JP2011122537A - 高圧ポンプ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 燃料レールの燃料圧力が所定のリリーフ圧以上のとき、リリーフ弁70は、リリーフ用弁体81の先端面83aがシート面78から離座することにより開弁する。リターン流路71からの燃料は逃がし面79に沿って流入し、受圧面83cに衝突する。閉弁状態から全開状態までの最大移動長に対する移動長比率であるリフト率Xの増加につれて、燃料の衝突を受ける受流面積S(X)は増加する。受流面積S(X)が受圧面全面積S0に一致するときの臨界リフト率αは、0.5以上1以下に設定される。これにより、少なくとも半開状態まで、燃料流の動圧が100%受圧面83cに作用し、リリーフ用弁体81は開弁方向への移動が補助され、リリーフ弁70開弁時の初動特性が向上する。
【選択図】図7
Description
通常、弁体は移動方向の軸を中心軸とする回転体の形状である。また、座面の形状は、フラット面に着座するものとテーパ面に着座するものとがある。テーパ面に着座するものでは弁体の軸がセンタリングされるため、着座が安定する。また、テーパ面は高精度な同軸度や面粗度が要求されるため、製造上、例えば切削で得られる一次テーパ面に二次加工を施して仕上げられる。その際、一次テーパ面のテーパ角度は二次加工のテーパ角度より大きくする必要がある。また、一次テーパ面の奥側のみを二次加工し、手前側は逃がし面として未加工のまま残すこともできる。
このような形状では、開弁後、燃料流はテーパ面、逃がし面のテーパ角度に沿って流入すると考えられる。
特許文献1はリリーフ用弁体にボールを用いており、テーパ面に着座している。図を参照するとテーパ角度は約120°であり、テーパ面を延長するとボールの外径の外側に延びている。この構成では、ボールが少し開弁したとき、多くの割合の燃料流はボールに当たらず、ボールの外側に流れると考えられる。したがって、燃料の動圧が有効にボールに伝えられないため、ボールの移動が補助されず、開弁に時間を要することになる。すると、過剰圧のリリーフが間に合わず、燃料レール内の圧力が上昇する。燃料レール内の圧力が仮にインジェクタの作動限界圧力を超えると車両停止をもたらすほか、燃料を供給するインジェクタが作動しないためにリンプホームもできない、すなわち応急的な縮退運転すらできないという重大な欠点があった。
さらに、「Oリングの膨潤によって初期状態よりもさらに摺動抵抗が増え、リリーフ弁の開弁特性が変化する」、「Oリングがリターン通路の内壁に接触して摺動することにより損傷し、燃料の漏れが生じ、やはりリリーフ弁の開弁特性が変化する」、という欠点があった。
プランジャは往復移動可能である。
吐出弁は、プランジャの移動によって容積変化し燃料を加圧可能な加圧室の出口側に設けられる。
ハウジングは、(a)〜(d)の構成要素を含む。ここで、「:」以下は、その構成要素を説明する。
(a1)第1リターン流路:吐出弁の出口側に連通する。
(a2)第2リターン流路:吐出弁の入口側に連通する。
(b)弁収容穴:第1リターン流路と第2リターン流路との間に設けられる。弁収容穴に第1リターン流路が開口する。
(c)シート面:第1リターン流路の開口にテーパ状に形成される。
(d)逃がし面:シート面のテーパ開口側に連続してテーパ状に形成される。逃がし面のテーパ角度はシート面のテーパ角度より大きい。
リリーフ用弁体は、(e)〜(h)の構成要素を含む。
(e)弁本体:弁収容穴に軸方向に移動可能に収容される。
(f)首部:弁本体から第1リターン流路の開口に対向して突設される。
(g)先端面:首部の先端に形成される。先端面は、シート面に着座することによりリリーフ弁を閉弁し、シート面から離座することによりリリーフ弁を開弁する。
