半導体素子を利用したアクティブマトリクス液晶表示装置は、モバイルコンピュータ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電話、ヘッドマウントディスプレイ等の直視形表示装置として、またフロントおよびリアプロジェクタの様なレンズ等の光学系により拡大表示を目的とする投射形の表示装置として開発が活発に行われている。
これらは外光を反射させて表示する反射型表示装置と、バックライトもしくはメタルハライド等の光源光を透過させて表示する透過型表示装置の他、両者の特徴を有する半透過型に分類される。
反射型表示装置は、バックライトが必要無いことから低消費電力化が図れ携帯する装置に有利である。さらに太陽光線の下で表示を見る場合はバックライトよりも見やすい。
反面、暗いところでは見えず使えない、外光を使用するため明るい表示が得難い、コントラストを高くし難いという欠点がある。
このため暗いところでもその使用が可能になるように考えられたものが半透過型の表示装置である。しかし、この場合もコントラストおよび明るさに反射型よりも劣り、表示的にはさらに厳しい状況である。
以下に従来の反射型アクティブマトリクス液晶表示装置について説明する。ここでは反射作用を有しこの特性を利用する画素電極を反射画素電極と称す。
図1(A)に反射画素電極を鏡面とした場合における1枚偏光板方式直視形のアクティブマトリクス反射型液晶表示装置の従来例を示す。
カラーフィルタ層101、ブラックマトリクス(以下BM)102、共通電極103からなる対向基板と、薄膜トランジスタ(TFT)等の半導体素子104で形成されるアクティブマトリクス回路が形成された素子基板を有する。
この両基板間に液晶105を注入し、共通電極103と反射画素電極106の電界を制御することにより電気光学変調を行う。この場合、液晶105を配向させるため、両電極上103、106には配向膜107が成膜され、ラビング等による配向処理が行われる。
この後、液晶105との組み合わせで光の透過量を制御する偏光板110や視野角改善、映り込み対策を兼ねて位相差板109、散乱板108等を貼付する。
本明細書では偏光板、散乱板、位相差板、λ/4板というように語尾に板という表現を用いているが、通常これらはフィルムの形態をしていることが多いために、慣習的に呼ばれるものである。しかし本明細書では、これらは必ずしも板状のものでなければならない、ということはない。偏光板とは偏光機能を、散乱板とは前方散乱機能を、そして位相差板およびλ/4板は光の変調機能をそれぞれ有するものの総称としてここでは定義する。
鏡面反射画素電極106を採用した直視形液晶表示装置では、白色をより白くするため、任意の視野範囲内で隣接画素に影響を与えない範囲で光を散乱させる必要があり、これを散乱板108等で実現している。
外光を反射するための反射板は画素電極106を兼ねて素子基板上に形成される。データ線、ゲート線、TFT部、容量形成部の上に構成されるため、画素領域において90%前後の電極面積率が得られる。
さらに半導体素子104上部に反射板107があるため直接的、間接的に、この半導体層への光の照射量が減る。これによりオフ電流が増加する光リークが防止できるという効果がある。特に強力な光源からの光を照射するプロジェクターでは有効である。
上記のような構造において、反射型の液晶表示モードとして、液晶105への電圧印加時に黒表示、無印加に白表示となるノーマリホワイトモードを採用することが多い。これはノーマリブラックモードと比べて明るさを得やすいためである。
しかし、液晶表示装置にてノーマリホワイトモードを採用した場合、隣接する画素の境界部で光漏れが生じ、コントラストを劣化させる原因となっている。
これは各画素の電極間では対向基板との間に印加される電界よりも、基板面に対して平行な横方向電界の影響が顕著となり、この部分に存在する液晶分子がこの横方向電界の影響を受け、異なる液晶配向状態のドメインを生じるためである。このドメインの境界部がデータ線、ゲート線上もしくは、この近傍にディスクリネーションとして観察される。表示において、この部分に強い光漏れが見られるだけでなく、その周辺にも光漏れが観察される。
通常、液晶表示装置では液晶および配向膜材料中の不純物イオン等の影響による残留直流電界の発生を抑え、また表示におけるフリッカー(ちらつき)現象を防止するため、フレーム周期ごと、および同一フレーム内の隣接画素間において交流駆動を採用している。このため、極性の異なる電界が隣接画素の境界部で存在し、対向基板と(反射)画素電極間に印加される電界の2倍の電界となっていることも、光漏れが広範囲におよぶ要因になっている。
この対策としては、物理的にこの光漏れを隠す方法がある。対向基板に光を遮光もしくは吸収するBM102を形成して、光漏れ部を隠す手段がとられる。
この方法は簡単だが、対向基板にBM102を形成する工程が必要なこと、および対向基板と素子基板の貼り合わせマージンを考慮してBMの領域を確保しなければならないという欠点がある。このため、反射画素電極106の有効な反射面積はかなり削減される。
透過型液晶表示装置の場合は素子基板上にBMを形成し、貼り合わせ精度をマスクの位置合わせ精度に改善できる。しかし、対向基板側より観察する反射型液晶表示装置においては、対向基板上にBMを形成せざるをえないのが実状である。
ディスクリネーションによる光漏れ幅を2μmに抑えた場合でも、データ線あるいはゲート線の線幅を4μmとすると、対向基板と素子基板の貼り合わせ精度はその他マージンを含めて±2μm程度見積もる必要があり、BM幅としては6μm程度必要となる。
このため2μm画素領域を遮光することとなり、結局、反射画素電極106の有効反射面積を活かせない。
他の対策としては、液晶表示装置のセルギャップ(概略対向電極と画素電極の間隔)を従来の半分程度に狭くし、画素電極106と対向基板間の垂直電界を、画素に周辺においても強くする手段が考えられる。
セルギャップは、光を有効利用するための液晶表示装置における光学パラメータの要因であるため、これにあった液晶の動作モードに制限される。
また、もう一つの光学パラメータである液晶材料自体の屈折率異方性定数は従来の2倍前後のものが必要となるが、材料の信頼性等を含めて考慮すると、この対応はかなり限定されたものになる。
今後、高精細化が進みデータ線やゲート線の線幅が狭くなると、対向基板と素子基板の貼り合わせマージンの占める割合が大きくなりBM102の占有領域が増加する。このため反射画素電極106の有効領域が減少する問題が予想される。
図1(B)は、図1(A)の鏡面反射画素電極と散乱板の組み合わせではなく、反射画素電極自体に散乱効果を有する構成とした例を示す。
