JP2011058132A - エアバッグ用基布およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】抗目ズレ性にも優れたコンパクトなエアバッグ用基布を提供する。
【解決手段】合成繊維からなり単繊維繊度が1〜2dtexであるマルチフィラメントをタテ糸およびヨコ糸として構成された織物であり、該織物に平均粒子径10〜50nmの二酸化ケイ素が付着しているエアバッグ用基布。カバーファクターが1600〜2100であることが好ましい。滑脱抵抗力がタテ方向とヨコ方向共に550〜1200Nであることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、エアバッグ用基布ならびにその製造方法に関するものである。
近年、交通安全意識の向上に伴い、自動車の事故が発生した際に乗員の安全を確保するために種々のエアバッグが開発され、その有効性が認識されるに従い、急速に実用化が進んでいる。
エアバッグは、車両が衝突してから極めて短時間に車内で膨張展開することで、衝突の反動で移動する乗員を受け止め、その衝撃を吸収して乗員を保護するものである。この作用上、バッグを構成する布帛の通気量は小さいことが求められている。また、エアバッグ作動時の衝撃に耐える必要から、布帛には一定以上の強度が求められる。さらにエアバッグが膨張展開し、乗員を受け止める際にバッグの内圧を一定以上に保つためにはエアバッグの縫製部の目ズレを極力少なくする、すなわち抗目ズレ性を向上させる必要がある。また、車内の意匠性や他の部品との関係から、収納時のコンパクト性が求められ、さらには低コスト化の要求もより一層高まっている。
従来、これらエアバッグに要求される各特性を向上させる試みとして種々の基布が提案されている。
例えば、縫製部の抗目ズレ性に優れたエアバッグ用基布として、粒子径0.5〜100nmの無水ケイ素を水中に分散せしめた二酸化ケイ素のコロイド溶液に水系シリコーン樹脂を混合させた溶液で処理したエアバッグ用基布が開示されている(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
しかし、これらの技術は、製造方法が極めて複雑であり、さらに抗目ズレの指標として重要な基布特性の1つである滑脱抵抗力の改善はなく、充分に検討したものと言えない。
また、機能性樹脂で被覆された糸条を含有する織糸で構成した織物が特許文献3で提案されているが、表面摩擦が高い織糸を製織することによる製織性に大きな懸念がある。具体的には糸条と織機部品との摩擦により、織機部品の磨耗が極めて顕著になり生産性に大きく影響があり、好ましくない。
滑脱抵抗力が高い基布として、特許文献4には滑脱抵抗力が650〜950Nのエアバッグ用基布が提案されている。しかし、この基布は2300〜2600という高い範囲のカバーファクターにすることで高い滑脱抵抗力を実現しているものであり、そのためコンパクト性がよい基布が得られない。
このように従来の技術では、抗目ズレ性に優れた基布を得るためには機能性化合物を付着させるために極めて複雑な製造方法を取るか、或いは、カバーファクター高くすることでコンパクト性を犠牲にするしかなかった。
特開2002−220780号公報 特開2002−220761号公報 特開2002−363835号公報 特開2006−16707号公報
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものであり、エアバッグ用基布に求められる低通気性と機械的特性を有し、膨張展開後の乗員を受け止める際のエアバッグの縫製部の目ズレが小さいなど抗目ズレ性に優れ、かつこれまでこれらの特性とともに改善することはできなかったエアバッグ収納時のコンパクト性をも兼ね備えたエアバッグ用基布およびエアバッグの提供を目的とするものである。
上記目的を達成するために本発明によれば、
合成繊維からなり単繊維繊度が1〜2dtexであるポリアミドマルチフィラメントをタテ糸およびヨコ糸として構成された織物であり、該織物に二酸化ケイ素が付着していることを特徴とするエアバッグ用基布が提供される。
なお、本発明のエアバッグ用基布においては
二酸化ケイ素の平均粒子径を10〜50nmとすること、
前記基布のカバーファクターが1600〜2100であること、
滑脱抵抗力がタテ方向とヨコ方向共に500〜1200Nであること
試験差圧19.6kPaで測定したときの通気量(AP)が0.5L/cm2/min以下であること
パッカビリティーが1500以下であること
が好ましい条件であり、その製造方法として、
合成繊維からなり単繊維繊度が1〜2dtexであるポリアミドマルチフィラメントをタテ糸およびヨコ糸として構成された織織物を、二酸化ケイ素分散液に含浸させること、
二酸化ケイ素の平均粒子径を10〜50nmとすること、
分散液中の二酸化ケイ素分散量が1重量%以下であること、
二酸化ケイ素分散液に含浸させた後、熱セットすること、が特徴である。
本発明によれば、以下に説明するとおり、抗目ズレ性にも優れたコンパクトなエアバッグが得られる。

以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のエアバッグ用基布は、合成繊維からなり単繊維繊度が1〜2dtexであるマルチフィラメントをタテ糸およびヨコ糸として構成された織物であり、該織物に二酸化ケイ素が付着していることが必要である。
単繊維繊度は1〜2dtexであることが必要であり、1.1〜1.9dtexとすることが好ましく、1.2〜1.8dtexとすることがさらに好ましい。単繊維繊度は1dtexより小さくても問題はないが、現状の技術では安定的に低コストでの製造が困難である。2dtexより大きいと、織物中での単繊維間の空隙が大きくなり、エアバッグ基布として重要な低通気性が損なわれる。
