JP2011061743A - 弾性表面波素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】 例えば、樹脂モールドの状態で、温度特性の補償を行うとともに、吸湿による特性劣化を防止する。
【解決手段】 圧電性基板1上に形成された電極2と、電極2を覆うように圧電性基板1上に形成された第1SiO2層3と、第1SiO2層3上に形成されたSiN層4と、SiN層4上に形成された第2SiO2層5とから成る積層体7を含んでいる。圧電性基板1の材料としては、例えば、LiTaO3が用いられる。電極2は、例えば、アルミニウム(Al)を用いた櫛形電極である。
【選択図】 図1
【解決手段】 圧電性基板1上に形成された電極2と、電極2を覆うように圧電性基板1上に形成された第1SiO2層3と、第1SiO2層3上に形成されたSiN層4と、SiN層4上に形成された第2SiO2層5とから成る積層体7を含んでいる。圧電性基板1の材料としては、例えば、LiTaO3が用いられる。電極2は、例えば、アルミニウム(Al)を用いた櫛形電極である。
【選択図】 図1
Description
この発明は、例えば、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)等の弾性波を励振可能な弾性表面波素子に関する。
従来より、弾性表面波素子は、例えば、共振子や、帯域フィルタ等に用いられている。弾性表面波素子の温度特性を補償するために、LiTaO3等から成る圧電性基板上に、櫛形の電極を形成した後に、電極を覆うように、SiO2(酸化シリコン)層を形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。SiO2は、LiTaO3等と温度係数が逆である(LiTaO3が負の温度係数を持つのに対して、SiO2は、正の温度係数を持つ。)ため、温度特性の補償効果が期待される。
しかしながら、SiO2層を積層した後、樹脂封止して、基板から弾性表面波素子(SAWデバイス)を切り出し、ベアチップとして供給する場合に、この樹脂モールドの状態では、完全気密封止とはならず、水分がパッケージ内に入り込むことは避けられない。SiO2は、吸湿性を示す材料であり、SiO2層を含む弾性表面波素子は、高温高湿試験によって、特性が変動してしまうことが発明者らの試験によってわかった。
なお、耐候性を向上させるためにSiN膜を設ける技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)が、高価な製造装置の使用が前提である上に、成膜速度も遅いために実用的ではない。
上記従来技術(特許文献1等)では、完全気密封止のハーメチック構造を持つパッケージとすることを前提としているため、吸湿による特性変動の問題は考慮されていない。一方、小型化等のために、弾性表面波素子をベアチップの状態で扱いたいという要請がある。
この発明は、前記の課題を解決し、例えば、樹脂モールドの状態で、温度特性の補償を行うとともに、吸湿による特性劣化を防止することができる弾性表面波素子を提供することを目的としている。
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、圧電性基板上に電極層が形成された弾性表面波素子であって、前記電極層を覆うように前記圧電性基板上に形成され、前記弾性表面波素子の周波数温度特性を向上させるための第1のSiO2層と、前記第1のSiO2層上に形成され、前記第1のSiO2層における吸湿を抑制するためのSiN層と、前記SiN層上に形成され、前記SiN層を保護するための第2のSiO2層とから成る積層体を含むことを特徴としている。
請求項2の発明は、請求項1記載の弾性表面波素子であって、前記SiN層、及び前記第2のSiO2層は、それぞれ、吸湿を抑制する機能、及び前記SiN層を保護する機能を果たすために適合した厚さに設定されていることを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の弾性表面波素子であって、前記SiN層、及び前記第2のSiO2層の厚さは、ともに、略100nm以下に設定されていることを特徴としている。
請求項1の発明によれば、周波数温度特性を向上させるための第1のSiO2層と、第1のSiO2層における吸湿を抑制するためのSiN層と、SiN層を保護するための第2のSiO2層とを有しているので、例えば、樹脂モールドの状態で、温度特性の補償を行うとともに、吸湿による特性劣化を防止することができる。
