JP2011050391A - 新規腫瘍抗原蛋白質およびその利用 - Google Patents
新規腫瘍抗原蛋白質およびその利用 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】
ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/またはそれに相補的なポリヌクレオチドを、癌疾患の疾患マーカーとして利用することができる。 また、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87、あるいはそれら由来のペプチドをCTLの誘導剤として用いることができる。
【選択図】 図2
Description
新しい治療法としては、近年これまでの抗癌剤で認められた骨髄抑制に代表される重篤な副作用を持たない治療薬として、新しいコンセプトを有した分子標的治療薬が多く開発、上市されている。乳癌で高発現するHer2分子に対する抗体薬であるハーセプチン、また肺癌で高発現する上皮成長因子受容体(EGF−R)のチロシンキナーゼ阻害剤であるイレッサ等がある。その効果は顕著であり、強い抗腫瘍効果が報告されている。
この腫瘍抗原ペプチドあるいは腫瘍抗原タンパク質をいわゆる癌ワクチンとして利用することにより、腫瘍患者の体内の腫瘍特異的CTLを増強させる治療法が可能となった。
腫瘍抗原タンパク質としては、1991年にT.Boonらが初めてMAGEと名付けたタンパク質をヒトメラノーマ細胞から同定した(Science,254:1643,1991)。その後、いくつかの腫瘍抗原タンパク質が、主にメラノーマ細胞から同定されている。
腫瘍抗原タンパク質や腫瘍抗原ペプチドを腫瘍の治療や診断に応用するために、メラノーマに比べて発生頻度が圧倒的に高い腺癌(肺癌等)などに幅広く適応可能な新たな腫瘍抗原タンパク質および腫瘍抗原ペプチドの同定が望まれている状況にある。
GPR87はEST(expressed sequence tag)あるいはgenome database searchによりクローニングされたGPCR(G蛋白共役型受容体;G−protein coupled receptor)であるが、そのリガンドを含め、生理的機能については不明である。
CKS1は、p27Kip1のユビキチン化を担う酵素(SCFSkp2複合体ユビキチンリガーゼ(E3))の構成因子の1種であるSkp2に結合し、p27Kip1とSkp2との結合能力を高めることが示されている(Ganoth,D.ら、Nature Cell Biol.,3,321−324,(2001))。またCKS1ノックアウトマウス(Spruck,C.ら、Mol.Cell,7,639−650,(2001))ではp27Kip1が異常に蓄積していること等から、p27Kip1のユビキチン化による分解調節において重要な制御分子であると考えられている。CKS1の癌細胞増殖との直接的な関連性については何も知られていない。
また、本発明者は、これら遺伝子がコードするタンパク質を調べ、Activator of S−phase kinase(以下、本明細書において「ASK」という。)、CDC2−associated protein CKS1(以下、本明細書において「CKS1」という。)、maternal emnryonic leucine zipper kinase(以下、本明細書において「MELK」という。)、serine/threonine protein kinase 12(以下、本明細書において「STK12」という。)、TTK protein kinase(以下、本明細書において「TTK」という。)、G protein−coupled receptor 87(以下、本明細書において「GPR87」という。)であることを見出した。
また、上記遺伝子がコードするタンパク由来のペプチドが、IN VIVOでペプチド特異的細胞傷害性T細胞誘導能を有することを見出した。
これらのことから、本発明者は、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子およびGPR87遺伝子、若しくはこれらの発現産物(タンパク質)が癌疾患患者に特異的に見いだされる癌疾患の疾患マーカーで癌細胞増殖に必要な分子であること、およびこれらの発現産物(タンパク質)が新規な腫瘍抗原タンパク質としての活性を有し、これら腫瘍抗原タンパク質由来のペプチドが腫瘍抗原ペプチドとしての活性を有するとの確信を得た。
上記遺伝子の発現抑制や、当該遺伝子によりコードされる蛋白質(ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87)の発現抑制や機能(活性)抑制を指標としたスクリーニング系は、新たなメカニズムに基づく癌疾患の予防、改善または治療薬の探索に有効である。
即ち本発明は、本発明の要旨は、下記に掲げるものである。
(2)癌疾患の検出においてプローブまたはプライマーとして使用される前記(1)に記載の疾患マーカー、
(3)下記の工程(a)、(b)および(c)を含む癌疾患の検出方法:
(a)被験者の生体試料から調製されたRNAまたは該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドと前記(1)または(2)に記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来のRNAまたは該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、癌疾患の罹患を判断する工程、
(4)工程(c)における癌疾患の罹患の判断が、被験者について得られる測定結果を正常者について得られる測定結果と対比して、疾患マーカーへの結合量が増大していることを指標として行われるものである前記(3)に記載の癌疾患の検出方法、
(5)ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87を認識する抗体を含有する、癌疾患の疾患マーカー、
(6)癌疾患の検出においてプローブとして使用される前記(5)に記載の疾患マーカー、
(7)下記の工程(a)、(b)および(c)を含む癌疾患の検出方法:
(a)被験者の生体試料から調製されたタンパク質と前記(5)または(6)に記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来の蛋白質またはその部分ペプチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、癌疾患の罹患を判断する工程、
(8)工程(c)における癌疾患の罹患の判断が、被験者について得られる測定結果を正常者について得られる測定結果と対比して、疾患マーカーへの結合量が増大していることを指標として行われるものである前記(7)に記載の癌疾患の検出方法、
(9)下記の工程(a)、(b)および(c)を含む、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子およびGPR87遺伝子のいずれかの遺伝子の発現を抑制する物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質とASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞の、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかの遺伝子発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記対応する遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかの遺伝子発現量を減少させる被験物質を選択する工程、
(10)下記の工程(a)、(b)および(c)を含むASK、CKS1、MELK、STK12、TTKおよびGPR87のいずれかの発現量を低下させる物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質とASK、CKS1、MELK、STK12、TTK及びGPR87のいずれかを発現可能な細胞または該細胞から調製した細胞画分とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞または細胞画分におけるASK、CKS1、MELK、STK12、TTK及びGPR87のいずれかの発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞もしくは細胞画分における上記既タンパク質の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTK及びGPR87のいずれかの発現量を低下させる被験物質を選択する工程、
(11)下記の工程(a)、(b)および(c)を含む、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKおよびGPR87のいずれかの活性(機能)を阻害する活性を有する物質をスクリーニングする方法:
(a)被験物質をASK、CKS1、MELK、STK12、TTKおよびGPR87のいずれかに接触させる工程、(b)上記(a)の工程に起因して生じるASK、CKS1、MELK、STK12、TTKおよびGPR87のいずれかの活性(機能)を測定し、該活性(機能)を、被験物質を接触させない場合の既タンパク質の活性(機能)と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKおよびGPR87のいずれかの活性(機能)の低下をもたらす被験物質を選択する工程、
(12)次の工程(a)、(b)及び(c)を含むTTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体のkinase活性を抑制する物質をスクリーニングする方法:
(a)被験物質の存在下で、TTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体、基質及びATPを接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じる基質のリン酸化量を測定し、当該基質のリン酸化量を、被験物質非存在下で生じる基質のリン酸化量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、基質のリン酸化量の減少(低下)をもたらす被験物質を選択する工程、
(13)基質がmyeline basic proteinまたはpoly(tyr−Glu)peptideである、TTKのkinase活性を抑制する物質をスクリーニングする前記(12)記載の方法、
(14)基質がhistone H3あるいはこれに由来するペプチドである、STK12のkinase活性を抑制する物質をスクリーニングする前記(12)記載の方法、
(15)基質がmyeline basic proteinである、MELKのkinase活性を抑制する物質をスクリーニングする前記(12)記載の方法、
(16)基質がMCMである、Cdc7/ASK複合体のkinase活性を抑制する物質をスクリーニングする前記(12)記載の方法、
(17)CKS1の活性がE3/CKS1複合体による基質のユビキチン化活性である、前記(11)記載のスクリーニング方法、
(18)次の工程(a)、(b)及び(c)を含むGPR87の活性を抑制する物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質の存在下でGPR87およびGTPを接触させる工程、
(b)上記反応の結果生じるGTP結合量を測定し、当該結合量を、被験物質非存在下で上記(a)の反応を行って生じるGTP結合量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、GTP結合量の減少をもたらす被験物質を選択する工程、
(19)次の工程(a)、(b)及び(c)を含むGPR87の活性を抑制する物質のスクリーニング方法:
(a)GPR87と被験物質を接触させる工程、
(b)上記の反応の結果生じるGPCRを介した生理活性を測定し、当該生理活性を、被験物質非存在下でのGPCRを介した生理活性と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、GPCRを介した生理活性を低下させる被験物質を選択する工程、
(20)癌疾患の予防、改善または治療剤の有効成分を探索するための方法である、前記(9)乃至(19)のいずれかに記載のスクリーニング方法、
(21)ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子およびGPR87遺伝子のいずれかの発現を抑制する物質を有効成分とする癌疾患の予防、改善または治療剤、
(22)ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子およびGPR87遺伝子のいずれかの発現を抑制する物質が、前記(9)記載のスクリーニング法により得られるものである、癌疾患の予防、改善または治療剤、
(23)ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKおよびGPR87のいずれかの発現量、機能または活性を抑制する物質が、前記(9)乃至(19)のいずれかに記載のスクリーニング法により得られるものである、前記(22)記載の癌疾患の予防、改善または治療剤、
(24)ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、
(25)配列番号:26、配列番号:28、配列番号:30、配列番号:32、配列番号:34または配列番号:36に記載のポリヌクレオチド配列を含有する、前記(24)記載のアンチセンスポリヌクレオチド、
(26)ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKおよびGPR87のいずれかを有効成分として含有する細胞傷害性T細胞(以下、CTL)の誘導剤、
(27)ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKおよびGPR87のいずれかの部分ペプチドであって、かつHLA抗原と結合してCTLにより認識されるペプチド、
(28)HLA抗原がHLA−A24である、前記(27)記載のペプチド、
(29)配列番号:37〜配列番号:225のいずれかに記載のアミノ酸配列を含有する、前記(28)記載のペプチド、
(30)配列番号:39、75、95、131、157、161、165、192、194、195、210および222〜225のいずれかに記載のアミノ酸配列を含有する、前記(29)記載のペプチド、
(31)配列番号:37〜配列番号:225のいずれかに記載のアミノ酸配列の第2位のアミノ酸をチロシン、フェニルアラニン、メチオニンまたはトリプトファンに置換し、及び/又はC末端のアミノ酸をフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファンまたはメチオニンに置換したアミノ酸配列を含有するペプチド、
(32)配列番号:39、75、95、131、157、161、165、192、194、195、210および222〜225のいずれかに記載のアミノ酸配列の第2位のアミノ酸をチロシン、フェニルアラニン、メチオニンまたはトリプトファンに置換し、及び/又はC末端のアミノ酸をフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファンまたはメチオニンに置換したアミノ酸配列を含有する、前記(31)記載のペプチド、
(33)前記(27)〜(32)のいずれかに記載のペプチドを有効成分として含有するCTLの誘導剤、
(34)配列番号:13〜18いずれかに記載のアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する核酸を含有してなる、CTLの誘導剤、
(35)前記(27)〜(32)のいずれかに記載のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する核酸、
(36)前記(35)記載の核酸を含有してなるCTLの誘導剤、
(37)以下の(a)〜(d):
(a)配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質、
(b)上記(a)記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する核酸、
(c)前記(27)〜(32)のいずれかに記載のペプチド、および
(d)上記(c)記載のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する核酸、のいずれかと、抗原提示能を有する細胞とをイン・ビトロで接触させることを特徴とする、抗原提示細胞の製造方法、
(38)前記37記載の製造方法により製造される抗原提示細胞、
(39)以下の(a)〜(d):
(a)配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質、
(b)上記(a)記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する核酸、
(c)前記(27)〜(32)のいずれかに記載のペプチド、および
(d)上記(c)記載のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する核酸、のいずれかと、末梢血リンパ球とをイン・ビトロで接触させることを特徴とする、CTLの誘導方法、
(40)前記(39)記載の誘導方法により誘導されるCTL、
(41)前記(27)〜(32)のいずれかに記載のペプチドに特異的に結合する抗体。
更に、本発明によれば、ASK、GPR87、CKS1、MELK、STK12およびTTK、及びこれらに由来するペプチドを有効成分として含有するCTLの誘導剤が提供される。
本発明は、前述するようにASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子およびGPR87遺伝子が、癌疾患の患者組織において発現量および/あるいは発現頻度が有意に上昇し、しかも、これらの遺伝子の発現を抑制することにより癌細胞増殖が抑制されることを見出したことに基づくものである。
更に、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKおよびGPR87、及びこれら由来のペプチドは、CTL誘導剤として用いることができるので、癌疾患の予防、改善及び治療薬として有用である。
本明細書において「遺伝子」または「DNA」とは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖という各1本鎖DNAを包含する趣旨で用いられる。またその長さによって特に制限されるものではない。従って、本明細書において遺伝子(DNA)とは、特に言及しない限り、ヒトゲノムDNAを含む2本鎖DNAおよびcDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)並びに該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖)、およびこれらの断片のいずれもが含まれる。なお、遺伝子またはDNAは、機能領域の別を問うものではなく、例えば発現制御領域、コード領域、エキソン、またはイントロンを含むことができる。