本発明は優れた抗目ズレ性を満足するため、さらに二酸化ケイ素が付着していることを特徴とする。二酸化ケイ素が付着することで繊維表面に凹凸ができ、抗目ズレ性の優れた基布が実現できる。
本発明で使用する二酸化ケイ素の平均粒子径は10〜50nmの範囲が好ましく、10〜20nmがより好ましい。10nmより小さい場合、又は50nmより大きい場合は本発明の目的とする優れた抗目ズレ性が得られない。理由は明確ではないが、粒径が小さすぎると一旦付着しても脱落してしまうため、平均粒径が10nmより小さい場合は脱落する二酸化ケイ素が多くあり、また、粒径が、大きすぎると基布内部まで粒子が到達できずに基布内部の繊維表面に付着できないため、平均粒径が50nmより大きい場合は基布内部に付着する二酸化ケイ素付着が少なくなるためと考えられる。二酸化ケイ素の平均粒子径は動的光散乱法やプローブ顕微鏡により確認できる。
本発明に使用する二酸化ケイ素は、付着量が基布重量に対して0.01〜1重量%の範囲が好ましく、0.01〜0.5重量%であるとさらに好ましい。0.01重量%より小さいと繊維表面の凹凸発生が少なく、抗目ズレ性が得られない。1重量%より大きいと、基布表面の風合いが悪くなる点、基布重量が増える点で好ましくない。
本発明のエアバッグ用基布はカバーファクター(CF)が1600〜2100であることを特徴とする。カバーファクター(CF)はタテ糸或いはヨコ糸に用いる糸の総繊度と基布密度から計算される値であり、タテ糸総繊度をDw(dtex)、ヨコ糸総繊度をDf(dtex)、タテ糸の基布密度をNw(本/2.54cm)、ヨコ糸の基布密度をNf(本/2.54cm)としたとき次式で表す。
CF=(Dw×0.9)1/2×Nw+(Df×0.9)1/2×Nf
本発明のエアバッグ用基布は、タテ方向とヨコ方向の滑脱抵抗力がともに500〜1200Nであることが好ましく、より好ましくは550〜900Nである。
滑脱抵抗力を高くする技術としては、特許文献4のようにカバーファクターを高くする技術が提案されている。これに対し、本発明は、カバーファクターが1600〜2100という、低い範囲でも500〜1200Nという、従来にない極めて高い滑脱抵抗力が得られるものである。
本発明は、単繊維繊度は1〜2dtexのマルチフィラメントを使用した基布に、二酸化ケイ素を付着し、繊維表面に凹凸を発生させることで、低い範囲のカバーファクターでも極めて高い滑脱抵抗力が得られるという、従来にない知見を見出したことによるものである。
且つ、単繊維繊度を従来の技術より細く1〜2dtexとすることで、先行技術文献1及び2のように水系シリコーン樹脂等の物質が一切不要で、二酸化ケイ素粒子だけが充分に基布内部まで浸透し、繊維表面に付着するため非常に簡単且つ安価な製造方法で提供できることを同時に見出したことによる。
本発明のエアバッグ用基布は、JIS L 1096:1999で規定するフラジール形法に基づいて試験差圧19.6kPaで測定したときの通気量(AP)が0.5L/cm・min以下であることが好ましく、より好ましくは0.2〜0.4L/cm・min、さらに好ましくは0.2〜0.3L/cm・minである。通気量を上記の範囲に調整することで、衝突時にインフレーターから発せられる膨張用ガスを漏れなく有効に使用することができ、エアバッグの展開性能が向上し、乗員を確実に受け止めることができる。通気量(AP)が0.5L/cm・minを超えると、乗員の衝突によりエアバッグの膨張状態を維持するのが難しく、乗員拘束性が劣るため好ましくない。
また、本発明のエアバッグ用基布は、ASTM D−6478−02に従って測定したパッカビリティーが1500以下であることが好ましく、より好ましくは1000〜1400であり、さらに好ましくは1100〜1300である。パッカビリティーを上記範囲に調整することで、エアバッグの収納組立作業性が向上し作業効率が向上する。さらに、ハンドル内部に収納する運転席用エアバッグに対しては、折り畳み後のバッグを小さくできるため、ナビゲーションやシフトスイッチ等のボタンをハンドルに追加することが可能となり、自動車の機能性向上に貢献することが可能となる。パッカビリティーが1500を超えると、収納組立作業性が悪化し作業効率が低下する場合があり、特に上述の通り、運転席用エアバッグにおいてナビゲーションやシフトスイッチ等のボタンを追加し、収納スペースが小さいハンドル内にバッグを収納できない場合があり好ましくない。
単繊維繊度が1〜2dtexという単繊維繊度の小さいマルチフィラメントをタテ糸およびヨコ糸として構成された織物により、上記のような優れた通気性やパッカビリティーが可能となる。
本発明のエアバッグ用基布を構成するマルチフィラメントの総繊度は200〜500dtex好ましい、200dtex未満でも問題ないが、製糸性が困難であり、かつ高コストになるため実用的でない。500dtexより大きいと、基布が厚くなりパッカビリティーが1500を超えるので好ましくない。
