以下、図を参照しながら本発明による実施形態の液晶表示装置およびその駆動方法を説明する。
まず、従来の典型的な液晶表示装置の駆動方法を図1(a)および(b)を参照しながら説明する。
図1(a)は従来の典型的な液晶表示装置10の1画素の構成を模式的に示している。この画素は、液晶層11と、液晶層11に電位を与えるための一対の電極(画素電極12および対向電極14)から構成される液晶容量10aを有している。画素電極12には階調電圧発生回路16から所定の階調電圧(V_sig)が供給され、対向電極14には対向電圧発生回路18から対向電圧が供給される。
なお、アクティブマトリクス型液晶表示装置では、一般に、それぞれの画素は、液晶容量10aの電圧を保持するための補助容量、及びTFT等のアクティブ素子を有するが、
ここでは省略している。また、図1(a)において、画素電極12および対向電極14が、液晶層11を介して互いに対向する平行平板構造を有するように示しているが、上述したIPSモードの液晶表示装置のように、画素電極12と対向電極14とが同一の基板上に形成された櫛型電極構造をとっても良い。
図1(b)は、画素電極12に印加される階調電圧V_sigの波形、対向電極14に印加される対向電圧V_comの波形および液晶容量10aに印加される電圧V_LCの波形を模式的に示した図である。
階調電圧V_sigは、表示すべき輝度(階調)に応じた振幅(V_sigpp)を有し、且つ垂直走査時間(ここではフレーム時間Tf)の2倍の周期で振動する矩形波である。対向電圧V_comは、表示の輝度によらず、また時間軸に対しても一定の値を有する直流電圧である。対向電圧V_comは液晶容量10aに印加される電圧V_LCの平均値V_LCaveが0Vとなるように設定してある。従って、液晶容量10a(液晶層11)に印加される電圧V_LC(=V_sig−V_com)の実効値V_LCrmsは、その実効値が階調電圧のV_sigの振幅V_sigppの1/2で、その周期がTfの2倍の矩形波となる。従って、従来の典型的な液晶表示装置の場合、液晶容量10aに印加される電圧V_LCの実効値V_LCrmsは、表示する階調によらず、すなわち黒から白までの全ての階調に亘ってV_sigppの1/2となる。
なお、液晶容量10aに印加される電圧V_LCをTfの2倍の周期で振動する矩形波とし、Tf毎に極性が反転するようにするのは、液晶表示装置の信頼性の観点からの要求であり、極性反転の間隔(=反転周期の2分の1)を垂直走査時間(例えば、フレーム時間(概ね16.7ms))に設定するのが一般的である。
本明細書において、「垂直走査時間」とは、ある走査線が選択され、次にその走査線が選択されるまでの時間と定義することにする。1垂直走査時間は、ノンインターレース駆動においては1フレーム時間であり、インターレース駆動においては1フィールド時間に対応する。また、各垂直走査時間内において、ある走査線を選択する時刻と、その次の走査線を選択する時刻との差(時間)を1水平走査時間(1H)という。
次に、図2を参照しながら、本発明による実施形態の液晶表示装置20の構成およびその駆動方法を説明する。
図2(a)は液晶表示装置20の1画素の構成を模式的に示している。図1(a)に示した構成要素と実質的に同じ構成要素は共通の参照符号で示し、ここでは説明を省略する。液晶表示装置20は、振動電圧発生回路17をさらに有している点において、図1(a)に示した液晶表示装置10と異なっている。
液晶表示装置20において、振動電圧発生回路17で生成された振動電圧Vaddは、画素電極12に印加される。従って、画素電極12には、階調電圧発生回路16から所定の階調電圧V_sigが印加されるとともに、振動電圧Vaddが印加される。なお、図2(a)においては、振動電圧発生回路17の出力が画素電極12に直接入力される構成を示しているが、後述するように、画素電極12に補助容量が接続されている場合には、補助容量を構成する電極に振動電圧を印加することによって、補助容量を介して画素電極12に間接的に振動電圧を印加してもよい。
階調電圧発生回路16および対向電圧発生回路18は、図2(b)に示すように、それぞれ図1(b)と同様の、階調電圧V_sigおよび対向電圧V_comを出力する。
振動電圧発生回路17が出力する振動電圧Vaddは、表示の輝度(階調)によらず、一定の振幅Vaddppを有し、振動の平均電圧Vaddaveは0Vであり、Taddの2倍の周期で振動する矩形波である。ここで、TaddはTfよりも短い時間とする。表示の均一性の観点からTaddはTfの整数分の1、即ちTadd=Tf/2,Tf/3,Tf/4,・・・Tf/k(k=自然数)であることが好ましく、k>100がさらに好ましい。
画素電極12に階調電圧V_sigおよび振動電圧Vaddが印加され、対向電極14に対向電圧V_comが印加される結果、液晶容量10aに印加される電圧は振動の振幅がV_sigpp、振動の周期が2倍のTf、実効値がV_sigppの1/2の矩形波(図1で示した典型的な液晶表示装置10と同様の電圧)に、振動振幅Vaddpp、振動の周期が2倍のTaddのVaddが重畳した電圧となる。
従って、本実施形態の液晶表示装置20においては、V_sigppの値がゼロのときでも液晶容量10aに印加される電圧V_LCの実効値はゼロとはならず、振動電圧の振幅Vaddppの1/2(すなわち、Vaddrms)となる。
また、階調電圧発生回路16が出力する階調電圧(1/2)×V_sigppが振動電圧の実効値Vaddrmsに比べて大きくなればなるほど、液晶容量10aに印加される電圧の実効値V_LCrmsは階調電圧(1/2)×V_sigppの値に近づく。すなわち、階調電圧((1/2)×V_sigpp)の値が小さい領域では階調電圧の値の変化に対する液晶容量10aに印加される実効的な電圧V_LCrmsの変化量が小さくなる。これが本発明の作用の本質であり、従来の典型的な液晶表示装置と本質的に異なる点である。
次に、図3(a)および(b)を参照しながら、本発明による他の実施形態の液晶表示装置30の構成と動作を説明する。
液晶表示装置30は、振動電圧発生回路17の出力が対向電極14に供給される構成を有している。階調電圧発生回路16、振動電圧発生回路17および対向電圧発生回路18が出力する電圧は、図3(b)に示すように、図2(b)と同じである。
液晶表示装置20では振動電圧Vaddが画素電極12に印加されたのに対し、液晶表示装置30では、対向電極14に印加されるが、画素電極12と対向電極14はいずれも液晶容量10aを構成する電極であるので、液晶容量10aに印加される電圧V_LCの波形は、図3(b)に示すように、図2(b)と実質的に同じになり、図2(b)の構成の場合に得られた本発明の本質的な作用が得られる。
