以下に、本発明に係る長尺物振れ感知器制御装置及びエレベータシステムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
(実施形態1)
図1は、実施形態1のエレベータシステムを備えるビルを示す説明図である。図1に示すように、本実施形態のエレベータシステム10は、建物としてのビル1に設けられる。エレベータシステム10は、複数のエレベータ装置11を含んで構成される。なお、エレベータ装置11は、バンクと呼ばれることもある。各エレベータ装置11は、それぞれ、乗りカゴ12と、昇降路13と、走行装置14と、カウンタウェイト15と、メインロープ16aと、コンペンロープ16bと、エレベータ制御装置18とを備える。乗りカゴ12は、乗客や荷物を収容するための箱である。昇降路13は、乗りカゴ12が走行するための空間であり、底面13aと上面13bと4つの側面13cとによって形成される空間である。
走行装置14は、メインシーブ14aと、ソラセシシーブ14bと、コンペンシーブ14cとを含んで構成される。メインシーブ14a及びソラセシシーブ14bは、それぞれ回転できるように機械室17aにそれぞれ回転できるように設けられる。メインシーブ14aは、モータの出力軸の回転力が伝えられることで回転する。機械室17aは、ビル1に設けられる一室である。機械室17aは、昇降路13の上面13b側に配置される。コンペンシーブ14cは、昇降路13の底面13a側に回転できるように設けられる。カウンタウェイト15は、乗りカゴ12の質量とほぼ同等の質量を有する錘である。より具体的には、乗りカゴ12の積載量が最大積載量の50%程度のである場合の乗りカゴ12の質量(乗りカゴ12自体の質量と乗りカゴ12内の乗客や荷物の質量との合計)と、カウンタウェイト15の質量とがつり合う。カウンタウェイト15は、乗りカゴ12とのつり合いによって、走行装置14の負荷を低減する。
メインロープ16aは、乗りカゴ12を吊り上げるためのロープである。メインロープ16aは、一方の端部が乗りカゴ12に連結され、他方の端部がメインシーブ14a及びソラセシシーブ14bを介してカウンタウェイト15に連結される。コンペンロープ16bは、メインロープ16aの質量とほぼ同等の質量を有する。コンペンロープ16bは、一方の端部が乗りカゴ12に連結され、他方の端部がコンペンシーブ14cを介してカウンタウェイト15に連結される。コンペンロープ16bは、メインロープ16aとつり合うことで、走行装置14の負荷を低減する。
エレベータ制御装置18は、機械室17aに設けられる。エレベータ制御装置18は、走行装置14のモータの動作を制御したり、乗りカゴ12のカゴドアを駆動するためのモータの動作を制御したりする。また、エレベータ制御装置18は、乗りカゴ12やビル1の各階の乗り場に設けられる表示装置の動作を制御したり、乗りカゴ12や乗り場に設けられるスイッチや各種センサから信号を取得したりする。
図2は、実施形態1のエレベータシステムの全体を示す説明図である。本実施形態のエレベータシステム10は、さらに、図2に示すエレベータ管制装置19と、長尺物振れ感知器20とを含む。エレベータ管制装置19は、中央管理室17bに設けられる。中央管理室17bは、ビル1に設けられる一室である。エレベータ管制装置19は、複数のエレベータ装置11を統括して管理及び制御するための装置である。エレベータ管制装置19は、複数のエレベータ制御装置18に電気的に接続される。そして、エレベータ管制装置19は、エレベータ制御装置18に指令としての信号を出力したり、エレベータ制御装置18から各エレベータ装置11の運転状況を示す信号を取得したりする。
長尺物振れ感知器20は、加速度センサ21と、長尺物振れ感知器制御装置30とを含んで構成される。加速度センサ21は、ビル1の揺れを電気信号として出力する装置である。加速度センサ21は、自身(加速度センサ21)の加速度を検出する、すなわち、ビル1の部分のうち自身(加速度センサ21)が設けられる部分の加速度を検出する。そして、加速度センサ21は、検出した加速度を電気信号として出力する。加速度センサ21は、ビル1のうち図1に示す地面Gから鉛直方向で離れた所定部位に設けられる。但し、ビル1が揺れる際、ビル1は地面Gを支点に揺れる。よって、ビル1は、長周期地震動や強風により1次のモードで揺れた場合、最上部の揺れが最も大きくなる。なお、長尺物振れ感知器20は、長周期地震動や強風によるビル1の1次モードの揺れを検出するものであることが前提である。よって、長尺物振れ感知器20は、1次モードの揺れの際の周波数よりも周波数が高い入力をブロックするローパスフィルタを備える。これにより、長尺物振れ感知器20は、一次モードでの揺れのみを感知する。
加速度センサ21は、検出すべき加速度が小さくなるほどより高い検出精度が要求される。つまり、加速度センサ21は、検出すべき加速度が大きいほど検出しやすい。よって、加速度センサ21は、地面Gからの自身(加速度センサ21)までの距離が大きくなるほど、検出すべき加速度が大きくなるため、自身が設けられる部分の加速度を検出しやすくなる。したがって、本実施形態では、加速度センサ21は、例えばビル1の最上部に設けられる機械室に配置される。ビル1の最上部とは、ビル1の最上階や、ビル1の屋上である。また、ビル1の最上階には、ビル1の最上階ではなくとも、ビル1の最上階に近い階も含まれる。ビル1の最上階に近い階とは、例えば、ビル1が有する階数の最上階側10%である。加速度センサ21がビル1の最上部に設けられることで、長尺物振れ感知器20は、加速度センサ21に要求される検出精度を低減できる。