本発明のエアバッグ基布を構成するマルチフィラメントは合成繊維からなるが、合成繊維としてはナイロン6・6、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン4・6、及びナイロン6とナイロン6・6の共重合、ナイロン6にポリアルキレングリコール、ジカルボン酸やアミンなどを共重合したポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのホモポリエステル、ポリエステルの繰り返し単位を構成する酸成分にイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸またはアジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを共重合したポリエステル繊維、パラファニレンテレフタルアラミド及び芳香族エーテルとの共重合に代表されるアラミド繊維、レーヨン繊維、ポリサルフォン系繊維、超高分子量ポリエチレン繊維および上記合成繊維を主体とする海島構造を有する高分子配列体繊維から構成される合成繊維が用いられる。これらの中でもポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維が好ましく、さらにはナイロン6・6、ナイロン6などのポリアミド繊維が耐衝撃性の面から好ましい。かかる繊維には、原糸の製造工程や加工工程での生産性あるいは特性改善のために通常使用されている各種添加剤を含んでいてもよい。例えば、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、平滑剤、帯電防止剤、可塑剤、増粘剤、顔料、難燃剤などを含有せしめることができる。
次に本発明のエアバッグ用基布の製造方法を説明する。
本発明のエアバッグ用基布の製造方法は、合成繊維からなり単繊維繊度が1〜2dtexであるマルチフィラメントをタテ糸およびヨコ糸として構成された織物を、二酸化ケイ素分散液に含浸させることを特徴とする。
次に、本発明のエアバッグ用基布を構成するマルチフィラメントの製造方法と、エアバッグ用基布を製造する方法について説明する。具体例として、ポリアミドマルチフィラメントの製造方法について以下に詳述する。
ポリアミドマルチフィラメントは公知の溶融紡糸をベースに以下の方法で製造する。
まず、前記したポリアミドチップをエクストルーダー型紡糸機へ供給し、軽量ポンプにより紡糸口金へ配し、290〜300℃で溶融紡糸する。この際、紡糸口金の孔スペックは、単繊維繊度のバラツキを小さくして製織中の毛羽の発生を抑制するために、背面圧を少なくとも60kg/cm以上に設計することが好ましく、80〜120kg/cmとすることがより好ましい。また、同心円上に吐出孔を配列させ、その列数は好ましくは2〜8列、より好ましくは3〜6列である。列数が少なすぎると単繊維間距離が小さくなりすぎ、紡糸中に単繊維同士が衝突し、悪い場合は融着するし、多すぎると冷却斑による単繊維間の物性斑が大きくなるため好ましくない。また、最外周に配列した各吐出孔を同心円として結んだときの直径は、徐冷筒(加熱筒)や環状冷却装置の内径より小さくするが、好ましくは8〜25mm、より好ましくは10〜20mm小さくすればよい。徐冷筒は、溶融紡糸直後の糸を徐冷することで強伸度低下を防止するために設置されているものであり、一般的には冷却前の筒内雰囲気温度を溶融状態で押し出された糸の結晶化温度より高くするために加熱しているか、断熱材を用いて保温している。そのため加熱筒や保温筒などともいう。最外周の孔の位置が徐冷筒(加熱筒)や環状冷却装置に近すぎると、固化前の糸条が装置と接触しやすくなり紡糸が不安定になるし、遠すぎる場合は糸条の冷却が不十分になり、高強度・高伸度のポリアミドマルチフィラメントを得難くなる。
口金より吐出された紡出糸条には水蒸気を付与することが好ましい。ポリアミド繊維の溶融紡糸では、口金直下に不活性ガス、中でも水蒸気を滞留させることが一般的であるが、特に産業用のポリアミド繊維の機械的特性が水蒸気によって変化するといったことは開示されたことはない。驚くべき事に、本発明の環状冷却装置を用いた単糸細繊度の高強度ポリアミドマルチフィラメントの製造においては、水蒸気が強度および伸度をともに向上させ、さらに繊度斑を低下させる効果があることを究明した。水蒸気の吹出し孔は直径0.5〜5mmで長さが1〜10mm程度の公知のものを用いればよい。水蒸気量を過度に多くすると、強度および伸度の低下と繊度斑の悪化、毛羽や糸切れの増大を引き起こすことになるため、吹出し圧力は100〜600Paが好ましく、200〜400Paであるとより好ましい。吹出し圧力は静圧値であり、孔へ流入する蒸気の静圧を静圧測定装置で測定すればよい。
水蒸気を付与された糸条は、円筒状の徐冷筒と円筒状の環状冷却装置を順次通過させることで冷却固化を完了させる。徐冷筒内径は環状冷却装置内径と同じにして、筒内の徐冷筒と環状冷却装置の接触箇所での空気流の乱れを防止することが好ましく、好ましくは30〜150mm、より好ましくは50〜100mm、さらに好ましくは50〜80mmの長さで筒内の雰囲気温度が250〜350℃となるように加熱した後、環状冷却装置を用いて冷却することが好ましい。徐冷筒を用いることで口金面の保温性を高めるとともに糸の変形を緩やかにすることで、タフネス性に優れたポリアミド繊維を得ることができるが、徐冷筒の長さが前記範囲であると、ポリアミド繊維の長手方向の太さ斑がより均一になる。単繊維繊度が1.5dtex未満の場合は、徐冷筒を使用せずに環状冷却装置を設置して、紡出糸条をより早く冷却させ始めることで糸長手方向の太さ斑が極端に悪化するのを防ぐこともできるが、その場合は、口金面を保温して高強度・高伸度のポリアミドマルチフィラメントを得るため、環状冷却装置の最上部から100mm以内の一定の長さで、100〜250℃の熱風を吹き出すようにすることが好ましい。
環状冷却装置による糸条の冷却においては、ポリアミドをガラス転移点まで十分に冷却できるように10〜50℃の冷却風を用いることが好ましい。環状冷却装置の基本構成は公知のものを用いればよい。例えば、多数の毛細管状の孔を有する多孔質の部材から筒体を構成し、冷却筒内部に送られた冷却風が冷却風の吹出箇所から糸条方向へ整流されつつ吹き出されるようにすればよい。また、冷却風速を調節するために、例えば、冷却筒エレメントのエア導入部にパンチング状のプレートやメッシュなど多孔質部材を設置することが好ましい。本発明のエアバッグ用基布を構成する高強度・高伸度な単糸細繊度のポリアミドマルチフィラメントを得るには、以下の特徴を有する構成とすることが好ましい。
