本発明は、インスリン様増殖因子受容体(「IGF−1R」)に結合する分子であって、IGF−1Rをアゴナイズするかまたはアンタゴナイズする分子を含む、例えば抗IGF−1R抗体、抗体断片、および抗体誘導体、例えばアンタゴニスト性抗IGF−1R抗体、抗体断片、または抗体誘導体に関連する、組成物、キット、および方法を提供する。やはり提供するのは、IGF−1Rに結合するポリペプチドのすべてまたは一部をコードするヌクレオチドの配列を含む、核酸、ならびにその誘導体および断片、例えば抗IGF−1R抗体、抗体断片、または抗体誘導体のすべてまたは一部をコードする核酸、こうした核酸を含むプラスミドおよびベクター、ならびにこうした核酸および/またはベクターおよびプラスミドを含む細胞または細胞株である。提供する方法には、例えば、IGF−1Rに結合する分子、例えば抗IGF−1R抗体を作製するか、同定するか、または単離する方法、分子がIGF−1Rに結合するかどうかを決定する方法、分子がIGF−1Rをアゴナイズするかまたはアンタゴナイズするかどうかを決定する方法、IGF−1Rに結合する分子を含む、薬学的組成物などの組成物を作製する方法、ならびにIGF−1Rに結合する分子を被験体に投与するための方法、例えばIGF−1Rによって仲介される状態を治療するための方法、およびIGF−1R、IGF−1、および/またはIGF−2の生物学的活性をin vivoまたはin vitroでアゴナイズするかまたはアンタゴナイズするための方法が含まれる。
ポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列は、標準的な1文字または3文字略記を用いて示される。別に示さない限り、ポリペプチド配列は、アミノ末端を左側に、そしてカルボキシ末端を右側に有し、そして一本鎖核酸配列、および二本鎖核酸配列の上部鎖は、5’端を左に、そして3’端を右に有する。特定のポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列はまた、参照配列とどのように異なるかを説明することによって記載されうる。
特定の軽鎖および重鎖の可変ドメインのポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列を図1、2および3に示し、ここでこれらは、例えば、L1(「軽鎖可変ドメイン1」)、H1(「重鎖可変ドメイン1」)などと示される。図2および3由来の軽鎖および重鎖を含む抗体は、軽鎖可変ドメインの名称および重鎖可変ドメインの名称を組み合わせることによって示される。例えば、「L4H7」は、L4の軽鎖可変ドメインおよびH7の重鎖可変ドメインを含む抗体を示す。
本明細書において、別に定義しない限り、本発明と関連して用いられる科学的および技術的用語は、一般の当業者に一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、関連によって必要とされない限り、単数形の用語は複数のものを含み、そして複数形の用語は単数形を含むものとする。一般的に、本明細書に記載する、細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、ならびにタンパク質および核酸化学およびハイブリダイゼーションと関連して用いられる術語、ならびにそれらの技術は、当該技術分野に周知であり、そして一般的に用いられるものである。本発明の方法および技術は、別に示さない限り、一般的に、当該技術分野に周知の慣用法にしたがって、そして本明細書全体で引用され、そして論じられる、多様な一般的な参考文献およびより特異的な参考文献に記載されるように、行われる。例えば、本明細書に援用される、Sambrookら Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1989)、ならびにAusubelら, Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates(1992)、ならびにHarlowおよびLane Antibodies: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1990)を参照されたい。酵素反応および精製技術は、当該技術分野に一般的に達成されるように、または本明細書に記載するように、製造者の指定にしたがって行われる。本明細書記載の分析化学、合成有機化学、ならびに医学的および薬学的化学と関連して用いられる専門用語、ならびにこうした化学の実験法および技術は、当該技術分野に周知であり、そして一般的に知られるものである。化学合成、化学分析、薬剤調製、配合、および送達、ならびに患者の治療には、標準的技術を用いてもよい。
以下の用語は、別に示さない限り、以下の意味を有すると理解すべきである:
用語「単離分子」は(分子が、例えばポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体である場合)、その起源または派生供給源によって、(1)天然状態で該分子に付随する、天然に関連する構成要素と関連していないか、(2)同じ種由来の他の分子を実質的に含まないか、(3)異なる種由来の細胞によって発現されるか、または(4)天然には存在しない分子である。したがって、化学的に合成されたか、または天然に由来する細胞とは異なる細胞系において合成される分子は、天然に関連する構成要素から「単離されている」であろう。分子はまた、当該技術分野に周知の精製技術を用いた単離によって、天然に関連する構成要素を実質的に含まないようにされうる。当該技術分野に周知のいくつかの手段によって、分子純度または均一性をアッセイしてもよい。例えば、当該技術分野に周知の技術を用いて、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用い、そしてゲルを染色してポリペプチドを視覚化して、ポリペプチド試料の純度をアッセイしてもよい。特定の目的のため、HPLCまたは当該技術分野に周知の精製のための他の手段を用いることによって、より高い解像度を提供してもよい。
用語「IGF−1R阻害剤」および「IGF−1Rアンタゴニスト」は交換可能に用いられる。各々は、IGF−1Rの少なくとも1つの機能を検出可能に阻害する分子である。逆に、「IGF−1Rアゴニスト」は、IGF−1Rの少なくとも1つの機能を検出可能に増加させる分子である。IGF−1R阻害剤によって引き起こされる阻害は、アッセイを用いて検出可能である限り、完全である必要はない。IGF−1Rの機能のいかなるアッセイを用いてもよく、それらの例を本明細書に提供する。IGF−1R阻害剤によって阻害可能な、またはIGF−1Rアゴニストによって増加可能なIGF−1Rの機能の例には、IGF−1、IGF−12、および/または別のIGF−1R活性化分子への結合、キナーゼ活性、下流シグナル伝達などが含まれる。IGF−1R阻害剤およびIGF−1Rアゴニストのタイプの例には、限定されるわけではないが、抗原結合性タンパク質(例えばIGF−1R阻害性抗原結合性タンパク質)、抗体、抗体断片、および抗体誘導体などの、IGF−1R結合性ポリペプチドが含まれる。
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は、各々、ペプチド結合によって互いに連結された2以上のアミノ酸残基を含む分子を指す。これらの用語は、例えば天然および人工的タンパク質、タンパク質断片、およびタンパク質配列のポリペプチド類似体(突然変異タンパク質(mutein)、変異体、および融合タンパク質など)、ならびに翻訳後、あるいは別の共有的または非共有的修飾タンパク質を含む。ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、単量体性またはポリマー性であってもよい。
用語「ポリペプチド断片」は、本明細書において、対応する全長タンパク質に比較した際、アミノ末端および/またはカルボキシ末端欠失を有するポリペプチドを指す。断片は、例えば、少なくとも長さ5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、50、70、80、90、100、150または200アミノ酸であってもよい。断片はまた、例えば、最大で、長さ1,000、750、500、250、200、175、150、125、100、90、80、70、60、50、40、30、20、15、14、13、12、11、または10アミノ酸であってもよい。断片は、さらに、どちらかまたは両方の端に、1以上のさらなるアミノ酸、例えば異なる天然存在タンパク質(例えばFcまたはロイシンジッパードメイン)または人工的アミノ酸配列(例えば人工的リンカー配列)由来のアミノ酸配列を含んでもよい。
本発明のポリペプチドには:(1)タンパク質分解に対する感受性を減少させ、(2)酸化に対する感受性を減少させ、(3)タンパク質複合体を形成するための結合アフィニティを改変し、(4)結合アフィニティを改変し、そして(4)他の物理化学特性または機能特性を与えるかまたはこうした特性を修正するように、いずれかの方式で、そしていずれかの理由のために修飾されているポリペプチドが含まれる。類似体には、ポリペプチドの突然変異タンパク質が含まれる。例えば、単数または多数のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)を天然存在配列において(例えば、分子間接触を形成するドメイン(単数または複数)外のポリペプチドの部分において)行うことも可能である。「保存的アミノ酸置換」は、親配列の構造特徴を実質的に変化させないものである(例えば置換アミノ酸は、親配列に存在するらせんを破壊するか、あるいは親配列を特徴付けるかまたはその機能に必要な他のタイプの二次構造を破壊する傾向があってはならない)。当該技術分野に認識されるポリペプチド二次構造および三次構造の例が、Proteins, Structures and Molecular Principles(Creighton監修, W.H. Freeman and Company, ニューヨーク(1984));Introduction to Protein Structure(C. BrandenおよびJ. Tooze監修, Garland Publishing, ニューヨーク州ニューヨーク(1991));およびThorntonら Nature 354:105(1991)に記載され、これらは各々、本明細書に援用される。
本発明はまた、IGF−1R結合性ポリペプチドの非ペプチド類似体も提供する。非ペプチド類似体は、テンプレート・ペプチドのものに類似の特性を持つ薬剤として、薬剤産業において一般的に用いられる。これらのタイプの非ペプチド化合物は、「ペプチド模倣体」(「peptide mimetics」または「peptidomimetics」)と称される。本明細書に援用される、Fauchere, J. Adv. Drug Res. 15:29(1986);VeberおよびFreidinger TINS p.392(1985);およびEvansら J. Med. Chem. 30:1229(1987)。療法的に有用なペプチドに構造的に類似のペプチド模倣体を用いて、同等の療法効果または予防効果を生じることも可能である。一般的に、ペプチド模倣体は、ヒト抗体などの模範(paradigm)ポリペプチド(すなわち所望の生化学的特性または薬理学的活性を有するポリペプチド)に構造的に類似であるが、当該技術分野に周知の方法によって:−−CH2NH−−、−−CH2S−−、−−CH2−CH2−−、−−CH=CH−(シスおよびトランス)、−−COCH2−−、−−CH(OH)CH2−−、および−−CH2SO−−からなる群より選択される連結により、所望によって置換された1以上のペプチド連結を有する。コンセンサス配列の1以上のアミノ酸を、同じタイプのD−アミノ酸(例えばL−リジンの代わりにD−リジン)で体系的に置換して、より安定なペプチドを生成することも可能である。さらに、コンセンサス配列または実質的に同一であるコンセンサス配列変動を含む、制約された(constrained)ペプチドを、当該技術分野に知られる方法(本明細書に援用される、RizoおよびGierasch Ann. Rev. Biochem. 61:387(1992))によって生成することも可能であり、これは例えば、ペプチドを環状化する、分子内ジスルフィド架橋を形成可能な内部システイン残基を付加することによる。
ポリペプチド(例えば抗体)の「変異体」は、別のポリペプチド配列に比較して、1以上のアミノ酸残基がアミノ酸配列内で挿入され、欠失され、そして/または置換された、アミノ酸配列を含む。本発明の変異体には融合タンパク質が含まれる。
ポリペプチドの「誘導体」は、例えば別の化学部分、例えばポリエチレングリコール、アルブミン(例えばヒト血清アルブミン)などへのコンジュゲート化、リン酸化、およびグリコシル化を介して、化学的に修飾されているポリペプチド(例えば抗体)である。別に示さない限り、用語「抗体」には、2つの全長重鎖および2つの全長軽鎖を含む抗体に加えて、その誘導体、変異体、断片、および突然変異タンパク質が含まれ、それらの例を以下に記載する。
「抗原結合性タンパク質」は、抗原に結合する部分、および所望によって、抗原結合性部分が、抗原結合性タンパク質の抗原への結合を促進するコンホメーションを採用するのを可能にする足場またはフレームワーク部分を含むタンパク質である。抗原結合性タンパク質の例には、抗体、抗体断片(例えば抗体の抗原結合性部分)、抗体誘導体、および抗体類似体が含まれる。抗原結合性タンパク質は、例えば移植されたCDRまたはCDR誘導体を含む別のタンパク質足場または人工的足場を含むことも可能である。こうした足場には、限定されるわけではないが、例えば抗原結合性タンパク質の三次元構造を安定化させるために導入された突然変異を含む抗体由来足場、ならびに例えば生体適合性ポリマーを含む完全に合成の足場が含まれる。例えばKorndorfer, 2003, Proteins: Structure, Function, and Bioinformatics, 第53巻, 第1号:121−129; Roque, 2004, Biotechnol. Prog. 20:639−654を参照されたい。さらに、ペプチド抗体模倣体(「PAM」)、ならびにフィブロネクチン構成要素を足場として利用する抗体模倣体に基づく足場を使用してもよい。
抗原結合性タンパク質は、例えば、天然存在免疫グロブリンの構造を有することも可能である。「免疫グロブリン」は、四量体分子である。天然存在免疫グロブリンにおいて、各四量体は、2つの同一対のポリペプチド鎖で構成され、各対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分には、主に抗原認識に関与する、約100〜110以上のアミノ酸の可変領域が含まれる。各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能に関与する、定常領域を明示する。ヒト軽鎖は、カッパおよびラムダ軽鎖と分類される。重鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロンと分類され、そしてそれぞれ、IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとして、抗体のアイソタイプを定義する。軽鎖および重鎖内で、可変領域および定常領域は、約12以上のアミノ酸の「J」領域で連結され、重鎖はまた、約10以上のアミノ酸の「D」領域も含む。一般的に、Fundamental Immunology 第7章(Paul, W.監修, 第2版 Raven Press, ニューヨーク(1989))(あらゆる目的のため、その全体が本明細書に援用される)を参照されたい。各軽鎖/重鎖対の可変領域は、損なわれていない(intact)免疫グロブリンが2つの結合性部位を有するように、抗体結合性部位を形成する。
天然存在免疫グロブリン鎖は、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる、3つの超可変領域によって連結される、比較的保存されるフレームワーク領域(FR)の、同一の一般構造を示す。軽鎖および重鎖はどちらも、N末端からC末端に、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、KabatらのSequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, 米国保健社会福祉省, PHS, NIH, NIH刊行物第91−3242号, 1991の定義にしたがう。
「抗体」は、別に明記しない限り、損なわれていない免疫グロブリン、または特異的結合に関して、損なわれていない抗体と競合する、その抗原結合性部分を指す。抗原結合性部分は、組換えDNA技術によって、あるいは損なわれていない抗体の酵素的切断または化学的切断によって、産生可能である。抗原結合性部分には、とりわけ、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ドメイン抗体(dAb)、および相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、ならびに少なくとも、ポリペプチドへの特異的抗原結合性を与えるのに十分な免疫グロブリン部分を含有するポリペプチドが含まれる。
Fab断片は、VL、VH、CLおよびCH1ドメインを有する一価断片であり;F(ab’)2断片は、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結される2つのFab断片を有する二価断片であり;Fd断片は、VHおよびCH1ドメインを有し;Fv断片は、抗体の単一アームのVLおよびVHドメインを有し;そしてdAb断片は、VHドメイン、VLドメイン、あるいはVHまたはVLドメインの抗原結合性断片を有する(米国特許第6,846,634号、第6,696,245号、米国特許出願公報第05/0202512号、第04/0202995号、第04/0038291号、第04/0009507号、第03/0039958号、Wardら, Nature 341:544−546, 1989)。
一本鎖抗体(scFv)は、VLおよびVH領域がリンカー(例えばアミノ酸残基の合成配列)を介して連結されて、連続タンパク質鎖を形成する抗体であり、ここでリンカーは、タンパク質鎖が、それ自体、折り畳まれ、そして一価抗原結合性部位を形成するのを可能にするのに十分に長い(例えば、Birdら, 1988, Science 242:423−26およびHustonら, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879−83を参照されたい)。二重特異性抗体は、2つのポリペプチド鎖を含む二価抗体であって、各ポリペプチド鎖は、同じ鎖上の2つのドメイン間で対形成するのを可能にするにはあまりにも短く、したがって各ドメインが別のポリペプチド鎖上の相補ドメインと対形成するのを可能にするリンカーによって連結されたVHおよびVLドメインを含む(例えば、Holligerら, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444−48、およびPoljakら, 1994, Structure 2:1121−23を参照されたい)。二重特異性抗体の2つのポリペプチド鎖が同一であるならば、その対形成から生じる二重特異性抗体は、2つの同一の抗原結合性部位を有するであろう。異なる配列を有するポリペプチド鎖を用いて、2つの異なる抗原結合性部位を持つ二重特異性抗体を作製することも可能である。同様に、三重特異性抗体および四重特異性抗体は、それぞれ、3つおよび4つのポリペプチド鎖を含み、そして、同じであってもまた異なってもよい、それぞれ、3つおよび4つの抗原結合性部位を形成する抗体である。
KabatらのSequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, 米国保健社会福祉省, PHS, NIH, NIH刊行物第91−3242号, 1991に記載される系を用いて、所定の抗体の相補性決定領域(CDR)およびフレームワーク領域(FR)を同定してもよい。1以上のCDRを共有的または非共有的のいずれかで分子に取り込んで、抗原結合性タンパク質にすることも可能である。抗原結合性タンパク質は、より長いポリペプチド鎖の一部としてCDR(単数または複数)を取り込むことも可能であるし、別のポリペプチド鎖にCDR(単数または複数)を共有結合させることも可能であるし、または非共有的にCDR(単数または複数)を取り込むことも可能である。CDRは、抗原結合性タンパク質が、目的の特定の抗原に特異的に結合するのを可能にする。
抗原結合性タンパク質は、1以上の結合性部位を有してもよい。1より多い結合性部位がある場合、結合性部位は、互いに同一であっても、また異なってもよい。例えば、天然存在ヒト免疫グロブリンは、典型的には2つの同一の結合性部位を有し、一方、「二重特異性」または「二官能性」抗体は、2つの異なる結合性部位を有する。
用語「ヒト抗体」には、ヒト免疫グロブリン配列に由来する1以上の可変領域および定常領域を有する抗体すべてが含まれる。1つの態様において、可変ドメインおよび定常ドメインのすべてがヒト免疫グロブリン配列に由来する(完全ヒト抗体)。これらの抗体は、多様な方法で調製可能であり、その例を以下に記載し、これらには、ヒト重鎖および/または軽鎖をコードする遺伝子に由来する抗体を発現するように、遺伝子修飾されたマウスの、目的の抗原での免疫が含まれる。
ヒト化抗体は、ヒト被験体に投与された際、非ヒト種抗体に比較すると、免疫応答を誘導する可能性がより低く、そして/またはより重度でない免疫応答を誘導するように、1以上のアミノ酸置換、欠失、および/または付加によって、非ヒト種に由来する抗体の配列と異なる配列を有する。1つの態様において、非ヒト種抗体の重鎖および/または軽鎖のフレームワークおよび定常ドメイン中の特定のアミノ酸を突然変異させて、ヒト化抗体を産生する。別の態様において、ヒト抗体由来の定常ドメイン(単数または複数)を、非ヒト種の可変ドメイン(単数または複数)に融合させる。別の態様において、非ヒト抗体の1以上のCDR配列中の1以上のアミノ酸残基を変化させて、ヒト被験体に投与された際、非ヒト抗体のありうる免疫原性を減少させ、ここで抗原へのヒト化抗体の結合が、抗原への非ヒト抗体の結合より有意に劣らないように、変化させるアミノ酸残基は、抗原への抗体の免疫特異的結合に必須でないか、または作製されるアミノ酸配列への変化が保存的変化であるか、いずれかである。ヒト化抗体をどのように作製するかの例は、米国特許第6,054,297号、第5,886,152号、および第5,877,293号に見出すことも可能である。
用語「キメラ抗体」は、1つの抗体由来の1以上の領域および1以上の他の抗体由来の1以上の他の領域を含有する抗体を指す。1つの態様において、1以上のCDRが、ヒト抗IGF−1R抗体に由来する。別の態様において、すべてのCDRが、ヒト抗IGF−1R抗体に由来する。別の態様において、1より多いヒト抗IGF−1R抗体由来のCDRを混合し、そしてキメラ抗体中でマッチングさせる。例えば、キメラ抗体は、第一のヒト抗IGF−1R抗体の軽鎖由来のCDR1、第二のヒト抗IGF−1R抗体の軽鎖由来のCDR2およびCDR3、ならびに第三の抗IGF−1R抗体由来の重鎖由来のCDRを含んでもよい。さらに、フレームワーク領域は、同じ抗IGF−1R抗体の1つに、ヒト抗体などの1以上の異なる抗体に、またはヒト化抗体に由来してもよい。キメラ抗体の1つの例において、重鎖および/または軽鎖の部分は、特定の種由来であるか、あるいは特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体と、同一であるか、該抗体に相同であるか、または該抗体に由来する一方、鎖(単数または複数)の残りは、別の種由来であるか、あるいは別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体(単数または複数)と、同一であるか、該抗体に相同であるか、または該抗体に由来する。やはり含まれるのは、所望の生物学的活性(すなわちIGF−1Rに特異的に結合する能力)を示す、こうした抗体の断片である。例えば米国特許第4,816,567号およびMorrison, 1985, Science 229:1202−07を参照されたい。
「中和抗体」または「阻害性抗体」は、実施例9に記載するアッセイを用いて、過剰な抗IGF−1R抗体が、IGF−1Rに結合するIGF−1および/またはIGF−2の量を、少なくとも約20%減少させる場合の、IGF−1および/またはIGF−2へのIGF−1Rの結合を阻害する抗体である。多様な態様において、抗体は、IGF−1Rに結合するIGF−1および/またはIGF−2の量を、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、および99.9%減少させる。
「活性化抗体」は、IGF−1Rを発現している細胞、組織または生物に添加した際、少なくとも約20%、IGF−1Rを活性化する抗体であり、ここで、「100%活性化」は、生理学的条件下で、同じモル濃度量のIGF−1および/またはIGF−2によって達成される活性化のレベルである。多様な態様において、抗体は、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、175%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、750%、または1000%、IGF−1R活性を活性化する。
抗体の断片または類似体は、本明細書の解説にしたがって、そして当該技術分野に周知の技術を用いて、一般の当業者によって、容易に調製可能である。断片または類似体の好ましいアミノ末端およびカルボキシ末端は、機能ドメインの境界近傍に存在する。公共のまたは私有の(proprietary)配列データベースに、ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列データを比較することによって、構造ドメインおよび機能ドメインを同定することも可能である。コンピュータ比較法を用いて、既知の構造および/または機能を持つ他のタンパク質に存在する配列モチーフまたは予測されるタンパク質コンホメーションドメインを同定してもよい。既知の三次元構造にフォールディングするタンパク質配列を同定する方法が知られる。例えばBowieら, 1991, Science 253:164を参照されたい。
「CDR移植抗体」は、特定の種またはアイソタイプの抗体由来の1以上のCDR、および同じまたは異なる種またはアイソタイプの別の抗体のフレームワークを含む抗体である。
「多重特異性抗体」は、1以上の抗原上の1より多いエピトープを認識する抗体である。このタイプの抗体のサブクラスは、同じまたは異なる抗原上の2つの別個のエピトープを認識する「二重特異性抗体」である。
抗原結合性タンパク質は、1ナノモル以下の解離定数で、抗原に結合する場合、抗原(例えばヒトIGF−1R)に「特異的に結合する」。
「抗原結合性ドメイン」、「抗原結合性領域」、または「抗原結合性部位」は、抗原と相互作用して、そして抗原に対する抗原結合性タンパク質の特異性およびアフィニティに寄与するアミノ酸残基(または他の部分)を含有する抗原結合性タンパク質の部分である。抗原に特異的に結合する抗体に関しては、CDRドメインの少なくとも1つの少なくとも部分を含むであろう。
「エピトープ」は、抗原結合性タンパク質によって(例えば抗体によって)結合される分子の部分である。エピトープは、分子の非隣接部分を含んでもよい(例えばポリペプチドでは、ポリペプチドの一次配列においては隣接しないが、ポリペプチドの三次構造および四次構造の関連においては、互いに、抗原結合性タンパク質によって結合されるのに十分に近い、アミノ酸残基)。
2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチド配列の「同一性パーセント」は、デフォルト・パラメータを用い、GAPコンピュータ・プログラム(GCGウィスコンシン・パッケージ、バージョン10.3(Accelrys、カリフォルニア州サンディエゴ)の一部)を用いて、配列を比較することによって決定される。
用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書全体を通じて交換可能に用いられ、そしてDNA分子(例えばcDNAまたはゲノムDNA)、RNA分子(例えばmRNA)、ヌクレオチド類似体(例えばペプチド核酸および非天然存在ヌクレオチド類似体)を用いて生成されるDNAまたはRNAの類似体、およびそれらのハイブリッドを含む。核酸分子は、一本鎖または二本鎖であることも可能である。1つの態様において、本発明の核酸分子は、本発明の抗体、またはその断片、誘導体、突然変異タンパク質、または類似体をコードする、隣接オープンリーディングフレームを含む。
2つの一本鎖ポリヌクレオチドは、ギャップを導入することなく、そしていずれの配列の5’端または3’端にも、対形成しないヌクレオチドを伴わずに、一方のポリヌクレオチド中のすべてのヌクレオチドが、他方のポリヌクレオチド中の相補的ヌクレオチドと反対であるように、逆平行配向で並列可能であるならば、互いに「相補体」である。ポリヌクレオチドは、中程度にストリンジェントな条件下で、2つのポリヌクレオチドが互いにハイブリダイズ可能であるならば、別のポリヌクレオチドに「相補的」である。したがって、ポリヌクレオチドは、別のポリヌクレオチドの相補体であることなく、該ポリヌクレオチドに相補的であることも可能である。
「ベクター」は、連結された別の核酸を、細胞に導入するために使用可能な核酸である。ベクターの1種類は「プラスミド」であり、その内部にさらなる核酸セグメントを連結可能な、直鎖または環状二重鎖DNA分子を指す。別のタイプのベクターはウイルスベクター(例えば複製不全レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)であり、ここで、さらなるDNAセグメントをウイルスゲノムに導入可能である。特定のベクターは、導入された宿主細胞において、自律的に複製可能である(例えば細菌複製起点を含む細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。宿主細胞内への導入に際して、宿主細胞のゲノム内に他のベクター(例えば非エピソーム哺乳動物ベクター)を組み込んで、そしてそれによって宿主ゲノムと一緒に複製させる。「発現ベクター」は、選択したポリヌクレオチドの発現を指示することも可能なベクターのタイプである。
ヌクレオチド配列は、制御配列が該ヌクレオチド配列の発現(例えば発現のレベル、時期、または位置)に影響を及ぼすならば、該制御配列に「機能可能であるように連結されて」いる。「制御配列」は、機能可能であるように連結されている核酸の発現(例えば発現のレベル、時期、または位置)に影響を及ぼす核酸である。制御配列は、例えば、制御される核酸に対して直接、または1以上の他の分子(例えば制御配列および/または核酸に結合するポリペプチド)の作用を通じて、その効果を発揮する。制御配列の例には、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現調節要素(例えばポリアデニル化シグナル)が含まれる。制御配列のさらなる例は、例えば、Goeddel, 1990, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, カリフォルニア州サンディエゴ、およびBaronら, 1995, Nucleic Acids Res. 23:3605−06に記載される。
「宿主細胞」は、核酸、例えば本発明の核酸を発現するために使用可能な細胞である。宿主細胞は、原核生物、例えば大腸菌(E.coli)であってもよいし、または真核生物、例えば単細胞真核生物(例えば酵母(yeast)または他の真菌)、植物細胞(例えばタバコ(tobacco)またはトマト(tomato)植物細胞)、動物細胞(例えばヒト細胞、サル細胞、ハムスター細胞、ラット細胞、マウス細胞、または昆虫細胞)またはハイブリドーマであってもよい。宿主細胞の例には、サル腎臓細胞のCOS−7株(ATCC CRL 1651)(Gluzmanら, 1981, Cell 23:175を参照されたい)、L細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL 163)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはVeggie CHOなどのその誘導体および血清不含培地で増殖する関連細胞株(Rasmussenら, 1998, Cytotechnology 28:31を参照されたい)またはDHFRが欠損しているCHO株DX−B11(Urlaubら, 1980, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216−20を参照されたい)、HeLa細胞、BHK(ATCC CRL 10)細胞株、アフリカミドリザル(African green monkey)腎臓細胞株CV1(ATCC CCL 70)由来のCV1/EBNA細胞株(McMahanら, 1991, EMBO J. 10:2821を参照されたい)、ヒト胚性腎細胞、例えば293、293 EBNAまたはMSR 293、ヒト上皮A431細胞、ヒトColo205細胞、他の形質転換霊長類細胞株、正常二倍体細胞、初代組織のin vitro培養由来の細胞株、初代外植片、HL−60、U937、HaKまたはJurkat細胞であってもよい。典型的には、宿主細胞は、その後、宿主細胞で発現可能なポリペプチドをコードする核酸で形質転換またはトランスフェクションされることが可能な培養細胞である。句「組換え宿主細胞」を用いて、発現しようとする核酸で形質転換されているかまたはトランスフェクションされている宿主細胞を示すことも可能である。宿主細胞はまた、核酸を含むが、機能可能であるように核酸と連結されるように、制御配列が宿主細胞内に導入されない限り、所望のレベルで該核酸を発現しない、細胞であってもよい。用語、宿主細胞は、特定の対象の細胞だけでなく、こうした細胞の子孫または潜在的な子孫も指す。例えば、突然変異または環境的影響によって、続く世代で特定の修飾が起こりうるため、こうした子孫は、実際、親細胞と同一でない可能性もあるが、なお、本明細書において、この用語の範囲内に含まれる。
IGF−1R
IGF−1Rは、膜貫通受容体チロシンキナーゼである(Blume−Jensen, 2001, Nature 411:355−65)。ヒトIGF−1Rは、小胞体内への転位置中に除去される30アミノ酸のシグナルペプチドを含む、1367アミノ酸前駆体ポリペプチドとして合成される(Swiss−Prot: P08069)。IGF−1Rプロ受容体(proreceptor)は、ER−ゴルジにおける成熟中、グリコシル化され、そして708〜711位(シグナルペプチド配列後の最初のアミノ酸から数える)でプロテアーゼによって切断されて、ジスルフィド結合により連結されたままであるα鎖(1〜707)およびβ鎖(712〜1337)の形成を生じる(Bhaumickら, 1981, Proc Natl Acad Sci USA 78:4279−83, Chernausekら, 1981, Biochemistry 20:7345−50, Jacobsら, 1983, Proc Natl Acad Sci USA 80:1228−31, LeBonら, 1986, J Biol Chem 261:7685−89, Elleman, 2000, Biochem J 347:771−79)。IGF−1R(およびINSR)の細胞表面上に存在する主な型は、タンパク質分解的にプロセシングされ、そしてグリコシル化された(αβ)2二量体であり、これは1以上のジスルフィド結合によって共有結合されている。