加速度センサ21は、第1加速度センサ21aと、第2加速度センサ21bとの組み合わせによって構成される。第1加速度センサ21aは、自身(第1加速度センサ21a)の第1方向の加速度を検出する。第2加速度センサ21bは、自身(第2加速度センサ21b)の第2方向の加速度を検出する。第1方向及び第2方向は、水平方向であって、互いに直交する方向である。加速度センサ21は、第1加速度センサ21aが検出した加速度と、第2加速度センサ21bが検出した加速度とをベクトル合成することにより、ビル1の部分のうち、加速度センサ21が設けられる部分の水平面での加速度を検出する。
図3は、実施形態1の感知器制御装置が有する機能を示すブロック図である。本実施形態の長尺物振れ感知器制御装置30は、図2に示すように、加速度センサ21と共にビル1の最上部に設けられる。長尺物振れ感知器制御装置30は、コンピュータである。長尺物振れ感知器制御装置30は、図3に示すように、入出力部31と、情報記憶部32と、処理部33とを有する。本実施形態の長尺物振れ感知器制御装置30は、一つの装置(コンピュータ)がこれらの各機能を実現するが、長尺物振れ感知器制御装置30は、例えば、これらの各機能をそれぞれ別個に実現する複数の装置(コンピュータ)が電気的に接続されることで各機能を実現してもよい。入出力部31は、I/O(Input/Output)と呼ばれることもある。入出力部31は、信号の入力を受け付けたり、信号を出力したりする。入出力部31は、加速度センサ21と、エレベータ管制装置19とが電気的に接続される。
情報記憶部32は、処理部33が実行する手順の内容と各手順を実行する順番とが示されたプログラムや、当該プログラムの実行に必要な情報(データ)を記憶する。処理部33は、CPU(Central Processing Unit)である。処理部33は、情報取得部34と、演算部35と、信号生成部36とを有する。情報取得部34は、情報記憶部32から情報を取得する。また、情報取得部34は、入出力部31に接続される加速度センサ21から信号を取得する。加速度センサ21から取得する信号は、加速度センサ21の加速度、すなわちビル1の所定部位の加速度の大きさを表す信号である。演算部35は、情報取得部34が加速度センサ21から取得した加速度を、情報取得部34から取得した所定加速度と比較する。信号生成部36は、エレベータ管制装置19が取得するための警戒信号を生成する。信号生成部36は、1種類以上の警戒信号を生成する。本実施形態では、高信号と、低信号と、特低信号との3種類の警戒信号を生成する。
図1に示すビル1が揺れて長尺物が1次のモードで振れる際、長尺物は、長手方向(鉛直方向)の中央部分が腹となって振れる。すなわち、1次のモードでは長尺物の振れ量は、長手方向(鉛直方向)の中央部分が最大値になる。長尺物の振れ量は、ビル1の揺れの大きさによって変化する。すなわち、長尺物の振れ量は、加速度センサ21が検出した加速度の大きさによって変化する。また、ビル1の揺れが継続すると、長尺物は共振し始めることがある。これにより、長尺物の振れ量は、ビル1の揺れが継続する時間によっても変化する。長尺物振れ感知器20は、この加速度と、揺れの継続時間との2つに基づいて、図1に示す各エレベータ装置11が備える長尺物の振れ量の大きさを個別に予測する点に特徴がある。
図4−1は、実施形態1の感知器制御装置が実行する一連の手順の前半を示すフローチャートである。図4−2は、実施形態1の感知器制御装置が実行する一連の手順の後半を示すフローチャートである。長尺物振れ感知器制御装置30が実行する一連の手順を説明する前に、説明の便宜を図るため、図1に示す4つのエレベータ装置11を区別する。図1に示す4つのエレベータ装置11のうち、昇降路13の底面13aが地面Gに位置し、昇降路13の上面13bがビル1の最上階に位置するものを第1エレベータ装置11aという。また、第1エレベータ装置11aを除く3つのエレベータ装置11のうち、昇降路13の底面13aがビル1の鉛直方向途中に位置し、昇降路13の上面13bが最上階近傍に位置するものを第2エレベータ装置11bという。また、第1エレベータ装置11a及び第2エレベータ装置11bを除く2つのエレベータ装置11のうち、昇降路13の底面13aが地面Gに位置し、昇降路13の上面13bがより鉛直方向上側に位置するものを第3エレベータ装置11cという。そして、4つのエレベータ装置11のうち、第1エレベータ装置11a〜第3エレベータ装置11c以外のものを第4エレベータ装置11dという。
長尺物は、例えば、メインロープ16aと、コンペンロープ16bと、配線材とである。配線材は、乗りカゴ12に設けられる電気機器とエレベータ制御装置18とを電気的に接続するためのもの線材である。ビル1の揺れが一定でも、長尺物の振れ量は、エレベータ装置11ごとに異なる。例えば、本実施形態のエレベータシステム10の場合、第1エレベータ装置11a、第2エレベータ装置11b、第3エレベータ装置11c、第4エレベータ装置11dの順にそれぞれが備える長尺物が振れやすい傾向にある。長尺物は、ビル1の固有振動数と長尺物の固有振動数とが近くなるほど揺れやすい。ロープの固有振動数は、ロープ長さ、ロープ自重、ロープ張力などで決まる。
よって、同一のエレベータ装置11でも、乗りカゴ12の位置により、長尺物が揺れる場合と揺れない場合もある。なお、長尺物の揺れを低減できる時の乗りカゴ12の位置をそのエレベータ装置11の「退避階」といいう。また、鉛直方向上側に配置される長尺物ほど振れ量が増加しやすい傾向がある。鉛直方向上側に配置される長尺物ほど振れ量が増加しやすい傾向がある理由は、ビル1が揺れた際、鉛直方向上側の部分の方がビル1の変位量が大きいためである。なお、長尺物の長さによっては、第3エレベータ装置11cが備える長尺物の方が、第2エレベータ装置11bが備える長尺物よりも振れ量が大きくなる場合もある。
