JP2011068182A - 車両の制動制御装置 - Google Patents

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Ryuzo Tsuruhara
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豊 濱本
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Abstract

【課題】アンチロックブレーキ制御中において第1の電磁弁の動作態様を調整し、車両の挙動の更なる安定化に貢献できる車両の制動制御装置を提供する。
【解決手段】ECUは、ABS制御中において、圧力センサからの検出信号に基づきホイールシリンダ内の実WC圧Pwc_rを取得すると共に、増圧弁及び減圧弁の駆動態様に基づきホイールシリンダ内の推定WC圧Pwc_eを取得する。そして、ECUは、実WC圧Pwc_rと推定WC圧Pwc_eとの間に差がある場合(第7のタイミングt17)、差圧推定値ΔPdと増圧弁に対する指令電流値Idとの関係を示す特性マップを、実WC圧Pwc_rと推定WC圧Pwc_eとの間に差が小さくなるように補正する。
【選択図】図8

Description

本発明は、車両に搭載される車輪に対する制動力を制御するための車両の制動制御装置に関する。
一般に、車両には、運転手によるブレーキ操作に基づく車両制動時に、車輪のロックを抑制して車両の操舵性を確保するためのアンチロックブレーキ制御(「ABS制御」ともいう。)を実行し、ブレーキアクチュエータを制御する制動制御装置が設けられている。ブレーキアクチュエータは、運転手によるブレーキ操作に応じたマスタシリンダ圧を発生させるマスタシリンダと、車輪毎に設けられ、内部に発生したホイールシリンダ圧に応じた制動力を車輪に付与するためのホイールシリンダとを連通させる経路を備えている。この経路には、ホイールシリンダ内のホイールシリンダ圧(「WC圧」ともいう。)を増圧させる場合に開状態になる増圧弁(常開型の電磁弁)と、WC圧を減圧させる場合に開状態となる減圧弁(常閉型の電磁弁)とが設けられている。
そして、運転手によるブレーキ操作中にABS制御の開始条件が成立した場合、制動制御装置は、ABS制御を実行する。具体的には、制動制御装置は、ホイールシリンダ内のWC圧を減圧させるために、増圧弁を閉状態にすると共に減圧弁を開状態にする減圧制御を行なう。その後、制動制御装置は、ホイールシリンダ内のWC圧を徐々に増圧させるために、減圧弁を閉状態にすると共に増圧弁を閉状態から徐々に開状態にするリニア増圧制御を行なう。このとき、増圧弁に供給する指令電流値は、所定の特性マップに基づき設定される。なお、所定の特性マップとは、ホイールシリンダ内のWC圧とマスタシリンダ内のマスタシリンダ圧(「MC圧」ともいう。)との差圧の推定値(「差圧推定値」ともいう。)と、増圧弁に供給する指令電流値との関係を示すマップである(特許文献1参照)。
特開2007−91051号公報
ところで、増圧弁は、工場などで大量生産されるものである。そのため、各増圧弁の特性には、当然、ばらつきがある。また、増圧弁の特性は、その温度が変化したり、長期に亘って使用されたりすることにより変化することがある。さらに、ブレーキアクチュエータで用いられるブレーキ液に関しても、その特性(特に粘性)が時間の経過や液温の変化などに伴い変化することがある。そのため、ABS制御時における増圧制御時に、増圧弁に対する指令電流値を上記所定の特性マップに基づき設定したとしても、差圧推定値とホイールシリンダ内のWC圧とマスタシリンダ内のMC圧との実際の差圧とが乖離することがある。また、ABS制御中にブレーキ操作量が変更されると、マスタシリンダ内のMC圧が変化することになり、差圧推定値が実際の差圧から乖離することがある。こうした場合、車輪に付与する制動力を適切に調整できない。
こうした問題を解決する方法として特許文献1には、ブレーキ操作が開始されてからABS制御が開始されるまでの時間に基づき、ホイールシリンダ内のWC圧とマスタシリンダ内のMC圧との差圧推定値を補正する方法が記載されている。また、ABS制御中におけるブレーキ操作量の変化を検出した場合に、差圧推定値を補正する方法もまた記載されている。しかしながら、ホイールシリンダ内のWC圧及びマスタシリンダ内のMC圧が共に推定値であるため、差圧推定値の補正精度に改善の余地があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。その目的は、アンチロックブレーキ制御中において第1の電磁弁の動作態様を調整し、車両の挙動の更なる安定化に貢献できる車両の制動制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、車両の制動制御装置にかかる請求項1に記載の発明は、アンチロックブレーキ制御の開始条件が成立した場合に、車輪(FW,RW)に制動力を付与するためのホイールシリンダ(17f,17r)内のホイールシリンダ圧(Pwc_r)を減圧させる減圧制御及びホイールシリンダ圧(Pwc_r)を徐々に増圧させる増圧制御が繰り返されるように、ブレーキ操作に応じたマスタシリンダ圧(Pmc)を発生するマスタシリンダ(20f,20r)と前記ホイールシリンダ(17f,17r)との間に配置され且つ前記増圧制御時に開動作する第1の電磁弁(24f,24r)と、前記減圧制御時に開動作する第2の電磁弁(25f,25r)とを制御する車両の制動制御装置であって、前記マスタシリンダ(20f,20r)内のマスタシリンダ圧(Pmc)と前記ホイールシリンダ(17f,17r)内のホイールシリンダ圧(Pwc_r)との差圧推定値(ΔPd)及び前記第1の電磁弁(24f,24r)に対する指令電流値(Id)の関係を示す特性マップに基づき、前記第1の電磁弁(24f,24r)に供給する指令電流値(Id)を調整する電磁弁制御手段(16、S36,S37)を備えた車両の制動制御装置において、車両には、前記ホイールシリンダ(17f,17r)内のホイールシリンダ圧(Pwc_r)を検出するための圧力検出手段(SE4,SE5)が設けられており、前記圧力検出手段(SE4,SE5)からの検出信号に基づくホイールシリンダ圧(Pwc_r)と前記各電磁弁(24f,24r,25f,25r)の駆動態様に基づくホイールシリンダ圧推定値(Pwc_e)との間に差が生じる場合に、当該差が小さくなるように前記特性マップの補正、又は前記差が小さくなるように前記第1の電磁弁(24f,24r)の制御時に用いる特性マップの変更を行なう特性調整手段(16、S58)をさらに備えることを要旨とする。
上記構成によれば、アンチロックブレーキ制御中には、ホイールシリンダ内のホイールシリンダ圧推定値が推定されると共に、圧力検出手段からの検出信号に基づきホイールシリンダ内のホイールシリンダ圧が検出される。そして、ホイールシリンダ圧とホイールシリンダ圧推定値との間に差が生じた場合には、第1の電磁弁を作動させる際に用いる特性マップが補正される、又は第1の電磁弁の作動時に用いる特性マップが変更される。その結果、その後のアンチロックブレーキ制御には、車輪に対して適切な制動制御が実行される。したがって、アンチロックブレーキ制御中において第1の電磁弁の動作態様を調整することにより、車両の挙動の更なる安定化に貢献できる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両の制動制御装置において、前記圧力検出手段(SE4,SE5)からの検出信号に基づき取得された前記ホイールシリンダ(17f,17r)内のホイールシリンダ圧(Pwc_r)と前記ホイールシリンダ(17f,17r)内のホイールシリンダ圧推定値(Pwc_e)との間に差が発生する特性変化状態であるか否かを前記アンチロックブレーキ制御が実行される毎に判定する判定手段(16、S34,S41)をさらに備え、前記特性調整手段(16、S58)は、前記判定手段(16、S34,S41)によって前記特性変化状態であると判定される前記アンチロックブレーキ制御が規定回数(KCH1,KCH2)連続した場合に、前記特性マップの補正、又は前記第1の電磁弁(24f,24r)の制御時に用いる特性マップの変更を行なうことを要旨とする。
