JP2010254919A - 光反射用熱硬化性樹脂組成物、これを用いた光半導体素子搭載用基板及びその製造方法、並びに光半導体装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 十分な光反射率及び成形加工性を有し、しかも耐熱着色性に優れた光反射用熱硬化性樹脂組成物、それを用いた光半導体素子搭載用基板およびその製造方法、並びに、光半導体装置を提供すること。
【解決手段】 本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、及び白色顔料を含み、エポキシ樹脂として、硬化剤と互いに相溶であり、ポリオルガノシロキサン骨格と2つ以上のエポキシ基とを有する化合物を少なくとも含むことを特徴とする。
【選択図】 なし
【解決手段】 本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、及び白色顔料を含み、エポキシ樹脂として、硬化剤と互いに相溶であり、ポリオルガノシロキサン骨格と2つ以上のエポキシ基とを有する化合物を少なくとも含むことを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
本発明は、光半導体素子と蛍光体等の波長変換手段とを組み合わせた光半導体装置などに用いられる光反射用熱硬化性樹脂組成物、これを用いた光半導体素子搭載用基板及びその製造方法、並びに光半導体装置に関する。
近年、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)等の光半導体素子と蛍光体とを組み合わせた光半導体装置は、高エネルギー効率及び長寿命等の利点から、屋外用ディスプレイ、携帯液晶バックライト、及び車載用途等様々な用途に適用され、その需要が拡大しつつある。
これに伴って、LEDデバイスの高輝度化が進み、素子の発熱量増大によるジャンクション温度の上昇、又は直接的な光エネルギーの増大による素子材料の劣化が問題視され、近年、熱劣化及び光劣化に対して耐性を有する素子材料の開発が課題となっている。
こうした状況下、熱や光に起因する輝度低下の問題を防止する技術として、下記特許文献1には、光半導体素子が搭載される部位に光反射率の高いリフレクターを設けた光半導体素子搭載用基板が提案されている。また、特許文献1には、トランスファー成形によりリフレクターなどを形成することが開示されており、その材料として、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化触媒及び白色顔料などを含有する光反射用熱硬化性樹脂組成物が提案されている。
ところで、LEDパッケージの製造では、光半導体素子搭載用基板と光半導体素子との接続、光半導体素子の樹脂封止、及び基板実装時のはんだリフローなどの高温プロセスを経る。樹脂は酸化劣化すると変色しやすいため、光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いて作製された光半導体素子搭載用基板の場合、LEDパッケージにおける初期の光学特性の確保が困難となる傾向にある。
一方、トランスファー成形に用いられる光反射用熱硬化性樹脂組成物には、金型内への均一な充填を可能とする成形加工性を有していることが求められる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、十分な光反射率及び成形加工性を有し、しかも耐熱着色性に優れた光反射用熱硬化性樹脂組成物、それを用いた光半導体素子搭載用基板およびその製造方法、並びに、光半導体装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討した結果、エポキシ樹脂、硬化剤、及び白色顔料を含む熱硬化性樹脂組成物におけるエポキシ樹脂成分として、特定のエポキシ化合物を配合することにより、光反射率の高い成形体をトランスファー成形により形成することができるとともに、高温での熱処理後における成形体の光反射率の低下を従来よりも小さくすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、及び白色顔料を含み、エポキシ樹脂として、上記硬化剤と互いに相溶であり、ポリオルガノシロキサン骨格と2つ以上のエポキシ基とを有する化合物を少なくとも含むことを特徴とする。
本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、上記構成を有することにより、光反射率、成形加工性及び耐熱着色性に優れたものになり得る。
本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物において、耐熱着色性と成形加工性とを高水準で両立する観点から、上記ポリオルガノシロキサン骨格と2つ以上のエポキシ基とを有する化合物のエポキシ当量が150〜350g/eqであることが好ましい。
また、耐熱着色性と成形加工性とを高水準で両立する観点から、上記ポリオルガノシロキサン骨格と2つ以上のエポキシ基とを有する化合物の数平均分子量が700〜5000であることが好ましい。
更に、耐熱着色性と成形加工性とを高水準で両立する観点から、上記ポリオルガノシロキサン骨格と2つ以上のエポキシ基とを有する化合物の軟化点または融点が0〜150℃であることが好ましい。
また、耐熱着色性と成形加工性とを高水準で両立する観点から、上記ポリオルガノシロキサン骨格と2つ以上のエポキシ基とを有する化合物は、150℃における溶融粘度が1〜1000mPa・sであることが好ましい。
本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物において、上記白色顔料が、酸化チタン、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウムおよび無機中空粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
また、熱硬化性樹脂との混合・混練し易さ、及び、混練後の光反射用熱硬化性樹脂組成物の成形加工性を向上させる観点から、上記白色顔料の中心粒径が0.1〜50μmの範囲内にあることが好ましい。
また、本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物における上記白色顔料の含有量が、樹脂組成物全量を基準として10〜85体積%の範囲内であることが好ましい。
本発明はまた、本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物を備える光半導体素子搭載用基板を提供する。
本発明はまた、底面及び壁面から構成される凹部を有し、当該凹部の底面が光半導体素子の搭載部であり、凹部の壁面の少なくとも一部が、本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる光半導体素子搭載用基板を提供する。
本発明はまた、基板と、当該基板上に設けられた第1の接続端子および第2の接続端子とを備え、第1の接続端子と第2の接続端子との間に、本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物を有する光半導体素子搭載用基板を提供する。
本発明はまた、本発明の光半導体素子搭載用基板と、当該光半導体素子搭載用基板に搭載された光半導体素子とを有する光半導体装置を提供する。