次に、長尺物振れ感知器制御装置30が取り扱う数値であって、図4−1及び図4−2に示す各値について説明する。αは、図2に示す加速度センサ21が検出した自身(加速度センサ21)の加速度であって、ビル1の所定部位の加速度である。図4−1及び図4−2に示す所定加速度α11と、所定加速度α12と、所定加速度α13と、所定加速度α21と、所定加速度α22と、所定加速度α23と、所定加速度α31と、所定加速度α32と、所定加速度α33とは、図3に示す情報記憶部32にあらかじめ記憶されている値である。所定加速度α11〜α13の各値は、図1に示す第1エレベータ装置11aが備える長尺物の現在の振れ量の大きさを複数の段階に分けるために用いられる値である。所定加速度α21〜α23は、図1に示す第2エレベータ装置11bが備える長尺物の現在の振れ量の大きさを複数の段階に分けるために用いられる値である。所定加速度α31〜α33は、図1に示す第3エレベータ装置11cが備える長尺物の現在の振れ量の大きさを複数の段階に分けるために用いられる値である。
本実施形態では、長尺物の振れ量は、第1段階から第3段階に分類される。第1段階から第3段階に向かうほど、長尺物の振れ量の大きさが大きくなり、長尺物は、図1に示す昇降路13の側面13cに接触するおそれが高くなる。長尺物と図1に示す昇降路13の側面13cまでの距離を仮に1000mmとすると、長尺物の振れ量が所定量である50mmを超えた場合に、長尺物の振れ量は第1段階となる。また、長尺物の振れ量が所定量である500mmを超えた場合に、長尺物の振れ量は第2段階となる。また、長尺物の振れ量が所定量である800mmを超えた場合に、長尺物の振れ量は第3段階となる。
本実施形態では、仮にビル1の揺れの大きさが想定される最大値であった場合でも、第4エレベータ装置11dが備える長尺物の振れ量の大きさは、許容できる大きさ(第4エレベータ装置11dが備える長尺物が昇降路13の側面13cに接触しない大きさ)になるものとする。よって、長尺物振れ感知器20は、第4エレベータ装置11dの長尺物の振れ量は監視せずに、第1エレベータ装置11a〜第3エレベータ装置11cの長尺物の振れ量を監視するものとする。すなわち、長尺物振れ感知器20は、第4エレベータ装置11dのエレベータ制御装置18へは警戒信号を出力せずに、第1エレベータ装置11a〜第3エレベータ装置11cの各エレベータ制御装置18へ警戒信号を出力する。
次に、図4−1及び図4−2に示す継続時間カウンタt11と、継続時間カウンタt12と、継続時間カウンタt13と、継続時間カウンタt21と、継続時間カウンタt22と、継続時間カウンタt23と、継続時間カウンタt31と、継続時間カウンタt32と、継続時間カウンタt33とについて説明する。継続時間カウンタt11〜t33の各値は、加速度センサ21が揺れ始めてから現在までに経過した時間を表す値である。詳しくは、継続時間カウンタt11は、加速度αが所定加速度α11以上となってから現在までに経過した時間を計測するための変数である。継続時間カウンタt12は、加速度αが所定加速度α12以上となってから現在までに経過した時間を計測するための変数である。継続時間カウンタt13は、加速度αが所定加速度α13以上となってから現在までに経過した時間を計測するための変数である。継続時間カウンタt21〜t33の各値も同様である。
図4−1及び図4−2に示す所定時間t11aと、所定時間t12aと、所定時間t13aと、所定時間t21aと、所定時間t22aと、所定時間t23aと、所定時間t31aと、所定時間t32aと、所定時間t33aとは、図3に示す情報記憶部32にあらかじめ記憶されている値である。所定時間t11a〜t13aの各値は、図1に示す第1エレベータ装置11aが備える長尺物の現在の振れ量の大きさを複数の段階に分けるために用いられる値である。所定時間t21a〜t23aは、図1に示す第2エレベータ装置11bが備える長尺物の現在の振れ量の大きさを複数の段階に分けるために用いられる値である。所定時間t31a〜t33aは、図1に示す第3エレベータ装置11cが備える長尺物の現在の振れ量の大きさを複数の段階に分けるために用いられる値である。
次に、所定加速度α11〜α33の各値と、所定時間t11a〜t33aの各値とをより詳細に説明する。所定加速度α11は、現在の加速度αが、所定加速度α11以上となった場合に、図1に示す第1エレベータ装置11aが備える長尺物の振れ量が所定量を超えて第3段階になるおそれがあると判定できる値である。そして、所定時間t11aは、現在の加速度αが、所定加速度α11以上となった状態で、継続時間カウンタt11が所定時間t11a以上になった場合に、第1エレベータ装置11aが備える長尺物の振れ量が所定量を超えて第3段階になると判定できる値である。所定加速度α21及び所定時間t21aも同様に、第2エレベータ装置11bが備える長尺物の振れ量が所定量を超えて第3段階になるか否かを判定するための値である。また、所定加速度α31及び所定時間t31aも同様に、第3エレベータ装置11cが備える長尺物の振れ量が所定量を超えて第3段階になるか否かを判定するための値である。