冷却風は吐出孔群の外周側から中心側へ吹き出すようにする。この構成とすることで、ポリエステル系に比べ、冷却難度の高いポリアミドマルチフィラメントを充分に冷却するだけの冷却風を供給することができる。中心側から外周側へ吹き出す構成とした場合、本発明のポリアミドマルチフィラメントを得るには単繊維が必要以上に外側へ張り出すため、あるいは過度に長い冷却設備が必要となるため、設備の大型化を招くことになり好ましくない。
冷却筒の長さは、従来提案されている環状冷却設備より相当に長く、冷却風の吹出し長さが600〜1200mmの範囲にすることが好ましく、より好ましくは800〜1000mmである。600mm以上であれば本発明のポリアミドマルチフィラメントを充分に冷却することができ、良好な機械的特性および毛羽品位等を得ることができる。1200mm以下であれば、設備自体が長くなりすぎず好ましい。
冷却筒内と大気圧との差圧は、好ましくは500〜1200Paであり、より好ましくは600〜1100Pa、さらに好ましくは800〜1000Paとなるように加圧して冷却風を送風することが好ましい。差圧は冷却筒へ流入する気体の静圧値を静圧測定装置で測定した値である。従来の横吹出し冷却装置を用いた場合、冷却風を弱めてマルチフィラメントの機械的特性が低下すると毛羽品位も悪化する傾向にあった。ところが環状冷却装置を用いた場合、該差圧が本発明のポリアミドマルチフィラメントの物性に与える影響は小さく、例えば200Pa程度でも延伸倍率の調整のみで機械的特性を調節することができるが、意外にも500Pa以上とすることで毛羽の発生が著しく抑えられることがわかった。また、1200Pa以下とすると、風速が大きくなりすぎず、糸同士の接触を防ぎやすくなるため好ましい。
また、該装置長手方向に対する冷却風の風速は不均一で、上部側風速Vを10〜30m/分、下部側風速Vを40〜80m/分とし、VがVより小さく、V/Vが2〜3であることが好ましい。より好ましいVとVの範囲はそれぞれ15〜25m/分、50〜70m/分である。装置長手方向で少なくとも2段階の大きな風速比率変更を行い、前記風速範囲とすることで、糸長手方向の太さ斑が悪化することなく繊維物性を向上させることができる。特に上部側で徐冷効果を生み出すことによって、繊維のタフネス性が向上し、同一強度とした場合の伸度が2〜5%程度変化する。このような風速比率の変更に関しては、冷却風吹出し部の最上部から全長の10〜50%程度の位置で変更させることが好ましく、より好ましくは15〜45%である。その手段としては、冷却筒の外筒と多孔質部材からなる整流筒の間で、比率を変更したい位置にドーナツ状の多孔質部材を設置することで、該位置を境界に筒中の上下間にさらに差圧を与え、上下の風速を変更する手段や、冷却装置自体を2段構成としてそれぞれの筒内と大気圧との差圧を調節する手段などが考えられるが、いずれの方法を用いても問題はない。
従来の横吹出し冷却設備を用いて総繊度200〜700dtex、単繊維繊度1〜2dtexのポリアミド繊維を製造しようとした場合は、紡出部での糸揺れが激しくなりすぎ、単繊維同士の接触を抑えることができなかったのに対し、前記した本発明の方法では、糸条固化前の冷却風の風速を小さくしても冷却風と紡出糸条との距離が近いため、冷却不足とはならず、かつエアがぶつかりあって下降気流を形成し、冷却風の水平方向速度成分を大きく低下させることができるため、糸揺れを抑えながら製糸可能になるものと推察される。
その後、得られた冷却糸条は公知の方法で油剤を付与し、引き取りロールで引き取り、延伸した後巻き取ることができる。油剤は公知の油剤を用いることができるが、引き取りロール上での単糸巻き付きを抑制するために、その付着量は0.3〜1.5重量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.0重量%である。
また、引き取りロールの回転速度で定義される紡糸速度が500〜1000m/分であることが好ましく、より好ましくは700〜900m/分である。紡糸速度が500m/分以上であると、最終的な生産速度も充分となり、安価にポリアミド繊維を製造できる。1000m/分以下とすると、糸切れや毛羽の多発を防ぐことができ好ましい。
これら前記した方法で得られた紡出糸は、公知の方法を用いて延伸や弛緩熱処理、および巻取り等を行うことができ、例えば、2〜3段で100〜250℃の多段延伸熱処理を施した後、1〜10%で50〜200℃の弛緩熱処理を施すこと等が可能である。
また、糸条に付与する交絡は織機の種類や製織速度にあわせ適宜選択することができるが、本発明による方法であれば過度に交絡を施す必要はなく、15〜30個/mの交絡数が得られるように、交絡付与装置の種類や付与条件を変更すればよい。15個/mを大きく下回っても30個/mを上回っても、高次工程通過性は悪化する傾向となる。同様に交絡の強度も公知の範囲のものを用いればよい。
また、本発明のポリアミド繊維の単糸断面形状は、特に限定されるものではなく、円形でもY型、V型、扁平型等の非円形、さらには中空部を有するものも用いることができるが、円形であることが好ましい。
こうして、従来提案された方法では製糸できなかった総繊度200〜700dtexで単繊維繊度が1〜2dtexのエアバッグ用に適したポリアミドマルチフィラメントを、好ましくは強度8〜9cN/dtex、伸度20〜25%、沸騰水収縮率4〜10%で糸斑なく、安価にかつ優れた製糸性や毛羽品位で得ることが可能となる。すなわち、直接紡糸延伸法により、製糸速度3000m/分以上で、より好ましくは3500m/分以上で、かつ8糸条以上の多糸条同時延伸法を用いて効率良く生産することができる。
次に、本発明のエアバッグ用基布は以下の方法で製造する。
