JP2011026660A - 摺動部材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】基材とDLC被膜との密着力および耐食性が高い摺動部材、および当該摺動部材の製造方法を提供すること。
【解決手段】摺動部材1は、プラズマ窒化処理により表層に窒化層20が形成されたステンレス鋼製の基材3と、直流プラズマCVD法により基材3の表面に形成されたDLC被膜21と、DLC被膜21により形成された摺動面22とを含む。プラズマ窒化処理は、基材3の温度が450℃以下、処理室内の圧力が600Pa以上、処理室内に導入する窒素ガスおよび水素ガスを含む処理ガス中の窒素ガス濃度が80vol%以上100vol%未満の条件下で、処理室内にプラズマを発生させることにより行われる。また、DLC被膜21の成膜処理は、基材3の温度が450℃以下の条件下で行われる。
【選択図】図2

Description

この発明は、摺動部材およびその製造方法に関する。
耐摩耗性の向上や摩擦係数の低減などを目的として、摺動部材の基材の表面をDLC(Diamond Like Carbon)膜によって被覆することが知られている。たとえば特許文献1では、オーステナイト系ステンレス鋼製の基材をプラズマ窒化処理した後、直流プラズマCVD(Direct Current Plasma Chemical Vapor Deposition)法によって基材の表面にDLC−Si被膜(Siを含むDLC被膜)を形成する方法が開示されている。プラズマ窒化処理は、基材とDLC−Si被膜との密着性を向上させるための処理であり、特許文献1に係るプラズマ窒化処理は、基材の温度が400℃の条件下で行われる。
特開2008-31522号公報
ステンレス鋼を高温で処理すると、処理前よりも耐食性が低下してしまう場合がある。より具体的には、ステンレス鋼中のクロムと炭素とが高温処理によって結合し、クロム炭化物が結晶粒界に形成される場合がある。この場合、結晶粒界周辺のクロム濃度が低下してしまうので、ステンレス鋼の表面に不動態皮膜が形成されなくなる。そのため、ステンレス鋼の耐食性が処理前よりも低下してしまう(これを「ステンレス鋼の鋭敏化」という)。
ステンレス鋼の鋭敏化は、たとえば、マルテンサイト系ステンレス鋼であれば500℃付近で焼き戻しを行った場合、オーステナイト系ステンレス鋼であれば450℃〜850℃の範囲内(特に、650℃付近)で所定時間以上加熱した場合に生じる。前述の特許文献1では、オーステナイト系ステンレス鋼製の基材の温度が400℃の条件下でプラズマ窒化処理が行われるので、ステンレス鋼の鋭敏化を回避することができる。しかしながら、プラズマ窒化処理における他の処理条件が適切でないと、所望の窒化層が得られず、基材とDLC−Si被膜との密着性が低下するなどの問題が生じる場合がある。
そこで、本発明の目的は、基材とDLC被膜との密着力および耐食性が高い摺動部材、および当該摺動部材の製造方法を提供することである。
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、プラズマ窒化処理により表層に窒化層(20)が形成されたステンレス鋼製の基材(3)と、直流プラズマCVD法により前記基材の表面に形成されたDLC被膜(21)と、前記DLC被膜により形成された摺動面(22)とを含み、前記プラズマ窒化処理は、前記基材の温度が450℃以下、処理室内の圧力が600Pa以上、処理室内に導入する窒素ガスおよび水素ガスを含む処理ガス中の窒素ガス濃度が80vol%以上100vol%未満の条件下で、処理室内にプラズマを発生させることにより行われ、前記DLC被膜の成膜処理は、前記基材の温度が450℃以下の条件下で行われる、摺動部材(1、24)である。なお、括弧内の数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この発明によれば、ステンレス鋼製の基材に対するプラズマ窒化処理およびDLC被膜の成膜処理が基材の温度が450℃以下の条件下で行われるので、ステンレス鋼の鋭敏化を回避することができる。これにより、摺動部材の耐食性の低下を防止することができる。また、後述するように、前述の条件下でプラズマ窒化処理を基材に行うことにより、深さおよび硬さが良好な所望の窒化層を得ることができる。したがって、基材とDLC被膜との密着力を十分に確保することができる。
請求項2記載の発明は、前記DLC被膜は、Siを含む請求項1記載の摺動部材である。この発明によれば、たとえば液中で摺動部材が使用される場合に、摺動面の摩擦係数をさらに低下させることができる。したがって、摺動部材の摺動抵抗をさらに低下させることができる。
