JP2011056800A - インクセットおよび画像形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】顔料、側鎖にアニオン性基を有するグラフトポリマー、および、水性媒体を含有する水性インク組成物と、前記水性インク組成物の成分を凝集させる酸性化合物を含有する処理液と、を含んでインクセットを構成する。
【選択図】なし
Description
またインクジェットインクは、その定着速度と色相互のブリードを考慮し、通常、記録媒体に対する浸透性の高いものが用いられている。そのために、普通紙を用いて画像を形成した場合には、記録媒体内部まで色材が浸透してしまい、記録媒体表面に定着する色材量を充分確保することが出来ず、この結果、発色性のよい記録物を得ることが困難となっている。
本発明は、にじみの発生が抑制され、耐擦性に優れた画像を形成可能なインクセットおよびそれを用いた画像形成方法を提供することを課題とする。
<1> 顔料、側鎖にアニオン性基を有するグラフトポリマー、および、水性媒体を含有する水性インク組成物と、前記水性インク組成物の成分を凝集させる酸性化合物を含有する処理液と、を含むインクセット。
<2> 前記グラフトポリマーの酸価が、5mgKOH/g以上500mgKOH/g未満である前記<1>に記載のインクセット。
<3> 前記アニオン性基は、カルボキシル基である前記<1>または<2>に記載のインクセット。
<4> 前記側鎖はアニオン性基を有する繰り返し単位を含む前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のインクセット。
<5> 前記顔料は、その表面の少なくとも一部が前記グラフトポリマーで被覆されている前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のインクセット。
<6> 前記グラフトポリマーの主鎖は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のインクセット。
(連結基群)
炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数2〜12のアルケニレン基、炭素数2〜12のアルキルエーテル基、−CO−、−NR3−(R3は水素原子または炭素数が1〜6のアルキル基)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−]
<8> 前記水性インク組成物は、水性UV硬化性素材を含む前記<1>〜<7>のいずれか1項に記載のインクセット。
<10> 加熱定着工程をさらに含む前記<9>に記載の画像形成方法。
<11> 硬化定着工程をさらに含む前記<9>または<10>に記載の画像形成方法。
本発明のインクセットは、顔料、側鎖にアニオン性基を有するグラフトポリマー、および、水性媒体を含有する水性インク組成物の少なくとも1種と、前記水性インク組成物の成分を凝集させる酸性化合物を含有する処理液の少なくとも1種と、を含む。
かかる構成のインク組成物と処理液とを用いて画像を形成することにより、にじみの発生が抑制され、耐擦性に優れた画像を形成することができる。また、前記水性インク組成物は、顔料と、側鎖にアニオン性基を有するグラフトポリマーとを含むことで、インクの経時安定性に優れ、インクジェット法によるインクの吐出安定性と吐出回復性に優れる。
本発明の水性インク組成物は、顔料の少なくとも1種と、側鎖にアニオン性基を有するグラフトポリマーの少なくとも1種と、水性媒体とを含有する。本発明におけるグラフトポリマーは、例えば、前記顔料を水性媒体に分散するための分散剤として用いられる。
分散剤として用いられるグラフトポリマーが、側鎖(以下、「枝ポリマー」ということがある)に親水性のアニオン性基を有することにより、主鎖(以下、「幹ポリマー」ということがある)が含むことがある疎水性部分構造(好ましくは、芳香環を含む部分構造)が、顔料表面により効率的に吸着する。また、側鎖が有するアニオン性基の少なくとも一部が中和されることにより、アニオン性基による静電反発と側鎖自体の立体反発の相乗的な作用により、側鎖が水性媒体中により広がった状態となりやすいため、顔料の分散性と経時安定性が向上する。
さらにかかる構成のグラフトポリマー(分散剤)で分散された顔料が、例えば、酸性化合物と接触すると、側鎖が有するアニオン性基が酸性化合物によって中和されて静電反発が減少し、さらにこれに伴って側鎖自体の空間的な広がりが小さくなる。これにより水性媒体中に分散している顔料粒子間の静電反発および立体反発が急激に減少し、顔料分散物が大きな凝集速度で凝集する。その結果、画像のにじみが抑制され、耐擦性に優れた画像を形成することができる。
前記顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機顔料、無機顔料のいずれであってもよい。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、などが挙げられる。前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、などが挙げられる。染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート、などが挙げられる。
上記の顔料は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記顔料は、単独で用いても複数併用してもよい。
本発明におけるグラフトポリマー(以下、「分散剤」ということがある)は、側鎖にアニオン性基の少なくとも1種を有するが、アニオン性基を有する側鎖を含む繰り返し単位と、必要に応じて、下記一般式(1)で表される繰り返し単位と、その他の繰り返し単位とを含んで構成されることが好ましい。
