JP2011193622A - 積層コア - Google Patents
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Abstract
【課題】絶縁膜がリン酸塩やクロム酸塩等を含有する場合に生じる問題を解消することができる積層コアを提供する。
【解決手段】積層コア1は、積層された電磁鋼板11を備え、電磁鋼板11間には絶縁膜12が形成されている。絶縁膜12は、DLCおよびフラーレンのうちの少なくとも一つからなるから、低温形成が可能となる。絶縁膜12形成時の冷却工程を大幅に低減することができる。絶縁膜12は、有害物質を含有しないから、環境負荷の観点から、使用が制限されることはない。絶縁膜12の熱伝導性が良いから、積層コアが組み込まれたモータの使用時、積層方向への熱伝導性が良くなる。電磁鋼板11に打抜き加工を行う場合、打抜き加工性が良い。絶縁膜12の基板追従性が良い。積層コア1に電磁コイルの巻き線を行った場合、電磁コイルの絶縁被覆の破壊を防止することができる。
【選択図】図1
【解決手段】積層コア1は、積層された電磁鋼板11を備え、電磁鋼板11間には絶縁膜12が形成されている。絶縁膜12は、DLCおよびフラーレンのうちの少なくとも一つからなるから、低温形成が可能となる。絶縁膜12形成時の冷却工程を大幅に低減することができる。絶縁膜12は、有害物質を含有しないから、環境負荷の観点から、使用が制限されることはない。絶縁膜12の熱伝導性が良いから、積層コアが組み込まれたモータの使用時、積層方向への熱伝導性が良くなる。電磁鋼板11に打抜き加工を行う場合、打抜き加工性が良い。絶縁膜12の基板追従性が良い。積層コア1に電磁コイルの巻き線を行った場合、電磁コイルの絶縁被覆の破壊を防止することができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、絶縁膜を間にして電磁鋼板が積層された積層コアに係り、特に、絶縁膜の改良に関する。
積層コアは、たとえばモータ用コア材として使用されている。積層コアの形成では、電磁鋼板表面に絶縁膜を被覆し、絶縁膜が被覆された電磁鋼板に打抜き加工を行い、その加工後の電磁鋼板を積層している。
絶縁膜には、渦電流を抑制する絶縁性に加えて、耐食性、耐熱性、すべり性、電磁鋼板との密着性、打抜き性、溶接性、皮膜柔軟性等の各種特性が要求されている。たとえば電磁鋼板として方向性電磁鋼板を用いる場合、絶縁膜は、下地層(フォルステライト層)とリン酸塩層とから構成されている。
この場合、下地層は、仕上げ焼鈍中、鋼板同士の密着防止のために塗布されるMgOと脱炭焼鈍工程で形成されるSiO2との化学反応により生成され、リン酸塩層は、リン酸塩等を主成分とする液を方向性電磁鋼板に塗布して、その塗布液の焼付けを行うことにより形成される。特に、鋼板への張力付与により磁壁移動を容易にして磁気特性の向上を図るとき、絶縁膜に高い張力を持たせるために、リン酸塩にクロム酸塩等を含有させている(たとえば特許文献1,2)。
また、電磁鋼板として無方向性電磁鋼板を用いる場合には、打抜き性や耐熱性の観点から、有機−無機系の絶縁膜が用いられており、無機組成物として、方向性電磁鋼板と同様にクロム酸塩やリン酸塩が用いられている。
しかしながら、リン酸塩やクロム酸塩等を含有する絶縁膜の形成では、乾燥あるいは焼付けを200℃〜500℃の高温で行うため、大型の乾燥炉および大型の生産設備が必要となり、生産性が悪い。また、クロム等を含有する化合物の使用は、環境負荷の観点から、たとえばRoHS指令により制限されている。さらに、電磁鋼板間の絶縁膜はセラミックスからなるため、積層方向への熱伝導性が悪く、放熱し難い。
加えて、方向性電磁鋼板を用いる場合、仕上げ焼鈍中に形成される下地層は、セラミックスからなり、非常に硬い層である。このため、打抜き加工に使用する金型寿命が無方向性電磁鋼板を用いる場合と比較して、非常に短くなる。また、方向性電磁鋼板を用いる場合には、鋼板への張力付与では絶縁膜に高い張力が必要となるが、従来の絶縁膜はセラミックスからなるため、張力付与に限界があった。
したがって、本発明は、絶縁膜がリン酸塩やクロム酸塩等を含有する場合に生じる上記問題を解消することができる積層コアを提供することを目的とする。
本発明の積層コアは、積層された電磁鋼板と、電磁鋼板間に形成された絶縁膜とを備え、絶縁膜は、DLCおよびフラーレンのうちの少なくとも一つからなることを特徴としている。