この構成においては、散乱効果を表示部直近で実現するため、透明基板の厚みを介して散乱させる場合に比較して、映像の輪郭部でのボケが生じ難という特徴がある。また散乱板等による光の吸収等もなく、反射散乱光の指向性を制御することも可能であり、表示輝度、コントラストにも有利となる。
しかし、上記構造では素子基板上の反射画素電極もしくは、その下地膜に任意の凹凸111を形成する必要があり、このための加工工程が追加されるため、この基板の歩留まりへの影響もあり製造コストを上げる要因でもある。
さらに、反射画素電極部に凹凸111があるため、液晶の配向が均一化し難く、この電極の形状や、上部の膜構成によっては、焼き付きの原因となる電荷の蓄積が生じる可能性がある。
反射型液晶表示装置において、明るさを改善することが、見易さやコントラスト、美しさ等の表示品位を改善する上でも必須となる。このため反射率の高い材料の採用が望まれている。
現在はアルミニウム、アルミニウム合金からなる材料が一般的である。これは実使用時の可視光において反射率が83〜88%で、エッチングの加工と材料の安定性から選択されている。
現状のアルミニウムを主体とする材料より、10%からそれ以上のより高い反射率を得るためには、銀や銀合金、誘電体多層膜等の採用が考えられる。
しかし、これらの材料は酸化による腐食や加工性の悪さが知られている。銀は酸化しやすく腐食しやすい。さらに、加工時の膜の剥がれや、残渣物の液晶への影響等の問題がある。
このため銀にこれを防止する不純物を添加すること、表面をコートする等の工夫がされ一部実用化されていが信頼性、生産性における問題が多い。
誘電体多層膜は屈折率の異なる膜を多層積層することにより100%により近い反射率を得ることが可能である。しかし、これに用いられる無機の誘電体膜は、その加工性が著しく劣る。
また、画素電極上にこの膜を積層すると、その誘電率の影響により液晶に任意の電界をかけられなくなってしまう。
鏡面反射画素電極および凹凸等のテクスチャを形成した反射画素電極においては、画素単位の加工が必要である。このため上記の材料は採用し難かった。
ここでは、前記の問題点を解決することを課題とし、対向BMが必要なく工程の簡略化と、対向基板との位置合わせ精度からくる反射面積の低減を考慮する必要が無く、反射電極材料の選択範囲を広げ、液晶の配向に影響を与え難い構造をもち、かつ生産しやすい反射型液晶表示装置を実現することを目的とする。その結果、総合的に反射輝度、コントラスト等の表示品位の改善と信頼性の高い製品を低価格で提供できる手段を提供する。
本発明は、一対の基板間に液晶が挟持されてなり、前記一対の基板の一方の基板にマトリクス状に配置された透明電導膜からなる画素電極と、前記画素電極に接続された半導体素子とが形成されてなる液晶表示装置において、前記一方の基板は透明性および絶縁性を有する基板でなり、他方の基板上には反射層と透明電導膜からなる共通電極を有することを特徴とする。
上記構成としては、反射もしくは半透過の液晶表示装置において、反射層と画素電極および共通電極を分離し、反射層を対向基板側に設けることを特徴とする。ここで反射層とは、使用される材料単体もしくは積層構造からなる媒体の空気中での反射率が30%以上の特性を有する層とする。
対向基板側での反射層の加工は、画素電極のような設計ルールでの加工の必要がなく非常にシンプルになる。加工時の下地膜の制約も受け難い。このため材料の選択範囲を広げることができる。画素電極はこれまで条件の確立しているITOを使用しているため、従来のプロセスルールで加工すればよい。
これにより電極材料としては、従来アルミニウムもしくはアルミニウムを主成分とする材料が一般的であったが、光学的に、より高い反射率もしくは散乱特性、指向性を得られる銀や銀の酸化を抑制する材料を添加した材料、誘電体多層膜、ダイクロイックミラー、ホログラム等の適用が容易になる。反射率の高い材料が使えることで、反射輝度が高められ、より明るい表示が得られる。
また、ダイクロイックミラー等で特定の可視光波長領域のみ反射させカラーフィルタを用いないで、カラー表示用の直視もしくは投射型の液晶表示装置を実現することも可能である。
さらに反射層と電極を分離することで、反射膜材料へのコートが可能となる。
これにより例えば銀のような反射膜材の酸化を防止する手段が容易となるだけでなく、液晶の保持率等に影響を与える加工時の残渣等の影響を防ぐことか可能となる。
散乱性および指向性をもたせたテクスチャ形状を有する反射膜を形成する場合でも、対向基板の反射膜材への直接の加工や、下地膜への加工をすればよく、素子基板の歩留まりを劣化させることがない。
また、画素電極や共通電極自体にテクスチャを形成しなくてもよいため、液晶でもっとも重要なセルギャップを均一化でき、色むら等おき難い構造であるだけでなく、配向も表示領域全般に均一化しやすく、構造的要因、例えば凹凸や段差に起因するディスクリネーションの元となる配向不良を防止できる。
画素の高精細化による、狭画素ピッチの構造にもコンタクトホール等の加工スペースを考慮することなく容易に適用できる。
また、明細書中で記述される半導体素子としては薄膜トランジスタ(TFT)
が代表的であるが、その他にもMIM(Metal−Insulator−Metal)、薄膜ダイオード、バリスタ、絶縁ゲート型電界効果トランジスタ、バイポーラトランジスタ等により構成される素子を用いても良い。
また他の発明は、一対の基板間に液晶が挟持されてなり、前記一対の基板の一方の基板にマトリクス状に配置された画素電極と、前記画素電極に接続された半導体素子とが形成されてなる液晶表示装置において、前記一方の基板は透明性および絶縁性を有する基板でなり、他方の基板上には反射層と透明電導膜からなる共通電極を有し、前記反射層と前記共通電極は電気的に接続されていることを特徴とする。
反射層と共通電極を接続し電気的に同電位とすることにより、静電気的な浮遊電荷や、反射層と共通電極間にある物質中の不純物イオン等による残留DC分の発生を防止する。
また他の発明は、一対の基板間に液晶が挟持されてなり、前記一対の基板の一方の基板にマトリクス状に配置された画素電極と、前記画素電極に接続された半導体素子とが形成されてなる液晶表示装置において、前記一方の基板は透明性および絶縁性を有する基板でなり、前記スイッチング素子が形成された基板面の裏面にλ/4板を有し、他方の基板上には反射層と透明電導膜からなる共通電極を有することを特徴とする。
上記構成としては、反射もしくは半透過の液晶表示装置において、表示観察面を素子基板の裏面とし、λ/4板をこの基板の観察面に配置したことを特徴とする。
図2(A)、(B)にλ/4板に直線偏光を入射した場合の出力光の偏光状態を示す。
