると、シャボン玉のように膜になりやすいことと同様のメカニズムであると推測される。
このため、インク滴表面に脂肪酸が析出した状態では、インク滴表面が高表面張力となった状態となる。インク滴が高表面張力の場合、シャボン玉が高表面張力だと出来難くなるように、インク滴の尾引が短くなる。その結果、尾引によるインク滴への2以上の分割、すなわちサテライトの発生が抑制される。
このような構成を採用することによって、本発明では、インク滴の表面を表面張力の高い脂肪酸の油膜で覆うことで、サテライトの発生を抑制する。
インク滴の表面張力が低いと、サテライトが発生しやすくなる。これは、例えば、水に界面活性剤を溶かして、水の表面張力を低下させると、シャボン玉のように膜になりやすいことと同様のメカニズムであると推測される。
このため、インク滴表面に脂肪酸が析出した状態では、インク滴表面が高表面張力となった状態となる。インク滴が高表面張力の場合、シャボン玉が高表面張力だと出来難くなるように、インク滴の尾引が短くなる。その結果、尾引によるインク滴への2以上の分割、すなわちサテライトの発生が抑制される。
また、本発明においては、上記脂肪酸の表面張力は、20℃においてセルロースの臨界表面張力よりも低いという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、セルロース(紙)の臨界表面張力よりもインク滴の表面に析出した脂肪酸の表面張力を低くすることで、紙への浸透性を確保する。
サテライト抑制のためにインク滴の表面張力を高くすると、インクの紙への浸透性が低下する。紙への浸透性が低くなると、紙上でインクが濡れている状態が維持されて、紙搬送ローラにインクが付着したり、手にインクが付着しやすくなる。
このため、本発明では、インク滴の表面に析出する脂肪酸の表面張力を紙の臨界表面張力より低くすることで、紙へ脂肪酸を浸透させる。その結果、インクの浸透性が維持される。
このような構成を採用することによって、本発明では、セルロース(紙)の臨界表面張力よりもインク滴の表面に析出した脂肪酸の表面張力を低くすることで、紙への浸透性を確保する。
サテライト抑制のためにインク滴の表面張力を高くすると、インクの紙への浸透性が低下する。紙への浸透性が低くなると、紙上でインクが濡れている状態が維持されて、紙搬送ローラにインクが付着したり、手にインクが付着しやすくなる。
このため、本発明では、インク滴の表面に析出する脂肪酸の表面張力を紙の臨界表面張力より低くすることで、紙へ脂肪酸を浸透させる。その結果、インクの浸透性が維持される。
また、本発明においては、上記脂肪酸は、20℃において上記水性インクよりも粘度が高いという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、インク飛翔中に水中に分散した粘度が高い脂肪酸をインク滴表面に析出させることで、相対的にインク滴内部の粘度を低下させることができるため、インク滴の尾引を短くしてサテライトの発生を抑制することができる。
インク滴の粘度が高いと、サテライトが発生しやすくなる。例えば、シャボン液に砂糖を添加し液体粘度(膜強度)を上げると、大きなシャボン玉ができ、また、はちみつや接着剤のように粘度が高い液体は、液体の動きが悪くいつまでも長く伸びるようになる。インクジェットのインク滴の尾引も同様のメカニズムであると推定される。
すなわち、インクの尾引を短くするには、例えば大きなシャボン玉を作る逆の作用、すなわち膜内部の粘度や液強度を下げるために、インク滴内部の粘度を下げれば良い。インク滴内部の粘度が低いと、内部液の移動速度が、粘度が高いインク滴表面の移動速度より速くなり、インク滴の尾引は、適切にせん断される限界の薄さや細さになりやすくなる。本発明で粘度の高い脂肪酸を表面に析出させることは、インク内部の粘度を下げることであり、インクの尾引は短くなる。その結果、尾引によるインク滴への2以上の分割、すなわちサテライトの発生が抑制される。
このような構成を採用することによって、本発明では、インク飛翔中に水中に分散した粘度が高い脂肪酸をインク滴表面に析出させることで、相対的にインク滴内部の粘度を低下させることができるため、インク滴の尾引を短くしてサテライトの発生を抑制することができる。
インク滴の粘度が高いと、サテライトが発生しやすくなる。例えば、シャボン液に砂糖を添加し液体粘度(膜強度)を上げると、大きなシャボン玉ができ、また、はちみつや接着剤のように粘度が高い液体は、液体の動きが悪くいつまでも長く伸びるようになる。インクジェットのインク滴の尾引も同様のメカニズムであると推定される。
すなわち、インクの尾引を短くするには、例えば大きなシャボン玉を作る逆の作用、すなわち膜内部の粘度や液強度を下げるために、インク滴内部の粘度を下げれば良い。インク滴内部の粘度が低いと、内部液の移動速度が、粘度が高いインク滴表面の移動速度より速くなり、インク滴の尾引は、適切にせん断される限界の薄さや細さになりやすくなる。本発明で粘度の高い脂肪酸を表面に析出させることは、インク内部の粘度を下げることであり、インクの尾引は短くなる。その結果、尾引によるインク滴への2以上の分割、すなわちサテライトの発生が抑制される。
また、インク中に単に粘度が高い脂肪酸を添加するだけでは、インクの粘度が高くなりすぎて、インクの噴射性能や噴射速度が低下し、着弾精度が低下して画像が乱れてしまう。これは、一般のインクジェット用インクは、各種添加剤を含んで高機能化されて粘度が高くなっており、また、速乾性や紙のカール抑制のため、さらには、色材濃度を高くして小粒のインク滴で高画質の画像を形成するために、水分量を制限して粘度が高くなって、ヘッドの噴射性能の限界に近い粘度のものが使用されるためである。よって、単純にサテライト抑制のために粘度の高い脂肪酸を添加するだけでは、粘度が高くなりすぎてしまい、粘度が高くなるとサテライトも発生しやすくなるため、抑制作用も十分に発揮できない。
しかし、本発明では、粘度が高い脂肪酸を、揮発性アルコールで乳化してインク中に分散させている。これにより、粘度が高い脂肪酸を添加することによるインク粘度の過度の高まりを抑制することができる。このため、インクの粘度が高くなりすぎて、インクの噴射性能や噴射速度が低下、着弾精度が低下して画像が乱れてしまうこと、さらには、サテライトの発生を助長することを抑制することができる。
しかし、本発明では、粘度が高い脂肪酸を、揮発性アルコールで乳化してインク中に分散させている。これにより、粘度が高い脂肪酸を添加することによるインク粘度の過度の高まりを抑制することができる。このため、インクの粘度が高くなりすぎて、インクの噴射性能や噴射速度が低下、着弾精度が低下して画像が乱れてしまうこと、さらには、サテライトの発生を助長することを抑制することができる。
