JP2011127141A - 電着塗装用表面処理金属材料、および化成処理方法 - Google Patents

電着塗装用表面処理金属材料、および化成処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、袋構造部など特殊な構造を有する金属材料を被処理材とする場合においても、優れた耐食性、塗膜密着性、および電着塗装付き廻り性を示す電着塗装用表面処理金属材料を提供することを課題とする。
【解決手段】金属材料と、その表面に形成されるスズ原子、ジルコニウム原子およびフッ素原子を含有する化成皮膜とを有する電着塗装用表面処理金属材料であって、金属材料側とは反対側の表面から前記金属材料側の表面に向けて、皮膜中におけるスズ原子とジルコニウム原子との含有割合が、スズ原子の含有割合の高い組成からジルコニウム原子の含有割合の高い組成へと変化する傾斜構造を前記化成皮膜が有する、電着塗装用表面処理金属材料。
【選択図】なし

Description

本発明は、電着塗装用表面処理金属材料、および化成処理方法に関する。より詳しくは、電着塗装に適した傾斜組成構造を有する化成皮膜を備える金属材料、および、自動車車体に代表される金属材料の表面に、電着塗装付き廻り性、塗膜密着性(塗料密着性)および耐食性に優れる化成皮膜(表面処理皮膜)を形成させる化成処理方法(金属表面処理方法)に関する。
塗装後の耐食性に優れる表面処理皮膜を金属表面に析出させる手法としては、現在、リン酸亜鉛処理法やクロメート処理法が一般的に用いられている。リン酸亜鉛処理法では、熱延鋼板や冷延鋼板等の鋼、亜鉛めっき鋼板および一部のアルミニウム合金表面に耐食性に優れる皮膜を析出させることができる。
しかしながら、リン酸亜鉛処理を行う際には、反応の副生成物であるスラッジの発生が避けられず、かつ、アルミニウム合金の種類によっては塗装後の耐糸錆性を十分に確保することができない。
その一方で、アルミニウム合金に対しては、クロメート処理を施すことによって十分な塗装後の性能を確保することが可能である。しかしながら、昨今の環境規制のために、処理液中に有害な6価クロムを含むクロメート処理は敬遠される方向にある。
そこで、現在までに、処理液中に有害成分を含まない表面処理方法として、種々の方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、ジルコニウム、チタンおよびハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種、フッ素、並びに、所定の種類の密着性および耐食性付与剤からなる化成処理剤が記載されている。
また、特許文献2には、ジルコニウム、チタンおよびハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種、フッ素、所定の種類の密着性付与剤、および、化成反応促進剤からなる化成処理剤が記載されている。
更に、特許文献3には、所定量のジルコニウムイオンおよびスズイオンを含む、pHが1.5〜6.5のカチオン電着塗装用金属表面処理液が記載されている。
特開2004−218073号公報 特開2004−218075号公報 特開2009−84702号公報
本発明者は、上述した特許文献1に記載されている化成処理剤について検討した結果、銅イオンの濃度など化成処理剤の組成、および、被処理材料である鉄系金属材料、亜鉛系金属材料、アルミニウム系金属材料等の金属材料の種類によっては、得られる表面処理金属の耐食性の改善が十分でないことを見出した。言い換えると、鉄系金属材料、亜鉛系金属材料、アルミニウム系金属材料等の種類の異なる金属材料に対して、同一組成の化成処理剤を用いて処理した場合、いずれかの種類の表面処理された金属材料においてその性能(例えば、耐食性)が必ずしも満足できるものではなく、各種の金属材料に対して同一組成の化成処理剤では処理できないことを見出した。
また、本発明者は、上述した特許文献2に記載されている化成処理剤について検討した結果、該処理剤を用いて得られる表面処理金属の電着塗装時の塗装の付き廻り性(以下、「電着塗装付き廻り性」ともいう。)が悪く、袋構造物を有する金属材料(例えば、自動車車体のような輸送用の構造物)には不向きであることを見出した。
さらに、本発明者は、上述した特許文献3に具体的に記載されている硫酸錫や酢酸錫を用いたカチオン電着塗装用金属表面処理液について検討した結果、使用される金属表面処理液の経時安定性が必ずしも十分ではないことを見出した。例えば、硫酸錫や酢酸錫などのスズイオン(2価)と酸化剤との組み合わせを用いると十分な処理液安定性は得られず、処理液中において数時間で酸化され、4価の難溶性の酸化スズになる。結果として、処理液を連続使用することができず、工業的な利用という観点からは、必ずしも満足いくものではなかった。さらには、該処理液を用いた場合、必ずしも化成皮膜として十分なスズ付着量、ジルコニウム付着量が得られず、結果として、実用上十分な耐食性、塗膜密着性、または電着塗装付き廻り性が得られないことが見出された。
本発明は、上記実情に鑑みて、袋構造部など特殊な構造を有する金属材料を被処理材とする場合においても、優れた耐食性、塗膜密着性、および電着塗装付き廻り性を示す電着塗装用表面処理金属材料を提供することを第一の課題とする。
さらに、本発明は、鉄系金属材料、亜鉛系金属材料、アルミニウム系金属材料等の幅広い金属材料に対して適用でき、優れた耐食性、塗膜密着性、および電着塗装付き廻り性を示す電着塗装用表面処理金属材料を得ることができ、連続使用に際しても所望の効果を継続し得る金属材料の化成処理方法を提供することを第二の課題とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく引き続き鋭意研究したところ、スズ原子、ジルコニウム原子、およびフッ素原子を含み、その表面においてフッ素原子とスズ原子とが所定の比率含まれ、さらにスズ原子とジルコニウム原子の混合比率が変化する傾斜組成構造を有する化成皮膜を用いることによって、上記第一の課題が解決されることを見出した。
また、本発明者らは、ヘキサフルオロ珪酸化合物が処理液中の4価スズイオンの安定化に極めて有効であり、特に、ヘキサフルオロ珪酸イオンモル濃度とスズイオンモル濃度の最適な比率と濃度を維持することにより、適応するpH領域で長期間にわたって4価スズイオンを安定化できることを見出した。結果として、所望の膜特性を示す化成皮膜を製造でき、長時間の連続使用にも耐えうる金属材料の化成処理方法を提供でき、上記第二の課題が解決されることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(15)を提供するものである。
(1) 金属材料と、その表面に形成されるスズ原子、ジルコニウム原子およびフッ素原子を含有する化成皮膜とを有する電着塗装用表面処理金属材料であって、
前記化成皮膜中におけるスズ原子とジルコニウム原子との含有割合が、金属材料側とは反対側の表面から前記金属材料側の表面に向けて、スズ原子の含有割合の高い組成からジルコニウム原子の含有割合の高い組成へと変化する傾斜構造を前記化成皮膜が有し、
前記化成皮膜中、金属材料側とは反対側の表面から、前記化成皮膜の全体厚みの1/10に相当する深さの上層位置における、スズ原子とジルコニウム原子との合計量に対するスズ原子の含有割合が40〜100原子%であり、
前記化成皮膜中、金属材料側とは反対側の表面から、前記化成皮膜の全体厚みの9/10に相当する深さの下層位置における、スズ原子とジルコニウム原子との合計量に対するスズ原子の含有割合が10原子%以下であり、
前記上層位置におけるフッ素原子/スズ原子の原子比率が0.5〜1.5である電着塗装用表面処理金属材料。
(2) 前記化成皮膜中、前記金属材料側とは反対側の表面から、前記化成皮膜の全体厚みの1/2に相当する深さの中層位置における、スズ原子とジルコニウム原子との合計量に対するスズ原子の含有割合が10〜50原子%であり、
該中層位置におけるスズ原子の含有割合が前記上層位置におけるスズ原子の含有割合よりも低く、かつ、前記下層位置におけるスズ原子の含有割合よりも高い、(1)に記載の電着塗装用表面処理金属材料。
(3) 前記化成皮膜中において、スズ含有量が3〜80mg/m2、ジルコニウム含有量が10〜150mg/m2である、(1)または(2)に記載の電着塗装用表面処理金属材料。
(4) 前記化成皮膜が、さらにアルミニウム原子を含有する、(1)〜(3)のいずれかに記載の電着塗装用表面処理金属材料。
(5) 金属材料に対する前記化成皮膜の被覆率が80〜100%である、(1)〜(4)のいずれかに記載の電着塗装用表面処理金属材料。
(6) 前記金属材料が、冷延鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板、亜鉛板、亜鉛合金板、亜鉛めっき鋼板、および合金化亜鉛めっき鋼板からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属材料である、(1)〜(5)のいずれかに記載の電着塗装用表面処理金属材料。
(7) 化成処理液を用いて、金属材料の表面処理を行う金属材料の化成処理方法であって、
前記化成処理液が、4価のスズイオン(A)、ジルコニウムイオン(B)、ヘキサフルオロ珪酸イオン(C)およびフッ素イオン(D)を含有し、
スズイオンの含有量が3〜100質量ppm、ジルコニウムイオンの含有量が10〜1000質量ppm、ヘキサフルオロ珪酸イオンの含有量が1〜1000質量ppmであり、かつ、ヘキサフルオロ珪酸イオンのモル濃度(CC)とスズイオンのモル濃度(CA)の比率(CC/CA)が0.5〜5.0であり、
さらに、前記化成処理液のpHが2.5から5.0の範囲であることを特徴とする金属材料の化成処理方法。
(8) 前記化成処理液が、さらに、アルミニウムイオン(E)を含有する、(7)に記載の金属材料の化成処理方法。
(9) 前記化成処理液が、さらに、珪素化合物(G)を含有する(7)または(8)に記載の金属材料の化成処理方法。
(10) 前記珪素化合物(G)が、カップリング剤およびコロイダルシリカから選ばれる少なくとも1種を含み、前記化成処理液中の前記珪素化合物(G)の含有量が5〜1000質量ppmである、(9)に記載の金属材料の化成処理方法。
(11) 前記化成処理液が、さらにカチオン性水溶性樹脂(F)を含有する、(7)〜(10)のいずれかに記載の金属材料の化成処理方法。
(12) 前記カチオン性水溶性樹脂(F)が、アミノ基を含有する水溶性オリゴマーおよび水溶性ポリマーから選ばれる少なくとも1種を含み、前記化成処理液中の前記樹脂(F)の含有量が10〜1000質量ppmである、(11)に記載の金属材料の化成処理方法。
(13) 前記化成処理液が、さらに、金属キレート剤(H)を含有する(7)〜(12)のいずれかに記載の金属材料の化成処理方法。
(14) 前記キレート剤(H)が、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、有機フォスフォン酸、ニトリロトリ酢酸およびエチレンジアミン四酢酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、前記化成処理液中の前記キレート剤(H)の含有量が5〜500質量ppmである、(13)に記載の金属材料の化成処理方法。
(15) 前記金属材料と前記化成処理液との相対的な液流速度を1〜20cm/secとする、(7)〜(14)のいずれかに記載の金属材料の化成処理方法。
本発明によれば、袋構造部など特殊な構造を有する金属材料を被処理材とする場合においても、優れた耐食性、塗膜密着性、および電着塗装付き廻り性を示す電着塗装用表面処理金属材料を提供することができる。
さらに、本発明によれば、鉄系金属材料、亜鉛系金属材料、アルミニウム系金属材料等の幅広い金属材料に対して適用でき、優れた耐食性、塗膜密着性、および電着塗装付き廻り性を示す電着塗装用表面処理金属材料を得ることができ、連続使用に際しても所望の効果を継続し得る金属材料の化成処理方法を提供することもできる。
本発明の電着塗装用表面処理金属材料は、電着塗装付き廻り性に優れるスズ含有率の高い層が上層に、耐食性に寄与するジルコニウム含有率が高い層が下層に存在する、金属の傾斜組成構造を有する化成皮膜を備える。さらに、該化成皮膜の表面には、フッ素原子とスズ原子との含有比率が所定の範囲を満たす。
このような傾斜組成構造を化成皮膜が有することによって、優れた耐食性、塗装後密着性および電着塗装付き廻り性などの諸特性の両立が可能となっている。このような効果を奏する理由は明確ではないが、本発明者は以下のように推察している。
