以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
[第1の実施形態]
図2は、本発明の第1の実施形態を示すパンチプレスとしてのタレットパンチプレスの全体を示している。このタレットパンチプレスは、本体フレーム1の中央に空隙3を備えている。この空隙3の上側にある上部フレーム5には、複数のパンチPを装着した上タレット7が回転軸9により回転可能に支持されている。
空隙3の下側にある下部フレーム11には、複数のダイDを装着した下タレット13を回転軸15により回転可能に支持させている。前記上タレット7および下タレット13は、図示しないが回転割出し機構により同期して回転割り出し自在となっている。
また、上部フレーム5には上下シリンダ17を設けてあり、この上下シリンダ17のピストンロッド19の下端にはラム21を取り付けている。このラム21の下側には、加工位置に割り出されたパンチPを打圧して打ち抜き加工を行うためのストライカ23を、図2中で左右方向に移動可能に設けてある。
上部フレーム5には、例えば上タレット7の径方向に並んで設けてあるパンチP1,P2のうち、実際に打ち抜き加工に使用されるパンチP(例えばパンチP2ののみを打圧するためにストライカ23を図2中で左右方向に移動させるストライカシフトシリンダ25を設けてある。
一方、下部フレーム11における加工位置、すなわち前述のパンチPとの協働で打ち抜き加工を行うべく割り出されたダイDの下方である下部フレーム11には、パンチP1,P2に対応して下タレット13の径方向に並んで設けてあるダイD1,D2を持ち上げるための詳細を後述するダイ押し上げ手段27を設けている。
また、空隙3の図2中で上,下タレット7,13の左側には、被加工材であるワークWを加工位置に移動、位置決めするワーク位置決め装置29を設けている。
このワーク位置決め装置29では、固定テーブル31と、固定テーブル31の図2中で紙面に直交する両側に位置する図示省略の可動テーブルとからなる、表面に例えばブラシを備える加工テーブル33を有しており、固定テーブル31を跨いで可動テーブルと一体的にY軸方向(図2中で左右方向)へ移動するキャレッジベース35をY軸方向に移動、位置決め可能に設けている。キャレッジベース35は、Y軸モータ37と、軸受け39により回転可能に支持されるY軸ボールネジ41の回転により移動、位置決めされる。なお、固定テーブル31は、図1に示すように、下タレット13上にも配置してある。
また、前記キャレッジベース35には、ワークWをクランプするクランパ43を有するX軸キャレッジ45を、図示省略のX軸移動機構によりX軸方向(図2において紙面に対して直交する方向)へ移動、位置決め可能に設けている。
上記構成により、クランパ43によりクランプされたワークWを、キャレッジベース35のY軸方向移動、位置決め及び、X軸キャレッジ45のX軸方向移動、位置決めによって、加工位置に位置決めする。
一方、上,下タレット7,13は同期して回転し、打ち抜き加工に使用するパンチP(P1,P2)及びダイD(D1,D2)を加工位置に割り出して、上下シリンダ17によりストライカ23がパンチPを打撃することにより、ワークWの所望位置に打ち抜き加工を行う。
上記した下タレット13は図3に示すように円盤形状を呈しており、下タレット13の外周側の上面に、円周方向に沿って複数のダイホルダ47をボルト49(図1参照)によって着脱可能に取り付けている。この複数のダイホルダ47には、互いに異なる前記したダイDを着脱可能に装着してある。
また、下タレット13の上記したダイホルダ47の取付位置に対応する位置には、同心円状の3つのトラックT1,T2,T3を内周側から外周側に向けて順に設定してあり、この3つのトラックT1,T2,T3のいずれかに対応して各ダイホルダ47のダイDを配置している。例えば、ダイホルダ47Aは、内周側のトラックT1及び外周側のトラックT3に小径のダイDをそれぞれ取り付けてあり、ダイホルダ47Bは、中央のトラックT2に大径のダイDを取り付けてある。
したがって、前記図2に示した径方向に並べて配置してあるダイD1,D2は、図3のダイホルダ47Aに取り付けたものに相当する。
一方、上タレット7についても、下タレット13と同様に円盤形状を呈しており、上記した下タレット13のダイホルダ47に対応するパンチホルダを円周方向に沿って複数備え、このパンチホルダに前記したパンチPを取り付けてある。
図1に示すダイホルダ47は、上記したように図3におけるダイホルダ47Aに相当するもので、内周側のトラックT1に対応するダイD1と、外周側のトラックT3に対応するダイD2とを備えている。そして、このダイホルダ47は、前述したようにボルト49によって下タレット13に締結固定してある。
ダイD(D1,D2)は、円筒形状のリフタパイプ51,53の上端開口部にそれぞれ装着してあり、リフタパイプ51は、下タレット13に設けた貫通孔13a及びダイホルダ47に設けた貫通孔47aに対して上下可能に収容し、リフタパイプ53は、下タレット13に設けた貫通孔13b及びダイホルダ47に設けた貫通孔47bに対して上下可能に収容している。
この際、上記した各リフタパイプ51,53は、図4(a)に拡大して示すように、下タレット13に対しスプリング55,57により下方に押し付けられている。なお、図4(a)では、リフタパイプ51はスプリング55に押されて下方に移動した状態を示し、リフタパイプ53は、後述するダイ押し上げ手段27によってスプリング57の弾性力に抗して上方に押し上げられた状態を示している。
また、図4(b)に示すように、図3のダイホルダ47Bに設けてある大径のダイDについても、上記した小径のダイD(D1,D2)と同様に、リフタパイプ59が、下タレット13及びダイホルダ47の各貫通孔13c及び47cに対して上下可能に収容された状態で、スプリング61により下方に押し付けられている。なお、図4(b)では、リフタパイプ59は、後述するダイ押し上げ手段27によってスプリング61の弾性力に抗して上方に押し上げられた状態を示している。