本発明の積層コアでは、絶縁膜はDLCおよびフラーレンのうちの少なくとも一つからなるから、絶縁膜の低温形成が可能となり、そのための大型設備が不要となる。しかも、絶縁膜形成時の冷却工程を大幅に低減することができるから、生産性の向上を図ることができる。また、絶縁膜は、おもに炭素を主成分としており、有害物質を含有しないから、環境負荷の観点から、使用が制限されることはない。
また、絶縁膜の上記材質の熱伝導性が良いから、積層コアが組み込まれたモータの使用時、積層方向への熱伝導性が良くなり、放熱を容易に行うことができる。積層コアの製造において電磁鋼板へに絶縁膜の形成後に電磁鋼板に打抜き加工を行う場合、打抜き加工性が良い。これにより、打抜き加工用の金型の長寿命化を図ることができ、打抜き加工で発生するプレス部品のカエリを小さくすることができる。また、絶縁膜の基板追従性が良いから、鋼板への張力付与時に絶縁膜の絶縁性低下の原因となるクラックの発生を防止することができる。
さらに積層コアの垂直方向両端部の電磁鋼板の表面が絶縁膜で被覆されるから、積層コアに電磁コイルの巻き線を行った場合、電磁コイルの絶縁被覆の破壊を防止することができる。
本発明の積層コアは種々の構成を用いることができる。たとえば、電磁コイルの巻き線が行われる電磁鋼板が露出している部分(たとえば電磁鋼板の端部)に上記絶縁膜と同じ材質からなる他の絶縁膜が形成されている態様を用いることができる。この態様では、電磁鋼板の水平方向端部を他の絶縁膜で被覆することができるので、電磁コイルの絶縁被覆の破壊を効果的に防止することができる。
また、積層方向において中央部から端部に向かうに従って、水平方向長さが小さくなるような断面形状を有する態様を用いることができる。この態様では、電磁鋼板の水平方向端部のエッジを絶縁膜で被覆することができるので、巻き線時に電磁コイルが接触するエッジ部を絶縁膜で被覆することができ、その結果、電磁コイルの絶縁被覆の破壊を効果的に防止することができる。さらに、DLCに含有される水素量が20at%以上である態様を用いることができる。この態様では、絶縁膜の基板追従性がさらに良いから、鋼板への張力付与時に絶縁膜の絶縁性低下の原因となるクラックの発生を効果的に防止することができる。
本発明の積層コアによれば、モータの使用時の放熱を容易に行うことでき、かつ電磁コイルの絶縁被覆の破壊を防止することができる。また、積層コアの製造では、絶縁膜形成のために大型設備が不要となるとともに、生産性の向上を図ることができる。環境負荷の観点から、絶縁膜の材料の使用が制限されることはない。打抜き加工用の金型の長寿命化を図ることができ、打抜き加工で発生するプレス部品のカエリを小さくすることができ、鋼板への張力付与時に絶縁膜の絶縁性低下の原因となるクラックの発生を防止することができる。
(1)第1実施形態
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る積層コア1の概略構成を表す側断面図である。積層コア1は、積層された電磁鋼板11を備え、電磁鋼板11間には絶縁膜12が形成されている。また、電磁鋼板11が露出している部分(たとえば電磁鋼板11の端部)に絶縁膜12と同じ材質からなる絶縁膜が形成されていることが好適である。
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る積層コア1の概略構成を表す側断面図である。積層コア1は、積層された電磁鋼板11を備え、電磁鋼板11間には絶縁膜12が形成されている。また、電磁鋼板11が露出している部分(たとえば電磁鋼板11の端部)に絶縁膜12と同じ材質からなる絶縁膜が形成されていることが好適である。
絶縁膜12は、DLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン(Diamond-Like Carbon))およびフラーレンのうちの少なくとも一つからなる。具体的には、絶縁膜12は、フラーレン膜、DLC膜、フラーレン含有DLC膜、あるいは、それら膜の混合膜である。
フラーレンは、フラーレン単体、化学修飾がなされた化学修飾フラーレン単体、あるいは、それらの混合体である。フラーレン単体としては、たとえばC60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94、C96等の単体あるいはそれらの混合体が挙げられる。この場合、フラーレン単体には、C100以上の高次フラーレンが含まれていてもよい。化学修飾フラーレン単体は、C60Fx等の単体あるいはそれらの混合体が挙げられる。フラーレンの転動作用を利用する場合には、フラーレンとして、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94、C96を用いることが好適である。