IGF−1Rの細胞外部分は、α鎖およびβ鎖の191アミノ酸(712〜905)からなる。該受容体は、単一の膜貫通配列(906〜929)、および機能性チロシンキナーゼを含む、408残基の細胞質ドメインを含有する(Rubinら, 1983, Nature 305:438−440)。比較配列分析によって、IGF−1Rが11の別個の構造モチーフで構成されることが明らかになった(Adams, 2000, Cell Mol Life Sci 57:1050−93, Marino−Busljeら, 1998, FEBS Ltrs 441:331−36, Ward, 2001, BMC Bioinformatics 2:4に概説される)。細胞外ドメインのN末端側半分は、TNF受容体およびラミニン中に存在する反復単位と一致する、ジスルフィド連結を含むいくつかの構造モジュールからなるシステインリッチ(CR)領域(152〜298)によって分離される、L1(1〜151)およびL2(299〜461)と称される2つの相同ドメイン(Wardら、2001、上記)を含有する(Wardら, 1995, Proteins 22:141−53)。L1――CR−L2ドメインの結晶構造が解析されている(Garrettら, 1998, Nature 394:395−99)。L2ドメインの後には、3つのIII型フィブロネクチン・ドメインが続く(Marino−Busljeら、1998、上記, Mulhernら, 1998, Trends Biochem Sci 23:465−66, Wardら, 1999, Growth Factors 16:315−22)。最初のFnIIIドメイン(FnIII−1、461〜579)は、長さ118アミノ酸である。第二のFnIIIドメイン(FnIII−2、580〜798)は、長さ約120アミノ酸の大きな挿入配列(ID)に中断されている。IDドメインには、成熟受容体のα鎖およびβ鎖を分離するフューリン・プロテアーゼ切断部位が含まれる。第三のFnIIIドメイン(FnIII−3)は、膜貫通配列の数残基前に終わるβ鎖(799〜901)の完全に中に位置している。IGF−1Rチロシンキナーゼの触媒ドメインは、アミノ酸973〜1229位の間に位置し、そしてその構造は解析されている(Favelyukis, 2001, Nature Structural Biol 8:1058−63, Pautsch, 2001, Structure 9:955−65)。このキナーゼには、2つの制御領域、膜近傍領域(930〜972)および108アミノ酸のC末端テール(1220〜1337)が隣接している(Surmaczら, 1995, Experimental Cell Res 218:370−80, Hongoら, 1996, Oncogene 12:1231−38)。2つの制御領域は、活性化されたIGF−1Rチロシンキナーゼによってリン酸化される際、シグナル伝達タンパク質のドッキング部位として働く、チロシン残基を含有する(Baserga(監修), 1998 The IGF−1 Receptor in Normal and Abnormal Growth, Hormones and Growth Factors in Development and Neoplasia, Wiley−Liss, Inc., Adams, 2000, Cell Mol Life Sci 57:1050−93に概説される)。
IGF−1Rアミノ酸配列は、インスリン受容体(INSR; Swiss−Prot: P06213)と約70%同一である。受容体間の最高の相同性は、チロシンキナーゼドメインに位置し(84%);最低の同一性は、CR領域およびC末端にある。IGF−1Rはまた、インスリン関連受容体(IRR; Swiss−Prot: P14616)ともまた非常に関連する(〜55%同一)。
ヒトIGF−1Rは、インスリン様増殖因子、IGF−1およびIGF−2およびインスリン(INS)によって活性化可能である(Hillら, 1985, Pediatric Research 19:879−86)。IGF−1およびIGF−2は、非対立遺伝子にコードされ(Brissendenら, 1984, Nature 310: 781−8, Bellら, 1985, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 82: 6450−54)、そして両遺伝子は、示差RNAスプライシングおよびタンパク質プロセシングによって関連する代替タンパク質を発現する。大部分の一般的でそしてよく研究されたIGF−1およびIGF−2の成熟型は、それぞれ、長さ70アミノ酸および67アミノ酸である(Jansenら, 1983, Nature 306:609−11, Dullら, 1984, Nature 310: 777−81)。これらのタンパク質(およびそのアイソフォーム)は、インスリンAペプチドに対して、11/21位で同一であり、そしてインスリンBペプチドと12/30位で同一である。
IGF−1Rは、肝臓肝細胞および成熟B細胞を除いて、正常成体動物におけるすべての細胞種で発現される。ヒト血漿は、高濃度のIGF−1およびIGF−2を含有し、そしてIGF−1は、大部分の組織で検出可能である。該受容体は、臓器サイズおよびホメオスタシスを制御する生理学的機構に不可欠な構成要素である。特定の理論に束縛されないが、「ソマトメジン仮説」によれば、小児期および青年期中に起こる成長ホルモン(GH)が仲介する身体的成長は、肝臓によって主に産生されそして分泌されるIGF−1の内分泌型に依存する(Daughadayら, 2000, Pediatric Nephrology 14: 537−40)。肝臓IGF−1の合成は、視床下部GHRH(GH放出ホルモン)に応答した、下垂体におけるGH放出によって刺激される。IGF−1の血清濃度は、ヒトでは、5歳〜15歳の間に、100倍以上増加する。IGF−1の生物学的利用能は、IGF結合性タンパク質3(IGFBP3)によって制御され、成長因子のおよそ99%が結合状態に区分される。部分的遺伝子欠失から生じる一次IGF−1不全、およびGH産生またはシグナル伝達における欠陥から生じる二次IGF−1不全は致死ではない(Woods, 1999, “IGF Deficiency,” Contemporary Endocrinology: The IGF System中, R. a. R. Rosenfeld, C. Jr. Totowa監修, Humana Press, NJ: 651−74)。罹患した個体は、出生時に成長遅延を示し、成長が緩慢であり、そして特定のCNS異常に直面しうる。
IGF−1Rシグナル伝達は、PI3キナーゼ/Akt経路のIRSアダプター・タンパク質依存性活性化を通じた、細胞増殖および生存を促進する。IGF−1Rは、その主な基質、IRS−1〜IRS−4およびShcタンパク質にシグナルを伝達する(Blakesleyら, 1999, “IGF−1 receptor function: transducing the IGF−1 signal into intracellular events,” The IGF System中, R. G. a. R. Rosenfeld, Jr. C.T. Totowa監修, Humana Press, NJ: 143−63)。これは、Ras/Raf/MAPキナーゼおよびPI3キナーゼ/Aktシグナル伝達経路の活性化を生じる。しかし、IRSを介したAktが仲介する細胞生存の誘導は、大部分の細胞のIGF刺激に際する主な経路応答である。図10を参照されたい。
抗原結合性タンパク質
1つの側面において、本発明は、IGF−1R、例えばヒトIGF−1Rに結合する、抗原結合性タンパク質(例えば抗体、抗体断片、抗体誘導体、抗体突然変異タンパク質、および抗体変異体)を提供する。
本発明にしたがった抗原結合性タンパク質には、IGF−1Rの生物学的活性を阻害する抗原結合性タンパク質が含まれる。こうした生物学的活性の例には、シグナル伝達分子(例えばIGF−1および/またはIGF−2)に結合し、そしてシグナル伝達分子への結合に応答してシグナルを伝達することが含まれる。
異なる抗原結合性タンパク質は、IGF−1Rの異なるドメインまたはエピトープに結合するか、あるいは異なる作用機構によって作用することも可能である。例には、限定されるわけではないが、IGF−1RへのIGF−1および/またはIGF−2の結合に干渉するか、あるいはシグナル伝達を阻害する抗原結合性タンパク質が含まれる。作用部位は、例えば、細胞内(例えば細胞内シグナル伝達カスケードに干渉することによる)または細胞外であることも可能である。抗原結合性タンパク質は、本発明における使用を見出すために、IGF−1および/またはIGF−2が誘導する活性を完全に阻害する必要はなく;むしろ、IGF−1および/またはIGF−2の特定の活性を減少させる抗原結合性タンパク質もまた、使用のために意図される(特定の疾患を治療する際のIGF−1R結合性抗原結合性タンパク質の特定の作用機構の本明細書の考察は、例示のみであり、そして本明細書に提示する方法は、それに束縛されない)。
IGF−1およびIGF−2は、各々、IGF−1Rへの二相性結合を示すことが観察されている。高アフィニティ結合は、0.2nMの範囲のKDを有すると報告され;高アフィニティ結合は、約10倍高い。したがって、1つの態様において、本発明は、IGF−1RへのIGF−1および/またはIGF−2の高アフィニティおよび低アフィニティ結合の両方を阻害するIGF−1R阻害剤を提供する。IGF−1RへのIGF−1および/またはIGF−2の低アフィニティ結合でなく高アフィニティ結合が、IGF−1Rのチロシンキナーゼ活性を活性化するコンホメーション変化に必要であることが示唆されてきている。したがって、別の態様において、IGF−1R阻害剤は、低アフィニティ結合に比較した際、IGF−1RへのIGF−1および/またはIGF−2の高アフィニティ結合を優先的に阻害する。
別の側面において、本発明は、L1〜L52からなる群より選択される軽鎖可変領域および/またはH1〜H52からなる群より選択される重鎖可変領域を含む抗原結合性タンパク質、ならびにその断片、誘導体、突然変異タンパク質、および変異体を提供する(図2および3を参照されたい)。こうした抗原結合性タンパク質を術語「LxHy」を用いて示すことも可能であり、ここで、「x」は、図2および3に示すような、軽鎖可変領域の番号に相当し、そして「y」は重鎖可変領域の番号に相当する。例えば、L2H1は、図2および3に示すような、L2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域およびH1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を持つ抗原結合性タンパク質を指す。図2および3はまた、これらの可変ドメイン配列各々のCDRおよびフレームワーク領域の位置も示す。各軽鎖および重鎖のCDR領域はまた、図4〜9において、タイプによっても、そして配列類似性によっても、グループ分けされる。本発明の抗原結合性タンパク質には、例えば、L1H1、L2H2、L3H3、L4H4、L5H5、L6H6、L7H7、L8H8、L9H9、L10H10、L11H11、L12H12、L13H13、L14H14、L15H15、L16H16、L17H17、L18H18、L19H19、L20H20、L21H21、L22H22、L23H23、L24H24、L25H25、L26H26、L27H27、L28H28、L29H29、L30H30、L31H31、L32H32、L33H33、L34H34、L35H35、L36H36、L37H37、L38H38、L39H39、L40H40、L41H41、L42H42、L43H43、L44H44、L45H45、L46H46、L47H47、L48H48、L49H49、L50H50、L51H51、およびL52H52からなる組み合わせの群より選択される、軽鎖および重鎖の可変ドメインの組み合わせを有する抗原結合性タンパク質が含まれる。
1つの態様において、本発明は、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1残基のみが、L1〜L52からなる群より選択される軽鎖可変ドメインの配列と異なるアミノ酸配列であって、こうした配列相違の各々が、独立に、1つのアミノ酸残基の欠失、挿入、または置換のいずれかである、前記アミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメインを含む、抗原結合性タンパク質を提供する。別の態様において、軽鎖可変ドメインは、L1〜L52からなる群より選択される軽鎖可変ドメインの配列に、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。別の態様において、軽鎖可変ドメインは、L1〜L52からなる群より選択される軽鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列に、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%同一であるヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸配列を含む。別の態様において、軽鎖可変ドメインは、L1〜L52からなる群より選択される軽鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチドの相補体に、中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる、アミノ酸配列を含む。別の態様において、軽鎖可変ドメインは、L1〜L52からなる群より選択される軽鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチドの相補体に、中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる、アミノ酸配列を含む。別の態様において、軽鎖可変ドメインは、図1から選択される軽鎖ポリヌクレオチドの相補体に、中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる、アミノ酸配列を含む。
別の態様において、本発明は、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1残基のみが、H1〜H52からなる群より選択される重鎖可変ドメインの配列と異なるアミノ酸配列であって、こうした配列相違の各々が、独立に、1つのアミノ酸残基の欠失、挿入、または置換のいずれかである、前記アミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメインを含む、抗原結合性タンパク質を提供する。別の態様において、重鎖可変ドメインは、H1〜H52からなる群より選択される重鎖可変ドメインの配列に、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。別の態様において、重鎖可変ドメインは、H1〜H52からなる群より選択される重鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列に、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%同一であるヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸配列を含む。別の態様において、重鎖可変ドメインは、H1〜H52からなる群より選択される重鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチドの相補体に、中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる、アミノ酸配列を含む。別の態様において、重鎖可変ドメインは、H1〜H52からなる群より選択される重鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチドの相補体に、中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる、アミノ酸配列を含む。別の態様において、重鎖可変ドメインは、図1から選択される重鎖ポリヌクレオチドの相補体に、中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる、アミノ酸配列を含む。
本発明の抗原結合性タンパク質の特定の態様は、図2〜9に例示するCDRおよび/またはFRの1以上のアミノ酸配列に同一である1以上のアミノ酸配列を含む。1つの態様において、抗原結合性タンパク質は、図4に例示する軽鎖CDR1配列を含む。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、図5に例示する軽鎖CDR2配列を含む。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、図6に例示する軽鎖CDR3配列を含む。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、図7に例示する重鎖CDR1配列を含む。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、図8に例示する重鎖CDR2配列を含む。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、図9に例示する重鎖CDR3配列を含む。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、図2に例示する軽鎖FR1配列を含む。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、図2に例示する軽鎖FR2配列を含む。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、図2に例示する軽鎖FR3配列を含む。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、図2に例示する軽鎖FR4配列を含む。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、図3に例示する重鎖FR1配列を含む。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、図3に例示する重鎖FR2配列を含む。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、図3に例示する重鎖FR3配列を含む。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、図3に例示する重鎖FR4配列を含む。
1つの態様において、本発明は、5、4、3、2、または1アミノ酸残基を超えずに、図2〜9に示すCDR配列と異なる1以上のCDR配列を含む、抗原結合性タンパク質を提供する。
1つの態様において、本発明は、図2〜9に示すような、L1〜L52および/またはH1〜H52由来の少なくとも1つのCDR、および米国特許出願公報第03/0235582号、第04/0228859号、第04/0265307号、第04/0886503号、第05/0008642号、第05/0084906号、第05/0186203号、第05/0244408号、PCT公報第WO 03/059951号、第WO 03/100008号、第WO 04/071529A2号、第WO 04/083248号、第WO 04/087756号、第WO 05/016967号、第WO 05/016970号、または第WO 05/058967号(各文献は、あらゆる目的のため、その全体が本明細書に援用される)に記載される抗IGF−1R抗体由来の少なくとも1つのCDR配列を含む抗原結合性タンパク質であって、IGF−1受容体に結合する、前記抗原結合性タンパク質を提供する。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、図2〜9に示すようなL1〜L52および/またはH1〜H52由来の2、3、4、または5つのCDR配列を含む。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、米国特許出願公報第03/0235582号、第04/0228859号、第04/0265307号、第04/0886503号、第05/0008642号、第05/0084906号、第05/0186203号、第05/0244408号、PCT公報第WO 03/059951号、第WO 03/100008号、第WO 04/071529A2号、第WO 04/083248号、第WO 04/087756号、第WO 05/016967号、第WO 05/016970号、または第WO 05/058967号に記載される抗IGF−1R抗体由来の2、3、4、または5つのCDR配列を含む。別の態様において、抗原結合性タンパク質のCDR3配列の少なくとも1つは、図2、3、6、および9に示すようなL1〜L52および/またはH1〜H52由来のCDR3配列である。別の態様において、抗原結合性タンパク質の軽鎖CDR3配列は、図2および6に示すようなL1〜L52由来の軽鎖CDR3配列であり、そして抗原結合性タンパク質の重鎖CDR3配列は、図3および9に示すようなH1〜H52由来の重鎖配列である。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、L1〜L52および/またはH1〜H52のCDR配列から、6、5、4、3、2、1、または0の単一アミノ酸付加、置換、および/または欠失によって各々独立に異なる、1、2、3、4、または5つのCDR配列を含み、そして抗原結合性タンパク質は、米国特許出願公報第03/0235582号、第04/0228859号、第04/0265307号、第04/0886503号、第05/0008642号、第05/0084906号、第05/0186203号、第05/0244408号、PCT公報第WO 03/059951号、第WO 03/100008号、第WO 04/071529A2号、第WO 04/083248号、第WO 04/087756号、第WO 05/016967号、第WO 05/016970号、または第WO 05/058967号のCDR配列から、6、5、4、3、2、1、または0の単一アミノ酸付加、置換、および/または欠失によって各々独立に異なる、1、2、3、4、または5つのCDR配列をさらに含む。別の態様において、米国特許出願公報第03/0235582号、第04/0228859号、第04/0265307号、第04/0886503号、第05/0008642号、第05/0084906号、第05/0186203号、第05/0244408号、PCT公報第WO 03/059951号、第WO 03/100008号、第WO 04/071529A2号、第WO 04/083248号、第WO 04/087756号、第WO 05/016967号、第WO 05/016970号、または第WO 05/058967号のCDR配列。別の態様において、CDR配列(単数または複数)は、IGF−1受容体の細胞外ドメインのL2部分に結合する抗体(単数または複数)に由来する。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、米国特許出願公報第03/0235582号、第04/0228859号、第04/0265307号、第04/0886503号、第05/0008642号、第05/0084906号、第05/0186203号、第05/0244408号、PCT公報第WO 03/059951号、第WO 03/100008号、第WO 04/071529A2号、第WO 04/083248号、第WO 04/087756号、第WO 05/016967号、第WO 05/016970号、または第WO 05/058967号由来の抗IGF−1R抗体由来の軽鎖CDR3配列および/または重鎖CDR3配列を含まない。
1つの態様において、本発明は、配列RSSQSLLHX1X2GYNX3LX4(配列番号236)を含む軽鎖CDR1を含む抗原結合性タンパク質を提供し、ここでX1はセリンまたはスレオニン残基であり、X2はアスパラギン、セリン、またはヒスチジン残基であり、X3はチロシンまたはフェニルアラニン残基であり、そしてX4はアスパラギン酸またはアスパラギン残基である。別の態様において、軽鎖CDR1は、配列TRSSGX1IX2X3NYVQ(配列番号237)を含み、ここでX1はセリンまたはアスパラギン酸残基であり、X2はアラニンまたはアスパラギン酸残基であり、そしてX3はセリンまたはアスパラギン残基である。別の態様において、軽鎖CDR1は、配列RASQX1X2X3X4X5LX6(配列番号238)を含み、ここでX1はグリシンまたはセリン残基であり、X2はイソロイシン、バリン、またはプロリン残基であり、そしてX3はセリン、グリシン、またはチロシン残基であり、X4はいかなるアミノ酸残基でもよく、X5はフェニルアラニン、チロシン、アスパラギン、またはトリプトファン残基であり、そしてX6はアラニンまたはアスパラギン残基である。別の態様において、X2はイソロイシンまたはバリン残基であり、X3はグリシンまたはセリン残基であり、X4はアルギニン、セリン、アスパラギン、セリン、チロシン、またはイソロイシン残基であり、そしてX5はフェニルアラニンまたはチロシン残基である。
1つの態様において、本発明は、配列LX1X2X3RX4S(配列番号239)を含む軽鎖CDR2を含む抗原結合性タンパク質を提供し、ここでX1はグリシンまたはバリン残基であり、X2はセリンまたはフェニルアラニン残基であり、X3はアスパラギン、チロシン、またはスレオニン残基であり、そしてX4はアラニンまたはアスパラギン酸残基である。別の態様において、CDR2は、配列AX1SX2LX3S(配列番号240)を含み、ここでX1はアラニンまたはスレオニン残基であり、X2はスレオニンまたはグリシン残基であり、そしてX3はグルタミンまたはグルタミン酸残基である。別の態様において、CDR2は、配列X1X2NX3RPS(配列番号241)を含み、ここでX1はグルタミン酸、グルタミン、またはグリシン残基であり、X2はアスパラギン酸またはリジン残基であり、そしてX3はいかなるアミノ酸残基であってもよい。
1つの態様において、本発明は、配列MX1X2X3X4X5PX6X7(配列番号242)を含む軽鎖CDR3を含む抗原結合性タンパク質を提供し、ここでX1はグルタミンまたはグルタミン酸残基であり、X2はアラニン、グリシン、セリン、またはスレオニン残基であり、X3はロイシンまたはスレオニン残基であり、X4はグルタミン、グルタミン酸、またはヒスチジン残基であり、X5はスレオニン、トリプトファン、メチオニン、またはバリン残基であり、X6は非極性側鎖残基であり、そしてX7はスレオニン、セリン、またたはアラニン残基である。別の態様において、CDR3は、配列QQX1X2X3X4PX5T(配列番号243)を含み、ここでX1はアルギニン、セリン、ロイシン、またはアラニン残基であり、X2はアスパラギン、セリン、またはヒスチジン残基であり、X3はセリンまたはアスパラギン残基であり、X4は非極性側鎖残基であり、そしてX5はロイシン、イソロイシン、チロシン、またはトリプトファン残基である。別の態様において、CDR3は、配列QSYX1SX2NX3X4V(配列番号244)を含み、ここでX1はアスパラギン酸またはグルタミン残基であり、X2はセリンまたはアスパラギン酸残基であり、X3はグルタミン、バリン、またはトリプトファン残基であり、そしてX4はアルギニン残基または残基なしである。
1つの態様において、本発明は、配列X1X2X3WWS(配列番号245)を含む重鎖CDR1を含む抗原結合性タンパク質を提供し、ここでX1はセリン残基または残基なしであり、X2はセリンまたはアスパラギン残基であり、そしてX3はアスパラギン残基およびイソロイシン残基である。別の態様において、重鎖CDR1は、配列X1X2YWS(配列番号246)を含み、ここでX1はグリシン、アスパラギン、またはアスパラギン酸残基であり、そしてX2はチロシンまたはフェニルアラニン残基である。別の態様において、重鎖CDR1は、配列SYX1X2X3(配列番号247)を含み、ここでX1はアラニンまたはグリシン残基であり、X2はメチオニンまたはイソロイシン残基であり、そしてX3はセリンまたはヒスチジン残基である。
1つの態様において、本発明は、配列X1X2X3X4X5GX6TX7YNPSLX8S(配列番号248)を含む重鎖CDR2を含む抗原結合性タンパク質を提供し、ここでX1はグルタミン酸、チロシン、またはセリン残基であり、X2はイソロイシンまたはバリン残基であり、X3はチロシン、アスパラギン、またはセリン残基であり、X4はヒスチジン、チロシン、アスパラギン酸、またはプロリン残基であり、X5はセリンまたはアルギニン残基であり、X6はセリンまたはアスパラギン残基であり、X7はアスパラギンまたはチロシン残基であり、そしてX8はリジンまたはグルタミン酸残基である。別の態様において、重鎖CDR2は、配列X1ISX2X3X4X5X6X7YYADSVKG(配列番号249)を含み、X1はスレオニン、アラニン、バリン、またはチロシン残基であり、X2はグリシン、セリン、またはチロシン残基であり、X3はセリン、アスパラギン、またはアスパラギン酸残基であり、X4はグリシンまたはセリン残基であり、X5はグリシン、セリン、またはアスパラギン酸残基であり、X6はセリン、スレオニン、またはアスパラギン残基であり、そしてX7はスレオニン、リジン、またはイソロイシン残基である。
1つの態様において、本発明は、配列X1X2X3X4X5X6X7X8X9FDI(配列番号250)を含む重鎖CDR3を含む抗原結合性タンパク質を提供し、ここでX1はグルタミン酸残基または残基なしであり、X2はチロシン、グリシン、またはセリン残基あるいは残基なしであり、X3はセリン、アスパラギン、トリプトファン、またはグルタミン酸残基、あるいは残基なしであり、X4はセリン、アスパラギン酸、トリプトファン、アラニン、アルギニン、スレオニン、グルタミン、ロイシン、またはグルタミン酸残基、あるいは残基なしであり、X5はセリン、グリシン、アスパラギン、スレオニン、トリプトファン、アラニン、バリン、またはイソロイシン残基であり、X6はアルギニン、グルタミン、チロシン、バリン、アラニン、グリシン、セリン、フェニルアラニン、またはトリプトファン残基であり、X7はロイシン、アスパラギン、アスパラギン酸、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、アラニン、またはヒスチジン残基であり、X8はアスパラギン酸、セリン、アスパラギン、またはグルタミン残基であり、そしてX9はアラニンまたはプロリン残基である。別の態様において、重鎖CDR3は、配列X1X2X3X4X5X6X7X8X9X10X11MDV(配列番号251)を含み、ここでX1はアラニン残基、または残基なしであり、X2はグルタミン酸、チロシン、またはグリシン残基、あるいは残基なしであり、X3はセリンまたはアルギニン残基、あるいは残基なしであり、X4はアスパラギン酸、グリシン、セリン、またはバリン残基、あるいは残基なしであり、X5はセリン、グリシン、またはアスパラギン酸残基、あるいは残基なしであり、X6はグリシン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、セリン、トリプトファン、またはチロシン残基、あるいは残基なしであり、X7はチロシン、トリプトファン、セリン、またはアスパラギン酸残基、あるいは残基なしであり、X8はアスパラギン酸、アルギニン、セリン、グリシン、チロシン、またはトリプトファン残基であり、X9はチロシン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、またはリジン残基であり、X10はチロシン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、またはグリシン残基であり、そしてX11はグリシン、チロシン、またはアスパラギン残基である。別の態様において、重鎖CDR3は、配列X1X2X3X4X5X6X7X8X9X10Y(配列番号252)を含み、ここでX1はアスパラギン酸またはバリン残基、あるいは残基なしであり、X2はグリシン、チロシン、アルギニン、またはアスパラギン酸残基、あるいは残基なしであり、X3はアスパラギン、ロイシン、グリシン、イソロイシン、セリン、バリン、フェニルアラニン、またはチロシン残基、あるいは残基なしであり、X4はロイシン、セリン、トリプトファン、アラニン、チロシン、イソロイシン、グリシン、またはアスパラギン酸残基、あるいは残基なしであり、X5はグリシン、アラニン、チロシン、セリン、アスパラギン酸、またはロイシン残基であり、X6はバリン、アラニン、グリシン、スレオニン、プロリン、ヒスチジン、またはグルタミン残基であり、X7はグルタミン酸、グリシン、セリン、アスパラギン酸、グリシン、バリン、トリプトファン、ヒスチジン、またはアルギニン残基であり、X8はグルタミン、アラニン、グリシン、チロシン、プロリン、ロイシン、アスパラギン酸、またはセリン残基であり、X9は非極性側鎖残基であり、そしてX10はアスパラギン酸またはアラニン残基である。別の態様において、重鎖CDR3は、配列X1X2X3X4X5X6X7X8X9X10YFDX11(配列番号253)を含み、ここでX1はグリシン残基、または残基なしであり、X2はプロリン残基、または残基なしであり、X3はアルギニンまたはアスパラギン酸残基、あるいは残基なしであり、X4はヒスチジンまたはプロリン残基であり、X5はアルギニンまたはグリシン残基であり、X6はアルギニン、セリン、またはフェニルアラニン残基であり、X7はアスパラギン酸またはセリン残基であり、X8はグリシン、トリプトファン、またはチロシン残基であり、X9はチロシンまたはアラニン残基であり、X10はアスパラギンまたはトリプトファン残基であり、そしてX11はアスパラギンまたはロイシン残基である。別の態様において、重鎖CDR3は、配列X1X2X3X4DSSX5X6X7X8X9X10X11X12(配列番号254)を含み、ここでX1はフェニルアラニン残基、または残基なしであり、X2はアスパラギンまたはグリシン残基、あるいは残基なしであり、X3はチロシンまたはロイシン残基、あるいは残基なしであり、X4はチロシンまたはグリシン残基、あるいは残基なしであり、X5はグリシン、セリン、またはバリン残基であり、X6はチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、またはグルタミン残基、あるいは残基なしであり、X7はチロシン、グリシン、またはイソロイシン残基、あるいは残基なしであり、X8はチロシン、ロイシン、またはグリシン残基、あるいは残基なしであり、X9はメチオニン、グリシン、またはフェニルアラニン残基、あるいは残基なしであり、X10はアスパラギン酸またはメチオニン残基、あるいは残基なしであり、X11はバリン、アスパラギン酸、またはチロシン残基、あるいは残基なしであり、そしてX12はバリン残基、または残基なしである。
1つの態様において、本発明は:a.軽鎖CDR3であって:i.図6に示すようなL1〜L52の軽鎖CDR3配列からなる群より選択される軽鎖CDR3配列;ii. MQALQTPZT;iii. QQ(R/S)(N/S)(S/N)ZPLT;およびiv. QSYDSSNXJVからなる群より選択される配列を含む、軽鎖CDR3;b.重鎖CDR3であって:i.図9に示すようなH1〜H52の重鎖CDR3配列からなる群より選択されるCDR3配列と、全部で3アミノ酸の付加、置換、または欠失より多く異ならない、重鎖CDR3配列;ii. SRLDAFDI;iii. SXYDYYGMDV;iv. HRXDXAWYFDL;およびv. DSSGからなる群より選択される配列を含む、重鎖CDR3;またはc.(a)の軽鎖CDR3配列および(b)の重鎖CDR3配列のいずれかを含む;ここで、括弧内に入れられたアミノ酸残基記号は、配列中の同じ位の代替残基を同定し、各Xは、独立に、いかなるアミノ酸残基であってもよく、各Zは、独立に、グリシン残基、アラニン残基、バリン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、プロリン残基、フェニルアラニン残基、メチオニン残基、トリプトファン残基、またはシステイン残基であり、各Jは、独立に、グルタミン残基、アルギニン残基、バリン残基、またはトリプトファン残基である、単離抗原結合性タンパク質を提供し、そして該抗原結合性タンパク質は、ヒトIGF−1Rに結合する。
図1のヌクレオチド配列、または図2〜9のアミノ酸配列を、例えば、ランダム突然変異誘発によって、または部位特異的突然変異誘発(例えばオリゴヌクレオチドが指示する部位特異的突然変異誘発)によって改変して、非突然変異ポリヌクレオチドに比較した際、1以上の特定のヌクレオチド置換、欠失、または挿入を含む、改変ポリヌクレオチドを生成してもよい。こうした改変を作製するための技術の例は、Walderら, 1986, Gene 42:133; Bauerら 1985, Gene 37:73; Craik, BioTechniques, January 1985, 12−19; Smithら, 1981, Genetic Engineering: Principles and Methods, Plenum Press;ならびに米国特許第4,518,584号および第4,737,462号に記載される。これらの方法および他の方法を用いて、例えば、所望の特性、例えば非誘導体化抗体に比較して、IGF−1Rへの増加したアフィニティ、アビディティ、または特異性、in vivoまたはin vitroでの増加した活性または安定性、あるいは減少したin vivo副作用を有する、抗IGF−1R抗体の誘導体を作製することも可能である。
本発明の範囲内の抗IGF−1R抗体の他の誘導体には、抗IGF−1R抗体ポリペプチドのN末端またはC末端に融合した異種ポリペプチドを含む組換え融合タンパク質の発現によるなどの、他のタンパク質またはポリペプチドとの抗IGF−1R抗体またはその断片の共有または凝集コンジュゲートが含まれる。例えば、コンジュゲート化されるペプチドは、異種シグナル(またはリーダー)ポリペプチド、例えば酵母アルファ因子リーダー、またはエピトープタグなどのペプチドであってもよい。抗原結合性タンパク質を含有する融合タンパク質は、抗原結合性タンパク質の精製または同定を促進するために付加されるペプチド(例えばポリHis)を含んでもよい。また、抗原結合性タンパク質を、Hoppら, Bio/Technology 6:1204, 1988、および米国特許第5,011,912号に記載されるような、FLAGペプチド、Asp−Tyr−Lys−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys(DYKDDDDK)(配列番号255)に連結してもよい。FLAGペプチドは、非常に抗原性であり、そして特異的モノクローナル抗体(mAb)によって可逆的に結合されるエピトープを提供し、発現された組換えタンパク質の迅速なアッセイおよび容易な精製を可能にする。FLAGペプチドが所定のポリペプチドに融合される融合タンパク質を調製するのに有用な試薬が、商業的に入手可能である(Sigma、ミズーリ州セントルイス)。
