定義
異なる定義がない限り、ここで使用されるすべての技術および学術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。ここで述べるものと類似または等価の方法および材料が本発明の方法の実施または試験において使用できるが、好ましい方法および材料をここで述べる。本出願(表を含む)全体を通して引用されるすべてのデータベースアクセス記録の内容(例えばHG133注釈ファイル、Entrez,GenBank,RefSeqからの代表的公開識別子ID)も参照によりここに組み込まれる。いずれも2003年6月9日付FASTAファイルである、HG−133Aプローブ配列およびHG−133Bプローブ配列を開示するファイルの内容(AFFYMETRIX(登録商標),Inc.,Santa Clara,CAのウエブサイト参照)も、参照によりここに組み込まれる。紛争の場合は、定義を含む本明細書に準拠する。
「a」および「an」は、冠詞の文法上の対象物の1または1以上(すなわち少なくとも1)を指すためにここで使用される。例として、「an element(1つの要素)」は、少なくとも1つの要素を意味し、1以上の要素を含み得る。
「マーカー」は、表1および表2のいずれか1つに記載されるAFFYMETRIX(登録商標)プローブセット識別子に関連する核酸またはタンパク質の少なくとも1つに対応する、天然に生じるポリマーである。例えばマーカーは、限定を伴わずに、Affymetricプローブおよびプローブセット識別子によって認識される配列、ゲノムDNAのセンスおよびアンチセンス鎖(すなわちその中に生じるイントロンを含む)、ゲノムDNAの転写によって生成される(すなわちスプライシングの前の)RNA、およびスプライシングされたRNAの翻訳によって生成されるタンパク質(すなわち膜貫通シグナル配列のような通常切断される領域の切断の前と後の両方のタンパク質を含む)を含む。ここで使用するとき、「マーカー」はまた、ゲノムDNAの転写によって生成されるRNA(スプライシングされたRNAを含む)の逆転写によって生じるcDNAを含み得る。「マーカーセット」は、本発明の2またはそれ以上(例えば5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、75、100、200、300または400)の予測マーカーを含む、マーカーの群である。本発明のマーカーは、特定プローブセット識別子、代表的な公的識別子、表題、遺伝子記号および/またはEntrez遺伝子識別子によって同定されるような、表1および表2において同定される予測マーカーを含み、および識別子に対応する代表的ヌクレオチドおよび/またはタンパク質配列またはそのフラグメントを含む。
本明細書で使用する「予測マーカー」は、患者の腫瘍細胞において差次的発現を有すると同定されており、さらにその発現が、生存期間がプロテアソーム阻害剤および/またはグルココルチコイドの治療によってより長くまたはより短くなると予想される患者に特徴的であるマーカーを含む。例えば予測マーカーは、短期生存患者においてより高い発現を示すマーカーを含む;あるいは、予測マーカーは、長期生存患者においてより高い発現を示すマーカーを含む。同様に、予測マーカーは、短期生存患者においてより低い発現を示すマーカーならびに長期生存患者においてより低い発現を示すマーカーを含むことが意図されている。そこで、ここで使用するとき、予測マーカーは、これらの可能性の1つずつ全部を含むことが意図されており、さらに各々の単一マーカーを個別に予測マーカーとして含み得る;あるいは「複数の予測マーカー」または「予測マーカーセット」に言及するときは、特徴の1またはそれ以上または全部を集合的に含み得る。予測マーカーセットはまた、「分類器」としても知られ得る。
ここで使用するとき、「天然に生じる」は、自然界で生じる(例えば天然タンパク質、天然に生産されるタンパク質等をコードする)分子(例えばRNA、DNA、タンパク質等)を指す。
「プローブ」という用語は、特異的に意図される標的分子、例えば本発明のマーカーに選択的に結合することができる分子を指す。プローブは、当業者によって合成され得るかまたは適切な生物学的製剤に由来し得る。標的分子の検出のために、プローブは、ここで述べるように、標識されるように特異的に設計され得る。プローブとして利用できる分子の例は、RNA、DNA、タンパク質、抗体および有機単量体を含むが、これらに限定されない。
マーカーの発現の「正常」レベルは、癌に罹患していない患者における、類似の環境または応答状況にある細胞におけるマーカーの発現のレベルである。マーカーの発現の正常レベルはまた、「参照試料」(例えばマーカーに関連する疾患を有していない健常被験者からの試料)の発現のレベルを表わし得る。参照試料発現は、参照データベースからの1またはそれ以上のマーカー発現レベルから成り得る。あるいは、マーカーの発現の「正常」レベルは、腫瘍が由来するのと同じ患者からの、類似の環境または応答状況にある非腫瘍細胞におけるマーカーの発現のレベルである。
マーカーの「差次的発現」は、患者によってレベルが異なるマーカーの発現を指す。さらに、本発明では、その発現レベルが治療に関連する長期または短期生存と相関するまたはさもなければ長期または短期生存を指示するとき、マーカーを「差次的に発現される」と称する。
「相補的」は、2本の核酸鎖の領域間または同じ核酸鎖の2つの領域間の配列相補性の広い概念を指す。1番目の核酸領域のアデニン残基は、最初の領域と逆平行である2番目の核酸領域の残基と、その残基がチミンまたはウラシルである場合、特異的水素結合(「塩基対合」)を形成できることは公知である。同様に、1番目の核酸鎖のシトシン残基は、最初の鎖と逆平行である2番目の核酸鎖の残基と、その残基がグアニンである場合、塩基対合できることは公知である。核酸の1番目の領域は、同じかまたは異なる核酸の2番目の領域に対して、それら2つの領域が逆平行に配置されているとき、1番目の領域の少なくとも1つのヌクレオチド残基が2番目の領域の残基と塩基対合できる場合、相補的である。好ましくは、1番目の領域は1番目の部分を含み、2番目の領域は2番目の部分を含み、それにより、1番目と2番目の部分が逆平行に配列されているとき、1番目の部分の少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%のヌクレオチド残基が2番目の部分内のヌクレオチド残基と塩基対合することができる。より好ましくは、1番目の部分のすべてのヌクレオチド残基が2番目の部分内のヌクレオチド残基と塩基対合することができる。
本明細書で使用するとき、「情報的(informative)」発現は、短期または長期生存に対応する、差次的に発現される予測マーカーの発現レベルを指すことが意図されている。患者におけるマーカーの発現レベルは、発現を評価するために用いられるアッセイの標準誤差を上回る量で参照レベルより大きい場合、「情報的」である。マーカーの情報的発現レベルは、測定された発現レベルと結果、例えば短期または長期生存の統計的相関に基づいて決定され得る。統計分析の結果は、ここで述べる方法において使用するマーカーを選択するための閾値を確立することができる。あるいは、差次的に発現されるマーカーは、短期および長期生存を予測する典型的範囲の発現レベルを有する。情報的発現レベルは、発現の短期および長期生存範囲内に含まれるレベルである。さらに、マーカーのセットは、それらの発現レベルの組合せが、ここで提供する方法によって決定される予測マーカーセットについてのあらかじめ定められたスコアに一致するかもしくはそれより上または下である場合、共に「情報的」であり得る。
所与のマーカーは、患者における短期および長期生存の両方を指示し得る;例えば、所与の閾値(例えば情報的発現レベル)を上回る、ここで提供する予測マーカーの発現は、ここで述べるように、患者における長期生存を指示し得る。所与の閾値を下回る(例えば情報的レベルを下回る)マーカーの発現は、患者における短期生存を指示し得る。
癌または腫瘍は、本発明の方法に従った治療または診断される。「癌」または「腫瘍」は、初期腫瘍および何らかの転移を含む、患者における何らかの新生物増殖を含むことが意図されている。癌は、液体または固形腫瘍型であり得る。液体腫瘍は、例えば骨髄腫(例えば多発性骨髄腫)、白血病(例えばワルデンシュトレーム症候群、慢性リンパ性白血病、他の白血病)、およびリンパ腫(例えばB細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫)を含む、血液起源の腫瘍を含む。固形腫瘍は、器官を起源とし得るものであり、肺、***、前立腺、卵巣、結腸、腎臓および肝臓などの癌を含む。ここで使用するとき、腫瘍細胞を含む癌細胞は、異常な(高い)速度で***する細胞を指す。癌細胞は、扁平上皮癌、基底細胞癌、汗腺癌、皮脂腺癌、腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、未分化癌、気管支原性癌、黒色腫、腎細胞癌、ヘパトーム−肝細胞癌、胆管癌(bile duct carcinoma)、胆管癌(cholangiocarcinoma)、乳頭状癌、移行上皮癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、乳癌、消化器癌、結腸癌、膀胱癌、前立腺癌、および頭頸部領域の扁平上皮癌のような癌腫;線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索肉腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、滑膜肉腫および中皮肉腫のような肉腫;骨髄腫、白血病(例えば急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、顆粒球性白血病、単球性白血病)、およびリンパ腫(例えば濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型リンパ腫、悪性リンパ腫、形質細胞腫、形質細胞腫、細網肉腫、またはホジキン病)のような血液癌;および神経膠腫、髄膜腫、髄芽細胞腫、神経鞘腫またはエピディモーマ(epidymoma)を含む神経系の腫瘍を含むが、これらに限定されない。
「長期生存者」および「短期生存者」という用語は、癌患者が生存すると予測される、治療の最初の投与を受けた後の時間の長さを指す。「長期生存者」は、短期生存者と同定される患者よりも緩やかな速度の腫瘍の進行および腫瘍による死亡を有すると予想される患者を指す。「生存延長」または「より緩やかな速度の死亡」は、参照標準と比較して表1および/または表2からの十分な数の予測マーカーの高いまたは低い発現に基づく、集団の70%、80%、90%またはそれ以上が治療の最初の投与を受けた後十分な期間生存するという推定寿命判定である。「より速い速度の死亡」または「より短い生存期間」は、参照標準と比較して表1および/または表2からの十分な数の予測マーカーの高いまたは低い発現に基づく、集団の50%、40%、30%、20%、10%またはそれ以下が治療の最初の投与を受けた後十分な期間生存しないという推定寿命判定を指す。好ましくは、十分な期間は、癌治療を受けた最初の日から数えて少なくとも6、12、18、24または30ヶ月間である。
「治療」は、さらなる腫瘍増殖を予防するまたは阻害するため、ならびに腫瘍の縮小を生じさせるため、およびより長い生存期間を与えるための治療法の使用を意味する。治療はまた、腫瘍の転移の予防を含むことが意図されている。腫瘍は、癌または腫瘍の少なくとも1つの症状(応答性/非応答性、進行までの時間、または当技術分野において公知であり、ここで述べる指標によって測定される)が緩和される、終結される、緩慢化される、最小化される、または予防される場合、「阻害される」または「治療される」。ここでさらに説明する治療レジメン(例えばプロテアソーム阻害レジメン、グルココルチコイドレジメン)を使用した治療に従った腫瘍の身体的または他の何らかの症状の改善は、本発明の範囲内である。
本明細書中で使用するとき、「作用物質」は、腫瘍細胞を含む癌細胞が治療プロトコールにおいて暴露され得る何らかの物質と広く定義される。本発明に関して、そのような作用物質は、プロテアソーム阻害剤、グルココルチコイドステロイド剤、ならびに当技術分野において公知であり、ここでさらに詳細に述べる化学療法剤を含むが、これらに限定されない。
「キット」は、本発明のマーカーまたはマーカーセットを特異的に検出するための少なくとも1つの試薬、例えばプローブを含む何らかの製品(例えば包装または容器)である。製品は、本発明の方法を実施するための単位として宣伝、配給、販売または提供され得る。そのようなキットに含まれる試薬は、短期および長期生存マーカー発現を検出するときに使用するためのプローブ/プライマーおよび/または抗体を含む。加えて、本発明のキットは、好ましくは適切な検出アッセイを説明する指示書を含み得る。そのようなキットは、例えば臨床現場で、癌の症状を示す患者、特に血液癌、例えば骨髄腫(例えば多発性骨髄腫)、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)、白血病、および固形腫瘍(例えば肺、***、卵巣等)を含む、プロテアソーム阻害療法および/またはグルココルチコイド療法で治療することができる癌の存在の可能性を示す患者を診断し、評価するために好都合に使用できる。
本発明の方法および組成物は、癌に罹患している患者についての診断および治療における使用のために設計される。癌は、液体または固形腫瘍型であり得る。液体腫瘍は、例えば骨髄腫(例えば多発性骨髄腫)、白血病(例えばワルデンシュトレーム症候群、慢性リンパ性白血病、他の白血病)、およびリンパ腫(例えばB細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫)を含む、血液起源の腫瘍を含む。固形腫瘍は、器官を起源とし得るものであり、肺、***、前立腺、卵巣、結腸、腎臓および肝臓などの癌を含む。
本発明は、患者において腫瘍を治療するための適切な癌治療レジメンを決定する、評価する、助言するまたは提供するための方法を提供する。提供される方法においてまたは提供される方法と共に使用するのに適した癌治療レジメンは、プロテアソーム阻害治療レジメンおよび/またはグルココルチコイド治療レジメンを含む。例えばプロテアソーム阻害剤治療は、単独または1またはそれ以上の追加薬剤と組み合わせた、プロテアソーム阻害剤(例えばボルテゾミブ、またはここでさらに詳細に述べる何らかの他のプロテアソーム阻害剤)による患者の治療を含む。もう1つの例では、グルココルチコイド治療は、単独または1またはそれ以上の追加薬剤と組み合わせた、グルココルチコイド(例えばデキサメタゾン、またはここでさらに詳細に述べる何らかの他のグルココルチコイド)による患者の治療を含む。癌治療レジメンはまた、用量、投薬の頻度および癌治療薬を投与する回数を指す。ここで使用する「投薬スケジュール」または「投与スケジュール」という用語は、投薬の頻度と癌治療薬を投与する回数の両方を指す。
提供される方法は、患者の腫瘍において少なくとも1つの予測マーカーの発現のレベルを測定すること、および適宜に、1またはそれ以上の予測マーカーの発現レベルに基づき腫瘍を治療するための癌治療レジメンを決定するまたは癌治療レジメンに関して助言することを含む。患者の試料における1またはそれ以上の予測マーカーの情報的発現レベルは、ここで提供する予測マーカーまたはマーカーセットがより長い生存期間を指示するときは、患者がより長い生存期間を示すと予想され、プロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療から利益を得ることの指標である。患者の試料における1またはそれ以上の予測マーカーの情報的発現レベルはまた、患者がより長い生存期間を示すと予想され、プロテアソーム阻害および/またはグルココルチコイド治療と同様の生存期間予想を提供する、プロテアソーム阻害および/またはグルココルチコイド治療以外の代替的癌治療から利益を得ることを指示し得る。加えて、患者の試料における1またはそれ以上の予測マーカーの情報的発現レベルは、ここで提供する1またはそれ以上のマーカーが短期生存を指示するときは、患者が長い生存期間を有さないと予想され、プロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療から利益を受けないか、または長期生存者として分類される患者よりも、プロテアソーム阻害および/またはグルココルチコイド治療によるより積極的な治療レジメン(例えば用量および/または投与レジメン)を必要とし得ることの指標である。
本発明はさらに、患者が、腫瘍を治療するための癌治療レジメンに対する長期生存者であると予想されるかどうかを判定するまたは助言するための方法を提供する。そのような方法は、患者の腫瘍において少なくとも1つの予測マーカーの発現のレベルを測定すること、および予測マーカーまたはマーカーセットの発現レベルに基づき、腫瘍を治療するためのプロテアソーム阻害に基づくレジメンおよび/またはグルココルチコイドに基づくレジメンを決定する、助言するまたは提供することを含む。患者の試料における予測マーカーの情報的発現レベルは、患者が長期生存を示すと予想され、プロテアソーム阻害および/またはグルココルチコイド治療から利益を得ることの指標である。患者の試料における予測マーカーセットの情報的発現レベルは、ここで提供する1またはそれ以上のマーカーが長期生存を指示するときは、患者が長期生存を示すと予想され、プロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療から利益を得ることの指標である。患者の試料における1またはそれ以上の予測マーカーの情報的発現レベルはまた、患者がより長い生存期間を示すと予想され、プロテアソーム阻害および/またはグルココルチコイド治療と同様の生存期間予想を提供する、プロテアソーム阻害および/またはグルココルチコイド治療以外の代替癌治療から利益を得ることを指示し得る。本発明の方法における使用のための選択予測マーカーは、長期生存患者において高い発現を示す、および/または疾患の進行および死亡までにより長い期間を示すと予想され、例えばプロテアソーム阻害療法またはグルココルチコイド療法による治療に特異的でない、予測マーカーを含む。
本発明は、患者が侵攻性疾患を有しており、侵攻性疾患を示さない患者よりも速く疾患が進行し、死亡に至ると予測されるかどうかを判定するまたは助言するための方法を提供する。侵攻性疾患を有することを示す患者はまた、腫瘍を治療するための癌治療レジメンに対して短い生存期間を有すると予測され得る。そのような方法は、患者の腫瘍において少なくとも1つの予測マーカーの発現のレベルを測定すること、および予測マーカーまたはマーカーセットの発現レベルに基づき患者が侵攻性疾患を有すると同定することを含む。患者の試料における予測マーカーの情報的発現レベルは、患者が侵攻性疾患を有しており、長期生存者であると判定された患者よりも速やかに死亡へと進行する可能性が高く、プロテアソーム阻害に基づくレジメンおよび/またはグルココルチコイドに基づくレジメンから利益を得ないと考えられるか、または長期生存者として分類される患者よりも、プロテアソーム阻害および/またはグルココルチコイド治療によるより積極的な治療レジメン(例えば用量および/または投与レジメン)を必要とし得ることの指標である。患者における予測マーカーセットの情報的発現レベルは、ここで提供する選択マーカーまたはマーカーセットが疾患の侵攻性を指示するときは、患者が侵攻性疾患を有する患者であり、プロテアソーム阻害に基づくレジメンおよび/またはグルココルチコイドに基づくレジメンから利益を得られないか、または長期生存者として分類される患者よりも、プロテアソーム阻害および/またはグルココルチコイド治療によるより積極的な治療レジメン(例えば用量および/または投与スケジュール)を必要とし得ることの指標である。本発明の方法における使用のための選択予測マーカーは、短期生存患者において高い発現を示す、および/または患者における疾患の進行および死亡までにより短い期間を示し、プロテアソーム阻害療法またはグルココルチコイド療法による治療に特異的でない、予測マーカーを含む。前記方法は、プロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療以外の代替的癌治療;プロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療と併用する追加癌治療;プロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療の、例えば長期生存患者であると予測される患者について決定される、助言されるまたは提供される以外の、代替用量および/または投与スケジュールを決定する、助言するまたは提供することをさらに含み得る。
本発明はさらに、プロテアソーム阻害に基づく治療レジメンおよび/またはグルココルチコイドに基づく治療レジメンで患者における腫瘍を治療するための方法を提供する。そのような治療方法は、患者の腫瘍において少なくとも1つの予測マーカーの発現のレベルを測定すること;腫瘍を治療するためのプロテアソーム阻害に基づくレジメンおよび/またはグルココルチコイドに基づくレジメンが1またはそれ以上の予測マーカーの発現レベルに基づき適切であるかどうかを判定するまたは助言すること;および患者の発現レベルが長期生存患者を指示するときは、プロテアソーム阻害に基づく治療および/またはグルココルチコイドに基づく治療で患者を治療することを含む。患者の試料における予測マーカーの情報的発現レベルは、ここで提供する予測マーカーまたはマーカーセットが、患者が長期生存患者であることを指示するときは、患者が長期生存患者であり、プロテアソーム阻害に基づくレジメンおよび/またはグルココルチコイドに基づくレジメン療法から利益を得ることの指標である。
本発明はさらに、同様の生存期間を生じさせると予測される、プロテアソーム阻害に基づくレジメンおよび/またはグルココルチコイドに基づくレジメン以外の癌治療で患者における腫瘍を治療するための方法を提供する。そのような治療方法は、患者の腫瘍において少なくとも1つの予測マーカーの発現のレベルを測定すること;腫瘍を治療するためのプロテアソーム阻害に基づくレジメンおよび/またはグルココルチコイドに基づくレジメンが1またはそれ以上の予測マーカーの発現レベルに基づき適切であるかどうかを判定するまたは助言すること;および患者の発現レベルが長期生存患者を指示するときは、代替癌治療で患者を治療することを含む。患者の試料における予測マーカーの情報的発現レベルは、ここで提供する予測マーカーまたはマーカーセットが、患者が長期生存患者であることを指示するときは、患者が長期生存患者であり、代替癌治療から利益を得ることの指標である。
本発明は、短期生存患者として同定される患者において腫瘍を治療するための方法を提供する。そのような治療方法は、患者の腫瘍における少なくとも1つの予測マーカーの発現に基づき癌治療レジメンを決定するまたは癌治療レジメンに関して助言すること、および患者の発現レベルが短期生存患者を指示するときは、癌治療レジメンで患者を治療することを含む。癌治療レジメンは、ロテアソーム阻害治療レジメンおよび/またはグルココルチコイド治療レジメン以外の癌治療レジメン;プロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療と併用して投与される1またはそれ以上の追加癌治療;プロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療の、例えば長期生存患者であると予測される患者について決定される、助言されるまたは提供される以外の、代替的用法および/または用量での投与であり得る。
本発明の方法は、表1および表2のいずれかに示す予測マーカーの少なくとも1つを使用する。加えて、提供される方法は、予測マーカーセットを形成する2、3、4、5、6またはそれ以上のマーカーを使用し得る。例えば表1および表2のマーカーから選択されるマーカーセットは、ここで提供する方法を用いて作製でき、表1および/または表2に示すマーカーの2から全部までおよびその間のありとあらゆる組合せ(例えば4つの選択マーカー、16の選択マーカー、74の選択マーカー等)を含み得る。一部の実施形態では、予測マーカーセットは、少なくとも5、10、20、40、60、100、150、200または300またはそれ以上のマーカーを含む。一部の実施形態では、予測マーカーセットは、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、100、150、200、300、400、500、600、700、1,000、2000以下のマーカーを含む。一部の実施形態では、予測マーカーセットは、癌、例えば血液癌(例えば多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫等)または固形腫瘍由来の癌(例えば肺、***、前立腺、卵巣、結腸、腎臓または肝臓における)に関連する複数の遺伝子を含む。一部の実施形態では、予測マーカーセットは、表1および表2に列記される複数のマーカーを含む。一部の実施形態では、予測マーカーセットは、表1および/または表2に列記されるマーカーの少なくとも約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%または約99%を含む。選択される予測マーカーセットは、ここで提供する方法および当技術分野において公知の類似方法を用いて、提供される予測マーカーから構築され得る。