まず、前記した素材および総繊度、単繊維繊度を有するタテ糸を整経して織機にかけ、同様にヨコ糸の準備をする。かかる織機としては例えば、ウォータージェットルーム、エアージェットルームおよびレピアルームなどが使用可能である。中でも生産性を高めるためには、高速製織が比較的容易なウォータージェットルームを用いるのが好ましい。
製織においては、タテ糸張力を75〜230cN/本に調整して行うことが好ましく、より好ましくは100〜200cN/本である。かかる範囲内にタテ糸張力を調整することで、基布を構成するマルチフィラメント糸の糸束中の単繊維間空隙を減少させることができ、したがって通気量を低減させることができる。また、ヨコ糸打ち込み後に、上記張力をかけられたタテ糸がヨコ糸を押し曲げることで、ヨコ糸方向の基布の組織拘束力を高め、基布の抗目ズレ性が向上し、エアバッグとして袋体を形成するときの縫製部分の目ズレによる空気漏れを抑えることができる。タテ糸張力が75cN/本以上であれば、タテ糸とヨコ糸との基布中での接触面積を増やすことができ、滑脱抵抗力が向上する。また、単繊維間空隙を減少させる効果が大きくなるため低通気性基布となり好ましい。また、230cN/本以下であれば、タテ糸が毛羽立たず製織性が良好となる。
以上のようにして得られた基布に、二酸化ケイ素の粒子を付着させる。二酸化ケイ素の平均粒子径は10〜50nmであることが好ましく、10〜20nmであることがより好ましい。本発明の効果を充分に発揮するためには、全ての粒子の粒子径が10〜20nmの範囲内にあることがさらに好ましい。二酸化ケイ素の付着量は、前述のとおり、基布重量に対して0.01〜1重量%の範囲が好ましく、0.01〜0.5重量%であるとさらに好ましい。
次に上述の方法で得られたエアバッグ用基布に二酸化ケイ素を付着させる方法を説明する。
従来、二酸化ケイ素をエアバッグ用基布に付着させるためには、バインダーとして樹脂を用いるか、あるいは二酸化ケイ素をコーティング剤に混合させる方法が取られてきた。そうしないと、一度繊維に付着した二酸化ケイ素粒子が脱落してしまうという問題があった。この問題に対し本発明は、基布を構成するマルチフィラメントの単繊維繊度を従来の技術より細く1〜2dtexとすることで、水系シリコーン樹脂等の物質が一切不要で、二酸化ケイ素粒子だけが充分に基布内部まで浸透し、且つ脱落しないことを見出したことによる。
すなわち、平均粒子径10〜50nmの二酸化ケイ素粒子を水に入れ、分散液を作り、基布を含浸するだけの、非常に簡単かつ安価な製造方法である。
二酸化ケイ素の平均粒子径が10nmより小さい場合、又は50nmより大きい場合は本発明の目的とする優れた抗目ズレ性が得られない。理由は明確ではないが、粒径が小さすぎると一旦付着しても脱落してしまうため、平均粒径が10nmより小さい場合は脱落する二酸化ケイ素が多くあり、また、粒径が、大きすぎると基布内部まで粒子が到達できずに基布内部の繊維表面に付着できないため、平均粒径が50nmより大きい場合は基布内部に付着する二酸化ケイ素付着が少なくなるためと考えられる。なお、二酸化ケイ素の平均粒子径は動的光散乱法やプローブ顕微鏡により確認できる。
まず、二酸化ケイ素分散液を作成するが、分散液中の二酸化ケイ素分散量は0.1〜1重量%の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは0.2〜0.8重量%、さらには0.3〜0.5重量%の範囲が好ましい。0.1重量%より少ないと、二酸化ケイ素の付着量を0.01重量%以上とすることが難しくなる。また、1重量%より多いと付着量が1重量%を超え、一度付着した粒子が脱落する可能性があるため、好ましくない。ここで二酸化ケイ素の分散量は次式で算出する。
二酸化ケイ素分散量(%)= (分散液中の二酸化ケイ素重量/分散液の重量)×100
分散媒としては、粒子の分散媒として通常用いられる液体を使用することができるが、水が好ましい。
次に、上記の分散量に調整した二酸化ケイ素分散液中に基布を含浸させる。含浸時間は分散液が基布に浸透すればよく、特に限定する必要はない。また、含浸させる際の分散液は、常温(20℃前後)〜40℃程度が好ましい。
また、含浸後の基布重量は、含浸前の1.15〜1.4倍に調節することが好ましい。調節方法は特に限定する必要はないが、マングルで基布を絞る方法が好ましい。1.15倍より小さいと二酸化ケイ素の付着量が少なく、本発明の効果が充分に得られない。また1.4倍より多いと、基布に含む水分量が多すぎで、次工程での加工性に影響が出る。
基布を分散液に含浸したら、次に、熱セットする。熱セットの温度や時間は合成繊維の種類にもよるが、例えばポリアミドであれば温度は120〜200℃、時間は30〜60秒が好ましい。熱セットすることにより、寸法安定性に優れた基布が得られる。さらに、二酸化ケイ素分散液に含浸後、予備乾燥機を通して基布を乾燥させた後に熱セットすると、さらに好ましい。
このような製造方法により、二酸化ケイ素の付着量を基布重量に対して0.01〜1重量%の範囲に調節し、繊維表面に凹凸ができた抗目ズレ性の優れたエアバッグ用基布が実現できる。
得られたエアバッグ用基布は通常の方法で縫製してエアバッグとすることができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。本発明における各特性の定義および測定法は以下の通りである。
(1)総繊度
JIS L1013:1999 8.3.1 A法により、所定荷重0.045cN/dtexで正量繊度を測定して総繊度とした。
(2)単繊維数
JIS L1013:1999 8.4の方法で算出した。
(3)単繊維繊度
前記(1)及び(2)項で測定した総繊度を単繊維数で除することで算出した。
(4)強度・伸度