請求項3記載の発明は、DLC被膜により形成された摺動面を有する摺動部材の製造方法であって、基材の温度が450℃以下、処理室内の圧力が600Pa以上、処理室内に導入する窒素ガスおよび水素ガスを含む処理ガス中の窒素ガス濃度が80vol%以上100vol%未満の条件下で、処理室内にプラズマを発生させることにより、ステンレス鋼製の基材の表層に窒化層を形成するプラズマ窒化処理工程と、基材の温度が450℃以下の条件下で、窒化層が形成された前記基材の表面に直流プラズマCVD法によりDLC被膜を形成するDLC被膜形成工程とを含む、摺動部材の製造方法である。この発明によれば、請求項1の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
請求項4記載の発明は、前記DLC被膜形成工程は、Siを含むDLC被膜を形成する工程を含む、請求項3記載の摺動部材の製造方法である。この発明によれば、請求項2の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
本発明の一実施形態に係る摺動部材を製造するための製造装置の概略構成を示す模式図である。 摺動部材の表層の断面図である。 摺動部材の製造工程の一例を説明するための工程図である。 処理圧と窒化深さとの関係を示すグラフである。 処理圧と窒化層の硬さとの関係を示すグラフである。 処理ガス中の窒素ガス濃度と窒化深さとの関係を示すグラフである。 処理ガス中の窒素ガス濃度と窒化層の硬さとの関係を示すグラフである。 摺動部材を備えるウォーターポンプの図解的な断面図である。
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る摺動部材1を製造するための製造装置2の概略構成を示す模式図である。
この製造装置2は、プラズマ窒化処理を基材3に施して、窒化された基材3の表面に直流プラズマCVD法によってDLC被膜を形成するためのものである。製造装置2は、隔壁4で取り囲まれた処理室5と、処理室5内で基材3を保持する基台6と、処理室5内にガスを導入するためのガス導入管7と、処理室5内の気圧を減圧する減圧機構8と、処理室5内に導入されたガスをプラズマ化させるための直流電源9とを備えている。
基台6は、処理室5内で水平に配置された支持プレート10と、上下方向に延び、支持プレート10を支持する支持軸11とを備えている。この実施形態では、基台6として、3つの支持プレート10が上下方向に間隔を隔てて配置された3段式のものが採用されている。基台6は、導電材料を用いて形成されており、直流電源9の負極に電気的に接続されている。また、隔壁4は、導電材料を用いて形成されており、アース接続されている。隔壁4および支持軸11は、絶縁部12によって絶縁されている。したがって、直流電源9によって直流電圧が隔壁4に印加されると、隔壁4および基台6間に電位差が生じる。
ガス導入管7は、処理室5内における基台6の上方を、水平方向に延びている。ガス導入管7の基台6に対向する部分には、ガス導入管7の長手方向に沿って配列された多数の吐出孔13が形成されている。多数の吐出孔13からガスが吐出されることにより、処理室5内にガスが導入される。ガス導入管7には、図示しないバルブの切り替えにより、プラズマ窒化処理に用いられる処理ガスや、DLC被膜の成膜に用いられる原料ガスなどの複数種のガスがそれぞれ所定流量で選択的に供給される。処理ガスは、窒素ガスおよび水素ガスを含むガスであり、原料ガスは、炭化水素ガスを含むガスである。
減圧機構8は、処理室5に連通する第1排気管14および第2排気管15と、第1圧力調節バルブ16および第2圧力調節バルブ17と、第1ポンプ18および第2ポンプ19とを備えている。第1排気管14の途中部には、第1圧力調節バルブ16および第1ポンプ18が、処理室5側からこの順で介装されている。第1ポンプ18が駆動されることにより、処理室5内の気体が排気され、処理室5内の圧力(気圧)が減圧される。第1ポンプ18としては、たとえば、ロータリポンプなどが採用されている。
また、第2排気管15の先端は、第1排気管14における第1ポンプ18と第1圧力調節バルブ16との間に接続されている。第2排気管15の途中部には、第2圧力調節バルブ17および第2ポンプ19が、処理室5側からこの順で介装されている。第2ポンプ19が駆動されることにより、処理室5内の気体が排気され、処理室5内の圧力(気圧)が減圧される。第2ポンプ19としては、たとえばターボ分子ポンプが採用されている。