次に、図4および図5を参照しながら、振動電圧Vaddを液晶容量10aに付加的に(重畳的に)印加することによって得られる作用・効果を説明する。
図4は、Vaddrmsの値をパラメータとして、液晶容量10aに印加される電圧V_LCrmsの階調電圧依存性を示すグラフである。なお、グラフの横軸は階調電圧((1/2)×V_sigpp)である。Vaddrmsの値は0Vrms<A Vrms<B Vrms<C Vrmsの4条件とした。A、BおよびCの実効値(Vrms)は、ここでは1.5Vrms、2.0Vrms、2.5Vrmsとした。上述したように、V_LCrmsの値は、階調電圧(1/2)×V_sigppが0VときのVaddrmsの値に等しい。また、階調電圧の値が大きくなるにつれて、V_LCrmsの値は階調電圧の値に近づく。
図4からわかるように、Vaddrmsの値が増大するに従って、低階調すなわち(1/2)×V_sigppの低電圧側で、階調電圧(1/2)×V_sigppの変化量に対するV_LCrmsの変化量の比率(曲線の傾き)、すなわちΔV_LCrms/Δ(1/2)×V_sigppが小さくなっている。従来の液晶表示装置に対応する図4中のVaddrms=0Vrmsの直線と比較すると、振動電圧Vaddrmsを印加することによって、ΔV_LCrms/Δ(1/2)×V_sigppを小さくする効果が得られることがわかる。また、この効果の程度は、階調電圧(1/2)×V_sigppが低電圧側で顕著であることがわかる。
図5(a)および(b)は、Vaddrmsの値をパラメータとして、液晶表示装置の輝度(Y)の階調電圧依存性(V−Y特性)を示すグラフである。なお、グラフの横軸は階調電圧(1/2)×V_sigppである。図5(a)は、MVAモードやIPSモードなどのNBモードの液晶表示装置の特性を示し、図5(b)はTNモードなどのNWモードの液晶表示装置の特性を示す。なお、このV−Y特性を「液晶層の電気光学特性」ということもある。
図5(a)および(b)からわかるように、Vaddrmsの値が増大するに従って、階調電圧(1/2)×V_sigppの小さい側で(1/2)V_sigppの変化量に対する輝度Yの変化量の比率(曲線の傾き)、すなわちΔY/Δ(1/2)×V_sigppが小さくなっている。
まず、図5(a)を見ると、V−Y特性における閾値電圧Vth(輝度が上昇し始める電圧:Vadd=0Vrmsの場合、約2.2V)は、Vaddrmsの値が増加するに従って、低電圧側に移動する。Vaddrmsの値が、Vadd=0Vrmsのときの閾値電圧(約2.2V)を超えると、閾値電圧が消滅する(Vadd=C Vrmsの曲線を参照)。従って、VaddrmsがVadd=0VrmsのときのV−Y特性の閾値電圧Vthを超えると、階調電圧(1/2)×V_sigppの値を0Vとしても十分に低い輝度(黒表示)が得られず、表示のコントラスト比が著しく低下する。もちろん、Vaddrmsの値を適切に設定することにより、十分な表示のコントラスト比を維持しつつ、閾値電圧を十分に低くすることが可能である。Vaddの実効値は、V−Y特性の閾値電圧Vthの1/10以上1倍以下であることが好ましい。Vthの1/10未満であるとVaddを印加することによる効果が小さく、Vthを超えるとコントラスト比が低下する。
図5(b)は本発明をTNモードに適用した場合のV−Y特性である。Vaddの実効値が大きくなるに従って、V−Y特性が低電圧側に移動していることがわかる。即ち、本発明によれば低電圧で駆動可能な液晶表示装置が得られることができることがわかる。
次に、図6(a)から(c)および図7を参照しながら、低階調側での階調電圧((1/2)×V_sigpp)の変化量に対する輝度Yの変化量の比率(ΔY/Δ(1/2)×V_sigpp)を小さくすることによって、表示むらが低減されることを説明する。なお、表示むらの低減効果は、上述したように、NBモードの液晶表示装置において顕著なので、以下の説明では、NBモードの液晶表示装置について説明する。図6(a)は、図5(a)に示したVadd=B Vrms(本発明)とVadd=0Vrms(従来)の場合のV−Y特性を示すグラフである。
表示むら低減効果の評価は、任意の階調(N)を表示した状態の輝度Yに対する、その状態で階調電圧(1/2)×V_sigppが一定の変化(変化量:ΔV)をしたときの輝度の変化量ΔYとの比を指標として用いた。典型的な液晶表示装置の表示輝度(Y)の階調(N)依存特性は、図6(b)のように設定される。
液晶表示装置は、図6(a)に示すV−Y特性を有する場合、図6(b)表示輝度の階調依存性を得るために、図6(c)に示すように、階調Nに対して階調電圧の設定を行う。
ここで、任意の階調Nnを表示しているときに、液晶容量に印加される階調電圧が、所定の階調電圧VnからΔVだけ変動したとすると、表示の輝度はΔYだけ変化する。液晶容量に印加される階調電圧の変動量ΔVは、階調電圧発生回路の精度、あるいは液晶表示装置のTFT素子の特性ばらつき等に起因して、即ち製造のばらつきに起因して発生する。
また、製造ばらつきによる変動量ΔVの値が同一であっても、液晶表示装置で観察される輝度むらは、液晶表示装置のV−Y特性によって異なる。具体的には、図6(c)の階調電圧(1/2)×V_sigppの表示諧調依存性が急峻になるにつれて、即ち輝度(Y)の階調電圧((1/2)×V_sigpp)依存性が緩やかになるにつれて、ΔYの値は小さくなり、表示むらが低減される。本発明の実施形態の液晶表示装置は、図6(a)に示したように、表示輝度の階調電圧依存特性を緩やかにする効果を有しているので、その結果として直接的に表示むらを低減することが可能となる。
図7に本実施形態の液晶表示装置でVaddrmsの大きさをパラメータとし、上述の表示むら指標であるΔY/Yの階調(N)依存性を示す。図7は、表示諧調(N)を0から255までの256階調に設定し、階調電圧のばらつき幅ΔVを10mVとした場合である。図7からわかるように、従来の典型的な液晶表示装置の場合に対応するVadd=0Vrmsの場合、32階調付近でΔY/Y値が最大となっている。この結果は、実際に典型的な液晶表示装置を目視で観測した場合の主観評価の結果とも一致しており、表示むらの評価の指標としてΔY/Y値が有効であることが確認できる。
