JP2010266026A - 自動変速機の油圧制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】摩擦係合要素を係合させるための係合圧ソレノイドバルブに故障が発生した場合、その故障している係合圧ソレノイドバルブを特定でき且つその故障に対するフェールセーフ動作が可能な自動変速機の油圧制御装置を提供する。
【解決手段】3速段の変速指令を行っている場合に、自動変速機がニュートラルになると、8速段への変速指令により、上記3速段成立時に作動するリニアソレノイドバルブとは異なるリニアソレノイドバルブを作動させる。8速段が成立した場合には、3速段成立時に作動すべきリニアソレノイドバルブのオフ故障であると判断する。8速段が不成立の場合には、ソレノイドバルブへの通電をカットすることで7速段が成立するようにし、7速段が成立するか否かによって残りのリニアソレノイドバルブのオン故障を判別する。
【選択図】図9
【解決手段】3速段の変速指令を行っている場合に、自動変速機がニュートラルになると、8速段への変速指令により、上記3速段成立時に作動するリニアソレノイドバルブとは異なるリニアソレノイドバルブを作動させる。8速段が成立した場合には、3速段成立時に作動すべきリニアソレノイドバルブのオフ故障であると判断する。8速段が不成立の場合には、ソレノイドバルブへの通電をカットすることで7速段が成立するようにし、7速段が成立するか否かによって残りのリニアソレノイドバルブのオン故障を判別する。
【選択図】図9
Description
本発明は、例えば車両に搭載される自動変速機の油圧制御装置に係る。特に、本発明は、摩擦係合要素を係合させる油圧回路に備えられた係合圧ソレノイドバルブの故障発生時における故障判定動作及びフェールセーフ動作に関する。
一般に、車両等に搭載される多段式の自動変速機にあっては、例えば2つのクラッチやブレーキ(摩擦係合要素)を係合することで変速段を成立させ、それらクラッチやブレーキの掴み換えにより変速段を変更するものが主流となっている。また近年、多段式の自動変速機にあっては、リニアソレノイドバルブ(係合圧ソレノイドバルブ)の性能向上が図られ、リニアソレノイドバルブにより調圧した油圧を直接的に係合圧として上記クラッチやブレーキの油圧サーボに供給するよう構成されたものが一般的である。
上述のような多段式の自動変速機においては、例えば3つ以上のクラッチやブレーキが同時に係合すると、変速歯車機構の回転状態が矛盾した状態となり、いわゆるタイアップ状態となって好ましくない。しかしながら、上述したように複数のリニアソレノイドバルブそれぞれにより係合圧が個別に制御されるため、リニアソレノイドバルブに異常(例えば断線、ショート、バルブスティック等)が生じると、意図しないクラッチ或いはブレーキが係合する虞があり、上述した如く3つ以上のクラッチやブレーキが同時係合する状態になり得る。
そこで、3つのリニアソレノイドバルブからの係合圧を入力し得るように構成すると共に、1つのリニアソレノイドバルブの係合圧が通過するように構成したフェールセーフ弁を備え、同時に3つ以上の係合圧が作用した際に、その通過する1つの係合圧を遮断して、3つ以上の摩擦係合要素が同時係合することを防止するものが提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、上述したフェールセーフ弁は、3つの係合圧が入力された際に1つの係合圧を遮断する構成となっているので、例えば前進8速段のように多段化された自動変速機にあって各変速段における同時係合の防止を図るためには、フェールセーフ弁の数が多数必要となり、また、このように多数のフェールセーフ弁にそれぞれ3つの係合圧を入力させるためには、多数の油路を形成する必要もあり、油圧制御装置の大型化を招いて車両搭載性が悪化してしまうという問題がある。
さらに、係合圧を遮断し得るようにフェールセーフ弁を通過させると、リニアソレノイドバルブからクラッチやブレーキの油圧サーボまでの間にフェールセーフ弁が必ず介在する構成となるため、正常時の係合圧の供給において管路抵抗が増加してしまう。このため、油圧応答性が遅くなり、クラッチやブレーキの制御性が悪化して、変速レスポンスの悪化や係合ショックの発生増加の原因にもなってしまうという問題がある。
また、特許文献2には、電磁弁のフェールが発生すると、選択された変速段から変速可能な変速段に変更し、通電故障検出回路にて検出を行うことが開示されている。ところが、この構成では、特別な通電故障検出回路が必要になり、装置の構成が複雑になってしまう。
これらの点に鑑み、本発明の発明者らは、上記同時係合の発生防止を可能にするものでありながら、構成の簡素化が図れ、かつ油圧応答性の悪化を防止することが可能な自動変速機の油圧制御装置について既に提供している。
詳しくは、全てのリニアソレノイドバルブの出力ポートに繋がるフェールセーフバルブを設けておき、3つ以上のクラッチやブレーキが同時に係合する(3つ以上のリニアソレノイドバルブの出力ポートから油圧が供給される)状況となった場合には、このフェールセーフバルブのスプール位置が切り換わって同時係合信号圧を出力するようにしている。また、上記全てのリニアソレノイドバルブの元圧を遮断可能な元圧切換えバルブを備えさせ、上記フェールセーフバルブから同時係合信号圧が出力された場合、その出力によって元圧切換えバルブが切り換わって全てのリニアソレノイドバルブの元圧を遮断する構成とするものである。
ところが、上記提案の油圧制御装置にあっては未だ改良の余地があった。以下、具体的に説明する。
上述した如く、3つ以上のクラッチやブレーキが同時に係合する状況となった場合には、フェールセーフバルブから出力される同時係合信号圧によって上記元圧が遮断されるため、自動変速機としては、何れの変速段も成立しない状態、つまり、ニュートラル状態となる。つまり、上述したような3つ以上のクラッチやブレーキが同時に係合する状況になると、車両に駆動力が得られなくなってしまう。
また、3つ以上のクラッチやブレーキが同時に係合する状況(油圧出力が指示されていないリニアソレノイドバルブから油圧が出力される故障:オン故障)ばかりでなく、変速指示がされている変速段を成立させるために係合するクラッチやブレーキに対して係合圧を出力すべきリニアソレノイドバルブに故障(油圧出力が指示されているにも拘わらず油圧出力が得られない故障:オフ故障)が発生している場合にも、必要な係合状態が得られないため自動変速機としてはニュートラル状態となる。
このように、リニアソレノイドバルブのオン故障発生時及びオフ故障発生時の何れであっても自動変速機はニュートラル状態となるため、何れのリニアソレノイドバルブの故障が原因で、変速指示に従った変速段が成立できないのかを判定することができず、サービス性の面で改良の余地があった。
また、このようなニュートラル状態となる状況にあっては車両に駆動力が得られなくなるため、運転者に違和感を与えてしまうことになる。つまり、リニアソレノイドバルブの故障発生時に、ニュートラル状態が継続して車両に駆動力が得られない状況が長期間に亘って継続してしまうことは好ましくない。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、摩擦係合要素を係合させるための係合圧ソレノイドバルブに故障が発生した場合、その故障している係合圧ソレノイドバルブを特定でき且つその故障に対するフェールセーフ動作が可能な自動変速機の油圧制御装置を提供することにある。
−課題の解決原理−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、摩擦係合要素を係合させるための係合圧ソレノイドバルブに故障が発生した場合には、現在、作動指示がなされている(摩擦係合要素への係合圧の出力指示がなされている)係合圧ソレノイドバルブとは異なる係合圧ソレノイドバルブを作動させて他の摩擦係合要素を係合させる。これによって所定の変速段(故障発生時とは異なる変速段)の成立を図ると共に、係合圧ソレノイドバルブの故障が発生した際の変速段と、その後に切り換えられた変速段の成立の有無とに基づいて、故障している係合圧ソレノイドバルブを抽出するようにしている。
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、摩擦係合要素を係合させるための係合圧ソレノイドバルブに故障が発生した場合には、現在、作動指示がなされている(摩擦係合要素への係合圧の出力指示がなされている)係合圧ソレノイドバルブとは異なる係合圧ソレノイドバルブを作動させて他の摩擦係合要素を係合させる。これによって所定の変速段(故障発生時とは異なる変速段)の成立を図ると共に、係合圧ソレノイドバルブの故障が発生した際の変速段と、その後に切り換えられた変速段の成立の有無とに基づいて、故障している係合圧ソレノイドバルブを抽出するようにしている。
−解決手段−
具体的に、本発明は、摩擦係合要素の油圧サーボに供給する係合圧を調圧する複数の係合圧ソレノイドバルブを備え、変速指令信号によって要求されている要求変速段に応じて、上記複数の係合圧ソレノイドバルブのうち所定数の係合圧ソレノイドバルブから係合圧を出力し、所定数の摩擦係合要素の係合により上記要求変速段を成立させる自動変速機の油圧制御装置を前提とする。この自動変速機の油圧制御装置に対し、故障発生検知手段、故障判別用変速段指令手段、故障判別手段を備えさせている。故障発生検知手段は、上記要求変速段の成立が不能になったことを認識する。故障判別用変速段指令手段は、上記故障発生検知手段によって要求変速段の成立が不能になったと認識された際、その要求変速段を成立させるために係合すべき摩擦係合要素へ係合圧を出力する係合圧ソレノイドバルブとは異なる係合圧ソレノイドバルブからの係合圧の出力によって成立する変速段を故障判別用変速段として、その変速段への変速指令を行う。故障判別手段は、上記故障判別用変速段指令手段からの変速指令に従った故障判別用変速段の成立の有無及び上記故障発生検知手段によって成立が不能になったと認識された上記要求変速段に基づいて何れの係合圧ソレノイドバルブに故障が発生しているかを判別する。
具体的に、本発明は、摩擦係合要素の油圧サーボに供給する係合圧を調圧する複数の係合圧ソレノイドバルブを備え、変速指令信号によって要求されている要求変速段に応じて、上記複数の係合圧ソレノイドバルブのうち所定数の係合圧ソレノイドバルブから係合圧を出力し、所定数の摩擦係合要素の係合により上記要求変速段を成立させる自動変速機の油圧制御装置を前提とする。この自動変速機の油圧制御装置に対し、故障発生検知手段、故障判別用変速段指令手段、故障判別手段を備えさせている。故障発生検知手段は、上記要求変速段の成立が不能になったことを認識する。故障判別用変速段指令手段は、上記故障発生検知手段によって要求変速段の成立が不能になったと認識された際、その要求変速段を成立させるために係合すべき摩擦係合要素へ係合圧を出力する係合圧ソレノイドバルブとは異なる係合圧ソレノイドバルブからの係合圧の出力によって成立する変速段を故障判別用変速段として、その変速段への変速指令を行う。故障判別手段は、上記故障判別用変速段指令手段からの変速指令に従った故障判別用変速段の成立の有無及び上記故障発生検知手段によって成立が不能になったと認識された上記要求変速段に基づいて何れの係合圧ソレノイドバルブに故障が発生しているかを判別する。
この特定事項により、例えば、上記故障判別用変速段が成立した場合には、この故障判別用変速段を成立させるために係合すべき摩擦係合要素へ係合圧を出力する係合圧ソレノイドバルブには故障は発生しておらず、上記故障発生検知手段によって成立が不能になったと認識された上記要求変速段を成立させるために係合すべき摩擦係合要素へ係合圧を出力する係合圧ソレノイドバルブには故障(オフ故障:係合圧の出力指示を行っても係合圧が出力されない故障)が発生していると判別できる。また、上記故障判別用変速段が成立しない場合には、この故障判別用変速段を成立させるために係合すべき摩擦係合要素へ係合圧を出力する係合圧ソレノイドバルブに故障が発生している可能性があると判別できる。このように、要求変速段の成立が不能になった後に、他の変速段(故障判別用変速段)に切り換えることで、故障している係合圧ソレノイドバルブを判別でき、また、故障判別用変速段が成立した場合には、駆動力の伝達が可能になって車両の走行を継続できることになる。
上記故障判別手段の具体的な構成としては以下のものが挙げられる。つまり、上記故障発生検知手段によって要求変速段の成立が不能となったと認識された際、この要求変速段を成立させるために係合すべき摩擦係合要素へ係合圧を出力する係合圧ソレノイドバルブのオフ故障(係合圧の出力指示を行っても係合圧が出力されない故障)またはそれ以外の係合圧ソレノイドバルブのオン故障(係合圧の出力指示を行っていないにも拘わらず係合圧が出力される故障)であると判断する。更に、上記故障判別用変速段指令手段によって故障判別用変速段への変速指令が行われた際、その故障判別用変速段が成立した場合には、上記要求変速段を成立させるために係合すべき摩擦係合要素へ係合圧を出力する係合圧ソレノイドバルブのオフ故障であると判断し、上記故障判別用変速段が成立しない場合には、それ以外の係合圧ソレノイドバルブのオン故障であると判断する構成としている。
更に、オフ故障である可能性のある係合圧ソレノイドバルブやオン故障である可能性のある係合圧ソレノイドバルブが複数存在する場合に、故障している係合圧ソレノイドバルブを特定するための構成としては以下のものが挙げられる。
先ず、オフ故障である可能性のある係合圧ソレノイドバルブが複数存在する場合、上記故障判別手段が、摩擦係合要素の回転数に基づいて何れの係合圧ソレノイドバルブがオフ故障であるかを判別する構成となっている。
一方、オン故障である可能性のある係合圧ソレノイドバルブが複数存在する場合、上記故障判別手段が、車両の再発進時に成立する変速段に基づいて何れの係合圧ソレノイドバルブがオン故障であるかを判別する構成となっている。
これら構成により、オフ故障である可能性のある係合圧ソレノイドバルブが複数存在する場合には、そのオフ故障が発生している1つの係合圧ソレノイドバルブを特定でき、同様に、オン故障である可能性のある係合圧ソレノイドバルブが複数存在する場合には、そのオン故障が発生している1つの係合圧ソレノイドバルブを特定できる。これにより、故障判別が可能となった本油圧制御装置の実用性の向上を図ることができる。
上述した各解決手段が適用される油圧制御装置のより具体的な構成としては以下のものが挙げられる。
先ず、同時係合信号圧を非出力にする非出力位置から、所定数よりも多い数の係合圧を入力した際に上記同時係合信号圧を出力する出力位置に切換えられる同時係合信号切換えバルブと、上記複数の係合圧ソレノイドバルブに元圧を供給する供給位置から、上記同時係合信号切換えバルブからの同時係合信号圧を入力した際に上記元圧を遮断する遮断位置に切換えられる元圧切換えバルブとを備えさせる。そして、上記元圧切換えバルブが上記元圧を遮断する遮断位置に切換えられたことによってニュートラル状態となった場合に、要求変速段の成立が不能となったと判断して、上記故障判別用変速段指令手段が故障判別用変速段への変速指令を行う構成としている。
これにより、同時係合信号切換えバルブが所定数よりも多い数の係合圧を入力した際に同時係合信号圧を出力し、元圧切換えバルブが同時係合信号切換えバルブからの同時係合信号圧を入力した際に係合圧ソレノイドバルブへの元圧を遮断するので、多数のフェールセーフ弁や多数の油路を必要とせずに、所定数以上の摩擦係合要素の同時係合を防止することができ、油圧制御装置の小型化を図って車両搭載性を向上することができる。また、係合圧を油圧サーボに供給する際にフェールセーフ弁を通すことを不要とすることができるので、摩擦係合要素への油圧応答性が向上し、変速レスポンスの向上や係合ショックの低減も図ることができる。また、フェールセーフ弁は、係合圧を通過させることなく、各係合圧を信号として入力するだけで足りるので、例えば油圧サーボへ係合圧を供給する油路に介在して係合圧を通過させるように構成されたバルブに比して、バルブ自体の径を小径に構成することができる。
また、上記自動変速機は、所定の2つの摩擦係合要素が係合することで各変速段を形成してなり、上記同時係合信号切換えバルブは、スプールと、各係合圧をそれぞれ入力してこのスプールに作用させる複数の油室と、上記元圧を入力してスプールに作用する2つの係合圧に対向作用する対向油室と、上記スプールに作用する3つ目の係合圧に打ち負ける付勢力からなる付勢部材とを有し、上記複数の油室に3つ以上の係合圧が入力された際に上記同時係合信号圧を出力する出力位置に切換えられてなる。