本発明の方法はさらに、ここでさらに詳細に述べる方法を用いて表1および表2に示す個々の予測マーカーからマーカーセットを構築する能力を提供する。さらなる態様では、提供される診断、予後および治療方法のために、2以上のマーカーセットを組み合わせて使用することができる。
本発明の方法は、患者が特定癌治療レジメン、例えばプロテアソーム阻害治療レジメンおよび/またはグルココルチコイド治療レジメンで長期生存を示すと予測されるかどうかを同定するために、腫瘍治療の前に予測マーカーの発現のレベルの測定を行うように実施できる。
加えて、本発明の方法は、プロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療を受けている患者について長期生存が予測される場合、または今後プロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療を含む追加治療を受ける患者について長期生存が予測される場合は、進行中の腫瘍治療と併用して実施できる。
さらに、本発明の方法は、腫瘍治療を実施した後、患者が長期生存を示すと予測されるかどうかおよび/または追加癌治療レジメンを実施すべきかどうかを評価するために実施できる。そのような方法はまた、患者についての将来の癌治療レジメン、例えば将来のプロテアソーム阻害治療レジメンおよび/またはグルココルチコイド治療レジメンを評価するためにも実施できる。
本発明の方法が進行中の腫瘍治療の間にまたは腫瘍治療の経過後に実施されるかどうかにかかわらず、腫瘍治療は、単独でまたは代替形態の癌治療と共に、プロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療を含み得る。本発明の方法は、患者が追加または将来のプロテアソーム阻害および/またはグルココルチコイド治療レジメンから利益を受けるかどうかを判定することができ、そのようなプロテアソーム阻害および/またはグルココルチコイド治療を単独でまたは追加治療薬と組み合わせて含み得る。
ある態様では、患者の腫瘍における予測マーカーの発現のレベルは、腫瘍の試料を単離し、単離試料またはその一部に関する分析を実施することによって測定される。もう1つの態様では、患者の腫瘍における予測マーカーの発現のレベルは、インビボ画像化法を用いて測定される。
ある態様では、予測マーカーの発現のレベルを測定することはmRNAの検出を含む。そのような検出は、例えばPCR、ノーザンブロット法、ヌクレオチドアレイ検出、適切な核酸を検出することができるプローブを用いたインビボ画像化法を含む、何らかの適切な方法によって実施できる。他の態様では、予測マーカーの発現のレベルを測定することはタンパク質の検出を含む。そのような検出は、例えばELISA、ウエスタンブロット法、免疫検定法、タンパク質アレイ検出、適切なペプチドを検出することができるプローブを用いたインビボ画像化法を含む、何らかの適切な方法を使用して実施できる。
予測マーカーの発現のレベルの測定は、参照発現レベルと比較される。例えば参照発現レベルは、マーカーまたはマーカーセットが情報的であるかどうかを評価するためおよび患者が短期または長期生存者であるかどうかを判定するための評価を行うために、あらかじめ定められた発現の標準参照レベルであり得る。加えて、予測マーカーの発現のレベルの測定は、患者が短期または長期生存者であるかどうかを判定するための評価を行うために予測マーカーと同時に測定される発現の内部参照マーカーレベルと比較され得る。例えば本発明の予測マーカーではないが、一定の発現レベルを示すことが公知である1またはそれ以上の異なるマーカーを、内部参照マーカーレベルとして評価することができ、予測マーカー発現のレベルを参照品と比較して判定する。選択的な例では、非腫瘍試料である組織試料における1またはそれ以上の選択予測マーカーの発現を、内部参照マーカーレベルとして評価することができる。1またはそれ以上のマーカーの発現のレベルは、ある態様では高い発現を有すると判定され得る。1またはそれ以上のマーカーの発現のレベルは、別の態様では低い発現を有すると判定され得る。発現のレベルは、参照レベルと比較して発現の情報的変化なしと判定され得る。さらに他の態様では、発現のレベルは、ここで提供する方法によって決定される、あらかじめ定められた標準発現レベルに対して判定される。
本発明はまた、癌治療レジメン、例えばプロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療レジメンで、癌患者(例えば液体腫瘍または固形腫瘍を有する患者)を診断、病期分類、予後判定、観測および治療するための様々な試薬およびキットに関する。表1および表2に示す少なくとも2つの単離予測マーカーを含む、マーカーおよびマーカーセットの検出のため、および本発明の方法において使用するための試薬が提供される。そのような試薬は、表1および表2に示す関連予測マーカーの検出のための核酸プローブ、プライマー、抗体、抗体誘導体、抗体フラグメント、およびペプチドプローブを含む。
さらに、提供される方法における使用のためのキットが提供される。本発明のキットは、予測マーカー(例えば少なくとも1つの予測マーカー)および予測マーカーセット(例えば表1および表2から選択される少なくとも2、3、4またはそれ以上のマーカー)を評価するための試薬、ならびにここで提供する方法に従った使用のための指示書を含む。ある態様では、提供されるキットは、予測マーカーの評価のための核酸プローブを含む。さらに他の態様では、提供されるキットは、予測マーカーの評価のための抗体、抗体誘導体、抗体フラグメント、またはペプチド試薬を含む。
長期および短期生存マーカーの同定
本発明は、癌治療、例えばプロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療を受けている患者において長い生存期間を予測し、その発現がそのような患者におけるより長い生存期間と相関する、腫瘍において発現されるマーカーを提供する。本発明はまた、癌治療、例えばプロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療を受けている患者においてより短い生存期間を予測し、その発現がそのような患者におけるより短い生存期間と相関する、腫瘍において発現されるマーカーを提供する。従って、マーカーの1またはそれ以上が、プロテアソーム阻害治療レジメンおよび/またはグルココルチコイド治療レジメンによって成功裏に治療され得る癌を同定するために使用できる。本発明のマーカーの1またはそれ以上が、プロテアソーム阻害治療レジメンおよび/またはグルココルチコイド治療レジメンを用いて成功裏に治療され得る患者を同定するために使用できる。加えて、本発明のマーカーは、プロテアソーム阻害療法および/またはグルココルチコイド療法による治療に対して抗療性となった患者または抗療性となる危険度が高い患者を同定するために使用できる。本発明はまた、患者が癌治療レジメン、例えばロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療レジメンに対して長期または短期生存を示す可能性が高いかどうかを予測できる、ここでは「マーカーセット」と称するマーカーの組合せを特徴とする。
表1は、プロテアソーム阻害治療(例えばボルテゾミブ)またはグルココルチコイド治療(例えばデキサメタゾン)を受けている患者における全体的生存期間(OS)の特異的識別子である、264名の患者からの試料に適用した統計分析を用いて同定された予測マーカーを示す。特に、表1のマーカーは、ここでさらに詳細に述べるように、Cox比例ハザード解析によって決定される死亡までの予測時間と相関する。表2も、統計分析を用いて同定された予測マーカーを示すが、表1のデータに関して評価した患者のサブセットから導かれ、ここでさらに詳細に述べるように、BairとTibshiraniのsuperpc法を用いて決定された。表2の予測マーカーも、プロテアソーム阻害治療(例えばボルテゾミブ)またはグルココルチコイド治療(例えばデキサメタゾン)を受けている患者における全体的生存期間(OS)の特異的識別子である。表1および表2のマーカーは、プロテアソーム阻害剤、ボルテゾミブまたはグルココルチコイド、デキサメタゾンにより短期(「短期生存者」)または長期生存(「長期生存者」)を示すと予測される患者からの試料において差次的に発現される。それ故、同定されるマーカーは、ボルテゾミブまたは当技術分野で公知の他のプロテアソーム阻害治療薬ならびにここでさらに詳細に述べるものを含むプロテアソーム阻害治療薬、および/またはデキサメタゾンまたは当技術分野で公知の他のグルココルチコイドならびにここでさらに詳細に述べるものを含むグルココルチコイド治療薬で治療されるとき、より長い期間生存すると予想される患者を前望的に同定するための予測モデルにおいて機能し得る。死亡までの長い期間の予測因子は、より緩やかな速度で死亡へと進行する可能性が高く、他の患者よりも治療に応答性である可能性がより高いと考えられる患者の指標として有用である。加えて、表1および表2の予測マーカーは、死亡までの短い期間(「短期生存者」)を予測する。これらの同定された予測マーカーは、より速い速度で死亡へと進行する可能性が高く、他の患者よりも治療に応答性である可能性がより低い患者の指標として有用である。
表1および表2は、死亡までのより短い期間と相関して上方調節される指標である予測マーカーを提供する。表1および表2はまた、死亡までのより長い期間と相関して上方調節される指標である予測マーカーを提供する。表1は、マーカーが、治療(プロ阻害治療またはデキサメタゾン治療;各々の出願の内容全体が参照によりここに組み込まれる、2004年6月24日公開の国際公開広報第WO04053066号、または2004年6月8日出願の米国特許出願第11/449,195号参照)に対する応答性または非応答性についてのマーカーとしても同定されるかどうかを示す。
本発明の方法では、表1および表2において同定されるマーカーから成る群より選択される1またはそれ以上の予測マーカーの発現のレベルを測定する。ここで使用するとき、発現のレベルまたは量は、マーカーによってコードされるmRNAの発現の絶対レベルまたはマーカーによってコードされるタンパク質の発現の絶対レベル(すなわち癌細胞において発現が起こっているか否か)を指す。
一般に、表1Aおよび表2において同定される予測マーカーから選択される、同定された短期または長期生存予測マーカーの2またはそれ以上、もしくは同定された短期または長期生存予測マーカーの3またはそれ以上、もしくは同定された短期または長期生存予測マーカーのさらに大きなセットの発現を測定することが好ましい。ここで同定される予測マーカーを含むマーカーセットは、提供される方法および予測マーカーを使用して作製できる。それ故、ここで提供する方法および組成物を使用して短期および長期生存マーカーのパネルの発現を評価することが可能である。
選択マーカーの絶対発現レベルに基づいて測定を行うことに代わる代替法として、測定は規格化された発現レベルに基づき得る。発現レベルは、予測マーカーの発現を予測マーカーではない参照マーカー、例えば構成的に発現されるハウスキーピング遺伝子の発現と比較することにより、予測マーカーの絶対発現レベルを補正することによって規格化される。規格化のための適切なマーカーは、アクチン遺伝子のようなハウスキーピング遺伝子を含む。構成的に発現される遺伝子は当技術分野において公知であり、患者の関連組織および/または状況および分析方法に応じて同定され、選択され得る。そのような規格化は、1つの試料、例えば腫瘍試料をもう1つ別の試料、例えば非腫瘍試料における発現レベルと比較する、または異なるソースからの試料の間で発現レベルを比較することを可能にする。
さらに、発現レベルは相対発現レベルとして提供され得る。マーカーまたはマーカーセットの相対発現レベルを測定するには、問題の試料についての発現レベルの測定の前に基線を確立するため、予測マーカーまたはマーカーセットの発現のレベルを10またはそれ以上の個別試料、好ましくは50またはそれ以上の個別試料について測定する。基線測定を確立するため、より大きな数の試料において検定される予測マーカーまたはマーカーセットの各々の平均発現レベルを決定し、これを問題の予測マーカーまたはマーカーセットについての基線発現レベルとして使用する。被験試料について測定されたマーカーまたはマーカーセットの発現レベル(絶対発現レベル)を、次に、そのマーカーまたはマーカーセットに関して得られた平均発現値によって除する。これは相対発現レベルを提供し、短期または長期生存の極端な例を同定するのに役立つ。
短期および長期生存の判定
短期/長期生存患者の同定された予測マーカーの発現レベル(タンパク質レベルを含む)は、1)患者が作用物質または作用物質の組合せによって治療され得るかどうかを判定する;2)患者が作用物質または作用物質の組合せによる治療に応答するどうかを判定する;3)患者を治療するための適切な作用物質または作用物質の組合せを選択する;4)1またはそれ以上の作用物質の適切な用量および/または投与スケジュールを選択する;5)進行中の治療の有効性を観測する;6)新しい癌療法治療(単一作用物質のプロテアソーム阻害剤および/またはグルココルチコイド薬、もしくは代替的にまたはプロテアソーム阻害剤および/またはグルココルチコイド薬と組み合わせて使用できる、補足的作用物質のいずれか);および7)癌の侵攻性を同定するために使用し得る。特に、同定される予測マーカーは、適切な治療を決定するため、臨床治療および効果に関して試験中である薬剤のヒト治験を観測するため、および新しい作用物質および治療の組合せを開発するために利用し得る。
作用物質で治療されている患者は、表1の横列225−403および/または表2の横列38−100で同定される対応予測マーカーの1またはそれ以上が高発現を示す場合、死亡までにより長い期間を示し得る。同様に、作用物質で治療されている患者が死亡までにより長い期間を示す素因は、本発明の方法によって判定され、前記方法では、ここで述べる方法を使用してマーカーセットを生成することができ、マーカーセットは表1の横列225−403および/または表2の横列38−100で同定されるマーカーのサブセットを含み、前記マーカーセットの発現を評価する。
患者は、対応する予測マーカーの1またはそれ以上が情報的発現レベルを示す場合、死亡までにより短い期間を示し得る。患者は、表1の横列1−224および表2の横列1−37で同定される対応予測マーカーの1またはそれ以上が情報的高発現を示す場合、死亡までにより短い期間を示し得る。同様に、作用物質で治療されている患者が死亡までにより短い期間を示す素因は、本発明の方法によって判定され、前記方法では、ここで述べる方法を使用してマーカーセットを生成することができ、マーカーセットは表1の横列1−224および/または表2の横列1−37で同定されるマーカーのサブセットを含み、前記マーカーセットの発現を評価する。
例えば本発明の方法は、そのハザード比が特定閾値、例えば1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0、3.2または3.5より上である、好ましくは1.5、2.0、2.5または3.0より上である、表1からの1またはそれ以上のマーカー、例えば複数のマーカー(例えば5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、75、80、90、100、125、150または200マーカー)の発現レベルを測定することを含み得る。マーカーの発現レベルから蓄積されたスコアは、マーカーの特定パーセンテージ、例えばマーカーの50%、60%、70%、80%、90%または95%の発現が高発現を示す場合、短期生存を予測する。あるいは、本発明の方法は、そのハザード比が特定閾値、例えば0.90、0.80、0.70、0.60、0.50、0.40または0.30より下である、好ましくは0.75、0.65、0.55、0.45または0.35より下である、表1からの1またはそれ以上のマーカー、例えば複数のマーカー(例えば5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、75、80、90、100、125、150または175マーカー)の発現レベルを測定することを含み得る。マーカーの発現レベルから蓄積されたスコアは、マーカーの特定パーセンテージ、例えばマーカーの50%、60%、70%、80%、90%または95%の発現が高発現を示す場合、長期生存を予測する。もう1つの選択肢では、本発明の方法は、スコアを作成するために、そのハザード比が特定レベル、例えば3.0、2.5、2.0または1.5より上である、好ましくは1.5、2.0、2.5または3.0より上である一部のマーカー、例えば複数のマーカー(例えば10、20、30、40、50、60)と、そのハザード比が特定レベル、例えば0.75、0.65、0.55または0.45より下である、また別の一部のマーカー、例えば複数のマーカー(例えば10、20、30、40、50、60)の組合せの発現レベルを測定することを含むことができ、前記方法では、高いハザード比を有するマーカーのより高いパーセンテージの高発現レベルは短期生存を予測し、低いハザード比を有するマーカーのより高いパーセンテージの高発現レベルは長期生存を予測する。例示的な方法は、少なくとも3.0または2.8のハザード比を有する表1からの10、15、20または25マーカーの発現レベル、および0.40または0.45以下のハザード比を有する表1からの10、15、20または25マーカーの発現レベルを測定することができ、さらに、そのようなマーカーの組合せの発現レベルを1つのスコアに結合して、そこから、高発現レベルを有する短期生存または長期生存マーカーの相対パーセンテージまたは加重によって短期生存または長期生存を予測することができる。
もう1つの例では、本発明の方法は、そのSuperPCスコアが特定閾値、例えば2.2、2.4、2.6、2.8または3.0より上である、好ましくは2.3、2.5、2.7または2.9より上である、表2からの1またはそれ以上のマーカー、例えば複数のマーカー(例えば5、10、15、20、25、30または35マーカー)の発現レベルを測定することを含み得る。マーカーの発現レベルから蓄積されたスコアは、マーカーの特定パーセンテージ、例えばマーカーの50%、60%、70%、80%、90%または95%の発現が高発現を示す場合、短期生存を予測する。あるいは、本発明の方法は、そのSuperPCスコアが特定閾値、例えば−2.2、−2.4、−2.6、−2.8または−3.0より下である、好ましくは−2.3、−2.5、−2.7または−2.9より下である、表2からの1またはそれ以上のマーカー、例えば複数のマーカー(例えば5、10、15、20、25、30、35、40、45、50または55マーカー)の発現レベルを測定することを含み得る。マーカーの発現レベルから蓄積されたスコアは、マーカーの特定パーセンテージ、例えばマーカーの50%、60%、70%、80%、90%または95%の発現が高発現を示す場合、長期生存を予測する。
さらなる例では、本発明の方法は、そのSuperPCスコアの絶対値が特定閾値、例えば2.2、2.4、2.6、2.8または3.0より上である、好ましくは2.3、2.5、2.7または2.9より上である、表2からの1またはそれ以上のマーカー、例えば複数のマーカー(例えば5、10、15、20、25、30または35マーカー)の発現レベルを測定することを含み得る。説明として、少なくとも2.8の絶対スコアを有する少なくとも5、10または15マーカーの発現レベルを測定する例示的方法は、少なくとも3.0のSuperPCスコアを有する1個のマーカー、−3.0以下のSuperPCスコアを有する1または2個のマーカー、少なくとも2.90のSuperPCスコアを有する1、2または3個のマーカー、−2.90以下のSuperPCスコアを有する1、2または3個のマーカー、少なくとも2.80のSuperPCスコアを有する1、2、3または4個のマーカー、および/または−2.80以下のSuperPCスコアを有する1、2または3個のマーカーの発現のレベルを測定し得る。以下の表Gは、プロテアソーム阻害治療またはグルココルチコイド阻害治療を同定するそのような方法に含めるために、表2からのマーカーを同定する閾値の選択を導くことができる。例えば、SuperPCスコアが2.9(表2からの約8個のマーカーを使用して)、2.7(表2からの約23個のマーカーを使用して)、2.5または2.4(それぞれ表2からの約53個または約72個のマーカーを使用して)または2.3(表2からの約95個のマーカーを使用して)の絶対値閾値を有するマーカーの発現レベルを測定する方法は、プロテアソーム阻害、例えばボルテゾミブ治療の生存結果を予測することができる。あるいは、そのSuperPCスコアが2.9(表2からの約8個のマーカーを使用して)、2.8(表2からの約16個のマーカーを使用して)または2.6(表2からの約37個のマーカーを使用して)の絶対値閾値を有するマーカーの発現レベルを測定する方法は、グルココルチコイド、例えばデキサメタゾン治療の生存結果を予測することができる。
本発明の方法は、特定生物学的経路または範疇に関連するマーカーの発現レベルを測定することを含み得る。表1および2は、試験するマーカーを選択する上での手引を与えるために特定の範疇または経路に注釈づけられたマーカーを同定する。マーカーは、少なくとも、癌遺伝子、腫瘍抑制因子経路、癌抗原、NF−κB経路、造血、アポトーシスシグナル伝達、有糸***シグナル伝達、タンパク質ホメオスタシス、発癌シグナル伝達、接着細胞周期、ユビキチン/プロテアソーム経路、幹細胞、ミトコンドリア機能、ラパマイシン調節、リンパ腫における発現、乳癌における発現、腎癌における発現、および/またはRNAプロセシングの範疇から選択され得る。例えば本発明の方法は、短期生存を予測するために、ユビキチンまたはプロテアソーム経路に関与するマーカー、例えばプロテアソームサブユニットに対応するマーカー、ミトコンドリア機能に関与するマーカー、例えばミトコンドリアリボソームタンパク質に対応するマーカー、癌抗原に関与するマーカー、例えば滑膜肉腫に対応するマーカー、X切断点タンパク質マーカーおよび/または幹細胞マーカーの発現のレベルを測定することを含み得る。もう1つの例では、本発明の方法は、長期生存を予測するために、造血に関与するマーカー、例えばグリコフォリンAまたはB、アンキリン1、CD36、またはミオシン軽鎖ポリペプチド4、および/または接着に関与するマーカー、例えばテナシンXBまたはカテニンの発現のレベルを測定することを含み得る。さらなるマーカーがこれらの範疇から選択でき、表1または2に含まれるか、もしくは当業者に容易に入手可能である。本発明の方法は、前項で述べたように、特定範疇からのマーカーを測定することと特定閾値を超えるマーカーを測定することの組合せを含み得る。生物学的範疇に従って注釈づけられるマーカーのタンパク質または核酸レベルを測定するための試薬は、以下の項で述べるように、それぞれの配列の公的知識(public knowledge)から容易に入手されるかまたは市販されている。
1つの態様では、癌を有する患者における予想生存期間の評価のための予測マーカーセットは、表1および表2のいずれかに示されているものから選択されるマーカーを含む。さらなる態様は、単独または表2に示されているマーカーと組み合わせた表1に示されているマーカー、あるいは単独または表1に示されているマーカーと組み合わせた表2に示されているマーカーを考慮する。例えばマーカーセットは、表2に示されているすべてのマーカーを含み得る。あるいは、マーカーセットは、表1に示されているすべてのマーカーを含み得る。
本発明の方法によれば、ここで述べる評価方法を用いて発現プロフィールが長期生存を指示する場合は、プロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療を継続し得る。加えて、ここで述べる評価方法を用いて発現プロフィールが短期生存を指示する場合は、プロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療を継続し得るが、より積極的な用量および/または投与スケジュールで継続し得る。
