JP2011111988A - 過給エンジンシステム - Google Patents
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Abstract
【課題】ターボ圧縮機への吸気に旋回流を発生させることが可能な過給エンジンシステムにおいて、簡単な構造でターボ圧縮機の効率の低下を招くことなくエンジン負荷の調整を可能にする。
【解決手段】ターボコンプレッサ30下流の吸気通路52には、エンジン53の燃焼室58への吸入吸気量を調整するためのスロットル弁が設けられておらず、ターボコンプレッサ30上流の吸気通路51に設けられた流量調整装置10が、コンプレッサインペラ31と同一回転方向の旋回流をターボコンプレッサ30への吸気に発生させつつ、ターボコンプレッサ30への吸入吸気流量を調整することで、エンジン53の燃焼室58への吸入吸気量を調整する。
【選択図】図1
【解決手段】ターボコンプレッサ30下流の吸気通路52には、エンジン53の燃焼室58への吸入吸気量を調整するためのスロットル弁が設けられておらず、ターボコンプレッサ30上流の吸気通路51に設けられた流量調整装置10が、コンプレッサインペラ31と同一回転方向の旋回流をターボコンプレッサ30への吸気に発生させつつ、ターボコンプレッサ30への吸入吸気流量を調整することで、エンジン53の燃焼室58への吸入吸気量を調整する。
【選択図】図1
Description
本発明は、エンジンへの吸気をターボ圧縮機で加圧する過給エンジンシステムに関する。
エンジンへの吸気を加圧する過給装置として、ターボチャージャーが用いられている。ターボチャージャーは、エンジンからの排気のエネルギーを利用してタービンの動翼を回転駆動することで、タービンの動翼に連結されたターボ圧縮機の動翼を回転駆動してエンジンへの吸気を加圧する。
また、ターボ圧縮機は、ターボチャージャーの他に、ガスタービンやターボ冷凍機等にも用いられている。ガスタービンやターボ冷凍機のターボ圧縮機において、ターボ圧縮機の動翼に流入する流体に対して予旋回流を発生させる技術が下記特許文献1,2に開示されている。ターボ圧縮機の動翼に流入する流体に対して動翼と同一回転方向の予旋回流を発生させることで、動翼がする圧縮仕事を減少させることが可能となる。
エンジンへの吸気をターボ圧縮機で加圧する過給エンジンシステムにおいても、ターボ圧縮機の動翼に流入する吸気に対して動翼と同一回転方向の予旋回流を発生させることで、動翼がする過給仕事を減少させることが可能となる。ただし、この過給エンジンシステムにおいて、エンジン負荷を調整するためには、ターボ圧縮機下流の吸気通路に設けられたスロットル弁の開度を調整することで、エンジンの燃焼室への吸入吸気量を調整する必要がある。しかし、エンジン負荷を調整するために、ターボ圧縮機下流でスロットル弁の開度を調整すると、ターボ圧縮機の効率が変化する。例えばエンジンの全負荷運転時(スロットル弁の全開時)にターボ圧縮機の効率が高くなる条件で運転を行う場合は、スロットル弁の開度が小さいエンジンの部分負荷運転時に、ターボ圧縮機の効率が低下する。その結果、ターボ圧縮機の動翼を回転駆動する動力が増加する。
本発明は、ターボ圧縮機への吸気に旋回流を発生させることが可能な過給エンジンシステムにおいて、簡単な構造でターボ圧縮機の効率の低下を招くことなくエンジン負荷の調整を可能にすることを目的とする。
本発明に係る過給エンジンシステムは、上述した目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明に係る過給エンジンシステムは、動翼の回転によりエンジンへの吸気を吸入して加圧するターボ圧縮機を備え、ターボ圧縮機からの吸気をエンジンの燃焼室に導入して間欠的に燃焼させる過給エンジンシステムであって、動翼と同一回転方向の旋回流をターボ圧縮機への吸気に発生させつつ、ターボ圧縮機への吸入吸気流量を調整する流量調整装置を備え、ターボ圧縮機下流の吸気通路には、エンジンの燃焼室への吸入吸気量を調整するためのスロットル弁が設けられておらず、流量調整装置が、ターボ圧縮機への吸入吸気流量を調整することで、エンジンの燃焼室への吸入吸気量を調整することを要旨とする。