本明細書において「タンパク質」または「(ポリ)ペプチド」には、配列番号:13〜24のいずれかで示される特定のアミノ酸配列の「タンパク質」または「(ポリ)ペプチド」だけでなく、これらと生物学的機能が同等であることを限度として、同族体(ホモログやスプライスバリアント)、変異体、誘導体およびアミノ酸修飾体などが包含される。ここでホモログとしては、ヒトのタンパク質に該当するマウスやラットなど他生物種のタンパク質が例示でき、これらはHomoloGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/HomoloGene/)により同定された遺伝子(ホモログ)の塩基配列から演繹的に同定することができる。また、上記変異体には、天然に存在するアレル変異体、天然に存在しない変異体、及び人為的に欠失、置換、付加および挿入されることによって改変されたアミノ酸配列を有する変異体が包含される。なお、かかる変異体としては、変異のないタンパク質または(ポリ)ペプチドと、少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは95%、さらにより好ましくは97%相同なものを挙げることができる。またアミノ酸修飾体には、天然に存在するアミノ酸修飾体、天然に存在しないアミノ酸修飾体が包含され、具体的にはアミノ酸のリン酸化体が挙げられる。
さらに本明細書において診断対象となる「生体組織」とは、癌疾患に伴い、本発明のASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかの遺伝子が発現上昇する組織を指す。具体的には、肺、乳、結腸、直腸、腎臓、肝臓、卵巣、膵臓、前立腺及び胃などを指す。
従って、これらの遺伝子およびその発現産物〔タンパク質、(ポリ)(オリゴ)ペプチド〕は、癌疾患の解明、診断、予防および治療に有効に利用することができ、かかる利用によって医学並びに臨床上、有用な情報や手段を得ることができる。また、これらの遺伝子およびその発現産物並びにそれらからの派生物(例えばペプチド、抗体など)は、上記癌疾患の治療、並びに該治療に有効に用いられる薬剤の開発に好適に利用することができる。更に上記遺伝子の発現又はその発現産物の検出、または該遺伝子の変異又はその発現不全の検出は癌疾患の解明や診断に有効に利用することができる。
(1)癌疾患の疾患マーカーおよびその応用
(1−1)ポリヌクレオチド
前述のようにヒト由来のASK遺伝子は公知の遺伝子であり、その取得方法についてもKumagai,H.ら、Mol.Cell.Biol.,19,5083−5095,(1999)に記載されるように公知である。
また、ヒト由来のCKS1遺伝子も公知の遺伝子であり、その取得方法についてもRichardson,H.E.ら、Genes Dev.,4,1332−1344,(1990)に記載されるように公知である。
ヒト由来のMELK遺伝子も公知の遺伝子であり、その取得方法についてもNagase,T.ら、DNA Res.,3,17−24.(1996)に記載されるように公知である。
ヒト由来のSTK12遺伝子も公知の遺伝子であり、その取得方法についてもBischoff,J.R.ら、EMBO J.,17,3052−3065.(1998)に記載されるように公知である。
ヒト由来のTTK遺伝子も公知の遺伝子であり、その取得方法についてもLindberg,R.A.ら、Oncogene,8,351−359.(1993).並びにMills,G.B.ら、J.Biol.Chem.,267,16000−16006.(1992)に記載されるように公知である。
ヒト由来のGPR87遺伝子も公知の遺伝子であり、その取得方法についてもWittenberger T.ら、J.Mol.Biol.,307(3),799−813.(2001)、並びにLee D.K.ら、Gene,275(1),83−91.(2001)に記載されるように公知である。
また、上記のポリヌクレオチドは、後述の(3−1)項に記載するような癌疾患の予防、改善または治療に有用な候補物質のスクリーニングにおいて、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現変動を検出するためのスクリーニングツール(疾患マーカー)としても有用である。
具体的には、本発明の疾患マーカーは、配列番号1または配列番号7に記載のASK遺伝子の塩基配列、配列番号2または配列番号8に記載のCKS1遺伝子の塩基配列、配列番号3または配列番号9に記載のMELK遺伝子の塩基配列、配列番号4または配列番号10に記載のSTK12遺伝子の塩基配列、配列番号5または配列番号11に記載のTTK遺伝子の塩基配列、または配列番号6または配列番号12に記載のGPR87遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなるものを挙げることができる。
ここで相補的なポリヌクレオチド(相補鎖、逆鎖)とは、上記各配列番号に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドの全長配列、または該塩基配列において少なくとも連続した15塩基長の塩基配列を有するその部分配列(ここでは便宜上、これらを「正鎖」ともいう)に対して、A:TおよびG:Cといった塩基対関係に基づき、塩基的に相補的な関係にあるポリヌクレオチドを意味するものである。ただし、かかる相補鎖は、対象とする正鎖の塩基配列と完全に相補配列を形成する場合に限らず、対象とする正鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズすることができる程度の相補関係を有するものであってもよい。なお、ここでストリンジェントな条件は、Berger and Kimmel(1987,Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology,Vol.152,Academic Press,San Diego CA)に示されるように、複合体或いはプローブと結合する核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる。例えば、ハイブリダイズ後の洗浄条件として、通常「1xSSC、0.1%SDS、37℃」程度の条件を挙げることができる。相補鎖はかかる条件で洗浄しても対象とする正鎖とハイブリダイズ状態を維持するものであることが好ましい。特に制限されないが、より厳しいハイブリダイズ条件としては「0.5xSSC、0.1%SDS、42℃」程度、さらに厳しいハイブリダイズ条件としては「0.1xSSC、0.1%SDS、65℃」程度の洗浄条件を挙げることができる。具体的には、このような相補鎖として、対象の正鎖の塩基配列と完全に相補的な関係にある塩基配列からなる鎖並びに該鎖と少なくとも90%、好ましくは95%の相同性を有する塩基配列からなる鎖を例示することができる。
上記正鎖のポリヌクレオチドおよび相補鎖(逆鎖)のポリヌクレオチドは、各々一本鎖の形態で疾患マーカーとして使用されても、また二本鎖の形態で疾患マーカーとして使用されてもよい。
(1−2)プローブまたはプライマーとしてのポリヌクレオチド
本発明において癌疾患の検出(診断)は、被験者の生体組織、特に肺、胃、乳、前立腺、肝、腎、卵巣、膵組織等におけるASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子およびGPR87遺伝子の少なくとも1つの発現の有無または発現レベル(発現量)を評価することによって行われる。この場合、上記本発明の疾患マーカーは、上記各遺伝子の発現によって生じたRNAまたはそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に認識し増幅するためのプライマーとして、または該RNAまたはそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に検出するためのプローブとして利用することができる。
上記疾患マーカーを癌疾患の検出(遺伝子診断)においてプライマーとして用いる場合には、通常15bp−100bp、好ましくは15bp−50bp、より好ましくは15bp−35bpの塩基長を有するものが例示できる。また検出プローブとして用いる場合には、通常15bp−全配列の塩基数、好ましくは15bp−1kb、より好ましくは100bp−1kbの塩基長を有するものが例示できる。
本発明疾患マーカーは、ノーザンブロット法、RT−PCR法、in situハイブリダーゼーション法などの、特定遺伝子を特異的に検出する公知の方法において、常法に従ってプライマーまたはプローブとして利用することができる。これによって癌疾患に関連するASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現の有無または発現レベル(発現量)を評価することができる。
また、生体組織におけるASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現レベルは、DNAチップを利用して検出あるいは定量することができる。この場合、本発明疾患マーカーは当該DNAチップのプローブとして使用することができる(例えば、Affymetrix社のGene Chip Human Genome U95 A,B,C,D,Eの場合、25bpの長さのポリヌクレオチドプローブとして用いられる)。本発明の疾患マーカーをプローブとするDNAチップを、生体組織から採取したRNAをもとに調製される標識DNAまたはRNAとハイブリダイズさせることにより、本発明疾患マーカー(プローブ)と標識DNAまたはRNAとの複合体が形成される。該複合体を、該標識DNAまたはRNAの標識を指標として検出することにより、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現の有無または発現レベル(発現量)が評価できる。
本発明の疾患マーカーは、癌疾患の診断、検出(罹患の有無、罹患の程度の診断)に有用である。具体的には、該疾患マーカーを利用した癌疾患の診断は、被験者の生体組織と正常者の生体組織におけるASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の遺伝子発現レベルの違いを判定することによって行うことができる。
本発明は、癌疾患の疾患マーカーとしてのASK遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「ASK」または「ASKタンパク質」ともいう)、CKS1遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「CSK1」または「CSK1タンパク質」ともいう)、MELK遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「MELK」または「MELKタンパク質」ともいう)、STK12遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「STK12」または「STK12タンパク質」ともいう)、TTK遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「TTK」または「TTKタンパク質」ともいう)、またはGPR87遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「GPR87」または「GPR87タンパク質」ともいう)を特異的に認識することができる抗体を提供する。
上記抗体は、従って、被験者における上記タンパク質の発現の有無またはその程度を検出することによって、該被験者が癌疾患に罹患しているか否か、またはその疾患の程度を診断することのできるツール(疾患マーカー)として有用である。
また上記抗体は、後述の(3−2)項に記載するような癌疾患の予防、改善または治療に有用な候補物質のスクリーニングにおいて、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKおよびGPR87のいずれかの発現変動を検出するためのスクリーニングツール(疾患マーカー)としても有用である。
またヒト由来のCKS1は公知のタンパク質であり、その取得方法についてもRichardson,H.E.ら、Genes Dev.,4,1332−1344,(1990)に記載されるように公知である。
ヒト由来のMELKは公知のタンパク質であり、その取得方法についてもNagase,T.ら、DNA Res.,3,17−24.(1996)に記載されるように公知である。
ヒト由来のSTK12は公知のタンパク質であり、その取得方法についてもBischoff,J.R.ら、EMBO J.,17,3052−3065.(1998)に記載されるように公知である。
ヒト由来のTTKは公知のタンパク質であり、その取得方法についてもLindberg,R.A.ら、Oncogene,8,351−359(1993).並びにMills,G.B.ら、J.Biol.Chem.,267,16000−16006(1992)に記載されるように公知である。
ヒト由来のGPR87は公知のタンパク質であり、その取得方法についてもWittenberger T.ら、J.Mol.Biol.,2001,307(3),799−813、並びにLee D.K.ら、Gene,2001,275(1):83−91に記載されるように公知である。
これらの抗体の製造方法は、すでに周知であり、本発明抗体も、これらの常法に従って製造することができる(Current protocols in Molecular Biology edit.Ausubel et al.(1987)Publish.John Wiley and Sons.Section 11.12−11.13)。具体的には、ポリクローナル抗体は、常法に従って大腸菌などで発現し精製したASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87タンパク質を用いて、あるいは常法に従って当該ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを合成して、家兎などの非ヒト動物に免疫し、該免疫動物の血清から常法に従って得ることが可能である。一方、モノクローナル抗体は、常法に従って大腸菌などで発現し精製したASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87、あるいはこれらタンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドをマウスなどの非ヒト動物に免疫し、得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させて調製したハイブリドーマ細胞の中から得ることができる(Current protocols in Molecular Biology edit.Ausubel et al.(1987)Publish.John Wiley and Sons.Section 11.4−11.11)。
具体的には、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87をコードする遺伝子が所望の宿主細胞中で発現できる組み換えDNA(発現ベクター)を作製し、これを宿主細胞に導入して形質転換し、該形質転換体を培養して、得られる培養物から、目的タンパク質を回収することによって、本発明抗体の製造のための免疫抗原としてのタンパク質を得ることができる。また、これらのASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の部分ペプチドは、本発明により提供されるアミノ酸配列の情報(配列番号:13〜24)に従って、一般的な化学合成法(ペプチド合成)によって製造することもできる。
ここで、同等の免疫学的活性を有するタンパク質としては、適当な動物あるいはその細胞において特定の免疫反応を誘発し、かつASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87に対する抗体と特異的に結合する能力を有するタンパク質を挙げることができる。
なお、タンパク質におけるアミノ酸の変異数および変異部位は、その免疫学的活性が保持される限り制限はない。免疫学的活性を消失することなくアミノ酸残基が、どのように、何個置換、挿入あるいは欠失されればよいかを決定する指標は、当業者に周知のコンピュータプログラム、例えばDNA Star softwaret用いて見出すことができる。例えば変異数は、典型的には、全アミノ酸の10%以内であり、好ましくは全アミノ酸の5%以内であり、さらに好ましくは全アミノ酸の1%以内である。また置換されるアミノ酸は、置換後に得られるタンパク質が、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87と同等の免疫学的活性を保持している限り、特に制限されない。この置換されるアミノ酸は、タンパク質の構造保持の観点から、アミノ酸の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性、両親媒性などにおいて置換前のアミノ酸と似た性質を有するアミノ酸であることが好ましい。例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、PheおよびTrpは互いに非極性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、AsnおよびGlnは互いに非荷電性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、AspおよびGluは互いに酸性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、またLys、ArgおよびHisは互いに塩基性アミノ酸に分類されるアミノ酸である。ゆえに、これらを指標として同群に属するアミノ酸を適宜選択することができる。
本発明の抗体は、また、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを用いて調製されるものであってもよい。かかる抗体誘導のために用いられるオリゴペプチドは、機能的な生物活性を有することは要しないが、各々対応する上記タンパク質と同様の免疫原特性を有するものであることが望ましい。好ましくはこの免疫原特性を有し、且つASK、CKS1、MELK、TK12、TTKまたはGPR87のアミノ酸配列において、少なくとも連続する8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、より好ましくは20アミノ酸からなるオリゴペプチドを例示することができる。
かかるオリゴペプチドに対する抗体の製造は、宿主に応じて種々のアジュバントを用いて免疫学的反応を高めることによって行うこともできる。限定はされないが、そのようなアジュバントには、フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、並びにリゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニンおよびジニトロフェノールのような表面活性物質、BCG(カルメット−ゲラン桿菌)やコリネバクテリウム−パルヴムなどのヒトアジュバントが含まれる。
また、既に市販されている抗体である、抗MELK抗体(Goat anti−Human KIAA0175 KInase,Serotec Ltd.)、抗STK12抗体(Rabbit anti−Aurora−B,Zymed Laboratories Inc.)、または抗TTK抗体(Mouse anti−Mps1,Zymed Laboratories Inc.)などを、本発明抗体として用いることもできる。