1以上の抗原結合性タンパク質を含有するオリゴマーをIGF−1Rアンタゴニストとして使用してもよい。オリゴマーは、共有結合したまたは非共有結合した、二量体、三量体、またはより高次のオリゴマーの形であることも可能である。2以上の抗原結合性タンパク質を含むオリゴマーが使用のために意図され、一例がホモ二量体である。他のオリゴマーには、ヘテロ二量体、ホモ三量体、ヘテロ三量体、ホモ四量体、ヘテロ四量体等が含まれる。
1つの態様は、抗原結合性タンパク質に融合したペプチド部分間の共有相互作用または非共有相互作用を介して連結された、多数の抗原結合性タンパク質を含むオリゴマーに向けられる。こうしたペプチドは、ペプチド・リンカー(スペーサー)、またはオリゴマー化を促進する特性を有するペプチドであってもよい。以下により詳細に記載するように、ロイシンジッパー、および抗体由来の特定のポリペプチドが、それに付着した抗原結合性タンパク質のオリゴマー化を促進可能なペプチドの1つである。
特定の態様において、オリゴマーは、2〜4の抗原結合性タンパク質を含む。オリゴマーの抗原結合性タンパク質は、上述の型のいずれか、例えば変異体または断片などの、いかなる型であってもよい。好ましくは、オリゴマーは、IGF−1R結合活性を有する、抗原結合性タンパク質を含む。
1つの態様において、免疫グロブリン由来のポリペプチドを用いて、オリゴマーを調製する。抗体由来ポリペプチドの多様な部分(Fcドメインを含む)に融合した特定の異種ポリペプチドを含む、融合タンパク質の調製は、例えばAshkenaziら, 1991, PNAS USA 88:10535; Byrn ら, 1990, Nature 344:677;およびHollenbaughら, 1992 “Construction of Immunoglobulin Fusion Proteins”, Current Protocols in Immunology中, 補遺4, 10.19.1−10.19.11ページによって記載されてきている。
本発明の1つの態様は、抗IGF−1R抗体のIGF−1R結合性断片を、抗体のFc領域に融合させることによって生成される2つの融合タンパク質を含む二量体に向けられる。二量体は、例えば、融合タンパク質をコードする遺伝子融合体を、適切な発現ベクターに挿入し、組換え発現ベクターで形質転換した宿主細胞において、遺伝子融合体を発現させ、そして抗体分子とそっくりに集合させて、その際、Fc部分間に鎖間ジスルフィド結合が形成されるのを可能にして、二量体を生じることによって、作製可能である。
用語「Fcポリペプチド」には、本明細書において、抗体のFc領域由来のポリペプチドの天然型および突然変異タンパク質型が含まれる。二量体化を促進するヒンジ領域を含有する、こうしたポリペプチドの一部切除(truncated)型もまた含まれる。Fc部分を含む融合タンパク質(およびそこから形成されるオリゴマー)は、プロテインAまたはプロテインGカラム上のアフィニティクロマトグラフィーによって精製が容易であるという利点を提供する。
1つの適切なFcポリペプチドは、PCT出願WO 93/10151(本明細書に援用される)に記載される、ヒトIgG1抗体のFc領域のN末端ヒンジ領域から天然C末端に渡る一本鎖ポリペプチドである。別の有用なFcポリペプチドは、米国特許第5,457,035号およびBaumら, 1994, EMBO J. 13:3992−4001に記載されるFc突然変異タンパク質である。この突然変異タンパク質のアミノ酸配列は、アミノ酸19がLeuからAlaに変化し、アミノ酸20がLeuからGluに変化し、そしてアミノ酸22がGlyからAlaに変化していることを除けば、WO 93/10151に示される天然Fc配列のものと同一である。該突然変異タンパク質は、Fc受容体に対し、減少したアフィニティを示す。
他の態様において、抗IGF−1R抗体の重鎖および/または軽鎖の可変部分を、抗体重鎖および/または軽鎖の可変部分に対して置換してもよい。
あるいは、オリゴマーは、ペプチド・リンカー(スペーサー・ペプチド)を含むかまたは含まない、多数の抗原結合性タンパク質を含む融合タンパク質である。適切なペプチド・リンカーの中には、米国特許第4,751,180号および第4,935,233号に記載されるものがある。
オリゴマー性抗原結合性タンパク質を調製するための別の方法は、ロイシンジッパーの使用を伴う。ロイシンジッパードメインは、これらが見られるタンパク質のオリゴマー化を促進するペプチドである。ロイシンジッパーは、元来、いくつかのDNA結合性タンパク質で同定され(Landschulzら, 1988, Science 240:1759)、そして以来、多様な異なるタンパク質で発見されてきた。既知のロイシンジッパーの中には、二量体化または三量体化する天然存在ペプチドおよびその誘導体がある。可溶性オリゴマー性タンパク質を産生するのに適したロイシンジッパードメインの例が、本明細書に援用される、PCT出願WO 94/10308に記載され、そして肺界面活性タンパク質D(SPD)に由来するロイシンジッパーが、Hoppeら, 1994, FEBS Letters 344:191に記載される。融合された異種タンパク質の安定な三量体化を可能にする、修飾ロイシンジッパーの使用が、Fanslowら, 1994, Semin. Immunol. 6:267−78に記載される。1つのアプローチにおいて、ロイシンジッパーペプチドに融合した抗IGF−1R抗体断片または誘導体を含む組換え融合タンパク質を、適切な宿主細胞において発現させて、そして形成される可溶性オリゴマー性抗IGF−1R抗体断片または誘導体を、培養上清から回収する。
1つの側面において、本発明は、IGF−1RへのIGF−1および/またはIGF−2の結合に干渉する抗原結合性タンパク質を提供する。IGF−1R、あるいはその断片、変異体または誘導体に対して、こうした抗原結合性タンパク質を作製し、そしてIGF−1RへのIGF−1および/またはIGF−2の結合に干渉する能力に関して、慣用的なアッセイでスクリーニングしてもよい。適切なアッセイの例は、IGF−1Rを発現している細胞へのIGF−1および/またはIGF−2の結合を阻害する能力に関して、抗原結合性タンパク質を試験するアッセイ、あるいは細胞表面IGF−1R受容体へのIGF−1および/またはIGF−2の結合から生じる生物学的応答または細胞性応答を減少させる能力に関して、抗原結合性タンパク質を試験するアッセイである。
別の側面において、本発明は、IGF−1RへのIGF−1および/またはIGF−2の結合を遮断するが、インスリン受容体(INS−R)へのインスリンの結合を有意には遮断しない抗原結合性タンパク質を提供する。1つの態様において、抗原結合性タンパク質はINS−Rに結合しない。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、INS−Rへのインスリンの結合を有効に遮断しないような低いアフィニティでINS−Rに結合する。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、INS−Rに結合するが、抗原結合性タンパク質が結合したINS−Rは、なおインスリンに結合可能である。別の態様において、IGF−1Rに対する抗原結合性タンパク質の選択性は、インスリン受容体に対する該タンパク質の選択性より、少なくとも50倍高い。別の態様において、抗原結合性タンパク質の選択性は、インスリン受容体に対する該タンパク質の選択性より、100倍を超えて高い。
別の側面において、本発明は、種選択性を示す抗原結合性タンパク質を提供する。1つの態様において、抗原結合性タンパク質は、1以上の哺乳動物IGF−1Rに、例えばヒトIGF−1Rに、そしてマウス、ラット、モルモット、ハムスター、スナネズミ(gerbil)、ネコ、ウサギ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、および非ヒト霊長類IGF−1Rの1以上に結合する。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、1以上の霊長類IGF−1Rに、例えば、ヒトIGF−1Rに、そしてカニクイザル、マーモセット(marmoset)、アカゲザル(rhesus)およびチンパンジーIGF−1Rの1以上に結合する。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、ヒト、カニクイザル、マーモセット、アカゲザル、またはチンパンジーIGF−1Rに特異的に結合する。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、スナネズミ、ネコ、ウサギ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、および非ヒト霊長類IGF−1Rの1以上に結合しない。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、マーモセットなどの新世界ザル種には結合しない。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、IGF−1R以外の天然存在タンパク質のいずれにも特異的結合を示さない。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、哺乳動物IGF−1R以外の天然存在タンパク質のいずれにも特異的結合を示さない。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、霊長類IGF−1R以外の天然存在タンパク質のいずれにも特異的結合を示さない。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、ヒトIGF−1R以外の天然存在タンパク質のいずれにも特異的結合を示さない。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、マウス、ラット、カニクイザル、およびヒトIGF−1Rに特異的に結合する。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、マウス、ラット、カニクイザル、およびヒトIGF−1Rに、類似の結合アフィニティで、特異的に結合する。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、マウス、ラット、カニクイザル、およびヒトIGF−1Rと、ヒトIGF−1およびIGF−2の結合を遮断する。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、マウス、ラット、カニクイザル、およびヒトIGF−1Rと、ヒトIGF−1およびIGF−2の結合を、類似のKiで、遮断する。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、マウス、ラット、カニクイザル、およびヒトIGF−1Rと、ヒトIGF−1およびIGF−2の結合を、約0.57〜約0.61nMの間のKiで、遮断する。
当該技術分野によく知られる方法を用いて、そして本明細書の解説にしたがって、IGF−1Rに対する抗原結合性タンパク質の選択性を測定してもよい。例えば、ウェスタンブロット、FACS、ELISAまたはRIAを用いて、選択性を測定してもよい。
別の側面において、本発明は、以下の特性:ヒトおよびネズミIGF−1Rの両方に結合する特性、ヒトIGF−1RへのIGF−1およびIGF−2の結合の両方を阻害する特性、ネズミIGF−1RへのIGF−1およびIGF−2の結合の両方を阻害する特性、IGF−1RへのIGF−1および/またはIGF−2の高アフィニティ結合を優先的に阻害する特性、IGF−1RのL2ドメインに結合する特性、曝露17時間後、細胞表面に発現されたIGF−1Rの比較的わずかな下方制御を引き起こす特性(MAB391(R&D Systems、ミネソタ州ミネアポリス)に比較した際;例えばIGF−1R量は20%未満減少する)、200マイクログラムの毎週1回の用量を4週間投与した後、MAB391と同程度のレベルで、マウスにおいて、Colo−205またはMiaPaCa−2異種移植片腫瘍細胞上の細胞表面に発現されるIGF−1Rの下方制御を引き起こす特性の1以上を有する、IGF−1R結合性抗原結合性タンパク質(例えば抗IGF−1R抗体)を提供する。
慣用的技術によって、本発明の抗原結合性タンパク質の抗原結合性断片を産生してもよい。こうした断片の例には、限定されるわけではないが、FabおよびF(ab’)2断片が含まれる。遺伝子操作技術によって産生される抗体断片および誘導体もまた意図される。
さらなる態様には、キメラ抗体、例えば非ヒト(例えばネズミ)モノクローナル抗体のヒト化型が含まれる。既知の技術によって、こうしたヒト化抗体を調製してもよく、そしてこうした抗体は、ヒトに投与した際、免疫原性が減少しているという利点を提供する。1つの態様において、ヒト化モノクローナル抗体は、ネズミ抗体の可変ドメイン(あるいはその抗原結合性部位のすべてまたは一部)およびヒト抗体由来の定常ドメインを含む。あるいは、ヒト化抗体断片は、ネズミモノクローナル抗体の抗原結合性部位およびヒト抗体由来の可変ドメイン断片(抗原結合性部位を欠く)を含んでもよい。キメラ抗体およびさらに操作されたモノクローナル抗体の産生法には、Riechmannら, 1988, Nature 332:323, Liuら, 1987, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 84:3439, Larrickら, 1989, Bio/Technology 7:934, およびWinterら, 1993, TIPS 14:139に記載されるものが含まれる。1つの態様において、キメラ抗体はCDR移植抗体である。抗体をヒト化するための技術は、例えば米国特許出願第10/194,975号(2003年2月27日公開)、米国特許第5,869,619号、第5,225,539号、第5,821,337号、第5,859,205号、Padlanら, 1995, FASEB J. 9:133−39, およびTamura, 2000, J. Immunol. 164:1432−41に論じられる。
非ヒト動物において、ヒト抗体または部分的にヒトの抗体を生成するための方法が開発されてきている。例えば、1以上の内因性免疫グロブリン遺伝子が、多様な手段によって不活性化されたマウスが用意されてきている。ヒト免疫グロブリン遺伝子が該マウスに導入され、不活性化されたマウス遺伝子が置換されている。該動物において産生される抗体は、動物内に導入されたヒト遺伝物質にコードされるヒト免疫グロブリンポリペプチド鎖を取り込む。1つの態様において、トランスジェニックマウスなどの非ヒト動物を、IGF−1Rポリペプチドに対して向けられる抗体が該動物において生成されるように、IGF−1Rポリペプチドで免疫する。適切な免疫原の一例は、図10のタンパク質の細胞外ドメインを含むポリペプチドなどの可溶性ヒトIGF−1R、または図10のタンパク質の他の免疫原性断片である。ヒト抗体または部分的ヒト抗体の産生用のトランスジェニック動物の産生および使用のための技術の例が、米国特許第5,814,318号、第5,569,825号、および第5,545,806号、Davis, 2003, “Production of human antibodies from transgenic mice,” Lo監修 Antibody Engineering: Methods and Protocols中, Humana Press, NJ:191−200, Kellermann, 2002, Curr Opin Biotechnol. 13:593−97, Russel, 2000, Infect Immun. 68:1820−26, Gallo, 2000, Eur J Immun. 30:534−40, Davisら, 1999, Cancer Metastasis Rev. 18:421−25, Green, 1999, J Immunol Methods. 231:11−23, Jakobovits, 1998, Advanced Drug Delivery Reviews 31:33−42, Greenら, 1998, J Exp Med. 188:483−95, Jakobovits A, 1998, Exp. Opin. Invest. Drugs. 7:607−14, Tsudaら, 1997, Genomics. 42:413−21, Mendezら, 1997, Nat Genet. 15:146−56, Jakobovits, 1994, Curr Biol. 4:761−63, Arbonesら, 1994, Immunity. 1:247−60, Greenら, 1994, Nat Genet. 7:13−21, Jakobovitsら, 1993, Nature. 362:255−58, Jakobovitsら, 1993, Proc Natl Acad Sci U S A. 90:2551−55. Chen, J., M. Trounstine, F. W. Alt, F. Young, C. Kurahara, J. Loring, D. Huszar. “Immunoglobulin gene rearrangement in B cell deficient mice generated by targeted deletion of the JH locus.” lnternational Immunology 5(1993): 647−656, Choiら, 1993, Nature Genetics 4: 117−23, Fishwildら, 1996, Nature Biotechnology 14: 845−51, Hardingら, 1995, Annals of the New York Academy of Sciences, Lonbergら, 1994, Nature 368: 856−59, Lonberg, 1994, Transgenic Approaches to Human Monoclonal Antibodies in Handbook of Experimental Pharmacology 113: 49−101, Lonbergら, 1995, Internal Review of Immunology 13: 65−93, Neuberger, 1996, Nature Biotechnology 14: 826, Taylorら, 1992, Nucleic Acids Research 20: 6287−95, Taylorら, 1994, International Immunology 6: 579−91, Tomizukaら, 1997, Nature Genetics 16: 133−43, Tomizuka, 2000, Proceedings of the National Academy of Sciences USA 97: 722−27, Tuaillonら, 1993, Proceedings of the National Academy of Sciences USA 90: 3720−24, およびTuaillonら, 1994, Journal of Immunology 152: 2912−20に記載される。
別の側面において、本発明は、IGF−1Rに結合するモノクローナル抗体を提供する。当該技術分野に知られる技術いずれかを用いて、例えば、免疫スケジュールの完了後に、トランスジェニック動物から採取した脾臓細胞を不死化することによって、モノクローナル抗体を産生してもよい。当該技術分野に知られる技術いずれかを用いて、例えば、骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを産生することによって、脾臓細胞を不死化してもよい。ハイブリドーマを産生する融合法で使用するための骨髄腫細胞は、好ましくは、非抗体産生性であり、高い融合効率を有し、そして所望の融合細胞(ハイブリドーマ)のみの増殖を支持する特定の選択培地中で増殖することが不可能であるようにする酵素不全を有する。マウス融合体で使用するのに適した細胞株の例には、Sp−20、P3−X63/Ag8、P3−X63−Ag8.653、NS1/1.Ag 4 1、Sp210−Ag14、FO、NSO/U、MPC−11、MPC11−X45−GTG 1.7およびS194/5XX0 Bulが含まれ;ラット融合体で使用する細胞株の例には、R210.RCY3、Y3−Ag 1.2.3、IR983Fおよび4B210が含まれる。細胞融合に有用な他の細胞株は、U−266、GM1500−GRG2、LICR−LON−HMy2およびUC729−6である。
1つの態様において、動物(例えばヒト免疫グロブリン配列を有するトランスジェニック動物)をIGF−1R免疫原で免疫し;免疫動物から脾臓細胞を採取し;採取した脾臓細胞を骨髄腫細胞株と融合させ、それによってハイブリドーマ細胞を生成し;ハイブリドーマ細胞からハイブリドーマ細胞株を樹立し、そしてIGF−1Rポリペプチドに結合する抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定することによって、ハイブリドーマ細胞株を産生する。こうしたハイブリドーマ細胞株、およびこれらに産生される抗IGF−1Rモノクローナル抗体が、本発明に含まれる。
当該技術分野に知られるいかなる技術を用いて、ハイブリドーマ細胞株に分泌されるモノクローナル抗体を精製してもよい。ハイブリドーマまたはmAbをさらにスクリーニングして、IGF−1および/またはIGF−2が誘導する活性を遮断する能力などの、特定の特性を持つmAbを同定してもよい。こうしたスクリーニングの例を以下の実施例に提供する。
抗体結合性部位の中央の相補性決定領域(CDR)の分子進化もまた、増加したアフィニティを持つ抗体、例えばSchierら, 1996, J. Mol. Biol. 263:551に記載されるように、c−erbB−2に対して増加したアフィニティを有する抗体を単離するのに用いられてきている。したがって、こうした技術は、IGF−1Rに対する抗体を調製する際に有用である。
IGF−1Rに対して向けられる抗原結合性タンパク質は、例えばin vitroまたはin vivoのいずれかで、IGF−1Rポリペプチドの存在を検出するアッセイにおいて使用可能である。抗原結合性タンパク質はまた、免疫アフィニティクロマトグラフィーによってIGF−1Rタンパク質を精製する際にも使用可能である。さらにIGF−1RへのIGF−1および/またはIGF−2の結合を遮断可能な抗原結合性タンパク質を用いて、こうした結合から生じる生物学的活性を阻害してもよい。遮断性抗原結合性タンパク質は、本発明の方法において使用可能である。IGF−1および/またはIGF−2アンタゴニストとして機能するこうした抗原結合性タンパク質は、限定されるわけではないが、癌を含む、IGF−1および/またはIGF−2が誘導する状態のいずれかを治療する際に使用可能である。1つの態様において、こうした状態を治療する際に、トランスジェニックマウスの免疫を伴う方法によって生成されるヒト抗IGF−1Rモノクローナル抗体を使用する。
抗原結合性タンパク質を、in vitro法で使用するか、またはin vivoで投与して、IGF−1および/またはIGF−2が誘導する生物学的活性を阻害してもよい。このようにして、その例が上に提供される、細胞表面IGF−1RとIGF−1および/またはIGF−2の相互作用によって引き起こされるかまたは悪化させられる(直接または間接的に)障害を、治療してもよい。1つの態様において、本発明は、IGF−1および/またはIGF−2が誘導する生物学的活性を減少させるのに有効な量で、その必要がある哺乳動物に、IGF−1および/またはIGF−2遮断性抗原結合性タンパク質をin vivo投与することを含む療法を提供する。
本発明の抗原結合性タンパク質には、IGF−1の生物学的活性を阻害し、そしてまたIGF−2の生物学的活性も阻害する、部分的ヒトおよび完全ヒト・モノクローナル抗体が含まれる。1つの態様は、ヒトIGF−1Rを発現する細胞へのIGF−1およびIGF−2の結合を少なくとも部分的に遮断する、ヒト・モノクローナル抗体に向けられる。1つの態様において、IGF−1R免疫原でトランスジェニックマウスを免疫することによって、抗体を生成する。別の態様において、免疫原は、ヒトIGF−1Rポリペプチド(例えばIGF−1R細胞外ドメインのすべてまたは一部を含む可溶性断片)である。こうした免疫マウスから得られるハイブリドーマ細胞株であって、IGF−1Rに結合するモノクローナル抗体を分泌する、前記ハイブリドーマ細胞株もまた、本明細書に提供する。
ヒト、部分的ヒト、またはヒト化抗体は、多くの適用、特にヒト被験体への抗体の投与を伴うものに適切であろうが、特定の適用には、他のタイプの抗原結合性タンパク質が適切であろう。本発明の非ヒト抗体は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ロバ、または非ヒト霊長類(サル(例えばカニクイザルまたはアカゲザル)または類人猿(例えばチンパンジー)など)などの抗体産生動物いずれに由来してもよい。本発明の非ヒト抗体を、例えばin vitroおよび細胞培養に基づく適用、あるいは本発明の抗体に対する免疫応答が起こらないか、重要でないか、防止可能であるか、それに関する懸念がないか、またはそれが望ましい、他の適用いずれかにおいて、使用してもよい。1つの態様において、本発明の非ヒト抗体を、非ヒト被験体に投与する。別の態様において、非ヒト抗体は、非ヒト被験体において、免疫応答を誘発しない。別の態様において、非ヒト抗体は、非ヒト被験体と同じ種由来であり、例えば本発明のマウス抗体をマウスに投与する。特定の種由来の抗体を、例えば、その種の動物を所望の免疫原(例えば可溶性IGF−1Rポリペプチド)で免疫するか、またはその種の抗体を生成するための人工的系(例えば特定の種の抗体を生成するための細菌またはファージ・ディスプレイに基づく系)を用いることによって、あるいは例えば抗体の定常領域を他の種由来の定常領域で置換することにより、1つの種由来の抗体を別の種由来の抗体に変換することによって、あるいは他の種由来の抗体の配列により緊密に似るように、抗体の1以上のアミノ酸残基を置換することによって、作製してもよい。1つの態様において、抗体は、2以上の異なる種由来の抗体に由来するアミノ酸配列を含むキメラ抗体である。
いくつかの慣用的技術のいずれによって、抗原結合性タンパク質を調製してもよい。例えば、当該技術分野に知られる技術いずれかを用いて、天然に該タンパク質を発現する細胞から精製してもよいし(例えば抗体を産生するハイブリドーマから抗体を精製してもよい)、または組換え発現系で産生してもよい。例えば、Monoclonal Antibodies, Hybridomas: A New Dimension in Biological Analyses, Kennetら(監修), Plenum Press, ニューヨーク(1980);ならびにAntibodies: A Laboratory Manual, HarlowおよびLand(監修), Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1988)を参照されたい。
当該技術分野に知られるいかなる発現系を用いて、本発明の組換えポリペプチドを作製してもよい。一般的に、所望のポリペプチドをコードするDNAを含む組換え発現ベクターで、宿主細胞を形質転換する。使用可能な宿主細胞の中には、原核生物、酵母またはより高次の真核細胞がある。原核生物には、グラム陰性またはグラム陽性生物、例えば大腸菌またはバチルス(bacilli)が含まれる。より高次の真核細胞には、昆虫細胞および哺乳動物起源の樹立細胞株が含まれる。適切な哺乳動物宿主細胞株の例には、サル腎臓細胞のCOS−7株(ATCC CRL 1651)(Gluzmanら, 1981, Cell 23:175)、L細胞、293細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL 163)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、BHK(ATCC CRL 10)細胞株、およびMcMahanら, 1991, EMBO J. 10:2821に記載されるような、アフリカミドリザル腎臓細胞株CV1(ATCC CCL 70)由来のCV1/EBNA細胞株が含まれる。細菌、真菌、酵母、および哺乳動物細胞宿主で使用するための適切なクローニングおよび発現ベクターが、Pouwelsら(Cloning Vectors: A Laboratory Manual, Elsevier, ニューヨーク, 1985)に記載される。
ポリペプチドの発現を促進する条件下で形質転換細胞を培養し、そして慣用的なタンパク質精製法によってポリペプチドを回収してもよい。1つのこうした精製法には、例えば結合したIGF−1Rのすべてまたは一部(例えば細胞外ドメイン)を有するマトリックス上での、アフィニティクロマトグラフィーの使用が含まれる。本明細書において使用が意図されるポリペプチドには、混入する内因性物質を実質的に含まない、実質的に均質な組換え哺乳動物抗IGF−1R抗体ポリペプチドが含まれる。
いくつかの既知の技術のいずれによって、抗原結合性タンパク質を調製し、そして所望の特性に関してスクリーニングしてもよい。特定の技術は、目的の抗原結合性タンパク質(例えば抗IGF−1R抗体)のポリペプチド鎖(またはその一部)をコードする核酸を単離し、そして組換えDNA技術を通じて核酸を操作することを伴う。核酸を、目的の別の核酸に融合させるか、または改変して(例えば突然変異誘発または他の慣用的技術によって)、例えば、1以上のアミノ酸残基を付加するか、欠失させるか、または置換してもよい。
1つの側面において、本発明は、本発明の抗IGF−1R抗体の抗原結合性断片を提供する。こうした断片は、完全に抗体由来配列からなってもよいし、またはさらなる配列を含んでもよい。抗原結合性断片の例には、Fab、F(ab’)2、一本鎖抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、およびドメイン抗体が含まれる。他の例が、Lunde, 2002, Biochem. Soc. Trans. 30:500−06に提供される。
アミノ酸架橋(短いペプチド・リンカー)を介して、重鎖および軽鎖可変ドメイン(Fv領域)断片を連結して、単一ポリペプチド鎖を生じることによって、一本鎖抗体を形成してもよい。こうした一本鎖Fv(scFv)は、2つの可変ドメイン・ポリペプチド(VLおよびVH)をコードするDNA間に、ペプチド・リンカーをコードするDNAを融合させることによって、調製されてきている。2つの可変ドメイン間の柔軟なリンカーの長さに応じて、生じるポリペプチドは、それ自体、折り畳まれて、抗原結合性単量体を形成することも可能であるし、または多量体(例えば二量体、三量体、または四量体)を形成することも可能である(Korttら, 1997, Prot. Eng. 10:423; Kortt, 2001, Biomol. Eng. 18:95−108)。異なるVLおよびVHを含むポリペプチドを組み合わせることによって、異なるエピトープに結合する多量体scFvを形成することも可能である(Kriangkumら, 2001, Biomol. Eng. 18:31−40)。一本鎖抗体産生のために開発された技術には、米国特許第4,946,778号; Bird, 1988, Science 242:423; Hustonら, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879; Wardら, 1989, Nature 334:544, de Graafら, 2002, Methods Mol Biol. 178:379−87に記載されるものが含まれる。本明細書に提供する抗体由来の一本鎖抗体には、限定されるわけではないが、可変ドメインの組み合わせ、L1H1、L2H2、L3H3、L4H4、L5H5、L6H6、L7H7、L8H8、L9H9、L10H10、L11H11、L12H12、L13H13、L14H14、L15H15、L16H16、L17H17、L18H18、L19H19、L20H20、L21H21、L22H22、L23H23、L24H24、L25H25、L26H26、L27H27、L28H28、L29H29、L30H30、L31H31、L32H32、L33H33、L34H34、L35H35、L36H36、L37H37、L38H38、L39H39、L40H40、L41H41、L42H42、L43H43、L44H44、L45H45、L46H46、L47H47、L48H48、L49H49、L50H50、L51H51、およびL52H52を含むscFvが含まれる。
本発明の抗原結合性タンパク質(例えば抗体、抗体断片、および抗体誘導体)は、当該技術分野に知られる定常領域いずれを含んでもよい。軽鎖定常領域は、例えば、カッパまたはラムダ型軽鎖定常領域、例えばヒト・カッパまたはラムダ型軽鎖定常領域であってもよい。重鎖定常領域は、例えば、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、またはミュー型重鎖定常領域、例えばヒト・アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、またはミュー型重鎖定常領域であってもよい。1つの態様において、軽鎖または重鎖定常領域は、天然存在定常領域の断片、誘導体、変異体、または突然変異タンパク質である。
目的の抗体から、異なるサブクラスまたはアイソタイプの抗体を得るための技術、すなわちサブクラス・スイッチングが知られる。したがって、例えば、IgM抗体からIgG抗体を得ることも可能であり、そして逆も可能である。こうした技術は、所定の抗体(親抗体)の抗原結合特性を所持するが、親抗体のものと異なる抗体アイソタイプまたはサブクラスと関連する生物学的特性もまた示す、新規抗体の調製を可能にする。組換えDNA技術を使用してもよい。特定の抗体ポリペプチドをコードする、クローニングされたDNA、例えば所望のアイソタイプの抗体の定常ドメインをコードするDNAを、こうした方法において使用してもよい。Lanttoら, 2002, Methods Mol. Biol.178:303−16もまた参照されたい。
1つの態様において、本発明の抗原結合性タンパク質は、図13のIgG1重鎖ドメインまたは図13のIgG1重鎖ドメインの断片を含む。別の態様において、本発明の抗原結合性タンパク質は、図13のカッパ軽鎖定常鎖領域または図13のカッパ軽鎖定常鎖領域の断片を含む。別の態様において、本発明の抗原結合性タンパク質は、図13のIgG1重鎖ドメインまたはその断片、および図13のカッパ軽鎖ドメインまたはその断片の両方を含む。
したがって、本発明の抗原結合性タンパク質には、例えば、所望のアイソタイプ(例えばIgA、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgE、およびIgD)を有する、可変ドメインの組み合わせ、L1H1、L2H2、L3H3、L4H4、L5H5、L6H6、L7H7、L8H8、L9H9、L10H10、L11H11、L12H12、L13H13、L14H14、L15H15、L16H16、L17H17、L18H18、L19H19、L20H20、L21H21、L22H22、L23H23、L24H24、L25H25、L26H26、L27H27、L28H28、L29H29、L30H30、L31H31、L32H32、L33H33、L34H34、L35H35、L36H36、L37H37、L38H38、L39H39、L40H40、L41H41、L42H42、L43H43、L44H44、L45H45、L46H46、L47H47、L48H48、L49H49、L50H50、L51H51、およびL52H52を含むもの、ならびにそのFabまたはF(ab’)2断片が含まれる。さらに、IgG4が望ましい場合、本明細書に援用される、Bloomら, 1997, Protein Science 6:407に記載されるようなヒンジ領域中の点突然変異(CPSCP→CPPCP)を導入して、IgG4抗体における不均一性を導きうる、H鎖内ジスルフィド結合を形成する傾向を軽減することが望ましい可能性もまたある。
さらに、異なる特性(すなわち結合する抗原に対する多様なアフィニティ)を有する抗原結合性タンパク質を得るための技術もまた知られる。鎖シャッフリングと呼ばれる1つのこうした技術は、糸状バクテリオファージの表面上に免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子レパートリーをディスプレイすることを伴い、しばしばファージ・ディスプレイと呼ばれる。鎖シャッフリングは、Marksら, 1992, BioTechnology, 10:779に記載されるように、ハプテン2−フェニルオキサゾール−5−オンに対する高アフィニティ抗体を調製するのに用いられてきている。