図2は、摺動部材1の表層の断面図である。また、図3は、摺動部材1の製造工程の一例を説明するための工程図である。
図2に示すように、摺動部材1は、表層に窒化層20が形成されたたとえばオーステナイト系ステンレス鋼製の基材3と、基材3の表面に形成されたDLC−Si被膜21(Siを含むDLC被膜)と、DLC−Si被膜21により形成された摺動面22とを含む。窒化層20は、製造装置2を用いて基材3にプラズマ窒化処理を行うことにより形成されたものであり、DLC−Si被膜21は、製造装置2を用いて直流プラズマCVD法により成膜処理を行うことにより形成されたものである。以下では、図1〜図3を参照して、窒化層20を形成するためのプラズマ窒化処理、およびDLC−Si被膜21を形成するための成膜処理の処理工程の一例について説明する。
処理対象となる基材3は、処理室5内に搬入されて(ステップS1)、支持プレート10上に載置される。そして、処理室5内が密閉された後、減圧機構8による減圧が開始される(ステップS2)。より具体的には、最初に、第1ポンプ18が駆動されて、その後、第2ポンプ19が駆動される。そして、処理室5内の圧力が所定圧に達した後に第2ポンプ19の駆動が停止され、第1ポンプ18による減圧が継続される。したがって、処理室5内の圧力が減圧された状態が維持される。
次に、プラズマ窒化処理が行われる。より具体的には、ガス導入管7から処理室5内に水素ガスが導入され、さらに直流電源9によって負の直流電圧が基台6に印加される。これにより、支持プレート10上に支持された基材3に負の直流電圧が印加され、処理室5内の水素ガスがプラズマ化してHイオンが負極の基材3に衝突する。これにより、基材3が昇温される(ステップS3)。そして、基材3の温度が所定温度になると、基材3に負の直流電圧が印加された状態で、窒素ガスおよび水素ガス(処理ガスに相当)がガス導入管7から処理室5内に導入される。これにより、処理ガスがプラズマ化して、処理室5内のNイオンが基材3に衝突する。このようにして、基材3の表面が窒化される(ステップS4)。
プラズマ窒化処理の処理条件は、基材3の温度が450℃以下、処理室5内の圧力(処理圧)が600Pa以上、処理ガス中の窒素ガス濃度が80vol%以上100vol%未満である。すなわち、基材3が前述の温度になるように、図示しない変圧器によって基材3に印加される電圧値が調整され、基材3を流れる電流値がほぼ一定に制御される。また、処理室5内の圧力が前述の圧力になるように、第1および第2圧力調節バルブ16、17が調整される。さらに、窒素ガス濃度が前述の割合になるように、ガス導入管7に供給される窒素ガスおよび水素ガスの流量が調整される。
この処理例におけるプラズマ窒化処理の処理条件は、基材3の温度が400℃、処理室5内の圧力(処理圧)が670Pa、処理ガス中の窒素ガス濃度が80vol%(処理ガス全体の流量は、2slm(standard liters per minute))、処理時間が60minである。この処理条件において基材3に印加される電圧値は、基材3を流れる電流値が2〜4Aになるように調整される。また、この処理条件によって得られた窒化層20の深さD1(図2参照)は、5μmであり、窒化後の基材3の表面硬度(ビッカース硬さ)は、700Hvであった。
次に、直流プラズマCVD法によってDLC−Si被膜21の成膜処理が行われる。より具体的には、基材3に負の直流電圧が印加された状態で、たとえば、メタンガス、水素ガス、アルゴンガスおよびテトラメチルシランガス((Si(CH)。以下、「TMSガス」という。)からなるDLC−Si被膜21の原料ガスがガス導入管7から処理室5内に導入される。これにより、原料ガスがプラズマ化して、イオン・ラジカルが生成され処理室5内に浮遊する。そして、処理室5内で生じる化学反応により、Siを含有するDLCが基材3の表面上に堆積し、基材3の表面上にDLC−Si被膜21が形成される(ステップS5)。成膜処理時の基材3の温度は、450℃以下であり、原料ガス中のTMSガスの濃度は、DLC−Si被膜21中のSiの割合が7〜30wt%(好ましくは、20wt%)になるように調整される。したがって、DLC−Si被膜21には、7〜30wt%(好ましくは、20wt%)でSiが含まれている。
図4は、処理圧と窒化深さとの関係を示すグラフであり、図5は、処理圧と窒化層20の硬さとの関係を示すグラフである。また、図6は、処理ガス中の窒素ガス濃度と窒化深さとの関係を示すグラフであり、図7は、処理ガス中の窒素ガス濃度と窒化層20の硬さとの関係を示すグラフである。
