JP2010253934A - シート、積層体及びタッチパネル - Google Patents

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Abstract

【課題】 フィルム表面へのオリゴマーの析出を防止することができる被膜を持つシートを提供する。
【解決手段】 シート10は、フィルム基材11の表面に厚みが30nm以上の被膜12を有する。被膜12は樹脂成分を含む樹脂組成物で構成されている。樹脂成分は150℃以上のガラス転移温度を持つセルロース誘導体を含む。被膜12を特定の樹脂成分を含む樹脂組成物を用いて所定厚みで形成することにより、フィルム基材11表面へのオリゴマーの析出を防止する。
【選択図】 図1

Description

この発明は、シート、積層体及びタッチパネルに関する。
プラスチックフィルムは、LCD部材のプリズムシート、レンズシート、拡散板、反射板、タッチパネル等のベースフィルムとしてや、反射防止用やディスプレイ防爆用のベースフィルムなど、各種光学用途に広く使用されている。これら光学用途において明るく鮮明な画像を得るために、光学用フィルムとして用いられるベースフィルムは、その使用形態から透明性が良好で、かつ画像に影響を与える異物やキズ等の欠陥がないことが必要となる。
ところが近年、その用途が多様化するにつれて、フィルムの加工条件や使用条件が多様化し、プラスチックフィルムを加熱処理した際に、フィルム表面に、該フィルムの非架橋成分であるオリゴマーと称される重合体(環状三量体)が析出するとの問題が生じている。
フィルム表面へのオリゴマーの析出が激しい場合、フィルム加工時にオリゴマーが工程内に付着して汚染したり、高度な透明性が必要な用途に使用できなくなるなどの諸問題を生じる。
従来、フィルム表面へのオリゴマーの析出を防止する方法として種々の提案がなされている。例えば特許文献1では、抵抗膜方式の透明タッチパネルにおいて、固定電極支持体と対向して配置され、上面にハードコート層が形成された可動電極フィルムの下面に、シロキサン系樹脂、アクリルエポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂などの硬い樹脂で構成される透明な収縮性樹脂層を介して、可動電極を形成する技術が開示されている。
特開平7−13695号公報
特許文献1では、可動電極フィルムの下面に透明な収縮性樹脂層を形成することにより、可動電極フィルムの非架橋成分であるオリゴマーが可動電極側へ析出し、白化状態となって透明性が失われ、外観及び視認性が悪化することを防止するというものである。なお、可動電極フィルムの上面にはハードコート層が形成してあるので、このハードコート層によって可動電極フィルム内部からオリゴマーが可動電極フィルムの上面側に析出することが防止される。
発明が解決しようとする課題は、フィルム表面へのオリゴマーの析出を防止することができる被膜を持つシートと、このシートを含む積層体と、この積層体を含むタッチパネルとを提供することである。
この発明は、以下の解決手段によって上記課題を解決する。なお、以下の解決手段では、発明の実施形態を示す図面に対応する符号を付して説明するが、この符号は発明の理解を容易にするためだけのものであって発明を限定する趣旨ではない。
発明に係るシート(10)は、フィルム基材(11)の表面に厚みが30nm以上の被膜(12)を有し、被膜(12)は樹脂成分を含む樹脂組成物で構成されており、樹脂成分は150℃以上(好ましくは180℃以上)のガラス転移温度を持つセルロース誘導体を含む。
上記発明において、セルロース誘導体はセルロースエステル類を含むことができる。セルロースエステル類は脂肪族有機酸エステルを含むことができる。脂肪族有機酸エステルはセルロースC2−6 アルキルカルボン酸エステルを含むことができる。セルロースC2−6 アルキルカルボン酸エステルはセルロースアセテートプロピオネートを含むことができる。セルロースアセテートプロピオネートは、アセチル基の置換度よりも高いプロピオニル基の置換度を持ち、前記プロピオニル基の置換度が1.8〜2.5であることができる。
上記発明において、樹脂組成物はケイ素酸化物を含むことができる。この場合、ケイ素酸化物は、100重量部の前記樹脂成分に対して0.1重量部以上または10重量部以上含有することができる。ケイ素酸化物はコロイダルシリカを含むことができる。
上記発明において、被膜は、厚みが1μm以下であることができる。
発明に係る積層体(20)は、上記何れかのシート(10)の表面に、各種機能が付与された機能層(22,24)を有する。
上記発明において、機能層(22,24)は、例えば、シート(10)の被膜(12)側に積層された粘着層や、シート(10)の被膜(12)とは反対側に積層されたハードコート層などを含むことができる。
発明に係るタッチパネル(5)は、第1の透明導電膜(524)が第1の透明基板(522)に形成された第1の電極基板(52)と、第2の透明導電膜(544)が第1の透明導電膜(524)と所定の間隙を空けて対向するように第2の透明基板(542)に形成された第2の電極基板(54)とを有する。そして、第1の透明基板(522)及び第2の透明基板(542)のうち何れか一方の可動側電極基板が積層体(20)を含む。
発明に係るオリゴマーの析出防止方法は、フィルム基材表面へのオリゴマーの析出を防止する方法であって、フィルム基材(11)の表面に、セルロース誘導体を含む樹脂成分を有する塗工液を塗布して乾燥させ、厚みが30nm以上の被膜(12)を形成させる。
上記発明によれば、フィルム基材の表面に形成する被膜を特定の樹脂成分を含む樹脂組成物で構成するので、フィルム表面へのオリゴマーの析出を効果的に防止することができる。また加工適正にも優れ、フィルム加熱前に例えば折り曲げ加工などのフィルム加工を行った場合でも被膜にクラックを生じ難く、その結果、そのクラック部分を通じてオリゴマーが析出してくることもない。さらにケイ素酸化物を含めることで、光学特性を低下させずにブロッキング現象を防止することもできる。
図1は本実施形態に係るシートを示す断面図である。 図2は図1のシートを有する積層体の一例を示す断面図である。 図3は図1のシートを有する積層体の他の例を示す断面図である。 図4は図2の積層体を有するタッチパネルを示す断面図である。
以下に、上記発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
《シート》
図1に示すように、本実施形態に係るシート10は、例えば透明ポリエステルフィルムなどのフィルム基材11を有する。本実施形態ではフィルム基材11の一方の面に、被膜12が形成されている。なお、フィルム基材11の両面に被膜12が形成される構成であってもよい。
《被膜》
本実施形態の被膜12は樹脂組成物で構成されており、フィルム基材11の内部からフィルム基材11の被膜12形成面側へのオリゴマーの析出を防止する機能を司る。
本実施形態において「オリゴマー」とは、加熱処理後、結晶化してフィルム基材11の表面に析出する低分子量物のうちフィルム基材11を構成するポリマーの三量体成分を主とするものと定義する。「オリゴマーの析出を防止する」とは、フィルム基材11を140〜150℃の温度で2〜3時間、加熱処理した後、フィルム基材11の被膜12形成面側を200倍の顕微鏡で観察した際に10視野当たり(面積0.5mm)、円相当径で1μmφ以上の析出物が50個未満、好ましくは20個以下、さらに好ましくは10個以下であることをいう。
なお、析出物の円相当径で1μmφ未満の場合、顕微鏡レベルではその存在を確認することは困難である。しかしながら、上述した加熱処理後に耐湿試験を行うと、析出物が成長し、円相当径で1μmφ以上となって顕微鏡で確認できるレベルになることもある。
《樹脂組成物》
本実施形態で用いる樹脂組成物は、樹脂成分(以下「A成分」と略記する。)を主成分として含有する。
《A成分》
