[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1および図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る高周波モジュールの回路構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る高周波モジュールの回路構成を示すブロック図である。図2は、本実施の形態に係る高周波モジュールの回路構成を示す回路図である。なお、図1は、高周波モジュールの回路構成を簡略化して表している。
本実施の形態に係る高周波モジュール2は、携帯電話機や無線LAN用の通信装置等の無線通信装置における高周波回路部の一部を構成するものである。この高周波モジュール2は、時分割複信(TDD;Time Division Duplex)方式の無線通信装置に適用される。
図1および図2に示したように、高周波モジュール2は、アンテナ1に接続されるアンテナ端子ANTと、平衡信号の形態の送信信号が入力される一対の送信信号端子Tx1,Tx2と、不平衡信号の形態の受信信号を出力する受信信号端子Rxと、電源電圧が入力される電源端子Vccと、スイッチ用制御信号が入力されるスイッチ制御端子V1とを備えている。図2に示したように、高周波モジュール2は、更に、電力増幅器用制御信号が入力される増幅器制御端子Veと、出力電力検出端子Vdetとを備えている。また、図1および図2には示していないが、高周波モジュール2は、更に、複数のグランド端子を備えている。
図示しないが、高周波モジュール2には、高周波信号の変調および復調を行う集積回路(以下、RFICと記す。)が接続されるようになっている。RFICは、送信信号端子Tx1,Tx2、受信信号端子Rx、スイッチ制御端子V1、増幅器制御端子Veおよび出力電力検出端子Vdetに接続される。RFICは、送信信号を生成し、送信信号端子Tx1,Tx2に対して出力すると共に、受信信号端子Rxより受信信号を受け取る。また、RFICは、スイッチ用制御信号を生成し、スイッチ制御端子V1に対して出力し、電力増幅器用制御信号を生成し、増幅器制御端子Veに対して出力し、出力電力検出端子Vdetより出力される検出信号を受け取る。
高周波モジュール2は、更に、バンドパスフィルタ(以下BPFと記す。)3と、電力増幅器4と、ローパスフィルタ(以下LPFと記す。)5と、スイッチ6と、伝送線路71と、位相調整線路81とを備えている。図2に示したように、BPF3は、一対の入力ポート3a,3bと、出力ポート3cとを有している。入力ポート3a,3bは、それぞれ送信信号出力端子Tx1,Tx2に接続されている。BPF3は、送信信号の周波数帯に対応した通過帯域を有し、通過帯域内の周波数の信号を選択的に通過させる。BPF3の構成については、後で詳しく説明する。
電力増幅器4は、信号入力端子4aと、信号出力端子4bと、増幅器電源電圧入力端子4VC1,4VC2と、端子4VE,4VTと、グランド電極4Gとを有している。なお、図1では、増幅器電源電圧入力端子4VC1,4VC2をまとめて、増幅器電源電圧入力端子4VCとして示している。信号入力端子4aは、伝送線路71を介してBPF3の出力ポート3cに接続されている。信号出力端子4bは、LPF5の入力端に接続されている。増幅器電源電圧入力端子4VC1,4VC2(4VC)は、電源端子Vccに接続されている。端子4VEは、増幅器制御端子Veに接続されている。端子4VTは、出力電力検出端子Vdetに接続されている。グランド電極4Gは、グランドに接続されている。電力増幅器4は、信号入力端子4aに入力される高周波信号、すなわちBPF3の出力信号を増幅する。LPF5は、電力増幅器4によって発生されて電力増幅器4の信号出力端子4bより出力される高周波信号に重畳された高調波信号を減衰させる。なお、LPF5の代りにBPFを設けてもよい。このBPFは、高調波信号の他に、送信信号の周数帯よりも低い周波数の不要な信号を減衰させる。電力増幅器4およびLPF5の構成については、後で詳しく説明する。
スイッチ6は、端子6a,6b,6cと、スイッチ電源電圧入力端子6VDと、スイッチ制御信号入力端子6V1と、復号器13と、単極双投のスイッチ回路14と、キャパシタC61,C62,C63とを有している。端子6aは、LPF5の出力端に接続されている。端子6bは、受信信号端子Rxに接続されている。端子6cは、アンテナ端子ANTに接続されている。端子6VDは、位相調整線路81を介して電源端子Vccに接続されている。端子6V1は、スイッチ制御端子V1に接続されている。
スイッチ回路14は、ポート14a,14b,14cを含み、ポート14cをポート14a,14bのいずれかに選択的に接続する。ポート14aは、キャパシタC61を介して端子6aに接続されている。ポート14bは、キャパシタC62を介して端子6bに接続されている。ポート14cは、キャパシタC63を介して端子6cに接続されている。スイッチ回路14は、更に、制御端子14V1,14V2を有している。スイッチ回路14は、制御端子14V1,14V2に入力される信号に応じて、接続される2つのポートを決定する。
復号器13は、論理回路によって構成されている。従って、復号器13は、本発明における論理回路に対応する。復号器13は、端子6VD,6V1と、制御端子14V1,14V2に接続されている。復号器13は、電源端子Vcc、位相調整線路81および端子6VDを介して電源電圧が供給されることによって動作し、スイッチ制御端子V1および端子6V1を介して入力されるスイッチ用制御信号に基づいて、スイッチ回路14において接続される2つのポートを決定するための2つの信号を生成し、スイッチ回路14の制御端子14V1,14V2に出力する。具体的には、復号器13は、インバータ64を有している。端子6V1は、インバータ64の入力端と、制御端子14V1に接続されている。端子6VDは、インバータ64の電源電圧入力端に接続されている。インバータ64の出力端は、制御端子14V2に接続されている。スイッチ制御端子V1に入力されるスイッチ用制御信号がハイレベルのときには、制御端子14V1に入力される信号はハイレベルとなり、制御端子14V2に入力される信号はローレベルとなる。スイッチ制御端子V1に入力されるスイッチ用制御信号がローレベルのときには、制御端子14V1に入力される信号はローレベルとなり、制御端子14V2に入力される信号はハイレベル(インバータ64の電源電圧入力端に入力される電源電圧のレベル)となる。
スイッチ回路14は、FETを用いて構成されている。スイッチ6は、半導体IC、特にモノリシックマイクロ波集積回路(以下、MMICと記す。)によって構成されている。
図2に示したように、高周波モジュール2は、更に、端子6VDとグランドとの間に設けられたキャパシタC23を備えている。キャパシタC23は、電源端子Vccに接続される電源からのノイズを、グランドに逃がして除去するバイパスキャパシタとして機能する。
ここで、図2を参照して、BPF3の構成の一例について説明する。なお、BPF3の構成は、図2に示した構成に限られるものではない。図2に示したBPF3は、共振器L31,L32,L33,L34と、キャパシタC31,C32,C33,C34,C71,C72,C73,C74とを有している。共振器L31,L32,L33,L34は、それぞれ、開放端と短絡端とを含んでいる。入力ポート3aは、共振器L31に接続されている。キャパシタC31,C71,C74の各一端は、共振器L31の開放端に接続されている。共振器L31の短絡端およびキャパシタC31の他端は接地されている。共振器L32の開放端およびキャパシタC32,C72の各一端は、キャパシタC71の他端に接続されている。共振器L32の短絡端およびキャパシタC32の他端は接地されている。共振器L33の開放端およびキャパシタC33,C73の各一端は、キャパシタC72の他端に接続されている。共振器L33の短絡端およびキャパシタC33の他端は接地されている。共振器L34の開放端およびキャパシタC34の一端、ならびにキャパシタC74の他端は、キャパシタC73の他端に接続されている。共振器L34の短絡端およびキャパシタC34の他端は接地されている。出力ポート3cは、共振器L34に接続されている。なお、図2では、便宜上、入力ポート3aが共振器L31の開放端に接続されているように描いているが、共振器L31における入力ポート3aの接続箇所は、短絡端以外の箇所であればよい。また、図2では、便宜上、出力ポート3cが共振器L34の開放端に接続されているように描いているが、共振器L34における出力ポート3cの接続箇所は、短絡端以外の箇所であればよい。
共振器L31とキャパシタC31の組、共振器L32とキャパシタC32の組、共振器L33とキャパシタC33の組、および共振器L34とキャパシタC34の組は、それぞれ1/4波長共振器を構成する。キャパシタC31,C32,C33,C34は、それぞれ、共振器L31,L32,L33,L34の物理長を、BPF3を通過する信号の1/4波長よりも短くする作用を有している。共振器L31と共振器L32は互いに電磁結合する。すなわち、共振器L31と共振器L32は誘導性結合すると共に、キャパシタC71を介して容量性結合する。同様に、共振器L32と共振器L33も互いに電磁結合する。すなわち、共振器L32と共振器L33は誘導性結合すると共に、キャパシタC72を介して容量性結合する。同様に、共振器L33と共振器L34も互いに電磁結合する。すなわち、共振器L33と共振器L34は誘導性結合すると共に、キャパシタC73を介して容量性結合する。共振器L31,L32間の誘導性結合、共振器L32,L33間の誘導性結合および共振器L33,L34間の誘導性結合は、いずれも、開放端と短絡端の位置関係が同じになるコムライン結合である。なお、2つの共振器において、開放端と短絡端の位置関係が同じというのは、開放端から短絡端に向かう方向が、2つの共振器において、同一であるか、ほぼ同一であるということである。
BPF3は、更に、共振器L35,L36,L37,L38と、キャパシタC35,C36,C37,C38,C75,C76,C77,C78とを有している。共振器L35,L36,L37,L38は、それぞれ、開放端と短絡端とを含んでいる。入力ポート3bは、共振器L35に接続されている。キャパシタC35,C75,C78の各一端は、共振器L35の開放端に接続されている。共振器L35の短絡端およびキャパシタC35の他端は接地されている。共振器L36の開放端およびキャパシタC36,C76の各一端は、キャパシタC75の他端に接続されている。共振器L36の短絡端およびキャパシタC36の他端は接地されている。共振器L37の開放端およびキャパシタC37,C77の各一端は、キャパシタC76の他端に接続されている。共振器L37の短絡端およびキャパシタC37の他端は接地されている。共振器L38の開放端およびキャパシタC38の一端、ならびにキャパシタC78の他端は、キャパシタC77の他端に接続されている。共振器L38の短絡端およびキャパシタC38の他端は接地されている。なお、図2では、便宜上、入力ポート3bが共振器L35の開放端に接続されているように描いているが、共振器L35における入力ポート3bの接続箇所は、短絡端以外の箇所であればよい。
共振器L35とキャパシタC35の組、共振器L36とキャパシタC36の組、共振器L37とキャパシタC37の組、および共振器L38とキャパシタC38の組は、それぞれ1/4波長共振器を構成する。キャパシタC35,C36,C37,C38は、それぞれ、共振器L35,L36,L37,L38の物理長を、BPF3を通過する信号の1/4波長よりも短くする作用を有している。共振器L35と共振器L36は互いに電磁結合する。すなわち、共振器L35と共振器L36は誘導性結合すると共に、キャパシタC75を介して容量性結合する。同様に、共振器L36と共振器L37も互いに電磁結合する。すなわち、共振器L36と共振器L37は誘導性結合すると共に、キャパシタC76を介して容量性結合する。同様に、共振器L37と共振器L38も互いに電磁結合する。すなわち、共振器L37と共振器L38は誘導性結合すると共に、キャパシタC77を介して容量性結合する。共振器L35,L36間の誘導性結合、共振器L36,L37間の誘導性結合および共振器L37,L38間の誘導性結合は、いずれも、開放端と短絡端の位置関係が同じになるコムライン結合である。
また、共振器L31と共振器L35の組、共振器L32と共振器L36の組、共振器L33と共振器L37の組、および共振器L34と共振器L38の組は、それぞれインターディジタル結合する。すなわち、共振器L31と共振器L35は、開放端と短絡端の位置関係が互いに反対になるように対向し、互いに電磁結合する。また、共振器L32と共振器L36は、開放端と短絡端の位置関係が互いに反対になるように対向し、互いに電磁結合する。また、共振器L33と共振器L37は、開放端と短絡端の位置関係が互いに反対になるように対向し、互いに電磁結合する。また、共振器L34と共振器L38は、開放端と短絡端の位置関係が互いに反対になるように対向し、互いに電磁結合する。
共振器L31〜L38は、いずれも、TEM線路よりなる分布定数線路である。TEM線路とは、電界および磁界が共に電磁波の進行方向に垂直な断面内にのみ存在する電磁波であるTEM波(Transverse Electromagnetic Wave)を伝送する伝送線路である。