図7によればVaddの値が増加するのに従って、ΔY/Yの値が減少しており、表示むらが改善されていることがわかる。具体的には、Vadd=B Vrms=2.0VrmsのときのΔY/Yの最大値は、従来の液晶表示装置(Vadd=0Vrms)の値の1/3程度に改善されている。
上述したように、本発明の実施形態の液晶表示装置では、表示動作を行っている状態において、液晶容量に、振動電圧(Vadd)と、階調電圧((1/2)×V_sigpp)とが印加され、その結果、表示輝度の階調電圧依存性が改善される。なお、振動電圧は1垂直走査時間内に複数回振動する信号であればよい。液晶容量に印加する振動電圧は、液晶容量を構成する一対の電極(画素電極および対向電極)のいずれか一方に印加すればよく、画素電極に印加してもよいし、対向電極に印加してもよい。また、振動電圧を画素電極に印加する場合、振動電圧発生回路からの出力を画素電極に直接接続する必要は無く、例えば、画素毎にTFTなどのスイッチング素子が設けられ、液晶容量に電気的に接続された補助容量を有するアクティブマトリクス型液晶表示装置においては、補助容量を構成する電極に振動電圧を印加すればよい。
以下に、本発明による実施形態のアクティブマトリクス型液晶表示装置の構成と動作を説明する。
本発明による実施形態の典型的なアクティブマトリクス型液晶表示装置40の電気的な等価回路について図8を参照しながら説明する。
アクティブマトリクス型液晶表示装置40は、複数の画素を有し、それぞれの画素がT
FT素子(TFT_mn)と、液晶容量(CLC_mn)および補助容量(CCS_mn)とを有する。それぞれの画素の電気的な等価回路は略同等である。
TFT_mnを有する画素について説明する。TFT_mnのゲート端子はゲートバスライン(走査線)GBL_mに接続されており、ソース端子はソースバスライン(信号線)SBL_nに接続されている。TFT_mnのドレイン端子は、液晶容量CLC_mnを構成する一方の電極(画素電極PH_mn)と、補助容量CCS_mnを構成する一方の電極(補助容量電極CSH_mn)に接続されている。液晶容量CLC_mnを構成する他方の電極はComLC(液晶容量対向電極)に接続されている。補助容量CCS_mnを構成する他方の電極(補助容量対向電極)はCSバスラインCSBL_mに接続されている。対向電極ComLCは、典型的には全ての画素に対して共通に設けられ、すべての液晶容量CLC_mnを構成する上記液晶容量対向電極に実質的に同じ電圧を印加することができる。また、CSBL_mは、典型的には少なくとも行方向に対して共通の電極であり、各行の画素に属する補助容量CCS_mnを構成する上記補助容量対向電極に実質的に同じ電圧を印加することができる。
本実施形態のアクティブマトリクス形液晶表示装置40の各画素に振動電圧Vaddを印加する駆動方法を説明する。
液晶表示装置40では、CSバスラインCSBL_mまたはComLCの少なくとも一方に振動電圧を印加することによって、液晶表示装置40の各画素に振動振幅Vaddppの振動電圧Vaddを印加でき上述の効果を得ることができる。補助容量CCS_mnの補助容量対向電極に接続されているCSバスラインCSBL_mに振動電圧を印加する場合について説明する。
以下の説明では説明を簡略化するために、一つの液晶容量CLC_mnに限って、また1垂直走査時間に限って説明する。すなわち、以下の説明では1垂直走査時間に一つの液晶容量CLC_mnに印加される電圧VCLC_mnに振動電圧Vaddを重畳できることについての説明を行う。この説明に基づけば、複数の画素、複数の垂直走査時間、或いは典型的な液晶装置で用いられる各種反転駆動方法等に対応して、液晶容量に印加される電圧に振動電圧を重畳する方法を見出すことは容易である。
図9に、液晶表示装置40のソースバスラインSBL_n、ゲートバスラインGBL_m、CSバスラインCSBL_mに印加する各電圧の波形、および画素電極PH_mnに印加される電圧の波形を模式的に示す。図9の上段から、ソースバスラインSBL_nに印加する電圧の波形VSBL_n、CSバスラインCSBL_mに印加する電圧の波形VCSBL_m、ゲートバスラインGBL_mに印加する電圧の波形VGBL_m、及び画素電極PH_mnに印加される電圧の波形VPH_mnの順に示してある。また、各電圧の波形に破線で示してあるのは液晶容量対向電極ComLCに印加する電圧の波形VComLCである。
本実施形態では、液晶容量に印加される電圧VCLCに振動電圧Vaddを重畳するために、VCSBL_mを振動電圧(矩形波)としてある。振動電圧VCSBL_mの振動の振幅はVCSpp、振動の周期は1垂直走査時間よりも短い時間である。
時刻T1でVGSLがVgLからVgHに変化することにより、TFT_mnが導通状態(オン状態)となり、画素電極PH_mnにソースバスラインSBL_nの電圧VSBLt1が伝達され、液晶容量CLC_mn及び補助容量CCS_mnが充電される。よって、画素電極PH_mnの電圧VPH_mnは、
VPH_mn=VSBLt1
となる。
つづいて時刻T2のとき、ゲートバスラインGBL_mの電圧がVgHからVgLへ変化することにより、TFT_mnが非導通状態(OFF状態)となり、液晶容量CLC_mnおよび補助容量CCS_mnが、ソースバスラインSBL_nと電気的に絶縁される。なお、この直後アクティブマトリクス構造に起因する寄生容量等の影響により、VPH_mnは引き込み電圧Vdだけ低下し、
VPH_mn = VSBLt1− Vd
となる。
つづいて時刻T3のとき、補助容量CCS_mnに接続されたCSバスラインCSBL_mの電圧VCSBL_mがVCSppだけ低下する。このVCSBL_mの電圧変化に伴い、VPH_mnは、
VPH_mn = VSBLt1 − Vd − K × VCSpp
但し、K=CCS/(CLC+CCS)となる。
つづいて時刻T4では、VCSBL_mがVCSppだけ増加する。このVCSBL_mの電圧変化に伴い、VPH_mnは、
VPH_mn = VSBLt1 − Vd
となる。
時刻T5では、VCSBL_mがVCSppだけ低下する。このVCSBL_mの電圧変化に伴い、VPH_mnは、
VPH_mn = VSBL(T1)− Vd − K × VCSpp
となる。
従って、VPH_mnは時刻T3からT4の間は
VPH_mn = VSBLt1 − Vd − K × VCSpp
で、時刻T4からT5の間は
VPH_mn = VSBLt1 − Vd
である。
