JP2011070301A - 設備評価システム - Google Patents
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Abstract
【課題】設備の使用時に起こりうる場面での人体への危害の程度を評価する際に、危害の程度を実時間で視覚化して表示することを可能にする。
【解決手段】人体モデル生成部3は、コンピュータを用いて構築された仮想空間に配置される人体モデルを生成し、仮想空間生成部VRは、設計した設備を人体モデルとともに仮想空間に配置し人体モデルの動きを指示する。仮想空間における人体モデルの動きはモニタ装置1に表示される。衝撃評価部6は、着目部位が設備に衝突したときの初速と設備を形成する材料との組み合わせに加速度の時間変化を対応付けた加速度記憶部6cを有し、着目部位が設備に衝突したときの初速と設備を形成する材料との条件を加速度記憶部6cに照合することにより得られる加速度の時間変化に基づいて、人体の着目部位が受ける衝撃荷重の最大値に相当する評価値を求め、この評価値により危害の程度を評価する。
【選択図】図1
【解決手段】人体モデル生成部3は、コンピュータを用いて構築された仮想空間に配置される人体モデルを生成し、仮想空間生成部VRは、設計した設備を人体モデルとともに仮想空間に配置し人体モデルの動きを指示する。仮想空間における人体モデルの動きはモニタ装置1に表示される。衝撃評価部6は、着目部位が設備に衝突したときの初速と設備を形成する材料との組み合わせに加速度の時間変化を対応付けた加速度記憶部6cを有し、着目部位が設備に衝突したときの初速と設備を形成する材料との条件を加速度記憶部6cに照合することにより得られる加速度の時間変化に基づいて、人体の着目部位が受ける衝撃荷重の最大値に相当する評価値を求め、この評価値により危害の程度を評価する。
【選択図】図1
Description
本発明は、主として住宅設備の設計段階においてリスクの可能性を評価するために、コンピュータグラフィックスを用いてリスクの視覚化を可能にした設備評価システムに関するものである。
近年、消費生活用製品に関してリスクアセスメントの実施が求められている。リスクアセスメントの実施には、図7に示すように、危害の発生頻度と危害の程度との組み合わせによるリスクのレベルを規定し、発生するおそれがある危害についてリスクのレベルが低減可能か否かを判断する必要がある。リスクアセスメントにおいては、開発時点の技術水準で技術的および経済的に実現性を判断するから、製品の設計段階から、リスクの除去や低減のための安全対策を行うことが必要である。
なお、図7においては、A領域は許容できない領域であって、この領域は危害の程度や発生頻度を低減してリスクを低減できない場合には製品化を断念すべき領域である。また、B領域は最低限のリスクまで低減すべき領域であり、C領域は受け入れ可能な領域である。
このような観点から、キッチンセットやユニットバスのような住宅設備では、転倒などによって衝突する頻度や衝突による危害(けが)の程度を考慮した設計が必要である。衝突する可能性は、転倒時だけではなく、通常の歩行中に住宅設備に衝突する場合があり、また屈んだ姿勢から立ち上がる際に、頭部が住宅設備に衝突する可能性もある。衝突に伴う人体への危害の程度を見積もるには、人体に作用する衝撃荷重を見積もる必要がある。
そこで、人体に外力が作用したときに人体に生じる応力を評価するために、コンピュータシミュレーションを用いる技術が提案されている(たとえば、特許文献参照)。特許文献1に記載の技術は、人間が乗車している車両が障害物に接触することによって、車両に衝撃が加わったときに、人間の各部位に生じる荷重をコンピュータシミュレーションにより解析することを目的にしている。
特許文献1では、車両に加わった衝撃に対して人体の各部位に生じる応力を推定するために、剛体系筋骨格モデルから有限要素人体モデルに、筋に関する情報と、外力および境界条件に関する情報と、変位、速度、加速度に関する情報とを提供し、これらの情報に基づいて応力の推定を行っている。