本実施形態で用いられるA成分は、フィルム基材11の表面へのオリゴマーの析出を防止するオリゴマー析出防止成分として機能する。
A成分としては、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上、好ましくは155℃以上、より好ましくは180℃以上の非晶性樹脂が用いられる。本実施形態では、フィルム基材11を140〜150℃の温度で2〜3時間加熱処理した後の、オリゴマーの析出を防止する技術であるからである。特に、より高いTgを持つ非晶性樹脂を用いることで、オリゴマーの析出防止効果がより一層向上することが期待される。具体的には、Tgが150℃程度の非晶性樹脂を用いた場合、150℃での加熱が2時間程度までならばオリゴマーの析出防止効果を得ることができ、さらにはTgが180℃以上の高Tgの非晶性樹脂を用いた場合、150℃での加熱が2時間を超え7時間又は18時間程度までならば、オリゴマーの析出防止効果を得ることができることが確認されている(後出の実施例参照)。
Tgが150℃以上の非晶性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート(150℃)、セルロース誘導体(150〜190℃)、ポリスルフォン樹脂(190℃)、ポリアリレート樹脂(193〜238℃)、ポリエーテルイミド樹脂(217℃)、ポリエーテルサルフォン樹脂(225℃)、ポリアミドイミド樹脂(260〜280℃)などが挙げられる。括弧内の数字はその樹脂のTgを示している。
フィルム基材11を140〜150℃の温度で所定時間、加熱処理した際のオリゴマーの析出を防止する技術を検討するに際し、本発明者らは当初、樹脂のTgの如何によりオリゴマーの析出防止に寄与したりしなかったりするのではないかと考えていた。ところが実際の実験にて、Tgが150℃以上の例えばポリアミドイミド樹脂(260℃)で被膜を形成し、この被膜がフィルム基材に形成されたシートを加熱した場合、被膜形成面側へのオリゴマーの析出を防止することができないことが確認された。すなわち、オリゴマーの析出防止に樹脂のTgのみが関わっているのではなく、樹脂の構造面からの検討が必要であることを認識した。そこで本発明者らは、数ある熱可塑性樹脂の中からセルロース誘導体を選択し実験を進めたところ、そのセルロース誘導体を含む被膜を所定厚み以上(後述)でフィルム基材の表面に形成することにより、フィルム基材を加熱した際のオリゴマーの析出を効果的に防止することができることを見出し、こうした知見に基づいて本発明に到達したものである。
なお、セルロース誘導体がオリゴマーの析出防止にどのように作用しているのかについては必ずしも明らかではない。思うに、セルロース誘導体は1,4β−グリコシド結合を有し、鎖状構造になっており、また多くの水酸基を含有していることから、水素結合で強固な高分子を形成することができる。このため、見かけ上、架橋高分子と同じような密な構造を持ち、これがオリゴマーの析出防止に寄与しているのではないかと推測される。またTgがより高いセルロース誘導体(Tgが例えば180℃以上の高Tgを持つセルロース誘導体)は、上記密な構造が、より密となり、これがオリゴマーの防止効果により一層寄与するのではないかと思われる。
すなわち本実施形態のA成分としては、Tgが150℃以上(より好ましくは180℃以上)のセルロース誘導体を含む。セルロース誘導体としては、例えば、セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類などが挙げられる。本実施形態では、セルロース誘導体として、少なくともセルロースエステル類を用いることが好ましい。
セルロースエステル類としては、有機酸エステル類、無機酸エステル類、有機酸と無機酸の混合酸エステルなどが挙げられる。有機酸エステル類としては、例えば、脂肪族有機酸エステル、芳香族有機酸エステルなどが挙げられる。脂肪族有機酸エステルとしては、例えば、セルロースC2−6 アルキルカルボン酸エステル(例えばセルロースアセテート(以下単に「CA」とも言う。)、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(以下単に「CAP」とも言う。)、セルロースアセテートブチレート(以下単に「CAB」とも言う。)など)、アルキルセルロースエステル(例えばアセチルアルキルセルロースなど)、ハロアルキルセルロースエステル(例えばジクロロメチルセルロースエステル、トリクロロメチルセルロースエステル、トリフルオロメチルセルロースエステルなど)などが挙げられる。芳香族有機酸エステルとしては、例えば、C7−12芳香族カルボン酸エステル(例えばセルロースフタレート、セルロースベンゾエート、セルロース−4−メチルベンゾエートなど)などが挙げられる。無機酸エステル類としては、例えば、リン酸セルロース、硫酸セルロース、硝酸セルロース(ニトロセルロース)などが挙げられる。
セルロースカーバメート類としては、例えば、セルロースアリールカーバメート類(例えばセルロースフェニルカーバメートなど)、セルロースエーテルカーバメート類(例えばエチルセルロースフェニルカーバメートなど)などが挙げられる。
セルロースエーテル類としては、例えば、シアノアルキルセルロース(例えばシアノエチルセルロースなど)、C1−10アルキルセルロース(例えばメチルセルロース、エチルセルロースなどのC1−6 アルキルセルロースなど)、アラルキルセルロース(例えばベンジルセルロースなどのC6−12アリール−C1−4 アルキルセルロースなど)、ヒドロキシセルロースなどが挙げられる。
好ましいセルロース誘導体としては、セルロースエステル類のうち、少なくともアセチル基を有するセルロースエステルが挙げられる。少なくともアセチル基を有するセルロースエステルとしては、例えば、CA(例えばセルロースモノアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなど)、内部可塑化されたセルロース誘導体(例えばアセチルC3−6 アシルセルロース(例えばCAP、CABなど)など)などが挙げられる。中でも、CA、又は内部可塑化されたセルロース誘導体がより好ましく、さらに好ましくはセルロースモノアセテート又はCAPを含む。
セルロースエステル類の平均置換度は、例えば1〜3、好ましくは1.3〜3、より好ましくは1.5〜3、さらに好ましくは2〜3程度である。ここでの平均置換度とは、セルロース分子中に存在する3個の水酸基が平均してどの程度エステル化されているかを表す指標であり、この値が3の時はすべての水酸基がエステル化されていることを示す。
セルロースエステルとしてCAPを用いる場合、アセチル基の含有量よりもプロピオニル基の含有量の方が高いCAPを用いることが好ましい。この場合のプロピオニル基の含有量は、例えば30〜60質量%、好ましくは40〜50質量%である。アセチル基の含有量は、好ましくは0.2〜5質量%、より好ましくは0.5〜3質量%である。
セルロースエステルとしてCAを用いる場合、アセチル基の含有量は、例えば25〜60質量%、好ましくは30〜50質量%、より好ましくは35〜45質量%である。
セルロース誘導体の可塑化としては、(a)CAに軟質成分としてのC3−6 アシル基(例えばプロピオネート基、ブチレート基など)を導入し、内部可塑化する方法、(b)セルロース誘導体に可塑剤を添加し、外部可塑化する方法、(c)これら(a)及び(b)を組み合わせる方法などが挙げられる。
セルロース誘導体の内部可塑及び外部可塑に用いる可塑剤としては、特に限定されず、例えば、フタル酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、エポキシ誘導体などが挙げられる。好ましい可塑剤としては、フタル酸エステル(特にジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレートなどのジC1−8 アルキルフタレート)、C6−12アルカンジ又はトリカルボン酸C2−10アルキルエステル(特にジブチルセバケートなどのセバシン酸ジエステル、アセチルクエン酸トリエチルなどのクエン酸トリエステル)、多価アルコールのアセテート(例えばトリアセチンなど)、リン酸エステル(特にトリフェニルホスフェートなどのトリアリールホスフェート)などが挙げられる。