(h)受圧面:弁本体の首部の付け根部に形成される。リリーフ弁の開弁状態で、燃料流は逃がし面に沿って流入し、受圧面に衝突する。
リリーフ弁ストッパは、リリーフ用弁体に当接して移動を規制することにより、リリーフ用弁体の最大移動長を決定する。
付勢手段は、リリーフ用弁体を閉弁方向に付勢する。
受流範囲が受圧面の全範囲に一致するときの移動長を「臨界移動長」という。臨界移動長は、逃がし面のテーパ角度によって決まる。請求項1に記載の高圧ポンプでは、臨界移動長が「最大移動長の2分の1以上」であるように逃がし面のテーパ角度が設定される。
「受流範囲」とは、開弁後に流入した燃料流がリリーフ用弁体の受圧面に衝突する範囲をいう。燃料流は逃がし面のテーパ角度に沿って流入すると考えられるため、逃がし面のテーパを受圧面まで延長した範囲が受流範囲である。受流範囲には燃料流の動圧が作用し、リリーフ用弁体の開弁方向への移動が補助されると考えられる。
一方、受流範囲が受圧面の全範囲の外側に至る場合、言い換えれば、受流範囲が受圧面の全範囲よりも大きい場合は、燃料流の動圧の一部は受圧面の外側に逃げることになる。すると、燃料流の動圧の一部は、リリーフ用弁体の移動を補助するために利用できない。
リリーフ弁体が閉弁状態から全開状態に移動するに伴い、上記の前者の状態から後者の状態へ移行する。あるいは、全開状態まで常に前者の状態に留まる場合もある。移行における臨界点、すなわち、受流範囲が受圧面の全範囲内に一致するときの移動長を「臨界移動長」という。臨界移動長が最大移動長より小さい場合、上記の前者の状態から後者の状態へ移行する。臨界移動長が最大移動長以上の場合、常に前者の状態に留まる。
半開状態以後は、燃料が十分に流入しているため、動圧による効果が低下しても、静圧のみでリリーフ弁を早く全開状態まで至らしめることが可能である。したがって、開弁直後から、少なくとも半開状態までの前半段階において、燃料流の動圧が有効に利用できれば課題の解決に足りる。よって、本構成の高圧により、高圧ポンプのリリーフ弁開弁時の初動特性が改善される。
すなわち、請求項1で臨界移動長の下限が限定されたのに対し、請求項2ではさらに臨界移動長の上限が限定される。
したがって、燃料流の動圧を最大限利用する場合であっても、臨界移動長の上限は最大移動長と等しければ足りる。よって、本構成により、効率的に高圧ポンプのリリーフ弁開弁時の初動特性が改善される。
また、受圧面が中心軸に直交する平面として設けられることにより、受圧面が受ける動圧の方向とリリーフ用弁体の移動方向が一致するため、力の効率が良い。
定残圧弁は、リリーフ用弁体の内部に形成される弁内流路に支持され、リリーフ用弁体の先端部から弁内流路に連通する相対的に流路面積の小さな絞り部を有する。
定残圧弁は、リリーフ弁の閉弁状態で、絞り部から流入する燃料の残圧が所定値以下のとき弁内流路を閉塞し、残圧が所定値を超えたとき弁内流路を開放する。
定残圧弁は、燃料レール内の圧力が上昇した場合や高圧のまま維持された場合、逆に、燃料レール内の圧力が下降しすぎた場合の圧力調整手段として有効である。例えば、定残圧弁がない場合、次のような不具合が懸念される。
イグニッションOFFなどによりエンジンが停止されると、エンジン冷却水の循環がなくなるため、エンジン停止直後にエンジンルームの温度は一度上昇し、その後、下降していく。そのため、燃料レール内の圧力も、エンジン停止直後から上昇を始める。このような燃料レール内の圧力の上昇は、インジェクタから気筒内への燃料漏れを生じさせることにつながる。結果として、気筒内へ漏れ出した燃料が、次回のエンジン始動時に、未燃成分として大気中へ排出されるおそれがある。
運転中にアクセルペダルの踏み込みがなくなる等、アクセル開度が所定値以下となった場合、エンジン回転数が所定値以上であると、燃料噴射が停止される。このとき、燃料レール内の圧力は維持される。