特定の態様において、本発明の抗原結合性タンパク質は、実施例に記載するように測定した際、IGF−1Rに対して、少なくとも106の結合アフィニティ(Ka)を有する。他の態様において、抗原結合性タンパク質は、少なくとも107、少なくとも108、少なくとも109、または少なくとも1010のKaを示す。
別の態様において、本発明は、IGF−1Rからの低い解離速度を有する抗原結合性タンパク質を提供する。1つの態様において、抗原結合性タンパク質は、1x10−4s−1以下のKoffを有する。別の態様において、Koffは5x10−5s−1以下である。別の態様において、Koffは、L1H1、L2H2、L3H3、L4H4、L5H5、L6H6、L7H7、L8H8、L9H9、L10H10、L11H11、L12H12、L13H13、L14H14、L15H15、L16H16、L17H17、L18H18、L19H19、L20H20、L21H21、L22H22、L23H23、L24H24、L25H25、L26H26、L27H27、L28H28、L29H29、L30H30、L31H31、L32H32、L33H33、L34H34、L35H35、L36H36、L37H37、L38H38、L39H39、L40H40、L41H41、L42H42、L43H43、L44H44、L45H45、L46H46、L47H47、L48H48、L49H49、L50H50、L51H51、およびL52H52からなる組み合わせの群より選択される軽鎖および重鎖の可変ドメインの組み合わせを有する抗体と実質的に同じである。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、L1H1、L2H2、L3H3、L4H4、L5H5、L6H6、L7H7、L8H8、L9H9、L10H10、L11H11、L12H12、L13H13、L14H14、L15H15、L16H16、L17H17、L18H18、L19H19、L20H20、L21H21、L22H22、L23H23、L24H24、L25H25、L26H26、L27H27、L28H28、L29H29、L30H30、L31H31、L32H32、L33H33、L34H34、L35H35、L36H36、L37H37、L38H38、L39H39、L40H40、L41H41、L42H42、L43H43、L44H44、L45H45、L46H46、L47H47、L48H48、L49H49、L50H50、L51H51、およびL52H52からなる組み合わせの群より選択される軽鎖および重鎖の可変ドメイン配列の組み合わせを有する抗体由来の1以上のCDRを含む抗体と実質的に同じKoffで、IGF−1Rに結合する。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、図2〜9に例示するアミノ酸配列の1つを含む抗体と実質的に同じKoffで、IGF−1Rに結合する。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、図2〜9に例示するアミノ酸配列の1つを含む抗体由来の1以上のCDRを含む抗体と実質的に同じKoffで、IGF−1Rに結合する。
別の側面において、本発明は、ヒトIGF−1RのL2ドメインに結合する抗原結合性タンパク質を提供する。当該技術分野に知られるいかなる技術を用いて、L2ドメインに結合する抗原結合性タンパク質を作製してもよい。例えば、全長IGF−1Rポリペプチド(例えば膜に結合した調製物中)、IGF−1Rの可溶性細胞外ドメイン断片(この例を実施例1に提供する)、またはL2ドメインを含むかまたはL2ドメインからなるIGF−1R細胞外ドメインのより小さい断片(この例を実施例10に提供する)を用いて、こうした抗原結合性タンパク質を単離してもよい。当該技術分野に知られるいかなる方法を用いて、こうして単離された抗原結合性タンパク質をスクリーニングして、その結合特異性を決定してもよい(この例を実施例10に提供する)。
別の側面において、本発明は、細胞表面上に発現されたヒトIGF−1Rに結合し、そしてこうして結合した際、細胞表面上のIGF−1Rの量の有意な減少を引き起こすことなく、細胞におけるIGF−1Rシグナル伝達活性を阻害する、抗原結合性タンパク質を提供する。細胞表面上および/または細胞内部のIGF−1Rの量を測定するかまたは概算するためのいかなる方法を用いてもよい。1つの態様において、本発明は、細胞表面上に発現されたヒトIGF−1RのL2ドメインに結合し、そしてこうして結合した際、細胞表面上からのIGF−1Rの内在化速度を有意に増加させることなく、細胞におけるIGF−1Rシグナル伝達活性を阻害する、抗原結合性タンパク質を提供する。他の態様において、IGF−1R発現細胞への抗原結合性タンパク質の結合は、細胞表面IGF−1Rの約75%、50%、40%、30%、20%、15%、10%、5%、1%、または0.1%未満の内在化を引き起こす。別の側面において、IGF−1R発現細胞への抗原結合性タンパク質の結合は、細胞と抗原結合性タンパク質を接触させた数時間以内に、細胞表面IGF−1Rの減少がほとんどまたはまったく検出されないが、細胞を抗原結合性タンパク質に曝露した数日または数週間後、細胞表面IGF−1Rの顕著な減少が検出されるように、細胞表面上のIGF−1Rの量の段階的な減少を引き起こす。
別の側面において、本発明は、in vitroまたはin vivoで(例えばヒト被験体に投与した際)、少なくとも1日の半減期を有する抗原結合性タンパク質を提供する。1つの態様において、抗原結合性タンパク質は、少なくとも3日の半減期を有する。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、4日以上の半減期を有する。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、8日以上の半減期を有する。別の態様において、非誘導体化または非修飾抗原結合性タンパク質に比較した際、抗原結合性タンパク質が、より長い半減期を有するように、抗原結合性タンパク質を誘導体化するかまたは修飾する。別の態様において、抗原結合性タンパク質は、本明細書に援用される、2000年2月24日公開のWO 00/09560に記載されるような、血清半減期を増加させる1以上の突然変異を含有する。
本発明は、多重特異性抗原結合性タンパク質、例えば二重特異性抗原結合性タンパク質、例えば、2つの異なる抗原結合性部位または領域を介して、IGF−1Rの2つの異なるエピトープに、またはIGF−1Rのエピトープおよび別の分子のエピトープに結合する、抗原結合性タンパク質をさらに提供する。さらに、本明細書に開示するような二重特異性抗原結合性タンパク質は、他の刊行物に言及して、本明細書に記載するものを含めて、本明細書に記載する抗体の1つ由来のIGF−1R結合性部位および本明細書に記載する別の抗体由来の第二のIGF−1R結合領域を含むことも可能である。あるいは、二重特異性抗原結合性タンパク質は、本明細書に記載する抗体の1つに由来する抗原結合性部位、および当該技術分野に知られる別のIGF−1R抗体由来、あるいは既知の方法または本明細書に記載する方法によって調製される抗体由来の第二の抗原結合性部位を含んでもよい。
二重特異性抗体を調製する多くの方法が当該技術分野に知られ、そして2001年4月20日出願の米国特許出願09/839,632(本明細書に援用される)に論じられる。こうした方法には、Milsteinら, 1983, Nature 305:537、および他のもの(米国特許第4,474,893号、米国特許第6,106,833号)に記載されるようなハイブリッド−ハイブリドーマの使用、ならびに抗体断片の化学的カップリングの使用(Brennanら, 1985, Science 229:81; Glennieら, 1987, J. Immunol. 139:2367;米国特許第6,010,902号)が含まれる。さらに、例えばロイシンジッパー部分(すなわち、優先的にヘテロ二量体を形成する、FosおよびJunタンパク質由来のもの; Kostelnyら, 1992, J. Immnol. 148:1547)または米国特許第5,582,996号に記載されるような、他の錠前および鍵の相互作用ドメイン構造を用いることによって、組換え手段を介して、二重特異性抗体を産生可能である。さらなる有用な技術には、Korttら、1997、上記;米国特許第5,959,083号;および米国特許第5,807,706号が含まれる。
別の側面において、本発明の抗原結合性タンパク質は、抗体の誘導体を含む。誘導体化抗体は、特定の使用における半減期増加など、抗体に望ましい特性を与える分子または物質いずれかを含んでもよい。誘導体化抗体は、例えば、検出可能(または標識)部分(例えば放射性、比色、抗原性または酵素性分子、検出可能ビーズ(磁気ビーズまたは電子密度が高い(electrodense)(例えば金)ビーズ)、または別の分子に結合する分子(例えばビオチンまたはストレプトアビジン))、療法または診断部分(例えば放射性、細胞傷害性、または薬学的活性部分)、あるいは特定の使用(例えばヒト被験体などの被験体への投与、あるいは他のin vivoまたはin vitro使用)のための抗体の適合性を増加させる分子を含むことも可能である。抗体を誘導体化するのに使用可能な分子の例には、アルブミン(例えばヒト血清アルブミン)およびポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。当該技術分野に周知の技術を用いて、抗体のアルブミン連結およびPEG化誘導体を調製することも可能である。1つの態様において、抗体をトランスサイレチン(TTR)またはTTR変異体にコンジュゲート化するかまたは別の方式で連結させる。TTRまたはTTR変異体を、例えば、デキストラン、ポリ(n−ビニルピロリドン(pyurrolidone))、ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコール・ホモ二量体、酸化ポリプロピレン/酸化エチレン・コポリマー、ポリオキシエチル化ポリオールおよびポリビニルアルコールからなる群より選択される化学薬品で化学的に修飾してもよい。米国特許出願第20030195154号。
別の側面において、本発明は、本発明の抗原結合性タンパク質を用いて、IGF−1Rに結合する分子に関してスクリーニングする方法を提供する。いかなる適切なスクリーニング技術を用いてもよい。1つの態様において、本発明の抗原結合性タンパク質が結合するIGF−1R分子またはその断片を、本発明の抗原結合性タンパク質および別の分子と接触させ、ここで、他の分子が、IGF−1Rへの抗原結合性タンパク質の結合を減少させるならば、該分子はIGF−1Rに結合する。適切な方法いずれか、例えばELISAを用いて、抗原結合性タンパク質の結合を検出してもよい。IGF−1Rへの抗原結合性タンパク質の結合の検出は、上に論じるような、検出可能に標識した抗原結合性タンパク質によって、単純化可能である。別の態様において、IGF−1R結合性分子をさらに分析して、IGF−1R、IGF−1、および/またはIGF−2が仲介するシグナル伝達を該分子が阻害するかどうかを決定する。
核酸
1つの側面において、本発明は、単離核酸分子を提供する。該核酸は、例えば、抗原結合性タンパク質のすべてまたは一部、例えば本発明の抗体の一方または両方の鎖、あるいはその断片、誘導体、突然変異タンパク質、または変異体をコードするポリヌクレオチド、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを同定するか、分析するか、突然変異させるかまたは増幅するための、ハイブリダイゼーション・プローブ、PCRプライマーまたは配列決定プライマーとして使用するのに十分なポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドの発現を阻害するためのアンチセンス核酸、および前述のものの相補配列を含む。核酸はいかなる長さであってもよい。これらは、例えば、長さ5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、750、1,000、1,500、3,000、5,000またはそれより多いヌクレオチドであってもよく、そして/または1以上のさらなる配列、例えば制御配列を含んでもよく、そして/またはより大きい核酸、例えばベクターの一部であってもよい。核酸は、一本鎖または二本鎖であってもよく、そしてRNAおよび/またはDNAヌクレオチド、ならびに人工的変異体(例えばペプチド核酸)を含んでもよい。
抗体ポリペプチド(例えば重鎖または軽鎖、可変ドメインのみ、または全長)をコードする核酸を、IGF−1Rで免疫されているマウスのB細胞から単離してもよい。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの慣用法によって、核酸を単離してもよい。
図1は、図2および3に示す重鎖可変領域および軽鎖可変領域をコードする核酸配列を提供する。当業者は、遺伝暗号の縮重のため、図2〜9のポリペプチド配列各々がまた、多数の他の核酸配列によってもコードされることを認識するであろう。本発明は、本発明の各抗原結合性タンパク質をコードする各縮重ヌクレオチド配列を提供する。
本発明は、特定のハイブリダイゼーション条件下で、他の核酸(例えば図1のヌクレオチド配列を含む核酸)にハイブリダイズする核酸をさらに提供する。核酸をハイブリダイズさせるための方法は当該技術分野に周知である。例えば、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, ニューヨーク(1989), 6.3.1−6.3.6を参照されたい。本明細書に定義するように、中程度にストリンジェントなハイブリダーゼション条件は、5x塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)を含有する前洗浄溶液、約50%ホルムアミド、6xSSCのハイブリダイゼーション緩衝液、および55℃のハイブリダイゼーション温度(または42℃のハイブリダイゼーション温度を伴う、約50%ホルムアミドを含有するものなどの他の同様のハイブリダイゼーション溶液)、ならびに約60℃、0.5xSSC、0.1%SDS中の洗浄条件を使用する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、6xSSC、45℃でハイブリダイズさせ、その後、0.1xSSC、0.2%SDS中、68℃での1以上の洗浄が続く。さらに、当業者は、少なくとも65、70、75、80、85、90、95、98または99%互いに同一であるヌクレオチド配列を含む核酸が、典型的には互いにハイブリダイズしたままであるように、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを増加させるかまたは減少させるように、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件を操作することも可能である。ハイブリダイゼーション条件の選択に影響を及ぼす基本的なパラメータおよび適切な条件を考案するための指針が、例えばSambrook, Fritsch, およびManiatis(1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク州コールドスプリングハーバー, 第9章および第11章;およびCurrent Protocols in Molecular Biology, 1995, Ausubelら監修, John Wiley & Sons, Inc., セクション2.10および6.3−6.4)に示され、そして例えばDNAの長さおよび/または塩基組成に基づいて、一般の当業者が容易に決定可能である。
核酸への突然変異によって変化を導入し、それによってコードされるポリペプチド(例えば抗原結合性タンパク質)のアミノ酸配列の変化を導くことも可能である。当該技術分野に知られるいかなる技術を用いて、突然変異を導入してもよい。1つの態様において、例えば部位特異的突然変異誘発プロトコルを用いて、1以上の特定のアミノ酸残基を変化させる。別の態様において、例えばランダム突然変異誘発プロトコルを用いて、1以上のランダムに選択された残基を変化させる。どのように作製されても、突然変異体ポリペプチドを発現させ、そして所望の特性(例えば、IGF−1Rへの結合、またはIGF−1RへのIGF−1および/またはIGF−2の結合の遮断)に関してスクリーニングしてもよい。
コードするポリペプチドの生物学的活性を有意に改変することなく、核酸に突然変異を導入することも可能である。例えば、非必須アミノ酸残基でのアミノ酸置換を導くヌクレオチド置換を行ってもよい。1つの態様において、図2〜9において2以上の配列で異なる残基であることが示されているアミノ酸残基の1以上の欠失または置換を含むアミノ酸配列をコードするように、図1に提供するヌクレオチド配列、あるいはその所望の断片、変異体、または誘導体を突然変異させる。別の態様において、突然変異誘発は、図2〜9において2以上の配列で異なる残基であることが示されている1以上のアミノ酸残基に隣接してアミノ酸を挿入する。あるいは、コードするポリペプチドの生物学的活性(例えば、IGF−1Rの結合、IGF−1および/またはIGF−2の阻害など)を選択的に変化させる1以上の突然変異を核酸に導入してもよい。例えば、突然変異は、定量的にまたは定性的に、生物学的活性を変化させうる。定量的変化の例には、活性の増加、減少、または排除が含まれる。定性的変化の例には、抗原結合性タンパク質の抗原特異性を変化させることが含まれる。
別の側面において、本発明は、本発明の核酸配列の検出のため、プライマーまたはハイブリダイゼーション・プローブとして使用するのに適した核酸分子を提供する。本発明の核酸分子は、本発明の全長ポリペプチドをコードする核酸配列の一部のみを含んでもよく、例えば本発明のポリペプチドの活性部分(例えばIGF−1R結合性部分)をコードするプローブまたはプライマーまたは断片として使用可能な断片を含んでもよい。
本発明の核酸の配列に基づくプローブを用いて、核酸または類似の核酸、例えば本発明のポリペプチドをコードする転写物を検出してもよい。プローブは、標識基、例えば放射性同位体、蛍光化合物、酵素、または酵素補因子を含んでもよい。こうしたプローブを用いて、ポリペプチドを発現する細胞を同定してもよい。
別の側面において、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする核酸またはその一部を含むベクターを提供する。ベクターの例には、限定されるわけではないが、プラスミド、ウイルスベクター、非エピソーム哺乳動物ベクターおよび発現ベクター、例えば組換え発現ベクターが含まれる。
本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞における核酸の発現に適した型で、本発明の核酸を含むことも可能である。組換え発現ベクターには、発現に用いようとする宿主細胞に基づいて選択される、発現させようとする核酸配列に機能可能であるように連結された、1以上の制御配列が含まれる。制御配列には、宿主細胞の多くのタイプにおいて、ヌクレオチド配列の恒常的発現を導くもの(例えばSV40初期遺伝子エンハンサー、ラウス肉腫ウイルスプロモーターおよびサイトメガロウイルスプロモーター)、特定の宿主細胞においてのみ、ヌクレオチド配列の発現を導くもの(例えば組織特異的制御配列、その全体が本明細書に援用される、Vossら, 1986, Trends Biochem. Sci. 11:287, Maniatisら, 1987, Science 236:1237を参照されたい)、および特定の処理または条件に応答して、ヌクレオチド配列の誘導性発現を導くもの(例えば、哺乳動物細胞におけるメタロチオネインプロモーター、ならびに原核系および真核系の両方における、tet応答性および/またはストレプトマイシン応答性プロモーター(同文献を参照されたい))が含まれる。当業者は、発現ベクターの設計は、形質転換しようとする宿主細胞の選択、タンパク質の所望の発現レベル等の要因に応じうることを認識するであろう。本発明の発現ベクターを宿主細胞内に導入して、それによって本明細書に記載するような核酸にコードされる、融合タンパク質またはペプチドを含む、タンパク質またはペプチドを産生してもよい。
別の側面において、本発明は、本発明の組換え発現ベクターが導入されている宿主細胞を提供する。宿主細胞は、いかなる原核細胞(例えば大腸菌)または真核細胞(例えば、酵母、昆虫、または哺乳動物細胞(例えばCHO細胞))であってもよい。慣用的な形質転換またはトランスフェクション技術を介して、原核または真核細胞にベクターDNAを導入してもよい。哺乳動物細胞の安定トランスフェクションのため、用いる発現ベクターおよびトランスフェクション技術に応じて、少ない割合の細胞のみが、ゲノム内に外来(foreign)DNAを組み込みうることが知られる。これらの組込み体を同定し、そして選択するため、選択可能マーカー(例えば抗生物質に対する耐性に関するもの)をコードする遺伝子を、一般的に、目的の遺伝子とともに、宿主細胞に導入する。好ましい選択可能マーカーには、G418、ハイグロマイシンおよびメトトレキセートなどの薬剤に対する耐性を与えるものが含まれる。導入された核酸で安定にトランスフェクションされた細胞を、他の方法の中でも、薬剤選択によって、同定してもよい(例えば選択可能マーカー遺伝子を取り込んだ細胞は生き残り、一方、他の細胞は死ぬであろう)。
適応症
1つの側面において、本発明は被験体を治療する方法を提供する。該方法は、例えば、被験体に対して、一般的に健康によい効果を有することも可能であり、例えば被験体の予期される寿命を増加させることも可能である。あるいは、該方法は、例えば、疾患、障害、状態、または疾病(「状態」)を治療するか、予防するか、治癒させるか、軽減するか、または改善する(「治療する」)ことも可能である。本発明にしたがって治療すべき状態の中には、IGF−1、IGF−2、および/またはIGF−1Rの不適切な発現または活性によって特徴付けられる状態がある。いくつかのこうした状態においては、発現または活性レベルがあまりにも高く、そして治療は、本明細書に記載するようなIGF−1Rアンタゴニストを投与することを含む。他のこうした状態においては、発現または活性レベルがあまりにも低く、そして治療は、本明細書に記載するようなIGF−1Rアゴニストを投与することを含む。
本発明の方法および組成物を用いて治療可能な状態のタイプの一例は、細胞増殖を伴う状態、例えば癌性状態である。したがって、1つの態様において、本発明は、癌性状態を治療するための組成物および方法を提供する。癌性状態は、本明細書に含まれる組成物、例えば抗IGF−1R抗体、抗体断片、または抗体誘導体などの、IGF−1Rをアンタゴナイズする抗原結合性タンパク質を用いて治療可能ないかなる癌性状態であってもよい。癌性状態の例には、例えば、急性リンパ芽球性白血病、副腎皮質癌腫、AIDSに関連する癌、AIDSに関連するリンパ腫、肛門癌、小児期小脳星状細胞腫、小児期大脳星状細胞腫、基底細胞癌腫、肝外胆管癌、膀胱癌、骨肉腫/悪性線維性組織球腫、骨癌、脳腫瘍(例えば脳幹神経膠腫、小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視覚路および視床下部神経膠腫)、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、胃腸カルチノイド腫瘍、原発部位不明の癌、原発性中枢神経系、小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、子宮頸癌、小児期癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚性T細胞リンパ腫、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、ユーイング腫瘍ファミリー、頭蓋外生殖細胞腫瘍、性腺外生殖細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼内黒色腫の目の癌、網膜芽細胞腫の目の癌、胆嚢癌、胃癌、胃腸カルチノイド腫瘍、生殖細胞腫瘍(例えば頭蓋外、性腺外、および卵巣)、妊娠性トロホブラスト腫瘍、神経膠腫(例えば成人、小児期脳幹、小児期大脳星状細胞腫、小児期視覚路および視床下部)、毛様細胞白血病、頭部および頸部癌、肝細胞(肝)癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、視床下部および視覚路神経膠腫、眼内黒色腫、島細胞癌腫(内分泌膵臓)、カポジ肉腫、腎(腎細胞)癌、咽頭癌、白血病(例えば急性リンパ芽球性、急性骨髄性、慢性リンパ球性、慢性骨髄性、および毛様細胞)、***および口腔癌、肝癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、リンパ腫(例えばAIDS関連、バーキット、皮膚性T細胞、ホジキン、非ホジキン、および原発性中枢神経系)、ワルデンストロムのマクログロブリン血症、骨の悪性線維性組織球腫/骨肉腫、髄芽腫、黒色腫、眼内(目)黒色腫、メルケル細胞癌腫、中皮腫、原発部位不明の転移性扁平頸部癌、多発性内分泌新生物症候群、多発性骨髄腫/形質細胞新生物、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、慢性骨髄増殖性障害、鼻腔および副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔癌、口腔咽頭癌、骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫、卵巣癌、卵巣上皮癌、卵巣生殖細胞腫瘍、卵巣低悪性潜在的腫瘍、膵臓癌、島細胞膵臓癌、副鼻腔および鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、クロム親和性細胞腫、松果体芽腫、下垂体腫瘍、形質細胞新生物/多発性骨髄腫、肺胸膜芽腫、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺癌、結腸癌、腎細胞(腎臓)癌、腎盂および尿管移行上皮癌、網膜芽腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、軟組織肉腫、子宮肉腫、セザリー症候群、非黒色腫皮膚癌、メルケル細胞皮膚癌、小腸癌、軟組織肉腫、扁平細胞癌腫、皮膚性T細胞リンパ腫、精巣癌、胸腺腫、胸腺癌腫、甲状腺癌、妊娠性トロホブラスト腫瘍、原発部位不明の癌腫、原発部位不明の癌、尿道癌、子宮内膜性子宮癌、子宮肉腫、膣癌、視覚路および視床下部神経膠腫、外陰癌、ワルデンストロムのマクログロブリン血症、およびウィルムス腫瘍が含まれる。
4つの異なるグループが、大部分は起源が管性である総数425の乳癌、および48の正常組織または良性標本を、ラジオイムノアッセイ(「RIA」)または免疫組織化学(「IHC」)によって研究してきている(Papaら, 1993, Cancer Research 53: 3736−40, Happerfieldら, 1997, Journal of Pathology 183: 412−17; Ellisら, 1998, Breast Cancer Research & Treatment 52: 175−84, Leeら, 1998, Breast Cancer Research & Treatment 47: 295−302, Schnarrら, 2000, International Journal of Cancer 89: 506−13)。これらの研究によって、約5倍〜10倍上昇したIGF−1R発現は、好ましい予後およびバイオマーカー(ER+PR+)と関連することが示唆され、エストロゲンおよびIGFが、よく分化した腫瘍の維持または進行において協力することが示唆される。同様に、エストロゲンは、ER+MCF−7乳癌細胞株の増殖および生存に必須であることが示されてきており、そしてこの関連において、IGF−1Rは、エストロゲン処理によって上方制御される(Ellisら, 1998, Breast Cancer Research & Treatment 52: 175−84に概説される)。したがって、1つの態様において、本発明は、乳癌の治療が必要な被験体において乳癌を治療する方法であって、本明細書に記載するようなIGF−1Rアンタゴニストの有効量を被験体に投与することを含む、前記方法を提供する。別の態様において、該方法は、ホルモン阻害剤、例えばエストロゲン阻害剤を投与することをさらに含む。
12の結腸腺腫、36の原発性結腸直腸腺癌、および27の対応する転移、ならびに34の隣接する正常組織のコレクションに関する、後向きIGF−1R IHC分析が報告されてきている(Hakamら, 1999, Human Pathology. 30: 1128−33)。中程度から強いIHC染色の頻度は、ステージおよび腫瘍等級がより高くなるとともに、劇的に増加するようであった(0%正常対93%転移)。結果は、RNアーゼ保護アッセイ(「RPA」)によるRNA分析と一致する(Freierら, 1999, Gut 44: 704−08)。したがって、1つの態様において、本発明は、こうした治療が必要な被験体において、結腸癌を治療する方法であって、被験体に本明細書記載のIGF−1Rアンタゴニストの有効量を投与することを含む、前記方法を提供する。
40〜80歳の男性における高血漿IGF−1および減少したIGFbp3は、前立腺癌リスクの増加と関連する(Chanら, 1998, Science 279: 563−6)。高IGF−1は、乳癌(Hankinsonら, 1998, Lancet 351: 1393−96)、結腸癌(Maら, 1999, Journal of the National Cancer Institute 91: 620−25)および肺癌(Yuら, 1999, Journal of the National Cancer Institute 91: 151−56)を含む、他の癌のリスクと関連する。トランスジェニックマウスモデルにおいて、腫瘍発生率は、多様な位置でのIGF−1過剰発現によって増加する(Bolら, 1997, Oncogene 14: 1725−34; DiGiovanniら, 2000, Cancer Research 60: 1561−70; DiGiovanniら, 2000, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 97: 3455−60, Hadsellら, 2000, Oncogene 19: 889−98)。これらのマウス研究は、血清および間質で産生されるIGF−1両方の役割に注意を向ける。したがって、1つの態様において、本発明は、こうした治療が必要な被験体を治療する方法であって、本明細書に記載するようなIGF−1Rのアンタゴニストの有効量を被験体に投与することを含み、該アンタゴニストがIGF−1によるIGF−1Rの活性化を阻害する、前記方法を提供する。別の態様において、被験体は癌を有する。別の態様において、被験体は腫瘍を有する。別の態様において、癌は前立腺癌、乳癌、結腸癌または肺癌である。
骨が体におけるIGF−1の主な供給源であることが観察されてきている。したがって、1つの側面において、本発明は、被験体の骨におけるIGF−1Rを阻害するための組成物および方法を提供する。1つの態様において、本発明のIGF−1R阻害剤を、骨における腫瘍を有するか、またはこうした腫瘍を発展させるリスクがある被験体に投与する。腫瘍は、例えば原発性腫瘍または転移性腫瘍であることも可能である。治療は、所望によって、被験体に1以上のさらなる療法および/または苦痛緩和治療、例えば抗腫瘍治療(例えば化学療法、放射線療法、または抗ホルモン療法)または骨代謝回転を阻害する治療(例えばデノスマブ(Amgen Inc.、カリフォルニア州サウザンドオークス))を施すことをさらに含む。
IGF−2は、多様な腫瘍および間質組織で過剰発現される。IGF−2レベルは、原発性肝臓癌(Carianiら, 1988, Cancer Research 48: 6844−49)および結腸の腺癌(Freierら, 1999, Gut 44: 704−08)で特に高い(最大40倍)ようである。過成長障害の多くは小児期腫瘍発生率の増加と関連する。出生前の成長障害、ベックウィズ−ウェイドマン症候群(BWS)または半過形成(hemihyperplasia)のいずれかの個体の5〜10パーセントが、腫瘍、例えば腎芽細胞腫、副腎癌腫、および神経芽細胞腫を発展させる(Morisonら, 1998, Molecular Medicine Today 4: 110−05に概説される)。これらの小児における腫瘍誘発因子は、母性IGF−2遺伝子インプリンティングのモザイク喪失(mosaic loss)、またはIGF−2を所持する父性染色体アーム(11p)の重複であるようである。どちらの改変も、IGF−2発現レベルを増加させるであろう。モザイク片親性ダイソミーまたはIGF−2インプリンティングの喪失の結果としてのIGF−2過剰発現はまた、ウィルムス腫瘍でも検出されてきている。IGF−2遺伝子改変がまた、いくつかの正常組織でも起こっているものの、これらの小児では、成長障害は観察されず、これはおそらく、罹患細胞の組織分布を反映する。母性IGF−2遺伝子のインプリンティングはまた、マウスでも起こり、そしてIGF−2過剰発現の影響は、ヒトの状況と一致している(Carianiら, 1991, Journal of Hepatology 13: 220−26, Schirmacherら, 1992, Cancer Research 52: 2549−56; Harrisら, 1998, Oncogene 16: 203−09)。腫瘍および臓器肥大の発生率は、過剰なIGF−2をトランスジェニック的に発現するマウスで増加する(Christoforiら, 1994, Nature 369: 414−18, Wardら, 1994, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 91: 10365−9, Wolfら, 1994, Endocrinology 135: 1877−86, Batesら, 1995, British Journal of Cancer 72: 1189−93, Hassanら, 2000, Cancer Research 60: 1070−76)。局所IGF−2過剰発現は、前立腺腫瘍、乳腺腫瘍、腸腫瘍、肝臓腫瘍および上皮腫瘍の自発的な出現を増加させる。肝臓プロモーターを用いた血漿特異的発現は、肝細胞癌腫およびリンパ腫を上昇させる。したがって、1つの態様において、本発明は、こうした治療が必要な被験体を治療する方法であって、本明細書記載のIGF−1Rのアンタゴニストの有効量を被験体に投与することを含み、該アンタゴニストがIGF−2によるIGF−1Rの活性化を阻害する、前記方法を提供する。別の態様において、被験体は癌を有する。別の態様において、被験体は腫瘍を有する。別の態様において、被験体は、肝癌、結腸の腺癌、ベックウィズ−ウェイドマン症候群、半過形成、腎芽細胞腫、副腎癌腫、神経芽細胞腫、母性IGF−2遺伝子インプリンティングのモザイク喪失、父性染色体アーム(11p)の重複、IGF−2発現増加、腫瘍(例えば前立腺腫瘍、乳腺腫瘍、腸腫瘍、肝臓腫瘍、上皮腫瘍、またはウィルムス腫瘍)、臓器肥大、肝細胞癌腫、またはリンパ腫を有する。
別の側面において、本発明は、体の別の部分に癌が広がるのを予防するかまたは阻害する方法、あるいは体の別の部分に広がった癌を治療する方法を提供する。1つの態様において、癌は、局所リンパ節に広がっている。別の態様において、癌は、転移性である。原発性腫瘍は、いかなる種類の腫瘍であってもよく、例えば腺癌腫瘍(例えば、前立腺腺癌腫瘍、乳癌腫瘍、または腎細胞癌腫瘍)、非小細胞または小細胞肺癌腫瘍、甲状腺癌腫瘍などである。転移性腫瘍の部位は、体のどこであってもよい。例えば、骨、リンパ系、肺、脳、目、皮膚、膵臓、または肝臓中であってもよい。1つの特定の態様において、原発性腫瘍が転移するのが防止されるように、本発明のIGF−1R阻害性組成物の有効量で、腫瘍疾患を有する被験体を治療する。別の特定の態様において、原発性腫瘍が転移するのが阻害されるように、本発明のIGF−1R阻害性組成物の有効量で、原発性腫瘍を有する被験体を治療する。別の特定の態様において、続発性腫瘍の増殖または伝播が阻害されるように、本発明のIGF−1R阻害性組成物の有効量で、転移性腫瘍を有する被験体を治療する。別の特定の態様において、続発性腫瘍のサイズが減少するように、本発明のIGF−1R阻害性組成物の有効量で、転移性腫瘍を有する被験体を治療する。より特定の態様において、原発性腫瘍は、腺癌腫瘍、非小細胞肺腫瘍、小細胞肺腫瘍、または甲状腺癌である。別のより特定の態様において、転移性腫瘍は骨における。別のより特定の態様において、転移性腫瘍は骨中での形成を予防されるかまたは阻害される。別のより特定の定義される態様において、方法は、被験体を、本発明のIGF−1R阻害性組成物および1以上の他の治療(例えば癌細胞を殺すかまたはその増殖を阻害する治療、例えば放射線照射、ホルモン療法、または化学療法、あるいは骨の代謝回転を阻害する治療、例えばデノスマブ)で治療することを含み、その限定されない例を本明細書に提供する。1以上の他の治療には、例えば被験体の特定の状態に関する標準的ケアおよび/または苦痛緩和ケアが含まれてもよい。