まず、透過の場合について図2(A)の光学系を用いて説明する。ここでは入射光201が第一の偏光板202、第一のλ/4板203、第二のλ/4板204、第二の偏光板205、の順に透過するときのことを考える。本光学系において、第一の偏光板202の透過軸と第一のλ/4板203の遅相軸とのなす角は45°であり、第一のλ/4板203と第二のλ/4板204のそれぞれの遅相軸方向は同じであり、第一の偏光板202と第二の偏光板205のそれぞれの透過軸方向は同じであるとする。
入射光201は第一の偏光板202を通過することにより、この偏光板202の透過軸に平行な直線偏光206となり出力される。λ/4板203は屈折率がX軸およびY軸にて異なる一軸性を有する光学媒体であり、直線偏光206がこの光学媒体に入射すると、常光成分と異常光成分に分離し、これらの間に位相差を有する光となる。この光学媒体中を光が進む距離(膜厚)でこの位相差をλ/4となるようにしたものがλ/4板である。この結果、この媒体からの出力光は楕円偏光となる。
この時特に、本光学系に示すような、第一のλ/4板203の軸と45°の角度で直線偏光206を入射すると円偏光207となる。
さらに、この円偏光207が第二のλ/4板204を通過すると、この光学媒体中で常光成分と異常光成分の位相差がさらにλ/4付加される。この結果、円偏光207は直線偏光208となるが、この時の直線偏光208は偏光板202通過直後の直線偏光206に対して90°方向が異なるものとなる。つまり第一のλ/4板203および第二のλ/4板204を通過した光はλ/2板を通過した光と等価となる。直線偏光208の偏光軸は第二の偏光板205の透過軸と互いに垂直であるため、直線偏光208は第二の偏光板に吸収される。これは観察者には黒色として認識されることを示している。
次に反射の場合について図2(B)の光学系を用いて説明する。ここでは入射光209が偏光板210、λ/4板211の順に透過し、反射媒体212によって反射された後、λ/4板211、偏光板210の順に透過するときのことを考える。本光学系において、偏光板210の透過軸とλ/4板211の遅相軸とのなす角は45°であるとする。
入射光209が偏光板210を通過して、偏光板の透過軸と平行な直線偏光213が出力され、これがさらにλ/4板211を通過して、円偏光214が出力されるのは、透過の場合と同じである。
この円偏光214は反射媒体212によって反射し、反射光215となる。この反射光215の偏光状態216は円偏光214と同一である。この光216が、こんどはλ/4板211によって直線偏光217に変換されるが、直線偏光217の偏光軸は偏光板210の透過軸と互いに垂直であるため、直線偏光217は偏光板に吸収される。これは観察者には黒色として認識されることを示している。
ここでは、光は光学的に等方性を有する媒体中を透過、もしくは所定の角度で反射してもその性質を変えないことを利用している。ここで所定の角度とはアルミニウムを材質とする反射層の反射面の法線方向となす角度で12°以下程度である。
これ以上の角度で反射する場合、入射光はS波成分およびP波成分の2成分の光に所定の割合で分離してしまいコントラスト低下の要因となる。
P波、S波の定義を図3(A),(B)に示す。ここで図3(A)のように入射光の変位ベクトルが入射面内にある偏光がP波、図3(B)のように入射面に垂直な偏光をS波である。
反射面と入射光の制限は特に強い入射光源を使用する投射形の液晶表示装置で厳しいものとなる。通常、光の入射角(反射面の法線となす角)は通常数度以下で好ましくは2°以下で使用するため上記の問題は無い。
しかし、反射型液晶表示装置では広範囲の光を入射光に利用する。このため上記の制限内で利用することは不可能である。このため、実験的に反射板の上にλ/4板を配置し、この軸と偏光軸を45°に合わせた偏光板を設けた実験基板を用意した。入射光の角度を変えて観測した結果、通常の使用環境化において問題ない黒レベルが得られることを確認した。
つまり、反射面と入射光の制限は、外光や蛍光燈レベルの入射光で使用される反射型液晶表示装置への利用時には顕著な問題とはならない。
以上のことから素子基板裏面にλ/4板と偏光板を配置すると、半導体層、データ線、ゲート線、容量電極等に使用されている材料による反射光は、この偏光板に吸収され、素子基板裏面からの観察者には黒と認識される。
本発明は前述の特徴を活かし、これらをBMとして利用するものである。
液晶の配向状態の差異で出現するディスクリネーションをプレチルト角および画素形状、構造、セルギャップによりバスライン上にのみ存在するよう制御することは可能であり、これらと組み合わせればデータ線やゲート線等でディスクリネーションによる光漏れを隠すことができる。そして、ここではλ/4板と偏光板を用いることにより、これら遮蔽物自体の反射光を吸収できBMとしての機能を果たす。
ここでは偏光板としたが、ランダムな成分の入射光に対し、所定の軸方向成分の直線偏光を出力し、他の成分を吸収もしくは反射する機能を有するものであれば、有機材料、無機材料のいずれか、あるいはその両方で構成されるものであってもよい。
さらに、対向基板にBMを形成しなくても良いため、貼り合わせマージンを従来ほど考慮しなくて良い。反射電極の有効面積を高精細の液晶表示装置にも適用できる。画素ピッチが数十μm以下の高精細化した液晶表示装置では特に有効である。
また他の発明は、一対の基板間に液晶が挟持されてなり、前記一対の基板の一方の基板にマトリクス状に配置された画素電極と、前記画素電極に接続された半導体素子とが形成されてなる液晶表示装置において、前記一方の基板は透明性および絶縁性を有する基板でなり、他方の基板上には反射層とカラーフィルタ層および透明電導膜からなる共通電極を有し、前記反射層と前記共通電極の間にカラーフィルタ層を配置したことを特徴とする。
上記構成としては、反射層の上にカラーフィルタ層、その上に共通電極を設け、カラー表示を実現するものである。
ここでカラーフィルタの材料はアクリルもしくはポリイミドを主成分とする有機樹脂に顔料を充填したものでもよいし、無機系材料を用いて特定帯域の可視光波長成分のみ透過するものでもよい。
また、カラーフィルタ層はカラーフィルタ材料からなる層の上部にアクリルもしくはポリイミドを主成分とする有機樹脂膜や、酸化珪素、窒化珪素等からなる無機材料で、平坦化もしくは、あるいは同時に保護、分離膜とすることを目的としたオーバーコート層を形成してもよい。
本明細書で述べられた液晶表示装置には、次の3点の利点がある。