前記アニオン性基としては、水性媒体中でアニオンに解離可能な官能基であれば特に制限はない。例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、及びリン酸基からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。中でも、分散安定性と凝集性の観点から、カルボキシル基であることが好ましい。
前記アニオン性基を有するモノマーとしては、通常用いられるモノマーを特に制限なく用いることができる。
またスルホン酸基を有するモノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコネート等が挙げられる。
またリン酸基を有するモノマーとしては、例えば、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
前記アニオン性基を有するモノマーは1種単独でも、2種類以上を混合して用いても良い。
ノニオン性親水性基としては、水酸基、(窒素原子が無置換の)アミド基及び、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のアルキレンオキシド重合体が挙げられる。
前記ノニオン性親水性基は、ノニオン性親水性基を有する親水性の繰り返し単位として側鎖に含まれることが好ましい。前記ノニオン性親水性基を有する親水性の繰り返し単位を形成するモノマーとしては特に制限はないが、入手性、取り扱い性、汎用性の観点からビニルモノマー類が好ましい。
また前記アルキレンオキシド重合体のアルキレン基としては、親疎水性の観点から炭素数1〜6が好ましく、炭素数2〜6がより好ましく、炭素数2〜4が特に好ましい。またアルキレンオキシド重合体の重合度としては、1〜120が好ましく、1〜60がより好ましく、1〜30が特に好ましい。
カチオン性基を有するモノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−6−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジン等の3級アミン含有ビニルモノマーが挙げられる。
またアンモニウム塩含有モノマーとして、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級化物、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級化物、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート四級化物等が挙げられる。
前記疎水性の繰り返し単位を形成しうるモノマーとしては、入手性、取り扱い性、汎用性の観点から、ビニルモノマー類((メタ)アクレート類、(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、ビニルエステル類等)が好ましい。
これらの例として、(メタ)アクリレート類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、炭素数1〜6のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数1〜4のアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。
これらは、それぞれ1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
アニオン性基を側鎖に有する分散剤の酸価を、5mgKOH/g以上とすることで、解離したカルボキシル基による分散物の荷電反発が十分に得られ、結果として分散性が向上する傾向となる。また、500mgKOH/g未満とすることで、ポリマーの親水性が高くなり過ぎることを抑制し、顔料への吸着性が向上する傾向となる。
以下に分散剤中のアニオン性基を有する側鎖を含む繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明は以下の具体例に制限されるものではない。
尚、下記具体例において、大括弧に囲まれた各繰り返し単位は、それらが側鎖を構成する繰り返し単位であることを意味する。また各繰り返し単位における添え字は、側鎖が有するその繰り返し単位の含有率(%)を質量基準で表したものである。
また、各具体例には繰り返し単位の重量平均分子量(Mw)の例を示した。
また前記アニオン性基を有する側鎖部分の重量分子量としては、分散性と凝集性の観点から、800〜20000であることが好ましく、800〜8000であることがより好ましい。さらにグラフトポリマーの全質量に対する前記アニオン性基を有する側鎖の含有率としては、分散性と凝集性の観点から、1〜40質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましい。
L2は、単結合、または下記の連結基群から選ばれる1種もしくは2種以上を組み合わせてなる2価の連結基を表す。
(連結基群)
炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数2〜12のアルケニレン基、炭素数2〜12のアルキルエーテル基、−CO−、−NR3−(R3は水素原子または炭素数が1〜6のアルキル基)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−。