化成皮膜の下層にあるジルコニウム含有率が高い皮膜層は、緻密で、構造の均一性が高いアモルファス皮膜であるため、高いバリアー性を有する。そのため、腐食環境下においても、耐酸性、耐アルカリ性が維持され、優れた耐食性や塗装後密着性が得られる。
次に、電着塗装付き廻り性については以下のように考えられる。
まず、カチオン電着塗装のメカニズムとしては、通常、金属材料(被処理物)がカソードになるように所定の電位を印加することにより、金属材料表面(界面)のpHが上昇して、塗料が凝集し析出する。
従来知られているリン酸亜鉛系の金属表面処理液を用いて金属材料を処理した際には、その表面に絶縁性のリン酸亜鉛結晶が粒子状に析出した皮膜が形成される。
そのため、そのような皮膜を有する金属材料に所定の電圧を印加した際には、絶縁体である結晶が高い抵抗を示すため、結晶と結晶の隙間に電流が集中する。結果として、局部的に電流密度が高くなるとともに、金属材料表面のpH上昇幅が大きくなり、電着塗料が凝集し析出し易くなると考えられる。
さらに、凝集し析出した塗料が塗膜として融着すると、形成された塗膜の高い抵抗により、結晶と結晶の隙間に集中していた電流が、抵抗の低いところに廻り、その結果、高い電着塗装付き廻り性が発現すると考えられる。
なお、従来のジルコニウム系の金属表面処理液を用いた表面処理後の金属材料表面には、均一で平滑なアモルファス皮膜が形成され、この得られた表面処理金属材料は電着塗装付き廻り性に劣る。その理由としては、得られた表面処理金属材料に所定の電圧を印加した際に、皮膜の平滑性により上述した電流の集中が起こり難いため、結果として電着塗料が凝集し難くなると考えられる。更には、得られる塗膜自体の抵抗も低いため、より電着塗装付き廻り性に劣る結果となると考えられる。
一方、本願発明の電着塗装用表面処理金属材料においては、化成皮膜中の上層部に半導体的特性を示すスズ原子の含有比率の高い領域が存在する。そのため、この領域に電着塗装時の電流が集中し、上述したリン酸亜鉛皮膜と同様の作用(電流集中)が起こり、高い電着塗装付き廻り性も発現すると考えられる。
なお、その際、スズ原子にフッ素原子がドーピングされていると、より電流が集中し、高い電着塗装付き廻り性が得られる。
また、本発明の金属表面処理用処理方法のポイントのひとつは、pH2.5〜5.0領域で、4価のスズイオンを安定化させることである。そのためにはヘキサフルオロ珪酸イオンが必要不可欠成分である。このような効果を奏する理由は明確ではないが、本発明者は以下のように推察している。2価スズイオンは単純イオンとして存在しているのに対して、4価スズイオンは共有結合性が高く、4個の共有結合と2個の配位結合が形成され、錯体を作り易い。その際、比較的立体障害の大きいヘキサフルオロ珪酸イオンと4価スズイオンとで錯体を形成させると、酸化されにくく、本発明のpH領域では、長期的に錯体を維持できる。
一方、素材界面でのpH上昇(化成反応)に際しては、スズイオンと配位結合しているヘキサフルオロ珪酸イオンの一部が加水分解され、処理液中におけるスズ錯体の溶解度が低下するため、フッ素原子をドーピングしたスズ原子が素材表面に析出できるものと推定している。スズの析出反応は、スズイオンがヘキサフルオロ珪酸イオンで安定化されていることから、ジルコニウムの析出反応よりも、遅れてスズが析出される。よって、得られる化成皮膜は、電着塗装付き廻り性に優れるスズ含有率の高い層が上層に、耐食性に寄与するジルコニウム含有率が高い層が下層に位置する傾斜構造の化成皮膜が得られる。
図1は、本発明の電着塗装用表面処理金属材料の一実施形態の模式的断面図である。 図2は、電着塗装の付き廻り性試験(4枚ボックス試験)に使用するボックスの見取り図である。
以下、本発明の電着塗装用表面処理金属材料、および金属材料の化成処理方法(以下、単に「本発明の処理方法」とも称する)について詳細に説明する。
まず、電着塗装用表面処理金属材料について、図1に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<電着塗装用表面処理金属材料>
図1は、本発明の電着塗装用表面処理金属材料の一実施形態の模式的断面図である。
同図に示す電着塗装用表面処理金属材料10は、金属材料12と化成皮膜14とを備える積層構造を有する。なお、該図によって、金属材料12および化成皮膜14の厚みは制限されない。また、化成皮膜14は、金属材料12の片面のみならず、両面(または全面)に配置されていてもよい。
まず、以下に、金属材料12および化成皮膜14について詳述する。
<金属材料>
金属材料12は、後述する化成処理液の被対象物であり、その形状および金属の種類などは特に限定されない。
金属材料12の形状としては、例えば、板状、円盤状などが挙げられる。中でも、袋構造部を有する形状が好ましい。袋構造部を有する形状とは、自動車車体に代表される複雑な形状であって、該構造を有する金属材料は、カチオン電着塗装を施しても電流が流れ難く電着塗膜が形成され難い部分(袋構造部)を有する金属材料を意味する。袋構造部を有する金属材料を例示すると、自動車車体、自動車部品、建築材料、建設機械部品、運搬機械部品、スチール家具などが挙げられる。
また、金属材料の種類としては特に限定されないが、例えば、鉄系金属材料、亜鉛系金属材料、アルミニウム系金属材料などが好適に適用される。
上記鉄系金属材料は特に限定されないが、例えば、冷間圧延鋼板、熱間圧延鋼板等の鋼板;鋳鉄;焼結材;等が挙げられる。
上記亜鉛系金属材料は特に限定されないが、例えば、亜鉛ダイキャスト、亜鉛含有めっき等が挙げられる。亜鉛含有めっきは、亜鉛または亜鉛と他の金属(例えば、ニッケル、鉄、アルミニウム、マンガン、クロム、マグネシウム、コバルト、鉛、アンチモン等の少なくとも1種との合金および不可避不純物)によりめっきされたものである。めっき方法は特に限定されず、例えば、溶融めっき、電気めっき、蒸着めっき等が挙げられる。
上記アルミニウム系金属材料は特に限定されないが、例えば、5000系アルミニウム合金、6000系アルミニウム合金等のアルミニウム合金板材;ADC−12に代表されるアルミニウム合金ダイキャスト;等が挙げられる。
本発明においては、2種以上の金属材料を同時に表面処理することもできる。2種以上の金属材料を同時に表面処理する場合は、異種金属同士が接触しない状態で表面処理されてもよく、溶接、接着、リベット止め等の接合方法によって異種金属同士が接合接触した状態で表面処理されてもよい。
<化成皮膜>
化成皮膜14は、上述の金属材料12の表面上に形成されるスズ原子、ジルコニウム原子、およびフッ素原子を含有する皮膜で、該皮膜を有することにより優れた耐食性、塗膜密着性、および電着塗装付き廻り性などが実現される。
化成皮膜14は、その皮膜中におけるスズ原子とジルコニウム原子との含有割合が、金属材料12側の表面とは反対側の表面から金属材料12側に向けて、スズ原子の含有割合の高い組成からジルコニウム原子の含有割合の高い組成へと変化する傾斜構造(傾斜組成構造)を有する。
なお、化成皮膜14全体が傾斜構造となっていることが好ましく、本発明の効果を損なわない限り、皮膜中の一部に該傾斜構造以外の構造が含まれていてもよい。
つまり、化成皮膜14においては、金属材料12側の表面がジルコニウム含有比率の高い領域(層)で構成され、一方、金属材料12側とは反対側の表面がスズ含有比率の高い領域(層)で構成されている。
より具体的には、図1に示すように化成皮膜14中の所定の位置を上層位置(14Aによって示される位置、以後上層位置14Aとも称す)、中層位置(14Bによって示される位置、以後中層位置14Bとも称す)、下層位置(14Cによって示される位置、以後下層位置14Cとも称す)とした場合、上層位置14Aにおけるスズ原子とジルコニウム原子との合計量(合計含有重量)に対するスズ原子の原子含有比率[{スズ原子含有量/(スズ原子含有量+ジルコニウム原子含有量)}×100]は、中層位置14Bにおける該原子含有比率に比べて高いことが好ましい。さらに、中層位置14Bにおけるスズ原子の原子含有比率は、下層位置14Cにおける該原子含有比率に比べて高いことが好ましい。つまり、上層位置14Aから下層位置14Cに向かって、スズ原子とジルコニウム原子との合計量に対するスズ原子の原子含有比率は減少(漸減)することが好ましい。言い換えると、上層位置14A、中層位置14B、下層位置14Cにおいて、その順序で段階的にスズ原子とジルコニウム原子との合計量(合計含有重量)に対するスズ原子の原子含有比率が減っていく傾斜構造を有することが好ましい。
より詳細には、上層位置14Aにおいて、該原子含有比率は、40〜100原子%であり(より好ましくは、50〜100原子%)、下層位置14Cにおいては、10原子%以下である(より好ましくは、8原子%以下。なお、下限としては0原子%が好ましい。)。なお、中層位置14Bにおいては、10〜50原子%であることが好ましい(より好ましくは、20〜40原子%)。各層部分が上記範囲内であると、より優れた耐食性および電着塗装付き廻り性が得られる。
なお、上層位置14Aにおいて、上記スズ原子の原子含有比率が40原子%未満の場合、良好な付き廻り性が得られない。また、下層位置14Cにおいて、上記スズ原子の原子含有比率が10原子%を超えると、耐食性が著しく劣る。
さらに、中層位置14Bにおいて、上記スズ原子の原子含有比率が50原子%を超えると、ジルコニウム原子の均一性が損なわれ、耐食性が劣る場合があり好ましくない。また、中層位置14Bにおいて、上記スズ原子の原子含有比率が10原子%未満の場合、上層と中層の密着性が劣る場合があり好ましくない。
なお、上層位置14Aと中層位置14Bとのスズ原子の原子含有比率の差は、30〜70原子%であることが好ましく、40〜60原子%であることがより好ましい。上記範囲内であれば、得られる耐食性、密着性および電着塗装付き廻り性がより優れる点で好ましい。
また、中層位置14Bと下層位置14Cとのスズ原子の原子含有比率の差は、10〜40原子%であることが好ましく、15〜30原子%であることがより好ましい。上記範囲内であれば、得られる耐食性および密着性がより優れる点で好ましい。
なお、該皮膜中におけるスズ原子の含有量が金属材料12側とは反対側の表面から金属材料12側の方向に向かって減少し、かつ、該皮膜中におけるジルコニウム原子の含有量が金属材料12側とは反対側の表面から金属材料12側の方向に向かって増大する傾斜組成構造であることが好ましい。
上記スズ原子の原子含有比率は、公知の測定方法(X線光電子分光分析装置(以下、「XPS」ともいう)、例えば、島津製作所製ESCA−850M)などによって測定することができる。なお、XPSを用いて測定する場合、その測定範囲は通常直径6mmの円面積である。
また、化成皮膜14中の上層位置14Aは、金属材料12側とは反対側の表面から金属材料12側に向かって、化成皮膜14の全体厚みの1/10に相当する深さの位置(領域)を意味する。化成皮膜14中の中層位置14Bは、金属材料12側とは反対側の表面から金属材料12側に向かって、化成皮膜14の全体厚みの1/2に相当する深さの位置(領域)を意味する。化成皮膜14中の下層位置14Cは、金属材料12側とは反対側の表面から金属材料12側に向かって、化成皮膜14の全体厚みの9/10に相当する深さの位置(領域)を意味する。
化成皮膜14の上層位置14Aにおけるフッ素原子/スズ原子の原子比率が0.5〜1.5であり、好ましくは0.7〜1.2である。
該原子比率が0.5を下回ると、電着塗装付き廻り性が劣る。また、該原子比率が1.5を上回ると、電着塗膜との密着性が劣る。
該原子比率は、XPS(島津製作所製ESCA−850M)を用いて測定される。なお、該原子比率は、スズ原子の検出ピークの最大値の時におけるフッ素原子の検出ピークの比率から計算したものである。なお、化成皮膜14中におけるフッ素原子含有量は特に制限されないが、電着塗装付き廻り性の点から、付着量が1〜20mg/m2であることが好ましく、2〜10mg/m2であることがより好ましい。
化成皮膜14中において、スズの形態は特に限定されず、例えば、酸化物(酸化スズ)、水酸化物、フッ化物の形態などが挙げられる。また、ジルコニウムの形態も特に限定されず、例えば、酸化物(酸化ジルコニウム)、水酸化物、フッ化物の形態などが挙げられる。なお、化成皮膜14中には、酸素原子が含まれていてもよい。
(化成皮膜の好適態様)
化成皮膜14の好適な態様の一つとして、付着量がジルコニウムとして10〜150mg/m2(好ましくは、20〜100mg/m2)、スズとして3〜80mg/m2(好ましくは、3〜50mg/m2)である化成皮膜が挙げられる。化成皮膜が上記組成および含有量であれば、得られる耐食性、密着性および電着塗装付き廻り性が優れる点で好ましい。
スズの付着量が3mg/m2未満の場合、電着塗装の付き廻り性が劣る場合があり、80mg/m2を超えると、電着塗膜との密着性が劣り、耐食性が低下する場合がある。