上記時刻T3〜T5のVPH_mnの電圧変化は次に画素が書き換えられるとき、すなわちT1に等価な時刻(T1から1垂直走査時間後の時刻)になるまで繰り返し継続する。よって、画素電極PH_mnに印加される電圧VPH_mnに振動電圧(Vadd)を重畳することが可能となり、アクティブマトリクス型液晶表示装置においても本発明の効果を得ることが可能となる。
液晶容量に印加される電圧に重畳される振動電圧について説明する。
画素電極PH_mnの電圧VPH_mnに重畳される振動電圧Vaddの振幅Vaddppは、前記時刻T3からT4の間のVPH_mnと時刻T4からT5の間のVPH_mnの電圧差であるから
Vaddpp = K × VCSpp
となる。画素電極PH_mnの電圧VPH_mnに重畳される振動電圧Vaddの振幅VaddppはCSバスラインCSBL_mの振動電圧VCSBL_mの振幅VCSppに比例している。尚、液晶容量CLC_mnに印加される電圧VCLC_mnは画素電極PH_mnの電圧VPH_mnから液晶容量対向電極ComLCの電圧VComLCを差し引いた電圧
VCLC_mn = VPH_mn − VComLC
となる。本実施形態ではVComLCは時間によらず一定の電圧値をとるように設定してある(図9に破線で示してある)。よって、液晶容量CLC_mnに印加される電圧VCLC_mnにも画素電極電圧VPH_mnに重畳される振動電圧Vaddと同一の振動電圧が重畳される。故に、VCLC_mnに重畳される振動電圧Vaddの振幅Vaddppもまた
Vaddpp = K × VCSpp
となる。
1垂直走査時間内での液晶容量CLC_mnの電圧VCLC_mnの平均値VCLCave_mnについて説明する。
典型的な液晶表示装置では垂直走査時間に比べて水平走査時間(時刻T1からT3の時間)が十分に短い、また本実施形態ではVCSBL_mの振動波形がデュティー比1:1の矩形波である、これらの点を考慮すれば、VPHave_mnは、略
VPHave_mn = VSBLt1− Vd − K × VCSpp / 2
となる。VPHave_mnはCSバスラインCSBL_mの電圧VCSBL_mの振幅VCSppに依存している。
今、VCSppが0ボルトとした場合のVPHave_mnをVPHaveR_mnとすれば、
VPHaveR_mn = VSBLt1 − Vd
となる。VPHaveR_mnを用いてVPHave_mnを書き改めれば
VPHave_mn = VPHaveR_mn − K × VCSpp / 2
となる。
上式右辺第2項は、1垂直走査時間内での画素電極電圧の平均値VPHave_mnの値がVCSppに依存して変化するときの変化量を示している。この変化量をEVPHave_mnとすれば、
EVPHave_mn = − K × VCSpp / 2
となる。
よって、VPHave_mnは
VPHave_mn = VPHaveR_mn + EVPHave_mn
但し、
VPHaveR_mn = VSBLt1 − Vd
EVPHave_mn = − K × VCSpp / 2
と書き改められる。
液晶容量CLC_mnに印加される電圧VCLC_mnは、画素電極PH_mnの電圧VPH_mnから液晶容量対向電極ComLCの電圧VComLCを差し引いた電圧である。液晶容量対向電極ComLCの電圧VComLCは図9に破線で示したようにVComLCは時間によらず一定の電圧値を示す。よって、1垂直走査時間内におけるVCLC_mnの平均値VCLCave_mnは
VCLCave_mn =
VSBLt1− Vd − K × VCSpp / 2 − VComLCとなる。上記関係式によればVCLCave_mnもVPHave_mn同様CSバスラインCSBL_mの振動電圧VCSBL_mの振幅VCSppに依存している。
ここで、前記VPHave_mnの場合と同様、VCSppが0ボルトとしたときのVCLCave_mnの値をVCLCaveR_mnとし、VCSppの値の変化に伴うVCLCave_mnの値の変化量をEVCLCave_mnとして、VCLCave_mnを書き改めれば、
VCLCave_mn = VCLCaveR_mn + EVCLCave_mn
但し、
VCLCaveR_mn = VSBLt1 − Vd − VComLC
EVCLCave_mn = − K × VCSpp / 2
となる。
ゲートバスラインの電圧とCSバスラインの電圧の振動のタイミングの変化が1垂直走査時間内の液晶容量CLC_mnに印加される電圧の平均値に与える影響について説明する。
図9では、時刻T3(TFT素子がオフ状態となった後、最初にCS・バスラインの電圧が変化する時刻)のときCSバスラインの電圧VCSBL_mがVCSppだけ低下している。これに対して、時刻T3でCSバスラインの電圧がVCSppだけ増加する場合について示す。図9を参照しつつ行った説明を基に時刻T3でVCSBL_mの電圧がVCSppだけ増加する場合のVCLCave_mn、VCLCaveR_mn、EVCLCave_mn及びVaddppを、それぞれVCLCave*_mn、VCLCaveR*_mn、EVCLCave*_mn及びVaddpp*とすれば(「*」を付記すれば)
VCLCave*_mn =
VCLCaveR*_mn + EVCLCave*_mn
VCLCaveR*_mn = VSBLt1− Vd − VComL
EVCLCave*_mn = K × VCSpp / 2
Vaddpp* = K × VCSpp
となる。
VCLCaveR_mn、EVCLCave_mnとVCLCaveR*_mn、EVCLCave*_mnとをそれぞれ比較すれば、
VCLCaveR_mn = VCLCaveR*_mn
EVCLCave_mn ≠ EVCLCave*_mn
である。
しかるに、
VCLCave_mn ≠ VCLCave*_mn
となる。
よって、1垂直走査時間内の液晶容量CLC_mnに印加される電圧の平均値は時刻T3でのCSバスライン電圧VCSBL_mの変化状態に依存して異なった値をとる。
ゲートバスラインの電圧とCSバスラインの電圧の振動のタイミングの変化が液晶容量に重畳される振動電圧の振幅の値に与える影響について説明する。
VaddppとVaddpp*を比較すれば、
Vaddpp = Vaddpp*
であり、液晶容量に重畳される振動電圧の振幅はCSバスライン電圧VCSBL_mの時刻T3での変化状態に依存せず同一の値をとる。
以上まとめると、図8及び図9で説明した駆動方法、具体的にはCSバスラインの電圧
を振動電圧とすることにより、TFT素子を用いたアクティブ・マトリックス駆動において液晶容量に印加される電圧に振動電圧を重畳できる。また、振動電圧が重畳されるのに伴って、垂直走査時間内に液晶容量に印加される電圧の平均値が変化する。さらに、垂直走査時間内に液晶容量に印加される電圧の平均値はゲートバスラインの電圧とCSバスラインの電圧の振動のタイミングに依存して変化する。