前記炭素数8以上の縮環型芳香環化合物とは、少なくとも2個以上のベンゼン環が縮環した芳香環、及び/又は、少なくとも1種の芳香環と該芳香環に縮環した脂環式炭化水素から構成される、炭素数8以上の芳香族化合物である。具体的な例としては、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、アセナフテンなどが挙げられる。
ここで、それぞれのベンゼンは互いに複数の連結基で結合されていても良く、複数の連結基は同じであっても異なっていても良い。ベンゼンの数としては、2〜6個が好ましく、2〜3個がより好ましい。2以上のベンゼンが連結した化合物の具体例としては、ビフェニル、トリフェニルメタン、ジフェニルメタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン等が挙げられる。
ここで、例えば、ナフタレンから誘導される1価の基とは、ナフタレンから水素原子が1つ取り除かれて形成される1価の基を意味し、水素原子が取り除かれる位置は特に限定されない。
これらの置換基のうち、2価の置換基を有するArの具体例としては、アントラキノン、ナフトキノン等を挙げることができる。
さらにこれらの置換基は、他の置換基によって、置換されていても良く、この場合の好ましい置換基も上記と同義である。また、置換基を2つ以上有する場合は、それぞれの置換基は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には置換基同士が互いに結合して環を形成していてもよい。
以下に、一般式(1)で表されるモノマーの具体例を挙げるが、本発明は以下の具体例に制限されるものではない。
親水性の繰り返し単位を形成するモノマーとして、具体的には、前記側鎖におけるアニオン性基を有するモノマー、ノニオン性親水性基を有するモノマー、およびカチオン性基を有するモノマーと同じものを挙げることができる。また、疎水性の繰り返し単位を形成するモノマーとして、具体的には、前記側鎖における疎水性の繰り返し単位を形成するモノマーと同じものを挙げることができる。
これらその他の繰り返し単位は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて含むことができる。
前記その他の繰り返し単位の前記グラフトポリマー中における含有率としては、特に制限はなく、必要に応じて適宜選択することができる。例えば、0〜95質量%とすることができ、0〜90質量%であることが好ましく、0〜85質量%であることがより好ましい。
また前記アニオン性官能基以外の官能基を含む繰り返し単位としては、上述のノニオン性親水性基を有する繰り返し単位、疎水性の繰り返し単位等を挙げることができる。
以下に、本発明におけるマクロモノマーの具体例を挙げるが本発明はこれらに限定されるものではない。尚、下記具体例中の繰り返し単位の添え字は、マクロモノマー中における各繰り返し単位の含有率を質量基準で表したものである。
重合の開始方法はラジカル開始剤を用いる方法、光または放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば鶴田禎二「高分子合成方法」改定版(日刊工業新聞社刊、1971)や大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊、124〜154頁に記載されている。
上記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いられる溶剤は、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールのような種々の有機溶剤の単独あるいは2種以上の混合物でも良いし、水との混合溶媒としても良い。
重合温度は生成するポリマーの分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり、通常、0℃〜100℃程度であるが、50〜100℃の範囲で重合を行うことが好ましい。
反応圧力は、適宜選定可能であるが、通常は、1〜100kg/cm2、特に、1〜30kg/cm2程度が好ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。得られたポリマーは再沈澱などの精製を行っても良い。
前記分子量を上記範囲とすることにより、分散剤としての立体反発効果が良好な傾向となり、また立体効果により顔料への吸着時間が短くなる傾向の観点から好ましい。
また、本発明で用いる分散剤の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)で表される)は、1〜6であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。
前記分子量分布を上記範囲とすることにより、顔料の分散時間の短縮、及び分散物の経時安定性の観点から好ましい。ここで数平均分子量及び、重量平均分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用い換算して表した分子量である。
以下に、分散剤の具体例を挙げるが、本発明は以下の具体例に制限されるものではない。
本発明に水性インク組成物に含まれる顔料分散物は、例えば、以下のようにして調製することができる。
顔料分散物は、顔料、分散剤(グラフトポリマー)、前記分散剤を溶解または分散する有機溶剤、及び塩基性物質を含み水を主成分とする溶液を混合した後(混合・水和工程)、有機溶剤の少なくとも一部を除く(溶媒除去工程)ことで調製されることが好ましい。かかる顔料分散物の調製方法によれば、前記顔料が微細に分散され、保存安定性に優れた顔料分散物を製造することができる。