いかなる特定の理論にも束縛されず、腫瘍細胞は、化学療法剤、放射線照射、および抗ホルモン療法のアポトーシス誘導活性に抵抗するため、PI3キナーゼ/Aktシグナル伝達経路に依存するようである。したがって、1つの態様において、本発明は、こうした治療が必要な被験体を治療する方法であって、本発明のIGF−1Rアンタゴニスト、ならびに化学療法剤、放射線照射、および/または抗ホルモン療法を被験体に施すことを含む、前記方法を提供する。この概念は、アンチセンスおよび優性ネガティブ突然変異による、細胞培養モデルおよびげっ歯類腫瘍モデルにおいて、実験的に認証されてきている(Basergaら, 1997, Biochimica et Biophysica Acta 1332: F105−26, Baserga, 2000, Oncogene 19: 5574−81に概説される)。1つの態様において、化学療法剤は、有糸***阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、挿入性抗生物質、増殖因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、抗生存剤、生物学的応答修飾剤、抗ホルモン、例えば抗アンドロゲン、および抗血管形成剤からなる群より選択される。
本発明のIGF−1受容体阻害剤と組み合わせて投与可能な化学療法剤の一例は、CPT−11である。CPT−11(イリノテカン塩酸三水和物)は、植物アルカロイドであるカンプトテシンの半合成の水溶性誘導体である。CPT−11、およびSN38と称される関連代謝産物は、トポイソメラーゼ1(TOPO1)を阻害する。この酵素は、DNA中に可逆性一本鎖切断を導入し、巻き戻しを可能にし、そしてDNA複製を進行させる。TOPO1の阻害は、DNA複製後の一本鎖切断の再連結を防止し、染色体断片化の多大な増加を生じる。このDNA損傷は、p53、およびゲノム完全性を監視する他の系の作用を通じたアポトーシスによる細胞死を促進する。CPT−11の細胞傷害効果は、一般的に、DNA複製中(S期)の細胞に限定される。静止細胞は、大部分、影響を受けない。
別の態様において、本発明は、本発明のIGF−1Rアンタゴニストの有効量で、そしてアポトーシス誘導剤の有効量で、その必要がある被験体を治療することを提供する。
別の態様において、本発明の化合物と組み合わせて、MMP−2(マトリックス−メタロプロテイナーゼ2)阻害剤、MMP−9(マトリックス−メタロプロテイナーゼ9)阻害剤、および/またはCOX−II(シクロオキシゲナーゼII)阻害剤などの抗血管形成剤を用いる。有用なCOX−II阻害剤の例には、CELEBREXTM(アレコキシブ)、BEXTRATM(バルデコキシブ)、およびVIOXXTM(ロフェコキシブ)が含まれる。有用なマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤の例は、すべてその全体が本明細書に援用される、WO 96/33172(1996年10月24日公開)、WO 96/27583(1996年3月7日公開)、欧州特許出願第97304971.1号(1997年7月8日出願)、欧州特許出願第99308617.2号(1999年10月29日出願)、WO 98/07697(1998年2月26日公開)、WO 98/03516(1998年1月29日公開)、WO 98/34918(1998年8月13日公開)、WO 98/34915(1998年8月13日公開)、WO 98/33768(1998年8月6日公開)、WO 98/30566(1998年7月16日公開)、欧州特許公報606,046(1994年7月13日公開)、欧州特許公報931,788(1999年7月28日公開)、WO 90/05719(1990年5月31日公開)、WO 99/52910(1999年10月21日公開)、WO 99/52889(1999年10月21日公開)、WO 99/29667(1999年6月17日公開)、PCT国際出願第PCT/IB98/01113号(1998年7月21日出願)、欧州特許出願第99302232.1号(1999年3月25日出願)、英国特許出願第9912961.1号(1999年6月3日出願)、米国仮出願第60/148,464号(1999年8月12日出願)、米国特許第5,863,949号(1999年1月26日発行)、米国特許出願第5,861,510号(1999年1月19日発行)、および欧州特許公報780,386(1997年6月25日公開)に記載される。1つの態様において、MMP阻害剤は、関節痛を示さないものである。別の態様において、MMP阻害剤は、他のマトリックスメタロプロテイナーゼ(すなわちMMP−1、MMP−3、MMP−4、MMP−5、MMP−6、MMP−7、MMP−8、MMP−10、MMP−11、MMP−12、およびMMP−13)に比較して、MMP−2および/またはMMP−9を選択的に阻害する。本発明で有用なMMP阻害剤のいくつかの特定の例は、AG−3340、RO 32−3555、RS 13−0830、および以下のリストに列挙される化合物:3−[[4−(4−フルオロ−フェノキシ)−ベンゼン−スルホニル]−(1−ヒドロキシカルバモイル−シクロペンチル)−アミノ]−プロピオン酸;3−エキソ−3−[4−(4−フルオロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニルアミノ]−8−オキサ−ビシクロ[3.2.1]オ−クタン−3−カルボン酸ヒドロキシアミド;(2R,3R)1−[4−(2−クロロ−4−フルオロ−ベン−ジルオキシ)−ベンゼンスルホニル]−3−ヒドロキシ−3−メチル−ピペリジン−2−カルボン酸ヒドロキシアミド;4−[4−(4−フルオロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニルアミノ]−テトラヒドロ−ピ−ラン−4−カルボン酸ヒドロキシアミド;3−[[4−(4−フルオロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホン−イル]−(1−ヒドロキシカルバモイル−シクロブチル)−アミノ]−プロピオン酸;4−[4−(4−クロロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニルアミノ]−テトラヒドロ−ピラン−4−カルボン酸ヒドロキシアミド;(R)3−[4−(4−クロロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニルアミノ]−テ−トラヒドロ−ピラン−3−カルボン酸ヒドロキシアミド;(2R,3R)1−[4−(4−フルオロ−2−メチル−ベンジルオキシ)−ベンゼンスルホニル]−3−ヒドロキシ−3−メチル−ピ−ペリジン−2−カルボン酸ヒドロキシアミド;3−[[4−(4−フルオロ−フェノキシ)−ベンゼン−スルホニル]−(1−ヒドロキシカルバモイル−1−メチル−エチル)−アミノ]−プロピオン酸;3−[[4−(4−フルオロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニル]−(4−ヒドロキシカルバモイル−テトラヒドロ−−ピラン−4−イル)−アミノ]−プロピオン酸;3−エキソ−3−[4−(4−クロロ−フェノキシ)−ベンゼンス−ルホニルアミノ]−8−オキサ−イシクロ[3.2.1]オクタン−3−カルボン酸ヒドロキシアミド;3−エンド−3−[4−(4−フルオロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニルアミノ]−8−オキサ−イシクロ[3.2.1]オクタン−3−カルボン酸ヒドロキシアミド;および(R)3−[4−(4−フルオロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニルアミノ]−テトラヒドロ−フラン−3−カルボン酸ヒドロキシアミド;ならびに該化合物の薬学的に許容しうる塩、溶媒和化合物、誘導体、および他の調製物である。
PTEN遺伝子産物を不活性化する散発性突然変異が、大部分のヒト癌において、比較的頻繁に起こる(Yamadaら, 2001, J Cell Sci 114:2375−82, Hillら, 2002, Pharmacol Therapeut 93:243−51)。PTENの喪失は、Aktリン酸化状態が、IGF−1Rおよび他の供給源から生じる刺激性シグナルを下方制御する能力の喪失を通じて持続するようにする。p53腫瘍抑制因子の状態もまた、IGF−1Rシグナル伝達系の活性に影響を及ぼす。基底状態において、IGF−1Rの基底または恒常性転写は、間接的な機構を介して、p53によって抑制される。Aktの活性化は、mdm2のリン酸化を促進し、mdm2は次いで、p53腫瘍抑制因子に結合し、そしてその分解を促進し(Mayoら, 2002, TIBS 27:462−67)、IGF−1R発現増加を生じる。突然変異によってp53が不活性化された際に、類似の結果が観察される。Saos−2(ヒト骨肉腫細胞株)およびRD(横紋筋肉腫細胞株)で一過性に発現された際、野生型p53は、同時にトランスフェクションされたIGF−1Rプロモーター構築物の活性を抑制することが可能であり、一方、腫瘍に由来するp53の突然変異体型は効果を持たない。増加したレベルのIGF−1Rが、悪性細胞において、p53喪失と関連するアポトーシスに対する耐性を促進すると提唱されてきている(Wernerら, 2000, Cell Mol Life Sci 57:932−42)。したがって、1つの態様において、本発明は、こうした治療が必要な被験体において、癌性状態を治療する方法であって、本明細書に記載するようなIGF−1Rアンタゴニストの有効量を被験体に投与することを含み、癌性状態がp53の発現または活性減少を有する細胞によって特徴付けられる、前記方法を提供する。
WT1(ウィルムス腎臓腫瘍抑制因子1タンパク質)もまた、IGF−1Rプロモーターに結合しそしてこれを抑制することが示されてきている。したがって、1つの態様において、本発明は、こうした治療が必要な被験体において、癌性状態を治療する方法であって、本明細書記載のIGF−1Rアンタゴニストの有効量を被験体に投与することを含み、癌性状態がWT1の発現または活性減少によって特徴付けられる、前記方法を提供する。
正常線維芽細胞の増殖は、定義される培養条件下で、Ras/Raf/Mapキナーゼを増加させ、そして細胞周期進入(G0からG1遷移)を促進するために、IGFおよび間質増殖因子(例えばPDGF、EGF)の組み合わされた作用を必要とすることが示されてきている。IGF−1R(−/−)マウス由来の線維芽細胞は、増殖因子のみ、またはRas/Raf/Mapキナーゼ経路を活性化する大部分のオンコジーン(例えばオンコジーン性Ras)には応答しない。したがって、1つの態様において、本発明は、こうした治療が必要な被験体を治療する方法であって、本明細書記載のIGF−1Rアンタゴニスト、ならびに増殖因子および/または増殖因子受容体、例えば増殖因子受容体チロシンキナーゼ、例えばEGFR、HER−2、bcr−abl、VEGFR、Kit、raf、mTOR、CDK1/2、VEGFR2、PKCβ、Mek、および/またはKDRをターゲットとする剤を被験体に投与することを含む、前記方法を提供する。こうした増殖因子および/または受容体をターゲットとする分子の例には、パニツムマブ(Abgenix、カリフォルニア州フレモント/Amgen、カリフォルニア州サウザンドオークス)、HERCEPTINTM(Genentech、カリフォルニア州サウスサンフランシスコ)、GLEEVECTM(Novartis、ニュージャージー州イーストハノーバー)、IRESSATM(AstraZeneca、デラウェア州ウィルミントン)、ERBITUXTM(ImClone、ニューヨーク州ニューヨーク)、AVASTINTM(Genentech)、PTK787(Novartis)、SU11248(Pfizer、ニューヨーク州ニューヨーク)、TARCEVATM(OSI Pharmaceuticals、ニューヨーク州メルビル)、43−9006(Bayer、コネチカット州ウェストへブン)、CCI−779(Wyeth、ニュージャージー州マディソン)、RAD001(Novartis)、BMS−387032(Bristol−Myers Squibb、ニューヨーク州ニューヨーク)、IMC−1C11(ImClone)、LY333531、(Eli Lilly、インディアナ州インディアナポリス)、PD 184352(Pfizer)、2C4(Genentech)、およびGW2016(GlaxoSmithKline、ノースカロライナ州リサーチトライアングルパーク)が含まれる。
血液学的悪性腫瘍におけるIGF−1Rの役割が、(Novakら, 2003, “Insulin−Like Growth Factors and Hematological Malignancies,” Insulin−Like Growth Factors中, LeRoithら監修, Landes Bioscience)に概説されてきている。造血悪性腫瘍におけるIGF−1Rの機能的役割は、例えば、IGF−1Rモノクローナル抗体が、培養において、形質転換細胞増殖を遮断する能力によって、立証されている。IGF−1は、新鮮に単離されたヒト急性骨髄性白血病および急性リンパ芽球性白血病芽球の増殖を増進することが見出されている。T細胞悪性腫瘍に関しては、IGF−1は、プレT細胞表現型を所持するネズミ・リンパ腫細胞の増殖に影響を及ぼすことが示されてきており、そして未成熟および成熟初代ヒトT細胞系譜急性リンパ芽球性白血病細胞が、多数のIGF−1Rを発現することが見出された。したがって、1つの態様において、本発明は、その必要がある被験体において、血液学的悪性腫瘍を治療する方法であって、本明細書に記載するようなIGF−1Rのアゴニストを被験体に投与することを含む、前記方法を提供する。別の態様において、悪性腫瘍は、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、またはT細胞悪性腫瘍である。
別の側面において、本発明は、本発明の組成物および/または治療法を用いた治療から利益を得る可能性がより高い被験体を同定する方法を提供する。こうした方法は、治療者が、療法措置を特定の被験体の必要性によりよく合わせて、そして治療の無効なまたは非生産的な経過の可能性を減少させることを可能にする。1つの態様において、本発明は、被験体が、本明細書記載の組成物または方法を用いた治療の候補であるかどうかを決定する方法であって、被験体において、ターゲット細胞種がIGF−1Rを発現するかどうかを決定することを含み、ターゲット細胞種がIGF−1Rを発現するならば、被験体が治療の候補である、前記方法を提供する。別の態様において、該方法は、ターゲット細胞あたりのIGF−1R分子のおよその平均数を決定することを含み、細胞あたり、102、103、104、105、または106のIGF−1Rは、被験体が治療の候補であることの指標となる。当該技術分野に知られる技術いずれかを用いて、例えばIGF−1R結合性分子で、ターゲット細胞種の細胞を含む試料を染色し、そして試料に結合したIGF−1R結合性分子の量を検出し、ここで検出されるIGF−1R結合性分子の量が、試料中のIGF−1R分子の平均数に比例することによって、ターゲット細胞あたりのIGF−1R分子のおよその平均数を決定してもよい。別の態様において、方法は、ターゲット細胞あたりのIGF−1R分子のおよその平均数を参照標準に比較することを含み、ここでターゲット細胞あたりのIGF−1R分子のおよその平均数が参照標準より多いならば、被験体は、本発明の組成物および/または治療法を用いた治療から利益を受ける可能性がより高い。別の態様において、ターゲット細胞種は、癌性細胞種である。別の態様において、ターゲット細胞種は、結腸癌細胞種、乳癌細胞種、NSCLC細胞種、または白血病細胞種である。
別の態様において、ターゲット細胞種において、またはターゲット細胞種の層において、IGF−1および/またはIGF−2を検出することによって、治療の候補である被験体を同定する。別の態様において、ターゲット細胞種は、癌性細胞種である。別の態様において、ターゲット細胞種は、結腸癌細胞種、乳癌細胞種、NSCLC細胞種、または白血病細胞種である。
別の態様において、ターゲット細胞種(例えば腫瘍または他の癌性組織)において、IGF−1Rが仲介するシグナル伝達の活性を検出し、ここでターゲット細胞種におけるIGF−1Rが仲介するシグナル伝達が、被験体が治療の候補である指標となることによって、治療の候補である被験体を同定する。IGF−1R依存性変化に関して監視可能な分子の例を図10に示し、例えばPI3/Akt経路にある分子、例えばIGF−1R、IRSアダプター、Aktなどがある。こうした分子を、例えばリン酸化状態の変化、例えばリン酸化の増加に関して監視してもよい。これらのタンパク質マーカーの活性化型を認識する、リン特異的抗体は、非常に開発されており、そしてこれらの試薬は、実験系におけるイムノブロット検出に関して、信頼性があることが証明されている。
別の態様において、被験体における組織(例えば被験体における腫瘍組織または他の癌性組織)は、本発明の療法的方法および組成物を用いた治療に対して好ましく応答する可能性がより高いかまたはより低いとして、被験体を同定する、分子マーカーを有する。任意のこうした分子マーカーを用いてもよい。1つの態様において、分子マーカーは染色体異常(例えば、腫瘍由来組織におけるもの)、例えばEWS遺伝子および転写因子に関与する染色体異常である。1つの特定の態様において、分子マーカーは、腫瘍または他の癌性組織におけるEWS−FLI染色体転座である。当該技術分野に知られる任意の方法を用いて、こうした転座を検出してもよい(例えば、その全体が、そしてすべての目的のために、各々、本明細書に援用される、Giovanniniら, 1994, J Clin Invest. 94:489−96; Delattreら, 1994, NEJM 331:294−99;およびZoubekら, 1994, Br J Cancer 70:908−13を参照されたい)。こうした検出法の例には、細胞学的分析、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、EWS−FLIハイブリッド遺伝子の配列分析、EWS−FLIハイブリッド遺伝子の転写産物の検出および/または定量化(例えばRT−PCRなどのPCRに基づく技術、あるいはin situハイブリダイゼーションまたはノーザンブロットなどのハイブリダイゼーションに基づく技術を用いる)、EWS−FLIハイブリッド遺伝子のポリペプチド産物の検出および/または定量化(例えば、in situ染色またはウェスタンブロットなどの抗体に基づく技術を用いる)、EWS−FLIハイブリッド遺伝子産物と関連する分子または活性の検出および/または定量化、EWS−FLIハイブリッド遺伝子産物の活性に依存する分子または活性の検出および/または定量化、あるいはEWS−FLIハイブリッド遺伝子産物の活性によって影響を受ける分子または活性の検出および/または定量化が含まれる。別の特定の態様において、EWS−FLIハイブリッド遺伝子産物(例えば、転写または翻訳の産物)の腫瘍または他の癌性組織における検出は、該腫瘍または癌性組織が、EWS−FLIハイブリッド遺伝子産物が検出されない腫瘍または他の癌性組織よりも、抗IGF−1受容体阻害剤、またはIGF−1受容体シグナル伝達経路を通じたシグナル伝達の別の阻害剤を用いた治療に対して応答する可能性がより高いことを示す。別の特定の態様において、EWS−FLI染色体転座を含有する腫瘍または他の癌性組織由来の試料を試験して、EWS−FLIハイブリッド遺伝子産物を発現するかどうかを決定する。EWS−FLIハイブリッド遺伝子産物の検出は、腫瘍または癌性組織が、IGF−1受容体シグナル伝達経路を通じたシグナル伝達の抗IGF−1受容体治療または別の阻害剤を用いた治療に対して応答する可能性がより高いことを示す。
別の態様において、分子マーカーは、シグナル伝達分子における、例えばキナーゼにおける突然変異である。突然変異は、例えば、シグナル伝達分子の活性を増加させ、シグナル伝達分子の活性を減少させ、そして/またはリガンド特異性、基質特異性、シグナル伝達分子の活性のタイミングまたは位置を改変することも可能である。いくつかの態様において、シグナル伝達分子はRASであり、そして突然変異は活性化突然変異である。RAS突然変異は、すべてのヒト腫瘍の約1/3で見られる。活性化RAS突然変異の例には、コドン12、13、および61に対する突然変異が含まれる。活性化RAS突然変異の他の例には、コドン10、11、15、18、および22における突然変異が含まれる。突然変異または他の変化の他のタイプはまた、RAS分子を通じたシグナル伝達の不適切な増加を引き起こすことも可能である。こうした他のタイプの変化の例には、遺伝子増幅、過剰発現、またはRAS経路の上流活性化が含まれ、例えば食道腺癌のおよそ40%は、増幅されたKRAS遺伝子を有し、KRASシグナル伝達増加を生じ;高レベルのRAS活性が、すべての乳癌腫瘍の約半数で見られ、そして上皮増殖因子およびHER−2の発現と関連するが、なおRAS突然変異はこれらの腫瘍ではまれである。したがって、本発明は、RAS活性が上昇した被験体を、IGF−1受容体シグナル伝達阻害剤を用いた治療に対して好ましく応答する可能性がより高いとして同定するための方法、および/またはこうした被験体をIGF−1受容体シグナル伝達阻害剤で治療する方法を提供する。
1つの特定の態様において、被験体が少なくとも1つの腫瘍の少なくともいくつかの細胞において、活性化KRAS突然変異を有するかどうかを決定し、ここで、活性化KRAS突然変異の存在は、該被験体がIGF−1受容体シグナル伝達阻害剤を用いた腫瘍の治療に対して応答する可能性がより高いことを示す。活性化KRAS突然変異は、当該技術分野に知られるいずれであってもよく、例えば、コドン10、11、12、13、15、18、22、59、61、および63に影響を及ぼすもの、例えばG12C、G12D、G12E、およびG12Vである。KRAS突然変異は、ヒト腫瘍で見られるRAS突然変異の最も一般的なタイプである。多くの腫瘍タイプが活性化KRAS突然変異を含むことが知られ、膵臓(このうち72〜90%が活性化KRAS突然変異を有する)、結腸または直腸(32〜57%)、肺(15〜50%)、子宮内膜(5〜50%)、胆嚢(14〜38%)、および精巣(9〜12%)、ならびに多発性骨髄腫腫瘍(16〜33%)の腫瘍が含まれる。Fridayら, 2005, Biochim Biophys Acta 1756:127−44。したがって、本発明の多様な態様において、被験体における腫瘍の少なくともいくつかの細胞において、KRAS突然変異を検出し、そして/またはIGF−1受容体シグナル伝達阻害剤で被験体を治療するための、方法および組成物を提供する。特定の態様において、被験体は、膵臓、結腸、直腸、肺、子宮内膜、胆嚢、または精巣、あるいは多発性骨髄腫腫瘍を有する。
別の態様において、KRASの野生型アレルを有する腫瘍を、IGF−1受容体阻害剤で治療する。また、1つの特定の態様において、腫瘍をパニツムマブまたはセツキシマブなどのEGF受容体阻害剤でも治療する。別の特定の態様において、パニツムマブまたはセツキシマブなどのEGF受容体阻害剤であらかじめ腫瘍を処理し、そしてここで、EGF受容体阻害剤(以前用いたのと同じEGF受容体阻害剤または別のもののいずれか)およびIGF−1受容体阻害剤の両方で処理する。別の特定の態様において、治療する腫瘍は結腸直腸腫瘍である。
別の態様において、被験体における腫瘍から採取した細胞の少なくとも一部が、減少したPTEN活性を有するかどうかを決定し、ここで、PTEN活性減少は、該腫瘍がIGF−1受容体シグナル伝達の阻害に対して応答する可能性がより低いことを示す。任意の適切な方法を用いて、PTEN活性の減少を検出してもよい。例えば、PTEN RNAレベル(例えば、ノーザンブロットまたはin situハイブリダイゼーションなどのハイブリダイゼーションに基づく方法を介して)、タンパク質レベル(例えば、検出可能に標識された抗PTEN抗体などの、検出可能PTEN結合剤を用いて)、またはPTEN酵素活性(例えば、他の分子に対する影響を通じて、直接または間接的にPTEN活性を測定することによって、あるいはPTENにおける部分的または完全機能喪失型突然変異などの、PTEN活性の減少を引き起こす突然変異、例えばPTEN D331Gを検出することによって)を検出する方法を用いて、発現レベルを検出してもよい。例えば、その全体がすべての目的のため、各々、本明細書に援用される、Tengら, 1997, Cancer Res 57:5221−25; Bonneauら, 2000, Human Mutation 16:109−22を参照されたい。
本発明の組成物および/または方法を、例えば美容用治療に、獣医学的治療に、寿命を増加させるため、再生欠陥を治療するため、そして多様な増殖関連障害を治療するために、用いることもまた、可能である。
療法的方法
本明細書に提供する特定の方法は、被験体に、IGF−1Rが仲介するシグナル伝達阻害剤を投与する工程を含む。IGF−1Rによって仲介される活性またはシグナルの減少を生じる任意の治療を用いてもよい。こうした治療の例が、Sachdevら, 2007, Mol Cancer Ther. 6:1−12に提供される。1つの態様において、治療は、IGF−1Rによって仲介される活性を減少させる物質を被験体に投与する工程を含む。こうした物質の例には、限定されるわけではないが、IGF−1R、IGF−1、またはIGF−2に結合する抗体(その断片および誘導体を含む)、ペプチボディ、およびAVIMERSTM(Amgen, Inc.、カリフォルニア州サウザンドオークス)、IGF−1Rの可溶性IGF−1および/またはIGF−2結合性誘導体、IGF−1Rに結合する小分子、IGF−1、IGF−2、IRS1、SHC、GRB2、SOS1、PI3K、SHP2、またはIGF−1Rシグナル伝達カスケードにおいて作用する任意の他の分子、IGF−1またはIGF−2結合性タンパク質(およびその誘導体)、阻害性核酸(siRNAなど)およびその誘導体(ペプチド核酸を含む)が含まれる。こうした分子の限定されない例は、例えば、各々、その全体が本明細書に援用される、米国特許第7,329,7347号(2008年2月12日公開)、第173,005号(2007年2月6日発行)、第7,071,300号(2006年7月4日発行)、第7,020,563号(2006年3月28日発行)、第6875741号(2005年4月5日発行);米国特許出願公報第07/0299010号(2007年12月27日公開)、第07/0265189号(2007年11月15日公開)、第07/0135340号(2007年6月14日公開)、第07/0129399号(2007年6月7日公開)、第07/0004634 A1号(2007年1月4日公開)、第05/0282761 A1号(2005年12月22日公開)、第05/0054638 A1号(2005年3月10日公開)、第04/0023887 A1号(2004年2月5日公開)、第03/0236190 A1号(2003年12月25日公開)、第03/0195147 A1号(2003年10月16日公開); PCT公報第WO 07/099171号(2007年9月7日公開)、第WO 07/099166号(2007年9月7日公開)、第07/031745号(2007年3月22日公開)、第WO 07/029106号(2007年3月15日公開)、第WO 07/029107号(2007年3月15日公開)、第WO 07/004060号(2007年1月11日公開)、第WO 06/074057 A2号(2006年7月13日公開)、第WO 06/069202 A2号(2006年6月29日公開)、第WO 06/017443 A2号(2006年2月16日公開)、第WO 06/012422 A1号(2006年2月2日公開)、第WO 06/009962 A2号(2006年1月26日公開)、第WO 06/009950 A2号(2006年1月26日公開)、第WO 06/009947 A2号(2006年1月26日公開)、第WO 06/009933 A2号(2006年1月26日公開)、第WO 05/097800 A1号(2005年10月20日)、第WO 05/082415 A2号(2005年9月9日公開)、第WO 05/037836 A2号(2005年4月28日公開)、第WO 03/070911 A2号(2003年8月28日公開)、第WO 99/28347 A2号(1999年6月10日公開);欧州特許第EP 1 732 898 B1号(2008年1月23日公開)、第EP 0 737 248 B1号(2007年11月14日公開)、欧州特許出願第EP 1 496 935 A2号(2005年1月19日公開)および第EP 1 432 433 A2号(2004年6月30日公開)、ならびにD’ambrosioら, 1996, Cancer Res. 56:4013−20が含まれる。こうした分子の特定の例には、OSI−906(OSI Pharmaceuticals、ニューヨーク州メルビリー)、BMS 536924(Wittman ら, 2005, J Med Chem. 48:5639−43; Bristol Myers Squibb, ニューヨーク州ニューヨーク)、XL228(Exelexis、カリフォルニア州サウスサンフランシスコ)、INSM−18、NDGA、およびrhIGFBP−3(Insmed, Inc.、バージニア州リッチモンド; Breuhahnら, 2002006, Curr Cancer Ther Rev. 2:157−67; Youngrenら, 2005, Breast Cancer Res Treatment 94:37−46;米国特許第6,608,108号)が含まれ、参考文献は各々、その全体が本明細書に援用される。
1つの側面において、任意の適切な抗IGF−1R抗体、抗体断片、または抗体誘導体を本発明の方法で用いてもよい。1つの態様において、抗体、抗体断片、または抗体誘導体は、IGF−1Rの細胞外ドメインに結合する。別の態様において、抗体、抗体断片、または抗体誘導体は、IGF−Rへの結合に関して、IGF−1および/またはIGF−2と競合する。別の態様において、抗体、抗体断片、または抗体誘導体は、IGF−1Rに結合した際、IGF−1Rに結合するIGF−1および/またはIGF−2の量を減少させる。別の態様において、抗体、抗体断片、または抗体誘導体は、IGF−1R細胞外ドメインのL1サブドメインに結合する。別の態様において、抗体、抗体断片、または抗体誘導体は、IGF−1R細胞外ドメインのCRサブドメインに結合する。別の態様において、抗体、抗体断片、または抗体誘導体は、IGF−1R細胞外ドメインのL2サブドメインに結合する。別の態様において、抗体、抗体断片、または抗体誘導体は、IGF−1R細胞外ドメインのFnIII 1サブドメインに結合する。別の態様において、抗体、抗体断片、または抗体誘導体は、IGF−1R細胞外ドメインのFnIII2−IDサブドメインに結合する。別の態様において、抗体、抗体断片、または抗体誘導体は、IGF−1R細胞外ドメインのFnIIIサブドメインに結合する(IGF−1R細胞外サブドメインを以下の実施例12に定義する)。別の態様において、抗体、抗体断片、または抗体誘導体は、1より多いIGF−1R細胞外ドメインに結合する。本発明の方法で使用可能な抗IGF−1R抗体の限定されない例には、L1H1、L2H2、L3H3、L4H4、L5H5、L6H6、L7H7、L8H8、L9H9、L10H10、L11H11、L12H12、L13H13、L14H14、L15H15、L16H16、L17H17、L18H18、L19H19、L20、H20、L21H21、L22H22、L23H23、L24H24、L25H25、L26H26、L27H27、L28H28、L29H29、L30H30、L31H31、L32H32、L33H33、L34H34、L35H35、L36H36、L37H37、L38H38、L39H39、L40H40、L41H41、L42H42、L43H43、L44H44、L45H45、L46H46、L47H47、L48H48、L49H49、L50H50、L51H51、およびL52H52として本明細書に同定される抗体、ならびにそのIGF−1R結合性断片および誘導体の各々が含まれる。本発明の方法で使用するための抗IGF−1R抗体の他の限定されない例には、米国特許出願公報第06/0040358号(2006年2月23日公開)、第05/0008642号(2005年1月13日公開)、第04/0228859号(2004年11月18日公開)に記載されるもの、例えば、該文献に記載されるような抗体1A(DSMZ寄託番号DSM ACC 2586)、抗体8(DSMZ寄託番号DSM ACC 2589)、抗体23(DSMZ寄託番号DSM ACC 2588)および抗体18; PCT公報第WO 06/138729号(2006年12月28日公開)、第WO 05/016970号(2005年2月24日公開)、およびLuら, 2004, J Biol Chem. 279:2856−65に記載されるもの、例えば、該文献に記載されるような抗体2F8、A12、およびIMC−A12; PCT公報第WO 07/012614号(2007年2月1日公開)、第WO 07/000328号(2007年1月4日公開)、第WO 06/013472号(2006年2月9日公開)、第05/058967号(2005年6月30日公開)、第03/059951号(2003年7月24日公開)、米国特許出願公報第05/0084906号(2005年4月21日公開)に記載されるもの、例えば、該文献に記載されるような抗体7C10、キメラ抗体C7C10、抗体h7C10、抗体7H2M、キメラ抗体*7C10、抗体GM 607、ヒト化抗体7C10バージョン1、ヒト化抗体7C10バージョン2、ヒト化抗体7C10バージョン3、および抗体7H2HM;米国特許出願公報第05/0249728号(2005年11月10日公開)、第05/0186203号(2005年8月25日公開)、第04/0265307号(2004年12月30日公開)、第03/0235582号(2003年12月25日公開)、Maloneyら, 2003, Cancer Res. 63:5073−83に記載されるもの、例えば、該文献に記載されるような抗体EM164、表面再構成EM164、ヒト化EM164、huEM164 v1.0、huEM164 v1.1、huEM164 v1.2、およびhuEM164 v1.3;米国特許第7,037,498号(2006年5月2日発行)、米国特許出願第05/0244408号(2005年11月30日公開)、第04/0086503号(2004年5月6日公開)、Cohenら, 2005, Clinical Cancer Res. 11:2063−73に記載されるもの、例えば、該文献に記載されるような抗体CP−751,871、ATCC寄託番号PTA−2792、PTA−2788、PTA−2790、PTA−2791、PTA−2789、PTA−2793を有するハイブリドーマによって産生される各抗体、ならびに抗体2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、および4.17.3;米国特許出願第05/0136063号(2005年6月23日公開)、第04/0018191号(2004年1月29日公開)に記載されるもの、例えば、該文献に記載されるような抗体19D12、ならびにATCCに番号PTA−5214のもとで寄託されるプラスミド15H12/19D12 HCA(γ4)中のポリヌクレオチドによってコードされる重鎖、およびATCCに番号PTA−5220のもとで寄託されるプラスミド15H12/19D12 LCF(κ)中のポリヌクレオチドによってコードされる軽鎖を含む抗体;米国特許出願第04/0202655号(2004年10月14日公開)に記載されるもの、例えば、該文献に記載されるような抗体PINT−6A1、PINT−7A2、PINT−7A4、PINT−7A5、PINT−7A6、PINT−8A1、PINT−9A2、PINT−11A1、PINT−11A2、PINT−11A3、PINT−11A4、PINT−11A5、PINT−11A7、PINT−11A12、PINT−12A1、PINT−12A2、PINT−12A3、PINT−12A4、およびPINT−12A5;米国特許出願第07/0243194号(2007年10月18日公開)に記載されるもの、例えば抗体M13−C06、M14−G11、M14−C03、M14−B01、M12−E01、およびM12−G04、ならびにハイブリドーマP2A7.3E11、20C8.3B8、P1A2.2B11、20D8.24B11、P1E2.3B12、およびP1G10.2B8によって産生される抗体が含まれる。前述の参考文献は、各々、その全体が本明細書に援用される。やはり使用に適しているのは、IGF−1受容体への結合に関して、上述の抗体の1つと競合する、抗体、抗体断片、または抗体誘導体である。1つの態様において、抗体、抗体断片、または抗体誘導体は、前述の抗体の1つと同じエピトープに、または前述の抗体の1つのエピトープと重複するエピトープに、結合する。
