JP2011106387A - 内燃機関の冷却構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】 シリンダブロックのウオータジャケットに装着したスペーサの仕切壁を通過して冷却水が冷却水供給口から冷却水排出口に短絡するのを防止する。
【解決手段】 シリンダブロック11のウオータジャケット13の冷却水供給口11cに供給された冷却水はスペーサ14の仕切壁14bに遮られ、仕切壁14bとは逆方向に流れて冷却水排出口から排出される。冷却水供給口11cに供給された冷却水の一部は仕切壁14bとウオータジャケット13の外側壁面13bとの間の隙間を通過して冷却水排出口に短絡しようとするが、その隙間に臨む仕切壁14bには短絡する冷却水の流れ方向に対して交差する方向に延びる複数のリブ14mと、複数のリブ14mに挟まれた溝14nとが形成されるので、それらのリブ14mおよび溝14nによりラビリンスを構成して冷却水の短絡を防止することができる。
【選択図】 図8
【解決手段】 シリンダブロック11のウオータジャケット13の冷却水供給口11cに供給された冷却水はスペーサ14の仕切壁14bに遮られ、仕切壁14bとは逆方向に流れて冷却水排出口から排出される。冷却水供給口11cに供給された冷却水の一部は仕切壁14bとウオータジャケット13の外側壁面13bとの間の隙間を通過して冷却水排出口に短絡しようとするが、その隙間に臨む仕切壁14bには短絡する冷却水の流れ方向に対して交差する方向に延びる複数のリブ14mと、複数のリブ14mに挟まれた溝14nとが形成されるので、それらのリブ14mおよび溝14nによりラビリンスを構成して冷却水の短絡を防止することができる。
【選択図】 図8
Description
本発明は、内燃機関のシリンダブロックのシリンダボアの周囲を囲むように形成されたウオータジャケットの内部にスペーサを装着し、前記スペーサは、前記ウオータジャケット内の冷却水の流れを規制して前記シリンダボアの冷却状態を調整するスペーサ本体部と、前記ウオータジャケットの冷却水供給口および冷却水排出口間を仕切る仕切壁とを備える内燃機関の冷却構造に関する。
かかるスペーサは、下記特許文献1により公知である。このスペーサの仕切壁(閉塞壁部4b)はウオータジャケットの断面形状と同一形状の薄い板状部材で構成されており、前記仕切壁の外周面がウオータジャケットの壁面に接触して冷却水の流通を阻止するようになっている。
しかしながら、一般にシリンダブロックのウオータジャケットの壁面は鋳放しまま仕上げ加工しないために精度が低く、スペーサの仕切壁との間に若干の隙間が発生することが避けらないため、この隙間を介してウオータジャケットの冷却水供給口と冷却水排出口とが短絡してしまう問題がある。これを防止するために、ウオータジャケットの壁面とスペーサの仕切壁との隙間を小さく設定すると、仕切壁をウオータジャケットに挿入する際に引っ掛かって組付性が低下する問題がある。
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、シリンダブロックのウオータジャケットに装着したスペーサの仕切壁を通過して冷却水が冷却水供給口から冷却水排出口に短絡するのを防止することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、内燃機関のシリンダブロックのシリンダボアの周囲を囲むように形成されたウオータジャケットの内部にスペーサを装着し、前記スペーサは、前記ウオータジャケット内の冷却水の流れを規制して前記シリンダボアの冷却状態を調整するスペーサ本体部と、前記ウオータジャケットの冷却水供給口および冷却水排出口間を仕切る仕切壁とを備える内燃機関の冷却構造において、前記仕切壁が前記ウオータジャケットの壁面に対向する部分には隙間が形成され、前記隙間に臨む前記仕切壁には前記冷却水供給口から前記冷却水排出口に短絡する冷却水の流れ方向に対して交差する方向に延びる複数のリブと、前記複数のリブに挟まれた溝とが形成されることを特徴とする内燃機関の冷却構造が提案される。
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記仕切壁は、前記複数のリブどうしを連結する連結リブを備えることを特徴とする内燃機関の冷却構造が提案される。
尚、実施の形態の連通孔15a,15bは本発明の冷却水排出口に対応する。