本発明は、患者の腫瘍において少なくとも1つの予測マーカーまたは予測マーカーセットの発現を評価すること;および評価に基づき、患者が死亡までにより緩やかな期間を有する可能性を高めるためにプロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療が適切であるかどうかもしくは用量または投与スケジュールが適切であるかどうかを同定するおよび/または助言することを含む、患者が死亡までにより緩やかな期間を有する可能性を高める癌治療、例えばプロテアソーム阻害剤および/またはグルココルチコイド薬が使用できるかどうかを判定するための方法を提供する。
本発明は、予測マーカーまたは予測マーカーセットの発現プロフィールを測定すること;および発現プロフィールに基づき、患者が死亡までにより緩やかな期間を有する可能性を高めるためにプロテアソーム阻害治療薬が適切であるかどうかもしくは用量または投与スケジュールが適切であるかどうかを同定するおよび/または助言することを含む、プロテアソーム阻害治療レジメン(例えば単独またはもう1つ別の化学療法剤と組み合わせたプロテアソーム阻害薬(例えばボルテゾミブ)が、患者が死亡までにより緩やかな期間を有する可能性を高めるかどうかを判定するための方法を提供する。
加えて、腫瘍細胞の試料を得ること、作用物質に曝露した腫瘍細胞とプロテアソーム阻害治療薬に曝露しなかった腫瘍細胞の両方において1またはそれ以上の個別マーカーまたはマーカーセットの発現を評価すること、および評価に基づき、腫瘍を治療するために作用物質が適切であるかどうかもしくは用量または投与スケジュールが適切であるかどうかを同定するおよび/または助言することを含む、プロテアソーム阻害剤治療が、患者が死亡までにより緩やかな期間を有する可能性を高めるために使用できるかどうかを判定するための方法が提供される。
本発明は、予測マーカーまたは予測マーカーセットの発現プロフィールを測定すること;および発現プロフィールに基づき、患者が死亡までにより緩やかな期間を有する可能性を高めるためにグルココルチコイド治療薬が適切であるかどうかもしくは用量または投与スケジュールが適切であるかどうかを同定するおよび/または助言することを含む、グルココルチコイドレジメン(例えば単独またはもう1つ別の化学療法剤と組み合わせたグルココルチコイドステロイド薬(例えばデキサメタゾン)が、患者が死亡までにより緩やかな期間を有する可能性を高めるために使用できるかどうかを判定するための方法を提供する。
加えて、腫瘍細胞の試料を得ること、作用物質に曝露した腫瘍細胞とグルココルチコイド治療薬に曝露しなかった腫瘍細胞の両方において1またはそれ以上の個別マーカーまたはマーカーセットの発現を評価すること、および評価に基づき、腫瘍を治療するために作用物質が適切であるかどうかもしくは用量または投与スケジュールが適切であるかどうかを同定するおよび/または助言することを含む、グルココルチコイド治療が、患者が死亡までにより緩やかな期間を有する可能性を高めるために使用できるかどうかを判定するための方法が提供される。
そのような方法では、予測マーカーまたは予測マーカーセットの発現プロフィールが、作用物質の存在下での予測マーカーの発現プロフィールに従って長期生存者を示すとき、プロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療は腫瘍を治療するために適切と判定される。加えて、予測マーカーまたは予測マーカーセットの発現プロフィールが短期生存者を示すときは、プロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療は、腫瘍を治療するために適切であるが、より積極的な用量および/または投与スケジュールで適切であると判定される。
本発明はまた、1またはそれ以上の試料を入手し、次に試料において表1および表2のいずれかで同定されるマーカーに対応する1またはそれ以上のマーカーの発現のレベルを測定すること;および表1および表2のいずれかで同定される予測マーカーの発現プロフィールがそのような治療による生存期間延長を指示するとき、プロテアソーム阻害剤治療を開始することを含む、多発性骨髄腫患者、リンパ腫患者、白血病患者、肺癌患者、乳癌患者、卵巣癌患者、前立腺癌患者、結腸癌患者、腎癌患者および肝癌患者から選択される患者においてプロテアソーム阻害治療薬および/またはグルココルチコイド治療薬での治療を開始すべきかどうかを判定するための方法を提供する。あるいは、表1および表2のいずれかで同定される予測マーカーの発現プロフィールが、治療下でより短期の生存期間予測を指示するときは、治療を開始しないか、もしくはより積極的な用量および/または投与スケジュールで開始する。
腫瘍が抗療性となるときの観測
上記で論じたように、同定された短期および長期生存マーカーは、腫瘍が予測生存期間に影響を及ぼすように変化したかどうかを評価するための薬力学的マーカーとして使用できる。例えばマーカーは、腫瘍が進行中の治療(例えばプロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療)に対して抗療性となったかどうかを評価することができる。この例では、癌が治療に応答していないとき、腫瘍細胞の発現プロフィールが変化する:予測マーカー(例えば表1および表2で同定される予測マーカー)の1またはそれ以上のレベルまたは相対発現が、発現プロフィールが短期生存患者を示すように変化する。
そのような使用の1つにおいて、本発明は、プロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療に曝露された患者の腫瘍試料において、表1および表2のいずれかに示すものから選択される少なくとも1つの予測マーカーまたはマーカーセットの発現を測定すること;およびマーカーまたはマーカーセットの発現プロフィールが、患者が長期生存者であることを示すときには治療を継続することを含む、癌患者においてプロテアソーム阻害治療レジメンおよび/またはグルココルチコイド治療レジメンを含む癌治療を継続すべきかどうかを判定するまたは助言するための方法を提供する。
もう1つのそのような使用では、本発明は、プロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療に曝露された患者の腫瘍試料において、表1および表2のいずれかに示すものから選択される少なくとも1つの予測マーカーまたはマーカーセットの発現を測定すること;およびマーカーまたはマーカーセットの発現プロフィールが、患者が長期生存者であることを示すときには、治療を、生存に同様の作用を及ぼすと予想されるプロテアソーム阻害剤および/またはグルココルチコイド以外の1またはそれ以上の代替薬剤に変更することを含む、癌患者においてプロテアソーム阻害治療レジメンおよび/またはグルココルチコイド治療レジメンを含む癌治療を継続すべきかどうかを判定するまたは助言するための方法を提供する。
もう1つのそのような使用では、本発明は、プロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療に曝露された患者の腫瘍試料において、表1および表2のいずれかに示すものから選択される少なくとも1つの予測マーカーまたはマーカーセットの発現を測定すること;およびマーカーまたはマーカーセットの発現プロフィールが、患者が短期生存者であることを示すときには、治療を変更すること、例えば他の化学療法剤と共に投与することおよび/またはより積極的な用量および/または投与スケジュールを適用することを含む、癌患者においてプロテアソーム阻害治療レジメンおよび/またはグルココルチコイド治療レジメンを含む癌治療を継続すべきかどうかを判定するまたは助言するための方法を提供する。
もう1つのそのような使用では、本発明は、プロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療に曝露された患者の腫瘍試料において、表1および表2のいずれかに示すものから選択される少なくとも1つの予測マーカーまたは予測マーカーセットの発現を測定すること;および表1および表2のいずれかで同定されるマーカーの発現プロフィールが、患者が短期生存者であることを示すときには、治療を中止するまたは変更することを含む、癌患者においてプロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療を中止すべきかどうかを判定するための方法を提供する。
ここで使用するとき、患者は、癌を有する何らかの被験者を指す。[被験者は、単独治療薬を使用する、プロテアソーム阻害剤(例えばボルテゾミブまたは他の関連薬剤)および/またはグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)治療を受けているヒト患者であり得る。被験者は、もう1つ別の作用物質(例えば化学療法剤治療)と組み合わせて治療薬を使用する、プロテアソーム阻害剤(例えばボルテゾミブまたは他の関連薬剤)および/またはグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)治療を受けているヒト患者であり得る。]本発明はまた、プロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療を含む抗癌治療を受けている患者から得た2またはそれ以上の試料を比較することを含む。一般に、治療を開始する前に最初の試料を患者から入手し、治療期間中に1またはそれ以上の試料を入手することが考えられる。そのような使用においては、治療前に発現の基線を測定し、その後、治療の経過中に発現の基線状態の変化を観測する。あるいは、治療前の基線試料を必要とせずに、治療期間中に得た2またはそれ以上の連続的な試料を使用することができる。そのような使用においては、被験者から得た最初の試料を、特定マーカーまたはマーカーセットの発現が上昇しつつあるまたは低下しつつあるかどうかを判定するための基線として使用する。
一般に、治療薬による治療の有効性を観測するときには、患者からの2またはそれ以上の試料を検査する。もう1つの態様では、少なくとも1つの治療前試料を含む、3またはそれ以上の連続的に入手した試料を使用する。
本発明は、プロテアソーム阻害治療レジメンの経過中に種々の時点で患者から腫瘍細胞の2またはそれ以上の試料を入手し、次に前記の2またはそれ以上の試料において表1および表2のいずれかで同定されるマーカーに対応する1またはそれ以上のマーカーの発現を評価すること;および表1および表2のいずれかで同定される予測マーカーの発現プロフィールが治療の経過中に長期または短期生存者を指示するときには治療を継続することを含む、多発性骨髄腫患者、リンパ腫患者、白血病患者、肺癌患者、乳癌患者、卵巣癌患者、前立腺癌患者、結腸癌患者、腎癌患者および肝癌患者から選択される患者においてプロテアソーム阻害剤治療レジメンによる治療を継続すべきかどうかを判定するための方法を提供する。そのような方法では、プロテアソーム阻害治療およびレジメンは、予測マーカーまたは予測マーカーセットの発現プロフィールが、作用物質の存在下での予測マーカーの発現プロフィールに従ってより長期生存の特徴を示すまたは短期生存の特徴をより示さないとき、患者を治療するために適切であると判定される。
加えて、抗癌剤治療の経過中に種々の時点で患者から腫瘍細胞の2またはそれ以上の試料を入手し、次に前記の2またはそれ以上の試料において表1および表2のいずれかで同定されるマーカーを含む予測マーカーセットの発現を評価すること;および予測マーカーセットの発現プロフィールが、治療の経過中の発現に従ってより長期生存の特徴を示すまたは短期生存の特徴をより示さないときには治療を継続することを含む、多発性骨髄腫患者、リンパ腫患者、白血病患者、肺癌患者、乳癌患者、卵巣癌患者、前立腺癌患者、結腸癌患者、腎癌患者および肝癌患者から選択される患者においてプロテアソーム阻害剤治療レジメンによる治療を継続すべきかどうかを判定するための方法が提供される。あるいは、マーカーセットの発現プロフィールが治療の経過中により短期生存の特徴を示すまたは長期生存の特徴をより示さないときには、治療を中止する。
本発明のある態様は、試料を利用した癌を有する患者の治療および/または診断の方法に関する。本発明の方法において使用する癌細胞のソースは、本発明の方法がどのように使用されるかに基づく。例えば本発明の方法が、患者の癌が1つの作用物質でまたは作用物質の組合せで、または特定用量および/または投与治療レジメンで治療できるかどうかを判定するために使用される場合、試料の好ましいソースは、患者の腫瘍から得た癌細胞、例えば腫瘍生検(固形または液体腫瘍を含む)、血液試料、血漿試料、尿試料、唾液試料、リンパ試料または他の試料が使用できる。腫瘍から得た試料を、分析の特異性を高めるために腫瘍細胞に関して冨化することができる。分画遠心分離、蛍光セルソーティング分析(FACS)、基質接着とは無関係な増殖に基づき細胞を単離すること、選択作用物質、例えば抗体を腫瘍マーカーに結合し、さらに抗体を、それ故結合した腫瘍細胞を固体支持体等に結合すること、または逆に非腫瘍細胞上のマーカーに抗体を結合し、例えばCD14(単球)、CD2(TおよびNK細胞)、CD33(骨髄系前駆細胞および単球)、CD41(血小板および巨核球)、CD45RA(ナイーブBおよびT細胞)および/またはCD66b(顆粒球)に抗体を結合し、結合抗体を使用して非腫瘍細胞を除去すること、等を含む、当技術分野で公知の様々な方法が腫瘍細胞を冨化するために使用できる。あるいは、治療されている癌の方と類似の癌細胞系を検定することができる。例えば多発性骨髄腫が治療されている場合は、骨髄腫細胞系が使用できる。治療プロトコールの有効性を予測するまたは観測するために前記方法を使用する場合は、治療されている患者からの組織または血液試料が好ましいソースである。
当業者は、本発明の方法において使用される適切な癌細胞を容易に選択し、入手することができる。癌細胞系に関しては、NCI−60癌細胞パネルについてのThe National Cancer Institute,Bethesda,MDのようなソースが好ましい。他の細胞系(例えばAmerican Type Culture Collection(ATCC(登録商標)),Manassas,VAより)、例えば骨髄腫細胞系(例えばRPMI−8226またはU266)または他の腫瘍、例えばB細胞リンパ腫(BC−3)、結腸腫瘍(HCT116)、乳癌(MDA−MB−231)、頸部腫瘍(HeLa)、肺腫瘍(A549)、黒色腫(A375)または前立腺腫瘍(22Rv1)の細胞系または、例えば腎からの、正常細胞系(HEK293)が使用できる。患者から入手する癌細胞については、針生検のような標準生検法が利用できる。
本発明のマーカーを同定するために骨髄腫試料を使用した。さらに、マーカーの発現レベルを、例えばワルデンストレームマクログロブリン血症、骨髄異形成症候群およびリンパ腫、白血病を含む他の血液癌、ならびに様々な固体組織の癌を含む、関連血液細胞型の疾患を含む他の組織型において評価することができる。それ故、例えばB細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ワルデンストレーム症候群または他の白血病を含む他の血液悪性疾患からの細胞は本発明の方法において有用であることが認識される。さらに、疾患の攻撃性ならびに固形腫瘍(例えば肺、***、前立腺、卵巣、結腸、腎臓および肝臓)におけるプロテアソーム阻害治療薬のような薬剤に対する短期および長期生存を予測する予測マーカーも、本発明の方法において有用であり得る。
好ましくは、使用する試料は、問題の腫瘍と類似の腫瘍からまたは同じ組織由来の非癌細胞からである。細胞ソースの選択は相対発現レベルデータの使用に依存する。例えば平均発現スコアを得るために類似の型の腫瘍を使用することは、短期または長期生存の極端な症例の同定を可能にする。正常組織で認められる発現を平均発現スコアとして使用することは、検定する短期/長期生存マーカーまたはマーカーセットが腫瘍特異的(正常細胞に比して)であるかどうかを確認するのに役立つ。そのような後者の使用は、短期または長期生存者マーカーまたはマーカーセットが標的マーカーまたはマーカーセットとしての役割を果たし得るかどうかを同定する上で特に重要である。加えて、より多くのデータが蓄積されると共に、平均発現値を修正することができ、蓄積データに基づいて改善された相対発現値を提供し得る。
検出アッセイ
マーカーの発現を検査するために、遺伝子アレイ/チップ技術、RT−PCR、インサイチューハイブリダイゼーション、免疫組織化学、免疫ブロット法、FISH(蛍光インサイチューハイブリダイゼーション)、FACS分析、ノーザンブロット法、サザンブロット法または細胞遺伝学的分析を含む、様々な方法が使用可能である。当業者は、マーカーの性質、組織試料および問題の疾患に基づいてこれらや他の適切で使用可能な方法から選択することができる。異なる方法または方法の組合せが、異なる場合に、例えば異なる固形または液体腫瘍型において適切であり得る。
本発明のある態様では、表1および表2で同定される1またはそれ以上の予測マーカーの発現は、予測マーカーまたはマーカーセットに対応するmRNAを測定することによって検出される。本発明のさらにもう1つの態様では、表1および表2で同定されるマーカーまたはマーカーセットに対応するマーカーの発現は、マーカーまたはマーカーセットに対応するタンパク質を測定することによって検出される。
生物学的試料において本発明のマーカーに対応する核酸またはポリペプチドの存在または不在を検出するための例示的な方法は、試験被験者から生物学的試料(例えば腫瘍試料)を得ることおよび生物学的試料を、ポリペプチドまたは核酸(例えばmRNA、ゲノムDNAまたはcDNA)を検出することができる化合物または作用物質と接触させることを含む。本発明の検出方法は、それ故、例えば生物学的試料においてインビトロならびにインビボで、mRNA、タンパク質、cDNAまたはゲノムDNAを検出するために使用できる。例えばmRNAの検出のためのインビトロ手法は、GLP承認された実験条件下でのノーザンハイブリダイゼーション、インサイチューハイブリダイゼーション、およびTAQMAN(登録商標)遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems,Foster City,CA)を含む。本発明のマーカーに対応するポリペプチドの検出のためのインビトロ手法は、固相酵素免疫検定法(ELISA)、ウエスタンブロット法、免疫沈降法および免疫蛍光法を含む。ゲノムDNAの検出のためのインビトロ手法は、サザンハイブリダイゼーションを含む。さらに、本発明のマーカーに対応するポリペプチドの検出のためのインビトロ手法は、ポリペプチドに対する標識抗体を被験者に導入することを含む。例えば、被験者におけるその存在および位置が標準画像化手法によって検出できる放射性マーカーで抗体を標識することができる。
そのような診断および予後判定アッセイの一般原則は、マーカーを含む可能性がある試料または反応混合物およびプローブを、マーカーとプローブが相互作用して結合し、反応混合物から取り出すおよび/または反応混合物中で検出することができる複合体を形成することを可能にする適切な条件下でおよび十分な時間にわたって調製することを含む。これらのアッセイは様々なやり方で実施できる。
例えばそのようなアッセイを実施する1つの方法は、マーカーまたはプローブを、基質とも称される固相支持体上に固定し、反応の最後に固相に固定された標的マーカー/プローブ複合体を検出することを含む。そのような方法の一例では、マーカーの存在および/または濃度に関して検定しようとする被験者からの試料を、担体または固相支持体上に固定することができる。もう1つの例では、プローブを固相に固定し、被験者からの試料をアッセイの非固定成分として反応させ得る、逆の状況が可能である。そのような方法の一例は、試料の発現分析のために固定された予測マーカーまたはマーカーセットを含むアレイまたはチップの使用を含む。
アッセイ成分を固相に固定するための多くの確立された方法が存在する。これらは、限定を伴わずに、ビオチンとストレプトアビジンの結合を通して固定化されるマーカーまたはプローブ分子を含む。そのようなビオチニル化アッセイ成分は、当技術分野で公知の手法を使用して(例えばビオチニル化キット、Pierce Chemicals,Rockford,IL)ビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)から調製し、ストレプトアビジン被覆96穴プレート(Pierce Chemical)のウエルに固定化することができる。ある態様では、固定化されたアッセイ成分を有する表面をあらかじめ調製し、保存することができる。そのようなアッセイのための他の適切な担体または固相支持体は、マーカーまたはプローブが属する分子のクラスに結合することができるいかなる物質も含む。周知の支持体または担体は、ガラス、ポリスチレン、ナイロン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン、デキストラン、アミラーゼ、天然および変性セルロース、ポリアクリルアミド、斑れい岩および磁鉄鉱を含むが、これらに限定されない。
上記アプローチでアッセイを実施するために、非固定化成分を、2番目の成分がその上に固定された固相に添加する。反応が完了した後、形成された複合体が固相上に固定化されたままであるような条件下で、複合体化していない成分を除去する(例えば洗浄によって)。固相に固定されたマーカー/プローブ複合体の検出は、ここで概説する多くの方法で達成され得る。一例では、プローブが非固定アッセイ成分であるときは、検出およびアッセイの読み出しのために、直接または間接的に、ここで述べるおよび当業者に周知の検出可能標識で標識することができる。
また、例えば蛍光エネルギー転移の手法を利用することによって(例えばLakowiczら、米国特許第5,631,169号;Stavrianopoulosら、米国特許第4,868,103号参照)、いずれの成分(マーカーまたはプローブ)のさらなる操作または標識化も行わずにマーカー/プローブ複合体形成を直接検出することも可能である。最初に蛍光物質標識である「供与体」分子を、適切な波長の入射光による励起後、その放射する蛍光エネルギーが2番目の「受容体」分子上の蛍光標識によって吸収され、次に受容体分子が吸収したエネルギーによって蛍光を発することができる。交代に、「供与体」タンパク質分子は、トリプトファン残基の自然蛍光エネルギーを容易に利用し得る。「受容体」分子標識が「供与体」の標識と区別され得るように、異なる波長の光を発する標識が選択される。標識の間のエネルギー転移の効率は分子を隔てる距離に関係するので、分子間の空間的関係を評価することができる。分子間で結合が起こる状況では、アッセイにおける「受容体」分子標識の蛍光発光が最大となるはずである。FET結合事象は、当技術分野で周知の標準蛍光検出手段を通して(例えば蛍光光度計を使用して)好都合に測定できる。
もう1つの例では、マーカーを認識するプローブの能力の測定が、リアルタイムBiomolecular Interaction Analysis(BIA)(例えばSjolander,S.とUrbaniczky,C.,1991,Anal.Chem. 63:2338−2345およびSzaboら、1995,Curr.Opin.Struct.Biol.5:699−705参照)のような技術を利用することにより、いずれのアッセイ成分(プローブまたはマーカー)も標識せずに実施できる。ここで使用するとき、「BIA」または「表面プラズモン共鳴」は、相互作用物のいずれも標識せずに、生体分子特異的相互作用をリアルタイムで検討するための技術である(例えばBIACORE(商標))。結合表面における質量の変化(結合事象を指示する)は、表面近くの光の屈折率の変化をもたらし(表面プラズモン共鳴(SPR)の光学現象)、生物学的分子間のリアルタイム反応の指標として使用できる検出可能なシグナルを生じさせる。