これにより、同時係合信号切換えバルブは、スプールと、各係合圧をそれぞれ入力してスプールに作用させる複数の油室と、元圧を入力してスプールに作用する2つの係合圧に対向作用する対向油圧と、スプールに作用する3つ目の係合圧に打ち負ける付勢力からなる付勢部材とを有しているので、複数の油室に3つ以上の係合圧が入力された際に同時係合信号圧を出力する出力位置に切換えられるように構成することができる。
また、フェール信号圧を出力し得るフェール用ソレノイドバルブと、上記フェール用ソレノイドバルブからのフェール信号圧を入力した際に、上記同時係合信号切換えバルブの同時係合信号圧の元圧を遮断すると共に、上記複数の係合圧ソレノイドバルブのうちの2つの排出ポートに上記元圧切換えバルブからの元圧を逆入力圧として出力して逆入力させるフェール時切換えバルブとを備えさせている。
これにより、フェール時切換えバルブが、フェール用ソレノイドバルブからのフェール信号圧を入力した際に、同時係合信号切換えバルブの同時係合信号圧の元圧を遮断すると共に、複数の係合圧ソレノイドバルブのうちの2つの排出ポートに元圧切換えバルブからの元圧を逆入力圧として出力して逆入力させるので、フェール用ソレノイドバルブを制御することで、係合圧ソレノイドバルブへの元圧を遮断した状態(即ちニュートラル状態)から、2つの摩擦係合要素を係合させて変速段を形成した走行状態(即ちリンプホーム)に移行することができる。
本発明では、摩擦係合要素を係合させるための係合圧ソレノイドバルブに故障が発生した場合には、現在、作動指示がなされている係合圧ソレノイドバルブとは異なる係合圧ソレノイドバルブを作動させて他の摩擦係合要素を係合させる。これによって所定の変速段の成立を図って駆動力の伝達を可能にすると共に、係合圧ソレノイドバルブの故障が発生した際の変速段と、その後に切り換えられた変速段の成立の有無とに基づいて、故障している係合圧ソレノイドバルブを特定することが可能になる。
以下、本発明に係る実施の形態を図面に沿って説明する。
−自動変速機の構成−
まず、本実施形態に係る多段式自動変速機1(以下、単に「自動変速機」という)の概略構成について図1に沿って説明する。図1に示すように、例えばFR(フロントエンジン・リヤドライブ)タイプの車両に用いられる自動変速機1は、図示しないエンジンに接続する入力軸11を有しており、この入力軸11の軸方向に沿ってトルクコンバータ7及び変速機構2が配設されている。なお、この図1では、自動変速機1の回転中心軸に対して上側半分のみを模式的に示している。
まず、本実施形態に係る多段式自動変速機1(以下、単に「自動変速機」という)の概略構成について図1に沿って説明する。図1に示すように、例えばFR(フロントエンジン・リヤドライブ)タイプの車両に用いられる自動変速機1は、図示しないエンジンに接続する入力軸11を有しており、この入力軸11の軸方向に沿ってトルクコンバータ7及び変速機構2が配設されている。なお、この図1では、自動変速機1の回転中心軸に対して上側半分のみを模式的に示している。
上記トルクコンバータ7は、自動変速機1の入力軸11に接続されたポンプインペラ7aと、作動流体を介してポンプインペラ7aの回転が伝達されるタービンランナ7bとを有している。タービンランナ7bは、上記入力軸11と同軸上に配設された上記変速機構2の入力軸12に接続されている。また、トルクコンバータ7には、ロックアップクラッチ10が備えられており、このロックアップクラッチ10が後述の油圧制御装置の油圧制御によって係合されると、上記自動変速機1の入力軸11の回転が変速機構2の入力軸12に直接伝達される。
上記変速機構2には、入力軸12(及び中間軸13)上において、プラネタリギヤDPと、プラネタリギヤユニットPUとが備えられている。上記プラネタリギヤDPは、いわゆるダブルピニオンプラネタリギヤで構成されている。つまり、このプラネタリギヤDPは、サンギヤS1、キャリヤCR1、及びリングギヤR1を備えている。また、キャリヤCR1には、サンギヤS1に噛合するピニオンP1及びリングギヤR1に噛合するピニオンP2が備えられ、これらピニオンP1,P2が互いに噛合している。
また、上記プラネタリギヤユニットPUは、いわゆるラビニヨ型プラネタリギヤで構成されている。つまり、このプラネタリギヤユニットPUは、4つの回転要素としてサンギヤS2、サンギヤS3、キャリヤCR2(CR3)、及びリングギヤR3(R2)を備えている。また、キャリヤCR2には、サンギヤS2及びリングギヤR3に噛合するロングピニオンP4と、このロングピニオンP4及びサンギヤS3に噛合するショートピニオンP3とが備えられ、これらピニオンP4,P3が互いに噛合している。
上記プラネタリギヤDPのサンギヤS1は、例えばミッションケース3に一体的に固定されているオイルポンプボディ3aから延設されたボス部3bに接続されて回転が固定されている。また、上記キャリヤCR1は、上記入力軸12に接続されて、この入力軸12の回転と同回転(以下、「入力回転」という)になっていると共に、第4クラッチC−4(摩擦係合要素)に接続されている。更に、リングギヤR1は、固定された上記サンギヤS1と上記入力回転するキャリヤCR1とにより、入力回転が減速された減速回転になると共に、第1クラッチC−1(摩擦係合要素)及び第3クラッチC−3(摩擦係合要素)に接続されている。
上記プラネタリギヤユニットPUのサンギヤS2は、係止手段としての第1ブレーキB−1(摩擦係合要素)に接続されてミッションケース3に対して固定自在となっていると共に、上記第4クラッチC−4及び上記第3クラッチC−3に接続されて、第4クラッチC−4を介して上記キャリヤCR1の入力回転が、第3クラッチC−3を介して上記リングギヤR1の減速回転が、それぞれ入力自在となっている。また、上記サンギヤS3は、第1クラッチC−1に接続されており、上記リングギヤR1の減速回転が入力自在となっている。
更に、上記キャリヤCR2は、中間軸13を介して入力軸12の回転が入力される第2クラッチC−2(摩擦係合要素)に接続されて、この第2クラッチC−2を介して入力回転が入力自在となっており、また、係止手段としてのワンウェイクラッチF−1及び第2ブレーキB−2(摩擦係合要素)に接続されて、このワンウェイクラッチF−1を介してミッションケース3に対して一方向の回転が規制されると共に、第2ブレーキB−2を介して回転が固定自在となっている。そして、上記リングギヤR3は、図示しない駆動車輪に回転を出力する出力軸15に接続されている。
上記のように構成された自動変速機1は、図2に示す作動表(係合表)のように前進1速段(1ST)〜前進8速段(8TH)及び後進段(REV)において、各クラッチC−1〜C−4、ブレーキB−1,B−2、ワンウェイクラッチF−1が作動することにより、良好なステップ比をもって変速段のギヤ比を形成する。また、これらの各クラッチC−1〜C−4、ブレーキB−1,B−2同士を掴み換えすることで各変速制御が実行され、各変速段において前進1速段(1ST)の駆動時を除き、各クラッチC−1〜C−4、ブレーキB−1,B−2のうちの2つが係合されて各変速段が達成される。なお、これら前進1速段(1ST)〜前進8速段(8TH)及び後進段(REV)において3つ以上のクラッチやブレーキが係合されると、自動変速機1内においてタイアップが生じ、ストール状態となる虞があるが、詳しくは後述する油圧制御装置20により、3つ以上のクラッチやブレーキの係合は防止されるようになっている。
−油圧制御装置の全体構成−
次に、本実施形態に係る自動変速機1の油圧制御装置20について、図3を参照して説明する。なお、本実施の形態においては、スプールの切換え位置或いはコントロール位置を説明するために、図3中に示す右半分の状態を「右半位置」、左半分の状態を「左半位置」と呼ぶこととする。
次に、本実施形態に係る自動変速機1の油圧制御装置20について、図3を参照して説明する。なお、本実施の形態においては、スプールの切換え位置或いはコントロール位置を説明するために、図3中に示す右半分の状態を「右半位置」、左半分の状態を「左半位置」と呼ぶこととする。
油圧制御装置20は、主に各種の元圧となる油圧を調圧・生成するための不図示のストレーナ、オイルポンプ、プライマリレギュレータバルブ、セカンダリレギュレータバルブ、ソレノイドモジュレータバルブ、及びリニアソレノイドバルブ等を備えている。なお、本実施の形態では、上記オイルポンプ及びプライマリレギュレータバルブを合わせ、ライン圧PLを発生するライン圧発生源(元圧発生源)5として図示している(図3参照)。
また、油圧制御装置20は、図3に示すように、電気的に油圧を制御して供給するためのリニアソレノイドバルブ(係合圧ソレノイドバルブ)SL1、リニアソレノイドバルブ(係合圧ソレノイドバルブ)SL2、リニアソレノイドバルブ(係合圧ソレノイドバルブ)SL3、リニアソレノイドバルブ(係合圧ソレノイドバルブ)SL4、リニアソレノイドバルブ(係合圧ソレノイドバルブ)SL5、第1ソレノイドバルブS1、第2ソレノイドバルブS2、第3ソレノイドバルブ(元圧切換え用ソレノイドバルブ)S3、第4ソレノイドバルブ(フェール用ソレノイドバルブ)S4を備えている。さらに、パーキング切換えバルブ32、パーキングシリンダ33、元圧切換えバルブ37、フェール時切換えバルブ35、振分け切換えバルブ36、チェックボールバルブ(シャトル弁)38、フェールセーフバルブ(同時係合信号切換えバルブ)30を備えている。
なお、油圧制御装置20における第4ソレノイドバルブS4以外のソレノイドバルブ、即ちリニアソレノイドバルブSL1〜SL5、並びに第1、第2、第3のソレノイドバルブS1,S2,S3は、非通電時(以下、「オフ」ともいう)に入力ポートと出力ポートとを遮断し、通電時(以下、「オン」ともいう)に連通する、いわゆるノーマルクローズ(N/C)タイプのものが用いられている。反対に第4ソレノイドバルブS4には、非通電時(オフ時)に入力ポートと出力ポートとを連通し、通電時(オン時)に遮断するノーマルオープン(N/O)タイプのものが用いられている。
そして、油圧制御装置20には、上記リニアソレノイドバルブSL1〜SL5によりそれぞれ調圧されて供給される係合圧に基づき、上記第1クラッチC−1を係脱し得る油圧サーボ51、上記第2クラッチC−2を係脱し得る油圧サーボ52、上記第3クラッチC−3を係脱し得る油圧サーボ53、上記第4クラッチC−4を係脱し得る油圧サーボ54、上記第1ブレーキB−1を係脱し得る油圧サーボ61、上記第2ブレーキB−2を係脱し得る油圧サーボ62が備えられて構成されている。
−油圧制御装置の詳細な構成−
図3に示すように、ノーマルクローズ(N/C)タイプの上記第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2は、入力ポートS1a,S2aにそれぞれ油路a,a2及び油路a3を介してライン圧PL(元圧)が入力されており、通電された(オンした)際に出力ポートS1b,S2bからパーキング切換えバルブ32の第1及び第2作動油室32a,32cに、油路b、b1及び油路cを介してそれぞれ信号圧PS1,PS2を出力するように構成されている。出力ポートS1bからの信号圧PS1は、油路b,b2を介して後述の振分け切換えバルブ36の第1作動油室36aにも入力される。また、上記ライン圧PLは、油路a,a1を介してパーキング切換えバルブ32の入力ポート32bと、油路a,a1,a4,a5,a6を介して後述の元圧切換えバルブ37の入力ポート37bにも入力される。さらに、上記ライン圧PLは、油路a,a1,a4,a5,a7を介して第3ソレノイドバルブS3の入力ポートS3aと、油路a,a1,a4,a15,a16を介して第4ソレノイドバルブS4の入力ポートS4aと、油路a,a1,a4,a15,a17を介して後述の振分け切換えバルブ36の作動油室36cと、油路a,a1,a4,a15,a18を介して後述のフェール時切換えバルブ35の入力ポート35fにも入力される。なお、第1,第2,第3,及び第4ソレノイドバルブS1,S2,S3,S4とそれらの信号圧とは、上記のように同じ符号S1,S2,S3,S4を用いて説明する。また、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5とそれらの係合圧とについても、同じ符号SL1〜SL5を用いて説明する。他のバルブについても同様とする。
図3に示すように、ノーマルクローズ(N/C)タイプの上記第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2は、入力ポートS1a,S2aにそれぞれ油路a,a2及び油路a3を介してライン圧PL(元圧)が入力されており、通電された(オンした)際に出力ポートS1b,S2bからパーキング切換えバルブ32の第1及び第2作動油室32a,32cに、油路b、b1及び油路cを介してそれぞれ信号圧PS1,PS2を出力するように構成されている。出力ポートS1bからの信号圧PS1は、油路b,b2を介して後述の振分け切換えバルブ36の第1作動油室36aにも入力される。また、上記ライン圧PLは、油路a,a1を介してパーキング切換えバルブ32の入力ポート32bと、油路a,a1,a4,a5,a6を介して後述の元圧切換えバルブ37の入力ポート37bにも入力される。さらに、上記ライン圧PLは、油路a,a1,a4,a5,a7を介して第3ソレノイドバルブS3の入力ポートS3aと、油路a,a1,a4,a15,a16を介して第4ソレノイドバルブS4の入力ポートS4aと、油路a,a1,a4,a15,a17を介して後述の振分け切換えバルブ36の作動油室36cと、油路a,a1,a4,a15,a18を介して後述のフェール時切換えバルブ35の入力ポート35fにも入力される。なお、第1,第2,第3,及び第4ソレノイドバルブS1,S2,S3,S4とそれらの信号圧とは、上記のように同じ符号S1,S2,S3,S4を用いて説明する。また、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5とそれらの係合圧とについても、同じ符号SL1〜SL5を用いて説明する。他のバルブについても同様とする。
上記パーキング切換えバルブ32は、1本のスプール32pと、このスプール32pの一端側に縮設されてスプール32pを図中上方に付勢するスプリング32sとを有して構成されていると共に、スプール32pの一端に配置されて第1ソレノイドバルブS1の出力ポートS1bからの信号圧PS1が作用する上記第1作動油室32aと、このスプール32pの他端に配置されて第2ソレノイドバルブS2の出力ポートS2bからの信号圧PS2が作用する上記第2作動油室32cとを有している。
さらに、パーキング切換えバルブ32は、排出ポートEXと、ライン圧PLが供給される上記入力ポート32bと、スプール32pの移動に応じて入力ポート32bに連通し又は遮断される出力ポート32dとを有している。この出力ポート32dは、油路m,m1を介してパーキング装置のパーキングシリンダ33に連通している。そして、上記スプール32pは、図中下側の大径ランド部と図中上側の小径ランド部とを有しており、これら大径ランド部と小径ランド部との間には、くびれ部が形成されると共に油室が形成されており、スプール32pがスプリング32sの付勢力に抗して下方に移動した右半位置にあって、上記くびれ部に入力ポート32bから入力されるライン圧PLが作用した際に、上記大径ランド部と小径ランド部との外径差、つまり受圧面積の差によって、スプール32pがスプリング32sの付勢方向と逆方向に、即ち図中の下方にスプリング32sの付勢力よりも強い力で付勢されてロックされて、ライン圧PLをパーキング解除圧として出力ポート32dから出力するように構成されている。なお、この出力ポート32dは、油路m,m2、後述のフェール時切換えバルブ35、油路m3を介して後述のチェックボールバルブ38の入力ポート38cまで導かれるように構成されている。
ここで、図5を参照して、パーキングシリンダ33によって作動するパーキング装置9について説明する。このパーキング装置9は、同図に示すように、パーキングシリンダ33、パーキングロッド23、サポート16、パーキングポール17、パーキングギヤ21を備えている。上記パーキングシリンダ33は、バルブボディ22に接続されており、パーキングロッド23が、その基端側において、軸方向に移動自在となるように貫通配置されている。このパーキングロッド23は、その先端側において軸方向移動自在となるように遊嵌された円錐状のウエッジ24を備えており、ケース(不図示)に固定された鍔部14とウエッジ24との間には、スプリング25が配置されている。上記サポート16は、パーキングロッド23の先端側の下方に配置されており、パーキングポール17との間にウエッジ24が挿脱されるように配置されている。パーキングポール17は、基端側の軸18を中心に上下方向に揺動自在に配置されており、中間部分の上方側には、自動変速機の出力軸(不図示)に固定されたパーキングギヤ21に対して係脱可能な爪部19が突設されている。