所定加速度α12は、現在の加速度αが、所定加速度α12以上となった場合に、図1に示す第1エレベータ装置11aが備える長尺物の振れ量が所定量を超えて第2段階になるおそれがあると判定できる値である。そして、所定時間t12aは、現在の加速度αが、所定加速度α12以上となった状態で、継続時間カウンタt12が所定時間t12a以上になった場合に、第1エレベータ装置11aが備える長尺物の振れ量が所定量を超えて第3段階になると判定できる値である。所定加速度α22及び所定時間t22aも同様に、第2エレベータ装置11bが備える長尺物の振れ量が所定量を超えて第2段階になるか否かを判定するための値である。また、所定加速度α32及び所定時間t32aも同様に、第3エレベータ装置11cが備える長尺物の振れ量が所定量を超えて第2段階になるか否かを判定するための値である。
所定加速度α13は、現在の加速度αが、所定加速度α13以上となった場合に、図1に示す第1エレベータ装置11aが備える長尺物の振れ量が所定量を超えて第1段階になるおそれがあると判定できる値である。そして、所定時間t13aは、現在の加速度αが、所定加速度α13以上となった状態で、継続時間カウンタt13が所定時間t13a以上になった場合に、第1エレベータ装置11aが備える長尺物の振れ量が所定量を超えて第1段階になると判定できる値である。所定加速度α23及び所定時間t23aも同様に、第2エレベータ装置11bが備える長尺物の振れ量が所定量を超えて第1段階になるか否かを判定するための値である。また、所定加速度α33及び所定時間t33aも同様に、第3エレベータ装置11cが備える長尺物の振れ量が所定量を超えて第1段階になるか否かを判定するための値である。
図5は、ビルの高さとビルの最上部の加速度とに基づいて、ビルの最上部の変位量を算出するための図表である。図5の色付き部分の数値(ビル1の最上部の変位量D)の単位はgal(1gal=0.01m/s2)である。図5に示すビル1の固有周期T(s)とビル1の高さ(m)とは、概ねであるがT=0.025×Hの関係がある。また、ビル1の最上部の加速度α(m/s2)と、ビル1の固有周期T(s)と、ビル1の最上部の変位量D(m)とは、α=D×(2×π/T)2の関係がある。
所定加速度α11〜α33の各値と、所定時間t11a〜t33aの各値とは、あらかじめ行われた解析の結果に基づいて決定される。この解析は、ビル1の加速度センサ21が設けられる部分(ビル1の所定部位)の変位量毎に、ビル1の揺れが継続する時間と、第1エレベータ装置11a〜第3エレベータ装置11cがそれぞれ備える長尺物の各振れ量との関係を算出するものである。ビル1の所定部位であるビル1の最上部の変位量は、ビル1の最上部の加速度を図5に示す図表に当てはめることよって算出される。具体的には、例えばビル1の高さが400mとし、ビル1の最上部の加速度が3.9galであるとすると、ビル1の最上階の変位量(振幅)は100mmとなる。なお、ビル1の最上部の加速度が同じ3.9galであっても、例えばビル1の高さが180mの場合は、ビル1の最上部の変位量は20mmとなる。
次に、ビル1の所定部位の変位量毎に、図1に示す第1エレベータ装置11aから第3エレベータ装置11cのそれぞれが備える長尺物の変位量と、ビル1の揺れの継続時間との関係を解析する。この解析結果の一例を図6に示す。図6には、長尺物の長手方向の中央部分の変位量と、長尺物の長手方向の上部側1/4部分の変位量と、長尺物の長手方向の下部側1/4部分の変位量とが示されている。長尺物の長手方向の上部及び下部は、長尺物の振れの節となる部分である。ここで、図1に示すエレベータ装置11の場合、各エレベータ装置11には長尺物が4つある。以下に、各長尺物の長手方向の上部及び下部について具体的に説明する。
1つ目の長尺物は、メインロープ16aの一部である。この長尺物は、メインロープ16aとメインシーブ14aとの接点が上部であり、メインロープ16aと乗りカゴ12との接点が下部である。2つ目の長尺物は、メインロープ16aの一部である。この長尺物は、メインロープ16aとソラセシシーブ14bとの接点が上部であり、メインロープ16aとカウンタウェイト15との接点が下部である。3つ目の長尺物は、コンペンロープ16bの一部である。この長尺物は、コンペンロープ16bとカウンタウェイト15との接点が上部であり、コンペンロープ16bとコンペンシーブ14cとの接点が下部である。4つ目の長尺物は、コンペンロープ16bの一部である。この長尺物は、コンペンロープ16bと乗りカゴ12との接点が上部であり、コンペンロープ16bとコンペンシーブ14cとの接点が下部である。
長尺物の振れ量は、ビル1の最上部の変位量と、ビル1の高さと、長尺物の上部の鉛直方向での位置と、長尺物の下部の鉛直方向での位置と、長尺物の密度と、長尺物に負荷される張力とによって変化する。よって、本解析では、これらの値がパラメータとしてコンピュータに入力される。なお、ここのコンピュータは、長尺物振れ感知器制御装置30のコンピュータではない。また、長尺物に負荷される張力は、図1に示す乗りカゴ12内の乗客の数によって変化することがある値である。長尺物の上部の鉛直方向での位置及び長尺物の下部の鉛直方向での位置は、乗りカゴ12の位置によっても変化する。本解析では、長尺物に負荷される張力や、長尺物の上部の鉛直方向での位置や、長尺物の下部の鉛直方向での位置は、長尺物の振れ量が最大となるような値を用いる。例えば、長尺物の上部の鉛直方向での位置や、長尺物の下部の鉛直方向での位置は、乗りカゴ12が退避階以外の位置にある際の値が用いられる。