特許文献1に記載の技術は、車両に加わった衝撃に対して人体の各部位に生じる応力を推定するコンピュータシミュレーションを行うために、剛体系筋骨格モデルから有限要素人体モデルに情報を提供するという技術を採用している。したがって、衝撃の作用に伴う剛体系筋骨格モデルの変形から、人体モデルに作用する負荷を算出する必要があり、膨大な演算を行うことが必要になる。
たとえば、コンピュータのモニタ装置に表示した人体モデルを実時間、つまりリアルタイムで動作させるとともに、衝突に伴って生じる危害の程度を人体モデルに実時間で表示しようとすれば、特許文献1に記載の技術では、処理能力の高いハードウェア資源が必要になるという障害がある。
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、コンピュータシミュレーションによって設備の使用時に起こりうる場面での人体への危害の程度を評価する際に、人体モデルに作用する負荷を演算して求める場合に比較して処理負荷が大幅に低減可能となるようにデータを構成し、もって危害の程度をコンピュータグラフィックスで視覚化して表示する際に実時間(リアルタイム)での表示を可能とする設備評価システムを提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するために、コンピュータを用いて構築された仮想空間に配置される人体モデルを生成する人体モデル生成部と、設計した設備を人体モデルとともに仮想空間に配置し人体モデルの動きを指示する仮想空間生成部と、仮想空間における人体モデルの動きを表示するモニタ装置と、仮想空間内において人体モデルの着目部位が設備に衝突したときに着目部位が受ける衝撃荷重を用いて人体の受ける危害の程度を評価する衝撃評価部とを有し、衝撃評価部は、着目部位が設備に衝突したときの初速と設備を形成する材料との組み合わせに加速度の時間変化を対応付けた加速度記憶部を有し、着目部位が設備に衝突したときの初速と設備を形成する材料との条件を加速度記憶部に照合することにより得られる加速度の時間変化に基づいて、人体の着目部位が受ける衝撃荷重の最大値に相当する評価値を求め、この評価値により危害の程度を評価することを特徴とする。
着目部位を人体の頭部とする場合、衝撃評価部は、頭部が設備に衝突したときの初速を人体モデルの動きの種類に対応付けてあらかじめ格納した初速記憶部と、人体モデルの属性に頭部の質量を対応付けてある質量記憶部とを有し、仮想空間生成部に指示された人体モデルの動きの種類を初速記憶部に照合することにより求められる初速を加速度記憶部との照合に用い、人体モデルの属性を質量記憶部に照合して抽出した頭部の質量と加速度記憶部から求めた加速度とから人体の頭部が受ける衝撃荷重を求めることにより人体の頭部が受ける危害の程度を評価することが望ましい。
また、加速度記憶部は、初速と材料とに加えて設備に人体が衝突する際の角度を加速度の時間変化に対応付け、衝撃評価部は、着目部位が設備に衝突したときの初速と衝突の角度と設備を形成する材料との条件を加速度記憶部に照合することにより得られる加速度の時間変化に基づいて、危害の程度を評価するようにしてもよい。
本発明の構成によれば、コンピュータシミュレーションによって設備の使用時に起こりうる場面での人体への危害の程度を評価する際に、設備に人体の着目部位が衝突する際の初速と設備を構成する材料とに加速度の時間変化を対応付けた加速度記憶部を設け、設備に対して人体に起こりうる場面で設備に衝突する際の初速に基づいて、人体の着目部位の加速度の時間変化を求め、さらに、加速度の時間変化から人体の着目部位に作用する衝撃荷重の最大値に相当する評価値を求めているから、結果的に評価値により危害の程度を評価することが可能になる。すなわち、設備を設けた場合に人体の着目部位に起こりうる場面での危害の程度を、当該場面での衝突時の所得を加速度記憶部に照合するという簡単な処理で、人体の着目部位に生じる危害の程度を評価することができるから、演算して評価する場合に比較すると処理負荷が大幅に低減され、危害の程度をコンピュータグラフィックスで視覚化して表示する際に実時間での表示が可能になる。