BPF3において、送信信号端子Tx1,Tx2からの平衡信号は、それぞれ入力ポート3a,3bに接続された共振器L31,L35に入力され、共振器L34に接続された出力ポート3cから、BPF3の通過帯域内の周波数の不平衡信号が出力される。
次に、図2を参照して、電力増幅器4の構成の一例について説明する。なお、電力増幅器4の構成は、図2に示した構成に限られるものではない。図2に示した電力増幅器4は、カスケード接続された2つの増幅器11,12と、キャパシタC41,C42と、バイアス回路43と、ダイオード44とを有している。電力増幅器4は、半導体IC、特にMMICによって構成されている。
増幅器11,12は、それぞれ、入力端と出力端を有している。増幅器11の入力端は、キャパシタC41を介して信号入力端子4aに接続されている。増幅器11の出力端は、増幅器12の入力端に接続されている。増幅器12の出力端は、キャパシタC42を介して信号出力端子4bに接続されている。増幅器電源電圧入力端子4VC1は増幅器11の出力端に接続され、増幅器電源電圧入力端子4VC2は増幅器12の出力端に接続されている。
バイアス回路43は、端子4VEに接続されていると共に、増幅器11,12に接続されている。バイアス回路43は、増幅器制御端子Veおよび端子4VEを介して入力される電力増幅器用制御信号が増幅器11,12の動作を指示する場合に、増幅器11,12に対してバイアス電圧を供給する。増幅器11,12は、増幅器電源電圧入力端子4VC1,4VC2を介して電源電圧が供給され、且つバイアス電圧が供給されることにより動作する。動作状態の増幅器11,12は、信号入力端子4aに入力された送信信号を増幅し、信号出力端子4bに出力する。
図示しないが、電力増幅器4は、電力検出回路として、増幅器12の出力端とキャパシタC42との間の信号経路から、電力増幅器4の出力電力の一部を取り出すカプラを備えている。ダイオード44のアノードは、このカプラに接続されている。ダイオード44のカソードは、端子4VTに接続されている。端子4VTからは、電力増幅器4の出力電力のレベルを示す検出信号が出力される。この検出信号は、出力電力検出端子Vdetを介して、RFIC内に設けられた自動出力制御回路に入力される。この自動出力制御回路は、電力増幅器4の出力電力のレベルがほぼ一定になるように、電力増幅器4に供給する送信信号のレベルを制御する。なお、高周波モジュール2が自動出力制御回路を備え、この自動出力制御回路が、電力増幅器4の出力電力のレベルがほぼ一定になるように電力増幅器4のゲインを調整するようにしてもよい。
図2に示したように、高周波モジュール2は、更に、インダクタL21と、キャパシタC21,C22とを備えている。インダクタL21の一端は電源端子Vccに接続され、インダクタL21の他端は増幅器電源電圧入力端子4VC2に接続されている。キャパシタC22は、インダクタL21の一端とグランドとの間に設けられている。キャパシタC21は、増幅器電源電圧入力端子4VC1とグランドとの間に設けられている。高周波モジュール2の電源端子Vccは、端子4VC1には直接接続され、端子4VC2にはインダクタL21を介して接続されている。インダクタL21は、チョークインダクタとして機能する。キャパシタC21,C22は、電源端子Vccに接続される電源からのノイズを、グランドに逃がして除去するバイパスキャパシタとして機能する。
次に、図2を参照して、LPF5の構成の一例について説明する。なお、LPF5の構成は、図2に示した構成に限られるものではない。図2に示したLPF5は、インダクタL51,L52と、キャパシタC51,C52,C53,C54,C55とを有している。インダクタL51およびキャパシタC51,C54の各一端は、LPF5の入力端を介して、電力増幅器4の出力端子4bに接続されている。キャパシタC51の他端は接地されている。インダクタL52およびキャパシタC52,C55の各一端、ならびにキャパシタC54の他端は、インダクタL51の他端に接続されている。キャパシタC52の他端は接地されている。インダクタL52およびキャパシタC55の各他端、ならびにキャパシタC53の一端は、LPF5の出力端を介して、スイッチ6の端子6aに接続されている。キャパシタC53の他端は接地されている。
本実施の形態に係る高周波モジュール2において、電力増幅器4は、送信信号に対する高調波信号を発生する。電力増幅器4によって発生される高調波信号は、増幅器電源電圧入力端子4VC2に漏れる。インダクタL21のインダクタンスとキャパシタC22のキャパシタンスは、送信信号が電源端子Vcc側に伝わらないように、送信信号の周波数帯に対する電源端子Vccと端子4VC2との間における減衰が十分大きくなるように設定される。この場合、高調波信号に対する電源端子Vccと端子4VC2との間における減衰は、送信信号の周波数帯に対する電源端子Vccと端子4VC2との間における減衰よりも小さくすることは可能である。
本実施の形態に係る高周波モジュール2では、増幅器電源電圧入力端子4VC2とスイッチ電源電圧入力端子6VDが共に電源端子Vccに接続されている。ここで、図2に示したように、電源端子Vccから端子4VC2に至る線路と、電源端子Vccから端子6VDに至る線路との分岐点を記号NDで表す。本実施の形態に係る高周波モジュール2は、増幅器電源電圧入力端子4VC2とスイッチ電源電圧入力端子6VDが共に電源端子Vccに接続されることによって、増幅器電源電圧入力端子4VC2とスイッチ電源電圧入力端子6VDとの間に形成される高調波信号伝送経路80を備えている。高調波信号伝送経路80は、電力増幅器4によって発生されて増幅器電源電圧入力端子4VC2に漏れる高調波信号をスイッチ電源電圧入力端子6VDに伝送する。高調波信号伝送経路80は、本発明における伝送経路に対応する。高調波信号伝送経路80は、増幅器電源電圧入力端子4VC2から、インダクタL21、分岐点NDおよび位相調整線路81を経由して、スイッチ電源電圧入力端子6VDに至る経路である。増幅器電源電圧入力端子4VC2から高調波信号伝送経路80に流れる高調波信号が高調波信号伝送経路80の始点で反射されることを防止するために、高調波信号伝送経路80の特性インピーダンスは、高周波モジュール2における主要な伝送線路の特性インピーダンスと等しいか、それに近い値であることが好ましい。例えば、高周波モジュール2における主要な伝送線路の特性インピーダンスが50Ωである場合、高調波信号伝送経路80の特性インピーダンスは、50Ωであるか、50Ωに近い値であることが好ましい。
次に、本実施の形態に係る高周波モジュール2の主要な作用について説明する。送信信号の送信時には、スイッチ回路14のポート14cはポート14aに接続される。この場合、RFICより出力された平衡信号の形態の送信信号は、一対の送信信号端子Tx1,Tx2を通過してBPF3に入力され、BPF3によって不平衡信号の形態の送信信号に変換される。この不平衡信号の形態の送信信号は、伝送線路71を通過し、電力増幅器4によって増幅され、LPF5、スイッチ6およびアンテナ端子ANTを順に通過してアンテナ1に供給され、このアンテナ1より送信される。
受信信号の受信時には、スイッチ回路14のポート14cはポート14bに接続される。この場合、アンテナ1によって受信された受信信号は、アンテナ端子ANT、スイッチ6および受信信号端子Rxを順に通過してRFICに入力される。
次に、図2に示した回路構成に対応した高周波モジュール2の構造について説明する。図3は、高周波モジュール2の平面図である。図3に示したように、高周波モジュール2は、高周波モジュール2の各要素を一体化する積層基板20を備えている。後で詳しく説明するが、積層基板20は、積層された複数の誘電体層を含んでいる。また、積層基板20は、上面20aと底面と4つの側面とを有し、直方体形状をなしている。
高周波モジュール2における回路は、積層基板20内に設けられた導体層と、上記誘電体層と、積層基板20の上面20aに搭載された素子とを用いて構成されている。上面20aには、電力増幅器4、スイッチ6、キャパシタC21,C22,C23およびインダクタL21が搭載されている。電力増幅器4およびスイッチ6は、それぞれベアチップの形態の半導体ICになっている。後で説明するが、積層基板20の底面には、高周波モジュール2の複数の端子が配置されている。
電力増幅器4は、積層基板20の上面20aに対向する底面と、その反対側の上面とを有している。電力増幅器4の上面には、端子4a,4b,4VC1,4VC2,4VE,4VTが配置されている。電力増幅器4の底面には、グランド電極4Gが配置されている。
スイッチ6は、積層基板20の上面20aに対向する底面と、その反対側の上面とを有している。スイッチ6の上面には、端子6a,6b,6c,6VD,6V1が配置されている。
電力増幅器4およびスイッチ6の各端子は、それぞれ、ワイヤーボンディングによって、積層基板20の上面20aに形成された対応する導体層に接続されている。図示しないが、積層基板20の上面20aと、上面20aに搭載された全ての要素は、樹脂によってモールドされている。
次に、図4ないし図14を参照して、積層基板20における誘電体層と導体層について詳しく説明する。図4において(a)、(b)は、それぞれ上から1層目、2層目の誘電体層の上面を示している。図5において(a)、(b)は、それぞれ上から3層目、4層目の誘電体層の上面を示している。図6において(a)、(b)は、それぞれ上から5層目、6層目の誘電体層の上面を示している。図7において(a)、(b)は、それぞれ上から7層目、8層目の誘電体層の上面を示している。図8において(a)、(b)は、それぞれ上から9層目、10層目の誘電体層の上面を示している。図9において(a)、(b)は、それぞれ上から11層目、12層目の誘電体層の上面を示している。図10において(a)、(b)は、それぞれ上から13層目、14層目の誘電体層の上面を示している。図11において(a)、(b)は、それぞれ上から15層目、16層目の誘電体層の上面を示している。図12において(a)、(b)は、それぞれ上から17層目、18層目の誘電体層の上面を示している。図13において(a)、(b)は、それぞれ上から19層目、20層目の誘電体層の上面を示している。図14は、上から20層目の誘電体層およびその下の導体層を、上から見た状態で表したものである。図4ないし図14において、丸印はスルーホールを表している。
図4(a)に示した1層目の誘電体層21の上面には、インダクタL21が接続される導体層212A,212Bと、キャパシタC21が接続される導体層212C,212Dと、キャパシタC22が接続される導体層212E,212Fと、キャパシタC23が接続される導体層212H,212Iが形成されている。誘電体層21の上面には、更に、それぞれワイヤーボンディングによって、電力増幅器4の端子4a,4b,4VC1,4VC2,4VE,4VTが接続される導体層214A,214B,21VC1,21VC2,21VE,21VTが形成されている。誘電体層21の上面には、更に、それぞれワイヤーボンディングによって、スイッチ6の端子6a,6b,6c,6VD,6V1が接続される導体層216A,216B,216C,21VD,21V1が形成されている。誘電体層21の上面には、更に、グランドに接続される導体層21G1,21G2が形成されている。電力増幅器4は導体層21G1に接合され、スイッチ6は導体層21G2に接合される。電力増幅器4のグランド電極4Gは導体層21G1に接続される。また、誘電体層21には、各導体層に接続された複数のスルーホールが形成されている。
図4(b)に示した2層目の誘電体層22の上面には、導体層221,222,223,224,225,226,227,228,229が形成されている。導体層221には、誘電体層21に形成された2つのスルーホールを介して導体層21VD,212Iが接続されている。導体層222には、誘電体層21に形成されたスルーホールを介して導体層216Aが接続されている。導体層223には、誘電体層21に形成されたスルーホールを介して導体層214Bが接続されている。導体層224には、誘電体層21に形成された2つのスルーホールを介して導体層212A,212Fが接続されている。導体層225には、誘電体層21に形成された2つのスルーホールを介して導体層21VC2,212Bが接続されている。導体層226には、誘電体層21に形成された2つのスルーホールを介して導体層21VC1,212Cが接続されている。導体層227には、誘電体層21に形成されたスルーホールを介して導体層212Dが接続されている。導体層228には、誘電体層21に形成されたスルーホールを介して導体層214Aが接続されている。導体層229には、誘電体層21に形成されたスルーホールを介して導体層216Bが接続されている。また、誘電体層22には、それぞれ導体層221,222,223,224,226,227,228,229に接続された8つのスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図5(a)に示した3層目の誘電体層23の上面には、導体層231,232,233が形成されている。導体層231には、誘電体層21,22に形成されたスルーホールを介して導体層21VTが接続されている。導体層232には、誘電体層21,22に形成されたスルーホールを介して導体層212C,226が接続されていると共に、誘電体層22に形成されたスルーホールを介して導体層224が接続されている。導体層233には、誘電体層21,22に形成されたスルーホールを介して導体層21VEが接続されている。