上記構成によれば、特性変化状態であると判定されたアンチロックブレーキ制御が規定回数連続した場合に、第1の電磁弁の作動時に用いられている現在の特性マップは適切ではないと判断される。そして、特性変化状態が解消されるように、特性マップの補正、又は第1の電磁弁の作動時に用いる特性マップの変更が行なわれる。そのため、その後のアンチロックブレーキ制御時では、補正後又は変更後の特性マップに基づき第1の電磁弁が制御される。したがって、車輪に対して適切な制動制御を実行可能となる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両の制動制御装置において、前記増圧制御から前記減圧制御に切り替る時点又は前記減圧制御から前記増圧制御に切り替る場合に、前記圧力検出手段(SE4,SE5)からの検出信号に基づき取得された前記ホイールシリンダ(17f,17r)内のホイールシリンダ圧(Pwc_r)と前記ホイールシリンダ(17f,17r)内のホイールシリンダ圧推定値(Pwc_e)との圧力差(Pwc_sub)を取得する圧力差取得手段(16、S27,S28,S31)をさらに備え、前記判定手段(16、S34,S41)は、一回の前記アンチロックブレーキ制御中において、前記圧力差取得手段(16、S27,S28,S31)によって取得された圧力差(Pwc_sub)の絶対値が予め設定された圧力差閾値(KPwc1,KPwc2)の絶対値以上となることが所定回数(KC1,KC2)連続した場合に、前記特性変化状態であると判定することを要旨とする。
圧力検出手段からの検出信号には、不必要にノイズ成分が含まれることがある。そのため、ホイールシリンダ圧とホイールシリンダ圧推定値との圧力差の絶対値が圧力差閾値の絶対値以上であることが一回だけ検出されたとしても、必ずしもホイールシリンダ圧推定値がホイールシリンダ圧から乖離しているとは限らない。そこで、本発明では、ホイールシリンダ圧とホイールシリンダ圧推定値との圧力差の絶対値が圧力差閾値の絶対値以上となることが所定回数以上になった場合に、特性変化状態であると判定される。したがって、特性変化状態の誤判定が抑制される。
請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の車両の制動制御装置において、前記判定手段(16、S34,S41)は、前記アンチロックブレーキ制御の実行時間(Tabs)が予め設定された実行時間閾値(KTabs)未満である場合には、前記特性変化状態であるか否かの判定を行なわないことを要旨とする。
アンチロックブレーキ制御の実行時間が短すぎる場合には、特性変化状態であるか否かを判定することができないことがある。そこで、本発明では、実行時間が実行時間閾値以上のアンチロックブレーキ制御時において特性変化状態であると判定された場合に、第1の電磁弁を作動させる際に用いる特性マップの補正、又は第1の電磁弁の作動時に用いる特性マップの変更が行なわれる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置において、前記特性マップを補正可能な状態で記憶する記憶手段(35)をさらに備え、前記特性調整手段(16、S58)は、前記圧力検出手段(SE4,SE5)からの検出信号に基づき取得された前記ホイールシリンダ(17f,17r)内のホイールシリンダ圧(Pwc_r)が前記ホイールシリンダ(17f,17r)内のホイールシリンダ圧推定値(Pwc_e)を超える場合には、前記差圧推定値(ΔPd)に対する指令電流値(Id)が大きくなるように前記特性マップを補正する一方、前記圧力検出手段(SE4,SE5)からの検出信号に基づき取得された前記ホイールシリンダ(17f,17r)内のホイールシリンダ圧(Pwc_r)が前記ホイールシリンダ(17f,17r)内のホイールシリンダ圧推定値(Pwc_e)未満である場合には、前記差圧推定値(ΔPd)に対する指令電流値(Id)が小さくなるように前記特性マップを補正することを要旨とする。
上記構成によれば、特性マップは、ホイールシリンダ圧がホイールシリンダ圧推定値を超える場合、差圧推定値に対する指令電流値が大きくなるように補正される。一方、特性マップは、ホイールシリンダ圧がホイールシリンダ圧推定値未満である場合、差圧推定値に対する指令電流値が小さくなるように補正される。その結果、アンチロックブレーキ制御中における第1の電磁弁を補正後の特性マップに基づき制御することにより、車輪に対して適切な制動力を付与可能となり、ひいては車両の挙動の安定化を向上させることが可能となる。
本実施形態における車両の制動装置のブロック図。 差圧推定値と指令電流値との関係を示すマップ。 本実施形態における制動制御処理ルーチンを説明するフローチャート。 ABS制御処理ルーチンを説明するフローチャート(前半部分)。 ABS制御処理ルーチンを説明するフローチャート(後半部分)。 マップ学習処理ルーチンを説明するフローチャート。 特性マップが補正される様子を模式図。 (a)(b)(c)(d)(e)はABS制御中における車体速度、車輪速度、推定MC圧、実WC圧、推定WC圧、差圧推定値及び指令電流値の変化を示すタイミングチャート。 (a)(b)(c)はABS制御中における実WC圧、推定WC圧、差圧推定値及び指令電流値の変化を示すタイミングチャート。
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図9に従って説明する。なお、以下における本明細書中の説明においては、車両の進行方向(前進方向)を前方(車両前方)として説明する。
図1に示すように、本実施形態の自動二輪車両は、駆動輪である後輪RWに駆動力を付与するための図示しない駆動装置と、前輪FW及び後輪RWに制動力を付与するための制動装置11とを備えている。駆動装置は、運転手によるアクセル12の操作量に応じた駆動力を発生させるべく駆動する図示しない駆動源(エンジンやモータなど)を備えており、該駆動源で発生した駆動力が後輪RWに伝達されることにより、車両が進行方向に向かって走行する。
制動装置11は、従動輪であって且つ操舵輪である前輪FWに制動力を付与するための前輪用液圧発生装置13fと、後輪RWに制動力を付与するための後輪用液圧発生装置13rとを備えている。また、制動装置11は、2つの液圧回路14f,14rを有するブレーキアクチュエータ15(図1では二点鎖線で囲まれた部分)と、該ブレーキアクチュエータ15を制御するための制動制御装置としての電子制御装置(以下、「ECU」という。)16とを備えている。前輪用液圧回路14fは、前輪用液圧発生装置13fに接続されると共に、前輪用ホイールシリンダ17fに接続されている。また、後輪用液圧回路14rは、後輪用液圧発生装置13rに接続されると共に、後輪用ホイールシリンダ17rに接続されている。
なお、本実施形態の車両には、各ホイールシリンダ17f,17r内のホイールシリンダ圧(「WC圧」ともいう。)を検出するための圧力検出手段としての圧力センサSE4,SE5が設けられている。これら各圧力センサSE4,SE5からは、ホイールシリンダ17f,17r内の実際のWC圧(「実WC圧」ともいう。)に応じた検出信号がECU16に出力される。
前輪用液圧発生装置13fは、運転手によるブレーキレバー18の操作、即ち自動二輪車両の右側ハンドル19にブレーキレバー18を接近させるような操作に応じたマスタシリンダ圧(「MC圧」ともいう。)が内部に発生する前輪用マスタシリンダ20fを備えている。後輪用液圧発生装置13rは、運転手によるブレーキペダル21の操作、即ち自動二輪車両の右足置きの前方に配設されたブレーキペダル21の踏込み操作に応じたMC圧が内部に発生する後輪用マスタシリンダ20rを備えている。そして、ブレーキレバー18やブレーキペダル21が運転手によって操作された場合、マスタシリンダ20f,20rからは、液圧回路14f,14rを介してホイールシリンダ17f,17r内にブレーキ液が供給される。その結果、各車輪FW,RWには、ホイールシリンダ17f,17r内のWC圧に応じた制動力が付与される。
ブレーキアクチュエータ15において各液圧回路14f,14rには、マスタシリンダ20f,20rとホイールシリンダ17f,17rとの間に配置される常開型の電磁弁である増圧弁(第1の電磁弁)24f,24rと、常閉型の電磁弁である減圧弁(第2の電磁弁)25f,25rとがそれぞれ設けられている。各増圧弁24f,24rは、各ホイールシリンダ17f,17r内のWC圧を増圧させる場合には開状態となるようにそれぞれ作動、即ち開動作する一方、WC圧を保圧及び減圧させる場合には閉状態となるようにそれぞれ作動、即ち閉動作する。また、各減圧弁25f,25rは、各ホイールシリンダ17f,17r内のWC圧を増圧及び保圧させる場合にはそれぞれ閉動作する一方、WC圧を減圧させる場合にはそれぞれ開動作する。
なお、各増圧弁24f,24r及び各減圧弁25f,25rは、二位置型の電磁弁である。しかし、本実施形態では、後述するABS制御においてホイールシリンダ17f,17rのWC圧を増圧させる場合には、WC圧を徐々に増圧させるように増圧弁24f,24rが開動作する。すなわち、増圧弁24f,24rの図示しない電磁コイルに供給される指令電流値Id(図2参照)は、徐々に小さくなるように調整される。