工程(2):前記有機溶剤の少なくとも一部を除去する工程。
前記工程(1)では、まず、前記分散剤を有機溶剤に溶解、または分散させ、これらの混合物を得る(混合工程)。次に顔料、塩基性物質を含み水を主成分とする分散液、水、及び必要に応じて界面活性剤等を、前記混合物に加えて混合、分散処理し、水中油型の顔料分散物を得る。
前記塩基性物質は分散剤のアニオン性基の中和に用いられるが、その中和度には、特に限定がない。通常、最終的に得られる水系顔料分散物の液性が中性、例えば、pHが4.5〜10であることが好ましい。前記分散剤の望まれる中和度により、pHを決めることもできる。
また、これらの有機溶剤は、1種単独で用いても複数併用してもよい。
なお、混練、分散についての詳細は、T.C. Patton著”Paint Flow and Pigment Dispersion”(1964年 John Wiley and Sons社刊)等に記載されている。
また、必要に応じて、縦型若しくは横型のサンドグラインダー、ピンミル、スリットミル、超音波分散機等を用いて、0.01〜1mmの粒径のガラス、ジルコニア等でできたビーズで微分散処理を行なうことにより得ることができる。
前記顔料の分散粒子の平均粒径は、動的光散乱法を用いて測定した体積平均粒径を採用する。
乾燥防止剤は、特に、本発明の水性インク組成物をインクジェット方式による画像記録方法に適用する場合、インク噴射口におけるインクの乾燥によって発生し得るノズルの目詰まりを効果的に防止することができる。
尚、水溶性有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
また、前記水性インク組成物における水の含有率は、目的に応じて適宜選択されるが、通常、10〜95質量%であることが好ましく、30〜90質量%であることがより好ましい。
また樹脂粒子はラテックスの状態で用いることもできる。
樹脂粒子の平均粒径は、1〜300nmの範囲が好ましく、1〜100nmの範囲がより好ましく、1〜30nmの範囲が特に好ましい。また、樹脂微粒子の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもの、いずれでもよい。また、単分散の粒径分布を持つ樹脂微粒子を、2種以上混合して使用してもよい。
さらに樹脂粒子のガラス転移温度Tgは30℃以上であることが好ましく、40℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。
以下に、本発明で用いることのできるエチレン性不飽和結合を有する水溶性重合性化合物および重合開始剤について説明する。
本発明における水性インク組成物は、エチレン性不飽和結合を有する水溶性化合物(以下、「特定重合性化合物」と称することがある)の少なくとも1種を含有することが好ましい。
前記特定重合性化合物は、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する水溶性化合物であれば、どのようなものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態を持つものが含まれる。特定重合性化合物は1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。好ましくは2種以上併用して用いることが、反応性、物性などの性能を制御する上で好ましい。またインクの吐出安定性の観点から、水に対する溶解性が良く、且つ、水性インク組成物中に析出しにくい化合物を用いることが好ましい。
前記特定重合性化合物が、ポリ(エチレンオキシ)鎖、ポリ(プロピレンオキシ)鎖を有する場合、エチレンオキシ単位、およびプロピレンオキシ単位のユニットの数は1〜10の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜5の範囲である。ユニットの数が10以下であることで硬化した時の皮膜の硬度や被記録媒体に対する密着性等が向上する。
本発明において特定重合性化合物は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらに、単官能、2官能、および3官能以上の多官能モノマーの少なくとも3種の特定重合性化合物を併用する態様が、安全性を維持しつつ、更に、感度、滲み、被記録媒体との密着性をより改善することができるという観点から好ましい。
本発明における水性インク組成物は、重合開始剤の少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。重合開始剤としては、特定増感色素と組み合わせて良好な重合開始能を有するものであれば特に限定されるものではなく、公知の重合開始剤の中から選択することができる。重合開始剤の中でも、水溶性であるものが好ましい。「水溶性」の程度としては、25℃において蒸留水に0.5質量%以上溶解することが好ましく、1質量%以上溶解することが好ましく、3質量%以上溶解することが特に好ましい。
上記の重合開始剤のほか、本発明の効果を損なわない範囲で他の重合性開始剤を用いてもよい。また、アシルホスフィンオキシド系化合物との併用も可能である。この場合、水溶性の重合開始剤を用いることが好ましい。「水溶性」については既述と同様である。
例えば、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤、固体湿潤剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、水性インク組成物の調製時、あるいは調製後に添加してもよい。
また、具体的には特開2007−100071号公報の段落番号[0153]〜[0162]に記載のその他の添加剤などが挙げられる。