また、誘電体層23には、それぞれ導体層231,232,233に接続された3つのスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図5(b)に示した4層目の誘電体層24の上面には、導体層として、グランド層241が形成されている。また、誘電体層24には、グランド層241に接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図6(a)に示した5層目の誘電体層25の上面には、BPF用導体層251,252が形成されている。また、誘電体層25には、それぞれ導体層251,252に接続された2つのスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図6(b)に示した6層目の誘電体層26の上面には、BPF用導体層261,262が形成されている。また、誘電体層26には、導体層261に接続された2つのスルーホールと、導体層262に接続されたスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図7(a)に示した7層目の誘電体層27の上面には、BPF用導体層271,272,273,274と、導体層275とが形成されている。導体層271には、誘電体層26に形成されたスルーホールを介して導体層261が接続されている。導体層272には、誘電体層25,26に形成されたスルーホールを介して導体層251が接続されている。導体層273には、誘電体層25,26に形成されたスルーホールを介して導体層252が接続されている。導体層274には、誘電体層26に形成されたスルーホールを介して導体層262が接続されている。導体層275には、誘電体層26に形成されたスルーホールを介して導体層261が接続されていると共に、誘電体層22〜26に形成されたスルーホールを介して導体層228が接続されている。また、誘電体層27には、導体層271に接続された2つのスルーホールと、導体層272に接続されたスルーホールと、導体層273に接続されたスルーホールと、導体層274に接続された2つのスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図7(b)に示した8層目の誘電体層28の上面には、BPF用導体層281,282が形成されている。導体層281には、誘電体層27に形成されたスルーホールを介して導体層271が接続されている。導体層282には、誘電体層27に形成されたスルーホールを介して導体層274が接続されている。また、誘電体層28には、複数のスルーホールが形成されている。
図8(a)に示した9層目の誘電体層29の上面には、BPF用導体層291,292,293,294と、LPF用導体層295,296とが形成されている。導体層291には、誘電体層26〜28に形成されたスルーホールを介して導体層261,271が接続されている。導体層292には、誘電体層25〜28に形成されたスルーホールを介して導体層251,272が接続されている。導体層293には、誘電体層25〜28に形成されたスルーホールを介して導体層252,273が接続されている。導体層294には、誘電体層26〜28に形成されたスルーホールを介して導体層262,274が接続されている。導体層295には、誘電体層22〜28に形成されたスルーホールを介して導体層223が接続されている。また、誘電体層29には、それぞれ導体層291,292,293,294に接続された4つのスルーホールと、導体層295に接続された2つのスルーホールと、導体層296に接続された2つのスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図8(b)に示した10層目の誘電体層30の上面には、BPF用導体層301と、LPF用導体層302と、導体層303とが形成されている。導体層302には、誘電体層29に形成されたスルーホールを介して導体層295が接続されている。導体層303には、誘電体層24〜29に形成されたスルーホールを介してグランド層241が接続されている。また、誘電体層30には、導体層302に接続されたスルーホールと、導体層303に接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図9(a)に示した11層目の誘電体層31には、それぞれ導体層よりなる共振器L31,L32,L33,L34と、導体層311,312が形成されている。共振器L31は開放端L31aと短絡端L31bとを有している。共振器L32は開放端L32aと短絡端L32bとを有している。共振器L33は開放端L33aと短絡端L33bとを有している。共振器L34は開放端L34aと短絡端L34bとを有している。
共振器L31と共振器L32は、開放端L31a,L32a同士が近接し、短絡端L31b,L32b同士が近接するように隣接している。従って、共振器L31,L32における開放端と短絡端との位置関係は同じであり、共振器L31,L32はコムライン結合する。
共振器L32と共振器L33は、開放端L32a,L33a同士が近接し、短絡端L32b,L33b同士が近接するように隣接している。従って、共振器L32,L33における開放端と短絡端との位置関係は同じであり、共振器L32,L33はコムライン結合する。
共振器L33と共振器L34は、開放端L33a,L34a同士が近接し、短絡端L33b,L34b同士が近接するように隣接している。従って、共振器L33,L34における開放端と短絡端との位置関係は同じであり、共振器L33,L34はコムライン結合する。
共振器L31の開放端L31aには、誘電体層26〜30に形成されたスルーホールを介して導体層262,294が接続されている。共振器L32の開放端L32aには、誘電体層25〜30に形成されたスルーホールを介して導体層252,293が接続されている。共振器L33の開放端L33aには、誘電体層25〜30に形成されたスルーホールを介して導体層251,292が接続されている。共振器L34の開放端L34aには、誘電体層26〜30に形成されたスルーホールを介して導体層261,291が接続されている。共振器L31,L32,L33,L34の各短絡端L31b,L32b,L33b,L34bには、誘電体層24〜30に形成されたスルーホールを介してグランド層241が接続されている。導体層311は、共振器L32の短絡端L32bと共振器L33の短絡端L33bとを接続する。導体層312は、共振器L31に接続されている。導体層312は、図2における入力ポート3aに相当する。
また、誘電体層31には、それぞれ共振器L31,L32,L33,L34の各短絡端に接続された4つのスルーホールと、導体層312に接続されたスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図9(b)に示した12層目の誘電体層32には、それぞれ導体層よりなる共振器L35,L36,L37,L38と、導体層321,322,323,324,325が形成されている。共振器L35は開放端L35aと短絡端L35bとを有している。共振器L36は開放端L36aと短絡端L36bとを有している。共振器L37は開放端L37aと短絡端L37bとを有している。共振器L38は開放端L38aと短絡端L38bとを有している。
共振器L35と共振器L36は、開放端L35a,L36a同士が近接し、短絡端L35b,L36b同士が近接するように隣接している。従って、共振器L35,L36における開放端と短絡端との位置関係は同じであり、共振器L35,L36はコムライン結合する。
共振器L36と共振器L37は、開放端L36a,L37a同士が近接し、短絡端L36b,L37b同士が近接するように隣接している。従って、共振器L36,L37における開放端と短絡端との位置関係は同じであり、共振器L36,L37はコムライン結合する。
共振器L37と共振器L38は、開放端L37a,L38a同士が近接し、短絡端L37b,L38b同士が近接するように隣接している。従って、共振器L37,L38における開放端と短絡端との位置関係は同じであり、共振器L37,L38はコムライン結合する。
共振器L31と共振器L35は、開放端L31aと短絡端L35bが近接し、短絡端L31bと開放端L35aが近接するように、誘電体層31を介して対向している。従って、共振器L31,L35における開放端と短絡端の位置関係は互いに反対であり、共振器L31,L35はインターディジタル結合する。
共振器L32と共振器L36は、開放端L32aと短絡端L36bが近接し、短絡端L32bと開放端L36aが近接するように、誘電体層31を介して対向している。従って、共振器L32,L36における開放端と短絡端の位置関係は互いに反対であり、共振器L32,L36はインターディジタル結合する。
共振器L33と共振器L37は、開放端L33aと短絡端L37bが近接し、短絡端L33bと開放端L37aが近接するように、誘電体層31を介して対向している。従って、共振器L33,L37における開放端と短絡端の位置関係は互いに反対であり、共振器L33,L37はインターディジタル結合する。
共振器L34と共振器L38は、開放端L34aと短絡端L38bが近接し、短絡端L34bと開放端L38aが近接するように、誘電体層31を介して対向している。従って、共振器L34,L38における開放端と短絡端の位置関係は互いに反対であり、共振器L34,L38はインターディジタル結合する。
共振器L35,L36,L37,L38の各短絡端L35b,L36b,L37b,L38bには、誘電体層24〜31に形成されたスルーホールを介してグランド層241および導体層303が接続されている。導体層321は、共振器L36の短絡端L36bと共振器L37の短絡端L37bとを接続する。導体層322は、共振器L35に接続されている。導体層322は、図2における入力ポート3bに相当する。
導体層323には、誘電体層21〜31に形成されたスルーホールを介して導体層216Cが接続されている。導体層324には、誘電体層29〜31に形成されたスルーホールを介して導体層296が接続されている。導体層325には、誘電体層29〜31に形成されたスルーホールを介して導体層296が接続されている。
また、誘電体層32には、それぞれ共振器L35,L36,L37,L38の各開放端および各短絡端に接続された8つのスルーホールと、それぞれ導体層322,323,324,325に接続された4つのスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図10(a)に示した13層目の誘電体層33の上面には、BPF用導体層331が形成されている。また、誘電体層33には、複数のスルーホールが形成されている。
図10(b)に示した14層目の誘電体層34の上面には、BPF用導体層341,342,343,344が形成されている。導体層341には、誘電体層32,33に形成されたスルーホールを介して共振器L38の開放端L38aが接続されている。導体層342には、誘電体層32,33に形成されたスルーホールを介して共振器L37の開放端L37aが接続されている。導体層343には、誘電体層32,33に形成されたスルーホールを介して共振器L36の開放端L36aが接続されている。導体層344には、誘電体層32,33に形成されたスルーホールを介して共振器L35の開放端L35aが接続されている。また、誘電体層34には、それぞれ導体層341,342,343,344に接続された4つのスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図11(a)に示した15層目の誘電体層35の上面には、BPF用導体層351,352が形成されている。また、誘電体層35には、それぞれ導体層351,352に接続された2つのスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図11(b)に示した16層目の誘電体層36の上面には、BPF用導体層361,3
62,363,364と、LPF用導体層365,366とが形成されている。導体層361には、誘電体層32〜35に形成されたスルーホールを介して共振器L38の開放端L38aおよび導体層341が接続されていると共に、誘電体層35に形成されたスルーホールを介して導体層351が接続されている。導体層362には、誘電体層32〜35に形成されたスルーホールを介して共振器L37の開放端L37aおよび導体層342が接続されている。導体層363には、誘電体層32〜35に形成されたスルーホールを介して共振器L36の開放端L36aおよび導体層343が接続されている。導体層364には、誘電体層32〜35に形成されたスルーホールを介して共振器L35の開放端L35aおよび導体層344が接続されていると共に、誘電体層35に形成されたスルーホールを介して導体層352が接続されている。導体層365には、誘電体層29〜35に形成されたスルーホールを介して導体層295が接続されている。導体層366には、誘電体層32〜35に形成されたスルーホールを介して導体層325が接続されている。また、誘電体層35には、それぞれ導体層361,362,363,364,365,366に接続された6つのスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図12(a)に示した17層目の誘電体層37の上面には、BPF用導体層371,372と、LPF用導体層373とが形成されている。導体層371には、誘電体層32〜36に形成されたスルーホールを介して共振器L38の開放端L38aおよび導体層341,361が接続されている。導体層372には、誘電体層32〜36に形成されたスルーホールを介して共振器L35の開放端L35aおよび導体層344,364が接続されている。導体層373には、誘電体層30〜36に形成されたスルーホールを介して導体層302が接続されていると共に、誘電体層32〜36に形成されたスルーホールを介して導体層324が接続されている。また、誘電体層37には、複数のスルーホールが形成されている。