各グラフにおける測定値は、製造装置2を用いてオーステナイト系ステンレス鋼製の基材にプラズマ窒化処理を行ったときのものである。また、図4および図5は、基材の温度を400℃、処理ガス中の窒素ガス濃度を50vol%(窒素ガスと水素ガスとの割合が1対1)、処理時間を60minに固定して、処理室5内の圧力(処理圧)を変化させたときの測定値である。また、図6および図7は、基材の温度を400℃、処理圧を670Pa、処理時間を60minに固定して、処理ガス中の窒素ガス濃度を変化させたときの測定値である。
図4に示す測定値から、処理圧が400Pa以上〜533Pa未満の範囲内では窒化深さがほぼ一定であり、処理圧が533Pa以上になると、処理圧の増加に伴って窒化深さが増加することが分かる。したがって、プラズマ窒化処理における処理圧を533Pa以上に設定することにより、窒化深さを増加させることができる。
また、図5に示す測定値から、処理圧が400Pa以上〜533Pa未満の範囲内では、処理圧の増加に伴って窒化層の硬さが僅かに減少し、処理圧が533Pa以上になると、窒化層の硬さがほぼ一定になることが分かる。したがって、プラズマ窒化処理における処理圧が400Pa以上のときは、窒化層の硬さが殆ど変化せず、処理圧が533Pa以上になると窒化層の硬さがほぼ一定になる。すなわち、図4および図5に示す測定値から、プラズマ窒化処理における処理圧を533Pa以上に設定することにより、窒化層の硬さをほぼ一定に維持しながら窒化深さを増加させることができる。
また、図6に示す測定値から、窒素ガス濃度が50vol%以上〜70vol%未満の範囲内では、窒化深さがほぼ一定であり、窒素ガス濃度が70vol%以上になると、窒素ガス濃度の増加に伴って窒化深さが増加することが分かる。したがって、プラズマ窒化処理における窒素ガス濃度を70vol%以上100vol%未満に設定することにより、処理ガスに含まれる水素ガスによって基材の窒化を促進させながら、窒化深さを増加させることができる。
また、図7に示す測定値から、窒化層の硬さは、窒素ガス濃度の増加に伴って増加することが分かる。したがって、図6および図7に示す測定値から、プラズマ窒化処理における窒素ガス濃度を70vol%以上100vol%未満に設定することにより、窒化層の深さ及び硬さを増加させることができる。
以上の考察をまとめると、プラズマ窒化処理における処理圧を533Pa以上、窒素ガス濃度を70vol%以上100vol%未満に設定することにより、窒化層の深さ及び硬さを効率的に増加させることができる。また、得られる窒化層の条件として、たとえば、窒化深さを5μm、硬度を700Hvに設定すると、図6および図7の測定値より、プラズマ窒化処理における処理温度を400℃、処理圧を670Pa、処理時間を60min、窒素ガス濃度を80vol%に設定することにより、所望の窒化層を形成することができる。したがって、これらの数値を満足する処理条件下でプラズマ窒化処理が行われた摺動部材1の基材3には、深さ及び硬さが良好な所望の窒化層20が形成されている。そのため、DLC−Si被膜21と基材3の表面(下地)との密着力が十分に確保されており、低硬度の下地に起因するDLC−Si被膜21の割れが防止されている。
また、オーステナイト系ステンレス鋼製の基材3に対して、450℃以下の条件下でプラズマ窒化処理および成膜処理が行われるので、ステンレス鋼の鋭敏化が回避されている。そのため、ステンレス鋼の鋭敏化による摺動部材1の耐食性の低下が防止されている。したがって、たとえば液中や酸性・アルカリ性雰囲気中などの腐食環境下(腐食が生じ易い環境下)で摺動部材1が使用される場合であっても、摺動部材1の腐食や錆びを確実に抑制または防止することができる。さらに、DLC−Si被膜21にSiが含まれているので、液中における摺動部材1の摩擦係数をさらに低減できる。
図8は、摺動部材1を備えるウォーターポンプ23の図解的な断面図である。以下では、図2および図8を参照して、摺動部材1が備えられたウォーターポンプ23について説明する。
ウォーターポンプ23は、たとえば、車両用のエンジンに形成されたウォータージャケット(図示せず)に冷却水を供給するためのものである。ウォーターポンプ23は、摺動部材1としてのシャフト24と、このシャフト24の一端に連結された羽根車25と、シャフト24の他端に連結されたプーリ26と、冷却水の流路27を形成するハウジング28と、ハウジング28内でシャフト24を回転可能に支持する軸受29と、ハウジング28とシャフト24との間を封止する環状のメカニカルシール30とを備えている。プーリ26に回転力が入力されることにより、シャフト24および羽根車25が一体回転して、流路27内の冷却水がウォータージャケットに供給される。
