JP2011089009A - 放射線硬化性粘着剤組成物、それを用いたダイシング用粘着フィルム、及び切断片の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ダイシング工程においては高い粘着力を有し半導体素子などの切断片の脱離飛散が抑えられるとともに、ピックアップ工程においては活性面を有する被加工物に対しても優れた軽剥離性を有する粘着剤層を備えたダイシング用粘着フィルムを提供する。
【解決手段】ダイシング用粘着フィルムの粘着剤層に、9.6(cal/cm3)1/2以上、10.0(cal/cm3)1/2以下の溶解度パラメータを有するベースポリマーと、放射線反応性炭素−炭素二重結合を有する放射線反応性化合物とを反応させて得られる(メタ)アクリル系ポリマーを含有する放射線硬化性粘着剤組成物を用いる。
【選択図】図1
【解決手段】ダイシング用粘着フィルムの粘着剤層に、9.6(cal/cm3)1/2以上、10.0(cal/cm3)1/2以下の溶解度パラメータを有するベースポリマーと、放射線反応性炭素−炭素二重結合を有する放射線反応性化合物とを反応させて得られる(メタ)アクリル系ポリマーを含有する放射線硬化性粘着剤組成物を用いる。
【選択図】図1
Description
本発明は、放射線硬化性粘着剤組成物、それを用いたダイシング用粘着フィルム、及び切断片の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、活性面を有する半導体ウェハや半導体パッケージなどの被加工物を切断する際に好適に用いられるダイシング用粘着フィルムに関する。
従来、半導体ウェハや半導体パッケージの半導体関連材料などは、回転刃を用いて切断され、小片の半導体素子やIC部品に分離されている。例えば、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム−砒素などを材料とする半導体ウェハは、大径の状態で製造された後、所定の厚さになるまで裏面研削処理(バックグラインド処理)され、さらに必要に応じて裏面処理(エッチング処理、ポリッシング処理など)が施される。次に、半導体ウェハが素子小片に切断分離(ダイシング)され、その後の工程に移される。この製造工程においては、半導体ウェハに予めダイシング用粘着フィルムを貼付するマウント工程、該粘着フィルムが半導体ウェハに貼付された状態で半導体ウェハを素子小片にダイシングするダイシング工程、洗浄工程、エキスパンド工程、ピックアップ工程などの各種工程が行われる。そして、上記ピックアップ工程においては、ダイシング用粘着フィルムをある程度張った状態とし、ピックアップする半導体素子下部のダイシング用粘着フィルムを点状または線状で持ち上げ、該半導体素子とダイシング用粘着フィルムとの剥離を助長した状態で、上部から真空吸着などによりピックアップして半導体素子を得る方式が採用されている。
上記ダイシング用粘着フィルムは、一般に、プラスチックフィルムなどの基材上に粘着剤組成物を含有する粘着剤層が形成された構成を有している。半導体素子を製造する場合、ダイシング用粘着フィルムには、ダイシング工程における粘着フィルムからの半導体素子の脱離飛散を抑えるため、ダイシング時に洗浄水の水圧が加えられても粘着フィルムから半導体素子が剥離しない程度の高い粘着力が要求される一方、ピックアップ工程における剥離時には粘着剤層が半導体ウェハを破損しない程度の低い粘着力になる軽剥離性を有することが要求されている。
上記のような特性を満たす粘着剤組成物として、例えば、(メタ)アクリル系共重合体からなるベースポリマーと、放射線反応性炭素−炭素二重結合を有する放射線反応性化合物とを反応させ、側鎖及び/または末端に放射線反応性炭素−炭素二重結合を導入した(メタ)アクリル系ポリマーを主成分とする放射線硬化性粘着剤組成物が提案されている(特許文献1)。この放射線硬化性粘着剤組成物によれば、放射線による硬化前には(メタ)アクリル系ポリマーが高い粘着力を有するため、ダイシング工程においては半導体素子の脱離飛散を抑えることができる。また、放射線を粘着剤層に照射すると側鎖及び/または末端に導入された放射線反応性炭素−炭素二重結合により(メタ)アクリル系ポリマーが硬化して粘着力が著しく低下するため、ピックアップ工程においては半導体素子を容易にダイシング用粘着フィルムから剥離することができる。
ところで、近年、半導体製造工程においては、半導体ウェハの薄膜化(例えば、100μm以下)に起因する破損防止を目的として、裏面研削処理後、または裏面研削処理及び裏面処理が終了した後、短時間内にダイシング用粘着フィルムが半導体ウェハに貼付されることが多くなってきている。このような裏面研削処理後、または裏面研削処理及び裏面処理後、短時間内に薄膜の半導体ウェハにダイシング用粘着フィルムが貼付された場合、半導体ウェハと粘着剤層との粘着力が高くなり、放射線による硬化後の剥離が困難となってピックアップ性が低下するという問題が生じている。特に、半導体素子の製造工程において、ダイシング工程とピックアップ工程とが異なる場所で行なわれる場合、ダイシング用粘着フィルムが貼付された状態で半導体ウェハが放置されることがある。このような場合、粘着力がさらに高くなり、ピックアップ性がより低下するという問題が明らかとなってきた。
本発明は上記課題を解決するものであり、本発明の目的は、放射線による硬化前では優れた粘着力を有し、放射線による硬化後では軽剥離性を有する放射線硬化性粘着剤組成物を提供すること、及び前記放射線硬化性粘着剤組成物を用いることにより、ダイシング工程においては高い粘着力を有し半導体素子などの切断片の脱離飛散が抑えられるとともに、ピックアップ工程においては優れた軽剥離性を有する粘着剤層を備えたダイシング用粘着フィルムを提供することにある。
本発明は、側鎖及び/または末端に放射線反応性炭素−炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系ポリマーを含有する放射線硬化性粘着剤組成物であって、
前記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するベースポリマーが、9.6(cal/cm3)1/2以上、10.0(cal/cm3)1/2以下の溶解度パラメータを有する放射線硬化性粘着剤組成物である。
前記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するベースポリマーが、9.6(cal/cm3)1/2以上、10.0(cal/cm3)1/2以下の溶解度パラメータを有する放射線硬化性粘着剤組成物である。
上記ベースポリマーは、225K以上、228K未満のガラス転移温度を有することが好ましい。特に、ベースポリマーは、炭素数8以上の直鎖または分岐アルキル基含有(メタ)アクリル系モノマーと、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーとを共重合モノマー成分として少なくとも含有することが好ましい。
また、本発明は、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に粘着剤層とを有するダイシング用粘着フィルムであって、