上述の説明では説明を簡略化するために一つの液晶容量CLC_mn関して、また1垂直走査時間に限って説明した。すなわち、1垂直走査時間に一つの液晶容量CLC_mnに振動電圧Vaddが重畳されること、及び振動電圧Vaddの重畳に伴い1垂直走査時間に液晶容量CLC_mnに印加される電圧の平均値VCLCave_mnが変化することに関する原理的説明であった。この説明に基づけば、複数の画素、複数の垂直走査時間、或いは典型的な液晶装置で用いられる各種反転駆動方法等に対応して、液晶容量に印加される電圧に振動電圧を重畳する方法を見出すことは容易に可能である。この際に注意しなければならないのは、複数の画素、或いは複数の垂直走査時間内において重畳される振動電圧の振幅(Vaddpp)、及び垂直走査時間内に液晶容量に印加される電圧の平均値(VCLCave)を同一とすることである。なぜなら、これらの値が画素毎、あるいは垂直走査時間毎に異なればそれに応じた輝度差(輝度ムラ、あるいはチラツキ)が発生してしまうからである。
前述の原理的な説明に基づけば、Vaddppを同一とするためにはソースバスライン電圧の振動の振幅を画素毎及び垂直走査時間毎にVCSppを一定とすれば良い。
VCLCaveを画素毎及び垂直走査時間毎に同一とするためには、VCSppを一定にするのに加えて、ゲートバスラインの電圧とCSバスラインの電圧の振動のタイミングにも注意する必要がある。図9に示したようにCSバスラインの電圧を矩形波で振動させる場合には、画素毎及び垂直走査時間毎に図9の時刻T3でCSバスラインの電圧の変化方向を統一しEVCLCave_mnの値を一定にする必要がある。ゲートバスラインを用いて書き込み画素をライン状に走査するアクティブマトリクス型液晶表示装置では、前記条件を満足するために、水平走査時間とCSバスラインの電圧の振動周期に一定の規則を満たす必要がある。
水平走査時間とCSバスラインの電圧の振動周期に関する規則について説明する。
図10から図12はVCSBLの振動状態と液晶容量CLCに印加される電圧VCLCとの関係を説明するための模式図である。
それぞれの図の上段には、第m行からm+7行までの行毎のゲートバスラインGBLの電圧VGBLの波形を示している。中段にはCSバスラインの電圧VCSBLの波形を示している。下段には上段のゲートバスラインのそれぞれに対応した行毎の液晶容量CLCの電圧VCLCの波形を模式的に示してある。さらに、VCLCの波形の右側にはEVCLCの値を、さらにその右にはVaddppの値を示してある。
図10では全ての行のCSバスラインに同一の振動電圧VCSBLtypeAを印加している。例えばゲートバスラインGBL_m、GBL_m+1、GBL_m+2、GBL_m+3、GBL_m+4、GBL_m+5、GBL_m+6に対応するCSバスラインにVCSBLtypeAを印加している。
VCSBLtypeAの振動の周期は水平走査時間の2倍(2H)であり、振動の振幅はVCSppである。図9の説明に基づけば、VCSBLtypeAの電圧波形の位相は、VCSBLtypeAの波形の平坦な部分で任意のVGBL波形がVgHからVgLに変化するように設定することが望ましい。図10では、製造上の問題等による波形の乱れを考慮し、VGBLの波形がVgHからVgLに変化する時刻をVCSBLtypeAの波形の立ち上がり時刻とその直後の立下り時刻の中間の時刻、あるいは、立下り時刻とその直後の立ち上がり時刻の中間の時刻に一致するように設定してある。
図10では、偶数行(m行、m+2行、m+4行、m+6行)と奇数行(m+1行、m+3行、m+5行、m+7行)とで、図9で説明した時刻T3でのVCSBLtypeAの電圧変化の方向(増加或いは低下)が異なる。それに伴い、偶数行と奇数行でVCLCの波形が異なる。
具体的には、偶数行のVCLCの電圧波形ではT3に等価な時刻でK×VCSppだけ電圧が低下し、その後1水平走査時間毎にK×VCSppだけ電圧が振動する。これに対して、奇数行ではT3に等価な時刻でK×VCSppだけ電圧が増加し、その後1水平走査時間毎にK×VCSppだけ電圧が振動する。
従って、偶数行ではEVCLCの値が「―K×VCSpp/2」であるのに対して奇数行ではEVCLCの値が「+K×VCSpp/2」となり、液晶容量に印加される電圧の平均値(VCLCave)の異なる行が混在する。
すなわち、図10に示す駆動方法用いた場合には、たとえば表示面全体に均一な輝度を表示しようとしても、偶数行と奇数行で輝度が異なる問題が発生する。
図11の駆動方法を用いると上記の問題を解決することができる。
図11の駆動方法では、2種類のCSバスライン電圧VCSBLtypeB1とVCSBLtypeB2を用い、CSバスラインに1行毎に順次切り替えて接続する。即ち、偶数行のCSバスライン(例えばゲートバスラインVGBL_m、VGBL_m+2、VGBL_m+4、VGBL_m+6に対応するCSバスライン)の電圧はVCSBLtypeB1とし、奇数行のCSバスライン(例えばゲートバスラインVGBL_m+1、VGBL_m+3、VGBL_m+5、VGBL_m+7に対応するCSバスライン)の電圧はVCSBLtypeB2とする。
2種類のCSバスライン電圧VCSBLtypeB1、VCSBLtypeB2の振動の周期はいずれも水平走査時間の2倍(2H)である。また、VCSBLtypeB2の振動はVCSBLtypeB1の振動から水平走査時間(1H)だけ遅れている。即ち、VCSBLtypeB1とVCSBLtypeB2の振動の位相差は1Hである。ゲートバスライン電圧の波形と各CSバスラインの電圧の振動波形の位相は図10と同様に、ゲートバスライン電圧がVgHからVgLに変化する時刻と、対応するCSバスラインの電圧の振動波形の平坦部分の時刻(好ましくは、平坦部分の中心の時刻)が一致するように設定してある。
2種類のCSバスライン電圧VCSBLtypeB1、VCSBLtypeB2の振動の振幅は同一の値VCSppである。
上述のようにCSバスラインの電圧を設定した図11の駆動方法では、各行の時刻T3に対応する時刻で、対応するCSバスラインの電圧がVCSppだけ減少している。よって、すべての行でEVCLCの値が同一値「―K×VCSpp/2」となる。ここで、K及びVCSppの値は全ての行で一定値となるように設定する。
よって、図10を用いて説明した駆動方法のように行毎にEVCLCの値が異なるとい
った問題は発生しない。