これらの可塑剤は、単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
セルロース誘導体と可塑剤との割合は、セルロース誘導体の種類に応じて決定することができ、前者/後者(重量比)で、例えば100/0〜50/50程度、好ましくは100/0〜60/40程度、より好ましくは100/0〜70/30程度とする。
好ましいセルロース誘導体として、市販品で一例を挙げると、CA−320S、CA−394−60S、CA−398−3(AC−3533B)、CA−398−6、CA−398−10、CA−398−30(以上セルロースアセテート、イーストマンコダック社);CAB−171−15、CAB321−0.1(以上セルロースアセテートブチレート、イーストマンコダック社);CAP−504−0.2(以上セルロースアセテートプロピオネート、イーストマンコダック社);などが挙げられる。
セルロース誘導体は、単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
《B成分》
本実施形態で用いる樹脂組成物は、A成分の他に、必要に応じてケイ素酸化物(以下「B成分」と略記する。)を含有することができる。
本実施形態で必要に応じて用いられるB成分は、基本的には被膜12の厚みを厚くした場合に生じうるブロッキング現象を防止する成分として機能するが、これとは別に、より長時間(150℃で2〜3時間を超える例えば7時間程度)加熱した際の、オリゴマーの析出防止効果に寄与する成分としても機能しうる。B成分としては、コロイダルシリカなどの二酸化珪素の他、オルガノポリシロキサンなどのシロキサン類化合物、シリコーン、水ガラスなどが挙げられる。中でも、コロイダルシリカを含むことが好ましい。樹脂組成物中にB成分を配合することにより、耐ブロッキング性の向上が期待される。
コロイダルシリカは、コロイドシリカ、コロイド珪酸ともいう。水中では、水和によって表面にSi−OH基を有する酸化ケイ素のコロイド懸濁液をいう。珪酸ナトリウムの水溶液に塩酸を加えると生成する。粒子の組成は不定で、シロキサン結合(−Si−O−、−Si−O−Si−)を形成し、高分子化しているものもある。粒子の表面は多孔性である。
水分散コロイダルシリカとしては、例えば日産化学工業社製の「スノーテックス」シリーズ(例えばO、OS、C、20など)や、触媒化成工業社製の「カタロイド」シリーズ(例えばSN、SA、SI−30など)などが挙げられる。
有機溶剤に分散したコロイダルシリカの有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、キシレン/n−ブタノールの混合物などが挙げられる。
有機溶剤分散コロイダルシリカとしては、例えばPMA−ST、MEK−ST、MIBK−ST、IPA−ST−L、IPA−ST−MS、EG−ST−ZL、DMAC−ST−ZL、XBA−ST(何れも日産化学工業社)、OSCAL1132、1332、1532、1722、ELCOM ST−1003SIV(何れも触媒化成工業社)などが挙げられる。
コロイダルシリカは、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
樹脂組成物中又は被膜12中での分散性と透明性などを考慮すると、コロイダルシリカの一次粒子径は、被膜12の厚みによって異なってくるが、本発明の場合、好ましくは0.5〜100nmとし、より好ましくは2〜50nm、さらに好ましくは5〜35nm、特に好ましくは10〜20nm程度とする。一次粒子径が大きすぎると、コロイダルシリカの樹脂組成物中での分散安定性が低下したり、被膜12が形成された際の透明性が低下するおそれがある。
水又は有機溶剤に分散したコロイダルシリカ中のコロイダルシリカの割合は、特に限定されず、コロイダルシリカが5〜50質量%、特に10〜30質量%となるように水又は有機溶剤に分散されたものを用いることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物中におけるB成分の使用量は、特に限定されないが、100重量部のA成分に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.75重量部以上、さらに好ましくは1.0重量部以上である。B成分の配合比率が少なすぎると、B成分配合の効果(基本的にはブロッキング防止効果の付与)に乏しいからである。より長時間(150℃で2〜3時間を超える例えば7時間程度)加熱した際の、オリゴマーの析出防止効果を発揮させる観点からは、B成分の使用量を、100重量部のA成分に対して、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上とする。B成分の使用量を10重量部以上とすることで、より長時間加熱した際のオリゴマー析出防止効果が発揮されるメカニズムは必ずしも明らかではない。思うに、B成分の使用量が10重量部以上と多くなると、加熱時に起こるA成分の分子内運動を抑える効果が発現し、これによりオリゴマーの動きを防止するものと推測される。
その一方で、B成分の配合比率が多すぎると、形成後の被膜のヘーズ値が向上し、透過率が低下するなどの不都合を生じうる。このため、本実施形態では、B成分を配合する場合の当該B成分の使用量を、100重量部のA成分に対して、好ましくは100重量部以下、より好ましくは50重量部以下、さらに好ましくは30重量部以下とする。B成分の使用量が多くなるほどガラス状の膜となっていく傾向にあるので、B成分の使用量が多くなりすぎると、膜がパリパリと脆い膜となってしまい、好ましくない。
《C成分》
本実施形態の樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、上述したA成分及びB成分の他に、必要に応じて添加成分(以下「C成分」と略記する。)を適宜配合することもできる。C成分としては、例えば、表面調整剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、蛍光増白剤、難燃剤、抗菌剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、流動調整剤、消泡剤、分散剤、貯蔵安定剤、架橋剤、シランカップリング剤などが挙げられる。
本実施形態の樹脂組成物は、通常は塗工液の形態で実現される。例えば、上述したA成分(必要に応じてさらにB成分)を、有機溶剤などの希釈溶媒で溶解または分散させた後、必要に応じて添加剤を加えることで、塗工液を調製することができる。有機溶剤としては、特に限定されないが、アルコール類(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等)、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等)、エーテル類(例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等)、芳香族炭化水素類(例えばベンゼン、トルエン、キシレン等)、アミド類(例えばジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)が挙げられる。
《被膜の製造方法》
本実施形態では、上述した樹脂組成物をフィルム基材11の上に塗布し、乾燥させることにより被膜12を得ることができる。
フィルム基材11としては、例えば透明ポリエステルフィルムなどが用いられる。フィルム基材11は、その表面に易接着処理が施されていてもよい。フィルム基材11の厚みは特に限定されない。