上記パーキングシリンダ33は、パーキング切換えバルブ32の出力ポート32dからパーキング解除圧(ライン圧PL)が作用すると、パーキングロッド23がスプリング25の付勢力に抗してパーキングシリンダ33側に移動し、ウエッジ24をサポート16とパーキングポール17との間から離脱させ、このパーキングポール17を下方側に揺動して爪部19をパーキングギヤ21との噛合いから外すことによりパーキング解除状態となるように構成されている。また、パーキング切換えバルブ32からのパーキング解除圧が遮断され、パーキングシリンダ33に作用する油圧がドレーンされると、パーキングロッド23がスプリング25の付勢力によりパーキングポール17側に移動し、ウエッジ24がサポート16とパーキングポール17との間に挿入され、このパーキングポール17を上方側に揺動して爪部19をパーキングギヤ21と噛合わせることによりパーキング状態となる。
また、図3に示すように、上記パーキング切換えバルブ32は、スプール32pが、第1ソレノイドバルブS1の出力ポートS1bからの信号圧PS1が第1作動油室32aに作用しない状態では、スプリング32sの付勢力により図の上方に移動して左半位置となり、出力ポート32dからパーキングシリンダ33へのパーキング解除圧の出力が遮断される。また、このパーキング切換えバルブ32は、第2ソレノイドバルブS2の出力ポートS2bからの信号圧PS2が第2作動油室32cに作用せずに、第1ソレノイドバルブS1の出力ポートS1bからの信号圧PS1が第1作動油室32aに入力される状態、或いは、信号圧PS2が第2作動油室32cに作用せずに、ライン圧PLが入力ポート32bに作用し続けている状態にあっては、スプール32pが図の下方に移動して右半位置となり、出力ポート32dからパーキングシリンダ33にパーキング解除圧が供給される。
一方、ノーマルクローズタイプの上記第3ソレノイドバルブ(元圧切換え用ソレノイドバルブ)S3は、入力ポートS3aに油路a7を介してライン圧PLが入力されており、通電状態(オン)にあっては、このライン圧PLを信号圧(元圧信号圧)PS3として出力ポートS3bから元圧切換えバルブ37の作動在室37aに、油路d、チェックボールバルブ38、油路oを介して出力し、非通電状態(オフ)にあっては、信号圧PS3を遮断するように構成されている。なお、この第3ソレノイドバルブS3からの信号圧PS3は、油路d,d1を介して後述するチェックボールバルブ38の入力ポート38aにも出力し得るように構成されている。
また、上記元圧切換えバルブ37は、スプール37pと、このスプール37pを図の上方に付勢するスプリング37sとを有して構成されていると共に、上記ライン圧発生源5から後述のフェール時切換えバルブ35にライン圧PLを供給する油路a6,a8の間に介在するように配置されており、上記信号圧PS3又は後述するフェールセーフバルブ30からの同時係合信号圧PFSVを、チェックボールバルブ38、油路oを介して入力し得る作動油室37aと、上記ライン圧PLを油路a6を介して入力する入力ポート37bと、左半位置の際に入力ポート37bのライン圧PLを油路a8に出力する出力ポート37cとを有している。上記スプール37pは、作動油室37aに上記信号圧PS3又は同時係合信号圧PFSVが入力された際に図の下方に移動して右半位置(遮断位置)にされ、それ以外はスプリング37sの付勢力により図の上方に移動して左半位置(供給位置)にされる。
ノーマルオープンタイプの上記第4ソレノイドバルブ(フェール用ソレノイドバルブ)S4は、入力ポートS4aに、油路a16を介してライン圧PLが入力されており、非通電状態(オフ)にあっては、このライン圧PLを信号圧(フェール信号圧)PS4として出力ポートS4bからフェール時切換えバルブ35の作動油室35aに油路eを介して出力し、通電状態(オン)にあっては、上記信号圧PS4を遮断するように構成されている。
また、上記フェール時切換えバルブ35は、スプール35pと、このスプール35pを図の上方に付勢するスプリング35sとを有して構成されている。また、このフェール時切換えバルブ35は、上記作動油室35aと、上記パーキング切換えバルブ32の出力ポート32dに油路m,m2を介して接続された入力ポート35bと、上記元圧切換えバルブ37の出力ポート37cに油路a8を介して接続された入力ポート35cと、詳しくは後述するリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の入力ポートSL1a〜SL5aに油路a9を介して接続された出力ポート35dと、後述するリニアソレノイドバルブSL2,SL3の排出ポートSL2c,SL3cに油路f2を介して接続された出力ポート35eとを有している。更に、このフェール時切換えバルブ35は、上記ライン圧PLを油路a18を介して入力する入力ポート35fと、後述のフェールセーフバルブ30の入力ポート30h及び作動油室30iに油路a19を介して接続された出力ポート35gと、後述するチェックボールバルブ38の入力ポート38cに油路m3を介して接続された出力ポート35hと、後述の振分け切換えバルブ36の入力ポート36dに油路fを介して接続された出力ポート35iと、後述の振分け切換えバルブ36の出力ポート36eに油路f1を介して接続された入力ポート35jと、排出ポートEXとを有している。上記スプール35pは、作動油室35aに上記信号圧PS4が入力された際に図の下方に移動して右半位置にされ、それ以外はスプリング35sの付勢力により図の上方に移動して左半位置にされる。
上記振分け切換えバルブ36は、第1スプール36pと、この第1スプール36pを図の下方に付勢するスプリング36sと、第2スプール36qと、これら第1スプール36p及び第2スプール36qとの間に配設されたスプリング36rとを有して構成されている。また、この振分け切換えバルブ36は、第1ソレノイドバルブS1の出力ポートS1bから出力される信号圧PS1を分岐する形で回路b2を介して入力する第1作動油室36aと、リニアソレノイドバルブSL2の出力ポートSL2bから出力される係合圧PSL2を入力する入力ポート36bと、ライン圧PLを油路a17を介して入力する作動油室36cと、ソレノイド・オールオフフェール時にフェール時切換えバルブ35の出力ポート35iから出力される油圧を油路fを介して入力する入力ポート36dとを有している。また、この振分け切換えバルブ36は、第1スプール36pの右半位置にあって入力ポート36dに入力された出力ポート35iからの油圧を上記入力ポート35jに油路f1を介して出力する出力ポート36eと、入力ポート36bに入力されたリニアソレノイドバルブSL2からの係合圧PSL2を第2スプール36qの左半位置にあって油圧サーボ62に油路g3を介して出力する出力ポート36gとを有している。更に、この振分け切換えバルブ36は、上記油路g3に出力された係合圧PSL2を入力して第2スプール36qを左半位置に付勢する作動油室36fと、上記係合圧PSL2を第2スプール36qの右半位置にあって油圧サーボ52に油路g4を介して出力する出力ポート36hと、上記パーキング切換えバルブ32、フェール時切換えバルブ35、及び油路m3を介してパーキング解除圧、又は油路d1を介して第3ソレノイドバルブS3の出力ポートS3bからの信号圧PS3を、チェックボールバルブ38及び油路lを介して入力する第2作動油室36iとを有している。
この振分け切換えバルブ36の第1スプール36p及び第2スプール36qは、第1作動油室36aに出力ポートS1bからの信号圧PS1が入力されない状態で、かつパーキングレンジ以外にあっては、第2作動油室36iにパーキング解除圧(又は信号圧PS3)が入力され、図の上方に移動して右半位置になる。この振分け切換えバルブ36は、第2スプール36qに、図中最下部に形成された小径ランド部と、この小径ランド部の直上方にくびれ部を挟んで形成された大径ランド部とを有しており、このくびれ部の部分に設けられた油室に上記作動油室36cからライン圧PLが入力され得るように構成されている。従って、振分け切換えバルブ36は、スプリング36s,36rの付勢力に抗して第1スプール36p及び第2スプール36qが上方に移動した右半位置になると作動油室36cにライン圧PLが入力されて、上側の大径ランド部と下側の小径ランド部との受圧面積の差に基づき、第1スプール36p及び第2スプール36qが上方にロックされる。
このロック状態において第1作動油室36aに出力ポートS1bからの信号圧PS1が入力されると、この信号圧PS1による付勢力とスプリング36sによる付勢力とが相俟って上記ロックの付勢力に打ち勝つため、第1スプール36p及び第2スプール36qは図の下方に移動(復帰)して左半位置にされる。また、第2スプール36qが左半位置にされた状態でリニアソレノイドバルブSL2から係合圧PSL2が出力され(Rレンジ時、1stのエンジンブレーキ時)、油路g3を介して油圧サーボ62に係合圧PSL2が出力された際は、第1スプール36pと第2スプール36qとの間の作動油室36fに係合圧PSL2が入力され、スプリング36rの付勢力と相俟って、第2作動油室36iのパーキング解除圧に打ち勝って、第2スプール36qが下方でロックされ、この状態で第1ソレノイドバルブS1がオフされて、第1作動油室36aの信号圧PS1が非入力にされても、第1スプール36qだけが上方にされ、第2スプール36qは下方に維持される。
上記チェックボールバルブ(シャトル弁)38は、油路d1を介して第3ソレノイドバルブS3の出力ポートS3bからの信号圧PS3を入力する入力ポート38aと、油路m3を介して上記パーキング切換えバルブ32からのパーキング解除圧を入力する入力ポート38cと、油路lを介して振分け切換えバルブ36の第2作動油室36iに接続される出力ポート38bと、これらの入力ポート38a、入力ポート38c、出力ポート38bの間に介在するチェックボール38gとを有している。このチェックボール38gは、入力ポート38aに入力される信号圧PS3と入力ポート38cに入力されるパーキング解除圧との大きい方に押圧されて転動することで出力ポート38bとの間を連通し、つまり信号圧PS3とパーキング解除圧との大きい方を出力ポート38bから出力するように構成されている。
また、上記チェックボールバルブ38は、油路n2を介して後述する同時係合信号圧PFSVを入力する入力ポート38dと、油路d2を介して上記第3ソレノイドバルブS3の出力ポートS3bからの信号圧PS3を入力する入力ポート38fと、油路oを介して上記元圧切換えバルブ37の作動油室37aに接続される出力ポート38eと、これらの入力ポート38d、入力ポート38f、出力ポート38eの間に介在するチェックボール38hとを有している。このチェックボール38hは、入力ポート38dに入力される同時係合信号圧PFSVと入力ポート38fに入力される信号圧PS3との大きい方に押圧されて転動することで出力ポート38eとの間を連通し、つまり同時係合信号圧PFSVと信号圧PS3との大きい方を出力ポート38eから出力するように構成されている。
一方、上記リニアソレノイドバルブ(係合圧ソレノイドバルブ)SL1は、正常時にあってフェール時切換えバルブ35の出力ポート35dからのライン圧PLを油路a9,a12を介して入力する入力ポートSL1aと、通電された際にライン圧PLを調圧制御して油圧サーボ51に油路i,i1を介して係合圧PSL1として出力すると共に油路i2を介して後述するフェールセーフバルブ30の油室30aに出力する出力ポートSL1bと、主に油圧サーボ51の係合圧PC1をドレーンするための排出ポートEXとを有している。
上記リニアソレノイドバルブ(係合圧ソレノイドバルブ)SL2は、正常時にあってフェール時切換えバルブ35の出力ポート35dからのライン圧PLを油路a9,a10を介して入力する入力ポートSL2aと、通電された際にライン圧PLを調圧制御して、振分け切換えバルブ36の入力ポート36bに油路g,g1を介して出力すると共に油路g2を介して後述するフェールセーフバルブ30の油室30bに出力する出力ポートSL2bと、上記フェール時切換えバルブ35の出力ポート35eに油路f2,f3を介して連通する排出ポートSL2cとを有している。正常時にあって係合圧PSL2を排出する際は、排出ポートSL2cから上記出力ポート35eを介して排出ポートEXからドレーンし、また、後述するソレノイド・オールオフフェール時にあっては、油路f2,f3を介して上記出力ポート35eからライン圧PLが逆入力圧として逆入力される。
上記リニアソレノイドバルブ(係合圧ソレノイドバルブ)SL3は、正常時にあってフェール時切換えバルブ35の出力ポート35dからのライン圧PLを油路a9,a11を介して入力する入力ポートSL3aと、通電された際にライン圧PLを調圧制御して油圧サーボ53に油路h,h1を介して係合圧PSL3として出力すると共に油路h2を介して後述するフェールセーフバルブ30の油室30cに出力する出力ポートSL3bと、上記フェール時切換えバルブ35の出力ポート35eに油路f2,f4を介して連通する排出ポートSL3cとを有している。正常時にあって係合圧PSL3を排出する際は、排出ポートSL3cから上記出力ポート35eを介して排出ポートEXからドレーンし、また、後述するソレノイド・オールオフフェール時にあっては、油路f2,f4を介して上記出力ポート35eからライン圧PLが逆入力圧として逆入力される。
上記リニアソレノイドバルブ(係合圧ソレノイドバルブ)SL4は、正常時にあってフェール時切換えバルブ35の出力ポート35dからのライン圧PLを油路a9,a13を介して入力する入力ポートSL4aと、通電された際にライン圧PLを調圧制御して油圧サーボ54に油路j,j1を介して係合圧PSL4として出力すると共に油路j2を介して後述するフェールセーフバルブ30の油室30dに出力する出力ポートSL4bと、主に油圧サーボ54の係合圧PC4をドレーンするための排出ポートEXとを有している。
上記リニアソレノイドバルブ(係合圧ソレノイドバルブ)SL5は、正常時にあってフェール時切換えバルブ35の出力ポート35dからのライン圧PLを油路a9,a14を介して入力する入力ポートSL5aと、通電された際にライン圧PLを調圧制御して油圧サーボ61に油路k,k1を介して係合圧PSL5として出力すると共に油路k2を介して後述するフェールセーフバルブ30の油室30eに出力する出力ポートSL5bと、主に油圧サーボ61の係合圧PB1をドレーンするための排出ポートEXとを有している。
なお、以上説明した本実施の形態においては、油路f、f1、f2、f3、f4の経路により振分け切換えバルブ36を通過してリニアソレノイドバルブSL2,SL3まで連通される逆入力用油路が構成されている。
そして、本発明の要部となるフェールセーフバルブ(同時係合信号切換えバルブ)30は、図3及び図6に示すように、第1スプール30pと、この第1スプール30pを図の上方に付勢するスプリング(付勢部材)30sと、第2スプール30qとを有して構成されている。また、このフェールセーフバルブ30は、上述のリニアソレノイドバルブSL1の出力ポートSL1bに接続されて係合圧PSL1を入力し得る油室30aと、上述のリニアソレノイドバルブSL2の出力ポートSL2bに接続されて係合圧PSL2を入力し得る油室30bと、上述のリニアソレノイドバルブSL3の出力ポートSL3bに接続されて係合圧PSL3を入力し得る油室30cと、上述のリニアソレノイドバルブSL4の出力ポートSL4bに接続されて係合圧PSL4を入力し得る油室30dと、上述のリニアソレノイドバルブSL5の出力ポートSL5bに接続されて係合圧PSL5を入力し得る油室30eとを備えている。更に、このフェールセーフバルブ30は、油路a19を介してライン圧PLを入力する作動油室(対向油室)30iと、同じく油路a19を介してライン圧PLを入力する入力ポート30hと、第2スプール30qが右半位置の際に入力ポート30hに連通してライン圧PLを同時係合信号圧PFSVとして油路nに出力する出力ポート30gと、同時係合信号圧PFSVを油路n1を介して入力した際に第2スプール30qを下方にロックするロック油室30fとを有している。
上記フェールセーフバルブ30の第1スプール30pは、図6中における上方側のランド部が最も小径で成り、図中下方側になるに連れて段階的にランド部が大径となるように構成されている。即ち、上記5つの油室30a〜30eは、それらのうちの任意の2つの油室における受圧面積の合計がライン圧PLを入力する作動油室30iの受圧面積と等しくなるように構成されており、上記5つの油室30a〜30eのうちの2つに係合圧PSL1〜PSL5が入力された状態では、その2つの係合圧と作動油室30iのライン圧PLとが略釣り合い、かつスプリング30sの付勢力によって第1スプール30pを図の上方に付勢して左半位置を維持する。この際、第2スプール30qは、作動油室30iに入力されるライン圧PLにより図の上方に付勢されており、左半位置(非出力位置)となって、第1スプール30pを図の上方に付勢する。