本発明はまた、底面及び壁面から構成される凹部を有する光半導体素子搭載用基板の製造方法であって、凹部の壁面の少なくとも一部を、本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物をトランスファー成形して形成する工程を備える光半導体素子搭載用基板の製造方法を提供する。
本発明の半導体素子搭載用基板の製造方法によれば、本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いる上記工程を備えることにより、リフレクターとして機能できる光反射率が十分高く且つ熱によって光反射率が低下しにくい凹部を成形性よく設けることできる。したがって、本発明の方法により得られる半導体素子搭載用基板によれば、所望の光学特性を有する光半導体装置を製造することが容易となる。
本発明によれば、十分な光反射率及び成形加工性を有し、しかも耐熱着色性に優れた光反射用熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。すなわち、本発明によれば、可視光から近紫外光の波長領域における光反射率が高い硬化物が得られ、且つ、LEDパッケージなどの光半導体装置の製造時や高温環境での使用時に変色の少ない硬化物を得ることが可能な光反射用熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、そのような樹脂組成物を用いることによって、光学特性に優れ、信頼性の高い光半導体素子搭載用基板及び光半導体装置を製造することが可能となる。
(光反射用熱硬化性樹脂組成物)
本実施形態の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化触媒、及び(D)白色顔料を含み、(A)成分として、(B)硬化剤と互いに相溶であり、ポリオルガノシロキサン骨格と2つ以上のエポキシ基とを有する化合物((A1)成分)を含む。以下、各成分について説明する。
本実施形態の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化触媒、及び(D)白色顔料を含み、(A)成分として、(B)硬化剤と互いに相溶であり、ポリオルガノシロキサン骨格と2つ以上のエポキシ基とを有する化合物((A1)成分)を含む。以下、各成分について説明する。
まず、エポキシ樹脂について「硬化剤と互いに相溶」とは、エポキシ樹脂がその他の硬化剤と親和性を示し、均一な溶液または混合物として存在することを意味する。より具体的には、例えば、エポキシ樹脂と、硬化剤とを1/1の重量比で混合し、それら成分を120℃にて完全に溶解し、引き続き攪拌を行って得られる混合液について、30分にわたり静置した後に混合液の一部を取り出して目視した場合、成分間の分離がない透明な液体として確認できる状態を意味する。このような状態を、本明細書では「互いに相溶」と称し、成分が分離し不透明な液体となる場合を「互いに不溶」と称す。なお、互いに相溶ではあるが、溶解するまでに長い時間が必要であるようなエポキシ樹脂および硬化剤の組み合わせは、長時間にわたる加熱、すなわち、より多くの熱エネルギーを必要とすることから、生産性やコストの面で不利となる。そのため、短時間で相溶する組み合わせが好ましい。
更に上記混合操作において、エポキシ樹脂および硬化剤の硬化反応物であるゲル等が析出する場合があるが、このような析出物による白濁がない混合物が得られるように適宜、温度や攪拌方法等混合条件を選択することが好ましい。また、高粘度の材料を選択すると、攪拌により気泡を巻き込んでしまい、得られた混合物は微小な気泡が原因となって、外観上、白濁しているように観察される場合がある。その際には、公知の減圧脱泡法により気泡を取り除いた後の混合物の透明性を判定することが好ましい。なお、「白濁」とは、電磁波の可視光領域における散乱がないことを示す。より具体的には、光のレイリー散乱、ミー散乱、回折散乱現象を生じるような、散乱中心を有する微粒子や微小な気泡が存在しないことを示す。
本発明で用いられるポリオルガノシロキサン骨格を有する上記エポキシ化合物は、結合エネルギーの高い結合を有するとともに、オルガノシロキサン骨格が疎水性を示し、光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化成型物表面の表面自由エネルギーを低下させる性質を有する。このような性質から、トランスファー成形時に成形金型への張り付くことを抑制することが可能となる。そして、このような化合物と上記(B)〜(D)成分とを組み合わせることにより、高温環境下での酸化劣化による着色を抑制しつつ、高温で金型を用いる成形加工を行って十分な光反射率を有する成形体を製造する場合であっても、金型成形時に成形金型との離型性を十分確保することができ、高い光反射率、耐熱着色性及び成形加工性のすべてを高度に満足させることができる。
ポリオルガノシロキサン骨格と2つ以上のエポキシ基とを有する化合物は、そのエポキシ当量が150〜350g/eqであるものが好ましく、200〜300g/eqであるものがより好ましい。エポキシ当量が150g/eq未満であると、化合物中に含まれるシロキサン重量比が低下し、耐熱性、耐着色性が十分に得られなくなる傾向にある。一方、エポキシ当量が350g/eqを越えると、例えば、他のエポキシ樹脂、硬化剤、添加剤などの成分と加熱混合して光反射用硬化性樹脂組成物を調製する際の相溶性が低下する傾向にあり、結果として、硬化性樹脂組成物の熱硬化反応性が低下したり、溶融させて流動状態として成形するときの加工特性が低下する場合がある。
また、上記化合物の数平均分子量は、700〜5000であることが好ましい。数平均分子量が700未満である場合、化合物におけるシロキサンユニットの重量比が低下し、耐熱性、耐着色性が十分に得られなくなる傾向にある。一方、数平均分子量が5000を超える場合、硬化性樹脂組成物の溶融粘度が増加し、溶融させて流動状態として成形するときの加工特性が低下する場合がある。
また、上記化合物は、融点又は軟化点が0〜150℃であることが好ましい。上記化合物の融点又は軟化点が0℃未満であると、光反射用硬化性樹脂組成物における白色顔料の分散性が低下する傾向にあり、トランスファー成形などのように金型を用いて成形する場合に樹脂バリが発生しやすくなる。このような樹脂バリが発生すると、これが光半導体搭載用基板上の汚染物として残存し、その後の工程において光半導体素子を搭載したときに十分な接続強度が得られず、不良の原因となるおそれがある。一方、上記化合物の融点又は軟化点が150℃よりも大きい場合には、硬化性樹脂組成物の溶融粘度が増加し、溶融させて流動状態として成形するときの加工特性が低下する傾向にある。
また、上記化合物は、150℃における溶融粘度が1.0〜1000mPa・sであることが好ましい。上記の溶融粘度が1.0mPa・sよりも小さい場合には、光反射用硬化性樹脂組成物における白色顔料の分散性が低下する傾向にあり、トランスファー成形などのように金型を用いて成形する場合に樹脂バリが発生しやすくなる。このような樹脂バリが発生すると、これが光半導体搭載用基板上の汚染物として残存し、その後の工程において光半導体素子を搭載したときに十分な接続強度が得られず、不良の原因となるおそれがある。一方、上記の溶融粘度が1000mPa・sよりも大きい場合には、硬化性樹脂組成物の溶融粘度が増加し、溶融させて流動状態として成形するときの加工特性が低下する傾向にある。