絶縁膜12としてフラーレン膜を用いる場合、フラーレン膜の膜厚は特に限定されるものではないが、0.7nm〜100μmの範囲内が好適である。膜厚が0.7nm未満の場合、最小フラーレン分子の直径以下となるため、良好な絶縁性を得ることができない。膜厚が100μm超の場合、フラーレン分子が凝集し、凝集塊となるため、均一な皮膜を得ることができない。
絶縁膜12としてフラーレン含有DLC膜を用いる場合、フラーレン含有DLC膜の膜厚は特に限定されるものではないが、1nm〜100μmの範囲内が好適である。膜厚が1nm未満の場合、均一な膜を形成することができず、良好な絶縁性を得ることができない。膜厚が100μm超の場合、フラーレン含有DLC膜が形成された電磁鋼板の絶縁性が高くなり、CVD成膜の際に生じる電子が滞留し、電磁鋼板11周辺の電位が不安定となるため、膜質が不均一となる。
DLC膜およびフラーレン含有DLC膜では、たとえば30W/(m・K)程度の高い熱伝導性を有することができるから、積層コア1の積層方向への熱拡散が大きくなる。フラーレン膜は、所望の絶縁性を得るための膜厚は非常に薄いから、電磁鋼板11間に介在していることの影響は小さい。これにより、積層コア1が適用されたモータの使用時に放熱を容易に行うことできる。
上記構成を有する積層コア1の製造方法について説明する。まず、電磁鋼板11を準備する。電磁鋼板11は、製鋼、熱延、焼鈍、冷延、および焼鈍を行う(必要に応じてさらに焼鈍を行う)ことにより形成された所定の板厚を有する電磁鋼板である。次いで、電磁鋼板11の表面に絶縁膜12を均一に形成する。
絶縁膜12としてフラーレン膜を用いる場合、電磁鋼板11表面へのフラーレンの被覆では、揮発しやすい溶剤にフラーレンを溶解させ、フラーレン溶液を作製して電磁鋼板11表面に均一コーティングを行う。溶剤は、特に限定はされないが、フラーレンが溶解する非極性溶媒やベンゼン系溶媒等である。非極性溶媒を用いる場合、フラーレンの非極性溶媒への溶解後、その非極性溶媒を揮発性の高い極性溶媒と混合してもよい。なお、フラーレンとして化学修飾フラーレンを用いる場合、化学修飾フラーレンは極性溶媒にも溶解するから、溶媒の非極性・極性は限定されない。
フラーレン溶液のコーティング手法としては、スプレー方式や、どぶ付け方式、滴下方式等が挙げられる。この場合、密着性を高めるために、アクリルやエポキシ等の有機物質をフラーレン溶液に混合してもよい。この手法では、揮発性の高い溶剤を使用することにより、常温での絶縁膜12の形成が可能となる。
絶縁膜12としてフラーレン膜とDLC膜との混合膜を用いる場合、フラーレン膜の上記被覆手法と、DLC膜の下記被覆手法を組み合わせる。DLC膜の被覆では、特にその手法は限定されるものではないが、熱CVD法や、プラズマCVD法、光CVD法、触媒化学気相成長法(Cat-CVD)、常圧CVD、真空蒸着法 、イオンプレーティング(直流励起、高周波励起)、スパッタ法(2極スパッタ、マグネトロンスパッタ、ECRスパッタ)、レーザーアブレーション法 、イオンビームデポジション 、イオン注入法等が挙げられる。それら手法のなかでは、低温での三次元成膜が可能なプラズマCVDおよび常圧CVDが好適である。たとえばプラズマCVDの場合を用いる場合、40℃〜100℃程度の低温での絶縁膜12の形成が可能となる。
絶縁膜12としてフラーレン含有DLC膜を用いる場合、DLC膜の上記被覆手法において、DLCの原材料あるいはターゲットにフラーレンを含有させておく。これにより、フラーレン含有DLC膜が得られる。
上記のような手法により電磁鋼板11表面に絶縁膜12が均一に形成される。また、絶縁膜12の低温形成が可能となり、そのための大型設備が不要となる。しかも、絶縁膜12の形成時の冷却工程を大幅に低減することができるから、生産性の向上を図ることができる。また、絶縁膜12は、DLCおよびフラーレンのうちの少なくとも一つからなり、おもに炭素を主成分とするから、環境への影響はない。