前記粘着剤層は、架橋剤と、光重合開始剤と、上記(メタ)アクリル系ポリマーとを含む放射線硬化性粘着剤組成物を含有するダイシング用粘着フィルムである。
前記粘着剤層は、架橋剤と、光重合開始剤と、上記(メタ)アクリル系ポリマーとを含む放射線硬化性粘着剤組成物を含有するダイシング用粘着フィルムである。
そして、本発明は、被加工物の一面に上記ダイシング用粘着フィルムを貼付し、
前記ダイシング用粘着フィルムが貼付された被加工物を切断して切断片に分離し、
前記切断片に貼付されている粘着剤層に放射線を照射して前記粘着剤層の粘着力を低下させ、
前記粘着力を低下させたダイシング用粘着フィルムから前記切断片をピックアップする切断片の製造方法である。特に、被加工物が活性面を有する半導体ウェハである場合に、上記切断片の製造方法が有効である。
前記ダイシング用粘着フィルムが貼付された被加工物を切断して切断片に分離し、
前記切断片に貼付されている粘着剤層に放射線を照射して前記粘着剤層の粘着力を低下させ、
前記粘着力を低下させたダイシング用粘着フィルムから前記切断片をピックアップする切断片の製造方法である。特に、被加工物が活性面を有する半導体ウェハである場合に、上記切断片の製造方法が有効である。
本発明によれば、粘着剤層が上記の放射線硬化性粘着剤組成物を含有しているため、ダイシング工程においては高い粘着力が得られるとともに、ピックアップ工程においては活性面を有する半導体ウェハなどの被加工物に対しても優れた軽剥離性を有するダイシング用粘着フィルムを提供することができる。これによりダイシング工程における切断片の脱離飛散を低減できるとともに、ピックアップ工程においては切断片をダイシング用粘着フィルムから容易に剥離することができる。
既述したように、放射線反応性炭素−炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系ポリマーを含む放射線硬化性粘着剤組成物をダイシング用粘着フィルムの粘着剤層に用いた場合、裏面研削処理後、または裏面研削処理及び裏面処理後、短時間内に薄膜の半導体ウェハにダイシング用粘着フィルムを貼り付けると、半導体ウェハと粘着剤層との粘着力が高くなり、放射線による硬化後の剥離が困難となってピックアップ性が低下しやすい。これは、半導体ウェハの裏面研削処理または裏面処理が行われた処理面において、自然酸化膜が半導体ウェハの全面に十分形成されておらず、半導体ウェハの表面は未酸化状態の活性な原子(例えば、ケイ素原子など)が存在する活性面となっており、そのためこの活性面にダイシング用粘着フィルムが貼り付けられると、未酸化状態の活性原子と放射線硬化性粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーの分子内に導入された水酸基やカルボキシル基などの極性基やエステル基などの極性部位とが接触して、未酸化状態の活性原子と粘着剤層との間に化学的な結合が生じるためと推察される。すなわち、放射線反応性炭素−炭素二重結合を分子内に有する(メタ)アクリル系ポリマーの合成にあたっては、(メタ)アクリル系共重合体からなるベースポリマーに水酸基やカルボキシル基などの極性基を導入しておき、これらの極性基と結合可能な官能基を有する放射線反応性化合物をベースポリマーと反応させる必要がある。そのため、放射線反応性化合物の官能基と未反応の水酸基などが(メタ)アクリル系ポリマーに残存する場合があり、この極性基が活性原子と化学的な結合を形成すると考えられる。特に、(メタ)アクリル系ポリマーを架橋するために架橋剤を用いる場合、該架橋剤と反応させるための水酸基などの極性基の数も考慮して多数の極性基を(メタ)アクリル系ポリマーに導入させておく必要があり、それゆえ未反応の極性基が(メタ)アクリル系ポリマーに残存する場合がある。その結果、放射線による硬化処理を行っても、この(メタ)アクリル系ポリマー内に残存する極性基と活性原子との結合に起因して、粘着力が十分に低下しないものと考えられる。
本発明者らは、活性面を有する半導体ウェハに貼付されたダイシング用粘着フィルムの粘着力を放射線の照射によって低下させるためには、上記のような(メタ)アクリル系ポリマーが有する極性基や極性部位をできるだけ少なくすることが有効であるとの観点から、ピックアップ工程において軽剥離性を確保できる放射線硬化性粘着剤組成物について検討した結果、(メタ)アクリル系ポリマーを構成するベースポリマーの溶解度パラメータが9.6(cal/cm3)1/2以上、10.0(cal/cm3)1/2以下であれば、放射線硬化前には高い粘着力を示し、放射線硬化後には軽剥離性を有する放射線硬化性粘着剤組成物が得られることを見出した。この理由は必ずしも明らかではないが、活性面を有する半導体ウェハと粘着剤層との粘着力が、活性原子と(メタ)アクリル系ポリマーが有する極性基あるいは極性部位との結合によるものと考えれば、溶解度パラメータの低下は極性の減少を意味するため、低い溶解度パラメータを有するベースポリマーを用いれば、得られる(メタ)アクリル系ポリマーの有する極性基や極性部位の数を低下させることができ、それによって活性原子と極性基等との間の結合が少なくなり、放射線硬化後の粘着力を十分に低減できるためと予測される。一方、溶解度パラメータが低すぎると、放射線反応性の炭素−炭素二重結合を導入するためのベースポリマー中の水酸基などの極性基も減少する。そのため、(メタ)アクリル系ポリマーへの放射線反応性炭素−炭素二重結合の導入量が少なくなり、放射線を照射したときの硬化性が低下する。また、(メタ)アクリル系ポリマーを架橋させるために架橋剤を用いる場合、該架橋剤と反応する水酸基などの極性基が少なくなり、粘着剤層中に未反応成分が残存して、糊汚れ(被着体への汚染)が発生しやすくなる。このように、放射線反応性の炭素−炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系ポリマーを用いた放射線硬化性粘着剤組成物において、(メタ)アクリル系ポリマーを構成するベースポリマーの極性基等の低減が活性原子と(メタ)アクリル系ポリマーとの結合の抑制に有効との観点から、ベースポリマーの溶解度パラメータに着目し、放射線硬化後のダイシング用粘着フィルムの軽剥離性の改善を検討した例は見当たらない。
本実施の形態において、ベースポリマーの溶解度パタメータは、共重合体であるベースポリマーを構成する各(メタ)アクリル系モノマーの溶解度パラメータとモル比との積から求めることができる。例えば、ベースポリマーがX、Yの2種類の(メタ)アクリル系モノマーから構成されている場合、ベースポリマーを合成するために用いられる各(メタ)アクリル系モノマーの共重合モノマー成分全量に対する含有量をx質量%、y質量%、分子量をMx、Myとすると、各(メタ)アクリル系モノマーのモル比Cx、Cyは、x/Mx、y/Myで表され、ベースポリマーのモル比Cは、x/Mx+y/Myで表される。従って、各(メタ)アクリル系モノマーの溶解度パラメータをSPx(cal/cm3)1/2、SPy(cal/cm3)1/2とすると、ベースポリマーの溶解度パラメータSP(cal/cm3)1/2は、下記式(1)で求めることができる。
SP=[(x×SPx/Mx)+(y×SPy/My)]×(1/C) (1)