本発明の一態様では、流量調整装置は、動翼の回転方向に関して互いに間隔をおいてターボ圧縮機上流の吸気通路に配置され、動翼の回転軸方向に対する傾斜角度が可変な複数の案内翼を含み、動翼の回転軸方向に対する案内翼の傾斜角度を調整することで、動翼の回転方向に関して互いに隣接する可動翼間の流路を通ってターボ圧縮機へ流れる吸気に発生させる旋回流を調整しつつ、該隣接する可動翼間の流路面積を調整してエンジンの燃焼室への吸入吸気量を調整することが好適である。
本発明の一態様では、流量調整装置は、ターボ圧縮機上流の主吸気通路から分岐する分岐吸気通路を形成する分岐管と、分岐吸気通路及びターボ圧縮機入口と連通し、動翼の回転方向に沿って旋回する旋回吸気通路を形成する旋回管と、主吸気通路を流れる吸気流量と、分岐吸気通路及び旋回吸気通路を流れる吸気流量との割合を変化させることが可能な吸気通路調整弁と、を含み、主吸気通路を流れる吸気流量と、分岐吸気通路及び旋回吸気通路を流れる吸気流量との割合を吸気通路調整弁により調整することで、ターボ圧縮機への吸気に発生させる旋回流を調整しつつ、エンジンの燃焼室への吸入吸気量を調整することが好適である。
本発明によれば、ターボ圧縮機への吸気に旋回流を発生させることが可能な過給エンジンシステムにおいて、簡単な構造でターボ圧縮機の効率の低下を招くことなくエンジン負荷を調整することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を図面に従って説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る過給エンジンシステムの概略構成を示す図である。本実施形態に係る過給エンジンシステムは、エンジン(内燃機関)53と、ターボチャージャー(ターボ過給機)20と、を備える。本実施形態に係る過給エンジンシステムについては、例えば車両を駆動するための動力源として用いることができる。
ターボチャージャー20は、タービン40及びターボコンプレッサ(ターボ圧縮機)30を含んで構成される。タービン40は、例えば遠心タービンにより構成され、エンジン53からの排気のエネルギーを利用してタービンインペラ(タービン動翼)41を回転駆動する。ターボコンプレッサ30は、例えば遠心圧縮機により構成され、コンプレッサインペラ(コンプレッサ動翼)31がシャフト(回転軸)を介して連結されたタービンインペラ41とともに回転駆動することで、ターボコンプレッサ30上流の吸気通路51からの吸気(エンジン53への吸気)を入口から吸入し、吸入した吸気を加圧して出口から吐出する。コンプレッサインペラ31の回転駆動によりターボコンプレッサ30で加圧された吸気は、ターボコンプレッサ30下流の吸気通路52を通り、エンジン53の吸気弁が開いているときに(吸気行程において)エンジン53の燃焼室58内に導入される。エンジン53は、例えば火花点火機関等の容積型機関により構成することができ、燃焼室58内に導入された吸気を間欠的に燃焼させることで動力を発生する。その際には、燃料を吸気通路51または吸気通路52に噴射することも可能であるし、燃料を燃焼室58内に直接噴射することも可能である。燃焼室58内における燃焼後の排気は、エンジン53の排気弁が開いているときに(排気行程において)タービン40上流の排気通路54へ排出され、さらに、タービンインペラ41を回転駆動するためにタービン40へ供給される。タービンインペラ41の回転駆動に利用された排気は、タービン40下流の排気通路55へ排出される。