本明細書において、ポリオルガノシロキサン骨格と2つ以上のエポキシ基とを有する化合物の「150℃における溶融粘度」、「軟化点(融点)」および「数平均分子量(Mn)」はそれぞれ以下の測定方法により求められる。「150℃における溶融粘度」は、Reseach Equipment(London)LTD.製のICIコーンプレート型粘度計を用いて測定される。「軟化点(融点)」は、化合物をホットプレート上で加熱し、性状の変化を目視で確認する方法により得られる。「数平均分子量(Mn)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法に従って標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した値を指し、より具体的には、GPC測定装置としてポンプ(株式会社日立製作所製、L−6200型)、カラム(TSKgel−G5000HXL及びTSKgel−G2000HXL、いずれも東ソー株式会社製、商品名)及び検出器(株式会社日立製作所製、L−3300RI型)を使用し、溶離液としてテトラヒドロフランを使用し、温度30℃、流量1.0ml/minの条件で測定される。
本実施形態に係るポリオルガノシロキサン骨格と2つ以上のエポキシ基とを有する化合物は、例えば、白金−ビニルシロキサン錯体等の白金系金属原子を含む化合物を触媒として使用し、オルガノハイドロジェンシロキサン化合物と、不飽和炭素−炭素結合および少なくとも1つのエポキシ基を有する炭化水素化合物とを、仕込み比を適宜設定してヒドロシリル化反応させて得ることができる。
また、別の方法として、上記白金系金属原子を含む化合物を触媒として使用し、オルガノハイドロジェンシロキサン化合物と、不飽和炭素−炭素結合および少なくとも1つのヒドロキシル基を有する炭化水素化合物とを、仕込み比を適宜設定してヒドロシリル化反応させてポリオルガノシロキサン化合物を合成し、その後、ポリオルガノシロキサン化合物のヒドロキシ基と、エピクロロヒドリン等のエポキシ基を誘導する際に使用される公知の化合物とを反応させてエポキシ基を生成することにより、ポリオルガノシロキサン骨格と2つ以上のエポキシ基とを有する化合物を得ることもできる。
更に別の方法として、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シラン化合物と、1,4−シクロヘキサンジメタノールに代表される脂環式ジアルコールとを、ジブチル錫ジラウレート等のルイス酸触媒存在下において、脱アルコール縮合反応させて、ポリオルガノシロキサン骨格と2つ以上のエポキシ基とを有する化合物を得ることもできる。
本実施形態に係るポリオルガノシロキサン骨格と2つ以上のエポキシ基とを有する化合物としては、商業的に入手可能なポリオルガノシロキサン樹脂を使用することができ、例えば、KD001(新日鉄化学株式会社製)、KD401(新日鉄化学株式会社製)、KD801(新日鉄化学株式会社製)、CD401(新日鉄化学株式会社製)が挙げられる。
本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物における上記ポリオルガノシロキサン骨格と2つ以上のエポキシ基とを有する化合物の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の硬化後に固形分となる成分全量基準で、0.1〜20質量%であることが好ましく、3〜20質量%であることがより好ましい。
本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂として、上記ポリオルガノシロキサン骨格と2つ以上のエポキシ基とを有する化合物(A1)以外のエポキシ樹脂(A2)を更に含有することができる。この場合、高温環境下における光学反射率の低下を抑制する観点から、エポキシ樹脂(A2)の含有量は、ポリオルガノシロキサン骨格と2つ以上のエポキシ基とを有する化合物(A1)100質量部に対して、1〜200質量部であることが好ましい。エポキシ樹脂(A2)を200質量部よりも多く用いる場合、(A1)のポリオルガノシロキサン骨格の耐熱性が十分に発揮されなくなるおそれがある。
エポキシ樹脂(A2)としては、エポキシ樹脂成形材料として一般に公知のものを使用することができ、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などをはじめとするフェノール類とアルデヒド類のノボラック樹脂をエポキシ化したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル置換ビスフェノールなどのジグリシジルエーテル;ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸などのポリアミンとエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸などの過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;及び脂環族エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、エポキシ樹脂(A2)は、無色又は例えば淡黄色の比較的着色していないものが好ましい。そのようなエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレートが挙げられる。
本発明で用いられる硬化剤((B)成分)としては、上記ポリオルガノシロキサン骨格と2つ以上のエポキシ基とを有する化合物(A1)と反応して硬化物が得られるものであればよく、具体例として、酸無水物硬化剤、イソシアヌル酸誘導体、フェノール系硬化剤などが挙げられる。成形性および硬化物の機械特性の観点から、硬化剤は、その分子量が100〜400程度のものが好ましい。また、硬化剤は、無色又は例えば淡黄色の比較的着色していないものが好ましい。
酸無水物硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸、無水コハク酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
イソシアヌル酸誘導体としては、例えば、1,3,5−トリス(1−カルボキシメチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート、1,3−ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
フェノール系硬化剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノールなどのフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレンなどのナフトール類と、ホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒドなどのアルデヒド基を有する化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られる、ノボラック型フェノール樹脂;フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルとから合成されるフェノール・アラルキル樹脂;ビフェニレン型フェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂などのアラルキル型フェノール樹脂;フェノール類及び/又はナフトール類とジシクロペンタジエンとの共重合によって合成される、ジシクロベンタジエン型フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトールノボラック樹脂などのジシクロペンタジエン型フェノール樹脂;トリフェニルメタン型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂;メラミン変性フェノール樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;および、これら2種以上を共重合して得られるフェノール樹脂などが挙げられる。