また、各液圧回路14f,14rには、減圧弁25f,25rを介してホイールシリンダ17f,17r内から流出してきたブレーキ液を一時貯留するためのリザーバ26f,26rと、駆動モータ27(例えばブラシレスモータ)の回転によって作動するポンプ28f,28r(ピストンポンプやギヤポンプなど)とが設けられている。これら各ポンプ28f,28rは、リザーバ26f,26r内のブレーキ液をそれぞれ吸引し、液圧回路14f,14rにおいてマスタシリンダ20f,20rと増圧弁24f,24rとの間の接続部位31f,31rに向けてそれぞれ吐出する。
次に、本実施形態のECU16について説明する。
ECU16の入力側インターフェースには、各車輪FW,RWの車輪速度を検出するための車輪速度センサSE1,SE2、及び圧力センサSE4,SE5が電気的に接続されている。また、ECU16の出力側インターフェースには、各弁24f,24r,25f,25r及び駆動モータ27などが電気的に接続されている。そして、ECU16は、各種センサSE1,SE2,SE4,SE5からの各種検出信号に基づき、各弁24f,24r,25f,25r及び駆動モータ27(即ち、ポンプ28f,28r)の作動を個別に制御する。なお、ECU16は、各車輪速度センサSE1,SE2からの検出信号に基づき、各種制動制御時に必要な車両の前後方向における車体減速度を推定演算する。
こうしたECU16は、CPU32、ROM33、RAM34、記憶手段としてのEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory )35などから構成されるデジタルコンピュータ、各弁24f,24r,25f,25rを作動させるための図示しない弁用ドライバ回路、及び駆動モータ27を作動させるための図示しないモータ用ドライバ回路を有している。デジタルコンピュータのROM33には、各種制御処理(後述する制動制御処理等)、及び各種閾値(後述する車体速度閾値、各圧力差閾値、各カウンタ閾値、実行時間閾値、各補正閾値等)などが予め記憶されている。また、RAM34には、車両の図示しないイグニッションスイッチが「オン」である間、適宜書き換えられる各種の情報(後述する車輪速度、車体速度、実WC圧、推定WC圧、圧力差、ABS実行時間、各カウンタ、各フラグ等)などがそれぞれ記憶される。さらに、EEPROM35には、上記イグニッションスイッチが「オフ」になっても消去されるべきではない各種の情報(図2に示すマップ等)などが記憶される。
次に、EEPROM35に予め記憶される各種マップについて図2に基づき説明する。
図2に示す特性マップは、後述するアンチロックブレーキ制御(「ABS制御」ともいう。)の実行時に増圧弁24f,24rの図示しない電磁コイルに供給する指令電流値Idを、差圧推定値ΔPdに基づき設定するためのマップである。こうした特性マップは、増圧弁24f,24r毎に設けられている。図2に示すように、指令電流値Idは、差圧推定値ΔPdが「0(零)」である場合には「0(零)」と初期電流値I0との間の電流値に設定される。この初期電流値I0とは、増圧弁24f,24rの図示しないコイルスプリングから図示しない弁体に付与される付勢力とほぼ同等の大きさの電磁力を発生させるために必要な大きさである。そのため、指令電流値Idが初期電流値I0以下である場合、増圧弁24f,24rは開状態となる。また、指令電流値Idは、差圧推定値ΔPdが「0(零)」よりも大きい場合には差圧推定値ΔPdが大きくなるに連れて大きな値に設定される。そして、指令電流値Idは、差圧推定値ΔPdが最大差圧ΔPholdである場合には保持電流値Iholdに設定される。
なお、ここでいう差圧とは、マスタシリンダ20f,20r内のMC圧とホイールシリンダ17f,17r内のWC圧との差圧のことであり、差圧推定値ΔPdは、当該差圧の推定値である。また、指令電流値Idが保持電流値Ihold以上である場合、増圧弁24f,24rは閉状態になり、ホイールシリンダ17f,17rのWC圧の増圧が規制される。
次に、本実施形態のECU16が実行する制動制御処理ルーチンについて、図3に示すフローチャートと図8に示すタイミングチャートに基づき説明する。なお、図8は、ABS制御時における車両の車体速度VS及び車輪速度VWF,VWR、マスタシリンダ20f,20rの推定MC圧Pmc、ホイールシリンダ17f,17rの推定WC圧Pwc_e、実WC圧Pwc_r、差圧推定値ΔPd及び増圧弁24f,24rに対する指令電流値Idの変化の一例を示すタイミングチャートである。
さて、ECU16は、予め設定された所定周期(例えば「6msec. 」)毎に制動制御処理ルーチンを実行する。この制動制御処理ルーチンにおいて、ECU16は、各車輪速度センサSE1,SE2からの検出信号に基づき各車輪FW,RWの車輪速度VWF、VWRを演算する(ステップS10)。続いて、ECU16は、ステップS10で演算した各車輪速度VWF,VWRのうち少なくとも一方(例えば前輪FWの車輪速度VWF)に基づき車両の車体速度(「推定車体速度」ともいう。)VSを演算する(ステップS11)。
そして、ECU16は、運転手によるブレーキ操作時に車輪FW,RWのロックを抑制して車両の操舵性を確保するABS制御の開始条件が成立したか否かを判定するためのABS制御開始判定処理を実行する(ステップS12)。具体的には、ECU16は、車両の車体速度VSから車輪FW,RWの車輪速度VWF,VWRを減算し、該減算結果を車輪FW,RWのスリップ量とする。また、ECU16は、ステップS10で演算した各車輪速度VWF,VWRを微分して各車輪FW,RWの車輪加速度を取得し、該車輪加速度に対して「−1」を乗算して各車輪FW,RWの車輪減速度を取得する。そして、ECU16は、車輪FW,RWの車輪減速度が予め設定された開始判定用減速度閾値以上であると共に、車輪FW,RWのスリップ量が予め設定されたスリップ閾値以上である場合に、ABS制御の開始条件が成立したと判断し、後述するABSフラグFLG1(図4参照)を「ON」にセットする。ただし、ECU16は、ABS制御の開始条件が不成立であると判断した場合にはABSフラグFLG1を「OFF」とする。
続いて、ECU16は、対象車輪に対して図4及び図5で詳述するABS制御処理を実行し(ステップS13)、制動制御処理ルーチンを一旦終了する。なお、「対象車輪」とは、運転手によるブレーキ操作によって車輪減速度及びスリップ量が共に閾値以上となり、車輪がロックした又はロックしかけた車輪のことである。例えば、ブレーキレバー18が操作される場合には前輪FWが対象車輪であり、ブレーキペダル21が操作された場合には後輪RWが対象車輪である。
ここで、前輪FWに対するABS制御について説明する。すなわち、図8のタイミングチャートに示すように、運転手によってブレーキ操作されると、前輪FWの車輪速度VWFは減速され、さらに、車両の車体速度VSもまた徐々に減速される。そして、第1のタイミングt11が経過すると、ABS制御の開始条件が成立する。すると、駆動モータ27の駆動に基づきポンプ28f,28rが作動すると共に、前輪用液圧回路14fに設けられる増圧弁24fが閉状態になり、さらに、減圧弁25fが開状態になる。その結果、前輪FWの前輪用ホイールシリンダ17f内のWC圧が減圧される、即ち減圧制御が実行される。このとき、後輪用ホイールシリンダ17r内のWC圧が変動しないように、後輪用液圧回路14rに設けられる増圧弁24rは閉状態にされる。
そして、第2のタイミングt12が経過すると、前輪FWのスリップ量(=車体速度VW−前輪FWの車輪速度VWF)が小さくなり、前輪用ホイールシリンダ17f内のWC圧を徐々に増圧させる増圧制御(「リニア増圧制御」ともいう。)が開始される。すなわち、開状態にある減圧弁25fが閉状態になると共に、増圧弁24fは、前輪用ホイールシリンダ17f内のWC圧が徐々に増圧されるように開動作する。このようにABS制御中においては、前輪FWのスリップ量の変化に伴い、前輪用ホイールシリンダ17f内のWC圧に対する減圧制御及び増圧制御が繰り返し実行される。なお、減圧制御と増圧制御との間に、前輪用ホイールシリンダ17f内のWC圧を保圧させるための保圧制御を実行してもよい。
次に、上記ステップS13のABS制御処理ルーチン(ABS制御処理)について、図4及び図5に示すフローチャートと図8及び図9に示すタイミングチャートに基づき説明する。なお、図4及び図5は、前輪FWに対するABS制御処理ルーチンを示すフローチャートである。また、図9は、ABS制御時におけるホイールシリンダ17f,17rの推定WC圧Pwc_e、実WC圧Pwc_r、差圧推定値ΔPd及び増圧弁24f,24rに対する指令電流値Idの変化の一例を示すタイミングチャートである。