さらに、図11の駆動方法ではVaddppの値もすべての行で同一の値をとっている。
したがって、図11に示す駆動方法用では、図10を基に説明した駆動方法で生じた問題を解決しつつ液晶容量に振動電圧を印加することが可能となり、本発明の効果を得ることができる。
図12に示す駆動方法でも図11に示した駆動方法と同様、図10を参照して説明した駆動方法における問題を回避しつつ、本発明の効果を得ることができる。
図11に示す駆動方法ではCSバスラインの電圧として異なる2種類の振動電圧VCSBLtypeB1、VCSBLtypeB2を用いた。これに対して、図12に示す駆動方法では1種類の振動電圧VCSBLtypeCを用いて本発明の効果を得る。
図12の駆動法では全てのCSバスラインに同一のCSバスライン電圧VCSBLtypeCを印加する。
CSバスライン電圧VCSBLtypeCの振動の周期は水平走査時間(1H)である。ゲートバスライン電圧の波形とCSバスラインの電圧の振動波形の位相は、各ゲートバスライン電圧がVgHからVgLに変化する時刻と、CSバスラインの電圧の振動波形の平坦部分の時刻(好ましくは、平坦部分の中心の時刻)が一致するように設定してある。
CSバスライン電圧VCSBLtypeCの振動の振幅はVCSppである。
図12に示す駆動方法では、全ての行で時刻T3に対応する時刻にCSバスラインの電圧がVCSppだけ増加している。よって、全ての行でEVCLCの値が同一の値「+K×VCSpp/2」となり、Vaddppもまた同一の値「K×VCSpp」となる。
したがって、図12に示した駆動方法においても図11で説明した駆動方法と同様に、図10で説明した駆動方法を用いる際に発生する問題を生じることなく本発明の効果を得ることができる。
尚、図12の駆動方法では全てのCSバスラインに対して同一のCSバスライン電圧VCSBLtypeCを用いている。つまり、CSバスラインに印加する振動電圧は1種類である。従って、振動電圧をCSバスラインに印加するのに代えて、液晶容量対向電極印加してもよい。即ち、図12の駆動方法を用いる場合には液晶容量対向電極ComLCの電圧VComLCにVCSBLtypeCと同様の振動電圧を重畳することによっても、本発明の効果を得ることができる。
EVCLCaveの符号について注目する。図11に示した実施形態ではEVCLCaveの符号はマイナス(−)であり、図12の実施形態ではEVCLCaveの符号はプラス(+)である。即ち、本発明ではEVCLCaveの符号としてプラス或いはマイナスを適宜選ぶことができる。但し、EVCLCaveの符号として好ましいのはプラスである。なぜならば、図9に示したVdの影響を相殺する効果があるからである。
図8に示したアクティブマトリクス型液晶表示装置において本発明の効果を得ることのできる駆動方法は、図11或いは図12に示した実施形態に限られない。
電気的に独立なCSバスラインの数とCSバスラインの振動電圧の振動の周期について説明する。
図12で説明した駆動方法では電気的に独立なCSバスラインは1種類であり、そのCSバスライン電圧の振動の周期は水平走査時間(1H)に等しい。図11で説明した駆動方法では電気的に独立なCSバスラインは2種類であり、そのCSバスライン電圧の振動の周期は水平走査時間の2倍の時間(2H)に等しい。
電気的に独立なCSバスラインの数とCSバスライン電圧の振動の周期との関係はさらに拡張することができる。電気的に独立なCSバスラインを3種類とし、そのCSバスライン電圧の振動の周期を水平走査時間の3倍の時間(3H)としてもよく、また電気的に独立なCSバスラインを4種類とし、そのCSバスライン電圧の振動の周期を水平走査時間の4倍の時間(4H)としてもよく、さらに一般化すれば電気的に独立なCSバスラインの数をN種類とし、そのCSバスライン電圧の振動の周期を水平走査時間のN倍(NH)とすれば良い。
このとき、電気的に独立な複数のCSバスラインは次に示す規則に従って配置する必要がある。CSバスラインが液晶表示装置最上行から順次CSBL_1、CSBL_2、CSBL_3、CSBL_4、CSBL_5、・・・、CSBL_mと配置された液晶表示装置において、例えば3種類のCSバスライン電圧VCSBLtypeD1、VCSBLtypeD2、VCSBLtypeD3を配置する場合にはCSBL_1、CSBL_4、CSBL_7、・・・のCSバスライン電圧をVCSBLtypeD1とし、CSBL_2、CSBL_5、CSBL_8、・・・のCSバスライン電圧をVCSBLtypeD2とし、CSBL_3、CSBL_6、CSBL_9、・・・のCSバスライン電圧をVCSBLtypeD3とする必要がある。即ち、電気的に独立なCSバスラインはCSBL_1、CSBL_4、CSBL_7、・・・の組と、CSBL_2、CSBL_5、CSBL_8、・・・の組と、CSBL_3、CSBL_6、CSBL_9、・・・の組の3種類とする必要がある。
さらに、例えば4種類のCSバスライン電圧VCSBLtypeE1、VCSBLtypeE2、VCSBLtypeE3、VCSBLtypeE4を配置する場合にはCSBL_1、CSBL_5、CSBL_9、・・・のCSバスライン電圧をVCSBLtypeE1とし、CSBL_2、CSBL_6、CSBL_10、・・・のCSバスライン電圧をVCSBLtypeE2とし、CSBL_3、CSBL_7、CSBL_11、・・・のCSバスライン電圧をVCSBLtypeE3し、CSBL_4、CSBL_8、CSBL_12、・・・のCSバスライン電圧をVCSBLtypeE4とする必要がある。即ち、電気的に独立なCSバスラインはCSBL_1、CSBL_5、CSBL_9、・・・の組と、CSBL_2、CSBL_6、CSBL_10、・・・の組と、CSBL_3、CSBL_7、CSBL_11、・・・の組と、CSBL_4、CSBL_8、CSBL_12、・・・の組の4種類とする必要がある。
さらに、例えばN種類のCSバスライン電圧VCSBLtypeF1、VCSBLtypeF2、VCSBLtypeF3、・・・、VCSBLtypeFNを配置する場合にはCSBL_1、CSBL_N+1、CSBL_2N+1、・・・のCSバスライン電圧をVCSBLtypeF1とし、CSBL_2、CSBL_N+2、CSBL_2N+2、・・・のCSバスライン電圧をVCSBLtypeF2とし、CSBL_3、CSBL_N+3、CSBL_2N+3、・・・のCSバスライン電圧をVCSBLtypeF3とし、・・・、CSBL_N、CSBL_2N、CSBL_3N、・・・のCSバスライン電圧をVCSBLtypeFNとする必要がある。即ち、電気的に独立なCSバスラインはCSBL_1、CSBL_N+1、CSBL_2N+1、・・・の組と、CSBL_2、CSBL_N+2、CSBL_2N+2、・・・の組と、CSBL_3、CSBL_N+3、CSBL_2N+3、・・・の組と、・・・、CSBL_N、CSBL_2N、CSBL_3N、・・・の組のN種類とする必要がある。