また、衝撃評価部に初速記憶部と質量記憶部とを設けた構成では、場面に応じた初速を与えることができるとともに、人体について身長や性別や年齢のような属性を用いて評価値を調節することが可能になり、頭部への危害の程度を簡単な処理で精度よく評価することが可能になる。
さらに、加速度記憶部において設備に人体が衝突する際の初速および材料と合わせて角度を考慮しているから、人体の着目部位が設備に衝突したときの危害の程度をさらに精度よく評価することが可能になる。
以下に説明する実施形態では、主として住宅に設置される製品(以下、「住宅設備」という)に関するリスクアセスメントを実施する場合について例示し、とくに、住宅での様々な場面において住宅設備と衝突したときに人体が受ける衝撃荷重を評価する技術について説明する。住宅設備としては、キッチンセット、ユニットバス、便器、洗面台、階段セット、バルコニーなどを想定している。
これらの住宅設備に人が衝突する場合としては、歩行中の不注意による場合(原因が「歩行」の場合)のほか、ユニットバスでは足が滑った場合(原因が「転倒」の場合)、キッチンセットや洗面台では引出や扉が開いているのに気付かずに屈んだ姿勢から立ち上がった場合(原因が「起立」の場合)など、種々の場面が考えられる。
上述のような住宅設備の設計段階においてリスクアセスメントを実施する場合、住宅設備に対して起こりうる場面と当該場面の発生頻度とを予測し、当該場面が起きたときに人体が受ける衝撃荷重の大きさを見積もることが有効である。本実施形態では、衝撃荷重の大きさを見積もるために、コンピュータシミュレーションを用いる技術を提供する。
すなわち、本実施形態では、コンピュータを用いて構築した3次元の仮想空間に、設計しようとする住宅設備を配置し、配置した住宅設備を使用するときに人に起こりうる場面を想定して仮想空間に配置した人体モデルに当該場面に応じた動きを模擬させ、このときに人体モデルの着目部位が受ける衝撃荷重を求める構成を採用している。求めた衝撃荷重により人体が受ける危害の程度を知ることができるから、予測した場面の発生頻度と衝撃荷重との組み合わせによりリスクのレベルを知ることが可能になる。また、衝撃荷重の程度を実時間でモニタ装置に表示することにより、リスクの程度を可視化する。
以下では、仮想空間に配置した人体モデルを用いて衝撃荷重を見積もる構成について説明する。一般に、衝撃荷重は物体に衝突した後の時間経過に伴って変化し、人体に及ぶ危害の程度は衝撃荷重のピーク値と衝撃荷重の作用している時間とに依存する。また、衝撃荷重の時間変化は、人体が衝突した物体の材質(とくに、ばね定数および減衰定数)および形状と、人体が物体に衝突したときの初速と、物体に衝突した部位の質量とに依存する。
本実施形態では、人体に及ぶ危害の程度を見積もる際に、物体の形状はとくに考慮していない。すなわち、物体を形成する材料と、人体が物体に衝突したときの初速および衝突部位の質量とをパラメータに用いる。なお、初速は、身長に依存する場合もあるので、身長をパラメータに加えてもよい。
コンピュータは、以下に説明する機能を実現するプログラムを実行し、住宅設備および人体モデルを含む仮想空間をモニタ装置1(図1参照)に表示する。また、コンピュータに設けた入力装置2(図1参照)としてのキーボードおよびマウスを用いることにより、以下に説明する各種の条件を指定することが可能になっている。入力装置2は、仮想空間を生成するためのデータを外部装置から読み込むためのインターフェイスも含んでいる。インターフェイスは、外部記憶装置のような周辺装置を接続するためのインターフェイスと、別のコンピュータとの間でデータ通信を行うためのインターフェイスとを含む。
モニタ装置1に表示する仮想空間は、図1に示す仮想空間生成部VRが生成する。仮想空間生成部VRは、人体モデルにより衝撃荷重を評価しようとする場面を設定する機能を有し、人体モデルを衝突させる物体(本実施形態では、住宅設備)について、コンピュータグラフィックスの技術を用いて形状や材質を設定することが可能になっている。また、評価する場面に応じた人体モデルの動きを指定する。仮想空間に配置する住宅設備のデータは、CADによる設計データを用いる。すなわち、住宅設備の設計データを用いることにより、設計品に関する評価がただちにできるように構成されている。