その後、例えばアイドル運転へ切り替わる等の減速復帰時には、燃料噴射量を抑えるべくインジェクタが制御される。例えば、インジェクタに対し比較的小さな幅の駆動パルスが出力されるという具合である。ところが、燃料レール内の圧力がアイドル運転時の噴射圧以上に維持されているため、駆動パルスを調整したとしても、燃料噴射量が大きくなることがある。このような必要以上の燃料噴射は、燃費の悪化や運転者に違和感を抱かせるおそれがある。
エンジン停止後、例えば数十分というような時間が経過した後にエンジンを再始動する高温再始動時には、ある程度の噴射量が必要になる。したがって、燃料レール内の圧力が下降しすぎると、例えば燃料の飽和蒸気圧近くまで燃料レール内の圧力が下降すると、燃料レール内に燃料蒸気が発生し、インジェクタの噴射量が不足し再始動性能が悪化するおそれがある。
ハイブリッドシステムなどにおけるアイドルストップ後の再始動時にも、上記高温再始動時と同様、ある程度の噴射量と即時始動を可能とするインジェクタの良好な噴霧が必要になる。したがって、この場合も、燃料レール内の圧力が下降しすぎると、再始動性能が悪化するおそれがある。
機械式の定残圧弁により、絞り部から少しずつ流入する燃料の圧力によって弁内流路が開放されてリターン流路が機能する。このとき、定残圧弁が絞り部を具備することにより、急激に圧力低下が生じることもない。これにより、燃料レール内の圧力を適宜下降させることができる。結果として、上記(1)エンジンが停止された場合における燃料レール内の圧力の上昇による不具合、及び、上記(2)エンジンの運転中における燃料レール内の圧力の維持による不具合を解消することができる。
加えて、リリーフ弁及び定残圧弁を機械式としているため、電磁制御式の弁を用いる場合と比較して、制御構成が不要となる点でも有利である。
(第1実施形態)
図1に、本形態の高圧ポンプを含む燃料供給装置を示す。
図1に示すように、燃料供給装置1は、高圧ポンプ10及び燃料レール20を含んで構成されている。
図1に示すように、高圧ポンプ10は、プランジャ部40、吸入弁部50、吐出弁部60、及び、圧力調整部としてのリリーフ弁70を備えている。なお図1には、リリーフ弁70の内部に定残圧弁90が図示されている。定残圧弁90は、第1実施形態には含まれず、第2実施形態に含まれるものであり、第2実施形態のところで説明する。
カバー12の反対側には、プランジャ部40が設けられている。プランジャ部40と燃料室13との中間付近に、燃料を加圧可能な加圧室14が形成されている。
燃料室13には、図1に示す低圧ポンプ31によって、燃料タンク30から燃料が供給される。燃料室13に供給された燃料は、吸入弁部50を経由し、加圧室14を経由して、吐出弁部60から図1に示した燃料レール20へ圧送される。
最初にプランジャ部40について説明する。
プランジャ部40は、プランジャ41、プランジャシール部42、スプリングシート43、及び、プランジャスプリング44などを備えている。
小径部412の周囲には、シリンダ15の内径に囲まれる可変容積室16が形成されている。可変容積室16は、容積室通路18を経由して燃料室13と連通している。可変容積室16は、加圧室14の容積変化に伴い、その変化の一部を補償するように燃料室13に燃料を供給し、または燃料室13から燃料を供給される。
このようなプランジャ部40の構成により、カムシャフト100の回転に応じたプランジャ41の往復移動が実現され、上記加圧室14の容積変化が作り出される。
吸入弁部50は、ハウジング11によって形成される筒部51、筒部51の開口を覆う弁部カバー52、コネクタ53、及び、コネクタハウジング54等を備えている。