あるいは、もう1つの例では、マーカーとプローブを液相中の溶質として使用して類似の診断および予後判定アッセイを実施することができる。そのようなアッセイでは、複合したマーカーとプローブを、分画遠心分離、クロマトグラフィー、電気泳動および免疫沈降を含むがこれらに限定されない、多くの標準手法のいずれかによって非複合成分から分離する。分画遠心分離では、マーカー/プローブ複合体を、それらの異なる大きさと密度に基づく複合体の異なる沈降平衡によって、一連の遠心分離工程を通して非複合アッセイ成分から分離し得る(例えばRivas,G.とMinton,A.P.,1993,Trends Biochem Sci.18(8):284−7参照)。標準クロマトグラフィー手法も、非複合分子から複合分子を分離するために利用し得る。例えばゲルろ過クロマトグラフィーは大きさに基づいて分子を分離し、カラム形式での適切なゲルろ過樹脂の使用を通して、例えば、比較的大きな複合体を比較的小さな非複合成分から分離し得る。同様に、非複合成分と比較してマーカー/プローブ複合体の相対的に異なる電荷特性を、例えばイオン交換クロマトグラフィーの使用を通して、非複合成分から複合体を区別するために利用し得る。そのような樹脂およびクロマトグラフィー手法は当業者に周知である(例えばHeegaard,N.H.,1998,J.Mol.Recognit.Winter 11(1−6):141−8;Hage,D.S.およびTweed,S.A.J Chromatogr B Biomed Sci Appl 1997 Oct 10;699(l−2):499−525参照)。ゲル電気泳動も、非結合成分から複合アッセイ成分を分離するために使用し得る(例えばAusubelら編集、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,1987−1999参照)。この手法では、タンパク質または核酸複合体を、例えば大きさまたは電荷に基づいて分離する。電気泳動工程の間結合相互作用を維持するために、還元剤を使用しない非変性ゲルマトリックス材料および条件が典型的には好ましい。特定アッセイおよびその成分のための適切な条件は当業者に周知である。
マーカーにたいおうするmRNAのレベルは、当技術分野で公知の方法を用いて、生物学的試料においてインサイチューまたはインビトロの両形式によって測定できる。「生物学的試料」という用語は、被験者から単離された組織、細胞、生体液およびその単離物、ならびに被験者内に存在する組織、細胞および液体を包含することが意図されている。多くの発現検出法が単離RNAを使用する。インビトロ法については、mRNAの単離に不利な選択を行わない何らかのRNA単離手法が、腫瘍細胞からのRNAの精製のために利用できる(例えばAusubelら編集、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York 1987−1999参照)。加えて、数多くの組織試料が、例えばChomczynski(1989,米国特許第4,843,155号)の一段階RNA単離のような、当業者に周知の手法を用いて容易に処理できる。
mRNAレベルの検出のための1つの診断方法は、単離mRNAを、検出される遺伝子によってコードされるmRNAにハイブリダイズすることができる核酸分子(プローブ)と接触させることを含む。核酸プローブは、例えば完全長cDNAまたはその部分、例えば少なくとも7、15、30、50、100、250または500ヌクレオチド長であり、本発明のマーカーをコードするmRNAまたはゲノムDNAにストリンジェント条件下で、例えば45℃で6×SSCのハイブリダイゼーションおよび65℃で0.2×SSC、0.1%SDS中での洗浄の条件下で、特異的にハイブリダイズするのに十分なオリゴヌクレオチドであり得る。本発明の診断アッセイにおける使用のための他の適切なプローブをここで述べる。プローブとmRNAのハイブリダイゼーションは、問題のマーカーが発現されていることを指示する。
1つの形式では、mRNAを固体表面に固定化し、例えば単離mRNAをアガロースゲル上で泳動させ、mRNAをゲルからニトロセルロースなどの膜に移すことによってプローブと接触させる。選択的形式では、プローブを固体表面に固定化し、mRNAを、例えばAFFYMETRIX(登録商標)遺伝子チップアレイにおいてプローブと接触させる。当業者は、公知のmRNA検出方法を、本発明のマーカーによってコードされるmRNAのレベルを検出する上での使用のために容易に適合させ得る。
試料中の本発明のマーカーに対応するmRNAのレベルを測定するための選択的方法は、核酸増幅の工程、例えばrtPCR(実験の説明はMullis,1987,米国特許第4,683,202号に述べられている)、リガーゼ連鎖反応(Barany,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:189−193)、自己持続型配列複製(Guatelliら、1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874−1878)、転写増幅システム(Kwohら、1989,Proc.Natl Acad.Sci.USA 86:1173−1177)、Q−β複製(Lizardiら、1988,Bio/Technology 6:1197)、ローリングサイクル型複製(Lizardiら、米国特許第5,854,033号)または他の何らかの核酸増幅方法による工程、およびそれに続く、当業者に周知の手法を用いた増幅分子の検出を含む。これらの検出法式は、核酸分子が非常に低い数で存在する場合の核酸の検出のために特に有用である。ここで使用するとき、増幅プライマーは、遺伝子の5’または3’領域にアニーリングすることができ(それぞれプラス鎖とマイナス鎖、またはその逆も同様)、その間に短い領域を含む核酸分子の対であると定義される。一般に、増幅プライマーは約10−30ヌクレオチド長であり、約50−200ヌクレオチド長の領域に隣接する。適切な条件下で適切な試薬を用いて、そのようなプライマーは、プライマーによって隣接されるヌクレオチド配列を含む核酸分子の増幅を可能にする。
インサイチュー法については、mRNAを検出の前に癌細胞から単離する必要はない。そのような方法では、公知の組織学的方法を用いて細胞または組織試料を調製/処理する。次に試料を支持体、典型的にはスライドガラスに固定化し、その後、マーカーをコードするmRNAにハイブリダイズすることができるプローブと接触させる。
マーカーの絶対発現レベルに基づいて測定を行うことに代わる選択肢として、測定は、マーカーの正規化された発現レベルに基づき得る。発現レベルは、マーカーの発現をマーカーではない参照遺伝子、例えば構成的に発現されるハウスキーピング遺伝子の発現と比較することにより、マーカーの絶対発現レベルを補正することによって正規化される。正規化のための適切な遺伝子は、アクチン遺伝子または上皮細胞特異的遺伝子のようなハウスキーピング遺伝子を含む。この正規化は、1つの試料、例えば患者試料の発現レベルともう1つ別の試料、例えば非癌試料の発現レベルの比較、または異なるソースからの試料間の発現レベルの比較を可能にする。
あるいは、発現レベルは相対発現レベルとして提供され得る。マーカーの相対発現レベルを測定するため、問題の試料についての発現レベルの測定の前に、正常細胞および癌酸細胞単離物の10またはそれ以上の試料、好ましくは50またはそれ以上の試料についてマーカーの発現のレベルを測定する。より大きな数の試料において検定するマーカーおよびマーカーセットの各々の平均発現レベルを測定し、これをそのマーカーについての基線発現レベルとして使用する。被験試料について測定されたマーカーの発現レベル(絶対発現レベル)を、次に、そのマーカーについて得られた平均発現値で除する。これが相対発現レベルを提供する。
本発明のもう1つの態様では、マーカーに対応するポリペプチドを検出する。本発明のポリペプチドを検出するための好ましい作用物質は、本発明のマーカーに対応するポリペプチドに結合することができる抗体、好ましくは検出可能標識を有する抗体である。抗体は、ポリクローナル、またはより好ましくはモノクローナルであり得る。無傷抗体またはそのフラグメント(例えばFabまたはF(ab’)2)が使用できる。プローブまたは抗体に関して「標識」という用語は、検出可能物質をプローブまたは抗体に結合する(すなわち物理的に連結する)ことによるプローブまたは抗体の直接標識、ならびに直接標識されたもう1つ別の試薬との反応性によるプローブまたは抗体の間接標識を包含することが意図されている。間接標識の例は、蛍光標識二次抗体を用いた一次抗体の検出および蛍光標識されたストレプトアビジンで検出できる、ビオチンによるDNAプローブの末端標識を含む。検出可能物質のさらなる例は後の章で詳述する。
試料が所与の抗体に結合するタンパク質を含有するかどうかを測定するために様々な形式を用いることができる。そのような形式の例は、酵素免疫検定法(EIA)、放射免疫検定法(RIA)、ウエスタンブロット分析および固相酵素免疫検定法(ELISA)を含むが、これらに限定されない。当業者は、公知のタンパク質/抗体検出方法を、癌細胞を含む試料が本発明のマーカーを発現するかどうかを測定する上での使用に容易に適合させ得る。
1つの形式では、抗体または抗体フラグメントは、発現されたタンパク質を検出するためにウエスタンブロット法または免疫蛍光手法のような方法において使用できる。そのような使用においては、一般に抗体またはタンパク質のいずれかを固体支持体に固定化することが好ましい。適切な固体支持体または担体は、抗原または抗体に結合することができるいかなる支持体も含む。周知の支持体または担体は、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および変性セルロース、ポリアクリルアミド、斑れい岩および磁鉄鉱を含む。
当業者は、抗体または抗原に結合するための多くの他の適切な担体を認識し、そのような支持体を本発明に関する使用に適合させ得る。例えば腫瘍細胞から単離したタンパク質をポリアクリルアミドゲル電気泳動で泳動させ、ニトロセルロースなどの固相支持体に固定化することができる。次に支持体を適切な緩衝液で洗浄し、続いて検出可能標識した抗体で処理することができる。固相支持体を、その後、非結合抗体を除去するために緩衝液で2度目の洗浄に供することができる。固相支持体上の結合標識の量は、従来の手段によって検出できる。
マーカーに対応するポリペプチドのレベルを測定するためのもう1つの方法は質量分析法である。例えば無傷タンパク質またはペプチド、例えばトリプシンペプチドを、1またはそれ以上のポリペプチドマーカーを含む試料、例えば腫瘍生検(固形または液体腫瘍を含む)、血液試料、血漿試料、尿試料、唾液試料、リンパ試料または他の試料から分析することができる。前記方法はさらに、方法の感受性を高めるために、豊富なタンパク質、例えば血清アルブミンの量を低減するために試料を処理することを含み得る。例えば試料を分画するために液体クロマトグラフィーが使用でき、そのようにして試料の部分を質量分析法によって別々に分析することができる。前記工程は、別々のシステムにおいてまたは複合型液体クロマトグラフィー/質量分析システム(LC/MS、例えばLiaoら、Arthritis Rheum.50:3792−3803(2004)参照)において実施できる。質量分析システムはまた、タンデム(MS/MS)方式であり得る。タンパク質またはペプチド混合物の電荷状態分布を1または多数のスキャンにわたって獲得し、プロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療に対して応答性または非応答性の患者からの試料において統計的に有意のレベルで差次的に発現されるタンパク質を同定するために、統計的方法によって、例えばLC/MSにおいて保持時間および質量電荷比(m/z)を用いて解析することができる。使用できる質量分析計の例は、イオントラップシステム(ThermoFinnigan,San Jose,CA)または四重極飛行時間型質量分析計(Applied Biosystems,Foster City,CA)である。前記方法は、例えばマトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型(MALDI−TOF)質量分析における、ペプチドマスフィンガープリンティングの工程をさらに含み得る。前記方法は、トリプシンペプチドの1またはそれ以上を配列決定する工程をさらに含み得る。この方法の結果は、例えばthe National Center for Biotechnology Information,Bethesda,MDまたはthe Swiss Institute for Bioinformatics,Geneva,Switzerlandによって維持されている、一次配列データベースから、および質量分析のトリプシンペプチドm/z基準ピークに基づき、タンパク質を同定するために使用できる。
電子装置読み取り可能アレイ
本発明の少なくとも1つの予測マーカーを含有する読み取り可能アレイを含む電子装置も、本発明の方法と組み合わせた使用のために考慮される。ここで使用するとき、「電子装置読み取り可能アレイ」は、電子装置によって直接読み取られ、アクセスされ得るデータまたは情報を保存する、保持するまたは含有するための適切な媒体を指す。ここで使用するとき、「電子装置」という用語は、データまたは情報を保存するように設定されたまたは適合された適切なコンピュータまたはプロセシング装置または他の装置を包含することが意図されている。本発明に関する使用のためおよび記録された情報の監視のための適切な電子装置の例は、スタンドアロンコンピュータ装置;ローカルアエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、インターネット、イントラネットおよびエクストラネットを含むネットワーク;個人用携帯情報端末(PDA)、携帯電話、ページャ等のような電子機器;およびローカルおよび分散処理システムを含む。ここで使用するとき、「記録された」とは、電子装置読み取り可能媒体上で情報を保存するまたはコード化するための工程を指す。当業者は、本発明のマーカーを含む製品を生成するために公知の媒体に情報を記録するために現在公知の方法のいずれかを容易に採用することができる。
例えばマイクロアレイシステムは周知であり、例えば遺伝子発現(例えばRNA検出、タンパク質検出)または代謝産物産生の評価によって、試料の評価のために当技術分野で使用される。本発明に従った使用のためのマイクロアレイは、ここで述べる治療レジメンに対する応答および/または非応答の特徴を示す本発明の予測マーカーの1またはそれ以上のプローブを含む。1つの実施形態では、マイクロアレイは、短期生存者において高発現を示すマーカーから成る群より選択されるマーカーの1またはそれ以上に対応する1またはそれ以上のプローブ、および患者の中の長期生存者において高発現を示す遺伝子を含む。多くの異なるマイクロアレイ形状およびそれらの作製のための方法は当業者に公知であり、例えば、各々が参照によりここに組み込まれる、米国特許第5,242,974号;同第5,384,261号;同第5,405,783号;同第5,412,087号;同第5,424,186号;同第5,429,807号;同第5,436,327号;同第5,445,934号;同第5,556,752号;同第5,405,783号;同第5,412,087号;同第5,424,186号;同第5,429,807号;同第5,436,327号;同第5,472,672号;同第5,527,681号;同第5,529,756号;同第5,545,531号;同第5,554,501号;同第5,561,071号;同第5,571,639号;同第5,593,839号;同第5,624,711号;同第5,700,637号;同第5,744,305号;同第5,770,456号;同第5,770,722号;同第5,837,832号;同第5,856,101号;同第5,874,219号;同第5,885,837号;同第5,919,523号;同第5,981,185号;同第6,022,963号;同第6,077,674号;同第6,156,501号;同第6,261,776号;同第6,346,413号;同第6,440,677号;同第6,451,536号;同第6,576,424号;同第6,610,482号;同第5,143,854号;同第5,288,644号;同第5,324,633号;同第5,432,049号;同第5,470,710号;同第5,492,806号;同第5,503,980号;同第5,510,270号;同第5,525,464号;同第5,547,839号;同第5,580,732号;同第5,661,028号;同第5,848,659号;および同第5,874,219号;Shenaら、Tibtech 16:301,1998;Dugganら、Nat.Genet.21:10,1999;Bowtellら、Nat.Genet.21:25,1999;Lipshutzら、21 Nature Genet.20−24,1999;Blanchardら、11 Biosensors and Bioelectronics,687−90,1996;Maskosら、21 Nucleic Acids Res.4663−69,1993;Hughesら、Nat.Biotechol.19:342,2001に開示されている。組織マイクロアレイはタンパク質の同定のために使用できる(Hansら、Blood 103:275−282(2004)参照)。ファージ−エピトープマイクロアレイは、1またはそれ以上のタンパク質が患者において自己抗体を誘導するかどうかに基づき試料中の1またはそれ以上のタンパク質を同定するために使用できる(Bradfordら、Urol.Oncol.24:237−242(2006))。
マイクロアレイは、それ故、表1および表2で同定される1またはそれ以上の予測マーカーに対応する1またはそれ以上のプローブを含む。マイクロアレイは、例えば少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300または少なくとも400の、癌患者の短期または長期生存を予測する本発明の予測マーカーに対応するプローブを含み得る。マイクロアレイは、ここで示す1またはそれ以上の予測マーカーに対応するプローブを含み得る。さらに、マイクロアレイは、ここで示す、およびここで示す方法に従って選択され、蓄積され得る、完全なマーカーセットを含み得る。マイクロアレイは、アレイ中の1またはそれ以上の予測マーカーまたは予測マーカーセットの発現を検定するために使用できる。一例では、アレイは、アレイ中のマーカーの発現プロフィールを確認するために試料中の2以上の予測マーカーまたはマーカーセットの発現を検定するために使用できる。このようにして、約44,000までのマーカーを発現に関して同時に検定することができる。これは、1またはそれ以上の試料において特異的に発現される一連のマーカーを示すプロフィールを作成することを可能にする。さらに、これは、全体的な生存を評価するためのプロフィールを作成することを可能にする。
アレイはまた、正常および異常(例えば試料、例えば腫瘍)細胞における1またはそれ以上のマーカーの差次的発現パターンを確認するために有用である。これは、短期または長期生存患者の同定を容易にするためのツールとして役立ち得る一連の予測マーカーを提供する。さらに、アレイは、参照発現レベルのための参照マーカーの発現を確認するために有用である。もう1つの例では、アレイは、アレイ中の1またはそれ以上の予測マーカーの発現の時間的経過を観測するために使用できる。
そのような定性的測定に加えて、本発明はマーカー発現の定量を可能にする。それ故、試料中の発現のレベルによりマーカーセットもしくは短期または長期生存指標に基づいて予測マーカーを分類することができる。これは、例えばここで提供する方法に従って発現レベルを採点することにより、試料の短期または長期生存指標を確認する上で有用である。
アレイはまた、同じ細胞または異なる細胞において他の予測マーカーの発現に対するあるマーカーの発現の影響を確認するために有用である。これは、例えば患者が短期生存者であると予測される場合に治療的介入のための代替分子標的の選択を提供する。
試薬およびキット
本発明はまた、試料(例えば腫瘍試料)において本発明のマーカーに対応するポリペプチドまたは核酸の存在を検出するためのキットを包含する。そのようなキットは、被験者が死亡までにより速いまたはより緩やかな進行を示す可能性が高いかどうかを判定するために使用できる。もう1つの態様では、本発明は、試料において化合物または治療の効果を観測するための試験キットを提供する。例えばキットは、生物学的試料において本発明のマーカーに対応するポリペプチドまたはポリペプチドをコードするmRNAを検出することができる標識プローブ、および試料中のポリペプチドまたはmRNAの量を測定するための手段(例えばポリペプチドに結合する抗体またはポリペプチドをコードするDNAまたはmRNAに結合するオリゴヌクレオチドプローブ)を含み得る。キットは、提供されるキットの使用のためおよびキットを使用して得られた結果を解釈するための指示書;提供される方法において使用するためのプローブの調製のための付加的な試薬;および単独または提供されるプローブに結合した検出可能標識をさらに含み得る。
抗体に基づくキットに関しては、キットは、例えば(1)本発明のマーカーに対応するポリペプチドに結合する1番目の抗体(例えば固体支持体に結合した);および場合により、(2)ポリペプチドまたは1番目の抗体のいずれかに結合する、検出可能標識に複合した2番目の異なる抗体を含み得る。
オリゴヌクレオチドに基づくキットについては、キットは、例えば(1)本発明のマーカーに対応するポリペプチドをコードする核酸配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、例えば検出可能に標識されたオリゴヌクレオチド;(2)本発明のマーカーに対応する核酸分子を増幅するために有用な一対にプライマー;または(3)本発明のポリペプチド予測マーカーをコードする少なくとも2つの核酸配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含むマーカーセットを含み得る。キットはまた、例えば緩衝剤、防腐剤またはタンパク質安定剤を含み得る。キットはさらに、検出可能標識を検出するために必要な成分(例えば酵素または基質)を含み得る。マーカーセットに関しては、キットは、予測マーカーを検出するときに使用するためにマーカーセットアレイまたはチップを含み得る。キットはまた、検定して被験試料と比較することができる参照試料または一連の参照試料を含み得る。キットの各々の成分を個別の容器中に入れることができ、様々な容器のすべてを、キットを使用して実施されるアッセイの結果を解釈するための指示書と共に、単一包装に収めることができる。
治療薬
本発明のマーカーおよびマーカーセットは、癌患者、例えば多発性骨髄腫を有する患者において短期または長期生存の可能性を評価する。この予測を用いて、いずれかのカテゴリーで患者のために最も適切な治療レジメンを設計するために癌治療を評価することができる。
本発明の方法における使用のための治療薬は、プロテアソーム阻害剤として公知の治療薬のクラスを包含する。
ここで使用するとき、「プロテアソーム阻害剤」という用語は、インビトロまたはインビボで20Sまたは26Sプロテアソームの酵素活性を直接阻害する物質を指す。一部の実施形態では、プロテアソーム阻害剤はペプチジルボロン酸である。本発明の方法における使用に適するペプチジルボロン酸プロテアソーム阻害剤の例は、各々、その中で開示されるすべての化合物および製法を含むその全体が参照によりここに組み込まれる、Adamsら、米国特許第5,780,454号(1998)、同第6,066,730号(2000)、同第6,083,903号(2000)、同第6,297,217号(2001)、同第6,465,433号(2002)、同第6,548,668号(2003)、同第6,617,317号および同第6,747,150号(2004)に開示されている。好ましくは、ペプチジルボロン酸プロテアソーム阻害剤は、N−(4−モルホリン)カルボニル−β−(1−ナフチル)−L−アラニン−L−ロイシンボロン酸;N−(8−キノリン)スルホニル−β−(1−ナフチル)−L−アラニン−L−アラニン−L−ロイシンボロン酸;N−(ピラジン)カルボニル−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸、およびN−(4−モルホリン)−カルボニル−[O−(2−ピリジルメチル)]−L−チロシン−L−ロイシンボロン酸から成る群より選択される。特定実施形態では、プロテアソーム阻害剤はN−(ピラジン)カルボニル−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸(ボルテゾミブ;VELCADE(登録商標);以前はMLN341またはPS−341として知られた)である。
さらなるペプチジルボロン酸プロテアソーム阻害剤は、Simanら、国際公開広報第WO99/30707号;Bernareggiら、国際公開広報第WO05/021558号;Chatterjeeら、国際公開広報第WO05/016859号;Furetら、米国特許公開第2004/0167337号;Furetら、国際公開広報第02/096933号;Attwoodら、米国特許第6,018,020号(2000);Magdeら、国際公開広報第WO04/022070号;およびPurandareとLaing,国際公開広報第WO04/064755号に開示されている。