図6は、ビルの最上部の変位量が15mmとなるビルの揺れが継続する時間と、第1エレベータ装置が備える長尺物の各部の振れ量との関係を示すグラフである。このようにして設定されたパラメータで本解析を行うと、例えば図6に示すような解析結果がコンピュータによって算出される。なお、ここのコンピュータは、長尺物振れ感知器制御装置30のコンピュータではない。図6に示される解析結果から、ビル1の所定部位であるビル1の最上部の変位量が15mmである場合、この揺れが405秒継続すると、長尺物の長手方向の中央部分の振れ量が1000mmとなる。つまり、仮に長尺物と図1に示す昇降路13の側面13cとの距離が1000mの場合、ビル1の最上部の変位量が15mmとなるビル1の揺れが405秒続くと、長尺物は昇降路13の側面13cに接触することになる。
以上のように、本実施形態の解析では、ビル1の高さ方向の任意の位置について時刻歴の応答を解析する。そして、本解析では、乗りカゴ12の積載条件(ロープのテンションに影響)と乗りカゴ12の位置(ロープの長さと自重に影響)とを変化させて、ビル1の1次モードと共振する場合があるかを求める。そして、本解析では、共振現象が起こる乗りカゴ12の位置と積載条件(危険階:複数の場合もある)で、ビル1の時刻歴応答の解析結果を用いて、エレベータ装置11が備える長尺物の振れの時刻歴応答を解析する。これにより、長尺物(ロープ)の振れの成長の大きさと時間とを把握する。以上の解析に基づいて、図4−1及び図4−2に示される所定加速度α11〜α33の各値と、所定時間t11a〜t33の各値とは設定される。
図4−1に示すステップST01で、図3に示す情報取得部34は、入出力部31を介して加速度センサ21から信号を取得することで、加速度αを取得する。次に、図4−1に示すステップST11で、図3に示す演算部35は、加速度αが所定加速度α11以上であるか否かを判定する。具体的には、まず、図3に示す情報取得部34が情報記憶部32から所定加速度α11を取得する。そして、演算部35が加速度αから所定加速度α11を減算する。この計算結果の値が0または正の値である場合、演算部35は、加速度αが所定加速度α11以上であると判定する。また、この計算結果の値が負の値である場合、演算部35は、加速度αが所定加速度α11以上ではないと判定する。
加速度αが所定加速度α11以上である場合(ステップST11、Yes)、ステップST12で、演算部35は、継続時間カウンタt11に1を加算したものを新たな継続時間カウンタt11とする。なお、例えば、継続時間カウンタt11が同一であったとしても、継続時間カウンタt11が示す時間(秒数)は、処理部33の処理速度によって変化する。よって、所定時間t11a〜t33aの各値も、処理部33の処理速度によって値の大きさをそれぞれ調節される。ステップST12で長尺物振れ感知器制御装置30が実行する具体的な手順は、まず、情報取得部34が情報記憶部32から継続時間カウンタt11を取得する。そして、演算部35が、継続時間カウンタt11に1を加算する。そして、1が加算された継続時間カウンタt11を情報記憶部32が新たな継続時間カウンタt11として記憶する。
次に、ステップST13で、演算部35は、継続時間カウンタt11が所定時間t11a以上であるか否かを判定する。具体的には、まず、図3に示す情報取得部34が情報記憶部32から所定時間t11aを取得する。そして、演算部35が継続時間カウンタt11から所定時間t11aを減算する。この計算結果の値が0または正の値である場合、演算部35は、継続時間カウンタt11が所定時間t11a以上であると判定する。また、この計算結果の値が負の値である場合、演算部35は、継続時間カウンタt11が所定時間t11a以上ではないと判定する。
継続時間カウンタt11が所定時間t11a以上ではない場合(ステップST13、No)、長尺物振れ感知器制御装置30は、ステップST14及びステップST15を実行せずにステップST21以降の一連の手順を実行する。長尺物振れ感知器制御装置30は、ステップST21以降の一連の手順をすべて実行すると、再度ステップST01から処理を開始する。演算部35が、ステップST12を繰り返し実行して継続時間カウンタt11が所定時間t11a以上になると(ステップST13、Yes)、ステップST14で、図3に示す信号生成部36が高信号S11を生成すると共に図3に示す入出力部31がエレベータ管制装置19への高信号S11の出力を開始する。高信号S11は、図1に示す第1エレベータ装置11aの長尺物の振れ量が第3段階であることを表す警戒信号である。なお、再度ステップST14を実行する際に高信号S11がすでに出力されている場合、信号生成部36は高信号S11の生成を維持すると共に入出力部31はエレベータ管制装置19への高信号S11の出力を維持する。ステップST14を実行すると、長尺物振れ感知器制御装置30は、ステップST41以降の一連の手順を実行する。
以上の手順を実行することにより、加速度αが所定加速度α11以上となり、かつ、継続時間カウンタt11が所定時間t11a以上である場合、すなわちビル1の所定部位の加速度αが所定加速度α11以上である状態が所定時間以上続いた場合、その条件を満たす間、長尺物振れ感知器20は、エレベータ管制装置19に高信号S11を出力し続ける。図2に示すエレベータ管制装置19は、高信号S11を受け取ると、第1エレベータ装置11aのエレベータ制御装置18に高信号S11を受け渡す。なお、エレベータ管制装置19を備えないエレベータシステムで、長尺物振れ感知器20とエレベータ制御装置18とが直接電気的に接続される場合、長尺物振れ感知器20は、高信号S11を第1エレベータ装置11aのエレベータ制御装置18に直接出力する。高信号S11を取得すると、エレベータ制御装置18は、高信号S11を取得した際に実行するようにあらかじめ設定された手順を実行する。以下に、高信号S11を取得した際にエレベータ制御装置18が実行する手順の一例を説明する。