なお、各(メタ)アクリル系モノマーの溶解度パラメータは分子構造から計算により求められることが知られており、本明細書における各(メタ)アクリル系モノマーの溶解度パラメータはFedorsによる方法(原崎勇次著,「コーティングの基礎科学」,第3章,35頁,1977年,槙書店発行)により得られる25℃での値を意味する。
SP=[(x×SPx/Mx)+(y×SPy/My)]×(1/C) (1)
なお、各(メタ)アクリル系モノマーの溶解度パラメータは分子構造から計算により求められることが知られており、本明細書における各(メタ)アクリル系モノマーの溶解度パラメータはFedorsによる方法(原崎勇次著,「コーティングの基礎科学」,第3章,35頁,1977年,槙書店発行)により得られる25℃での値を意味する。
また、本実施の形態において、上記溶解度パラメータを有するベースポリマーは、225K以上、228K未満のガラス転移温度を有することがより好ましい。ガラス転移温度が粘着剤の粘着力に影響することは知られており、ガラス転移温度が低いほど粘着力は高くなる。従って、軽剥離性を目的とする場合、(メタ)アクリル系ポリマーを構成するベースポリマーとしては、高いガラス転移温度を有するものが好ましいと考えられる。しかしながら、本発明者等の検討によれば、上記溶解度パラメータを有するベースポリマーを用いる場合、従来よりも低いガラス転移温度を有するベースポリマーの方がより軽剥離性に優れたダイシング用粘着フィルムが得られることも見出した。
本実施の形態において、ベースポリマーのガラス転移温度は、共重合体を構成する各(メタ)アクリル系モノマーのホモポリマーのガラス転移温度と重量分率とから求めることができる。例えば、上記溶解度パラメータの算出と同様に、ベースポリマーがX、Yの2種類の(メタ)アクリル系モノマーから構成されている場合、各(メタ)アクリル系モノマーの重量分率(質量%/100)をWx、Wy、各(メタ)アクリル系モノマーのホモポリマーのガラス転移温度をTgx(K)、Tgy(K)とすると、ベースポリマーのガラス転移温度Tg(K)は、下記式(2)から求めることができる。
1/Tg=Wx/Tgx+Wy/Tgy (2)
1/Tg=Wx/Tgx+Wy/Tgy (2)
次に、本実施の形態の放射線硬化性粘着剤組成物の構成及びその製造方法、並びに該放射線硬化性粘着剤組成物を用いた粘着剤層を有するダイシング用粘着フィルムの構成及びその製造方法について説明する。
本実施の形態の側鎖及び/または末端に放射線反応性炭素−炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル系モノマーを共重合して得られるベースポリマーと、放射線反応性成分として、放射線反応性炭素−炭素二重結合を有する放射線反応性化合物とを反応させることによって合成することができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルを意味する。
ベースポリマーは、共重合モノマー成分の主成分として、水酸基などの極性基を有さない炭素数8以上の直鎖または分岐アルキル基含有(メタ)アクリル系モノマーと、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーとを少なくとも含有することが好ましく、炭素数8以上の直鎖または分岐アルキル基含有(メタ)アクリル系モノマーと、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーとのみを含有することがより好ましい。水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーを使用することにより、(メタ)アクリル系ポリマーに放射線反応性炭素−炭素二重結合を導入するためや架橋剤により(メタ)アクリル系ポリマーを架橋させるための水酸基をベースポリマーに付与することができる。特に、ベースポリマーが炭素数8以上の直鎖または分岐アルキル基含有(メタ)アクリル系モノマーと、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーとのみを含有すれば、長鎖のアルキル基によりベースポリマーの極性を低減できるとともに、極性基の導入量も少なくなり、それゆえ低い溶解度パラメータを有するベースポリマーを合成することができる。
炭素数8以上の直鎖または分岐アルキル基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどの(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上併用してもよい。なお、炭素数8以上の直鎖または分岐アルキル基含有(メタ)アクリル系モノマーのアルキル基数は、長鎖であるほど好ましいが、市場での入手可能性を考慮すれば、アルキル基数は18以下が好ましく、12以下がより好ましい。これらの中でも、炭素数8の直鎖または分岐アルキル基を含有する(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルからなる群から選ばれる1種が好ましく、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルがより好ましい。
水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシルなどが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上併用してもよい。
ベースポリマーを構成する共重合モノマー成分全量に対して、炭素数8以上の直鎖または分岐アルキル基含有(メタ)アクリル系モノマーの含有量は、好ましくは87.0〜93.5質量%、より好ましくは90.0〜93.5質量%であり、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーの含有量は、好ましくは5.0〜13.0質量%、より好ましくは5.0〜10.0質量%である。炭素数8以上の直鎖または分岐アルキル基含有(メタ)アクリル系モノマーの含有量が少なくなりすぎ、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーの含有量が多くなりすぎると、ベースポリマーの溶解度パラメータが高くなりすぎ、半導体ウェハなどの活性面における活性原子と極性基とが結合して、放射線による硬化によっても粘着力を十分に低減することができず、その結果、軽剥離性が低下する。一方、炭素数8以上の直鎖または分岐アルキル基含有(メタ)アクリル系モノマーの含有量が多くなりすぎ、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーの含有量が少なくなりすぎると、ベースポリマー中の水酸基数が少なくなるため、溶解度パラメータが低くなりすぎ、その結果、放射線反応性化合物と反応して放射線反応性炭素−炭素二重結合を(メタ)アクリル系ポリマーに導入するために必要な水酸基の数が減少し、硬化性が低下する。また、硬化性を向上させるために放射線反応性炭素−炭素二重結合の導入量を増加させると、高分子量化のために架橋剤を用いる場合、該架橋剤と反応する水酸基が少なくなり、未反応成分が残存して、糊汚れが発生しやすくなる。