次に、ダイDとともにリフタパイプ51,53,59を上昇させるダイ押し上げ手段27について説明する。このダイ押し上げ手段27には、台形ねじ式ダイ上下移動機構を採用している。すなわち、図1に示す下部フレーム11には、内周面に雌ねじ63aを備える大略円筒形状の雌ねじ部材63を固定してあり、この雌ねじ63aに螺合する雄ねじ65aを下端に備える円筒形状の昇降部材となる昇降ラム65を、雌ねじ部材63に対して回転可能に収容している。
図1では、昇降ラム65が最上端に位置している状態を示し、後述するダイ保持手段としてのアタッチメント67を介してリフタパイプ53を上昇させ、このリフタパイプ53に対応するダイD2の上端面が、ワークWの搬送経路となるパスラインPLとなるまで上昇させている。なお、図1において、固定テーブル31のダイDに対応する部位には、パンチP及びダイDが入り込む開口部31aを形成してある。
前記した雌ねじ部材63の上端には、昇降ラム65と共に回転する回転駆動リング69を回転可能に配置している。回転駆動リング69は、昇降ラム65の雄ねじ65aより上部にてスプライン結合されており、これにより昇降ラム65は回転駆動リング69に対し、一体的に回転可能であると同時に相対的に昇降可能となっている。
回転駆動リング69の外周には、ギヤ部69aを形成してあり、このギヤ部69aに歯付きベルト71を噛合させ、歯付きベルト71は、図5に示すように、下部フレーム11に取り付けてある駆動モータ73に連動連結されている。
したがって、駆動モータ73の駆動により、歯付きベルト71を介して回転駆動リング69が回転し、これと共に回転する昇降ラム65が、その雄ねじ65aが螺合する雌ねじ部材63の雌ねじ63aに対して回転することで、昇降することになる。
上記した昇降ラム65と下タレット13との間には、前述したアタッチメント67を配置してある。図1に示してあるアタッチメント67は、外周側のトラックT3に対応するダイD(D2)を押し上げるものである。その他のダイ保持手段として、図6,図7に示す、内周側のトラックT1に対応するダイDを押し上げるためのアタッチメント75と、図6,図8に示す、中央のトラックT2に対応するダイDを押し上げるためのアタッチメント77と、を設けてある。
これら各アタッチメント67,75,77は、後述するが、図1中で紙面に直交する方向に延設されるアタッチメントベース79に沿って移動可能である。
図1に示すように、加工位置に割り出し位置決めされたダイD(D2)に対応する位置にあるアタッチメント67は、図1中で左右一対のフック81によって昇降ラム65と共に上下方向が拘束されている。
フック81は、アタッチメント67の図1中で左右両側の端縁部を、上部81aと下部81bとで上下から挟持固定してアタッチメント67と一体化してあり、下部81bの内側の突起81b1を、昇降ラム65の上端に設けてある環状のフランジ65fの下部に位置させることで、昇降ラム65をアタッチメント67と共に上下方向を拘束している。
また、フック81の上部81aは、アタッチメント67から離れる方向に突出しており、その突出した先端に、アタッチメント67の回転を規制する回転規制シャフト83の上端を連結している。
回転規制シャフト83の下部は、ガイド部85内にて上下方向に移動可能に挿入してある。一方、前記したアタッチメントベース79の側部には、図1中で紙面に直交する方向にガイドレール87を延設している。そして、このガイドレール87に対してスライド移動する可動体89を設け、この可動体89の側部に上記したガイド部85を固定している。
したがって、フック81は、アタッチメント67と一体的に図1中で紙面に直交する方向に移動するものであり、また他のアタッチメント75,77についても、上記したフック81や回転規制シャフト83,ガイド部85及び可動体89と同様な各種部材を備えている。以後は、このアタッチメント75,77の各種部材についても、アタッチメント67に対応する各種部材と同様の符号を付して説明する。
図6に示すように、中央に位置する外周側のトラックT3用のアタッチメント67は、シリンダ91によってアタッチメントベース79に沿って図6中で左右方向に移動する。つまり、シリンダ91の図6中で右側に突出するピストンロッド93の先端が、連結具95を介して可動体89に連結している。
上記したシリンダ91は、図1に示すように取付板99上に固定してあり、取付板99の図1中で左側の端部下面には、内周側のトラックT1用のアタッチメント75を移動させるためのロッドレスシリンダ101を固定してある。一方、取付板99の図1中で右側の端部は、アタッチメント75に対応するガイド部85の下端に連結している。したがって、ロッドレスシリンダ101は、取付板99,ガイド部85,回転規制シャフト83及びフック81を介してアタッチメント75に連結していることになる。
ロッドレスシリンダ101は、下部フレーム11上に設置してある台座103に対し、ガイドロッド105に沿って図6中で左右方向に移動する。したがって、ロッドレスシリンダ101の作動によって、アタッチメント75及びアタッチメント67がアタッチメントベース79に沿って図6中で左右方向に移動する。
一方、中央のトラックT2用のアタッチメント77は、下部フレーム11側に固定してあるシリンダ107により、アタッチメントベース79に沿って図6中で左右方向に移動する。つまり、シリンダ107のピストンロッド109の先端の連結具111が、アタッチメント77に対応するガイド部85に連結している。したがって、ピストンロッド109は、その先端の連結具111,ガイド部85,回転規制シャフト83及びフック81を介してアタッチメント77に連結していることになる。
図6では、外周側のトラックT3用のアタッチメント67を打ち抜き加工位置に移動位置決めした状態を示しているが、この図6の状態から内周側のトラックT1用のアタッチメント75を打ち抜き加工位置に移動位置決めする場合には、シリンダ91のピストンロッド93を後退限位置としてアタッチメント67をアタッチメント75に近接させつつ、ロッドレスシリンダ101を図6中で右方向に移動させればよい。