図7は、高信号を取得した際にエレベータ制御装置が実行する一連の手順を示すフローチャートである。まず、ステップST201で、エレベータ制御装置18が有する情報取得部は、図1に示す乗りカゴ12の現在位置を取得する。次に、ステップST202で、エレベータ制御装置18が有する演算部は、乗りカゴ12の現在位置が退避階か否かを判定する。退避階とは、エレベータ装置11が備える長尺物の振れを低減できる乗りカゴ12の位置である。退避階は、ビル1の高さ(階数)や、エレベータ装置11の仕様によって異なるが、例えば、昇降路13全高の中央部4/6の位置である。
乗りカゴ12の現在位置が退避階である場合(ステップST202、Yes)、ステップST203で、エレベータ制御装置18が有する走行装置制御部は、走行装置14を停止する。乗りカゴ12の現在位置が退避階ではない場合(ステップST202、No)、ステップST204で、エレベータ制御装置18が有する走行装置制御部は、走行装置14を駆動して乗りカゴ12を退避階に移動させる。ステップST203またはステップST204を実行すると、エレベータ制御装置18は一連の手順の実行を終了する。高信号S11を取得した際にエレベータ制御装置18が以上の一連の手順を実行することにより、図1に示す第1エレベータ装置11aは、長尺物の振れ量を低減できる位置で乗りカゴ12が待機する、または、長尺物の振れ量を低減できる位置に乗りカゴ12が移動する。よって、第1エレベータ装置11aは、長尺物の振れ量を低減し、長尺物が昇降路13の側面13cに接触するおそれを低減できる。
図4−1に戻り、ステップST11で否定的な判定がなされた場合に長尺物振れ感知器制御装置30が実行する手順を説明する。加速度αが所定加速度α11以上ではなくなると(ステップST11、No)、ステップST15で、信号生成部36は高信号S11の生成を停止すると共に、入出力部31はエレベータ管制装置19への高信号S11の出力を停止する。なお、再度ステップST15を実行する際に高信号S11が出力されていない場合、信号生成部36は高信号S11の生成の停止状態を維持すると共に入出力部31はエレベータ管制装置19への高信号S11の出力の停止状態を維持する。
また、ステップST15で、演算部35は、継続時間カウンタt11をクリア(0に)する。具体的には、演算部35が継続時間カウンタt11を0とし、0になった継続時間カウンタt11を情報記憶部32が新たな継続時間カウンタt11として記憶する。ステップST15を実行すると、長尺物振れ感知器制御装置30は、ステップST21以降の一連の手順を実行する。図2に示すエレベータ管制装置19は、高信号S11が入力されている間、図7に示すステップST203で走行装置14の運転を停止している。加速度αが所定加速度α11よりも小さくなると、長尺物振れ感知器20は、エレベータ管制装置19への高信号S11の出力を停止する。これにより、第1エレベータ装置11aのエレベータ制御装置18は、高信号S11を取得できなくなる。よって、第1エレベータ装置11aは、走行装置14の駆動が再開され、通常の運行を再開する。
図4−1に示すステップST21〜ステップST25は、ステップST11〜ステップST15と同様である。但し、所定加速度α11が所定加速度α12に、継続時間カウンタt11が継続時間カウンタt12に、所定時間t11aが所定時間t12aに、高信号S11が低信号S12に置き換えられている。低信号S12は、図1に示す第1エレベータ装置11aの長尺物の振れ量が第2段階であることを表す警戒信号である。ステップST24を実行すると、長尺物振れ感知器制御装置30は、ステップST41以降の一連の手順を実行する。ステップST25を実行すると、長尺物振れ感知器制御装置30は、ステップST31以降の一連の手順を実行する。
以上の手順を実行することにより、加速度αが所定加速度α12以上となり、かつ、継続時間カウンタt12が所定時間t12a以上である場合、すなわちビル1の所定部位の加速度αが所定加速度α12以上である状態が所定時間以上続いた場合、その条件を満たす間、長尺物振れ感知器20は、エレベータ管制装置19に低信号S12を出力し続ける。図2に示すエレベータ管制装置19は、低信号S12を受け取ると、第1エレベータ装置11aのエレベータ制御装置18に低信号S12を受け渡す。なお、エレベータ管制装置19を備えないエレベータシステムで、長尺物振れ感知器20とエレベータ制御装置18とが直接電気的に接続される場合、長尺物振れ感知器20は、低信号S12を第1エレベータ装置11aのエレベータ制御装置18に直接出力する。
低信号S12を取得すると、エレベータ制御装置18は、例えば、図1に示す走行装置14の運転を停止する。第2段階の振れ量であれば、長尺物は昇降路13の側面13cに接触するおそれはないが、エレベータ制御装置18は、走行装置14の運転を停止することにより、エレベータ装置11のより高い安全を確保できる。また、図3に示す入出力部31及び信号生成部36が図4−1に示すステップST25を実行すると、長尺物振れ感知器20は、エレベータ管制装置19への低信号S12の出力を停止する。これにより、第1エレベータ装置11aのエレベータ制御装置18は、低信号S12を取得できなくなる。よって、第1エレベータ装置11aは、走行装置14の駆動が再開され、通常の運行を再開する。