また、本発明においては、上記脂肪酸のHLB値は、3よりも低いという構成を採用する。
インク飛翔中に脂肪酸をインク滴表面に析出させるには、脂肪酸は水への溶解性が高くないこと、すなわち、HLB値が3未満の親油性であることが好ましい。
HLB値が3以上である金属脂肪酸や脂肪酸エステルなどは、水への溶解性が高く、インク飛翔中にインク滴表面に析出し難い。また、金属脂肪酸や脂肪酸エステルは共に表面張力が低く、サテライト抑制作用は小さい。
インク飛翔中に脂肪酸をインク滴表面に析出させるには、脂肪酸は水への溶解性が高くないこと、すなわち、HLB値が3未満の親油性であることが好ましい。
HLB値が3以上である金属脂肪酸や脂肪酸エステルなどは、水への溶解性が高く、インク飛翔中にインク滴表面に析出し難い。また、金属脂肪酸や脂肪酸エステルは共に表面張力が低く、サテライト抑制作用は小さい。
また、本発明においては、上記揮発性アルコールは、20℃において上記水性インクよりも粘度が低いという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、インクの粘度よりも揮発性アルコールの粘度を低くすることで、インク表面に揮発性アルコールを移動させやすくすることができる。このため、インク飛翔中にアルコールが揮発しやすくなり、結果、脂肪酸がインク滴表面に析出しやすくなる。
このような構成を採用することによって、本発明では、インクの粘度よりも揮発性アルコールの粘度を低くすることで、インク表面に揮発性アルコールを移動させやすくすることができる。このため、インク飛翔中にアルコールが揮発しやすくなり、結果、脂肪酸がインク滴表面に析出しやすくなる。
また、本発明においては、上記脂肪酸は、オレイン酸であり、上記揮発性アルコールは、エタノールであるという構成を採用する。
揮発性アルコールとしては、融点が78℃と取扱いも容易であり、脂肪酸の溶解性に優れるエタノールを用いることが好ましい。
また、脂肪酸としては、酸化安定性があり、常温で液体のオレイン酸を用いることが好ましい。多くの不飽和脂肪酸は、2重結合が2つ以上あって、2重結合に挟まれたメチレン水素が引き抜かれて容易に酸化される。このため、2重結合が1つの不飽和脂肪酸であるオレイン酸は、メチレン水素がないため、それらと比べて大幅に酸化安定性がある。なお、2重結合をもたない飽和脂肪酸はさらに酸化安定性がある。しかし、酸化安定性のある飽和脂肪酸は常温で固体のものが多く、インク中への添加には向かないものが多い。このため、脂肪酸は、常温で液体のオレイン酸であることが好ましい。
揮発性アルコールとしては、融点が78℃と取扱いも容易であり、脂肪酸の溶解性に優れるエタノールを用いることが好ましい。
また、脂肪酸としては、酸化安定性があり、常温で液体のオレイン酸を用いることが好ましい。多くの不飽和脂肪酸は、2重結合が2つ以上あって、2重結合に挟まれたメチレン水素が引き抜かれて容易に酸化される。このため、2重結合が1つの不飽和脂肪酸であるオレイン酸は、メチレン水素がないため、それらと比べて大幅に酸化安定性がある。なお、2重結合をもたない飽和脂肪酸はさらに酸化安定性がある。しかし、酸化安定性のある飽和脂肪酸は常温で固体のものが多く、インク中への添加には向かないものが多い。このため、脂肪酸は、常温で液体のオレイン酸であることが好ましい。
また、本発明においては、上記水性インクに、上記脂肪酸としてオレイン酸が0.05wt%以上3.00wt%以下、上記揮発性アルコールとしてエタノールが0.05wt%以上3.00wt%以下、添加されているという構成を採用する。
オレイン酸は、0.05wt%未満だと、十分なサテライトの抑制作用が発現し難くなる。一方、オレイン酸は、3.00wt%を超えると、分散安定性が低下する。
エタノールは、0.05wt%未満だと、オレイン酸の分散安定性が低下する。一方、エタノールは、3.00wt%を超えると、インクが蒸発しやすくなりすぎ、インクが増粘してサテライトが発生しやすくなる。
オレイン酸は、0.05wt%未満だと、十分なサテライトの抑制作用が発現し難くなる。一方、オレイン酸は、3.00wt%を超えると、分散安定性が低下する。
エタノールは、0.05wt%未満だと、オレイン酸の分散安定性が低下する。一方、エタノールは、3.00wt%を超えると、インクが蒸発しやすくなりすぎ、インクが増粘してサテライトが発生しやすくなる。
以下、本発明に係るインクジェット式記録装置の各実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。本実施形態では、本発明に係るインクジェット式記録装置として、インクジェット式プリンター(以下、プリンターと称する)を例示する。
図1は、本発明の実施形態におけるプリンター1の構成を示す斜視図である。
同図に示すように、プリンター1は、記録ヘッド(インクジェットヘッド)2を搭載すると共にインクカートリッジ3を着脱可能に装着するキャリッジ4と、記録ヘッド2の下方に配設され記録紙(記録媒体)6が搬送されるプラテン5と、キャリッジ4を記録紙6の紙幅方向に移動させるキャリッジ移動機構7と、記録紙6を紙送り方向に搬送する紙送り機構8とを有する構成となっている。加えて、プリンター1は、当該プリンター1全体の動作を制御する制御装置CONTを有している。なお、上記紙幅方向とは、主走査方向(ヘッド走査方向)である。上記紙送り方向とは、副走査方向(主走査方向に直交する方向)である。
同図に示すように、プリンター1は、記録ヘッド(インクジェットヘッド)2を搭載すると共にインクカートリッジ3を着脱可能に装着するキャリッジ4と、記録ヘッド2の下方に配設され記録紙(記録媒体)6が搬送されるプラテン5と、キャリッジ4を記録紙6の紙幅方向に移動させるキャリッジ移動機構7と、記録紙6を紙送り方向に搬送する紙送り機構8とを有する構成となっている。加えて、プリンター1は、当該プリンター1全体の動作を制御する制御装置CONTを有している。なお、上記紙幅方向とは、主走査方向(ヘッド走査方向)である。上記紙送り方向とは、副走査方向(主走査方向に直交する方向)である。
インクカートリッジ3としては、本実施形態のようにキャリッジ4に装着するものには限らず、プリンター1の筐体側に装着してインク供給チューブを介して記録ヘッド2に供給するタイプのものを採用してもよい。インクカートリッジ3は、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)などの異なる色のインクが収容されている。