また、中央のトラックT2用のアタッチメント77を打ち抜き加工位置に移動位置決めする場合には、図6の状態からシリンダ91のピストンロッド93を後退限位置としてアタッチメント67をアタッチメント75に近接させつつ、シリンダ107を駆動してそのピストンロッド109を前進限位置とすればよい。
図1に示す外周側のトラックT3用のアタッチメント67は、打ち抜き加工位置に割り出し位置決めされた加工に使用するダイD2に対応するリフタパイプ53を保持するダイ保持部としての環状の凸部67aを備えるとともに、ダイD2に対して径方向内側に隣接して配置してあるダイD1に対応するリフタパイプ51を保持する凹部67bを備えている。
すなわち、上記した凸部67aは、打ち抜き加工位置に割り出し位置決めされた加工に使用するダイD2を、ワークWのパスラインPLに押し上げた状態で保持する一方、凹部67bは、打ち抜き加工位置に割り出し位置決めされたダイD(ダイD1,D2)のうち加工に使用しないダイD1を、パスラインPLより下方位置となるよう保持する。
また、凸部67aには、上部のリフタパイプ53内の空間53aと、下部の昇降ラム65内の空間65bとを連通する貫通孔67a1を形成してあり、これら空間53a,65b及び貫通孔67a1により、ワークWに対する打ち抜き加工時に発生する打ち抜きカスを落下させる中空部を構成している。
そして、この中空部に対し図示外に配置してある吸引装置によって下部フレーム11の下方から吸引することで、打ち抜き加工時に発生する打ち抜きカスを強制的に吸引して外部に排出することになる。
同様にして図7に示す内周側のトラックT1用のアタッチメント75は、打ち抜き加工位置に割り出し位置決めされた加工に使用するダイD1に対応するリフタパイプ51を保持するダイ保持部としての環状の凸部75aを備えるとともに、ダイD1に対して径方向外側に隣接して配置してあるダイD2に対応するリフタパイプ53を保持する凹部75bを備えている。
すなわち、上記した凸部75aは、打ち抜き加工位置に割り出し位置決めされた加工に使用するダイD1を、ワークWのパスラインPLに押し上げた状態で保持する一方、凹部75bは、打ち抜き加工位置に割り出し位置決めされたダイD(ダイD1,D2)のうち加工に使用しないダイD2をパスラインPLより下方位置となるよう保持する。
また、凸部75aには、上部のリフタパイプ51内の空間51aと、下部の昇降ラム65内の空間65bとを連通する貫通孔75a1を形成してあり、これら空間51a,65b及び貫通孔75a1により、ワークWに対する打ち抜き加工時に発生する打ち抜きカスを落下させる中空部を構成している。
図8に示す中央のトラックT2用のアタッチメント77は、打ち抜き加工位置に割り出し位置決めされた加工に使用するダイDに対応するリフタパイプ59を保持するダイ保持部としての環状の凸部77aを備えている。
すなわち、上記した凸部77aは、打ち抜き加工位置に割り出し位置決めされた加工に使用するダイDを、ワークWのパスラインPLに押し上げた状態で保持する。
また、凸部77aには、上部のリフタパイプ59内の空間59aと、下部の昇降ラム65内の空間65bとを連通する貫通孔77a1を形成してあり、これら空間59a,65b及び貫通孔77a1により、ワークWに対する打ち抜き加工時に発生する打ち抜きカスを落下させる中空部を構成している。
なお、図3に示すように、中央のトラックT2には、それに対応するアタッチメント77の貫通孔77a1よりも小径のダイDが存在するが、この小径のダイDを上部に備えるリフタパイプは、下端部がアタッチメント77の貫通孔77a1とほぼ同径の空間を備える大径部分の上部に、上記小径のダイDを支持する小径部分を備えているものとする。これにより、凸部77aによって小径のダイDに対応するリフタパイプを支持することが可能となる。
次に作用を説明する。上タレット7及び下タレット13を適宜回転させることで、加工に必要なパンチP及びダイDを、図2に示すストライカ23に対応する位置に設定する。これとともに、ワーク位置決め装置29の移動、位置決めにより、ワークWを下タレット13上の加工位置に位置決めする。
ここで、例えば図3におけるダイホルダ47Aに設けてある内周側のトラックT1用のダイD(D1)を利用して打ち抜き加工を行う場合を想定する。なお、この場合には、ストライカ23が、内周側のトラックT1に対応する位置となるようストライカシフトシリンダ25により移動させておく。
また、図6の状態から、内周側のトラックT1用のアタッチメント75を、図6におけるアタッチメント67の位置まで移動させる。この移動は、前述したように、図6の状態から、シリンダ91のピストンロッド93を後退限位置としてアタッチメント67をアタッチメント75に近接させつつ、ロッドレスシリンダ101を図6中で右方向に移動させる。
このとき、図7(a)に示すように、昇降ラム65は下降限位置としてある。昇降ラム65が下降限位置にある状態で、アタッチメント75も図5に示すように下降限位置にあり、このときアタッチメント75の下端面が昇降ラム65の上端面より僅かに上方位置にあるものとする。これにより、アタッチメント75を、図5及び図6の位置から図中で右方向に移動させる際に、図7(a)に示す下降限位置にある昇降ラム65の上部に移動させることができる。
なお、アタッチメント75の上記した移動動作は、前記した上タレット7及び下タレット13の回転位置決め動作と同期して行う。
上記した移動によってアタッチメント75は、図7(a)に示すように、昇降ラム65の上端面にほぼ載置された状態となる。このとき、アタッチメント75と一体となって移動するフック81は、その突起81b1が昇降ラム65の上端のフランジ65fの下部に入り込むことで、昇降ラム65とアタッチメント75との上下方向の相対移動を拘束する。このとき昇降ラム65は、フック81(突起81b1)に対して相対回転可能である。