図12(b)に示した18層目の誘電体層38の上面には、BPF用導体層381,382と、LPF用導体層383,384と、導体層385とが形成されている。導体層381には、誘電体層32〜37に形成されたスルーホールを介して共振器L37の開放端L37aおよび導体層342,362が接続されている。導体層382には、誘電体層32〜37に形成されたスルーホールを介して共振器L36の開放端L36aおよび導体層343,363が接続されている。導体層383には、誘電体層29〜37に形成されたスルーホールを介して導体層295,365が接続されている。導体層384には、誘電体層22〜37に形成されたスルーホールを介して導体層222が接続されていると共に、誘電体層32〜37に形成されたスルーホールを介して導体層325,366が接続されている。導体層385には、誘電体層23〜37に形成されたスルーホールを介して導体層233が接続されている。また、誘電体層38には、導体層385に接続されたスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図13(a)に示した19層目の誘電体層39の上面には、導体層として、グランド層391が形成されている。グランド層391には、誘電体層24〜38に形成されたスルーホールを介してグランド層241と、共振器L31,L32,L33,L34,L35,L36,L37,L38の各短絡端L31b,L32b,L33b,L34b,L35b,L36b,L37b,L38bと、導体層303が接続されている。また、誘電体層39には、グランド層391に接続された複数のスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
図13(b)に示した20層目の誘電体層40の上面には、導体層401,402,403が形成されている。また、誘電体層40には、導体層401に接続されたスルーホール401Hと、導体層402に接続されたスルーホールと、導体層403に接続されたスルーホールと、その他の複数のスルーホールが形成されている。
導体層401は、スルーホール401Hに接続された位置から一方の端部まで延びるミアンダ形状の位相調整部分401aと、スルーホール401Hに接続された位置から他方の端部まで延びる線路部分401bとを有している。位相調整部分401aにおけるスルーホール401Hに接続された位置とは反対側の端部401a1には、誘電体層21〜39に形成されたスルーホールを介して導体層212I,221が接続されている。線路部分401bにおけるスルーホール401Hに接続された位置とは反対側の端部401b1には、誘電体層22〜39に形成されたスルーホールを介して導体層224,232が接続されている。
導体層402には、誘電体層23〜39に形成されたスルーホールを介して導体層231が接続されている。導体層403には、誘電体層38,39に形成されたスルーホールを介して導体層385が接続されている。
図14に示したように、誘電体層40の下面、すなわち積層基板20の底面には、前述の各端子ANT,Tx1,Tx2,Rx,Vcc,Ve,Vdet,V1と、8つのグランド端子G1,G2,G3,G4,G5,G6,G7,G8と、グランド用導体層G9とが配置されている。積層基板20の底面において、複数の端子は底面の辺の近傍に配置されている。グランド用導体層G9は、底面において、複数の端子に囲まれた広い領域に配置されている。
上述の1層目ないし20層目の誘電体層21〜40および導体層が積層されて、図3に示した積層基板20が形成される。この積層基板20の上面20aには、電力増幅器4、スイッチ6、インダクタL21およびキャパシタC21,C22,C23が搭載される。電力増幅器4およびスイッチ6の各端子は、以下のように、ワイヤーボンディングによって積層基板20の上面20aに形成された対応する導体層に接続される。すなわち、電力増幅器4の端子4a,4b,4VC1,4VC2,4VE,4VTは、それぞれ、導体層214A,214B,21VC1,21VC2,21VE,21VTに接続される。スイッチ6の端子6a,6b,6c,6VD,6V1は、それぞれ、導体層216A,216B,216C,21VD,21V1に接続される。インダクタL21の一端は導体層212Aに接続され、インダクタL21の他端は導体層212Bに接続されている。キャパシタC21の一端は導体層212Cに接続され、キャパシタC21の他端は導体層212Dに接続されている。キャパシタC22の一端は導体層212Eに接続され、キャパシタC22の他端は導体層212Fに接続されている。キャパシタC23の一端は導体層212Hに接続され、キャパシタC23の他端は導体層212Iに接続されている。積層基板20の上面20aと、上面20aに搭載された全ての要素は、樹脂によってモールドされる。
BPF3およびLPF5は、積層基板20内に設けられた複数の導体層を用いて構成されている。なお、本実施の形態において、積層基板20としては、誘電体層の材料として樹脂、セラミック、あるいは両者を複合した材料を用いたもの等、種々のものを用いることができる。しかし、積層基板20としては、特に、高周波特性に優れた低温同時焼成セラミック多層基板を用いることが好ましい。高周波モジュール2は、積層基板20の底面が下を向くように、実装用基板に実装される。このとき、底面に設けられた複数の端子およびグランド用導体層G9は、実装用基板における対応する端子およびグランド層に接続される。
アンテナ端子ANTには、誘電体層21〜40に形成されたスルーホールと導体層323を介して導体層216Cが接続されている。送信信号端子Tx1には、誘電体層31〜40に形成されたスルーホールと導体層312を介して共振器L31が接続されている。送信信号端子Tx2には、誘電体層32〜40に形成されたスルーホールと導体層322を介して共振器L35が接続されている。受信信号端子Rxには、誘電体層21〜40に形成されたスルーホールと導体層229を介して導体層216Bが接続されている。
電源端子Vccには、誘電体層40に形成されたスルーホール401Hを介して導体層401が接続されている。導体層21VC1は、誘電体層21〜39に形成されたスルーホールと導体層226,232を介して導体層401の線路部分401bの端部401b1に接続されている。導体層21VC2は、誘電体層21に形成されたスルーホールと導体層212B,225を介してインダクタL21の一端に接続されている。インダクタL21の他端は、誘電体層21〜29に形成されたスルーホールと導体層212A,224,232を介して導体層401の線路部分401bの端部401b1に接続されている。導体層21VDは、誘電体層21〜39に形成されたスルーホールと導体層221を介して導体層401の位相調整部分401aの端部401a1に接続されている。
制御端子Veには、誘電体層21〜40に形成されたスルーホールと導体層233,385,403を介して導体層21VEが接続されている。出力電力検出端子Vdetは、誘電体層21〜40に形成されたスルーホールと導体層231,402を介して導体層21VTに接続されている。制御端子V1には、誘電体層21〜40に形成されたスルーホールを介して導体層21V1が接続されている。
グランド端子G1〜G8およびグランド用導体層G9には、誘電体層39,40に形成された複数のスルーホールを介してグランド層391が接続されている。また、グランド端子G1〜G8およびグランド用導体層G9は、実装用基板のグランド層に接続されることによって、グランドに接続される。
図2に示したBPF3は、共振器L31,L32,L33,L34,L35,L36,L37,L38と、導体層251,252,261,262,271〜274,281,282,291〜294,301,311,312,321,322,331,341〜344,351,352,361〜364,371,372,381,382と、グランド層241,391と、誘電体層24〜38と、誘電体層24〜38に形成された複数のスルーホールとによって構成されている。
導体層262、グランド層241およびこれらの間に配置された誘電体層24,25は、キャパシタC31を構成する。導体層252、グランド層241およびこれらの間に配置された誘電体層24は、キャパシタC32を構成する。導体層251、グランド層241およびこれらの間に配置された誘電体層24は、キャパシタC33を構成する。導体層261、グランド層241およびこれらの間に配置された誘電体層24,25は、キャパシタC34を構成する。
導体層273,282およびこれらの間に配置された誘電体層27、ならびに、導体層282,293およびこれらの間に配置された誘電体層28は、キャパシタC71を構成する。導体層292,293,301およびこれらの間に配置された誘電体層29は、キャパシタC72を構成する。導体層272,281およびこれらの間に配置された誘電体層27、ならびに、導体層281,292およびこれらの間に配置された誘電体層28は、キャパシタC73を構成する。導体層291,294,301およびこれらの間に配置された誘電体層29は、キャパシタC74を構成する。
導体層372、グランド層391およびこれらの間に配置された誘電体層37,38は、キャパシタC35を構成する。導体層382、グランド層391およびこれらの間に配置された誘電体層38は、キャパシタC36を構成する。導体層381、グランド層391およびこれらの間に配置された誘電体層38は、キャパシタC37を構成する。導体層371、グランド層391およびこれらの間に配置された誘電体層37,38は、キャパシタC38を構成する。
導体層343,352およびこれらの間に配置された誘電体層34、ならびに、導体層352,363およびこれらの間に配置された誘電体層35は、キャパシタC75を構成する。導体層331,342,343およびこれらの間に配置された誘電体層33は、キャパシタC76を構成する。導体層342,351およびこれらの間に配置された誘電体層34、ならびに、導体層351,362およびこれらの間に配置された誘電体層35は、キャパシタC77を構成する。導体層331,341,344およびこれらの間に配置された誘電体層33は、キャパシタC78を構成する。
図2に示したLPF5は、導体層295,296,302,324,325,365,366,373,383,384と、グランド層391と、誘電体層29〜38と、誘電体層29〜38に形成された複数のスルーホールとによって構成されている。
導体層295,302と、これらを接続するスルーホールは、インダクタL51を形成する。導体層296は、インダクタL52を形成する。導体層383、グランド層391およびこれらの間に配置された誘電体層38は、キャパシタC51を構成する。導体層373、グランド層391およびこれらの間に配置された誘電体層37,38は、キャパシタC52を構成する。導体層384、グランド層391およびこれらの間に配置された誘電体層38は、キャパシタC53を構成する。導体層365,373およびこれらの間に配置された誘電体層36は、キャパシタC54を構成する。導体層366,373およびこれらの間に配置された誘電体層36は、キャパシタC55を構成する。
図2に示した伝送線路71は、導体層275によって構成されている。導体層275の一端は、複数のスルーホールを介して、共振器L34の開放端L34a、キャパシタC34の一部を構成する導体層261、キャパシタC73の一部を構成する導体層281およびキャパシタC74を構成する導体層291に接続されている。導体層275の他端は、導体層228および複数のスルーホールを介して導体層214Aに接続されている。
導体層401は、図1および図2に示した高調波信号伝送経路80の一部を構成している。導体層401の位相調整部分401aは、図2に示した位相調整線路81を構成している。導体層401の線路部分401bの端部401b1は、導体層226,232および複数のスルーホールを介して導体層21VC1に接続されていると共に、導体層212A,224およびスルーホールを介してインダクタL21に接続されている。導体層401の位相調整部分401aの端部401a1は、導体層221および複数のスルーホールを介して導体層21VDに接続されている。導体層401は、更に、誘電体層40に形成されたスルーホール401Hを介して端子Vccに接続されている。スルーホール401Hは、図1および図2に示した分岐点NDに対応する。
次に、比較例の高周波モジュールと比較しながら、高調波信号伝送経路80に関わる高周波モジュール2の作用および効果について詳しく説明する。始めに、図15を参照して、比較例の高周波モジュールについて説明する。比較例の高周波モジュールは、高調波信号伝送経路80を備えておらず、電源端子Vccとは別に、電源電圧が入力される電源端子Vddを備えている。この比較例の高周波モジュールでは、電力増幅器4の増幅器電源電圧入力端子4VC1,4VC2(4VC)は電源端子Vccに接続され、スイッチ6のスイッチ電源電圧入力端子6VDは電源端子Vddに接続されている。比較例の高周波モジュールのその他の構成は、本実施の形態に係る高周波モジュール2と同様である。