次に、この発明の実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
図1は、この発明の一実施の形態による弾性表面波素子の主要部の構成を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、この実施の形態の弾性表面波素子は、圧電性基板1上に形成された電極2と、電極2を覆うように圧電性基板1上に形成された第1SiO2(酸化シリコン)層3と、第1SiO2層3上に形成されたSiN(窒化シリコン)層4と、SiN層4上に形成された第2SiO2層5とから成る積層体7を含んでいる。圧電性基板1の材料としては、例えば、LiTaO3が用いられる。電極2は、例えば、アルミニウム(Al)を用いた櫛形電極である。
第1SiO2層3は、弾性表面波素子の温度特性(周波数温度特性)を補償するための温度補償層として用いられる。このために、LiTaO3とは逆の温度係数を持つSiO2が用いられる。また、SiN層4は、防湿層として用いられる。また、第2SiO2層5は、SiN層4の防湿層としての機能劣化防止のために用いられる。
第1SiO2層3の厚さは、特に限定されない(この実施の形態では、例えば、略1800Å(略180nm)としている。)。また、SiN層4、及び第2SiO2層5の厚さは、ともに、略1000Å(略100nm)以下とするのが好ましい(この実施の形態では、ともに、例えば、略500Å(略50nm)としている。)。
なお、図1では、単一の弾性表面波素子の積層体7について示しているが、実際は、基板(ウェハ)上に複数の弾性表面波素子が形成されてから、ダイシングにより個片化される。
次に、この実施の形態の弾性表面波素子の製造方法について説明する。図2は、同弾性表面波素子の製造方法を説明するための工程図である。まず、図2(a)に示すように、圧電性基板1上に電極2を形成し、電極2を圧電性基板1上に覆うように第1SiO2層3を積層する。
ここで、例えば、圧電性基板1上に、電極2を、マスク蒸着や、フォトリソグラフィ等によって形成した後、図2(a)に示すように、SiO2から成る絶縁層を積層して第1SiO2層3を形成する。
次に、図2(b)に示すように、第1SiO2層3上に、例えば、スパッタ法により、SiN層4を積層する。次に、図2(c)に示すように、例えば、スパッタ法により、SiN層4上に、第2SiO2層5を積層して、積層体7を得る。
積層体7は、樹脂封止され、櫛形の電極から引き出された電極パッド上にバンプ下地金属及びバンプを形成し、この後に、基板から弾性表面波素子が切り出され、ベアチップとして供給される。なお、弾性表面波素子をPC板に搭載してから樹脂を塗布して切り出しても良いし、他の電子部品とともにPC板に搭載した後に樹脂により全体をモールドしても良い。
次に、図1に示す積層構造及び各層の最適な膜厚を得た根拠及びこれに至る経緯について説明する。図3は、同弾性表面波素子を得るための測定に用いた試料の積層体の構成を模式的に示す断面図、図4は、同試料を用いて高温高湿下で測定したフィルタ特性の時間変化を示す特性図、図5は、図4のA部を拡大して示す特性図、図6は、SiO2層の膜厚を変えた同試料を用いて高温高湿下で測定したフィルタ特性の時間変化を示す特性図、図7は、図6のB部を拡大して示す特性図、図8は、SiO2層の膜厚を変えた同試料を用いて高温高湿下で測定したフィルタ特性の時間変化を示す特性図、図9は、図8のC部を拡大して示す特性図、図10は、同試料を用いて恒温槽内で測定したフィルタ特性の時間変化を示す特性図、図11は、図10のD部を拡大して示す特性図、図12は、同弾性表面波素子を得るための別の試料を用いて高温高湿下で測定したフィルタ特性の時間変化を示す特性図、図13は、図12のE部を拡大して示す特性図、図14は、SiO2層及びSiN層の膜厚を変えた同別の試料を用いて高温高湿下で測定したフィルタ特性の時間変化を示す特性図、図15は、図14のF部を拡大して示す特性図、図16は、同弾性表面波素子の積層体を含む試料を用いて高温高湿下で測定したフィルタ特性の時間変化を示す特性図、図17は、図16のG部を拡大して示す特性図、図18は、SiO2層及びSiN層の膜厚を変えた同別の試料を用いて測定したフィルタ温度特性を示す特性図、図19は、同弾性表面波素子の積層体を含む試料を用いて測定したフィルタ温度特性を示す特性図である。