各種添加剤は、水性インク組成物を調製後に直接添加してもよく、水性インク組成物の調製時に添加してもよい。
本発明のインクセットは、前記水性インク組成物の成分を凝集させる酸性化合物の少なくとも1種を含有する処理液の少なくとも1種を含む。
前記処理液に含まれる酸性化合物は、前記水性インク組成物と接触することで、水性インク組成物中で安定に分散している顔料の凝集を促進し、にじみが抑制され耐擦性に優れた画像を形成することができる。
酸性化合物としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、及びこれらの化合物の誘導体、ならびにこれらの塩等が好適に挙げられる。
酸性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また前記酸性化合物の処理液中における含有量としては、1〜20質量%が好ましく、より好ましくは5〜20質量%であり、更に好ましくは10〜20質量%の範囲である。
中でも、本発明においては、画像濃度、解像度、及びインクジェット記録の高速化の観点から、前記水性インク組成物のpH(25℃)が7.5以上であって、水性液体組成物のpH(25℃)が4以下である場合が好ましい。
本発明の画像形成方法は、被記録媒体上に、既述した本発明のインクセットを用い、前記インクセットに含まれる処理液を、被記録媒体上に付与する処理液付与工程と、前記インクセットに含まれる水性インク組成物を、被記録媒体上にインクジェット法により付与するインク付与工程とを含み、水性インク組成物と処理液とを接触させて画像を形成する構成としたものである。かかる構成であることにより、にじみが少なく耐擦性に優れた画像を形成することができる。
前記本発明のインクセットに含まれる処理液および水性インク組成物は、前述のインクセットの項で記載したとおりであり、好ましい例も同様である。
また、本発明の画像形成方法において用いられるその他の成分等においても同様である。
また、前記インクジェット法により記録を行う際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
尚、前記インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
本発明の画像形成方法においては、前記水性インク組成物が樹脂粒子を含む場合、水性インク組成物が含む樹脂粒子を溶融定着する加熱定着工程をさらに含むことが好ましい。加熱定着処理を施すことにより、被記録媒体上の画像の定着が施され、画像の擦過に対する耐性をより向上させることができる。
また本発明の画像形成方法においては、前記水性インク組成物が水性UV硬化性素材を含む場合、水性インク組成物が含む水性UV硬化性素材を硬化する定着工程をさらに含むことが好ましく、前記定着工程は被記録媒体上に付与された水性インク組成物に活性放射線を照射する硬化工程を含むことが好ましい。活性放射線を照射することで水性インク組成物中の重合性化合物が重合して、顔料を含む硬化膜を形成する。これにより形成される画像の耐擦性がより向上する。
本発明に用いられる活性放射線としては、前記重合性化合物を重合可能なものであれば特に制限はない。例えば、紫外線、電子線等挙げることができ、中でも、汎用性の観点から、紫外線であることが好ましい。
紫外線を照射する手段としては、通常用いられる手段を用いることができ、特に紫外線照射ランプが好適に使用される。
紫外線照射ランプは、水銀の蒸気圧が点灯中で1〜10Paであるような、いわゆる、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、蛍光体が塗布された水銀灯等が好ましい。これらの水銀ランプの紫外線領域の発光スペクトルは、450nm以下、特には184nm〜450nmの範囲であり、黒色或いは、着色された水性インク組成物中の重合性化合物を効率的に反応させるのに適している。また、電源をプリンタに搭載する上でも、小型の電源を使用できるので、適している。水銀ランプには、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンフラッシュランプ、ディープUVランプ、マイクロ波を用い外部から無電極で水銀灯を励起するランプ、UVレーザー等が実用されており、発光波長領域としては上記範囲を含むので、電源サイズ、入力強度、ランプ形状等が許されれば、基本的には適用可能である。光源は、用いる重合開始剤の感度にも合わせて選択する。
本発明の画像形成方法は、被記録媒体に上に画像を記録するものである。
記録媒体には、特に制限はないが、一般のオフセット印刷などに用いられる、いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする一般印刷用紙を用いることができる。セルロースを主体とする一般印刷用紙は、水性インクを用いた一般のインクジェット法による画像記録においては比較的インクの吸収、乾燥が遅く、打滴後に色材移動が起こりやすく、画像品質が低下しやすいが、本発明のインクジェット記録方法によると、色材移動を抑制して色濃度、色相に優れた高品位の画像の記録が可能である。
この場合も、上記と同様に、例えば、乾燥除去工程、加熱定着工程などの他の工程を更に設けることができる。
(マクロモノマーM−1の合成)
攪拌機、冷却管を備えた300mLの三口フラスコに、モノマーとしてt−ブチルメタクリレート40gと、連鎖移動剤として3−メルカプト−1−プロパノール3.5g、開始剤として2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.2gを溶解したTHF120mLを入れ、窒素雰囲気下、65℃に加熱して7時間反応させた。