本発明抗体は、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87に特異的に結合する性質を有することから、該抗体を利用することによって、被験者の組織内に発現した上記タンパク質(その相同物を含む)を特異的に検出することができる。すなわち、当該抗体は被験者の組織内におけるASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の発現の有無およびその発現の程度を検出するためのプローブとして有用である。
具体的には、患者の生体組織(肺、結腸、直腸、腎臓、肝臓、卵巣、膵臓、胃など)の一部をバイオプシなどで採取し、そこから常法に従って調製した組織抽出物やタンパク質を用いて、例えばウェスタンブロット法、ELISA法など公知の検出方法において、本発明抗体を常法に従ってプローブとして使用することによって、ASK、CKS1、MELK、TK12、TTKまたはGPR87を検出することができる。
癌疾患の診断に際しては、被験者の組織などに存在するASK、CKS1、MELK、STK12、TTKおよびGPR87のいずれか少なくとも1つの量と、正常者の組織に存在する当該タンパク質の量と対比して、その違いを判定すればよい。この場合、タンパク質の量の違いには、タンパク質のある/なしと共に、タンパク質の量の違いが2倍以上、好ましくは3倍以上の場合が含まれる。具体的には、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子は癌組織において有意な発現量および/または発現頻度の上昇を示すので、被験者の組織に該遺伝子の発現産物が存在しており、該存在量が正常な組織における発現産物量と比べて2倍以上、好ましくは3倍以上多いことが判定されれば癌疾患の罹患が疑われる。
(2)癌疾患の検出方法(診断方法)
本発明は、前述した本発明疾患マーカーを利用した癌疾患の検出方法(診断方法)を提供する。
具体的には、本発明の検出方法は、被験者の生体試料、例えば、肺、結腸、直腸、腎臓、肝臓、卵巣、膵臓、胃などの組織の一部を、バイオプシなどで採取し、そこに含まれる癌疾患に関連するASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子およびGPR87遺伝子のうち少なくとも1つの発現レベル(発現量)、または該遺伝子に由来するタンパク質であるASK、CKS1、MELK、STK12、TTKおよびGPR87のうち少なくとも1のタンパク質を検出、測定することにより、癌疾患の罹患の有無またはその程度を検出(診断)するものである。また、本発明の検出(診断)方法は、例えば癌疾患患者において、該疾患の改善のために治療薬などを投与した場合における、該疾患の改善の有無またはその程度を検出(診断)することもできる。
本発明の検出方法は、次の(a)、(b)および(c)の工程を含むものである:
(a)被験者の生体試料と本発明疾患マーカーを接触させる工程、
(b)生体試料中のMELK遺伝子、TTK遺伝子、STK12遺伝子、ASK遺伝子、CKS1遺伝子またはGPR87遺伝子の遺伝子発現レベル、あるいはMELK、TTK、STK12、ASK、CKS1またはGPR87のタンパク質の量を、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の結果をもとに、癌疾患の罹患を判断する工程。
ここで用いられる生体試料は、被験者の生体組織(肺、結腸、直腸、腎臓、肝臓、卵巣、膵臓、胃など)から調製される試料を挙げることができる。具体的には、該組織から調製されるRNA含有試料、もしくはそれらから更に調製されるポリヌクレオチドを含む試料、または上記組織から調製されるタンパク質を含む試料を挙げることができる。これらのRNA、ポリヌクレオチドまたはタンパク質を含む試料は、例えば被験者の生体組織の一部をバイオプシなどで採取後、常法に従って調製することができる。
本発明の診断方法は、測定対象として用いる生体試料の種類に応じて、具体的には下記のようにして実施される。
(2−1)測定対象の生体試料としてRNAを利用する場合
測定対象物としてRNAを利用する場合、癌疾患の検出は、具体的に下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む方法によって実施することができる:
(a)被験者の生体試料から調製されたRNAまたはそれらから転写された相補的ポリヌクレオチドと、前記本発明の疾患マーカー(ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の塩基配列において連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又は該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド)とを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来のRNAまたは該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、癌疾患の罹患を判断する工程。
測定対象物としてRNAを利用する場合、本発明検出方法(診断方法)は、該RNA中のASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現レベルを検出し、測定することによって実施される。具体的には、前述のポリヌクレオチドからなる本発明疾患マーカー(ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の塩基配列において連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチドおよび/またはその相補的なポリヌクレオチド)をプライマーまたはプローブとして用いて、ノーザンブロット法、RT−PCR法、DNAチップ解析法、in situハイブリダイゼーション解析法などの公知の方法を行うことにより実施できる。
RT−PCR法を利用する場合、本発明疾患マーカーをプライマーとして用いて、RNA中の、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現の有無や発現レベルを検出、測定することができる。具体的には、まず被験者の生体組織由来のRNAから常法に従ってcDNAを調製し、これを鋳型として標的のASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の領域が増幅できるように、本発明の疾患マーカーから調製した一対のプライマー(上記cDNA(−鎖)に結合する正鎖、+鎖に結合する逆鎖)をこれとハイブリダイズさせる。その後、常法に従ってPCR法を行い、得られた増幅二本鎖DNAを検出する。増幅された二本鎖DNAの検出には、予めRI、蛍光物質などで標識しておいたプライマーを用いて上記PCRを行うことによって産生される標識二本鎖DNAを検出する方法、産生された二本鎖DNAを常法に従ってナイロンメンプレンなどにトランスファーさせて、標識した疾患マーカーをプローブとして使用してこれとハイブリダイズさせて検出する方法などを用いることができる。なお、生成された標識二本鎖DNA産物はアジレント2100バイオアナライザ(横河アナリティカルシステムズ社製)などで測定することができる。また、SYBR Green RT−PCRR eagents(Applied Biosystems社製)で該プロトコールに従ってRT−PCR反応液を調製し、ABI PRIME 7700 Sequence Detection System(Applied Biosystems社製)で反応させて、該反応物を検出することもできる。
測定対象としてタンパク質を用いる場合、本発明検出(診断)方法は、生体試料中のASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87を検出し、その量(レベル)を測定することによって実施される。具体的には、下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む方法によって実施することができる。
(a)被験者の生体試料から調製されたタンパク質と抗体に関する本発明の疾患マーカー(ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87を認識する抗体)とを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来のタンパク質を、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、癌疾患の罹患を判断する工程。
ウエスタンブロット法は、一次抗体として本発明疾患マーカーである上記抗体を用いた後、二次抗体として125Iなどの放射性同位元素、蛍光物質などで標識した標識抗体(一次抗体に結合する標識抗体)を用い、得られる標識結合物の放射性同位元素、蛍光物質などに由来するシグナルを放射線測定器(BAS−1800II:富士フィルム社製など)、蛍光検出器などで検出し、測定することによって実施できる。また、一次抗体として本発明疾患マーカーを用いた後、ECL Plus Western Blotting Detction System(Amersham Pharmacia Biotech社製)を用いて、該プロトコールに従って検出し、マルチバイオイメージャーSTORM860(Amersham Pharmacia Biotech社製)で測定することもできる。
癌疾患の診断は、被験者の生体組織(肺、結腸、直腸、腎臓、肝臓、卵巣、膵臓、胃など)におけるASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の遺伝子発現レベル、もしくはASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87タンパク質の量、機能もしくは活性(以下これらをあわせて「タンパク質レベル」ということがある)を、対応する正常な組織における当該遺伝子発現レベルまたは当該タンパク質レベルと比較し、両者の違いを判定することによって行うことができる。
この場合、正常な組織などから採取、調製した生体試料(RNAまたはタンパク質)が必要であるが、これは癌疾患に罹患していない人の組織あるいは癌疾患に罹患している人の非癌部正常組織などをバイオプシなどで採取したり、死後に本人の同意に基づいて採取された組織から得ることができる。なお、ここで「癌疾患に罹患していない人」とは、少なくとも癌疾患の自覚症状がなく、好ましくは他の検査方法、例えばX線検査などによる検査の結果、癌疾患でないと診断された人をいう。なお、当該「癌疾患に罹患していない人」を、以下、本明細書では単に正常者という場合もある。
被験者が、癌疾患であるかどうかの判断は、該被験者の組織におけるASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の遺伝子発現レベル、またはその発現産物であるASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87のタンパク質レベルが、正常者のそれらと比較して2倍以上、好ましくは3倍以上多いことを指標として行うことができる。被験者の遺伝子発現レベルまたはタンパク質レベルが正常者のそれらのレベルに比べて多ければ、該被験者は癌疾患であると判断できるか、該疾患の罹患が疑われる。
(3−1)遺伝子発現レベルを指標とするスクリーニング方法
本発明は、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかの遺伝子発現を抑制する物質をスクリーニングする方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)および(c)を含む:
(a)被験物質とASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞におけるASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかの遺伝子発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記対応する遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかの遺伝子発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
なお、本発明スクリーニング法に用いられる細胞には、細胞の集合体である組織も含まれる。
本発明のスクリーニング方法によってスクリーニングされる被験物質(候補物質)は、制限されないが、核酸(ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子又はGPR87遺伝子のアンチセンスポリヌクレオチドを含む)、ペプチド、タンパク質、有機化合物、無機化合物などであり、本発明スクリーニングは、具体的にはこれらの被験物質またはこれらを含む試料(被験試料)を上記細胞および/または組織と接触させることにより行われる。被験試料としては、被験物質を含む、細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物、およびこれらの混合物などが挙げられるが、これに制限されない。
また、本発明スクリーニングに際して、被験物質と細胞とを接触させる条件は、特に制限されないが、該細胞が死滅せず且つASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかを発現できる培養条件(温度、pH、培地組成など)を選択するのが好ましい。
すなわち本発明のスクリーニング方法は、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかの遺伝子発現を抑制する物質を探索することによって、癌疾患の予防薬、改善薬又は治療薬の有効成分となる候補物質を提供するものである。
候補物質の選別は、具体的には、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかが発現している細胞を用いる場合は、被験物質(候補物質)を添加した細胞における上記各遺伝子の発現レベルが、被験物質(候補物質)を添加しない細胞のそのレベルに比して低くなることを持って、行うことができる。
より具体的には、例えば、ヒト肺癌細胞株であるHOP62細胞、HOP92細胞、PC−8細胞または11−18細胞を用いて癌疾患の予防薬、改善薬又は治療薬の有効成分となる候補物質をスクリーニングするには、被験物質を加え、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかの遺伝子発現レベルの減少を指標として候補物質を選別することができる。
このような本発明のスクリーニング方法における遺伝子の発現レベルの検出および定量は、前述した細胞から調製したRNAまたは該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドと、本発明疾患マーカーとを用いて、前記(2−1)項に記述したように、ノーザンブロット法、RT−PCR法など公知の方法、DNAチップなどを利用する方法などに従って実施できる。指標とする遺伝子発現レベルの低下(抑制・減少)の程度は、被験物質(候補物質)を添加した細胞におけるASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子及びGPR87遺伝子のいずれかの遺伝子発現が、被験物質(候補物質)を添加しない対照細胞での発現量と比較して、10%、好ましくは30%、特に好ましくは50%以上の低下(抑制・減少)を例示することができる。
また、ここでASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子又はGPR87遺伝子の発現制御領域は、例えば(i)5’−RACE法(例えば、5’ full Race Core Kit(宝酒造社製)等を用いて実施される)、オリゴキャップ法、S1プライマーマッピング等の通常の方法により、5’末端を決定するステップ;(ii)Genome Walker Kit(クローンテック社製)等を用いて5’−上流領域を取得し、得られた上流領域について、プロモーター活性を測定するステップ;を含む手法等により同定することができる。なお、ASK遺伝子の発現調節に関してはYamada M.ら、J.Biol.Chem.,277(31),27668−27681.(2002)などに記載されている。また融合遺伝子の作成、およびマーカー遺伝子由来の活性測定は、公知の方法で行うことができる。
本発明は、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTK及びGPR87のいずれかの発現量を抑制する物質をスクリーニングする方法を提供する。
本発明スクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)および(c)を含む:
(a)被験物質とASK、CKS1、MELK、STK12、TTK及びGPR87のいずれかを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞におけるASK、CKS1、MELK、STK12、TTK及びGPR87のいずれかの発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTK及びGPR87のいずれかの発現量を抑制する被験物質を選択する工程。
候補物質の選別は、具体的には、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTK及びGPR87のいずれかを発現産生している細胞を用いる場合は、被験物質(候補物質)を添加した細胞におけるASK、CKS1、MELK、STK12、TTK及びGPR87のいずれかのタンパク量(レベル)が、被験物質(候補物質)を添加しない細胞のその量(レベル)に比して低くなることを指標として行うことができる。
本発明のスクリーニング方法にかかるASK、CKS1、MELK、STK12、TTK及びGPR87のいずれかの産生量は、前述したように、例えば、本発明疾患マーカーとして抗体(例えばヒトASKタンパク質又はそのホモログ、ヒトCKS1タンパク質又はそのホモログ、ヒトMELKタンパク質又はそのホモログ、ヒトSTK12タンパク質又はそのホモログ、ヒトTTKタンパク質又はそのホモログあるいはヒトGPR87タンパク質又はそのホモログを認識する抗体)を用いたウエスタンブロット法などの公知方法に従って定量できる。ウエスタンブロット法は、一次抗体として本発明疾患マーカーを用いた後、二次抗体として125Iなどの放射性同位元素、蛍光物質などで標識した一次抗体に結合する抗体を用いて標識し、これら標識物質由来のシグナルを放射線測定器(BAS−1800II:富士フィルム社製など)、蛍光検出器などで測定することによって実施できる。また、一次抗体として本発明疾患マーカーを用いた後、ECL Plus Western Blotting Detction System(Amersham Pharmacia Biotech社製)を利用して、該プロトコールに従って検出し、マルチバイオイメージャーSTORM860(Amersham Pharmacia Biotech社製)で測定することもできる。