発明者らは、まず、図3に示すような積層体13を含む試料(樹脂封止パッケージサンプル)を用いて、圧電性基板上に形成されたSiO2層の厚さと、フィルタの温度特性との関係について測定した。温度(−30℃〜80℃)と周波数シフトとの間の関係(周波数温度特性)を、SiO2層の厚さを徐々に増加させて調べた。この結果、SiO2層の厚さを増加させると、右下がりの特性直線の負の温度係数が減少し(平坦に近くなり)、20%λ(λ:弾性表面波の波長)程度の厚さで、ほぼ平坦化され、温度補償がほぼ完全になされることがわかった。これより、増加させると、正の温度係数となった。
次に、発明者らは、いくつかの厚さを変えた試料(樹脂封止パッケージサンプル)を、85℃95%の高温高湿槽に入れて、フィルタ特性(周波数と挿入損失との間の関係)の時間変化を調べた。図4及び図5は、厚さ13%λ、図6及び図7は、厚さ20%λ、図8及び図9は、厚さ25%λの場合の測定結果を示す。
図4及び図5において、曲線a1は、樹脂塗布後、曲線a2は、高温高湿槽内投入100時間後、曲線a3は、高温高湿槽内投入500時間後、曲線a4は、高温高湿槽内投入1000時間後の測定結果を示す。
また、図6及び図7において、曲線b1は、樹脂塗布後、曲線b2は、高温高湿槽内投入100時間後、曲線b3は、高温高湿槽内投入500時間後、曲線b4は、高温高湿槽内投入1000時間後の測定結果を示す。
また、図8及び図9において、曲線c1は、樹脂塗布後、曲線c2は、高温高湿槽内投入100時間後、曲線c3は、高温高湿槽内投入500時間後、曲線c4は、高温高湿槽内投入1000時間後の測定結果を示す。
以上の測定結果より、SiO2層での吸湿により特性が変動するとともに、SiO2層の厚さが厚いほど、吸湿量が増加して挿入損失の劣化が大きくなることがわかる。
次に、発明者らは、吸湿後の試料を、130℃の恒温槽に20時間入れて、フィルタ特性の変化について調べた。図10及び図11において、曲線d1は、恒温槽内投入前、曲線d2は、恒温槽内投入20時間後の測定結果を示す。
この測定結果より、恒温槽投入前は、挿入損失が11.5dBであったのが、恒温槽投入後は7.4dBまで回復しており、恒温槽に投入したことで、吸湿した水分が脱離して、略4dBの伝搬損失が回復したと考えられる。
次に、発明者らは、圧電性基板上にSiO2層(3500Å)と、SiN層(1000Å)とを積層した積層体を含む試料、圧電性基板上にSiO2層(1800Å)と、SiN層(500Å)とを積層した積層体を含む試料、及び圧電性基板上に第1SiO2層(1800Å)と、SiN層(500Å)と、第2SiO2層(500Å)とを積層した積層体(この実施の形態の弾性表面波素子の積層体)を含む試料を、85℃95%の高温高湿槽に入れて、フィルタ特性(周波数と挿入損失との間の関係)の時間変化を調べた。図12及び図13は、SiO2層(3500Å)と、SiN層(1000Å)とを積層した積層体を含む試料、図14及び図15は、SiO2層(1800Å)と、SiN層(500Å)とを積層した積層体を含む試料、図16及び図17は、SiN層(500Å)と、第2SiO2層(500Å)とを積層した積層体を含む試料の測定結果を示す。
図12及び図13において、曲線e1は、樹脂塗布後、曲線e3は、高温高湿槽内投入500時間後、曲線e4は、高温高湿槽内投入1000時間後の測定結果を示す。
図14及び図15において、曲線f1は、樹脂塗布後、曲線f2は、高温高湿槽内投入100時間後、曲線f3は、高温高湿槽内投入500時間後、曲線f4は、高温高湿槽内投入1000時間後の測定結果を示す。
図16及び図17において、曲線g1は、樹脂塗布後、曲線g2は、高温高湿槽内投入100時間後、曲線g3は、高温高湿槽内投入500時間後、曲線g4は、高温高湿槽内投入1000時間後の測定結果を示す。
以上の測定結果より、圧電性基板上に第1SiO2層(1800Å)と、SiN層(500Å)と、第2SiO2層(500Å)とを積層した積層体を含む試料の方が、圧電性基板上にSiO2層(3500Å)と、SiN層(1000Å)とを積層した積層体を含む試料、圧電性基板上にSiO2層(1800Å)と、SiN層(500Å)とを積層した積層体を含む試料よりも、高温高湿試験前の最小の挿入損失が小さいことがわかる。
一般に、SiNはSiO2よりも内部応力が大きい膜であるために、応力の大きいSiN膜を第1SiO2層(1800Å)と、第2SiO2層(500Å)とで挟み込むことで、積層膜全体の応力が緩和され、積層膜が一層のSiO2層であるかのような振る舞いを示し、伝搬損失が改善されたものと考えられる。