なお、上記付着量は、蛍光X線分光分析装置など公知の測定手段を用いることにより得ることができる。
ジルコニウムの付着量が10mg/m2未満の場合、耐食性が劣る場合がある。ジルコニウムの付着量が150mg/m2を超える場合、化成皮膜中のジルコニウム含有率の高い層において凝集破壊が起こり、塗膜密着性が劣る場合がある。
化成皮膜14の好適な他の態様の一つとして、化成皮膜がアルミニウム原子を含むことが好ましい。アルミニウム原子を含むことにより、得られる化成皮膜の耐食性、塗膜密着性、および電着塗装付き廻り性がより向上する。
なお、化成皮膜14中における含有量としては、アルミニウムとして0.1〜50mg/m2(より好ましくは、0.3〜50mg/m2)が好ましい。
皮膜中のアルミニウムは、可溶性フッ素成分の固定化に作用する。アルミニウムの付着量が0.1mg/m2未満の場合、皮膜中の可溶性フッ素成分が固定化できず、耐食性や塗膜密着性を低下させる場合がある。また、50mg/m2を超える場合、腐食環境下でアルミニウムが溶出し、耐食性が低下する場合がある。
また、化成皮膜14中におけるアルミニウムの形態は特に限定されず、例えば、酸化物、水酸化物、フッ化物の形態などが挙げられる。
化成皮膜14の他の好ましい好適態様として、金属材料12に対する化成皮膜14の被覆率(面積被覆率)が80〜100%であることが好ましく、90〜100%であることがより好ましい。上記範囲内であれば、得られる耐食性および電着塗装付き廻り性がより優れる点で好ましい。
なお、被覆率は、電子線マイクロアナライザー(EPMA)等で金属材料表面をスズおよびジルコニウムの面分析(カラーマッピング)より、画像中における全表面部に対して、表面が化成皮膜で被覆されている部分の面積を測定することによって求められる。
化成皮膜14の他の好ましい好適態様として、後述する珪素化合物を含有することが好ましい。珪素化合物を含有すると、得られる皮膜の耐食性、塗膜密着性がより向上する点で好ましい。
化成皮膜14の膜厚は特に限定されず、例えば、10〜150nmであることが好ましく、20〜100nmであることがより好ましい。上記範囲内であれば、得られた耐食性、密着性および電着塗装付き廻り性の点で好ましい。
<金属材料の化成処理方法>
上述した電着塗装用表面処理金属材料を得るための金属材料の化成処理方法は特に限定されないが、後述する化成処理液に金属材料を接触させる金属材料の化成処理方法により得られることが好ましい。
まず、使用される化成処理液について詳述し、その後処理条件について詳述する。
<化成処理液>
使用される化成処理液は、4価のスズイオン(A)、ジルコニウムイオン(B)、ヘキサフルオロ珪酸イオン(C)およびフッ素イオン(D)を含有し、スズイオンの含有量が3〜100質量ppm(mg/L)、ジルコニウムイオンの含有量が10〜1000質量ppm(mg/L)、ヘキサフルオロ珪酸イオンの含有量が1〜1000質量ppm(mg/L)であり、かつ、ヘキサフルオロ珪酸イオンのモル濃度(CC)とスズイオンのモル濃度(CA)との比率(CC/CA)が0.5〜5.0であり、さらにpHが2.5〜5.0である。
まず、該化成処理液に含まれる化合物およびその含有量について詳述する。
<4価のスズイオン(A)>
スズイオンは、処理液中4価の形態で溶存していることが必要である。
通常、被処理材のアノード部での溶解反応(式1)とカソード部での水の分解反応(式2)により、界面pHが上昇し、不溶性のジルコニウムが析出する。処理液においてスズイオンが2価のスズイオンの形態で溶存していると、被処理材の溶解反応(式1)と2価のスズイオンとの酸化還元反応(式3)が優先し、水の分解反応(式2)に電子が消費されず、界面pH上昇が抑制される。結果として、十分な量のジルコニウムの析出がなされず、満足する塗装後の耐食性や塗装との密着性が得られない。
(例えば、被処理材が鉄材の場合)
Fe → Fe2+ + 2e・・・式1
H2O+2e→2OH+H2↑・・・式2
Sn2++2e→Sn・・・式3
なお、本発明において、処理液中において4価スズイオンを得るために、2価スズイオンと酸化剤を併用し、2価スズイオンから4価スズイオンに酸化させてから使用してもよい。
スズイオンの供給源として、例えば、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、フッ化スズ(II)、ヨウ化スズ(II)、硫酸スズ(II)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、スズ(IV)酸カリウム、スズ(IV)酸ナトリウム、酸化スズ(II)、酸化スズ(IV)等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、スズイオンの供給源は、無水塩あるいは水和物でもよい。
2価スズイオンと併用する酸化剤としては特に限定されず、例えば、過酸化水素、硝酸塩、亜硝酸塩、過マンガン酸塩、塩素酸塩、過硫酸塩、有機過酸化物および臭素酸塩等が挙げられ、過酸化水素、硝酸塩および亜硝酸塩が好ましい。酸化剤の使用量は特に限定されないが、スズイオン(A)100質量部に対して、1〜100質量部(より好ましくは2〜20質量部)が好ましい。
2価スズイオンが処理液中に残存していると、ジルコニウムの析出反応が抑制され、耐食性の低下を招く。また、電着塗装付き廻り性も低下することから、処理する前に、4価スズイオンになっていることを確認することが好ましい。確認方法として、市販の酸化還元電位(ORP)計を用いることにより簡易に確認することができる。2価スズイオンの酸化還元電位は200mV以下、4価スズイオンの酸化還元電位は400mV以上であるため、処理する前に、酸化還元電位が400mV以上であることを確認すれば、処理液のスズは4価であると判断できる。
4価スズイオンは、水溶液中で酸化スズ(IV)になり易く、酸化スズ(IV)は、難溶性であるため、溶液中で長時間、可溶化させ、維持することが難しい。4価スズイオンを処理液中で安定化させるために、後述する水溶性ヘキサフルオロ珪酸イオン(C)が重要な役割を担っている。
また、化成処理液中におけるスズイオンの含有量は、3〜100質量ppmであり、3〜80質量ppmであるのが好ましく、5〜50質量ppmであるのが特に好ましい。
含有量がこの範囲であると、金属材料表面における析出量が適当量となり、幅広い金属材料に対して、耐食性、塗膜密着性に優れ、電着塗装付き廻り性も良好な表面処理を施すことができる。また、3質量ppm未満の場合、十分な電着塗装付き廻り性が得られず、100質量ppmを超える場合は、耐食性、塗膜密着性に劣る結果となる。
<ジルコニウムイオン(B)>
ジルコニウムイオン(B)の供給源としてはジルコニウム原子を含んでいる化合物であれば特に限定されず、例えば、硫酸ジルコニウム、オキシ硫酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウムアンモニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウムアンモニウム、フルオロジルコニウム酸、フルオロジルコニウム錯塩等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、化成処理液中におけるジルコニウムイオンの含有量は、10〜1000質量ppmであり、30〜600質量ppmであるのが好ましく、70〜500質量ppmであるのが特に好ましい。
含有量がこの範囲であると、金属材料表面における析出量が適当量となり、幅広い金属材料に対して、耐食性に優れ、塗膜密着性も良好な表面処理を施すことができる。また、10質量ppm未満の場合、十分な耐食性、塗膜密着性が得られず、1000質量ppmを超える場合は、耐食性、塗膜密着性に劣る結果となる。
<ヘキサフルオロ珪酸イオン(C)>
ヘキサフルオロ珪酸イオン(C)の供給源としては特に限定されないが、例えば、ヘキサフルオロ珪酸、ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム、ヘキサフルオロ珪酸アンモニウム、ヘキサフルオロ珪酸カリウム、ヘキサフルオロ珪酸亜鉛、ヘキサフルオロ珪酸マグネシウム等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、化成処理液中におけるヘキサフルオロ珪酸イオンの含有量は、1〜1000質量ppmであり、5〜600質量ppmであるのが好ましく、5〜400質量ppmであるのが特に好ましい。
含有量がこの範囲であると、処理液中で4価のスズイオンを安定に維持することができ、幅広い金属材料に対して、耐食性に優れ、塗膜密着性も良好で、高い電着塗装付き廻り性が得られる表面処理を施すことができる。また、1質量ppm未満の場合、十分な電着塗装付き廻り性および処理液の安定性が得られず、1000質量ppmを超える場合は、電着塗装付き廻り性に劣る結果となる。
化成処理液中におけるヘキサフルオロ珪酸イオンのモル濃度(CC)とスズイオンのモル濃度(CA)の比率(CC/CA)は、0.5〜5.0であり、1.0〜5.0であることが好ましい。
該比率が0.5未満の場合、スズイオンを処理液中で安定に維持することができず、結果として満足するスズ析出量が得られず、電着塗装付き廻り性が劣る。また、該比率が5.0を超えると、処理液中でスズイオンがより安定化され過ぎて、化成析出反応時、スズが析出し難くなり、電着塗装付き廻り性が劣る。
化成処理液中におけるヘキサフルオロ珪酸イオンのモル濃度(CC)とジルコニウムイオンのモル濃度(CB)の比率(CC/CB)は、0.05〜3が好ましく、0.08〜1がより好ましい。該比率が上記範囲内であれば、耐食性や塗膜密着性の点で好ましい。
<フッ素イオン(D)>
フッ素イオン(D)の供給源としてはフッ素原子を含む化合物であれば特に限定されないが、例えば、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム、フッ化ゲルマニウム、フッ化カリウム、フッ化水素カリウム、フッ化鉄、フッ化ナトリウム、フッ化水素ナトリウム等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
化成処理液において、フッ素イオン濃度は、市販のイオン電極を用いたフッ素イオンメーターで遊離フッ素イオン濃度として測定することができる。化成処理液中におけるフッ素イオン濃度としては100質量ppm以下であるのが好ましく、5〜50質量ppmであるのがより好ましい。
上記フッ素イオン(D)の含有量が上記範囲であると、化成処理液の安定性が良好となり、また耐食性がより向上した表面処理を施すことができ、更に表面処理の連続操業時のスラッジの発生を抑制することができる。
フッ素イオン濃度が高すぎると、化成処理液の安定性が過度に上昇し、耐食性を得るのに十分な表面処理皮膜層が形成され難くなる。一方、フッ素イオン濃度が少な過ぎる場合は、化成処理液と金属材料との界面で生起するエッチングの能力が低下し、部分的(例えば、比較的活性な表面部分)な表面エッチングを起こし、結果として皮膜の均一性が悪くなり耐食性が劣ることになる。また、化成処理液の安定性も低下し、スラッジの発生を抑制しにくくなる。
また、遊離フッ素イオン濃度は、後述するAl等の含有量(添加量)を調節することで調整することもできる。
化成処理液のpHは2.5〜5.0であり、3.0〜4.5であるのが好ましい。
pHがこの範囲であると、上述した4価のスズイオン(A)およびジルコニウムイオン(B)の金属材料表面における析出効率が良好となり、また、表面処理の連続操業時のスラッジの発生を抑制することができる。上記範囲外である場合、化成処理液の安定性に劣り、耐食性、塗膜密着性、電着塗装付き廻り性に劣る結果となる。
なお、処理液のpHを調整する場合、用いられる薬剤は特に限定されない。
このような薬剤としては、具体的には、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素酸、ホウ酸、有機酸等の酸;水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、アルカリ金属塩、アンモニア水、炭酸水素アンモニウム、アンモニウム塩、アミン類等のアルカリが挙げられる。
<アルミニウムイオン(E)>
上述した化成処理液には、さらにアルミニウムイオンが含まれていることが好ましい。アルミニウムイオンを含むことにより、金属材料表面に形成される化成皮膜の耐食性、塗膜密着性、および電着塗装付き廻り性がより向上する。