第一に、対向基板にBMを形成しなくても良いため、貼り合わせマージンを考慮しなくて良いため、高開口率化が望める。それに、その反射電極の有効面積を高精細の液晶表示装置にも適用できる。このことは、直視形の反射型液晶表示装置だけでなく、特に投射形液晶表示装置に使用される小型の反射型液晶表示装置に対しても有利であることを示している。
第二に、反射電極を対向基板側に作製するため、加工が容易となり、さらに反射層の材料や構成の選択範囲が広がる(銀電極、誘電体多層膜、ホログラム)ことが期待される。これにより従来のアルミニウムを主成分とする反射電極と比して高い反射率が得られる。そのうえ、対向基板上の反射層と対向電極を分離するため、反射層の材料にオーバーコート等が可能となり、酸化により反射率が劣化する材料(銀電極等)への適用が可能である。
第三に、反射電極自体に散乱効果をもつ構造とする場合、対向基板側に作製するため、この加工が素子基板に不要となり、この工程による素子基板の歩留まり低下が無い。このためコスト上昇が抑えられる。また、その反射層や、他の上層に幾層かの有機層を形成した場合は、対向基板側の共通電極および素子基板側の画素電極はいずれも平坦な構造となり、セルギャップを均一化できる。このため、液晶の配向も均一かつ容易である。
本発明の実施例について説明する。本実施例では直視型の反射型または半透過型の液晶表示装置の一例で、素子基板作製プロセス中に用いられるマスク枚数を従来構造よりも減らして、工程時間短縮とコスト削減をねらった構成について述べる。なお、液晶表示装置の構成要素のひとつである、素子基板についての詳細は、特願平11−191093号公報に記載された方法に従えばよい。まず素子基板の構造について、図4(a)〜(b)、および図6を用いて、簡単に説明する。
基板401の上に、窒化酸化シリコン膜402を成膜して、基板401からの不純物拡散を防ぐ目的の下地膜とした。その上の所望の位置には薄膜トランジスタ(TFT)403が形成されている。TFT403は画素領域およびその周辺にある駆動回路領域に存在し、結晶質シリコンからなる活性層404、導電性物質からなるゲート配線409、ゲート配線409と活性層404を絶縁するゲート絶縁膜408からなる。
また、TFT403の活性層404には、イオンドーピング法を用いることによって、n型またはP型の不純物元素を所望の活性層領域に、かつ所望の濃度で添加されている。その結果、LDD領域405、ソース領域406、ドレイン領域407、415およびPチャネル型TFT(図示しない)が形成されている。
このうち、ソース領域406、ドレイン領域の一部407にはそれぞれデータ配線412、画素電極413がコンタクトホールと通して接続されている。さらに、ドレイン領域の他の領域415と容量配線414との間では、ゲート絶縁膜408を誘電体膜として、保持容量が形成されている。
TFT403の上には無機材料からなる保護絶縁膜410、有機膜からなる層間絶縁膜411が形成されている。
層間絶縁膜411の上には、チタン(Ti)やアルミニウム(Al)合金からなるデータ配線412と、酸化インジウム・酸化錫(ITO)からなる画素電極413がある。なお、データ配線412と画素電極413とは互いに電気的に接続しない位置に配置されている。
この構成は、比較的少ないマスク枚数で素子基板を作製することができるように、TFTおよび配線類の構造を最適化している。事実、この構成による素子基板はマスク枚数が7枚で作製でき、成膜工程、パターニング工程、エッチング工程、レジスト剥離工程や、これに付随して発生する洗浄工程、乾燥工程などを減らしている。これにより、歩留まりの向上と工程時間の短縮及びコストの削減などの効果が期待できる。
次に、対向基板502を作製する工程について図5を用いて説明する。この基板は、前述の素子基板501と対になって液晶表示装置を形成するものである。
図5において、基板503には素子基板作製プロセスの項で述べた基板401で示したような無アルカリガラスを使用した。
基板503の上に反射層504を真空蒸着法で成膜する。反射層504は主たる反射材料となる銀を1000Å、銀を保護するSiO2を2500Å積層した。
ここで銀の蒸着時はシャドウマスクを用い、表示部に対応する領域に成膜して、位置合わせマーカー等隠れないようにした。銀の成膜後、SiO2は基板全領域に成膜して、反射層504を形成した。
反射層形成後、カラーフィルタ505をスピンコート法により塗布する。その後、ホットプレートにて80℃で5分間の予備硬化を行う。そして、フォトマスクを用いて、フォトリソグラフィー法に従い、露光を行う。この処理が終わった基板は、現像液に浸し、揺動させることによって現像を行う。現像液は水酸化テトラメチルアンモニウムの0.2%水溶液を用いる。1分ほど現像液に浸したら、流水中で洗浄する。
なお、カラーフィルタ505は顔料が混入されているため、流水だけではきれいに顔料がとれない場合がある。そのため、水を高圧の圧縮空気に乗せて噴射させることによって洗浄している。
カラーフィルタ505のパターンがきれいに形成されていることを確認できたら、クリーンオーブンにて250℃で1時間の本焼成を行う。以上の工程を赤、青、緑の3種のカラーフィルタについて行う。また、カラーフィルタ505の形成の順序は、どの色から始めて、どの色で終わっても問題はない。
3色のカラーフィルタが形成された後は、その上からオーバーコート材506を塗布する。本実施例では、アクリル系のオーバーコート材を用いた。スピンコートによって基板に塗布し、ホットプレートにて80℃で3分間の仮硬化を行う。その後、クリーンオーブンにて220℃で1時間の本焼成を行う。
次に、この基板の上に透明導電膜による共通電極507を成膜する。共通電極507にはITOをスパッタ法により1000Å成膜した。
成膜後、透過率の改善のためクリーンオーブンにて250℃ 1時間ベークを行った。
本実施例では、カラーフィルタ505とオーバーコート506からなる層がカラーフィルタ層となる。
次に、素子基板501と、対向基板502から、アクティブマトリクス型液晶パネルを作製する工程について図5を用いて説明する。
まず、素子基板501および対向基板502に対して配向膜508を形成する。通常液晶表示素子の配向膜にはポリイミド樹脂またはポリアミック酸系樹脂を用いるが、本実施例では日産化学製の配向膜SE7792を用いた。配向膜形成には、オフセット印刷法を用いた。配向膜508を形成した後は、速やかに80℃で90秒の仮硬化を行い、さらにクリーンオーブンで200℃で90分の本焼成を行った。配向膜508の膜厚は,本焼成後に500Å程度としている。
このような処理が終わった両基板501および502に対してラビング処理を施して液晶分子がある一定のプレチルト角を持って配向するようにする。そのラビング角度は、後述する液晶物質510がパネル内に導入されたときに55度のツイストをなすように設定した。なお、ツイスト角は55度に限ることはなく、50〜60度程度に設定して、コントラストの向上を狙ってもよい。