本実施の形態において、ベースポリマーは、凝集力、及び耐熱性などを目的として、必要に応じて他の共重合モノマー成分を含有してもよい。このような他の共重合モノマー成分としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチルなどの短鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン系モノマー;スチレン、 α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン原子含有モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどのアルコキシ基含有モノマー;N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、N−(メタ)アクリロイルモルホリンなどの窒素原子含有環を有するモノマーが挙げられる。また、共重合モノマー成分には、架橋などを目的として、必要に応じて多官能性モノマーを用いてもよい。さらに、共重合モノマー成分として、必要に応じて、エチレン−酢酸ビニルコポリマーや、酢酸ビニルポリマーなどを用いてもよい。これらの他の共重合モノマー成分は、単独でまたは2種以上併用してもよい。ただし、上記溶解度パラメータを有するベースポリマーを得るためには、短鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルや水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー以外の極性基を有する他の共重合モノマー成分の含有量はできるだけ少ない方が好ましい。このため、これらの他の共重合モノマー成分は、共重合モノマー成分全量に対して、総量で、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下である。
ベースポリマーを合成するための重合方法としては、従来公知の溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法などが挙げられる。これらの中でも本実施の形態の共重合モノマー成分の重合が均一に進行する溶液重合法が好ましい。溶液重合を行う場合の有機溶剤としては、具体的には、例えば、ケトン系、エステル系、アルコール系、芳香族系の有機溶剤が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独でまたは2種以上併用してもよい。これらの中でもトルエン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、ベンゼンメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトンなどの、一般にベースポリマーに対して良溶剤で、60〜120℃の沸点を有する有機溶剤が好ましい。また、重合開始剤としては、α,α'−アゾビスイソブチルニトリルなどのアゾビス系;ベンゾペルオキシドなどの有機過酸化物系などのラジカル発生剤が挙げられる。重合にあたっては、必要に応じて、触媒、重合禁止剤などを使用してもよい。
本実施の形態の(メタ)アクリル系ポリマーは上記のようにして得られるベースポリマーに放射線反応性炭素−炭素二重結合を含有する放射線反応性化合物を反応させ、(メタ)アクリル系ポリマーの側鎖及び/または末端に放射線反応性炭素−炭素二重結合を導入することにより合成することができる。
放射線反応性化合物としては、放射線反応性炭素−炭素二重結合と、ベースポリマーの極性基と反応する官能基とを有するものを使用することができる。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、けい皮酸、イタコン酸、フマル酸、フタル酸などのカルボキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸イソシアネートエチルなどのイソシアネート基含有モノマーなどが挙げられる。これらの放射線反応性化合物は、単独でまたは2種以上併用してもよい。これらの中でも、水酸基との反応性に優れるイソシアネート基含有モノマーが好ましい。また、ベースポリマーが共重合モノマー成分としてエポキシ基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物基含有モノマーなどを含有する場合、これらの共重合モノマー成分によって分子内に導入されるエポキシ基、カルボン酸基、酸無水物基などの官能基と反応する官能基を有する(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどのヒドロキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチルなどのアミノ基含有モノマーなどを用いてもよい。
放射線反応性化合物の含有量は、ベースポリマー100質量部に対して、好ましくは5〜25質量部であり、より好ましくは6〜9質量部である。放射線反応性化合物の含有量が5質量部未満では、放射線反応性炭素−炭素二重結合の導入量が減少し、硬化性が低下する。放射線反応性化合物の含有量が25質量部よりも多いと、硬化性が飽和する一方、放射線による硬化後の粘着剤の流動性が低下し、延伸後の切断片間の間隙が不十分となる。そのため、ピックアップ時に各切断片の画像認識が困難になる場合がある。また、(メタ)アクリル系ポリマーの安定性が低下し、製造が困難となる場合がある。
(メタ)アクリル系ポリマーを合成するためのベースポリマーと放射線反応性化合物との反応としては、炭素−炭素二重結合の放射線反応性を維持した状態で、これらを縮合反応または付加反応させる方法が挙げられる。これらの反応においては、炭素−炭素二重結合の放射線反応性が維持されるよう、重合禁止剤を使用することが好ましい。このような重合禁止剤としては、ヒドロキノン・モノメチルエーテルなどのキノン系の重合禁止剤が好ましい。重合禁止剤の量は、特に制限されないが、ベースポリマーと放射線反応性化合物の合計量に対して、通常、0.01〜0.1質量部である。
上記のようにして得られる(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは30万〜200万であり、より好ましくは40万〜150万である。重量平均分子量が30万未満であると、切断片に糊汚れが発生しやすくなる。また、(メタ)アクリル系ポリマーの凝集力が低下し、ダイシング時に被加工物の位置ずれが生じやすくなる。一方、重量平均分子量が200万より大きいと、合成時及び基材上への粘着剤組成物の塗工時に粘着剤組成物がゲル化する場合がある。なお、上記重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)によるポリスチレン換算重量平均分子量である(溶媒:テトラヒドロフラン)。