特定の態様において、本発明の方法は、例えば、被験体への投与を介して、またはex vivo法において、IGF−1R結合性抗原結合性タンパク質と、内因性IGF−1Rを接触させることを伴う。
用語「治療」は、障害の少なくとも1つの症状または他の側面の軽減または予防、あるいは疾患重症度の減少等を含む。治療は、発展しうる療法を構成するために、完全な治癒を達成するか、または疾患のすべての症状または徴候を根絶する必要はない。関連分野で認識されるように、療法剤として使用される薬剤または他の治療は、所定の疾患状態の重症度を減少させることも可能であるが、療法的に有用と見なされるために、疾患のすべての徴候を無効にする必要はない。同様に、予防的に投与される治療は、発展しうる予防剤を構成するために、状態の開始を予防する際に完全に有効である必要はない。単に疾患の影響を減少させる(例えば、症状の数または重症度を減少させることによって、状態の開始を遅延させることによって、症状の減少を加速させることによって、別の治療の有効性を増加させることによって、あるいは別の有益な効果を生じることによって)か、あるいは疾患が被験体で生じるかまたは悪化する可能性を減少させれば十分である。療法的に有用な治療にはまた、ある患者には有効であるが、他の患者には有効でない治療も含まれる。本発明の1つの態様は、特定の障害の重症度を反映する指標のベースラインを超えた、持続する改善を誘導するのに十分な量および時間、患者にIGF−1Rアンタゴニストを投与することを含む方法に向けられる。
任意の適切な技術を用いて、治療経過の進行を監視するかまたは測定してもよい。腫瘍を治療するため、こうした技術には、腫瘍のサイズまたはサイズ変化を検出する工程が含まれる。直接観察、放射線学的技術等を含む、任意の適切な技術を用いて決定されるかまたは概算されるように、長さ、外周、体積等によって、腫瘍サイズを測定してもよい。特定の態様において、RECIST技術および基準(すべての目的のため、その全体が本明細書に援用される、Therasseら 2000, J Natl Cancer Inst. 92:205−16)を用いて、治療進行を監視する。また、他の方式で、例えば、相対的健康状態または腫瘍組織の勢いを決定することによって、例えばPETスキャンを用いて腫瘍のグルコース取り込みを測定することによって、あるいは健康状態もしくは腫瘍組織の勢いと、または治療の有効性と相関する、腫瘍の側面を監視することによって、治療進行を監視してもよい。腫瘍のこうした側面の例には、特定の遺伝子またはタンパク質の発現レベル、特定のタンパク質のリン酸化状態または他の翻訳後修飾等が含まれる。
関連分野で理解されるように、本発明の分子を含む薬学的組成物を、適応症に適した方式で、被験体に投与する。限定されるわけではないが、非経口、局所、または吸入によるものを含む、いかなる適切な技術によって、薬学的組成物を投与してもよい。注射する場合、薬学的組成物を、例えば、動脈内、静脈内、筋内、病巣内、腹腔内または皮下経路を介して、ボーラス注射によって、あるいは連続注入によって、投与してもよい。局在化投与、例えば疾患または傷害部位での投与が意図され、経皮送達および移植物からの持続放出も同様である。吸入による送達には、例えば、鼻または経口吸入、ネブライザーの使用、エアロゾル型でのアンタゴニストの吸入等が含まれる。他の代替物には、点眼剤;丸剤、シロップ、ロゼンジまたはチューインガムを含む経口調製物;ならびにローション、ジェル、スプレー、および軟膏などの局所調製物が含まれる。
ex vivo法での薬学的組成物の使用もまた意図される。例えば、患者の血液または他の体液を、ex vivoで、IGF−1Rシグナル伝達阻害剤と接触させてもよい。該阻害剤を適切な不溶性マトリックスまたは固体支持体材料に結合させてもよい。
本発明のIGF−1Rシグナル伝達阻害剤を、生理学的に許容しうるキャリアー、賦形剤または希釈剤などの1以上のさらなる構成要素を含む組成物の形で投与してもよい。所望によって、組成物はさらに、1以上の生理学的活性剤、例えば第二のIGF−1Rシグナル伝達阻害剤、抗血管形成物質、化学療法物質、鎮痛性物質等を含み、その非排他的な例を本明細書に提供する。多様な特定の態様において、組成物は、IGF−1R結合性抗原結合性タンパク質に加えて、1、2、3、4、5、または6つの生理学的活性剤を含む。
1つの態様において、薬学的組成物は、IGF−1Rシグナル伝達阻害剤を、緩衝剤、アスコルビン酸などの酸化防止剤、低分子量ポリペプチド(10アミノ酸未満を有するものなど)、タンパク質、アミノ酸、グルコース、スクロースまたはデキストリンなどの炭水化物、EDTAなどのキレート剤、グルタチオン、安定化剤、ならびに賦形剤からなる群より選択される1以上の物質とともに、含む。中性緩衝生理食塩水または同種血清アルブミンと混合された生理食塩水が、適切な希釈剤の例である。適切な産業標準にしたがって、ベンジルアルコールなどの保存剤もまた添加してもよい。組成物は、適切な賦形剤溶液(例えばスクロース)を希釈剤として用いた凍結乾燥物として配合されてもよい。適切な構成要素は、使用する投薬量および濃度でレシピエントに非毒性である。薬学的配合物に使用可能な構成要素のさらなる例が、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第16版(1980)および第20版(2000), Mack Publishing Company, ペンシルバニア州イーストンに提示される。
開業医に使用されるためのキットには、本発明のIGF−1受容体阻害物質、および本明細書に論じる状態いずれかを治療する際に使用するためのラベルまたは他の使用説明書が含まれる。1つの態様において、キットには、1以上のIGF−1Rシグナル伝達阻害剤の無菌調製物が含まれ、該調製物は、上に開示するような組成物の形であってもよく、そして1以上のバイアル中にあってもよい。
投薬量および投与頻度は、投与経路、使用する特定の抗原結合性タンパク質、治療しようとする疾患の性質および重症度、状態が急性または慢性であるか、ならびに被験体のサイズおよび全身状態などの要因に応じて、多様でありうる。関連技術において知られる方法によって、例えば用量の段階的増大研究を伴いうる臨床試験において、適切な投薬量を決定してもよい。「断続的投薬」は、多数回用量で、療法化合物(例えばIGF−1Rシグナル伝達阻害剤)を被験体に投与する方法を指し、ここで、特定の用量の投与および任意の続く用量の間には時間間隔がある。療法的に有効であるかまたはそうでなければ医学的に正当化される限り、投薬の任意のスケジュールが使用可能である。連続用量間の間隔は、数秒または数分の桁の非常に短いものであってもよいし、あるいは数時間、数日、数週、数ヶ月、またはさらに数年の桁の、より長いものであってもよい。間隔はすべての用量間で同じ、例えば1週間もしくは1ヶ月あたり1用量であってもよいし、あるいは用量間で多様であってもよい。同様に、療法的活性化合物(例えばIGF−1Rシグナル伝達阻害剤または化学療法剤)の量は、用量間で多様であってもよい。1つの態様において、連続用量間の期間および各用量中の療法的活性物質の量を、所望の範囲内の関心対象の薬力学的または薬物動態学的パラメータ(例えば、前記物質の血清濃度またはIGF−1Rシグナル伝達活性における減少パーセント)を維持するように選択する。別の態様において、用量間の間隔および療法的活性物質の量は、他の基準(例えば治療経過に対する被験体の主観的または客観的応答)にしたがって多様である。
他の態様において、本発明のIGF−1Rシグナル伝達阻害物質を、少なくとも1ヶ月以上に渡って、例えば1、2、または3ヶ月間、6ヶ月間、1年間、数年か、またはさらに無期限に投与する。慢性状態を治療するためには、一般的に、長期治療が最も有効である。しかし、急性状態を治療するため、より短い期間、例えば1〜6週間の投与で十分である可能性もある。一般的に、患者が、選択した単数または複数の指標に関して、ベースラインを超えた、医学的に適切なまたは望ましい度合いの改善を示すまで、IGF−1Rシグナル阻害物質を投与する。
本発明の特定の態様は、用量あたり被験体の体重kgあたり約1ng(「1ng/kg/用量」)〜約50mg/kg/用量、より好ましくは、約1mg/kg/用量〜約30mg/kg/用量、そして最も好ましくは、約10mg/kg/用量〜約20mg/kg/用量の抗原結合性タンパク質の投薬量で、IGF−1R阻害物質を被験体に投与することを伴う。さらなる態様において、IGF−1R阻害物質を、月1回、2週に1回、週1回、週2回、または週3回以上、成人に投与して、IGF−1および/またはIGF−2が仲介する疾患、状態または障害、例えば本明細書に開示する医学的障害を治療する。注射した場合、成人用量あたりのIGF−1R阻害物質の有効量は、1〜20mg/m2の範囲であり、そして好ましくは約5〜12mg/m2である。あるいは、一定用量を投与してもよく;量は5〜100mg/用量の範囲であってもよい。一定用量の1つの範囲は、用量あたり約20〜30mgである。本発明の1つの態様において、25mg/用量の一定用量を注射によって反復投与する。注射以外の投与経路を用いる場合、標準的医療行為にしたがって、用量を適切に調整する。療法措置の一例は、約20〜30mgのIGF−1R阻害物質の用量を、少なくとも3週間の期間に渡って、週1〜3回注射することを伴うが、望ましい度合いの改善を誘導するには、より長い期間に渡る治療が必要である可能性もある。小児被験体(4〜17歳)に関しては、1つの例示的な適切な措置は、週2または3回投与される、最大用量25mgまでのIGF−1R阻害物質の0.4mg/kgの皮下注射を伴う。
本明細書に提供する方法の特定の態様は、週1回または2回の、0.5mg〜500mg、好ましくは50〜300mgの抗原結合性タンパク質の皮下注射を伴う。別の態様は、3mg以上のIGF−1R阻害物質の肺投与(例えばネブライザーによる)に向けられる。
本明細書に提供する療法措置の他の例は、被験体の体重キログラムあたり、本発明のIGF−1R阻害剤の1、3、5、6、7、8、9、10、11、12、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、125、150、175、200、250、300、400、または500ミリグラム(mg/kg)の用量の皮下または静脈内投与を含む。用量を1回、または特定の間隔で1回より多く、例えば1日1回、週3回、週2回、週1回、月3回、月2回、月1回、2ヶ月ごとに1回、3ヶ月ごとに1回、6ヶ月ごとに1回、または年1回、被験体に投与してもよい。治療期間、および治療の用量および/または頻度に対するいかなる変化も、被験体の特定の必要性を満たすため、治療経過中に改変するかまたは変化させてもよい。
別の態様において、治療中の障害の重症度を反映する少なくとも1つの指標において、改善、好ましくは持続する改善を誘導するのに十分な量および期間、抗原結合性タンパク質を被験体に投与する。治療の量および期間が十分であるかどうかを決定するため、被験体の疾病、疾患または状態の度合いを反映する多様な指標を評価してもよい。こうした指標には、例えば疾患重症度、症状、または問題の障害の徴候の臨床的に認識される指標が含まれる。1つの態様において、被験体が、2〜4週間離れた少なくとも2回の機会に改善を示すならば、改善は持続していると見なされる。改善の度合いは、一般的に、医師によって決定され、医師は、徴候、症状、生検、または他の試験結果に基づいて、この決定を行うことも可能であり、そしてまた、所定の疾患に関して開発された、生活の質アンケートなど、被験体に行われるアンケートも使用してもよい。被験体の状態における改善は、例えば、任意の適切な技術を用いた医師または他の医療従事者によって、例えば検出されるか、測定されるか、または定量化されるものであってもよい。こうした技術には、限定されるわけではないが、被験体を観察する工程、被験体または被験体から採取した試料を試験する工程、および被験体から直接または間接的に被験体の状態の被験体の印象を収集する工程が含まれる。こうした印象は、被験体の健康状態または満足いく状態の任意の側面、特に被験体の腫瘍疾患によって直接または間接的に影響を受ける側面に関連していてもよい。こうした側面の例には、限定されるわけではないが、疼痛、不快感、睡眠、食欲、口渇、運動性、力、柔軟性、および精神状態が含まれる。
上昇したレベルのIGF−1および/またはIGF−2は、例えば、癌(例えば肺癌、前立腺癌、乳癌および結腸癌)、ならびに末端肥大症および他の過成長障害(例えば体質的に背が高い子ども)を含む、いくつかの障害と関連する。所定の障害を持つ被験体をスクリーニングして、IGF−1および/またはIGF−2レベルが上昇している個体を同定し、それによって、IGF−1Rシグナル伝達阻害剤を用いた治療から最も利益を得る可能性がある被験体を同定してもよい。したがって、本明細書に提供する治療法は、所望によって、被験体のIGF−1および/またはIGF−2レベルを測定する第一の工程を含む。IGF−1および/またはIGF−2レベルが正常のまたは望ましいレベルより高く上昇している被験体に、抗原結合性タンパク質を投与してもよい。
抗原結合性タンパク質での治療前、治療中および/または治療後に、IGF−1および/またはIGF−2の被験体のレベルを監視して、あるとすればそのレベルの変化を検出してもよい。いくつかの障害に関して、IGF−1および/またはIGF−2レベル上昇の発生率は、疾患のステージまたは疾患の特定の型などの要因に応じて、多様でありうる。例えば被験体血清における、IGF−1および/またはIGF−2レベルを測定するため、既知の技術を使用してもよい。適切な技術いずれか、例えばELISAを用いて、血液試料中のIGF−1および/またはIGF−2レベルを測定してもよい。
本発明の方法および組成物の特定の態様は、抗原結合性タンパク質および1以上のさらなるIGF−1Rアンタゴニスト、例えば2以上の本発明の抗原結合性タンパク質、または本発明の抗原結合性タンパク質および1以上の他のIGF−1Rアンタゴニストの使用を伴う。さらなる態様において、抗原結合性タンパク質を単独で、または患者が罹患している状態を治療するのに有用な他の剤と組み合わせて、投与する。こうした剤の例には、タンパク質性薬剤および非タンパク質性薬剤の両方が含まれる。多数の療法剤を共投与する場合、投薬量は、関連技術分野に認識されるように、適宜、調整される。「共投与」および併用療法は、同時投与に限定されず、患者に少なくとも1つの他の療法剤を投与することを伴う治療の経過中、抗原結合性タンパク質を少なくとも1回投与する治療措置もまた含まれる。
抗原結合性タンパク質と共投与してもよい他の剤の例は、治療しようとする特定の状態にしたがって選択される、他の抗原結合性タンパク質または療法ポリペプチドである。あるいは、上に論じる特定の状態の1つを治療する際に有用な非タンパク質性薬剤を、IGF−1Rアンタゴニストと共投与してもよい。
併用療法
別の側面において、本発明は、IGF−1R阻害性抗原結合性タンパク質および1以上の他の治療で、被験体を治療する方法を提供する。1つの態様において、こうした併用療法は、例えば腫瘍の多数の部位または分子ターゲットを攻撃することによって、相乗効果または付加的効果を達成する。本発明と関連して使用可能な併用療法のタイプには、単一の疾患関連経路、ターゲット細胞における多数の経路、およびターゲット組織内(例えば腫瘍内)の多数の細胞種における多数のノードを阻害するかまたは活性化する(適切なように)ことが含まれる。例えば、本発明のIGF−1R阻害剤を、IGF−1を阻害するか、アポトーシスを促進するか、血管形成を阻害するか、またはマクロファージを阻害する治療と組み合わせてもよい。別の態様において、それだけで用いた場合は療法的に望ましい効果を誘発できない、ターゲットとされる剤を、例えば癌細胞を感作するか、または他の剤の治療効果を増大させるために用いてもよい。別の態様において、本発明記載のIGF−1R阻害剤を、細胞傷害薬剤またはアポトーシスを誘導する他のターゲットとされる剤と併用する。別の態様において、細胞生存に関与する異なるターゲット(例えばPKB、mTOR)、異なる受容体チロシンキナーゼ(例えばErbB1、ErbB2、c−Met、c−kit)、または異なる細胞種(例えばKDR阻害剤、c−fms)を阻害する、1以上の剤と、IGF−1R阻害剤を併用する。別の態様において、本発明のIGF−1R阻害剤を、特定の状態のための現存する治療標準に付加する。療法剤の例には、限定されるわけではないが、ゲムシタビン、タキソール、タキソテール、およびCPT−11が含まれる。
別の態様において、併用療法は、被験体に、本明細書記載の2、3、4、5、6、またはそれより多いIGF−1Rアゴニストまたはアンタゴニストを投与することを含む。別の態様において、方法は、IGF−1Rが仲介するシグナル伝達を、一緒に阻害するかまたは活性化する(直接または間接的に)、2以上の治療を被験体に施すことを含む。こうした方法の例には、2以上のIGF−1R阻害性抗原結合性タンパク質の併用、IGF−1R阻害性抗原結合性タンパク質および1以上の他のIGF−1、IGF−2、および/またはIGF−1Rアゴニストまたはアンタゴニスト(例えばIGF−1および/またはIGF−2結合性ポリペプチド、IGF−1R結合性ポリペプチド、IGF−1および/またはIGF−2誘導体、抗IGF−1および/またはIGF−2抗体、IGF−1、IGF−2、および/またはIGF−1Rに対するアンチセンス核酸、あるいはIGF−1、IGF−2、および/またはIGF−1Rポリペプチドまたは核酸に結合する他の分子)の併用、あるいはIGF−1R阻害性抗原結合性タンパク質および1以上の他の治療(例えば手術、超音波、放射線療法、化学療法、または別の抗癌剤を用いる治療)の併用が含まれ、例えば、米国特許第5,473,054号(1995年12月5日発行)、第6,051,593号(2000年4月18日発行)、第6,084,085号(2000年7月4日発行)第6,506,763号(2003年1月14日発行)、米国特許出願公報第03/0092631号(2003年5月15日公開)、第03/0165502号(2003年9月4日公開)、第03/0235582号(2003年12月25日公開)、第04/0886503号(2004年5月6日公開)、第05/0272637号(2005年12月8日公開)、PCT公報第WO 99/60023号(1999年11月25日公開)、第WO 02/053596号(2002年7月11日公開)、第WO 02/072780号(2002年9月19日公開)、第WO 03/027246号(2003年3月3日公開)、第WO 03/020698号(2003年3月13日公開)、第WO 03/059951号(2003年7月24日公開)、第WO 03/100008号(2003年12月4日公開)、第WO 03/106621号(2003年12月24日公開)、第WO 04/071529号(2004年8月26日公開)、第WO 04/083248号(2004年9月30日公開)、第WO 04/087756号(2004年10月14日公開)、第WO 05/112969号(2005年12月1日公開), Kullら, 1983, J Biol Chem 258:6561−66, Flierら, 1986, Proc Natl Acad Sci USA 83:664−668, Conoverら, 1987, J Cell Physiol 133:560−66, Rohlikら, 1987, Biochem Biophys Res Comm 149:276−81, Arteagaら, 1989, J Clinical Investigation 84:1418−23, Arteagaら, 1989, Cancer Res 49:6237−41, Ganslerら, 1989, American J Pathol 135:961−66, Gustafsonら, 1990, J Biol Chem 265:18663−67, Steele−Perkinsら, 1990, Biochem Biophys Res Comm 171:1244−51, Cullenら, 1992, Mol Endocrinol 6:91−100, Soosら, 1992, J Biol Chem 267:12955−63, Xiongら, 1992, Proc Natl Acad Sci USA 89:5356−60, Brunnerら, 1993, Euro J Cancer 29A:562−69, Furlanettoら, 1993, Cancer Res 53:2522−26, Liら, 1993, Biochem Biophys Res Comm 196:92−98, Kalebicら, 1994, Cancer Res 54:5531−34, Lahmら, 1994, Intl J Cancer 58:452−59, Ziaら, 1996, J Cell Biochem Supp 24:269−75, Janssonら, 1997, J Biol Chem 272:8189−97, Scotlandiら, 1998, Cancer Res 58:4127−31, Logieら, 1999, Liら, 2000, Cancer Immunol Immunotherapy 49:243−52, J Mol Endocrinol 23:23−32, De Meyts, 2002, Nature Reviews 1:769−83, Hailey, 2002, Mol Cancer Therapeutics 1:1349−53, Maloneyら, 2003, Cancer Research 63:5073−83, Burtrumら, 2003, Cancer Research 63:8912−21, およびKaravitakiら, 2004, Hormones 3:27−36(各々、本明細書にその全体が援用される)に記載されるとおりの治療があり、これらを本発明の方法および組成物中で用いてもよい。さらに、1以上の抗IGF−1R抗体または抗体誘導体を、1以上の分子または他の治療と併用してもよく、ここで、他の分子(単数または複数)および/または治療(単数または複数)は、直接IGF−1R、IGF−1、またはIGF−2に結合せず、また影響を及ぼさないが、癌または過成長障害(例えば末端肥大症)などの状態を治療するかまたは予防するために、併用が有効である。1つの態様において、1以上の分子(単数または複数)および/または治療(単数または複数)は、療法の経過中に、1以上の他の分子(単数または複数)または治療(単数または複数)によって引き起こされる状態、例えば吐き気、疲労、脱毛症、悪液質、不眠症などを治療するかまたは予防する。分子および/または他の治療を併用するすべての場合で、有効な、いかなる順序で、いかなる長さの期間に渡って、例えば同時に、連続して、または交互に、個々の分子(単数または複数)および/または治療(単数または複数)を投与してもよい。1つの態様において、治療法は、第二の治療経過が始まる前に、1つの分子または他の治療での第一の治療経過を完了することを含む。第一の治療経過終了および第二の治療経過開始の間の時間の長さは、全療法経過が有効であることを可能にするいかなる長さであってもよく、例えば秒、分、時間、日、週、月、または年でさえあってもよい。
別の態様において、方法は、本明細書記載の1以上のIGF−1Rアンタゴニストおよび1以上の他の治療(例えば療法または苦痛軽減治療)、例えば抗癌治療(手術、超音波、放射線療法、化学療法、または別の抗癌剤での治療)を施すことを含む。方法が1より多い治療を被験体に施すことを含む場合、投与の順序、時期、数、濃度、および体積は、治療の医学的必要性および制限によってのみ限定され、すなわち、2つの治療を、例えば同時に、連続して、交互に、またはいかなる他の措置にしたがって、被験体に投与してもよいことが理解されるべきである。本明細書記載のIGF−1Rアンタゴニストと併用投与してもよい剤の例には、限定されるわけではないが、好中球ブースト剤、イリノテカン、SN−38、ゲムシタビン、ハースタチン、またはIGF−1R結合性ハースタチン誘導体(例えば米国特許出願第05/0272637号)、AVASTIN(登録商標)(Genentech、カリフォルニア州サウスサンフランシスコ)、HERCEPTIN(登録商標)(Genentech)、RITUXAN(登録商標)(Genentech)、ARIMIDEX(登録商標)(AstraZeneca、デラウェア州ウィルミントン)、IRESSA(登録商標)(AstraZeneca)、BEXXAR(登録商標)(Corixa、ワシントン州シアトル)、ZEVALIN(登録商標)(Biogen Idec、マサチューセッツ州ケンブリッジ)、ERBITUX(登録商標)(Imclone Systems Inc.、ニューヨーク州ニューヨーク)、GEMZAR(登録商標)(Eli Lilly and Co.、インディアナ州インディアナポリス)、CAMPTOSAR(登録商標)(Pfizer、ニューヨーク州ニューヨーク)、GLEEVEC(登録商標)(Novartis)、SU−11248(Pfizer)、BMS−354825(Bristol−Myers Squibb)、VECTIBIXTM(Abgenix、カルフォルニア州フレモント/Amgen Inc.、カリフォルニア州サウザンドオークス)、およびデノスマブ(Amgen Inc.、カリフォルニア州サウザンドオークス)が含まれる。
別の態様において、本発明は、RASシグナル伝達阻害剤、例えば、KRAS、NRAS、またはHRASの阻害剤での、被験体の治療前、治療中、または治療後のIGF−1受容体シグナル伝達阻害剤を被験体に投与する工程を含む腫瘍疾患を治療するための併用療法を提供する。RAS活性の任意の阻害剤が使用可能である。RAS阻害剤のタイプの例には、アンチセンスオリゴヌクレオチド、RNA干渉、RAS翻訳後修飾またはプロセシングの阻害(例えば、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)、例えば、FTI−276およびFTI−277のようなCAAXペプチド模倣体、ならびにティピファルニブ(R115777)、ロナファルニブ(SCH663366)、およびBMS−214662のような非ペプチド模倣体)、ゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ阻害剤(GGTI)、FTI/GGTIの組み合わせ、RASタンパク質分解的切断、メチル化、またはパルミトイル化の阻害剤、免疫学的アプローチ(例えば活性化RAS突然変異体に対するワクチン接種)、突然変異体RASペプチド阻害剤、およびRafキナーゼ(例えば、BAY 43−9006)、MEK(例えば、CI−1040、PD0325901、およびARRY−142886)、およびmTOR(例えばラパマイシン、CCI−779、RAD001、およびAP23573)などの下流RASエフェクターの阻害剤が含まれる。すべての目的のため、その全体が本明細書に援用される、Fridayら, 2005, Biochim Biophys Acta 1756:127−44を参照されたい。
実際の実施例および予言的実施例の両方の以下の実施例を、本発明の特定の態様または特徴を例示する目的のために提供し、そして該実施例は、本発明の範囲を限定しない。
実施例1:抗体の調製
本実施例は、IGF−1受容体を認識する抗体を調製する方法を示す。IGF−1受容体ポリペプチドを、慣用的技術によってモノクローナル抗体を生成する際の免疫原として使用してもよい。多様な型のポリペプチド、例えば全長タンパク質、その断片、Fc融合体などの融合タンパク質、細胞表面上に組換えタンパク質を発現している細胞などを、免疫原として使用してもよいことが認識される。
こうした方法の例を要約すると、フロイントの完全アジュバント中で乳化したIGF−1R免疫原を、10〜100μlの範囲の量で、Lewisラットに皮下注射する。3週間後、免疫した動物を、フロイントの不完全アジュバント中で乳化したさらなる免疫原で追加免疫し、そしてその後、3週間ごとに追加免疫する。ドットブロットアッセイ、ELISA(酵素連結免疫吸着アッセイ)、あるいはIGF−1R発現細胞の抽出物に対する125I−IGF−1または125I−IGF−2の結合の阻害によって試験するため、後眼窩出血または尾先端切除によって、血清試料を定期的に採取する。適切な抗体力価を検出した後、陽性動物に、生理食塩水中の抗原を、最後に静脈内注射する。3〜4日後、動物を屠殺し、脾臓細胞を採取し、そしてネズミ骨髄腫細胞株AG8653に融合させる。生じたハイブリドーマ細胞株を、HAT選択培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン)中、マルチマイクロタイタープレート中にプレーティングして、非融合細胞、骨髄腫ハイブリッド、および脾臓細胞ハイブリッドの増殖を阻害する。
こうして生成したハイブリドーマクローンを、IGF−1Rとの反応性に関してスクリーニングする。ハイブリドーマ上清の最初のスクリーニングは、部分的に精製された125I−IGF−1受容体の抗体捕捉および結合を利用する。このスクリーニング法で陽性であるハイブリドーマを、修飾抗体捕捉によって試験して、遮断抗体を産生しているハイブリドーマ細胞株を検出する。こうして、IGF−1Rを発現している細胞への125I−IGF−1結合を阻害することが可能なモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを検出する。次いで、こうしたハイブリドーマを、ヌードマウスの腹腔内に注射して、高濃度(>1mg/ml)の抗IGF−1Rモノクローナル抗体を含有する腹水を産生する。硫酸アンモニウム沈殿後のゲル排除クロマトグラフィー、および/またはプロテインGに対する抗体の結合に基づくアフィニティクロマトグラフィーによって、生じたモノクローナル抗体を精製してもよい。
類似の方法を用いて、トランスジェニックマウスにおいて、ヒト抗体を生成してもよい。例えばChenら, 1993, lnternat. Immunol. 5: 647−56; Chenら, 1993, EMBO J. 12: 821−30; Choiら, 1993, Nature Genetics 4: 117−23; Fishwildら, 1996, Nature Biotech. 14: 845−51; Hardingら, 1995, Annals New York Acad. Sci.; Lonbergら, 1994, Nature 368: 856−59; Lonberg, 1994, Handbook Exper.l Pharmacol. 113: 49−101; Lonbergら, 1995, Internal Rev. Immunol. 13: 65−93; Morrison, 1994, Nature 368: 812−13; Neuberger, 1996, Nature Biotech. 14: 826; Taylorら, 1992, Nuc. Acids Res. 20: 6287−95; Taylorら, 1994, lnternat. Immunol. 6: 579−91; Tomizukaら, 1997, Nature Genetics 16: 133−43; Tomizukaら, 2000, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 97: 722−27; Tuaillonら, 1993, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 90: 3720−24; Tuaillonら, 1994, J. Immunol. 152: 2912−20; Russelら, 2000, Infection and Immunity April 2000: 1820−26; Galloら, 2000, Eur. J. Immunol. 30: 534−40; Davisら, 1999, Cancer Metastasis Rev. 18:421−25; Green, 1999, J. Immunol. Methods 231:11−23; Jakobovits, 1998, Advanced Drug Delivery Rev. 31:33−42; Greenら, 1998, J. Exp. Med. 188: 483−95; Jakobovits, 1998, Exp. Opin. Invest. Drugs 7: 607−14; Tsudaら, 1997, Genomics 42: 413−21; Mendezら, 1997, Nature Genetics 15: 146−56; Jakobovits, 1996, Weir’s Handbook of Experimental Immunology, The Integrated Immune System Vol. IV, 194.1−194.7; Mendezら, 1995, Genomics 26: 294−307; Jakobovits, 1994, Current Biol. 4: 761−63; Arbones, 1994, Immunity 1: 247−60; Greenら, 1994, Nature Genetics 7: 13−21; Jakobovitsら, 1993, Nature 362: 255−58; Jakobovitsら, 1993,. Proc. Nat. Acad. Sci. USA 90: 2551−55を参照されたい。
実施例2:ヒトIGF−1R(ECD)−C3−muIgG1の単離
本実施例は、抗体を作成するのに有用なIGF−1Rの可溶性断片を作製する方法を提供する。
pDSRα:huIGF−1R(ECD)−C3−muIgG1Fcのクローニング
プライマー2830−36:
5’ AGCAAGCTTCCACCATGAAGTCTGGCTCCGGAGGAGG 3’ 配列番号256
および2830−38:
5’ ATTTGTCGACTTCGTCCAGATGGATGAAGTTTTCAT 3’、配列番号257
を用いて、ヒトIGF−1R細胞外ドメイン(1〜906)cDNA配列を増幅した。プライマーには、開始コドンに先行するKozak翻訳開始配列(上記下線)、続くサブクローニングのための制限部位、および細胞外ドメインC末端の次に挿入されたカスパーゼ(caspace)−3部位が含まれた。PerkinElmer 2400(PerkinElmer、カリフォルニア州トーランス)上で、以下の条件の下、PCRを行った:1周期の95℃2分間、23周期の95℃30秒間、58.5℃30秒間、および72℃3分間、ならびに1周期の72℃10分間。最終反応条件は、1X pfu TURBO(登録商標)緩衝液(Stratagene、カリフォルニア州ラホヤ)、200μM dNTP、各2μMプライマー、5U pfu TURBO(登録商標)(Stratagene)および1ngテンプレートDNAであった。製造者の指示にしたがって、Clontech Nucleospinカラム(Clontech、カリフォルニア州パロアルト)を用いてPCR産物を精製し、Hind IIIおよびSal I(Roche、インディアナ州インディアナポリス)で消化し、そしてゲル精製した。ヒトIGF−1R挿入物を、Hind III/Sal Iで消化したpDSRα−muIgG1に連結した。DNA配列決定によって、挿入物の完全性を確認した。生じたオープンリーディングフレーム(IGF−1R−C3−muFc)にコードされるタンパク質の配列を図10に示す。最終発現ベクター、pDSRα:huIGF1R(ECD)−C3−muIgG1Fcを表1に記載する。
表1
pDSRα:huIGF1R(ECD)−C3−muIgG1Fc
プラスミドに基づく
対番号:
huIGF−1R(ECD)−C3−muIgG1Fcの発現
LT1リポフェクション試薬(PanVera Corp.、ウィスコンシン州マディソン)を用いて、15マイクログラムの直鎖化発現ベクターpDSRα:huIGF1R(ECD)−C3−muIgG1FcをAM−1/D CHOd−細胞にトランスフェクションし、そして細胞培地へのタンパク質の発現および分泌を可能にする条件下で、該細胞を培養した。DHFR選択培地(10%の透析したウシ胎児血清、1xペニシリン−ストレプトマイシン(Invitrogen)を補ったダルベッコの修飾イーグル培地(Invitrogen))上で10〜14日置いた後、24のコロニーを選択し、そしてウェスタンブロットによって発現レベルを評価した。このアッセイを行うため、24ウェルプレート(Falcon)中で培養した単一ウェルの集密細胞に、0.5mlの血清不含培地を添加した。48時間後、馴化培地を回収した。ウェスタンブロッティング用の試料を10%Tris−グリシンゲル(Novax)中で泳動し、そしてMini Trans−Blotセル(Biorad)を用いて、0.45μmのニトロセルロース膜(Invitrogen)上にブロッティングした。西洋ワサビ(horseradish)ペルオキシダーゼ(Pierce)とコンジュゲート化したウサギ抗マウスIgG Fc抗体と、ブロッティングした膜をインキュベーションした。最高レベルのIGF−1R(ECD)−C3−muIgG1Fcを発現しているクローンを、DHFR選択培地中で増殖させ、そして2x107細胞を各々、50のローラーボトル(Corning)の250mlの高グルコースDMEM(Invitrogen)、10%透析FBS(Invitrogen)、1xグルタミン(Invitrogen)、1x非必須アミノ酸(Invitrogen)、1xピルビン酸ナトリウム(Invitrogen)中に接種した。培地に10%CO2/バランスエアを5秒間通気した後、ローラーボトルにキャップした。0.75rpmで回転するローラーラック上、ローラーボトルを37℃に維持した。