上記の硬化剤は、単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
また、上記の硬化剤の中では、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸、又は1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレートなどを用いることが好ましい。これらは、単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物における硬化剤の含有量は、(A)エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、当該エポキシ基と反応可能な(B)硬化剤中の活性基(酸無水物基や水酸基)が0.5〜1.2当量となるような割合であることが好ましく、0.6〜1.0当量となるような割合であることがより好ましい。上記活性基が0.5当量未満の場合には、光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化速度が遅くなるとともに、得られる硬化物のガラス転移温度が低くなり、充分な弾性率が得られない場合がある。一方、上記活性基が1.2当量を超える場合には、硬化後の強度が低下する場合がある。
本発明で用いられる硬化触媒((C)成分)としては、例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、トリ−2,4,6−ジメチルアミノメチルフェノールなどの3級アミン類;2−エチル−4メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類;トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−テトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−テトラフェニルボレートなどのリン化合物;4級アンモニウム塩;有機金属塩類及びこれらの誘導体などが挙げられる。これらは単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これら硬化触媒の中では、3級アミン類、イミダゾール類、又はリン化合物を用いることが好ましい。
本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物における硬化触媒の含有量は、(A)エポキシ樹脂の全量を基準として、0.01〜8.0質量%であることが好ましく、0.1〜3.0質量%であることがより好ましい。硬化触媒の含有量が、0.01質量%未満では、十分な硬化促進効果を得られない場合があり、硬化触媒の含有量が8.0質量%を超えると、得られる硬化物(成形体など)に変色が見られる場合がある。
本発明で用いられる白色顔料((D)成分)としては、例えば、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、無機中空粒子などが挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。熱伝導性、及び光反射特性の観点からは、アルミナを用いることが好ましい。
無機中空粒子としては、例えば、珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、硼珪酸ソーダガラス、シラスなどが挙げられる。
白色顔料の中心粒径は、0.1μm〜50μmの範囲にあることが好ましい。この中心粒径が0.1μm未満であると粒子が凝集しやすく分散性が悪くなる傾向があり、50μmを超えると硬化物の光反射特性が十分に得られにくくなる。
本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物における白色顔料の含有量は、樹脂組成物全量を基準として10〜85体積%の範囲であることが好ましい。白色顔料の含有量が10体積%未満であると、硬化物の光反射特性が十分に得られにくくなり、85体積%を超えると、熱硬化性樹脂組成物の成形性が悪くなり、光半導体素子搭載用基板などの作製が困難となる可能性がある。
本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、上述した成分以外に、無機充填剤、酸化防止剤、離型剤、分散剤、イオン捕捉剤などの各種添加剤を更に含有することができる。
無機充填剤としては、例えば、溶融球状シリカ、破砕状シリカ、シリカ、酸化アンチモン、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムなどが挙げられる。無機充填剤の中心粒径は、白色顔料とのパッキング効率を向上させる観点から、1〜100μmの範囲内にあることが好ましい。本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物における無機充填剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の硬化後に固形分となる成分全量を基準として、5〜75体積%の範囲であることが好ましい。
また、本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じてカップリング剤等が添加されていてもよい。この場合、(A1)成分などの樹脂成分と、白色顔料や無機充填剤などの無機成分との界面接着性を向上させることができる。カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。シランカップリング剤としては、一般にエポキシシラン系、アミノシラン系、カチオニックシラン系、ビニルシラン系、アクリルシラン系、メルカプトシラン系及びこれらの複合系等、公知の化合物を用いることができる。カップリング剤の使用量は、白色顔料に対する表面被覆量を考慮して適宜調整することが好ましいが、硬化性を向上させる観点から、熱硬化性樹脂組成物全量を基準として5質量%以下とすることが好ましい。本発明では、白色顔料や無機充填剤などが予め上記カップリング剤で処理されていてもよい。
本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、その用途から、硬化後の、波長350〜800nmにおける光反射率が、80%以上となることが好ましい。この光反射率が80%未満である場合、光半導体装置の輝度向上に十分に寄与できない傾向がある。本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、上記光反射率が90%以上となるものであることが好ましい。また、光半導体装置の輝度を向上させる点で、硬化後の、波長460nmにおける光反射率が、80%以上となることが好ましく、90%以上となることがより好ましい。