図4−1に示すステップST31〜ステップST35は、ステップST11〜ステップST15と同様である。但し、所定加速度α11が所定加速度α13に、継続時間カウンタt11が継続時間カウンタt13に、所定時間t11aが所定時間t13aに、高信号S11が特低信号S13に置き換えられている。特低信号S13は、図1に示す第1エレベータ装置11aの長尺物の振れ量が第1段階であることを表す警戒信号である。ステップST34またはステップST35を実行すると、長尺物振れ感知器制御装置30は、ステップST41以降の一連の手順を実行する。
以上の手順を実行することにより、加速度αが所定加速度α13以上となり、かつ、継続時間カウンタt13が所定時間t13a以上である場合、すなわちビル1の所定部位の加速度αが所定加速度α13以上である状態が所定時間以上続いた場合、その条件を満たす間、長尺物振れ感知器20は、エレベータ管制装置19に特低信号S13を出力し続ける。図2に示すエレベータ管制装置19は、特低信号S13を受け取ると、第1エレベータ装置11aのエレベータ制御装置18に特低信号S13を受け渡す。なお、エレベータ管制装置19を備えないエレベータシステムで、長尺物振れ感知器20とエレベータ制御装置18とが直接電気的に接続される場合、長尺物振れ感知器20は、特低信号S13を第1エレベータ装置11aのエレベータ制御装置18に直接出力する。
特低信号S13を取得すると、エレベータ制御装置18は、例えば、微震を感知した旨を伝えるアナウンスや、揺れが強くなった場合には乗りカゴ12の走行が停止する可能性がある旨を伝えるアナウンスを、図1に示す乗りカゴ12内に設けられるスピーカーから出力させる。また、特低信号S13を取得すると、エレベータ制御装置18は、例えば、微震を感知した旨を伝える画像や、揺れが強くなった場合には乗りカゴ12の走行が停止する可能性がある旨を伝える画像を、図1に示す乗りカゴ12内に設けられる表示装置に表示させる。これにより、乗りカゴ12内の乗客は、アナウンスや画像を確認することで、走行装置14が停止する事態に備えることができる。
また、図3に示す入出力部31及び信号生成部36が図4−1に示すステップST35を実行すると、長尺物振れ感知器20は、エレベータ管制装置19への特低信号S13の出力を停止する。これにより、第1エレベータ装置11aのエレベータ制御装置18は、特低信号S13を取得できなくなる。よって、第1エレベータ装置11aは、乗りカゴ12内のアナウンスや画像の表示を停止できる。
図4−1に示すステップST41〜ステップST65は、ステップST11〜ステップST35と同様である。但し、所定加速度α11〜α13が所定加速度α21〜α23に、継続時間カウンタt11〜t13が継続時間カウンタt21〜t23に、所定時間t11a〜t13aが所定時間t21a〜t23aに置き換えられている。また、高信号S21と、低信号S22と、特低信号S23とは、第2エレベータ装置11bのエレベータ制御装置18に取得される警戒信号である。ステップST44で出力される高信号S21は、図1に示す第2エレベータ装置11bの長尺物の振れ量が第3段階であることを表す警戒信号である。
ステップST54で出力される低信号S22は、第2エレベータ装置11bの長尺物の振れ量が第2段階であることを表す警戒信号である。ステップST64で出力される特低信号S23は、図1に示す第1エレベータ装置11aの長尺物の振れ量が第1段階であることを表す警戒信号である。ステップST44またはステップST54またはステップST64またはステップST65を実行すると、長尺物振れ感知器制御装置30は、図4−2に示すステップST71以降の一連の手順を実行する。以上の手順を実行することにより、長尺物振れ感知器20は、ステップST11〜ステップST35の一連の手順を実行することで第1エレベータ装置11aに対して奏する効果と同様の効果を、第2エレベータ装置11bに対して奏することができる。
図4−2に示すステップST71〜ステップST95は、ステップST11〜ステップST35と同様である。但し、所定加速度α11〜α13が所定加速度α31〜α33に、継続時間カウンタt11〜t13が継続時間カウンタt31〜t33に、所定時間t11a〜t13aが所定時間t31a〜t33aに置き換えられている。また、高信号S31と、低信号S32と、特低信号S33とは、第3エレベータ装置11cのエレベータ制御装置18に取得される警戒信号である。ステップST74で出力される高信号S31は、図1に示す第3エレベータ装置11cの長尺物の振れ量が第3段階であることを表す警戒信号である。
ステップST84で出力される低信号S32は、第3エレベータ装置11cの長尺物の振れ量が第2段階であることを表す警戒信号である。ステップST94で出力される特低信号S33は、図1に示す第1エレベータ装置11aの長尺物の振れ量が第1段階であることを表す警戒信号である。ステップST74またはステップST84またはステップST94またはステップST95を実行すると、長尺物振れ感知器制御装置30は、一連の手順の実行を終了して、再度図4−1に示すステップST01を実行する。以上の手順を実行することにより、長尺物振れ感知器20は、ステップST11〜ステップST35の一連の手順を実行することで第1エレベータ装置11aに対して奏する効果と同様の効果を、第3エレベータ装置11cに対して奏することができる。