加えて、プロテアソーム阻害剤は、各々その全体が参照によりここに組み込まれる、Steinら、米国特許第5,693,617号(1997);Simanら、国際公開広報第WO91/13904号;Iqbalら、J.Med.Chem.38:2276−2277(1995);およびIinumaら、国際公開広報第WO05/105826号に開示されているような、ペプチドアルデヒドプロテアソーム阻害剤を含む。
さらに、プロテアソーム阻害剤は、ペプチジルエポキシケトンプロテアソーム阻害剤を含み、その例は、各々その全体が参照によりここに組み込まれる、Crewsら、米国特許第6,831,099号;Smythら、国際公開広報第WO05/111008号;Bennettら、国際公開広報第WO06/045066号;Spaltensteinら、Tetrahedron Lett.37:1343(1996);Meng,Proc.Natl.Acad.Sci.96:10403(1999);およびMeng,Cancer Res.59:2798(1999)に開示されている。
加えて、プロテアソーム阻害剤は、α−ケトアミドプロテアソーム阻害剤を含み、その例は、各々その全体が参照によりここに組み込まれる、ChatterjeeとMallamo、米国特許第6,310,057号(2001)および同第6,096,778号(2000);およびWangら、米国特許第6,075,150号(2000)および同第6,781,000号(2004)に開示されている。
さらなるプロテアソーム阻害剤は、各々その全体が参照によりここに組み込まれる、Marastoniら、J.Med.Chem.48:5038(2005)に開示されているようなペプチジルビニルエステルプロテアソーム阻害剤、およびRydzewskiら、J.Med.Chem.49:2953(2006)およびBogyoら、Proc.Natl.Acad.Sci.94:6629(1997)に開示されているような2−ケト−1,3,4−オキサジアゾールプロテアソーム阻害剤を含む。
さらなるプロテアソーム阻害剤は、各々その全体が参照によりここに組み込まれる、Bougetら、Bioorg.Med.Chem.11:4881(2003);Baudy−Floc’hら、国際公開広報第WO05/030707号;およびBonnemainsら、国際公開広報第WO03/018557号に開示されているような、アザペプトイドおよびヒドラジノペプトイドを含む。
さらに、プロテアソーム阻害剤は、各々その全体が参照によりここに組み込まれる、Furetら、米国特許公開第2003/0166572号に開示されているようなペプチド誘導体、およびPapathanassiu、国際公開広報第WO05/115431号に開示されているようなエフラペプチンオリゴペプチドを含む。
さらに、プロテアソーム阻害剤は、各々その全体が参照によりここに組み込まれる、Fenteanyら、米国特許第5,756,764号(1998)、同第6,147,223号(2000)、同第6,335,358号(2002)および同第6,645,999号(2003);Fenteanyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1994)91:3358;Fenicalら、国際公開広報第WO05/003137号;Palladinoら、国際公開広報第WO05/002572号;Stadlerら、国際公開広報第WO04/071382号;XiaoとPatel、米国特許公開第2005/023162号;およびCorey、国際公開広報第WO05/099687号に開示されている、ラクタシスチンおよびサリノスポラミドおよびそれらの類似体を含む。
さらに、天然に生じる化合物が、最近になって、プロテアソーム阻害活性を有することが示され、本発明の方法において使用できる。例えば環状ペプチド、TMC−95A、および真菌代謝産物であるグリオトキシンがプロテアソーム阻害剤として同定された。例えば、各々その全体が参照によりここに組み込まれる、Koguchi,Antibiot.(Tokyo)53:105(2000);Kroll M,Chem.Biol.6:689(1999);およびNam S,J.Biol.Chem.276:13322(2001)参照。さらなるプロテアソーム阻害剤は、各々その全体が参照によりここに組み込まれる、Namら、J.Biol.Chem.276:13322(2001);およびDouら、米国特許公開第2004/0186167号に開示されているような、ポリフェノールプロテアソーム阻害剤を含む。
本発明の方法における使用のためのさらなる治療薬は、グルココルチコイドステロイドを含む公知のクラスの治療薬を包含する。グルココルチコイド治療は、一般に少なくとも1つのグルココルチコイド薬(例えばデキサメタゾン)を含む。本発明のある種の適用では、本発明の方法において使用される作用物質はグルココルチコイド薬である。多発性骨髄腫患者の治療ならびに他の癌治療において使用されるグルココルチコイドの一例は、デキサメタゾンである。血液学的治療および固形腫瘍での併用療法において使用されるさらなるグルココルチコイドは、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾンおよびトリアムシノロンを含む。グルココルチコイド治療レジメンは、単独で使用され得るか、または付加的な化学療法剤と共に使用され得る。化学療法剤は当技術分野において公知であり、ここでさらに詳細に述べる。化学療法剤の例を表Aに示す。プロテアソーム阻害治療と同様に、新しいクラスの癌治療薬が開発されたときには、それらをグルココルチコイド治療レジメンと併用し得る。最後に、本発明の方法は、単独またはさらなる作用物質と組み合わせた、グルココルチコイド治療とプロテアソーム阻害治療の併用を包含する。
上記に加えて、プロテアソーム阻害治療レジメンおよび/またはグルココルチコイド治療レジメンという用語は、化学療法剤を含む、プロテアソーム阻害剤に加えてさらなる作用物質を含み得る。「化学療法剤」は、そのような細胞または組織の成長が望ましくない、増殖性細胞または組織の成長を阻害する化学的試薬を含むことが意図されている。代謝拮抗薬、例えばAra AC、5−FUおよびメトトレキサート、抗有糸***薬、例えばタキサン、ビンブラスチンおよびビンクリスチン、アルキル化剤、例えばメルファラン、カルムスチン(BCNU)およびナイトロジェンマスタード、トポイソメラーゼII阻害剤、例えばVW−26、トポテカンおよびブレオマイシン、鎖切断剤、例えばドキソルビシンおよびミトキサントロン(DHAD)、架橋剤、例えばシスプラチンおよびカルボプラチン(CBDCA)、放射線および紫外光などの化学療法剤。好ましい実施形態では、作用物質はプロテアソーム阻害剤(例えばボルテゾミブまたは他の関連化合物)である。前記化学療法剤は当技術分野において周知であり(例えばGilman A.G.ら、The Pharmacological Basis of Therapeutics,8th Ed.,Sec 12:1202−1263(1990)参照)、典型的には腫瘍性疾患を治療するために使用される。化学療法において一般的に使用される化学療法剤を以下の表Aに列挙する。
本発明の方法において試験される作用物質は、単独作用物質または作用物質の組合せであり得る。例えば本発明の方法は、メトトレキサートのような単一化学療法剤が癌を治療するために使用できるかどうか、または2またはそれ以上の作用物質の組合せがプロテアソーム阻害剤(例えばボルテゾミブ)および/またはグルココルチコイド薬(例えばデキサメタゾン)と組み合わせて使用できるかどうかを判定するために使用できる。好ましい組合せは、異なる作用機構を有する作用物質、例えばアルキル化剤およびプロテアソーム阻害剤と組み合わせた抗有糸***薬の使用を含む。
ここで開示する作用物質は、皮内、皮下、経口、動脈内または静脈内を含む、いかなる経路によっても投与され得る。好ましくは、投与は静脈内経路によってである。好ましくは、非経口投与はボーラスでまたは注入によって提供され得る。
医薬的に許容される混合物中の開示化合物の濃度は、投与される化合物の用量、使用される化合物の薬物動態特性および投与経路を含む、いくつかの因子に依存して異なる。作用物質は、単回投与または反復投与で投与され得る。治療薬は、患者の全体的健康状態、および選択化合物の製剤処方および投与経路を含む、多くの因子に依存して毎日またはそれ以上の頻度で投与され得る。
単離核酸分子、ベクターおよび宿主細胞
本発明の1つの態様は、本発明の予測マーカーに対応するポリペプチドまたはそのようなポリペプチドの部分をコードする核酸を含む、本発明の予測マーカーに対応する単離核酸分子に関する。本発明の単離核酸はまた、本発明の予測マーカーに対応するポリペプチドをコードする核酸を含む、本発明の予測マーカーに対応する核酸分子を同定するためのハイブリダイゼーションプローブとしての使用に十分な核酸分子、およびそのような核酸分子のフラグメント、例えば核酸分子の増幅または突然変異のためのPCRプライマーとしての使用に適するものを包含する。ここで使用するとき、「核酸分子」という用語は、DNA分子(例えばcDNAまたはゲノムDNA)およびRNA分子(例えばmRNA)およびヌクレオチド類似体を使用して生成されるDNAまたはRNAの類似体を包含することが意図されている。核酸分子は一本鎖または二本鎖であり得るが、好ましくは二本鎖DNAである。
本発明の核酸分子、例えば表1および表2のいずれかに記載されるマーカーに対応するタンパク質をコードする核酸は、標準分子生物学手法およびここで述べるデータベース記録中の配列情報を使用して単離し、操作する(例えば増幅する、クローニングする、合成する等)ことができる(例えばSambrookら編集、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989に述べられている)。
さらに、本発明の核酸分子は、完全長核酸配列が本発明の予測マーカーを含む核酸配列または本発明のマーカーに対応するポリペプチドをコードする核酸配列の一部だけを含み得る。そのような核酸は、例えばプローブまたはプライマーとして使用できる。プローブ/プライマーは、典型的には1またはそれ以上の実質的に精製されたオリゴヌクレオチドとして使用される。オリゴヌクレオチドは、典型的にはストリンジェント条件下で、例えば45℃で6×SSCのハイブリダイゼーションおよび65℃で0.2×SSC、0.1%SDS中での洗浄の条件下で、本発明の核酸の少なくとも約7、好ましくは約15、より好ましくは約25、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350または400またはそれ以上の連続ヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド配列の領域を含む。
本発明の核酸分子の配列に基づくプローブは、本発明の1またはそれ以上の予測マーカーに対応する転写産物またはゲノム配列を検出するために使用できる。プローブは、それに結合した標識基、例えば放射性同位体、蛍光化合物、酵素または酵素補因子を含む。そのようなプローブは、被験者からの細胞の試料においてタンパク質をコードする核酸分子のレベルを測定すること、例えばmRNAレベルを検出することまたはタンパク質をコードする遺伝子が突然変異しているまたは欠失しているかどうかを判定することなどによって、タンパク質を発現する細胞または組織を同定するための診断試験キットの一部として使用できる。
ここで述べるデータベース記録に記載されるヌクレオチド配列に加えて、アミノ酸配列の変化を導くDNA配列多型が集団(例えばヒト集団)内に存在し得ることは当業者に認識される。そのような遺伝的多型は、天然に生じる対立遺伝子変異のために集団内の個体間で存在し得る。対立遺伝子は、所与の遺伝子座で選択的に生じる遺伝子の群の1つである。加えて、その遺伝子の全体的発現レベルに影響を及ぼし得る(例えば調節または分解に影響を及ぼすことによって)、RNA発現レベルに影響を及ぼすDNA多型も存在し得ることが了解される。
ここで使用するとき、「遺伝子」および「組換え遺伝子」という用語は、例えば、遺伝暗号の縮重により、本発明のマーカーに対応するタンパク質をコードする核酸のヌクレオチド配列とは異なるが、同じタンパク質をコードする配列を含む、本発明のマーカーに対応するポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む核酸分子を指す。
ここで使用するとき、「対立遺伝子変異体」という成句は、所与の遺伝子座で生じるヌクレオチド配列またはヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドを指す。そのような天然に起こる対立遺伝子変異は、典型的には所与の遺伝子のヌクレオチド配列内に1−5%の変異を生じさせる。選択的対立遺伝子は、多くの異なる個体において対象遺伝子を配列決定することによって同定され得る。これは、様々な個体において同じ遺伝子座を同定するためのハイブリダイゼーションプローブを使用することによって容易に実施できる。ありとあらゆるそのようなヌクレオチド変異、および天然に起こる対立遺伝子変異の結果であり、機能的活性を変化させないアミノ酸多型または変異を生じさせることは、本発明の範囲内であることが意図されている。
本発明は、アンチセンス核酸分子、すなわち本発明のセンス核酸に相補的な分子、例えば本発明のマーカーに対応する二本鎖cDNA分子のコード鎖に相補的な、または本発明のマーカーに対応するmRNA分子に相補的な分子を包含する。従って、本発明のアンチセンス核酸は、本発明のセンス核酸に水素結合する(すなわちアニーリングする)ことができる。アンチセンス核酸は、コード鎖全体またはその一部にだけ、例えばタンパク質コード領域(またはオープンリーディングフレーム)の全部または一部に相補的であり得る。アンチセンス核酸分子はまた、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のコード鎖のコード領域の全部または一部に対してアンチセンスであり得る。非コード領域(「5’および3’非翻訳領域」)は、コード領域に隣接する5’および3’配列であり、アミノ酸に翻訳されない。
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば約5、10、15、20、25、30、35、40、45または50またはそれ以上のヌクレオチド長であり得る。本発明のアンチセンス核酸は、当技術分野で公知の手順を用いた化学合成および酵素連結反応を使用して構築できる。例えばアンチセンス核酸(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド)は、天然に生じるヌクレオチド、または分子の生物学的安定性を高めるまたはアンチセンス核酸のセンス核酸の間で形成される二本鎖の物理的安定性を高めるように設計された、様々に修飾されたヌクレオチドを使用して化学合成することができ、例えばホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドが使用できる。アンチセンス核酸を生成するために使用できる修飾ヌクレオチドの例は、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキューオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6−ジアミノプリンを含む。あるいは、アンチセンス核酸は、核酸がアンチセンス方向にサブクローニングされている(すなわち挿入された核酸から転写されたRNAは、以下の項でさらに述べる、対象とする標的核酸に対してアンチセンス方向である)発現ベクターを使用して生物学的に生産することができる。
本発明の核酸分子は、分子の安定性、ハイブリダイゼーションまたは溶解度を改善するために塩基部分、糖部分またはリン酸骨格において修飾され得る。例えば核酸のデオキシリボースリン酸骨格を、ペプチド核酸を生成するように修飾できる(Hyrupら、1996,Bioorganic & Medicinal Chemistry 4(1):5−23)。ここで使用するとき、「ペプチド核酸」または「PNA」という用語は、デオキシリボースリン酸骨格がプソイドペプチド骨格によって置換され、4つの天然ヌクレオ塩基だけが保持されている核酸ミミック、例えばDNAミミックを指す。PNAの中性骨格は、低イオン強度の条件下でDNAおよびRNAへの特異的ハイブリダイゼーションを可能にすることが示された。PNAオリゴマーの合成は、Hyrupら(1996)、前出;Perry−O’Keefeら(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:14670−675に述べられている標準固相ペプチド合成プロトコールを用いて実施できる。
PNAは、治療および診断適用において使用できる。例えばPNAは、例えばPNA指向性PCRクランプ法(PNA directed PCR clamping)による、遺伝子中の単一塩基対変異の解析において;他の酵素、例えばS1ヌクレアーゼと組み合わせて使用するとき人工的制限酵素として(Hyrup(1996)、前出);またはDNA配列およびハイブリダイゼーションのためのプローブまたはプライマーとして(Hyrup(1996)、前出;Perry−O’Keefeら(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:14670−675)、使用することができる。
もう1つの態様では、PNAに親油性または他のヘルパー基を結合することによって、PNA−DNAキメラの形成によって、もしくはリポソームまたは当技術分野で公知の他の薬物送達手法の使用により、PNAを、例えばその安定性または細胞への取込みを増強するために修飾することができる。例えばPNAとDNAの好都合な性質を兼ね備え得るPNA−DNAキメラを作製することができる。そのようなキメラは、そのPNA部分は高い結合親和性と特異性を提供しつつ、DNA認識酵素、例えばRNase HおよびDNAポリメラーゼがDNA部分と相互作用することを可能にする。PNA−DNAキメラは、塩基スタッキング、ヌクレオ塩基間の結合数および配向の点から選択される適切な長さのリンカーを用いて連結され得る(Hyrup(1996)、前出)。PNA−DNAキメラの合成は、Hyrup(1996)、前出;およびFinnら(1996)Nucleic Acids Research 24(17):3357−63に述べられているように実施できる。例えば、標準ホスホルアミダイト結合化学および修飾ヌクレオシド類似体を用いて固体支持体上でDNA鎖を合成することができる。5’−(4−メトキシトリチル)アミノ−5’−デオキシ−チミジンホスホルアミダイトなどの化合物を、PNAとDNAの5’末端の間のリンカーとして用いることができる(Magら、1989,Nucleic Acids Res.17:5973−88)。次にPNA単量体を段階的に結合させて、5’PNAセグメントと3’DNAセグメントを有するキメラ分子を生成する(Finnら、1996,Nucleic Acids Res.24(17):3357−63)。あるいは、5’DNAセグメントと3’PNAセグメントを有するキメラ分子を合成することもできる(Peterserら、1975,Bioorganic Med.Chem.Lett.5:1119−11124)。
オリゴヌクレオチドは、ペプチドなどの他の付属基(例えばインビボで宿主細胞受容体を標的するための)、または細胞膜(例えばLetsingerら、1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:6553−6556;Lemaitreら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:648−652;国際公開公報第WO88/09810号参照)または血液脳関門(例えば国際公開公報第WO89/10134号参照)を横切る輸送を促進する作用物質を含み得る。加えて、ハイブリダイゼーションが引き金となる切断剤(例えばKrolら、1988,Bio/Techniques 6:958−976参照)またはインターカレート剤(例えばZon,1988,Pharm.Res.5:539−549参照)でオリゴヌクレオチドを修飾することができる。このために、オリゴヌクレオチドをもう1つ別の分子、例えばペプチド、ハイブリダイゼーションが引き金となる架橋剤、輸送因子、ハイブリダイゼーションが引き金となる切断剤等に結合することができる。
本発明はまた、分子ビーコンが試料中の本発明の予測マーカーの存在を定量するために有用であるように、本発明のマーカーに相補的な少なくとも1つの領域を有する分子ビーコン核酸を含む。「分子ビーコン」核酸は、一対の相補的領域を含み、蛍光物質と蛍光消光物質がそれに結合している核酸である。蛍光物質および消光物質は、相補的領域が互いとアニーリングしたとき、蛍光物質の蛍光が消光物質によって消光されるような方向で核酸の異なる部分と結合している。核酸の相補的領域が互いとアニーリングしないときは、蛍光物質の蛍光はより低い程度にしか消光されない。分子ビーコン核酸は、例えば米国特許第5,876,930号に述べられている。
本発明の予測マーカーに対応するポリペプチドをコードする核酸を含有する、発現ベクターを包含するベクターは、本発明の予測マーカーに対応する核酸およびタンパク質の生産のため、ならびに予測マーカーに関連する組成物の生産のために使用できる。有用なベクターは、対象予測マーカーに対応する核酸および/またはタンパク質の有効発現のためのプロモーターおよび/または調節配列をさらに含む。一部の場合には、プロモーターは、必要に応じて、構成的プロモーター/調節配列、誘導的プロモーター/調節配列、組織特異的プロモーター/調節配列、または対象予測マーカーに対応する天然に生じる内因性プロモーター/調節配列を含み得る。様々な発現ベクターが当技術分野において周知であり、発現のために特定の系に適するように適合させ得る。例えば本発明の組換え発現ベクターは、原核細胞(例えば大腸菌)または真核細胞(例えば昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを使用する)、酵母細胞または哺乳動物細胞)における、本発明のマーカーに対応するポリペプチドの発現のために設計され得る。適切な宿主細胞は当技術分野において公知であり、Goeddel、前出の中で論じられているものを含む。あるいは、組換え発現ベクターは、例えばT7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを使用して、インビトロで転写し、翻訳することができる。ベクターおよび宿主細胞は、当技術分野で公知の常套的方法を用いて作製できる。さらに、ベクターおよび宿主細胞の使用は、本発明のマーカーに対応する核酸、ポリペプチドおよびそのフラグメントの生産のために利用できる。
単離タンパク質および抗体
本発明の1つの態様は、本発明の予測マーカーに対応する単離タンパク質、および生物学的に活性なその部分、ならびに本発明の予測マーカーに対応するポリペプチドに対する抗体を惹起するための免疫原としての使用に適するポリペプチドフラグメントに関する。本発明における使用のためのポリペプチドは、当技術分野で周知の常套的分子生物学、タンパク質精製および組換えDNA手法と組み合わせて、ここで提供する遺伝子同定情報を使用して単離、精製または生産され得る。
好ましいポリペプチドは、ここで述べるGenBankおよびEntrezデータベース記録の1つに記載されるアミノ酸配列を有する。他の有用なタンパク質は、これらの配列の1つと実質的に同一(例えば少なくとも約70%、好ましくは80%、90%、95%または99%)であり、対応する天然に生じるタンパク質の機能的活性を保持するが、天然の対立遺伝子変異または突然変異誘発によりアミノ酸配列が異なる。