上記複数CSバスライン電圧を用いる場合には、各CSバスライン電圧の位相についても次の条件を満たす必要がある。次に示す条件は、各駆動方法における全ての行で、図9で説明した時刻T3のときのCSバスライン電圧の変化方向を一致させるために設けた条件である。
前記3種類のCSバスライン電圧VCSBLtypeD1、VCSBLtypeD2、VCSBLtypeD3を用いる場合では、VCSBLtypeD1を基準とするときVCSBLtypeD2、VCSBLtypeD3の位相はそれぞれ水平走査時間(1H)、水平走査時間の2倍(2H)遅らせる必要がある。
前記4種類のCSバスライン電圧VCSBLtypeE1、VCSBLtypeE2、VCSBLtypeE3、VCSBLtypeE4を用いる場合では、VCSBLtypeE1を基準とするときVCSBLtypeE2、VCSBLtypeE3、VCSBLtypeE4の位相はそれぞれ水平走査時間(1H)、水平走査時間の2倍(2H)、水平走査時間の3倍(3H)遅らせる必要がある。
前記N種類のCSバスライン電圧VCSBLtypeF1、VCSBLtypeF2、VCSBLtypeF3、・・・、VCSBLtypeFNを用いる場合では、VCSBLtypeF1を基準とするときVCSBLtypeF2、VCSBLtypeF3、・・・、VCSBLtypeFNの位相はそれぞれ水平走査時間(1H)、水平走査時間の2倍(2H)、・・・、水平走査時間の(N−1)倍((N−1)H)遅らせる必要がある。
上述の駆動方法の場合でも、図11、図12で述べたのと同様の理由から各CSバスラインの振動電圧の平坦部分の中心の時刻と対応するゲートバスラインの電圧がVgHからVgLに変化する時刻を一致させることが好ましい。
上述の説明から、電気的に独立なCSバスラインの種類の数を増やすことによりCSバスラインに印加する振動電圧の周期を長くすることができ、振動電圧発生回路の作製を容易にすることができる。一方で、電気的に独立なCSバスラインの種類の数を増やすことは液晶表示パネルの作製を困難にする。そこで、電気的に独立なCSバスラインの種類の数は、これらの点を考慮して適宜設定すればよい。
本発明の効果を得ることのできる駆動方法は上述の駆動方法に限られない。上述の説明ではCSバスラインに印加する電圧を矩形波としてあった。
CSバスライン電圧に矩形波を用いる利点は、製造上の理由等によりゲートバスライン電圧、或いはCSバスライン電圧の位相が変動した場合の前記EVCLCaveの変化を最小化することができる点にある。前記EVCLCaveの説明は簡単のために矩形波について行い、且つ時刻T3におけるCSバスライン電圧の変化状態(電圧増加或いは低下)で場合分けをして説明した。この場合、EVCLCaveは液晶容量と補助容量の静電容量値CLC或いはCCSで決まる定数Kと、CSバスライン電圧の振動の振幅VCSppに依存している。しかしながら、一般的にはEVCLCaveの値は前記KとVCSppの値に依存するのに加え、ゲートバスライン電圧がVgLとなりTFT素子がオフ状態となった瞬間(図9の時刻T2に相当)のCSバスライン電圧と同電圧の1垂直走査時間内の平均電圧との電圧差にも依存する。即ち、EVCLCaveの値を一定にするためには、TFT素子がオフ状態となった瞬間(図9の時刻T2に相当)で、対応するCSバスラインの電圧を一定にすることが望ましい。前述のEVCLCaveの説明でCSバスライン電圧の変化状態(電圧増加或いは低下)によってEVCLCaveの値が異なっているのはこのためである。製造上の理由等によるゲートバスライン電圧、或いはCSバスライン電圧の位相の変動に対してEVCLCaveの変化を最小化するためには、前記時刻T2付近でのCSバスライン電圧の変化を小さくすることが望ましい。矩形波を用いる場合には前記時刻T2と波形の平坦部分を一致させることにより、製造上の理由等によるゲートバスライン電圧、或いはCSバスライン電圧の位相が変動した場合の前記EVCLCaveの変化を最小化できる。
次に、本発明による他の実施形態の液晶表示装置およびその駆動方法を説明する。
本実施形態は、CSバスラインに印加する振動電圧の電圧波形が少なくとも3つの電位を含んでおり、この3つ以上の電位は、振動電圧の最大振幅(上記の実施形態の駆動方法におけるVaddppに相当)を規定する2つの電位と、振動電圧の平均電位と一致する1つの電位を含んでいる。ここで、「振動電圧の平均電位」とは、振動電圧の最大振幅を規定する2つの電位の単純な平均値ではなく、振動電圧の実効的な平均値を意味する。すなわち、振動電圧の波形は一周期において、当該平均電位よりも高い部分の面積と低い部分の面積とが互いに等しくなる。なお、以下に例示する振動電圧は、最大振幅を規定する2つの電位間の中心線に対して対称な波形を有しているので、振動電圧の最大振幅を規定する2つの電位の単純な平均値は振動電圧の実効的な平均値と一致している。
また、前記振動電圧が振動電圧波形の平均電位と一致した電位を呈している時間(平坦部)に、その振動電圧が供給されるCSバスラインに接続された画素に接続されたTFT素子がオフ状態となるようにしている。以下の示す例では、ゲートバスライン電圧がVgLとなりTFT素子がオフ状態となった瞬間(図9の時刻T2に相当)が、振動電圧の平均電位を呈している時間の真中となるようにしてある。なお、ここでは、振動電圧波形が前記3つの電位から構成されている例を示すが、前記3つの電位を含んでいる限り、5電位、7電位、9電位・・・の電位を有してもよい。
本実施形態によると、液晶容量に印加される電圧の平均値を変化させることなく、液晶容量に印加される電圧に振動電圧を重畳できることができる。即ち、EVCLCaveの値をゼロに保ちつつ、一定のVaddppを得ることができる。このことによって、図10から図12を参照しながら説明した駆動方法を用いる場合よりも信頼性を向上することができる。その理由について次に説明する。