以上の図4−1に示すステップST01から図4−2に示すステップST95までの一連の手順を実行することにより、長尺物振れ感知器制御装置30は、ビル1の所定部位の加速度と、ビル1の揺れの継続時間との2つに基づいて、図1に示す複数のエレベータ装置11がそれぞれ備える長尺物の振れ量が所定量以下であるか否かを判定できる。よって、長尺物振れ感知器20は、複数の加速度センサ21を備えずとも、単数の加速度センサ21を備えることで、複数のエレベータ管制装置19に対して各信号(高信号、低信号、特低信号)を出力できる。これにより、長尺物振れ感知器20は、複数のエレベータ装置11のより高い安全を確保するために必要な加速度センサ21の数を低減できる。結果として、長尺物振れ感知器20は、エレベータシステム10の構築に必要なコストを低減できる。
(実施形態2)
図8は、実施形態2のエレベータシステムの全体を示す説明図である。図8に示すように、本実施形態のエレベータシステム40は、長尺物振れ感知器41を備える。長尺物振れ感知器41は、加速度センサ21と長尺物振れ感知器制御装置30とが離れた位置に設けられる点で図2に示す実施形態1の長尺物振れ感知器20と異なる。具体的には、加速度センサ21は、ビル1の最上部に設けられる。長尺物振れ感知器制御装置30は、中央管理室17bに設けられる。加速度センサ21と長尺物振れ感知器制御装置30とは、配線42で互いに電気的に接続される。長尺物振れ感知器制御装置30とエレベータ管制装置19とは、配線43aと配線43bと配線43cの3本の配線で互いに電気的に接続される。
配線42は、加速度センサ21が検出した加速度を電気信号として長尺物振れ感知器制御装置30に送信するための配線である。中央管理室17bは、一般的にビル1の最上部から離れている。よって、配線42は、エレベータシステム10が備える配線の中でも比較的長めの配線となる。配線43aは、高信号S11〜特低信号S13の各信号をエレベータ管制装置19に送信するための配線である。配線43bは、高信号S21〜特低信号S23の各信号をエレベータ管制装置19に送信するための配線である。配線43cは、高信号S31〜特低信号S33の各信号をエレベータ管制装置19に送信するための配線である。長尺物振れ感知器制御装置30は、エレベータ管制装置19と同室に設けられる。配線43a〜配線43cの各配線は、エレベータシステム10が備える配線の中でも比較的短めの配線となる。
以上により、本実施形態の長尺物振れ感知器41は、実施形態1の長尺物振れ感知器20と同様の効果を奏すると共に、新たに以下の効果を奏する。長尺物振れ感知器41は、ビル1の最上部と中央管理室17bとの間に渡される比較的長めの配線の数を、図2に示す実施形態1の長尺物振れ感知器20よりも低減できる。よって、長尺物振れ感知器41は、エレベータシステム40の構築に必要なコストをより好適に低減できる。また、比較的長めの配線材が増えると、エレベータシステム40が備える配線の取り回し(配置)が複雑になる傾向がある。しかしながら、エレベータシステム40は、比較的長めの配線の数を低減できる。よって、長尺物振れ感知器41は、エレベータシステム40が備える配線の取り回し(配置)をシンプルにできる。
本実施形態では、長尺物振れ感知器制御装置30はエレベータ管制装置19と別個に設けられるが、長尺物振れ感知器制御装置30はエレベータ管制装置19に含まれてもよい。この場合、長尺物振れ感知器制御装置30が有する機能(図3に示す入出力部31〜信号生成部36の各機能)を、エレベータ管制装置19が有することになる。ビル1に既に設けられているエレベータシステムに、長尺物振れ感知器41が追加される場合、長尺物振れ感知器41は、長尺物振れ感知器制御装置30とエレベータ管制装置19とが別個に設けられる方が好ましい。これにより、長尺物振れ感知器41は、エレベータシステムが既に備えるエレベータ管制装置19に大きな変更が加えられることなく、容易にエレベータシステムに導入されることができる。一方、新規のエレベータシステムがビル1に導入される場合は、長尺物振れ感知器41は、長尺物振れ感知器制御装置30がエレベータ管制装置19に含まれる方が好ましい。この場合、長尺物振れ感知器41は、長尺物振れ感知器制御装置30という一つの装置を省略できるため、エレベータシステム40を構築するために必要なコストをさらに低減できる。
(変形例)
図2に示す実施形態1の長尺物振れ感知器20及び図8に示す実施形態2の長尺物振れ感知器41は、それぞれ加速度センサ21を備える。この加速度センサ21に替えて、変形例の長尺物振れ感知器は、変位センサを備えてもよい。変位センサとは、自身(変位センサ)が設けられる部分の変位量を検出する装置である。但し、一般的な変位センサは、加速度センサを備え、この加速度センサが検出した結果に基づいて自身が設けられる部分の変位量を導き出している。よって、このような変位センサを備える変形例の長尺物振れ感知器も、加速度に基づいてエレベータ装置11が備える長尺物の振れ量が許容範囲以内であるか否かを判定する点で、図2に示す長尺物振れ感知器20や図8に示す長尺物振れ感知器41と概念が一致する。
一方で、加速度センサを備えない変位センサもある。変形例の長尺物振れ感知器は、加速度センサ21に替えて加速度センサを備えない変位センサを備えてもよい。これは、図5に例示するように、変位量と加速度とは互いに関係があるためである。このような変形例の長尺物振れ感知器の感知器制御装置は、図4−1及び図4−2に示す加速度αの替わりに変位センサが設けられる部分の変位量を用いると共に、所定加速度α11〜α33の替わりに所定加速度α11〜α33の各値が変位量に置換されたものを用いる。これにより、変位センサを備える変形例の長尺物振れ感知器も、加速度センサ21を備える図2に示す長尺物振れ感知器20及び図8に示す長尺物振れ感知器41と同様の効果を奏することができる。