2つの配列の間の同一性パーセントの決定は、2つの配列の間で共有される同一位置の数を測定する数学的アルゴリズムを用いて達成され得る。決定は、同一性および類似性の比較のための当技術分野で公知の何らかの方法を用いて実施できる。使用される方法の例は、例えば2つの配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムを含むことができ、その例は、KarlinとAltschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877におけるように修正された、KarlinとAltschul(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264−2268のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムは、Altschulら、(1990)J.Mol.Biol.215:403−410のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組み込まれている。BLASTヌクレオチド検索は、本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得るためにNBLASTプログラムをスコア=100、ワード長=12で用いて実施できる。BLASTタンパク質検索は、本発明のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得るためにXBLASTプログラムをスコア=50、ワード長=3で用いて実施できる。比較のためにギャップ導入したアラインメントを得るため、ギャップ導入BLASTを、Altschulら(1997)Nucleic Acids Res.25:3389−3402に述べられているように利用することができる。あるいは、分子間の遠い関係を検出する反復検索を実施するためにPSI−Blastが使用できる。BLAST、ギャップ導入BLASTおよびPSI−Blastプログラムを使用するときは、それぞれのプログラム(例えばXBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータが使用できる(National Center for Biotechnology Information(NCBI),Bethesda,MDによって維持されているウエブサイト参照)。配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムのもう1つの例は、MyersとMiller(1988)CABIOS 4:11−17のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウエアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用するときは、PAM120加重残基表、ギャップ長ペナルティー12、およびギャップペナルティー4が使用できる。局所的配列類似性の領域およびアラインメントを同定するためにさらにもう1つの有用なアルゴリズムは、PearsonとLipman(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444−2448に述べられているFASTAアルゴリズムである。ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を比較するためにFASTAアルゴリズムを使用するときは、PAM120加重残基表を、例えば2のκ−タプル値で使用することができる。2つの配列の間の同一性パーセントは、ギャップを許容するかまたは許容せずに、上述したのと同様の手法を用いて決定できる。同一性パーセントを決定するときは、正確なマッチだけを計数する。
本発明はまた、本発明のマーカーに対応するキメラまたは融合タンパク質を提供する。ここで使用するとき、「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」は、異種ポリペプチド(すなわちマーカーに対応するポリペプチド以外のポリペプチド)に作動可能に連結された本発明のマーカーに対応するポリペプチドの全部または部分(好ましくは生物学的に活性な部分)を含む。融合タンパク質内で、「作動可能に連結された」という用語は、本発明のポリペプチドと異種ポリペプチドが互いにインフレームで融合していることを指示することが意図されている。異種ポリペプチドは、本発明のポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端に融合することができる。有用な融合タンパク質は、His6タグ、FLAGタグ、c−mycタグ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)タグ、赤血球凝集素(HA)タグ、ファージT7遺伝子10タグ、V5タグ、単純ヘルペスウイルス(HSV)タグおよび水疱性口内炎ウイルス(VSV)−Gタグ、および融合タンパク質生産における使用のための他の周知の異種タグを含み得る。そのような融合タンパク質は、本発明の組換えポリペプチドの精製を容易にし得る。
加えて、融合タンパク質は、gp67、メリチン、ヒト胎盤アルカリホスファターゼおよびphoAのようなもう1つ別のタンパク質からのシグナル配列を含み得る。さらにもう1つの態様では、融合タンパク質は、本発明の予測マーカーに対応するポリペプチドの全部または部分が免疫グロブリンタンパク質ファミリーの成員に由来する配列に融合している、免疫グロブリン融合タンパク質である。本発明の免疫グロブリン融合タンパク質は、被験者において本発明のポリペプチドに対する抗体を作製するため、リガンドを精製するため、およびスクリーニングアッセイにおいてリガンドと受容体の相互作用を阻害する分子を同定するために免疫原として使用することができる。
本発明の予測マーカーに対応する単離ポリペプチドまたはそのフラグメントは、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体作製のための標準手法を用いて抗体を生成するための免疫原として使用できる。例えば免疫原は、典型的にはウサギ、ヤギ、マウスもしくは他の哺乳動物または脊椎動物のような適切な(すなわち免疫応答性)被験者を免疫することによって抗体を作製するために使用される。適切な免疫原性製剤は、例えば組換え発現されたまたは化学合成されたポリペプチドを含み得る。製剤はさらに、フロイント完全または不完全アジュバントのようなアジュバント、または同様の免疫刺激剤を含み得る。
従って、本発明のもう1つの態様は、本発明のポリペプチドに対する抗体に関する。ここでは交換可能に使用される「抗体」および「抗体物質」という用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち本発明のポリペプチドのような抗原に特異的に結合する抗原結合部位、例えば本発明のポリペプチドのエピトープを含む分子を指す。本発明の所与のポリペプチドに特異的に結合する分子は、ポリペプチドに結合するが、そのポリペプチドを天然に含む試料、例えば生物学的試料中の他の分子には実質的に結合しない分子である。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分の例は、抗体をペプシンのような酵素で処理することによって生成され得るF(ab)およびF(ab’)2フラグメントを含む。本発明は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を提供する。前記のいずれかの合成変異体および遺伝子操作された変異体(米国特許第6,331,415号参照)も本発明によって考慮される。ポリクローナルおよびモノクローナル抗体は、従来のマウスモノクローナル抗体法、例えばKohlerとMilstein,Nature 256:495(1975)の標準体細胞ハイブリダイゼーション手法、ヒトB細胞ハイブリドーマ手法(Kozborら、1983,Immunol.Today 4:72参照)、EBVハイブリドーマ手法(Coleら、pp.77−96 In Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,1985参照)またはトリオーマ手法を含む、様々な手法によって作製され得る。一般には、Harlow,E.とLane,D.(1988)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;およびCurrent Protocols in Immunology,Coliganら編集、John Wiley & Sons,New York,1994参照。好ましくは、診断適用のためには、抗体はモノクローナル抗体である。加えて、インビボ適用での使用のためには、本発明の抗体は、好ましくはヒトまたはヒト化抗体である。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、例えば標準ELISAアッセイを使用して、ハイブリドーマ培養上清を対象ポリペプチドに結合する抗体に関してスクリーニングすることによって検出される。
所望する場合は、抗体分子を被験者から(例えば被験者の血液または血清から)採取または単離し、IgG分画を得るためにプロテインAクロマトグラフィーのような周知の手法によってさらに精製することができる。あるいは、実質的に精製された抗体および精製抗体を得るために、本発明のタンパク質またはポリペプチドに特異的な抗体を選択する(例えば部分精製する)かまたは、例えばアフィニティークロマトグラフィーによって精製することができる。実質的に精製された抗体組成物とは、ここでは、抗体試料が、本発明の所望タンパク質またはポリペプチドのエピトープの以外のエピトープに対する夾雑抗体を多くとも30%だけ(乾燥重量比で)含有することを意味し、好ましくは試料の多くとも20%、さらに一層好ましくは多くとも10%、最も好ましくは多くとも5%(乾燥重量比で)が夾雑抗体である。精製抗体組成物は、組成物中の抗体の少なくとも99%が本発明の所望タンパク質またはポリペプチドに対する抗体であることを意味する。
加えて、標準組換えDNA手法を用いて作製され得る、ヒトおよび非ヒト部分の両方を含む、キメラおよびヒト化モノクローナル抗体のような組換え抗体は、本発明の範囲内である。キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種に由来する分子、例えばマウスmAbに由来する可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域を有する分子である。(例えばその全体が参照によりここに組み込まれる、Cabillyら、米国特許第4,816,567号;およびBossら、米国特許第4,816,397号参照。)ヒト化抗体は、非ヒト種からの1またはそれ以上の相補性決定領域(CDR)とヒト免疫グロブリン分子からのフレームワーク領域を有する非ヒト種からの抗体分子である。(例えばその全体が参照によりここに組み込まれる、Queen、米国特許第5,585,089号参照。)そのようなキメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、当技術分野で公知の組換えDNA手法によって、例えば国際公開広報第WO87/02671号;欧州特許出願第184,187号;欧州特許出願第171,496号;欧州特許出願第173,494号;国際公開広報第WO86/01533号;米国特許第4,816,567号;欧州特許出願第125,023号;Betterら(1988)Science 240:1041−1043;Liuら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439−3443;Liuら(1987)J.Immunol.139:3521−3526;Sunら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214−218;Nishimuraら(1987)Cancer Res.47:999−1005;Woodら(1985)Nature 314:446−449;およびShawら(1988)J.Natl.Cancer Inst.80:1553−1559);Morrison(1985)Science 229:1202−1207;Oiら(1986)Bio/Techniques 4:214;米国特許第5,225,539号;Jonesら(1986)Nature 321:552−525;Verhoeyanら(1988)Science 239:1534;およびBeidlerら(1988)J.Immunol.141:4053−4060に述べられている方法を用いて作製できる。
ヒト抗体を作製するための方法は当技術分野において公知である。ヒト抗体を作製するための1つの方法は、トランスジェニックマウスなどのトランスジェニック動物を用いる。これらのトランスジェニック動物は、それら自身のゲノムに挿入されたヒト抗体産生ゲノムの実質的な部分を含み、動物自身の内因性抗体産生は、抗体の産生が欠損状態にされている。そのようなトランスジェニック動物を作製するための方法は当技術分野において公知である。そのようなトランスジェニック動物は、XENOMOUSE(商標)技術を用いて、または「ミニ遺伝子座」アプローチを使用することによって作製できる。XENOMICE(商標)を作製するための方法は、参照によりここに組み込まれる、米国特許第6,162,963号、同第6,150,584号、同第6,114,598および同第6,075,181号に述べられている。「ミニ遺伝子座」アプローチを使用してトランスジェニック動物を作製するための方法は、各々が参照によりここに組み込まれる、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号および同第5,625,825号に述べられており;また、国際公開広報第WO93/12227も参照のこと。
抗体フラグメントは、上述した抗体のいずれかに由来し得る。例えば抗原結合フラグメント、ならびに上述した抗体に由来する完全長単量体、二量体または三量体ポリペプチドは、それら自体が有用である。この種の有用な抗体ホモログは、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインから成る一価フラグメントである、Fabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントである、F(ab’)2フラグメント;(iii)VHおよびCH1ドメインから成るFdフラグメント;(iv)抗体の1本の腕のVLおよびVHドメインから成るFvフラグメント;(v)VHドメインから成る、dAbフラグメント(Wardら、Nature 341:544−546(1989));(vii)VHHドメインから成る、単一領域機能性重鎖抗体(ナノボディとして知られる)、例えばCortez−Retamozoら、Cancer Res.64:2853−2857(2004)およびその中で引用される参考文献参照;および(viii)単離された相補性決定領域(CDR)、例えば抗原結合フラグメントを提供するために十分なフレームワークを伴う1またはそれ以上の単離CDRを含む。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、VLおよびVHは別々の遺伝子によってコードされるが、組換え法を用いて、それらが、VLとVH領域が対合して一価分子を形成する一本鎖タンパク質として作製されることを可能にする合成リンカーにより、それらを連結することができる(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えばBirdら、Science 242:423−426(1988);およびHustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883(1988)参照)。そのような一本鎖抗体はまた、抗体の「抗原結合フラグメント」という用語の中に包含されることが意図されている。これらの抗体フラグメントは当業者に公知の従来の手法を用いて得られ、フラグメントは無傷抗体と同じ方法で有用性に関してスクリーニングされる。Fv、F(ab’)2およびFabのような抗体フラグメントは、無傷タンパク質の切断によって、例えばプロテアーゼまたは化学的切断によって作製され得る。
本発明の予測マーカーに対応するポリペプチドに対する抗体(例えばモノクローナル抗体)は、予測マーカーのレベルおよび発現パターンを評価するために予測マーカーを検出する(例えば細胞試料において)ために使用できる。抗体はまた、臨床検査手順の一部として組織または体液中(例えば腫瘍試料中)のタンパク質レベルを観測するため、例えば所与の治療レジメンの効果を判定するために、診断的に使用することができる。検出は、抗体を検出可能物質に結合することによって促進され得る。検出可能物質の例は、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質および放射性物質を含む。適切な酵素の例は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼ;適切な補欠分子族複合体の例は、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンを含む;適切な蛍光物質の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリを含む;発光物質の例はルミノールを含む;生物発光物質の例は、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンを含む;および適切な放射性物質の例は、125I、131I、35Sまたは3Hを含む。
従って1つの態様では、本発明は、抗体またはフラグメントが、ここで同定される予測マーカーによってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する、実質的に精製された抗体またはそのフラグメント、および非ヒト抗体またはそのフラグメントを提供する。本発明の実質的に精製された抗体またはそのフラグメントは、ヒト、非ヒト、キメラおよび/またはヒト化抗体であり得る。
もう1つの態様では、本発明は、抗体またはフラグメントが、本発明の予測マーカーの核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する、非ヒト抗体またはそのフラグメントを提供する。そのような非ヒト抗体は、ヤギ、マウス、ヒツジ、ウマ、ニワトリ、ウサギまたはラット抗体であり得る。あるいは、本発明の非ヒト抗体は、キメラおよび/またはヒト化抗体であり得る。加えて、本発明の非ヒト抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。
さらなる態様では、本発明は、抗体またはフラグメントが、本発明のアミノ酸配列、本発明のcDNAによってコードされるアミノ酸配列、本発明のアミノ酸配列の少なくとも8、10、12、15、20または25アミノ酸残基のフラグメント、本発明のアミノ酸配列に少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列(同一性パーセントは、GCGソフトウエアパッケージのALIGNプログラムをPAM120加重残基表、ギャップ長ペナルティー12およびギャップペナルティー4で使用して決定される)、および45℃で6×SSCのハイブリダイゼーションおよび65℃で0.2×SSC、0.1%SDS中での洗浄の条件下で、本発明の核酸分子またはその相補物から成る核酸分子にハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列から成る群より選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。モノクローナル抗体は、ヒト、ヒト化、キメラおよび/または非ヒト抗体であり得る。
実質的に精製された抗体またはそのフラグメントは、本発明のポリペプチドのシグナルペプチド、分泌配列、細胞外ドメイン、膜貫通または細胞質ドメインまたは細胞質膜に特異的に結合し得る。本発明の実質的に精製された抗体またはそのフラグメント、非ヒト抗体またはそのフラグメント、および/またはモノクローナル抗体またはそのフラグメントは、本発明のアミノ酸配列の分泌配列または細胞外ドメインに特異的に結合する。
本発明はまた、検出可能物質に結合した本発明の抗体および使用のための指示書を含むキットを提供する。本発明のさらにもう1つの態様は、本発明の抗体および医薬的に許容される担体を含む診断組成物である。ある態様では、診断組成物は、本発明の抗体、検出可能部分、および医薬的に許容される担体を含む。
感受性アッセイ
癌細胞の試料を患者から入手する。試料において、表1および表2に示す予測マーカーの少なくとも1つに対応するマーカーについての発現レベルを測定する。好ましくは、表1および/または表2で同定されるマーカーを含むマーカーセットを利用し、ここで述べる方法を用いてマーカーセットに統合する。そのような分析を使用して、患者における腫瘍の発現プロフィールを得る。次に発現プロフィールの評価を使用して、患者が長期生存者であるかどうか、およびプロテアソーム阻害治療(例えば単独または追加薬剤と組み合わせたプロテアソーム阻害剤(例えばボルテゾミブ)による治療)および/またはグルココルチコイド治療(例えば単独または追加薬剤と組み合わせたグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)による治療)、または生存に同様の効果を及ぼすと予想される代替薬剤から利益を得るかどうかを判定する。発現プロフィールの評価はまた、患者が短期生存者であるかどうか、およびプロテアソーム阻害および/またはグルココルチコイド治療以外の癌治療から利益を得るかどうかまたは変更されたプロテアソーム阻害治療レジメンおよび/またはグルココルチコイド治療レジメンから利益を得るかどうかを判定するためにも使用できる。評価は、提供される方法のいずれかまたは当技術分野で公知の他の類似の採点方法(例えば加重投票法、閾値特徴の組合せ(combination of threshold features)(CTF)、Cox比例ハザード解析、主成分スコアリング、線形予測スコア、K−近傍法等)を用いて、例えばNational Center for Biotechnology Information(NCBI,Bethesda,MD)のGene Expression Omnibus(GEO)プログラムに寄託された発現値を使用して作製される1つのマーカーセットの使用を含み得る。この試験および他の試験からのデータ値を、そのような統計方法についての探索および検索のためにこの管理機関に提出している。さらに、評価は、作製された2以上のマーカーセットの使用を含み得る。プロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療は、評価の結果が長期生存者であることを示すとき、癌を治療するために適切と同定されるか、または短期生存者のためにより積極的な治療レジメンが同定される。
1つの態様では、本発明は、患者、例えば癌を有する患者、例えば血液癌(例えば多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫等)または固形腫瘍由来の癌(例えば肺、***、前立腺、卵巣、結腸、腎臓、肝臓における)を有する患者を、短期または長期生存に関して評価する方法を特徴とする。前記方法は、患者において予測マーカーセットの中のマーカーの発現の評価を提供することを含み、予測マーカーセットは以下の性質を有する:各々が、短期生存患者と長期生存患者および非罹患被験者の間で差次的に発現される複数の遺伝子を含み、および被験者における予測マーカーセット中のマーカーの各々の差次的発現(たとえば非罹患参照試料中のレベルと比較して)が、約15%、約10%、約5%、約2.5%または約1%以下の偽陽性で(偽陽性は、患者を、実際にはそうではないときに応答性または非応答性と予測することを意味する)短期または長期生存を予測するように、十分な数の差次的に発現されるマーカーを含み、および患者からのセット中のマーカーの各々の発現と参照値との比較を提供し、それによって患者を評価する。
プロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療の経過中に患者から採取した腫瘍試料において同定されたマーカーまたはマーカーセットの1またはそれ以上の発現を検査することにより、治療薬が寛解し続けているかどうかまたは癌が治療プロトコールに対して非応答性(抗療性)になったかどうかを判定することも可能である。例えばボルテゾミブの治療を受けている患者から腫瘍細胞を採取し、マーカーまたはマーカーセットの発現に関して観測する。表1および/または表2で同定される1またはそれ以上のマーカーセットの発現プロフィールが薬剤の存在下で長期生存により特徴的である場合は、プロテアソーム阻害剤による治療を継続する。しかし、表1および/または表2で同定される1またはそれ以上のマーカーセットの発現プロフィールが薬剤の存在下で短期生存により特徴的である場合は、癌はプロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療に対して抵抗性になったと考えられ、患者を治療するためにもう1つ別の治療プロトコールを開始すべきである。