本実施形態では、ターボコンプレッサ30上流の吸気通路51には、コンプレッサインペラ31の回転方向と同一回転方向の予旋回流をターボコンプレッサ30への吸気に発生させつつ、ターボコンプレッサ30への吸入吸気流量(質量流量)を調整するための流量調整装置10が設けられている。そして、ターボコンプレッサ30下流の吸気通路52(ターボコンプレッサ30の出口から燃焼室58の入口に到る吸気通路52)には、エンジン53の燃焼室58への吸入吸気量(吸気質量)を調整してエンジン負荷を調整するためのスロットル弁が設けられておらず省略されている。本実施形態では、エンジン負荷を調整する場合には、流量調整装置10が、ターボコンプレッサ30への吸入吸気流量(質量流量)を調整することで、エンジン53の燃焼室58への吸入吸気量(吸気質量)を調整する。以下、流量調整装置10の構成例について説明する。
流量調整装置10の構成例を図2〜6に示す。図2はコンプレッサインペラ31の回転軸方向と垂直方向から見た内部構成図を示し、図3はコンプレッサインペラ31の回転軸方向と平行方向から見た内部構成図を示し、図4〜6はコンプレッサインペラ31の回転方向(円周方向)に沿って展開した図を示す。図2〜6に示す流量調整装置10の構成例では、ターボコンプレッサ30上流の吸気通路51(ターボコンプレッサ30の入口付近)には、複数の案内翼11がコンプレッサインペラ31の回転方向(円周方向)に関して互いに間隔をおいた状態で配置されている。コンプレッサインペラ31の回転方向に関して互いに隣接する案内翼11間には、ターボコンプレッサ30への吸気が通る翼間流路16が形成されている。各案内翼11には案内翼回転軸13がそれぞれ連結されており、各案内翼回転軸13はケーシング15に回転自在に支持されていることで、各案内翼11は案内翼回転軸13を中心に回転することができる。各案内翼回転軸13はターボコンプレッサ30の径方向に沿って延びており、各案内翼回転軸13を回転させることで、コンプレッサインペラ31の回転軸方向に対する各案内翼11の傾斜角度θを0°から90°の範囲で変化させることができる。各案内翼11の傾斜角度θ(各案内翼回転軸13の回転駆動)は、エンジンコントロールユニット60により制御される。案内翼11が配置されていない吸気通路51の中心部には、案内翼ハブ12が設けられており、案内翼ハブ12はハブ支柱14を介してケーシング15に連結されている。コンプレッサインペラ31の入口側の形状は、図4〜6に示すように、吸気流れの上流側から下流側へ向かうにつれて、コンプレッサインペラ31の回転軸方向に対してコンプレッサインペラ31の回転方向後方へ傾斜している。
図4に示すように、コンプレッサインペラ31の回転軸方向に対する各案内翼11の傾斜角度θが0°である場合は、翼間流路16における吸気の主流方向がコンプレッサインペラ31の回転軸方向と平行になるため、翼間流路16からの吸気は、その主流方向がコンプレッサインペラ31の回転軸方向と平行になる状態でコンプレッサインペラ31へ流入する。つまり、翼間流路16を通ってターボコンプレッサ30のコンプレッサインペラ31へ流れる吸気に旋回流(コンプレッサインペラ31の回転方向の速度成分)は発生しない。また、各案内翼11の傾斜角度θが0°である場合は、隣接する案内翼11間の距離が最大となり、翼間流路16の流路面積が最大となるため、翼間流路16を通ってターボコンプレッサ30へ流れる吸気流量(質量流量)が最大となる。この場合は、エンジン53の燃焼室58への吸入吸気量(吸気質量)が最大となり、エンジン負荷が最大となる。