本発明スクリーニング方法によってスクリーニングされる被験物質(候補物質)は、制限されないが、核酸(ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子又はGPR87遺伝子のアンチセンスポリヌクレオチドを含む)、ペプチド、タンパク質、有機化合物、無機化合物などであり、本発明スクリーニングは、具体的にはこれらの被験物質またはこれらを含む試料(被験試料)を上記細胞または細胞画分と接触させることにより行われる。被験試料としては、被験物質を含む、細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物などが挙げられるが、これらに制限されない。
本発明は、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の活性(機能)を抑制する物質をスクリーニングする方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法は次の工程(a)、(b)及び(c)を含む:
(a)被験物質をASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87に接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じるASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の活性(機能)を測定し、該活性(機能)を被験物質を接触させない場合のASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の活性(機能)と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の活性(機能)の低下をもたらす被験物質を選択する工程。
実施例に示すように、癌(悪性腫瘍)に罹患した患者の癌組織では、正常な対応する組織に比して、特異的にASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現上昇および/または発現頻度上昇が認められる。またASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現を抑制することにより癌細胞株増殖が抑制される。これらの知見から、これらの遺伝子の発現産物(タンパク質)の機能(活性)亢進は、癌(悪性腫瘍)細胞増殖と関連していると考えられる。よって本発明のスクリーニング方法には、これらASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の機能(活性)を指標として、該タンパク質の機能(活性)を抑制する物質を探索する方法が包含される。本発明スクリーニング方法によれば、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の機能または活性を抑制する物質を探索でき、かくして癌(悪性腫瘍)細胞増殖の緩和/抑制作用を有する(癌に対して改善/治療効果を発揮する)候補物質が提供される。
本発明スクリーニング方法によってスクリーニングされる被験物質(候補物質)は、制限されないが、核酸、ペプチド、蛋白質(ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87に対する抗体を含む)、有機化合物、無機化合物などであり、本発明スクリーニングは、具体的にはこれらの被験物質またはこれらを含む試料(被験試料)を上記水溶液、細胞または細胞画分と接触させることにより行われる。被験試料としては、被験物質を含む、細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物などが挙げられるが、これらに制限されない。
(3−3−1)TTK、STK12、MELKおよびASKの機能(活性)に基づくスクリーニング方法
TTK、STK12及びMELKはいずれもkinaseファミリーに属することが知られている(Winey,M.ら、Oncogene,21,6161−6169.(1991),Bischoff,J.R.ら、Trends Cell Biol.,9,454−459.(1999),Heyer,B.S.ら、Mol.Reprod.Dev.,47,148−156.(1997).)。従って、これらTTK、STK12またはMELKの公知の機能または活性の低下をもたらす被験物質(候補物質)のスクリーニングは、TTK、STK12またはMELKのkinase活性により生じた基質のリン酸化量を指標にして行うことができる。また、ASKにおいても、Cdc7/ASK複合体がkinase活性を示すため、Cdc7/ASK複合体のkinase活性を指標としてスクリーニングをすることができる。候補物質は、例えば、被験物質(候補物質)の存在下でTTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体に、基質とATPとを反応させて生じた基質のリン酸化量が、被験物質(候補物質)の非存在下で反応させて生じた基質のリン酸化量に比して減少する(低下する)場合に、選択することができる。
(a)被験物質の存在下で、TTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体、基質及びATPを接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じる基質のリン酸化量を測定し、当該基質のリン酸化量を、被験物質非存在下で生じる基質のリン酸化量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、基質のリン酸化量の減少(低下)をもたらす被験物質を選択する工程。
前記形質転換細胞は、Molecular Cloning 2nd Edt.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)等の基本書に従い、当業者にとって公知の方法で調製することができる。例えば、TTK遺伝子、STK12遺伝子、MELKまたはCdc7/ASK複合体遺伝子をpcDNA3.1誘導体(インビトロジェン社)、FLAG expression vector(シグマアルドリッチ社)、pGEX vector(アマシャムバイオサイエンス社)などの公知のTTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体のみを発現可能なベクターあるいは、精製物(単離物)精製用のタグとの融合蛋白を発現可能な発現ベクターに挿入する。その後、適当な宿主に導入し、培養することにより、導入したTTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体のDNAに対応するタンパク質を発現させた形質転換細胞を作製することができる。宿主としては、例えば、一般的に広く普及している、CHO細胞、C127細胞、BHK21細胞、COS細胞などを挙げることができるが、これらに限定されず、酵母、細菌、昆虫細胞などを用いるてもよい。またタグとしては、例えば、Mycタグ、Hisタグ、FLAGタグ、GSTタグなどの従来公知のタグを挙げることができる。
前記TTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体を天然に発現する細胞、あるいはTTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体を発現する形質転換細胞は、そのままスクリーニングに用いることができるが、これらの細胞から単離、精製されたTTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体の精製物(単離物)をスクリーニングに用いることもできる。TTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体の精製物(単離物)を得るためには、公知の一般的な方法でTTK、STK12、MELKまたはCdc7/ASK複合体を単離、精製すればよい。例えば、細胞に溶解液を添加して細胞を可溶化後、ホモジナイズし、遠心分離することによりkinaseを含有する可溶化画分(上清)を得る。この得られた可溶化画分を、前記kinase特異的抗体あるいは融合蛋白のタグ部分を特異的に認識する抗体を結合させたカラム、ビーズ等により常法で単離、精製することができる。
これら基質は、未標識で用いても良いし、任意の標識物質で標識されたものを用いることもできる。
基質を未標識で用いる場合には、トレーサーとしてγ32P−ATPあるいはγ33P−ATPを用いることもできる。ここで標識物質として、放射性同位体(32P、33P等)、蛍光物質(Chromagen社NorthernLight(登録商標)、StarBright(登録商標)、Green Fluorophore Protein Labeling Kit等)およびビオチン(Pierce社EZ−Link Biotinylation Kits等)などを例示することができる。
上記の数値を、被験化合物の代わりに溶媒をブランクとして用いて実施した場合の値(対照リン酸化量)と比較することにより、被験化合物が、前記kinaseのkinase活性を阻害するか否かを評価することができる。すなわち候補物質のスクリーニングは、被験物質存在下でのリン酸化基質量が、被験物質非存在下でのリン酸化基質量に比して、減少するか否かを指標にして行うことができる。
{1−(被験物質を添加した場合の本発明タンパク質による基質のリン酸化量)/(被験物質非添加時における本発明タンパク質による基質のリン酸化量)}X100
で、算出することによって求めることができる。
TTKの有するkinase活性に基づく本発明のスクリーニングとしては、次の工程(a)、(b)及び(c)を含むものが例示される:
(a)被験物質の存在下で、TTKを発現する細胞又は該細胞から精製したTTK蛋白、放射線標識したATPおよび基質を接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じる基質のリン酸化量を測定し、当該基質のリン酸化量を、被験物質非存在下で生じる基質のリン酸化量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、基質のリン酸化量の減少(低下)をもたらす被験物質を選択する工程。
STK12の有するkinase活性に基づく本発明のスクリーニングとしては、次の工程(a)、(b)及び(c)を含むものが例示される:
(a)被験物質の存在下で、STK12を発現する細胞又は該細胞から精製したSTK12蛋白、放射線標識したATPおよび基質を接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じる基質のリン酸化量を測定し、当該基質のリン酸化量を、被験物質非存在下で生じる基質のリン酸化量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、基質のリン酸化量の減少(低下)をもたらす被験物質を選択する工程。
MELKの有するkinase活性に基づく本発明のスクリーニングとしては、次の工程(a)、(b)及び(c)を含むものが例示される:
(a)被験物質の存在下で、MELKを発現する細胞又は該細胞から精製したMELK蛋白、放射線標識したATPおよび基質を接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じる基質のリン酸化量を測定し、当該基質のリン酸化量を、被験物質非存在下で生じる基質のリン酸化量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、基質のリン酸化量の減少(低下)をもたらす被験物質を選択する工程。
ここでMELKの基質としてはmyeline basic protein等を挙げることができる。
ASKの有するkinase活性に基づく本発明のスクリーニングとしては、次の工程(a)、(b)及び(c)を含むものが例示される:
(a)被験物質の存在下で、Cdc7/ASK複合体を発現する細胞又は該細胞から精製したCdc7/ASK複合体蛋白、放射線標識したATPおよび基質を接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じる基質のリン酸化量を測定し、当該基質のリン酸化量を、被験物質非存在下で上記(a)の反応を行って生じる基質のリン酸化量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、基質のリン酸化量の減少(低下)をもたらす被験物質を選択する工程。
ここでCdc7/ASK複合体の基質としてはMCM等を挙げることができる。
(3−3−2)CKS1の機能(活性)に基づくスクリーニング
CKS1については、E3/CKS1複合体がp27Kip1をユビキチン化する性質が知れられている。そのため、CKS1の公知の機能(活性)の低下をもたらす被験物質(候補物質)のスクリーニングは、E3/CKS1複合体が基質p27Kip1をユビキチン化する性質を利用して行うことができる。
従って、本発明のスクリーニングは、E3/CKS1複合体の基質p27Kip1に対するユビキチン化活性を被験物質(候補物質)が阻害(抑制)するか否かを測定することによって行うことができ、次の工程(a)、(b)及び(c)を含むものが例示される:
(a)被験物質の存在下で、E3/CKS1複合体を発現する細胞から精製したE3/CKS1複合体蛋白と放射線標識した基質p27Kip1及び、その他のユビキチン化に必要な分子とを接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じるユビキチン化基質p27Kip1量を測定し、当該ユビキチン化基質量を、被験物質非存在下で上記(a)の反応を行って生じるユビキチン化基質量と比較する工程、
(c)上記(b)の結果に基づいて、対照ユビキチン化基質量に比してユビキチン化基質量を低下させる被験物質を選択する工程。
E3/CKS1複合体による基質p27Kip1のユビキチン化活性の測定は、例えば、Sitry,D.ら、J.Biol.Chem.,277,42233−42240,2002に記載の方法を参考にして行うことができる。
前記形質転換細胞は、Molecular Cloning 2nd Edt.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)等の基本書に従い、当業者にとって公知の方法で調製することができる。例えば、前記E3/CKS1複合体の各因子のcDNAをpcDNA3.1誘導体(インビトロジェン社)、FLAG expression vector(シグマアルドリッチ社)、pGEX vector(アマシャムバイオサイエンス社)などの公知の前記E3/CKS1複合体各因子蛋白のみを発現可能なベクターあるいは、精製物(単離物)精製用のタグとの融合蛋白を発現可能な発現ベクターに挿入する。その後、適当な宿主に導入し、培養することにより、導入した受容体のDNAに対応するタンパク質を発現させた形質転換細胞を作製することができる。宿主としては、一般的に広く普及している、CHO細胞、C127細胞、BHK21細胞、COS細胞などを用いることができるが、これに限定されることなく、酵母、細菌、昆虫細胞などを用いることもできる。またタグとしては、例えばMycタグ、Hisタグ、FLAGタグ、GSTタグなどの従来公知のタグを挙げることができる。
前記E3/CKS1複合体各因子を天然に発現する細胞、またはE3/CKS1複合体各因子を発現する形質転換細胞よりE3/CKS1複合体の精製物(単離物)を得るには、前述のように公知の常法で精製することができる。
本発明タンパク質のうち、GPR87はGPCR(G蛋白共役型受容体;G−protein coupled receptor)であることが知られているが(Wittenberger T.ら、J.Mol.Biol.,2001,307(3):799−813、Lee D.K.ら、Gene,2001,275(1):83−91)、現在そのリガンドは不明である。
そのため、本発明タンパク質GPR87の機能または活性の低下をもたらす被験物質(候補物質)のスクリーニング方法としては、例えば、具体的にはGPR87とGTPとの結合活性に基づくスクリーニング、又はGPR87のGPCRとしての生理活性に基づくスクリーニングを挙げることができる。
GPR87とGTPとの結合活性に基づくスクリーニングは、GPR87がGDP存在下でGTPアナログであるGTPγSと結合する性質を利用して行うことが出来る。すなわち本発明のスクリーニングは、GPR87とGTPγSとの結合(より具体的には、GPR87とGタンパク質との複合体とGTPγSとの結合)を被験物質が阻害(抑制)するか否かを測定することによって行うことができ、例えば次の工程(a)、(b)及び(c)を含むものが例示される:
(a)GPR87、被験物質およびGTPγSを接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じるGTPγS結合量を測定し、当該結合量を、被験物質非存在下でGPR87、PGTPγSを接触させることによって得られるGTPγS結合量と比較する工程、及び
(c)上記(b)の結果に基づいて、対照結合量に比してGTPγS結合量を低下させる被験物質を選択する工程。
すなわち、当業者に公知の方法を用いて、前記GPCRの発現ベクターを作製し、CHO−K1細胞・HEK293細胞等に過剰発現させた形質転換細胞を準備する。ここで、必要に応じて、Gタンパク質の発現ベクターを共発現させることもできる。次に、前記細胞から遠心分離等の操作により、調製した細胞膜画分を、適当な緩衝液などの溶媒中で、被験物質とともに混合し、一定時間(例えば、30分〜2時間)インキュベートする。更に、[35S]−GTPγSを混合し、一定時間(例えば、30分〜2時間)インキュベート後に、グラスフィルター上で緩衝液で洗浄することにより結合反応を終了させた後、フィルター上の放射活性を測定することにより、前記GPCRとGタンパク質との複合体に結合した[35S]−GTPγS量を算出することができる。候補物質のスクリーニングは、被験物質存在下での[35S]−GTPγS結合量が、被験物質非存在下での[35S]−GTPγS結合量に比して、減少するか否かを指標にして行うことができる。
なお、GPR87のGPCRとしての生理活性に基づくスクリーニングとしては、GPR87およびGタンパク質の融合タンパク質を発現させた形質転換細胞、GPCRにmutaionをいれた形質転換細胞、あるいは過剰発現させた形質転換細胞等を用いることにより、リガンド非存在下でスクリーニングを実施することができる。
ここで用いられるGタンパク質は、通常Gタンパク質のαサブユニットであり、4種類のクラス(αS、αi/0、αq、α12)が挙げられる。具体的なGタンパク質としては、GqファミリーのGα16、GiファミリーのGαi2、GSファミリーのGαS2が挙げられる。すなわち、それぞれのGタンパク質とGPR87との融合タンパク質を発現させ、細胞内cAMPを上昇させる活性等のGPCRの活性化に伴う生理活性を測定することによって、最もスクリーニングに適したGタンパク質を選択することができる。
例えばGPR87のGPCRとしての生理活性に基づくスクリーニングとしては、次の工程(a)、(b)及び(c)を含むものが例示される:
(a)GPR87と被験物質とを接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じるGPCRを介した生理活性を測定し、当該生理活性を、被験物質非存在下のGPCRを介した生理活性と比較する工程、
(c)上記(b)の結果に基づいて、対照生理活性に比して生理活性を低下させる被験物質を選択する工程。