ガイドロッド9は、主走査方向に架設された支持部材である。キャリッジ4は、このガイドロッド9に支持された状態で取り付けられている。このキャリッジ4は、キャリッジ移動機構7によりガイドロッド9に沿って主走査方向に移動するようになっている。リニアエンコーダ10は、キャリッジ4の主走査方向上の位置を検出する。この検出信号は、位置情報として制御装置CONTに送信されるようになっている。制御装置CONTは、このリニアエンコーダ10からの位置情報に基づいて記録ヘッド2の走査位置を認識し、記録ヘッド2による記録動作(吐出動作)等を制御するようになっている。また、制御装置CONTは、キャリッジ4の移動速度を可変制御可能な構成となっている。
図2は、本発明の実施形態における記録ヘッド2に設けられたノズル17の配列を示す図である。
同図に示すように、記録ヘッド2は、インクを噴射する複数のノズル17が設けられたノズル形成面(噴射面)21Aを有する。ノズル形成面21Aには、複数のノズル17ごとにノズル列16が形成されている。各ノズル列16においては、例えば異なる色のインクを吐出可能になっている。本実施形態ではインクの色に対応して4列(16(Bk),16(M),16(C),16(Y))設けられている。1つのノズル列16は、例えば、180個のノズル17によって構成されている。
同図に示すように、記録ヘッド2は、インクを噴射する複数のノズル17が設けられたノズル形成面(噴射面)21Aを有する。ノズル形成面21Aには、複数のノズル17ごとにノズル列16が形成されている。各ノズル列16においては、例えば異なる色のインクを吐出可能になっている。本実施形態ではインクの色に対応して4列(16(Bk),16(M),16(C),16(Y))設けられている。1つのノズル列16は、例えば、180個のノズル17によって構成されている。
図3は、本発明の実施形態における記録ヘッド2の内部構成を示す部分断面図である。
同図に示すように、記録ヘッド2は、ヘッド本体18と、ヘッド本体18に接続された流路形成ユニット22とを備えている。流路形成ユニット22は、振動板19と、流路基板20と、ノズル基板21とを備えると共に、共通インク室29と、インク供給口30と、圧力室31とを形成する。さらに、流路形成ユニット22は、ダイヤフラム部として機能する島部32と、共通インク室29内の圧力変動を吸収するコンプライアンス部33とを備える。ヘッド本体18には、固定部材26と共に駆動ユニット24を収容する収容空間23と、インクを流路形成ユニット22に案内する内部流路28とが形成される。
同図に示すように、記録ヘッド2は、ヘッド本体18と、ヘッド本体18に接続された流路形成ユニット22とを備えている。流路形成ユニット22は、振動板19と、流路基板20と、ノズル基板21とを備えると共に、共通インク室29と、インク供給口30と、圧力室31とを形成する。さらに、流路形成ユニット22は、ダイヤフラム部として機能する島部32と、共通インク室29内の圧力変動を吸収するコンプライアンス部33とを備える。ヘッド本体18には、固定部材26と共に駆動ユニット24を収容する収容空間23と、インクを流路形成ユニット22に案内する内部流路28とが形成される。
上記構成のピエゾ式の記録ヘッド2によれば、ケーブル27を介して駆動ユニット24に駆動信号が入力されると、圧電素子25が伸縮する。これにより、振動板19がキャビティに接近する方向及び離れる方向に変形(移動)する。このため、圧力室31の容積が変化し、インクを収容した圧力室31の圧力が変動する。この圧力の変動によって、ノズル17から、インクが噴射される。
図1に戻り、記録ヘッド2の移動範囲のうちプラテン5の外側の領域には、記録ヘッド2の走査起点となるホームポジションが設定されている。このホームポジションには、メンテナンスユニット11が設けられている。メンテナンスユニット11は、印字動作以外で記録ヘッド2をキャップ部材12でキャッピングしてインクの蒸発を抑制する保湿動作と、記録ヘッド2の各ノズル17からインクをキャップ部材12に予備噴射させることで増粘インクによるノズル17の目詰まり防止やノズル17のメニスカスを調整して記録ヘッド2から正常にインクを噴射させるフラッシング動作と、キャップ部材12で記録ヘッド2をキャッピングした後に不図示の吸引ポンプを駆動させて各ノズル17から粘性が高くなったインクや付着したゴミ等を強制吸引してメニスカスを調整し、記録ヘッド2から正常にインクを噴射させる吸引動作(ヘッドクリーニング)と、記録ヘッド2のノズル形成面21Aをワイプ部材13で払拭(ワイピング)することでノズル17近傍に付着したインクや増粘したインク等を除去したり、ノズル17のメニスカスを破壊してメニスカスを再調整させるパージ処理を行うワイピング動作と、を実行する構成となっている。
続いて、記録ヘッド2から噴射するインクについて説明する。
本実施形態のインクは、超浸透性水性インクに関するものである。なお、超浸透性水性インクとしては、顔料インクや染料インクだけでなく、色素、金属微粒子、セラミック微粒子、半導体微粒子、樹脂のような機能性水性インクであってもよい。ここで、インクの超浸透とは、その表面張力がセルロース(紙)の臨界表面張力よりも低いことを指す。
また、この水性インクには、各種添加物が含まれていても良い。例えば、界面活性剤、保湿剤、PH調整剤、顔料、染料、色素、金属微粒子、セラミック微粒子、半導体微粒子、樹脂、有機溶剤、金属イオン、カール抑制剤、ブリード抑制剤、パドリング抑制剤、浸透調整剤、防腐剤、防カビ剤、溶解助剤、酸化防止剤、などが、用途に応じて複数種含まれていることが好まれる。
本実施形態のインクは、この水性インクに、脂肪酸、及び、揮発性アルコールを添加している。
本実施形態のインクは、超浸透性水性インクに関するものである。なお、超浸透性水性インクとしては、顔料インクや染料インクだけでなく、色素、金属微粒子、セラミック微粒子、半導体微粒子、樹脂のような機能性水性インクであってもよい。ここで、インクの超浸透とは、その表面張力がセルロース(紙)の臨界表面張力よりも低いことを指す。
また、この水性インクには、各種添加物が含まれていても良い。例えば、界面活性剤、保湿剤、PH調整剤、顔料、染料、色素、金属微粒子、セラミック微粒子、半導体微粒子、樹脂、有機溶剤、金属イオン、カール抑制剤、ブリード抑制剤、パドリング抑制剤、浸透調整剤、防腐剤、防カビ剤、溶解助剤、酸化防止剤、などが、用途に応じて複数種含まれていることが好まれる。
本実施形態のインクは、この水性インクに、脂肪酸、及び、揮発性アルコールを添加している。
本実施形態のインクに用いられる揮発性アルコールとしては、脂肪酸を乳化して水性インクの溶媒中(水中)に分散させると共に常温の20℃において水よりも蒸気圧の高いものが用いられる。また、揮発性アルコールとしては、20℃において水性インクよりも表面張力が低いものが好ましい。また、揮発性アルコールとしては、20℃において水性インクよりも粘度が低いものが好ましい。