一方、図5に示すように、各案内翼11が、吸気流れの上流側から下流側へ向かうにつれて、コンプレッサインペラ31の回転軸方向に対してコンプレッサインペラ31の回転方向前方へ傾斜している場合(0°<θ<90°の場合)は、翼間流路16における吸気の主流方向が、コンプレッサインペラ31の回転軸方向に対してコンプレッサインペラ31の回転方向前方へ偏向する。そのため、翼間流路16を通ってターボコンプレッサ30のコンプレッサインペラ31へ流れる吸気にコンプレッサインペラ31と同一回転方向の予旋回流17が発生する。そして、各案内翼11の傾斜角度θが大きくなるほど、翼間流路16を通ってターボコンプレッサ30へ流れる吸気に発生する予旋回流17が強くなる。また、0°<θ<90°の場合は、θ=0°の場合と比較して、隣接する案内翼11間の距離が小さくなり、翼間流路16の流路面積が小さくなるため、翼間流路16を通ってターボコンプレッサ30へ流れる吸気流量が減少する。この場合は、エンジン53の燃焼室58への吸入吸気量が減少し、エンジン負荷が減少する。そして、各案内翼11の傾斜角度θが大きくなるほど、翼間流路16の流路面積が小さくなり、翼間流路16を通ってターボコンプレッサ30へ流れる吸気流量が減少するため、エンジン53の燃焼室58への吸入吸気量が減少し、エンジン負荷が減少する。このように、エンジンコントロールユニット60により各案内翼11の傾斜角度θを制御することで、翼間流路16を通ってターボコンプレッサ30へ流れる吸気に発生させる予旋回流17を制御しつつ、翼間流路16の流路面積を制御してエンジン53の燃焼室58への吸入吸気量(エンジン負荷)を制御することができる。
また、図6に示すように、コンプレッサインペラ31の回転軸方向に対する各案内翼11の傾斜角度θが90°である場合は、隣接する案内翼11同士が重なることで、翼間流路16の流路面積が0となるため、ターボコンプレッサ30への吸気流量が最小となる。この場合は、エンジン53の燃焼室58への吸入吸気量が最小となり、エンジン負荷が最小となる。また、ターボコンプレッサ30への吸気に旋回流も発生しない。
ターボコンプレッサ30の性能特性は、例えば図7に示す入口体積流量Vinと圧力比Prとの関係で表される。ここでの入口体積流量Vinは、ターボコンプレッサ30を通過する質量流量Gaを入口密度ρinで割った値Ga/ρinで表される。図7に示すように、ターボコンプレッサ30の効率は、入口体積流量Vinや圧力比Prに応じて変化し、コンプレッサインペラ31を回転駆動する要求動力に対してターボコンプレッサ30の効率が最も高くなる最適効率ラインが存在する。ここで、ターボコンプレッサ30下流の吸気通路52にスロットル弁が設けられており、エンジン負荷を調整するために、このスロットル弁の開度を調整することで、エンジン53の燃焼室58への吸入吸気量をターボコンプレッサ30下流で調整する場合を考える。その場合は、ターボコンプレッサ30下流でスロットル弁の開度を変化させても、ターボコンプレッサ30の入口密度ρinは変化しないため、入口体積流量VinがGaに比例して変化することで、ターボコンプレッサ30の効率が変化する。例えば図8に示すように、エンジン53の全負荷運転時(ターボコンプレッサ30下流のスロットル弁の全開時)における作動ラインが最適効率ラインにほぼ一致する条件で運転を行う場合は、スロットル弁の開度が小さいエンジン53の部分負荷運転時における作動ラインが、最適効率ラインより入口体積流量Vinが小さい側に移動して、ターボコンプレッサ30の効率が低下する。その結果、コンプレッサインペラ31を回転駆動する動力が増加する。
これに対して本実施形態では、ターボコンプレッサ30下流の吸気通路52にスロットル弁が設けられておらず、エンジン負荷を調整する場合は、各案内翼11の傾斜角度θを調整することで、エンジン53の燃焼室58への吸入吸気量を、ターボコンプレッサ30下流ではなく、ターボコンプレッサ30上流で調整する。その場合は、エンジン負荷を減少(または増加)させるために、各案内翼11の傾斜角度θを増加(または減少)させることで、翼間流路16の流路面積をターボコンプレッサ30上流で減少(または増加)させても、質量流量Gaの減少(または増加)とともに入口密度ρinも減少(または増加)することで、入口体積流量Vinはあまり変化しないので、ターボコンプレッサ30の効率はほとんど変化しない。