比較例の高周波モジュールでは、送信時に、電力増幅器4とスイッチ回路14がそれぞれ、送信信号に対する高調波信号を発生する。電力増幅器4によって発生されてLPF5に向かう高調波信号は、LPF5によって減衰させることができる。しかし、比較例の高周波モジュールでは、スイッチ回路14によって発生されてアンテナ1に向かう高調波信号を減衰させることができない。
次に、図16を参照して、本実施の形態に係る高周波モジュール2における高調波信号低減の原理について説明する。比較例の高周波モジュールと同様に、本実施の形態に係る高周波モジュール2においても、送信時には、電力増幅器4とスイッチ回路14がそれぞれ、送信信号に対する高調波信号を発生する。図16において、記号Hpは電力増幅器4によって発生された高調波信号を表し、記号Hsはスイッチ回路14によって発生された高調波信号を表している。高周波モジュール2では、電力増幅器4によって発生されてLPF5に向かう高調波信号は、LPF5によって減衰させることができる。本実施の形態では、更に、以下の原理により、スイッチ回路14によって発生されてアンテナ1に向かう高調波信号も減衰させることができる。その結果、本実施の形態によれば、スイッチ6から外部に放出される高調波信号を低減することが可能になり、その結果、アンテナ1から放出される高調波信号を低減することが可能になる。
本実施の形態では、電力増幅器4によって発生された高調波信号は、電力増幅器4の信号出力端子4bから増幅器電源電圧入力端子4VC2に漏れる。この増幅器電源電圧入力端子4VC2に漏れる高調波信号は、高調波信号伝送経路80によって、スイッチ6のスイッチ電源電圧入力端子6VDに伝送される。スイッチ電源電圧入力端子6VDに伝送された高調波信号は、復号器13を構成する半導体素子およびスイッチ回路14を構成する半導体素子を通過して、スイッチ回路14の各ポート14a,14b,14cに漏れる。ここで、高調波信号伝送経路80を経由してスイッチ電源電圧入力端子6VDに伝送された高調波信号がポート14cに漏れることによってポート14cに現れる高調波信号を電力増幅器起因の高調波信号と呼ぶ。
一方、スイッチ回路14によって発生される高調波信号は、スイッチ回路14の各ポート14a,14b,14cに現れる。ここで、スイッチ回路14によって発生されてポート14cに現れる高調波信号をスイッチ起因の高調波信号と呼ぶ。ポート14cからは、電力増幅器起因の高調波信号とスイッチ起因の高調波信号とが合成されて形成された高調波信号(以下、合成高調波信号と呼ぶ。)が出力される。
本実施の形態によれば、電力増幅器起因の高調波信号の位相と強度を調整することにより、合成高調波信号の強度をスイッチ起因の高調波信号の強度よりも小さくすることが可能になる。特に、電力増幅器起因の高調波信号の位相がスイッチ起因の高調波信号の位相と180°異なり、電力増幅器起因の高調波信号の強度がスイッチ起因の高調波信号の強度と等しい場合には、合成高調波信号の強度はゼロになる。電力増幅器起因の高調波信号の強度がスイッチ起因の高調波信号の強度と異なる場合には、電力増幅器起因の高調波信号の位相がスイッチ起因の高調波信号の位相と180°異なる場合に、合成高調波信号の強度は最も小さくなる。本実施の形態では、位相調整線路81の長さを調整することによって高調波信号伝送経路80の長さを調整でき、これにより、電力増幅器起因の高調波信号の位相を調整することができる。本実施の形態では、位相調整線路81の長さを調整することによって、電力増幅器起因の高調波信号の位相をスイッチ起因の高調波信号の位相と180°異ならせることが好ましい。なお、電力増幅器起因の高調波信号とスイッチ起因の高調波信号の位相差は、180°であることが理想的であるが、180°に近い値でもよい。送信信号の周波数が所定の周波数帯内における複数の値をとり得る場合には、所定の周波数帯内の1つの周波数の信号に対する高調波信号に関して、電力増幅器起因の高調波信号の位相をスイッチ起因の高調波信号の位相と180°異ならせるようにしてもよい。
電力増幅器起因の高調波信号とスイッチ起因の高調波信号の位相差が180°である場合には、電力増幅器起因の高調波信号の強度がスイッチ起因の高調波信号の強度に近いほど合成高調波信号の強度が小さくなる。電力増幅器起因の高調波信号の強度は、インダクタL21およびキャパシタC21,C22,C23の各値を調整することによって調整することが可能である。従って、本実施の形態では、電力増幅器4の動作が不安定にならない範囲で、インダクタL21およびキャパシタC21,C22,C23の各値を調整することによって、電力増幅器起因の高調波信号の強度がスイッチ起因の高調波信号の強度に近づけることが好ましい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、スイッチ回路14によって発生されてアンテナ1に向かう高調波信号を減衰させることができる。また、本実施の形態では、電力増幅器4の出力信号の経路中に、高調波信号の位相を調整するための余分な線路を設ける必要はない。従って、本実施の形態によれば、電力増幅器4の出力信号の経路の挿入損失を増加させることなく、スイッチ6から外部に放出される高調波信号を低減することが可能になり、その結果、アンテナ1から放出される高調波信号を低減することが可能になる。
また、本実施の形態によれば、増幅器電源電圧入力端子4VCとスイッチ電源電圧入力端子6VDが共に電源端子Vccに接続されることから、高周波モジュール2に、電力増幅器4用の電源端子とスイッチ6用の電源端子とを設ける場合に比べて、電源端子の数を少なくすることができる。これにより、本実施の形態によれば、高周波モジュール2を小型化することができる。
また、本実施の形態に係る高周波モジュール2では、電力増幅器4およびスイッチ6は積層基板20に搭載され、高調波信号伝送経路80は積層基板20の内部に配置されている。また、高周波モジュール2は、積層基板20の内部に配置された回路として、BPF3およびLPF5を備えている。積層基板20は、積層基板20の内部に配置された回路(BPF3およびLPF5)と高調波信号伝送経路80の一部を構成する導体層401との間に配置されてグランドに接続される導体層であるグランド層391を含んでいる。本実施の形態によれば、グランド層391によって、積層基板20の内部に配置された回路(BPF3およびLPF5)と導体層401とを高周波的に分離することができる。これにより、導体層401によって伝送される高調波信号が積層基板20の内部に配置された回路に影響を与えて、積層基板20の内部に配置された回路の特性が劣化することを防止することができる。
なお、本実施の形態において、スイッチ起因の高調波信号の強度が、電力増幅器起因の高調波信号の強度に比べて大きすぎる場合には、高調波信号伝送経路80を利用した本実施の形態における高調波信号の低減方法と、他の方法とを併用して、アンテナ1から放出される高調波信号を低減してもよい。併用可能な他の方法としては、例えば、LPF5の出力端とスイッチ6の端子6aとの間の信号伝送線路の長さを調整することによって、スイッチ回路14で発生され、LPF5で反射され、スイッチ回路14を通過してアンテナ1に向かう高調波信号と、スイッチ回路14で発生されて直接アンテナ1に向かう高調波信号とが合成されて形成されるスイッチ起因の高調波信号の強度を低減する方法がある。この方法のみによってアンテナ1から放出される高調波信号を低減しようとすると、LPF5の出力端とスイッチ6の端子6aとの間の信号伝送線路の長さが所定の長さに制約されて、その結果、送信信号の経路の挿入損失を増加させてしまうおそれがある。しかし、本実施の形態における高調波信号の低減方法と、LPF5の出力端とスイッチ6の端子6aとの間の信号伝送線路の長さを調整する方法を併用する場合には、信号伝送線路の長さを調整することによってスイッチ起因の高調波信号の強度をある程度低減させればよいことから、信号伝送線路の長さの設定の自由度が増す。そのため、この場合には、送信信号の経路の挿入損失の増加を抑制しながら、アンテナ1から放出される高調波信号を低減することが可能である。
[第2の実施の形態]
次に、図17を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る高周波モジュールについて説明する。図17は、本実施の形態に係る高周波モジュール102の回路構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る高周波モジュール102は、第1の実施の形態における位相調整線路81の代りに位相調整線路82,83を備えている。位相調整線路82は、高調波信号伝送経路80のうち、図2に示したインダクタ21およびキャパシタC21,C22の接続点と分岐点NDとの間の部分に挿入されている。位相調整線路83は、高調波信号伝送経路80のうち、分岐点NDとスイッチ電源電圧入力端子6VDとの間の部分に挿入されている。位相調整線路82,83は、それぞれ、第1の実施の形態における位相調整線路81と同様に、積層基板20内に設けられた導体層を用いて構成することができる。また、位相調整線路82,83は、例えば、位相調整線路81と同様にミアンダ形状とすることができる。
本実施の形態では、位相調整線路82,83の長さを調整することによって高調波信号伝送経路80の長さを調整でき、これにより、電力増幅器起因の高調波信号の位相を調整することができる。本実施の形態によれば、第1の実施の形態に比べて、電力増幅器起因の高調波信号の位相の調整が容易になる。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
[第3の実施の形態]
次に、図18を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る高周波モジュールについて説明する。図18は、本実施の形態に係る高周波モジュール112の回路構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る高周波モジュール112は、時分割複信方式の無線通信装置における高周波回路部の一部を構成し、互いに周波数帯の異なる第1および第2の送信信号を処理するものである。
本実施の形態の係る高周波モジュール112は、アンテナ端子ANTと、平衡信号の形態の第1の送信信号が入力される一対の送信信号端子Tx11,Tx12と、平衡信号の形態の第2の送信信号が入力される一対の送信信号端子Tx21,Tx22と、電源端子Vccと、スイッチ制御端子V1とを備えている。
高周波モジュール112は、更に、2つのBPF3A,3Bと、2つの電力増幅器4A,4Bと、2つのLPF5A,5Bと、3つの位相調整線路84A,84B,85とを備えている。位相調整線路84A,84B,85は、第1の実施の形態における位相調整線路81と同様に、積層基板20内に設けられた導体層を用いて構成することができる。また、位相調整線路84A,84B,85は、例えば、位相調整線路81と同様にミアンダ形状とすることができる。
BPF3Aは、一対の入力ポートと、出力ポートとを有している。BPF3Aの一対の入力ポートは、それぞれ送信信号出力端子Tx11,Tx12に接続されている。BPF3Aは、第1の送信信号の周波数帯に対応した通過帯域を有し、通過帯域内の周波数の信号を選択的に通過させる。電力増幅器4Aは、信号入力端子4Aaと、信号出力端子4Abと、増幅器電源電圧入力端子4AVCとを有している。信号入力端子4Aaは、BPF3Aの出力ポートに接続されている。信号出力端子4Abは、LPF5Aを介してスイッチ6の端子6aに接続されている。増幅器電源電圧入力端子4AVCは、位相調整線路84Aを介して電源端子Vccに接続されている。
BPF3Bは、一対の入力ポートと、出力ポートとを有している。BPF3Bの一対の入力ポートは、それぞれ送信信号出力端子Tx21,Tx22に接続されている。BPF3Bは、第2の送信信号の周波数帯に対応した通過帯域を有し、通過帯域内の周波数の信号を選択的に通過させる。電力増幅器4Bは、信号入力端子4Baと、信号出力端子4Bbと、増幅器電源電圧入力端子4BVCとを有している。信号入力端子4Baは、BPF3Bの出力ポートに接続されている。信号出力端子4Bbは、LPF5Bを介してスイッチ6の端子6bに接続されている。増幅器電源電圧入力端子4BVCは、位相調整線路84Bを介して電源端子Vccに接続されている。
BPF3A,3Bの構成は、例えば第1の実施の形態におけるBPF3と同様である。電力増幅器4A,4Bの構成は、例えば第1の実施の形態における電力増幅器4と同様である。電力増幅器4Aは本発明における電力増幅器に対応し、電力増幅器4Bは本発明における第2の電力増幅器に対応する。また、増幅器電源電圧入力端子4AVCは本発明における増幅器電源電圧入力端子に対応し、増幅器電源電圧入力端子4BVCは本発明における第2の増幅器電源電圧入力端子に対応する。LPF5A,5Bの構成は、例えば第1の実施の形態におけるLPF5と同様である。なお、LPF5A,5Bの代りに、それぞれBPFを設けてもよい。
本実施の形態では、スイッチ6のスイッチ電源電圧入力端子6VDは、位相調整線路85を介して電源端子Vccに接続されている。ここで、電源端子Vccから端子4AVCに至る線路と、電源端子Vccから端子6VDに至る線路との分岐点を記号ND1で表す。また、電源端子Vccから端子4BVCに至る線路と、電源端子Vccから端子6VDに至る線路との分岐点を記号ND2で表す。