ラビングによって発生したゴミやラビング布の抜け毛を洗浄によって除去したあと、対向基板500に対してシール材(図示しない)を塗布する。シール材の仮硬化はクリーンオーブンにて90℃で30分の条件で行う。
仮硬化後、さらに球状のスペーサ509を散布する。本実施例で用いたスペーサ509は、4μmの直径をもつプラスチック球である。
そして、画素部と駆動回路が形成された素子基板501と対向基板502とを精度よく貼り合わせる。シール材の中には4.2μmの径をもつ円柱状のフィラー(図示しない)が混入されていて、このフィラーと、スペーサ509によって均一な間隔を持って両基板501で502が位置の精度よく貼り合わせられる。
精度のよいギャップ制御を達成するために、0.3〜0.8kgf/cm2の圧力を、貼りあわせた基板の面に対して垂直な方向にかつ、基板全面に均一に加え、同時にクリーンオーブンにて160℃で120分の焼成を行った。
そして基板が冷却するのを待ってから、所望のパネルサイズになるように貼りあわせた基板を分断し、パネルの形にしあげた。
その後、パネルの内部に液晶材料510を注入した。液晶には屈折率異方性Δnが0.124の材料中に、カイラル材S−811を混入し、ヘリカルピッチ長が60〜80μmになるように調製したものを用いた。パネル内部全体が液晶510で満たされたことを確認したら、封止剤(図示しない)によって完全に封止する。
ここで作製した液晶表示装置の構成仕様を表1に示す。
図7は素子基板700の上面図を示し、画素部701および駆動回路部702、703、704とシール材711の位置関係を示す上面図である。画素部701の周辺に駆動回路として走査信号駆動回路702と画像信号駆動回路703が設けられている。
さらに、その他CPUやメモリなどの信号処理回路704も付加されていても良い。これら、画素部の周辺に設けられる駆動回路はCMOS回路を基本として構成されている。そして、これらの駆動回路は接続配線群705によって外部入出力端子群706と接続されている。画素部701では走査信号駆動回路702から延在するゲート配線群707と画像信号駆動回路703から延在するデータ配線群708がマトリクス状に交差して画素を形成し、各画素にはそれぞれ画素TFT709と保持容量710が設けられている。
シール剤711は、基板700上の画素部701および走査信号制御回路702、画像信号制御回路703、その他の信号処理回路704の外側であって、外部入出力端子706よりも内側に形成する。
また、パネルの外側では、フレキシブルプリント配線板(Flexible Pprinted Circuit:FPC)712が外部入力端子706に接続していて画像信号などを入力するのに用いる。そして接続配線705でそれぞれの駆動回路に接続している。
外部入出力端子706はデータ配線708またはドレイン配線713と同じ構成で導電性金属膜から形成される。FPC712はポリイミドなどの有機樹脂フィルムに銅配線が形成されている構造であり、異方性導電性接着剤で外部入出力端子706と接続する。
異方性導電性接着剤は接着剤と、その中に混入され金などがメッキされた数十〜数百μm径の導電性表面を有する粒子により構成され、この粒子が外部入出力端子706と銅配線とに接触することによりこの部分で電気的な接触が形成される。
FPC712は基板700との接着強度を高めるために、外部入出力端子706の外側にはみだして接着されると共に、端部には樹脂層が設けられこの部分における機械的強度を高めている。
次に、パネルの表示観察面、すなわちここでは素子基板の素子形成面の裏面に形成する偏光機能や視野角改善機能を備えた光学フィルム類の配置方法について図5を用いて説明する。
まず、パネルの表示面側に前方散乱板511を貼付する。この前方散乱板511はヘイズ値が50〜75%のものを使用すれば良好な光学特性が得られた。
偏光板512は白レベルでの反射率をかせぐために、高透過高偏光タイプのものを用いる。本実施例で用いたものは、単体透過率44%、偏光度99.95%のものである。
さらに液晶表示装置の表示状況に応じては、偏光板512における外光の映り込みを抑える役目を有する処理、たとえばアンチリフレクタ処理またはアンチグレア処理を偏光板512に対して行ってもよい。
以上のようなプロセスにより、反射型の液晶表示装置を作製することができる。
本実施例では、図8(A)に示すように、対向基板の反射層の表面を平坦な状態にして、いわゆる鏡面性の反射層801を形成し、その上にカラーフィルタ802、オーバーコート803および共通電極804を形成した構造のものが述べられているが、この方式に限ることなく図8(B)に示すように、反射層の表面に散乱性および指向性をもたせたテクスチャ形状805を有する構造にしてもよい。この場合は、パネルの表示面側に配置される光学フィルムのうち、前方散乱板が不要になる。
あるいは図8(C)に示すように、銀、銀合金、アルミニウム、アルミニウム合金、誘電体多層膜または、これらの組み合わせからなる導電性の金属膜806の上に、回折格子の構造を基本とするホログラム807を形成して、ホログラム構造により選択的に特定の波長の光を反射させるような構造にしてもよい
または、基板800の上に形成する反射層801の代わりに、反射特性と透過特性を併せ持つような層、たとえばハーフミラ−や半透過特性を有する誘電体多層膜808を形成すると、反射モードおよび透過モードのいずれにも使える、いわゆる半透過型の液晶表示装置にも応用できる。
より高いコントラストが確保できる液晶仕様を有する実施例を次に述べる。
素子基板および対向基板の作製に関しては実施例1に準じる。
図10において、素子基板1001と、対向基板1002から、アクティブマトリクス型液晶パネルを作製する工程を説明する。
まず、素子基板1001および対向基板1002に対して配向膜1003を形成する。通常液晶表示素子の配向膜にはポリイミド樹脂またはポリアミック酸系樹脂を用いるが、本実施例では日産化学製の配向膜SE7792を用いた。配向膜形成には、オフセット印刷法を用いた。配向膜1003を形成した後は、速やかに80℃で90秒の仮硬化を行い、さらにクリーンオーブンで200℃で90分の本焼成を行った。配向膜1003の膜厚は,本焼成後に500Å程度としている。
このような処理が終わった両基板1001および1002に対してラビング処理を施して液晶分子がある一定のプレチルト角を持って配向するようにする。そのラビング角度は、後述する液晶物質1005がパネル内に導入されたときに90度のツイストをなすように設定した。なお、ツイスト角は90度に限ることはなく、75〜90度程度に設定して、白レベルにおける反射率の向上を狙ってもよい。