請求項1の構成によれば、シリンダブロックのウオータジャケットの冷却水供給口に供給された冷却水はスペーサの仕切壁に遮られ、仕切壁とは逆方向に流れて冷却水排出口から排出される。冷却水供給口に供給された冷却水の一部は仕切壁とウオータジャケットの壁面との間の隙間を通過して冷却水排出口に短絡しようとするが、その隙間に臨む仕切壁には短絡する冷却水の流れ方向に対して交差する方向に延びる複数のリブと、複数のリブに挟まれた溝とが形成されるので、それらのリブおよび溝によりラビリンスを構成して冷却水の短絡を防止することができる。よって仕切壁とウオータジャケットの壁面との間に隙間を設定してスペーサの組付性を確保しながら、その隙間を介しての冷却水の短絡を防止することが可能となる。
また請求項2の構成によれば、仕切壁は複数のリブどうしを連結する連結リブを備えるので、連結リブで仕切壁の剛性を高めることができるだけでなく、スペーサを合成樹脂で構成する場合には成形金型の内部での溶融樹脂の流れを良好にして成形性を高めることができる。
以下、図1〜図11に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1には、V型6気筒内燃機関のシリンダブロック11の一方のバンクが示される。シリンダブロック11にはシリンダ列線L1に沿って3個のシリンダスリーブ12…が埋設されており、それらのシリンダスリーブ12…の外周面を囲むようにウオータジャケット13が形成される。本実施の形態のシリンダブロック11はサイアミーズ型であって隣接するシリンダスリーブ12…間にはウオータジャケット13が形成されておらず、よってウオータジャケット13は3個のシリンダスリーブ12…の外周面を個々に囲むのではなく、3個のシリンダスリーブ12…の全体を囲んでおり、これにより内燃機関のシリンダ列線L1方向の寸法の短縮が図られる。シリンダブロック11のデッキ面11aに開口するウオータジャケット13は、そこからクランクケース側に向けて一定の深さで下向きに延びており、そのウオータジャケット13の内部にシリンダブロック11のデッキ面11aの開口側から挿入された合成樹脂製のスペーサ14が配置される。
尚、本明細書において「上下方向」とは、シリンダ軸線L2方向のシリンダヘッド側が「上」と定義され、シリンダ軸線L2方向のクランクケース側が「下」と定義される。
図1〜図4から明らかなように、スペーサ14は、シリンダブロック11の3個のシリンダスリーブ12…の外周の大部分を囲むスペーサ本体部14aと、その残りの部分を囲む冷却水入口部14dおよび冷却水出口部14fとを備える。スペーサ14はウオータジャケット13に沿う閉じた形状に形成されていて切断部を持たないため、そのスペーサ14の剛性は高いものとなる。スペーサ本体部14aのシリンダ軸線L2方向の高さH0は、その全周に亙って基本的に一定である。スペーサ14のシリンダ列線L1方向の一端側、つまりシリンダブロック11のタイミングトレーン側の端部には、冷却水入口部14dおよび冷却水出口部14fの間から上下に突出する仕切壁14bが一体に設けられる。
また冷却水入口部14dは、仕切壁14bの一側(吸気側)に隣接する部分で、スペーサ14aの上縁および下縁に設けられた入口切欠き14c,14cに上下を挟まれるように形成されており、この冷却水入口部14dの部分でスペーサ14のシリンダ軸線L2方向の高さH1がスペーサ本体部14aの高さH0よりも小さくなっている。同様に、冷却水出口部14fは、仕切壁14bの他側(排気側)に隣接する部分で、スペーサ14の上縁および下縁に設けられた出口切欠き14e,14eに上下を挟まれるように形成されており、この冷却水出口部14fの部分でスペーサ14のシリンダ軸線L2方向の高さH2がスペーサ本体部14aの高さH0よりも小さくなっている。冷却水入口部14dの上下の入口切欠き14c,14cは、スペーサ本体部14aの上縁および下縁に滑らかに湾曲しながら連続している。
図2、図4および図6から明らかなように、3個のシリンダボア12a…が相互に近接する部分の近傍では、各シリンダボア12a…の周囲のウオータジャケット13が鋭角で交差するため、その部分のウオータジャケット13のシリンダ列線L1に直交する方向の幅W′(図6参照)は、その他の部分のウオータジャケット13の幅W(図5および図7参照)よりも広がっている。従って、ウオータジャケット13が鋭角で交差する部分に嵌合するスペーサ本体部14aの連結部g…の厚さT′(図6参照)は、その他の部分のスペーサ本体部14aの厚さT(図5および図7参照)よりも広がっている。連結部g…を収納する部分でのウオータジャケット13の幅W′は、シリンダヘッド15に連なる部分で更に広がっており、その広がった部分を塞ぐように前記連結部14g…の上端から径方向内向きに突起14h…が突設される(図6参照)。