本実施の形態の放射線硬化性粘着剤組成物は、上記(メタ)アクリル系ポリマーの高分子量化のためにさらに架橋剤を含有することが好ましい。このような架橋剤としては、特に制限されず、公知の架橋剤を使用することができる。具体的には、例えば、ポリイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン樹脂系架橋剤、尿素樹脂系架橋剤、酸無水化合物系架橋剤、ポリアミン系架橋剤、カルボキシル基含有ポリマー系架橋剤などが挙げられる。これらの架橋剤は、単独でまたは2種以上併用してもよい。架橋剤の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部である。架橋剤の配合量が多すぎると、(メタ)アクリル系ポリマーの種類によっては被加工物にダイシング用粘着フィルムを貼付する際の粘着力が低下したり、未架橋成分が切断片に付着して、糊汚れが発生する場合がある。
本実施の形態の放射線硬化性粘着剤組成物は、放射線として紫外線を用いる場合、光重合開始剤をさらに含有することが好ましい。このような光重合開始剤としては、具体的には、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル系開始剤;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系開始剤;α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1などの芳香族ケトン系開始剤;ベンジルジメチルケタールなどの芳香族ケタール系開始剤;チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン系開始剤;ベンジルなどのベンジル系開始剤;ベンゾインなどのベンゾイン系開始剤;2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノンなどのα−ケトール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシム系化合物;カンファーキノン系化合物;ハロゲン化ケトン系化合物:アシルホスフィノキシド系化合物;アシルホスフォナート系化合物などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上併用してもよい。光重合開始剤の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部である。
本実施の形態の放射線硬化性粘着剤組成物は、上記の(メタ)アクリル系ポリマーを含有していれば、他の特性の向上を目的として、必要に応じて、粘着付与剤、老化防止剤、充填剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、軟化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤などの公知の添加剤をさらに含有してもよい。ただし、放射線反応性炭素−炭素二重結合を有する放射線反応性化合物やポリエチレングリコールなどの低分子化合物(例えば、数平均分子量が3,000以下)はできる限り少ないことが好ましく、2質量%未満がより好ましく、実質的に含有しないことが最も好ましい。本実施の形態の放射線硬化性粘着剤組成物がこのような低分子化合物を含有すると、被加工物に対する汚染の原因になるだけでなく、ダイシング工程における粘着力が低下しやすく、またピックアップ工程における硬化性が低下しやすい。
本実施の形態のダイシング用粘着フィルムは、上記の放射線硬化性粘着剤組成物を公知の方法により基材の少なくとも一面上に塗工することにより製造することができる。また、後述するセパレータを使用する場合、セパレータの一面上に放射線硬化性粘着剤組成物を塗工した後、粘着剤層に基材を張り合わせてもよい。なお、架橋剤を使用する場合、放射線硬化性粘着剤組成物を含有する粘着剤層を形成した後、さらに加熱してもよい。基材としては、放射線(X線、紫外線、電子線など)を少なくとも部分的に透過する特性を有している基材であれば特に制限されることなく使用できる。このような基材としては、プラスチック製、金属製、紙製などの基材が挙げられ、これらの中でも、プラスチック製基材が好ましい。このようなプラスチック製基材としては、具体的には、例えば、ポリオレフィン系樹脂(低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなど)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー系樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体(ランダム共重合体、交互共重合体など)、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレートなど)、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスチレン系樹脂(ポリスチレンなど)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネート系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、セルロース系樹脂や、これらの樹脂の架橋体などの構成材料からなる基材が挙げられる。これらの構成材料は、単独でまたは2種以上併用してもよい。上記の構成材料は、必要に応じて、官能基を有していてもよい。また、機能性モノマーや改質性モノマーが構成材料にグラフトされていてもよい。さらに、プラスチック製基材の表面は、隣接する層との密着性を向上させるために、公知の表面処理方法が施されていてもよい。このような表面処理としては、具体的には、例えば、コロナ放電処理、オゾン暴露処理、高圧電撃暴露処理、イオン化放射線処理などが挙げられる。また、下塗り剤によるコーティング処理、プライマー処理、マット処理、架橋処理などが基材に施されていてもよい。
基材は、単層の形態を有していてもよく、積層された形態を有していてもよい。また、基材中には、必要に応じて、例えば、充填剤、難燃剤、老化防止剤、帯電防止剤、軟化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤などの公知の添加剤が含まれていてもよい。基材の厚さは、特に制限されるものではないが、好ましくは10〜300μmであり、より好ましくは30〜200μmである。
粘着剤層の厚さは、特に制限されるものではないが、好ましくは3〜50μmであり、より好ましくは5〜20μmである。粘着剤層の厚さが3μm以上であれば、ダイシング時に半導体ウェハをダイシング用粘着フィルムに確実に保持させることができる。また、ダイシング工程においては半導体ウェハなどの被加工物が振動する場合がある。そのため、振動幅が大きいと、半導体素子などの切断片に欠け(チッピング)が発生しやすい。しかしながら、粘着剤層の厚さが50μm以下であれば、ダイシング時に発生する振動の振動幅が大きくなりすぎるのを抑制することができ、それによって上記のような欠けを低減できる。
被加工物として活性面を有する半導体ウェハ(シリコンミラーウェハ)が用いられる場合、該半導体ウェハに対する粘着剤層の放射線による硬化前の粘着力(剥離角度:180°,引張速度:300mm/分,温度:23±3℃)は、好ましくは0.5(N/10mm幅)以上であり、より好ましくは1.0(N/10mm幅)以上である。放射線による硬化前の粘着力が0.5(N/10mm幅)以上であれば、ダイシング工程における半導体素子の脱離飛散を十分に抑制または防止できる。また、活性面を有する半導体ウェハ(シリコンミラーウェハ)に対する粘着剤層の放射線による硬化後の粘着力(剥離角度:180°,引張速度:300mm/分,温度:23±3℃)は、長期放置後(例えば、5日間室温放置後)で、好ましくは0.4(N/10mm幅)以下であり、より好ましくは0.2(N/10mm幅)以下である。放射線による硬化後にこのような低い粘着力を有する粘着剤層であれば、ピックアップ性が良好となり、糊残り(粘着剤成分の残存)も低減することができる。
