JP2011099144A - 長期防錆接合の構造体及びそれに用いるボルトの製造方法並びに施工方法 - Google Patents
長期防錆接合の構造体及びそれに用いるボルトの製造方法並びに施工方法 Download PDFInfo
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Abstract
また、ボルト締付けによる長期防錆膜の擦れキズを防止するための施工順序(施工方法)の提供を目的とする。
【解決手段】溶射膜を被覆した鋼材を溶融亜鉛めっきしたボルトにて接合した後に当該ボルトに溶射膜を被覆することを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
そこで、NETIS登録番号:QS−040005の新技術報告(非特許文献1)では、塗装による防錆または、溶融亜鉛めっきによる犠牲防食よりも長期防錆機能を有する防錆方法として、鋼材に溶射材を用いて表面に溶射膜を被覆することを開示する。
しかしながら、せっかく鋼材本体を長期防錆してもボルトに溶射膜が被覆されていないために接合部が腐食し、赤錆が発生するという問題があった。
その最大の理由は、溶射膜を被覆したボルトの接合は締め付け時の回転摩擦により溶射膜にキズが残り防錆効果が期待できなくなること、予め溶射膜を被覆したボルト接合は締結後に溶射膜を被覆した場合に比べて溶射被膜面数が2倍になり、ボルトの溶射膜部分に起因したリラクゼーションにより軸力が大きく減少するからである。
例えば、非特許文献2は、溶融亜鉛めっき被覆したボルトであっても接合面にめっき被膜が無い場合に比べてリラクゼーションの軸力が低下することを報告する。
従って、長期防錆を目的に溶融亜鉛めっきボルトの上に溶射膜を被覆することはさらにリラクゼーションが大きいことが予想されるのみならず、従来の溶融亜鉛めっきでは、溶射膜が正常に形成されない場合が多かった。
また、ボルト締付けによる長期防錆膜の擦れキズを防止するための施工順序(施工方法)の提供を目的とする。
なお、構造体の具体例としては、それぞれボルト孔を有し、表面に溶射膜を被覆した一対の鋼材を突き合せ、当該突き合せた一対の鋼材を、表面に溶射膜を被覆した添接板を介してボルト締結接合してあり、Pb、Cd、Sn及びBi成分の合計がめっき被膜に対して0.16質量%以下の溶融亜鉛めっき被膜を形成したボルトを用いて締結接合後に当該ボルトに溶射膜を被覆した例が挙げられる。
この場合にボルトは表面全体に溶融亜鉛めっき被膜を施してあり、当該溶融亜鉛めっき被膜中に含有するPb、Cd、Sn及びBi成分の合計がめっき被膜に対して0.16質量%以下であるために、溶射時の発熱に対して、上記低融点成分のガス化を抑えることができ、その上に溶射する溶射膜の密着性が優れる。
また、ボルトを締結後に溶射することは、ボルトの締結接触面には溶射膜が存在しないことを意味し、その分だけリラクゼーションを少なく抑えることができる。
このようにすると構造体は複数枚の、ウェブとフランジとからなる部材を接合してあり、ウェブはウェブ添接板を介してボルト締結接合し、フランジはフランジ添接板を介してボルト締結接合した鋼桁であって、前記ウェブ、フランジ、ウェブ添接板及びフランジ添接板は表面に溶射膜を被覆してあり、Pb、Cd、Sn及びBi成分の合計がめっき被膜に対して0.16質量%以下の溶融亜鉛めっき被膜を形成したボルトを用いて締結接合後に当該ボルトに溶射膜を被覆してあることで接合部の長期防錆が可能になる。
この場合に溶射用ボルトの製造方法として、Pb、Cd、Sn及びBi成分の合計が0.16質量%以下の溶融亜鉛めっき被膜を被覆し、その後に必要に応じてブラスト処理及び1次防錆処理を施す方法を採用するとよい。
また、従来の溶射技術では、所定の溶射の付着量を確保するためにブラスト処理後、鋼材表面に錆の発生や塵や埃が付着しないうちに速やかに溶射する必要があった。
よって、従来の溶射技術では、屋外溶射できる施工環境にない。
これに対して、上記溶融亜鉛めっき被膜表面に、化成被膜による一次防錆処理(化成被膜による短期防錆処理)を施しためっき被膜を溶射の下地にすることによって屋外の溶射作業を可能にし、溶射前に屋外曝露しても密着性を維持できるので、現地で締結接合後、所定の日数以内に溶射をすれば良く、現場施工性に優れる。