本実施形態の揮発性アルコールの種類としては、メタノール、エタノール、プロパノール等が上げられる。エタノールは、融点が78℃と取扱いも容易であり、脂肪酸の溶解性に優れるため、本実施形態の揮発性アルコールとしてはエタノールが好まれる。
本実施形態の揮発性アルコールの種類としては、メタノール、エタノール、プロパノール等が上げられる。エタノールは、融点が78℃と取扱いも容易であり、脂肪酸の溶解性に優れるため、本実施形態の揮発性アルコールとしてはエタノールが好まれる。
本実施形態のインクに用いられる脂肪酸は、20℃において水性インクよりも表面張力と粘度が高く、セルロースの臨界表面張力よりも表面張力が低く、HLB<3の親油性のものが用いられる。サテライト抑制のためには、水性インクよりも表面張力が高く、紙に浸透するためには、紙の臨界表面張力よりも表面張力が低いことが好ましい。セルロースの臨界表面張力は、40〜45mN/mであるため、脂肪酸の表面張力は、40mN/m以下であることが好ましい。また、脂肪酸は、析出しても固化しないように、常温で液体であることが好ましい。
親水性や親油性の指標として用いられているHLB値は、厳密にはAtlas法やPIT法など測定方法で値が異なるものの、大きな差はない。どの測定方法でも、HLB<3であれば親油性であるといえる。よって、どれか一つの測定方法でもHLB<3であれば良い。
本実施形態のインクに用いられる上記特性を満足する脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸などがある。脂肪酸は、その酸化安定性からオレイン酸が好ましく、オレイン酸は精製されたものであっても、オレイン酸を主成分とするオリーブ油のような植物油であっても良い。なお、オレイン酸は、表面張力が35mN/m、HLB=1である。
親水性や親油性の指標として用いられているHLB値は、厳密にはAtlas法やPIT法など測定方法で値が異なるものの、大きな差はない。どの測定方法でも、HLB<3であれば親油性であるといえる。よって、どれか一つの測定方法でもHLB<3であれば良い。
本実施形態のインクに用いられる上記特性を満足する脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸などがある。脂肪酸は、その酸化安定性からオレイン酸が好ましく、オレイン酸は精製されたものであっても、オレイン酸を主成分とするオリーブ油のような植物油であっても良い。なお、オレイン酸は、表面張力が35mN/m、HLB=1である。
本実施形態のインクに係る水性インク、脂肪酸、揮発性アルコールの、表面張力(紙の臨界表面張力を含む)と、粘度とは、次の関係からなる。
表面張力: 揮発性アルコール < 水性インク < 脂肪酸 < セルロース(紙)
粘度: 揮発性アルコール < 水性インク < 脂肪酸
本実施形態のインクの好まれる範囲は、揮発性アルコールをエタノール、脂肪酸をオレイン酸とすると、20℃において次の関係からなる。
表面張力: 22mN/m < 水性インク < 35mN/m
粘度: 1.2mPa・s < 水性インク < 35mPa・s
表面張力: 揮発性アルコール < 水性インク < 脂肪酸 < セルロース(紙)
粘度: 揮発性アルコール < 水性インク < 脂肪酸
本実施形態のインクの好まれる範囲は、揮発性アルコールをエタノール、脂肪酸をオレイン酸とすると、20℃において次の関係からなる。
表面張力: 22mN/m < 水性インク < 35mN/m
粘度: 1.2mPa・s < 水性インク < 35mPa・s
本実施形態のインクは、上記関係を満足していれば、揮発性アルコールと脂肪酸とをインク製造の最初から添加しても良いし、従来から用いられている超浸透性の水性染料インクや水性顔料インクや機能性水性インクに、上記関係を有する揮発性アルコールと脂肪酸とを後添加したものであっても良い。むしろ後添加の方が、インク全体のバランスを崩したり、再設計する必要がなく、高速印字時のサテライトを容易に低減することができるため好ましい。
本実施形態のプリンター1は、上記インクを、記録紙6に対し0.5m/s以上の相対速度で移動しながら噴射することで、サテライトの発生を抑制するものである。上記相対速度とは、本実施形態のシリアル式の記録ヘッド2においては、キャリッジ4の主走査方向の移動速度に相当するものである。なお、ヘッドが固定式のラインプリンターでは、副走査方向の紙の移動速度に相当するものである。
本実施形態では、より高速でサテライトが発生しやすく、その影響が大きなプリンターである程、その効果は大きい。具体的には、上記相対速度が0.8m/s以上においては、さらにサテライトの抑制効果がある。
また、本実施形態のプリンター1は、脂肪酸を含むインクを用いるため、熱による脂肪酸の酸化の懸念が少ないピエゾ式のインクジェットヘッドを用いることが好まれる。なお、脂肪酸の添加量が少なければサーマル式のインクジェットヘッドを用いても良いが、脂肪酸の酸化によるノズル詰りの懸念の少ないピエソ式であることがより好まれる。
本実施形態では、より高速でサテライトが発生しやすく、その影響が大きなプリンターである程、その効果は大きい。具体的には、上記相対速度が0.8m/s以上においては、さらにサテライトの抑制効果がある。
また、本実施形態のプリンター1は、脂肪酸を含むインクを用いるため、熱による脂肪酸の酸化の懸念が少ないピエゾ式のインクジェットヘッドを用いることが好まれる。なお、脂肪酸の添加量が少なければサーマル式のインクジェットヘッドを用いても良いが、脂肪酸の酸化によるノズル詰りの懸念の少ないピエソ式であることがより好まれる。
続いて、図4を参照して、上記構成のプリンター1のサテライト発生の抑制に係る作用及び効果について説明する。
図4は、本発明の実施形態におけるインク噴射時のインク滴の様子を示す図である。
なお、以下の説明では、水性インクに、脂肪酸としてオレイン酸を、揮発性アルコールとしてエタノールを添加した場合を例示して説明する。
図4は、本発明の実施形態におけるインク噴射時のインク滴の様子を示す図である。
なお、以下の説明では、水性インクに、脂肪酸としてオレイン酸を、揮発性アルコールとしてエタノールを添加した場合を例示して説明する。
本実施形態のインクは、水性インクに、水に難溶のオレイン酸を、揮発性の高いエタノールを分散剤として用いて乳化し、水性インクの溶媒中(水中)に分散させたものである。このインクを噴射して大気中に触れさせると、オレイン酸と水との仲介をしていたエタノールがインク滴表面において揮発する。この揮発は、高速印字時(相対速度0.5m/s以上)の乾燥しやすさを逆に利用することで噴射開始から即時に促す。インク滴表面のエタノールが揮発すると、水に難溶のオレイン酸がインク滴表面に析出し、油膜を形成する。オレイン酸の油膜は、インク滴を包みこんで、尾引による液滴の2つ以上の分割を抑制するように作用する。このため、高速印字時のサテライトの発生が抑制される。