本実施の形態に係る高周波モジュール112は、増幅器電源電圧入力端子4AVCとスイッチ電源電圧入力端子6VDが共に電源端子Vccに接続されることによって、増幅器電源電圧入力端子4AVCとスイッチ電源電圧入力端子6VDとの間に形成され、電力増幅器4Aによって発生されて増幅器電源電圧入力端子4AVCに漏れる高調波信号をスイッチ電源電圧入力端子6VDに伝送する第1の高調波信号伝送経路を備えている。この第1の高調波信号伝送経路は、増幅器電源電圧入力端子4AVCから、位相調整線路84A、分岐点ND1および位相調整線路85を経由して、スイッチ電源電圧入力端子6VDに至る経路である。増幅器電源電圧入力端子4AVCから第1の高調波信号伝送経路に流れる高調波信号が第1の高調波信号伝送経路の始点で反射されることを防止するために、第1の高調波信号伝送経路の特性インピーダンスは、高周波モジュール112における主要な伝送線路の特性インピーダンスと等しいか、それに近い値であることが好ましい。例えば、高周波モジュール112における主要な伝送線路の特性インピーダンスが50Ωである場合、第1の高調波信号伝送経路の特性インピーダンスは、50Ωであるか、50Ωに近い値であることが好ましい。第1の高調波信号伝送経路は、本発明における伝送経路に対応する。
また、本実施の形態に係る高周波モジュール112は、増幅器電源電圧入力端子4BVCとスイッチ電源電圧入力端子6VDが共に電源端子Vccに接続されることによって、増幅器電源電圧入力端子4BVCとスイッチ電源電圧入力端子6VDとの間に形成され、電力増幅器4Bによって発生されて増幅器電源電圧入力端子4BVCに漏れる高調波信号をスイッチ電源電圧入力端子6VDに伝送する第2の高調波信号伝送経路を備えている。この第2の高調波信号伝送経路は、増幅器電源電圧入力端子4BVCから、位相調整線路84B、分岐点ND2および位相調整線路85を経由して、スイッチ電源電圧入力端子6VDに至る経路である。増幅器電源電圧入力端子4BVCから第2の高調波信号伝送経路に流れる高調波信号が第2の高調波信号伝送経路の始点で反射されることを防止するために、第2の高調波信号伝送経路の特性インピーダンスは、高周波モジュール112における主要な伝送線路の特性インピーダンスと等しいか、それに近い値であることが好ましい。例えば、高周波モジュール112における主要な伝送線路の特性インピーダンスが50Ωである場合、第2の高調波信号伝送経路の特性インピーダンスは、50Ωであるか、50Ωに近い値であることが好ましい。第2の高調波信号伝送経路は、本発明における第2の伝送経路に対応する。
次に、本実施の形態に係る高周波モジュール112の作用および効果について説明する。第1の送信信号の送信時には、スイッチ回路14のポート14cはポート14aに接続される。この場合、RFICより出力された平衡信号の形態の第1の送信信号は、一対の第1の送信信号端子Tx11,Tx12を通過してBPF3Aに入力され、BPF3Aによって不平衡信号の形態の第1の送信信号に変換される。この不平衡信号の形態の第1の送信信号は、電力増幅器4Aによって増幅され、LPF5A、スイッチ6およびアンテナ端子ANTを順に通過してアンテナ1に供給され、このアンテナ1より送信される。
第1の送信信号の送信時には、電力増幅器4Aとスイッチ回路14がそれぞれ、第1の送信信号に対する高調波信号を発生する。電力増幅器4Aによって発生されてLPF5Aに向かう高調波信号は、LPF5Aによって減衰させることができる。電力増幅器4Aによって発生された高調波信号は、電力増幅器4Aの信号出力端子4Abから増幅器電源電圧入力端子4AVCに漏れる。この増幅器電源電圧入力端子4AVCに漏れる高調波信号は、第1の高調波信号伝送経路によって、スイッチ6のスイッチ電源電圧入力端子6VDに伝送される。スイッチ電源電圧入力端子6VDに伝送された高調波信号は、復号器13を構成する半導体素子およびスイッチ回路14を構成する半導体素子を通過して、スイッチ回路14の各ポート14a,14b,14cに漏れる。ここで、第1の高調波信号伝送経路を経由してスイッチ電源電圧入力端子6VDに伝送された高調波信号がポート14cに漏れることによってポート14cに現れる高調波信号を第1の電力増幅器起因の高調波信号と呼ぶ。
第1の送信信号の送信時にスイッチ回路14によって発生される高調波信号は、スイッチ回路14の各ポート14a,14b,14cに現れる。ここで、スイッチ回路14によって発生されてポート14cに現れる高調波信号を第1のスイッチ起因の高調波信号と呼ぶ。ポート14cからは、第1の電力増幅器起因の高調波信号と第1のスイッチ起因の高調波信号とが合成されて形成された高調波信号(以下、第1の合成高調波信号と呼ぶ。)が出力される。
本実施の形態では、第1の実施の形態において説明した高調波信号低減の原理により、第1の電力増幅器起因の高調波信号の位相と強度を調整することにより、第1の合成高調波信号の強度を第1のスイッチ起因の高調波信号の強度よりも小さくすることが可能である。本実施の形態では、位相調整線路84A,85の長さを調整することによって第1の高調波信号伝送経路の長さを調整でき、これにより、第1の電力増幅器起因の高調波信号の位相を調整することができる。本実施の形態では、位相調整線路84A,85の長さを調整することによって、第1の電力増幅器起因の高調波信号の位相を第1のスイッチ起因の高調波信号の位相と180°異ならせることが好ましい。
また、第2の送信信号の送信時には、スイッチ回路14のポート14cはポート14bに接続される。この場合、RFICより出力された平衡信号の形態の第2の送信信号は、一対の第2の送信信号端子Tx21,Tx22を通過してBPF3Bに入力され、BPF3Bによって不平衡信号の形態の第2の送信信号に変換される。この不平衡信号の形態の第2の送信信号は、電力増幅器4Bによって増幅され、LPF5B、スイッチ6およびアンテナ端子ANTを順に通過してアンテナ1に供給され、このアンテナ1より送信される。
第2の送信信号の送信時には、電力増幅器4Bとスイッチ回路14がそれぞれ、第2の送信信号に対する高調波信号を発生する。電力増幅器4Bによって発生されてLPF5Bに向かう高調波信号は、LPF5Bによって減衰させることができる。電力増幅器4Bによって発生された高調波信号は、電力増幅器4Bの信号出力端子4Bbから増幅器電源電圧入力端子4BVCに漏れる。この増幅器電源電圧入力端子4BVCに漏れる高調波信号は、第2の高調波信号伝送経路によって、スイッチ6のスイッチ電源電圧入力端子6VDに伝送される。スイッチ電源電圧入力端子6VDに伝送された高調波信号は、復号器13を構成する半導体素子およびスイッチ回路14を構成する半導体素子を通過して、スイッチ回路14の各ポート14a,14b,14cに漏れる。ここで、第2の高調波信号伝送経路を経由してスイッチ電源電圧入力端子6VDに伝送された高調波信号がポート14cに漏れることによってポート14cに現れる高調波信号を第2の電力増幅器起因の高調波信号と呼ぶ。
第2の送信信号の送信時にスイッチ回路14によって発生される高調波信号は、スイッチ回路14の各ポート14a,14b,14cに現れる。ここで、スイッチ回路14によって発生されてポート14cに現れる高調波信号を第2のスイッチ起因の高調波信号と呼ぶ。ポート14cからは、第2の電力増幅器起因の高調波信号と第2のスイッチ起因の高調波信号とが合成されて形成された高調波信号(以下、第2の合成高調波信号と呼ぶ。)が出力される。
本実施の形態では、第1の実施の形態において説明した高調波信号低減の原理により、第2の電力増幅器起因の高調波信号の位相と強度を調整することにより、第2の合成高調波信号の強度を第2のスイッチ起因の高調波信号の強度よりも小さくすることが可能である。本実施の形態では、位相調整線路84B,85の長さを調整することによって第2の高調波信号伝送経路の長さを調整でき、これにより、第2の電力増幅器起因の高調波信号の位相を調整することができる。本実施の形態では、位相調整線路84B,85の長さを調整することによって、第2の電力増幅器起因の高調波信号の位相を第2のスイッチ起因の高調波信号の位相と180°異ならせることが好ましい。
本実施の形態では、位相調整線路84A,84Bの長さを互いに独立して調整することができ、これにより、第1および第2の高調波信号伝送経路の長さを互いに独立して調整することができる。そのため、本実施の形態によれば、第1の送信信号の送信時と第2の送信信号の送信時のいずれにおいても、アンテナ1から放出される高調波信号を低減することが可能になる。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
[第4の実施の形態]
次に、図19を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る高周波モジュールについて説明する。図19は、本実施の形態に係る高周波モジュール122の回路構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る高周波モジュール122は、時分割複信方式の無線通信装置における高周波回路部の一部を構成し、互いに周波数帯の異なる第1および第2の送信信号と、互いに周波数帯の異なる第1および第2の受信信号とを処理するものである。
本実施の形態に係る高周波モジュール122は、第3の実施の形態におけるスイッチ6の代りにスイッチ9を備えている。また、本実施の形態に係る高周波モジュール122は、第3の実施の形態に係る高周波モジュールの構成要素112の構成要素に加えて、不平衡信号の形態の第1の受信信号を出力する第1の受信信号端子Rx1と、不平衡信号の形態の第2の受信信号を出力する第2の受信信号端子Rx2と、スイッチ制御端子V2とを備えている。
スイッチ9は、端子9a,9b,9c,9d,9eと、スイッチ電源電圧入力端子9VDと、スイッチ制御信号入力端子9V1,9V2と、復号器15と、単極四投のスイッチ回路16とを有している。端子9aは、LPF5Aを介して電力増幅器4Aの信号出力端子4Abに接続されている。端子9bは、LPF5Bを介して電力増幅器4Bの信号出力端子4Bbに接続されている。端子9cは、第1の受信信号端子Rx1に接続されている。端子9dは、第2の受信信号端子Rx2に接続されている。端子9eは、アンテナ端子ANTに接続されている。スイッチ電源電圧入力端子9VDは、位相調整線路85を介して電源端子Vccに接続されている。スイッチ制御信号入力端子9V1には第1のスイッチ用制御信号が入力され、スイッチ制御信号入力端子9V2には第2のスイッチ用制御信号が入力される。
スイッチ回路16は、ポート16a,16b,16c,16d,16eを含み、ポート16eをポート16a,16b,16c,16dのいずれかに選択的に接続する。ポート16aは端子9aに接続されている。ポート16bは端子9bに接続されている。ポート16cは端子9cに接続されている。ポート16dは端子9dに接続されている。ポート16eは端子9eに接続されている。
復号器15は、論理回路によって構成されている。従って、復号器15は、本発明における論理回路に対応する。復号器15は、端子9VD,9V1,9V2に接続されていると共にスイッチ回路16に接続されている。復号器15は、電源端子Vcc、位相調整線路85および端子9VDを介して電源電圧が供給されることによって動作し、端子V1,9V1を介して入力される第1のスイッチ用制御信号と端子V2,9V2を介して入力される第2のスイッチ用制御信号とに基づいて、スイッチ回路16において接続される2つのポートを決定するための4つの信号を生成し、スイッチ回路16に出力する。
スイッチ回路16は、FETを用いて構成されている。スイッチ9は、半導体IC、特にMMICによって構成されている。
本実施の形態に係る高周波モジュール122は、第3の実施の形態と同様に、第1および第2の高調波信号伝送経路を備えている。第1の高調波信号伝送経路は、増幅器電源電圧入力端子4AVCから、位相調整線路84A、分岐点ND1および位相調整線路85を経由して、スイッチ電源電圧入力端子9VDに至る経路である。第2の高調波信号伝送経路は、増幅器電源電圧入力端子4BVCから、位相調整線路84B、分岐点ND2および位相調整線路85を経由して、スイッチ電源電圧入力端子9VDに至る経路である。
次に、本実施の形態に係る高周波モジュール122の主要な作用について説明する。第1の送信信号の送信時には、スイッチ回路16のポート16eはポート16aに接続される。第2の送信信号の送信時には、スイッチ回路16のポート16eはポート16bに接続される。第1の送信信号の送信時および第2の送信信号の送信時における作用は、第3の実施の形態と同様である。
第1の受信信号の受信時には、スイッチ回路16のポート16eはポート16cに接続される。この場合、アンテナ1によって受信された第1の受信信号は、アンテナ端子ANT、スイッチ9および第1の受信信号端子Rx1を順に通過してRFICに入力される。第2の受信信号の受信時には、スイッチ回路16のポート16eはポート16dに接続される。この場合、アンテナ1によって受信された第2の受信信号は、アンテナ端子ANT、スイッチ9および第2の受信信号端子Rx2を順に通過してRFICに入力される。
本実施の形態のように複数の送信信号および複数の受信信号の経路をスイッチによって切り替える構成は、スイッチのポートの数を増やすことで、高周波モジュールで処理する周波数帯の増加に対して容易に対応することができるという利点がある。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第3の実施の形態と同様である。