樹脂組成物の塗布(コーティング)は、常法によって行えばよく、例えばバーコート、ダイコート、ブレードコート、スピンコート、ロールコート、グラビアコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、スクリーン印刷、刷毛塗りなどを挙げることができる。
本実施形態では、塗布乾燥後の塗膜厚みが、後述する所定厚みとなるように塗布することが好ましい。本実施形態の樹脂組成物をフィルム基材11に塗布したら、塗布後の塗膜を50〜120℃程度で乾燥させることが好ましい。熱風などを用いて積極的に乾燥させる方法の他、常温で所定時間放置することにより乾燥させることもできる。
上述した樹脂組成物の乾燥被膜で構成される被膜12は、好ましくは30nm以上、さらに好ましくは50nm以上の厚み(t)を有する。被膜12の厚みが薄くても加熱後のオリゴマー析出抑制効果はあるが、厚みが薄すぎるとオリゴマーが被膜12を通り抜けやすくなり、オリゴマーの析出防止効果を十分に発揮することができない。
その反面、加熱後のオリゴマー析出抑制効果を十分に生じさせるには、被膜12の厚みは厚いほどよいが、被膜12の厚みをあまりに厚く形成しすぎることは資源の無駄でもあり、また加工適正に影響を与えることもある。被膜12の厚みを厚く形成しすぎた場合において、例えば折り曲げ加工などのフィルム加工を行った際にクラックを生じることがある。クラックを生じた状態の被膜12を含むシートを加熱処理した場合、被膜12のクラック部分を通じてフィルム基材11の内部からオリゴマーが析出してくることもある。また、被膜12の厚みを厚く形成しすぎると、ブロッキングを生じやすくなる傾向もある。
そこで本実施形態では、被膜12の厚みtを、例えば1μm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは90nm以下、特に好ましくは80nm以下とすることができる。被膜12にクラックを生じることがないと、フィルム基材11の内部からフィルム基材11の被膜12形成面側へのオリゴマーの析出が効果的に防止され、その結果、シート10の光学特性が悪化することが防止される。
《積層体》
図2及び図3に示す積層体20は、何れも、図1に示すシート10を有する。以下の説明では、シート10として、フィルム基材11の一方の面に被膜12を有する場合を例示する。
図2に示すように、本実施形態の第1の観点では、シート10の被膜12とは反対面に各種機能が付与される第1機能層22が積層してある。第1機能層22としては、例えばハードコート層、反射防止層などの単層膜又は多層膜が挙げられる。
図3に示すように、本実施形態の第2の観点では、シート10の被膜12の面に、粘着層や透明導電層などの第2機能層24が形成してある。この場合、シート10の被膜12とは反対面に、さらに図2に示す第1機能層22が積層してあってもよい。
《ハードコート層》
ハードコート層は、積層体20の表面硬度を高くし、表面に傷が発生することを防止するために設けられる。従って、第1機能層22としてハードコート層を用いる場合の当該ハードコート層の表面硬度は、好ましくはH以上、より好ましくは2H以上、さらに好ましくは3H以上である。表面硬度の値は、JIS−K5400(1990)に準拠した方法で測定した鉛筆引っかき値(鉛筆硬度)で示される。
ハードコート層は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などの樹脂で構成される。特に、電離放射線硬化性樹脂で構成した場合には、表面硬度等に代表されるハードコート性を発揮できるため好ましい。
熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂としては、例えばポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアタリレート系樹脂、ポリウレタンアタリレート系樹脂、エポキシアタリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、アセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂としては、電離放射線(紫外線または電子線)の照射によって架橋硬化する光重合性プレポリマーを用いることができる。この実施形態では、後述の光重合性プレポリマーを単独で使用してもよく、また2種以上を組合せて使用することもできる。
光重合性プレポリマーには、カチオン重合型とラジカル重合型とがある。
カチオン重合型光重合性プレポリマーとしては、エポキシ系樹脂やビニルエーテル系樹脂などが挙げられる。エポキシ系樹脂としては、例えばビスフェノール系エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。
ラジカル重合型光重合性プレポリマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となるアクリル系プレポリマー(硬質プレポリマー)が、ハードコート性の観点から特に好ましく使用される。
アクリル系プレポリマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート、ポリフルオロアルキルアクリレート、シリコーンアクリレート等が挙げられる。
ウレタンアクリレート系プレポリマーは、例えばポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸との反応でエステル化することにより得ることができる。ポリエステルアクリレート系プレポリマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、又は、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシアクリレート系プレポリマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラックエポキシ樹脂のオキシラン環と、(メタ)アクリル酸との反応でエステル化することにより得ることができる。アクリル系プレポリマーは単独でも使用可能であるが、架橋硬化性の向上や、硬化収縮の調整等、種々の性能を付与するために、光重合性モノマーを加えることが好ましい。
光重合性モノマーとしては、単官能アクリルモノマー(例えば2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート等)、2官能アクリルモノマー(例えば1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート等)、3官能以上のアクリルモノマー(例えばジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等)が挙げられる。なお、「アクリレート」には、文字通りのアクリレートの他、メタクリレートも含む。これらの光重合性モノマーは単独で使用してもよく、また2種以上を組合せて使用することもできる。
ハードコート層を形成する際に、紫外線照射によって硬化させて使用する場合には、上述した光重合性プレポリマー及び光重合性モノマーの他に、光重合開始剤、光重合促進剤、紫外線増感剤等の添加剤を配合することが好ましい。
光重合開始剤としては、ラジカル重合型光重合性プレポリマーや光重合性モノマーに対しては、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α−アシルオキシムエステル、チオキサンソン類等が挙げられる。カチオン重合型光重合性プレポリマーに対する光重合開始剤としては、例えば芳香族スルホニウムイオン、芳香族オキソスルホニウムイオン、芳香族ヨードニウムイオンなどのオニウムと、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネートなどの陰イオンとからなる化合物が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を組合せて使用することもできる。光重合促進剤としては、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどが挙げられる。紫外線増感剤としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィンなどが挙げられる。