次いで、電磁鋼板11の所定領域X(図3)に打抜き加工を行う。ここで、絶縁膜12の材質として用いるDLCはすべり性に優れ、フラーレンは潤滑性に優れるから、絶縁膜12であるフラーレン膜、DLC膜、フラーレン含有DLC膜、あるいは、それら膜の混合膜により、打抜き加工性の向上を図ることができる。これにより、打抜加工用の金型の長寿命化を図ることができ、打抜き加工で発生するプレス部品のカエリを小さくすることができる。また、DLC膜あるいはフラーレン含有DLC膜では、微細クラックが生じることにより、電磁鋼板11に追従することができる。また、フラーレン膜では、フラーレン分子同士は分子間結合であるから、電磁鋼板11への追従性が良い。したがって、電磁鋼板11への張力付与時に絶縁膜の絶縁性低下の原因となるクラック発生を防止することができる。
特に、DLC膜あるいはフラーレン含有DLC膜に含有される水素量が、20at%以上である場合、電磁鋼板11への絶縁膜12の追従性がより良くなるから、クラックの発生の防止を効果的に得ることができる。なお、打抜き加工では、打抜き加工に用いる打抜き冶具に絶縁膜12と同様な材質からなる絶縁膜を被覆してもよい。
次いで、絶縁膜12が形成された電磁鋼板11を積層して、積層された電磁鋼板11を固定することにより、積層コア1が得られる。続いて、積層コア1に電磁コイル(図示略)の巻き線を行う。
ここで、積層コア1の上面および下面に位置する電磁鋼板11の表面を、すべり性あるいは潤滑性の良い絶縁膜12で被覆しているから、そこに当接する電磁コイルの絶縁被覆の破壊を防止することができる。特に、積層コア1の側面部において電磁鋼板11が露出している部分に絶縁膜12と同じ材質からなる絶縁膜を形成することにより、そこに当接する電磁コイルの絶縁被覆の破壊を防止することができる。
本実施形態では、モータの使用時の放熱を容易に行うことでき、かつ電磁コイルの絶縁被覆12の破壊を防止することができる。また、積層コア1の製造では、絶縁膜12の形成のために大型設備が不要となるとともに、生産性の向上を図ることができる。環境負荷の観点から、絶縁膜12の材料の使用が制限されることはない。また、打抜き加工用の金型の長寿命化を図ることができる。また、打抜き加工で発生するプレス部品のカエリを小さくすることができ、鋼板への張力付与時に絶縁膜12の絶縁性低下の原因となるクラックの発生を防止することができる。
(2)第2実施形態
図2は、本発明の第2実施形態の積層コア2の概略構成を表す側断面図である。積層コア2は、積層方向において中央部から端部に向かうに従って、水平方向長さが小さくなるような断面形状を有することのみが積層コア1と異なり、それ以外は積層コア1と同様である。
図2は、本発明の第2実施形態の積層コア2の概略構成を表す側断面図である。積層コア2は、積層方向において中央部から端部に向かうに従って、水平方向長さが小さくなるような断面形状を有することのみが積層コア1と異なり、それ以外は積層コア1と同様である。
電磁鋼板11の打抜き加工では、図3に示す所定領域Xの大きさを適宜変更することにより、積層コア2に用いられる各種サイズの電磁鋼板11が得られる。積層コア2の中央部に位置する電磁鋼板11では、その上面および下面に絶縁膜12を形成してもよい。
積層コア2では、第1実施形態の積層コア1の上記効果に加えて、次の効果を得ることができる。積層コア2では、電磁鋼板11の水平方向端部のエッジを絶縁膜12で被覆することができるので、巻き線時に電磁コイルが接触するエッジ部を絶縁膜12で被覆することができる。その結果、電磁コイルの絶縁被覆の破壊を効果的に防止することができる。
以下、具体的な実施例を参照して本発明の実施形態をさらに詳細に説明する。実施例では、各種絶縁膜で被覆した電磁鋼板の特性について調べた。
(1)試料の準備
試料11〜13および比較試料11では、電磁鋼板として長さが0.35mmである無方向性電磁鋼板(材質:Fe−Si)を用いた。試料11の作製では、密着性を高めるためにスパッタによりSi下地層を電磁鋼板表面にコーティングした後、プラズマCVDによりDLC膜(膜厚約1μm程度)を形成した。
試料11〜13および比較試料11では、電磁鋼板として長さが0.35mmである無方向性電磁鋼板(材質:Fe−Si)を用いた。試料11の作製では、密着性を高めるためにスパッタによりSi下地層を電磁鋼板表面にコーティングした後、プラズマCVDによりDLC膜(膜厚約1μm程度)を形成した。