筒部51は、略円筒状に形成され、内部に燃料通路55を有している。燃料通路55には、略円筒状のシートボディ56が配置されている。シートボディ56の内部には、吸入弁57が配置されている。また、燃料通路55は、導入通路131を経由して、燃料室13と連通している。
リリーフ弁70は、図3に示すように、吐出弁62の着座する弁座612よりも出口側の収容室611から連通する第1リターン流路71と、加圧室14へ連通する第2リターン流路72との間に介在している。
ハウジング11には、プラグ穴75、弁収容穴76、及び、第1リターン流路71が同軸に設けられる。プラグ穴75の内径は弁収容穴76の内径より大きく、弁収容穴76の内径は第1リターン流路71の内径より大きい。プラグ穴75の内径には、雌ねじが形成される。
弁収容穴73はリリーフ用弁体81が摺動する穴であり、高精度の真円度、面粗度等が要求されるため、例えば内径研磨加工される。そのため、内壁76aには穴底部77の手前に研磨加工逃がし用の溝が設けられている。
製造上、逃がし面79は切削などで得られる一次テーパ面として、シート面78は一次テーパ面の奥側に二次加工を施した仕上げテーパ面として形成される。シート面78は同軸度や面粗度が高精度に加工されることにより、リリーフ用弁体81が着座した時のシール性が確保される。シート面78のテーパ角度θ1は研削工具の先端角度となる。一方、逃がし面79のテーパ角度θ2は研削工具の先端角度より大きいため、逃がし面79は加工されない。
プラグ穴75は、雌ねじにプラグ80が螺着されることにより、外部から閉塞される。プラグ80の底面には、リリーフ弁ストッパ87の後端との干渉を避けるための有底の逃がし穴80aが設けられる。
開口部85は、また、弁内流路74を構成する。
これにより、リリーフ用弁体81の先端面83aがテーパ面78から離座すると、第1リターン流路71から弁収容穴76へ流入した燃料は、弁外流路73、リリーフ流路86を経由して、弁内流路74へ流入する。
「受流面積S(X)」、「受圧面全面積S0」については、後でさらに説明する。
また、リリーフ弁ストッパ87の後端部は、プラグ80をプラグ穴75に螺着した際、逃がし穴80aの内側に収容される。
開口部88は、スプリング82を収容するとともに、開口部88の底部がスプリング座面88bを形成する。
以上の構成により、リリーフ弁70の開弁時、燃料レール20からの燃料は、第1リターン流路71から弁外流路73、リリーフ流路86、弁内流路74、リリーフ流路89、逃がし穴80a、プラグ穴75、第2リターン流路72を経由して、加圧室14へ戻される。
リリーフ用弁体81の先端面83aは、通常時にはスプリング82の付勢力によりテーパ面78に着座しており、燃料レール20内の燃料圧力が所定のリリーフ圧を超えると、第1リターン流路71側から受ける力がスプリング82の荷重を上回り、テーパ面78から離座する。
特許請求の範囲の「最大移動長」は、リリーフ弁70の閉弁状態から全開状態までのリリーフ用弁体81の移動距離を意味する。これを、「フルリフト長F」と表す。また、全開状態のことを「フルリフト状態」という。
閉弁状態からフルリフト長Fまでの移動長を、フルリフト長に対する比率で示す。この比率を「リフト率X」と表す。閉弁状態ではリフト率Xは0であり、フルリフト状態ではリフト率Xは1である。
特許請求の範囲の「受流範囲」、「受圧面の全範囲」は、「受流面積S(X)」「受圧面全面積S0」と表す。ここで、「面積」は「範囲」を数値化した下位概念であると解釈される。また、「受流面積S(X)」は変数、「受圧面全面積S0」は定数である。
特許請求の範囲の「臨界移動長」は、受流範囲が受圧面の全範囲に一致するときの移動長をいう。これに対応し、受流面積S(X)が受圧面全面積S0に一致するときのリフト率Xを「臨界リフト率α」と表す。臨界移動長は、フルリフトFのα倍と表現される。