シリンダブロック11のトランスミッション側の端部に最も近いシリンダボア12aと、それに隣接するシリンダボア12aとが対向する部分に隣接するスペーサ本体部14aの2個の連結部14g,14gから、2本の円錐台状の上部支持脚14i,14iが上向きに突出するとともに、2本の円錐台状の下部支持脚14j,14jが下向きに突出する。上部支持脚14i,14iの上端と仕切壁14bの上端とは同じ高さに整列し、下部支持脚14j,14jの下端と仕切壁14bの下端とは同じ高さに整列する。
このように、スペーサ本体部14aの他の部分の厚さTよりも大きい厚さT′を持つ連結部14g,14gに上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jを設けたことで、上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jのスペーサ本体部14aに対する結合強度を高め、上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jでスペーサ14をウオータジャケット13の内部に強固に支持することができる。また上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jが設けられる位置は、ウオータジャケット13の内部で冷却水の流れの方向が変わって流速が落ちる位置であるため、上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jを設けたことによる冷却水の流れに対する影響を小さく抑えることができる。
尚、図2から明らかなように、スペーサ14の連結部14g…の上方に臨むシリンダヘッド15の下面には、シリンダブロック11のウオータジャケット13の冷却水の一部をシリンダヘッド15のウオータジャケット13に供給する連通孔15c…が開口している。そして2個の連結部14g,14gに設けられた2個の上部支持脚14i,14iは、前記連通孔15c,15cよりも冷却水の流れ方向下流側に僅かに偏倚して配置されており、これにより冷却水を上部支持脚14i,14iに当てて前記連通孔15c,15cに供給し易くしている。
従って、スペーサ14をウオータジャケット13の内部に装着すると、仕切壁14bの下端がウオータジャケット13の底壁に接触し、上端がシリンダブロック11およびシリンダヘッド15間に挟持されたガスケット16の下面に接触することで、スペーサ14のタイミングトレーン側の端部が上下方向に位置決めされる(図9参照)。またスペーサ14のトランスミッション側の部分は、下部支持脚14j,14jの下端がウオータジャケット13の底壁に接触し、上部支持脚14i,14iの上端がガスケット16の下面に接触することで、上下方向に位置決めされる(図4および図6参照)。
そしてウオータジャケット13の内部には、スペーサ14の上縁とガスケット16の下面との間に上部冷却水通路13cが区画され、スペーサ14の下縁とウオータジャケット13の底部との間に下部冷却水通路13dが区画される。このとき、上部冷却水通路13cの高さは上部支持脚14c,14cの高さにより決められ、下部冷却水通路13dの高さは下部支持脚14j,14jの高さにより決められる。
以下、スペーサ14の細部の構造を順次説明する。
図4〜図6から明らかなように、スペーサ本体部14aの径方向の厚さT(図5参照)は上下方向に亙って一定であり、ウオータジャケット13の径方向の幅Wよりも小さく設定される。スペーサ14をウオータジャケット13の内部に装着したとき、スペーサ本体部14aの内周面がウオータジャケット13の内側壁面13aに僅かな隙間を介して対峙しており、従ってスペーサ本体部14aの外周面とウオータジャケット13の外側壁面13bとの間には比較的に大きい隙間αが形成される。
図1および図3〜図6から明らかなように、スペーサ本体部14aの外周面の下縁に沿って、畝状の突条14kが径方向外側に向かって突設される。この突条14kの径方向の外端はウオータジャケット13の外側壁面13bに僅かな隙間を介して対峙しており、従ってスペーサ本体部14aは突条14kが形成された下縁において径方向に位置決めされる。尚、前記突条14kは、下側の入口切欠き14cの部分および下側の出口切欠き14eの部分には設けられていない。