アルミニウムイオン(E)の供給源としてはアルミニウム原子を含んでいる化合物であれば特に限定されず、例えば、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、フッ化アルミニウム等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、化成処理液中におけるアルミニウムイオンの含有量は特に制限されないが、100〜1500質量ppmが好ましく、150〜1000質量ppmであるのがより好ましく、150〜700質量ppmであるのが特に好ましい。
含有量がこの範囲であると、金属材料表面における析出量が適当量となり、幅広い金属材料に対して、耐食性に優れ、塗膜密着性も良好な表面処理を施すことができる。
化成処理液中におけるヘキサフルオロ珪酸イオンのモル濃度(CC)とアルミニウムイオンのモル濃度(CE)の比率(CC/CE)は、0.001〜0.5が好ましく、0.002〜0.2がより好ましい。該比率が上記範囲内であれば、耐食性や塗膜密着性の点で好ましい。
上述した化成処理液は、本発明の効果を損なわない限り、カチオン性水溶性樹脂(F)、珪素化合物(G)、金属キレート剤(H)など他の任意成分を含んでいてもよい。なかでも、珪素化合物(G)を使用することにより、得られる化成皮膜の耐食性などがより向上する。
以下に、該任意成分について詳述する。
<カチオン性水溶性樹脂(F)>
化成処理液は、さらにカチオン性水溶性樹脂(F)を含有していてもよい。カチオン性水溶性樹脂(F)は、上述した化成処理液の必須成分と同時に析出して皮膜を形成し、塗膜密着性を向上させる効果がある。例えば、化成処理皮膜の上に施される電着塗装用塗料が密着性の悪い場合により有効である。
カチオン性水溶性樹脂(F)としては特に限定されないが、アミノ基含有の水溶性オリゴマーおよび水溶性ポリマーから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。具体的には、ポリビニル系、ポリビニルフェノール系、フェノールホルマリン縮合物系などのアミノ基含有オリゴマー(分子量2000〜10000)またはアミノ基含有ポリマー(10000〜30000)(例えば、ポリエチレンイミン)が好ましい。化成反応を阻害しないためには、分子量が低めのオリゴマータイプの方が好ましい。
化成処理液中におけるカチオン性水溶性樹脂(F)の含有量は特に制限されないが、10〜1000質量ppmが好ましく、10〜400質量ppmがより好ましい。含有量が少なすぎると、塗膜密着性の改善効果が小さい。また、含有量が多すぎると、経済的に好ましくなく、さらに化成反応を阻害する場合があり好ましくない。
<珪素化合物(G)>
化成処理液は、さらに珪素化合物(G)を含有していてもよい。珪素化合物(G)は、上述した化成処理液の必須成分と同時に析出して皮膜を形成し、耐食性や塗膜密着性を向上させる効果がある。例えば、電着塗装の塗料が安価で密着性の悪い場合には、珪素化合物(G)としてシランカップリング剤を使用することが好ましい。
珪素化合物(G)としては、例えば、シランカップリング剤やコロイダルシリカを用いることができる。
具体的には、アミノ基を含有したアミノシランカップリング剤や、エポキシ基を含有したエポキシシランカップリング剤などが使用できる。また、耐食性を向上させるには、コロイダルシリカも好ましい。なお、この2種類を併用することもある。
化成処理液における珪素化合物(G)の含有量は特に制限されないが、5〜1000質量ppmが好ましく、10〜600質量ppmがより好ましい。含有量が少なすぎると、塗膜密着性の改善効果が小さい。また、含有量が多すぎると、経済的に好ましくなく、さらに化成反応を阻害する場合があり好ましくない。
<金属キレート剤(H)>
化成処理液は、さらに金属キレート剤(H)を含有していてもよい。金属キレート剤(H)は、基本的には皮膜を形成せずに、化成処理液の安定性を高める効果がある。
被処理材である金属材料の前工程(脱脂)から化成処理液を用いた処理工程(化成工程)への金属材料の搬送が多い場合(水洗工程や水量が不足がちなラインなど)には、化成処理液のpHが上昇傾向にあり、その安定性が損なわれる場合がある。このような場合に、金属キレート剤(H)は化成処理液の安定性を向上させる効果がある。
金属キレート剤(H)としては特に限定されないが、例えば、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、有機フォスフォン酸、NTA(ニトリロトリ酢酸)およびEDTA(エチレンジアミン四酢酸)から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
化成処理液中における金属キレート剤(H)の含有量は特に制限されないが、5〜500質量ppmが好ましく、10〜100質量ppmがより好ましい。含有量が少なすぎると、処理液の安定性の改善効果が小さい。また、含有量が多すぎると、経済的に好ましくなく、さらに化成反応を阻害する場合があり好ましくない。
化成処理液に使用される溶媒としては特に限定されないが、通常、水(例えば、工業用水、水道水、脱イオン水、蒸留水)が使用される。なお、化成処理液中に有機溶媒などを添加してもよい。
化成処理液の製造方法は、特に制限されず、構成成分である各化合物を溶媒の水に任意の順序で添加し、攪拌混合して調製される。
<化成処理方法>
本発明の化成処理方法は、金属材料に、上述した化成処理液を接触させる処理液接触工程を有する金属表面の処理方法である。
金属材料に化成処理液を接触させることにより、その表面に上記4価のスズイオン(A)、および上記ジルコニウムイオン(B)の元素の酸化物(例えば、酸化スズ、酸化ジルコニウムなど)、水酸化物、および/またはフッ化物などからなる皮膜が析出し、耐食性、電着塗装付き廻り性ならびに塗膜密着性に優れた表面処理皮膜層が形成され、電着塗装用表面処理金属材料が得られる。
金属材料としては、上述したように、鉄系金属材料、亜鉛系金属材料およびアルミニウム系金属材料が好適に例示される。
また、金属材料は、化成処理液を接触させる表面を予め清浄し、磨耗や成形などにより生じる金属粉や、油や汚れ等を除去しておくことが望ましい。清浄する方法は特に限定されず、脱脂処理、アルカリ洗浄等の従来公知の方法を用いることができる。
金属材料に化成処理液を接触させる方法は特に限定されず、例えば、スプレー処理、浸せき処理、流しかけ処理が挙げられる。
ここで、接触させる際の化成処理液の温度(処理温度)は30〜60℃であることが好ましい。
また、接触させる時間は、金属材料の材質や構造、化成処理液の濃度、処理温度にもよるが、概ね2〜600秒程度であるのが好ましい。例えば、自動車車体に代表される複雑構造物の場合には、袋構造物内部の液置換が必要なため、30〜120秒間接触させるのが好ましい。
本発明の化成処理方法においては、化成処理液が、表面処理の連続操業中に金属材料から溶出する金属イオンを含有しても問題とならない。
例えば、鉄系金属材料からなる金属材料に表面処理を施した場合には、処理液中に鉄イオンが徐々に増加する。また、亜鉛系金属材料の場合には、処理液中に亜鉛イオンが徐々に増加する。アルミニウム系金属材料の場合には、アルミニウムイオンが徐々に増加する。
なお、鉄系金属材料から溶出された2価の鉄イオンが酸化されて3価になると、水酸化鉄を形成し、化成処理液を茶色に着色させることがある。そのため、袋構造物の内部部や板の合わせ目等の液置換が困難な部分に茶色に着色した化成処理液が残ると、美観を損なうことがある。このような場合、溶出金属イオンは遠心分離装置、各種膜によるフィルタリング等で系外に除去するのが好ましい。
このように本発明の処理方法により表面処理された金属材料(電着塗装用表面処理金属材料)は、水洗や脱イオン水洗がなされた後に、乾燥させることなく電着塗装に供することができる。
なお、接触工程においては、例えば、金属材料を上下、左右運動等に揺動する、または、処理液を攪拌することによって、金属材料表面上に常時新しい処理液が接するように、処理液と金属材料との間で所定の相対的な液流速度を生じさせることが好ましい。
例えば、化成処理液と金属材料との相対的な液流速度としては、1〜20cm/secであることが好ましく、3〜15cm/secであることがより好ましい。上記範囲内であれば、より優れた耐食性、電着塗装付き廻り性、塗膜密着性を有する化成皮膜を得ることができる。液流速度が小さすぎる、または大きすぎると、十分な付着量の皮膜を得ることができない。
なお、液流速度は、3次元電磁流速計(アレック電子株式会社製商品名ACM300A)などを用いて測定することができる。
<電着塗装方法>
次に、上記で得られた電着塗装用表面処理金属材料の電着塗装方法について詳述する。
電着塗装方法としては特に制限されず公知の方法を使用できるが、通常、得られた電着塗装用表面処理金属材料の表面をカチオン電着塗装して、塗装金属材料を得る工程を具備する。
カチオン電着塗装としては、従来公知の方法を適用できる。
塗料としては、例えば、アミン付加エポキシ樹脂と、硬化成分としてブロック化ポリイソシアネート硬化剤とを含有するカチオン電着塗料組成物を用いる。電着塗装に際しては、本発明の電着塗装用表面処理金属材料を塗料中に浸漬する。なお、浸漬前に電着塗装用表面処理金属材料を乾燥してもよいし、乾燥せずに塗料に浸漬してもよい。
次に、塗料の温度を、例えば26〜30℃程度に保持し、所望により塗料をスターラーで撹拌した状態で、整流器などを用いて本発明の電着塗装用表面処理金属材料に電圧を印加する。電解条件は、使用される塗料などにより適宜選択され、従来の一般的な条件であってよい。例えば、初めに30秒かけて0Vから200Vまで直線的に電圧を陰極方向に印加し、その後200Vで150秒間保持する。
このようにして本発明の電着塗装用表面処理金属材料の表面を塗装した後、水洗し、その後塗膜を焼き付ける。例えば、170℃で20分間焼き付けて、塗膜を形成させる。
得られた塗装金属材料の塗膜は特に制限されないが、平均厚さで1〜50μmの厚さであることが好ましく、5〜40μmであることがより好ましく、7〜25μmであることがさらに好ましい。また、最も薄い箇所の厚さが7μm以上であることが好ましい。最低膜厚が薄すぎると腐食防止効果が充分に発揮されない。さらに、最も厚い箇所の厚さは40μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましい。最高膜厚が厚すぎると、塗膜表面のラフネスが増加し、外観上問題になる場合があり、経済的にも不利である。
ここで塗膜の厚さは、電磁式膜厚計または渦電流式膜厚計を用いて測定する。塗膜が磁性体の金属材料(鉄、鉄系合金など)の表面の上に形成される場合は、電磁式膜厚計を用いて測定する。また、塗膜が非磁性体の金属材料(アルミニウム、アルミ系合金など)の表面の上に形成される場合は、渦電流式膜厚計を用いて測定する。
これらによって塗膜の任意の箇所を数箇所測定して、平均厚さを求める。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限られるものではない。
まず、使用する金属材料、並びに、金属材料の化成処理方法における各金属材料の清浄化、処理液接触工程、およびその後の電着塗装について説明する。試験水準を下記表1に示す。
なお、各化成処理液の調製、各化成処理液を用いた表面処理の条件、および、表面処理後の各金属材料の各種試験方法(評価方法)については後述する。各種試験方法(評価方法)の結果は下記表2、表3、および表4に示す。
〔金属材料〕
金属材料としては、冷延鋼板(サイズ:70×150×0.8mm、商品名:SPCC(JIS 3141)、パルテック社製)、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(サイズ:70×150×0.8mm、商品名:SGCC F06 MO(JIS G3302)、パルテック社製)、および、アルミニウム合金板(サイズ:70×150×1.0mm、商品名:A5052P(JIS 4000)、パルテック社製)の3種を用いた。
以下、冷延鋼板を「SPC」、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を「GA」、アルミニウム合金板を「AL」と略記する。
〔清浄化〕
脱脂剤(商品名:ファインクリーナーE2001(A剤13g/L、B剤7g/L)、日本パーカライジング社製)を使用して、液温40℃で120秒間スプレーすることにより各金属材料の表面を脱脂した。その後、30秒間スプレー水洗した。
なお、電着塗装付き廻り性の評価に用いた後述するボックスについては、上記と同様の脱脂剤を用いて、液温40℃で180秒間浸漬させて脱脂した。また、この場合、ボックスをよく揺動させて、水洗を60秒間浸漬処理にて行った。
〔処理液接触工程〕