さて、ABS制御処理ルーチンにおいて、ECU16は、ABSフラグFLG1が「ON」であるか否かを判定する(ステップS20)。ただし、前輪FWのスリップ量及び車輪減速度が共に閾値以上になったことを契機に、ABSフラグFLG1が「ON」になった場合にかぎる。ステップS20の判定結果が否定判定(FLG1=OFF)である場合、ECU16は、前輪FWに対してABS制御が実行されていないため、その処理を後述するステップS25に移行する。なお、ECU16は、後輪RWのスリップ量及び車輪減速度が共に閾値以上になったことを契機にABSフラグFLG1が「ON」になった場合、前輪FWに対するABS制御を実行しないため、その処理をステップS25に移行する。
一方、ステップS20の判定結果が肯定判定(FLG1=ON)である場合、ECU16は、前輪FWに対するABS制御が実行中であると判断し、ステップS11で演算した車体速度VSが予め設定された車体速度閾値KVS以上であるか否かを判定する(ステップS21)。この車体速度閾値KVSは、前輪FWに対するABS制御を終了させるか否かを判断するための基準値であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。ステップS21の判定結果が否定判定(VS<KVS)である場合、ECU16は、ABSフラグFLG1を「OFF」にセットする(ステップS24)。すなわち、ECU16は、予め設定された所定時間の間、ポンプ28f,28rを作動させた後、該ポンプ28f,28r、即ち駆動モータ27を停止させる。そして、ECU16は、前輪FWに対するABS制御を終了させる。このとき、後輪RWに対するABS制御が実行中である場合、ECU16は、ポンプ28f,28rの作動を継続させる。その後、ECU16は、その処理を次のステップS25に移行する。
ステップS25において、ECU16は、図6で詳述するマップ学習処理を実行する。このマップ学習処理では、ABS制御中における前輪用ホイールシリンダ17f内のWC圧の実測値(実WC圧Pwc_r)と推定値(推定WC圧Pwc_e)との間に乖離がある場合に、図2に示す特性マップを補正するための処理である。こうしたマップ学習処理が終了すると、ECU16は、後述する第1カウンタC1及び第2カウンタC2をそれぞれ「0(零)」にリセットし(ステップS26)、その後、ABS制御処理ルーチンを終了する。
その一方で、ステップS21の判定結果が肯定判定(VS≧KVS)である場合、ECU16は、前輪用圧力センサSE4からの検出信号に基づき前輪用ホイールシリンダ17f内の実WC圧Pwc_rを取得する(ステップS27)。したがって、本実施形態では、ECU16が、ホイールシリンダ圧取得手段としても機能する。続いて、ECU16は、前輪用ホイールシリンダ17f内のホイールシリンダ圧推定値(「推定WC圧」ともいう。)Pwc_eを、増圧弁24f及び減圧弁25fの動作態様に基づき取得する(ステップS28)。したがって、本実施形態では、ECU16が、ホイールシリンダ圧推定手段としても機能する。
ここで、図8のタイミングチャートに示すように、ABS制御が開始される前は、増圧弁24fが開状態であると共に減圧弁25fが閉状態であるため、前輪用ホイールシリンダ17f内のWC圧は、前輪用マスタシリンダ20f内のMC圧と略同等の圧力となる。すなわち、ブレーキ操作が開始される第0のタイミングt10から第1のタイミングt11が経過するまでは、前輪用マスタシリンダ20f内のMC圧を推定する、即ち推定MC圧Pmcを取得することにより、前輪用ホイールシリンダ17f内の推定WC圧Pwc_eが取得される。
そこで、本実施形態において、ECU16は、各車輪速度センサSE1,SE2からの検出信号に基づき推定演算した車両の車体減速度に所定の第1ゲインを乗算し、該乗算結果を前輪用マスタシリンダ20f内の推定MC圧Pmcとする。そして、ECU16は、取得した推定MC圧Pmcを前輪用ホイールシリンダ17f内の推定WC圧Pwc_eとする。ただし、ブレーキ操作が開始されてからABS制御が開始されるまでの時間(「ABS準備時間」ともいう。)の長さによって、上記演算によって取得される推定MC圧Pmcは、実際のMC圧と異なることがある。そこで、上記演算によって取得される推定MC圧Pmc、即ち推定WC圧Pwc_eを、ABS準備時間によって補正してもよい。
また、図8(a)に示すように、ABS制御における減圧制御時の実際のWC圧の単位時間あたりの変化量、即ち減圧量は、減圧制御が開始されてからの経過時間とほぼ比例の関係となる。一方、ABS制御における増圧制御時の実際のWC圧の単位時間あたりの変化量、即ち増圧量は、増圧弁24f,24rの図示しない弁座に対する図示しない弁体が接近するほど少なくなる、即ち増圧弁24f,24rに対する指令電流値Idの大きさとほぼ反比例の関係となる(図8(a)(c)参照)。そこで、本実施形態において、ECU16は、増圧制御時には、指令電流値Idに基づき前輪用ホイールシリンダ17f内の推定WC圧Pwc_eを取得する。また、ECU16は、減圧制御時には、上記所定周期に相当する時間に対して所定の第2ゲインを乗算する。そして、ECU16は、前回に演算された推定WC圧Pwc_eから乗算結果(=所定周期に相当する時間×第2ゲイン)を減算し、該減算結果を今回の推定WC圧Pwc_eとする。
図4及び図5のフローチャートに戻り、推定WC圧Pwc_eが取得されると、ECU16は、増圧制御から減圧制御に切り替るタイミングであるか否かを判定するための制御切替判定処理を実行する(ステップS29)。すなわち、増圧制御時において減圧弁25fには、電流が供給されない。また、減圧制御時において減圧弁25fには、電流が供給される。そこで、ECU16は、前輪FWに対する前回のABS制御処理の実行時点には減圧弁25fに電流が供給されていないと共に、今回のABS制御処理の実行時点には減圧弁25fに電流が供給されている場合に、増圧制御から減圧制御に切り替るタイミングであると判断し、切替フラグFLG2を「ON」にセットする。一方、ECU16は、前回のABS制御処理の実行時点には減圧弁25fに電流が供給されていた場合、及び今回のABS制御処理の実行時点には減圧弁25fに電流が供給されていない場合には、切替フラグFLG2を「OFF」にセットする。
そして、ECU16は、切替フラグFLG2が「ON」であるか否かを判定する(ステップS30)。この判定結果が否定判定(FLG2=OFF)である場合、ECU16は、その処理を後述するステップS36に移行する。一方、ステップS30の判定結果が肯定判定(FLG2=ON)である場合、ECU16は、ステップS27で取得した前輪用ホイールシリンダ17f内の実WC圧Pwc_rからステップS28で取得した前輪用ホイールシリンダ17f内の推定WC圧Pwc_eを減算して圧力差Pwc_subを取得する(ステップS31)。すなわち、ステップS31では、増圧制御から減圧制御に切り替った時点の実測値(実WC圧Pwc_r)に対する推定値(推定WC圧Pwc_e)のずれ量(圧力差Pwc_sub)が検出される。したがって、本実施形態では、ECU16が、圧力差取得手段としても機能する。
続いて、ECU16は、ステップS31で取得した圧力差Pwc_subが予め正の値に設定された第1圧力差閾値KPwc1(例えば2MPa)以上であるか否かを判定する(ステップS32)。この判定結果が肯定判定(Pwc_sub≧KPwc1)である場合、ECU16は、第1カウンタC1を「1」だけインクリメントすると共に、第2カウンタC2を「0(零)」にリセットする(ステップS33)。第1カウンタC1は、前輪FWに対する1回のABS制御中においてステップS32が肯定判定になった連続回数をカウントしている。そして、ECU16は、ステップS33で更新した第1カウンタC1が予め設定された所定回数としての第1カウンタ閾値KC1(例えば3回)以上であるか否かを判定する(ステップS34)。したがって、本実施形態では、ECU16が、判定手段としても機能する。
ちなみに、圧力センサSE4,SE5からの検出信号には、ノイズ成分が含まれることがある。つまり、ホイールシリンダ17f,17r内のWC圧の実測値である実WC圧Pwc_rには、検出信号に含まれるノイズ成分をも加味した値になっていることがある。この場合、ステップS31で圧力差Pwc_subを演算したとしても、該演算結果は必ずしも正しいとはいえない。もし仮に実WC圧Pwc_rが正しい値であり、該実WC圧Pwc_rと推定WC圧Pwc_eとの間にずれが本当にあるのであれば、圧力差Pwc_subが第1圧力差閾値KPwc1以上となることが連続するはずである。そこで、本実施形態では、圧力差Pwc_subが第1圧力差閾値KPwc1以上となることが誤検出されることを抑制するために、第1カウンタ閾値KC1が予め設定される。