[第5の実施の形態]
次に、図20を参照して、本発明の第5の実施の形態に係る高周波モジュールについて説明する。図20は、本実施の形態に係る高周波モジュール132の回路構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る高周波モジュール132は、第4の実施の形態と同様に、時分割複信方式の無線通信装置における高周波回路部の一部を構成し、互いに周波数帯の異なる第1および第2の送信信号と、互いに周波数帯の異なる第1および第2の受信信号とを処理するものである。本実施の形態では、第2の送信信号の周波数帯は第1の送信信号の周波数帯よりも高く、第2の受信信号の周波数帯は第1の受信信号の周波数帯よりも高い。
本実施の形態に係る高周波モジュール132は、第4の実施の形態におけるLPF5A,LPF5Bおよびスイッチ9の代りに、ダイプレクサ51,52と、第1の実施の形態におけるスイッチ6とを備えている。
ダイプレクサ51は、第1ないし第3のポートと、LPF51Aと、ハイパスフィルタ(以下、HPFと記す。)51Bとを有している。第1のポートは、電力増幅器4Aの信号出力端子4Abに接続されている。LPF51Aは第1のポートと第3のポートとの間に設けられている。第2のポートは、電力増幅器4Bの信号出力端子4Bbに接続されている。HPF51Bは第2のポートと第3のポートとの間に設けられている。第3のポートは、スイッチ6の端子6aに接続されている。
ダイプレクサ52は、第1ないし第3のポートと、LPF52Aと、HPF52Bとを有している。第1のポートは、第1の受信信号端子Rx1に接続されている。LPF52Aは第1のポートと第3のポートとの間に設けられている。第2のポートは、第2の受信信号端子Rx2に接続されている。HPF52Bは第2のポートと第3のポートとの間に設けられている。第3のポートは、スイッチ6の端子6bに接続されている。
本実施の形態に係る高周波モジュール132は、第3の実施の形態と同様に、第1および第2の高調波信号伝送経路を備えている。
次に、本実施の形態に係る高周波モジュール132の主要な作用について説明する。第1の送信信号の送信時および第2の送信信号の送信時には、スイッチ回路14のポート14cはポート14aに接続される。この場合、RFICより出力された平衡信号の形態の第1の送信信号は、一対の第1の送信信号端子Tx11,Tx12を通過してBPF3Aに入力され、BPF3Aによって不平衡信号の形態の第1の送信信号に変換される。この不平衡信号の形態の第1の送信信号は、電力増幅器4A、ダイプレクサ51のLPF51A、スイッチ6およびアンテナ端子ANTを順に通過してアンテナ1に供給され、このアンテナ1より送信される。
また、RFICより出力された平衡信号の形態の第2の送信信号は、一対の第2の送信信号端子Tx21,Tx21を通過してBPF3Bに入力され、BPF3Bによって不平衡信号の形態の第2の送信信号に変換される。この不平衡信号の形態の第2の送信信号は、電力増幅器4B、ダイプレクサ51のHPF51B、スイッチ6およびアンテナ端子ANTを順に通過してアンテナ1に供給され、このアンテナ1より送信される。
第1の受信信号の受信時および第2の受信信号の受信時には、スイッチ回路14のポート14cはポート14bに接続される。この場合、アンテナ1によって受信された第1の受信信号は、アンテナ端子ANT、スイッチ6、ダイプレクサ52のLPF52Aおよび第1の受信信号端子Rx1を順に通過してRFICに入力される。また、アンテナ1によって受信された第2の受信信号は、アンテナ端子ANT、スイッチ6、ダイプレクサ52のHPF52Bおよび第2の受信信号端子Rx2を順に通過してRFICに入力される。
なお、上記の説明では、ダイプレクサ51,52を、いずれもLPFとHPFによって構成されているものとして説明したが、ダイプレクサ51,52は、以下のような構成であってもよい。まず、ダイプレクサ51において、HPF51Bでは、電力増幅器4Bによって発生された高調波信号を減衰させることができない。そこで、電力増幅器4Bによって発生された高調波信号をダイプレクサ51において減衰させたい場合には、HPF51Bの代りにBPFを用いる。従って、この場合には、ダイプレクサ51は、LPF51AとBPFによって構成される。更に、ダイプレクサ51において、送信信号の周数帯よりも低い周波数の不要な信号を減衰させたい場合には、LPF51Aの代りにBPFを用いる。従って、この場合には、ダイプレクサ51は、2つのBPFによって構成される。また、受信信号端子Rx1,Rx2より出力される第1および第2の受信信号が入力される受信回路(例えばRFIC内の低雑音増幅器)の受信感度の劣化を防ぐために、ダイプレクサ52を2つのBPFによって構成してもよい。
また、本実施の形態に係る高周波モジュール132において、ダイプレクサ51,52の代りにそれぞれトリプレクサを設けた場合には、3つの周波数帯に対応することが可能になる。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第3の実施の形態と同様である。
[第6の実施の形態]
次に、図21を参照して、本発明の第6の実施の形態に係る高周波モジュールについて説明する。図21は、本実施の形態に係る高周波モジュール142の回路構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る高周波モジュール142は、周波数分割複信(FDD;Frequency Division Duplex)方式の無線通信装置における高周波回路部の一部を構成し、互いに周波数帯の異なる第1および第2の送信信号と、互いに周波数帯の異なる第1および第2の受信信号とを処理するものである。本実施の形態では、第1の周波数帯に第1の送信信号の周波数帯と第1の受信信号の周波数帯が含まれ、第1の周波数帯と異なる第2の周波数帯に第2の送信信号の周波数帯と第2の受信信号の周波数帯が含まれている。第1の受信信号の周波数帯は第1の送信信号の周波数帯よりも高く、第2の受信信号の周波数帯は第2の送信信号の周波数帯よりも高い。
本実施の形態に係る高周波モジュール142は、第5の実施の形態におけるダイプレクサ51,52の代りに、デュプレクサ53A,53Bを備えている。デュプレクサ53Aは、第1ないし第3のポートと、LPF53A1と、HPF53A2とを有している。第1のポートは、電力増幅器4Aの信号出力端子4Abに接続されている。LPF53A1は第1のポートと第3のポートとの間に設けられている。第2のポートは、第1の受信信号端子Rx1に接続されている。HPF53A2は第2のポートと第3のポートとの間に設けられている。第3のポートは、スイッチ6の端子6aに接続されている。
デュプレクサ53Bは、第1ないし第3のポートと、LPF53B1と、HPF53B2とを有している。第1のポートは、電力増幅器4Bの信号出力端子4Bbに接続されている。LPF53B1は第1のポートと第3のポートとの間に設けられている。第2のポートは、第2の受信信号端子Rx2に接続されている。HPF53B2は第2のポートと第3のポートとの間に設けられている。第3のポートは、スイッチ6の端子6bに接続されている。
次に、本実施の形態に係る高周波モジュール142の主要な作用について説明する。第1の送信信号の送信時および第1の受信信号の受信時には、スイッチ回路14のポート14cはポート14aに接続される。この場合、RFICより出力された平衡信号の形態の第1の送信信号は、一対の第1の送信信号端子Tx11,Tx12を通過してBPF3Aに入力され、BPF3Aによって不平衡信号の形態の第1の送信信号に変換される。この不平衡信号の形態の第1の送信信号は、電力増幅器4A、デュプレクサ53AのLPF53A1、スイッチ6およびアンテナ端子ANTを順に通過してアンテナ1に供給され、このアンテナ1より送信される。また、アンテナ1によって受信された第1の受信信号は、アンテナ端子ANT、スイッチ6、デュプレクサ53AのHPF53A2および第1の受信信号端子Rx1を順に通過してRFICに入力される。
第2の送信信号の送信時および第2の受信信号の受信時には、スイッチ回路14のポート14cはポート14bに接続される。この場合、RFICより出力された平衡信号の形態の第2の送信信号は、一対の第2の送信信号端子Tx21,Tx22を通過してBPF3Bに入力され、BPF3Bによって不平衡信号の形態の第2の送信信号に変換される。この不平衡信号の形態の第2の送信信号は、電力増幅器4B、デュプレクサ53BのLPF53B1、スイッチ6およびアンテナ端子ANTを順に通過してアンテナ1に供給され、このアンテナ1より送信される。また、アンテナ1によって受信された第2の受信信号は、アンテナ端子ANT、スイッチ6、デュプレクサ53BのHPF53B2および第2の受信信号端子Rx2を順に通過してRFICに入力される。
本実施の形態では、第1の送信信号の送信と第1の受信信号の受信とを同時に行うことができ、第2の送信信号の送信と第2の受信信号の受信とを同時に行うことができる。また、本実施の形態に係る高周波モジュール142では、スイッチ6のポートの数を増やすことで、高周波モジュール142で処理する周波数帯の増加に対して容易に対応することが可能である。
なお、上記の説明では、デュプレクサ53A,53Bを、いずれもLPFとHPFによって構成されているものとして説明したが、デュプレクサ53A,53Bは、以下のような構成であってもよい。デュプレクサは、送信信号と受信信号を分離するもので、W−CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)方式等の周波数分割複信方式において用いられている。送信信号の周波数帯と受信信号の周波数帯は非常に近いため、デュプレクサとしては、通過帯域から通過帯域外にかけての挿入損失特性が非常に急峻に変化する弾性表面波フィルタよりなるBPFを2つ備えたものが多く用いられている。本実施の形態におけるデュプレクサ53A,53Bの各々についても、それぞれ例えば弾性表面波フィルタよりなる2つのBPFによって構成してもよい。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第5の実施の形態と同様である。
[第7の実施の形態]
次に、図22を参照して、本発明の第7の実施の形態に係る高周波モジュールについて説明する。図22は、本実施の形態に係る高周波モジュール152の回路構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る高周波モジュール152は、時分割複信方式の無線通信装置における高周波回路部の一部を構成し、互いに周波数帯の異なる第1および第2の送信信号と、互いに周波数帯の異なる第1および第2の受信信号とを処理するものである。本実施の形態では、第1の周波数帯に第1の送信信号の周波数帯と第1の受信信号の周波数帯が含まれ、第1の周波数帯よりも高い第2の周波数帯に第2の送信信号の周波数帯と第2の受信信号の周波数帯が含まれている。
本実施の形態に係る高周波モジュール152は、第6の実施の形態における電源端子Vcc、スイッチ制御端子V1、スイッチ6の代りに、2つの電源端子VCA,VCB、2つのスイッチ制御端子V1A,V1B、2つのスイッチ6A,6Bを備えている。また、高周波モジュール152は、第6の実施の形態におけるデュプレクサ53A,53B、位相調整線路84A,84B,85の代りに、ダイプレクサ54、位相調整線路86A,86B,87A,87Bを備えている。
電力増幅器4Aの端子4AVCは、位相調整線路86Aを介して電源端子VCAに接続されている。電力増幅器4Bの端子4BVCは、位相調整線路86Bを介して電源端子VCBに接続されている。
スイッチ6Aは、端子6Aa,6Ab,6Acと、スイッチ電源電圧入力端子6AVDと、スイッチ制御信号入力端子6AV1と、復号器13Aと、単極双投のスイッチ回路14Aとを有している。端子6Aaは、電力増幅器4Aの信号出力端子4Abに接続されている。端子6Abは、第1の受信信号端子Rx1に接続されている。端子6Acは、ダイプレクサ54に接続されている。端子6AVDは、位相調整線路87Aを介して電源端子VCAに接続されている。端子6AV1は、スイッチ制御端子V1Aに接続されている。
スイッチ回路14Aは、ポート14Aa,14Ab,14Acを含み、ポート14Acをポート14Aa,14Abのいずれかに選択的に接続する。ポート14Aaは端子6Aaに接続されている。ポート14Abは端子6Abに接続されている。ポート14Acは端子6Acに接続されている。
復号器13Aは、論理回路によって構成されている。従って、復号器13Aは、本発明における論理回路に対応する。復号器13Aは、端子6AVD,6AV1に接続されていると共にスイッチ回路14Aに接続されている。復号器13Aは、電源端子VCA、位相調整線路87Aおよび端子6AVDを介して電源電圧が供給されることによって動作し、端子V1A,6AV1を介して入力されるスイッチ用制御信号に基づいて、スイッチ回路14Aにおいて接続される2つのポートを決定するための2つの信号を生成し、スイッチ回路14Aに出力する。