後述する組成の各化成処理液を調製し、pH等の安定度合いや、沈殿等の発生を確認するために1時間攪拌した後に放置し、処理液の外観(初期外観)を観察した。なお、処理液の初期外観において、濁りが発生しているものを×、12時間放置に濁りが発生するものを△、12時間放置しても濁りが発生しないものを○とする。結果を表2〜表4中に示す。なお、工業的な利用の観点上、○であることが必要である。
その後、以下の各実験例に示す方法により各金属材料および後述するボックスの表面処理を行った。表面処理後、各金属材料の表面を水道水にて常温下で30秒間水洗し、更に常温下で30秒間脱イオン水洗した。
〔塗装性能試験のためのカチオン電着塗装方法〕
電着塗料として、関西ペイント社製「GT−10HT」を用いた。
処理液接触工程によって得られた金属材料(電着塗装用表面処理金属材料)を180秒間定電圧陰極電解して、塗膜を金属材料(金属板)の全表面に析出させた後、水洗し、170℃で20分間加熱焼き付けした。電圧の制御により、塗膜厚を20μmに調整した。
なお、本塗料は前述のアミン付加エポキシ樹脂と、硬化成分としてブロック化ポリイソシアネート硬化剤とを含有するカチオン電着塗料である。
結果を表2、表3、および表4に示す。
〔耐食性試験方法(SST)および評価方法〕
電着塗装した塗装板にクロスカットを施し、塩水噴霧試験(JIS−Z2371)を実施し、1000時間後のクロスカット部の片側膨れ幅を評価した。一般に、冷延鋼板であれば、3.0mm以下が良好、2.0mm以下が極めて良好なレベル、合金化亜鉛めっき鋼板では、3.0mm以下が良好なレベル、2.0mm以下が極めて良好なレベル、アルミニウム合金板では2.0mm以下が良好なレベル、1.5mm以下が極めて良好なレベルとなる。
結果を表2、表3、および表4に示す。
〔塗膜密着性試験方法および評価方法〕
電着塗装した塗装板を沸騰水に1時間浸漬後、水をワイピングし、1mm間隔にカッターナイフで切り込みを入れ、100個の碁盤目状カット傷を入れた。その後、テープ剥離を行い、剥離した碁盤目の個数を測定した。評価結果として、0が最も優れ、100が最も劣ることになる。実用上、0であることが好ましい。
結果を表2、表3、および表4に示す。
〔塗装付き廻り性試験方法および評価方法〕
図2は、電着塗装の付き廻り性試験(4枚ボックス試験)に使用するボックスの見取り図である。図2に示すように、同種の金属板32〜35を4枚用意し、その内の金属板32〜34の3枚に直径8mmの穴30を開けた。穴30の位置は横方向中央、下端から50mmとした。4枚の金属板32〜35を図2に示すようにそれぞれ20mmのクリアランスを取って組み付けた。金属板32〜35の両側面および下面を塩ビ板41〜43にて塞ぎ、塩ビ板41〜43と金属板32〜35を粘着テープによって固定し、4枚ボックス20を組み立てた。
なお、使用した金属板32〜35は、上述した冷延鋼板「SPC」、合金化溶融亜鉛めっき鋼板「GA」、またはアルミニウム合金板「AL」であった。
この組み立てたボックスに対して、各実験例で示す表面処理を施し、乾燥なしで電着塗装を行った。
ここで、対極は片面を絶縁テープでシールしたステンレス鋼板(SUS304)70×150×0.55mmを用いた。また、電着塗料の液面は金属板32〜35と対極が90mm浸漬される位置に制御した。
電着塗装は、電着塗料の温度を28℃に保持し、スターラーにて撹拌した状態で行った。
このような状態で、対極を陽極とした陰極電解法により、4枚ボックスの金属板の表面に塗膜を電解析出させた。
具体的な電解条件は、整流器を用い、所定の電圧にて180秒間陰極電解した。電圧は4枚ボックスの図2中のA面上での塗膜の膜厚が20μmになるように調整した。そして、電解後それぞれの金属板を水洗した後、170℃で20分間焼き付けし、塗膜を形成させた。
そして、図2中のG面に形成された塗膜の膜厚を、電磁式膜厚計(金属板がSPCまたはGAの場合)または渦電流式膜厚計(金属板がAlの場合)を用いて測定した。G面上の塗膜厚は無作為に選んだ10箇所の測定結果の平均とした。
G面塗膜厚は7μm以上であることが好ましく、耐食性の観点から8μm以上であることがより好ましく、さらに、複雑な形状を有する金属材料への応用の観点から9μm以上が極めて好ましい。
結果を表2、表3、および表4に示す。
〔皮膜中の金属の定量方法〕
蛍光X線分光分析装置(XRF:RIGAKU製ZSX PrimusII)により、スズ、ジルコニウム、アルミニウムの金属付着量を定量した。測定に供した金属材料は、金属材料を表面処理後に水洗し、脱イオン水洗し、これを冷風乾燥したものを用いた。
結果を表2、表3、および表4に示す。なお、表4に示す金属材料の化成皮膜中において、アルミニウムの定量分析は実施していないが、アルミニウムが含有されることは確認された。
〔皮膜中の深さ方向での原子含有率測定方法〕
X線光電子分光分析装置(島津製作所製ESCA−850M)(測定面積:直径6mm円面積)を用いて、深さ方向の定量的組成分析より化成皮膜中の原子分布(元素分布)を測定し、皮膜中の含有原子の濃度分布から傾斜構造を観察した。
傾斜構造の表記方法としては、上述の通り、化成皮膜中の金属材料側の表面とは反対側の表面から金属材料側に向かって、全体皮膜厚さの1/10に相当する深さの位置を上層位置、1/2に相当する深さの位置を中層位置、9/10に相当する深さの位置を下層位置とした。次に、各位置(面領域)におけるジルコニウム原子とスズ原子との合計量(100%)に対するスズ原子の比率(原子%)を求めた。
測定に供した金属材料は、金属材料を表面処理後に水洗し、脱イオン水洗し、これを冷風乾燥したものを用いた。
結果を表2、表3、および表4に示す。
〔フッ素原子/スズ原子含有比率測定方法〕
化成皮膜のフッ素原子/スズ原子の原子比率は、X線光電子分光分析装置(島津製作所製ESCA−850M)(測定面積:直径6mm円面積)を用いて行った。具体的には、深さ方向の定量的組成分析より、化成皮膜中の原子分布を測定し、下記測定範囲内におけるスズ原子の検出ピークの最大値の時におけるフッ素原子の検出ピークの比率から計算したものである。測定に供した金属材料は、金属材料を表面処理後に水洗し、脱イオン水洗し、これを冷風乾燥したものを用いた。
なお、測定位置は、化成皮膜表面から全体膜厚の1/10に相当する深さの位置(上層位置14Aに相当)であった。
結果を表2、表3、および表4に示す。
〔スラッジ発生試験〕
表面処理の工業化の操業性を評価する目的でスラッジ発生試験を実施した。
具体的には、まず、各化成処理液の初期外観をチェックした。その後、各化成処理液1Lを用いて、金属材料に10分間連続して表面処理を施した。表面処理による液ロス(持ち出し)による各成分は、適宜、初期の値を保つように補給した。
そして、表面処理後の各化成処理液を40℃にて120時間静置し、その後の処理液の状態(濁りの有無)と沈降物(スラッジの有無)を目視にて観察した。
結果を表2、表3、および表4に示す。
(実施例1)
化成処理液1を調製し、上述した方法で清浄化した3種の金属材料および上述したボックスの表面処理を行い、各金属材料上に化成皮膜を形成した。
まず、化成処理液1の調製は、下記成分(A)〜(E)および(H)をこの順に下記濃度となるように水に添加し、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度(45℃)に加温し、アンモニア水を用いてpHを4.5に調整し、化成処理液1を得た。
次に、化成処理液1を用いて、120秒間、45℃の処理条件にて、清浄化した3種の金属材料およびボックスの浸漬処理を行った。なお、化成処理液と金属材料およびボックスとの相対的な液流速度が3cm/secとなるように処理を行った。得られた化成皮膜の金属材料に対する面積被覆率は、85%であった。その後、上述した方法で、表面処理後の金属材料およびボックスを水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく電着塗装を行い、塗膜を形成した。
<化成処理液1>
(A)塩化スズ(IV):スズイオン(IV)として5質量ppm
(B)ヘキサフロオロジルコニウム酸(H2ZrF6):ジルコニウムイオンとして30質量ppm
(C)ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム:ヘキサフルオロ珪酸イオンとして6質量ppm
(D)フッ化水素酸:フッ素イオンメーターにてフッ素イオン5質量ppmになるように添加
(E)硝酸アルミニウム:アルミニウムイオンとして500質量ppm
(H)酒石酸:酒石酸として200質量ppm
(実施例2)
化成処理液2を調製し、上述した方法で清浄化した3種の金属材料および上述したボックスの表面処理を行い、各金属材料上に化成皮膜を形成した。
まず、化成処理液2の調製は、下記成分(A)〜(E)をこの順に下記濃度となるように水に添加し、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度(40℃)に加温し、アンモニア水を用いてpHを4.0に調整し、化成処理液2を得た。
次に、化成処理液2を用いて、90秒間、40℃の処理条件にて、清浄化した3種の金属材料およびボックスの浸漬処理を行った。なお、化成処理液と金属材料およびボックスとの相対的な液流速度が10cm/secとなるように処理を行った。得られた化成皮膜の金属材料に対する面積被覆率は、100%であった。その後、上述した方法で、表面処理後の金属材料およびボックスを水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、電着塗装を行い、塗膜を形成した。
<化成処理液2>
(A)塩化スズ(IV):スズイオン(IV)として10質量ppm
(B)ヘキサフロオロジルコニウム酸:ジルコニウムイオンとして100質量ppm
(C)ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム:ヘキサフルオロ珪酸イオンとして12質量ppm
(D)フッ化水素酸:フッ素イオンメーターにてフッ素イオン10質量ppmになるように添加
(E)硫酸アルミニウム:アルミニウムイオンとして300質量ppm
(実施例3)
化成処理液3を調製し、上述した方法で清浄化した3種の金属材料および上述したボックスの表面処理を行い、各金属材料上に化成皮膜を形成した。
まず、化成処理液3の調製は、下記成分(A)〜(E)および酸化剤をこの順に下記濃度となるように水に添加し、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度(40℃)に加温し、アンモニア水を用いてpHを3.5に調整し、化成処理液3を得た。
次に、化成処理液3を用いて、120秒間、40℃の処理条件にて、清浄化した3種の金属材料およびボックスの浸漬処理を行った。なお、化成処理液と金属材料およびボックスとの相対的な液流速度が10cm/secとなるように処理を行った。得られた化成皮膜の金属材料に対する面積被覆率は、100%であった。その後、上述した方法で、表面処理後の金属材料およびボックスを水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、電着塗装を行い、塗膜を形成した。
<化成処理液3>
(A)硫酸スズ(II):スズイオンとして30質量ppm(なお、酸化剤により、スズイオンは4価のスズイオン(IV)として存在)
(B)ヘキサフロオロジルコニウム酸:ジルコニウムイオンとして300質量ppm
(C)ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム:ヘキサフルオロ珪酸イオンとして72質量ppm
(D)フッ化水素酸:フッ素イオンメーターにてフッ素イオン15質量ppmになるように添加
(E)硝酸アルミニウム:アルミニウムイオンとして150質量ppm
(酸化剤)30%過酸化水素:過酸化水素として15質量ppm
(実施例4)
化成処理液4を調製し、上述した方法で清浄化した3種の金属材料および上述したボックスの表面処理を行い、各金属材料上に化成皮膜を形成した。
まず、化成処理液4の調製は、下記成分(A)〜(E)をこの順に下記濃度となるように水に添加し、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度(40℃)に加温し、アンモニア水を用いてpHを3.0に調整し、化成処理液4を得た。
次に、化成処理液4を用いて、90秒間、40℃の処理条件にて、清浄化した3種の金属材料およびボックスの浸漬処理を行った。なお、化成処理液と金属材料およびボックスとの相対的な液流速度が15cm/secとなるように処理を行った。得られた化成皮膜の金属材料に対する面積被覆率は、95%であった。その後、上述した方法で、表面処理後の金属材料およびボックスを水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、電着塗装を行い、塗膜を形成した。