例えば図9に示すように、エンジン53の全負荷運転時(θ=0°)における作動ラインが最適効率ラインにほぼ一致する条件で運転を行う場合でも、エンジン53の部分負荷運転時(0°<θ<90°)における作動ラインが、最適効率ラインからほとんど移動しない。したがって、本実施形態によれば、ターボコンプレッサ30の効率の低下を招くことなく、エンジン負荷を調整することができる。ターボコンプレッサ30の効率が高ければ、コンプレッサインペラ31を回転駆動する動力を減少させることができる。コンプレッサインペラ31を回転駆動する動力が減少すれば、タービン40の負荷を減少させることができ、エンジン53の背圧を低下させることができる。エンジン53の背圧が低下すれば、排気損失低減によりエンジン53の燃費を向上させることができる。
また、ターボコンプレッサ30への吸気に予旋回流が発生していない場合は、図10に示すように、コンプレッサインペラ31への吸気の流量(絶対流速)が小さくなると、コンプレッサインペラ31に対する吸気の相対流速の方向が大きな迎え角を持ち、吸気流れの剥離が発生しやすくなる。吸気流れの剥離が発生して吸気流れが不安定となると、サージングと呼ばれる流体振動が発生し、サージングが発生する少流量領域では、ターボコンプレッサ30で過給を行うことが困難となる。
これに対して本実施形態では、コンプレッサインペラ31の回転軸方向に対して各案内翼11を傾斜させることで、翼間流路16を通ってコンプレッサインペラ31へ流れる吸気にコンプレッサインペラ31と同一回転方向の予旋回流17を与えることができる。この予旋回流17によって、図11に示すように、コンプレッサインペラ31への吸気流量が小さくなっても、コンプレッサインペラ31に対する吸気の相対流速の迎え角を小さくすることができるので、吸気流れの剥離の発生を抑制してサージングの発生を抑制することができる。その結果、ターボコンプレッサ30での過給をより少流量側で行うことができ、エンジン53の低速運転時のトルクを向上させることができる。さらに、ターボコンプレッサ30への吸気にコンプレッサインペラ31と同一回転方向の予旋回流17を与えることによっても、コンプレッサインペラ31を回転駆動する動力を減少させることができる。
さらに、本実施形態では、ターボコンプレッサ30への吸気に予旋回流17を与える構造と、エンジン53の燃焼室58への吸入吸気量を調整してエンジン負荷を調整する構造とを、共通の流量調整装置10(案内翼11)により実現することができる。したがって、構造の複雑化を招くことなく簡単な構造で、サージングの発生を抑制しつつコンプレッサインペラ31を回転駆動する動力を減少させることができるとともに、ターボコンプレッサ30の効率の低下を招くことなくエンジン負荷を調整することができる。
流量調整装置10の他の構成例を図12,13に示す。図12はコンプレッサインペラ31の回転軸方向と垂直方向から見た内部構成図を示し、図13はコンプレッサインペラ31の回転軸方向と平行方向から見た外観図を示す。図12,13に示す流量調整装置10の構成例では、ターボコンプレッサ30上流の吸気管112とターボコンプレッサ30の入口との間には曲り管114が接続されており、ターボコンプレッサ30上流の曲り管114内には、吸気管112内の吸気通路51とターボコンプレッサ30の入口とを繋ぐための主吸気通路124が形成されている。そして、曲り管114の上流部には分岐管113が接続されており、分岐管113内には、ターボコンプレッサ30上流の主吸気通路124から分岐する分岐吸気通路123が形成されている。さらに、分岐管113の下流部にはスワールダクト(旋回管)115が接続されており、スワールダクト115内には、分岐吸気通路123と連通し、コンプレッサインペラ31の回転方向(円周方向)に沿って旋回して延びる旋回吸気通路125が形成されている。スワールダクト115は、ターボコンプレッサ30の入口の外周部と開口部をもって全周(360°)に渡って接続されており、旋回吸気通路125は、ターボコンプレッサ30の入口と全周(360°)に渡って連通している。