ラビングによって発生したゴミやラビング布の抜け毛を洗浄によって除去したあと、対向基板1002に対してシール材(図示しない)を塗布する。シール材の仮硬化はクリーンオーブンにて90℃で30分の条件で行う。
仮硬化後、さらに球状のスペーサ1004を散布する。本実施例で用いたスペーサ1004は、2.5μmの直径をもつプラスチック球である。
そして、画素部と駆動回路が形成された素子基板1001と対向基板1002とを精度よく貼り合わせる。シール材の中には2.7μmの径をもつ円柱状のフィラー(図示しない)が混入されていて、このフィラーと、スペーサ1004によって均一な間隔を持って両基板1001および1002が位置の精度よく貼り合わせられる。
精度のよいギャップ制御を達成するために、0.3〜0.8kgf/cm2の圧力を、貼りあわせた基板の面に対して垂直な方向にかつ、基板全面に均一に加え、同時にクリーンオーブンにて160℃で120分の焼成を行った。
そして基板が冷却するのを待ってから、所望のパネルサイズになるように貼りあわせた基板を分断し、パネルの形にしあげた。
その後、パネルの内部に液晶材料1005を注入した。液晶材料にはメルク社製のZLI4792に、同社のカイラル材S−811を混入し、ヘリカルピッチ長が60〜80μmになるように調製したものを用いた。パネル内部全体が液晶1005で満たされたことを確認したら、封止剤(図示しない)によって完全に封止する。
ここで作製した液晶表示装置の構成仕様を表2に示す。
次に、パネルの表示観察面、すなわちここでは素子基板の素子形成面の裏面に形成する偏光機能や視野角改善機能を備えた光学フィルム類の配置方法について図10を用いて説明する。
まず、図10に示すように、パネルの表示面側に前方散乱板1006を貼付する。この前方散乱板1006はヘイズ値が50〜75%のものを使用すれば良好な光学特性が得られた。
この上に偏光板1008とλ/4板1007を貼付する。ここで、偏光板1008とλ/4板1007のそれぞれの光学軸については、λ/4板1007の遅相軸と、偏光板1008の偏光軸が互いに45度の角度をなすように配置する。
ここでλ/4板1007は可視光波長で使用可能な広帯域のフィルムを使用した。
広帯域λ/4板1007は、ポリカーボネイト系材質の標準λ/4板と標準λ/2板とを組み合わせて作製してもよいし、市販の広帯域λ/4板を用いてもよい。但し、良好な黒を実現する為には、380−800nmの波長領域において、各波長に対して、4/20〜6/20の複屈折位相差をもつように、広帯域性を持たせるのがよい。
偏光板1008は白レベルでの反射率をかせぐために、高透過高偏光タイプのものを用いる。本実施例で用いたものは、単体透過率44%、偏光度99.95%のものである。
また、図10において、偏光板1008およびλ/4板1007の光学軸の方向も重要であり、それは、液晶1005のツイスト角と密接な関係がある。たとえば、ツイスト角を90度に設定した場合は、偏光板1008の偏光軸を、素子基板1002に対して施されたラビング方向に対して90度の角度をなすように、貼付すればよい。
さらに液晶表示装置の表示状況に応じては、偏光板1008における外光の映り込みを抑える役目を有する処理、たとえばアンチリフレクタ処理またはアンチグレア処理を偏光板1008に対して行ってもよい。
以上のようなプロセスにより、反射型の液晶表示装置を作製することができる。
上記のような光学フィルムの構成にすることは、次のメリットを有する。図11(A)〜(C)に示すように、液晶表示装置へと入射した外光は、偏光板1101およびλ/4板1102によって円偏光に変換されてパネルへと導入されるが、その円偏光のうち、素子基板1103の基板の裏面(表示面側)や、素子基板1103中にある反射性を有する膜などにおいて反射してきた光、すなわち液晶層を通過せずに戻ってきた光は、λ/4板1102によって、偏光板1101の偏光軸とは垂直な偏光に再変換される。このため、このような光は偏光板1101に吸収されて、観察者の目には入ってこない。
一方、図12(A)〜(C)に示すとおり、液晶層1203を通過して、偏光状態が変化した光は、その変化状態に応じて偏光板1201を通過するようになり、観察者の目に入ることになる。つまり、不必要な光は偏光板1101、1201によって吸収され、必要な光のみが透過するので、コントラストの向上につながることになる。
素子基板1103中にある反射性を有する膜は、見方を変えれば、BMとなる。なぜなら、前述したように、素子基板1103中にある反射性を有する膜などにおいて反射してきた光は、結局観察者の目には入らないからである。
遮光性を示す膜がBMの役目を兼ねるからには、液晶表示装置を駆動したときに各画素の辺縁部などに発生する液晶の配向乱れに起因する光漏れ、いわゆるディスクリネーションを隠すように配置するべきである。また、開口率をできるだけ確保するためには、遮光性を示す膜の面積の占める割合ができるだけ小さいことが望ましい。
実施例1(図4と図5)または、本実施例(図10)において、素子基板501、1001の画素領域において、遮光性を示す主な膜は、薄膜トランジスタを形成する活性層404、ゲート線(ゲート電極)409、データ線412および容量配線414である。
このうち、まず容量配線414について述べる。本実施例における保持容量は、容量配線414とTFTのドレイン領域415とを容量の両電極とし、ゲート絶縁膜408の一部を電極間の誘電体膜として構成されている。
保持容量の誘電体膜は、ゲート絶縁膜408と同一の材質であり、SiO2またはSiONなどである。SiO2またはSiONなどを誘電体膜として保持容量を形成するときは、これらの比誘電率は3.8程度であるため、誘電体膜厚750Åとすると、単位面積あたりの電気容量は0.75fF/μm2程度となる。一方、各画素において、それらの画素に必要とされる電気容量は(0.06〜0.07[fF/μm2])×(画素面積[μm2])[fF]以上である。
つまり本実施例のように、SiO2またはSiONを誘電体とする場合、画素電極413による開口部の全面積の10%前後を容量配線414で占められる必要があり、結果として画素電極413の開口率を落とす原因にもなりうる。
より高い開口率を達成するための改善策については、実施例3にて述べる。
本実施例では直視型の反射型または半透過型の液晶表示装置のもう一つの例において、実施例1および実施例2の構成よりもさらに高開口率化を目指すことのできる構成について述べる。