本発明は溶融亜鉛めっきをしたボルトを用いてボルト締結後に、このボルトにも溶射膜を被覆可能にした点に特徴があり、この実施例に限定されるものではない。
本実施例は、ウェブ12とフランジ11からなるH形鋼を複数、ボルト締結接合した鋼桁の例である。
左右一対のウェブ12は、それぞれボルト孔を有し、ウェブ同士を突き合わせ、ウェブ添接板13をその突き合せ部に当接し、ウェブ添接板13にも設けたボルト孔からボルト20を挿通し、締結接合する例である。
フランジ11もボルト孔11aを有し、フランジ添接板14,15をその突き合せ部の両面に当接し、ウェブと同様にボルト孔14a,15aにボルト20を挿通し、ナット21にて締結接合する。
また、必要に応じて座金20a,21aを用いる。
従って、ウェブ、フランジ、添接板と同様にボルト、ナットにも溶射膜が形成されるので長期防錆が可能であり、ボルト、ナット及び座金においてウェブ、フランジ添接板等の接触面に溶射膜が無い分だけリラクゼーションが少なくなる。
図2に示すような組成の溶融亜鉛めっき浴を用いて、図3に示すような大きさの鉄板に浴温450℃にて溶融亜鉛めっきをし、その後に図3に示したように右側はシンナー拭きを施し、左側はアランダム#60(三昌研磨材株式会社)にて軽くエアーブラスト処理を施した。
このテストピースにAl−5%Mg,φ1.6の溶射材を用いてプラズマ溶射(pw溶射)にて溶射膜を被覆し、その溶射膜の外観評価と密着力測定(テクノテスターR−2000Dを用いた)を実施した。
その条件を図4に表に示し、測定結果を図5に示した。
図5中、測定位置a,b,c,dは図3に示した部分であり、a,bは軽くブラスト処理した部分でc,dはシンナー拭きした部分に担当する。
TPNo.は、めっき浴のNo.に対応し、溶射膜の膜厚は、測定トータル膜厚からめっき被膜の膜厚を差し引いて求めた。
なお、従来の溶融亜鉛めっきによる比較例1(段落0006に示しためっき被膜)は溶射膜が剥離し、溶射そのものが実施できなかった。
この結果、本発明品はシンナー拭きによる脱脂処理のみでも溶射時の焦や、溶射被膜の弾きが比較例に比べて格段に少なかった。
但し、NO.1及び2は脱脂のみでは不充分で軽くブラスト処理するのが好ましいことが明らかになった。
NO.3及び4が脱脂のみでもある程度の密着性が認められることから、Cu成分の影響もあることが推定され、Cu成分は高温酸化を抑え、NO.5からはCu成分が0.5%では過剰であることが推定できた。
その条件を図6の表に示す。
溶融亜鉛めっきの後に軽くブラスト処理を施した上にガスフレーム溶射、アーク溶射、及びプラズマ溶射による溶射した溶射膜の密着性を評価するに当たり、ブラスト処理後に所定の日数においてから現地にて溶射することが想定される。
そこで、屋外曝露を促進させる目的で、ブラスト処理しためっき板の上に、精製水を霧吹きにて吹きかけ、24時間、屋外放置したものと、ブラスト処理後にすぐに溶射したものとを比較した。
その結果を図7の表に示す。
精製水を散布し、24時間屋外放置したものは密着性が低下する恐れがあることが明らかになった。
その処理条件及び密着性の評価結果を図8の表に示す。
表中、「めっき板仕様」は溶射前の試験片の作製条件を示す。
めっき浴No.3は図2の表に示すNo.3のめっき浴を用いたものであり、この浴にBi成分を0.15質量%添加したものを合せて評価した。
同様にめっき浴No.4とは図2の表のめっき浴No.4を用いたことを示し、この浴にBi成分を0.2質量%添加したものと比較評価した。
表中、「水冷有り、無し」は溶融亜鉛めっき後に水冷したものと空中放冷によりめっき表面にヤケを生じさせたものを比較調査した。
表中、「サンドブラスト+白錆防止処理」とは、めっき表面にエアー噴射によるサンドブラスト処理した後に濃度0.1〜1%程度のタンニン酸水溶液に浸漬して、有機化成被膜処理したことを示す。
従って表中、「そのまま」とはこのサンドブラスト処理も白錆防止処理もしていなく、「サンドブラスト」とはサンドブラスト処理のみしたことを示す。
これらのいずれの試験片も精製水を噴霧し、24時間屋外放置後にAl−5%Mg合金の溶射材を用いてガスフレーム溶射した。
図9に示した密着性の評価結果を考察すると、溶融亜鉛めっき後に防錆処理することなく散水、24時間屋外放置すると密着性が低下することからめっき後に所定の期間、屋外放置される場合に一次防錆処理すると良いことが明らかになった。