そして、ステップS34の判定結果が否定判定(C1<KC1)である場合、ECU16は、その処理を後述するステップS36に移行する。一方、ステップS34の判定結果が肯定判定(C1≧KC1)である場合、ECU16は、ホイールシリンダ17f,17r内のWC圧が予定よりも高圧すぎる、即ち対象車輪(例えば前輪FW)に対する制動力が大きすぎると判断する。そして、ECU16は、実WC圧Pwc_rが推定WC圧Pwc_eよりも高圧であることを示す第1補正フラグFLGh1を「ON」にセットし(ステップS35)、その処理を次のステップS36に移行する。
ステップS36において、ECU16は、減圧制御時には増圧弁24fに供給する指令電流値Idを保持電流値Iholdに設定する。またECU16は、増圧制御時には、増圧弁24fに供給する指令電流値Idを、増圧弁24f用の特性マップ(図2参照)に基づき指令電流値Idを設定する。その後、ECU16は、その処理を次のステップS37に移行する。
ステップS37において、ECU16は、増圧弁24f及び減圧弁25fを作動させるための出力処理を行なう。すなわち、ECU16は、ステップS36で設定された指令電流値Idが増圧弁24fに供給されるように、増圧弁24fに印加する電圧のDuty比を設定する。また、ECU16は、増圧制御時には減圧弁25fに電流を供給せずに、該減圧弁25fを閉状態にする。一方、ECU16は、減圧制御時には減圧弁25fに電流を供給し、該減圧弁25fを開状態にする。すなわち、ECU16は、減圧弁25f(及び減圧弁25r)に対して電流のON/OFF制御を行なう。したがって、本実施形態では、ECU16が、電磁弁制御手段としても機能する。その後、ECU16は、ABS制御処理ルーチンを終了する。
なお、本実施形態において、増圧弁24f,24rは、PWM(Pulse Width Modulation)制御される。そのため、増圧弁24f,24rに出力される駆動信号には、信号レベルが「Hi」である期間と「Low」である期間とが繰り返される。そして、駆動信号の一周期に相当する時間に対する信号レベルが「Hi」である期間の比率のことを、「Duty比」という。そのため、Duty比が大きくなると、一周期内において信号レベルが「Hi」である期間が長くなる結果、制御対象(例えば増圧弁24f)に対する指令電流値Idが大きくなる。
ここで、図8のタイミングチャートに示すように、ホイールシリンダ17f内の実WC圧Pwc_rが推定WC圧Pwc_eよりも高圧である場合とは、差圧推定値ΔPdが、実際の差圧よりも大きくなることである。そのため、増圧制御時において増圧弁24fに対する指令電流値Idは、該増圧弁24fに本来供給すべき指令電流値よりも大きくなる。そして、増圧制御から減圧制御に切り替えられる第3のタイミングt13では、その時点の圧力差Pwc_subが第1圧力差閾値KPwc1未満となる。すなわち、第1カウンタC1は「0(零)」である。
しかし、この増圧制御から次に減圧制御に切り替る第5のタイミングt15では、圧力差Pwc_subが第1圧力差閾値KPwc1以上になり、第1カウンタC1が「0(零)」から「1」にインクリメントされる。その後の増圧制御から減圧制御に切り替る第6のタイミングt16において、圧力差Pwc_subが第1圧力差閾値KPwc1未満である場合には、第1カウンタC1が「0(零)」にリセットされる。その一方で、第6のタイミングt16での圧力差Pwc_subが第1圧力差閾値KPwc1以上である場合には、第1カウンタC1が「2」になる。さらに、その後の増圧制御から減圧制御に切り替る第7のタイミングt17において、圧力差Pwc_subが第1圧力差閾値KPwc1以上になると、第1カウンタC1が「3」になる。すると、第1補正フラグFLGh1が「ON」にセットされる。すなわち、今回のABS制御では、前輪用ホイールシリンダ17f内の実WC圧Pwc_rが推定WC圧Pwc_eよりも高圧であると判定される。
図5に示すフローチャートに戻り、ステップS32の判定結果が否定判定(Pwc_sub<KPwc1)である場合、ECU16は、ステップS31で演算した圧力差Pwc_subが予め負の値に設定された第2圧力差閾値KPwc2(例えば−2MPa)以下であるか否かを判定する(ステップS38)。この判定結果が否定判定(Pwc_sub>KPwc2)である場合、ECU16は、各カウンタC1,C2を「0(零)」にリセットし(ステップS39)、その処理を前述したステップS36に移行する。一方、ステップS38の判定結果が肯定判定(Pwc_sub≦KPwc2)である場合、ECU16は、第1カウンタC1を「0(零)」にリセットすると共に、第2カウンタC2を「1」だけインクリメントする(ステップS40)。第2カウンタC2は、前輪FWに対する1回のABS制御中においてステップS38が肯定判定になった連続回数をカウントしている。そして、ECU16は、ステップS40で更新した第2カウンタC2が予め設定された所定回数としての第2カウンタ閾値KC2(例えば3回)以上であるか否かを判定する(ステップS41)。なお、第2カウンタ閾値KC2を設定する理由は、第1カウンタ閾値KC1を設定する理由と同じである。
ステップS41の判定結果が否定判定(C2<KC2)である場合、ECU16は、その処理を前述したステップS36に移行する。一方、ステップS41の判定結果が肯定判定(C2≧KC2)である場合、ECU16は、ホイールシリンダ17f,17r内のWC圧が予定よりも低圧すぎる、即ち対象車輪(例えば前輪FW)に対する制動力が小さすぎると判断する。そして、ECU16は、実WC圧Pwc_rが推定WC圧Pwc_eよりも低圧であることを示す第2補正フラグFLGh2を「ON」にセットする(ステップS42)。続いて、ECU16は、その処理を前述したステップS36及びステップS37を順に実行し、その後、ABS制御処理ルーチンを終了する。
ここで、図9のタイミングチャートに示すように、ホイールシリンダ17f内の実WC圧Pwc_rが推定WC圧Pwc_eよりも低圧である場合とは、差圧推定値ΔPdが、実際の差圧よりも小さくなることである。そのため、増圧制御時において増圧弁24fに対する指令電流値Idは、該増圧弁24fに本来供給すべき指令電流値よりも小さくなる。そして、増圧制御から減圧制御に切り替わる第1のタイミングt21では、その時点の圧力差Pwc_subが第2圧力差閾値KPwc2よりも大きい。すなわち、第2カウンタC2は「0(零)」になる。
しかし、次の増圧制御から減圧制御に切り替る第3のタイミングt23において、圧力差Pwc_subが第2圧力差閾値KPwc2以下になると、第2カウンタC2が「0(零)」から「1」にインクリメントされる。その後の増圧制御から減圧制御に切り替る第4のタイミングt24での圧力差Pwc_subが第2圧力差閾値KPwc2以下である場合には、第2カウンタC2が「2」になる。さらに、その後の増圧制御から減圧制御に切り替る第5のタイミングt25において、圧力差Pwc_subが第2圧力差閾値KPwc2以下になると、第2カウンタC2が「3」になる。すると、第2補正フラグFLGh2が「ON」にセットされる。すなわち、今回のABS制御では、前輪用ホイールシリンダ17f内の実WC圧Pwc_rが推定WC圧Pwc_eよりも低圧であると判定される。
次に、上記ステップS25のマップ学習処理ルーチン(マップ学習処理)について図6に示すフローチャート、図7に示す図面及び図8のタイミングチャートに基づき説明する。なお、図6は、前輪FW用の増圧弁24fに対応する特性マップの学習処理を説明するフローチャートである。
さて、マップ学習処理ルーチンにおいて、ECU16は、前輪FWに対する前回のABS制御の実行時間であるABS実行時間Tabsを取得する(ステップS50)。なお、ABS実行時間Tabsは、ABSフラグFLG1が「ON」にセットされてから「OFF」にセットされるまでの経過時間のことである。続いて、ECU16は、ステップS50で取得したABS実行時間Tabsが予め設定された実行時間閾値KTabs(例えば500msec. )以上であるか否かを判定する(ステップS51)。
すなわち、図8(c)のタイミングチャートに示すように、例えば第7のタイミングt17が経過する前にABS制御が終了してしまうと、前輪用ホイールシリンダ17f内の実WC圧Pwc_rと推定WC圧Pwc_eとの間にずれがあるか否かを判定できない。そこで、本実施形態では、実WC圧Pwc_rと推定WC圧Pwc_eとの間のずれの有無を検出できなかった可能性があるか否かを判断するための基準値として、実行時間閾値KTabsが予め設定されている。