図1は、本実施の形態のダイシング用粘着フィルムの構成の一例を示す断面概略図である。図1に示すように、本実施の形態のダイシング用粘着フィルム1は、基材2の一面上に粘着剤層3が形成された構成を有している。また、図1に示すように、粘着剤層3上には、必要に応じてセパレータ4が設けられてもよい。セパレータ4としては、特に制限されず、公知のセパレータを用いることができる。このようなセパレータ4の構成材料としては、具体的には、例えば、紙類;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂などが挙げられる。また、セパレータ4の表面には、粘着剤層3の剥離性を高めるために、必要に応じて、シリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの処理が施されていてもよい。セパレータ4の厚さは、特に制限されないが、通常、10〜200μmである。粘着剤層3は、1層であってもよいし、2層以上であってもよい。なお、図1では、粘着剤層3は基材2の片面のみに設けられているが、基材2の両面に粘着剤層3が設けられてもよい。また、図示しないが、使用形態に応じて、セパレータ4の代わりに、基材2の他面上に、他の粘着剤層や、離型処理層などが形成されていてもよい。他の粘着剤層を形成するための粘着剤組成物としては、具体的には、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤などの公知の粘着剤を含有する粘着剤組成物を用いることができる。なお、上記基材の他面上に形成される粘着剤組成物は、必要に応じて各種添加剤、放射線硬化性成分や発泡剤などを含有してもよい。また、離型処理層を形成するための離型処理剤(剥離剤)としては、具体的には、例えば、シリコーン系離型処理剤、長鎖アルキル系離型処理剤、フッ素系離型処理剤などの公知の離型処理剤を用いることができる。ダイシング用粘着フィルムは、ロール状に巻回された形態または幅広のシートが積層された形態を有していてもよい。また、これらを所定サイズに切断加工したシート状またはテープ状の形態を有していてもよい。
本実施の形態のダイシング用粘着フィルムは、被加工物をダイシングして切断片を製造する場合に用いることができる。特に、活性面を有する被加工物をダイシングして切断片を製造する場合に上記ダイシング用粘着フィルムを好適に用いることができる。このような被加工物としては、具体的には、例えば、半導体ウェハ、半導体パッケージ、ガラス、セラミックスなどが挙げられる。これらの被加工物は、シリコン系化合物、ゲルマニウム系化合物、ガリウム−砒素化合物などの化合物からなり、裏面研削処理(バックグラインド)などにより、露出した面には未酸化状態の活性なケイ素原子(Si)、未酸化状態の活性なゲルマニウム原子(Ge)、未酸化状態の活性なガリウム原子(Ga)などの未酸化状態の活性原子が多数存在する。そのため、このような活性原子を有する被加工物をダイシングするためにダイシング用粘着フィルムが被加工物に貼付されると、粘着剤層に主成分として含まれる(メタ)アクリル系ポリマーに導入された極性基等と活性原子とが結合して放射線による硬化後でも高い粘着力を示し、切断片とダイシング用粘着フィルムとの剥離が困難となる。しかしながら、本実施の形態のダイシング用粘着フィルムによれば、活性面を有する被加工物にダイシング用粘着フィルムを貼付しても、ダイシング用粘着フィルムから切断片を剥離させる際には、貼付時間に関係なく、活性面に対する粘着力を放射線の照射により十分に低減させることができ、容易に切断片を剥離させることができる。従って、本実施の形態のダイシング用粘着フィルムによれば、例えば、半導体ウェハの裏面研削処理後、または半導体ウェハの裏面研削処理及び裏面処理後、短時間内に露出した活性面にダイシング用粘着フィルムを貼付しても、その後に実施されるダイシング工程や、ピックアップ工程などに有効に利用することができる。
本実施の形態において、被加工物をダイシングして切断片を製造する方法としては、被加工物の一面にダイシング用粘着フィルムを貼付するマウント工程と、ダイシング用粘着フィルムが貼付された被加工物を切断して切断片に分離するダイシング工程と、切断片に貼付されている粘着剤層に放射線を照射して粘着剤層の粘着力を低下させ、粘着力を低下させたダイシング用粘着フィルムから切断片をピックアップするピックアップ工程とを少なくとも有する製造方法を好適に用いることができる。
被加工物の一面にダイシング用粘着フィルムを貼付するマウント工程では、通常、半導体ウェハなどの被加工物とダイシング用粘着フィルムとを、被加工物の一面と粘着剤層とが接触する形態で重ね合わせ、これを圧着ロールを用いる押圧手段などの公知の押圧手段で押圧することにより、被加工物にダイシング用粘着フィルムが貼り付けられる。また、加圧可能な容器(例えば、オートクレーブなど)中で、被加工物とダイシング用粘着フィルムとを、前記と同様の形態で重ね合わせ、容器内を加圧することにより、被加工物にダイシング用粘着フィルムを貼り付けてもよい。さらに、減圧チャンバー(真空チャンバー)内で、上記の加圧による貼付の場合と同様にして、被加工物にダイシング用粘着フィルムを貼り付けてもよい。
次に、ダイシング工程では、ダイシング用粘着フィルムが貼付されている半導体ウェハなどの被加工物を、ブレードなどのダイシング手段によりダイシングして、被加工物の切断片が製造される。このようなダイシング工程では、通常、摩擦熱の除去や切断屑の付着を防止するためダイシング用粘着フィルムが貼付された半導体ウェハなどの被加工物に洗浄水を供給しながら、高速で回転するブレードで被加工物が所定のサイズに切断される。このため、粘着剤層の粘着力が低下しやすいが、本実施の形態のダイシング用粘着フィルムは、粘着剤層と洗浄水とが接触しても優れた粘着力を保持できるため、ダイシング用粘着フィルムからの切断片の脱離飛散を低減できる。ダイシング装置としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。なお、必要に応じて、ダイシング工程後に、洗浄工程、エキスパンド工程などが行われてもよい。
ピックアップ工程では、ダイシング用粘着フィルムの粘着剤層に放射線を照射することにより、粘着剤層の粘着力を低下させた後、切断片がダイシング用粘着フィルムからピックアップされる。放射線としては、例えば、X線、電子線、紫外線などが挙げられる。これらの中でも、紫外線が好ましい。放射線を照射する際の照射強度や照射時間などの各種条件は、特に限定されず、適宜設定することができる。ピックアップ方法としては、特に限定されず、従来公知の種々のピックアップ方法を採用することができる。例えば、個々の切断片を、ダイシング用粘着フィルム側からニードルによって突き上げ、突き上げられた切断片をピックアップ装置によってピックアップする方法などが挙げられる。本実施の形態のダイシング用粘着フィルムは、放射線の硬化により粘着力を十分に低下させることができるため、活性面を有する被加工物を用いた場合でも、上記のようなピックアップ工程において、容易に切断片をダイシング用粘着フィルムから剥離することができるとともに、剥離後の切断片への粘着剤成分の付着を低減することができる。