サテライトの発生は、インク噴射直後のノズル17からの尾引の影響が大きいため、噴射直後のインク滴表面にオレイン酸がなければ効果が薄い。例えば、噴射から時間が経過して、記録紙6への着弾前にオレイン酸がインク表面に移動するようでは遅い。
本実施形態では、高速印字時のその相対速度に基づく風(図4中矢印で示す)等によるインク滴の速乾作用があるため、即時にエタノールを揮発させて、オレイン酸を噴射直後にインク滴表面に析出させることができる。
加えて、本実施形態では、揮発性アルコールとして、20℃において水性インクよりも粘度が低いエタノールを用いている。エタノールは、水性インクの粘度よりも低いので、インク表面に移動しやすい。このため、インク飛翔中にエタノールが揮発しやすくなり、オレイン酸を噴射直後にインク滴表面に析出させることができる。
さらに、本実施形態では、脂肪酸として、HLB値が3よりも低い親油性のオレイン酸を用いている。オレイン酸は、親油性が高い(HLB=1)ので、エタノールが揮発してなくなると、即時に水から分離してインク滴表面に析出する。
本実施形態では、高速印字時のその相対速度に基づく風(図4中矢印で示す)等によるインク滴の速乾作用があるため、即時にエタノールを揮発させて、オレイン酸を噴射直後にインク滴表面に析出させることができる。
加えて、本実施形態では、揮発性アルコールとして、20℃において水性インクよりも粘度が低いエタノールを用いている。エタノールは、水性インクの粘度よりも低いので、インク表面に移動しやすい。このため、インク飛翔中にエタノールが揮発しやすくなり、オレイン酸を噴射直後にインク滴表面に析出させることができる。
さらに、本実施形態では、脂肪酸として、HLB値が3よりも低い親油性のオレイン酸を用いている。オレイン酸は、親油性が高い(HLB=1)ので、エタノールが揮発してなくなると、即時に水から分離してインク滴表面に析出する。
また、サテライトの発生は、インク滴の表面張力が低いと発生しやすくなる。本実施形では、脂肪酸として、20℃において水性インクよりも表面張力が高いオレイン酸を用いている。このため、エタノールが揮発すると、インク滴の表面が表面張力の高いオレイン酸の油膜で覆われる。インク滴の表面張力が高くなると、強い力で尾引を引っ張って安定した球形となろうとするため、インク滴の尾引が短くなる。そうすると、尾引によるインク滴の2以上の分割、すなわちサテライトの発生が抑制される。
また、サテライトの発生は、インク滴の粘度が高いと発生しやすくなる。本実施形態では、脂肪酸として、20℃において水性インクよりも粘度が高いオレイン酸を用いている。このため、インク飛翔中に水中に分散した粘度が高いオレイン酸が、インク滴表面に析出するとインク滴内部の粘度が低下する。インク滴内部の粘度が低いと、内部液の移動速度が粘度が高いインク滴表面の移動速度より速くなり、インク滴の尾引は、適切にせん断される限界の薄さや細さになりやすくなる。すなわち、粘度の高いオレイン酸をインク滴表面に析出させることは、インク内部の粘度を下げることであり、インクの尾引は短くなる。その結果、尾引によるインク滴への2以上の分割、すなわちサテライトの発生が抑制される。
また、本実施形態では、脂肪酸として、20℃においてセルロースの臨界表面張力より表面張力が低いオレイン酸を用いている。このため、記録紙6への着弾後は、インク滴の表面に析出したオレイン酸が、速やかにセルロースへ浸透する。このため、記録紙6に着弾後は、インク全体の表面張力が支配的になり、インクの超浸透性を維持でき、インクの速乾性を維持できる。
以上のように、本実施形態のプリンター1によれば、サテライトの発生を抑制し、高速で高品質の画像を形成することが可能となる。
[実施例]
以下、実施例により本発明の効果をより明らかにする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
以下、実施例により本発明の効果をより明らかにする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
(顔料インクの製造方法)
インクは、文献(酒井真理、“ピエゾ方式インクジェットプリンティング技術とPXインク” 中部化学関係学協会支部連合秋季大会講演予稿集 p75、34、(2008))に記載されている、公知のEPSON製のPXインクを用いて改良を行った。
なお、PXインクについては、文献((社)色材協会、金谷美春、他 “印刷インキ講座” p.51 (社)色材協会 (2007))にも記載がある。
オレイン酸とアルコールと純水を、1:4:5の比率で攪拌および超音波混合し、オレイン酸分散液を作製した。作製した分散液を、EPSON製プリンターPX−B500に用いられているブラックの水性顔料インクに、2wt%添加し、攪拌および超音波分散を行った。なお、添加液に純水を加えているのは、インク添加前に水中でのオレイン酸の安定ミセル構造を形成させ、インク中でのオレイン酸の分散安定性を向上させるためである。
PX−B500のインク(以下、通常PXインクと称する場合がある)の表面張力は27mN/mであり、作製したインク(以下、改良PXインクと称する場合がある)の表面張力は28mN/mであった。
インクは、文献(酒井真理、“ピエゾ方式インクジェットプリンティング技術とPXインク” 中部化学関係学協会支部連合秋季大会講演予稿集 p75、34、(2008))に記載されている、公知のEPSON製のPXインクを用いて改良を行った。
なお、PXインクについては、文献((社)色材協会、金谷美春、他 “印刷インキ講座” p.51 (社)色材協会 (2007))にも記載がある。
オレイン酸とアルコールと純水を、1:4:5の比率で攪拌および超音波混合し、オレイン酸分散液を作製した。作製した分散液を、EPSON製プリンターPX−B500に用いられているブラックの水性顔料インクに、2wt%添加し、攪拌および超音波分散を行った。なお、添加液に純水を加えているのは、インク添加前に水中でのオレイン酸の安定ミセル構造を形成させ、インク中でのオレイン酸の分散安定性を向上させるためである。
PX−B500のインク(以下、通常PXインクと称する場合がある)の表面張力は27mN/mであり、作製したインク(以下、改良PXインクと称する場合がある)の表面張力は28mN/mであった。
(サテライト確認方法)
作製したインクを、EPSON製プリンターPX−B500のブラックのインクカートリッジに入れ、印字可能状態にした。EPSON製プリンターPX−B500は、ヘッドのキャリッジ速度として1.1m/secが出るプリンターであるため、キャリッジ速度を0.25〜1.1m/secまで可変できるように改造し、印字速度とサテライトの関係を実験した。サテライトは、EPSON製スーパーファイン紙に印字した印字物を顕微鏡で観察し、サテライトがあるかどうかを確認した。