試料12の作製では、C60,C70の混合体からなるフラーレンを1,24-トリメチルベンゼン(溶解度17.9mg/ml)に溶解した後、その溶液を揮発性の高いエタノールと混合し、所定量のフラーレン溶剤を作製した。フラーレン溶剤を電磁鋼板に塗布し、自然乾燥によフラーレン膜を形成した。試料13の作製では、試料11と同様な手法で電磁鋼板にDLC膜を形成した後、試料12と同様な手法でフラーレン膜を形成した。比較試料11として、従来技術の手法でリン酸塩膜で被覆された電磁鋼板を用いた。試料11〜13および比較試料11の絶縁膜形成温度は表1に示している。
(2)試料の特性
試料11〜13および比較試料11について、絶縁抵抗率、熱伝導率、静摩擦係数、および、絶縁膜の柔軟性(追従性)について調べた。絶縁抵抗率測定では、4探針法を用い、鋼板の絶縁膜表面の測定対象とした。熱伝導率測定では、各試料について径が10mmとなるように加工したものを3枚積層し、積層体(全体厚さ1.05mm)を得、レーザーフラッシュ法により積層体の熱伝導率を得た。静摩擦係数測定では、傾斜方式静摩擦測定機を用いて、相手材を10mm×10mmの超硬片を用いて、電磁鋼板の絶縁膜の静摩擦係数を得た。この場合、接触子の重量を200g、 測定時間を約10secに設定した。絶縁膜の柔軟性は、電磁鋼板に90°曲げを行い、そのときの電磁鋼板端部の絶縁膜の絶縁性の低下の程度を得、それに基づきクラックの有無の判断を行った。その結果を表1に示す。表1では、各特性のデータは、試料11のデータを基準(=1)として示している。表1には、絶縁膜の形成温度を併記している。
試料11〜13および比較試料11について、絶縁抵抗率、熱伝導率、静摩擦係数、および、絶縁膜の柔軟性(追従性)について調べた。絶縁抵抗率測定では、4探針法を用い、鋼板の絶縁膜表面の測定対象とした。熱伝導率測定では、各試料について径が10mmとなるように加工したものを3枚積層し、積層体(全体厚さ1.05mm)を得、レーザーフラッシュ法により積層体の熱伝導率を得た。静摩擦係数測定では、傾斜方式静摩擦測定機を用いて、相手材を10mm×10mmの超硬片を用いて、電磁鋼板の絶縁膜の静摩擦係数を得た。この場合、接触子の重量を200g、 測定時間を約10secに設定した。絶縁膜の柔軟性は、電磁鋼板に90°曲げを行い、そのときの電磁鋼板端部の絶縁膜の絶縁性の低下の程度を得、それに基づきクラックの有無の判断を行った。その結果を表1に示す。表1では、各特性のデータは、試料11のデータを基準(=1)として示している。表1には、絶縁膜の形成温度を併記している。
表1から判るように、熱伝導率および絶縁膜の柔軟性について、試料11〜13は、比較試料11のものと比較して向上した。その結果、電磁鋼板の絶縁膜としてDLCおよびフラーレンのうちの少なくとも一つからなる絶縁膜を用いることにより、熱伝導率および絶縁膜の柔軟性の向上を図ることができることを確認した。また、絶縁膜の静摩擦係数について、試料11〜13は、比較試料11のものと比較して小さくなることを確認した。その結果、電磁鋼板の絶縁膜としてDLCおよびフラーレンのうちの少なくとも一つからなる絶縁膜を用いることにより、打抜き加工性の向上を図ることができることを確認した。
1,2…積層コア、11…電磁鋼板、12…絶縁膜
Claims (6)
- 積層された電磁鋼板と、
前記電磁鋼板間に形成された絶縁膜とを備え、
前記絶縁膜は、DLCおよびフラーレンのうちの少なくとも一つからなるを特徴とする積層コア。 - 前記電磁鋼板の端部に前記絶縁膜と同じ材質からなる他の絶縁膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の積層コア。
- 積層方向において中央部から端部に向かうに従って、水平方向長さが小さくなるような断面形状を有することを特徴とする請求項1または2に記載の積層コア。
- 前記DLCに含有される水素量が、20at%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層コア。
- 前記絶縁膜はフラーレン膜であり、その膜厚は0.7nm〜100μmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層コア。
- 前記絶縁膜はフラーレン含有DLC膜であり、その膜厚は1nm〜100μmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層コア。
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