得られた溶液を放冷し、ジラウリン酸ジブチルすず(IV)70mgと触媒量のヒドロキノンを加え、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート7.6gを滴下した。50℃に昇温し、5時間反応させた後、メタノールと水の混合溶媒で再沈殿を行い精製し、マクロモノマーM−1を26.8g得た。得られたマクロモノマーM−1の重量平均分子量(Mw)は3200であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.95であった。
上記マクロモノマーM−1の合成において、モノマーとしてt−ブチルメタクリレートの代わりに、表1に記載のモノマーを用い、表1に記載のモノマー構成率となるように各モノマーの使用量を適宜変更し、また連鎖移動剤を表1に記載の連鎖移動剤に変更したこと以外は、マクロモノマーM−1の合成と同様にしてマクロモノマーM−2〜M−8をそれぞれ合成した。重量平均分子量および分子量分布を表1に示した。
(グラフトポリマーP−1の合成)
攪拌機、冷却管を備えた300mLの三口フラスコにメチルエチルケトン20gを加え窒素雰囲気下で75℃に加熱した。ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート1.16g、上記で得られたマクロモノマーM−1を15g、メタクリル酸メチル45gをメチルエチルケトン40gに溶解させて得られた溶液を、三口フラスコに3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応した後、メチルエチルケトン0.6gにジメチル2,2’ −アゾビスイソブチレート0.2gを溶解した溶液を加え、80℃に昇温し、4時間加熱攪拌して未反応モノマーをすべて反応させた。モノマーの消失は1H−NMRで確認した。得られた反応溶液にトリフルオロ酢酸17.5gを加え40℃で5時間反応させた。ヘキサンで再沈殿を行い、グラフトポリマーP−1を59g得た。
上記グラフトポリマーP−1の合成において、マクロモノマーM−1および,メタクリル酸メチルに代えて、表2に記載のモノマーを用い、表2に記載のモノマー構成率となるように各モノマーの使用量を適宜変更したこと以外は、グラフトポリマーP−1の合成と同様にしてグラフトポリマーP−2〜P−13、P−17をそれぞれ合成した。重量平均分子量および分子量分布を表2に示した。
尚、表2中、PE200は日油(株)製のポリエチレングリコールモノメタクリレートである。
以下のようにして、水性インク組成物J−1と処理液1からなるインクセットS−1を得た。
[水性インク組成物の調製]
(顔料分散物D−1の調製)
ピグメントブルー15:3(PB15:3、大日精化株式会社製 フタロシアニンブル−A220) 10部と、前記P−1の5部と、メチルエチルケトン42部と、1mol/L NaOH水溶液 5.5部と、イオン交換水87.2部とを混合し、ビーズミルを用い、0.1mmΦジルコニアビーズで、2〜6時間分散した。
得られた分散物を減圧下55℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに一部の水を除去することにより、顔料濃度が10.2質量%の顔料含有樹脂粒子の分散物を得た。さらに、遠心分離機(05P−21、日立製作所製)により30分5000rpmで遠心分離させた後、顔料濃度が5質量%になるようにイオン交換水を添加した。これを2.5μmのメンブレンフィルター(アドバンテック社製)を用いて加圧ろ過させた後、顔料濃度4質量%になるようにイオン交換水を添加し、顔料分散物D−1を得た。
〜インク組成〜
顔料分散物D−1 : 40部
グリセリン : 7部
ジエチレングリコール : 9部
トリエタノールアミン : 1部
オルフィンE1010(日信化学工業(株)製) : 1部
トリエチレングリコールモノブチルエーテル : 9部
イオン交換水 : 34部
東亜DKK(株)製pHメータ−WM−50EGにて、前記水性インク組成物のpHを測定したところ、pHは8.6であった。
下記組成となるように各成分を混合し、処理液1を調製した。処理液1の物性値は、粘度2.6mPa・s、表面張力37.3mN/m、pH1.6(25℃)であった。
〜処理液1の組成〜
・マレイン酸 : 15.0%
(2価のカルボン酸、和光純薬工業(株)製)
・ジエチレングリコールモノメチルエーテル : 20.0%
(和光純薬工業(株)製)
・N−オレオイル−N−メチルタウリンナトリウム : 1.0%
(界面活性剤)
・イオン交換水 : 64.0%
(顔料分散物D−2〜D−28の調製)
実施例1の顔料分散物D−1の調製において、分散剤P−1及びPB15:3に代えて、表3に記載された分散剤および顔料に変更したこと以外は実施例1と同様にして、顔料分散物D−2〜D−28をそれぞれ調製した。
なお、表3に記載の顔料の詳細は下記の通りである。
・C.I.Pigment Red 122(PR122、チバ・ジャパン(株)製 商品名:CROMOPHTAL Jet Magenta DMQ)
・C.I.Pigment Yellow 74(PY74、チバ・ジャパン(株)製 商品名:Irgalite Yellow GS)
・カーボンブラック(CB、degussa社製 商品名:NIPEX180−IQ)
実施例1の水性インク組成物の調製において、顔料分散物D−1の代わりに、下記顔料分散物D−29〜D−36を用いたこと以外は、実施例1と同様にして水性インク組成物J−29〜J−36をそれぞれ調製し、上記処理液1と組み合わせてインクセットS−29〜S−36を得た。
(顔料分散物D−29〜D―36の調製)