旋回吸気通路125の流路径は、ターボコンプレッサ30の入口との連通開始位置で最大径となっており、コンプレッサインペラ31の回転方向に向かって下流側に行くにつれて小さくなり、1周した位置(360°)で0になる。吸気が旋回吸気通路125を通過することで、コンプレッサインペラ31と同一回転方向の旋回流が発生する。また、分岐管113(分岐吸気通路123)の直ぐ上流側には、円盤状の吸気通路調整弁111が設置されており、吸気管112の軸線112aに対する吸気通路調整弁111の傾斜角度αを0°から90°の範囲で変化させることで、吸気通路調整弁111の開度を変化させることができる。吸気通路調整弁111の傾斜角度α(開度)は、エンジンコントロールユニット60により制御される。
図14に示すように、吸気管112の軸線112aに対する吸気通路調整弁111の傾斜角度αが0°である場合は、吸気通路調整弁111の開度が全開となるため、吸気通路51からターボコンプレッサ30へ流れる吸気流量(質量流量)が最大となる。この場合は、エンジン53の燃焼室58への吸入吸気量(吸気質量)が最大となり、エンジン負荷が最大となる。また、吸気通路調整弁111の傾斜角度αが0°である場合は、吸気通路調整弁111付近を通過する吸気の主流方向が吸気管112の軸線112aと平行になるため、吸気通路51からの吸気は、分岐吸気通路123及び旋回吸気通路125を通過することなく、主吸気通路124を通過してターボコンプレッサ30へ流入する。この場合は、ターボコンプレッサ30のコンプレッサインペラ31への吸気に旋回流は発生しない。
一方、図15に示すように、吸気通路調整弁111が、吸気流れの上流側から下流側へ向かうにつれて、吸気管112の軸線112aに対して分岐吸気通路123側へ傾斜している場合(0°<α<90°の場合)は、α=0°の場合と比較して、吸気通路調整弁111の開度が小さくなるため、吸気通路51からターボコンプレッサ30へ流れる吸気流量が減少する。この場合は、エンジン53の燃焼室58への吸入吸気量が減少し、エンジン負荷が減少する。そして、吸気通路調整弁111の傾斜角度αが大きくなる(開度が小さくなる)ほど、吸気通路51からターボコンプレッサ30へ流れる吸気流量が減少するため、エンジン53の燃焼室58への吸入吸気量が減少し、エンジン負荷が減少する。また、0°<α<90°の場合は、吸気通路調整弁111付近における吸気流れ方向が、吸気管112の軸線112aに対して分岐吸気通路123側へ偏向する。そのため、吸気通路51からの吸気は、主吸気通路124だけでなく分岐吸気通路123及び旋回吸気通路125も通過してターボコンプレッサ30へ流入する。その際には、分岐吸気通路123及び旋回吸気通路125を通過してターボコンプレッサ30のコンプレッサインペラ31へ流入する吸気にコンプレッサインペラ31と同一回転方向の予旋回流が発生する。そして、吸気通路調整弁111の傾斜角度αが大きくなる(開度が小さくなる)ほど、主吸気通路124を流れる吸気流量が減少して分岐吸気通路123及び旋回吸気通路125を流れる吸気流量が増加するため、ターボコンプレッサ30へ流入する吸気に発生する予旋回流が強くなる。このように、吸気通路調整弁111の傾斜角度α(開度)を変化させることで、主吸気通路124を流れる吸気流量と、分岐吸気通路123及び旋回吸気通路125を流れる吸気流量との割合を変化させることができる。そして、主吸気通路124を流れる吸気流量と、分岐吸気通路123及び旋回吸気通路125を流れる吸気流量との割合を吸気通路調整弁111の傾斜角度α(開度)により調整することで、ターボコンプレッサ30へ流れる吸気に発生させる予旋回流を制御しつつ、エンジン53の燃焼室58への吸入吸気量(エンジン負荷)を調整することができる。