人が住宅設備に衝突する際に想定される動き(衝突の原因)には、上述のように歩行、転倒、起立などがあり、このような動きを人体モデルで模擬するために、本装置では、図1に示すように、人体モデルの動きを制御するためのデータを登録したモーションデータベースDB1を備えている。モーションデータベースDB1には、想定される動きに応じて、時間経過に伴う人体モデルの標準の動きを規定する動きデータがあらかじめ登録される。
人体モデルには有限要素モデルを用いる。人体モデルをモニタ装置1に表示する際に人体の外観を形成するために、人体モデルの表面には皮膚あるいは衣服の外観を模した適宜のテクスチャがマッピングされる。人体モデルに関する体形の決定および姿勢の制御と、人体モデルへのテクスチャのマッピングとは、人体モデル生成部3において行う。
人体モデル生成部3は、人体モデルの体形について身長(性別、年齢、体重も体形に含めてもよい)の指定が可能であり、入力装置2を用いて身長が入力されると、人体モデル生成部3では、身長に応じた人体モデルの標準の体形を設定する。また、人体モデル生成部3により人体モデルの関節の角度を与えることにより、人体モデルの姿勢が規定される。したがって、関節の角度を時間経過に伴って変化させれば、人体モデルに動きを付与することができる。
上述したモーションデータベースDB1に登録する動きデータは、一連の動きに関して時間経過に伴う関節の角度変化をひとまとまりにしたものであり、動きデータごとに動きの名称が対応付けられている。モーションデータベースDB1の動きデータは、仮想空間生成部VRに指示されたシナリオに従ってデータ照合部4が読み出す。
すなわち、仮想空間生成部VRは、入力装置2から指定された場面に応じて、仮想空間に住宅設備および人体モデルを配置するとともに人体モデルの動きを指定する。シナリオは、配置と動きとを含む。配置としては、人体モデルが始動する際の住宅設備との距離や向きが指定され、動きとしては、当該住宅設備に対して人体モデルに起こりうる動きが指定される。
仮想空間生成部VRでは、シナリオのうちの配置について、住宅設備の種類に応じたデフォルトの値を規定しており(たとえば、キッチンユニットでは距離が50cmで正面向き、ユニットバスでは距離が80cmで後ろ向きなど)、シナリオのうち動きについて、住宅設備の種類に応じた範囲を規定している(たとえば、キッチンユニットでは歩行・転倒、ユニットバスでは転倒など)。仮想空間生成部VRに規定されるシナリオは、入力装置2からの指示によってデフォルトの値ではない値に調節することができる。
モーションデータベースDB1から読み出された動きデータは動き調整部5に入力される。動き調整部5では、動きデータにおける関節の角度の組み合わせを人体モデル生成部3に与える際に、時間間隔を調節することによって、人体モデルの動きの速さを変化させることが可能になっている。時間間隔は入力装置2からの指示により仮想空間生成部VRが設定する。
上述した人体モデルを用いて衝撃荷重を評価するには、上述したように、人体が衝突する物体の材料と、衝突の際の初速と、人体における衝突部位の質量とが必要である。以下の説明では、人体の頭部が設計した住宅設備に衝突する場合を想定し、住宅設備を構成する材料の種類と、人体の動きに応じた衝突時の初速と、人体の頭部の質量とを用いて、頭部が受ける衝突衝撃をが見積もる場合を例とする。頭部への衝突荷重の算出は衝撃評価部6において行う。
住宅設備を構成する材料の種類は、金属(鉄)、木材、ゴムの3種類を想定し、動きに応じた衝突時の初速は表1のように設定する。表1に示すデータは、実測値などに基づいて決定され、衝撃荷重の評価を行う前に、衝撃評価部6に設けた初速記憶部6aに格納される。
表1において、「転倒」のカテゴリについて、「つまづき」は前向きに倒れかかること、「ふらつき」は横向きに倒れかかること、「スリップ」は後ろ向きに倒れかかることであり、これらは実際に転倒するのではなく転倒しそうになる場合を示しているが、「ころぶ」は実際に転倒する場合を示している。「起立」は、立ち上がるときに物体に衝突することを意味している。