また、圧電性基板上に第1SiO2層(1800Å)と、SiN層(500Å)と、第2SiO2層(500Å)とを積層した積層体を含む試料の方が、圧電性基板上にSiO2層(3500Å)と、SiN層(1000Å)とを積層した積層体を含む試料、圧電性基板上にSiO2層(1800Å)と、SiN層(500Å)とを積層した積層体を含む試料よりも、高温高湿試験による劣化が減少したことがわかる。
SiN層を薄くした場合に発生するSiN層中のピンホールが、第2SiO2層(500Å)により被覆されると、防湿膜としての機能が損なわれないことがわかった。これは、SiN層中のピンホールが、第2SiO2層によって埋められ、かつ、第2SiO2層が、第1SiO2層よりも先に吸湿し、さらに、防湿膜としてのSiN層が、直接高湿に晒されないことによって、SiN層中にピンホールが存在しても、第1SiO2層に透湿することが防がれていることによる。
次に、発明者らは、圧電性基板上にSiO2層(1800Å)と、SiN層(500Å)とを積層した積層体を含む試料、及び圧電性基板上に第1SiO2層(1800Å)と、SiN層(500Å)と、第2SiO2層(500Å)とを積層した積層体(この実施の形態の弾性表面波素子の積層体)を含む試料について、フィルタの温度特性(温度(−30℃〜80℃)と周波数シフトとの間の関係)を調べた。図18は、圧電性基板上にSiO2層(1800Å)と、SiN層(500Å)とを積層した積層体を含む試料、図19は、圧電性基板上に第1SiO2層(1800Å)と、SiN層(500Å)と、第2SiO2層(500Å)とを積層した積層体を含む試料を用いた場合を示す。それぞれ、直線h1、h2に示すように、略同一の温度特性を示していることがわかる。すなわち、第2SiO2層(500Å)は、温度特性の補償に影響していないことがわかる。
こうして、この実施の形態の構成によれば、第1SiO2層3により、温度特性の補償を行うことができる。かつ、SiN層4により吸湿による特性劣化を防止することができる。さらに、第2SiO2層5により、SiN層4を薄膜化することができるので、伝搬損失を改善することができる。したがって、樹脂封止によって、ベアチップの状態で搭載でき、小型化及び低コスト化に寄与することができる。しかも、高価な製造装置を用いることなく、比較的高速に成膜を行うことができる。
以上、この発明の実施の形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。上述した実施の形態では、圧電性基板の材料として、LiTaO3を用いる場合について述べたが、LiTaO3のほか、LiNbO3や、Li2B4O7、水晶等を用いても良い。また、第1SiO2層3や、SiN(窒化シリコン)層4、第2SiO2層5の成膜は、スパッタ法のほか、CVD法等を用いても良い。また、圧電性基板と電極との間に保護膜を形成しても良い。
電極の材料として、アルミニウムのほか、例えば、アルミニウムを含む合金や、銅(Cu)等を用いる場合に適用できる。
1 圧電性基板
2 電極(電極層)
3 第1SiO2層(第1のSiO2層)
4 SiN層
5 第2SiO2層(第2のSiO2層)
7 積層体
2 電極(電極層)
3 第1SiO2層(第1のSiO2層)
4 SiN層
5 第2SiO2層(第2のSiO2層)
7 積層体
Claims (3)
- 圧電性基板上に電極層が形成された弾性表面波素子であって、
前記電極層を覆うように前記圧電性基板上に形成され、前記弾性表面波素子の周波数温度特性を向上させるための第1のSiO2層と、前記第1のSiO2層上に形成され、前記第1のSiO2層における吸湿を抑制するためのSiN層と、前記SiN層上に形成され、前記SiN層を保護するための第2のSiO2層とから成る積層体を含む
ことを特徴とする弾性表面波素子。 - 前記SiN層、及び前記第2のSiO2層は、それぞれ、吸湿を抑制する機能、及び前記SiN層を保護する機能を果たすために適合した厚さに設定されていることを特徴とする請求項1記載の弾性表面波素子。
- 前記SiN層、及び前記第2のSiO2層の厚さは、ともに、略100nm以下に設定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の弾性表面波素子。
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