図2および図8〜図10から明らかなように、シリンダブロック11のタイミングトレーン側の端部にはシリンダ列線L1と平行に延びる冷却水供給通路11bが形成され、この冷却水供給通路11bの下流端は、スペーサ14の仕切壁14bよりも吸気側において、円形の冷却水供給口11cを介してウオータジャケット13に連通する。シリンダブロック11の冷却水供給口11cおよびスペーサ14の冷却水入口部14dは、シリンダ列線L1に対して吸気側に若干偏倚して設けられているため、シリンダ列線L1と平行な冷却水供給通路11bから供給された冷却水は、その流れの方向を大きく変えることなく吸気側のウオータジャケット13にスムーズに流入することができる。また前述したように、冷却水入口部14dの入口切欠き14c,14cがスペーサ本体部14aの上縁および下縁に滑らかに湾曲しながら連続しているので、冷却水供給口11cから流入した冷却水は冷却水入口部14dの入口切欠き14c,14cに案内されて上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dにスムーズに導かれる。
スペーサ14の上下の入口切欠き14c,14cに上下を挟まれて幅狭になった冷却水入口部14dは、その断面が三角形になって冷却水供給口11c側に楔状に突出する。冷却水供給通路11bの内部から冷却水供給口11cを通して見ると、スペーサ14の三角形断面の冷却水入口部14dの稜線が露出する(図10参照)。冷却水入口部14dのシリンダ軸線L2方向の高さH1は、冷却水供給口11cのシリンダ軸線L2方向の高さH3よりも小さくなっている。
図1、図2、図4、図7および図8から明らかなように、スペーサ14のスペーサ本体部14aはウオータジャケット13の内側壁面13aに沿うように配置されているが、スペーサ14の上下の出口切欠き14e,14eに上下を挟まれた冷却水出口部14fだけは径方向外側に張り出しており、その部分がウオータジャケット13の外側壁面13bに沿うように配置される。従って、スペーサ14の冷却水出口部14fとウオータジャケット13の内側壁面13aとの間には隙間β(図2および図8参照)が形成される。そしてスペーサ14の冷却水出口部14fの上方に、シリンダヘッド15の下面に開口する2個の連通孔15a,15b(図2、図4および図5参照)が臨んでいる。
図1、図4および図8から明らかなように、スペーサ14の仕切壁14bの外表面には、上下方向に延びる3本のリブ14m…と、それらに挟まれた2本の溝14n,14nとが形成される。3本のリブ14m…の先端が臨むウオータジャケット13の外側壁面13bは単純な円弧面ではなく、波うつように屈曲している(図8参照)。仕切壁14bの外表面の下端には切欠き14oが形成されており、この切欠き14oを介して仕切壁14bの両側のウオータジャケット13が相互に連通する。
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
シリンダブロック11のデッキ面11aにシリンダヘッド15を組み付ける前の状態では、デッキ面11aに露出する3個のシリンダスリーブ12…のシリンダボア12a…の外周を囲むようにウオータジャケット13が開口しており、その開口からウオータジャケット13の内部にスペーサ14が挿入される。その後に、シリンダブロック11のデッキ面11aにガスケット16を重ね合わせた状態でシリンダヘッド15が締結される。
このスペーサ14の組付状態において、仕切壁14bの下端と下部支持脚14j,14jの下端とがウオータジャケット13の底面に接触し、仕切壁14bの上端と上部支持脚14i,14iの上端とがガスケット16の下面に接触することで、スペーサ14がシリンダ軸線L2方向に位置決めされる。このとき、スペーサ14のスペーサ本体部14aの内周面はウオータジャケット13の内側壁面13aに接するように配置されるが、鋳放しのウオータジャケット13の内側壁面13aの寸法精度は高くないため、スペーサ14がウオータジャケット13の内側壁面13aに擦れて組付性が低下するのを防止すべく、スペーサ本体部14aの内周面とウオータジャケット13の内側壁面13aとの間には若干の隙間が形成される。