<化成処理液4>
(A)塩化スズ(IV):スズイオン(IV)として80質量ppm
(B)ヘキサフロオロジルコニウム酸:ジルコニウムイオンとして1000質量ppm
(C)ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム:ヘキサフルオロ珪酸イオンとして384質量ppm
(D)フッ化水素ナトリウム:フッ素イオンメーターにてフッ素イオン30質量ppmになるように添加
(E)硝酸アルミニウム:アルミニウムイオンとして1000質量ppm
(実施例5)
化成処理液5を調製し、上述した方法で清浄化した3種の金属材料および上述したボックスの表面処理を行い、各金属材料上に化成皮膜を形成した。
まず、化成処理液5の調製は、下記成分(A)〜(E)および酸化剤をこの順に下記濃度となるように水に添加し、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度(40℃)に加温し、アンモニア水を用いてpHを4.0に調整し、化成処理液5を得た。
次に、化成処理液5を用いて、120秒間、40℃の処理条件にて、清浄化した3種の金属材料およびボックスの浸漬処理を行った。なお、化成処理液と金属材料およびボックスとの相対的な液流速度が8cm/secとなるように処理を行った。得られた化成皮膜の金属材料に対する面積被覆率は、98%であった。その後、上述した方法で、表面処理後の金属材料およびボックスを水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、電着塗装を行い、塗膜を形成した。
<化成処理液5>
(A)フッ化スズ(II):スズイオンとして30質量ppm(なお、酸化剤により、スズイオンは4価のスズイオン(IV)として存在)
(B)ヘキサフロオロジルコニウム酸:ジルコニウムイオンとして300質量ppm
(C)ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム:ヘキサフルオロ珪酸イオンとして175質量ppm
(D)フッ化水素酸:フッ素イオンメーターにてフッ素イオン20質量ppmになるように添加
(E)硝酸アルミニウム:アルミニウムイオンとして700質量ppm
(酸化剤)亜硝酸ナトリウム:亜硝酸として15質量ppm
(実施例6)
化成処理液6を調製し、上述した方法で清浄化した3種の金属材料および上述したボックスの表面処理を行い、各金属材料上に表面処理皮膜層を形成した。
まず、化成処理液6の調製は、下記成分(A)〜(E)および(F)をこの順に下記濃度となるように水に添加し、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度(40℃)に加温し、アンモニア水を用いてpHを4.0に調整し、化成処理液6を得た。
次に、化成処理液6を用いて、90秒間、40℃の処理条件にて、清浄化した3種の金属材料およびボックスの浸漬処理を行った。なお、化成処理液と金属材料およびボックスとの相対的な液流速度が15cm/secとなるように処理を行った。得られた化成皮膜の金属材料に対する面積被覆率は、100%であった。その後、上述した方法で、表面処理後の金属材料およびボックスを水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、電着塗装を行い、塗膜を形成した。
<化成処理液6>
(A)塩化スズ(IV):スズイオン(IV)として50質量ppm
(B)ヘキサフロオロジルコニウム酸:ジルコニウムイオンとして500質量ppm
(C)ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム:ヘキサフルオロ珪酸イオンとして120質量ppm
(D)フッ化カリウム:フッ素イオンメーターにてフッ素イオン25質量ppmになるように添加
(E)硫酸アルミニウム:アルミニウムイオンとして500質量ppm
(F)ポリエチレンイミン(BASF製 商品名Lupasol FC;分子量800):固形分換算で2000質量ppm
(実施例7)
化成処理液7を調製し、上述した方法で清浄化した3種の金属材料および上述したボックスの表面処理を行い、各金属材料上に化成被膜を形成した。
まず、化成処理液7の調製は、下記成分(A)〜(E)および(G)をこの順に下記濃度となるように水に添加し、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度(40℃)に加温し、アンモニア水を用いてpHを3.0に調整し、化成処理液7を得た。
次に、化成処理液7を用いて、90秒間、40℃の処理条件にして、清浄化した3種の金属材料およびボックスの浸漬処理を行った。なお、化成処理液と金属材料およびボックスとの相対的な液流速度が10cm/secとなるように処理を行った。得られた化成皮膜の金属材料に対する面積被覆率は、95%であった。その後、上述した方法で、表面処理後の金属材料およびボックスを水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、電着塗装を行い、塗膜を形成した。
<化成処理液7>
(A)スズ(IV)酸カリウム:スズイオン(IV)として50質量ppm
(B)オキシ硝酸ジルコニウム:ジルコニウムイオンとして100質量ppm
(C)ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム:ヘキサフルオロ珪酸イオンとして144質量ppm
(D)フッ化水素酸:フッ素イオンメーターにてフッ素イオン15質量ppmになるように添加
(E)硫酸アルミニウム:アルミニウムイオンとして150質量ppm
(G)コロイダルシリカ(日産化学製 商品名 スノーテックス-O):固形分換算で200質量ppm
(実施例8)
化成処理液8を調製し、上述した方法で清浄化した3種の金属材料および上述したボックスの表面処理を行い、各金属材料上に化成被膜を形成した。
まず、化成処理液8の調製は、下記成分(A)〜(E)および(F)をこの順に下記濃度となるように水に添加し、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度(35℃)に加温し、硝酸水溶液を用いてpHを3.5に調整し、化成処理液8を得た。
次に、化成処理液8を用いて、180秒間、35℃の処理条件にて、清浄化した3種の金属材料およびボックスの浸漬処理を行った。なお、化成処理液と金属材料およびボックスとの相対的な液流速度が12cm/secとなるように処理を行った。得られた化成皮膜の金属材料に対する面積被覆率は、95%であった。その後、上述した方法で、表面処理後の金属材料およびボックスを水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、電着塗装を行い、塗膜を形成した。
<化成処理液8>
(A)塩化スズ(IV):スズイオン(IV)として30質量ppm
(B)オキシ硫酸ジルコニウム:ジルコニウムイオンとして300質量ppm
(C)ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム:ヘキサフルオロ珪酸イオンとして72質量ppm
(D)フッ化ナトリウム:フッ素イオンメーターにてフッ素イオン15質量ppmになるように添加
(E)硫酸アルミニウム:アルミニウムイオンとして150質量ppm
(F)N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン:200質量ppm
(実施例9)
化成処理液9を調製し、上述した方法で清浄化した3種の金属材料および上述したボックスの表面処理を行い、各金属材料上に化成被膜を形成した。
まず、化成処理液9の調製は、下記成分(A)〜(E)、(H)および酸化剤をこの順に下記濃度となるように水に添加し、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度(40℃)に加温し、アンモニア水を用いてpHを4.0に調整し、化成処理液9を得た。
次に、化成処理液9を用いて、90秒間、40℃の処理条件にて、清浄化した3種の金属材料およびボックスの浸漬処理を行った。なお、化成処理液と金属材料およびボックスとの相対的な液流速度が15cm/secとなるように処理を行った。得られた化成皮膜の金属材料に対する面積被覆率は、90%であった。その後、上述した方法で、表面処理後の金属材料およびボックスを水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、電着塗装を行い、塗膜を形成した。
<化成処理液9>
(A)フッ化スズ(II):スズイオンとして50質量ppm(なお、酸化剤により、スズイオンは4価のスズイオン(IV)として存在)
(B)ヘキサフロオロジルコニウム酸:ジルコニウムイオンとして300質量ppm
(C)ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム:ヘキサフルオロ珪酸イオンとして36質量ppm
(D)フッ化ナトリウム:フッ素イオンメーターにてフッ素イオン20質量ppmになるように添加
(E)硝酸アルミニウム:アルミニウムイオンとして500質量ppm
(H)クエン酸:100質量ppm
(酸化剤)塩素酸ナトリウム:塩素酸として20質量ppm
(実施例10)
化成処理液10を調製し、上述した方法で清浄化した3種の金属材料および上述したボックスの表面処理を行い、各金属材料上に化成被膜を形成した。
まず、化成処理液10の調製は、下記成分(A)〜(E)、および(G)をこの順に下記濃度となるように水に添加し、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度(30℃)に加温し、アンモニア水を用いてpHを2.5に調整し、化成処理液10を得た。
次に、化成処理液10を用いて、120秒間、30℃の処理条件にて、清浄化した3種の金属材料およびボックスの浸漬処理を行った。なお、化成処理液と金属材料およびボックスとの相対的な液流速度が15cm/secとなるように処理を行った。得られた化成皮膜の金属材料に対する面積被覆率は、95%であった。その後、上述した方法で、表面処理後の金属材料およびボックスを水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、電着塗装を行い、塗膜を形成した。
<化成処理液10>
(A)塩化スズ(IV):スズイオン(IV)として100質量ppm
(B)ヘキサフロオロジルコニウム酸:ジルコニウムイオンとして300質量ppm
(C)ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム:ヘキサフルオロ珪酸イオンとして60質量ppm
(D)フッ化ナトリウム:フッ素イオンメーターにてフッ素イオン5質量ppmになるように添加
(E)硝酸アルミニウム:アルミニウムイオンとして300質量ppm
(G)コロイダルシリカ(日産化学製 商品名 スノーテックス-UP):固形分換算で500質量ppm
(実施例11)
化成処理液11を調製し、上述した方法で清浄化した3種の金属材料および上述したボックスの表面処理を行い、各金属材料上に化成被膜を形成した。
まず、化成処理液11の調製は、下記成分(A)〜(E)をこの順に下記濃度となるように水に添加し、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度(35℃)に加温し、硝酸水溶液を用いてpHを3.5に調整し、化成処理液11を得た。
次に、化成処理液11を用いて、180秒間、35℃の処理条件にて、清浄化した3種の金属材料およびボックスの浸漬処理を行った。なお、化成処理液と金属材料およびボックスとの相対的な液流速度が12cm/secとなるように処理を行った。得られた化成皮膜の金属材料に対する面積被覆率は、95%であった。その後、上述した方法で、表面処理後の金属材料およびボックスを水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、電着塗装を行い、塗膜を形成した。
<化成処理液11>
(A)塩化スズ(IV):スズイオン(IV)として30質量ppm
(B)オキシ硫酸ジルコニウム:ジルコニウムイオンとして300質量ppm
(C)ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム:ヘキサフルオロ珪酸イオンとして72質量ppm
(D)フッ化ナトリウム:フッ素イオンメーターにてフッ素イオン15質量ppmになるように添加
(E)硫酸アルミニウム:アルミニウムイオンとして150質量ppm
(比較例1)
化成処理液12を調製し、上述した方法で清浄化した3種の金属材料および上述したボックスの表面処理を行い、各金属材料上に化成被膜を形成した。