一方、上記5つの油室30a〜30eのうちの3つ以上に係合圧PSL1〜PSL5が入力されると、それら3つの油室の係合圧の作用に、作動油室30iに入力されるライン圧PLとスプリング30sの付勢力とが打ち負けて、第1スプール30p及び第2スプール30qが右半位置(出力位置)にされる。すると、入力ポート30hに入力されているライン圧PLが、3つのクラッチやブレーキが同時係合しようとしたことを示す同時係合信号圧PFSVとして出力ポート30gから油路n,n1,n2に対して出力される。そして、油路n1を介して同時係合信号圧PFSVがロック油室30fに入力されるため、第2スプール30qは図の下方位置にロックされ、上記5つの油室30a〜30eに係合圧PSL1〜PSL5が入力されなくなって、第1スプール30pがスプリング30sの付勢力により左半位置となっても、第2スプール30qは右半位置に維持されるように構成されている。
−指令系統の構成−
油圧制御装置20においては、図示を省略した2つのECUとして第1コンピュータ(メインECU)と第2コンピュータ(サブECU)とが備えられており、第1コンピュータは、上記第1、第2、第4ソレノイドバルブS1,S2,S4と上記リニアソレノイドバルブSL1〜SL5に接続されることで第1指令系統を構成しており、それら第1、第2、第4ソレノイドバルブS1,S2,S4とリニアソレノイドバルブSL1〜SL5は、第1コンピュータによる第1指令系統により制御される。また、第2コンピュータは、上記第3ソレノイドバルブS3のみに接続されることで第2指令系統を構成しており、第3ソレノイドバルブS3は、第2コンピュータによる第2指令系統により制御される。これら第1指令系統と第2指令系統は、別系統に構成され、電気的(配線、信号の送受信等)に隔離されており、つまり、一方に問題が生じても他方に及ばないように構成されている。
油圧制御装置20においては、図示を省略した2つのECUとして第1コンピュータ(メインECU)と第2コンピュータ(サブECU)とが備えられており、第1コンピュータは、上記第1、第2、第4ソレノイドバルブS1,S2,S4と上記リニアソレノイドバルブSL1〜SL5に接続されることで第1指令系統を構成しており、それら第1、第2、第4ソレノイドバルブS1,S2,S4とリニアソレノイドバルブSL1〜SL5は、第1コンピュータによる第1指令系統により制御される。また、第2コンピュータは、上記第3ソレノイドバルブS3のみに接続されることで第2指令系統を構成しており、第3ソレノイドバルブS3は、第2コンピュータによる第2指令系統により制御される。これら第1指令系統と第2指令系統は、別系統に構成され、電気的(配線、信号の送受信等)に隔離されており、つまり、一方に問題が生じても他方に及ばないように構成されている。
即ち、第1コンピュータを含む第1指令系統は正常時に用いられ、正常時にあってはシフトレバーの操作入力に基づき、シフトレンジや各変速段の変速制御等を実行し、この第1コンピュータのダウン、第1指令系統の配線の断線やコネクタの脱落等に起因する第1指令系統のフェール時には、このフェールと無関係に第2コンピュータの第2指令系統が駆動し、シフトレバーの選択操作に基づき第3ソレノイドバルブS3を用いたフェールセーフ制御を行い得るように構成されている。
−正常状態における作用−
次に、以上説明した油圧制御装置20の正常状態における作用について、図3及び図4を参照しつつ説明する。
次に、以上説明した油圧制御装置20の正常状態における作用について、図3及び図4を参照しつつ説明する。
(Pレンジ)
例えば運転者のシフトレバー(不図示)の操作に基づくPレンジ(非走行レンジ、パーキングレンジ)においては、図3及び図4に示すように、第1ソレノイドバルブS1がオフされて出力ポートS1bから信号圧PS1が出力されず、第2及び第4ソレノイドバルブS2,S4がオンされて、第2ソレノイドバルブS2の出力ポートS2bから信号圧PS2が出力され、ノーマルオープンタイプである第4ソレノイドバルブS4の出力ポートS4bからは信号圧PS4が出力されない状態となる。
例えば運転者のシフトレバー(不図示)の操作に基づくPレンジ(非走行レンジ、パーキングレンジ)においては、図3及び図4に示すように、第1ソレノイドバルブS1がオフされて出力ポートS1bから信号圧PS1が出力されず、第2及び第4ソレノイドバルブS2,S4がオンされて、第2ソレノイドバルブS2の出力ポートS2bから信号圧PS2が出力され、ノーマルオープンタイプである第4ソレノイドバルブS4の出力ポートS4bからは信号圧PS4が出力されない状態となる。
このPレンジの状態では、パーキング切換えバルブ32において、第1作動油室32aに信号圧PS1が作用されず、第2作動油室32cに信号圧PS2が作用するため、スプリング32sの付勢力と相俟ってスプール32pが左半位置となり、入力ポート32bにおいてライン圧PLが遮断される。このため、パーキングシリンダ33がパーキング切換えバルブ32からのパーキング解除圧が遮断されて、パーキングロッド23がスプリング25の付勢力によりパーキングポール17側に移動することで、ウエッジ24がサポート16とパーキングポール17との間に挿入されて、爪部19がパーキングギヤ21に噛合うことでパーキング状態となる。
また、第3ソレノイドバルブS3は、オフされたままとなり、つまり何れの制御も行われない。これにより、上記元圧切換えバルブ37は、スプリング37sの付勢力によって左半位置のままに維持されており、油路a6を介して入力ポート37bに入力されているライン圧PLを出力ポート37cから油路a8を介してフェール時切換えバルブ35の入力ポート35cに出力する。
また、第4ソレノイドバルブS4がオンされることで、フェール時切換えバルブ35は、その作動油室35aに出力ポートS4bからの信号圧PS4が作用されず、スプール35pが左半位置となるため、入力ポート35cに作用するライン圧PLは、出力ポート35dからリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力されるが、これらリニアソレノイドバルブSL1〜SL5は何れもオフ状態であるため、係合圧PSL1〜PSL5は出力されない。
(Rレンジ)
続いて、シフトレバーがRレンジ(リバースレンジ)に操作されると、第1ソレノイドバルブS1がオンされて出力ポートS1bから信号圧PS1が出力されることにより、パーキング切換えバルブ32では、第1作動油室32aに信号圧PS1が作用されるため、スプリング32sの付勢力に抗してスプール32pが右半位置となり、入力ポート32bのライン圧PLが出力ポート32dからパーキング解除圧として出力される。このため、パーキングロッド23がスプリング25の付勢力に抗してパーキングシリンダ33側に移動し、ウエッジ24をサポート16とパーキングポール17との間から離脱させて、爪部19をパーキングギヤ21との噛合いから外すことでパーキング解除状態となる。そして、スプール32pが右半位置になったパーキング切換えバルブ32は、大径ランド部と小径ランド部との受圧面積の差によって右半位置にロックされる。なお、ここでオンされた第1ソレノイドバルブS1は、例えば数秒程度の所定時間の経過後にオフしても構わない。
続いて、シフトレバーがRレンジ(リバースレンジ)に操作されると、第1ソレノイドバルブS1がオンされて出力ポートS1bから信号圧PS1が出力されることにより、パーキング切換えバルブ32では、第1作動油室32aに信号圧PS1が作用されるため、スプリング32sの付勢力に抗してスプール32pが右半位置となり、入力ポート32bのライン圧PLが出力ポート32dからパーキング解除圧として出力される。このため、パーキングロッド23がスプリング25の付勢力に抗してパーキングシリンダ33側に移動し、ウエッジ24をサポート16とパーキングポール17との間から離脱させて、爪部19をパーキングギヤ21との噛合いから外すことでパーキング解除状態となる。そして、スプール32pが右半位置になったパーキング切換えバルブ32は、大径ランド部と小径ランド部との受圧面積の差によって右半位置にロックされる。なお、ここでオンされた第1ソレノイドバルブS1は、例えば数秒程度の所定時間の経過後にオフしても構わない。
また、上述した通り、第3ソレノイドバルブS3はオフされ、かつ第4ソレノイドバルブS4がオンされたままであり、元圧切換えバルブ37はその作動油室37aに出力ポートS3bからの信号圧PS3が作用されず、スプール37pが左半位置となるため、入力ポート37bに作用するライン圧PLは、出力ポート37cからフェール時切換えバルブ35の入力ポート35cに向けて出力され、一方のフェール時切換えバルブ35は、その作動油室35aに出力ポートS4bからの信号圧PS4が作用されず、スプール35pが左半位置となるため、入力ポート35cに作用するライン圧PLは、出力ポート35dからリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力される。
そして、リニアソレノイドバルブSL2,SL4がオンされるため、出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ36の入力ポート36bに係合圧PSL2が出力されるが、第1ソレノイドバルブS1がオンされることで信号圧PS1が振分け切換えバルブ36の第1作動油室36aに出力され、第1スプール36p及び第2スプール36qが左半位置になっていることで、上記係合圧PSL2は、上記入力ポート36bから出力ポート36gを介して油圧サーボ62に供給され、これにより、第2ブレーキB−2が係止される。同時に、上記リニアソレノイドバルブSL4のオン作動により、フェール時切換えバルブ35の出力ポート35dからのライン圧PLが、出力ポートSL4bから油圧サーボ54に係合圧PSL4として調圧出力され、第4クラッチC−4が係合される。従って、上記第2ブレーキB−2の係止と相俟って、後進段が達成される。なお、この状態においてフェールセーフバルブ30にあっては、油室30bに係合圧PSL2と油室30dに係合圧PSL4とが入力されるが、作動油室30iに作用するライン圧PLとスプリング30sの付勢力とによって左半位置が維持され、同時係合信号圧PFSVが出力されることはない。
(Nレンジ)
さらに、シフトレバーがNレンジ(ニュートラルレンジ)に操作されると、上記Rレンジのときと同様、第1ソレノイドバルブS1のオンによりパーキング切換えバルブ32が右半位置となることに基づき、パーキング解除状態となる。そして、第3ソレノイドバルブS3はオフされ、第4ソレノイドバルブS4がオンされることで、同様に元圧切換えバルブ37及びフェール時切換えバルブ35は左半位置になり、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに出力される。この際、上記Pレンジ時と同様、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5は何れもオフ状態にされるため、係合圧PSL1〜PSL5は出力されず、従って、ニュートラル状態が達成される。
さらに、シフトレバーがNレンジ(ニュートラルレンジ)に操作されると、上記Rレンジのときと同様、第1ソレノイドバルブS1のオンによりパーキング切換えバルブ32が右半位置となることに基づき、パーキング解除状態となる。そして、第3ソレノイドバルブS3はオフされ、第4ソレノイドバルブS4がオンされることで、同様に元圧切換えバルブ37及びフェール時切換えバルブ35は左半位置になり、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに出力される。この際、上記Pレンジ時と同様、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5は何れもオフ状態にされるため、係合圧PSL1〜PSL5は出力されず、従って、ニュートラル状態が達成される。
(前進1速段)
そして、シフトレバーがDレンジ(ドライブレンジ)にある前進レンジ時の前進1速段(前進発進時)においては、第1ソレノイドバルブS1がオフされて出力ポートS1bから信号圧PS1が出力されなくなるが、上述のようにパーキング切換えバルブ32は大径ランド部と小径ランド部との受圧面積の差によって右半位置にロックされているのでパーキング解除状態となっている。
そして、シフトレバーがDレンジ(ドライブレンジ)にある前進レンジ時の前進1速段(前進発進時)においては、第1ソレノイドバルブS1がオフされて出力ポートS1bから信号圧PS1が出力されなくなるが、上述のようにパーキング切換えバルブ32は大径ランド部と小径ランド部との受圧面積の差によって右半位置にロックされているのでパーキング解除状態となっている。
さらに同様に、第3ソレノイドバルブS3はオフされ、第4ソレノイドバルブS4がオンされることで、同様に元圧切換えバルブ37及びフェール時切換えバルブ35は左半位置であり、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに出力されている。ここで、リニアソレノイドバルブSL1がオンするため、その出力ポートSL1bから第1クラッチC−1に係合圧PSL1が供給されてクラッチC−1が係合し、ワンウェイクラッチF−1の係止と相俟って、前進1速段が達成される。なお、この状態においてフェールセーフバルブ30にあっては、油室30aに係合圧PSL1が入力されるが、作動油室30iに作用するライン圧PLとスプリング30sの付勢力とによって左半位置が維持され、同時係合信号圧PFSVが出力されることはない。
また、前進1速段のエンジンブレーキ時においては、前進レンジ時の前進1速段時と同様、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力される状態であり、この状態においてリニアソレノイドバルブSL1,SL2の双方がオンされる。このため、リニアソレノイドバルブSL1にあっては、その出力ポートSL1bから油圧サーボ51に係合圧PSL1を供給して第1クラッチC−1を係合させる。
また、リニアソレノイドバルブSL2にあっては、その出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ36の入力ポート36bに係合圧PSL2を出力するが、このとき振分け切換えバルブ36は、上述のように油路m,m2、フェール時切換えバルブ35、油路m3、チェックボールバルブ38を介して第2作動油室36iにパーキング解除圧が入力されるが、第1ソレノイドバルブS1がオンされて、第1作動油室36aに油路b,b2を介して第1ソレノイドバルブS1から信号圧PS1が入力されることで左半位置にされる。このため、上記係合圧PSL2は、上記入力ポート36bから出力ポート36gを介して油圧サーボ62に供給されて、第2ブレーキB−2が係止される。これにより、第1クラッチC−1の係合と相俟って、前進1速段のエンジンブレーキが達成される。なお、この状態においてフェールセーフバルブ30にあっては、油室30aに係合圧PSL1と油室30bに係合圧PSL2とが入力されるが、作動油室30iに作用するライン圧PLとスプリング30sの付勢力とによって左半位置が維持され、同時係合信号圧PFSVが出力されることはない。
(前進2速段)
Dレンジにある前進2速段においては、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がそれぞれオフされて出力ポートS1b,S2bの双方から信号圧PS1,PS2が出力されない状態にて、上述のようにパーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることで、パーキング解除状態となっている。さらに同様に、第3ソレノイドバルブS3はオフされ、第4ソレノイドバルブS4がオンされることで、同様に元圧切換えバルブ37及びフェール時切換えバルブ35は左半位置であり、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに出力されている。
Dレンジにある前進2速段においては、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がそれぞれオフされて出力ポートS1b,S2bの双方から信号圧PS1,PS2が出力されない状態にて、上述のようにパーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることで、パーキング解除状態となっている。さらに同様に、第3ソレノイドバルブS3はオフされ、第4ソレノイドバルブS4がオンされることで、同様に元圧切換えバルブ37及びフェール時切換えバルブ35は左半位置であり、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに出力されている。