また、表1の「歩行」のカテゴリにおいて、「70歳・女性+杖」は杖を持った70歳の女性、「60歳・男性+杖」は杖を持った60歳の男性、「50歳・女性+子供」は両腕で子供を抱いた50歳の女性、「50歳・女性=病人」は50歳の女性の病人を意味する。
表1の衝突の原因は一例であって、さらに様々な衝突の原因に関して初速を設定するのが望ましい。また、初速記憶部6aに記憶されている初速は基準値であり、衝撃荷重を評価する際には条件に応じた補正が必要である。とくに、転倒時には、転倒時の物体との距離や身長に応じて初速が変化するから、衝撃荷重を求める際には、仮想空間生成部VRで規定されたシナリオに従って初速記憶部6aに格納された初速を補正する。
衝撃評価部6では、住宅設備に頭部が衝突したときの初速を人体の動きに応じて求めた後、この初速から加速度を求める。すなわち、頭部に採用する衝撃荷重fは、頭部の質量をm、頭部に作用する加速度をaとすれば、f=maであって、頭部の質量は人体モデルを規定する体格により決まるから、加速度aを初速から求めることにより、衝撃荷重fを評価することができる。
ただし、加速度は物体に対して頭部が衝突する角度によって変化するから衝突の角度を考慮する必要がある。もっとも、衝突の角度を考慮すると議論が複雑になるので、まず物体の表面に対して頭部が法線方向(つまり、正面)から衝突する場合について説明する。また、加速度は衝突からの時間経過に応じて変化するから、衝撃荷重fを評価するには、衝突後の加速度の最大値を求める必要がある。図2〜図4は、物体の正面に頭部が衝突し、初速が2.0〔m/s〕であるという条件で、物体が鉄、木材、ゴムである場合の加速度の時間変化をそれぞれ示している。鉄、木材、ゴムの属性は、減衰係数と弾性係数とを適宜に与えることにより設定している。
図によれば、鉄のような剛性材料(減衰係数が小さく弾性係数が大きい材料)では加速度の最大値が大きく加速度が減衰する時間が短くなるが、ゴムのような弾性材料(減衰係数が大きく弾性係数が小さい材料)では加速度の最大値が小さく加速度が減衰する時間が長くなっている。また、頭部が物体に衝突してから加速度が減衰する(略零になる)までの時間は図によれば10〔ms〕以下であるから、頭部が物体に衝突してから15〔ms〕程度の期間について加速度の変化を求めることによって、加速度の最大値を求めることが可能である。
ところで、加速度はベクトルであるから、物体の正面から頭部が衝突する場合でも、頭部が物体に衝突してから加速度が減衰するまでには、加速度の大きさだけではなく、加速度の向きも変化する。物体の正面から頭部が衝突する場合は、加速度の成分として、物体表面の法線方向の成分と、物体表面に沿った重力方向の成分とを考慮すればよいから、前者をax、後者をayとして、加速度aの成分を(ax,ay)と表すことができる。したがって、加速度aの大きさは、|a|=(ax2+ay2)1/2と表すことができる。すなわち、図2〜図4は、|a|に関する時間変化を示したものである。
したがって、加速度aの大きさ|a|を用いると、頭部の質量を一定とすれば、数1で定義する評価値HICにより人体に作用する衝撃荷重を評価することが可能になる。たとえば、頭部の質量として、人体の実測値に基づく標準値(たとえば、平均値)を規定している場合には、HICの大きさのみで頭部への衝撃荷重を評価することができる。
たとえば、HICが500以上である場合の危害の程度を「通院加療」が必要な程度に対応付けるように規定しているとすれば、このような事象の発生頻度は、「まず起こりえない」という程度でなければならないから、発生頻度が「起こりそうにない」程度よりも多い事象に対しては、HICが500未満になるように、設計段階において形状や材質を選択することで、設計段階からのリスクアセスメントが可能になる。
なお、性別や年齢の相違に応じて頭部の質量を考慮する場合には、数1で求めたHICに頭部の質量を乗じた値を用いる。この場合、衝撃評価部6には、頭部の質量の標準値(平均値)を、年齢、性別、体重に対応付けた質量記憶部6bを設けておき、年齢、性別、体重をパラメータとして入力装置2から与えると、質量記憶部6bから該当する頭部の質量を抽出するようにしておけばよい。また、数1で求められるHICに頭部の質量を乗じるのではなく、年齢、性別、体重に応じて求めた頭部の質量と頭部の質量の標準値との比をHICに乗じた値を用いて、危害の程度を評価してもよい。頭部の質量の標準値に対応付ける人体の属性は、年齢、性別、体重以外であってもよく、たとえば、身長、胸囲、胴囲などを用いることも可能である。