実施例1の顔料分散物D−1の調製において、分散剤P−1及びPB15:3に代えて、表3に記載された分散剤および顔料に変更したこと以外は実施例1と同様にして、顔料分散物D−29〜D−36をそれぞれ調製した。
以下のようにして処理液2を調製し、表3に示した水性インク組成物と組み合わせてインクセットS−37〜S−40を得た。
[処理液2の調製]
下記組成となるように各成分を混合し、処理液2を調製した。処理液2の物性値は、pH6.5(25℃)であった。
〜処理液2の組成〜
・硝酸マグネシウム六水和物 : 10%
(多価金属塩)
・グリセリン : 5%
・ジエチレングリコール : 5%
・イソプロピルアルコール : 5%
・アセチレノールEH : 0.2%
(川研ファインケミカル製)
・イオン交換水 : 74.8%
以下のようにしてUV硬化型の水性インク組成物J−37を調製し、上記処理液1と組み合わせてインクセットS−41を得た。
[水性インク組成物J−37の調製]
上記で得られた顔料分散物(D−1)を用い、下記のインク組成となるように各成分を混合した後、遠心分離処理(10000〜20000rpmで30分〜2時間)を行い、水性インク組成物J−37を得た。
〜インク組成〜
・顔料分散物(D−1) : 40部
・例示化合物1−1(重合開始剤) : 3部
・例示化合物2−1(重合性化合物) : 5部
・ヒドロキシエチルメタクリレート(重合性化合物) :15部
・グリセリン : 7部
・ジエチレングリコール : 9部
・トリエタノールアミン : 1部
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製) : 1部
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル : 9部
・イオン交換水 10質量部
得られた水性インク組成物J−37について、東亜DKK(株)製pHメータ−WM−50EGにて、前記水性インクのpHを測定したところ、pHは8.6であった。
上記水性インク組成物J−37の調製において、顔料分散物D−1の代わりに、上記顔料分散物D−37、D−30を用いたこと以外は、上記と同様にして水性インク組成物J−65〜J−66をそれぞれ調製し、インクセットS−69〜S−70を得た。
上記処理液2と、表4に示した水性インク組成物J−45とを組み合わせてインクセットS−71を得た。
[顔料分散物の評価]
(1)粒子径
上記で得られた顔料分散物について、ナノトラック粒度分布測定装置 UPA−EX150(日機装(株)製)を用い、以下の測定条件で動的光散乱法によりの体積平均粒径を測定し、下記評価基準に従って評価した。結果を表3、表4に示す。
測定条件:分散物10μlに対しイオン交換水10ccを加えて、測定用溶液を調製し、25℃で測定した。
〜評価基準〜
◎:平均粒径が70nm以上100nm未満
○:平均粒径が100nm以上130nm未満
△:平均粒径が130nm以上200nm未満
×:平均粒径が200nm以上
上記で得られた顔料分散物を密閉状態で65℃、20日間放置した後、顔料分散物の粒子径および粘度の測定を行った。放置前後の粒子径および粘度の変化を下記の評価基準に従って評価した。
〜評価基準〜
◎:顔料粒子の平均粒径・粘度の変化は全く認められなかった。
○:顔料粒子の平均粒径・粘度の変化は認められなかった。
△:顔料粒子の平均粒径・粘度の変化は僅かに認められたが実用上問題はなかった。
×:顔料粒子の平均粒径・粘度の変化は認められ、実用上問題となった。
なお、粒子径の測定は、上記(1)と同様に行った。また粘度の測定は、TV−22型粘度計(東機産業(株)社製)を用い、25℃で測定を行った。
インクジェット記録装置として、600dpi、256ノズルの試作プリントヘッドを備えたインクジェット記録装置を用い、上記で得られた水性インク(J−1)〜(J−71)をインクジェット記録用水性インクとして用いて評価を行なった。
上記インクジェット記録装置を用いてベタ印画を行った際に、印字開始から印字終了までのインクの飛行曲がりおよびミストの発生について、印画物を観察し、下記基準に従って評価した。
〜評価基準〜
◎:インクの飛行曲がり、ミストがほぼ発生しなかった。
○:発生するが実用上問題ない程度に頻度が低かった。
△:頻繁ではないが、上記○の評価を与えたものに比して発生する頻度が高く、高品位な画質を求める場合には、問題となる可能性があった。
×:頻繁に発生し、実用上問題があった。
上記インクジェット記録装置を用いてベタ印画を行った後、ヘッド部に覆いを被せず空気中に露出した状態で、温度25℃、65%RHで、3週間放置した。その後、再度吐出を行い、その際のインクの吐出状態を観察し、下記基準に従って判定した。
〜評価基準〜
◎:メンテナンスを施さずに吐出が可能であった。
○:所定のメンテナンスを1回施すことで再度吐出が可能となった。
△:所定のメンテナンスを2回施すことで再度吐出が可能となった。
×:所定のメンテナンスを3回行った限りでは、吐出できなかった。
尚、前記所定のメンテナンスとは、15Paの圧力を印加してインクを吐出することで、ヘッドの詰まりを解消する操作をいう。
上記で得られたインクセットS−1〜S−40について以下の評価を行った。
王子製紙(株)製OKトップコート+(記録媒体)を500mm/秒で稼動するステージ上に固定し、インクセットに含まれる処理液(1または2)をワイヤーバーコーターで約1.2μmの厚みとなるように塗布し、直後に50℃で2秒間乾燥させた。
その後、走査方向に対して斜め(75.5度)に配置して固定してあるリコー社製GELJET GX5000プリンターヘッドで解像度1200×1200dpi、打滴量2.4pL、ライン方式でベタ印画した。印画直後、60℃で3秒間乾燥させた。