ここで、リニアソレノイドバルブSL1,SL5がオンされるため、リニアソレノイドバルブSL1にあっては、その出力ポートSL1bから油圧サーボ51に係合圧PSL1が供給されて第1クラッチC−1が係合し、またリニアソレノイドバルブSL5にあっては、その出力ポートSL5bから油圧サーボ61に係合圧PSL5が供給されて第1ブレーキB−1が係止され、これにより、前進2速段が達成される。なお、この状態においてフェールセーフバルブ30にあっては、油室30aに係合圧PSL1と油室30eに係合圧PSL5とが入力されるが、作動油室30iに作用するライン圧PLとスプリング30sの付勢力とによって左半位置が維持され、同時係合信号圧PFSVが出力されることはない。
(前進3速段)
Dレンジにある前進3速段においては、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がオフされた状態にて、パーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることで、パーキング解除状態となっている。また、第3ソレノイドバルブS3はオフされ、第4ソレノイドバルブS4がオンされることで、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力される。
Dレンジにある前進3速段においては、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がオフされた状態にて、パーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることで、パーキング解除状態となっている。また、第3ソレノイドバルブS3はオフされ、第4ソレノイドバルブS4がオンされることで、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力される。
ここで、リニアソレノイドバルブSL1,SL3がオンされるため、リニアソレノイドバルブSL1にあっては、その出力ポートSL1bから油圧サーボ51に係合圧PSL1が供給されて第1クラッチC−1が係合し、またリニアソレノイドバルブSL3にあっては、その出力ポートSL3bから油圧サーボ53に係合圧PSL3が供給されて第3クラッチC−3が係止され、これにより、前進3速段が達成される。なお、この状態においてフェールセーフバルブ30にあっては、油室30aに係合圧PSL1と油室30cに係合圧PSL3とが入力されるが、作動油室30iに作用するライン圧PLとスプリング30sの付勢力とによって左半位置が維持され、同時係合信号圧PFSVが出力されることはない。
(前進4速段)
Dレンジにある前進4速段においては、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がオフされた状態にて、パーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることで、パーキング解除状態となっている。また、第3ソレノイドバルブS3はオフされ、第4ソレノイドバルブS4がオンされることで、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力される。
Dレンジにある前進4速段においては、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がオフされた状態にて、パーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることで、パーキング解除状態となっている。また、第3ソレノイドバルブS3はオフされ、第4ソレノイドバルブS4がオンされることで、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力される。
ここで、リニアソレノイドバルブSL1,SL4がオンされるため、リニアソレノイドバルブSL1にあっては、その出力ポートSL1bから油圧サーボ51に係合圧PSL1が供給されて第1クラッチC−1が係合し、またリニアソレノイドバルブSL4にあっては、その出力ポートSL4bから油圧サーボ54に係合圧PSL4が供給されて第4クラッチC−4が係止され、これにより、前進4速段が達成される。なお、この状態においてフェールセーフバルブ30にあっては、油室30aに係合圧PSL1と油室30dに係合圧PSL4とが入力されるが、作動油室30iに作用するライン圧PLとスプリング30sの付勢力とによって左半位置が維持され、同時係合信号圧PFSVが出力されることはない。
(前進5速段)
Dレンジにある前進5速段においては、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がオフされた状態にて、パーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることで、パーキング解除状態となっている。また、第3ソレノイドバルブS3はオフされ、第4ソレノイドバルブS4がオンされることで、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力される。
Dレンジにある前進5速段においては、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がオフされた状態にて、パーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることで、パーキング解除状態となっている。また、第3ソレノイドバルブS3はオフされ、第4ソレノイドバルブS4がオンされることで、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力される。
ここで、リニアソレノイドバルブSL1,SL2がオンされるため、リニアソレノイドバルブSL1にあっては、その出力ポートSL1bから油圧サーボ51に係合圧PSL1が供給されて第1クラッチC−1が係合する。また、リニアソレノイドバルブSL2にあっては、その出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ36の入力ポート36bに係合圧PSL2を出力するが、このとき振分け切換えバルブ36は、チェックボールバルブ38を介してパーキング解除圧が油室36iに入力されることで右半位置に切換えられており、かつ作動油室36cに入力されたロック圧(ライン圧PL)により右半位置にロックされているため、上記係合圧PSL2は、上記入力ポート36bから出力ポート36hを介して油圧サーボ52に供給されて、第2クラッチC−2が係合される。これにより、上記第1クラッチC−1の係合と相俟って、前進5速段が達成される。なお、この状態においてフェールセーフバルブ30にあっては、油室30aに係合圧PSL1と油室30bに係合圧PSL2とが入力されるが、作動油室30iに作用するライン圧PLとスプリング30sの付勢力とによって左半位置が維持され、同時係合信号圧PFSVが出力されることはない。
(前進6速段)
Dレンジにある前進6速段においては、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がオフされた状態にて、パーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることで、パーキング解除状態となっている。また、第3ソレノイドバルブS3はオフされ、第4ソレノイドバルブS4がオンされることで、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力される。
Dレンジにある前進6速段においては、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がオフされた状態にて、パーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることで、パーキング解除状態となっている。また、第3ソレノイドバルブS3はオフされ、第4ソレノイドバルブS4がオンされることで、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力される。
ここで、リニアソレノイドバルブSL2,SL4がオンされるため、リニアソレノイドバルブSL4にあっては、その出力ポートSL4bから油圧サーボ54に係合圧PSL4を供給し、これにより、第4クラッチC−4が係合される。また、リニアソレノイドバルブSL2にあっては、その出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ36の入力ポート36bに係合圧PSL2を出力するが、この振分け切換えバルブ36は、上記前進5速段の場合と同様に右半位置にロックされているため、上記係合圧PSL2は、入力ポート36bから出力ポート36hを介して油圧サーボ52に供給されて、第2クラッチC−2が係合される。これにより、上記第4クラッチC−4の係合と相俟って、前進6速段が達成される。なお、この状態においてフェールセーフバルブ30にあっては、油室30bに係合圧PSL2と油室30dに係合圧PSL4とが入力されるが、作動油室30iに作用するライン圧PLとスプリング30sの付勢力とによって左半位置が維持され、同時係合信号圧PFSVが出力されることはない。
(前進7速段)
Dレンジにある前進7速段においては、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がオフされた状態にて、パーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることで、パーキング解除状態となっている。また、第3ソレノイドバルブS3はオフされ、第4ソレノイドバルブS4がオンされることで、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力される。
Dレンジにある前進7速段においては、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がオフされた状態にて、パーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることで、パーキング解除状態となっている。また、第3ソレノイドバルブS3はオフされ、第4ソレノイドバルブS4がオンされることで、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力される。
ここで、リニアソレノイドバルブSL2,SL3がオンされるため、リニアソレノイドバルブSL3にあっては、その出力ポートSL3bから油圧サーボ53に係合圧PSL3が供給されて、第3クラッチC−3が係合される。また、リニアソレノイドバルブSL2にあっては、その出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ36の入力ポート36bに係合圧PSL2を出力するが、上記前進5〜6速段の場合と同様に振分け切換えバルブ36が右半位置にロックされているため、この係合圧PSL2が入力ポート36bから出力ポート36hを介して油圧サーボ52に供給されて、第2クラッチC−2が係合される。従って、上記第3クラッチC−3の係合と相俟って、前進7速段が達成される。なお、この状態においてフェールセーフバルブ30にあっては、油室30bに係合圧PSL2と油室30cに係合圧PSL3とが入力されるが、作動油室30iに作用するライン圧PLとスプリング30sの付勢力とによって左半位置が維持され、同時係合信号圧PFSVが出力されることはない。
(前進8速段)
そして、Dレンジにある前進8速段においては、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がオフされた状態にて、パーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることで、パーキング解除状態となっている。また、第3ソレノイドバルブS3はオフされ、第4ソレノイドバルブS4がオンされることで、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力される。
そして、Dレンジにある前進8速段においては、上述と同様、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がオフされた状態にて、パーキング切換えバルブ32が右半位置にロックされることで、パーキング解除状態となっている。また、第3ソレノイドバルブS3はオフされ、第4ソレノイドバルブS4がオンされることで、ライン圧PLがリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の全てに向けて出力される。
ここで、リニアソレノイドバルブSL2,SL5がオンされるため、リニアソレノイドバルブSL5にあっては、その出力ポートSL5bから油圧サーボ61に係合圧PSL5が供給されて、第1ブレーキB−1が係止される。また、リニアソレノイドバルブSL2にあっては、その出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ36の入力ポート36bに係合圧PSL2を出力するが、上記前進5〜7速段の場合と同様に振分け切換えバルブ36が右半位置にロックされているため、係合圧PSL2が入力ポート36bから出力ポート36hを介して油圧サーボ52に供給されて、第2クラッチC−2が係合される。従って、上記第1ブレーキB−1の係止と相俟って、前進8速段が達成される。なお、この状態においてフェールセーフバルブ30にあっては、油室30bに係合圧PSL2と油室30eに係合圧PSL5とが入力されるが、作動油室30iに作用するライン圧PLとスプリング30sの付勢力とによって左半位置が維持され、同時係合信号圧PFSVが出力されることはない。
−ソレノイドバルブ・オールオフフェール発生時の作用−
次に、第1コンピュータ及びその第1指令系統におけるソレノイド・オールオフフェール時について説明する。自動変速機1の油圧制御装置20にあっては、例えば第1コンピュータのダウン、第1指令系統における断線、第1指令系統におけるコネクタ抜け等における故障を検出した際に、第1コンピュータ及びその第1指令系統により制御されるソレノイドバルブS1,S2,S4、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5をオフにするソレノイド・オールオフフェールモードに移行する。なお、この故障の検出手法としては、例えば第1コンピュータにより指令した制御と実際の自動変速機1における動作が異なる場合(例えば指令した変速段と実際のギヤ比が異なる場合)等が考えられる。また、第1コンピュータ及びその第1指令系統におけるソレノイド・オールオフフェールの発生は、第2コンピュータに伝達されるか、或いは第2コンピュータにより検出されるように構成されているが、ソレノイド・オールオフフェールの発生時点では、第3ソレノイドバルブS3はオフされたままであるものとして説明する。
次に、第1コンピュータ及びその第1指令系統におけるソレノイド・オールオフフェール時について説明する。自動変速機1の油圧制御装置20にあっては、例えば第1コンピュータのダウン、第1指令系統における断線、第1指令系統におけるコネクタ抜け等における故障を検出した際に、第1コンピュータ及びその第1指令系統により制御されるソレノイドバルブS1,S2,S4、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5をオフにするソレノイド・オールオフフェールモードに移行する。なお、この故障の検出手法としては、例えば第1コンピュータにより指令した制御と実際の自動変速機1における動作が異なる場合(例えば指令した変速段と実際のギヤ比が異なる場合)等が考えられる。また、第1コンピュータ及びその第1指令系統におけるソレノイド・オールオフフェールの発生は、第2コンピュータに伝達されるか、或いは第2コンピュータにより検出されるように構成されているが、ソレノイド・オールオフフェールの発生時点では、第3ソレノイドバルブS3はオフされたままであるものとして説明する。
例えば車両が前進レンジで走行中に、第1コンピュータ及びその第1指令系統におけるソレノイド・オールオフフェールが生じると、ソレノイドバルブS1,S2,S4,リニアソレノイドバルブSL1〜SL5がオフされる。すると、ノーマルオープンタイプの第4ソレノイドバルブS4だけから信号圧PS4が出力される状態となり、他のソレノイドバルブは信号圧ないし係合圧の出力を停止するため、特にリニアソレノイドバルブSL2,SL3にあっては、出力ポートSL2b,SL3bと排出ポートSL2c,SL3cとが連通した状態とされる。