図6のフローチャートに戻り、ステップS51の判定結果が否定判定(Tabs<KTabs)である場合、ECU16は、実WC圧Pwc_rと推定WC圧Pwc_eとの間のずれの有無を検出できなかった可能性があると判断し、マップ学習処理ルーチンを終了する。一方、ステップS51の判定結果が肯定判定(Tabs≧KTabs)である場合、ECU16は、第1補正フラグFLGh1が「ON」であるか否かを判定する(ステップS52)。この判定結果が肯定判定(FLGh1=ON)である場合、ECU16は、前輪FWに対する前回のABS制御ではホイールシリンダ17f内の実WC圧Pwc_rが推定WC圧Pwc_eよりも高圧であったと判断し、第1補正カウンタCH1を「1」だけインクリメントすると共に、後述する第2補正カウンタCH2を「0(零)」にリセットする(ステップS53)。なお、第1補正カウンタCH1は、実WC圧Pwc_rが推定WC圧Pwc_eよりも高圧となるABS制御の連続実行回数を計数している。
続いて、ECU16は、ステップS53で更新した第1補正カウンタCH1が予め設定された第1補正閾値KCH1(例えば3回)以上であるか否かを判定する(ステップS54)。この第1補正閾値KCH1は、前輪FW用の特性マップの補正を行なうか否かの判定を行なうための基準値である。すなわち、第1補正閾値KCH1が規定回数に相当する。ステップS54の判定結果が否定判定(CH1<KCH1)である場合、ECU16は、マップ学習処理ルーチンを終了する。一方、ステップS54の判定結果が肯定判定(CH1≧KCH1)である場合、ECU16は、その処理を後述するステップS58に移行する。
その一方で、ステップS52の判定結果が否定判定(FLGh1=OFF)である場合、ECU16は、第2補正フラグFLGh2が「ON」であるか否かを判定する(ステップS55)。この判定結果が否定判定(FLGh2=OFF)である場合、ECU16は、その処理を後述するステップS60に移行する。一方、ステップS55の判定結果が肯定判定(FLGh2=ON)である場合、ECU16は、前輪FWに対する前回のABS制御ではホイールシリンダ17f内の実WC圧Pwc_rが推定WC圧Pwc_eよりも低圧であったと判断し、第2補正カウンタCH2を「1」だけインクリメントすると共に、第1補正カウンタCH1を「0(零)」にリセットする(ステップS56)。なお、第2補正カウンタCH2は、実WC圧Pwc_rが推定WC圧Pwc_eよりも低圧となるABS制御の連続実行回数を計数している。
続いて、ECU16は、ステップS56で更新した第2補正カウンタCH2が予め設定された第2補正閾値KCH2(例えば3回)以上であるか否かを判定する(ステップS57)。この第2補正閾値KCH2は、前輪FW用の特性マップの補正を行なうか否かの判定を行なうための基準値である。すなわち、第2補正閾値KCH2が規定回数に相当する。ステップS57の判定結果が否定判定(CH2<KCH2)である場合、ECU16は、マップ学習処理ルーチンを終了する。一方、ステップS57の判定結果が肯定判定(CH2≧KC2)である場合、ECU16は、その処理を次のステップS58に移行する。
ステップS58において、ECU16は、上記ステップS31で演算した圧力差Pwc_subに基づき特性マップの補正を行なう。前輪用ホイールシリンダ17f内の実WC圧Pwc_rと推定WC圧Pwc_eとの間で乖離が発生する原因は、前輪FW用の特性マップにおける差圧推定値ΔPdと指令電流値Idとの関係が、実際の差圧と指令電流値Idとの関係と乖離しているためと考えられる。そのため、前輪FW用の特性マップにおいて差圧推定値ΔPdと指令電流値Idとの関係を、実際の差圧と指令電流値Idとの関係に近づけることにより、前輪用ホイールシリンダ17f内の実WC圧Pwc_rと推定WC圧Pwc_eとの圧力差Pwc_subを「0(零)」に接近させることができる。そこで、本実施形態において、ECU16は、上記ステップS31で演算した最新の圧力差Pwc_subに基づき前輪FW用の特性マップを補正する。
具体的には、ECU16は、図7の二点鎖線で示すように、最新の圧力差Pwc_subが正の値であるために前輪FWに対する制動力が予定の制動力よりも大きい場合、即ちMC圧とWC圧との差圧が増圧弁24fに指令電流値Idを供給した場合の見込み差圧推定値ΔPdよりも小さい場合、初期電流値I0及び保持電流値Iholdを大きくする側に移動させる。換言すると、ECU16は、差圧推定値ΔPdと指令電流値Idとの関係を示す特性線L1を図7において右側にシフト移動させることで、差圧推定値ΔPdに対する指令電流値Idが大きくなるようにする。このときの特性線L1の図7における右側へのシフト量Sh1は、最新の圧力差Pwc_subが大きいほど多くなる。なお、図7において二点鎖線で示す特性線L2は、圧力差Pwc_subが正の値である場合の補正後の特性線の一例である。
また、ECU16は、図7の破線で示すように、最新の圧力差Pwc_subが負の値である場合、即ち前輪FWに対する制動力が予定の制動力よりも小さい場合、初期電流値I0及び保持電流値Iholdを小さくする側に移動させる。換言すると、ECU16は、特性線L1を図7において左側にシフト移動させることで、差圧推定値ΔPdに対する指令電流値Idが小さくなるようにする。このときの特性線L1の図7における左側へのシフト量Sh2は、最新の圧力差Pwc_subの絶対値が大きいほど多くなる。なお、図7において破線で示す特性線L3は、圧力差Pwc_subが正の値である場合の補正後の特性線の一例である。つまり、本実施形態では、特性マップは、圧力差Pwc_subに応じた態様に補正される。したがって、本実施形態では、ECU16が、圧力差Pwc_subが小さくなるように特性マップを補正する特性調整手段としても機能する。
続いて、ECU16は、各補正フラグFLGh1,FLGh2を「OFF」にセットし(ステップS59)、その処理を次のステップS60に移行する。
ステップS60において、ECU16は、各補正カウンタCH1,CH2を「0(零)」にリセットする。その後、ECU16は、マップ学習処理ルーチンを終了する。
本実施形態では、第1補正フラグFLGh1が「ON」となるようなABS制御が「3回」連続して実行されると、又は、第2補正フラグFLGh2が「ON」となるようなABS制御が「3回」連続して実行されると、現時点の前輪FW用の特性マップを用いて増圧弁24fを制御しても、前輪FWに対して適切な制動制御を実行できないと判定される。すると、前輪FW用の特性マップは、最新の圧力差Pwc_subに応じて補正され、該補正後の特性マップがEEPROM35に上書き記憶される。こうした補正後の特性マップにおける差圧推定値ΔPdと指令電流値Idとの関係は、実際の差圧と指令電流値Idとの関係に、補正前に比して近くなる。
そのため、次回のABS制御時に、補正後の特性マップを用いて増圧弁24fに供給する指令電流値Idを調整することにより、前輪FWには、適切な制動制御がなされる。そのため、前輪FWに付与される制動力の上昇速度が速すぎることに起因したハンチング現象の発生が抑制されると共に、制動力の上昇速度が遅すぎることに起因した車両の制動距離の長距離化が抑制される。
なお、後輪RWに対するABS制御処理ルーチンは、上述した前輪FWに対するABS制御処理ルーチンとほぼ同等である。すなわち、ECU16は、後輪用ホイールシリンダ17r内の実WC圧Pwc_rと推定WC圧Pwc_eとの圧力差Pwc_subに基づき、増圧弁24rに供給する指令電流値Idを設定する。ちなみに、後輪用ホイールシリンダ17r内の実WC圧Pwc_rは、後輪用圧力センサSE5からの検出信号に基づき取得される。
そして、圧力差Pwc_subの絶対値が大きすぎる後輪RWに対するABS制御が「3回」連続して実行された場合には、後輪RW用の特性マップが補正される。この特性マップの補正方法は、前輪FW用の特性マップの補正方法と同一である。このように特性マップが補正されると、その後の後輪RWに対するABS制御時において後輪RWには、適切な制動制御がなされる。
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)ABS制御中には、ホイールシリンダ(例えば前輪用ホイールシリンダ17f)内の推定WC圧Pwc_eが取得されると共に、圧力センサ(例えば前輪用圧力センサSE4)からの検出信号に基づきホイールシリンダ内の実WC圧Pwc_rが検出される。そして、実WC圧Pwc_rと推定WC圧Pwc_eとの間に乖離が生じている場合には、増圧弁(例えば増圧弁24f)を作動させる際に用いる特性マップが補正される。その結果、補正後の特性マップに基づき増圧弁に供給する指令電流値Idを設定することにより、ABS制御の対象車輪(例えば前輪FW)に付与する制動力を好適に調整できる。したがって、ABS制御中において増圧弁24f,24rの動作態様を調整することにより、車両の挙動の更なる安定化に貢献できる。