これら添加剤の配合量は、上述した光重合性プレポリマー及び光重合性モノマーの合計100重量部に対して、通常0.2〜10重量部の範囲で選ばれる。
この実施形態のハードコート層には、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、必要に応じて、添加成分を適宜配合してもよい。添加成分としては、例えば、表面調整剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、蛍光増白剤、難燃剤、抗菌剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、流動調整剤、消泡剤、分散剤、貯蔵安定剤、架橋剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
ハードコート層は、その厚みが、0.1〜30μm程度であることが好ましい。より好ましくは0.5〜15μm、さらに好ましくは2〜10μmとする。厚みを0.1μm以上とすることで、ハードコート層側にも十分な表面硬度(ハードコート性)を発揮させることができる。
《反射防止層》
反射防止層は、ハードコート層の表面に設けられ、ハードコート層の表面部分での映り込みを減少させ、積層体20全体の全光線透過率を向上させるために設けられる。表面部分での映り込みを防止するためにハードコート層の屈折率を小さく設計することも考えられる。ところが、屈折率が小さくなるようにハードコート層を設計すると、ハードコート層のハードコート性が低下することがあるので、ハードコート層の表面に、ハードコート層の屈折率より低い屈折率を持つ反射防止層を薄い厚みで形成することが好ましい。
反射防止層は、ハードコート層よりも屈折率の低い材料で構成されればよく、例えば、Si、Ti、Zn、Y、Zr、In、Sn、Sb、Hf、Ta、Ce、Pr、Ndなどの酸化物;Li、Na、Mg、Al、Ca、La、Nd、Pbなどのフッ化物;Ti、Cr、Zr、Ni、Moなどの単体;などが挙げられる。これらの各種材料を適宜選択し、真空成膜法(例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法など)により形成することができる。また、例えばケイ素系樹脂、フッ素系樹脂、金属酸化物ゾルや、これらに金属酸化物微粒子、好ましくは多孔状または中空状の金属酸化物微粒子を加えたものが挙げられる。またハードコート層の説明欄で列挙した樹脂に前記金属酸化物微粒子を加えたものも使用可能である。
金属酸化物ゾルとしては、シリカ、アルミナゾルなどが挙げられる。これら金属酸化物ゾルの中でも、屈折率、流動性、コストの観点から、シリカゾルが好適に使用される。なお、金属酸化物ゾルとは、金属酸化物の存在によってチンダル現象を観測できない材料をいい、いわゆる均一溶液のことをいう。例えば、一般にコロイダルシリカゾルと言われる材料であっても、チンダル現象が観測されるものであれば、この実施形態では金属酸化物ゾルに含まれないものとする。
このような金属酸化物ゾルは、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジルコニアプロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、チタンブトキシド、チタンイソプロポキシドなどの金属アルコキシドを加水分解して調整することができる。金属酸化物ゾルの溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、1,4一ジオキサンなどが挙げられる。
金属酸化物微粒子は、上述した金属酸化物を微粉末化したものであり、シリカ微粒子、アルミナ微粒子などが挙げられる。これらの中でも屈折率、流動性、コストの観点から、シリカ微粒子が好適に使用される。また、金属酸化物微粒子の形状は特に制限されることはないが、屈折率の低い多孔状又は中空状の金属酸化物微粒子が好適に使用される。
このような金属酸化物微粒子としては、これを分散液とした際にチンダル現象が観測されるような一定の粒子径を有するものを使用する。金属酸化物微粒子の平均粒子径は、前記条件を満たす限り特に制限されることはないが、40〜100nmの範囲であることが好ましい。平均粒子径が40nm以上の微粒子を用いることにより、反射防止層の表面に浮上する金属酸化物粒子がなくなり、表面硬度の低下を防止することができ、100nm以下の微粒子を用いることで、反射防止層から金属酸化物微粒子がはみ出すことがなくなり、表面硬度の低下を防止することができる。また、透明性を良好なものとするために、金属酸化物微粒子の平均粒子径は、さらに好ましくは40〜70nmの範囲とする。
金属酸化物ゾルと金属酸化物微粒子の混合割合は、特に限定されるものではないが、金属酸化物ゾル中の金属酸化物成分100重量部に対し、金属酸化物微粒子が、好ましくは5重量部以上、より好ましくは20重量部以上であり、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下である。
反射防止層の厚みは、光の反射防止理論より次式を満たすことが好ましい。
[数1] d=(a十1)λ/4n
ここで、dは反射防止層の厚み(単位は「nm」)、aは0又は正の偶数、λは反射を防止しようとする光の中心波長、nは反射防止層の屈折率である。具体的には、例えば2μm程度以下が好ましく、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.8μm以下、特に好ましくは0.5μm以下、最も好ましくは0.3μm以下である。反射防止層の厚みが厚くなると、厚みムラに起因する干渉ムラが発生し難くなる反面、下面に設けられるハードコート層のハードコート性が発揮され難くなる。
上述したハードコート層、反射防止層の形成方法としては、各々の構成成分や必要に応じて他の成分を配合して、さらに適当な溶媒に溶解又は分散させて塗布液を調製し、当該塗布液をロールコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、エアナイフコーティング法、ダイコーティング法、ブレードコーティング法、スピンコーティング法、グラビアコーティング法、フローコーティング法、スクリーン印刷法などの公知の方法によりシート10に順次塗布して乾燥させ、必要であれば適宜必要な硬化方法で硬化させることにより形成することができる。
《粘着層》
粘着層としては、例えば、天然ゴム系、再生ゴム系、クロロプレンゴム系、ニトリルゴム系、スチレン・ブタジエン系などのエラストマー粘着剤、アクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ウレタン系、シアノアクリレート系などの合成樹脂粘着剤のほか、エマルジョン系粘着剤などの公知の粘着剤で構成することができる。粘着層は、粘着性を発揮させるために厚み5μm以上にするのが一般的である。
上述した第1機能層22には、紫外線吸収性能をもたせることも可能である。特に350〜380nmの範囲の光線透過率を0.1%〜70%程度とした場合、ハードコート性を保持しながら、耐候性を付与することができる。ハードコート層に電離放射線硬化性樹脂を用いた場合には、電離放射線硬化性樹脂が硬化する紫外線領域と吸収する紫外線領域を調整することにより、ハードコート層の硬化に影響を与えることなく、紫外線吸収性の付与できる。例えば、紫外線吸収剤の吸収波長域のピークと20nm以上異なる位置に吸収波長域のピークを有する光重合開始剤を用いることが好ましい。このようにすることによりハードコート層を十分に硬化させることができ、優れたハードコート性を付与することができる。