なお、液晶表示装置の構成要素のひとつである、素子基板についての詳細は、特願平11−053424(半導体エネルギー研究所)に記載された方法に従えばよい。
まず素子基板の構造について、図13(a)、(b)を用いて、簡単に説明する。
基板1301の上に、窒化酸化シリコン膜1302を成膜して、基板1301からの不純物拡散を防ぐ目的の下地膜とした。その上の所望の位置には薄膜トランジスタ(TFT)1303が形成されている。
TFT1303は画素領域およびその周辺にある駆動回路領域に存在し、結晶質シリコンからなる活性層1304、導電性物質からなるゲート配線1309、ゲート配線1309と活性層1304を絶縁するゲート絶縁膜1308からなる。
また、TFT1303の活性層1304には、イオンドーピング法を用いることによって、n型またはP型の不純物元素を所望の活性層領域に、かつ所望の濃度で添加されている。その結果、LDD領域1305、ソース領域1306、ドレイン領域1307およびPチャネル型TFT(図示しない)が形成されている。このうち、ソース領域1306、ドレイン領域1307にはそれぞれデータ配線1312、ドレイン配線1313がコンタクトホールと通して接続されている。
TFT1303の上には無機材料からなる保護絶縁膜1310、第一の層間絶縁膜1311が形成されている。
データ配線1312、ドレイン配線1313、および第一の層間絶縁膜1311の上には、第二の層間絶縁膜1314が形成されている。この上において、画素マトリクス回路となる領域に、アルミニウムからなる容量配線1315が形成されている。この容量配線1315は陽極酸化されていて、そのために表面に酸化アルミニウムからなる酸化膜1316が形成されている。酸化膜1316の膜厚は50nm程度である。
この上には画素電極1317が形成されている。画素電極1317は酸化インジウム・酸化錫(ITO)からなり、コンタクトホールを通じてドレイン配線1313と接続されていて、データ配線1312、ゲート配線1309、容量配線1315とは部分的にオーバーラップしている。特に容量配線1315とは、酸化膜1316を誘電体膜として、保持容量を形成している。
対向基板1402の構造、工程、および素子基板1401と対向基板1402から液晶表示装置を作製する工程については、実施例1または実施例2に述べた事柄と同様な方法である。このようにして図14に示すような液晶表示装置を作製することができる。
また、図15に示すように反射膜をテクスチャ構造1501にして、散乱性を実現してもよい。この場合前方散乱板が不用となる。
図20に本実施例で述べた液晶表示装置の意義を、断面図を用いて示している。
光源2001より液晶表示装置2000に導入される外光2002は、偏光板2003、λ/4板2004、および前方散乱板2005を通して、素子基板2006に至る。
入射光2002の一部(図示しない)は、素子基板2006の表面(前方散乱板2005と素子基板2006の界面)で反射され、また一部2002aは素子基板にある反射性を有する膜の表面で反射される。このような光2002aは、その偏光状態になんら変調を受けていないので、帰路のλ/4板2004と偏光板2003の作用により、ここで吸収され、観察者の目2010には入ってこない。つまり、素子基板にある反射性を有する膜はすべて、換言するとBMである。
その他の大部分の光2002bは、素子基板通過後、液晶層2007、カラーフィルタ層2008を透過し、反射層2009で反射される。そのあと光2002bは、入射とは逆の経路をたどることになる。このような光2002bのうち、液晶によってその偏光状態に何らかの変調を受けたものは、その受け方に応じて、液晶表示装置2000を出る直前の偏光板2001の透過軸と平行な偏光成分が残ることになり、その偏光成分が偏光板を通過してはじめて観察者の目2010に入ることになる。一方液晶を通過してもその偏光状態に何ら変調を受けなかった光は丁度、光2002aと同じ運命をたどり、観察者の目2010には入らない。
このように、液晶表示装置2000に導入された光2002のうち、表示には関係しない不必要な光2002aを遮断し、一方、表示に関与する光2002bに対しては、液晶の変調作用により選択的に液晶表示装置外へと出力することで、コントラストの高い表示を得ることができる。
ところで、実施例1および実施例2において低開口率になる要因は、容量配線面積の、画素電極面積に占める割合が大きくせざるを得ないことにあることは前述した。
そこで本実施例では、図13〜15に示すように、アルミニウムからなる容量電極1315を第二の層間絶縁膜1314の上に形成し、この表面を陽極酸化することによって、酸化アルミニウムからなる絶縁膜1316を得て、この上に直接画素電極1317を形成する。このような構造にすることで容量配線1315と画素電極1317をその容量の両電極とし、その間に形成される絶縁膜1316を誘電体膜とする保持容量が形成される。
酸化アルミニウムの比誘電率は8と大きいうえに、その膜厚を500Åにすることができるため、従来の保持容量の4〜5倍もの大きな容量を形成できる。
つまり、必要とする保持容量が実施例1および実施例2のものと本実施例に採用している構造のものとで同じ場合、本願の実施例に採用している構造のものにおいては、その容量配線1315の面積を数分の1以下と小さくすることができ、高開口率化に有効である。
さらには、ゲート線1309およびデータ線1312の構造および容量配線1315の配置は、パネルの画素サイズに従って次のように使い分ければよい。
図16(A)に示すように、画素サイズが50μm×150μm程度かそれよりも大きい場合は、ゲート線1601およびデータ線1602をそれぞれ各画素電極1603の辺縁部に対応する領域に配置し、かつゲート線1601またはデータ線1602のどちらか一方の幅を3〜6μm程度に太くすることで、液晶表示装置を駆動したときに現れる液晶の配向乱れに起因する光漏れ(ディスクリネーション)の大部分を隠すようにする、いわゆるブラックマトリクスの役割を兼ねるようにするとよい。
容量配線1604は、ゲート線1601またはデータ線1602のどちらか一方にオーバーラップするように配置し、かつ、各画素領域内において、ゲート線1601またはデータ線1602を太くすることでは隠しきれない部分にディスクリネーションが存在するなら、その部分に優先的に配置すればよい。
他方、図16(B)に示すように、画素サイズが50μm×150μm程度よりも小さい場合は、ゲート線1605およびデータ線1606をそれぞれ各画素電極1607の辺縁部に対応する領域に配置し、かつ両配線の幅を2μm以下と細くし、開口率をかせぐのがよい。容量配線1608は、ゲート線1605またはデータ線1606の両方にオーバーラップするように配置して、ここで必要な保持容量をかせぎ、さらには各画素電極1607の辺縁部にもかかるように配置する(すなわち、ほとんど容量配線1608のみでディスクリネーションを隠す)のがよい。