(2)例えば、圧力差Pwc_subが第1圧力差閾値KPwc1以上となる特性変化状態であると判定された前輪FW(又は後輪RW)に対するABS制御が規定回数連続した場合、前輪FW(又は後輪RW)用の特性マップにおいて、差圧推定値ΔPdと指令電流値Idとの関係が、実際の差圧と指令電流値Idとの関係と乖離していると判断される。同様に、圧力差Pwc_subが第2圧力差閾値KPwc2以下となる特性変化状態であると判定された前輪FW(又は後輪RW)に対するABS制御が規定回数連続した場合、前輪FW(又は後輪RW)用の特性マップにおいて、差圧推定値ΔPdと指令電流値Idとの関係が、実際の差圧と指令電流値Idとの関係と乖離していると判断される。そして、特性変化状態が解消されるように特性マップが補正される。すなわち、増圧弁24f,24rの特性がEEPROM35に記憶される特性マップで示される特性とは確実に異なると判定された場合にのみ、特性マップが補正される。したがって、特性マップが不必要に補正されることを回避できる。
(3)第1カウンタC1を設けない場合、推定WC圧Pwc_eと実WC圧Pwc_rとの圧力差Pwc_subが第1圧力差閾値KPwc1以上になることが一回だけ検出されると、第1補正フラグFLGh1が「ON」にセットされる。また、第2カウンタC2を設けない場合、圧力差Pwc_subが第2圧力差閾値KPwc2以下になることが一回だけ検出されると、第2補正フラグFLGh2が「ON」にセットされる。こうした場合、圧力センサSE4,SE5からの検出信号に含まれるノイズ成分に起因した誤判定によって、本来は特性マップを変更する必要がない場合であっても、特性マップが不必要に補正される可能性がある。この点、本実施形態では、各カウンタC1,C2を設けているため、特性変化状態であるか否かの判定ミスの発生を抑制できる。
(4)ABS制御の実行時間が短い、即ちABS実行時間Tabsが実行時間閾値KTabsである場合には、圧力差Pwc_subが第1圧力差閾値KPwc1以上になったり圧力差Pwc_subが第2圧力差閾値KPwc2以下になったりする特性変化状態であるか否かを判定することができないことがある。そこで、本実施形態では、ABS実行時間Tabsが実行時間閾値KTabs未満である場合には、各補正カウンタCH1,CH2が「0(零)」にリセットされない。そのため、ABS実行時間Tabsが実行時間閾値KTabs未満である場合にも補正フラグFLGh1,FLGh2が「ON」であるか否かが判定される場合に比して、特性マップを必要に応じて速やかに補正することができる。
(5)特性マップは、第1補正カウンタCH1が第1補正閾値KCH1以上である場合、差圧推定値ΔPdに対する指令電流値Idが大きくなるように補正される。一方、特性マップは、第2補正カウンタCH2が第2補正閾値KCH2以上である場合、差圧推定値ΔPdに対する指令電流値Idが小さくなるように補正される。その結果、ABS制御中における増圧弁24f,24rを、補正後の特性マップに基づき制御することにより、車輪FW,RWに対して適切な制動力を付与でき、ひいては車両の挙動の安定化を向上させることができる。
(6)また、特性マップを補正する際の補正量、即ち特性線L1のシフト量は、最新の圧力差Pwc_subに応じたシフト量Sh1,Sh2になる。そのため、次回以降のABS制御時には、補正後の特性マップに基づき増圧弁24f,24rに供給する指令電流値Idを設定することにより、圧力差Pwc_subを「0(零)」又は限りなく「0(零)」に近づけることができる。したがって、ハンチング現象の発生を抑制できると共に、車両の制動距離の短距離化に貢献できる。
(7)本実施形態では、増圧弁24f,24rの特性が変化したり、増圧弁24f,24rが交換されたり、ブレーキ液の粘性や温度が変化したり、ブレーキ液が交換されたりしたときにおいて、その後のABS制御時に特性変化状態であると判定された場合には、特性マップが補正される。すなわち、特性マップは、必要に応じて何回も補正される。そのため、特性マップを、そのときの増圧弁24f,24rの特性やブレーキ液の特性などに応じたマップにすることができるため、ABS制御中において車輪FW,RWに対して適切な制動制御を実行できる。
なお、実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・実施形態において、各カウンタ閾値KC1,KC2を、3回以外の任意の回数に変更してもよい。ただし、各カウンタ閾値KC1,KC2を3回よりも大きな値(例えば5回)にする場合、第1圧力差閾値KPwc1を「2MPa」よりも小さな値(例えば1MPa)に設定すると共に、第2圧力差閾値KPwc2を「−2MPa」よりも大きな値(例えば−1MPa)に設定することが望ましい。また、各カウンタ閾値KC1,KC2を3回よりも小さな値(例えば2回)にする場合、第1圧力差閾値KPwc1を「2MPa」よりも大きな値(例えば4MPa)に設定すると共に、第2圧力差閾値KPwc2を「−2MPa」よりも小さな値(例えば−4MPa)に設定することが望ましい。
・実施形態において、各補正閾値KCH1,KCH2を、3回以外の任意の回数に変更してもよい。ただし、各補正閾値KCH1,KCH2を3回よりも大きな値(例えば5回)にする場合、各カウンタ閾値KC1,KC2を3回よりも少ない回数(例えば2回)に設定することが望ましい。また、各補正閾値KCH1,KCH2を3回よりも少ない値(例えば2回)にする場合、各カウンタ閾値KC1,KC2を3回よりも多い回数(例えば4回)に設定することが望ましい。
・実施形態において、圧力差Pwc_subを、減圧制御から増圧制御に切り替る時点における推定WC圧Pwc_eと実WC圧Pwc_rとに基づき取得してもよい。
・実施形態において、マップ学習処理ルーチンは、ステップS50,S51を省略した制御処理であってもよい。この場合、第1圧力差閾値KPwc1を「2MPa」よりも小さな値(例えば1MPa)に設定すると共に、第2圧力差閾値KPwc2を「−2MPa」よりも大きな値(例えば−1MPa)に設定することが望ましい。
・実施形態において、マップ学習処理ルーチンでは、ステップS52やステップS55の判定結果が肯定判定になった時点の圧力差Pwc_subを記憶させておき、ステップS54やステップS57の判定結果が肯定判定になった場合には、3つの圧力差Pwc_subの平均値を算出してもよい。そして、この平均値に基づき、特性マップを補正する際の特性線L1のシフト量Sh1,Sh2を設定してもよい。
・また、ステップS54の判定結果が肯定判定になったことを契機に特性マップを補正する場合には、特性線L1のシフト量Sh1を第1のシフト量(即ち、一定値)であってもよい。同様に、ステップS57の判定結果が肯定判定になったことを契機に特性マップを補正する場合には、特性線L1のシフト量Sh2を第2のシフト量(即ち、一定値)であってもよい。
・実施形態において、特性マップを補正する場合には、圧力差Pwc_subに基づき特性線L1の傾きを変更してもよい。このように構成しても、上記実施形態と同等の効果を得ることができる。
・実施形態において、EEPROM35には、差圧推定値ΔPdと指令電流値Idとの関係が互いに異なる複数種類の特性マップを予め記憶させてもよい。そして、マップ学習処理ルーチンにおいてステップS54やステップS57が肯定判定になった場合には、そのときの圧力差Pwc_subに応じた適切な特性マップを選択させてもよい。こうして選択された特性マップに基づき増圧弁24f,24rを制御することにより、ABS制御時には車輪FW,RWに対して適切な制動制御を実行することができる。
・実施形態では、ABS制御が終了した時点でマップ学習処理が実行されるのに対し、ABS制御中にもマップ学習処理を実行させてもよい。この場合、ABS制御中に特性マップが補正されることになる。
・実施形態において、車両の前後方向における車体加速度を検出するための加速度センサ(「Gセンサ」ともいう。)を、車両に設けてもよい。
・実施形態において、車両を、進行方向前側に1つの前輪が配置され、且つ進行方向後側に2つの後輪が配置される自動三輪車両に具体化してもよい。また、車両を、進行方向前側に2つの前輪が配置され、且つ進行方向後側に1つの後輪が配置される自動三輪車両に具体化してもよい。
次に、上記実施形態及び別の実施形態から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)前記差圧推定値(ΔPd)に対する指令電流値(Id)の関係が互いに異なる複数の特性マップが予め記憶される記憶手段(35)をさらに備え、前記特性調整手段(16,S58)は、前記圧力検出手段(SE3,SE4)からの検出信号に基づくホイールシリンダ圧(Pwc_r)と前記各電磁弁(24f,24r,25f,25r)の駆動態様に基づくホイールシリンダ圧推定値(Pwc_e)との間に差が生じる場合に、前回に用いた特性マップとは異なる特性マップを前記記憶手段(35)から読み出し、該読み出した特性マップに基づき前記第1の電磁弁(24f,24r)を制御することを特徴とする請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置。