また、耐熱着色性を良好にする観点から、硬化後の成形物が、150℃の環境下に500時間晒す耐熱性試験の後でも、波長350〜800nmにおいて80%以上の光反射率を保持することが好ましい。より好ましくは、上述の耐熱性試験後の測定時に、波長460nmにおける光反射率が85%以上となることがより好ましく、90%以上となることがさらに好ましい。このような熱硬化性樹脂組成物の光反射特性は、樹脂組成物を構成する各種成分の配合量を適切に調整することによって実現することができ、より具体的には、無色の熱硬化樹脂成分と高屈折率の白色顔料を高充填することで達成できる。
本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、先に例示した各種成分を均一に分散混合することによって調製することができ、混合手段や条件などは特に制限されない。調製方法としては、例えば、ミキシングロール、押出機、ニーダー、ロール、エクストルーダー、らいかい機、自転と公転を組み合わせた攪拌混合機などの装置を用いて各種成分を混練し、次いで得られた混練物を冷却及び粉砕する方法が挙げられる。混練形式についても特に限定されないが、溶融混練とすることが好ましい。溶融混練時の条件は、使用する各種成分の種類や配合量によって適宜決定すればよく、特に制限はないが、例えば、15〜100℃の温度範囲で5〜40分間にわたって実施することが好ましく、20〜100℃の温度範囲で10〜30分間にわたって実施することがより好ましい。溶融混練の温度が15℃未満であると、各種成分を十分に溶融混練することが困難であり、分散性が低下する傾向がある。一方、溶融混練を100℃よりも高温で実施すると、樹脂組成物の高分子量化が進行し、基板などの成形品を成形する前に樹脂組成物が硬化してしまう恐れがある。また、溶融混練の時間が1分未満であると、基板などの成形時に金型から樹脂が染み出し、バリが発生しやすい傾向があり、40分よりも長いと、樹脂組成物の高分子化が進行し、成形前に樹脂組成物が硬化してしまう恐れがある。
本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物を調製する際、(B)硬化剤として使用する化合物を、(A)エポキシ樹脂の一部又は全部と予備混合することが好ましい。このような予備混合を実施することによって、硬化剤のベース樹脂に対する分散性をさらに高めることができる。その結果、硬化剤の分散不具合に起因する金型及びパッケージ汚れの発生をより効果的に抑制することが可能となる。
なお、(A)エポキシ樹脂の全量と(B)硬化剤として使用する化合物との間で予備混合を実施しても差し支えないが、(A)エポキシ樹脂の一部との予備混合であっても十分な効果が得られる。その場合、予備混合に用いる(A)エポキシ樹脂の量は、成分全量の10〜50質量%とすることが好ましい。
予備混合の方法は、特に制限されるものではなく、(B)硬化剤として使用する化合物を(A)エポキシ樹脂中に分散させることが可能であればよい。例えば、室温〜220℃の温度条件下で、0.5〜20時間にわたって両成分を攪拌する方法等が挙げられる。分散性及び効率性の観点からは、100〜200℃、より好ましくは150〜170℃の温度条件下、攪拌時間を1〜10時間、より好ましくは3〜6時間とすることが好ましい。ここで行う予備加熱混合は、例えば、(A)エポキシ樹脂100質量部、及び(B)硬化剤120質量部を耐熱ガラス製の容器に秤量し、この混合容器をシリコーンオイルや水などの流体を媒体とするヒーターを用いて、35℃〜180℃の温度範囲で加熱するなどの方法が挙げられる。加熱方法としては上記の方法に限定されるものではなく、熱電対、電磁波照射など公知の方法を用いることができ、さらに溶解を促進するために超音波などを照射してもよい。
(光半導体素子搭載用基板)
本発明の光半導体素子搭載用基板は、底面及び壁面から構成される凹部を有し、凹部の底面が光半導体素子搭載部(光半導体素子搭載領域)であり、凹部の壁面、すなわち凹部の内周側面の少なくとも一部が本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなるものである。図1は、本発明の光半導体素子搭載用基板の一実施形態を示す斜視図である。光半導体素子搭載用基板110は、Ni/Agめっき104が形成された金属配線105(第1の接続端子および第2の接続端子)と、金属配線105(第1の接続端子および第2の接続端子)間に設けられた絶縁性樹脂成形体103’と、リフレクター103とを備え、Ni/Agめっき104が形成された金属配線105及び樹脂成形体103’とリフレクター103とから形成された凹部200を有している。この凹部200の底面は、Ni/Agめっき104が形成された金属配線105及び絶縁性樹脂成形体103’から構成され、凹部200の壁面はリフレクター103から構成されるものである。そして、リフレクター103及び絶縁性樹脂成形体103’が、上記本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる成形体である。
本発明の光半導体素子搭載用基板は、底面及び壁面から構成される凹部を有し、凹部の底面が光半導体素子搭載部(光半導体素子搭載領域)であり、凹部の壁面、すなわち凹部の内周側面の少なくとも一部が本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなるものである。図1は、本発明の光半導体素子搭載用基板の一実施形態を示す斜視図である。光半導体素子搭載用基板110は、Ni/Agめっき104が形成された金属配線105(第1の接続端子および第2の接続端子)と、金属配線105(第1の接続端子および第2の接続端子)間に設けられた絶縁性樹脂成形体103’と、リフレクター103とを備え、Ni/Agめっき104が形成された金属配線105及び樹脂成形体103’とリフレクター103とから形成された凹部200を有している。この凹部200の底面は、Ni/Agめっき104が形成された金属配線105及び絶縁性樹脂成形体103’から構成され、凹部200の壁面はリフレクター103から構成されるものである。そして、リフレクター103及び絶縁性樹脂成形体103’が、上記本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる成形体である。
本発明の光半導体素子搭載用基板の製造方法は特に限定されないが、例えば、本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いたトランスファー成形により製造することができる。図2は、本発明の光半導体素子搭載用基板を製造する工程の一実施形態を示す概略図である。光半導体素子搭載用基板は、例えば、金属箔から打ち抜きやエッチング等の公知の方法により金属配線105を形成し、電気めっきによりNi/Agめっき104を施す工程(図2(a))、次いで、該金属配線105を所定形状の金型151に配置し、金型151の樹脂注入口150から本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物を注入し、所定の条件でトランスファー成形する工程(図2(b))、そして、金型151を外す工程(図2(c))を経て製造することができる。このようにして、光半導体素子搭載用基板には、光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなるリフレクター103に周囲を囲まれてなる光半導体素子搭載領域(凹部)200が形成される。また、凹部の底面は、第1の接続端子となる金属配線105及び第2の接続端子となる金属配線105と、これらの間に設けられ光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる絶縁性樹脂成形体103’とから構成される。なお、上記トランスファー成形の条件としては、金型温度170〜200℃、より好ましくは170〜190℃、成形圧力0.5〜20MPa、より好ましくは2〜8MPaで、60〜120秒間、アフターキュア温度120℃〜180℃で1〜3時間が好ましい。