この際、フェール時切換えバルブ35にあっては、第4ソレノイドバルブS4の信号圧PS4が作動油室35aに入力され、スプリング35sの付勢力に打ち勝って、スプール35pが右半位置に切換わるため、入力ポート35cに入力されるライン圧PLは出力ポート35iから油路fに出力されて、振分け切換えバルブ36の入力ポート36dに入力される。この際、この振分け切換えバルブ36は、上述のように大径ランド部と小径ランド部との受圧面積の差に基づき作動油室36cに入力されるライン圧PLによって右半位置にロックされているため、入力ポート36dに入力されたライン圧PLは、出力ポート36eから油路f1を介してフェール時切換えバルブ35の入力ポート35jに入力され、出力ポート35e、油路f2,f3,f4を介して、リニアソレノイドバルブSL2,SL3の排出ポートSL2c,SL3cに、それぞれ逆入力圧として入力される。
これにより、排出ポートSL2cから逆入力圧が入力されたリニアソレノイドバルブSL2は、出力ポートSL2bから上記逆入力圧(つまりライン圧PL)を係合圧PSL2として油路g,g1に出力し、振分け切換えバルブ36の入力ポート36bから出力ポート36h、油路g4を介して油圧サーボ52に供給し、これにより、第2クラッチC−2が係合される。同時に、排出ポートSL3cから逆入力圧が入力されたリニアソレノイドバルブSL3は、その出力ポートSL3bから油路h,h1を介して油圧サーボ53に係合圧PSL3として供給するため、これにより、第3クラッチC−3が係合される。従って、上記第2クラッチC−2の係合と相俟って、前進7速段が達成され、いわゆるリンプホームが達成される。
以上のように、車両が前進レンジで走行中に第1指令系統のソレノイド・オールオフフエールが発生した時にあっては、第2クラッチC−2と第3クラッチC−3とが係合された前進7速段とされる。
ただし、前進1速段のエンジンブレーキでの走行中に第1指令系統のソレノイド・オールオフフェールが発生した場合には、第1指令系統のソレノイド・オールオフフェール発生前の時点で第1ソレノイドバルブS1がオンしていたことで、振分け切換えバルブ36の第1作動油室36aに信号圧PS1が入力されていたことから、第1スプール36p及び第2スプール36qは既に左半位置にあり、従って、第1指令系統のソレノイド・オールオフフェール時に第4ソレノイドバルブS4のオフに基づいて入力ポート36dに出力ポート35iからのライン圧PLが作用しても、このライン圧PLは遮断され、従って、リニアソレノイドバルブSL2,SL3に逆入力されることはなく、Nレンジになる。
一方、例えば車両がPレンジにあって、第1指令系統のソレノイド・オールオフフェールが生じると、ノーマルオープンである第4ソレノイドバルブS4だけが信号圧PS4を出力する状態となって、ライン圧PLがフェール時切換えバルブ35の入力ポート35c及び出力ポート35iを介して振分け切換えバルブ36の入力ポート36dに作用する状態となる。しかし、その際、Pレンジにおいては、第1指令系統のソレノイド・オールオフフェール発生前の時点で振分け切換えバルブ36は、スプリング36sの付勢力に基づき第1スプール36p及び第2スプール36qが左半位置にあったため、入力ポート36dに作用するライン圧PLは遮断されて、フェール時切換えバルブ35の入力ポート35jには作用しない。従って、リニアソレノイドバルブSL2,SL3の排出ポートSL2c,SL3cに逆入力圧が入力されることはない。なお、ソレノイド・オールオフフェール発生の時点で、既にパーキング切換えバルブ32は左半位置にあって、パーキングシリンダ33へのライン圧PLが遮断されていたため、パーキング状態が維持される。
このように、車両がPレンジでの第1指令系統のソレノイド・オールオフフェール発生時にあっては、第1〜第4クラッチC−1〜C−4及び第1及び第2ブレーキB−1,B−2の全てが係合も係止もされることがなく、従って、Pレンジが維持される。
また、例えば車両がRレンジにあって、第1指令系統のソレノイド・オールオフフェールが発生すると、同様に、第4ソレノイドバルブS4だけが信号圧PS4を出力する状態となり、ライン圧PLが振分け切換えバルブ36の入力ポート36dに作用する状態となる。しかし、その際、Rレンジにおいても、第1指令系統のソレノイド・オールオフフェール発生前の時点で振分け切換えバルブ36は、第2作動油室36iにパーキング解除圧が入力されるが第1作動油室36aに第1ソレノイドバルブS1の信号圧PS1が入力され、スプリング36sの付勢力に基づき第1スプール36p及び第2スプール36qが左半位置にあったため、入力ポート36dに作用するライン圧PLは遮断される。このため、リニアソレノイドバルブSL2,SL3の排出ポートSL2c,SL3cに逆入力圧が入力されることはない。また、第1指令系統のソレノイド・オールオフフェール発生の前から右半位置にロックされていたパーキング切換えバルブ32のスプール32pは、入力ポート32bにライン圧PLが作用し続けるため右半位置に維持され、従って、パーキング解除状態が維持される。
このように、車両がRレンジでの第1指令系統のソレノイド・オールオフフェール発生時にあっては、第1〜第4クラッチC−1〜C−4及び第1及び第2ブレーキB−1,B−2の全てが係合も係止もされることがなく、従って、Nレンジに移行することになる。
そして、例えば車両がNレンジにあって、第1指令系統のソレノイド・オールオフフェールが発生すると、同様に、第4ソレノイドバルブS4だけが信号圧PS4を出力する状態となり、ライン圧PLが振分け切換えバルブ36の入力ポート36dに作用する状態となるが、その際、Nレンジにおいても、第1指令系統のソレノイド・オールオフフェール発生前の時点で上記Rレンジ時と同様に振分け切換えバルブ36が左半位置にあったため、入力ポート36dに作用するライン圧PLは遮断される。このため、リニアソレノイドバルブSL2,SL3の排出ポートSL2c,SL3cに逆入力圧が入力されることはなく、また、第1指令系統のソレノイド・オールオフフェール発生の前から右半位置にロックされていたパーキング切換えバルブ32のスプール32pは、入力ポート32bにライン圧PLが作用し続けるため右半位置に維持され、従って、パーキング解除状態が維持される。
このように、車両がNレンジでの第1指令系統のソレノイド・オールオフフェール発生時にあっては、第1〜第4クラッチC−1〜C−4及び第1及び第2ブレーキB−1,B−2の全てが係合も係止もされることがなく、従って、Nレンジが維持されることになる。
以上のように、前進1速段のエンジンブレーキの場合を除く前進1速段〜前進8速段の何れにおいて第1指令系統のソレノイド・オールオフフェールが発生した場合であっても、前進7速段を形成して車両の走行を確保することができると共に、車両がPレンジ、Rレンジ、Nレンジ、前進1速段のエンジンブレーキの何れかで第1指令系統のソレノイド・オールオフフェールが発生した場合には、前進7速段を形成することなく、PレンジではPレンジを維持し、RレンジではNレンジに移行させ、NレンジではNレンジを維持し、前進1速段のエンジンブレーキではNレンジに移行させるようにして、車両の走行安全性を確保することができる。
−第2コンピュータによるリンプホーム切換え−
次に、上記第1指令系統のソレノイド・オールオフフェール発生後における第2コンピュータ及びその第2指令系統によるリンプホーム切換え機能について説明する。
次に、上記第1指令系統のソレノイド・オールオフフェール発生後における第2コンピュータ及びその第2指令系統によるリンプホーム切換え機能について説明する。
上述したように車両が前進レンジで走行中(前進1速段のエンジンブレーキ時を除く)に第1指令系統のソレノイド・オールオフフェールが発生した場合、振分け切換えバルブ36が右半位置にあって、逆入力圧が、油路f,f1,f2,f3,f4を介してリニアソレノイドバルブSL2,SL3の排出ポートSL2c,SL3cに、それぞれ逆入力圧として入力され、即ち前進7速段を達成したリンプホーム状態にある。
この状態で例えば運転者によりシフトレバーがNレンジ、Rレンジ、Pレンジの何れかに操作されると、第2コンピュータは、それを受けて第3ソレノイドバルブS3をオンし、第3ソレノイドバルブS3は信号圧PS3を出力する。すると、元圧切換えバルブ37は、チェックボールバルブ38を介して作動油室37aに信号圧PS3を入力し、スプリング37sの付勢力に抗してスプール37pが右半位置に切換えられ、入力ポート37bと出力ポート37cとの間を遮断し、つまり油路a6に供給されているライン圧PLを遮断して、油路a8に対してライン圧PLの供給を停止する。そのため、フェール時切換えバルブ35の入力ポート35cにはライン圧PLが供給されなくなり、つまり逆入力圧の元圧が遮断されて、油路f,f1,f2,f3,f4を介してリニアソレノイドバルブSL2,SL3の排出ポートSL2c,SL3cに逆入力されなくなり、ニュートラル状態を達成することになる(リンプホーム停止状態)。
また、例えばこのニュートラル状態から運転者によりシフトレバーがDレンジに操作されると、第2コンピュータは、それを受けて第3ソレノイドバルブS3をオフし、第3ソレノイドバルブS3は信号圧PS3を非出力にする。すると、元圧切換えバルブ37は、作動油室37aの信号圧PS3が作用しなくなり、スプリング37sの付勢力によってスプール37pが左半位置に切換えられ、入力ポート37bと出力ポート37cとの間が連通され、つまり油路a8に再度ライン圧PLを供給する。これにより、フェール時切換えバルブ35の入力ポート35cに再度ライン圧PLが供給され、逆入力圧が油路f,f1,f2,f3,f4を介してリニアソレノイドバルブSL2,SL3の排出ポートSL2c,SL3cに逆入力されて、前進レンジで走行中の第1指令系統のソレノイド・オールオフフェール発生時と同じ、前進7速段を達成することになる(即ちリンプホーム走行状態)。
一方、例えば車両がRレンジ、Nレンジ、又は前進1速段のエンジンブレーキ時にある際に第1指令系統のソレノイド・オールオフフェールが発生した場合、振分け切換えバルブ36が左半位置にあって、逆入力圧が、油路f,f1の間で遮断されており、リニアソレノイドバルブSL2,SL3の排出ポートSL2c,SL3cに逆入力圧されずにニュートラル状態が達成されている(即ちリンプホーム停止状態)。
この状態で例えば運転者によりシフトレバーがDレンジに操作されると、第2コンピュータは、それを受けて第3ソレノイドバルブS3を一旦オンし、第3ソレノイドバルブS3は信号圧PS3を出力する。すると、この信号圧PS3は、油路d,d1、チェックボールバルブ38、油路lを介して振分け切換えバルブ36の第2作動油室36iに入力される。それにより、この振分け切換えバルブ36のスプール36pは、右半位置に切換えられ、さらに作動油室36cに油路a17を介してライン圧PLが入力されて、スプール36pは右半位置にロックされる。
その後、第2コンピュータは第3ソレノイドバルブS3をオフし、第3ソレノイドバルブS3は信号圧PS3を非出力にする。すると、上述と同様に、元圧切換えバルブ37は、作動油室37aの信号圧PS3が作用しなくなり、スプリング37sの付勢力によってスプール37pが左半位置に切換えられ、入力ポート37bと出力ポート37cとの間が連通され、つまり油路a8に再度ライン圧PLを供給する。これにより、フェール時切換えバルブ35の入力ポート35cに再度ライン圧PLが供給され、逆入力圧が油路f,f1,f2,f3,f4を介してリニアソレノイドバルブSL2,SL3の排出ポートSL2c,SL3cに逆入力されて、前進レンジで走行中の第1指令系統のソレノイド・オールオフフェール発生時と同じ、前進7速段を達成することになる(即ちリンプホーム走行状態)。
また、この状態から例えば運転者によりシフトレバーがNレンジ、Rレンジ、Pレンジの何れかに操作されると、第2コンピュータは、それを受けて第3ソレノイドバルブS3をオンし、第3ソレノイドバルブS3は信号圧PS3を出力する。すると、上述と同様に、元圧切換えバルブ37の作動油室37aに信号圧PS3が入力されてスプリング37sの付勢力に抗してスプール37pが右半位置に切換えられ、入力ポート37bと出力ポート37cとの間を遮断し、つまり油路a6に供給されているライン圧PLを遮断して、油路a8に対してライン圧PLの供給を停止する。そのため、フェール時切換えバルブ35の入力ポート35cにはライン圧PLが供給されなくなり、つまり逆入力圧の元圧が遮断されて、油路f,f1,f2,f3,f4を介してリニアソレノイドバルブSL2,SL3の排出ポートSL2c,SL3cに逆入力されなくなり、ニュートラル状態を達成することになる(即ちリンプホーム停止状態)。
従って、Dレンジにあって第1指令系統のソレノイド・オールオフフェールが発生した場合にあっても、Rレンジ,Nレンジにあって第1指令系統のソレノイド・オールオフフェールが発生した場合にあっても、第2コンピュータ及びその第2指令系統によって、Dレンジにされた際は前進7速段を形成し、Pレンジ,Rレンジ,Nレンジにされた際はニュートラル状態にすることができ、つまり第1指令系統のソレノイド・オールオフフェールの発生後にあっても、第2コンピュータ及びその第2指令系統によって、走行・非走行を切換えるリンプホーム機能を充実させることができる。
なお、第1指令系統のソレノイド・オールオフフェールが発生した後のパーキング切換えバルブ32は、上述したように入力ポート32bから入力されるライン圧PLが作用する限り、右半位置にロックされており、パーキング解除状態にロックされている。また、第2ソレノイドバルブS2は、第1指令系統のソレノイド・オールオフフェールに伴い、オンされることはないが、一旦エンジンを停止してライン圧PLが発生しなくなると、パーキング切換えバルブ32におけるロックが解除されるため、パーキングシリンダ33に油圧が作用しなくなり、パーキング状態とされる。また、一旦エンジンを停止した後は、振分け切換えバルブ36の作動油室36cに対するライン圧PLが一旦途切れるので、振分け切換えバルブ36のロックも解除されて左半位置となる。そして、一旦エンジンを停止した後は、第2指令系統により第3ソレノイドバルブS3がオンされることはなく、振分け切換えバルブ36により逆入力圧が(油路f,f1の間が)遮断された状態に維持され、前進7速段が形成されることはなく、パーキング状態が維持される。
−3要素同時係合時のフェールセーフ制御−
次に、本実施形態の特徴とする動作の一つである3要素同時係合時のフェールセーフ制御について、図7に示す一例に沿って図3及び図6を参照しつつ説明する。
次に、本実施形態の特徴とする動作の一つである3要素同時係合時のフェールセーフ制御について、図7に示す一例に沿って図3及び図6を参照しつつ説明する。
図7に示すように、例えば上述した前進3速段にあって、リニアソレノイドバルブSL1,SL3から係合圧PSL1,PSL3を油圧サーボ51,53に供給している状態では、図3及び図6に示すように、フェールセーフバルブ30において、油室30aに係合圧PSL1が、油室30cに係合圧PSL3がそれぞれ入力されている状態であるが、スプリング30sの付勢力及び作動油室30iのライン圧PLの作用が係合圧PSL1,PSL3に打ち負けることがなく、左半位置に維持されている。
この状態から例えば図7の時点t1において、リニアソレノイドバルブSL4のオン・フェール(係合圧PSL4を出力する故障:オン故障)が発生すると、このリニアソレノイドバルブSL4からの係合圧PSL4が上昇を開始する。そして、時点t2において係合圧PSL4が所定圧(所定油圧指令値)PXとなると、図3及び図6に示すフェールセーフバルブ30は、油室30dに所定圧PXの係合圧PSL4が作用し、油室30aの係合圧PSL1及び油室30cの係合圧PSL3が相俟って、作動油室30iのライン圧PLの作用及びスプリング30sの付勢力が打ち負け、第1スプール30p及び第2スプール30qが右半位置に切換えられる。すると、入力ポート30hに入力されていたライン圧PLが出力ポート30gより、3つの同時係合を示す信号である同時係合信号圧PFSVとして油路nに出力される。なお、この際、油路n1を介してロック油室30fに同時係合信号圧PFSVが入力されるので、第2スプール30qは、右半位置にロックされる。