重要な点として、これらの判定は、患者ごとにまたは薬剤(または薬剤の組合せ)ごとに実施できる。それ故、特定プロテアソーム阻害治療および/またはグルココルチコイド治療が特定患者または患者の群/クラスに恩恵を与える可能性が高いかどうか、または特定治療を継続すべきかどうかを判定することができる。
情報の使用
1つの方法では、情報、例えば患者のマーカー発現レベルについて(例えばここで述べる予測マーカーまたは予測マーカーセットを評価した結果)または患者が短期または長期生存者であると予測されるかどうかについての情報は、第三者、例えば病院、診療所、政府機関、補償団体または保険会社(例えば生命保険会社)に提供される(例えば通信される、例えば電子通信される)。例えば医学処置の選択、医学処置についての支払い、補償団体による支払い、若しくはサービスまたは保健のための費用は情報の関数であり得る。例えば第三者は、情報を受け取り、少なくとも一部にはその情報に基づいて決定を下し、場合により情報を通信するまたは情報に基づき手順、支払い、支払いのレベル、補償範囲等の選択を行う。前記方法では、表1および/または表2から選択されるまたは導かれる予測マーカーまたは予測マーカーセットの情報的発現レベルが判定される。
1つの実施形態では、保険料(例えば生命または医療保険)を、1またはそれ以上のマーカー発現レベル、例えば予測マーカーまたは予測マーカーセット、例えば短期または長期生存に関連する発現のレベル(例えば情報的発現レベル)についての情報の関数として評価する。例えばここで述べる患者のマーカーまたは患者の予測マーカーセットが被保険候補者(または保険補償を求める候補者)と参照値(例えば非罹患者)の間で差次的に発現される場合、保険料を上げる(例えば一定のパーセンテージ)ことができる。保険料はまた、マーカー発現レベルに依存して、例えばここで述べる予測マーカーまたは予測マーカーセットの評価の結果に依存して増減することができる。例えば保険料は、例えばマーカー発現レベルの関数として、例えばここで述べる予測マーカーまたは予測マーカーセットの評価の結果の関数として、危険度を区分するように評価することができる。もう1つの例では、短期または長期生存者である患者から得られた保険数理データの関数として評価することができる。
マーカー発現レベル、例えばここで述べる予測マーカーまたは予測マーカーセットの評価の結果(例えば情報的発現レベル)についての情報は、例えば生命保険のための引受過程で使用することができる。情報は、被験者についてのプロフィールに組み込まれ得る。プロフィール中の他の情報は、例えば生年月日、性別、配偶者の有無、銀行取引情報、信用情報、子供等を含み得る。プロフィール中の情報の1またはそれ以上の他の項目と共に、マーカー発現レベルに関する情報、例えばここで述べる予測マーカーまたは予測マーカーセットの評価の結果に関する情報の関数として、保険契約を勧めることができる。保険料または危険性評価も、予測マーカーまたは予測マーカーセット情報の関数として評価することができる。1つの実行例では、短期または長期生存者であることに基づいて得点が割り当てられる。
1つの実施形態では、マーカー発現レベル、例えばここで述べる予測マーカーまたは予測マーカーセットの評価の結果についての情報を、被験者に提供されるサービスまたは治療に対する支払いを行うための資金の譲渡を認可する(またはここで言及するもう1つ別の決定を行う)かどうかを決定する関数によって分析する。例えばここで述べる予測マーカーまたは予測マーカーセットの発現の分析の結果は、被験者が短期または長期生存者であることを指示し、治療過程が必要とされることを示唆して、それにより被験者に提供されるサービスまたは治療に対する支払いを行うための認可を指示するまたは認可を生じさせる結果の要因となり得る。一例では、表1および/または表2から選択されるまたは導かれる予測マーカーまたは予測マーカーセットの情報的発現レベルを決定し、情報的発現レベルが長期生存者を同定する場合は支払いを認可する。例えば団体、例えば病院、介護者、政府機関または保険会社または医療費に対する支払いを行うまたは医療費を払い戻す他の団体は、関係者、例えば対象患者以外の関係者が、患者に提供されたサービス(たとえば特定療法)または治療に対して支払いを行うかどうかを決定するためにここで述べる方法の結果を使用することができる。例えば1番目の団体、例えば保険会社は、患者に対してまたは患者に代わって金銭的支払いを行うかどうか、例えば患者に提供されたサービスまたは治療に対して第三者、例えば商品またはサービスの販売者、病院、医師または他の介護者に払い戻しするかどうかを決定するためにここで述べる方法の結果を使用することができる。例えば1番目の団体、例えば保険会社は、保険プランまたはプログラム、例えば健康保険または生命保険プランまたはプログラムを継続する、中止する、もしくは保険プランまたはプログラムに個人を登録するかどうかを決定するためにここで述べる方法の結果を使用することができる。
1つの態様では、本開示は、データを提供する方法を特徴とする。前記方法は、支払いを行うかどうかを決定するために記録、例えばここで述べる記録を与える、例えばここで述べる方法によって作成された、ここで述べるデータを提供することを含む。一部の実施形態では、データは、コンピュータ、コンパクトディスク(CD)、電話、ファクシミリ、eメールまたは書簡によって提供される。一部の実施形態では、データは、第一当事者によって第二当事者に提供される。一部の実施形態では、第一当事者は、被験者、医療提供者、治療医師、保健維持機構(health maintenance organization)(HMO)、病院、政府機関、もしくは薬剤を販売するまたは供給する団体から選択される。一部の実施形態では、第二当事者は、第三者の支払人、保険会社、雇用主、雇用主が資金援助する健康保険、HMO、または政府機関である。一部の実施形態では、第一当事者は、被験者、医療提供者、治療医師、HMO、病院、保険会社、もしくは薬剤を販売するまたは供給する団体から選択され、第二当事者は政府機関である。一部の実施形態では、第一当事者は、被験者、医療提供者、治療医師、HMO、病院、保険会社、もしくは薬剤を販売するまたは供給する団体から選択され、第二当事者は保険会社である。
もう1つの態様では、本開示は、患者についての予測マーカーまたは予測マーカーセットに関するリストおよび発現値を含む記録(例えばコンピュータ読取り可能な記録)を特徴とする。一部の実施形態では、記録は、各々のマーカーに関する2以上の数値を含む。
第1相臨床試験における多発性骨髄腫での陽性所見に基づき(Orlowski,J Clin Oncol.2002 Nov 15;20(22):4420−7.,Aghajanian,Clin Cancer Res.2002 Aug;8(8):2505−ll)、より均一な患者の集団においてボルテゾミブの抗腫瘍活性のより正確な評価を可能にするために第2相骨髄腫試験を実施した。多発性骨髄腫を有する被験者におけるボルテゾミブの安全性と効果を2つの第2相臨床試験、M34100−024(1回目の再発を有する被験者)およびM34100−025(2回目またはそれ以上の再発を有し、事前の最後の治療に対して抗療性である被験者)において検討した。M34100−025試験では、ボルテゾミブ単独に対するCR+PR率は27%(193名の患者のうち53名)であり、ボルテゾミブ単独に対する全体的応答率(CR+PR+MR)は35%(193名の患者のうち67名)であった。Richardson PGら、N Engl J Med.,348:2609−17(2003)参照。M34100−024試験では、ボルテゾミブ1.0mg/m2および1.3mg/m2で治療された再発多発性骨髄腫を有する患者においてそれぞれ30%および38%のCR+PR率が認められた。Jagannath,Br J Haematol.127:165−72(2004)参照。これらの試験ならびに以下で述べる追加試験に参加した患者の試料および患者からの応答判定基準を、患者の生存に関連するマーカーを同定する薬理ゲノミクス分析における使用のために探索した。
再発性および抗療性骨髄腫を有する患者におけるボルテゾミブと高用量デキサメタゾンの非盲検試験の比較
再発性または抗療性多発性骨髄腫を有する627名の登録患者を含む、多施設非盲検無作為化試験を実施した(プロトコールM34101−039)。Richardsonら、N.Engl.J.Med,.352:2487−2498(2005)参照。患者をボルテゾミブ(315名の患者)または高用量デキサメタゾン(312名の患者)のいずれかで治療した。
治療用量および投与
薬剤の供給および保管
再溶解用の滅菌凍結乾燥粉末である、注射用ボルテゾミブ(VELCADE(商標)Millennium Pharmaceuticals,Inc.,Cambridge,MA)は、ボルテゾミブ2.5mgおよびマンニトール25mgUSPを含むバイアル中で供給された。各々のバイアルを、再溶解した溶液がボルテゾミブを1mg/mLの濃度で含むように、生理(0.9%)食塩水2.5mL、塩化ナトリウム注射液USPで再溶解した。再溶解溶液は無色透明であり、最終pHは5−6であった。
デキサメタゾン錠剤(DECADRON(登録商標)Merck & Co.,Inc.)
表B 薬剤情報
患者を、1:1の比率で無作為割り付けによってボルテゾミブまたは高用量デキサメタゾンを摂取するように割り当てた。無作為化は、事前治療系統の数(1つの事前治療系統対2以上の事前治療系統)、治療に対する進行の時間(最近の治療下での進行または最近の治療を停止する前6か月以内の進行、または最近の治療を受けた後>6か月での再発)、およびβ2−マイクログロブリンレベル(>2.5mg/L対≦2.5mg/L)のスクリーニングに基づいて層化するものとした。
ボルテゾミブ群に割り当てられた患者は、最大273日間にわたって治療を受けた。この治療群の患者は、ボルテゾミブの3週間の治療サイクルを8回までおよびそれに続いて5週間の治療サイクルを3回まで受けた。各々3週間の治療サイクル内に、患者は、21日サイクルのうちの2週間に毎週2回(1、4、8および11日目に)、ボルテゾミブ1.3mg/m2/用量を単独でボーラス静脈内(IV)注射として摂取した。各々5週間の治療サイクル内に、患者は、35日サイクルの毎週1回(1、8、15および22日目に)、ボルテゾミブ1.3mg/m2/用量を単独でボーラスIV注射として摂取した。
高用量デキサメタゾン群に割り当てられた患者は、最大280日間にわたって治療を受けた。この治療群の患者は、5週間の治療サイクルを4回までおよびそれに続いて4週間の治療サイクルを5回まで受けた。各々5週間の治療サイクル内に、患者は、35日サイクルの1−4、9−12日目および17−20日目に1日1回、デキサメタゾン40mg/日を経口で摂取した。各々4週間の治療サイクル内に、患者は、28日サイクルの1−4日目に1日1回、デキサメタゾン40mg/日を経口で摂取した。プロトコールは、関連試験(companion study)(高用量デキサメタゾンを摂取したまたは少なくとも4つの事前治療を受けた後病勢進行を経験した、多発性骨髄腫を有する患者に投与されたPS−341の国際的な非比較非盲検試験)(プロトコールM34101−040)で確認された病勢進行(PD)を経験したデキサメタゾン群の患者を、ボルテゾミブを服用するように割り当てた。この試験に参加していないさらなる240名の患者が関連試験に登録され、プロトコールに従って少なくとも4回の事前治療を受けた。これら240名の患者について薬理ゲノミクス試料も採取した。
試験期間中、表Cに示すような欧州血液骨髄移植グループ(European Group for Blood and Marrow Transplant)(EBMT)基準に従って疾患の応答を評価した。
1 EBMT判定基準に基づく。Blade Jら、Br J Haematol;102(5):1115−23(1998)参照。
2 CRの正しい評価のためには、骨髄は≧20%細胞であり、血清カルシウムは正常範囲内であるべきである。
3 骨髄の採集および評価はCRを実証するために必要である。免疫固定法で最低でも6週間にわたってモノクローナルタンパク質の消失が持続する分泌性骨髄腫の患者については、CRを確認するための骨髄の反復採集および評価は必要ない;しかし、非分泌性骨髄腫の患者については寛解確認来院時に骨髄の反復採集および評価が必要である。
4 緊急治療が必要な場合は、これらの試験をより早期に反復するまたは反復検査を除外する必要があり得る。
5 PDの判定に関して、パラタンパク質の増加は最低値と比較してである。
患者は、試験薬の少なくとも1つの用量を摂取しており、基線時に測定可能な疾患を有していた場合、応答に関して評価可能であった(合計627名の患者:ボルテゾミブ群315名およびデキサメタゾン群312名)。欧州血液骨髄移植グループ(EBMT)基準に従ったボルテゾミブまたはデキサメタゾンでの治療に対する確認された応答の評価を表Dに示す。応答および病勢進行の日付は、Blade基準(表C)に従って、中央検査室からのデータおよび各臨床施設からの症例報告書を組み込んだコンピュータアルゴリズムによって判定した。ボルテゾミブ群における応答率(完全寛解プラス部分寛解(CR+PR))は38パーセントであり、デキサメタゾン群では18パーセントであった(P<0.0001)。完全寛解は、ボルテゾミブを摂取した20名の患者(6%)およびデキサメタゾンを摂取した2名の患者(<1%)において達成され(P<0.001)、完全寛解プラス準完全寛解は、ボルテゾミブおよびデキサメタゾンを摂取した患者のそれぞれ13%と2%において達成された(P<0.0001)。これらのデータは公表のために投稿された。Richardson PGら参照[NEJMに投稿された]。
表D:治療に対する最良の確認された応答の要約
1、2(母集団、N=627)
1:プロトコール規定EBMT基準を用いたコンピュータアルゴリズムに基づく応答。
2:14章における統計結果について算定されたパーセントは、≧0.5%で<1%のパーセントを1%に丸めることを含む、最も近い整数に「丸められて」いる;これらは、本文中の表では<1%として報告されている。
a応答率の差についての漸近信頼区間。
b実際の無作為化層化因子について調整されたCochran−Mantel−Haenszelカイ二乗検定からのP値。
病勢進行は、表Cおよび上記で述べたようなBlade基準によって判定した。ボルテゾミブ群における病勢進行までの中央値は6.2カ月(189日)であり、デキサメタゾン群では3.5カ月(106日)であった(ハザード比0.55、P<0.0001)。進行の日付はコンピュータアルゴリズムによって判定した。対数純に検定からのP値を実際の無作為化因子によって調整した。New Engl J Med.に投稿されたRichardsonら参照。
応答までの中央時間は、両群の患者について43日間であった。応答の中央期間は、ボルテゾミブ群では8か月、デキサメタゾン群では5.6ヶ月であった。
ボルテゾミブを投与された患者は卓越した全体的生存率を有していた。1年間の生存率はボルテゾミブ群で80%、デキサメタゾン群で66%であった(P<0.0030)。これは、登録後最初の1年間にボルテゾミブ群では死亡危険度の41%低下にあたる。全体的生存率についてのハザード比は0.57(P<0.0013)で、ボルテゾミブに優勢であった。全体的生存率の分析は、病勢進行を有し、その後関連試験でボルテゾミブを摂取するように切り換えられたデキサメタゾン群の147名の患者(44%)からのデータを含む。
生活の質の評価は、治療に対する応答が生活の質の測定可能な改善を伴ったかどうかを判定するために分析し得る。分析は要約スコアならびに個別項目に関して実施され、詳細な分析方法は、データベースロックの前に作成される正式統計解析に概説される。
薬理ゲノミクス試料の収集
薬理ゲノミクス腫瘍試料(骨髄吸引液)を、包括的mRNAレベルの発現の評価のために患者から収集した。
統計手順
所見の数、連続的変数についての平均値、標準偏差、中央値、最小値および最大値、および分類別データについての分類ごとの数とパーセントを示す要約表を提示した。要約のための分類は2つの割り当てられた治療群であった。
試験の薬理ゲノミクス部分に参加した患者については、RNA発現レベルと生存率の間の相関を評価した。
合計264名の患者の試料を薬理ゲノミクス分析のために評価した。これらの患者試料は、多発性骨髄腫の治療のためのボルテゾミブの臨床試験から収集された(表E参照)。このセットの患者におけるボルテゾミブに対する全体的応答率は42.3%(32%のCR+PR率)であった。デキサメタゾンに対する全体的応答率は39.7%(22.2%のCR+PR率)であった。すべての薬理ゲノミクス分析は、応答分類の欧州血液骨髄移植グループ(EBMT)基準に基づいた。
試験に関する生存情報を収集した。一部の患者を少なくとも30ヶ月間追跡した。例えば−039試験の患者は、中央値で22ヶ月間追跡した。表Fは、ここで提供する各々の試験からの評価可能な患者の数を示す。各患者からの試料において同定されたマーカーを、短期または長期生存の予測マーカーを同定するために検討した。
単独または併用での何らかのボルテゾミブ試験における予測マーカーの発現のレベルは、当技術分野で公知の統計方法を使用して、プロテアソーム阻害治療後の短期または長期生存の予測のための分類器を作成するために使用できる。−039デキサメタゾン試験におけるマーカーの発現のレベルは、グルココルチコイド治療後の短期または長期生存についての分類器を作成するために使用できる。
短期および長期生存予測マーカーの同定
264名の多発性硬化症患者からの生検および生存情報から、予測マーカーを同定するために使用される高い質の遺伝子発現データが作成された。プロテアソーム阻害剤(例えばボルテゾミブ)治療またはグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)治療を受けている多発性硬化症患者の生存に関連する候補マーカーを、Cox比例ハザードモデリングを使用することによって選択した。
患者の骨髄吸引液の採集後、速やかな陰性選択によって骨髄腫細胞を冨化した(図1A)。冨化手順は、赤血球に結合する抗体と共役した細胞型特異的抗体のカクテル、RosetteSep(Stem Cell Technologies)を用いる。抗体カクテルは、以下の特異性を有する抗体を含む:CD14(単球)、CD2(TおよびNK細胞)、CD33(骨髄前駆細胞および単球)、CD41(血小板および巨核球)、CD45RA(ナイーブBおよびT細胞)およびCD66b(顆粒球)。抗体は、非骨髄腫細胞型を試料中の赤血球に架橋した。結合した細胞型を、改変フィコール密度勾配を使用して除去した。その後骨髄腫細胞を収集し、凍結した。国際的試験では、各施設から最初の2つの試料を収集し、量と質に関するフィードバックを提供できるようにRNA単離に供した;最終的に第2相および第3相試験は類似のパーセンテージの情報試料を提供した。対照骨髄形質細胞試料を健常提供者から得た(AllCells,Berkeley CA)。
全RNAを、QIAGEN(登録商標)Group RNEASY(登録商標)単離キット(Valencia,CA)を用いて単離し、分光測光法によって定量した。RNA 2.0μg(入手可能な場合)を、標準的なT7ベースの増幅プロトコール(AFFYMETRIX(登録商標)Inc.,Santa Clara,CA)によってビオチニル化cRNAに変換した。6μgのcRNAが生成された場合は、≧0.5−2.0μgの少数の試料を標識し、その後ハイブリダイズした。臨床試験025および040からの試料を、臨床施設および操作者が無作為化し、24試料のバッチに割り当て、手動操作でのT7増幅によって標識した(バッチ1)。臨床試験039からの試料は、臨床施設が無作為化し、95試料のバッチに割り当て、自動T7増幅手順によって標識した(バッチ2)。自動T7増幅手順のために、cDNAおよびビオチン標識cRNAを、製造者のプロトコールに従って(AGENCOURT(登録商標)Bioscience Corporation,Beverly,MA)、AMPURE(登録商標)PCR Purification Systemを用いて精製した。cRNA収量を分光測光法によって評価し、cRNA 10μgを断片化し、AFFYMETRIX(登録商標)Human Genome HG−U133AおよびHG−U133B GENECHIP(登録商標)アレイでのトリプリケートのハイブリダイゼーションのためにさらに処理した。cRNA収量が6μg−10μgの範囲であった場合は、cRNA試料全体を断片化した。
各々の試料についてのcRNAをU133A/Bアレイにトリプリケートでハイブリダイズした;操作者、チップのロット、臨床施設およびスキャナー(GENECHIP(登録商標)Scanner 3000)を、全体を通して制御した。バックグラウンド除去、スムージング調整、ノイズ補正およびシグナル算定はAFFYMETRIX(登録商標)MAS5.0で実施した。AFFYMETRIX(登録商標)解析およびMPIによって決定された品質管理評価指標は、プレゼントコール率(>25)、補正値(<11)、β−アクチン3’:5’比(<15)及びバックグラウンド(<120)を含んだ。これらの評価指標の外側に属する試料はその後の解析から除去した。
骨髄腫純度(purity)スコアは、骨髄腫細胞(およびそれらの正常形質前駆細胞)において高発現されることが文献において公知の遺伝子の発現対赤血球細胞、好中球およびT細胞において高発現されることが公知の遺伝子の発現を検討する−以下の14のマーカーのリスト参照。骨髄腫スコア=骨髄腫マーカー(以下のNo.1−4)の発現/赤血球(No.5−7)+好中球(No.8−11)+T細胞(以下のNo.12−14):
1.205692_s_at CD38CD38抗原(p45)骨髄腫/形質細胞
2.201286_at SDC1シンデカン−1骨髄腫/形質細胞
3.201891_s_at B2Mβ−2マイクログロブリン骨髄腫/形質細胞
4.211528_x_at B2Mβ−2マイクログロブリン骨髄腫/形質細胞
5.37986_at EpoRエリトロポエチン受容体赤血球細胞
6.209962_at EpoRエリトロポエチン受容体赤血球細胞
7.205838_at GYPAグリコフォリンA赤血球細胞
8.203948_s_at MPOミエロペルオキシダーゼ好中球
9.203951_s_at CSFR3コロニー刺激因子3受容体(顆粒球)好中球
10.204039_s_at CEBPACCAAT/エンハンサー結合タンパク質(C/EBP)、α好中球
11.214523_at CEBPACCAAT/エンハンサー結合タンパク質(C/EBP)、ε好中球
12.209603_at GATA3GATA結合タンパク質3Tリンパ球
13.209604_s_at GATA4GATA結合タンパク質4Tリンパ球
14.205456_at CD3ECD3E抗原、εポリペプチドTリンパ球
代表的試料の骨髄腫純度スコアを図1Bに例示する。10未満の骨髄腫純度スコアを有する試料はさらなる解析から除去した。
正規化および対数変換
各々のマイクロアレイ上のすべてのマーカーについての発現値を150の刈り込み平均に正規化した。発現値は、MAS5遺伝子発現分析データ処理ソフトウエア(AFFYMETRIX(登録商標)Inc.,Santa Clara,CA)を用いて決定した。これらの値を、この章の以下の部分では「正規化発現」と称する。さらなる処理工程では、同じ試料についての反復発現測定全体にわたる発現レベル中央値を決定した。マーカーに関する発現レベル中央値は、National Center for Biotechnology Information(NCBI,Bethesda,MD)の遺伝子発現/分子存在率保管所、Gene Expression Omnibus(GEO)プログラムに提出されている。これらの発現レベル中央値は参照によりここに組み込まれる。生じた発現レベル中央値から対数ベース2を取り、この値を、この章の以下の部分では「対数発現」と称する。
分散成分分析
各々の患者について6までの反復ハイブリダイゼーション:2つのT7 RNA標識の各々について3つの反復ハイブリダイゼーションが存在した。各プローブセットに関して患者内および患者間の発現変動を同定するため、線形混合効果モデルを使用した。各プローブセットについて、全体平均強度からの逸脱を示す患者特異的変量効果および反復ハイブリダイゼーション変量効果を含むモデルを当てはめた。これらの変量効果をモデルの分散成分と称する。モデルの当てはめは、これらの2つの変量効果による分散を評価すること、患者間のサンプル分散および反復または患者内分散の推定を行うことを含む。
低い患者間分散を有する遺伝子の除去
患者サンプル分散に起因する65%以上の分散を有するプローブセットだけを含むように、プローブセットの数を低減した。44,928のプローブセットのうちで、9,200がこのフィルターを通過し、さらなる分析に進んだ。
単一マーカー選択