細胞がおよそ85〜90%集密に到達したら(培養のおよそ5〜6日後)、増殖培地を廃棄し、細胞を100ml PBSで洗浄し、そして200ml産生培地を添加した(50%DMEM(Invitrogen)/50%F12(Invitrogen)、1xグルタミン(Invitrogen)、1x非必須アミノ酸(Invitrogen)、1xピルビン酸ナトリウム(Invitrogen)、1.5%DMSO(Sigma))。1週間間隔で、馴化培地を採取し、そして交換した。0.45μm酢酸セルロース・フィルター(Corning、マサチューセッツ州アクトン)を通じて、生じた30リットルの馴化培地をろ過した。
huIGF−1R(ECD)−C3−muIgG1Fcの精製
らせん巻きカートリッジ(分子量カットオフ=10kDa)を用いて、馴化培地から生じたろ液を20倍に濃縮し、次いで、3M KCl、1Mグリシン、pH9.0で1:1に希釈して、最終塩濃度を1.5M KCl、0.5Mグリシン、pH9.0にした。1.5M KCl、0.5Mグリシン、pH9.0で平衡化しておいたrプロテインA−Sepharoseカラム(Amersham Pharmacia Biotech、スウェーデン・ウプサラ)にこの試料を適用した。カラムを40カラム体積の同じ緩衝液で洗浄し、次いで、20カラム体積の0.1Mグリシン−HCl、pH2.8で溶出した。5mLの分画を収集し、そして1mLの1M Tris−HCl、pH7.5で直ちに中和した。huIGF1R(ECD)−C3−muIgGFcを含有する分画をSDS−PAGEによって同定し、プールし、そしてリン酸緩衝生理食塩水に対して透析した。収率は、2.4mg/L馴化培地であった。検出される主なタンパク質種は、成熟α鎖およびβ鎖ならびにネズミFcであり、上昇し、そして不均一な分子量に基づくと、各々、適切にグリコシル化されているようであった。プロセシングされていないIGF−1R(ECD)ならびにグリコシル化されているがタンパク質分解的に切断されていないIGF−1R(CED)もまた、調製物中に存在した。非還元条件下で、より高い分子量にバンドがシフトすることから、ジスルフィド連結がα鎖およびβ鎖を連結したことが示される。最終産物のアミノ末端配列決定によって、タンパク質の60%が、IGF−1R(ECD)のα鎖およびβ鎖間で正しくプロセシングされ、一方、40%がプロセシングされないままであることが示された。
実施例3:ヒトINSR(ECD)−muIgG1の単離
本実施例は、ヒト・インスリン受容体の可溶性断片をクローニングし、そして発現する方法を提示する。
pDSRα:huINSR(ECD)−muIgG1Fcのクローニング
プライマー2830−40:
5’ AGCAAGCTTCCACCATGGGCACCGGGGGCCGG 3’ 配列番号259
(Hind III部位を下線で示す)および2830−41:
5’ ATTTGTCGACTTTTGCAATATTTGACGGGACGTCTAA 3’ 配列番号260
(Sal I部位を下線で示す)を用いて、INSRスプライス変異体のB型をコードするINSR親プラスミドから、ヒトINSR細胞外ドメイン(1〜929)を増幅した(Ullrichら, 1985, Nature 313:756−61; Ebinaら, 1985, Cell 40:747−58)。プライマーには、開始コドンに先行するKozak翻訳開始配列、および続くサブクローニングのための制限部位が含まれた。PerkinElmer 2400上で、以下の条件の下、PCRを行った:1周期の95℃2分間、32周期の95℃30秒間、58.5℃30秒間、および72℃3分間、ならびに1周期の72℃10分間。最終反応条件は、1X pfu TURBO(登録商標)緩衝液、200μM dNTP、各2μMプライマー、5U pfu TURBO(登録商標)(Stratagene)および10ngテンプレートDNAであった。製造者の指示にしたがって、NUCLEOSPIN(登録商標)カラム(BD Biosciences Clontech、カリフォルニア州パロアルト)を用いてPCR産物を精製し、Hind IIIおよびSal I(Roche)で消化し、そしてHind III/Sal Iで消化したpDSRα−muIgG1と連結する前に、ゲル精製した。DNA配列決定によって、挿入物の完全性を確認した。INSR−muFcのタンパク質配列を図11に示す。最終発現ベクターを表2に記載する。
表2
プラスミドに基づく
対番号:
huINSR(ECD)−C3−muIgG1Fcの発現
FUGENETM6リポフェクション試薬(Roche Diagnostics Corp.、インディアナ州インディアナポリス)を用いて、15μmの直鎖化発現ベクターpDSRα:huINSR(ECD)−muIgG1FcでAM−1/D CHOd−細胞をトランスフェクションし、次いで、細胞培地内へのタンパク質の発現および分泌を可能にする条件下で、該細胞を培養した。上述のようにコロニーを選択し、そして分析した。
huINSR(ECD)−C3−muIgG1Fcの精製
らせん巻きカートリッジ(分子量カットオフ=10kDa)を用いて、huINSR(ECD)−muIgGFcを含有する、ろ過した馴化培地を17倍に濃縮し、次いで、3M KCl、1Mグリシン、pH9.0で1:1に希釈して、最終塩濃度を1.5M KCl、0.5Mグリシン、pH9.0にした。1.5M KCl、0.5Mグリシン、pH9.0で平衡化しておいたrプロテインA−Sepharoseカラム(Pharmacia)にこの試料を適用した。カラムを40カラム体積の同じ緩衝液で洗浄し、次いで、20カラム体積の0.1Mグリシン−HCl、pH2.8で溶出した。5mLの分画を収集し、そして1mLの1M Tris−HCl、pH7.5で直ちに中和した。huINSR(ECD)−muIgGFcを含有する分画をSDS−PAGEによって同定し、プールし、そしてリン酸緩衝生理食塩水に対して透析した。収率は、0.9mg/L馴化培地であった。主なタンパク質種は、成熟α鎖およびβ鎖ならびにネズミFcであった。上昇し、そして不均一な分子量に基づくと、これらの種は、各々、適切にグリコシル化されているようであった。プロセシングされていないINSR(ECD)ならびにグリコシル化されているがタンパク質分解的に切断されていないINSR(CED)もまた、調製物中に存在した。非還元条件下で、より高い分子量にバンドがシフトすることから、ジスルフィド連結がα鎖およびβ鎖を連結したことが示された。最終産物のアミノ末端配列決定によって、タンパク質の87%が、INSR(ECD)のα鎖およびβ鎖間で正しくプロセシングされ、一方、13%がプロセシングされないままであることが示された。
実施例3:抗IGF−1RファージFabに関する最初のスクリーニング
本実施例は、抗IGF−1R抗体を同定する方法を提供する。
4人の健康なドナー由来の末梢血リンパ球および胃癌患者1人由来の脾臓リンパ球を用いて構築したTarget Quest Q Fabライブラリー(「TQライブラリー」;Target Quest、オランダ・マーストリヒト)を得た。ライブラリー密度は、3.7x1010クローンであり、3x109重鎖を含有した。供給源、スクリーニング法、およびライブラリーの性質決定は公表されている(de Haardら, 1999, J Biol Chem 274:18218−30)。Dynabeads(200μl)M−450コーティングなし(カタログ番号140.02、Dynal、ニューヨーク州レークサクセス)を、PBSで3回洗浄し、200μlのPBS中、0.5μMの濃度のIGF1R(ECD)−C3−mFcに再懸濁し、そして回転装置上、4℃で一晩インキュベーションした。IGF−1R(ECD)−C3−mFcでコーティングしたビーズを、1mlのPBS中の2%脱脂粉乳(M)(2%MPBS)で3回洗浄し、そして次いで、1mlの2%MPBSで室温で1時間ブロッキングした。平行して、750μlのTQライブラリー(4x1012pfu)を250μlの8%MPBSと、室温で30分間〜1時間、混合することによって、プレブロッキングした。500μlのブロッキングしたビーズを別の微量遠心分離管に移し、そして磁気分離装置上で、ブロッキング溶液から分離した。プレブロッキングしたファージ混合物を、ブロッキングしたビーズに添加し、そして回転装置上、室温で90分間インキュベーションした。ビーズに結合したファージを未結合ファージから分離し、そして次いで、異なる洗浄溶液間では試験管を交換しながら、1mlの2%MPBS/0.1%Tween20で6回、1mlのPBS/0.1%Tween20で6回、PBSで2回洗浄した。1mlの0.1M TEA(pH11)を用いて、結合したファージを10分間溶出し、次いで、ビーズから直ちに分離して、そして0.5mlの1M Tris.HClで中和した。溶出したファージプールを、50mlコニカルチューブ中、4mlの2xYTブロス(水1リットルあたり、10g酵母エキス、16gバクトトリプトン、5gNaCl)および5mlのTG1細菌培養物(O.D.590約0.5)と混合した。感染混合物を、インキュベーター中、37℃で30分間インキュベーションし、次いで3500rpmで20分間遠心分離した。細胞ペレットを1500μlの2xYT−CGブロスに再懸濁し、そして300μlを、5つの2xYT−CG(100μg/mlカルベニシリンおよび2%グルコースを含有する2xYTブロス)プレート各々の上にスプレッドした。30℃で20時間インキュベーションした後、4mlの2xYT−AGを各プレートに添加し、そして細胞スクレーパーでプレートから細胞を回収した。この工程を3回反復した。回収した細胞の少量を、ファージレスキューに用いた(以下を参照されたい)。残りの細胞懸濁物を3500rpmで20分間遠心分離した。細胞ペレットを、ペレットサイズのおよそ半分の体積量の50%グリセロールに懸濁し、そして−80℃で保存した。
ファージをレスキューするため、プレーティングした増幅細胞懸濁物を用いて、40mlの2xYT−CGに約0.05のOD590になるまで接種した。培養物を振盪装置上、OD5900.5まで、37℃でインキュベーションした。対数期の培養物を、M.O.I.20のM13KO7ヘルパーファージ(GIBCO BRL、メリーランド州ガイザーズバーグ、カタログ番号18311−019、1.1x1011pfu/ml)に感染させ、その後、37℃で30分間インキュベーションした。感染した細胞を4000rpmで20分間遠心分離した。細胞ペレットを、200mlの2xYT−CK(100μg/mlカルベニシリンおよび40μg/mlカナマイシン)中に再懸濁して、そして2つの250mlフラスコに移し、そして270rpmで振盪しながら30℃で20時間インキュベーションした。一晩培養物を、4000rpmで20分間遠心分離して、細胞破片を除去した。遠心分離を反復して、細胞破片の除去を確実にした。約1/5体積のPEG溶液(20%PEG8000、2.5M NaCl)を上清に添加して、ファージ粒子を沈殿させた。氷上で少なくとも1時間、混合物をインキュベーションし、その後、4000rpmで20分間遠心分離して、沈殿したファージ粒子を収集した。ファージペレットを1mlのPBSに再懸濁し、そして微量遠心管に移した。ファージ懸濁物を氷上で1時間放置して、ファージ粒子の完全な懸濁を可能にし、そして14,000rpmで2分間遠心分離することによって清澄にして、残った細胞破片を取り除いた。ファージ沈殿工程を反復した。清澄化後、最終ファージペレットをPBSに再懸濁した。レスキューしたファージ懸濁物を、次の選択周期に用いた。
多様な標準的結合パラメータの改変を含む、4周期の選択を行った。第2周期の選択は第1周期の選択と同一であった。投入ファージ数および溶出試薬の変動を第3周期および第4周期に導入した。第3周期の選択のため、5x1011pfuのファージを選択し、そして結合したファージを1μM IGF−1(カタログ番号I3769、Sigma、ミズーリ州セントルイス)または1μM濃度のキメラαIR3−huFc抗体のいずれかで溶出させて、2つの第3周期プール、TQ4−3ISおよびTQ4−3CAを得た。第3周期の両方のプールからレスキューしたファージプールに対して、第4周期の選択を行った。マウスIgG FcをコーティングしたDYNABEADS(登録商標)(Dynal Biotech、ノルウェイ・オスロ)を用いた陰性選択2周期を含んで、実際のIGF−1R選択前に、マウスFc結合因子を取り除いた。陰性選択のインキュベーション時間は、各々30分間であった。TQ4−3ISプールの3.78x1011pfuおよびTQ4−3CAプールの3.75x1012pfuを別個に選択した。結合したファージを、1μMのIGF−2(カタログ番号I2526、Sigma、ミズーリ州セントルイス)で溶出させて、第4周期の2つのプール、TQ4−4ISI2およびTQ4−4CAI2を得た。各溶出工程で、約96〜192のファージDNA挿入物の配列を決定した。
いくつかの場合、第二のスクリーニングを行った。製造者の指示(Qiagen、カリフォルニア州バレンシア)にしたがって、DNA Maxiprepキットを用いて、全TQライブラリーのファージミドDNA混合物、およびIGF−1Rに対する数周期の選択後に増幅された、選択されたファージを調製した。4つのDNA調製物すべてをAsc IおよびEcoR I(New England Biolab、マサチューセッツ州ビバリー)で消化した。生じた2つのAsc I/EcoR I断片を、分離用0.5%アガロースゲル上で分離した。IGF−1Rで選択したファージから、重鎖を含有する2.1kbの断片をゲル精製した。軽鎖およびpCES1ベクター部分を含有する3.9kb断片を、全TQライブラリーDNAからゲル精製した。2.1kbの断片を、TQライブラリーのDNA試料由来の3.9kb断片に、3:1の比で連結した。連結されたDNAを沈殿させ、そしてこれを用いて、エレクトロポレーションによって、TG1細胞を形質転換した。生じた軽鎖シャッフリング二次ライブラリーのライブラリーサイズは、8.8x108であった。96のランダムに選び取ったクローンを配列決定した後、76のユニークな軽鎖配列が得られ、これによって、軽鎖をシャッフルする試みが成功したことが示された。
軽鎖シャッフリングライブラリーをスクリーニングするための結合、洗浄、および溶出条件は、最初のスクリーニングに関して記載したものと本質的に同じであった。しかし、より高いアフィニティの、特に有意により遅い解離速度の、IGF−1R結合因子の増幅のための選択圧を増加させるため、いくつかの変動が含まれた。これらのパラメータは:より多数の投入ファージ(2〜2.7x1013pfu)、より小さいビーズ体積(第1周期では100μl、第2周期では50μl、そして第3周期では25μl)、そして最大20時間の延長した特異的溶出時間であった。溶出緩衝液は、第1周期(RD1)では0.1M TEAであり、RD2では0.4%MPBS中の1μMのIGF−1であり、そしてRD3では0.4%MPBS中の1μMのIGF−1またはIGF−2であった。RD2およびRD3では、15分または2時間で溶出した結合因子を廃棄した。溶出を続け、そして8〜10時間後、そしてまた20時間後に再び、溶出したファージを収集した。
ファージFab ELISAスクリーニング
96ウェルの2ml深底ウェルブロック中、480μl/ウェルの2xYT−CGブロスに、個々のクローンの一晩培養物20μlを接種し、次いで、300rpmで、37℃3時間インキュベーションした。各ウェルに、50μlの1:3希釈したM13KO7ヘルパーファージを添加して、細胞を感染させた。ブロックを振盪せずに37℃で30分間インキュベーションし、そして次いで、150rpmでさらに30分間、穏やかに振盪した。ブロックを3600rpmで20分間遠心分離して、感染した細胞をペレットにした。各ウェル中の細胞ペレットを、480μlの2xYT−CK(100μg/mlカルベニシリンおよび40μg/mlカナマイシンを含有する、2xYTブロス)内に懸濁して、そして30℃で一晩、約20時間、インキュベーションした。3600rpmで20分間遠心分離することによって、細胞破片を分離した。ファージELISAにおいて、レスキューしたファージ上清を用いて、個々のクローンのIGF−1R特異性、INSR交差反応性、またはマウスFc結合に関してチェックした。
3セットのNunc MaxiSorbイムノプレートを、それぞれ、100μl/ウェルの、PBS中の5μg/mlのIGF−1R−C3−mFc、5μg/mlのINSR−mFc、または2μg/mlのマウスIgG1(カタログ番号010−0103、Rockland、ペンシルバニア州ギルバーツビル)で、4℃で一晩コーティングした。コーティングしたプレートを300μl/ウェルのPBSで3回洗浄した。洗浄したプレートを、300μl/ウェルの2%MPBSで、室温で1時間ブロッキングした。その間、170μlのレスキューしたファージを、170μlの4%MPBSと混合することによって、レスキューしたファージの個々のクローンをプレブロッキングした。ブロッキングしたプレートを、300μl/ウェルのTBST(TBS:10mM Tris−HCl、pH7.5、1mM EDTA、150mM NaCl;Tween−20 0.1%)で5回洗浄した。100μl/ウェルのプレブロッキングしたファージ希釈物を、コーティングプレートの各セットに分配し、これを振盪装置上、室温で90分間インキュベーションした。プレートを300μl/ウェルのTBSTで5回洗浄した。2%MPBS中の抗M13−HRPの100μl/ウェル(1:3000希釈、カタログ番号27−9421−01、Amersham Pharmacia Biotech)を分配し、そしてプレートを振盪装置上、室温で1時間インキュベーションした。プレートを300μl/ウェルのTBSTで5回洗浄した。100μl/ウェルの基質1−StepTMABTS(Pierce Biotechnology、イリノイ州ロックフォード、カタログ番号37615)を添加した。プレートを1時間インキュベーションした。シグナル検出のため、OD405を測定した。
ファージがディスプレイした抗体は、インスリン受容体およびネズミFcドメインと、本質的にまったく交差反応性を示さなかった。したがって、IGF−1R ELISAにおいて観察されたシグナルは、IGF−1R細胞外ドメインに特異的である。ファージがディスプレイする抗体4つに関する類似のアッセイの結果を図14に示す。
IGF−1R陽性、INSRおよびmu IgG1陰性のクローンのDNA挿入物の配列を決定した。軽鎖および重鎖の可変ドメイン配列の以下の組み合わせを有する52のユニークなFab配列を同定した:L1H1、L2H2、L3H3、L4H4、L5H5、L6H6、L7H7、L8H8、L9H9、L10H10、L11H11、L12H12、L13H13、L14H14、L15H15、L16H16、L17H17、L18H18、L19H19、L20、H20、L21H21、L22H22、L23H23、L24H24、L25H25、L26H26、L27H27、L28H28、L29H29、L30H30、L31H31、L32H32、L33H33、L34H34、L35H35、L36H36、L37H37、L38H38、L39H39、L40H40、L41H41、L42H42、L43H43、L44H44、L45H45、L46H46、L47H47、L48H48、L49H49、L50H50、L51H51、およびL52H52、ここで「Lx」は軽鎖可変ドメイン番号「x」を示し、そして「Hx」は重鎖可変ドメイン番号「x」を示す。図1は、これらの軽鎖および重鎖の可変ドメイン各々のポリヌクレオチド配列を示す。図2および3は、対応するアミノ酸配列を示す。
実施例4:IgG1発現ベクター内へのVHおよびVLのサブクローニング
本実施例は、以前同定された可変ドメイン配列をIgG1発現ベクターにサブクローニングする方法を示す。
pDSRα20およびpDSRα20:hIgG1C H の構築
pDSRα20:hIgG1CH発現ベクター(WO 90/14363)は、pDSR19:hIgG1CH(本明細書にその全体が援用される、米国仮出願第60/370,407号、2002年4月5日出願、“Human Anti−OPGL Neutralizing Antibodies As Selective OPGL Pathway Inhibitors”を参照されたい)の誘導体であった。pDSRα19:hIgG1CHプラスミドは、ラット可変領域/ヒト定常領域IgG1(rVh/hCh1)をコードした。Xba IおよびBsmB I末端ラット抗体可変領域PCR産物、直鎖プラスミドpDSRα19:hIgG1 CH(Hind IIIおよびBsmB I端)から、Sal I切断ならびにBsmB IおよびSal I断片のゲル単離によって得られるヒトIgG1定常領域(CH1、ヒンジ、CH2およびCH3ドメイン)、ならびにXba IおよびSal I端を持つ直鎖化されたpDSRα19の3ピース連結によって、プラスミドを構築した。部位特異的突然変異誘発によって、pDSRα19内のヌクレオチド2563をグアノシンからアデノシンに変化させることにより、pDSRα20を産生した。重鎖発現ベクター、pDSRα20:hIgG1CHラット可変領域/ヒト定常領域IgG1(rVh/hCh1)は、6163塩基対であり、そして表3に記載する7つの機能領域を含有する。
表3
プラスミドに基づく
対番号:
pDSR20:ラット可変領域/ヒト定常領域IgG1プラスミドを、制限酵素Xba IおよびBsmB Iで消化して、ラット可変領域を取り除き、そしてQIAquick
ゲル抽出キットを用いて精製することによって、直鎖プラスミドpDSRα20:hIgG1CHを調製した。1.0kbpのヒトIgG1定常領域ドメインを含有する直鎖プラスミドpDSRα20:hIgG1CHを用いて、抗IGF−1R可変重鎖コード配列を受け入れた。
抗IGF−1R IgG1重鎖発現クローンの構築
相補的オリゴヌクレオチドプライマーを用いて、ファージミドDNAから重鎖の抗IGF−1R可変領域をコードする配列を増幅した。Hind III部位、Xba I部位、Kozak配列(CCACC)およびシグナル配列(翻訳されるペプチドは、MDMRVPAQLLGLLLLWLRGARCである;配列番号263)を可変領域の5’端上に取り込む一方、BsmB I部位をPCR産物の3’端上に付加するように、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)用のプライマーを設計した。PCR産物をXba IおよびBsmB Iで消化し、そして次いで、ヒトIgG1定常領域(図13)を含有するXba I−BsmB I直鎖pDSRα20:hIgG1CH発現ベクター内にクローニングした。最終発現ベクターは、表4に記載する7つの機能領域を含有した。
表4
プラスミドに基づく
対番号:
抗IGF−1R IgG1可変鎖発現クローンの構築
抗IGF−1Rファージにコードされる軽鎖は、カッパまたはラムダ・クラスのいずれかであった。2つのアプローチの1つを用いて、これらをクローニングした。Hind III部位、Xba I部位、Kozak配列(CCACC)およびシグナル配列(翻訳されるペプチドは、MDMRVPAQLLGLLLLWLRGARCである;配列番号264)がコード領域の5’端に付加されるように、相補プライマーを設計した。エラーを含まないコード領域を有する鎖を、全長産物としてクローニングした。全長軽鎖をXba IおよびSal I断片として、発現ベクターpDSRα20内にクローニングした。最終発現ベクターは、表5に記載する7つの機能領域を含有した。
表5
プラスミドに基づく
対番号:
天然ヒト定常領域配列と比較すると、いくつかのカッパクローンは定常領域にエラーを有した。これらの不一致を取り除くため、5’端にXba I部位を、そして3’端にBsmB I部位を導入するであろうプライマーを用いて、カッパ可変領域を増幅した。次いで、5’端に適合するBsmB Iをそして3’ Sal I端を持つヒト・カッパ軽鎖定常領域(図13)と一緒に、Xba IおよびSal I端を持つpDSRα20にこの断片を連結した。
実施例5:抗体の一過性発現
本実施例は、抗IGF−1R抗体を一過性発現する方法を提供する。
血清不含懸濁に適応した293T細胞において、抗体を一過性に発現させた。すべてのトランスフェクションを、250ml培養として行った。簡潔には、1.25x108細胞(5.0x105細胞/mLx250mL)を2,500RPMで、4℃で10分間遠心分離して、馴化培地を取り除いた。細胞を血清不含DMEMに再懸濁し、そして2,500RPMで、4℃で10分間再び遠心分離した。洗浄溶液を吸引した後、500mLのスピナーフラスコ培養中、増殖培地[DMEM/F12(3:1)+1xインスリン−トランスフェリン−セレン補充剤+1X Pen Strep Glut+2mM L−グルタミン+20mM HEPES+0.01%Pluronic F68]中に細胞を再懸濁した。スピナーフラスコ培養を、125RPMの磁気攪拌プレート上に維持し、これを37℃および5%CO2に維持した加湿インキュベーター中に置いた。50mLコニカルチューブ中、トランスフェクション試薬とともに、プラスミドDNAをインキュベーションした。DNA−トランスフェクション試薬複合体を、血清不含DMEM中、最終培養体積の5%で調製した。培養物1mlあたり1マイクログラムのプラスミドDNAをまず、血清不含DMEMに添加して、その後、1μlのX−TremeGene RO−1539/ml培養物が続いた。複合体を室温でおよそ30分間インキュベーションし、そして次いで、スピナーフラスコ中の細胞に添加した。トランスフェクション/発現を7日間行い、その後、4,000RPMで、4℃で60分間遠心分離することによって、馴化培地を採取した。
最初のトランスフェクションで、必要な100μg精製抗体を得るのに失敗したならば、これらのクローンをローラーボトル中で再発現させた。これらのトランスフェクションは、5%FBS+1x非必須アミノ酸+1xPen Strep Glut+1xピルビン酸ナトリウムを補ったDMEM中で増殖させ、そして維持した、293T接着細胞を用いた。およそ4〜5x107 293T細胞を、850cm2ローラーボトルに一晩植え付けた。次いで、翌日、FUGENETM 6トランスフェクション試薬を用いて、先に植え付けた細胞をトランスフェクションした。およそ6.75mlの血清不含DMEM中、DNA−トランスフェクション試薬混合物を調製した。675μlのFUGENETM 6トランスフェクション試薬をまず、添加し、その後、112.5μgのプラスミドDNAを添加した。複合体を室温で30分間インキュベーションした。次いで、全混合物をローラーボトルに添加した。ローラーボトルに5%CO2ガス混合物を吹き込み、きつくキャップをして、そして0.35RPMで回転するローラーラック上、37℃のインキュベーターに入れた。24時間トランスフェクションを行い、その後、培地を100ml DMEM+1Xインスリン−トランスフェリン−セレン補充剤+1X Pen Strep Glu+1X非必須アミノ酸+1Xピルビン酸ナトリウムと交換した。典型的には、48時間間隔で、各ローラーボトルから2〜3回の採取物(100ml)を得た。採取した血清不含馴化培地を一緒にプールし、そして4,000RPMで、4℃で30分間遠心分離した。
実施例6:抗IGF−1R抗体小規模精製
本実施例は、小規模で抗IGF−1R抗体を精製する方法を提供する。
0.45μm酢酸セルロース・フィルターを通じて馴化培地をろ過し、そしてVivaflow 200 50K接線流膜(Vivascience、ドイツ・ゲッチンゲン)を用いて、およそ8倍に濃縮した。rプロテインA SEPHAROSETM Fast Flow樹脂(Amersham Bioscience、ニュージャージー州ピスカタウェイ)を、リン酸緩衝生理食塩水(2.7mM塩化カリウム、138mM塩化ナトリウム、1.5mMリン酸カリウム、および8.1mMリン酸ナトリウム、pH7.4)(PBS)で4回洗浄し、次いで、濃縮培地に直接適用した。用いた樹脂の量は、ELISAによって決定した抗体濃度に基づき、5μg抗体あたり1μlの樹脂を用いた。培地を穏やかに攪拌しながら4℃で一晩インキュベーションした。樹脂を500gで、4℃で10分間遠心分離した。未結合分画として、上清をデカントした。樹脂を、穏やかに攪拌しながら、PBSで、室温で1分間、4回洗浄し、毎回、500g、4℃で10分間の遠心分離によって、樹脂を収集した。1.5体積の0.1MグリシンpH3.0と樹脂を、室温で10分間、インキュベーションすることによって、抗体を溶出した。樹脂を500g、4℃で10分間遠心分離し、そして溶出した抗体として上清をデカントした。総数3回の溶出のため、上述の溶出工程を反復した;毎回、溶出した物質を0.04体積の1.0M tris−HCl、pH9.2で中和した。0.2μm酢酸セルロース・フィルターを通じて、試料をろ過した。ヒトIgG(Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)を標準として用い、供給される使用説明書にしたがって、Bio−Radタンパク質アッセイ(Bio−Rad Laboratories、カリフォルニア州ハーキュルス)を用いて、ブラッドフォード法によって、タンパク質濃度を決定した。クーマシーブリリアントブルー色素で染色した、4〜20%tris−グリシンSDSポリアクリルアミドゲル(SDS−PAGE)ゲルを用いて、試料をヒトIgG1、K標準(Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)に比較した。これらの調製物において、混入タンパク質は可視ではなかった。
実施例7:抗体を発現する安定なCHOクローンの単離
本実施例は、抗IGF−1R抗体を発現している安定なCHO細胞株を単離するための方法を提供する。
pDSRα20重鎖および軽鎖IgG1発現構築物で、AM1−D CHO細胞(本明細書にその全体が援用される米国特許第6,210,924号)を同時トランスフェクションすることによって、TQ11C、TQ25、TQ58およびTQ59 IgG1の安定発現を達成した。製造者の指示にしたがって、LF2000(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)を用いて、プラスミドトランスフェクションを行った。簡潔には、トランスフェクション24時間前に、5%ウシ胎児血清、1xペニシリン−ストレプトマイシンおよびグルタミン(Invitrogen)、非必須アミノ酸(Invitrogen)、ピルビン酸ナトリウム、ならびにHT(0.1mMヒポキサンチンナトリウム、16nMチミジン;Invitrogen)を補った、10mlのダルベッコの修飾イーグル培地(Invitrogen)中、100mm直径FALCONTMプラスチックペトリ皿(BD Falcon、ニュージャージー州フランクリンレークス)中に、4x106AM1−D CHO細胞をプレーティングした。PvuI(New England Biolabs)を用いて、各々およそ15mgのpDSRα21−軽鎖および重鎖プラスミドDNAを直鎖化し、そして2mlのOPTI−MEM(登録商標)(Invitrogen)中で希釈した。希釈したプラスミドを、2mlのOPTI−MEM(登録商標)で希釈した75μlのLIPOFECTAMINETM2000(LF2000;GIBCO/BRL)と混合し、そして混合物を室温で20分間インキュベーションした。翌日、新鮮な増殖培地を添加した。完全増殖培地中で細胞を48時間培養し、次いで、1:20および1:50希釈で、HT選択培地中でプレーティングした。トランスフェクションのおよそ2週間後、滅菌クローニングディスク(RPI)を用いて、12〜24の可視コロニーを24ウェルプレート内に摘み取った。ウェスタン・イムノブロット分析によって、最高レベルのTQ11C、TQ25、TQ58およびTQ59 IgG1を発現しているクローンを同定した。このアッセイを行うため、0.5mlの血清不含培地を、24ウェルプレート(BD Falcon)中で培養した単一ウェル集密細胞に添加した。24時間後に馴化培地を回収し、そして10μlのCMを等体積の装填緩衝液と混合して、10%Tris−グリシン・ポリアクリルアミド・タンパク質ゲル(Invitrogen)で泳動した。ゲルを0.45μm孔サイズのニトロセルロース膜(Invitrogen)にトランスファーし、そして1:1000希釈のヤギ抗ヒトIgG Fc ImmunoPure抗体(Pierce Biotechnology, Inc.、イリノイ州ロックフォード)および検出剤としてのECLを用いて、ウェスタンブロット分析を行った。
実施例8:抗体の中規模発現
本実施例は、安定なCHO細胞株によって発現される抗IGF−1R抗体を発現する方法を提供する。
実施例7にしたがって作製したCHO細胞株を、スケールアップ発現のため、T−175組織培養フラスコ(Falcon)に拡大した。集密T175フラスコ(およそ2〜3x107細胞)を用いて、3本の850cm2ローラーボトル(Corning Life Sciences、マサチューセッツ州アクトン)に植え付け、そして3本の集密ローラーボトル(ローラーボトルあたりおよそ1〜2x108細胞)を用いて、250mlの高グルコースDMEM(Invitrogen)、10%透析FBS(Invitrogen)、1xグルタミン(Invitrogen)、1x非必須アミノ酸(Invitrogen)、1xピルビン酸ナトリウム(Invitrogen)中の30のローラーに植え付けた。培地に10%CO2/バランスエアを5秒間通気した後、ローラーボトルにキャップした。0.75rpmで回転するローラーラック上、ローラーボトルを37℃に維持した。
細胞がおよそ85〜90%集密に到達したら(培養のおよそ5〜6日後)、増殖培地を廃棄し、細胞を100ml PBSで洗浄し、そして200ml産生培地を添加した(50%DMEM(Invitrogen)/50%F12(Invitrogen)、1xグルタミン(Invitrogen)、1x非必須アミノ酸(Invitrogen)、1xピルビン酸ナトリウム(Invitrogen)、1.5%DMSO(Sigma))。総数4回の採取のため、7日間間隔で、馴化培地を採取した。
0.45μm酢酸セルロース・フィルターを通じて、馴化培地をろ過し、そしてSartorius Sartocon Slice Disposable 30接線流膜(Sartorius AG、ドイツ・ゲッチンゲン)を用いておよそ10倍に濃縮した。濃縮物質を10mlのrプロテインA Sepharoseカラムに4℃で適用し、そして未結合分画として、フロースルーを収集した。カラムを4カラム体積のPBSで洗浄した。結合した試料を、およそ4カラム体積の0.1MグリシンpH3.0で溶出した。溶出物ピークを収集し、そして0.04体積の1.0M tris−HCl、pH9.2で中和した。溶出物を150体積のPBSに対して、4℃で一晩透析した。0.2μm酢酸セルロース・フィルターを通じて試料をろ過し、そして消光係数14,000M−1を用いて、280nmの吸光度を決定することによって、タンパク質濃度を測定した。クーマシーブリリアントブルー色素で染色した、4〜20%tris−グリシンSDS−PAGEゲルを用いて、試料をヒトIgG1、K標準(Sigma−Aldrich、米国ミズーリ州セントルイス)に比較した。供給される使用説明書にしたがって、Pyrotellカブトガニ(Limulus)アメーバ様細胞溶解物アッセイ(Associates of Cape Cod, Inc.、マサチューセッツ州ファルマウス)を用いて、各抗体調製物における内毒素レベルを決定した。
実施例9:ORIGEN(登録商標)用量反応競合アッセイ
本実施例は、抗体が、IGF−1Rに対するリガンド結合を遮断する能力を試験するための方法を提供する。
ORIGEN(登録商標)結合アッセイを用い、製造者(Igen, Inc.、メリーランド州ガイザーズバーグ)によって提供される方法を用いて、TQ11C、TQ25、TQ58およびTQ59 IgG1抗体が、IGF−1Rに対するリガンド結合を遮断可能であるかどうかを決定した。ルテニウムでIGF−1およびIGF−2を標識するため、凍結乾燥タンパク質をPBS内に溶解して、1.0mg/ml溶液を生じた。DMSO中の5mg/mlの標識ストックから、標識(IgenのORI−TAG−NHSエステル、カタログ番号110034)を5:1(標識:タンパク質)のモル比でタンパク質に添加した。混合物を室温(20〜22℃)で1時間、暗所でインキュベーションし、次いで、20μlの2Mグリシンで室温で10分間処理した。PBS中で平衡化したAmersham Bioscience NAP−5カラム(Amersham Biosciences、ニュージャージー州ピスカタウェイ)に適用し、そして0.33ml分画を収集することによって、標識タンパク質を未結合標識から分離した。Micro BCAタンパク質アッセイ(Pierce Biotechnology, Inc.、イリノイ州ロックフォード)によって、分画のタンパク質濃度を決定した。分画2および3は、かなりのタンパク質を含有し、そしてこれらの分画を合わせた。以下の式を用いて、取り込まれたルテニウム標識の量を評価した:IGF−1およびIGF−2のルテニウムtris−ジピリジル化合物(Ru(bpy)3 2+)標識。