同時係合信号圧PFSVがフェールセーフバルブ30から出力されると、図3に示すように、この同時係合信号圧PFSVは油路n2を介してチェックボールバルブ38の入力ポート38dに入力され、チェックボール38hを転動させて出力ポート38eから油路oに出力され、上述した元圧切換えバルブ37の作動油室37aに入力される。すると、元圧切換えバルブ37は、スプリング37sの付勢力に抗してスプール37pが右半位置に切換えられ、入力ポート37bと出力ポート37cとの間を遮断し、つまり油路a6に供給されているライン圧PLを遮断して、油路a8に対してライン圧PLの供給を停止する。そのため、フェール時切換えバルブ35の入力ポート35cにはライン圧PLが供給されなくなり、つまり出力ポート35dから油路a9〜a14に対するライン圧PLが遮断され、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5の元圧が全て遮断される形となって、ニュートラル状態を達成することになる。これにより、クラッチC−1、クラッチC−3、クラッチC−4の、3つのクラッチの同時係合が防止され、自動変速機1がストール状態となることが防止される。
なお、このようにニュートラル状態とされると、フェールセーフバルブ30の油室30a,30c,30dに係合圧PSL1,PSL3,PSL4が入力されなくなるが、第2スプール30qは、ロック油室30fの同時係合信号圧PFSVにより右半位置にロックされているので、同時係合信号圧PFSVが途切れることなく出力され、つまり同時係合信号圧PFSVの出力・非出力が繰り返されるハンチングが防止される。
続いて、図7の時点t3となると、第1コンピュータの制御により第4ソレノイドバルブS4がオフされ、信号圧PS4がフェール時切換えバルブ35の作動油室35aに入力されて、このフェール時切換えバルブ35が右半位置に切換えられる。すると、油路a18を介して入力ポート35fに入力されていたライン圧PLを遮断し、出力ポート35g、油路a19にライン圧PLが供給されなくなるので、フェールセーフバルブ30の第2スプール30qの右半位置のロックが解除されると共に同時係合信号圧PFSVの元圧が遮断される形となって、この同時係合信号圧PFSVが出力されなくなる。このため、元圧切換えバルブ37は、スプリング37sの付勢力によりスプール37pが左半位置に切換えられ、油路a8に対するライン圧PLの供給を再開する。これにより、上記リンプホーム時と同様の状態となり、フェール時切換えバルブ35の入力ポート35cに再度ライン圧PLが供給され、逆入力圧が油路f,f1,f2,f3,f4を介してリニアソレノイドバルブSL2,SL3の排出ポートSL2c,SL3cに逆入力されて、前進7速段を達成することになる(即ちリンプホーム走行状態)。
なお、その後は、第2コンピュータにより第3ソレノイドバルブS3をオン・オフ制御することで、上述と同様にリンプホームの切換え、即ち前進7速段の走行状態とニュートラル状態とを切換えることができる。
なお、以上のフェールセーフ制御においては、前進3速段においてリニアソレノイドバルブSL4がオン・フェールした場合を一例として説明したが、勿論、これに限らず、どの変速段であっても、不必要なリニアソレノイドバルブのオン・フェールによって3つ以上の係合圧がフェールセーフバルブ30に入力された場合は、全て同様に同時係合信号圧PFSVが出力され、自動変速機1のストール状態が防止される。また、その後のリンプホームである前進7速段の形成は、どの変速段からも達成可能であることは、言うまでもない。
−フェール判別動作−
次に、本実施形態の特徴とするもう一つの動作であるフェール判別動作(以下、故障判定動作と呼ぶ場合もある)について説明する。このフェール判別動作は、上述した如く3要素同時係合が発生した場合等において、フェール(オン故障やオフ故障)しているリニアソレノイドバルブSL1〜SL5を抽出するための動作である。
次に、本実施形態の特徴とするもう一つの動作であるフェール判別動作(以下、故障判定動作と呼ぶ場合もある)について説明する。このフェール判別動作は、上述した如く3要素同時係合が発生した場合等において、フェール(オン故障やオフ故障)しているリニアソレノイドバルブSL1〜SL5を抽出するための動作である。
以下の説明では、リニアソレノイドバルブSL1,SL3のオフ故障、リニアソレノイドバルブSL2,SL4,SL5のオン故障の何れが発生しているかを判別する場合を例に挙げて説明する。
先ず、図8に、要求変速段と、故障しているリニアソレノイドバルブと、そのリニアソレノイドバルブが故障していることに起因して実際に成立する変速段(以下、実変速段と呼ぶ)との関係を示す。以下、要求変速段と、故障しているリニアソレノイドバルブと、実変速段との関係について具体的に述べる。
要求変速段が後進段(R)であるときには、リニアソレノイドバルブSL1のオフ故障、リニアソレノイドバルブSL3のオフ故障、リニアソレノイドバルブSL2のオン故障、リニアソレノイドバルブSL4のオン故障の何れが発生しても、クラッチC−4及びブレーキB−2が係合されるため後進段は成立する。これに対し、リニアソレノイドバルブSL5のオン故障が発生している場合には、上述した3要素同時係合時のフェールセーフ制御によってニュートラルとなる。
要求変速段がニュートラル(N)であるときには、リニアソレノイドバルブSL1,SL3のオフ故障、リニアソレノイドバルブSL2,SL4,SL5のオン故障の何れが発生しても、係合するクラッチまたはブレーキは1つ以下である(また、クラッチC−1のみが係合することはない:前進1速段のエンジンブレーキ時の状態にはならない)のでニュートラルとなる。
要求変速段が前進1速段(1st)であるときには、リニアソレノイドバルブSL1がオフ故障していると、クラッチC−1が係合されないことでニュートラルとなる。リニアソレノイドバルブSL3がオフ故障してもクラッチC−1は係合可能であるので前進1速段が成立する。リニアソレノイドバルブSL2がオン故障していると、クラッチC−2がクラッチC−1と共に係合されるため、実変速段としては前進5速段となる。リニアソレノイドバルブSL4がオン故障していると、クラッチC−4がクラッチC−1と共に係合されるため、実変速段としては前進4速段となる。リニアソレノイドバルブSL5がオン故障していると、ブレーキB−1がクラッチC−1と共に係合されるため、実変速段としては前進2速段となる。
要求変速段が前進1速段(1st)のエンジンブレーキ時であるときには、リニアソレノイドバルブSL1がオフ故障していると、クラッチC−1が係合されないことで、実変速段としてはニュートラルとなる。リニアソレノイドバルブSL3がオフ故障しても、またリニアソレノイドバルブSL2がオン故障しても、クラッチC−1及びブレーキB−2は共に係合されるので前進1速段(エンジンブレーキ時)が成立する。リニアソレノイドバルブSL4またはリニアソレノイドバルブSL5がオン故障している場合には、上述した3要素同時係合時のフェールセーフ制御によってニュートラルとなる。
要求変速段が前進2速段(2nd)であるときには、リニアソレノイドバルブSL1がオフ故障していると、クラッチC−1が係合できないためニュートラルとなる。また、リニアソレノイドバルブSL3がオフ故障しても、またリニアソレノイドバルブSL5がオン故障しても、クラッチC−1及びブレーキB−1は共に係合されるので前進2速段が成立する。リニアソレノイドバルブSL2またはリニアソレノイドバルブSL4がオン故障している場合には、上述した3要素同時係合時のフェールセーフ制御によってニュートラルとなる。
要求変速段が前進3速段(3rd)であるときには、リニアソレノイドバルブSL1のオフ故障またはリニアソレノイドバルブSL3のオフ故障が発生していると、クラッチC−1及びクラッチC−3の何れかが係合されないことでニュートラルとなる。リニアソレノイドバルブSL2のオン故障、リニアソレノイドバルブSL4のオン故障、リニアソレノイドバルブSL5のオン故障の何れかが発生している場合には、上述した3要素同時係合時のフェールセーフ制御によってニュートラルとなる。
要求変速段が前進4速段(4th)であるときには、リニアソレノイドバルブSL1がオフ故障していると、クラッチC−1が係合されないことでニュートラルとなる。リニアソレノイドバルブSL3のオフ故障や、リニアソレノイドバルブSL4のオン故障が生じていても、クラッチC−1及びブレーキC−4は共に係合されるので前進4速段が成立する。リニアソレノイドバルブSL2のオン故障、リニアソレノイドバルブSL5のオン故障の何れかが発生している場合には、上述した3要素同時係合時のフェールセーフ制御によってニュートラルとなる。
要求変速段が前進5速段(5th)であるときには、リニアソレノイドバルブSL1がオフ故障していると、クラッチC−1が係合されないことでニュートラルとなる。リニアソレノイドバルブSL3のオフ故障や、リニアソレノイドバルブSL2のオン故障が生じていても、クラッチC−1及びクラッチC−2は共に係合されるので前進5速段が成立する。リニアソレノイドバルブSL4のオン故障、リニアソレノイドバルブSL5のオン故障の何れかが発生している場合には、上述した3要素同時係合時のフェールセーフ制御によってニュートラルとなる。
要求変速段が前進6速段(6th)であるときには、リニアソレノイドバルブSL1のオフ故障、リニアソレノイドバルブSL3のオフ故障、リニアソレノイドバルブSL2のオン故障、リニアソレノイドバルブSL4のオン故障の何れが生じていても、クラッチC−2及びクラッチC−4は共に係合されるので前進6速段が成立する。リニアソレノイドバルブSL5のオン故障が発生している場合には、上述した3要素同時係合時のフェールセーフ制御によってニュートラルとなる。
要求変速段が前進7速段(7th)であるときには、リニアソレノイドバルブSL1のオフ故障や、リニアソレノイドバルブSL2のオン故障が生じていても、クラッチC−2及びクラッチC−3は共に係合されるので前進7速段が成立する。リニアソレノイドバルブSL3がオフ故障していると、クラッチC−3が係合されないことでニュートラルとなる。リニアソレノイドバルブSL4のオン故障、リニアソレノイドバルブSL5のオン故障の何れかが発生している場合には、上述した3要素同時係合時のフェールセーフ制御によってニュートラルとなる。
要求変速段が前進8速段(8th)であるときには、リニアソレノイドバルブSL1のオフ故障、リニアソレノイドバルブSL3のオフ故障、リニアソレノイドバルブSL2のオン故障、リニアソレノイドバルブSL5のオン故障の何れが生じていても、クラッチC−2及びブレーキB−1は共に係合されるので前進8速段が成立する。リニアソレノイドバルブSL4のオン故障が発生している場合には、上述した3要素同時係合時のフェールセーフ制御によってニュートラルとなる。
以上のような要求変速段と、故障しているリニアソレノイドバルブと、実変速段との関係を踏まえ、次に、故障しているリニアソレノイドバルブSL1〜SL5を抽出するための故障判定動作の手順について図9のフローチャートに沿って説明する。このフローチャートでは、要求変速段が前進3速段であるときの故障判定動作を例に挙げている。
先ず、上記ECUから要求変速信号として前進3速段が出力された場合に、ステップST1で、自動変速機1がニュートラル状態となったか否かを判定する。つまり、リニアソレノイドバルブSL1とリニアソレノイドバルブSL3との作動によってクラッチC−1及びクラッチC−3のみの係合によって前進3速段(本発明でいう要求変速段)を成立させるべき状況において、これらクラッチのうちの何れかが係合されないことでニュートラル状態となったか否か、または、他のクラッチやブレーキも係合されて上述した3要素同時係合時のフェールセーフ制御によりリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の元圧が全て遮断されてニュートラル状態となったか否かを判定する(故障発生検知手段による要求変速段の成立が不能になったことの認識動作)。尚、このニュートラル状態となったか否かの判定動作として具体的には、上記変速機構2の入力軸12の回転数と出力軸15の回転数数の比から求めてもよいし、変速機構2の各回転部材(例えばクラッチC−3)の回転数から求めるようにしてもよい。
前進3速段が正常に成立しており、このステップST1でNO判定された場合には、本ルーチンを一旦終了する。一方、自動変速機1がニュートラル状態であり、ステップST1でYES判定された場合には、ステップST2に移り、リニアソレノイドバルブSL1,SL3のオフ故障、リニアソレノイドバルブSL2,SL4,SL5のオン故障の何れかが発生しているとし、ステップST3において、要求変速段を前進8速段(本発明でいう故障判別用変速段)とする変速指令信号を出力する(故障判別用変速段指令手段による故障判別用変速段への変速指令動作)。そして、ステップST4で前進8速段が正常に成立したか否かを判定する。この前進8速段が正常に成立したか否かの判定動作も、上述した如く、上記変速機構2の入力軸12の回転数と出力軸15の回転数数の比から求めてもよいし、変速機構2の各回転部材(例えばクラッチC−3)の回転数から求めるようにしてもよい。
前進8速段が正常に成立しており、ステップST4でYES判定された場合には、ステップST5に移って、リニアソレノイドバルブSL1のオフ故障、または、リニアソレノイドバルブSL3のオフ故障が発生していると判定する。つまり、前進8速段が正常に成立したということは、クラッチC−2を作動させるリニアソレノイドバルブSL2及びブレーキB−1を作動させるリニアソレノイドバルブSL5は共に正常であり、且つリニアソレノイドバルブSL4のオン故障は発生していないと判断できる(リニアソレノイドバルブSL4にオン故障が発生しおればニュートラルとなり前進8速段は成立しない)。つまり、リニアソレノイドバルブSL2,SL4,SL5以外のリニアソレノイドバルブSL1,SL3の何れかの故障であると判定できる。
そして、このステップST5では、変速機構2に備えられた回転体の回転数からリニアソレノイドバルブSL1のオフ故障であるのか、リニアソレノイドバルブSL3のオフ故障であるのかを判別する。例えば、上記クラッチC−3の回転数を検出するようにしておき、予め、リニアソレノイドバルブSL1のオフ故障時におけるクラッチC−3の回転数と、リニアソレノイドバルブSL3のオフ故障時におけるクラッチC−3の回転数とをECU等に記憶しておき、それを実際の回転数と比較することで何れのオフ故障であるのかを判別する。
一方、上記ステップST4で前進8速段が成立せずNO判定された場合には、ステップST6に移る。このステップST6では、リニアソレノイドバルブSL2,SL4,SL5のオン故障の何れかが発生しているとし、ステップST7において、第1コンピュータの制御により第4ソレノイドバルブS4への通電をカット(オフ)する。この通電カットにより、上述した3要素同時係合時のフェールセーフ制御でも述べたように、前進7速段を達成するように作動する。つまり、第4ソレノイドバルブS4からの信号圧PS4がフェール時切換えバルブ35の作動油室35aに入力されて、このフェール時切換えバルブ35が右半位置に切換えられる。すると、油路a18を介して入力ポート35fに入力されていたライン圧PLを遮断し、出力ポート35g、油路a19にライン圧PLが供給されなくなるので、フェールセーフバルブ30の第2スプール30qの右半位置のロックが解除されると共に同時係合信号圧PFSVの元圧が遮断される形となって、この同時係合信号圧PFSVが出力されなくなる。このため、元圧切換えバルブ37は、スプリング37sの付勢力によりスプール37pが左半位置に切換えられ、油路a8に対するライン圧PLの供給を再開する。これにより、フェール時切換えバルブ35の入力ポート35cにライン圧PLが供給され、逆入力圧が油路f,f1,f2,f3,f4を介してリニアソレノイドバルブSL2,SL3の排出ポートSL2c,SL3cに逆入力されて、前進7速段を達成するように作動する。
そして、ステップST8で前進7速段が正常に成立したか否かを判定する。この前進7速段が正常に成立したか否かの判定動作も、上述した如く、上記変速機構2の入力軸12の回転数と出力軸15の回転数数の比から求めてもよいし、変速機構2の各回転部材(例えばクラッチC−3)の回転数から求めるようにしてもよい。
前進7速段が成立しておらずステップST8でNO判定された場合には、ステップST9に移って、リニアソレノイドバルブSL2のオン故障が発生していると判定する。つまり、リニアソレノイドバルブSL2の入力ポートSL2aと出力ポートSL2bとが常時連通しており排出ポートSL2cと出力ポートSL2bとが連通しない状態であるオン故障であるために、排出ポートSL2cから出力ポートSL2bへ逆入力がされない状況となっていると判断し、リニアソレノイドバルブSL2のオン故障が発生していると判定する。