JIS L1013 8.5.1標準時試験に示される定速伸長条件で測定した。試料をオリエンテック社製“テンシロン”(TENSILON)UCT−100を用い、掴み間隔は25cm、引張り速度は30cm/分で行った。なお、伸度はS−S曲線における最大強力を示した点の伸びから求めた。
(5)沸騰水収縮率
原糸をカセ状にサンプリングして、20℃、65%RHの温湿度調整室で24時間以上調整し、試料に0.045cN/dtex相当の荷重をかけて長さLを測定した。次に、この試料を無緊張状態で沸騰水中に30分間浸漬した後、上記温湿度調整室で4時間風乾し、再び試料に0.045cN/dtex相当の荷重をかけて長さLを測定した。それぞれの長さLおよびLから次式により沸騰水収縮率を求めた。
沸騰水収縮率=[(L−L)/L]×100(%)。
(6)繊度斑
ツェルベガー・ウースター(Zellweger USTER)社製のウースター・テスター・モニターC(USTER TESTER MONITOR C)を用いてハーフ値を測定した。INEATモードを使用して、糸条速度25m/分にて125mの測定を行った。
(7)毛羽評価
得られた繊維パッケージを500m/分の速度で巻き返し、巻き返し中の糸条から2mm離れた箇所にヘバーライン社製レーザー式毛羽検知機“フライテックV”を設置し、検知された毛羽総数を10万mあたりの個数に換算して表示した。
(8)風速
KANOMAX社製アネモマスターを各測定点で冷却風吹出部に密着させ測定した。測定点は冷却風吹出部を構成する筒体の上端部より0、50、100mmの位置と100mm以上は100mm毎に筒体の下端部まで、それぞれ円周方向に90度ずつ角度を変え4点測定し、この4点の風速平均を冷却風吹出部上端部からの各距離での風速とした。次いで、上下風速を設備的対応で変更した場合は、該変更位置で上部側と下部側に線引きし、意図的な風速比率変更を行わない場合は、上端部より300mmの位置で上部側と下部側に線引きし、区間風速積分を各有効冷却長で除することによってVとVをそれぞれ求めた。
例えば、筒体上端部よりammの位置の風速をVa、冷却風吹出し長さをLとすると、350mmの位置で意図的に風速比率を変更させた場合の算出法は下記のとおりとなる。
=[50(V+2V50+V100)+100(V100+V200)+150(V200+V300)]/2/350
=[150(V400+V500)+100(V500+V600)+・・・]/2/(L−350)
なお、・・・は600mm以降で最大測定点まで同様に計算して足しあわせることを意味する。
(9)タテ糸・ヨコ糸の基布密度
JIS L 1096:1999 8.6.1に基づき測定した。
試料を平らな台上に置き、不自然なしわや張力を除いて、異なる5か所について2.54cmの区間のタテ糸およびヨコ糸の本数を数え、それぞれの平均値を算出した。
(10)カバーファクター
タテ糸およびヨコ糸の総繊度をそれぞれDw(dtex)、Df(dtex)、タテ糸およびヨコ糸の基布密度をそれぞれNw(本/2.54cm)、Nf(本/2.54cm)とし、
タテ糸カバーファクター:CFw=(Dw×0.9)1/2×Nw
ヨコ糸カバーファクター:CFf=(Df×0.9)1/2×Nf
総カバーファクター :CF=CFw+CFf
として算出した。
(11)基布厚さ
JIS L 1096:1999 8.5に従って、試料の異なる5か所について厚さ測定機を用いて、23.5kPaの加圧下、厚さを落ち着かせるために10秒間待った後に厚さを測定し、平均値を算出した。
(12)引張強度
JIS K 6404:1999−3 6試験方法B(ストリップ法)に従って、タテ方向及びヨコ方向のそれぞれについて、試験片を5枚ずつ採取し、幅の両側から糸を取り除いて幅30mmとし、定速緊張型の試験機にて、つかみ間隔150mm、引張速度200mm/minで試験片が切断するまで引っ張り、切断に至るまでの最大荷重を測定し、タテ方向及びヨコ方向のそれぞれについて平均値を算出した。
(13)破断伸度
JIS K 6404:1999−3 6.試験方法B(ストリップ法)に従って、タテ方向及びヨコ方向のそれぞれについて、試験片を5枚ずつ採取し、幅の両側から糸を取り除いて幅30mmとし、これら試験片の中央部に100mm間隔の標線を付け、定速緊張型の試験機にて、つかみ間隔150mm、引張速度200mm/minで試験片が切断するまで引っ張り、切断に至るときの標線間の距離を読み取り、下記式によって、破断伸度を算出し、タテ方向及びヨコ方向のそれぞれについて平均値を算出した。
E=[(L−100)/100]×100
ここに、E:破断伸度(%)、L:切断時の標線間の距離(mm)。
(14)通気量
JIS L 1096:1999 8.27.1 A法(フラジール形法)に準じて、試験差圧19.6kPaで試験したときの通気量を測定した。試料の異なる5か所から約20cm×20cmの試験片を採取し、口径100mmの円筒の一端に試験片を取り付け、取り付け箇所から空気の漏れが無いように固定し、レギュレーターを用いて試験差圧19.6kPaに調整し、そのときに試験片を通過する空気量を流量計で計測し、5枚の試験片についての平均値を算出した。
(15)滑脱抵抗力
ASTM D6479−02に従って、基布サンプルの端から5mmの位置に目印をつけ、該位置に正確に針を刺し、測定した。
タテ方向の滑脱抵抗力は、ヨコ糸に沿ってピンを刺し、そのピンでヨコ糸をタテ糸方向に移動させるときの最大荷重を測定したものであり、ヨコ方向の滑脱抵抗力は、タテ糸に沿ってピンを刺し、そのピンでタテ糸をヨコ方向に移動させるときの最大荷重を測定したものである。
(16)パッカビリティー
ASTM D6478−02に従って測定した。
<原糸1及び原糸2>