まず、化成処理液12の調製は、下記成分(B)〜(E)をこの順に下記濃度となるように水に添加し、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度(40℃)に加温し、アンモニア水を用いてpHを4.0に調整し、化成処理液12を得た。
次に、化成処理液12を用いて、90秒間、40℃の処理条件にて、清浄化した3種の金属材料およびボックスの浸漬処理を行った。なお、化成処理液と金属材料およびボックスとの相対的な液流速度が10cm/secとなるように処理を行った。得られた化成皮膜の金属材料に対する面積被覆率は、90%であった。その後、上述した方法で、表面処理後の金属材料およびボックスを水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、電着塗装を行い、塗膜を形成した。
<化成処理液12>
(B)ヘキサフロオロジルコニウム酸:ジルコニウムイオンとして300質量ppm
(C)ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム:ヘキサフルオロ珪酸イオンとして3質量ppm
(D)フッ化ナトリウム:フッ素イオンメーターにてフッ素イオン20質量ppmになるように添加
(E)硝酸アルミニウム:アルミニウムイオンとして500質量ppm
(比較例2)
化成処理液13を調製し、上述した方法で清浄化した3種の金属材料および上述したボックスの表面処理を行い、各金属材料上に化成被膜を形成した。
まず、化成処理液13の調製は、下記成分(A)、(B)、(D)および(E)をこの順に下記濃度となるように水に添加し、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度(40℃)に加温し、アンモニア水を用いてpHを4.0に調整し、化成処理液13を得た。
次に、化成処理液13を用いて、90秒間、40℃の処理条件にて、清浄化した3種の金属材料およびボックスの浸漬処理を行った。なお、化成処理液と金属材料およびボックスとの相対的な液流速度が3cm/secとなるように処理を行った。得られた化成皮膜の金属材料に対する面積被覆率は、95%であった。その後、上述した方法で、表面処理後の金属材料およびボックスを水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、電着塗装を行い、塗膜を形成した。
<化成処理液13>
(A)塩化スズ(IV):スズイオン(IV)として30質量ppm
(B)ヘキサフロオロジルコニウム酸:ジルコニウムイオンとして300質量ppm
(D)フッ化水素酸:フッ素イオンメーターにてフッ素イオン20質量ppmになるように添加
(E)硫酸アルミニウム:アルミニウムイオンとして150質量ppm
(比較例3)
化成処理液14を調製し、上述した方法で清浄化した3種の金属材料および上述したボックスの表面処理を行い、各金属材料上に化成被膜を形成した。
まず、化成処理液14の調製は、下記成分(A)〜(E)および酸化剤をこの順に下記濃度となるように水に添加し、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度(40℃)に加温し、アンモニア水を用いてpHを3.5に調整し、化成処理液14を得た。
次に、化成処理液14を用いて、90秒間、40℃の処理条件にて、清浄化した3種の金属材料およびボックスの浸漬処理を行った。なお、化成処理液と金属材料およびボックスとの相対的な液流速度が15cm/secとなるように処理を行った。得られた化成皮膜の金属材料に対する面積被覆率は、95%であった。その後、上述した方法で、表面処理後の金属材料およびボックスを水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、電着塗装を行い、塗膜を形成した。
<化成処理液14>
(A)硫酸スズ(II):スズイオンとして150質量ppm(なお、酸化剤の存在により、スズイオンは4価のスズイオン(IV)として存在)
(B)オキシ硝酸ジルコニウム:ジルコニウムイオンとして300質量ppm
(C)ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム:ヘキサフルオロ珪酸イオンとして900質量ppm
(D)フッ化水素酸:フッ素イオンメーターにてフッ素イオン30質量ppmになるように添加
(E)硝酸アルミニウム:アルミニウムイオンとして150質量ppm
(酸化剤)30%過酸化水素:過酸化水素として75質量ppm
(比較例4)
化成処理液15を調製し、上述した方法で清浄化した3種の金属材料および上述したボックスの表面処理を行い、各金属材料上に化成被膜を形成した。
まず、化成処理液15の調製は、下記成分(A)〜(E)をこの順に下記濃度となるように水に添加し、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度(35℃)に加温し、アンモニア水を用いてpHを3.5に調整し、化成処理液15を得た。
次に、化成処理液15を用いて、90秒間、35℃の処理条件にて、清浄化した3種の金属材料およびボックスの浸漬処理を行った。なお、化成処理液と金属材料およびボックスとの相対的な液流速度が10cm/secとなるように処理を行った。得られた化成皮膜の金属材料に対する面積被覆率は、80%であった。その後、上述した方法で、表面処理後の金属材料およびボックスを水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、電着塗装を行い、塗膜を形成した。
<化成処理液15>
(A)硫酸スズ(II):スズイオン(II)として50質量ppm
(B)オキシ硝酸ジルコニウム:ジルコニウムイオンとして500質量ppm
(C)ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム:ヘキサフルオロ珪酸イオンとして120質量ppm
(D)フッ化水素酸:フッ素イオンメーターにてフッ素イオン10質量ppmになるように添加
(E)硝酸アルミニウム:アルミニウムイオンとして300質量ppm
(比較例5)
化成処理液16を調製し、上述した方法で清浄化した3種の金属材料および上述したボックスの表面処理を行い、各金属材料上に化成被膜を形成した。
まず、化成処理液16の調製は、下記成分(A)〜(E)をこの順に下記濃度となるように水に添加し、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度(35℃)に加温し、アンモニア水を用いてpHを5.5に調整し、化成処理液16を得た。
次に、化成処理液16を用いて、120秒間、35℃の処理条件にて、清浄化した3種の金属材料およびボックスの浸漬処理を行った。なお、化成処理液と金属材料およびボックスとの相対的な液流速度が10cm/secとなるように処理を行った。得られた化成皮膜の金属材料に対する面積被覆率は、50%であった。その後、上述した方法で、表面処理後の金属材料およびボックスを水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、電着塗装を行い、塗膜を形成した。
<化成処理液16>
(A)塩化スズ(IV):スズイオン(IV)として30質量ppm
(B)ヘキサフロオロジルコニウム酸:ジルコニウムイオンとして300質量ppm
(C)ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム:ヘキサフルオロ珪酸イオンとして175質量ppm
(D)フッ化水素酸:フッ素イオンメーターにてフッ素イオン20質量ppmになるように添加
(E)硝酸アルミニウム:アルミニウムイオンとして150質量ppm
(比較例6)
化成処理液17を調製し、上述した方法で清浄化した3種の金属材料および上述したボックスの表面処理を行い、各金属材料上に化成被膜を形成した。
まず、化成処理液17の調製は、下記成分(A)〜(E)をこの順に下記濃度となるように水に添加し、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度(45℃)に加温し、アンモニア水を用いてpHを3.5に調整し、化成処理液17を得た。
次に、化成処理液17を用いて、90秒間、45℃の処理条件にて、清浄化した3種の金属材料およびボックスの浸漬処理を行った。なお、化成処理液と金属材料およびボックスとの相対的な液流速度が15cm/secとなるように処理を行った。得られた化成皮膜の金属材料に対する面積被覆率は、95%であった。その後、上述した方法で、表面処理後の金属材料およびボックスを水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、電着塗装を行い、塗膜を形成した。
<化成処理液17>
(A)塩化スズ(IV):スズイオン(IV)として30質量ppm
(B)ヘキサフロオロジルコニウム酸:ジルコニウムイオンとして300質量ppm
(C)ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム:ヘキサフルオロ珪酸イオンとして9質量ppm
(D)フッ化ナトリウム:フッ素イオンメーターにてフッ素イオン20質量ppmになるように添加
(E)硝酸アルミニウム:アルミニウムイオンとして150質量ppm
(比較例7)
化成処理液18を調製し、上述した方法で清浄化した3種の金属材料および上述したボックスの表面処理を行い、各金属材料上に化成被膜を形成した。
まず、化成処理液18の調製は、下記成分(A)〜(E)および(F)をこの順に下記濃度となるように水に添加し、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度(40℃)に加温し、アンモニア水を用いてpHを3.5に調整し、化成処理液18を得た。
次に、化成処理液18を用いて、90秒間、40℃の処理条件にて、清浄化した3種の金属材料およびボックスの浸漬処理を行った。なお、化成処理液と金属材料およびボックスとの相対的な液流速度が5cm/secとなるように処理を行った。得られた化成皮膜の金属材料に対する面積被覆率は、90%であった。その後、上述した方法で、表面処理後の金属材料およびボックスを水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、電着塗装を行い、塗膜を形成した。
<化成処理液18>
(A)塩化スズ(IV):スズイオン(IV)として10質量ppm
(B)ヘキサフロオロジルコニウム酸:ジルコニウムイオンとして100質量ppm
(C)ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム:ヘキサフルオロ珪酸イオンとして72質量ppm
(D)フッ化ナトリウム:フッ素イオンメーターにてフッ素イオン20質量ppmになるように添加
(E)硝酸アルミニウム:アルミニウムイオンとして150質量ppm
(F)フェノールホルマリンアミノ化物:固形分換算で500質量ppm
(比較例8)
化成処理液19を調製し、上述した方法で清浄化した3種の金属材料および上述したボックスの表面処理を行い、各金属材料上に化成被膜を形成した。
まず、化成処理液19の調製は、下記成分(A)〜(E)をこの順に下記濃度となるように水に添加し、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度(40℃)に加温し、アンモニア水を用いてpHを4.0に調整し、化成処理液19を得た。
次に、化成処理液19を用いて、90秒間、40℃の処理条件にて、清浄化した3種の金属材料およびボックスの浸漬処理を行った。なお、化成処理液と金属材料およびボックスとの相対的な液流速度が10cm/secとなるように処理を行った。得られた化成皮膜の金属材料に対する面積被覆率は、50%であった。その後、上述した方法で、表面処理後の金属材料およびボックスを水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、電着塗装を行い、塗膜を形成した。
<化成処理液19>
(A)塩化スズ(IV):スズイオン(IV)として30質量ppm
(B)ヘキサフロオロジルコニウム酸:ジルコニウムイオンとして5質量ppm
(C)ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム:ヘキサフルオロ珪酸イオンとして72質量ppm
(D)フッ化ナトリウム:フッ素イオンメーターにてフッ素イオン20質量ppmになるように添加
(E)硝酸アルミニウム:アルミニウムイオンとして300質量ppm
(比較例9)