作製したインクを、EPSON製プリンターPX−B500のブラックのインクカートリッジに入れ、印字可能状態にした。EPSON製プリンターPX−B500は、ヘッドのキャリッジ速度として1.1m/secが出るプリンターであるため、キャリッジ速度を0.25〜1.1m/secまで可変できるように改造し、印字速度とサテライトの関係を実験した。サテライトは、EPSON製スーパーファイン紙に印字した印字物を顕微鏡で観察し、サテライトがあるかどうかを確認した。
サテライトは、100%なくなるのが理想であるが、吐出インクの空気中の液滴の分割は確率の問題もあるため、どんな状況においても完全になくすことは困難である。実質的には印字物においてサテライトが観察されなければ良い。さらに、印字物の人の目の感度は、紙と目の距離が30cmの時60μm以上のズレを感知しやすくなるとされている。よって、本実施例の、サテライトの有無はより実用的に次のように判断する。
×…“サテライトあり”とは、印字物の主滴とサテライトの間隔が60μm以上ある時とする。
○…“サテライト無し(抑制効果あり)”とは、印字物の主滴とサテライトの間隔が60μm未満の時とする。
◎…“サテライト完全無し”とは、印字物の主滴とサテライトの間隔が0μmの時とする。
×…“サテライトあり”とは、印字物の主滴とサテライトの間隔が60μm以上ある時とする。
○…“サテライト無し(抑制効果あり)”とは、印字物の主滴とサテライトの間隔が60μm未満の時とする。
◎…“サテライト完全無し”とは、印字物の主滴とサテライトの間隔が0μmの時とする。
表1は、インク組成と、キャリッジ速度と、上記判断手法によるサテライトの発生との関係を示す。
実施例1では、上記インク製造方法の手順に従って製造した改良PXインクについて、上記判断手法に従ってサテライトの発生を確認した。
比較例1〜3では、インク組成を表1のように変更し、このインク製造方法の手順は、実施例1のインク製造方法の手順に従い、インクを作製した。サテライト確認方法は、実施例1と同じ判断手法を用いた。
比較例4〜8では、通常PXインクを用いて、キャリッジ速度を0.3m/s〜0.9m/sに変化させて、実施例1に従いサテライトの発生を確認した。
実施例2〜7では、改良PXインクを用いて、キャリッジ速度を0.6m/s〜1.1m/sに変化させて、実施例1に従いサテライトの発生を確認した。
実施例8では、上記インク製造方法の手順に従って製造した改良PXインク(マゼンダ)について、実施例1に従いサテライトの発生を確認した。
実施例9では、上記インク製造方法の手順に従って製造した改良PXインク(シアン)について、実施例1に従いサテライトの発生を確認した。
実施例10では、上記インク製造方法の手順に従って製造した改良PXインク(イエロー)について、実施例1に従いサテライトの発生を確認した。
実施例1では、上記インク製造方法の手順に従って製造した改良PXインクについて、上記判断手法に従ってサテライトの発生を確認した。
比較例1〜3では、インク組成を表1のように変更し、このインク製造方法の手順は、実施例1のインク製造方法の手順に従い、インクを作製した。サテライト確認方法は、実施例1と同じ判断手法を用いた。
比較例4〜8では、通常PXインクを用いて、キャリッジ速度を0.3m/s〜0.9m/sに変化させて、実施例1に従いサテライトの発生を確認した。
実施例2〜7では、改良PXインクを用いて、キャリッジ速度を0.6m/s〜1.1m/sに変化させて、実施例1に従いサテライトの発生を確認した。
実施例8では、上記インク製造方法の手順に従って製造した改良PXインク(マゼンダ)について、実施例1に従いサテライトの発生を確認した。
実施例9では、上記インク製造方法の手順に従って製造した改良PXインク(シアン)について、実施例1に従いサテライトの発生を確認した。
実施例10では、上記インク製造方法の手順に従って製造した改良PXインク(イエロー)について、実施例1に従いサテライトの発生を確認した。
表1によれば、オレイン酸とエタノールはセットでサテライト抑制の効果を発現することが分かる。また、表1によれば、キャリッジ速度が0.5m/s以上でサテライト抑制の効果があることが分かる。また、表1によれば、カラーインクにおいてもブラックインクと同様のサテライト抑制の効果があることが分かる。
表2は、インク組成と、キャリッジ速度と、上記判断手法によるサテライトの発生との関係を示す。
比較例9〜14、実施例11〜22では、オレイン酸とエタノールの添加比率を変えて改良PXインクを作製し、実施例1に従いサテライトの発生を確認した。
比較例9〜14、実施例11〜22では、オレイン酸とエタノールの添加比率を変えて改良PXインクを作製し、実施例1に従いサテライトの発生を確認した。
表2によれば、オレイン酸が0.05wt%未満だと、サテライト抑制の効果が発現しなくなることが分かる。また、表2によれば、オレイン酸が3wt%を超えると、分散安定性が低下することが分かる。
表3は、インク組成と、キャリッジ速度と、上記判断手法によるサテライトの発生との関係を示す。
比較例15〜22、実施例23〜32では、オレイン酸とエタノールの添加比率を変えて改良PXインクを作製し、実施例1に従いサテライトの発生を確認した。
比較例15〜22、実施例23〜32では、オレイン酸とエタノールの添加比率を変えて改良PXインクを作製し、実施例1に従いサテライトの発生を確認した。
表3によれば、エタノールが3wt%を超えると、インクが蒸発しやすくなりすぎ、インクが増粘してサテライトが発生しやすくなることが分かる。また、表3によれば、エタノールが0.05wt%未満だと、オレイン酸の分散安定性が低下することが分かる。
表4は、インク組成と、キャリッジ速度と、上記判断手法によるサテライトの発生との関係を示す。
実施例33では、PXインクを、EPSON製プリンターEP−802Aに用いられている水性染料インクに変更した。
(染料インクの製造方法)
オレイン酸とアルコールと純水を、1:4:5の比率で攪拌および超音波混合し、オレイン酸分散液を作製した。作製した分散液を、EPSON製プリンターEP−802Aに用いられている水性染料インクに、2wt%添加し、攪拌および超音波分散を行った。
(サテライト確認方法)
作製したインクを、上記の改造したEPSON製プリンターPX−B500のインクカートリッジに入れ、EPSON製スーパーファイン紙に印字した印字物を顕微鏡で観察し、実施例1に従いサテライトの発生を確認した。
比較例23では、EPSON製プリンターEP−802Aに用いられている水性染料インクを上記の改造したEPSON製プリンターPX−B500のインクカートリッジに入れ、実施例1に従いサテライトの発生を確認した。