スイッチ6Bは、端子6Ba,6Bb,6Bcと、スイッチ電源電圧入力端子6BVDと、スイッチ制御信号入力端子6BV1と、復号器13Bと、単極双投のスイッチ回路14Bとを有している。端子6Baは、電力増幅器4Bの信号出力端子4Bbに接続されている。端子6Bbは、第2の受信信号端子Rx2に接続されている。端子6Bcは、ダイプレクサ54に接続されている。端子6BVDは、位相調整線路87Bを介して電源端子VCBに接続されている。端子6BV1は、スイッチ制御端子V1Bに接続されている。
スイッチ回路14Bは、ポート14Ba,14Bb,14Bcを含み、ポート14Bcをポート14Ba,14Bbのいずれかに選択的に接続する。ポート14Baは端子6Baに接続されている。ポート14Bbは端子6Bbに接続されている。ポート14Bcは端子6Bcに接続されている。
復号器13Bは、論理回路によって構成されている。従って、復号器13Bは、本発明における論理回路に対応する。復号器13Bは、端子6BVD,6BV1に接続されていると共にスイッチ回路14Bに接続されている。復号器13Bは、電源端子VCB、位相調整線路87Bおよび端子6BVDを介して電源電圧が供給されることによって動作し、端子V1B,6BV1を介して入力されるスイッチ用制御信号に基づいて、スイッチ回路14Bにおいて接続される2つのポートを決定するための2つの信号を生成し、スイッチ回路14Bに出力する。
スイッチ6A,6Bの構成は、第1の実施の形態におけるスイッチ6と同様である。スイッチ回路14A,14Bは、FETを用いて構成されている。スイッチ6A,6Bは、半導体IC、特にMMICによって構成されている。
本実施の形態では、増幅器電源電圧入力端子4AVCとスイッチ電源電圧入力端子6AVDが共に電源端子VCAに接続され、増幅器電源電圧入力端子4BVCとスイッチ電源電圧入力端子6BVDが共に電源端子VCBに接続されている。ここで、電源端子VCAから端子4AVCに至る線路と、電源端子VCAから端子6AVDに至る線路との分岐点を記号ND1で表す。また、電源端子VCBから端子4BVCに至る線路と、電源端子VCBから端子6BVDに至る線路との分岐点を記号ND2で表す。
本実施の形態に係る高周波モジュール152は、増幅器電源電圧入力端子4AVCとスイッチ電源電圧入力端子6AVDが共に電源端子VCAに接続されることによって、増幅器電源電圧入力端子4AVCとスイッチ電源電圧入力端子6AVDとの間に形成され、電力増幅器4Aによって発生されて増幅器電源電圧入力端子4AVCに漏れる高調波信号をスイッチ電源電圧入力端子6AVDに伝送する第1の高調波信号伝送経路を備えている。この第1の高調波信号伝送経路は、増幅器電源電圧入力端子4AVCから、位相調整線路86A、分岐点ND1および位相調整線路87Aを経由して、スイッチ電源電圧入力端子6AVDに至る経路である。増幅器電源電圧入力端子4AVCから第1の高調波信号伝送経路に流れる高調波信号が第1の高調波信号伝送経路の始点で反射されることを防止するために、第1の高調波信号伝送経路の特性インピーダンスは、高周波モジュール152における主要な伝送線路の特性インピーダンスと等しいか、それに近い値であることが好ましい。例えば、高周波モジュール152における主要な伝送線路の特性インピーダンスが50Ωである場合、第1の高調波信号伝送経路の特性インピーダンスは、50Ωであるか、50Ωに近い値であることが好ましい。
また、本実施の形態に係る高周波モジュール152は、増幅器電源電圧入力端子4BVCとスイッチ電源電圧入力端子6BVDが共に電源端子VCBに接続されることによって、増幅器電源電圧入力端子4BVCとスイッチ電源電圧入力端子6BVDとの間に形成され、電力増幅器4Bによって発生されて増幅器電源電圧入力端子4BVCに漏れる高調波信号をスイッチ電源電圧入力端子6BVDに伝送する第2の高調波信号伝送経路を備えている。この第2の高調波信号伝送経路は、増幅器電源電圧入力端子4BVCから、位相調整線路86B、分岐点ND2および位相調整線路87Bを経由して、スイッチ電源電圧入力端子6BVDに至る経路である。増幅器電源電圧入力端子4BVCから第2の高調波信号伝送経路に流れる高調波信号が第2の高調波信号伝送経路の始点で反射されることを防止するために、第2の高調波信号伝送経路の特性インピーダンスは、高周波モジュール152における主要な伝送線路の特性インピーダンスと等しいか、それに近い値であることが好ましい。例えば、高周波モジュール152における主要な伝送線路の特性インピーダンスが50Ωである場合、第2の高調波信号伝送経路の特性インピーダンスは、50Ωであるか、50Ωに近い値であることが好ましい。
ダイプレクサ54は、第1ないし第3のポートと、LPF54Aと、HPF54Bとを有している。第1のポートは、スイッチ6Aの端子6Acに接続されている。LPF54Aは第1のポートと第3のポートとの間に設けられている。第2のポートは、スイッチ6Bの端子6Bcに接続されている。HPF54Bは第2のポートと第3のポートとの間に設けられている。第3のポートは、アンテナ端子ANTに接続されている。
位相調整線路86A,86B,87A,87Bは、第1の実施の形態における位相調整線路81と同様に、積層基板20内に設けられた導体層を用いて構成することができる。また、位相調整線路86A,86B,87A,87Bは、例えば、位相調整線路81と同様にミアンダ形状とすることができる。
次に、本実施の形態に係る高周波モジュール152の作用および効果について説明する。第1の送信信号の送信時には、スイッチ回路14Aのポート14Acはポート14Aaに接続される。この場合、RFICより出力された平衡信号の形態の第1の送信信号は、一対の第1の送信信号端子Tx11,Tx12を通過してBPF3Aに入力され、BPF3Aによって不平衡信号の形態の第1の送信信号に変換される。この不平衡信号の形態の第1の送信信号は、電力増幅器4A、スイッチ6A、ダイプレクサ54のLPF54Aおよびアンテナ端子ANTを順に通過してアンテナ1に供給され、このアンテナ1より送信される。
第1の受信信号の受信時には、スイッチ回路14Aのポート14Acはポート14Abに接続される。この場合、アンテナ1によって受信された第1の受信信号は、アンテナ端子ANT、ダイプレクサ54のLPF54A、スイッチ6Aおよび第1の受信信号端子Rx1を順に通過してRFICに入力される。
第2の送信信号の送信時には、スイッチ回路14Bのポート14Bcはポート14Baに接続される。この場合、RFICより出力された平衡信号の形態の第2の送信信号は、一対の第2の送信信号端子Tx21,Tx22を通過してBPF3Bに入力され、BPF3Bによって不平衡信号の形態の第2の送信信号に変換される。この不平衡信号の形態の第2の送信信号は、電力増幅器4B、スイッチ6B、ダイプレクサ54のHPF54Bおよびアンテナ端子ANTを順に通過してアンテナ1に供給され、このアンテナ1より送信される。
第2の受信信号の受信時には、スイッチ回路14Bのポート14Bcはポート14Bbに接続される。この場合、アンテナ1によって受信された第2の受信信号は、アンテナ端子ANT、ダイプレクサ54のHPF54B、スイッチ6Bおよび第2の受信信号端子Rx2を順に通過してRFICに入力される。
第1の送信信号の送信時には、電力増幅器4Aとスイッチ回路14Aがそれぞれ、第1の送信信号に対する高調波信号を発生する。電力増幅器4Aによって発生された高調波信号は、電力増幅器4Aの信号出力端子4Abから増幅器電源電圧入力端子4AVCに漏れる。この増幅器電源電圧入力端子4AVCに漏れる高調波信号は、第1の高調波信号伝送経路によって、スイッチ6Aのスイッチ電源電圧入力端子6AVDに伝送される。スイッチ電源電圧入力端子6AVDに伝送された高調波信号は、復号器13Aを構成する半導体素子およびスイッチ回路14Aを構成する半導体素子を通過して、スイッチ回路14Aの各ポート14Aa,14Ab,14Acに漏れる。ここで、第1の高調波信号伝送経路を経由してスイッチ電源電圧入力端子6AVDに伝送された高調波信号がポート14Acに漏れることによってポート14Acに現れる高調波信号を第1の電力増幅器起因の高調波信号と呼ぶ。
第1の送信信号の送信時にスイッチ回路14Aによって発生される高調波信号は、スイッチ回路14Aの各ポート14Aa,14Ab,14Acに現れる。ここで、スイッチ回路14Aによって発生されてポート14Acに現れる高調波信号を第1のスイッチ起因の高調波信号と呼ぶ。ポート14Acからは、第1の電力増幅器起因の高調波信号と第1のスイッチ起因の高調波信号とが合成されて形成された第1の合成高調波信号が出力される。
本実施の形態では、第1の実施の形態において説明した高調波信号低減の原理により、第1の電力増幅器起因の高調波信号の位相と強度を調整することにより、第1の合成高調波信号の強度を第1のスイッチ起因の高調波信号の強度よりも小さくすることが可能である。本実施の形態では、位相調整線路86A,87Aの長さを調整することによって第1の高調波信号伝送経路の長さを調整でき、これにより、第1の電力増幅器起因の高調波信号の位相を調整することができる。本実施の形態では、位相調整線路86A,87Aの長さを調整することによって、第1の電力増幅器起因の高調波信号の位相を第1のスイッチ起因の高調波信号の位相と180°異ならせることが好ましい。
第2の送信信号の送信時には、電力増幅器4Bとスイッチ回路14Bがそれぞれ、第2の送信信号に対する高調波信号を発生する。電力増幅器4Bによって発生された高調波信号は、電力増幅器4Bの信号出力端子4Bbから増幅器電源電圧入力端子4BVCに漏れる。この増幅器電源電圧入力端子4BVCに漏れる高調波信号は、第2の高調波信号伝送経路によって、スイッチ6Bのスイッチ電源電圧入力端子6BVDに伝送される。スイッチ電源電圧入力端子6BVDに伝送された高調波信号は、復号器13Bを構成する半導体素子およびスイッチ回路14Bを構成する半導体素子を通過して、スイッチ回路14Bの各ポート14Ba,14Bb,14Bcに漏れる。ここで、第2の高調波信号伝送経路を経由してスイッチ電源電圧入力端子6BVDに伝送された高調波信号がポート14Bcに漏れることによってポート14Bcに現れる高調波信号を第2の電力増幅器起因の高調波信号と呼ぶ。
第2の送信信号の送信時にスイッチ回路14Bによって発生される高調波信号は、スイッチ回路14Bの各ポート14Ba,14Bb,14Bcに現れる。ここで、スイッチ回路14Bによって発生されてポート14Bcに現れる高調波信号を第2のスイッチ起因の高調波信号と呼ぶ。ポート14Bcからは、第2の電力増幅器起因の高調波信号と第2のスイッチ起因の高調波信号とが合成されて形成された第2の合成高調波信号が出力される。
本実施の形態では、第1の実施の形態において説明した高調波信号低減の原理により、第2の電力増幅器起因の高調波信号の位相と強度を調整することにより、第2の合成高調波信号の強度を第2のスイッチ起因の高調波信号の強度よりも小さくすることが可能である。本実施の形態では、位相調整線路86B,87Bの長さを調整することによって第2の高調波信号伝送経路の長さを調整でき、これにより、第2の電力増幅器起因の高調波信号の位相を調整することができる。本実施の形態では、位相調整線路86B,87Bの長さを調整することによって、第2の電力増幅器起因の高調波信号の位相を第2のスイッチ起因の高調波信号の位相と180°異ならせることが好ましい。
また、本実施の形態では、スイッチ6A,6Bと、アンテナ端子ANTとの間に、ダイプレクサ54が設けられている。そのため、本実施の形態によれば、ダイプレクサ54によって、スイッチ6A,6Bからアンテナ1に向かう高調波信号を更に減衰させることが可能である。第1および第2高調波信号伝送経路を利用した本実施の形態における高調波信号の低減方法と、ダイプレクサ54による高調波信号の低減方法とを併用することにより、ダイプレクサ54のみによって高調波信号を低減する場合に比べて、高調波信号の低減に関してダイプレクサ54に要求される性能を緩和することができる。
なお、上記の説明では、ダイプレクサ54を、LPF54AとHPF54Bによって構成されているものとして説明したが、ダイプレクサ54は、以下のような構成であってもよい。第2の送信信号の送信時において、HPF54Bでは、電力増幅器4Bによって発生された高調波信号を減衰させることができない。そこで、電力増幅器4Bによって発生された高調波信号をダイプレクサ54において減衰させたい場合には、HPF54Bの代りにBPFを用いる。従って、この場合には、ダイプレクサ54は、LPF54AとBPFによって構成される。更に、ダイプレクサ54において、送信信号の周数帯よりも低い周波数の不要な信号を減衰させたい場合には、LPF54Aの代りにBPFを用いる。従って、この場合には、ダイプレクサ54は、2つのBPFによって構成される。
また、本実施の形態に係る高周波モジュール152において、ダイプレクサ54の代りにトリプレクサを設けると共に、スイッチ6A,6Bと同様のスイッチを1つ追加した場合には、3つの周波数帯に対応することが可能になる。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第6の実施の形態と同様である。
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、本発明の高周波モジュールは、受信信号を増幅する増幅器等、各実施の形態に示した高周波モジュールの構成要素以外の要素を含んでいてもよい。
また、本発明は、高周波信号を増幅する電力増幅器と、この電力増幅器の出力信号が入力されるスイッチとを備えた高周波モジュール全般に適用することができる。