《透明導電層》
透明導電層としては、例えば一般的に広く知られた透明導電性材料や有機導電性材料などで構成することができる。透明導電性材料としては、例えば、酸化インジウム、酸化錫、酸化インジウム錫、金、銀、パラジウムなどの透明導電性物質が挙げられる。有機導電性材料としては、例えばポリパラフェニレン、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリフラン、ポリセレノフェン、ポリピリジン等の導電性高分子が挙げられる。中でも、透明性と導電性に優れ、比較的低コストに得られる酸化インジウム、酸化錫又は酸化インジウム錫のいずれかを主成分とした透明導電性材料で構成されていることが好ましい。
透明導電層は、上述した導電性材料を用いて、ドライプロセス(例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法など)やウェットプロセス(例えば溶液塗布法など)により、薄膜状態で形成することができる。
透明導電層の厚みは、適用する材料によっても異なるため一概には言えないが、表面抵抗率で1000Ω以下、好ましくは500Ω以下になるような厚みとする。例えば、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがさらに好ましい。経済性を考慮すると、80nm以下、好ましくは70nm以下の範囲が好適である。このような薄膜においては透明導電層の厚みムラに起因する可視光の干渉縞は発生しにくい。また、全光線透過率は通常80%以上であることが好ましく、85%以上がさらに好ましく、88%以上が特に好ましい。
本実施形態では特に、シート10の被膜12とは反対面側に、透明ハードコート層と反射防止層が順次積層された第1機能層22が形成してあり、被膜12の表面側に、透明導電層で構成される第2機能層24が形成してある構造の積層体20は、帯電防止フィルムや赤外線遮蔽フィルム、反射防止フィルム、電磁波シールドフィルム、タッチパネルなどの電極基板として使用することができる。
以下の説明では、シート10の被膜12とは反対面側に透明ハードコート層と反射防止層が順次積層された第1機能層22が形成してあり、被膜12の表面側に透明導電層で構成される第2機能層24が形成してある積層体20を、タッチパネルに使用する場合を例示する。
《タッチパネル》
図4に示すタッチパネル5は、各種電子機器(例えば携帯電話やカーナビ等)に設けられる液晶等の表示素子9の前面に装着される抵抗膜方式のタッチパネルである。このタッチパネル5を通して背面の表示素子9に表示された文字や記号、絵柄等の視認や選択を行い、指や専用ペン等で押圧操作することによって、機器の各機能の切換えを行うことができる。
この実施形態のタッチパネル5は、上電極基板(第1の電極基板)52と、下電極基板(第2の電極基板)54とを有する。上電極基板52は、上透明基板(第1の透明基板)522を有する。上透明基板522の下面には、上透明導電膜(第1の透明導電膜)524が形成されている。下電極基板(第2の電極基板)54は、下透明基板(第2の透明基板)542を有する。下透明基板542の上面には、下透明導電膜(第2の透明導電膜)544が形成されている。
タッチパネル5は、上電極基板52側と下電極基板54側の何れかが可動電極であってもよいが、この実施形態では、上電極基板52を可動電極とし、下電極基板54を固定(非可動)電極とする場合を例示する。
この実施形態では、上電極基板52の下面と下電極基板54の上面のそれぞれの外周部分は、略額縁状のスペーサ56を介して貼り合わされている。また、上電極基板52の上透明導電膜524と、下電極基板54の下透明導電膜544とが、所定の間隙を空けて対向するように配置されている。下透明導電膜544の上面には、必要に応じてドット状のスペーサ58が所定間隔で複数配置される。なお、スペーサ58は必要に応じて配置すれば良く、スペーサ58を配置しない構成にすることも可能である。
上下透明導電膜524,544の両端には、それぞれ一対の電極(図示省略)が形成されている。この実施形態では、上透明導電膜524に形成される一対の上電極(図示省略)と、下透明導電膜544に形成される一対の下電極(図示省略)とは、互いに交差する方向に配置されている。
なお、この実施形態では、下電極基板54の下面には、接着層7を介してセパレータ(図示省略)が貼付してあってもよい。
この実施形態のタッチパネル5を、例えばカラー液晶等の表示素子9の前面に搭載するには、まずこの実施形態のタッチパネル5のセパレータ(図示省略)を剥がして接着層7を露出させ、表示素子9の前面に対向するように接触させる。これにより、タッチパネル付きカラー液晶表示素子を形成することができる。
このタッチパネル付き液晶表示素子では、ユーザがタッチパネル5の背面に配置される表示素子9の表示を視認しながら、指やペン等で上電極基板52の上面を押圧操作すると、上電極基板52が撓み、押圧された箇所の上透明導電膜524が下透明導電膜544に接触する。この接触を上述した一対の上下電極を介して電気的に検出することにより、押圧された位置が検出される。
この実施形態では、可動電極としての上電極基板52を、上述した積層体20(=下から上へ向けて順次、第2機能層24(透明導電層)、被膜12、フィルム基材11、第1機能層22(透明ハードコート層及び反射防止層)が積層してある構造)で構成してある。積層体20の第2機能層24(透明導電層)が上透明導電膜524に相当する。
この実施形態では、固定電極としての下電極基板54の下透明基板542は、例えばガラスなどで構成される。
なお、この実施形態では、可動電極に加えて、固定電極(下電極基板54)にも、上述した積層体20を用いることもできる。これにより、より軽く、より薄型で、割れにくいタッチパネルとすることができる。
以上説明した実施形態は、上記発明の理解を容易にするために記載されたものであって、上記発明を限定するために記載されたものではない。従って、上記の実施形態に開示された各要素は、上記発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
次に、上記発明の実施形態をより具体化した実施例を挙げ、さらに詳細に説明するが、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、本例において「部」、「%」は、特に示さない限り重量基準である。
《実験例1》
まず、塗布液1(樹脂組成物)と塗布液2を調製した。
<塗布液1の処方>
・セルロースアセテートプロピオネート(固形分100%) 0.16部
(CAP504−0.2、Tg159℃、アセチル基の含有量0.6%、プロピオニル基の含有量42.5%、数平均分子量15000、イーストマンコダック社)
・メチルエチルケトン 9.92部
・シクロヘキサノン 9.92部
<塗布液2の処方>
・電離放射線硬化型樹脂組成物(固形分100%) 10部
(ビームセット575、荒川化学工業社)
・光重合開始剤 0.5部
(イルガキュア651:チバ・ジャパン社)
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 23部
次に、塗布液1を、フィルム基材11としての厚み125μmのPETフィルム(OFW、帝人デュポンフィルム社製)の一方の面(第1面)にバーコーター法により塗布し、100℃及び90秒の条件で乾燥させて、厚み15nmの被膜12を形成した。
次に、塗布液2を、フィルム基材11の他方の面(第2面)にバーコーター法により塗布し、乾燥させて塗膜を形成した。形成した塗膜に対し、高圧水銀灯で紫外線を照射し(照射量400mJ/cm)、厚み6μmのハードコート層を形成し、シート試料を得た。
《実験例2》