一般に、CSバスラインの有する寄生容量及びバスライン抵抗で構成される電気的負荷は、液晶表示装置の表示画面内の位置によって異なっている。CSバスラインに印加される振動電圧波形の実効的な波形は前記電気的負荷の影響を受けるために鈍るため、その振幅(実効的な振幅)は表示画面内の位置によって異なることとなる。従って、図11および図12に示した先の実施形態の液晶表示装置において液晶容量に印加される電圧の平均値がCSバスラインに印加された振動電圧の振幅(実効的な振幅)に依存する場合には液晶容量に印加される電圧の平均値が表示画面内の位置に依存して変化することになる。この場合、表示面内の至る所で液晶層に印加される電圧の直流成分をゼロとすることができない、具体的には表示面内の至る所で対向電圧を最適値に調整することができないといった問題が生じる。液晶層に印加される電圧の直流成分がゼロに調整されていない液晶表示装置を長時間使用した場合には、液晶表示装置を構成する液晶材料或いは配向膜等の材料がダメージを受け、液晶表示装置の表示品位が低下してしまう。これに対して、本実施形態の液晶表示装置では液晶容量に印加される電圧の平均値がCSバスラインに印加された振動電圧の振幅(実効的な振幅)に依存するといったことがないため、前述のような液晶表示装置の信頼性にかかわる問題を生じることはない。
一方、前述の説明によれば、液晶層に印加される電圧に重畳される振動電圧成分、即ちVaddppもまた液晶表示装置の表示画面内の位置に依存して変化することになる。しかしながら、振動電圧成分が表示画面の位置によって異なっても、表示品位に対する影響は大きくない。その理由について以下で説明する。
液晶層に印加される電圧に重畳される振動電圧成分、即ちVaddppは、図5に示した輝度の階調電圧依存特性を改善に寄与するものであり、振動電圧成分の量(大きさ)が液晶表示装置の表示画面内の位置に依存して変化した場合にはそれに応じて前記改善の程度が表示画面内の位置に依存して変化するのみである。即ち、前述のように液晶表示装置の信頼性に影響を与えることはない。さらに、前述の改善の程度の、表示画面内の位置に依存した変化は、CSバスラインの電気的負荷の変化に依存するものであるから、グラデーション状の緩やかでかつ連続的な変化となるため、その変化は視認され難い。即ち、表示品位上の問題は極めて小さい。
次に、前述の図10、図11および図12に示した実施形態に対応する本実施形態を説明する。
本実施形態では、前述の図10、図11および図12の実施形態で示したCSバスラインに印加する振動電圧VCSBLtypeA、VCSBLtypeB1,VCSBLtypeB2、VCSBLtypeCをそれぞれ本実施形態の特徴を有する振動電圧VCSBLtypeAN、VCSBLtypeBN1、VCSBLtypeBN2、VCSBLtypeCNとする。前述の実施形態での図10、図11、図12に対応する本実施形態での図を図13、図14、図15に示す。
図13から図15に示したように、CSバスラインに印加する振動電圧の電圧波形は、振動電圧の最大振幅(Vaddpp)を規定する2つの電位と、振動電圧の平均電位と一致する1つの電位を含んでいる。また、前記振動電圧が振動電圧波形の平均電位と一致した電位を呈している時間(平坦部)の丁度中央において、その振動電圧が供給されるCSバスラインに接続された画素に接続されたTFT素子がオフ状態となるようにしてある。
図13、図14、図15に示したように、何れの図でもEVCLCave=0、Vaddpp=K×VCSppとなることが示されている。即ち、液晶容量に印加される電圧の平均値を変化させることなく、液晶容量に印加される電圧に振動電圧を重畳できることができる。
特に、図10に対応した本実施形態を示す図13によれば、図10で問題であった奇数行、偶数行毎に液晶容量に印加される電圧の平均値が異なるといった問題、即ちEVCLCaveが異なるといった問題が解消されていることがわかる。
また、本実施形態においても電気的に独立なCSバスラインの数とその振動周期との間の関係については、前述の実施形態についての説明と同様の説明が成立する。即ち、電気的に独立なCSバスラインの数をN種類とすれば、そのCSバスラインの水平走査時間のN倍とすることができる。
この時、電気的に独立なCSバスラインの数は偶数とし、任意のCSバスラインの振動電圧波形は、その任意の時刻の電圧変化に注目する時、それと逆方向でかつ変化量の同一の電圧変化をするCSバスラインが存在することが望ましい。そして、それら2つの電圧波形の印加されるCSバスラインの数は同数であることが望ましい。即ち、本実施形態の図14に示すように任意のCSバスラインの振動電圧に対してそれと逆相の(位相が180度異なる)振動電圧が存在することが望ましい。無論、前述の実施形態では図11に示す実施形態が望ましい。その理由は以下の通りである。
一般に液晶表示装置の対向電極は有限の電気抵抗を有して電位基準(例えば対向電極電位)に接続されているため、CSバスラインに振動電圧を印加した場合、その振動電圧に連動して対向電極の電位も変動する。よって、液晶容量或いは補助容量にCSバスラインの振動電圧を効率良く伝えることができない(対向電極の電位を振動させることにも費やされてしまう)。これに対して、CSバスラインの振動電圧とそれと逆相の(位相が180度異なる)振動電圧が存在する場合、対向電極の電位の変動が抑制されるため、CSバスラインの振動電圧を液晶容量或いは補助容量に効率良く伝えることができる。
なお、上述した実施形態ではいずれもCSバスライン電圧に矩形波を用いている。矩形波を用いることによって上述した利点が得られるが、以下の問題点もある。
CSバスライン電圧に矩形波を用いることの問題点は、CSバスラインに瞬間的に多くの電流が流れることである。一般的に静電容量に振動電圧を印加する際に流れる電流値は電圧の時間微分に比例する。矩形波では、電圧が変化するとき(例えば、図9の時刻T4、T5)の電圧の時間微分の値が非常に大きいため(理想的な矩形波では無限大となる)、その瞬間に膨大な電流が流れる。この問題を回避するためには、電圧変化の時間微分の小さな波形(例えば、正弦波)を用いるのが好ましい。但し、図13〜図15に例示したように3つ以上の電位を有する振動電圧を用いる場合、少なくとも振動電圧の平均値と一致する電位は一定時間維持される(平坦部を有する)ことが好ましい。
CSバスライン電圧の波形は前述の矩形波を用いる場合の利点或いは問題点を考慮して適宜(例えば波形のなまった矩形波(ローパス・フィルターを透過した矩形波)或いは正弦波等)設定すればよい。
なお、上記の説明では、画素電極に所定の階調電圧をそのまま印加する例を説明したが、これに限られず、例えば、液晶層の応答速度を改善するために、階調電圧とともにオーバーシュート用の電圧を印加する場合においても本発明の効果を得ることができる。