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」とあるのは、「質量部」を意味する。
<(メタ)アクリル系ポリマーの合成>
共重合モノマー成分として、炭素数2の直鎖アルキル基を含有するアクリル酸エチル[溶解度パラメータ(SP値、以下同様):10.2(cal/cm3)1/2,ホモポリマーのTg:249K]、炭素数4の直鎖アルキル基を含有するアクリル酸ブチル[SP値:9.8(cal/cm3)1/2,ホモポリマーのTg:219K]、炭素数8の分岐アルキル基を含有するアクリル酸2−エチルヘキシル[SP値:9.2(cal/cm3)1/2,ホモポリマーのTg:223K]、炭素数12の直鎖アルキル基を含有するアクリル酸ドデシル[SP値:9.2(cal/cm3)1/2,ホモポリマーのTg:270K]、水酸基を含有するアクリル酸2−ヒドロキシエチル[SP値:13.3(cal/cm3)1/2,ホモポリマーのTg:258K]、及びカルボキシル基を含有するアクリル酸[SP値:14.0(cal/cm3)1/2,ホモポリマーのTg:379K]を準備した。なお、アクリル酸2−ヒドロキシエチルのホモポリマーのガラス転移温度は、共栄社化学社のカタログに基づくものであり、その他の(メタ)アクリル系モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、POLYMER HANDBOOK(第3版,1989年,JOHN WILEY & SONS発行)に基づくものである。これらの共重合モノマー成分を表1に示す配合比で混合し、溶液ラジカル重合して各ベースポリマーを合成した。重合にあたっては、GPCにより共重合モノマー成分の反応追跡を行い、共重合モノマー成分が消失した時点で重合を終了した。
共重合モノマー成分として、炭素数2の直鎖アルキル基を含有するアクリル酸エチル[溶解度パラメータ(SP値、以下同様):10.2(cal/cm3)1/2,ホモポリマーのTg:249K]、炭素数4の直鎖アルキル基を含有するアクリル酸ブチル[SP値:9.8(cal/cm3)1/2,ホモポリマーのTg:219K]、炭素数8の分岐アルキル基を含有するアクリル酸2−エチルヘキシル[SP値:9.2(cal/cm3)1/2,ホモポリマーのTg:223K]、炭素数12の直鎖アルキル基を含有するアクリル酸ドデシル[SP値:9.2(cal/cm3)1/2,ホモポリマーのTg:270K]、水酸基を含有するアクリル酸2−ヒドロキシエチル[SP値:13.3(cal/cm3)1/2,ホモポリマーのTg:258K]、及びカルボキシル基を含有するアクリル酸[SP値:14.0(cal/cm3)1/2,ホモポリマーのTg:379K]を準備した。なお、アクリル酸2−ヒドロキシエチルのホモポリマーのガラス転移温度は、共栄社化学社のカタログに基づくものであり、その他の(メタ)アクリル系モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、POLYMER HANDBOOK(第3版,1989年,JOHN WILEY & SONS発行)に基づくものである。これらの共重合モノマー成分を表1に示す配合比で混合し、溶液ラジカル重合して各ベースポリマーを合成した。重合にあたっては、GPCにより共重合モノマー成分の反応追跡を行い、共重合モノマー成分が消失した時点で重合を終了した。
次に、この各ベースポリマー100部に対し、放射線反応性炭素−炭素二重結合を含有する2−イソシアネートエチルメタクリレートを、表1に示す各配合比で反応させて、各(メタ)アクリル系ポリマーを合成した。なお、上記の反応にあたっては、重合禁止剤としてヒドロキノン・モノメチルエーテルを0.05部用いた。合成した各(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量をGPC(溶媒:テトラヒドロフラン)により測定したところ、50万〜80万であった。
<ダイシング用粘着フィルムの作製>
上記のようにして得られた各(メタ)アクリル系ポリマー100部と、架橋剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製,商品名:コロネートL)0.1部と、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリティー・ケミカルズ社製,商品名:イルガキュア−184)0.5部とを混合し、各放射線硬化性粘着剤組成物を調製した。
上記のようにして得られた各(メタ)アクリル系ポリマー100部と、架橋剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製,商品名:コロネートL)0.1部と、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリティー・ケミカルズ社製,商品名:イルガキュア−184)0.5部とを混合し、各放射線硬化性粘着剤組成物を調製した。
次に、上記のようにして得られた各放射線硬化性粘着剤組成物を、ポリエチレンテレフタレート製セパレータ(厚み:38μm)上に厚さが10μmとなるように塗布して粘着剤層を形成した後、100℃で3分間加熱した。その後、粘着剤層に、片面にコロナ放電処理が施されたポリオレフィン製フィルム(厚み:100μm)を貼り合わせた。貼り合せた試料を40℃の恒温槽に72時間保存して、各ダイシング用粘着フィルムを作製した。
上記のようにして作製した各ダイシング用粘着フィルムを用いて、以下の評価を行った。表1に各(メタ)アクリル系ポリマーの組成、ベースポリマーの溶解度パラメータ及びガラス転移温度、並びに評価結果を併せて示す。
[評価]
(放射線による硬化前の粘着力)
25mm幅の短冊状に切断したダイシング用粘着フィルムを、鏡面研磨処理直後の5インチのシリコンミラーウェハに、23℃の雰囲気下で貼り付け、これを室温雰囲気下で30分間静置した測定試料を作製した。この測定試料の粘着力を測定し、以下の基準で硬化前の粘着力を評価した。粘着力の測定条件は、剥離角度180°、剥離速度300mm/分、温度23±3℃とした。
○:粘着力の測定値が、0.5N/10mm以上
×:粘着力の測定値が、0.5N/10mm未満
(放射線による硬化前の粘着力)
25mm幅の短冊状に切断したダイシング用粘着フィルムを、鏡面研磨処理直後の5インチのシリコンミラーウェハに、23℃の雰囲気下で貼り付け、これを室温雰囲気下で30分間静置した測定試料を作製した。この測定試料の粘着力を測定し、以下の基準で硬化前の粘着力を評価した。粘着力の測定条件は、剥離角度180°、剥離速度300mm/分、温度23±3℃とした。
○:粘着力の測定値が、0.5N/10mm以上
×:粘着力の測定値が、0.5N/10mm未満
(放射線による硬化後の粘着力)