塗布液1を用いて、フィルム基材11の表面に厚み30nmの被膜12を形成した以外は、実験例1と同様の条件でシート試料を得た。
《実験例3》
塗布液1を用いて、フィルム基材11の表面に厚み50nmの被膜12を形成した以外は、実験例1と同様の条件でシート試料を得た。
《実験例4》
塗布液1を用いて、フィルム基材11の表面に厚み60nmの被膜12を形成した以外は、実験例1と同様の条件でシート試料を得た。
《実験例5》
塗布液1を用いて、フィルム基材11の表面に厚み105nmの被膜12を形成した以外は、実験例1と同様の条件でシート試料を得た。
《実験例6》
CAP504−0.2に代え、セルロースアセテートプロピオネート(CAP482−0.5、固形分100%、Tg142℃、アセチル基の含有量2.5%、プロピオニル基の含有量45.0%、数平均分子量25000、イーストマンコダック社)を配合した塗布液1を用いて、フィルム基材11の表面に厚み60nmの被膜12を形成した以外は、実験例1と同様の条件でシート試料を得た。
《実験例7》
CAP504−0.2に代え、ポリアミドイミド樹脂(バイロマックスHR15ET、Tg260℃、東洋紡績社)を配合した塗布液1を用いて、フィルム基材11の表面に厚み60nmの被膜12を形成した以外は、実験例1と同様の条件でシート試料を得た。
《実験例8a》
CAP504−0.2に代え、セルロースアセテート(AC−3533B、固形分100%、Tg180℃、アセチル基の含有量39.8%、数平均分子量30000、イーストマンコダック社)を配合した塗布液1を用いて、フィルム基材11の表面に厚み60nmの被膜12を形成した以外は、実験例1と同様の条件でシート試料を得た。
《実験例8b》
フィルム基材11の表面に厚み105nmの被膜12を形成した以外は、実験例8aと同様の条件でシート試料を得た。
《実験例9》
塗布液1の代わりに塗布液2を準備し、この塗布液2を、フィルム基材11の第1面にバーコーター法により塗布し、乾燥させて塗膜を形成した。形成した塗膜に対し、高圧水銀灯で紫外線を照射し(照射量400mJ/cm)、厚み1μm(1000nm)の樹脂からなる被膜を形成し、シート試料を得た。
《実験例10》
フィルム基材11の一方の面(第1面)には被膜を形成せず、塗布液2を用いて、フィルム基材11の他方の面(第2面)にのみ厚み6μmのハードコート層を形成した以外は、実験例1と同様の条件でシート試料を得た。
《実験例11a》
ケイ素酸化物の有機溶剤分散液(固形分30%、MEK−ST、粒子径10〜20nm、日産化学工業社)を、セルロースアセテートプロピオネート(CAP504−0.2)100部に対してケイ素酸化物が0.75部となる量(0.004部)で配合した塗布液1を用いて、フィルム基材11の表面に被膜12を形成した以外は、実験例5と同様の条件でシート試料を得た。
《実験例11b》
実験例11aのMEK−STを、セルロースアセテートプロピオネート(CAP504−0.2)100部に対してケイ素酸化物が1.5部となる量(0.008部)で配合した塗布液1を用いて、フィルム基材11の表面に被膜12を形成した以外は、実験例5と同様の条件でシート試料を得た。
《実験例11c》
実験例11aのMEK−STを、セルロースアセテートプロピオネート(CAP504−0.2)100部に対してケイ素酸化物が10部となる量(0.053部)で配合した塗布液1を用いて、フィルム基材11の表面に被膜12を形成した以外は、実験例5と同様の条件でシート試料を得た。
《実験例12》
実験例11aのMEK−STを、実験例8aのセルロースアセテート(AC−3533B)100部に対してケイ素酸化物が10部となる量(0.053部)で配合した塗布液1を用いて、フィルム基材11の表面に被膜12を形成した以外は、実験例5と同様の条件でシート試料を得た。
《特性の評価》
上記実験例1〜12で得られたシート試料について、下記(1)〜(2)の特性を評価した。また実験例4,5,11a〜11c,12で得られたシート試料については、さらに下記(3)の特性を評価した。結果を表1に示す。
(1)耐熱性
(1−1)オリゴマー析出防止性(顕微鏡)
得られたシート試料を150℃のオーブンに投入し、2時間後、7時間後、18時間後にそれぞれ取り出した(3つの試料を使用)。次に、取り出したシート試料の被膜12側(若しくは第1面側)を顕微鏡(200倍)で観察し、10視野当たり(面積0.5mm)に、円相当径で1μmφ以上の析出物が10個以下であった(オリゴマーの析出が全く認められなかった)ものを「○」、上記析出物が20個を超え50個未満であった(オリゴマーの析出がやや認められたが問題なしと考えられる)ものを「△」、上記析出物が50個を超えた(オリゴマーの析出が認められた)ものを「×」として評価した。
(1−2)オリゴマー析出防止性(ヘーズ変化率)
まず、得られたシート試料に対し、ヘーズメータNDH2000(日本電色社)を用いてヘーズ値「%」(JIS−K7136:2000)を測定し、加熱前ヘーズ値を得た。その後、加熱前ヘーズ値測定後のシート試料を上記(1−1)と同様に150℃のオーブンに投入して2時間後、7時間後、18時間後にそれぞれ取り出した(3つの試料を使用)。次に、取り出したシート試料に対して上記同様にヘーズ値を測定し、加熱後ヘーズ値を得た。そして、下記式により加熱前後のヘーズ変化率「%」を算出した。その結果、ヘーズ値の変化率が0.5%以下の場合を「○」、0.5%超の場合を「×」として評価した。
[数2] ヘーズ値の変化率=(加熱前ヘーズ値−加熱後ヘーズ値)
(1−3)オリゴマー析出防止性(折り曲げ試験後)
得られたシート試料を被膜12が外側になるように2つに折り曲げた後、上記(1−1)と同様に、シート試料を150℃のオーブンに投入し、2時間後、7時間後、18時間後にそれぞれ取り出した(3つの試料を使用)。次に、取り出したシート試料の被膜12側(若しくは第1面側)を上記(1−1)と同様に観察し、同様の基準で評価した。
(2)折り曲げ試験による耐クラック性
上記(1−3)と同様に、得られたシート試料を被膜12が外側になるように2つに折り曲げ、その折り曲げた部分の被膜12にクラックを生じるか否かを目視で観察した。その結果、クラックが確認できなかったものを「○」、クラックを確認できたものを「×」として評価した。
(3)耐ブロッキング性
シート試料のハードコート層面に、別途用意したシート試料の被膜12の面を重ね合わせた。次に、両シート試料をガラス板で挟み込み、約2kgの重りを載せて60℃の雰囲気下に72時間放置した。次に、重ね合わせ面を目視により観察しニュートンリングの発生状況を確認した後、両者を剥離した。その結果、剥離前はニュートンリングが発生しておらず、剥離時には剥離音を立てずに軽く剥離されるものを「○」、剥離前は一部ニュートンリングが発生しており、剥離時には小さな剥離音を立てながら剥離されるものを「△」、剥離前は全面にニュートンリングが発生しており、剥離時には大きな剥離音を立てて剥離されるものを「×」として評価した。
Figure 2010253934
表1の結果から以下の事項が理解される。まず、Tgが150℃以上のセルロースアセテートプロピオネート(以下「特定の樹脂」と略記する。)を含む樹脂組成物で被膜12を構成しても、被膜12の厚みが薄すぎると(実験例1)、被膜12を形成する効果が得られず、被膜12の表面にオリゴマーが析出する。このオリゴマーが析出することに起因してヘーズ変化率が増大する。また、耐熱耐湿性が悪化する。
次に、Tgが150℃未満のセルロースアセテートプロピオネートを含む樹脂組成物で被膜12を構成した場合(実験例6)、折り曲げによって被膜12にクラックを生じることはないが、加熱によりオリゴマーの析出防止性が低下し、被膜12の表面にオリゴマーが析出する傾向にある。このオリゴマーが析出することに起因してヘーズ変化率が増大する。耐熱耐湿性も悪化する。