次いで定着工程として、60℃に加熱された一対の定着ローラ間を通過させ、ニップ圧0.25MPa、ニップ幅4mmで加熱定着処理を実施し(加熱定着工程)、印画サンプルを得た。
得られた印画サンプルについて、印画状態を目視またはルーペで観察し、以下の基準に従って判定した。
〜評価基準〜
◎:ルーペで白抜け部を探すことが難しかった。
○:目視では白抜け部の確認は難しいが、ルーペで白抜け部を探すことができた。
△:目視(ルーペなし)で白抜け部を探すことができた。
×:目視(ルーペなし)で白抜け部を容易に確認できた。
上記印画サンプルについて、王子製紙(株)製OKトップコート+を文鎮(重量470g、サイズ15mm×30mm×120mm、荷重260kg/m2に相当)に巻きつけたもので、印画サンプルを3往復擦って画像はがれを目視で観察し、下記評価基準にしたがって評価した。
尚、3往復で画像はがれが確認できなかった場合には、更に6往復まで擦った。
〜評価基準〜
◎:6往復擦りでも画像のはがれが視認できなかった。
○:4往復擦りで印画サンプル面に画像のはがれが視認できなかったが、6往復擦りでは確認できた。
△:2往復擦りで印画サンプル面に画像のはがれが視認できなかったが、4往復擦りでは確認できた。
×:2往復擦りで印画サンプル面に画像のはがれが視認できた。
上記で得られた評価サンプルを3.5cm×4cmのサイズに2枚裁断し、10cm×10cmのアクリル板(厚み7mm)の上に印画面同士が向かい合うように評価サンプルを重ねて載せ、更にこの評価サンプルの上に重ねて同じサイズに裁断した未印画の特菱アート両面N(三菱製紙(株)製)を10枚載せ、更に10cm×10cmのアクリル板(厚み7mm)を載せ、25℃、50%RHの環境条件下で12時間放置した。
放置後、最上部のアクリル板の上に1kgの分銅を載せて更に24時間放置した(加重700kg/m2に相当)。
更に、25℃、50%RHの環境条件下で2時間保管した後、評価サンプル上に重ねた未印画の特菱アート(未印画紙)を剥がした。このときの剥がれ易さ及び剥がした後の接着を目視で観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。
〜評価基準〜
○:印画面に接着しなかった。
×:印画面に接着が生じ、紙の付着が目視で確認できた。
(硬化定着工程)
UVランプを用いて、露光量が2.5J/cm2となるように紫外線を照射して定着処理を実施し、印画サンプルを得た。
Claims (11)
- 顔料、側鎖にアニオン性基を有するグラフトポリマー、および、水性媒体を含有する水性インク組成物と、
前記水性インク組成物の成分を凝集させる酸性化合物を含有する処理液と、
を含むインクセット。 - 前記グラフトポリマーの酸価が、5mgKOH/g以上500mgKOH/g未満である請求項1に記載のインクセット。
- 前記アニオン性基は、カルボキシル基である請求項1または請求項2に記載のインクセット。
- 前記側鎖はアニオン性基を有する繰り返し単位を含む請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクセット。
- 前記顔料は、その表面の少なくとも一部が前記グラフトポリマーにより被覆されている請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインクセット。
- 前記グラフトポリマーの主鎖は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のインクセット。
[式中、R1は水素原子またはメチル基を表す。L1は、−COO−、−OCO−、−CONR2−(R2は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す)、または置換もしくは無置換のフェニレン基を表す。L2は、単結合、または下記の連結基群から選ばれる1種もしくは2種以上を組み合わせてなる2価の連結基を表す。Arは芳香環を含む基を表す。
(連結基群)
炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数2〜12のアルケニレン基、炭素数2〜12のアルキルエーテル基、−CO−、−NR3−(R3は水素原子または炭素数が1〜6のアルキル基)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−] - 前記一般式(1)におけるArが、ベンゼン、炭素数8以上の縮環型芳香環化合物、芳香環が縮環したヘテロ環化合物、または2以上のベンゼンが連結した化合物から誘導される基である請求項6に記載のインクセット。
- 前記水性インク組成物は、水性UV硬化性素材を含む請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のインクセット。
- 請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の前記インクセットに含まれる処理液を、被記録媒体上に付与する処理液付与工程と、
請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の前記インクセットに含まれる水性インク組成物を、被記録媒体上にインクジェット法により付与するインク付与工程と、
前記水性インク組成物と前記水性液体組成物とを接触させて画像を形成する工程と、を含む画像形成方法。 - 加熱定着工程をさらに含む請求項9に記載の画像形成方法。
- 硬化定着工程をさらに含む請求項9または請求項10に記載の画像形成方法。
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