なお、GPR87はGPCRであるため、GPCRを介した生理活性である、例えばアラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内カルシウムイオン濃度、細胞内cAMP濃度、細胞内cGMP濃度、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化またはc−fos活性化などを指標としてスクリーニングを実施することができる。
該生理活性は、公知の方法、または市販の測定用キットを用いて測定することができる。すなわち、GPR87を含有する細胞をマルチウェルプレート等に培養する。新鮮な培地、あるいは細胞毒性を示さない適当なバッファーに交換し、被験化合物を添加して一定時間インキュベートした後、細胞を抽出、あるいは上清液を回収して生成した産物をそれぞれ該当する方法に従って定量する。生理活性の指標とする物質(例えばアラキドン酸など)の生成が、細胞が含有する分解酵素によって測定不能な場合は、該分解酵素に対する阻害剤を併用することもできる。また、cAMP産生抑制などの活性については、フォルスコリンなどで細胞の産生量を増大させて、感度良く測定することもできる。
具体的な測定手順としては、Fluorescent imaging plate reader(FLIPR)を用いて、細胞内カルシウム濃度の変動を検出することなどが挙げられる。GPR87が、Gq蛋白ではなくGs蛋白もしくはGi蛋白と共役して存在する場合でも、そのシグナルをGqタイプのシグナルに変換し、細胞内カルシウムイオン量を測定することにより、スクリーニングを行うことができる。具体的には、該スクリーニング方法は、以下の1)〜3)の工程からなるものである。
1)GPR87遺伝子の発現ベクターと、Gq蛋白、もしくはGqs5蛋白(Gqs5とは、C末端に、Gs蛋白のC末端アミノ酸5残基を置換したGq蛋白を意味する。)、もしくはGqi5蛋白(Gqi5とは、C末端に、Gi蛋白のC末端アミノ酸5残基を置換したGq蛋白を意味する。)の発現ベクターを作製する。ここで、細胞株としては、CHO−K1細胞等を用いることができ、上記発現ベクターを遺伝子導入試薬Lipofectoamine(Invitrogen社)等を用いて共導入することができる。
2)次に該細胞を、probenecid(色素を細胞内に保持するために、multiple drug−resistance pumpの阻害剤として用いる。)、およびFluo−3 AM(Molecular Probe社)等のカルシウムイオンによって蛍光活性を示す色素を含むF12培養培地中で、CO2インキュベーターにて一定時間(例えば30分〜2時間)培養する。
3)被験物質をprobenecidを含むHBSS等の培養培地に溶解した溶液を、添加し、2分後までFLIPRにて計測する。検出は、488nmのアルゴンレーザーで細胞を励起し、カルシウムイオンが結合したFluo−3の蛍光を500−560nmの波長でとらえることによって行う。
候補物質の選択は、被験物質の存在下におけるカルシウムイオン量が、被験物質非存在下におけるカルシウムイオン量に比して減少するか否かを指標にして行うことができる。
また、GPR87にリガンドが結合して生じるシグナル伝達により活性化されるcAMPのcAMP応答性エレメント(CRE)の下流にルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、成長ホルモン、GFPなどのレポーター遺伝子を連結し、レポータージーンアッセイでスクリーニングを行うこともできる。該スクリーニング方法は、以下の1)〜3)の工程からなるものである。
1)GPR87遺伝子(GPR87およびGタンパク質の融合遺伝子、GPCRにmutaionをいれた遺伝子等)の発現ベクターと、Gタンパク(Gs、Gi)の発現ベクター、およびcAMP応答性エレメント(CRE)の下流にルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、成長ホルモン、GFPなどのレポーター遺伝子を連結した遺伝子を作製する。ここで、細胞株としては、CHO−K1細胞等を用いることができ、上記発現ベクターを遺伝子導入試薬Lipofectoamine(Invitrogen社)等を用いて共導入することができる。また、前記Gタンパクを発現している細胞を用いる場合は、前記GPCRの遺伝子発現ベクターおよびレポーターベクターのみを導入する。
2)次に該細胞を、適当な培地中で、CO2インキュベーターにて一定時間(例えば4〜8時間)培養する。
3)培地交換後、被験物質を適当な培養培地に溶解した溶液を添加し、一定時間(4時間〜24時間)後、公知の常法にてレポーター活性を測定する。例えばルシフェラーゼの場合は、細胞溶解液で細胞を溶かし、その一部分を用いてルシフェラーゼ基質溶液(プロメガ社Luciferase assay system等)と反応させた際の発光をルミノメーターで測定する。
上記(3−l)乃至(3−3−3)に記載する本発明スクリーニング方法によって選別された候補物質は、さらに癌疾患モデル動物を用いた薬効試験、安全性試験、癌疾患患者への臨床試験に供してもよく、これらの試験を実施することによって、より実用的な癌疾患改善または治療薬を取得することができる。このようにして選別された物質は、さらにその構造解析結果に基づいて、化学的合成、生物学的合成(発酵)または遺伝子学的操作によって、工業的に製造することができる。
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の塩基配列に相補的な、または実質的に相補的な塩基配列またはその一部を有するものであり、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現を抑制し得る作用を有するものであれば、いずれのアンチセンスポリヌクレオチドであってもよく、アンチセンスRNA、アンチセンスDNAなどが含まれる。
具体的には、配列番号:1〜12のいずれかに記載の塩基配列に相補的な、もしくは実質的に相補的な配列、またはその一部分を有するアンチセンスポリヌクレオチドなどが挙げられる。
かかるアンチセンスポリヌクレオチドは、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子のRNAとハイブリダイズすることができ、該RNAの合成または機能を阻害することができるか、あるいは該RNAとの相互作用を介してASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現を調節・制御することができる。
アンチセンスポリヌクレオチドは、2−デオキシ−D−リボースを含有しているポリヌクレオチド、D−リボースを含有しているポリヌクレオチド、プリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシドであるその他のタイプのポリヌクレオチド、非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販のタンパク質核酸および合成配列特異的な核酸ポリマー)または特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などが挙げられる。それらは、2本鎖DNA、1本鎖DNA、2本鎖RNA、1本鎖RNA、DNA:RNAハイブリッドであってもよく、さらに非修飾ポリヌクレオチド(または非修飾オリゴヌクレオチド)、公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合または硫黄含有結合(例、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えばタンパク質(例、ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)や糖(例、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレント化合物(例、アクリジン、ソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」および「核酸」とは、プリンおよびピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。このような修飾物は、メチル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンおよびピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオチドおよび修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば、1個以上の水酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されていたり、またはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていてよい。本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、RNA、DNAまたは修飾された核酸(RNA、DNA)である。修飾された核酸の具体例としては、核酸の硫黄誘導体、チオホスフェート誘導体、ポリヌクレオシドアミドやオリゴヌクレオシドアミドの分解に抵抗性のものなどが挙げられる。
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、前述のように2本鎖であってもよく、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87をコードするRNAに結合し、該RNAを破壊またはその機能を抑制するものであればよい。すなわち、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87をコードするRNAの一部とそれに相補的なRNAを含有する2本鎖RNA等も本発明のアンチセンスポリヌクレオチドに含まれる。該2本鎖RNAとしては、例えば、配列番号25と配列番号26、配列番号27と配列番号28、配列番号29と配列番号30、配列番号31と配列番号32、あるいは配列番号33と配列番号34からなる2本鎖RNAを挙げることができる。
本発明は、癌疾患の改善および治療剤を提供するものである。
本発明は、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子、GPR87遺伝子、およびこれらの遺伝子にコードされるタンパク質が、癌疾患と関連しているという新たな知見から、ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現を抑制する物質、あるいはASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の発現若しくは機能(活性)を抑制する物質が、上記疾患の改善又は治療に有効であるという考えに基づくものである。すなわち、本発明の癌疾患の改善・治療剤はASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現を抑制する物質、あるいはASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87のタンパク質発現若しくは機能(活性)を抑制する物質を有効成分とするものである。
当該有効成分となるASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子の発現抑制物質、あるいはASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の発現若しくは機能(活性)阻害物質は、上記の本発明スクリーニング方法を利用して選別されたもののみならず、この選別された物質に関する情報に基づいて常法に従って化学・生化学的手法により、もしくは工業的に製造されたものであってもよい。
当該有効成分は、そのままもしくは自体公知の薬学的に許容される担体(賦形剤、増量剤、結合剤、滑沢剤などが含まれる)、慣用の添加剤などと混合して医薬組成物として調製することができる。当該医薬組成物は、調製する形態(錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤などの経口投与剤;注射剤、点滴剤、外用剤、坐剤などの非経口投与剤)などに応じて経口投与または非経口投与することができる。また投与量は、有効成分の種類、投与経路、投与対象または患者の年齢、体重、症状などによって異なり一概に規定できない。通常、1日投与用量として、数mg−2g程度、好ましくは数十mg程度を、1日1回投与することもでき、また数回に分けて投与することができる。
更に、上記有効成分物質が本発明のアンチセンスポリヌクレオチドの場合は、そのままもしくは遺伝子治療用ベクターにこれを組込むことにより、遺伝子治療を行うこともできる。これらの場合も、遺伝子治療用組成物の投与量、投与方法は患者の体重、年齢、症状などにより変動し、当業者であれば適宜選択することが可能である。
上記アンチセンスポリヌクレオチドを利用する遺伝子治療につき詳述すれば、該遺伝子治療は、通常のこの種の遺伝子治療と同様にして、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその化学的修飾体を直接患者の体内に投与することにより目的遺伝子の発現を制御する方法、もしくはアンチセンスRNAを患者の標的細胞に導入することにより該細胞による目的遺伝子の発現を制御する方法により実施できる。
アンチセンスポリヌクレオチドまたはその化学的修飾体は、細胞内でセンス鎖mRNAに結合して、目的遺伝子の発現、即ちASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の発現を制御することができ、かくしてASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87の機能(活性)を制御することができる。
アンチセンスポリヌクレオチドまたはその化学的修飾体を直接生体内に投与する方法において、用いられるアンチセンスポリヌクレオチドまたはその化学修飾体は、好ましくは10〜1000塩基、さらに好ましくは15〜500塩基、最も好ましくは16〜30塩基の長さを有するものとすればよい。その投与に当たり、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその化学的修飾体は、通常慣用される安定化剤、緩衝液、溶媒などを用いて製剤化され得る。
アンチセンスRNAを患者の標的細胞に導入する方法において、用いられるアンチセンスRNAは、好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、さらに好ましくは16塩基以上の長さを有するものとすればよい。また、この方法は、生体内の細胞にアンチセンス遺伝子を導入するin vivo法および一旦体外に取り出した細胞にアンチセンス遺伝子を導入し、該細胞を体内に戻すex vivo法を包含する(日経サイエンス,1994年4月号,20−45頁、月刊薬事,36(1),23−48(1994)、実験医学増刊,12(15),全頁(1994)など参照)。この内ではin vivo法が好ましく、これには、ウイルス的導入法(組換えウイルスを用いる方法)と非ウイルス的導入法がある(前記各文献参照)。
遺伝子治療用製剤組成物は、上述したアンチセンスポリヌクレオチドまたはその化学修飾体、これらを含む組換えウイルスおよびこれらウイルスが導入された感染細胞などを有効成分とするものである。該組成物の患者への投与形態、投与経路などは、治療目的とする疾患、症状などに応じて適宜決定できる。例えば注射剤などの適当な投与形態で、静脈、動脈、皮下、筋肉内などに投与することができ、また患者の疾患対象部位に直接投与、導入することもできる。in vivo法を採用する場合、遺伝子治療用組成物は、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドを含む注射剤などの投与形態の他に、例えば本発明のアンチセンスポリヌクレオチドを含有するウイルスベクターをリポソームまたは膜融合リポソームに包埋した形態(センダイウイルス(HVJ)−リポソームなど)とすることができる。これらのリポソーム製剤形態には、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤などが含まれる。また、遺伝子治療用組成物は、上記本発明のアンチセンスポリヌクレオチドを含有するベクターを導入されたウイルスで感染された細胞培養液の形態とすることもできる。これら各種形態の製剤中の有効成分の投与量は、治療目的である疾患の程度、患者の年齢、体重などにより適宜調節することができる。通常、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87遺伝子に対するアンチセンスポリヌクレオチドの場合は、患者成人1人当たり約0.0001−100mg、好ましくは約0.001−10mgが数日ないし数カ月に1回投与される量とすればよい。アンチセンスポリヌクレオチドを含むレトロウイルスベクターの場合は、レトロウイルス力価として、1日患者体重1kg当たり約1x103pfu−1x1015pfuとなる量範囲から選ぶことができる。アンチセンスポリヌクレオチドを導入した細胞の場合は、1x104細胞/body−1x1015細胞/body程度を投与すればよい。
二重鎖RNAは、公知の方法(例、Nature,411巻,494頁,2001年)に準じて、本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造することができる。リボザイムは、公知の方法(例、TRENDS in Molecular Medicine,7巻,221頁,2001年)に準じて、本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造することができる。例えば、公知のリボザイムの配列の一部を本発明のタンパク質をコードするRNAの一部に置換することによって製造することができる。本発明のタンパク質をコードするRNAの一部としては、公知のリボザイムによって切断され得るコンセンサス配列NUX(式中、Nはすべての塩基を、XはG以外の塩基を示す)の近傍の配列などが挙げられる。上記の二重鎖RNAまたはリボザイムを上記予防・治療剤として使用する場合、アンチセンスポリヌクレオチドと同様にして製剤化し、投与することができる。また、前記(v)の発現ベクターは、公知の遺伝子治療法などと同様に用い、上記予防・治療剤として使用する。
本発明は、ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87(以下、本発明の腫瘍抗原タンパク質と称する場合がある)を有効成分として含有する細胞傷害性T細胞(以下、CTL)の誘導剤を提供する。具体的には、配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するCTLの誘導剤を提供する。本発明のCTLの誘導剤の有効成分である腫瘍抗原タンパク質は、天然物(例えば肺癌細胞株)に由来するタンパク質であってもよく、また組換えタンパク質であっても良い。