25mm幅の短冊状に切断したダイシング用粘着フィルムを、鏡面研磨処理直後の5インチのシリコンミラーウェハに、23℃の雰囲気下で貼り付け、これを室温雰囲気下で5日間静置した測定試料を作製した。この測定試料のダイシング用粘着フィルムの基材側から紫外線(照射強度:300mJ/cm2)を照射し、照射後の粘着力を上記の放射線による硬化前の粘着力と同様にして測定し、以下の基準で硬化後の粘着力を評価した。
○:粘着力の測定値が、0.2N/10mm未満
△:粘着力の測定値が、0.2N/10mm以上、0.4N/10mm以下
×:粘着力の測定値が、0.4N/10mm超
25mm幅の短冊状に切断したダイシング用粘着フィルムを、鏡面研磨処理直後の5インチのシリコンミラーウェハに、23℃の雰囲気下で貼り付け、これを室温雰囲気下で5日間静置した測定試料を作製した。この測定試料のダイシング用粘着フィルムの基材側から紫外線(照射強度:300mJ/cm2)を照射し、照射後の粘着力を上記の放射線による硬化前の粘着力と同様にして測定し、以下の基準で硬化後の粘着力を評価した。
○:粘着力の測定値が、0.2N/10mm未満
△:粘着力の測定値が、0.2N/10mm以上、0.4N/10mm以下
×:粘着力の測定値が、0.4N/10mm超
(ピックアップ性)
厚さ100μmの5インチのシリコンミラーウェハを鏡面研磨処理した後、直ちに23℃の雰囲気下で研磨面にダイシング用粘着フィルムを貼り付けた。次に、この粘着フィルムが貼付されたウェハに洗浄水を供給しながらウェハを3mm×3mmの大きさにフルカットした。
次に、ダイシング用粘着フィルムの基材側から紫外線(照射強度:300mJ/cm2)を照射し、エキスパンドした後、半導体素子を粘着フィルムから剥離して、ピックアップした。任意の半導体素子50個をピックアップしたときに、全ての半導体素子のピックアップが成功した場合を、○、1〜5個の半導体素子を正常にピックアップできなかった場合を、△、6個以上の半導体素子を正常にピックアップできなかった場合を、×として、ピックアップ性を評価した。
厚さ100μmの5インチのシリコンミラーウェハを鏡面研磨処理した後、直ちに23℃の雰囲気下で研磨面にダイシング用粘着フィルムを貼り付けた。次に、この粘着フィルムが貼付されたウェハに洗浄水を供給しながらウェハを3mm×3mmの大きさにフルカットした。
次に、ダイシング用粘着フィルムの基材側から紫外線(照射強度:300mJ/cm2)を照射し、エキスパンドした後、半導体素子を粘着フィルムから剥離して、ピックアップした。任意の半導体素子50個をピックアップしたときに、全ての半導体素子のピックアップが成功した場合を、○、1〜5個の半導体素子を正常にピックアップできなかった場合を、△、6個以上の半導体素子を正常にピックアップできなかった場合を、×として、ピックアップ性を評価した。
表1から明らかなように、9.6(cal/cm3)1/2以上、10.0(cal/cm3)1/2以下の溶解度パラメータを有するベースポリマーを用いて合成された(メタ)アクリル系ポリマーを含有する粘着剤層を備えた実施例のダイシング用粘着フィルムは、放射線による硬化前では高い粘着力を有し、且つ放射線による硬化後では粘着力が著しく低下することが分かる。また、実施例のダイシング用粘着フィルムを用いた場合、ピックアップ工程において、優れた軽剥離性を有することが分かる。さらに、ベースポリマーのガラス転移温度が225以上、228K未満の範囲内であれば、より軽剥離性に優れたダイシング用粘着フィルムが得られることが分かる。また、共重合モノマー成分として、炭素数8の(メタ)アクリル系モノマーと、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーとのみを含有するベースポリマーから合成された(メタ)アクリル系ポリマーを含む粘着剤層を備えたダイシング用粘着フィルムは、他の共重合モノマー成分を含有するベースポリマーから合成された(メタ)アクリル系ポリマーを含む粘着剤層を備えたダイシング用粘着フィルムに比べて、軽剥離性に優れていることが分かる。
これに対して、溶解度パラメータが高すぎるベースポリマーを用いて合成された(メタ)アクリル系ポリマーを含有する粘着剤層を備えたダイシング用粘着フィルムは、ピックアップ性が劣ることが分かる。これは、ベースポリマーの水酸基数が多くなりすぎ、そのため放射線反応性化合物や架橋剤と未反応の水酸基が(メタ)アクリル系ポリマーに残存し、その結果、活性面を有する半導体ウェハのダイシングにこのダイシング用粘着フィルムを用いた場合、水酸基と活性原子との結合により粘着力が十分に低減されなかったためと考えられる。一方、溶解度パラメータが低すぎるベースポリマーを用いて合成された(メタ)アクリル系ポリマーを含有する粘着剤層を備えたダイシング用粘着フィルムも、ピックアップ性に劣ることが分かる。これは、ベースポリマーの水酸基数が少ないため、(メタ)アクリル系ポリマーに導入される放射線反応性炭素−炭素二重結合が少なくなり、硬化性が低下したためと考えられる。なお、ガラス転移温度が225以上、228K未満の範囲内であっても、溶解度パラメータが範囲外の場合、同様にピックアップ性に劣ることが分かる。
1 ダイシング用粘着フィルム
2 基材
3 粘着剤層
4 セパレータ
2 基材
3 粘着剤層
4 セパレータ
Claims (6)
- 側鎖及び/または末端に放射線反応性炭素−炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系ポリマーを含有する放射線硬化性粘着剤組成物であって、
前記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するベースポリマーは、9.6(cal/cm3)1/2以上、10.0(cal/cm3)1/2以下の溶解度パラメータを有する放射線硬化性粘着剤組成物。 - 前記ベースポリマーは、225K以上、228K未満のガラス転移温度を有する請求項1に記載の放射線硬化性粘着剤組成物。
- 前記ベースポリマーは、炭素数8以上の直鎖または分岐アルキル基含有(メタ)アクリル系モノマーと、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーとを共重合モノマー成分として少なくとも含有する請求項1または2に記載の放射線硬化性粘着剤組成物。
- 基材と、前記基材の少なくとも一方の面に粘着剤層とを有するダイシング用粘着フィルムであって、
前記粘着剤層は、架橋剤と、光重合開始剤と、請求項1〜3のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル系ポリマーとを含む放射線硬化性粘着剤組成物を含有するダイシング用粘着フィルム。 - 被加工物の一面に請求項4に記載のダイシング用粘着フィルムを貼付し、
前記ダイシング用粘着フィルムが貼付された被加工物を切断して切断片に分離し、
前記切断片に貼付されている粘着剤層に放射線を照射して前記粘着剤層の粘着力を低下させ、
前記粘着力を低下させたダイシング用粘着フィルムから前記切断片をピックアップする切断片の製造方法。 - 前記被加工物は、活性面を有する半導体ウェハである請求項5に記載の切断片の製造方法。
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