この状態から、図5に示す駆動モータ73を駆動して昇降ラム65を回転させると、昇降ラム65は、その雄ねじ65aの雌ねじ部材63への螺合によって上昇する。
昇降ラム65の上昇によりアタッチメント75もフック81とともに上昇し、このとき、アタッチメント75の凸部75aがリフタパイプ51の下端に当接し、リフタパイプ51を図4のスプリング55に抗して上昇させ、図7(b)に示すように、打ち抜き加工位置にあるダイD1が、固定テーブル31の開口部31aに入り込みつつ、その上端面がワークWのパスラインPLまで上昇する。
一方、アタッチメント75の凹部75bは、ダイD1に対して同一のダイホルダ47Aに取り付けてある径方向外側のダイD2に対応するリフタパイプ53の下端に当接し、リフタパイプ53を図4のスプリング57に抗して図7(a)に対し上昇させる。しかし、その上昇分は、凸部75aの上面と凹部75bの上面との上下方向の段差分だけ少なく、ダイD2の上端面は固定テーブル31の下面より僅かに下方となる。
この状態で、ストライカ23によりダイD1に対応するパンチPを打圧して打ち抜き加工を行う。このとき、図示外の吸引装置の作動によって、打ち抜き加工によって発生した抜きカスが、図7(b)の矢印Aで示すように、リフタパイプ51内の空間51aと、アタッチメント75の貫通孔75a1と、昇降ラム65内の空間65bとにより形成される抜きカス経路を通して外部に排出される。
その際、アタッチメント75は、その凹部75bを含む、貫通孔75a1以外の部分によって昇降ラム65内の空間65bの上端開口を閉塞する。これにより、抜きカス経路内が、ワークW側と吸引装置側との間でほぼ密閉状態となるので、抜きカスを効率よく排出することができ、抜きカスの飛散や吸引装置の吸引力不足による抜きカスの残量を回避することが可能となる。
以上の動作は、内周側のトラックT1用のアタッチメント75を使用する例として示したが、外周側のトラックT3用のアタッチメント67を使用する場合については、図1に示すように、アタッチメント67の凸部67aが打ち抜き加工位置にあるダイD2に対応するリフタパイプ53を上昇させて、ダイD2の上端面をパスラインPLまで上昇させることになる。
この際、アタッチメント67の凹部67bは、ダイD2に対して同一のダイホルダ47Aに取り付けてある径方向内側のダイD1のリフタパイプ51に対応しているので、ダイD1の上端面は固定テーブル31の下面より僅かに下方となる。したがって、この状態で、ストライカ23によりダイD2に対応するパンチPを打圧して打ち抜き加工を行うことになる。
また、この場合にも、図示外の吸引装置の作動によって、打ち抜き加工によって発生した抜きカスが、リフタパイプ53内の空間53aと、アタッチメント67の貫通孔67a1と、昇降ラム65内の空間65bとにより形成される抜きカス経路を通して外部に排出される。
その際、アタッチメント67は、その凹部67bを含む、貫通孔67a1以外の部分によって昇降ラム65内の空間65bの上端開口を閉塞するので、抜きカス経路内が、ワークW側と吸引装置側との間でほぼ密閉状態となり、抜きカスを効率よく排出することができる。
また、中央のトラックT2用のアタッチメント77を使用する場合には、図8に示すように、アタッチメント77の凸部77aがリフタパイプ59を上昇させて、ダイDの上端面を図8(b)のようにパスラインPLまで上昇させる。
したがって、この状態で、ストライカ23によりダイDに対応するパンチPを打圧して打ち抜き加工を行うことになるが、この場合にも、図示外の吸引装置の作動によって、打ち抜き加工によって発生した抜きカスが、リフタパイプ59内の空間59aと、アタッチメント77の貫通孔77a1と、昇降ラム65内の空間65bとにより形成される抜きカス経路を通して外部に排出される。
そして、この抜きカス経路は、いずれも中空のリフタパイプ59とアタッチメント77と昇降ラム65とによって、ワークW側と吸引装置側との間でほぼ密閉状態となり、抜きカスを効率よく排出することができる。
以上より、本実施形態では、ダイ保持手段であるアタッチメント67,75,77は、打ち抜き加工位置に割り出し位置決めされた加工に使用するダイを、ワークWのパスラインPLに押し上げた状態で保持するダイ保持部である凸部67a,75a,77aを選択可能に備えていることになる。
このように本実施形態によれば、ワークWをパスラインPLに沿って移動させて下タレット13上の加工位置に位置決めする際には、ダイDを、図7(a),図8(a)に示すように、パスラインPLや固定テーブル31より下方に待機させてあるので、パスラインPLに沿って移動する際のワークWの裏面がダイDの上端面に干渉して傷付くことを抑えることができる。
そして、加工時には、必要とする加工に使用するダイDのみを、パスラインPLまで上昇させるので、上記したようにワークWの損傷を抑えつつ、加工に必要なダイDを使用して打ち抜き加工を実施することができる。
また、本実施形態では、同心円状に設定した3つのトラックT1,T2,T3上に位置するダイDに対応して3つのアタッチメント75,77,67を、打ち抜き加工位置と、この打ち抜き加工位置から離れた退避位置との間を個別に移動可能に設けている。このため、下タレット13に円周方向のみならず径方向にも複数設けたダイDを利用して、搬送時のワークWの傷付きを抑制しつつ打ち抜き加工を実施することができる。
その際、各アタッチメント75,77,67は、スライドベース79上を移動させることで、打ち抜き加工位置に容易に移動位置決めすることができる。
また、ダイ保持手段である各アタッチメント67,75は、ダイ保持部となる凸部67a,75aと凹部67b,75bとが、打ち抜き加工位置にて下タレット13の径方向に沿って配置され、該打ち抜き加工位置での下タレット13の円に対する接線方向に移動可能としてある。