液相重合で得られたナイロン66チップに酸化防止剤として酢酸銅の5重量%水溶液を添加して混合し、ポリマ重量に対し、銅として68ppm添加吸着させた。次に沃化カリウムの50重量%水溶液および臭化カリウムの20重量%水溶液をポリマチップ100重量部に対してそれぞれカリウムとして0.1重量部となるよう添加吸着させ、バッチ式固相重合装置を用いて固相重合させて硫酸相対粘度が3.8のナイロン66ペレットを得た。得られたナイロン66ペレットをエクストルーダーへ供給し、計量ポンプにより総繊度が表1の糸条を2本得るように吐出量を調節して紡糸口金に配し、295℃で溶融紡糸した。ここで、硫酸相対粘度は試料2.5gを96%濃硫酸25ccに溶解し、25℃恒温槽の一定温度下において、オストワルド粘度計を用いて測定した値である。各紡糸口金は、表1に示す単繊維数の糸条を2糸条得ることのできる数、即ち表1に示す単繊維数の2倍の吐出孔が直径0.22mmで4つの同心円上に配置され、最外周の吐出孔群を同心円状に結んだときの直径は、加熱筒および冷却筒の内径より14mm小さいものを用いた。実施例2では、直径2mmで深度が4mmの孔を均等間隔に12個有する円状の水蒸気吹き出し装置から、260℃に加熱した水蒸気を、表1の圧力で糸条吐出面の下方50mmの位置から斜め60℃方向に吹き出させた。さらに口金直下には300℃に加熱した表1の長さの徐冷筒を設け、表1の冷却風吹出し長さを有する円筒状の環状冷却装置を用いて、20℃の冷却風を冷却筒内と大気圧との差圧が表1となるように加圧して送風し、紡出糸条を冷却固化せしめた。冷却筒の冷却風吹出部を構成する筒体としては、厚さ4.6mmで濾過精度40μmの孔を有するフェノール樹脂含浸セルロースリボンを螺旋状に巻き付け筒状に成形した富士フィルター製“フジボン”を用いた。また、冷却筒の冷却風吹出部の上端から350mmの位置に、筒内上下での冷却風の速度を変更させるようにドーナツ状で開口率22.7%のパンチングプレートを配置した。冷却固化された糸条には、次に平滑剤等を有する非水系油剤を付与し、紡糸引き取りローラに捲回し、紡出糸条を引き取った。引き続き、連続して糸条を延伸・熱処理ゾーンに供給し、直接紡糸延伸法によりナイロン66繊維を製造した。この際、最も回転速度の大きい延伸ローラの回転速度(以下、延伸速度)を3600m/分の一定速度とし、引取速度と延伸速度比で表される総合延伸倍率が表1に示される値となるように引き取りローラの回転速度を調節した。
引き取られた糸条は、引き取りローラと給糸ローラの間で5%のストレッチをかけ、次いで給糸ローラと第1延伸ローラの間で該ローラ間の回転速度比が2となるように1段目の延伸、第1延伸ローラと第2延伸ローラの間で2段目の延伸を行った。引き続き、第2延伸ローラと弛緩ローラとの間で6%の弛緩熱処理を施し、交絡付与装置にて糸条を交絡処理した後、巻き取り機にて巻き取った。各ローラの表面温度は、引き取りローラが常温、給糸ローラが40℃、第1延伸ローラが140℃、第2延伸ローラは230℃、弛緩ローラが150℃となるように設定した。また、原糸付着油分量が1.0重量%となるように非水系油剤の付与量を調整した。交絡処理は、交絡付与装置内で走行糸条に直角方向から高圧空気を噴射することにより行った。交絡付与装置の前後には走行糸条を規制するガイドを設け、噴射する空気の圧力は0.35MPaで一定とした。
冷却筒内の上部側および下部側平均風速測定値を含む繊維製造条件と得られたナイロン66繊維の特性を表1に示す。
上記方法を用いて製糸したナイロン66繊維の内50kgを500m/分の速度で巻き返し、レーザー式毛羽検知器を用いて繊維パッケージ内に存在する毛羽を調べた結果も同様に表1に示す。
このような製造方法で総繊度350dtexの192フィラメント(原糸1)、及び総繊度470dtexの384フィラメント(原糸2)のナイロン6・6マルチフィラメントを得た。
<実施例1>
原糸1をタテ糸及びヨコ糸に用いて、ウォータージェットルームで製織し、平織り生機を得た。その生機をアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5g/l及びソーダ灰0.5g/lを含んだ65℃の温水浴中に1分間浸漬して精練処理した後、約20℃の二酸化ケイ素分散液槽に5秒間浸漬させ、次に160℃の温度で1分間予備乾燥を行い、さらに180℃の温度で36秒間熱セットし、エアバッグ用基布1を得た。得られたエアバッグ用基布1の基布密度はタテ59本/2.54cm、ヨコ59本/2.54cmであった。なお、二酸化ケイ素分散液は二酸化ケイ素の平均粒子径10〜20nmのものを二酸化ケイ素分散濃度0.3重量%に調整したものである。
表1を見て分かるように、極めて高い滑脱抵抗力が得られ、低通気度かつ収納性がよいエアバッグ用基布を得ることができた。
<実施例2>
原糸2をタテ糸及びヨコ糸に用いて、ウォータージェットルームで製織し、平織り生機を得た。その後は実施例1と同様な処理を行い、基布密度がタテ50本/2.54cm、ヨコ50本/2.54cmのエアバッグ用基布2を得た。表1を見て分かるように、極めて高い滑脱抵抗力が得られ、低通気度かつ収納性がよいエアバッグ用基布を得ることができた。
<実施例3>
原糸2をタテ糸及びヨコ糸に用いて、ウォータージェットルームで製織し、平織り生機を得た。その後は実施例1と同様な処理を行い、基布密度がタテ46.5本/2.54cm、ヨコ47本/2.54cmのエアバッグ用基布3を得た。表1を見て分かるように、極めて高い滑脱抵抗力が得られ、低通気度かつ収納性がよいエアバッグ用基布を得ることができた。
<比較例1>
原糸1をタテ糸及びヨコ糸に用いて、ウォータージェットルームで製織し平織り生機を得た。その生機をアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5g/l及びソーダ灰0.5g/lを含んだ65℃の温水浴中に1分間浸漬し精練処理した後、二酸化ケイ素分散液に浸漬させることなく160℃の温度で1分間予備乾燥を行い、180℃の温度で36秒間熱セットし、基布密度がタテ59本/2.54cm、ヨコ59本/2.54cmのエアバッグ用基布4を得た。表1を見て分かるように、高い滑脱抵抗力を有したエアバッグ用基布が得られなかった。