本実施例は投射形仕様の反射型液晶表示装置について、図17を用いて述べる。
なお、液晶表示装置の構成要素のひとつである、素子基板についての詳細のほとんどは、実施例1〜実施例3に記載された方法に準じる。
ただし、実施例1〜実施例3に示された素子基板構造と異なる点は、図17に示したように、TFT素子にオーバーラップして、金属膜よりなるライトシールド1701が存在することである。
このライトシールド1701は、投射装置の光源より液晶表示装置へと導入される光が直接もしくは間接的にTFT素子1702に照射されるのを防ぐために設けられるものである。これによりTFT1702の光によるオフ電流の増加を防止し、これを原因とする表示映像のクロストークや色むら対策としている。
次に液晶表示装置のもうひとつの構成要素である対向基板1703について述べる。本実施例では主として、反射層1707としてアルミニウム合金と誘電体多層膜からなるものを使用している。基板としては無アルカリガラス基板や石英基板を用いる。ここでは、素子基板1700と同種の材質をもつ無アルカリガラス基板を用いた。詳細は図9を用いて説明する。
図9(A)に示すように、基板901の上に反射層902としてアルミニウム合金903と誘電体多層膜904を成膜する。アルミニウム合金903はアルミニウム中にチタンを1%含む材料を使用した。誘電体多層膜904は真空蒸着法により屈折率1.4および2.1の材料を8層積層し(図は4層までを記載)、反射率を高めた。当然これらは可視光領域に広帯域の光を反射するよう膜厚を調整して成膜した。
反射層形成後、この基板の上に透明導電膜による共通電極905を成膜する。
共通電極905にはITOをスパッタ法により1000Å成膜した。成膜後、透過率の改善のためクリーンオーブンにて250℃ 1時間ベークを行った。
ここでは誘電体多層膜による高反射率化を目的としたが、図9(B)のように単層の膜906を用いて構成してもよいし、さらに図9(C)のように反射膜をダイクロイックミラー908とし、電気光学装置自体に色を付けてもよい。この構造をもちいれば周辺光学系を小型化可能となる。
次に、素子基板1700と、対向基板1703を使用した液晶表示装置の作製工程を、図17を用いて説明する。
通常液晶表示素子の配向膜1704にはポリイミド樹脂またはポリアミック酸系樹脂を用いるが、本実施例では日産化学製の配向膜SE7792を用いた。
配向膜形成はオフセット印刷法を用いた。配向膜1704を形成した後は、速やかに80℃で90秒の仮硬化を行い、さらにクリーンオーブンで200℃で90分の本焼成を行った。本焼成後の配向膜1704の膜厚は502Å程度である。
このような処理が終わった両基板1700および1703に対してラビング処理を施して液晶分子がある一定のプレチルト角を持って配向するようにする。そのラビング角度は、後述する液晶物質1706がパネル内に導入されたときに45度のツイストをなすように設定した。なお、ツイスト角は45度に限ることはなく、所望の光学特性が得られるように設定すればよい。
ラビングによって発生したゴミやラビング布の抜け毛を洗浄によって除去したあと、対向基板1703に対してシール材(図示しない)を塗布する。シール材の仮硬化はクリーンオーブンにて90℃で30分の条件で行う。
仮硬化後、さらに球状のスペーサ1705を散布する。本実施例で用いたスペーサ1705は、5.0μmの直径をもつプラスチック球である。
画素部と駆動回路が形成された素子基板1700と対向基板1703とを貼り合わせる。シール材の中には5.2μmの径をもつ円柱状のフィラー(図示しない)が混入されていて、このフィラーと、スペーサ1705によって均一な間隔を持って両基板1700および1703が位置の精度よく貼り合わせられる。
さらに精度のよいギャップ制御を達成するために、0.3〜0.8kgf/cm2の圧力を、貼りあわせた基板の面に対して垂直な方向にかつ、基板全面に均一に加え、同時にクリーンオーブンにて160℃で120分の焼成を行った。そして基板が冷却するのを待ってから、所望のパネルサイズになるように貼りあわせた基板を分断し、パネルの形にしあげた。
その後、パネルの内部に液晶材料1706を注入した。液晶材料にはメルク社製のZLI4792に、同社のカイラル材S−811を混入し、ヘリカルピッチ長が60〜80μmになるように調製したものを用いた。
パネル内部全体が液晶1706で満たされたことを確認したら、封止剤(図示しない)によって完全に封止する。
表3に液晶表示装置の構成仕様を示す。
以下、液晶パネルの外部入出力端子にFPCを取り付けて、外部から液晶パネルに必要な信号を送ることができるようにする事柄については、実施例1で述べた内容と同様である。
反射型液晶パネルを投映する装置の一例について図18を用いて述べる。投射装置の光源1801から出射された光1809は、光学系の中へと導入されるが、この光はまず、プリズム型の偏光ビームスプリッタ(PBS)1802によってS波成分1810とP波成分1811とに分解される。
このPBS1802は、プリズム内にある反射面において、光のS波成分1810のみを反射させ、P波成分1811は透過させる性質を有している。そのため、光のS波成分1810のみがダイクロイックプリズム1803へと進むことになる。
ダイクロイックプリズム1803はこの入射してきた光1810をその偏光状態を変えることなく、赤、緑、青の成分1812〜1814に分解し、それぞれ赤色担当のパネル1804、緑色担当のパネル1805、青色担当のパネル1806へと光を供給する。
それぞれ3枚のパネル1804〜1806に入射した偏光1812〜1814は、それぞれのパネル内において、液晶のダイレクタ配列に応じて適宜変調を受ける。その結果それぞれの光1812〜1814は、それぞれのパネル1804〜1806においてS波成分とP波成分として、パネル外へと出射され、ダイクロイックプリズム1803へ戻される。
ダイクロイックプリズム1803によって赤、緑、青の光1815〜1817が再合成され、PBS1802へ至る。PBS1802では、今度は光のP波成分1818のみがプリズムの反射面を透過し、この光が光学レンズ1807を通してスクリーン1808へと投射される。このようにして、カラーの投射表示が達成される。
このような光学系は図19(A)に示すようなフロントプロジェクタ、および(B)に示すようなリアプロジェクタの本体に組み込むことが可能である。このようにして、投射型の反射型液晶表示装置が完成する。