このため、下タレット13の径方向に沿って設けてある複数のダイDのうち、打ち抜き加工に必要なダイDに、対応するアタッチメントを上記接線方向に移動させることによって凸部を対応させることができる。これにより、打ち抜き加工に必要なダイDをパスラインPLまで上昇させる一方、他のダイDについては凹部によってパスラインより下方に位置させることができる。
また、本実施形態では、昇降ラム65及び、アタッチメント67,75,77の各凸部67a,75a,77aは、打ち抜き加工時に発生する打ち抜きカスを落下させる中空部となる空間65b及び、貫通孔67a1,75a1,77a1を備えている。このため、打ち抜き加工実施後のワークWから発生するカスは、この中空部を通って落下し、外部に排出することができる。
[第2の実施形態]
図9〜図12に示す第2の実施形態は、円筒形状のダイ押し上げ手段としての昇降ラム115の上部に、ダイ保持部117と凹部119とを備えるダイ保持手段を一体的に備えている。昇降ラム115は、その側方に配置してある駆動モータ121により、外周部に歯車123を備えるインデックス装置125を回転させることで、インデックス装置125と一体となって回転する。
また、昇降ラム115は、その下部周囲に配置してある複数のダイ上下シリンダ127によって、図11の上昇位置と図12の下降位置との間を上下動する。ダイ上下シリンダ127は、下方に向けて突出するピストンロッド129を備え、このピストンロッド129の先端(下端)が、昇降ラム115の下端周囲に固定してあるリング状の台座131に連結している。したがって、ピストンロッド129が図11の状態から下方に突出移動することで、図12に示すように、昇降ラム115が台座131とともに下方に移動する。
図9は、前記図3と同様の内周側のトラックT1及び外周側のトラックT3にそれぞれ対応するダイD(D1及びD2)を示す、前記図1に対応する斜視図であり、図10は、中央のトラックT2に対応するダイDを示す、前記図8(b)に対応する斜視図である。
すなわち、図9では、昇降ラム115の上方に、径方向に2個設けてあるダイD(D1,D2)をそれぞれ上部に取り付けてあるリフタパイプ133,135が位置しており、図10では、ダイDを上部に取り付けてあるリフタパイプ137が位置している。これら各リフタパイプ133,135及び137は、図示しないスプリングにより下方に押圧された状態で、図示しない下タレットに取り付けてあるダイホルダに対してそれぞれ上下動可能に設けてあり、昇降ラム115の上下動により上下動する。
上記図9に示した2個のリフタパイプ133,135は、昇降ラム115の上部の環状の円形となっているダイ保持手段の上面に、円周方向に沿って180度隔てた位置に配置してある。一方、図10に示した1個のリフタパイプ137は、その断面図である図11に示すように、昇降ラム115に対して軸心同士が一致した状態でダイ保持手段の上面に配置してある。
図9では、ダイ保持手段のダイ保持部117の上端面に、径方向外側に位置するダイD2に対応するリフタパイプ135が位置する一方、径方向内側に位置するダイD1に対応するリフタパイプ133が、ダイ保持部117に対して切欠を形成した状態の凹部119に入り込んだ状態となっている。
すなわち、昇降ラム115が上昇する際に、ダイ保持部117上に位置するリフタパイプ135のダイD2が、ワークWのパスラインPLに位置し、これに対して凹部119に位置しているリフタパイプ133のダイD1はパスラインPLよりも下方に位置することになる。
昇降ラム115のダイ保持手段よりも下部の外周には円周方向に沿って溝143を形成してあり、この溝143に対して、受圧ブロック145が、図11のように入り込んだ前進位置と、図12のように離反した後退位置との間を移動可能となっている。受圧ブロック145には、ロッド147を介して連結板149の上部が連結されており、連結板149の下部に連結しているピストンロッド151をシリンダ153によって進退移動させることで、受圧ブロック145の上記した移動がなされる。
次に作用を説明する。図12に示すように、昇降ラム117を下降させた状態では、リフタパイプ137(図9のリフタパイプ133,135も同様)は、図示しないスプリングによる下方に押圧されて下方に移動し、対応する各ダイD(D1,D2)の上端面がパスラインPLよりも下方に位置している。この状態で、前記した第1の実施形態と同様にし、ワークWを下タレット上の加工位置に位置決めする。
ここで、加工に使用するダイDが例えば外周側のトラックT3に対応するダイD2であるとすれば、昇降ラム117を下降させた図12の状態で、下タレットを回転位置決めしてダイD1,D2を図9のように昇降ラム117の上部に位置させる。そして、駆動モータ121の駆動によりインデックス装置125を介して昇降ラム117を回転させ、凹部119が、図9に示すように内周側のトラックT1に対応する位置となるようにする。
この状態で、ダイ上下シリンダ127の駆動により昇降ラム117を上昇させることで、図9に示すように、加工に使用しないダイD1に対応するリフタパイプ133が凹部119に入り込むと同時に、加工に使用するダイD2に対応するリフタパイプ135がダイ保持部117に当接し、リフタパイプ135に設けてあるダイD2のみがパスラインPLまで上昇する。なお、このとき受圧ブロック145は、図12のように後退させておく。
そして、受圧ブロック145を前進させて図11のように昇降ラム117の溝139に入り込ませた状態で、ストライカ23によりダイD2に対応するパンチPを打圧して打ち抜き加工を行う。
この際、打ち抜き加工によって発生したワークWの打ち抜きカスは、リフタパイプ135内の図示しない空間と、昇降ラム115内の空間115aとにより形成される中空部となる抜きカス経路を通して外部に排出される。