次に、Tgが150℃以上であってもセルロース誘導体以外のポリアミドイミド樹脂を含む樹脂組成物で被膜12を構成した場合(実験例7)、折り曲げによって被膜12にクラックを生じることはないが、加熱によりオリゴマーの析出防止性が低下し、被膜12の表面にオリゴマーが析出する傾向にある。このオリゴマーが析出することに起因してヘーズ変化率が増大する。耐熱耐湿性も悪化する。
次に、特定の樹脂を含む樹脂組成物で構成される被膜12に代え、電離放射線硬化型樹脂組成物で構成される被膜を形成した場合(実験例9)、厚みが厚いことに起因して(1000nm)、折り曲げ試験による耐クラック性が悪化する。その結果、その後に加熱処理を行った場合に、生じたクラックを通じてオリゴマーが析出することが確認できた。
次に、フィルム基材11の第1面に被膜12を形成しなかった場合(実験例10)、この第1面からオリゴマーが析出する。このオリゴマーが析出することに起因してヘーズ変化率が増大する。
これに対し、特定の樹脂を含む樹脂組成物を用い、被膜12を所定厚み以上で形成すると(実験例2〜5)、いずれの特性についても良好な結果が得られる。
次に、フィルム基材11の第1面に形成する被膜12の厚みが比較的厚い場合、これに起因してブロッキングを生じやすい(実験例5)。これに対し同じ厚みであっても、ケイ素酸化物を配合することで耐ブロッキング性の向上が認められる(実験例11a,11b)。なお、被膜12の厚みが適正値であれば、ケイ素酸化物を配合しなくてもブロッキングは生じない(実験例4)。
特定の樹脂として、Tgが159℃のセルロースアセテートプロピオネート(CAP)を用いた場合(実験例4,5)と比較して、Tgがより高い、Tg180℃のセルロースアセテート(CA)を用いた場合(実験例8a,8b)には、より長時間の加熱によってもオリゴマーの析出防止効果が得られることが確認できた。
また、ケイ素酸化物の配合比率を高めることで(実験例11c)、その配合比率が少量のもの(実験例11a,11b)と比較して、耐ブロッキング性の向上はもとより、より長時間(7時間)の加熱によってもオリゴマーの析出防止効果が得られることが確認できた。
さらに、ケイ素酸化物の配合比率を高めるとともに、特定の樹脂として、Tg159℃のCAP(実験例11c)に代え、Tg180℃のCAを用いた場合(実験例12)には、より一層長時間(18時間)の加熱によってもオリゴマーの析出防止効果が得られることが確認できた。
なお、フィルム基材11として、厚さ125μmのPETフィルム(A4350、東洋紡社製、易接着層あり)、厚さ125μmのPETフィルム(O300E、三菱化学ポリエステルフィルム社製、易接着層あり)についても、上述した実験例1〜12と同様の被膜12を形成し、同様の評価を行ったところ、同様の傾向があることが確認できた。
《実験例13》
実験例4で得られたシート試料のハードコート層の上に、波長550nmの付近で最小反射率となるように厚さ約0.1μmの反射防止層(屈折率:1.36)を形成した。次に、シート試料の被膜12形成面に、厚み約20nmのITO膜をスパッタリング法で形成した。
このようにして得られた第1積層体試料で、図4に示す上電極基板52を構成した。
次に、図4に示す下電極基板54としての第2積層体試料を、厚み1mm強化ガラス板の一方の面に、厚み約20nmのITO膜をスパッタリング法で形成した後、これを4型の大きさ(縦87.3mm×横64.0mmの長方形)に切り取ることにより作製した。
次に、第2積層体試料のITO膜を有する面に、スペーサー用塗布液として電離放射線硬化性樹脂(DotCureTR5903:太陽インキ社)をスクリーン印刷法によりドット状に印刷した後、高圧水銀灯で紫外線を照射して、直径50μm、高さ8μmのスペーサ58を1mmの間隔で配列させた。
次に、両試料のITO膜が所定のギャップを隔てて対向するように、第1積層体試料と、スペーサ58を配列させた第2積層体試料とを配置し、厚み30μm、幅3mm両面接着テープで縁を接着し、図4に示すタッチパネル5に相当するタッチパネル試料を作製した。なお、この実験例では、両試料の接着部分がタッチパネル試料の表示面の領域外となるようにした。
作製したタッチパネル試料は、良好に操作をすることができることが確認できた。
10…シート、11…フィルム基材、12…被膜、20…積層体、22…第1機能層(機能層)、24…第2機能層(機能層)、5…タッチパネル、52…上電極基板(第1の電極基板)、522…上透明基板(第1の透明基板)、524…上透明導電膜(第1の透明導電膜)、54…下電極基板(第2の電極基板)、542…下透明基板(第2の透明基板)、544…下透明導電膜(第2の透明導電膜)、56,58…スペーサ、7…接着層、9…表示素子。

Claims (15)

  1. フィルム基材の表面に、厚みが30nm以上の被膜を有するシートであって、
    前記被膜は、樹脂成分を含む樹脂組成物で構成されており、
    前記樹脂成分は、150℃以上のガラス転移温度を持つセルロース誘導体を含むことを特徴とするシート。
  2. 請求項1記載のシートにおいて、
    前記セルロース誘導体は、セルロースエステル類を含むことを特徴とするシート。
  3. 請求項2記載のシートにおいて、
    前記セルロースエステル類は、脂肪族有機酸エステルを含むことを特徴とするシート。
  4. 請求項3記載のシートにおいて、
    前記脂肪族有機酸エステルは、セルロースC2−6 アルキルカルボン酸エステルを含むことを特徴とするシート。
  5. 請求項4記載のシートにおいて、
    前記セルロースC2−6 アルキルカルボン酸エステルは、セルロースアセテート又はセルロースアセテートプロピオネートを含むことを特徴とするシート。
  6. 請求項5記載のシートにおいて、
    前記セルロースアセテートプロピオネートは、アセチル基の置換度よりも高いプロピオニル基の置換度を持ち、前記プロピオニル基の置換度が1.8〜2.5であることを特徴とするシート。
  7. 請求項1〜6の何れか一項記載のシートにおいて、
    前記樹脂組成物は、ケイ素酸化物を含み、
    前記ケイ素酸化物は、100重量部の前記樹脂成分に対して、0.1重量部以上含有することを特徴とするシート。
  8. 請求項1〜6の何れか一項記載のシートにおいて、
    前記樹脂組成物は、ケイ素酸化物を含み、
    前記ケイ素酸化物は、100重量部の前記樹脂成分に対して、10重量部以上含有することを特徴とするシート。
  9. 請求項7又は8記載のシートにおいて、
    前記ケイ素酸化物は、コロイダルシリカを含むことを特徴とするシート。
  10. 請求項1〜9の何れか一項記載のシートにおいて、
    前記被膜は、厚みが1μm以下であることを特徴とするシート。
  11. 請求項1〜10の何れか一項記載のシートの表面に機能層を有する積層体。
  12. 請求項11記載の積層体において、
    前記機能層は、前記シートの前記被膜側に積層された粘着層を含むことを特徴とする積層体。
  13. 請求項11記載の積層体において、
    前記機能層が、前記シートの前記被膜とは反対側に積層されたハードコート層を含むことを特徴とする積層体。
  14. 第1の透明導電膜が第1の透明基板に形成された第1の電極基板と、
    第2の透明導電膜が前記第1の透明導電膜と所定の間隙を空けて対向するように第2の透明基板に形成された第2の電極基板とを、有するタッチパネルであって、
    前記第1の透明基板及び前記第2の透明基板のうち何れか一方の可動側電極基板が、請求項12記載の積層体を含むことを特徴とするタッチパネル。
  15. フィルム基材表面へのオリゴマーの析出を防止する方法であって、
    フィルム基材の表面に、150℃以上のガラス転移温度を持つセルロース誘導体を含む樹脂成分を有する塗工液を塗布して乾燥させ、厚みが30nm以上の被膜を形成させることを特徴とするオリゴマーの析出防止方法。
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