<比較例2>
原糸1をタテ糸及びヨコ糸に用いて、ウォータージェットルームで製織し平織り生機を得た。その生機をアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5g/l及びソーダ灰0.5g/lを含んだ65℃の温水浴中に1分間浸漬し精練処理した後、二酸化ケイ素分散液槽に5秒間浸漬させ、160℃の温度で1分間予備乾燥を行い、180℃の温度で36秒間熱セットしエアバッグ用基布5を得た。得られたエアバッグ用基布5の基布密度はタテ59本/2.54cm、ヨコ59本/2.54cmであった。なお、二酸化ケイ素分散液は、二酸化ケイ素の平均粒子径5nmのものを二酸化ケイ素分散濃度0.3重量%に調整したものである。表1を見て分かるように、高い滑脱抵抗力を有したエアバッグ用基布が得られなかった。
<比較例3>
原糸1をタテ糸及びヨコ糸に用いて、ウォータージェットルームで製織し平織り生機を得た。その生機をアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5g/l及びソーダ灰0.5g/lを含んだ65℃の温水浴中に1分間浸漬し精練処理した後、二酸化ケイ素分散液槽に5秒間浸漬させ、160℃の温度で1分間予備乾燥を行い、180℃の温度で36秒間熱セットしエアバッグ用基布6を得た。得られたエアバッグ用基布5の基布密度はタテ59本/2.54cm、ヨコ59本/2.54cmであった。なお、二酸化ケイ素分散液は、二酸化ケイ素の平均粒子径80nmのものを二酸化ケイ素分散濃度0.3重量%に調整したものである。表1を見て分かるように、高い滑脱抵抗力を有したエアバッグ用基布が得られなかった。
<比較例4>
原糸2をタテ糸及びヨコ糸に用いて、ウォータージェットルームで製織し、平織り生機を得た。その後は比較例1と同様な処理を行い、基布密度がタテ46本/2.54cm、ヨコ47本/2.54cmのエアバッグ用基布7を得た。表1を見て分かるように、高い滑脱抵抗力を有したエアバッグ用基布が得られなかった。
<比較例5>
単糸繊度が2dtexより大きいナイロン6・6のマルチフィラメントの製造方法として1500mmの長さを有する横吹出し冷却装置から30m/分の冷却風を均一に吹き出させることによって、総繊度470dtexで単繊維数が136本の糸条を延伸速度が3600m/分で2糸条得ることができるようにした以外は原糸2と同様にして行い、総繊度470dtex、136フィラメント(原糸3)のナイロン6.6マルチフィラメントを得た。上記方法を用いて製糸したナイロン66繊維の内50kgを500m/分の速度で巻き返し、レーザー式毛羽検知器を用いて繊維パッケージ内に存在する毛羽を調べた結果も同様に表1に示す。
原糸3をタテ糸及びヨコ糸に用いて、ウォータージェットルームで製織し、平織り生機を得た。その後は比較例1と同様な処理を行い、基布密度がタテ46本/2.54cm、ヨコ47本/2.54cmのエアバッグ用基布8を得た。表1を見て分かるように、高い滑脱抵抗力と低通気性を有したエアバッグ用基布が得られなかった。
Figure 2011058132
Figure 2011058132
本発明によるエアバッグ用基布は、従来にない単糸細繊度の高強度エアバッグ用原糸から構成されており、エアバッグ用の基布に求められる滑脱抵抗力が大きく向上しており、また低通気性と収納時のコンパクト性の向上も兼ね備えている。そのため、本発明のエアバッグ用基布は、特に運転席、助手席用、側面衝突用サイドエアバッグなどに好適に用いることができるが、その適用範囲がこれらに限られるものではない。

Claims (9)

  1. 合成繊維からなり単繊維繊度が1〜2dtexであるマルチフィラメントをタテ糸およびヨコ糸として構成された織物であり、該織物に平均粒子径10〜50nmの二酸化ケイ素が付着していることを特徴とするエアバッグ用基布。
  2. カバーファクターが1600〜2100であることを特徴とする請求項1記載のエアバッグ用基布。
  3. 滑脱抵抗力がタテ方向とヨコ方向共に550〜1200Nであることを特徴とする請求項1または2項記載のエアバッグ用基布。
  4. 試験差圧19.6kPaで測定したときの通気量(AP)が0.5L/cm2/min以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のエアバッグ用基布。
  5. パッカビリティーが1500以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のエアバッグ用基布。
  6. 合成繊維からなり単繊維繊度が1〜2dtexであるポリアミドマルチフィラメントをタテ糸およびヨコ糸として構成された織物を、二酸化ケイ素分散液に含浸させることを特徴としたエアバッグ用基布の製造方法。
  7. 二酸化ケイ素の平均粒子径が10〜50nmであることを特徴とした請求項6記載のエアバッグ用基布の製造方法。
  8. 二酸化ケイ素分散液中の二酸化ケイ素分散量が0.1〜1重量%以下であることを特徴とした請求項6または請求項7記載のエアバッグ用基布の製造方法。
  9. 二酸化ケイ素分散液に含浸させた後、熱セットすることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項記載のエアバッグ用基布の製造方法。
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