前記において「配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質(配列番号:l3〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列を含有するタンパク質)」とは、具体的には、配列番号:l3〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、または配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列を含有し、そのN末端側及び/又はC末端側に他のアミノ酸配列の付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質などが挙げられる。
また前記において「配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質」とは、具体的には以下の(a)〜(c)に挙げるタンパク質が挙げられる:
(a)配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含有するタンパク質であって、かつ当該タンパク質を発現させた細胞がCTLにより認識される特徴を有するタンパク質、
(b)配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含有するタンパク質であって、かつ当該タンパク質を発現させた細胞がCTLにより認識される特徴を有するタンパク質、
(c)配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質であって、かつ当該タンパク質を発現させた細胞がCTLにより認識される特徴を有するタンパク質。
(a’)配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつ当該タンパク質を発現させた細胞がCTLにより認識される特徴を有するタンパク質、
(b’)配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつ当該タンパク質を発現させた細胞がCTLにより認識される特徴を有するタンパク質、
(c’)配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質であって、かつ当該タンパク質を発現させた細胞がCTLにより認識される特徴を有するタンパク質。
ここでタンパク質におけるアミノ酸の変異数や変異部位は、本発明タンパク質の活性が保持される限り制限はない。このように活性を喪失することなくアミノ酸残基が、どのように、何個欠失、置換及び/又は付加されればよいかを決定する指標は、当業者に周知のコンピュータプログラム、例えばDNA Star softwareを用いて見出すことができる。例えば変異数は、典型的には、全アミノ酸の10%以内であり、好ましくは全アミノ酸の5%以内である。また置換されるアミノ酸は、タンパク質の構造保持の観点から、残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性並びに両親媒性など、置換前のアミノ酸と似た性質を有するアミノ酸であることが好ましい。例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe及びTrpは互いに非極性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn及びGlnは互いに非荷電性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Asp及びGluは互いに酸性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、またLys、Arg及びHisは互いに塩基性アミノ酸に分類されるアミノ酸である。ゆえに、これらを指標として同群に属するアミノ酸を適宜選択することができる。
前記(c)における「配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、例えば配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドと約40%以上、好ましくは約60%以上、より好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の配列同一性を有する塩基配列を含有するポリヌクレオチドが挙げられる。
本発明の腫瘍抗原タンパク質は、配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と実質的に同質の活性を有する。ここで実質的に同質の活性とは、本発明の腫瘍抗原タンパク質を発現させた細胞がCTLにより認識される、すなわち当該細胞がCTLに反応性を示す、換言すれば本発明の腫瘍抗原タンパク質若しくは該タンパク質に由来する抗原ペプチドがCTLを活性化する若しくはCTLを誘導するという性質を示す。
このような本発明タンパク質の性質は、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法(例えば51Crリリースアッセイ(J.Immunol.,159:4753,1997)、LDHリリースアッセイ(LDH Cytotoxicity Detection Kit(タカラバイオ)、サイトカイン量の測定等)により容易に測定することができる。以下に具体的なアッセイ法を例示する。
前記トランスフェクトは、例えばリポフェクトアミン試薬(GIBCO BRL社製)を用いたリポフェクチン法などにより行うことができる。その後、用いたHLA抗原に拘束性のCTLを加えて作用させ、該CTLが反応(活性化)して産生する種々のサイトカイン、例えばIFN−γの量を、例えばELISA法などで測定することにより調べることができる。ここでCTLとしては、ヒトの末梢血リンパ球を配列番号:13〜18のいずれかに記載の本発明タンパク質で刺激することにより調製されたCTLや、Int.J.Cancer,39,390−396,1987,N.Eng.J.Med,333,1038−1044,1995等に記載の方法により樹立したCTLを用いることができる。
本発明の腫瘍抗原タンパク質は、天然物(例えば骨肉種細胞株、腎癌細胞株など)から自体公知のタンパク質の精製方法によって製造することもできるし、また後述する本発明の腫瘍抗原タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する核酸を含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。
本発明は、前記本発明の腫瘍抗原タンパク質の部分ペプチドであって、かつHLA抗原と結合してCTLにより認識される腫瘍抗原ペプチド(以下、本発明のペプチドと称する場合がある)を有効成分として含有するCTLの誘導剤を提供する。具体的には、本発明のCTLの誘導剤の有効成分であるペプチドは、本発明の腫瘍抗原タンパク質のアミノ酸配列の一部よりなるペプチドであって、かつ、該ペプチドとHLA抗原との結合複合体がCTLにより認識されるようなペプチドであれば、本発明の腫瘍抗原タンパク質のアミノ酸配列中の如何なる位置に存する如何なる長さのペプチドであっても良い。
ここで、ペプチドの合成については、通常のペプチド化学において用いられる方法に準じて行うことができる。該公知方法としては文献(ペプタイド・シンセシス(Peptide Synthesis),Interscience,New York,1966;ザ・プロテインズ(The Proteins),Vol 2,Academic Press Inc.,New York,1976;ペプチド合成,丸善(株),1975;ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株),1985;医薬品の開発 続 第14巻・ペプチド合成,広川書店,1991)などに記載されている方法が挙げられる。
HLA−A1,−A0201,−A0204,−A0205,−A0206,−A0207,−A11,−A24,−A31,−A6801,−B7,−B8,−B2705,−B37,−Cw0401,−Cw0602などのHLAの型については、該HLAに結合して提示される抗原ペプチドの配列の規則性(モチーフ)が判明している(例えばImmunogenetics,41:p178,1995などを参照のこと)。例えばHLA−A24のモチーフとしては、8〜11アミノ酸よりなるペプチドのうちの第2位のアミノ酸がチロシン、フェニルアラニン、メチオニンまたはトリプトファンであり、C末端のアミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファンまたはメチオニンとなることが知られている(J.Immunol.,152,p3913,1994、Immunogenetics,41:p178,1995、J.Immunol.,155:p4307,1994)。またHLA−A2のモチーフについては、以下の表1に示したモチーフが知られている(Immunogenetics,41,p178,1995、J.Immunol.,155:p4749,1995)。
ペプチドの長さとしては、各種HLA分子に結合している抗原ペプチドの解析により(Immunogenetics,41:178,1995)、通常8〜14アミノ酸程度であることが明らかにされている(ただしHLA−DR、−DP、−DQについては、14アミノ酸以上の長さの抗原ペプチドも認められる)。
本発明の腫瘍抗原ペプチドの具体的な同定法としては、例えばJ.Immunol.,154,p2257,1995に記載の方法が挙げられる。すなわち、候補ペプチドを提示すると考えられるタイプのHLA抗原が陽性のヒトから末梢血リンパ球を単離し、in vitroで該候補ペプチドを添加して刺激した場合に、該候補ペプチドをパルスしたHLA抗原陽性細胞を特異的に認識するCTLが誘導された場合は、該候補ペプチドが腫瘍抗原ペプチドに成り得ることが示される。ここでCTLの誘導の有無は、例えば、抗原ペプチド提示細胞に反応してCTLが産生する種々のサイトカイン(例えばIFN−γ)の量を、例えばELISA法、ELISPOT法などによって測定することにより、調べることができる。また51Crで標識した抗原ペプチド提示細胞に対するCTLの傷害性を測定する方法(51Crリリースアッセイ、Int.J.Cancer,58:p317,1994)によっても調べることができる。
ここでHLA抗原としては、HLA−A24抗原が挙げられる。HLA−A24拘束性の腫瘍抗原ペプチドを選択する場合には、前記HLA抗原をコードするcDNAとしてはHLA−A2402のcDNA(Cancer Res.,55:4248−4252(1995)、Genbank Accession No.M64740)を用いることができる。
また前記CTLとしては、ヒトの末梢血リンパ球のペプチド刺激により調製される場合の他、Int.J.Cancer,39,390−396,1987,N.Eng.J.Med,333,1038−1044,1995等に記載の方法により樹立したCTLを用いることができる。
以上のような本発明のペプチドの具体例としては、配列番号:13〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる本発明腫瘍抗原タンパク質の部分ペプチドであって、かつHLA抗原と結合してCTLにより認識されるペプチドが挙げられる。また、本発明のペプチドが結合するHLA抗原の観点からは、HLA−A24抗原に結合する本発明のペプチドを挙げることができる。
より具体的には、例えばHLA−A24結合性の腫瘍抗原ペプチドとしては、以下の表2(ASKの部分ペプチド)、表3(CKS1の部分ペプチド)、表4(MELKの部分ペプチド)、表5(STK12の部分ペプチド)、表6(TTKの部分ペプチド)および表7(GPR87の部分ペプチド)に記載のいずれかのアミノ酸配列からなるペプチド(配列番号:37〜225のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるペプチド)であって、HLA−A24抗原に結合してCTLに認識されるペプチドが挙げられる。
ここで、アミノ酸残基の「改変」とは、アミノ酸残基の置換、欠失、及び/又は付加(ペプチドのN末端、C末端へのアミノ酸の付加も含む)を意味し、好ましくはアミノ酸残基の置換が挙げられる。アミノ酸残基の置換に係る改変の場合、置換されるアミノ酸残基の数および位置は、腫瘍抗原ペプチドとしての活性が維持される限り、任意であるが、前記したように通常、腫瘍抗原ペプチドの長さが8〜14アミノ酸程度であることから、1個から数個の範囲が好ましい。
本発明の改変ペプチドの長さとしては、8〜14アミノ酸程度が好ましい(ただしHLA−DR、−DP、−DQについては、14アミノ酸以上の長さの場合もある。)。
先に記載したように、HLA−A1,−A0201,−A0204,−A0205,−A0206,−A0207,−A11,−A24,−A31,−A6801,−B7,−B8,−B2705,−B37,−Cw0401,−Cw0602などのHLAの型については、該HLAに結合して提示される抗原ペプチドの配列の規則性(モチーフ)が判明している。また前記したように、HLA抗原に結合可能と予想されるペプチド配列をインターネット上検索することができる(http://bimas.dcrt.nih.gov/molbio/hla_bind/)。従って、該モチーフ等に基づき、前記改変ペプチドを作製することが可能である。
より好ましくは、該位置において、前記モチーフ上知られたアミノ酸残基のいずれかに置換したアミノ酸配列を含有するペプチドであって、かつ前記活性を有する改変ペプチドが挙げられる。すなわち配列番号:37〜225に示されるようなHLA−A24結合性のペプチドの場合、その第2位のアミノ酸をチロシン、フェニルアラニン、メチオニンまたはトリプトファンに置換し、及び/又はC末端のアミノ酸をフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファンまたはメチオニンに置換した改変ペプチドであって、かつ前記活性を有する改変ペプチドが挙げられる。このうち第2位のアミノ酸をチロシンに置換したペプチドがより好ましい。
ここでN末端アミノ酸のアミノ基の修飾基としては、例えば1〜3個の炭素数1から6のアルキル基、フェニル基、シクロアルキル基、アシル基が挙げられ、アシル基の具体例としては炭素数1から6のアルカノイル基、フェニル基で置換された炭素数1から6のアルカノイル基、炭素数5から7のシクロアルキル基で置換されたカルボニル基、炭素数1から6のアルキルスルホニル基、フェニルスルホニル基、炭素数2から6のアルコキシカルボニル基、フェニル基で置換されたアルコキシカルボニル基、炭素数5から7のシクロアルコキシで置換されたカルボニル基、フェノキシカルボニル基等が挙げられる。
本発明のCTLの誘導剤に含有される核酸(以下、本発明の核酸と称する場合がある)は、前記(6)記載の本発明の腫瘍抗原タンパク質をコードするポリヌクレオチド(以下、本発明のポリヌクレオチドと称する場合がある)を含有する。
本発明のポリヌクレオチドは、種々の細胞や組織、例えば骨肉種や腎癌等に由来する細胞や組織のcDNAやmRNA、cRNA、ゲノムDNA、または合成DNAのいずれであっても良い。また1本鎖、2本鎖のいずれの形態であっても良い。
本発明のポリヌクレオチドを含有する核酸は、1本鎖および2本鎖のいずれの形態もとることができる。本発明のポリヌクレオチドが2本鎖の場合、前記本発明のポリヌクレオチドを発現ベクターに挿入することにより、本発明のタンパク質を発現するための組換え発現ベクターを作製することができる。すなわち本発明の核酸の範疇には、本発明の2本鎖型ポリヌクレオチドを発現ベクターに挿入して作製された組換え発現ベクターも含まれる。
ここで用いる発現ベクターとしては、用いる宿主や目的等に応じて適宜選択することができ、プラスミド、ファージベクター、ウイルスベクター等が挙げられる。
例えば、宿主が大腸菌の場合、ベクターとしては、pUC118、pUC119、pBR322、pCR3等のプラスミドベクター、λZAPII、λgt11などのファージベクターが挙げられる。宿主が酵母の場合、ベクターとしては、pYES2、pYEUra3などが挙げられる。宿主が昆虫細胞の場合には、pAcSGHisNT−Aなどが挙げられる。宿主が動物細胞の場合には、pCEP4、pKCR、pCDM8、pGL2、pcDNA3.1、pRC/RSV、pRc/CMVなどのプラスミドベクターや、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクターなどのウイルスベクターが挙げられる。
また、単離精製が容易になるように、チオレドキシン、Hisタグ、あるいはGST(グルタチオンS−トランスフェラーゼ)等との融合タンパク質として発現する配列が付加されていても良い。この場合、宿主細胞内で機能する適切なプロモーター(lac、tac、trc、trp、CMV、SV40初期プロモーターなど)を有するGST融合タンパクベクター(pGEX4Tなど)や、Myc、Hisなどのタグ配列を有するベクター(pcDNA3.1/Myc−Hisなど)、さらにはチオレドキシンおよびHisタグとの融合タンパク質を発現するベクター(pET32a)などを用いることができる。
ここで用いられる宿主としては、大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などが挙げられる。大腸菌としては、E.coli K−12系統のHB101株、C600株、JM109株、DH5α株、AD494(DE3)株などが挙げられる。また酵母としては、サッカロミセス・セルビジエなどが挙げられる。動物細胞としては、L929細胞、BALB/c3T3細胞、C127細胞、CHO細胞、COS細胞、Vero細胞、Hela細胞、293−EBNA細胞などが挙げられる。昆虫細胞としてはsf9などが挙げられる。
本発明の核酸の範疇には、前記(7)記載の本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する核酸も含まれる。
本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する核酸は、1本鎖および2本鎖のいずれの形態もとることができる。本発明のポリヌクレオチドが2本鎖の場合、前記本発明のポリヌクレオチドを発現ベクターに挿入することにより、本発明のペプチド(エピトープペプチド)を発現するための組換え発現ベクターを作製することができる。
ここで用いる発現ベクターや宿主細胞、宿主細胞の形質転換方法等については、前述の記載と同様である。
本発明は、本発明の腫瘍抗原タンパク質を有効成分として含有するCTLの誘導剤を提供する。
本発明の腫瘍抗原タンパク質を含有する細胞はCTLに認識されるという特徴を有する。すなわち本発明の腫瘍抗原タンパク質はCTLの誘導剤である。誘導されたCTLは、細胞傷害作用やリンフォカインの産生を介して抗腫瘍作用を発揮することができる。従って本発明の腫瘍抗原タンパク質は、腫瘍の治療または予防のための医薬(癌ワクチン)の有効成分とすることができる。本発明の腫瘍抗原タンパク質を有効成分として含有するCTLの誘導剤は、本発明の腫瘍抗原タンパク質を腫瘍患者に投与することで、腫瘍を治療または予防し得るものである。当該タンパク質を腫瘍患者に投与すると、抗原提示細胞内に取り込まれ、その後、細胞内分解を受けて生じた腫瘍抗原ペプチドがHLA抗原と結合して複合体を形成し、該複合体が抗原提示細胞表面に提示され、この複合体に特異的なCTLが体内で効率的に増殖し、腫瘍細胞を破壊する。以上のようにして、腫瘍の治療又は予防が達成される。
本発明の腫瘍抗原タンパク質を有効成分とするCTLの誘導剤は、配列番号:13〜18に記載のASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87陽性の如何なる腫瘍患者に対しても使用することができる。具体的には、例えば肺癌、乳癌、前立腺癌、大腸癌などの癌(腫瘍)の予防または治療のために使用することができる。