内燃機関の運転時には、シリンダブロック11に設けられた図示せぬウォータポンプから供給された冷却水が、シリンダブロック11のタイミングトレーン側の端部に設けられた冷却水供給通路11bから冷却水供給口11cを経てウオータジャケット13に流入する。ウオータジャケット13の内部にはスペーサ14が配置されており、冷却水供給口11cに臨むスペーサ14には上下の入口切欠き14c,14cに挟まれた幅狭の冷却水入口部14dが対向する。図8〜図10から明らかなように、冷却水入口部14dのシリンダ軸線L2方向の高さH1は、冷却水供給口11cのシリンダ軸線L2方向の高さH3よりも小さくなっており、かつ三角形断面の冷却水入口部14dは冷却水供給口11cに向かって楔状に突出しているため、冷却水供給口11cを出た冷却水は冷却水入口部14dの上下の斜面に案内されて上下方向に分流し、スペーサ14により分離された上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dにスムーズに流入することができ、そのときの圧損が最小限に抑えられる。
冷却水がウオータジャケット13に流入するときの圧損を更に減らすには、冷却水入口部14dを完全に切り欠くことで、その部分でスペーサ14を分断してしまえば良いが、このようにするとスペーサ14の剛性が大幅に低下してしまう問題がある。それに対し、本実施の形態によれば、上下方向の高さH1を小さくした冷却水入口部14dにより冷却水の圧損を低減しながらスペーサ14の剛性を確保することができる。
ウオータジャケット13の上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dに流入した冷却水は左右方向に分岐しようとするが、冷却水入口部14dの右側に存在する仕切壁14bによって流れを阻害されるため、左側に向きを変えて上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dの略全長を時計方向に流れ、冷却水供給口11cから見て仕切壁14bの反対側の冷却水出口部11fからシリンダヘッド15の連通孔15a,15bに排出される。このとき、上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dはスペーサ本体部14aの下縁に沿って設けた突条14kによって仕切られているため、上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dを流れる冷却水は殆ど混合することはない。
ウオータジャケット13のシリンダ軸線L2方向の中間部の内側壁面13aにはスペーサ14のスペーサ本体部14aの内周面が接触しているため、その内側壁面13aに冷却水が接触し難くなって冷却が抑制される。その結果、スペーサ本体部14aに対向するシリンダボア12a…のシリンダ軸線L2方向の中間部が他の部分よりも高温になり、熱膨張してピストンとの間のクリアランスが増加するため、特に圧縮行程や膨張行程でピストンに大きなサイドスラストが加わるときに、ピストンおよびシリンダボア12a…間のフリクションを低減して内燃機関の燃費向上に寄与することができる。またシリンダボア12a…のシリンダ軸線L2方向中間部が他の部分よりも高温になることで、その部分を潤滑するオイルが温度上昇して粘性が低下するため、フリクションの低減効果が更に高められる。
一方、シリンダボア12a…のシリンダ軸線L2方向上部および下部は、スペーサ14の上下の上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dを流れる冷却水によって充分に冷却されるため、シリンダボア12a…に摺動自在に嵌合するピストンの高温になり易い頂部およびスカート部の冷却性能を確保して過熱を防止することができる。
シリンダブロック11の冷却水供給口11cからウオータジャケット13に流入した冷却水の一部は、スペーサ14の仕切壁14bの外表面とウオータジャケット13の外側壁面13bとの間を通過して冷却水入口部14d側から冷却水出口部14f側に短絡しようとするが、図8に示すように、スペーサ14の仕切壁14bの外表面は3本のリブ14m…と2本の溝14n,14nを交互に配置したラビリンス構造になっているため、リブ14m…の外側の隙間を通過した冷却水が溝14nの内部で渦を作ることで仕切壁14bを通過し難くなる。よって、スペーサ14の組付性を確保するためにスペーサ14の外表面とウオータジャケット13の外側壁面13bとの間に隙間を形成しても、その隙間を通して冷却水供給口11cと連通孔15a,15bとが短絡するのを効果的に防止することができる。
しかも、スペーサ14の仕切壁14bの外表面に対向するウオータジャケット13の外側壁面13bが波打つように湾曲しているため(図8参照)、ラビリンス効果が一層強く発揮されて冷却水の短絡を一層効果的に防止することができる。