実施例33では、PXインクを、EPSON製プリンターEP−802Aに用いられている水性染料インクに変更した。
(染料インクの製造方法)
オレイン酸とアルコールと純水を、1:4:5の比率で攪拌および超音波混合し、オレイン酸分散液を作製した。作製した分散液を、EPSON製プリンターEP−802Aに用いられている水性染料インクに、2wt%添加し、攪拌および超音波分散を行った。
(サテライト確認方法)
作製したインクを、上記の改造したEPSON製プリンターPX−B500のインクカートリッジに入れ、EPSON製スーパーファイン紙に印字した印字物を顕微鏡で観察し、実施例1に従いサテライトの発生を確認した。
比較例23では、EPSON製プリンターEP−802Aに用いられている水性染料インクを上記の改造したEPSON製プリンターPX−B500のインクカートリッジに入れ、実施例1に従いサテライトの発生を確認した。
表4によれば、染料水性インクにおいても、サテライト抑制の効果が発現することが分かる。
表5は、インク組成と、キャリッジ速度と、上記判断手法によるサテライトの発生との関係を示す。
比較例24〜27では、実施例1のオレイン酸を、オレイン酸ナトリウム、オレイルアルコール、オレイン酸エチル、ソルビタントリオレエートに変更して、実施例1に従いサテライトの発生を確認した。
比較例24〜27では、実施例1のオレイン酸を、オレイン酸ナトリウム、オレイルアルコール、オレイン酸エチル、ソルビタントリオレエートに変更して、実施例1に従いサテライトの発生を確認した。
実施例1のオレイン酸はHLB<3で、インクよりも表面張力が大きいため、サテライト抑制の効果が発現することが分かる。
比較例24のオレイン酸ナトリウム水溶液はHLB=16>3で、インクよりも表面張力が小さいため、サテライト抑制の効果が発現しないことが分かる。
比較例25の、オレイルアルコールはHLB≒18>3で、インクよりも表面張力が小さいため、サテライト抑制の効果が発現しないことが分かる。
比較例26の、オレイン酸エチルはHLB>3で、インクよりも表面張力が小さいため、サテライト抑制の効果が発現しないことが分かる。
比較例27の、ソルビタントリオレエートはHLB=2<3であるが、インクよりも表面張力が小さいため、サテライト抑制の効果が発現しないことが分かる。
したがって、表5では、脂肪酸はHLB<3で、インクよりも表面張力が大きいと、サテライト抑制の効果が発現することが分かる。
比較例24のオレイン酸ナトリウム水溶液はHLB=16>3で、インクよりも表面張力が小さいため、サテライト抑制の効果が発現しないことが分かる。
比較例25の、オレイルアルコールはHLB≒18>3で、インクよりも表面張力が小さいため、サテライト抑制の効果が発現しないことが分かる。
比較例26の、オレイン酸エチルはHLB>3で、インクよりも表面張力が小さいため、サテライト抑制の効果が発現しないことが分かる。
比較例27の、ソルビタントリオレエートはHLB=2<3であるが、インクよりも表面張力が小さいため、サテライト抑制の効果が発現しないことが分かる。
したがって、表5では、脂肪酸はHLB<3で、インクよりも表面張力が大きいと、サテライト抑制の効果が発現することが分かる。
以上のことから、水性インクに脂肪酸と揮発性アルコールの同時添加と高速印字(相対速度0.5m/s以上)には、次のような相乗効果がある。
(1)脂肪酸の分散安定化
脂肪酸は、水やインク中に安定分散しない脂肪酸であるが、アルコール中にはよく溶解する。また、保湿剤の一つであるグリセリンもアルコールの一種であるため、脂肪酸が少し溶解する。アルコールもグリセリンも水によく溶解する。
よって、水性インク中にアルコールがあると、脂肪酸の分散安定化が向上し、グリセリンがあるとさらに安定性が向上する。
脂肪酸は、水やインク中に安定分散しない脂肪酸であるが、アルコール中にはよく溶解する。また、保湿剤の一つであるグリセリンもアルコールの一種であるため、脂肪酸が少し溶解する。アルコールもグリセリンも水によく溶解する。
よって、水性インク中にアルコールがあると、脂肪酸の分散安定化が向上し、グリセリンがあるとさらに安定性が向上する。
(2)揮発性アルコールによる、インク表面へのすばやい脂肪酸の析出
水に難溶性で揮発性アルコールに易溶性の脂肪酸が、揮発性アルコールと共にインク中に含まれると、吐出直後から揮発性アルコールが多く揮発するので、表面に脂肪酸がすばやく析出する。
水に難溶性で揮発性アルコールに易溶性の脂肪酸が、揮発性アルコールと共にインク中に含まれると、吐出直後から揮発性アルコールが多く揮発するので、表面に脂肪酸がすばやく析出する。
(3)高速印字による、インク表面へのすばやい脂肪酸の析出
低速印字においては乾燥速度が遅いため、着弾前に効果的に析出させることができない。乾燥速度の速い高速印字において、吐出インクの印字媒体への着弾前に、脂肪酸をより効果的に析出させることができる。
低速印字においては乾燥速度が遅いため、着弾前に効果的に析出させることができない。乾燥速度の速い高速印字において、吐出インクの印字媒体への着弾前に、脂肪酸をより効果的に析出させることができる。
(4)表面張力の高い脂肪酸によるサテライトの抑制
インク表面に脂肪酸が析出した状態は、吐出インク内部は低粘度かつ低表面張力のまま、表面のみ高表面張力となった状態である。吐出インクが低粘度かつ高表面張力の場合、シャボン玉が低粘度かつ高表面張力だと出来難くなるように、吐出インクの尾引が短くなる。その結果、尾引のインク滴への分割、すなわちサテライトの発生が抑制される。
インク表面に脂肪酸が析出した状態は、吐出インク内部は低粘度かつ低表面張力のまま、表面のみ高表面張力となった状態である。吐出インクが低粘度かつ高表面張力の場合、シャボン玉が低粘度かつ高表面張力だと出来難くなるように、吐出インクの尾引が短くなる。その結果、尾引のインク滴への分割、すなわちサテライトの発生が抑制される。
(5)インク内部が低粘度であることによるサテライトの抑制。
吐出インクの尾引を短くするには、大きなシャボン玉を作る逆の作用、すなわち吐出インク内部の粘度を下げれば良い。内部の粘度が低いと内部液の移動速度が速くなり、シャボン玉や吐出インクは、限界の薄さや細さになりやすくなるからである。本発明で粘度の高い脂肪酸を表面に析出させることは、インク内部の粘度を下げることであり、吐出インクの尾引は短くなる。その結果、尾引のインク滴への分割、すなわちサテライトの発生が抑制される。
吐出インクの尾引を短くするには、大きなシャボン玉を作る逆の作用、すなわち吐出インク内部の粘度を下げれば良い。内部の粘度が低いと内部液の移動速度が速くなり、シャボン玉や吐出インクは、限界の薄さや細さになりやすくなるからである。本発明で粘度の高い脂肪酸を表面に析出させることは、インク内部の粘度を下げることであり、吐出インクの尾引は短くなる。その結果、尾引のインク滴への分割、すなわちサテライトの発生が抑制される。