(ロ)アンチロックブレーキ制御の開始条件が成立した場合に、車輪(FW,RW)に制動力を付与するためのホイールシリンダ(17f,17r)内のホイールシリンダ圧(Pwc_r)を減圧させる減圧制御及びホイールシリンダ圧(Pwc_r)を徐々に増圧させる増圧制御を繰り返させるために、ブレーキ操作に応じたマスタシリンダ圧(Pmc)を発生するマスタシリンダ(20f,20r)と前記ホイールシリンダ(17f,17r)との間に配置され且つ前記増圧制御時に開動作する第1の電磁弁(24f,24r)と、前記減圧制御時に開動作する第2の電磁弁(25f,25r)とを作動させる車両の制動制御方法であって、前記マスタシリンダ(20f,20r)内のマスタシリンダ圧(Pmc)と前記ホイールシリンダ(17f,17r)内のホイールシリンダ圧(Pwc_r,Pwc_e)との差圧推定値(ΔPd)及び前記第1の電磁弁(24f,24r)に対する指令電流値(Id)の関係を示す特性マップに基づき、前記第1の電磁弁(24f,24r)に供給する指令電流値(Id)を調整させる電磁弁制御ステップ(S36,S37)を有する車両の制動制御方法において、車両には、前記ホイールシリンダ(17f,17r)内のホイールシリンダ圧(Pwc_r)を検出するための圧力検出手段(SE4,SE5)が設けられており、前記圧力検出手段(SE4,SE5)からの検出信号に基づきホイールシリンダ圧(Pwc_r)を取得させるホイールシリンダ圧取得ステップ(S27)と、前記各電磁弁(24f,24r,25f,25r)の駆動態様に基づきホイールシリンダ圧推定値(Pwc_e)を取得させるホイールシリンダ圧推定ステップ(S28)と、前記ホイールシリンダ圧取得ステップ(S27)で取得されたホイールシリンダ圧(Pwc_r)と前記ホイールシリンダ圧推定ステップ(S28)で取得されたホイールシリンダ圧推定値(Pwc_e)との間に差が生じる場合に、当該差が小さくなるように前記特性マップを補正させる、又は前記差が小さくなるように前記第1の電磁弁(24f,24r)の制御時に用いる特性マップを変更させる特性調整ステップ(S58)と、をさらに有することを特徴とする車両の制動制御方法。
16…電磁弁制御手段、特性調整手段、判定手段、圧力差取得手段としてのECU、17f,17r…ホイールシリンダ、20f,20r…マスタシリンダ、24f,24r…第1の電磁弁としての増圧弁、25f,25r…第2の電磁弁としての減圧弁、35…記憶手段としてのEEPROM、FW,RW…車輪、Id…指令電流値、KC1,KC2…所定回数としてのカウンタ閾値、KCH1,KCH2…規定回数としてのカウンタ閾値、KPwc1…第1圧力差閾値、KPwc2…第2圧力差閾値、KTabs…実行時間閾値、Pmc…推定MC圧、Pwc_e…推定WC圧、Pwc_sub…圧力差、Pwc_r…実WC圧、SE4,SE5…圧力検出手段としての圧力センサ、Tabs…ABS実行時間、ΔPd…差圧推定値。

Claims (5)

  1. アンチロックブレーキ制御の開始条件が成立した場合に、車輪(FW,RW)に制動力を付与するためのホイールシリンダ(17f,17r)内のホイールシリンダ圧(Pwc_r)を減圧させる減圧制御及びホイールシリンダ圧(Pwc_r)を徐々に増圧させる増圧制御が繰り返されるように、ブレーキ操作に応じたマスタシリンダ圧(Pmc)を発生するマスタシリンダ(20f,20r)と前記ホイールシリンダ(17f,17r)との間に配置され且つ前記増圧制御時に開動作する第1の電磁弁(24f,24r)と、前記減圧制御時に開動作する第2の電磁弁(25f,25r)とを制御する車両の制動制御装置であって、
    前記マスタシリンダ(20f,20r)内のマスタシリンダ圧(Pmc)と前記ホイールシリンダ(17f,17r)内のホイールシリンダ圧(Pwc_r)との差圧推定値(ΔPd)及び前記第1の電磁弁(24f,24r)に対する指令電流値(Id)の関係を示す特性マップに基づき、前記第1の電磁弁(24f,24r)に供給する指令電流値(Id)を調整する電磁弁制御手段(16、S36,S37)を備えた車両の制動制御装置において、
    車両には、前記ホイールシリンダ(17f,17r)内のホイールシリンダ圧(Pwc_r)を検出するための圧力検出手段(SE4,SE5)が設けられており、
    前記圧力検出手段(SE4,SE5)からの検出信号に基づくホイールシリンダ圧(Pwc_r)と前記各電磁弁(24f,24r,25f,25r)の駆動態様に基づくホイールシリンダ圧推定値(Pwc_e)との間に差が生じる場合に、当該差が小さくなるように前記特性マップの補正、又は前記差が小さくなるように前記第1の電磁弁(24f,24r)の制御時に用いる特性マップの変更を行なう特性調整手段(16、S58)をさらに備えることを特徴とする車両の制動制御装置。
  2. 前記圧力検出手段(SE4,SE5)からの検出信号に基づき取得された前記ホイールシリンダ(17f,17r)内のホイールシリンダ圧(Pwc_r)と前記ホイールシリンダ(17f,17r)内のホイールシリンダ圧推定値(Pwc_e)との間に差が発生する特性変化状態であるか否かを前記アンチロックブレーキ制御が実行される毎に判定する判定手段(16、S34,S41)をさらに備え、
    前記特性調整手段(16、S58)は、前記判定手段(16、S34,S41)によって前記特性変化状態であると判定される前記アンチロックブレーキ制御が規定回数(KCH1,KCH2)連続した場合に、前記特性マップの補正、又は前記第1の電磁弁(24f,24r)の制御時に用いる特性マップの変更を行なうことを特徴とする請求項1に記載の車両の制動制御装置。
  3. 前記増圧制御から前記減圧制御に切り替る時点又は前記減圧制御から前記増圧制御に切り替る場合に、前記圧力検出手段(SE4,SE5)からの検出信号に基づき取得された前記ホイールシリンダ(17f,17r)内のホイールシリンダ圧(Pwc_r)と前記ホイールシリンダ(17f,17r)内のホイールシリンダ圧推定値(Pwc_e)との圧力差(Pwc_sub)を取得する圧力差取得手段(16、S27,S28,S31)をさらに備え、
    前記判定手段(16、S34,S41)は、一回の前記アンチロックブレーキ制御中において、前記圧力差取得手段(16、S27,S28,S31)によって取得された圧力差(Pwc_sub)の絶対値が予め設定された圧力差閾値(KPwc1,KPwc2)の絶対値以上となることが所定回数(KC1,KC2)連続した場合に、前記特性変化状態であると判定することを特徴とする請求項2に記載の車両の制動制御装置。
  4. 前記判定手段(16、S34,S41)は、前記アンチロックブレーキ制御の実行時間(Tabs)が予め設定された実行時間閾値(KTabs)未満である場合には、前記特性変化状態であるか否かの判定を行なわないことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両の制動制御装置。
  5. 前記特性マップを補正可能な状態で記憶する記憶手段(35)をさらに備え、
    前記特性調整手段(16、S58)は、
    前記圧力検出手段(SE4,SE5)からの検出信号に基づき取得された前記ホイールシリンダ(17f,17r)内のホイールシリンダ圧(Pwc_r)が前記ホイールシリンダ(17f,17r)内のホイールシリンダ圧推定値(Pwc_e)を超える場合には、前記差圧推定値(ΔPd)に対する指令電流値(Id)が大きくなるように前記特性マップを補正する一方、
    前記圧力検出手段(SE4,SE5)からの検出信号に基づき取得された前記ホイールシリンダ(17f,17r)内のホイールシリンダ圧(Pwc_r)が前記ホイールシリンダ(17f,17r)内のホイールシリンダ圧推定値(Pwc_e)未満である場合には、前記差圧推定値(ΔPd)に対する指令電流値(Id)が小さくなるように前記特性マップを補正することを特徴とする請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR102534280B1 (ko) * 2022-11-08 2023-05-26 주식회사 주은기공 열차의 제동을 제어하는 장치 및 방법

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