ところで、住宅設備に頭部が衝突したときの衝撃荷重を評価する値としてHICを求めるには、加速度aの成分(ax,ay)が必要である。また、加速度aの成分(ax,ay)は、衝突時の初速と住宅設備の材料とに依存する。しかも、加速度aの成分(ax,ay)は時間経過に伴って変化する。初速および材料を与えることにより加速度aの成分(ax,ay)の時間変化をコンピュータの演算により算出することは可能であるが、この演算のための処理負荷は非常に大きい。
そこで、衝撃評価部6において、初速と材料との組み合わせごとに、加速度aの成分(ax,ay)の一定時間(たとえば、0.1〔ms〕)毎の時間変化をあらかじめ算出したデータを登録した加速度記憶部6cを設けている。
加速度記憶部6cには、たとえば表2〜表4のような形式で加速度aの成分(ax,ay)の時間変化が保存される。表2〜表4は、それぞれ材料が鉄、木、ゴムである場合を示しており、各表では、初速を0.2〔m/s〕刻みで複数段階に区分し、各初速に応じた加速度aの成分(ax,ay)の時間変化については、上述した一定時間ごとの成分(ax,ay)を示している。
初速は、表1に示すように、0.5〜2.5〔m/s〕程度が必要であるが、表2〜表4では、初速が1.0〜3.0〔m/s〕の場合について示している。また、0.2〔m/s〕刻みであるから、求めようとする初速が表2〜表4になければ、内挿あるいは外挿を行うことによって、求める初速に対する加速度aの成分(ax,ay)の時間変化を算出する。また、初速の刻み幅や加速度aの成分(ax,ay)の時間間隔は適宜に設定することが可能である。
上述の動作例では、頭部が物体の正面から衝突する場合について説明したが、頭部が物体に衝突する際には、実際には正面から衝突するとは限らないから、頭部が物体に衝突する際の角度も考慮する必要がある。つまり、角度を段階的に区分し(たとえば、10度刻みで区分する)、表2〜表4のように加速度aの成分(ax,ay)の時間変化を登録したデータが区分した角度毎に必要になる。角度は、上下方向(仰角、俯角)と左右方向(方位角)とについて考慮するが、方位角は左右対称であるときには90度分でよく、仰角あるいは俯角についても物体の形状に応じて角度範囲には制限があるから、データ量が無制限に大きくなることはない。
以上説明したように、衝撃評価部6には、初速、物体の材料の組み合わせごとに加速度の時間変化を表す値を格納した加速度記憶部6cを設けてあるから、頭部が物体(住宅設備)に衝突したときに頭部が受ける衝撃荷重を評価するにあたって、初速および材料を加速度記憶部6cに照合し、対応する加速度の時間変化を抽出すれば、加速度の時間変化をほぼ実時間で求めることができる上に、簡単な演算でHICを求めることができる。
すなわち、人体モデルの動きの条件や住宅設備の設計を変更するたびに、衝撃荷重を求めるための複雑な演算を行う必要がなく、ほぼ実時間、つまりリアルタイムで衝撃荷重を求めることが可能になる。その結果、モニタ装置1の画面に表示される人体モデルの動きに合わせたタイミングでHICに対応する衝撃荷重を評価し、衝突に伴って人体が受ける危害の程度をモニタ装置1の画面上に瞬時に表示することが可能になる。
なお、物体に衝突するときの角度を考慮する場合は、加速度記憶部6cにおいて、初速と物体の材料とに対応する加速度の時間変化の組を衝突の角度別に設け、角度の照合も行えばよい。
図5および図6にモニタ装置1の画面への表示例を示す。図5において住宅設備EQは模式化して壁状として示してある。また、人体モデルHMが歩行によって住宅設備EQの正面から頭部HDを衝突させる場合を想定している。
すなわち、人体モデルHMは、初期状態では、図5(a)のように、住宅設備EQの正面に立っており、次に歩行によって図5(b)のように、住宅設備EQに頭部HDを衝突させるものとする。人体モデルHMの頭部HDが衝突すると、モニタ装置1の画面上に星状のイラストIM1が表示され、本装置の操作者は衝突した瞬間を知ることができる。