化成処理液20を調製し、上述した方法で清浄化した3種の金属材料および上述したボックスの表面処理を行い、各金属材料上に化成被膜を形成した。
まず、化成処理液20の調製は、下記成分(A)、(B)、(D)、(E)および酸化剤をこの順に下記濃度となるように水に添加し、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度(40℃)に加温し、アンモニア水を用いてpHを4.0に調整し、化成処理液20を得た。
次に、化成処理液20を用いて、90秒間、40℃の処理条件にて、清浄化した3種の金属材料およびボックスの浸漬処理を行った。なお、化成処理液と金属材料およびボックスとの相対的な液流速度が10cm/secとなるように処理を行った。得られた化成皮膜の金属材料に対する面積被覆率は、90%であった。その後、上述した方法で、表面処理後の金属材料およびボックスを水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、電着塗装を行い、塗膜を形成した。
<化成処理液20>
(A)塩化化スズ(II):スズイオンとして30質量ppm(なお、酸化剤により、スズイオンは4価のスズイオン(IV)として存在)
(B)ヘキサフロオロジルコニウム酸:ジルコニウムイオンとして300質量ppm
(D)フッ化ナトリウム:フッ素イオンメーターにてフッ素イオン10質量ppmになるように添加
(E)硝酸アルミニウム:アルミニウムイオンとして100質量ppm
(酸化剤)30%過酸化水素:塩素酸として20質量ppm
(比較例10)
化成処理液21を調製し、上述した方法で清浄化した3種の金属材料および上述したボックスの表面処理を行い、各金属材料上に化成被膜を形成した。
まず、化成処理液21の調製は、下記成分(A)〜(E)をこの順に下記濃度となるように水に添加し、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度(40℃)に加温し、アンモニア水を用いてpHを5.5に調整し、化成処理液21を得た。
次に、化成処理液21を用いて、120秒間、40℃の処理条件にて、清浄化した3種の金属材料およびボックスの浸漬処理を行った。なお、化成処理液と金属材料およびボックスとの相対的な液流速度が5cm/secとなるように処理を行った。得られた化成皮膜の金属材料に対する面積被覆率は、90%であった。その後、上述した方法で、表面処理後の金属材料およびボックスを水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、電着塗装を行い、塗膜を形成した。
<化成処理液21>
(A)塩化スズ(IV):スズイオン(IV)として50質量ppm
(B)ヘキサフロオロジルコニウム酸:ジルコニウムイオンとして500質量ppm
(C)ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム:ヘキサフルオロ珪酸イオンとして36質量ppm
(D)フッ化ナトリウム:フッ素イオンメーターにてフッ素イオン120質量ppmになるように添加
(E)硝酸アルミニウム:アルミニウムイオンとして300質量ppm
(比較例11)
化成処理液22を調製し、上述した方法で清浄化した3種の金属材料および上述したボックスの表面処理を行い、各金属材料上に化成被膜を形成した。
まず、化成処理液22の調製は、下記成分(A)(B)、(D)および(E)をこの順に下記濃度となるように水に添加し、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度(40℃)に加温し、アンモニア水を用いてpHを3.0に調整し、化成処理液22を得た。
次に、化成処理液22を用いて、90秒間、40℃の処理条件にて、清浄化した3種の金属材料およびボックスの浸漬処理を行った。なお、化成処理液と金属材料およびボックスとの相対的な液流速度が15cm/secとなるように処理を行った。得られた化成皮膜の金属材料に対する面積被覆率は、95%であった。その後、上述した方法で、表面処理後の金属材料およびボックスを水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、電着塗装を行い、塗膜を形成した。
<化成処理液22>
(A)フッ化スズ(II):スズイオン(II)として30質量ppm
(B)ヘキサフロオロジルコニウム酸:ジルコニウムイオンとして300質量ppm
(D)フッ化ナトリウム:フッ素イオンメーターにてフッ素イオン20質量ppmになるように添加
(E)硝酸アルミニウム:アルミニウムイオンとして150質量ppm
(比較例12)
リン酸亜鉛系表面調整剤(プレパレンX、日本パーカライジング社製)の0.5%水溶液、および、リン酸亜鉛化成処理剤(パルボンド(登録商標)L3020、日本パーカライジング社製)の5%水溶液をそれぞれ標準条件にて用いて、上述した方法で清浄化した3種の金属材料および上述したボックスの表面処理を行い、各金属材料上に化成被膜を形成した。
その後、上述した方法で、表面処理後の金属材料を水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、電着塗装を行い、塗膜を形成した。
Figure 2011127141
Figure 2011127141
Figure 2011127141
Figure 2011127141
なお、実施例1〜11においては、フッ素原子付着量は1〜20mg/m2であることが確認された。
上記表2、表3、表4に示すように、実施例1〜11で調製した化成処理液に金属材料を接触させることにより、スズ原子とジルコニウム原子との含有割合が、スズ原子の含有割合の高い組成からジルコニウム原子の含有割合の高い組成へと変化し、さらに、所定のスズ原子およびジルコニウム原子の含有比率を満たす傾斜構造を有する化成皮膜を備える金属材料が得られた。得られた金属材料は、何れの金属の種類においても優れた耐食性、塗膜密着性および高い電着塗装付き廻り性が得られることがわかった。また、使用する化成処理液はその安定性にも優れ、工業的に実用可能な金属材料の化成処理方法であることもわかった。なお、得られた化成皮膜中では、主に酸化スズ、酸化ジルコニウムなどが含まれていた。
また、上記スラッジ発生試験評価後の化成処理液を用いて、再度、実施例1〜11と同様の実験を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。このことからも、本化成処理方法は、工業的な連続運転にも耐えうる方法であることが分かった。
それに対して、所定の含有率を示す傾斜構造を有する化成皮膜が得られなかった比較例1〜12では、耐食性、塗膜密着性および電着塗装付き廻り性の全てを満足することが出来なかった。
また、特許文献3に具体的に記載されている2価のスズイオンを用いた比較例9および11では、満足する塗装性能が得られことができなかった。
さらに、比較例2,5,6,9,12に示されるようにスラッジ発生試験評価において濁りやスラッジの発生があった化成処理液を用いて、再度化成皮膜の製造を行ったところ、耐食性、密着性、電着塗装付き廻り性が一段と劣る化成皮膜しか得られなかった。
10 電着塗装用表面処理金属材料
12 金属材料
14 化成皮膜
14A 上層位置を示す線
14B 中層位置を示す線
14C 下層位置を示す線
20 ボックス
30 穴
32 試験板(塗装後の金属板)No.1(外側:A面)
33 試験板(塗装後の金属板)No.2
34 試験板(塗装後の金属板)No.3
35 試験板(塗装後の金属板)No.4(内側:G面)
41 側面仕切板
42 側面仕切板
43 底面仕切板

Claims (15)

  1. 金属材料と、その表面に形成されるスズ原子、ジルコニウム原子およびフッ素原子を含有する化成皮膜とを有する電着塗装用表面処理金属材料であって、
    前記化成皮膜中におけるスズ原子とジルコニウム原子との含有割合が、金属材料側とは反対側の表面から前記金属材料側の表面に向けて、スズ原子の含有割合の高い組成からジルコニウム原子の含有割合の高い組成へと変化する傾斜構造を前記化成皮膜が有し、
    前記化成皮膜中、金属材料側とは反対側の表面から、前記化成皮膜の全体厚みの1/10に相当する深さの上層位置における、スズ原子とジルコニウム原子との合計量に対するスズ原子の含有割合が40〜100原子%であり、
    前記化成皮膜中、金属材料側とは反対側の表面から、前記化成皮膜の全体厚みの9/10に相当する深さの下層位置における、スズ原子とジルコニウム原子との合計量に対するスズ原子の含有割合が10原子%以下であり、
    前記上層位置におけるフッ素原子/スズ原子の原子比率が0.5〜1.5である電着塗装用表面処理金属材料。
  2. 前記化成皮膜中、前記金属材料側とは反対側の表面から、前記化成皮膜の全体厚みの1/2に相当する深さの中層位置における、スズ原子とジルコニウム原子との合計量に対するスズ原子の含有割合が10〜50原子%であり、
    該中層位置におけるスズ原子の含有割合が、前記上層位置におけるスズ原子の含有割合よりも低く、かつ、前記下層位置におけるスズ原子の含有割合よりも高い、請求項1に記載の電着塗装用表面処理金属材料。
  3. 前記化成皮膜中において、スズ含有量が3〜80mg/m2、ジルコニウム含有量が10〜150mg/m2である、請求項1または2に記載の電着塗装用表面処理金属材料。
  4. 前記化成皮膜が、さらにアルミニウム原子を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の電着塗装用表面処理金属材料。
  5. 金属材料に対する前記化成皮膜の被覆率が80〜100%である、請求項1〜4のいずれかに記載の電着塗装用表面処理金属材料。
  6. 前記金属材料が、冷延鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板、亜鉛板、亜鉛合金板、亜鉛めっき鋼板、および合金化亜鉛めっき鋼板からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属材料である、請求項1〜5のいずれかに記載の電着塗装用表面処理金属材料。
  7. 化成処理液を用いて、金属材料の表面処理を行う金属材料の化成処理方法であって、
    前記化成処理液が、4価のスズイオン(A)、ジルコニウムイオン(B)、ヘキサフルオロ珪酸イオン(C)およびフッ素イオン(D)を含有し、
    スズイオンの含有量が3〜100質量ppm、ジルコニウムイオンの含有量が10〜1000質量ppm、ヘキサフルオロ珪酸イオンの含有量が1〜1000質量ppmであり、かつ、ヘキサフルオロ珪酸イオンのモル濃度(CC)とスズイオンのモル濃度(CA)の比率(CC/CA)が0.5〜5.0であり、
    さらに、前記化成処理液のpHが2.5から5.0の範囲であることを特徴とする金属材料の化成処理方法。
  8. 前記化成処理液が、さらに、アルミニウムイオン(E)を含有する、請求項7に記載の金属材料の化成処理方法。
  9. 前記化成処理液が、さらに、珪素化合物(G)を含有する請求項7または8に記載の金属材料の化成処理方法。
  10. 前記珪素化合物(G)が、カップリング剤およびコロイダルシリカから選ばれる少なくとも1種を含み、前記化成処理液中の前記珪素化合物(G)の含有量が5〜1000質量ppmである、請求項9に記載の金属材料の化成処理方法。
  11. 前記化成処理液が、さらにカチオン性水溶性樹脂(F)を含有する、請求項7〜10のいずれかに記載の金属材料の化成処理方法。
  12. 前記カチオン性水溶性樹脂(F)が、アミノ基を含有する水溶性オリゴマーおよび水溶性ポリマーから選ばれる少なくとも1種を含み、前記化成処理液中の前記樹脂(F)の含有量が10〜1000質量ppmである、請求項11に記載の金属材料の化成処理方法。
  13. 前記化成処理液が、さらに、金属キレート剤(H)を含有する請求項7〜12のいずれかに記載の金属材料の化成処理方法。
  14. 前記キレート剤(H)が、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、有機フォスフォン酸、ニトリロトリ酢酸およびエチレンジアミン四酢酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、前記化成処理液中の前記キレート剤(H)の含有量が5〜500質量ppmである、請求項13に記載の金属材料の化成処理方法。
  15. 前記金属材料と前記化成処理液との相対的な液流速度を1〜20cm/secとする、請求項7〜14のいずれかに記載の金属材料の化成処理方法。
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