一方、加工に使用するダイDが内周側のトラックT1に対応するダイD1である場合には、昇降ラム117を下降させた図12の状態で、凹部119が外周側のトラックT3に対応する位置となるようにして、上記と同様の作業を行う。すなわち、この場合には、昇降ラム117を上昇させることで、図9とは逆に、加工に使用しないダイD2に対応するリフタパイプ135が凹部119に入り込むと同時に、加工に使用するダイD1に対応するリフタパイプ133がダイ保持部117に当接し、これによりリフタパイプ133に設けてあるダイD1のみがパスラインPLまで上昇する。
そして、受圧ブロック145を前進させて図11のように昇降ラム117の溝143に入り込ませた状態で、ストライカ23によりダイD1に対応するパンチPを打圧して打ち抜き加工を行う。この際、リフタパイプ133内の図示しない空間と、昇降ラム115内の空間115aとにより形成される中空部となる抜きカス経路を通して外部に排出される。
また、加工に使用するダイDが図10に示す中央のトラックT2に対応するダイDである場合には、図12に示す状態、すなわち下降位置にある昇降ラム117の上方にリフタパイプ137が位置している状態から、昇降ラム117を上昇させてリフタパイプ137に当接し、該リフタパイプ137に設けてあるダイDがパスラインPLまで上昇する。
この場合には、打ち抜き加工によって発生した抜きカスが、リフタパイプ137内の空間137aと、昇降ラム115内の空間115aとにより形成される中空部となる抜きカス経路を通して外部に排出される。
その際、リフタパイプ137の内径と昇降ラム115の内径とがほぼ同等であって、これらの内部の空間137a,115a内で形成される抜きカス経路内が、ワークW側と吸引装置側との間でほぼ密閉状態となるので、抜きカスを効率よく排出することができ、抜きカスの飛散や吸引装置の吸引力不足による抜きカスの残量を回避することが可能となる。
以上より、第2の実施形態においても、ワークWをパスラインPLに沿って移動させて加工位置に位置決めする際には、ダイD(D1,D2)を、パスラインPLより下方に待機させてあるので、パスラインPLを移動する際のワークWの裏面がダイD(D1,D2)の上端面に干渉して傷付くことを抑えることができる。
また、第2の本実施形態では、ダイ保持手段は、ダイ押し上げ手段である昇降ラム115の上部に一体化して回転可能に設けられ、そのダイ保持部117と凹部119とは、ダイ保持手段の回転方向に沿って配置されている。
このため、より簡素な構成で、パスラインPLに沿って移動する際のワークWの裏面がダイDの上端面に干渉して傷付くことを抑えることができ、その際、加工時には、必要とするダイDのみを、パスラインPLまで上昇させるので、ワークWの損傷を抑えつつ、加工に必要なダイDを使用して打ち抜き加工を実施することができる。
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、例えば前記第1の実施形態における図1の状態での打ち抜き加工終了後に、加工時に上昇させたダイD2がワークWのパスラインPLに押し上げられる前の図7(a)の待機位置となったことを、図13に示すダイ上昇規制部材としてのスライドストッパ155を利用して確認できるようにしている。
スライドストッパ155は、ダイホルダ47(47A)上のダイDの側縁にて下タレット13の半径方向に移動可能であり、スライドストッパホルダ157によって上部が覆われて上下方向の移動が規制されている。すなわち、スライドストッパ155は、ダイホルダ47(47A)の上面とスライドストッパホルダ157との間に形成した隙間を、下タレット13の半径方向に移動する。
このようなスライドストッパ155は、下タレット13の半径方向に沿って長尺に形成してあり、そのダイD側の側部に、ストッパ爪155a,155bを突出して設けている。すなわち、図13では、スライドストッパ155が、下タレット13の半径方向外側(図13中で矢印B方向)に向けて前進移動することで、ストッパ爪155a,155bが各ダイD1,D2に対応するリフタパイプ51,53の周縁の一部に係止してロック状態となっている。
一方、図14及び図15では、規制解除手段としてのエアシリンダからなるスライドストッパ駆動シリンダ159の駆動により、スライドストッパ155が下タレット13の半径方向内側に向けて図13の位置に対して移動しており、ストッパ爪155a,155bによるリフタパイプ51,53の上昇規制を解除したアンロック状態となっている。したがって、図14及び図15の状態では、ワークWに対して打ち抜き加工を行うべく、各ダイD1,D2を上昇させる際に、リフタパイプ51,53を上昇させることができる。
すなわち、ダイ上昇規制部材であるスライドストッパ155は、ダイD1,D2の上面に位置する上昇規制位置と、ダイD1,D2の上面から外れた上昇許容位置との間を移動可能である。
なお、図15では、図13,図14に示してあるスライドストッパホルダ157を省略している。
スライドストッパ155は、下タレット13の半径方向内側に向けて突出する突出部155cを備え、この突出部155cの下面に可動片161をねじ163により固定している。可動片161は突出部155cから、下タレット13の半径方向と直交する方向に突出しており、この突出した部分をガイドピン165(図14,図15参照)に対してその軸方向に移動可能に連結している。
ガイドピン165は、下タレット13の半径方向内側に対応するダイホルダ47Aの側面上部から、下タレット13の半径方向内側に向けて延びており、その先端にばね受け部167を形成し、該ばね受け部167と可動片161との間に弾性手段としてのロックスプリング169を設けている。
すなわち、図13では、可動片161がロックスプリング169により押されてダイホルダ47Aに当接し、これとともにスライドストッパ155が同方向に移動して図13のロック状態となる。これに対して図14及び図15では、スライドストッパ駆動シリンダ159の駆動によって、スライドストッパ155をロックスプリング169に抗して引き寄せてアンロック状態としている。