また、図16に示すように、吸気管112の軸線112aに対する吸気通路調整弁111の傾斜角度αが90°である場合は、吸気通路調整弁111の開度が全閉となるため、吸気通路51からターボコンプレッサ30へ流れる吸気流量が最小となる。この場合は、エンジン53の燃焼室58への吸入吸気量が最小となり、エンジン負荷が最小となる。また、ターボコンプレッサ30への吸気に旋回流も発生しない。
以上説明した図12,13に示す流量調整装置10の構成例においても、エンジン負荷を減少(または増加)させるために、吸気通路調整弁111の傾斜角度αをターボコンプレッサ30上流で増加(または減少)させても、質量流量Gaの減少(または増加)とともに入口密度ρinも減少(または増加)することで、入口体積流量Vinはあまり変化しないので、ターボコンプレッサ30の効率はほとんど変化しない。さらに、ターボコンプレッサ30への吸気に予旋回流を与える構造と、エンジン53の燃焼室58への吸入吸気量を調整してエンジン負荷を調整する構造とを、共通の流量調整装置10により実現することができる。したがって、構造の複雑化を招くことなく簡単な構造で、サージングの発生を抑制しつつコンプレッサインペラ31を回転駆動する動力を減少させることができるとともに、ターボコンプレッサ30の効率の低下を招くことなくエンジン負荷を調整することができる。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
10 流量調整装置、11 案内翼、12 案内翼ハブ、13 案内翼回転軸、14 ハブ支柱、15 ケーシング、16 翼間流路、17 予旋回流、20 ターボチャージャー、30 ターボコンプレッサ、31 コンプレッサインペラ、40 タービン、41 タービンインペラ、51,52 吸気通路、53 エンジン、54,55 排気通路、58 燃焼室、60 エンジンコントロールユニット、111 吸気通路調整弁、112 吸気管、113 分岐管、114 曲り管、115 スワールダクト、123 分岐吸気通路、124 主吸気通路、125 旋回吸気通路。
Claims (3)
- 動翼の回転によりエンジンへの吸気を吸入して加圧するターボ圧縮機を備え、ターボ圧縮機からの吸気をエンジンの燃焼室に導入して間欠的に燃焼させる過給エンジンシステムであって、
動翼と同一回転方向の旋回流をターボ圧縮機への吸気に発生させつつ、ターボ圧縮機への吸入吸気流量を調整する流量調整装置を備え、
ターボ圧縮機下流の吸気通路には、エンジンの燃焼室への吸入吸気量を調整するためのスロットル弁が設けられておらず、
流量調整装置が、ターボ圧縮機への吸入吸気流量を調整することで、エンジンの燃焼室への吸入吸気量を調整する、過給エンジンシステム。 - 請求項1に記載の過給エンジンシステムであって、
流量調整装置は、
動翼の回転方向に関して互いに間隔をおいてターボ圧縮機上流の吸気通路に配置され、動翼の回転軸方向に対する傾斜角度が可変な複数の案内翼を含み、
動翼の回転軸方向に対する案内翼の傾斜角度を調整することで、動翼の回転方向に関して互いに隣接する可動翼間の流路を通ってターボ圧縮機へ流れる吸気に発生させる旋回流を調整しつつ、該隣接する可動翼間の流路面積を調整してエンジンの燃焼室への吸入吸気量を調整する、過給エンジンシステム。 - 請求項1に記載の過給エンジンシステムであって、
流量調整装置は、
ターボ圧縮機上流の主吸気通路から分岐する分岐吸気通路を形成する分岐管と、
分岐吸気通路及びターボ圧縮機入口と連通し、動翼の回転方向に沿って旋回する旋回吸気通路を形成する旋回管と、
主吸気通路を流れる吸気流量と、分岐吸気通路及び旋回吸気通路を流れる吸気流量との割合を変化させることが可能な吸気通路調整弁と、
を含み、
主吸気通路を流れる吸気流量と、分岐吸気通路及び旋回吸気通路を流れる吸気流量との割合を吸気通路調整弁により調整することで、ターボ圧縮機への吸気に発生させる旋回流を調整しつつ、エンジンの燃焼室への吸入吸気量を調整する、過給エンジンシステム。
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