シャフト24は、基材3の表面がDLC−Si被膜21によって被覆されたものであり、摺動面22に相当するシャフト24の外周面は、DLC−Si被膜21によって形成されている。シャフト24が回転すると、軸受29の転動体31およびシール32、ならびにメカニカルシール30がシャフト24の外周面に摺動する。シャフト24の一部は、流路27内に位置しており、メカニカルシール30は、流路27内の冷却水がメカニカルシール30よりも軸受29側に移動することを規制している。
この実施形態では、シャフト24の外周面(摺動面22)が、耐摩耗性および摺動性に優れるDLC−Si被膜21によって形成されているので、摺動に伴うシャフト24の摩耗が抑制されており、摺動抵抗が低減されている。また、DLC−Si被膜21にSiが含まれているので、冷却水中におけるシャフト24の摩擦係数がさらに低減されている。さらに、シャフト24は、基材3の温度を450℃以下にしたプラズマ窒化処理および成膜処理を経て形成されているので、ステンレス鋼の鋭敏化が回避されている。したがって、この実施形態のように、シャフト24の一部が冷却水中で使用される場合でも、シャフト24の腐食および錆びを確実に防止することができる。
この発明の実施の形態の説明は以上であるが、この発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。例えば前述の実施形態では、基材3に被覆される膜がDLC−Si被膜21である場合について説明したが、基材3に被覆される膜は、Siが含まれないDLC被膜であってもよいし、Si以外の元素を含むDLC被膜であってもよい。
また、前述の実施形態では、基材3が、オーステナイト系ステンレス鋼製である場合について説明したが、基材3は、オーステナイト系以外のステンレス鋼によって形成されていてもよい。
また、前述の実施形態では、DLC−Si被膜21の形成に用いる原料ガスのうち炭化水素系のガスとしてメタンガスを採用する構成を説明したが、メタンガスに代えて、アセチレン(C)、ヘキサン(C14)、ベンゼン(C)などを採用することができる。さらに、DLC−Si被膜21の形成に用いる原料ガスのうちSi成分を含むガスとしてTMSを採用する構成を説明したが、TMSに代えて、ジメチルシロキサンやシラン(SiH)などを採用することができる。
また、前述の実施形態では、摺動部材1が、ウォーターポンプ23のシャフト24として用いられる場合について説明したが、摺動部材1は、ウォーターポンプ23のシャフト24以外の部材として用いられてもよい。たとえば、クラッチプレート、歯車、軸受の内輪、軸受の外輪、軸受の転動体、スプライン軸として摺動部材1を用いてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
1・・・摺動部材、2・・・製造装置、3・・・基材、20・・・窒化層、21・・・DLC−Si被膜(DLC被膜)、22・・・摺動面、24・・・シャフト(摺動部材)

Claims (4)

  1. プラズマ窒化処理により表層に窒化層が形成されたステンレス鋼製の基材と、
    直流プラズマCVD法により前記基材の表面に形成されたDLC被膜と、
    前記DLC被膜により形成された摺動面とを含み、
    前記プラズマ窒化処理は、前記基材の温度が450℃以下、処理室内の圧力が600Pa以上、処理室内に導入する窒素ガスおよび水素ガスを含む処理ガス中の窒素ガス濃度が80vol%以上100vol%未満の条件下で、処理室内にプラズマを発生させることにより行われ、
    前記DLC被膜の成膜処理は、前記基材の温度が450℃以下の条件下で行われる、摺動部材。
  2. 前記DLC被膜は、Siを含む請求項1記載の摺動部材。
  3. DLC被膜により形成された摺動面を有する摺動部材の製造方法であって、
    基材の温度が450℃以下、処理室内の圧力が600Pa以上、処理室内に導入する窒素ガスおよび水素ガスを含む処理ガス中の窒素ガス濃度が80vol%以上100vol%未満の条件下で、処理室内にプラズマを発生させることにより、ステンレス鋼製の基材の表層に窒化層を形成するプラズマ窒化処理工程と、
    基材の温度が450℃以下の条件下で、窒化層が形成された前記基材の表面に直流プラズマCVD法によりDLC被膜を形成するDLC被膜形成工程とを含む、摺動部材の製造方法。
  4. 前記DLC被膜形成工程は、Siを含むDLC被膜を形成する工程を含む、請求項3記載の摺動部材の製造方法。
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