(光半導体装置)
本発明の光半導体装置は、上記光半導体素子搭載用基板と、当該光半導体素子搭載用基板に搭載された光半導体素子とを有する。より具体的な例として、上記光半導体素子搭載用基板と、光半導体素子搭載用基板の凹部内に設けられた光半導体素子と、凹部を充填して光半導体素子を封止する蛍光体含有封止樹脂部とを備える光半導体装置が挙げられる。
本発明の光半導体装置は、上記光半導体素子搭載用基板と、当該光半導体素子搭載用基板に搭載された光半導体素子とを有する。より具体的な例として、上記光半導体素子搭載用基板と、光半導体素子搭載用基板の凹部内に設けられた光半導体素子と、凹部を充填して光半導体素子を封止する蛍光体含有封止樹脂部とを備える光半導体装置が挙げられる。
図3は、本発明の光半導体素子搭載用基板110に光半導体素子100を搭載した状態の一実施形態を示す斜視図である。図3に示すように、光半導体素子100は、光半導体素子搭載用基板110の光半導体素子搭載領域(凹部)200の所定位置に搭載され、金属配線105とボンディングワイヤ102により電気的に接続される。図4及び5は、本発明の光半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。図4及び5に示すように、光半導体装置は、光半導体素子搭載用基板110と、光半導体素子搭載用基板110の凹部200内の所定位置に設けられた光半導体素子100と、凹部200を充填して光半導体素子を封止する蛍光体106を含む透明封止樹脂101からなる封止樹脂部とを備えており、光半導体素子100とNi/Agめっき104が形成された金属配線105とがボンディングワイヤ102又ははんだバンプ107により電気的に接続されている。
図6もまた、本発明の光半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。図6に示す光半導体装置では、リフレクター303が形成されたリード304上の所定位置にダイボンド材306を介してLED素子300が配置され、LED素子300とリード304とがボンディングワイヤ301により電気的に接続され、蛍光体305を含む透明封止樹脂302によりLED体素子300が封止されている。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに制限されるものではない。例えば、本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物は光反射コート剤として用いることができる。この実施形態として、銅張積層板、光半導体素子搭載用基板及び光半導体素子について説明する。
本発明に係る銅張積層板は、上述した本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いて形成された光反射樹脂層と、該光反射樹脂層上に積層された銅箔と、を備えるものである。
図7は、本発明に係る銅張積層板の好適な一実施形態を示す模式断面図である。図7に示すように、銅張積層板400は、基材401と、該基材401上に積層された光反射樹脂層402と、該光反射樹脂層402上に積層された銅箔403と、を備えている。ここで、光反射樹脂層402は、上述した本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いて形成されている。
基材401としては、銅張積層板に用いられる基材を特に制限なく用いることができるが、例えば、エポキシ樹脂積層板等の樹脂積層板、光半導体搭載用基板などが挙げられる。
銅張積層板400は、例えば、本発明の樹脂組成物を基材401表面に塗布し、銅箔403を重ね、加熱加圧硬化して上記樹脂組成物からなる光反射樹脂層402を形成することにより作製することができる。
本発明の樹脂組成物の基板401への塗布方法としては、例えば、印刷法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法等の塗布方法を用いることができる。このとき、本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物には、塗布が容易となるように溶媒を含有させることができる。なお、溶媒を用いる場合、上述した各成分の配合割合で樹脂組成物全量を基準としたものについては、溶媒を除いたものを全量として設定することが好ましい。
加熱加圧の条件としては、特に限定されないが、例えば、130〜180℃、0.5〜4MPa、30〜600分間の条件で加熱加圧を行うことが好ましい。
上記本発明に係る銅張積層板を使用し、LED実装用等の光学部材用のプリント配線板を作製することができる。なお、図7に示した銅張積層板400は、基材401の片面に光反射樹脂層402及び銅箔403を積層したものであるが、本発明に係る銅張積層板は、基材401の両面に光反射樹脂層402及び銅箔403をそれぞれ積層したものであってもよい。また、図7に示した銅張積層板400は、基材401上に光反射樹脂層402及び銅箔403を積層したものであるが、本発明に係る銅張積層板は、基材401を用いることなく、光反射樹脂層402及び銅箔403のみで構成されていてもよい。この場合、光反射樹脂層402が基材としての役割をはたすこととなる。この場合、例えば、ガラスクロス等に本発明の樹脂組成物を含浸させ、硬化させたものを光反射樹脂層402とすることができる。
図8は、本発明に係る銅張積層板を用いて作製された光半導体装置の一例を示す模式断面図である。図8に示すように、光半導体装置500は、光半導体素子410と、該光半導体素子410が封止されるように設けられた透明な封止樹脂404とを備える表面実装型の発光ダイオードである。光半導体装置500において、半導体素子410は、接着層408を介して銅箔403に接着されており、ワイヤー409により銅箔403と電気的に接続されている。
更に、本発明に係る光半導体素子搭載用基板の他の実施形態として、上述した本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いて、基材上の複数の導体部材(接続端子)間に形成された光反射樹脂層を備える光半導体素子搭載用基板が挙げられる。また、本発明に係る光半導体装置の他の実施形態は、上記の光半導体素子搭載用基板に光半導体素子を搭載してなるものである。
図9は、本発明に係る光半導体装置の好適な一実施形態を示す模式断面図である。図9に示すように、光半導体装置600は、基材601と、該該基材601の表面に形成された複数の導体部材602と、複数の導体部材(接続端子)602間に形成された、上記本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物からなる光反射樹脂層603と、を備える光半導体素子搭載用基板に、光半導体素子610が搭載され、該光半導体素子610が封止されるように透明な封止樹脂604が設けられた、表面実装型の発光ダイオードである。光半導体装置600において、光半導体素子610は、接着層608を介して導体部材602に接着されており、ワイヤー609により導体部材602と電気的に接続されている。
基材601としては、光半導体素子搭載用基板に用いられる基材を特に制限なく用いることができるが、例えば、エポキシ樹脂積層板等の樹脂積層板などが挙げられる。