閉弁状態: X=0、 S(X)<S0 ・・・(式1)
臨界リフト状態: X=α、 S(X)=S0 ・・・(式2)
フルリフト状態: X=1、 S(X)>S0 ・・・(式3)
0.5≦α≦1 ・・・(式4)
ただし、上記のフルリフト状態の説明ではα=1の場合を含まないから、第1実施形態としては次のようになる。
0.5≦α<1 ・・・(式4’)
SH(X): α<0.5 ・・・(式5)
S1(X): α=0.5 ・・・(式6)
S2(X): α=1 ・・・(式7)
SL(X): α>1 ・・・(式8)
つまり、本発明の範囲は、S1(X)とS2(X)の間の特性を有する高圧ポンプであり、SH(X)またはSL(X)の特性を持つ高圧ポンプを除外するものである。
臨界リフト率αが0.5以上であるということは、開弁の瞬間すなわちリフト率X=0の位置から、少なくともリフト率X=0.5の位置までは、燃料流の動圧が100%受圧面83cに作用する状態が続き、リリーフ用弁体81は開弁方向への移動が補助されることを意味する。そのため、リリーフ弁70開弁時の初動特性が向上し、燃料レール20の圧力上昇に伴う燃料のリリーフが早期に実行されやすくなる。
具体的には、逃がし面79のテーパ角度θ2が相対的に大きすぎる場合がこれに該当する。開弁初期から燃料流は受圧面83cに作用するよりも、弁収容穴76の内壁76aに衝突する割合が多くなり、動圧が有効に利用されない。
しかし、この場合の具体的な形態は、受圧面83cが必要以上に大きいか、あるいは、受圧面83cまでの距離が必要以上に近いというものである。受圧面83cが必要以上に大きければスペースの無駄であり、受圧面83cまでの距離が必要以上に近ければ、弁収容76に流入できる燃料の絶対量が減少する。したがって、臨界リフト率αは最大でも1でよく、1より大きくするのは非効率である。
なお、逃がし面79のテーパ角度θ2はシート面のテーパ角度θ1よりも大きくなくては加工できないので、テーパ角度θ2が相対的に小さすぎるという場合は想定し難い。
第2実施形態の高圧ポンプは、圧力調整部がリリーフ弁70および定残圧弁90から構成されている。
図10(a)は、第2実施形態の高圧ポンプのリリーフ弁70および定残圧弁90を示す断面図であり、第1実施形態の図6(a)に対応する。図10(b)は、図10(a)の先端部の拡大図である。本形態では、定残圧弁90はリリーフ弁70の内部に設置される。また、図10(a)の左側を「先端側」、図10(a)の右側を「後端側」と表す。
リリーフ用弁体94の外側形状も、第1実施形態のリリーフ用弁体81とほぼ同様である。ただし、後端面の外周側には端面94aが形成され、端面94aの内周側には凸状にスプリング座面94bが形成される。
また、リリーフ弁ストッパ87の後端部は、プラグ80をプラグ穴75に螺着した際、逃がし穴80aの内側に収容される。
開口部88は、スプリング82を収容するとともに、開口部88の底部がスプリング座面88bを形成する。
リリーフ用弁体94の先端面83aは、通常時にはスプリング82の付勢力によりテーパ面78に着座しており、燃料レール20内の燃料圧力が所定のリリーフ圧を超えると、第1リターン流路71側から受ける力がスプリング82の荷重を上回り、テーパ面78から離座する。
定残圧弁収容穴95の先端側、すなわち奥側には、定残圧弁収容穴95より小径の小径流路98bが形成されている。また、定残圧弁収容穴95と小径流路98bとの境界部分には弁座99が形成されている。
リリーフ用弁体94の先端面83aの中心から小径流路98bに貫通して、流路面積が相対的に小さなオリフィス98aが形成される。オリフィス98aは、特許請求の範囲に記載の「絞り部」を構成する。燃料は、第1リターン流路71からオリフィス98aを通過して、小径流路98bに少しずつ流入可能である。あるいは、「リークする」と表現する。