衝突後に入力装置1を用いて結果を示すように指示すれば、衝突による衝撃荷重の程度が、図6(a)のような形態で示される。図示例では、頭部HDの衝突箇所に衝突したことを示すイラストIM2が表示されている。このイラストIM2は、衝撃荷重の大きさによって色分けされ、たとえば、危害の程度が、「通院加療」以上であれば赤色で表示され、「軽傷」以下であれば緑で表示される。このようにして、衝撃荷重の大きさを色別で表示することにより、操作者は危害の程度を直感的に知ることができる。ここに、衝撃荷重の大きさを色で示すほか、イラストIM2の形で表現することも可能である。
さらに、入力装置2を用いて詳細な情報を提示するように指示すれば、図6(b)のように、モニタ装置1の画面に情報ウインドウWが開き、頭部HDが住宅設備EQに衝突してからの時間経過に伴う加速度の変化がグラフで表示されるとともに、数1で示したHICの値が湿される。したがって、情報ウインドウWの内容によって衝撃荷重の定量的な評価を確認することが可能になる。図示例では、住宅設備EQの材料が木である場合を示している。
なお、上述した実施形態では、頭部に対する衝撃荷重に本発明の技術を適用する例について説明したが、膝、脚、肩など人体の適宜の着目部位について、同様の技術を採用することが可能である。
1 モニタ装置
2 入力装置
3 人体モデル生成部
4 データ照合部
5 動き調整部
6 衝撃評価部
6a 初速記憶部
6b 質量記憶部
6c 加速度記憶部
DB1 モーションデータベース
VR 仮想空間生成部
2 入力装置
3 人体モデル生成部
4 データ照合部
5 動き調整部
6 衝撃評価部
6a 初速記憶部
6b 質量記憶部
6c 加速度記憶部
DB1 モーションデータベース
VR 仮想空間生成部
Claims (3)
- コンピュータを用いて構築された仮想空間に配置される人体モデルを生成する人体モデル生成部と、設計した設備を人体モデルとともに仮想空間に配置し人体モデルの動きを指示する仮想空間生成部と、仮想空間における人体モデルの動きを表示するモニタ装置と、仮想空間内において人体モデルの着目部位が設備に衝突したときに着目部位が受ける衝撃荷重を用いて人体の受ける危害の程度を評価する衝撃評価部とを有し、衝撃評価部は、着目部位が設備に衝突したときの初速と設備を形成する材料との組み合わせに加速度の時間変化を対応付けた加速度記憶部を有し、着目部位が設備に衝突したときの初速と設備を形成する材料との条件を加速度記憶部に照合することにより得られる加速度の時間変化に基づいて、人体の着目部位が受ける衝撃荷重の最大値に相当する評価値を求め、この評価値により危害の程度を評価することを特徴とする設備評価システム。
- 前記着目部位は人体の頭部であって、前記衝撃評価部は、頭部が設備に衝突したときの初速を人体モデルの動きの種類に対応付けてあらかじめ格納した初速記憶部と、人体モデルの属性に頭部の質量を対応付けてある質量記憶部とを有し、前記仮想空間生成部に指示された人体モデルの動きの種類を初速記憶部に照合することにより求められる初速を前記加速度記憶部との照合に用い、人体モデルの属性を質量記憶部に照合して抽出した頭部の質量と加速度記憶部から求めた加速度とから人体の頭部が受ける衝撃荷重を求めることにより人体の頭部が受ける危害の程度を評価することを特徴とする請求項1記載の設備評価システム。
- 前記加速度記憶部は、初速と材料とに加えて設備に人体が衝突する際の角度を加速度の時間変化に対応付けてあり、前記衝撃評価部は、着目部位が設備に衝突したときの初速と衝突の角度と設備を形成する材料との条件を加速度記憶部に照合することにより得られる加速度の時間変化に基づいて、危害の程度を評価することを特徴とする請求項1又は2記載の設備評価システム。
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2009
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