導体部材602は、接続端子として機能するものであり、例えば、銅箔をフォトエッチングする方法等、公知の方法により形成することができる。
光半導体素子搭載用基板は、本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物を基材601上の複数の導体部材602間に塗布し、加熱硬化して上記光反射用熱硬化性樹脂組成物からなる光反射樹脂層603を形成することにより作製することができる。
本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物の基板601への塗布方法としては、例えば、印刷法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法等の塗布方法を用いることができる。このとき、本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物には、塗布が容易となるように溶媒を含有させることができる。なお、溶媒を用いる場合、上述した各成分の配合割合で樹脂組成物全量を基準としたものについては、溶媒を除いたものを全量として設定することが好ましい。
光反射用熱硬化性樹脂組成物の塗膜を加熱硬化する際の加熱条件としては、特に限定されないが、例えば、130〜180℃、30〜600分間の条件で加熱を行うことが好ましい。
その後、導体部材602表面に余分に付着した樹脂成分は、バフ研磨等により除去し、導体部材602からなる回路を露出させ、光半導体素子搭載用基板とする。
また、光反射樹脂層603と導体部材602との密着性を確保するために、導体部材602に対して酸化還元処理やCZ処理(メック株式会社製)等の粗化処理を行なうことも好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<光反射用熱硬化性樹脂組成物の調製>
(実施例1〜5及び比較例1〜6)
実施例1〜4及び比較例1〜2については、表1及び表2に示す配合割合(質量部)に従って、各成分を配合し、ミキサーによって十分に混練分散した後、ミキシングロールにより35℃で15分溶融混練することによって混練物を得た。次に、得られた混練物を冷却し、それらを粉砕することによって、白色固体状の光反射用熱硬化性樹脂組成物をそれぞれ調製した。
(実施例1〜5及び比較例1〜6)
実施例1〜4及び比較例1〜2については、表1及び表2に示す配合割合(質量部)に従って、各成分を配合し、ミキサーによって十分に混練分散した後、ミキシングロールにより35℃で15分溶融混練することによって混練物を得た。次に、得られた混練物を冷却し、それらを粉砕することによって、白色固体状の光反射用熱硬化性樹脂組成物をそれぞれ調製した。
実施例5及び比較例3〜6については、表1及び表2に示す配合割合(質量部)に従って、各成分を配合し、自転公転式攪拌混合機を使用して回転数2000rpmで2分間混合することにより、ペースト状の光反射用熱硬化性樹脂組成物をそれぞれ調製した。
なお、各表に示した各原料の配合量の単位は全て質量部であり、「−」の記載部分は該当する原料の配合がないことを意味している。
表1及び2中、*1〜15の詳細は以下のとおりである。*1〜9の、ポキシ当量、溶融粘度、軟化点(融点)、及び数平均分子量については表1及び2中に示す。
*1:エポキシシリコーン(新日鉄化学社製、商品名:KD001)
*2:エポキシシリコーン(新日鉄化学社製、商品名:KD401)
*3:エポキシシリコーン(新日鉄化学社製、商品名:KD801)
*4:エポキシシリコーン(新日鉄化学社製、商品名:CD401)
*5:トリスグリシジルイソシアヌレート(日産化学社製、商品名:TEPIC−S)
*6:3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学社製、商品名:セロキサイド2021P)
*7:ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル(阪本薬品社製、商品名:SR−HHPA)
*8:エポキシシリコーン(信越化学社製、商品名:KF101)
*9:エポキシシリコーン(信越化学社製、商品名:KF105)
*10:メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(日立化成工業社製)
*11:ヘキサヒドロ無水フタル酸(和光純薬工業社製)
*12:テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチエート(日本化学工業社製、商品名:PX−4ET)
*13:溶融シリカ(電気化学工業社製、商品名:FB−950)
*14:溶融シリカ(アドマテックス社製、商品名:SO−25R)
*15:酸化チタン(堺化学工業社製、商品名:FTR−700)
*2:エポキシシリコーン(新日鉄化学社製、商品名:KD401)
*3:エポキシシリコーン(新日鉄化学社製、商品名:KD801)
*4:エポキシシリコーン(新日鉄化学社製、商品名:CD401)
*5:トリスグリシジルイソシアヌレート(日産化学社製、商品名:TEPIC−S)
*6:3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学社製、商品名:セロキサイド2021P)
*7:ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル(阪本薬品社製、商品名:SR−HHPA)
*8:エポキシシリコーン(信越化学社製、商品名:KF101)
*9:エポキシシリコーン(信越化学社製、商品名:KF105)
*10:メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(日立化成工業社製)
*11:ヘキサヒドロ無水フタル酸(和光純薬工業社製)
*12:テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチエート(日本化学工業社製、商品名:PX−4ET)
*13:溶融シリカ(電気化学工業社製、商品名:FB−950)
*14:溶融シリカ(アドマテックス社製、商品名:SO−25R)
*15:酸化チタン(堺化学工業社製、商品名:FTR−700)
<光反射用熱硬化性樹脂組成物の評価>
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた光反射用熱硬化性樹脂組成物については、樹脂組成物を、成形金型温度180℃、成型圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件でトランスファー成形した後、150℃で2時間の後硬化を行って、厚み1.0mmの試験片を作製し、下記の方法にしたがって初期および熱処理後の光反射率の測定を行った。また、実施例5及び比較例3〜6で得られた光反射用熱硬化性樹脂組成物については、硬化物の厚みが1.0mmとなるようにアルミカップに樹脂組成物を注ぎ、150℃で5時間の熱硬化を行って、厚み1.0mmの試験片を作製し、下記の方法にしたがって初期および熱処理後の光反射率の測定を行った。結果を表1及び2に示す。
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた光反射用熱硬化性樹脂組成物については、樹脂組成物を、成形金型温度180℃、成型圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件でトランスファー成形した後、150℃で2時間の後硬化を行って、厚み1.0mmの試験片を作製し、下記の方法にしたがって初期および熱処理後の光反射率の測定を行った。また、実施例5及び比較例3〜6で得られた光反射用熱硬化性樹脂組成物については、硬化物の厚みが1.0mmとなるようにアルミカップに樹脂組成物を注ぎ、150℃で5時間の熱硬化を行って、厚み1.0mmの試験片を作製し、下記の方法にしたがって初期および熱処理後の光反射率の測定を行った。結果を表1及び2に示す。