ウオータジャケット13の上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dを流れた冷却水は、スペーサ14の冷却水出口部14fで合流し、そこから上方に向きを変えてシリンダヘッド15の連通孔15a,15bを通過してシリンダヘッド15のウオータジャケットに供給される。このとき、スペーサ14の冷却水出口部14fのシリンダ軸線L2方向の高さH2はスペーサ本体部14aのシリンダ軸線L2方向の高さH0よりも小さく形成されており、かつ冷却水出口部14fは径方向外側に偏倚してウオータジャケット13の外側壁面13bに接するように配置されるため、下部冷却水通路13dを出た冷却水はスペーサ14の冷却水出口部14fとウオータジャケット13の外側壁面13bとの間の隙間β(図2および図8参照)を通過してシリンダヘッド15の連通孔15a,15bにスムーズに導かれる。このとき、冷却水出口部14fの高さH2がスペーサ本体部14aの高さH0よりも小さいので、下部冷却水通路13dから連通孔15a,15bに向かって流れる冷却水が冷却水出口部14fを通過する際の抵抗を低減することができる。
図11(B)に示すように、仮にスペーサ14の突条14kをスペーサ本体部14aの上縁に沿って設けたとしても、突条14kが上部冷却水通路13cおよび下部冷却水通路13dを仕切る効果には代わりはないが、スペーサ14の冷却水出口部14fにおいて突条14kが途切れた部分における冷却水の挙動に違いが発生する。即ち、図11(A)に示すように、本実施の形態の如くスペーサ14の突条14kをスペーサ本体部14aの下縁に沿って設けた場合には、冷却水は冷却水出口部14fの直近まで水平方向に流れて突条14kが途切れた部分で上向きに流れを変え、シリンダヘッド15の連通孔15a,15bにスムーズに導かれる。これにより、冷却水出口部14fの下方の下部冷却水通路13dにも充分な量の冷却水を供給し、冷却水出口部14fに臨むシリンダボア12aの全周を均一に冷却することができる。
一方、図11(B)に示すように、仮にスペーサ14の突条14kをスペーサ本体部14aの上縁に沿って設けた場合には、冷却水は冷却水出口部14fのかなり手前から上向きに流れを変えるため、冷却水出口部14fの下方の下部冷却水通路13dに充分な量の冷却水が流れなくなって冷却性能が低下する問題がある。
尚、スペーサ14の仕切壁14bの下端に切欠き14o(図1および図9参照)を設けたので、冷却水入口部14dの下部の冷却水の一部が切欠き14oを通過して冷却水出口部14fの下部に流入し、冷却水出口部14fに滞留する冷却水をシリンダヘッド15の連通孔15a,15bに向けて押し上げる効果を発揮することで、ウオータジャケット13からの冷却水の排出が一層スムーズに行われる。
またウオータジャケット13の内部に挿入されたスペーサ14は、仕切壁14bの下端がウオータジャケット13の底壁に接触し、上端がシリンダブロック11およびシリンダヘッド15間に挟持されたガスケット16の下面に接触することで、スペーサ14のタイミングトレーン側の端部が上下方向に位置決めされる(図9参照)。またスペーサ14のトランスミッション側の部分は、下部支持脚14j,14jの下端がウオータジャケット13の底壁に接触し、上部支持脚14i,14iの上端がガスケット16の下面に接触することで上下方向に位置決めされるが、仕切壁14bがシリンダ列線L1方向の一端部に設けられ、上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jがシリンダ列線L1方向の最も他端部のシリンダボア12aと、最も他端部から2番目のシリンダボア12aとの間の連結部14g,14gに設けられるので、仕切壁14bから上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jまでの距離を最大限に確保してスペーサ14の支持を安定させることができる。
また上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jをスペーサ14の連結部14g,14gに設けたことで、上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jを設けたことによるウオータジャケット13の冷却水の流れに対する影響を最小限に抑えることができる。
その理由は、連結部14g,14gではスペーサ本体部14aが異なる二つの方向から鋭角で交差するため、シリンダ列線L1に直交する方向のウオータジャケット13の幅W′(図6参照)が、連結部14g,14g以外の一般部におけるウオータジャケット13の幅W(図5および図7参照)よりも大きくなる。よって、ウオータジャケット13の幅W′が大きくなる部分に上部支持脚14i,14iおよび下部支持脚14j,14jを配置することで、それがウオータジャケット13の冷却水の流れに対する影響を最小限に抑えることができる。