本発明の腫瘍抗原タンパク質を有効成分として含有するCTLの誘導剤は、細胞性免疫が効果的に成立するように、医薬として許容されるキャリアー、例えば適当なアジュバントと混合して投与、又は併用して投与することができる。
アジュバントとしては、文献(Clin.Microbiol.Rev.,7:277−289,1994)に記載のものなどが応用可能であり、具体的には、菌体由来成分又はその誘導体、サイトカイン、植物由来成分又はその誘導体、海洋生物由来成分又はその誘導体、水酸化アルミニウムの如き鉱物ゲル、リソレシチン、プルロニックポリオールの如き界面活性剤、ポリアニオン、ペプチド、または油乳濁液(エマルション製剤)などを挙げることができる。また、リポソーム製剤、直径数μmのビーズに結合させた粒子状の製剤、リピッドを結合させた製剤、マイクロスフェアー製剤、マイクロカプセル製剤なども考えられる。
前記において菌体由来成分又はその誘導体とは、具体的には、例えば(i)細菌の死菌、(ii)細菌由来の細胞壁骨格(Cell Wall Skeleton,CWSと略する)、(iii)菌体由来の特定の成分又はその誘導体等に分類される。
(ii)細菌由来のCWSとしては、マイクバクテリア属由来のCWS(例えばマイコバクテリア属ウシ型結核菌であるBCG株のCWS)、ノカルディア属由来のCWS(例えばノカルディア・ノブラのCWS)、あるいはコリネバクテリア属由来のCWS等が挙げられる。
(iii)菌体由来の特定の成分又はその誘導体としては、例えば菌体由来多糖類であるヒト型結核菌由来多糖類成分(例えばアンサー;ゼリア新薬工業株式会社)や担子菌由来多糖類(例えばレンチナン;味の素、クレスチン;三共株式会社、担子菌カワラタケ)、またムラミルジペプチド(MDP)関連化合物、リポ多糖(LPS)、リピドA関連化合物(MPL)、糖脂質トレハロースジマイコレート(TDM)、細菌由来のDNA(例えばCpGオリゴヌクレオチド)、あるいはこれらの誘導体などが挙げられる。
前記において「植物由来成分又はその誘導体」とは、例えばサポニン由来成分であるQuil A(Accurate Chemical&Scientific Corp)、QS−21(Aquila Biopharmaceuticals inc.)、あるいはグリチルリチン(SIGMA−ALDRICHなど)などが挙げられる。
前記において「海洋生物由来成分又はその誘導体」とは、例えば海綿由来の糖脂質であるα−ガラクトシルセラミドなどが挙げられる。
前記において油乳濁液(エマルション製剤)とは、例えば油中水型(w/o)エマルション製剤、水中油型(o/w)エマルション製剤、水中油中水型(w/o/w)エマルション製剤などが挙げられる。
ここで油中水型(w/o)エマルション製剤は、有効成分を水の分散相に分散させた形態をとる。水中油型(o/w)エマルション製剤は、有効成分を水の分散媒に分散させた形態をとる。また水中油中水型(w/o/w)エマルション製剤は、有効成分を最内相の水の分散相に分散させた形態をとる。このようなエマルション製剤の調製は、例えば、特開平8−985号公報、特開平9−122476号公報等を参考にして行うことができる。
前記においてマイクロカプセル製剤は、有効成分を芯物質として被膜物質で覆った形の微粒子である。被膜物質に用いられるコーティング材料としては、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、エチルセルロース、ゼラチン、ゼラチン・アラビアゴム、ニトロセルロース、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース等の膜形成性高分子が挙げられる。マイクロカプセル製剤の調製方法は、コアセルベーション法、界面重合法等が挙げられる。
本発明は、本発明のペプチドを有効成分として含有するCTLの誘導剤を提供する。
本発明のペプチドはCTL誘導活性を有するCTLの誘導剤である。誘導されたCTLは、細胞傷害作用やリンフォカインの産生を介して抗腫瘍作用を発揮することができる。従って本発明のペプチドは、腫瘍の治療または予防のための医薬の有効成分とすることができる。本発明のペプチドを有効成分として含有するCTLの誘導剤を腫瘍患者に投与すると、抗原提示細胞のHLA抗原に本発明のペプチドが提示され、提示されたHLA抗原とペプチドとの結合複合体特異的CTLが増殖して腫瘍細胞を破壊することができ、従って、患者の腫瘍を治療又は予防することができる。
本発明のペプチドを有効成分とするCTLの誘導剤は、配列番号:13〜18いずれかに記載のASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87タンパク陽性の如何なる腫瘍患者に対しても使用することができる。具体的には、例えば肺癌、乳癌、前立腺癌、大腸癌などの癌(腫瘍)の予防または治療のために使用することができる。
アジュバントとしては、文献(Clin.Microbiol.Rev.,7:277−289,1994)に記載のものなどが応用可能であり、具体的には、菌体由来成分又はその誘導体、サイトカイン、植物由来成分又はその誘導体、海洋生物由来成分又はその誘導体、水酸化アルミニウムの如き鉱物ゲル、リソレシチン、プルロニックポリオールの如き界面活性剤、ポリアニオン、ペプチド、または油乳濁液(エマルション製剤)などを挙げることができる。また、リポソーム製剤、直径数μmのビーズに結合させた粒子状の製剤、リピッドを結合させた製剤、マイクロスフェアー製剤、マイクロカプセル製剤なども考えられる。これらアジュバントの具体例については、前記「(9)本発明の腫瘍抗原タンパク質を有効成分とするCTLの誘導剤」の項を参照されたい。
本発明の核酸を発現させた細胞は、CTLに認識されるという特徴を有する。すなわち本発明の核酸はCTLの誘導剤である。誘導されたCTLは、細胞傷害作用やリンフォカインの産生を介して抗腫瘍作用を発揮することができる。従って本発明の核酸は、腫瘍の治療または予防のための医薬の有効成分とすることができる。本発明の核酸を有効成分として含有するCTLの誘導剤は、例えば、本発明の核酸を腫瘍患者に投与し発現させることで、腫瘍を治療または予防し得るものである。
例えば発現ベクターに組み込まれた本発明の核酸を以下の方法により腫瘍患者に投与すると、抗原提示細胞内で腫瘍抗原タンパク質が高発現する。その後、細胞内分解を受けて生じた腫瘍抗原ペプチドがHLA抗原と結合して複合体を形成し、該複合体が抗原提示細胞表面に高密度に提示されることにより、腫瘍特異的CTLが体内で効率的に増殖し、腫瘍細胞を破壊する。以上のようにして、腫瘍の治療または予防が達成される。
本発明の核酸を有効成分とするCTLの誘導剤は、配列番号:1に記載のASK遺伝子および当該遺伝子の発現産物であるASK陽性の如何なる腫瘍患者、配列番号:2に記載のCKS1遺伝子および当該遺伝子の発現産物であるCKS1陽性の如何なる腫瘍患者、配列番号:3に記載のMELK遺伝子および当該遺伝子の発現産物であるMELK陽性の如何なる腫瘍患者、配列番号:4に記載のSTK12遺伝子および当該遺伝子の発現産物であるSTK12陽性の如何なる腫瘍患者、配列番号:5に記載のTTK遺伝子および当該遺伝子の発現産物であるTTK陽性の如何なる腫瘍患者、または配列番号:6に記載のGPR87遺伝子および当該遺伝子の発現産物であるGPR87陽性の如何なる腫瘍患者に対しても使用することができる。具体的には、例えば肺癌または腎癌などの癌(悪性腫瘍)の予防または治療のために使用することができる。
ウイルスベクターによる方法としては、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルス等のDNAウイルス又はRNAウイルスに本発明のDNAを組み込んで導入する方法が挙げられる。この中で、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルス等を用いた方法が特に好ましい。
前記した本発明のタンパク質、ペプチドおよび核酸は、腫瘍患者の治療において、以下のようにイン・ビトロで利用することができる。すなわち本発明のタンパク質、ペプチドおよび核酸のいずれかと抗原提示能を有する細胞とをイン・ビトロで接触させることにより、抗原提示細胞を作製することができる。具体的には本発明は、腫瘍患者由来の単離された抗原提示能を有する細胞と、本発明のタンパク質、ペプチドおよび核酸のいずれかとをイン・ビトロで接触させることにより、当該細胞の細胞表面にHLA抗原と本発明のペプチドとの複合体を提示させた抗原提示細胞、およびその製造方法を提供するものである。
また、前記抗原提示能を有する細胞から本発明の抗原提示細胞を調製するために添加される物質としては、本発明のタンパク質、ペプチドおよび核酸のいずれであっても良い。
また、前記抗原提示能を有する細胞に本発明の核酸を導入することにより本発明の抗原提示細胞を調製する場合は、当該核酸は、DNAの形態であっても、RNAの形態であっても良い。具体的には、DNAの場合はCancer Res.,56:p5672,1996やJ.Immunol.,161:p5607,1998などを参考にして行うことができ、またRNAの場合はJ.Exp.Med.,184:p465,1996などを参考にして行うことができる。
本発明のタンパク質、ペプチドおよび核酸は、腫瘍患者の治療において、以下のようにイン・ビトロで利用することができる。すなわち本発明のタンパク質、ペプチドおよび核酸のいずれかと末梢血リンパ球とをイン・ビトロで接触させることにより、CTLを誘導することができる。具体的には本発明は、腫瘍患者由来の末梢血リンパ球と、本発明のタンパク質、ペプチドおよび核酸のいずれかとをイン・ビトロで接触させることにより誘導されたCTL、およびその誘導方法を提供するものである。
例えばメラノーマにおいては、患者本人の腫瘍内浸潤T細胞を体外で大量に培養して、これを患者に戻す養子免疫療法に治療効果が認められている(J.Natl.Cancer.Inst.,86:1159、1994)。またマウスのメラノーマにおいては、脾細胞をイン・ビトロで腫瘍抗原ペプチドTRP−2で刺激し、腫瘍抗原ペプチドに特異的なCTLを増殖させ、該CTLをメラノーマ移植マウスに投与することにより、転移抑制が認められている(J.Exp.Med.,185:453,1997)。これは、抗原提示細胞のHLA抗原と腫瘍抗原ペプチドとの複合体を特異的に認識するCTLをイン・ビトロで増殖させた結果に基づくものである。従って、本発明のタンパク質、ペプチドまたは核酸を用いて、イン・ビトロで患者末梢血リンパ球を刺激して腫瘍特異的CTLを増やした後、このCTLを患者に戻す治療法は有用であると考えられる。
本発明は、本発明のペプチドに特異的に結合する抗体を提供する。本発明の抗体は、その形態に特に制限はなく、本発明のペプチドを免疫抗原とするポリクローナル抗体であっても、またモノクローナル抗体であっても良い。
本発明の抗体は前記のように本発明のペプチドに特異的に結合するものであれば特に制限されないが、具体的には、配列番号:37〜225のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる腫瘍抗原ペプチドに特異的に結合する抗体を挙げることができる。
具体的には、本発明のペプチド(例えば配列番号:37〜225のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる腫瘍抗原ペプチド)を免疫原として用い、家兎等の非ヒト動物を免疫し、該免疫動物の血清から常法に従って得ることが可能である。一方、モノクローナル抗体の場合には、本発明のペプチド(例えば配列番号:37〜225のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる腫瘍抗原ペプチド)をマウス等の非ヒト動物に免疫し、得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させて調製したハイブリドーマ細胞の中から得ることができる(Current protocols in Molecular Biology edit.Ausubel et al.(1987)Publish.John Wiley and Sons.Section 11.4〜11.11)。
[実施例1]
ヒト組織サンプル及び、ヒト癌細胞株からのトータルRNAの調製
以下のヒトの主要臓器由来癌・正常組織サンプル、肺腺癌組織57サンプル、肺正常組織(肺腺癌患者由来)48サンプル、肺扁平上皮癌組織49サンプル、肺正常組織(肺扁平上皮癌患者由来)19サンプル、結腸癌組織117サンプル、結腸正常組織(結腸癌患者由来)119サンプル、直腸癌組織46サンプル、直腸正常組織(直腸癌患者由来)34サンプル、胃癌組織40サンプル、胃正常組織(胃癌患者由来)14サンプル、乳癌組織241サンプル、乳正常組織(乳癌患者由来)46サンプル、卵巣癌組織37サンプル、卵巣正常組織(卵巣癌患者由来)5サンプル、前立腺癌組織91サンプル、前立腺正常組織(前立腺癌患者由来)53サンプル、肝癌組織20サンプル、肝正常組織(肝癌患者由来)8サンプル、腎癌組織91サンプル、腎正常組織(腎癌患者由来)67サンプル、膵癌組織57サンプル、膵正常組織(膵癌患者由来)16サンプルから、それぞれ常法に従いトータルRNAを調製した。更に下記実施例 に用いる癌細胞株の遺伝子発現量解析のため、4種の肺癌細胞株、HOP92、HOP62、11−18、PC−8より上記と同様トータルRNAを調製した。
DNAチップ解析
実施例1に示したサンプルより調製したtotal RNAを用いて、DNAチップ解析を行った。なお、DNAチップ解析はAffymetrix社Gene Chip Human Genome U133セットを用いて行った。具体的には、解析は、(1)total RNAからcDNAの調製、(2)該cDNAからラベル化cRNAの調製、(3)ラベル化cRNAのフラグメント化、(4)フラグメント化cRNAとプローブアレイとのハイブリダイズ、(5)プローブアレイの染色、(6)プローブアレイのスキャン、及び(7)遺伝子発現解析、の手順で行った。
(1)total RNAからcDNAの調製
実施例1で得られた各total RNA 10μgとT7−(dT)24プライマー(Amersham社製)100pmolを含む11μLの混合液を、70℃、10分間加熱した後、氷上で冷却した。冷却後、SuperScript Choice System for cDNA Synthesis(Gibco−BRL社製)に含まれる5xFirst Strand cDNA Buffer 4μL、該キットに含まれる0.1M DTT(dithiothreitol)2μL、該キットに含まれる10mM dNTP Mix 1μLを添加し、42℃で2分間加熱した。更に、該キットに含まれるSuper ScriptII RT 2μL(400のを添加し、42℃で1時間加熱した後、氷上で冷却した。冷却後、DEPC処理水(ナカライテスク社製)滅菌蒸留水91μL、該キットに含まれる5xSecond Strand Reaction Buffor 30μL、10mM dNTP Mix 3μL、該キットに含まれるE.coli DNA Ligase 1μL(10U)、該キットに含まれるE.coli DNA Polymerase I 4μL(40U)、該キットに含まれるE.coli RNaseH 1μL(2U)を添加し、16℃で2時間反応させた。次いで、該キットに含まれるT4 DNA Polymerase 2μL(10U)を加え、16℃で5分間反応させた後、0.5M EDTA 10μLを添加した。次いで、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール溶液(ニッポンジーン社製)162μLを添加し、混合した。該混合液を、予め室温、14,000rpm、30秒間遠心分離しておいたPhase Lock Gel Light(エッペンドルフ社製)に移し、室温で14,000rpm、2分間遠心分離した後、145μLの水層をエッペンドルフチューブに移した。得られた溶液に、7.5M酢酸アンモニウム溶液72.5μL、エタノール362.5μLを加えて混合した後、4℃で14,000rpm、20分間遠心分離した。遠心分離後、上清を捨て、作製したcDNAを含むペレットを得た。その後、該ペレットに80%エタノール0.5mLを添加し、4℃で14,000rpm、5分間遠心分離した後、上清を捨てた。再度同様の操作を行った後、該ペレットを乾燥させ、DEPC処理水12μLに溶解した。以上の操作により実施例1で調製した各トータルRNAから、各cDNAを取得した。
各cDNA榕液5μLに、DEPC処理水17μL、BioArray High Yield RNA Transcript Labeling Kit(ENZO社製)に含まれる10xHY Reaction Buffer 4μL、該キットに含まれる10xBiotin Labeled Ribonucleotides 4μL、該キットに含まれる10xDTT 4μL、該キットに含まれる10xRNase Inhibitor Mix 4μL、該キットに含まれる20xT7 RNA Polymerase 2μLを混合し、37℃で5時間反応させて、ラベル化cRNAを調製した。反応後、該反応液にDEPC処理水60μLを加えたのち、RNeasy Mini Kit(GIAGEN社製)を用いて添付プロトコールに従い、調製したラベル化cRNAを精製した。
各ラベル化cRNA 20μgを含む溶液に、5xFragmentation Buffer(200mMトリス−酢酸 pH8.1(Sigma社製)、500mM酢酸カリウム(Sigma社製)、150mM酢酸マグネシウム(Sigma社製))8μLを加えた反応液40μLを、94℃で35分間加熱した後、氷中に置いた。これによって、ラベル化cRNAをフラグメント化した。
各フラグメント化cRNA 40μLに、5nM Control Oligo B2(Amersham社製)4μL、100xControl cRNA Cocktail 4μL、Herring sperm DNA(Promega社製)40μg、Acetylated BSA(Gibco−BRL社製)200μg、2xMES Hybridization Buffer(200mM MES、2M[Na+],40mM EDTA、0.02% Tween20(Pierce社製)、pH6.5〜6.7)200μL、及びDEPC処理水144μLを混合し、400μLのハイブリカクテルを得た。得られた各ハイブリカクテルを99℃で5分間加熱し、更に45℃で5分間加熱した。加熱後、室温で14,000rpm、5分間遠心分離し、ハイブリカクテル上清を得た。
一方、1xMESハイブリダイゼーションバッファーで満たしたHuman genome U133プローブアレイ(Affymetrix社製)を、ハイブリオーブン内で、45℃、60rpmで10分間回転させた後、1xMESハイブリダイゼーションバッファーを除去してプローブアレイを調製した。上記で得られたハイブリカクテル上清200μLを該プローブアレイにそれぞれ添加し、ハイブリオーブン内で45℃、60rpmで16時間回転させ、フラグメント化cRNAとハイブリダイズしたプローブアレイを得た。