定残圧弁スプリング92は、一端が定残圧用弁体91の球面に当接し、他端が定残圧弁ストッパ93の端面に当接している。定残圧弁スプリング92の付勢力より、定残圧用弁体91は弁座99に当接する。また、定残圧弁ストッパ93の中心軸には穴が貫通し、この穴は、定残圧弁収容穴95と共に定残圧弁内流路97を構成している。定残圧弁内流路97は弁内流路74と連通する。
これにより、リリーフ弁70の開弁時、燃料レール20からの燃料は、第1リターン流路71から弁外流路73、リリーフ流路96を経由して、定残圧弁内流路97へ流入し、さらに弁内流路74、リリーフ流路89、逃がし穴80a、プラグ穴75、第2リターン流路72を経由して、加圧室14へ戻される。
リリーフ弁70の作用、効果については第1実施形態と同様である。すなわち、燃料レール20内の燃料圧力が所定のリリーフ圧を超えると、リリーフ弁70が開弁する。開弁の瞬間から、少なくとも半開状態まで、燃料流の動圧が100%受圧面83cに作用する状態が続き、リリーフ用弁体94は開弁方向への移動が補助される。そのため、リリーフ弁70開弁時の初動特性が向上し、燃料レール20の圧力上昇に伴う燃料のリリーフが早期に実行されやすくなる。
ここで高圧ポンプ10の加圧行程について説明する。図2示したプランジャ41が、下死点から上死点へ移動する途中でコイル531に通電されると、コイル531に発生した磁界により磁気回路が形成される。すると、可動コア534と一体となってニードル59が、固定コア533側へ移動する。その結果、吸入弁57は、スプリング58の付勢力および加圧室14側の燃料から受ける圧力により、シートボディ56へ着座する。これにより、燃料室13と加圧室14との間が遮断される。加圧室14と燃料室13との間が遮断された状態でプランジャ41がさらに上死点に向けて上昇すると、加圧室14の燃料の圧力は上昇する。そして、加圧室14の燃料の圧力が所定の圧力以上になると、上述したように吐出弁部60の吐出弁62が吐出口65側へ移動する。これにより、加圧室14と収容室611とが連通し、加圧室14で加圧された燃料は吐出口65から吐出される。
(1)エンジン停止時の燃料レール内の圧力上昇に対する効果
図11は、燃料レール20内の圧力の推移を示す説明図である。ここでは、時刻t1において、エンジンが停止されたものとして説明する。
エンジンの停止直前はアイドル運転となるのが一般的であるため、エンジン停止時(時刻t1)では、燃料レール20内の圧力はアイドル圧Aとなる。なお、アイドル圧Aとはアイドル運転時の燃料圧力をいう。
この後、燃料レール20内の圧力上昇と、燃料のリークとのバランスが保たれている間は、記号Eで示すように、燃料レール20の圧力は、定残圧Bに一定に維持される。その後、燃料レール20が冷えていくと、燃料レール20内の圧力は徐々に低下していくことになり、時刻t3において飽和蒸気圧Cに近いものとなる。
図13は、エンジンの運転中にアクセルペダルの踏み込みを中断した後、再びアイドル運転状態となる減速復帰時におけるインジェクタ21からの燃料噴射量を示す説明図である。
時刻s1で、アクセルペダルの踏み込みが中断されると、スロットル開度が所定値より小さくなる。このとき、エンジン回転数が所定値以上である場合、燃料噴射が停止される。燃料噴射の停止を、図13では「燃料カット」と記す。その後、例えばエンジン回転数が所定値を下回ると、アイドリング状態に移行する(時刻s2)。
図11に示すように、時刻t2から、定残圧Bが維持されて、その後、時刻t3までは、燃料レール20の圧力が飽和蒸気圧以上に維持される。例えば、エンジン停止後、30分〜1時間という期間、燃料レール20内の圧力が維持される。