(光反射率の測定)
[初期]
上記で得られた試験片について、積分球型分光光度計V−750型(日本分光株式会社製)を用いて、波長460nmにおける光反射率を測定した。
[初期]
上記で得られた試験片について、積分球型分光光度計V−750型(日本分光株式会社製)を用いて、波長460nmにおける光反射率を測定した。
[熱処理後]
上記で得られた試験片を一定温度のオーブン中に入れ、下記に示す条件での熱処理をそれぞれ施した。各熱処理後の試験片について、上記と同様にして光反射率を測定した。
条件1:150℃、500時間
条件2:200℃、24時間
条件3:200℃、100時間
上記で得られた試験片を一定温度のオーブン中に入れ、下記に示す条件での熱処理をそれぞれ施した。各熱処理後の試験片について、上記と同様にして光反射率を測定した。
条件1:150℃、500時間
条件2:200℃、24時間
条件3:200℃、100時間
表1に示すように、実施例1〜5の樹脂組成物によれば、トランスファー成形によって光反射率が十分に高い成形体が得られ、成形体の熱処理後の反射率低下、即ち着色を高度に抑制できることが確認された。なお、比較例5及び6で用いたポリオルガノシロキサン樹脂は、使用した酸無水物硬化剤との相溶性が得られなかった。そのため、樹脂組成物を混練した段階でエポキシ樹脂成分が分離し染み出してくる現象がみられ、加熱硬化を行なっても均一な硬化物が得られなかった。
また、実施例及び比較例で得られた光反射用熱硬化性樹脂組成物について、下記の方法に基づいて熱硬化特性を評価した。
JSR型キュラストメーターを用いて、光反射用熱硬化性樹脂組成物を180℃で加熱したときのゲルタイム(秒)を測定した。なお、ゲルタイムは、キュラストメーターのトルクを検出し、トルクの立ち上がる時間(硬化反応が進行して樹脂組成物の流動性が見られなくなる時間)とした。結果を表2に示す。
実施例1〜5の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、30秒以内にトルクが立ち上がり、熱硬化性に優れていることが確認された。一方、比較例2〜4の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、30秒よりも長時間経過後にトルクが立ち上がっており、実施例1〜5のものに比べて熱硬化性が劣る結果であった。比較例5及び6の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、300秒以内にトルクが立ち上がらず未硬化であった。
100…光半導体素子、101…透明封止樹脂、102…ボンディングワイヤ、103…光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物(リフレクター)、103’…光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物(絶縁性樹脂成形体)104…Ni/Agめっき、105…金属配線、106…蛍光体、107…はんだバンプ、110…光半導体素子搭載用基板、150…樹脂注入口、151…金型、200…光半導体素子搭載領域、300…LED素子、301…ワイヤボンド、302…透明封止樹脂、303…リフレクター、304…リード、305…蛍光体、306…ダイボンド材、400…銅張積層板、401…基材、402…光反射樹脂層、403…銅箔、404…封止樹脂、408…接着層、409…ワイヤー、410…光半導体素子、500,600…光半導体装置、601…基材、602…導体部材、603…光反射樹脂層、604…封止樹脂、608…接着層、609…ワイヤー、610…光半導体素子。
Claims (13)
- エポキシ樹脂、硬化剤、及び白色顔料を含み、
前記エポキシ樹脂として、前記硬化剤と互いに相溶であり、ポリオルガノシロキサン骨格と2つ以上のエポキシ基とを有する化合物を少なくとも含む、光反射用熱硬化性樹脂組成物。 - 前記ポリオルガノシロキサン骨格と2つ以上のエポキシ基とを有する化合物のエポキシ当量が150〜350g/eqである、請求項1に記載の光反射用熱硬化性樹脂組成物。
- 前記ポリオルガノシロキサン骨格と2つ以上のエポキシ基とを有する化合物の数平均分子量が700〜5000である、請求項1又は2に記載の光反射用熱硬化性樹脂組成物。
- 前記ポリオルガノシロキサン骨格と2つ以上のエポキシ基とを有する化合物の軟化点または融点が0〜150℃である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光反射用熱硬化性樹脂組成物。
- 前記ポリオルガノシロキサン骨格と2つ以上のエポキシ基とを有する化合物は、150℃における溶融粘度が1〜1000mPa・sである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光反射用熱硬化性樹脂組成物。
- 前記白色顔料が、酸化チタン、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウムおよび無機中空粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光反射用熱硬化性樹脂組成物。
- 前記白色顔料の中心粒径が、0.1〜50μmの範囲内にある、請求項1〜6のいずれかに記載の光反射用熱硬化性樹脂組成物。
- 前記白色顔料の含有量が、樹脂組成物全量を基準として10〜85体積%の範囲内である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光反射用熱硬化性樹脂組成物。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載の光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物を備える、光半導体素子搭載用基板。
- 底面及び壁面から構成される凹部を有し、当該凹部の前記底面が光半導体素子の搭載部であり、
前記凹部の前記壁面の少なくとも一部が、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる、光半導体素子搭載用基板。 - 基板と、当該基板上に設けられた第1の接続端子および第2の接続端子とを備え、
前記第1の接続端子と前記第2の接続端子との間に、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物を有する、光半導体素子搭載用基板。 - 請求項9〜11のいずれか一項に記載の光半導体素子搭載用基板と、当該光半導体素子搭載用基板に搭載された光半導体素子と、を有する、光半導体装置。
- 底面及び壁面から構成される凹部を有する光半導体素子搭載用基板の製造方法であって、
前記凹部の前記壁面の少なくとも一部を、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光反射用熱硬化性樹脂組成物をトランスファー成形して形成する工程、
を備える、光半導体素子搭載用基板の製造方法。
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