前進7速段が成立し、ステップST8でYES判定された場合には、ステップST10に移って、リニアソレノイドバルブSL4のオン故障またはリニアソレノイドバルブSL5のオン故障が発生していると仮判定する。つまり、上記ステップST6において、故障が発生している可能性があるとされたリニアソレノイドバルブSL2,SL4,SL5のオン故障のうち、前進7速段が成立したためにリニアソレノイドバルブSL2のオン故障は生じていないと判断され、残りのリニアソレノイドバルブSL4またはリニアソレノイドバルブSL5のオン故障が発生していると仮判定できる。
そして、このステップST10では、車両が停車した後の再発進時におけるギヤ比(変速段)を認識することで、リニアソレノイドバルブSL4のオン故障であるのか、リニアソレノイドバルブSL5のオン故障であるのかを判別する。具体的には、再発進時の変速段が前進4速段である場合にはリニアソレノイドバルブSL4のオン故障であると判断され、再発進時の変速段が前進2速段である場合にはリニアソレノイドバルブSL5のオン故障であると判断される。つまり、再発進時には、前進1速段を成立させるための変速指令信号が出力されクラッチC−1のみが係合されるが、この場合に実変速段が前進4速段であるということはクラッチC−4も係合されている、つまり、リニアソレノイドバルブSL4のオン故障によってクラッチC−4が係合されていると判断できる。一方、再発進時の実変速段が前進2速段であるということはブレーキB−1も係合されている、つまり、リニアソレノイドバルブSL5のオン故障によってブレーキB−1が係合されていると判断できる。尚、この再発進時における変速段の認識は、上記変速機構2の入力軸12の回転数と出力軸15の回転数数の比から求められる。
以上のようにして、リニアソレノイドバルブSL1,SL3のオフ故障、リニアソレノイドバルブSL2,SL4,SL5のオン故障の何れが発生しているかを判別することが可能である。
このように、本実施形態によれば、要求変速段(上記の場合には前進3速段)の成立が不能になった後に、他の変速段(上記の場合には前進8速段や前進7速段)に切り換えることで、故障している係合圧ソレノイドバルブを判別でき、また、上記他の変速段が成立した場合には、駆動力の伝達が可能になって車両の走行を継続することが可能である。
また、本実施形態に係る油圧制御装置20によれば、フェールセーフバルブ30が所定数(2つ)よりも多い数の係合圧PSL1〜PSL5を入力した際に同時係合信号圧PFSVを出力し、元圧切換えバルブ37がフェールセーフバルブ30からの同時係合信号圧PFSVを入力した際にリニアソレノイドバルブSL1〜SL5への元圧(ライン圧PL)を遮断するので、多数のフェールセーフ弁や多数の油路を必要とせずに、所定数(3つ)以上のクラッチやブレーキの同時係合を防止することができ、かつ油圧制御装置20の小型化を図って車両搭載性を向上することができる。また、係合圧PSL1〜PSL5を油圧サーボに供給する際にフェールセーフ弁を通すことを不要とすることができるので、クラッチやブレーキへの油圧応答性が向上し、変速レスポンスの向上や係合ショックの低減も図ることができる。また、フェールセーフバルブ30は、係合圧PSL1〜PSL5を通過させることなく、各係合圧PSL1〜PSL5を信号として入力するだけで足りるので、例えば油圧サーボへ係合圧PSL1〜PSL5を供給する油路に介在して係合圧PSL1〜PSL5を通過させるように構成されたバルブに比して、バルブ自体の径を小径に構成することができる。
また、フェールセーフバルブ30は、第1スプール30pと、各係合圧PSL1〜PSL5をそれぞれ入力して第1スプール30pに作用させる複数の油室30a〜30eと、ライン圧PLを入力して第1及び第2スプール30p,30qに作用する2つの係合圧PSL1〜PSL5に対向作用する作動油室30iと、第1スプール30pに作用する3つ目の係合圧PSL1〜PSL5に打ち負ける付勢力からなるスプリング30sと、を有しているので、複数の油室30a〜30eに3つ以上の係合圧PSL1〜PSL5が入力された際に同時係合信号圧PFSVを出力する右半位置(出力位置)に切換えられるように構成することができる。
さらに、フェールセーフバルブ30は、同時係合信号圧PFSVの出力により元圧切換えバルブ37がリニアソレノイドバルブSL1〜SL5への元圧(ライン圧PL)を遮断しても、第2スプール30qを右半位置(出力位置)にロックすることができるので、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5からの所定数(3つ)以上の係合圧PSL1〜PSL5が入力されなくなって左半位置(非出力位置)に戻ってしまうようなハンチングが生じることを防止することができる。
また、フェール時切換えバルブ35が、第4ソレノイドバルブS4からの信号圧PS4を入力した際に、フェールセーフバルブ30の同時係合信号圧PFSVの元圧(ライン圧PL)を遮断すると共に、リニアソレノイドバルブSL2、SL3の排出ポートSL2c,SL3cに元圧切換えバルブ37からの元圧(ライン圧PL)を逆入力圧として出力して逆入力させるので、第4ソレノイドバルブS4をオン・オフ制御することで、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5への元圧を遮断した状態(即ちニュートラル状態)から、クラッチC−2,C−3を係合させて前進7速段を形成した走行状態(即ちリンプホーム)に移行することができる。
そして、元圧切換えバルブ37を切換える信号圧PS3を出力し得る第3ソレノイドバルブS3と、信号圧PS3と同時係合信号圧PFSVとの大きい方を元圧切換えバルブ37に出力するチェックボールバルブ38と、を備えているので、正常時には、第3ソレノイドバルブS3の制御により元圧切換えバルブ37の切換えを行うことができるものでありながら、フェールセーフバルブ30が同時係合信号圧PFSVを出力した際には、この同時係合信号圧PFSVにより元圧切換えバルブ37を切換えることを可能とすることができる。
−他の実施形態−
なお、以上説明した本実施の形態においては、本油圧制御装置20を前進8速段、及び後進1速段を可能とする多段式自動変速機1に適用する場合を一例として説明したが、勿論これに限るものではなく、特に所定数の摩擦係合要素を係合して各変速段を形成するような有段式の自動変速機であればどのようなものにも適用できる。具体的には、3つの係合要素を係合して変速段を形成する自動変速機の場合、フェールセーフ弁を、3つの係合圧が入力される3つの油室の合計受圧面積と、ライン圧が入力される作動油室の面積とが釣り合うように設計し、かつ4つ目の係合圧にスプリングが打ち負けるように構成することで、本願発明を同様に適用することができる。
なお、以上説明した本実施の形態においては、本油圧制御装置20を前進8速段、及び後進1速段を可能とする多段式自動変速機1に適用する場合を一例として説明したが、勿論これに限るものではなく、特に所定数の摩擦係合要素を係合して各変速段を形成するような有段式の自動変速機であればどのようなものにも適用できる。具体的には、3つの係合要素を係合して変速段を形成する自動変速機の場合、フェールセーフ弁を、3つの係合圧が入力される3つの油室の合計受圧面積と、ライン圧が入力される作動油室の面積とが釣り合うように設計し、かつ4つ目の係合圧にスプリングが打ち負けるように構成することで、本願発明を同様に適用することができる。
また、本実施の形態においては、クラッチ4つ、ブレーキ2つである自動変速機を一例として説明したが、例えばクラッチ3つ、ブレーキ2つである自動変速機である場合には、フェールセーフ弁における係合圧を入力する油室を1つ分減らすように変更するだけで、同様に本発明を適用することができる。
本発明に係る自動変速機の油圧制御装置は、乗用車、トラック、バス、農機等に搭載される自動変速機に用いることが可能であり、特に各変速段で所定数の摩擦係合要素を係合する多段式の自動変速機にあって、所定数以上の摩擦係合要素が同時係合することを防止することが求められる自動変速機に用いて好適である。
1 自動変速機
20 自動変速機の油圧制御装置
30 フェールセーフバルブ(同時係合信号切換えバルブ)
30a〜30e 油室
30i 作動油室(対向油室)
30p,30q スプール
30s スプリング(付勢部材)
35 フェール時切換えバルブ
37 元圧切換えバルブ
51〜54,61,62 油圧サーボ・
C−1〜C−4 クラッチ(摩擦係合要素)
B−1,B−2 ブレーキ(摩擦係合要素)
PFSV 同時係合信号圧
PL 元圧
SL1〜SL5 リニアソレノイドバルブ(係合圧ソレノイドバルブ)
S4 第4ソレノイドバルブ(フェール用ソレノイドバルブ)
20 自動変速機の油圧制御装置
30 フェールセーフバルブ(同時係合信号切換えバルブ)
30a〜30e 油室
30i 作動油室(対向油室)
30p,30q スプール
30s スプリング(付勢部材)
35 フェール時切換えバルブ
37 元圧切換えバルブ
51〜54,61,62 油圧サーボ・
C−1〜C−4 クラッチ(摩擦係合要素)
B−1,B−2 ブレーキ(摩擦係合要素)
PFSV 同時係合信号圧
PL 元圧
SL1〜SL5 リニアソレノイドバルブ(係合圧ソレノイドバルブ)
S4 第4ソレノイドバルブ(フェール用ソレノイドバルブ)
Claims (7)
- 摩擦係合要素の油圧サーボに供給する係合圧を調圧する複数の係合圧ソレノイドバルブを備え、変速指令信号によって要求されている要求変速段に応じて、上記複数の係合圧ソレノイドバルブのうち所定数の係合圧ソレノイドバルブから係合圧を出力し、所定数の摩擦係合要素の係合により上記要求変速段を成立させる自動変速機の油圧制御装置において、
上記要求変速段の成立が不能になったことを認識する故障発生検知手段と、
上記故障発生検知手段によって要求変速段の成立が不能になったと認識された際、その要求変速段を成立させるために係合すべき摩擦係合要素へ係合圧を出力する係合圧ソレノイドバルブとは異なる係合圧ソレノイドバルブからの係合圧の出力によって成立する変速段を故障判別用変速段として、その変速段への変速指令を行う故障判別用変速段指令手段と、
この故障判別用変速段指令手段からの変速指令に従った故障判別用変速段の成立の有無及び上記故障発生検知手段によって成立が不能になったと認識された上記要求変速段に基づいて何れの係合圧ソレノイドバルブに故障が発生しているかを判別する故障判別手段とを備えていることを特徴とする自動変速機の油圧制御装置。 - 請求項1記載の自動変速機の油圧制御装置において、
上記故障判別手段は、
上記故障発生検知手段によって要求変速段の成立が不能となったと認識された際、この要求変速段を成立させるために係合すべき摩擦係合要素へ係合圧を出力する係合圧ソレノイドバルブのオフ故障またはそれ以外の係合圧ソレノイドバルブのオン故障であると判断し、
更に、上記故障判別用変速段指令手段によって故障判別用変速段への変速指令が行われた際、その故障判別用変速段が成立した場合には、上記要求変速段を成立させるために係合すべき摩擦係合要素へ係合圧を出力する係合圧ソレノイドバルブのオフ故障であると判断し、上記故障判別用変速段が成立しない場合には、それ以外の係合圧ソレノイドバルブのオン故障であると判断するよう構成されていることを特徴とする自動変速機の油圧制御装置。 - 請求項2記載の自動変速機の油圧制御装置において、
上記故障判別手段は、オフ故障である可能性のある係合圧ソレノイドバルブが複数存在する場合、摩擦係合要素の回転数に基づいて何れの係合圧ソレノイドバルブがオフ故障であるかを判別するよう構成されていることを特徴とする自動変速機の油圧制御装置。 - 請求項2または3記載の自動変速機の油圧制御装置において、
上記故障判別手段は、オン故障である可能性のある係合圧ソレノイドバルブが複数存在する場合には、車両の再発進時に成立する変速段に基づいて何れの係合圧ソレノイドバルブがオン故障であるかを判別するよう構成されていることを特徴とする自動変速機の油圧制御装置。 - 請求項1〜4のうち何れか一つに記載の自動変速機の油圧制御装置において、
同時係合信号圧を非出力にする非出力位置から、所定数よりも多い数の係合圧を入力した際に上記同時係合信号圧を出力する出力位置に切換えられる同時係合信号切換えバルブと、
上記複数の係合圧ソレノイドバルブに元圧を供給する供給位置から、上記同時係合信号切換えバルブからの同時係合信号圧を入力した際に上記元圧を遮断する遮断位置に切換えられる元圧切換えバルブとを備え、
上記元圧切換えバルブが上記元圧を遮断する遮断位置に切換えられたことによってニュートラル状態となった場合に、要求変速段の成立が不能となったと判断して、上記故障判別用変速段指令手段が故障判別用変速段への変速指令を行うよう構成されていることを特徴とする自動変速機の油圧制御装置。 - 請求項5記載の自動変速機の油圧制御装置において、
上記自動変速機は、所定の2つの摩擦係合要素が係合することで各変速段を形成してなり、
上記同時係合信号切換えバルブは、スプールと、各係合圧をそれぞれ入力してこのスプールに作用させる複数の油室と、上記元圧を入力してスプールに作用する2つの係合圧に対向作用する対向油室と、上記スプールに作用する3つ目の係合圧に打ち負ける付勢力からなる付勢部材とを有し、上記複数の油室に3つ以上の係合圧が入力された際に上記同時係合信号圧を出力する出力位置に切換えられてなることを特徴とする自動変速機の油圧制御装置。 - 請求項5または6記載の自動変速機の油圧制御装置において、
フェール信号圧を出力し得るフェール用ソレノイドバルブと、
上記フェール用ソレノイドバルブからのフェール信号圧を入力した際に、上記同時係合信号切換えバルブの同時係合信号圧の元圧を遮断すると共に、上記複数の係合圧ソレノイドバルブのうちの2つの排出ポートに上記元圧切換えバルブからの元圧を逆入力圧として出力して逆入力させるフェール時切換えバルブとを備えたことを特徴とする自動変速機の油圧制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009119138A JP2010266026A (ja) | 2009-05-15 | 2009-05-15 | 自動変速機の油圧制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2009119138A JP2010266026A (ja) | 2009-05-15 | 2009-05-15 | 自動変速機の油圧制御装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2010266026A true JP2010266026A (ja) | 2010-11-25 |
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ID=43363166
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JP2009119138A Pending JP2010266026A (ja) | 2009-05-15 | 2009-05-15 | 自動変速機の油圧制御装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2010266026A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012215180A (ja) * | 2011-03-31 | 2012-11-08 | Aisin Aw Co Ltd | 変速装置およびその故障特定方法 |
JP2017150514A (ja) * | 2016-02-22 | 2017-08-31 | トヨタ自動車株式会社 | 車両用自動変速機の制御装置 |
WO2022209384A1 (ja) * | 2021-03-30 | 2022-10-06 | 株式会社アイシン | 車両用駆動装置 |
-
2009
- 2009-05-15 JP JP2009119138A patent/JP2010266026A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012215180A (ja) * | 2011-03-31 | 2012-11-08 | Aisin Aw Co Ltd | 変速装置およびその故障特定方法 |
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WO2022209384A1 (ja) * | 2021-03-30 | 2022-10-06 | 株式会社アイシン | 車両用駆動装置 |
JP7444124B2 (ja) | 2021-03-30 | 2024-03-06 | 株式会社アイシン | 車両用駆動装置 |
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