なお、上記図13〜図15に示したスライドストッパ155や可動片161,ガイドピン165及びロックスプリング169などは、図1や図3などでは省略しているが、ダイ47Aのほか他のダイ47のすべてに設けてある。
但し、図16に示すように、図3の中央トラックT2に位置する例えばダイホルダ47(47B)については、1個の大径のダイDを備えているので、図13〜図15に示した長尺のスライドストッパ155に代えて短尺のスライドストッパ155Aを用いている。短尺のスライドストッパ155Aは、下タレット13の半径方向内側に突出している突出部155Acと反対の先端側にストッパ爪155Aaを備えている。
また、図16では、図13,図14の長尺のスライドストッパホルダ157に代えて短尺のスライドストッパホルダ157Aを用いており、このスライドストッパホルダ157Aから突出した部位のスライドストッパ155A先端のストッパ爪155Aaによって、リフタパイプ59の上面を係止している。
スライドストッパ155やスライドストッパ155Aを、図13や図16のロック状態から図14のアンロック状態となるよう駆動するスライドストッパ駆動シリンダ159は、図1の加工位置に対応する固定テーブル31の下面(図1中でダイホルダ47Aの右側の下面)に、図示しない取付ブラケットを介して取り付けてあり、下タレット13に対しては離間した状態となっている。
すなわち、スライドストッパ駆動シリンダ159は、すべてのダイホルダ47に対して兼用する1個のみを上記図1の加工位置に対応して設置してあるだけで、上記加工位置にて駆動することで、スライドストッパ155やスライドストッパ155Aをアンロック状態とすることができる。
スライドストッパ駆動シリンダ159は、ピストンロッド171をダイホルダ47(47A)に向けて突出させるとともに、上面にスライドブラケット173を備えている。スライドブラケット173は、スライドストッパ駆動シリンダ159の上面に対しピストンロッド171の突出方向に沿ってスライド移動可能なスライド部173aと、スライド部173aの先端から下方に向けて直角に屈曲してピストンロッド171の先端が連結される連結部173bとを備えている。
スライド部173aの上面には、連結板175を複数のねじ177により固定しており、連結板175の先端には凹部175aを形成している。凹部175aは、下タレット13の半径方向両側に側壁175a1,175a2をそれぞれ備え、下タレット13の半径方向と直交する円周方向両側は開放している。一方、スライドストッパ155の突出部155cは、スライドストッパ駆動シリンダ159側の端部下面に、凹部175aに入り込むローラ179を設けている。
すわなち、図13のロック状態から、スライドストッパ駆動シリンダ159を駆動してピストンロッド171を後退させると、凹部175aの側壁175a2がローラ179に引っ掛かってスライドストッパ155を後退移動させ図14,図15のアンロック状態となる。このアンロック状態で、図14に示すように、加工に使用するダイD(D1)をそのリフタパイプ51とともに上昇させて加工に備える。
また、加工後、図14の状態からダイD(D1)をそのリフタパイプ51とともに下降させた後、図13のようにスライドストッパ駆動シリンダ159を駆動してピストンロッド171を前進させると、スライドストッパ155はストッパ爪155a,155bがダイD(D1,D2)に係止してロック状態となる。
このロック状態では、ロックスプリング169により可動片161がダイホルダ47(47A)に当接した図13の状態、つまりスライドストッパ155のロック状態が保持される。
下タレット13が図13の状態から回転するときには、ローラ179は、凹部175aの開放する側から凹部175aの外部に移動する。逆に、ダイホルダ47(47A)が、スライドストッパ駆動シリンダ159を設置してある図13の加工位置に移動するときには、ローラ179は凹部175aの開放する側から凹部175a内に入り込む。
次に、第3の実施形態の作用を説明する。第3の実施形態においても、前記した第1の実施形態と同様に、下タレット13を回転させる際には、図1に示す昇降ラム65を図1の状態から下降させてダイDを固定テーブル31より下方に位置させておく。そして、下タレット13の回転により、ダイD2を設けてあるダイホルダ47Aが図1の加工位置に達すると、図13に示すように、スライドストッパ155の突出部155cの先端下部に設けてあるローラ179が、固定テーブル31に設けてあるスライドストッパ駆動シリンダ159側の連結板175の凹部175aに入り込む。
次に、この状態でスライドストッパ駆動シリンダ159をピストンロッド171が後退するよう駆動することで、図14のようにスライドストッパ155を引き込み、ロック爪155a,155bによるリフタパイプ51,53に対する係止を解除してアンロック状態とする(図15参照)。
上記図15のアンロック状態で、図1に示すように、昇降ラム65を上昇させることで、アタッチメント67を介してリフタパイプ53を上昇させ、このリフタパイプ53に対応するダイD2の上端面が、ワークWの搬送経路となるパスラインPLとなるまで上昇する。
この状態で、第1の実施形態と同様にして、ストライカ23をダイD2に対応する位置とした状態で、ダイD2に対応するパンチPを打圧して打ち抜き加工を行う。
ダイD2を使用して打ち抜き加工を行った後は、昇降ラム65を下降させることで、リフタパイプ51,53をダイD1,D2とともに下降させ、ダイD1,D2の上端がダイホルダ47Aの上端とほぼ同一面となるようにする。そして、この状態で、図13に示すように、スライドストッパ駆動シリンダ159を前進駆動することで、スライドストッパ155をダイホルダ47A側に移動させて、ロック爪155a,155bによりリフタパイプ51,53を係止してロック状態とする。
なお、上記したロック状態は、ロックスプリング169が可動片161を介してスライドストッパ155をダイホルダ47A側に押圧することで保持される。