以下で述べる生存率分析法を用いて患者の生存率に関連する単一遺伝子転写産物を同定することができる。ここで述べる方法を用いて同定された予測マーカーを表1および表2に示す。表1のマーカーは、025、039および040試験にわたるボルテゾミブ治療患者を使用して同定された。表2のマーカーは、025および040試験における患者を使用して同定され、図3に示すようにおよび以下で述べるように、039における生存結果を予測するために使用された。
モデル選択
共に試料を短期および長期生存者に分類する1またはそれ以上の遺伝子転写産物のセットを、特定分類器アルゴリズムに関して、「モデル」と称する。遺伝子転写産物を「特徴」と称する。遺伝子転写産物のいずれの組合せが試料を感受性群と抵抗性群に最も良好に分類するかを判定することを「モデル選択」と称する。以下の章は、どのようにして本発明のモデルを同定したかという工程を説明する。単一マーカー同定または予測マーカーと共にここで提供する方法は、本発明のマーカーを含む追加モデルを同定するために使用できる。試料をそれらの特徴に基づいて分類するためのモデルを確立するための多くの他の分類方法があり、それらは予測モデルを確立するために表1または2のマーカーと共に使用できる。例えば予測因子は、発現値の線形結合に基づく(Golubら、Science,286:531−7(1999)、Radmacherら、J.Comput.Biol.,9:505−12(2002))。他の予測因子は神経回路網に基づき、それらは生存期間を直接予測するため、またはその後Cox比例ハザードモデルに送り込むことができる発現データの次元削減表示を開発するために使用できる(Khanら、Nat.Med.7:673−9(2001)、Nguyenら、Bioinformatics 18:39−50(2002),Lundinaら、Oncology 57:281−286(1999))。多変量予測因子を定義するために他の多くの方法が存在し、それらすべてが生存率データに関する使用に適合させ得る(Ripley BD.Pattern recognition and neural networks(Cambridge(U.K.):Cambridge University Press;(1996),Dudoitら、J Am.Stat.Assoc.97:77−87(2002))。これらは、生存期間を分類の問題(低危険度および高危険度)に転換する閾値による生存率のために使用できる。
特徴の順位付けおよびフィルタリング
予測マーカー選択における最初の工程は、9,200の特徴をフィルターにかけて、試料分類との一致を示すより少数に低減することである。フィルタリングは、最初にスコアリング法によって特徴を順位付け、次に最高順位の特徴だけをさらなる解析のために選び出すことを含む。本発明において使用したフィルタリングアルゴリズムは、進行および死亡までの時間と特徴の関連性についてp値を決定するためのCox比例ハザードモデリングであった。
Cox比例ハザード分析を、治療後に再発性および抗療性多発性骨髄腫を有する患者における死亡までの期間の予測因子を決定するために実施した。この方法は、データの一部が検閲され得る時間事象データを分析するように設計される(E.T.Lee,Statistical Methods for Survival Data Analysis,第2版、1992、John Wiley & Sons,Inc.)。
我々は、分散フィルターを通過した9200転写産物の各々についてCox比例ハザードモデルを推定した。すなわち各モデルが1つの転写産物を含む場合は9200モデルを評価した。各々のモデルから、相対危険度、95%信頼区間および各転写産物の生存率への関連性についてのp値の推定を得た。9200モデルから、我々は、患者を分析したとき0.01未満のp値を有するいくつかの転写産物を認めた。これらの転写産物は生存率有意に関連した。これらのプローブセットを表1(188名の患者からの試料の分析)および表2(101名の患者からの試料の分析)に列挙している。
表1は、所与のプローブセットを使用して、データセット内のVelcadeで治療した試料に関して確立されたCox比例ハザードモデルからのハザード比によって順序づけている。表の冒頭のマーカーの高発現レベルは、より短い生存期間と最も強く関連する;表の末尾のマーカーの高発現レベルは、より長い生存期間と最も強く関連する。
クラス予測の特定適用
BairとTibshirani(2004)PLoS Biol.2(4),E108:0511−0522の方法を、生存結果に関連するプローブセットからの発現データをどのようにして予測モデルに結びつけるかを説明するために使用した。生存と最も密接に関連するプローブセットについての発現データの主成分をコンピュータで算定する。我々は、単一遺伝子分析からの最小p値を有する100のプローブセットによる方法を説明する;他の数の遺伝子も予測的である。次に、主成分によって定義される空間にマッピングした発現データに関してCox比例ハザードモデルを確立する。モデルが予測的価値を有するかどうかを調べるため、データセットを試験セットに適用した;主成分を、訓練セットだけを使用してコンピュータで算定し、試験セットに適用した。変換した試験データに関して確立されたCox比例ハザードモデルのp値は、選択遺伝子が予測的価値を有するかどうかを指示する。Coxモデルからの線形予測因子を使用して、患者を低危険度群と高危険度群に分けることができる。対数順位検定をこれらの群の患者の結果データに適用して、予測された高危険度群と低危険度群の差が有意であるかどうかを判定する。
表2についてのモデル選択の例示
主成分アルゴリズムを使用して−025および−040試験におけるマーカーの発現レベルの分析から分類器を作成した。これらの試験からの試料中の発現レベルを、表2の欄2に列挙される最も強いsuperpcスコアを有する100プローブセットを使用してモデルを確立するために組み合わせた。このセットのプローブ(表2;「生存分類器」)を訓練セットとして−039試験に適用した。
Coxモデルは039Vおよび039Dの両方において有意であったが、039Vにおいてより有意であった(p=0.00000437対p=0.00119)。表2に例示する生存分類器は、039ボルテゾミブ患者を、死亡の危険度と有意に関連する高危険度群と低危険度群に層別化した(P<0.000004、図3)。図3AおよびBでは、試験標本を、長期生存者と短期生存者を示す2つの等しい大きさのセットに分けることによってモデルを視覚化している。
モデルサイズを変えることの効果
この回の分析では、訓練遺伝子データの第一主成分(PC)だけを使用し、試験標本を、PCベクトルへの遺伝子データの射影に基づき2つのおおむね等しい群に分類した。対数順位検定は、それら2つの群が異なる生存危険度を有するかどうかを判定する。
上記表Gは、superpcスコア上の閾値を変化させたとき025+040モデルに含まれるプローブセットの数を要約する。短期生存者から長期生存者を識別する能力はほぼすべての(しかし最小の)モデルにわたって保持された。割り当ては極めて安定であると判定された:大部分の標本が、モデルに含まれるプローブセットの数にかかわりなく同じクラス(長期生存者または短期生存者)に割り当てられる。
表の中で提供されるデータの要約
以下の用語を表全体を通じて使用する:
「No.」または「番号」は、予測マーカーについて同定番号に対応する。
「プローブセットID」は、使用したHuman Genome U133A、BセットのオリゴヌクレオチドアレイからのAFFYMETRIX(登録商標)Inc.(Santa Clara,CA)識別子に対応する;
「Rep Public ID」は、プローブセットに対応する遺伝子についての代表的公開識別子を指し、AFFYMETRIX(登録商標)Inc.のウエブサイト(support/technical/byproduct.affx?product=hgu133)のHuman Genome U133 GENECHIP(登録商標)アレイサポート領域から入手可能であり、ダウンロードされた、2005年4月12日付のHG−U133AおよびHG−U133B注釈ファイルから抜粋した;
「表題」は、入手可能な場合は、一般名称に対応し、同じくAFFYMETRIX(登録商標)Inc.注釈ファイルから抜粋した;
「遺伝子記号」は、遺伝子がそれによって一般的に知られる記号に対応し、同じくAFFYMETRIX(登録商標)Inc.注釈ファイルから抜粋した;
「Entrez Gene ID」は、AFFYMETRIX(登録商標)Inc.によって注釈されている、プローブセットによって認識される遺伝子のNCBI Unigeneユニーク遺伝子識別子(Enrez Geneデータベース、遺伝子特異的情報;National Center for Biotechnology Information,Bethesda,MD)に対応し、AFFYMETRIX(登録商標)Inc.のウエブサイト(support/technical/byproduct.affx?product=hgu133)のHuman Genome U133 Set技術サポート資料から公的に入手可能であり、ダウンロードされた、2006年7月17日付のHG−U133AおよびHG−U133B注釈ファイル、Release20から抜粋した;
「TTPマーカー」または「TTP」は、進行までのより長い期間に相関して標本において有意に上方調節される(+)、または進行までのより短い期間に相関して標本において有意に上方調節される(−)、予測マーカーの指標である。「V」はボルテゾミブを表わし、「D」はデキサメタゾンを表わす。「+」は進行までの時間についての良好な予後を示し、「−」は進行までの時間についての予後不良を示す;
「応答マーカー」または「Resp」は、治療に対して応答性である標本において有意に上方調節される(+)、または治療に対して非応答性である標本において有意に上方調節される(−)、予測マーカーの指標である。「V」はボルテゾミブを表わし、「D」はデキサメタゾンを表わす。「+」は応答性を示し、「−」は非応答性を示す。
「Super PC 025+040」は、025および040試験からの標本における発現レベルの分析時の各プローブセットについてのsuperPCスコアである。正の値を有するプローブセットはより短い生存期間に関連し、負の値を有するプローブセットはより長い生存期間に関連する。
本発明の予測マーカーを表1および2に提示する。表1は、長期および短期生存の特異的識別子であると同定された予測マーカーを示す。表1のマーカーNo.225−403は長期生存者において上方調節される;表1のマーカーNo.1−224は短期生存者において上方調節される。表1はまた、進行までの時間または治療に対する応答と相関するマーカーを指示する(2004年6月24日公開の国際公開広報第WO04053066号または2006年6月8日出願の米国特許出願第11/449,195号参照)。表2も、長期または短期生存の特異的識別子であると同定された予測マーカーを示す。表2のマーカーNo.38−100は長期生存者において上方調節される;表2のマーカーNo.1−37は短期生存者において上方調節される。
表1および2で同定される予測マーカーの中で、骨髄腫を含む癌の治療のためのプロテアソーム阻害剤の使用に特に関連する機能を含む、その推定上の1またはそれ以上の生物学的機能が特に興味深い遺伝子に対応するマーカーのサブセットが存在する。遺伝子の一部は、骨髄腫の発症または進行、リンパ系細胞の増殖、生存またはシグナル伝達、薬剤代謝またはアポトーシス経路の調節に関与する、またはプロテアソーム阻害剤によって直接標的されるユビキチン/プロテアソーム経路の成分をコードすることが公知である。以下の表Hは、分類および機能を列挙し、表1および2の「生物学的分類」の欄を理解するための手がかりを提供する。
表H.表1および2におけるマーカーを注釈するための生物学的分類
所与のセットの特徴を使用して患者試料を分類するための使用できる様々なアルゴリズムが現在使用可能である。それ故、患者の生存に関する予測方程式を導くために、特徴選択工程を通して選択されたマーカーの組合せを使用可能なアルゴリズムのいずれかにおいて使用し得る。
線形予測スコアを、その内容が参照によりここに組み込まれる、Wrightら、“A gene−expression based method to diagnose clinically distinct groups of diffuse large B cell lymphoma.”PNAS 100(17):9991−9996(2003)によって述べられたように実行した。Wrightらによって述べられたように、ベクトルXについてのLPSスコアは以下のように算定される:
[式中、Xjは、セット内のj番目の特徴についての対数発現値を表わし、ajは、j番目の特徴が予測される結果と関連する程度を表わすスケーリング係数である。]Wrightらにおけるように、我々はスケーリング係数に関して特徴のt統計を使用した。LPSスコアに照らして、標本が2つのクラスの1番目に属する可能性は、以下の式を用いて決定される:
[式中、φ(x;μ、σ2)は、平均値μおよび分散σ2の正規密度関数を表わし、
は、カテゴリー1およびカテゴリー2についての認められたLPSスコアの平均値および分散である。]我々の場合は、例えば、カテゴリー1は応答者であり、カテゴリー2は非応答者である。次に、新しい標本についての予測は、確率P(X∈S1)で1番目のクラスに属し、確率P(X∈S2)=1−P(X∈S1)で2番目のクラスに属する。
K近傍分類法は、問い合わせプロフィールと訓練セット内のプロフィールの各々の間の類似性を算定する[Introduction to Machine Learning by Ethem ALPAYDIN,The MlT Press,October 2004,ISBN 0−262−01211−1]。k最近傍プロフィールを選択し、問い合わせプロフィールについての予測を決定するためにそれらのクラスラベルの中で投票を行う。ここでは、我々はk=1を使用した。
特徴選択
特徴選択は、治療結果によって患者を分類するために、データセット内のすう栓の使用可能な特徴サブセットを決定し、マーカーセットまたはモデルを形成する特徴の組合せを生成する工程である。特徴を選択するための多くのアプローチがある。ここで我々は、例示的なマーカーセットを生成するための2つのアプローチ:(1)上位N個の最も有意の特徴、および(2)標準特徴選択法である、逐次順方向特徴選択を報告する(DashとLiu,“Feature Selection for Classification,”Intelligent Data Analysis 1:131−156,1997参照)。
短期および長期予測マーカー選択からの結果の考察
他施設臨床試験における試料収集とゲノムデータ
多発性硬化症の治療のためのボルテゾミブの第2相および第3相臨床試験は、前向き設定での薬理ゲノミクスの実現可能性を検討するための研究要素を含んだ。89施設(12カ国から)が研究のための腫瘍試料を提供した。治療前骨髄吸引液を常套的スクリーニング手順の間に収集した。これらの吸引液中の腫瘍のパーセンテージにはかなりのばらつきがある。腫瘍含量を、癌生物学の以前のゲノム試験および結果(Zhan:Blood,108:2020−2028,2006;Dave SS,Wright G,Tan Bら:Prediction of survival in follicular lymphoma based on molecular features of tumor−infiltrating immune cells.N Engl J Med 351:2159−2169,2004;Valk PJ,Verhaak R G,Beijen MAら:Prognostically useful gene−expression profiles in acute myeloid leukemia.N Engl J Med 350:1617−1628,2004)と一致するレベルである、少なくとも60−80%に高めることを目的として、すべての試料を富化手順に供した(試験方法参照)。富化前および富化後の試料の蛍光セルソーティング分析(FACS)は、富化が80−90%腫瘍細胞の試料を生成し得ることを明らかにした(図1)。FACS分析はすべての参加施設において実施できたわけではなかった。それ故、我々は、マイクロアレイデータから導いた骨髄腫純度スコアの解析によって試料の純度を評価し(試験方法参照)、低い腫瘍細胞純度を有する試料をさらなる分析から除外した(図1B)。遺伝子発現データを生成する方法の各々の工程で試料の損耗が認められた。試料の約60%がハイブリダイゼーションのために適切なRNAの量と質を示した。これらの試料のうちで、〜85%が高品質のマイクロアレイデータを生成し、85%が上述した腫瘍細胞富化の評価に合格した。これらの結果は、一般に種々の臨床試験全体にわたって一致した。
各々の治験について、我々は、ゲノムデータを有する患者のサブセットが全体的な治験集団を代表することを確実にするため、一連の臨床および予後変数を検討した。年齢、性別または骨髄腫アイソタイプに関してバイアスは認められなかった。これらの治験の一部に関して、ゲノミクスサブセットの生存率値はより不良の結果を指示した。血清アルブミンおよび血清β2マイクログロブリンが025試験のゲノミクスサブセットにおいて上昇していたが、これはその他の治験データでは認められなかった。各地検のゲノミクスサブセットは、しかしながら、骨髄吸引液中でより高い基線腫瘍負荷を示し、サンプリングの成功がおそらく骨髄疾患の程度に関連することを示唆した。データは、高い腫瘍負荷を有する患者の過剰提示が存在するが、全体としてゲノミクスサブセットは試験集団の妥当な代表であることを示唆する。
公表されている骨髄腫生物学とデータセットの比較
我々のゲノミクスアプローチは、試料を多施設で収集し、腫瘍細胞を冨化するために陰性選択手順に供したという点でこれまでの骨髄腫試験((Zhan F,Hardin J,Kordsmeier Bら:Global gene expression profiling of multiple myeloma,monoclonal gammopathy of undetermined significance,and normal bone marrow plasma cells.Blood 99:1745−1757,2002;Claudio JO,Masih−Khan E,Tang Hら:A molecular compendium of genes expressed in multiple myeloma.Blood 100:2175−2186,2002;Zhan:Blood 108:2020−2028,2006;Hurt EM,Wiestner A,Rosenwald Aら:Overexpression of c−maf is a frequent oncogenic event in multiple myeloma that promotes proliferation and pathological interactions with bone marrow stroma.(Cancer Cell 5:191−199,2004))と異なる。それ故、我々は、教師なし階層クラスタリングを使用して、データが人口統計学、臨床および技術的パラメータによってどのような影響を受けた可能性があるかを詳しく検討した。図2Aは、264の骨髄腫患者試料および6名の正常形質細胞対照(PC)試料の系統樹を示す。異なる年齢、性別および骨髄腫アイソタイプを有する患者がこれらの群全体にわたって不規則に分布した(図2A)。さらに、同じ臨床施設において生じた試料の有意のクラスター化は存在しなかった。しかし、臨床試験、事前の治療数、アレイのハイブリダイゼーションバッチ、骨髄腫純度スコアおよび、最近の報告(Zhan:Blood,108:2020−2028,2006)と一致して、骨髄腫TCサブタイプに関して非ランダム分布が認められた。これらの因子のいくつかは相互に関係している;特に、039試験の患者は、事前治療が有意に少なく、また1つのバッチ内でハイブリダイズされており、これらの因子の一方または両方がクラスタリングに影響を及ぼすかどうかを識別することが困難であった。025試験患者は様々な数の事前治療を示すので、これらの試料の分布が事前治療の程度に依存するかどうかを質問した。実際に、第1−3群の025患者は4−5ブランチの患者(平均=5.1)よりも少ない系統の事前治療(平均=3.7)を有しており(P=0.53)、試料の分布が、少なくとも一部には事前治療の程度によって影響を受けることを示唆した。
039無作為化試験は、ボルテゾミブ群におけるより優れた生存率を明らかにした(デキサメタゾン群の24カ月に対して30カ月、P=0.027)(フォローアップ中央値22か月、44%で事象が起こった(Richardson ASH 2005)。あらかじめ予定されていた中間分析において有意の生存上の効果が認められ、この時点ですべての患者がボルテゾミブを摂取することを許容され、デキサメタゾン群患者の62%は、その後単一薬剤のボルテゾミブを摂取した。生存率分類器の中のプローブセットにおいて例示された遺伝子発現パターンの解析は(表2)、これまでに報告された骨髄腫の試験と共通するいくつかの特徴を明らかにする(図2B)。これらのプローブセットは、その変化が骨髄腫に関連する経路内の遺伝子にクラスター化される。
我々は、生存率分類器を作成するために025+040患者からの遺伝子発現データを使用し(Bair E,Tibshirani R:Semi−supervised methods to predict patient survival from gene expression data.PLoS Biol 2:E108,2004)、次にそれを039患者データに関して試験した。図3Aに示すように、この遺伝子発現分類器は039ボルテゾミブ患者を、死亡の危険度と有意に関連する高危険度群と低危険度群に層別化した(P<0.000004)。分類器はまた、039デキサメタゾン群に登録された患者を有効に層別化した(P<0.0012、図3B)。この生存率分類器およびその基礎となるプローブセットは、投与される特定治療とは無関係な生存率の予後指標であり得ることが可能である。しかし、デキサメタゾンに登録された患者の大部分においてその後ボルテゾミブが使用されたことによって隠された、ボルテゾミブに対するある程度の特異性が存在する可能性がある。
治療前の遺伝子発現が、予後臨床変数によって既に補足されていないデータを提供するかどうかを判定するため、国際病期分類(International Staging System)(Greipp PR,San Miguel J,Durie BGら:International Staging System(ISS) for multiple myeloma.J Clin Oncol 23:3412−3420,2005)によって高危険度または低危険度と予測された患者の生存率を評価した。この有効性が確認されている病期分類によって同定された危険度群は、様々な骨髄腫治療のために適切であり、039試験患者においても高/低危険度を識別する(データは示していない)。図3Cおよび3Dに示すように、遺伝子発現分類は、それぞれ低(ISS=1)および高(ISS=2または3)と同定された患者における有意のさらなる層別化を可能にし、臨床病期分類とゲノム情報は重複しておらず、補完的である可能性が高いことを指示する。
この生存率分類器を含むプローブセット(表2)は応答分類器と重複しない。生存率と応答の評価項目は部分的にしか関連していないので、これは意外ではない。接着関連遺伝子(CDH1、CD36、TNXB)の過剰発現はより長い生存期間と相関し、癌抗原(SSX4、SSX2)はより短い生存期間と相関し、生物学的整合性が存在し得ることを示唆する。
我々は、ここで述べる生存率分類器が、高危険度および低危険度ISS群内の危険度群を識別する有意の能力によって明らかにされたように、臨床予後変数(例えば血清アルブミンおよびβ−2M)とは異なる結果関連情報を捕捉することに注目する(図5)。リンパ腫における試験は同様の結論を導いた(Rosenwald N,Engl.J.Med.346:1937−47(2002))。
本発明は、本発明の態様の例示として提供される前述した特定実施形態によって範囲を限定されない。ここで示し、説明したものに加えて、機能的に等価の方法および成分も本発明の範囲内であり、当業者には、常套的実験だけを用いて前記説明から明らかになる。そのような等価物は以下の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
雑誌の論文、特許、AFFYMETRIX(登録商標)Inc.プローブセット配列ファイルおよびデータベースを含む、ここで引用するすべての参考文献は、参照により明白にここに組み込まれる。