次に、図12に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。
第2の実施の形態は、第1の実施の形態のスペーサ14の仕切壁14bを改良したもので、仕切壁14bの3本のリブ14m…の上部、中間部および下部を水平方向に延びる4本の連結リブ14p…で連結したものである。これにより、4本の連結リブ14p…の補強効果で仕切壁14bの剛性を高めることができるだけでなく、スペーサ14を合成樹脂で金型成形する際に、金型のキャビティにおける溶融樹脂の流れを良好にして成形性を高めることができる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、実施の形態ではV型6気筒内燃機関を例示したが、本発明は任意の気筒数の任意の形式の内燃機関に対して適用することができる。
また仕切壁14bのリブ14mおよび溝14nの数は実施の形態に限定されず、更に多くのリブ14mおよび溝14nを設けても良い。
11 シリンダブロック
11c 冷却水供給口
12a シリンダボア
13 ウオータジャケット
13b 外側壁面(壁面)
14 スペーサ
14a スペーサ本体部
14b 仕切壁
14m リブ
14n 溝
14p 連結リブ
15a 連通孔(冷却水排出口)
15b 連通孔(冷却水排出口)
11c 冷却水供給口
12a シリンダボア
13 ウオータジャケット
13b 外側壁面(壁面)
14 スペーサ
14a スペーサ本体部
14b 仕切壁
14m リブ
14n 溝
14p 連結リブ
15a 連通孔(冷却水排出口)
15b 連通孔(冷却水排出口)
Claims (2)
- 内燃機関のシリンダブロック(11)のシリンダボア(12a)の周囲を囲むように形成されたウオータジャケット(13)の内部にスペーサ(14)を装着し、前記スペーサ(14)は、前記ウオータジャケット(13)内の冷却水の流れを規制して前記シリンダボア(12a)の冷却状態を調整するスペーサ本体部(14a)と、前記ウオータジャケット(13)の冷却水供給口(11c)および冷却水排出口(15a,15b)間を仕切る仕切壁(14b)とを備える内燃機関の冷却構造において、
前記仕切壁(14b)が前記ウオータジャケット(13)の壁面(13b)に対向する部分には隙間が形成され、前記隙間に臨む前記仕切壁(14b)には前記冷却水供給口(11c)から前記冷却水排出口(15a,15b)に短絡する冷却水の流れ方向に対して交差する方向に延びる複数のリブ(14m)と、前記複数のリブ(14m)に挟まれた溝(14n)とが形成されることを特徴とする内燃機関の冷却構造。 - 前記仕切壁(14b)は、前記複数のリブ(14m)どうしを連結する連結リブ(14p)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関の冷却構造。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009264141A JP2011106387A (ja) | 2009-11-19 | 2009-11-19 | 内燃機関の冷却構造 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2015108345A (ja) * | 2013-12-05 | 2015-06-11 | マツダ株式会社 | 多気筒エンジンの冷却構造 |
GB2527328A (en) * | 2014-06-18 | 2015-12-23 | Gm Global Tech Operations Inc | An engine block for an internal combustion engine |
FR3057304A1 (fr) * | 2016-10-12 | 2018-04-13 | Renault S.A.S. | "deflecteur de liquide de refroidissement" |
-
2009
- 2009-11-19 JP JP2009264141A patent/JP2011106387A/ja active Pending
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