これにより、高温再始動時の再始動性能の悪化を抑制することができる。また、信号待ちなどによって一時的にエンジンを停止させるアイドルストップシステムにおいて、アイドルストップ後の再始動時にも、上記高温再始動時と同様、再始動性能の悪化を抑制することができる。
F:フルリフト長(最大移動長)、X:リフト率、α:臨界リフト率、S(x):受流面積(受流範囲)、S0:受圧面全面積(受圧面の全範囲)、θ1、θ2:テーパ角度
Claims (6)
- 往復移動可能なプランジャと、
前記プランジャの移動によって容積変化し燃料を加圧可能な加圧室の出口側に設けられる吐出弁と、
前記吐出弁の出口側に連通する第1リターン流路、
前記吐出弁の入口側に連通する第2リターン流路、
前記第1リターン流路と前記第2リターン流路との間に設けられ、前記第1リターン流路が開口する弁収容穴、
前記第1リターン流路の開口にテーパ状に形成されるシート面、
及び、前記シート面のテーパ開口側に連続してテーパ状に形成され、そのテーパ角度が前記シート面のテーパ角度より大きい逃がし面、
を有するハウジングと、
前記吐出弁の出口側の燃料圧力が所定値を超えたとき開弁して該出口側から前記第1リターン流路、前記弁収容穴、及び、前記第2リターン流路を経由して前記加圧室へ燃料を戻す流路を開放するリリーフ弁を構成するリリーフ用弁体であって、
前記弁収容穴に軸方向に移動可能に収容される弁本体、
この弁本体から前記第1リターン流路の開口に対向して突設される首部、
この首部の先端に形成され、前記シート面に着座または前記シート面から離座することにより閉弁または開弁する先端面、
及び、前記弁本体の前記首部の付け根部に形成され、開弁状態で前記逃がし面に沿って流入する燃料流が衝突する受圧面、を有するリリーフ用弁体と、
前記リリーフ用弁体に当接して移動を規制することにより、前記リリーフ用弁体の最大移動長を決定するリリーフ弁ストッパと、
前記リリーフ用弁体を閉弁方向に付勢する付勢手段と、
を備え、
閉弁状態から開弁状態への前記リリーフ用弁体の移動に伴って、前記受圧面もしくはその延長面上で、前記逃がし面のテーパを延長した円錐面が交わる境界線の内側の範囲である受流範囲が拡大し、
その受流範囲が前記受圧面の全範囲に一致するときの前記リリーフ用弁体の移動長である臨界移動長は、前記最大移動長の2分の1以上であるように前記逃がし面のテーパ角度が設定されることを特徴とする高圧ポンプ。 - 前記臨界移動長は、前記最大移動長以下であるように前記逃がし面のテーパ角度が設定されることを特徴とする請求項1に記載の高圧ポンプ。
- 前記受圧面の輪郭は、前記リリーフ用弁体の中心軸に同軸の円形であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高圧ポンプ。
- 前記受圧面は、前記リリーフ用弁体の中心軸に直交する平面であることを特徴とする請求項3に記載の高圧ポンプ。
- 前記吐出弁の出口側には、その高圧ポンプから吐出された高圧燃料を蓄積する燃料レールが接続されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。
- 前記リリーフ用弁体の内部に形成される弁内流路に支持され、前記リリーフ用弁体の前記先端部から当該弁内流路に連通する相対的に流路面積の小さな絞り部を有し、当該絞り部から流入する燃料の残圧が所定値以下のとき前記弁内流路を閉塞し、前記残圧が所定値を超えたとき前記弁内流路を開放する機械式の定残圧弁をさらに備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009281650A JP5344307B2 (ja) | 2009-12-11 | 2009-12-11 | 高圧ポンプ |
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