なお、サンドブラスト+白錆防止処理(一次防錆処理)すると、めっき表面のヤケもその影響が小さくなることも明らかになった。
また、Bi成分を添加する場合には、Bi:0.15%では密着性への影響は少ないが、Bi:0.2%では、溶射膜の密着性がやや低下した。
その条件及び評価結果を図9の表に示す。
表中、「めっき仕様」におけるめっき浴及び水冷工程の有無は図7の表と同様であり、表中、「白錆防止処理」において「E」と表示したものは0.1〜1.0%のタンニン酸水溶液に浸漬処理したものを示し、「C」はクロム酸水溶液によるクロメート処理したものを示す。
図9の表中、いずれの試験片もブラスト材としてホワイトアランダム#24(三昌研磨材株式会社)を用いて、軽くエアーブラスト処理(平均表面粗さRa:5〜30μm)し、その後にタンニン酸処理あるいはクロメート処理し、精製水噴霧後24時間屋外放置したものにAl−5%Mg溶射材をガスフレーム溶射した。
この結果、溶融亜鉛めっき後に軽くブラスト処理し、化成被膜による1次防錆処理すれば、24時間の曝露放置した後であっても溶射膜の密着性に優れることが明らかになり、その場合にめっき浴にBi:0.15%添加しても浴中のPb成分が0.008%以下、Cd成分0.002%以下、Sn成分0.002%以下であれば密着性に問題がないことが明らかになった。
その条件及び評価結果を図10の表に示す。
表中、屋外曝露期間は精製水の散水後の屋外放置日数を示し、その他の条件は図9の表に示したものと同じである。
この結果、散水後に14日間屋外放置しても密着性の低下が認められなかった。
なお、密着力が3MPa以上であれば実用上、全く問題がないとされている。
調査に供しためっき被膜中の化学成分を図11(a)の表に示す。
いずれのサンプルも溶融亜鉛めっき後に水冷、サンドブラスト処理、タンニン酸水溶液による1次防錆処理(有機化成被膜)、精製水散水後に24時間屋外放置した。
この結果、(a)のサンプル番号に対応した密着力測定結果を(b)に示すように、低融点成分を低く抑え、Bi成分を0.15%以下に制御した場合のみならず、このBi成分を0.001%レベルに抑えた場合に、他のPb、Cd、Snのいずれかを0.15%添加しても溶射膜の密着性が低下しなかったことから、Pb、Cd、Sn、Bi成分の合計が概ね0.16質量%以下に抑えためっき被膜であれば溶射膜の密着性を確保できることが確認できた。
11 フランジ
12 ウェブ
13 ウェブ添接板
14 フランジ添接板
Claims (5)
- 溶射膜を被覆した鋼材同士を、Pb、Cd、Sn及びBi成分の合計がめっき被膜に対して0.16質量%以下の溶融亜鉛めっき被膜を形成したボルトにて締結接合した後に当該ボルトに溶射膜を被覆してあることを特徴とする長期防錆接合の構造体。
- それぞれボルト孔を有し、表面に溶射膜を被覆した一対の鋼材を突き合せ、当該突き合せた一対の鋼材を、表面に溶射膜を被覆した添接板を介してボルト締結接合してあり、Pb、Cd、Sn及びBi成分の合計がめっき被膜に対して0.16質量%以下の溶融亜鉛めっき被膜を形成したボルトを用いて締結接合後に当該ボルトに溶射膜を被覆してあることを特徴とする長期防錆接合の構造体。
- 構造体は複数枚の、ウェブとフランジとからなる部材を接合してあり、
ウェブはウェブ添接板を介してボルト締結接合し、フランジはフランジ添接板を介してボルト締結接合した鋼桁であって、
前記ウェブ、フランジ、ウェブ添接板及びフランジ添接板は表面に溶射膜を被覆してあり、Pb、Cd、Sn及びBi成分の合計がめっき被膜に対して0.16質量%以下の溶融亜鉛めっき被膜を形成したボルトを用いて締結接合後に当該ボルトに溶射膜を被覆してあることを特徴とする長期防錆接合の構造体。 - 請求項1〜3のいずれかに用いるボルトであって、Pb、Cd、Sn及びBi成分の合計が0.16質量%以下の溶融亜鉛めっき被膜を被覆し、その後に1次防錆処理を施すことを特徴とする溶射用ボルトの製造方法。
- 溶射膜を被覆した鋼材同士を、Pb、Cd、Sn及びBi成分の合計がめっき被膜に対して0.16質量%以下の溶融亜鉛めっき被膜を形成したボルトにて締結接合した後に当該ボルトに溶射膜を被覆することを特徴とする構造体の接合施工方法。
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