(6)脂肪酸と揮発性アルコールの同時添加による、蒸発速度の適正化
インク中に揮発性アルコールを添加するだけでは、インクの乾燥速度が速すぎてノズル表面が乾燥し、ノズルにキャップをしていても数十分放置したレベルですぐにノズル抜けが発生してしまう。揮発性アルコールと脂肪酸を同時添加することで、インクの乾燥速度を速くすることなく、揮発性アルコールの乾燥速度を脂肪酸が抑制しながら、アルコールが揮発することで脂肪酸をすばやく表面に析出させることができる。
また、インクは製造工程の最後に脱気工程(真空引き工程)があることが多い。なぜならインクジェット式記録装置用インクは、気泡発生が悪影響を及ぼすことが多いからである。そのため、揮発性アルコール添加量が多いとアルコールが蒸発して組成ばらつきが発生し、インクの品質安定性に悪影響を及ぼす。
脂肪酸には、このアルコールの揮発性を抑制する効果がある。この揮発抑制効果とあわせて、揮発性アルコールよってアルコールは3wt%以下であると真空引き工程による品質安定性を保てる。
インク中に揮発性アルコールを添加するだけでは、インクの乾燥速度が速すぎてノズル表面が乾燥し、ノズルにキャップをしていても数十分放置したレベルですぐにノズル抜けが発生してしまう。揮発性アルコールと脂肪酸を同時添加することで、インクの乾燥速度を速くすることなく、揮発性アルコールの乾燥速度を脂肪酸が抑制しながら、アルコールが揮発することで脂肪酸をすばやく表面に析出させることができる。
また、インクは製造工程の最後に脱気工程(真空引き工程)があることが多い。なぜならインクジェット式記録装置用インクは、気泡発生が悪影響を及ぼすことが多いからである。そのため、揮発性アルコール添加量が多いとアルコールが蒸発して組成ばらつきが発生し、インクの品質安定性に悪影響を及ぼす。
脂肪酸には、このアルコールの揮発性を抑制する効果がある。この揮発抑制効果とあわせて、揮発性アルコールよってアルコールは3wt%以下であると真空引き工程による品質安定性を保てる。
(7)脂肪酸の親油性と、金属脂肪酸や脂肪酸エステルについて
上記効果を発現するには、脂肪酸は水への溶解性が高くないことが必要である。金属脂肪酸のように水への溶解性が高くてはサテライト抑制の添加効果が小さい。また、金属脂肪酸や脂肪酸エステルは表面張力が低く、サテライト抑制効果は小さい。
上記効果を発現するには、脂肪酸は水への溶解性が高くないことが必要である。金属脂肪酸のように水への溶解性が高くてはサテライト抑制の添加効果が小さい。また、金属脂肪酸や脂肪酸エステルは表面張力が低く、サテライト抑制効果は小さい。
(8)脂肪酸の酸化安定性
多くの不飽和脂肪酸は酸化されやすい。それは2重結合が2つ以上あって、2重結合に挟まれたメチレン水素が引き抜かれて容易に酸化されるからである。リノール酸やリノレイン酸がそれに当てはまる。2重結合が1つの不飽和脂肪酸は、メチレン水素がないため大幅に酸化安定性がある。オレイン酸がそれに当てはまる。2重結合をもたない飽和脂肪酸はさらに酸化安定性がある。
多くの不飽和脂肪酸は酸化されやすい。それは2重結合が2つ以上あって、2重結合に挟まれたメチレン水素が引き抜かれて容易に酸化されるからである。リノール酸やリノレイン酸がそれに当てはまる。2重結合が1つの不飽和脂肪酸は、メチレン水素がないため大幅に酸化安定性がある。オレイン酸がそれに当てはまる。2重結合をもたない飽和脂肪酸はさらに酸化安定性がある。
(9)脂肪酸の融点
脂肪酸がノズル面上に析出した場合、脂肪酸が液体であると、ノズル詰りの確率が低下する。常温で、液体で2重結合が1つ以下の脂肪酸としてはオレイン酸がある。酸化安定性のある飽和脂肪酸は常温で固体のものが多くインク中への添加には向かないものが多い。よって、上記脂肪酸はオレイン酸であることが好まれる。
脂肪酸がノズル面上に析出した場合、脂肪酸が液体であると、ノズル詰りの確率が低下する。常温で、液体で2重結合が1つ以下の脂肪酸としてはオレイン酸がある。酸化安定性のある飽和脂肪酸は常温で固体のものが多くインク中への添加には向かないものが多い。よって、上記脂肪酸はオレイン酸であることが好まれる。
(10)超浸透インク
印字媒体への着弾後の浸透性は、表面ではなくインク全体の表面張力が支配的になりインクの超浸透性を維持でき、インクの速乾性を維持できる。
印字媒体への着弾後の浸透性は、表面ではなくインク全体の表面張力が支配的になりインクの超浸透性を維持でき、インクの速乾性を維持できる。
以上のように、本発明によれば、サテライトの発生を抑制し、高速で高品質の画像を形成することが可能となる。
1…プリンター(インクジェット式記録装置)、2…記録ヘッド(インクジェットヘッド)、6…記録紙(記録媒体)
Claims (8)
- 記録媒体に対し0.5m/s以上の相対速度で移動しながら水性インクを噴射するインクジェットヘッドを備え、
前記水性インクに、脂肪酸、及び、該脂肪酸を乳化して水中に分散させると共に20℃において水よりも蒸気圧の高い揮発性アルコール、が添加されていることを特徴とするインクジェット式記録装置。 - 前記脂肪酸は、20℃において前記水性インクよりも表面張力が高いことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット式記録装置。
- 前記脂肪酸の表面張力は、20℃においてセルロースの臨界表面張力よりも低いことを特徴とする請求項2に記載のインクジェット式記録装置。
- 前記脂肪酸は、20℃において前記水性インクよりも粘度が高いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット式記録装置。
- 前記脂肪酸のHLB値は、3よりも低いことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェット式記録装置。
- 前記揮発性アルコールは、20℃において前記水性インクよりも粘度が低いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクジェット式記録装置。
- 前記脂肪酸は、オレイン酸であり、
前記揮発性アルコールは、エタノールであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のインクジェット式記録装置。 - 前記水性インクに、前記脂肪酸としてオレイン酸が0.05wt%以上3.00wt%以下、前記揮発性アルコールとしてエタノールが0.05wt%以上3.00wt%以下、添加されていることを特徴とする請求項7に記載のインクジェット式記録装置。
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