上記スライドストッパ155のロック状態への移動は、例えばスライドストッパ駆動シリンダ159の作動位置により検知するか、あるいは、スライドストッパ155を直接検知するセンサをダイD側に別途設けて検知すればよい。これにより、ロック爪155a,155bがリフタパイプ51,53の上端に係止して該リフタパイプ51,53がダイホルダ47A内の正規の位置に入り込んだことを確認することができる。
その結果、加工終了後に、加工に使用したダイDに対応するリフタパイプの上部が、下タレット13の回転によって、固定テーブル31に干渉することを防ぐことができ、これら固定テーブル31やリフタパイプの損傷を未然に防ぐことができる。
また、本実施形態では、第1の実施形態における図4でも図示していたが、各リフタパイプ51,53,59は、図4に示すように、図4中で上下方向に対応する軸方向に貫通する貫通孔51a,53a,59aをそれぞれ備え、この貫通孔51a,53,59aaのダイD(D1,D2,D)よりも下方には、エジェクタパイプ181,183,185を挿入配置している。
エジェクタパイプ181,183,185は、図1の加工位置に対して下タレット13を所定角度回転した位置のダイ交換位置にて、その下方から図示しない押圧部材によって上方に向けて押圧することで、ダイD(D1,D2,D)をリフタパイプ51,53,59に対して上方に突出させ、この状態で、図示しない自動工具交換装置(ATC)である自動金型交換装置の金型グリッパにより保持して取り外すことになる。
なお、金型グリッパによりダイDを把持可能とするためには、下タレット13の外径を上タレット7の外径より大きくするとともに、各タレット13,7の回転中心を互いに偏心させることで、下タレット13のダイ交換部位を上タレット7に対して半径方向外側にずらす必要がある(例えば特開2000−140957号公報参照)。
エジェクタパイプ181,183,185は、円筒部181a,183a,185aの上部に大径部181b,183b,185bを形成してあり、大径部181b,183b,185bの外径はダイD(D1,D2,D)の外径と同等かやや小径としてある。
リフタパイプ51,53,59の貫通孔51a,53a,59aは、上部に大径孔部51b,53b,59bを備えており、大径孔部51b,53b,59bの下部に、エジェクタパイプ181,183,185の大径部181b,183b,185bを挿入配置するとともに、大径孔部181b,183b,185bの上部にダイD(D1,D2,D)を挿入配置している。この状態で、ダイD(D1,D2,D)は、その上端面がリフタパイプ51,53,59の上端面とほぼ同一面か僅かに上方に突出している。
すなわち、大径孔部51b,53b,59bの下端の段部51c,53c,59cにエジェクタパイプ181,183,185の大径部181b,183b,185bの下端が係止された状態となり、この状態で、ダイD1,D2,Dが大径部181b,183b,185b上に載置された状態となる。
なお、このときダイD(D1,D2,D)は大径孔部51b,53b,59bに対して回転が規制されている。
この状態で、エジェクタパイプ181,183,185が図4の状態からリフタパイプ51,53,59に対して上方に移動することで、その大径部181b,183b,185bがダイD1,D2,Dを上方に向けて押し上げて、ダイD1,D2,Dをリフタパイプ51,53,59の上端面から突出させることができる。そして、この突出状態のダイD1,D2,Dを、前記した図示しない自動金型交換装置の金型グリッパで把持して取り外すことが可能となる。
なお、図4(a),(b)のリフタパイプ53,59は、ダホルダ47(47A,47B)から上方に突出しているが、この突出状態はリフタパイプ53,59上のダイD2,Dが加工に使用する状態であり、この状態でエジェクタパイプ183,185を上昇させてダイD2,Dに対して交換作業を行うものではない。また、エジェクタパイプは、上記したダイD1,D2,D以外の他のダイDについても同様に設けてある。
ここで、本実施形態では、前記図13〜図15に示したように、加工に使用したダイDを備えるダイホルダ47(47A)が、図1の加工位置にある状態から下タレット13が回転してダイ交換位置まで移動位置決めされた状態では、スライドストッパ155のストッパ爪155a,155bによりリフタパイプ51,53を係止して上方への移動を規制している。
このため、加工に使用した例えばダイD2を交換のため取り外すべくエジェクタパイプ183を上昇させる際には、スライドストッパ155によってリフタパイプ51の上昇を抑えることで、ダイD2をリフタパイプ51に対して確実に上昇させることができ、ダイ交換作業を効率よく実施することができる。
なお、第3の実施形態では、ダイは、ダイ本体としてのダイDと、このダイDを上部に備えるダイ支持部材となるリフタパイプとを含み、スライドストッパ155は、このリフタパイプの上面に位置する上昇規制位置と、リフタパイプの上面から外れた上昇許容位置との間を移動可能となっている。
また、本実施形態では、複数のダイD及びパンチPは、個別に回転可能な下タレット13及び上タレット7にそれぞれ円周方向に沿って設けられ、下タレット13に円周方向に沿って設けた各ダイDに対応してスライドストッパ155をそれぞれ個別に設け、これら各スライドストッパ155は、ロックスプリング169により押圧されて前記上昇規制位置に設定される一方、下タレット13が、加工に使用するダイDを前記打ち抜き加工位置となるよう回転位置決めされた状態で、ロックスプリング169に抗して前記上昇許容位置に移動させるスライドストッパ駆動シリンダ159を設けている。
このため、スライドストッパ駆動シリンダ159は、すべてのダイホルダ47に対して兼用する1個のみで済み、簡素な構成でスライドストッパ155やスライドストッパ155Aを、加工位置にてアンロック状態とすることができる。
なお、上記したスライドストッパ155を備える第3の実施形態の構成は、図9〜図12に示した第2の実施形態にも適用できる。