上記で得られたハイブリダイズ済みプローブアレイそれぞれからハイブリカクテルを回収除去した後、Non−Stringent Wash Buffer(6xSSPE(20xSSPE(ナカライテスク社製)を希釈)、0.01%Tween20、0.005%Antifoam0−30(Sigma社製))で満たした。次にNon−Stringent Wash BufferおよびStringent Wash Buffer(100mM MES、0.1M NaCl、0.01%Tween20)をセットしたGeneChip Fluidics Station 400(Affymetrix社製)の所定の位置にフラグメント化cRNAとハイブリダイズしたプローブアレイを装着した。その後染色プロトコールEuKGE−WS2に従って、1次染色液(10μg/mL Streptavidin Phycoerythrin(SAPE)(MolecuLar Probe社製)、2mg/mL Acetylated BSA、100mM MES、1M NaCl(Ambion社製)、0.05%Tween20、0.005%Antifoam0−30)、2次染色液(100μg/mL Goat IgG(Sigma社製)、3μg/mL Biotinylated Anti−Streptavidinantibody(Vector Laboratories社製)、2mg/mL Acetylated BSA、100mM MES、1M NaCl、0.05%Tween20、0.005%Antifoam0−30)により染色した。
染色した各プローブアレイをHP GeneArray Scanner(Affymetrix社製)に供し、染色パターンを読み取った。染色パターンをもとにGeneChip Workstation System(Affymetrix社製)によってプローブアレイ上の遺伝子の発現を解析した。次に、解析プロトコールに従ってNormalizationを行ったのち、各サンプルにおける各プローブ(各遺伝子)の発現量(average difference)及び発現の有無を算出した。同一のプローブにつき、サンプルの種類ごとに遺伝子発現量の平均値を求め、さらに各サンプル種類間における発現量、発現頻度の変化率を求めた。
発現変動解析
各種主要臓器(肺、結腸、直腸、胃、乳、前立腺、肝、腎、卵巣、膵)由来の正常組織に比較し、癌組織で発現量・発現頻度が増加している遺伝子を、以下のようにして選択した。
DNAチップ解析による遺伝子発現の解析結果から、各種正常組織に比べて対応する癌組織で発現量・発現頻度が増加しているプローブセットのうち、多くの癌組織特異的発現量・発現頻度の上昇の認められたプローブを選択した。次にこれら選択されたプローブの対応遺伝子を調べ、これらの遺伝子の中から、さらに薬剤ターゲットとなる機能を有する遺伝子を選別した。その結果、MELK遺伝子、TTK遺伝子、STK12遺伝子、ASK遺伝子、CKS1B遺伝子、GPR87遺伝子の計6遺伝子が選択された。
なお、表9の数値は、各種癌・正常組織での各遺伝子の発現頻度(%)を示している。
更には、これら癌特異的発現遺伝子の産物は、腫瘍抗原タンパク質を有効成分とするCTLの誘導剤としても用いることが可能であると考えられた。
標的遺伝子配列特異的siRNA(small interfering RNA)を用いた癌細胞増殖との関連性検討
上記同定した6種の癌特異的発現遺伝子の癌細胞増殖との関連性を直接的に解析するために各遺伝子配列特異的siRNAを設計・作製後、各遺伝子が高発現する癌細胞株に遺伝子導入することで標的遺伝子mRNAの発現を抑制し、導入後5日後の細胞増殖能への影響を検討することで、各遺伝子の癌細胞増殖との関連の有無を解析した。
標的遺伝子配列特異的siRNA(small interfering RNA)の設計、及び作製
表8に示す6種の各遺伝子について、1種の特異的なsiRNA配列を設定し、sense鎖とantisense鎖により二本鎖が形成されたsiRNAをPROLIGO社より購入した。作製した各siRNAの配列を表10に示した。各siRNA名は、遺伝子の略号を用いて示した。
ヒト肺癌細胞株の培養
HOP62、HOP92、PC−8、および11−18の4種のヒト肺癌細胞株は、10% Fetal Bovine Serum(Invitrogen社)及びペニシリン・ストレプトマイシン(それぞれ50U/ml・50μg/ml;Invitrogen社)を含むRPMI 1640培地(Invitrogen社)を用いて培養した。
ヒト肺癌細胞株における各遺伝子の発現変動解析
前記HOP62細胞、HOP92細胞、PC−8細胞および11−18細胞の4種のヒト肺癌細胞株について、表11で示した対応する遺伝子に関し、実施例1および実施例2で記載のDNAチップ解析による遺伝子発現の解析結果を基に、各細胞株の肺正常組織に対する発現変動倍率を解析した。Human Genome U133 Chipで解析した肺正常組織の遺伝子発現量を1とした場合における各肺癌細胞株での遺伝子発現量を表11に示した。各遺伝子について、対応する細胞株での高発現を確認した。
標的遺伝子配列特異的siRNAの各種癌細胞株への遺伝子導入
トランスフェクションする前日にペニシリン・ストレプトマイシン不含の培地で24ウェルプレートの1ウェルあたり、HOP62を0.5 x 105個、HOP92を0.75 x 105個(あるいは0.5 x 105個)、PC−8を0.4 x 105個、そして11−18を1.5 x 105個の細胞数で培養した。トランスフェクションの当日にペニシリン・ストレプトマイシン不含の0.3mlの各細胞に対応する培地に交換し、GeneSilencer siRNA Transfection Reagent(Gene Therapy Systems社)を用いて、製品の説明書に従い、実施例5で示した各遺伝子特異的siRNAをトランスフェクションした。ただし、無血清培地は、OptiMEM(Invitrogen社)を使用し、1ウェルあたり20μMのsiRNAを3μl使用した。ネガティブコントロールとして、Scramble II(Dharmacon Research社)、Control(non−silencing)siRNA(Qiagen−Xeragon社)およびSilencer Negative Control #1 siRNA(Ambion社)の3種のsiRNA中の1種を各検討について使用した。
トランスフェクション効率解析(蛍光顕微鏡観察法を用いて)
siRNAの各ヒト肺癌細胞株(HOP62、HOP92、PC−8、11−18)に対する遺伝子導入効率を確認する目的で、Fluorescein Labeled Luciferase GL2 Duplex(Dharmacon Research社)を各細胞株に実施例8記載と同様な条件でトランスフェクションした。トランスフェクションして24時間後に10%中性ホルマリンを用いて室温で10分間固定した。蛍光顕微鏡観察法はZeiss Axiovert 135(Zeiss社)を使用し、写真はHamamatsu Color Chilled 3CCD Camera C5810を用いて撮影した。画像処理はAdobe Photoshop 6.0(Adobe Systems社)を使用した。図1に各細胞の位相差顕微鏡による明視野の像と蛍光顕微鏡による暗視野の像、及び位相差と蛍光を重ね合わせた像をそれぞれ左より右の順に示した。いずれの細胞株においても、高い割合の細胞で蛍光が認めら、少なくとも50%以上のトランスフェクション効率が得られることが示された。
癌細胞増殖測定
実施例8で示した各遺伝子特異的siRNAの各ヒト肺癌細胞株へのトランスフェクション5日後に、10%アラマーブルー(TREK Diagnostic Systems社)を含む各細胞株の対応する培地に交換し、45分−2時間、37℃でインキュベーションし、蛍光プレートリーダーFluoroskan Asent(Labsystems社)で蛍光強度を測定し、細胞増殖能を評価した。
癌細胞増殖能変動解析
実施例3にて同定した各遺伝子について、その特異的siRNAを遺伝子導入した肺癌細胞株の増殖能をsiRNA未処理の細胞の増殖能を100%として計算した。表11では、各遺伝子についてsiRNAを導入した高発現する細胞株名、及びその細胞株での各遺伝子の肺正常組織に対する発現変動倍率を示した。また実施例8に示した陰性対照のsiRNAによる各癌細胞株増殖への影響を同様に発現変動倍率で示した。
これらの結果により、同定した6遺伝子またはその発現産物(タンパク質)を用いることによって、癌細胞増殖を緩和、抑制する治療薬の候補薬をスクリーニングすることが可能であることが強く示された。
また、この同定した6種の遺伝子に対する阻害剤スクリーニングにより得られる阻害物質は、この遺伝子の発現が癌特異的発現を示すことから、癌細胞選択的な増殖阻害剤となりえる可能性が考えられた。
腫瘍抗原由来ペプチドによるCTL誘導
ペプチドでCTLを誘導し、そのCTLの活性を評価する方法は、既知のヒトモデル動物を用いたアッセイ方法等に準じて行うことが出来る(WO 02/47474号公報、Int J.Cancer:100,565−570(2002))。例えば、癌抗原由来のペプチドを適当な剤形を用いて、ヒトHLAを発現したトランスジェニックマウスに投与し、約1週間後に脾臓細胞、あるいはその他のリンパ系組織を得る。得られた細胞を、投与したものと同様のペプチドでin vitroで抗原刺激を行い、更に約5日間培養する。得られた細胞をCTL画分とし、51Cr等の放射性物質、あるいはその他の非放射性物質で標識した標的細胞(投与ペプチドが結合するHLAを発現し、更に投与ペプチドをコードする癌抗原、あるいは投与ペプチドを発現する細胞、あるいはペプチドを事前に添加した細胞)と共培養し、CTLによる標的細胞の破壊を培養上清中の放射性物質、非放射性物質の量で測定、CTLの活性を評価する。
候補ペプチドの選択および合成
(1)候補ペプチドの選択
HLA分子に結合して提示される抗原ペプチドの配列には規則性(モチーフ)があり、HLA−A24の場合、8〜11アミノ酸よりなるペプチドの第2位のアミノ酸がチロシン、フェニルアラニン、メチオニン又はトリプトファンであり、C末端のアミノ酸がフェニルアラニン、トリプトファン、ロイシン、イソロイシン又はメチオニンであることが知られている(Immunogenetics,41:178,1995、J.Immunol.,152:3913,1994、J.Immunol.,155:4307,1994)。このようなモチーフに従い、本発明の腫瘍抗原タンパク質6種のアミノ酸配列(配列番号:13〜配列番号:18)から、HLA−A24結合モチーフを有する8〜11アミノ酸よりなるペプチド部分を選択した。これらペプチドのアミノ酸配列を、配列番号:37〜配列番号:225に示す。
前記のペプチド(配列番号:37〜配列番号:225)のうち、6種の腫瘍抗原タンパクについて各1種以上のペプチド、すなわち配列番号:39、75、95、131、157、161、165、192、194、195、210、222〜225に示されるペプチドを、Fmoc法にて合成した。
ここで、配列番号:39に示されるペプチドはASK由来の腫瘍抗原ペプチド、配列番号:75に示されるペプチドはCKS1由来の腫瘍抗原ペプチド、配列番号:95,222−225に示されるペプチドはMELK由来の腫瘍抗原ペプチド、配列番号:131に示されるペプチドはSTK12由来の腫瘍抗原ペプチド、配列番号:157,161,165に示されるペプチドはTTK由来の腫瘍抗原ペプチド、配列番号:192,194,195,210に示されるペプチドはGPR87由来の腫瘍抗原ペプチドである。
CTL誘導能の検討
上記ペプチドが腫瘍抗原ペプチドであるか否かの同定は、HLA−A2402/Kbトランスジェニックマウスを用いて行った。当該トランスジェニックマウスの作製およびイン・ビボ免疫原性の測定については、WO 02/47474号公報およびInt J.Cancer:100,565−570(2002)に詳細に記述されており、当該文献に記載の方法を参考に実施した。すなわち、上記ペプチドを適当な剤形を用いてHLA−A2402/Kbトランスジェニックマウスに投与し、1週間後に脾臓細胞を得た。得られた細胞を投与したものと同一のペプチドでin vitroで抗原刺激を行った。そして約16時間後に得られた細胞をCTL画分とし、IFNγを産生する細胞数をELISPOT法を用いて測定し、抗原特異的なCTL誘導活性の有無を評価した。
各合成ペプチド(配列番号:39、75、95、131、157、161、165、192、194、195、210、222〜225)をそれぞれ40mg/mlにDMSOにて調整し、さらに生理食塩水で2.4mg/mlにそれぞれ希釈した。次に、ガラスシリンジを用いて、1.27倍量のフロイントの不完全アジュバント(ISA51)と混合することによりwater−in−oilエマルションを作製し、200μlの当該薬剤をHLA−A2402/Kbトランスジェニックマウスの尾底部の皮下に免疫した。
免疫7日後に脾臓を摘出し、スライドガラスのフロスト部分にて擦り破壊し、脾細胞を回収・調製した。ACKバッファー(0.15M NH4Cl、10mM KHCO3、0.1mM EDTA,pH7.2−7.4)にて溶血処理した2x107cells/ml濃度の脾細胞を、事前に準備したELISPOTのプレートに100μl/well(2x106cells)でTriplicateで添加した。ペプチド添加群については5μg/mlのペプチド濃度となるよう投与ペプチドと同一のペプチドを添加し、未添加群には培地のみを添加し、37℃,5% CO2で約16時間培養した。この際の培地として、RPMI−1640培地に10%FCS、抗生剤を加えたものを用いた。
市販のMouse IFNγ ELISPOTキット(Mouse IFN gamma ELISPOT Set,Catalogue No.BD−551083,BD Pharmingen社)を用いて実施した。添付のマニュアルに従い実施し、結果のスポット数/wellはKS Elispot Reader Compact(Carl Zeiss社)を用いて測定した。ペプチド特異性を検討するため、CTL反応時にペプチドを添加した群(Peptide(+))と、ペプチド非添加群(Peptide(−))で、それぞれのIFNγ産生細胞数を評価した。
図1および図2に示されるように、6種のタンパク(ASK、CKS1、MELK、STK12、TTK、GPR87)について各1種以上の部分ペプチド、合計15種のペプチドのいずれによってもペプチド特異的CTLが誘導されたため、これらのペプチドは腫瘍抗原ペプチドであることが明らかになった。
以上のように、6種のタンパク(ASK、CKS1、MELK、STK12、TTK、GPR87)は腫瘍抗原タンパクであり、これらの部分ペプチドは腫瘍抗原ペプチドであることが判明した。
また、上記遺伝子(ASK遺伝子、CKS1遺伝子、MELK遺伝子、STK12遺伝子、TTK遺伝子またはGPR87遺伝子)の発現を抑制すると、癌細胞増殖が抑制されることより、これら遺伝子の発現の抑制、またはこれらの遺伝子がコードするタンパク質の発現や機能(活性)の抑制を指標とすることによって、癌疾患の治療薬となりえる候補薬をスクリーニングし選別することが可能である。
更に本発明により、タンパク質(ASK、CKS1、MELK、STK12、TTKまたはGPR87)を新規腫瘍抗原と利用することができ、これら腫瘍抗原タンパク質由来の腫瘍抗原ペプチドも提供される。これらはCTLの誘導剤として癌免疫分野において利用することができる。
配列番号:26に記載の塩基配列はMELK antisenseである。
配列番号:27に記載の塩基配列はTTK senseである。
配列番号:28に記載の塩基配列はTTK antisenseである。
配列番号:29に記載の塩基配列はSTK12 senseである。
配列番号:30に記載の塩基配列はSTK12 antisenseである。
配列番号:31に記載の塩基配列はASK senseである。
配列番号:32に記載の塩基配列はASK antisenseである。
配列番号:33に記載の塩基配列はCKS1 senseである。
配列番号:34に記載の塩基配列はCKS1 antisenseである。
配列番号:35に記載の塩基配列はGPR87 senseである。
配列番号:36に記載の塩基配列はGPR87 antisenseである。
Claims (10)
- TTK protein kinase(TTK)、TTKの部分ペプチド、又はこれらをコードするポリヌクレオチドを有効成分として含有する細胞傷害性T細胞(以下、CTL)の誘導剤。
- 配列番号:156〜配列番号:191のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるペプチド。
- 配列番号:157、161及び165のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるペプチド。
- 配列番号:156〜配列番号:191のいずれかに記載のアミノ酸配列の第2位のアミノ酸をチロシン、フェニルアラニン、メチオニンまたはトリプトファンに置換し、及び/又はC末端のアミノ酸をフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファンまたはメチオニンに置換したアミノ酸配列からなるペプチド。
- 配列番号:157、161及び165のいずれかに記載のアミノ酸配列の第2位のアミノ酸をチロシン、フェニルアラニン、メチオニンまたはトリプトファンに置換し、及び/又はC末端のアミノ酸をフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファンまたはメチオニンに置換したアミノ酸配列からなるペプチド。
- 請求項2〜5のいずれかに記載のペプチドを有効成分として含有するCTLの誘導剤。
- 下記の工程(a)、(b)および(c)を含む、癌疾患の予防、改善または治療剤の有効成分を探索する方法:
(a)被験物質とTTK遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞の、TTK遺伝子の遺伝子発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞におけるTTK遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、TTK遺伝子の遺伝子発現量を減少させる被験物質を、癌疾患の予防、改善または治療剤の有効成分の候補物質として選択する工程。 - 下記の工程(a)、(b)および(c)を含む癌疾患の予防、改善または治療剤の有効成分を探索する方法:
(a)被験物質とTTKを発現可能な細胞または該細胞から調製した細胞画分とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞または該細胞から調製した細胞画分におけるTTKの発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞もしくは細胞画分におけるTTKの発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、TTKの発現量を低下させる被験物質を、癌疾患の予防、改善または治療剤の有効成分の候補物質として選択する工程。 - 次の工程(a)、(b)及び(c)を含む、癌疾患の予防、改善または治療剤の有効成分を探索する方法:
(a)被験物質の存在下で、TTK、基質及びATPを接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じる基質のリン酸化量を測定し、当該基質のリン酸化量を、被験物質非存在下で生じる基質のリン酸化量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、基質のリン酸化量の減少(低下)をもたらす被験物質を、癌疾患の予防、改善または治療剤の有効成分の候補物質として選択する工程。 - 基質がmyeline basic proteinまたはpoly(tyr−Glu)peptideである、請求項9記載の方法。
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