ヒツジ抗マウスIgGでコーティングしたDynal M450常磁性ビーズをIGF−1R(ECD)−C3−muFcの固体支持体相として用いた。1xPBS、0.05%TWEENTM20(ICI Americas, Inc.、デラウェア州ウィルミントン)、0.1%BSA、0.01%アジ化ナトリウムを含有するアッセイ緩衝液で3回洗浄することによって、受容体装填用のM450ビーズを調製した。25μlアッセイ緩衝液の体積中、1x106M450ビーズあたり50ngの受容体の比で、IGF−1R(ECD)−C3−muFcを1時間結合させた。用量反応データを生成するため、1nM Ru−IGF−1または2nM Ru−IGF−2と同時に、抗体または非標識IGF−1およびIGF−2因子を増加する濃度(10−11M〜10−6M)で添加した。最終反応体積は100μlであった。暗所中、室温で2時間インキュベーションした後、M8分析装置(Igen)を用いて、未結合ルテニウム標識リガンドを取り除き、そして受容体に結合したリガンドの量を決定した。データを、過剰な非標識増殖IGF1またはIGF−2との競合後に残った、バックグラウンドを減じた総リガンド結合のパーセントとして表した。単一構成要素平衡モデルを用いて、GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad Software、カリフォルニア州サンディエゴ)で競合曲線を生成した。本質的にすべて(>98%)の結合が、過剰な非標識増殖因子で競合された。結合分析中の陽性対照抗体は、ネズミ抗IGF−1R抗体αIR3(Calbiochem、カリフォルニア州サンディエゴ)またはMAB391(R&D systems、ミネソタ州ミネアポリス)、24−57(Biocarta、カリフォルニア州サンディエゴ)および1H7(Santa Cruz Biotechnology, Inc.、カリフォルニア州サンタクルーズ)であった。陰性対照抗体は、抗CD20抗体であった。リガンド競合データを図15に示す。IGF−1およびIGF−2結合反応に関して観察されたKiおよび最大阻害値を表6に列挙する。
1阻害のKi
21μM抗体濃度での最大阻害レベル
実施例10:SPA用量反応競合アッセイ
本実施例は、インスリン受容体(INSR)とインスリン(INS)、およびIGF−1Rに対するIGF−1およびIGF−2の相互作用に対する抗体の影響を評価するためのシンチレーション近接アッセイ(SPA)を示す。
TQ11C、TQ25、TQ58およびTQ59 IgG1抗体に関するIGF−1R結合反応は、1xPBS、0.05%TWEEN(登録商標)20(Mallinkrodt)、0.1%BSA(EM Science、ニュージャージー州ギブスタウン)、50ng IGF−1R(ECD)−C3−muFc、500μg SPA PVT抗マウスIgG蛍光微小球体(Amersham)および最終濃度0.64nMのAmershamから得た125I標識IGF−1またはIGF−2を含有した。総反応体積は100μlであった。INSR結合反応は、これらが50ng INSR(ECD)−muFcおよび0.64nM 125I−INS(Amersham)を含有したことを除いて、同一であった。結合反応を組み立てる前に、SPA PVT微小球体上に、受容体を室温で1時間装填した。用量反応データを生成するため、125I標識増殖因子と同時に、抗体または非標識増殖因子を増加する濃度(10−11M〜10−6M)で添加した。本質的にすべての結合は、過剰な非標識増殖因子で競合された。SPT PVT微小球体のランダムγ刺激によって引き起こされる、受容体とは独立のバックグラウンドは、投入125I cpmの0.5%未満であった。データを、過剰な非標識増殖IGF1またはIGF−2との競合後に残った、バックグラウンドを減じた総リガンド結合のパーセントとして表した。単一構成要素平衡モデルを用いて、GraphPad Prismソフトウェアで競合曲線を生成した。
実施例11:IGF−1Rへの抗体結合
本実施例は、IGF−1Rへの抗IGF−1R抗体の結合を検出する方法を提供する。
BIACORE(登録商標)2000、センサーチップCM5、界面活性剤P20、HBS−EP(10mM HEPES、0.15M NaCl、3.4mM EDTA、0.005%P20、pH7.4)、アミン・カップリングキット、10mMアセテートpH4.5および10mMグリシンpH1.5すべてを、BIAcore, Inc.(ニュージャージー州ピスカタウェイ)から購入した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS、1X、塩化カルシウム不含、塩化マグネシウム不含)はGibcoのものであった。ウシ血清アルブミン(BSA、フラクションV、IgG不含)はSigmaのものであった。組換えプロテインG(「rプロテインG」)はPierce Biotechnologyのものであった。
10mM HEPES、0.15M NaCl、3.4mM EDTA、0.005%P20、pH7.4(HBS−EP緩衝液)の連続流を用いて、製造者の指示にしたがって、センサーチップ表面へのrプロテインGおよびIGF−1R−C3−muFcの固定を行った。簡潔には、0.2M N−エチル−N’−(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)および0.05M N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を含有する混合物60μlを注入することによって、センサーチップ表面上のカルボキシル基を活性化した。20〜50μg/mlの間の濃度で、10mMアセテート、pH4.5中で希釈したrプロテインA(Pierce)またはIGF−1R−C3−mFcを注入することによって、特異的表面を得た。60μlの1Mエタノールアミンを注入することによって、表面上の過剰な反応基を脱活性化した。最終固定レベルは、プロテインG表面に関しては、5,000〜6,000共鳴単位(RU)であり、そしてIGF−1R−mFc表面に関しては〜7,800RUであった。IGF−1R−mFcセンサーチップ上、ブランクの偽カップリング参照表面も調製した。
IGF−1R−mFcおよび抗体間の相互作用の動力学分析を以下のように行った。抗体ならびに陽性対照抗体(抗IR3−CDR−ヒト−マウスキメラ)をPBS+0.005%P20+0.1mg/ml BSA中に希釈し、そしてプロテインG表面上に注入して、抗体を捕捉した。PBS+0.005%P20+0.1mg/ml BSA中で、500nM〜3.9nMにIGF−1R−mFcを希釈し、そして各濃度を、捕捉された抗体表面上に注入するとともに、バックグラウンド減算のため、ブランクのプロテインG表面上に注入した。10分間の解離後、10mMグリシン、pH1.5を注入することによって、各表面を再生した。BIAEvaluation、v.3.2(BIACore, Inc.)を用いて、生じたセンサーグラムの動力学分析を行った。
2つの異なる濃度(0.2nMおよび1nM)の抗体と、多様な濃度(0.01nM〜50nM)のIGF−1R−mFcを、PBS+0.005%P−20+0.1mg/ml BSA中で、インキュベーションすることによって、溶液アフィニティ分析を行った。インキュベーションを、少なくとも5時間、室温で行い、試料が平衡に達するのを可能にした。次いで、固定IGF−1R−mFc表面上に、試料を注入した。試料注入後、25μlの8mMグリシン、pH1.5を注入することによって、表面を再生した。得られる結合シグナルは、平衡溶液中の未結合抗体に比例する。二重曲線1部位均質結合モデル(KinExAソフトウェアv.2.3、Sapidyne Instruments Inc.、インディアナ州ボイズ)を用いた競合曲線の非線形回帰分析から、解離平衡定数(KD)を得た。データを表7に示す。
実施例12:アビジン融合タンパク質のエピトープ・マッピング
本実施例は、抗IGF−1R抗体によって結合されるIGF−1Rのエピトープを決定する方法を提供する。
アビジン−IGF−1R融合タンパク質を用いて、抗体TQ11C、TQ25、TQ58、およびTQ59によって結合されるIGF−1Rのサブドメインを決定した。各タンパク質を発現するため、ニワトリ・アビジン配列が、発現されるIGF−1Rタンパク質のC末端に連結されるように、完全IGF−1R(ECD)のコードDNA配列を、発現ベクターpCep4−アビジン−C内にクローニングした。PCRプライマー2804−25:
5’ GCAAGCTTGGGAGAAATCTGCGGGCCAG 3’ 配列番号265
および2826−68:
5’ ATTGCGGCCGCTTCATATCCTGTTTTGGCCTG 3’ 配列番号266
を用いて、親IGF−1Rプラスミドから、ECDコード配列(1〜932)をPCR増幅した。
pCep4アビジン−C内にクローニングするため、プライマーには、5’ Hind III部位および3’ Not I部位が含まれる。アビジン−ヒトIGF−1R(ECD)融合タンパク質のアミノ酸配列を図12に示す。エピトープ・マッピングに用いたIGF−1Rサブドメイン構築物には:L1(1〜151)、CR(152〜298)、L2(299〜461)、FnIII−1(461〜579)、FnIII−2/ID(580〜798)、FnIII−3(799〜901)、L1+CR+L2(1〜461)、およびL1+CR(1〜298)が含まれた。各発現プラスミド中に示すIGF−1Rサブドメインのアミノ酸座標を括弧内に示す。以下のプライマー対を用いて、親IGF1R cDNAクローンから、各ドメインのコード配列をPCR増幅した:
IGF−1R(ECD)に関して記載するように、プライマーには、クローニングのためのHind IIIおよびNot I部位が含まれた。ニワトリ・アビジン配列(内因性シグナル配列を含む)が、発現されるIGF−1Rタンパク質のN末端に連結されるように、IGF−1Rサブドメインを、発現ベクターpCep4−アビジン−N内にクローニングした。ローラーボトル培養物中のヒト293−EBNA細胞(Invitrogen)の一過性トランスフェクションによって、各アビジン融合タンパク質の発現を達成した。5%FBS+1x非必須アミノ酸+1xPen Strep Glut+1xピルビン酸ナトリウムを補ったDMEM中で細胞を増殖させ、そして維持した。およそ4〜5x107 293−EBNA細胞を、850cm2ローラーボトルに一晩植え付けた。次いで、翌日、FUGENETM 6トランスフェクション試薬を用いて、先に植え付けた細胞を、pCep4−アビジン・プラスミドDNAでトランスフェクションした。およそ6.75mLの血清不含DMEM中、DNA−トランスフェクション試薬混合物を調製した。675μlのFUGENETM 6トランスフェクション試薬をまず、添加し、その後、112.5μgのプラスミドDNAを添加した。複合体を室温で30分間インキュベーションした。次いで、全混合物をローラーボトルに添加した。ローラーボトルに5%CO2ガス混合物を吹き込み、きつくキャップをして、そして0.35RPMで回転するローラーラック上、37℃のインキュベーター中に入れた。24時間トランスフェクションを行い、その後、培地を100ml DMEM+1Xインスリン−トランスフェリン−セレン補充剤+1X Pen Strep Glu+1X非必須アミノ酸+1Xピルビン酸ナトリウムと交換した。48時間間隔で(2〜3周期)、馴化培地の採取および新鮮な培地での交換を行った。採取した血清不含馴化培地を一緒にプールし、そして10,000xgで、4℃で30分間遠心分離することによって清澄にした。
FACSに基づく定量的方法を用いて、各馴化培地中のアビジン融合体の濃度を決定した。ビオチンでコーティングしたポリスチレンビーズ(Spherotech, Inc.、イリノイ州リバティビル)5μl(〜3.5x105)と室温で2時間インキュベーションすることによって、200μlの馴化培地中のアビジン融合タンパク質を捕捉した。遠心分離および0.5%BSAを含有するPBS(BPBS)中でのアビジンコーティングビーズの再懸濁を3周期行うことによって、馴化培地を除去した。アビジンビーズを、1ml BPBS中の1μg/mlのヤギFITC標識抗アビジン抗体(Vector Lab、カリフォルニア州バーリンゲーム)で染色した。0.5時間インキュベーションした後、1800rpmで5分間遠心分離することによって、抗体−ビーズ複合体を収集し、そしてペレットを3回洗浄した。FACSCAN(Beckton Dickson Bioscience、ニュージャージー州フランクリンレークス)で、FITC蛍光を検出した。組換えアビジンから得た標準曲線を用いて、シグナルをタンパク質量に変換した。エピトープ・マッピングのため、適切な量(1〜20ml)の馴化培地とインキュベーションすることによって、〜3.5x105ビーズあたり50〜100ngのアビジン融合タンパク質を、ビオチンビーズに装填した。装填されたビーズを徹底的に洗浄し、そして1ml BPBSに再懸濁した。すべての実験に関して、融合タンパク質を装填する前に、ビオチンビーズを、PBS中の10%BSAでブロッキングした。
方法1、1色アッセイ:IGF−1R(ECD)およびIGF−1Rサブドメイン融合タンパク質を装填した、ビオチンでコーティングしたポリスチレンビーズを、1ml BPBS中、1μgの抗IGF−1R抗体と混合した。室温で1時間インキュベーションした後、4mlの洗浄緩衝液を添加し、そして750gで5分間遠心分離することによって、抗体−ビーズ複合体を収集した。4mlのBPBSに再懸濁することによって、ペレットを3回洗浄した。1ml BPBS中の0.5μg/mlのフィコエリトリン−(PE)標識ヤギ抗ヒトF(ab’)2(Southern Biotech Associates, Inc.、アラバマ州バーミンガム)での処理によって、アビジン−ビーズ複合体に結合した抗体を検出した。試験した抗体は、完全IGF−1R ECDおよびL2ドメインを含有するアビジン融合タンパク質に結合することが見出された。L1、CRまたはFnIII−1に対する結合は、この実験では検出されなかった。L1ドメインとの比較的弱い反応もまた観察された。
方法2、2色アッセイ:ビオチンビーズに結合した、抗IGF−1Rモノクローナル抗体およびアビジン融合体の量を同時に監視するため、FITC標識抗アビジン抗体(1μg/ml)を、0.5μg/ml PE標識ヤギ抗ヒトIgG1と組み合わせて、結合反応中に含めた。1色アッセイに関して記載したように、FACSCAN分析のため、ビーズを調製した。
方法3、抗体競合:フルオレセインでの標識に備えるため、抗体を透析するかまたはPBS(pH8.5)中、1mg/mlの濃度で再懸濁した。Molecular Probes(オレゴン州ユージーン、カタログ番号F2181)の標識([6−フルオレセイン−5−(および−6)−カルボキサミド]ヘキサン酸、スクシンイミジルエステル5(6)−SFX)混合異性体を、DMSO中の5mg/mlの標識ストックから、モル比9.5:1(標識:タンパク質)で、タンパク質に添加した。混合物を暗所中、4℃で一晩インキュベーションした。PBS中での透析によって、未結合標識から標識抗体を分離した。得られたFITC/抗体比は、3〜8の範囲であった。各競合実験に関して、BPBS中、50倍過剰(10〜50μg/ml)の非標識競合剤抗体、アビジン融合タンパク質をコーティングした3.5x105のビオチンビーズを含有する、結合反応を組み立てた。30分間のプレインキュベーション後、FITC標識抗体(1μg/ml)を添加した。この時点以降、方法は、1色法にしたがった。
表8に示すように、試験した抗体4つは各々、IGF−1R L2ドメインに結合する。しかし、IGF−1R L2ドメインにおいて、各抗体が接触する正確なアミノ酸は異なる可能性もある。
1示すヒトIGF−1R領域を含有するアビジン−IGF−1R融合タンパク質を用いて、エピトープ・マッピングを行った。
2ECD融合体は、L1+CR+L2+FnIII−1+FnIII−2+ID+FnIII−3を含有する。
実施例13:細胞表面IGF−1Rに対する抗体結合
本実施例は、細胞表面に発現されたIGF−1Rに対する抗IGF−1R抗体の結合を検出するための方法を提供する。
細胞あたり〜3〜4x105分子のレベルで、ヒトIGF−1R受容体を過剰発現するように操作されたBalb/C 3T3線維芽細胞およびMCF−7ヒト乳癌細胞を用いて、抗体TQ11C、TQ25、TQ58、およびTQ59が、細胞表面上にディスプレイされたヒトIGF−1Rに結合する能力を評価した。本質的にPietrzkowskiら, 1992, Cell Growth Differentiation 3:199−205に記載されるように、レトロウイルスベクターを用いて、ヒトIGF−1R(細胞あたり〜3x105受容体)を安定して過剰発現するBalb/C 3T3細胞株を得た。huIGF−1Rを過剰産生するMCF−7乳癌細胞を、pcDNA3.1発現ベクター(Invitrogen Corp.)でトランスフェクションした。抗IGF−1Rモノクローナル抗体αIR3およびPE標識ヤギ抗ネズミIgG抗体(Caltag Laboratories、カリフォルニア州バーリンゲーム)を用いたFACSによる選択後、高レベルのhu IGF−1R(細胞あたり〜4x105受容体)を発現するゼオシン耐性細胞を増殖させた。選択および増殖プロセスを4回反復した。
以下のように、FACSによって、IGF−1R受容体抗体染色および受容体発現を監視した:過剰PBS(Ca/Mg不含)で2回洗浄し、その後、5mlの細胞解離緩衝液(Sigma)で、室温で10分間処理することによって、T175フラスコ(Corning)から細胞を放出させた。遠心分離によって細胞を収集し、そしてPBS中に再懸濁し、そして遠心分離することによって、2回洗浄した。一次抗体染色のため、1μgの抗体を、0.5%BSAを加えた100μlのPBS(BPBS)中に再懸濁した106細胞に添加し、そして細胞を4℃で1.5時間インキュベーションした。遠心分離によって細胞を収集し、そしてBPBSで2回洗浄して、未結合一次抗体を除去した。100μlのBPBSに細胞を再懸濁し、そして1μgのFITC標識ヤギ抗ヒトF(ab’)2(Southern Biotechnology Associates, Inc.、アラバマ州バーミンガム)と4℃で30分間インキュベーションした。洗浄して未結合FITC二次抗体を除去した後、細胞を1mlのPBS+0.5%BSAに再懸濁し、そしてFACSCAN(Beckton Dickson Bioscience、ニュージャージー州フランクリンレークス)でFITC細胞蛍光を検出した。標準曲線を生成するため、あらかじめ決定したIgG1結合能を用い、Quantumマイクロビーズ(Bangs Laboratories, Inc.、インディアナ州フィッシャーズ)を用い、蛍光レベルを絶対受容体レベルに変換した。製造者に提供されるQuickCal v2.1ソフトウェア(Verity Software House、メイン州トップシャム)を用いて、データ整理を行った。
IGF−1R過剰発現細胞の抗IGF−1R抗体標識のピーク蛍光強度は、試験した各抗体に関して、親Balb/C 3T3およびMCF−7細胞に比較して10〜20倍増加した。これは、IGF−1Rに特異的に結合する抗体に関して予測された結果である。抗体なしまたはFITC標識二次抗体のみで処理した細胞のバックグラウンド蛍光は、わずかであった。
実施例14:IGF−1Rの阻害
本実施例は、抗IGF−1R抗体によるIGF−1Rの阻害を検出する方法を示す。
32D hu IGF−1R+IRS−1細胞阻害
ヒトIGF−1R受容体(細胞あたり20K)およびヒトIRS−1を共発現するネズミ32D細胞は、IGF−1Rシグナル伝達の分子構成要素を調べるのに有効な系であることが立証されている。Valentinisら, 1999, J Biol Chem 274:12423−30。正常な32D細胞は、これらの2つの遺伝子産物のネズミ・オルソログを比較的低レベルで発現する。32D細胞は、通常、増殖および生存にIL3を必要とした。図16、パネルAに示すように、32D huIGF−1R+IRS−1細胞において、IGF−1またはIGF−2は、IL3を置換可能である。IGF−1用量反応曲線に対するEC50は、約0.5nMであり、一方、IGF−2 EC50(2.8nM)は、IGF−1Rに対するIGF−2のアフィニティがより弱いことを反映して、約6倍高い。抗体TQ11C、TQ25、TQ58、およびTQ59が、IGF−1またはIGF−2刺激を遮断する能力を評価するため、96ウェルマイクロタイタープレートに、5%ウシ胎児血清(Gibco/BRL)および1xペニシリン、ストレプトマイシン、グルタミン(Bibco/BRL)、ならびに増加する濃度の抗体(10−12M〜10−6M)を含有するかまたは抗体を含有しない、体積200μlのRPMI(Gibco/BRL)中、ウェルあたり30,000の32D hu IGF−1R+IRS−1細胞を植え付けた。抗体と1時間プレインキュベーションした後、IGF−1(2nM)、IGF−2(8nM)を添加するかまたは何も添加しなかった。3H−チミジン(ウェルあたり1μCi)を抗体添加の27時間後に添加した。21時間後に細胞を採取し、そして各試料に関して、DNA内への3H−チミジンの取り込みを測定した。アッセイを3つ組で行った。陰性対照として、抗CD20抗体を用いた。各抗体TQ11C、TQ25、TQ58、およびTQ59は、IGF−1およびIGF−2が仲介する32D細胞の刺激を完全に遮断可能であった。添加したIGF−1およびIGF−2の非存在下でバックグラウンド増殖が減少するのは、血清IGF−1およびIGF−2の阻害のためである。GraphPad PRIZMTMソフトウェアを用いて、結合データを分析した。データを図16に示す。
Balb/C 3T3 hu IGF−1R細胞阻害
IGF−1は、IGF−1Rを過剰発現する(細胞あたり〜1x106 IGF1R)マウス胚性線維芽細胞(Balb/C 3T3またはNIH 3T3)の血清欠乏培養による3H−チミジンの取り込みを非常に刺激する。Katoら, 1993, J Biol Chem 268:2655−61; Pietrzkowskiら, 1992, Cell Growth Differentiation 3:199−205。この現象は、Balb/C 3T3細胞株hu IGF−1R過剰発現株において、IGF−1およびIGF−2の両方で反復された。どちらの増殖因子も、約20倍、3H−チミジンの取り込みを刺激した。IGF−1用量反応曲線のEC50は、約0.7nMであり、一方、IGF−2 EC50(4.4nM)は7倍高く、IGF−1Rに対してIGF−2のアフィニティがより弱いことが示された。所定の抗体がIGF−1またはIGF−2刺激を遮断する能力を評価するため、96ウェルマイクロタイタープレートに、10%ウシ胎児血清(Gibco/BRL)および1xペニシリン、ストレプトマイシン、グルタミン(Bibco/BRL)を含有する、体積200μlのDMEM(Gibco/BRL)中、ウェルあたり10,000の細胞を植え付けた。一晩インキュベーションした後、細胞が約80%集密に達した際に、200μlのPBSで1回洗浄した後、0.1%BSAを含有する100μlのDMEMと交換した。血清欠乏24時間後、増加する濃度(10−12M〜10−6M)の抗体を添加するか、または抗体をまったく添加しなかった。抗体と1時間プレインキュベーションした後、IGF−1(2nM)、IGF−2(8nM)および3H−チミジン(ウェルあたり1μCi)を添加した。24時間後に細胞を採取し、そして各試料に関して、DNAへの3H−チミジンの取り込みを測定した。アッセイを3つ組で行った。試験した各抗体は、図17に示すように、Balb/C 3T3細胞のIGF−1およびIGF−2が仲介する刺激を完全に遮断可能であった。陰性対照として、抗CD20抗体を用いた(図17中の「CD20」)。
実施例15:抗IGF−1R抗体でのヒトにおける癌の治療
本実施例は、IGF−1R経路の阻害が、ヒト被験体における多様なタイプの腫瘍を治療するのに有効であることを立証する。
表9に示すように、L16として本明細書に同定される軽鎖可変ドメインおよびH16として本明細書に同定される重鎖可変ドメインを含む、完全ヒト抗ヒトIGF−1受容体IgG1モノクローナル抗体(「研究薬剤」)を用いた、ヒトにおいて初めての第1相臨床試験における治療のために、ヒト被験体を選択した。
研究のために選ばれる前に、各被験体は、慣用的な治療が利用可能であるとしても、該被験体の特定の腫瘍のために利用可能な慣用的治療を受けて失敗し、そして対症療法しか受けていなかった。
各被験体は、6つの投薬コホートの1つに割り当てられた。任意の所定のコホート中の被験体に、同じ用量の研究薬剤を静脈内投与した。表9に示すように、コホート間の投薬は、被験体体重キログラムあたり、研究薬剤1〜20ミリグラム(mg/kg)の範囲であった。研究薬剤を10mM酢酸、pH5.2、5.0% w/vソルビトール、および0.004% w/vポリソルベート20中で、30mg/mlに配合した。治療経過中、被験体に、単独の抗腫瘍治療として、研究薬剤を投与した。被験体はまた、適切であるように、個々の苦痛緩和ケアを受け、症状の重症度を減少させた。
すべての目的のため、その全体が本明細書に援用される、Therasseら 2000, J Natl Cancer Inst. 92:205−16に記載されるような固形腫瘍における応答評価基準(RECIST)を用いて、治療に対する応答を評価した。簡潔には、第一の用量の投与前に、各被験体に、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンを行って、最長直径に沿って最大測定可能腫瘍の長さを決定した(表9中の「ベースラインTM(cm)」)。CTスキャンを用いて、治療開始後の特定の時点で、同じ直径に沿って、同じ腫瘍を測定した(表9中の「第X日の腫瘍(cm)」)。こうした各測定を、同じ被験体に関するベースライン腫瘍測定値と比較して、腫瘍サイズの増加または減少パーセントを計算した。図18および表9に示すように、被験体のうち2人が、腫瘍サイズの少なくとも30%の減少を示した。これらの被験体のうち1人は、RECISTによれば部分応答者(PR)として分類された。他の患者は、腫瘍直径の100%の減少を有し、そしてしたがって、RECISTによれば完全応答者(CR)として分類された。8人の他の被験体が最良応答として、30%未満の腫瘍サイズの減少、または20%未満の増加のいずれかを有し、そしてしたがって、RECIST基準を用いて安定な疾患(SD)を有するとして分類される(これらの被験体のうち1人は、最良応答として、初めは腫瘍サイズの2%の減少を有したが、続いて全部で25%の腫瘍サイズの増加を有したことに注目されたい)。これらの被験体(以下に論じるCR被験体を除く)は各々、次第に疾患進行を示し、そして研究から排除された。残りの2人の被験体は、20%を超えて増加するRECIST腫瘍測定を有し、進行(PD)の最良応答を示した。
CR被験体は、肺において巨大な転移性腫瘍を形成し、特にうつぶせで寝ている間に、呼吸困難にさせる、古典的なユーイング肉腫(EWS−FLI遺伝子転座によって特徴付けられる;例えば、各々、すべての目的のため、その全体が本明細書に援用される、Dagherら, 2001, J Pediatr Hematol Oncol. 23:221−24; Morishitaら, 2001, Mol Biotechnol. 18:97−104を参照されたい)を有した。被験体は、1)アドリアマイシンおよびシトキサン、2)イフォスファミドおよびビンクリスチン、3)トポテカンおよびビンクリスチン、4)タキソテール、ならびに5)ゲムシタビンを含む、多数回の以前の化学療法措置に耐性であった。被験体に、第一の用量の12mg/kgの抗IGF−1R抗体を投与した。被験体は、研究薬剤の第一の用量を投与された2日以内に、有意な症状軽減を経験し、数ヶ月ぶりに、うつぶせ位で心地よい睡眠が可能になった。続いて、被験体に3用量の12mg/kgを14日間隔で投与した。最初の注射の50日後、被験体のCTスキャンは、RECISTを用いて、9.8cmから2.2cm、または78%のベースライン測定からの腫瘍サイズ減少を示した。第50日、被験体はまたPETスキャンを受け、このスキャンは、標識グルコースの検出可能な取り込みをまったく示さず、これは、残りの腫瘍組織の大部分またはすべてが死んだことを示した。第85日、被験体は、CTスキャンを受け、このスキャンは、9.8cmの治療前直径から0cmへの腫瘍の完全な消散を示した。被験体に14日間隔で12mg/kgの研究薬剤の投与を続け、そして被験体は第434日になおRECISTによるCRを有した。
PR被験体は、中腸カルチノイド腫瘍を有し、そして試験33週後、部分応答を達成し、RECIST腫瘍寸法は13.1から6.8cmに、または48%減少した。被験体に14日間隔で3mg/kgの研究薬剤の投与を続け、そして63%の最大RECIST腫瘍寸法減少が示された。第655日、被験体は、新規骨転移を有することが発見され、そして研究から排除された。
何人かの被験体は、グレード3または4の血小板減少症を示した。血小板減少症が検出されたすべての症例で投薬を停止または中断すると、血小板減少症は自発的に消散した。これらの被験体で注目される自発的出血の症例はなかった。
本研究で、ユーイング肉腫または線維形成性小円形細胞腫瘍のいずれかの診断を有するさらなる患者を治療した。これらの被験体は各々、あらかじめ、多数回の細胞毒性化学療法措置を受け、そして続いて進行を示していた。こうした被験体12人に、12mg/kg(n=6)または20mg/kg(n=6)のいずれかの研究薬剤を2週間間隔で投与した。表10はこの研究の結果を示す。
RECIST基準を用いて、SDの最良応答を有するとして、2人の被験体を分類した。PETスキャンによると第8日、これらのうち一方は32%、もう一方は10%の腫瘍代謝活性減少を示した。第三の被験体は、第8日、RECISTによればPRを、そして57%の代謝活性減少を達成した。3人すべての被験体において腫瘍は続いて進行し、そしてしたがって被験体を研究から排除した。残りの被験体はすべて、最良応答として進行を示し、そして研究から排除されたが、このうち何人かは、第8日、11%〜35%の間の代謝活性減少を示した。
3人の最良応答者の腫瘍遺伝子型は入手不能であった。しかし、第8日に代謝活性減少を示した(が最良RECIST応答がPDであった)被験体のうち2人は、EWS−FLI転座を含有することが見出された。PDの最良RECIST応答を示し、そして第8日に変化を示さないかまたは腫瘍代謝活性のわずかな増加を示した、2人の他の被験体は、転座を持たないことが見出された。
カルチノイド腫瘍を持つ被験体において、別の研究を行った。5人の被験体に6(n=1)または20mg/kg(n=4)のいずれかの研究薬剤を2週間間隔で投与した。結果を表11に示す。
被験体は各々、他の治療を試み、そして失敗した後に研究に登録された。被験体1は、PRの最良応答を示した(RECIST基準によると32%の腫瘍サイズ減少)。残りの被験体は、SDの最良応答を示し、RECIST基準によると2%〜20%の間の腫瘍サイズ減少を示した。
被験体2および3は、それぞれ、第378日および第282日を過ぎても研究に留まった。被験体1は、進行を示した後、第288日に研究から排除された。被験体4は、ノンコンプライアンスのため、第112日に研究から排除された。被験体5は、肺塞栓を発展させた後、第191日に研究から排除された。
結腸直腸癌(CRC)の被験体において、別の研究を行った。7人の被験体に各々、6mg/kgのパニツムマブ(ヒト抗EGF受容体抗体)および6(n=3)または12mg/kg(n=4)のいずれかの研究薬剤を2週間間隔で投与した。結果を表12に示す。
*「あり」はEGF受容体阻害剤で以前治療された被験体を示す
**第7日に新規に脳転移が発見された
***第57日に非指標病巣が進行
すべての被験体が、標準療法に不応性の進行した固形悪性腫瘍を有した。表12において、「以前のEGFR」列中の「あり」は、被験体が以前、抗EGF受容体抗体(パニツムマブまたはセツキシマブのいずれか)で治療されていたことを意味する。「最良WHO応答」および「第8週CT変化(WHO)」は、WHO基準を用いて行った腫瘍評価を指す(すべての目的のため、その全体が本明細書に援用される、Millerら, 1981, Cancer 47:207−14)。
被験体5は、PRの最良WHO応答を示した。PRの最良WHO応答を経験し、そして第191日を過ぎても研究が継続された被験体5の腫瘍は、KRASの野生型アレルを有することが見出された。研究を開始する前、被験体5は、あらかじめ4回の化学療法措置、ならびに5周期のイリノテカンおよびセツキシマブに失敗していた。
非CRC腫瘍を有する3人の被験体にもまた、6mg/kgパニツムマブおよび6mg/kgの研究薬剤を投与し、そしてこれら被験体の最良応答をWHO基準によって評価した。これらの被験体はいずれも、EGF受容体阻害剤で以前治療されていなかった。甲状腺腫瘍を有する第一の被験体は、進行の最良応答を示し、そして第55日に研究から排除された。この被験体は、研究参加前に、前糖尿病性であり、空腹時グルコースレベルが113mg/dLであり、そしてグレード3高血糖症の用量限定毒性を経験した。GE接合部腫瘍を持つ第二の被験体は、安定な疾患の最良応答を有し、そして第114日、研究から排除された。膵臓腫瘍を有する第三の被験体は、安定な疾患の最良応答を有し、そして第106日、研究から排除された。
多様な腫瘍タイプを有する被験体において、ゲムシタビン治療と組み合わせて研究薬剤を用い、別の研究を行った。11人の被験体に各々、3用量の1000mg/kgのゲムシタビンを4週間ごとに投与し、そしてまた、6(n=6)または12mg/kg(n=5)のいずれかで研究薬剤を2週間ごとに投与した。結果を表13に示す。
*第8日にグレード4好中球減少症
1人を除きすべての評価した被験体が、WHO基準による安定な疾患の最良応答を示した。被験体3は、進行の最良応答を有し、そしてまた、第8日にグレード4好中球減少症の用量限定毒性(表13中、「DLT」)を示した。
実施例16:IGF−1受容体シグナル伝達の阻害への応答と、分子マーカーの相関
本実施例は、分子マーカーを用いて、被験体がIGF−1受容体シグナル伝達阻害剤を含む抗腫瘍治療に対して応答する可能性がより高いかまたはより低いかを決定可能であることを立証する。
特定のバイオマーカーの存在または非存在は、IGF−1受容体シグナル伝達阻害剤での治療に対する被験体の応答と相関することが見出された。図18に示すように、契約研究所(Ventana Medical Systems、アリゾナ州ツーソン)によって、アーカイブ・ホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍切片の免疫組織化学染色によって評価した際、表9に列挙する被験体のうち、治療8週後に疾患進行(PD)を伴う被験体はどちらも、PTEN発現の減少を示した(一方の被験体では、腫瘍細胞の10%でPTEN発現の完全な喪失が観察され、他方の被験体では腫瘍細胞の5%でPTENの完全な喪失が観察された)。安定な疾患を伴う一人の被験体では、PTEN発現は完全に排除された(腫瘍細胞の100%で存在しなかった)(この被験体は、腫瘍RECIST測定では、4%増加を示した)。PTEN喪失は、抗IGF−1R抗体での治療に対してPRまたはCRを有する被験体のどちらでも観察されなかった。
腫瘍細胞の5%でPTEN発現の完全な喪失を示す被験体はまた、PTEN機能喪失突然変異(D331G)を有することも見出された。
通常コドン12で見られるグリシンをシステインに変化させる、KRASをコードする遺伝子の活性化突然変異(すなわちKRAS G12C)が、中腸カルチノイド腫瘍を有するPR被験体、および8週間の治療後、安定な疾患を有する、転移性黒色腫を伴う別の患者(RECIST 1%増加)で観察された。
PTEN遺伝子型および抗IGF−1受容体阻害剤での治療に対する応答性の間の関係をさらに定義するため、負のPTEN状態を示す、6つのヒト腫瘍細胞株を同定した。マウス異種移植片モデルにおいて、抗IGF−1R抗体に対する感度をin vivoで試験した。用いた細胞株は、PC−3およびLnCap(前立腺)、U−87MG(神経膠芽腫)、Cal−51(***)、786−0(腎臓)、およびColo−320(結腸/カルチノイド)であった。これらの細胞株各々の500万細胞を、4〜6週齢の雌無胸腺ヌードマウスの左脇腹に皮下注射した。平均腫瘍サイズがおよそ200〜220mm3に達したら、マウスをランダムに群に割り当てた(10マウス/群)。3つの用量(30、100、または300μg/用量)の抗IGF−1R抗体(「抗体」)、またはヒトIgG1対照(「対照」;300μg/用量)での療法をランダム化した日に開始し、そして各研究最終日まで続けた。抗体または対照の投与は、週あたり2回、腹腔内で行った。キャリパーおよび分析秤を用いて、それぞれ、各動物の腫瘍体積および体重を週2回測定した。平均+/−標準誤差としてデータを集めた。用量群いずれかおよび対照群の間に、腫瘍体積の統計的に有意な減少が測定されたら、細胞株が抗体に対して応答性であると見なした。統計分析のため、反復測定ANOVA(RMANOVA)、事後シェフェを使用した。結果を表14に示す。異種移植片データは、研究した6つのPTENヌルモデルのいずれも抗体に感受性でないことを示した。対照的に、すべての感受性異種移植片モデルは、野生型PTEN状態を示した。これらのデータは臨床的観察を支持し、そしてIGF−1R阻害剤での治療のための負の層別マーカーとしてのPTEN状態の使用を支持する。
本明細書に引用する各参考文献は、解説するすべてに関して、そしてすべての目的のため、その全体が本明細書に援用される。